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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025915
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】光治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20250214BHJP
   A61N 5/067 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61N5/067
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131156
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】503369495
【氏名又は名称】帝人ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 穂乃歌
(72)【発明者】
【氏名】川▲瀬▼ 悠樹
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PC01
4C082PC10
4C082PE02
4C082PE03
4C082PE10
4C082RA01
4C082RA10
4C082RE17
4C082RE22
(57)【要約】
【課題】 黒子や体毛等がある皮膚に対しても治療効果を減損させることなく火傷を防止することができる光治療装置を提供する。
【解決手段】 光線を照射部位である皮膚に向けて照射する光照射部と、光照射部により光線が照射されているときに照射部位を冷却する冷却部と、照射部位の皮膚色情報を取得する皮膚色情報取得部と、取得した皮膚色情報の内容に基づいて冷却部の冷却強度を調整する冷却強度調整部とを備える光治療装置。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線を照射部位である皮膚に照射する光照射部と、照射部位を冷却する冷却部と、照射部位の皮膚情報を取得する皮膚情報取得部と、取得した皮膚情報に基づいて冷却部の冷却強度を調整する冷却強度調整部とを備える光治療装置。
【請求項2】
前記皮膚情報取得部が、照射部位の皮膚の色情報を取得する皮膚色情報取得部である、請求項1に記載の光治療装置。
【請求項3】
前記皮膚色情報取得部が、光治療装置に内蔵するカメラまたは外部カメラから取得した照射部位の皮膚画像を取得する皮膚画像取得部である、請求項2に記載の光治療装置。
【請求項4】
前記冷却部が、冷却ファンであり、前記冷却強度調整部が、前記皮膚画像取得部が取得した照射部位の皮膚の色情報に基づき、冷却ファンの風量を調整する手段であることを特徴とする請求項3に記載の光治療装置。
【請求項5】
前記皮膚の色情報が、照射部位のグレースケール画像の画素値、またはカラー画像のL*a*b*表色系の明度L*及び/又は色度a*であり、前記冷却強度調整部が、照射部位のグレースケール画像における画素値の最小値、またはカラー画像におけるL*値の最小値及び/又はa*値の最大値に基づいて冷却ファンの風量を調整する手段であることを特徴とする請求項4に記載の光治療装置。
【請求項6】
前記皮膚画像取得部が取得した照射部位の皮膚の色情報に基づき、照射部からの光線を出射させるか否かを判断する光出射制御部を備えると共に、光線出射時には、光線の出力パワーを一定に維持することを特徴とする請求項5に記載の光治療装置。
【請求項7】
前記皮膚の色情報が、皮膚の色情報と火傷防止リスク低減照射の為の冷却風量の関係閾値を超えた場合、照射部からの光線の出射を禁止することを特徴とする、請求項6に記載の光治療装置。
【請求項8】
照射部位の皮膚の画像情報を記憶する記憶手段を備え、検知した皮膚画像情報が記憶された直前の皮膚画像情報と異なる場合、冷却ファンの風量を変更することを特徴とする請求項3に記載の光治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血行促進及び代謝促進等、治療や治療の補助の目的で生体組織に光線を照射するために、光治療装置が用いられる。光線の中でもレーザ光は特定の波長を高出力で照射できることから、これらの用途で広く用いられている。レーザの安全基準JIS C 6802におけるレーザクラスにおいて、クラス3以上の高出力な光治療装置を在宅医療として使用する場合には、クラス1Cの適合が必須要件となる。
【0003】
標的組織である所定箇所の皮膚の部位や状態、及び皮膚の色、黒子やシミ及び体毛等の程度が異なれば、同一出力かつ同一時間のレーザ光の照射であっても、皮膚に吸収される熱エネルギー量が異なる。特に黒子や体毛等がある皮膚では、相対的に熱エネルギーの吸収量が大きくなり、火傷を負う可能性がある。皮膚の色を決定する主要な色素成分はメラニン及びヘモグロビンである。メラニンは黒色色素であり、皮膚に含まれる量が多いほど皮膚の色は濃くなる。黒子やシミなどの色素沈着部には特に多く含まれる。ヘモグロビンは血液中の赤血球に含まれる赤色素であり、血流量が多いほど皮膚の色は赤みを帯びる。紅斑などの炎症部では血液の増加により多く含まれる。よって主にメラニン及びヘモグロビンの量が多い箇所が火傷を負う可能性の高い箇所といえる。
【0004】
レーザ光の照射による火傷を防止するため、カメラで撮影した皮膚画像から照射部位の皮膚の色及び体毛の太さを判定し、照射条件を決定する光治療装置(特許文献1)が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-11106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているレーザ治療装置では、レーザ光を照射する皮膚の色を検出する検出器を持つ皮膚色検出手段と、レーザ照射条件の設定を術者が調整する調整手段と、前記皮膚色検出手段により検出された皮膚色と前記調整手段によって調整された照射条件とを対応付けて記憶する記憶手段と、前記皮膚色検知手段により検出された皮膚色と前記記憶手段の記憶データとに基づいて照射条件を自動的に設定する照射条件設定手段が備えられている。また、レーザ光を照射する領域の毛の太さを検出する毛検出手段が備えられており、前記毛検出手段により検出された毛の太さは前記記憶手段に皮膚色及び照射条件に対応付けて記憶され、照射条件は前記照射条件設定手段により前記毛検出手段及び皮膚色検知手段の検出結果と前記記憶手段の記憶データとに基づいて自動的に設定される。照射条件として照射エネルギー(レーザパワーやパルス照射時間)が皮膚色及び毛の太さに応じて設定される。すなわち、黒子や体毛等がある皮膚では、照射エネルギーを低く設定することで、火傷のリスクを回避する構成となっている。一方で、治療効果は標的組織に到達する照射エネルギーに依存する。そのため、特許文献1の構成では治療効果を減損させてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、黒子や体毛等がある皮膚に対しても治療効果を減損させることなく火傷を防止することができる光治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の光治療装置を提供する。
1)光線を照射部位である皮膚に向けて照射する光照射部と、光照射部により光線が照射されているときに照射部位を冷却する冷却部と、照射部位の皮膚色情報を取得する皮膚色情報取得部と、取得した皮膚色情報の内容に基づいて冷却部の冷却強度を調整する冷却強度調整部とを備える光治療装置。
2)前記皮膚情報取得部が、照射部位の皮膚の色情報を取得する皮膚色情報取得部である、前記1)に記載の光治療装置。
3)前記皮膚色情報取得部が、光治療装置に内蔵するカメラまたは外部カメラから取得した照射部位の皮膚画像を取得する皮膚画像取得部である、前記2)に記載の光治療装置。
4)前記冷却部が、冷却ファンであり、前記冷却強度調整部が、前記皮膚画像取得部が取得した照射部位の皮膚の色情報に基づき、冷却ファンの風量を調整する手段であることを特徴とする、前記3)に記載の光治療装置。
5)前記皮膚の色情報が、照射部位のグレースケール画像の画素値、またはカラー画像のL*a*b*表色系の明度L*及び/又は色度a*であり、前記冷却強度調整部が、照射部位のグレースケール画像における画素値の最小値、またはカラー画像におけるL*値の最小値及び/又はa*値の最大値に基づいて冷却ファンの風量を調整する手段であることを特徴とする前記4)に記載の光治療装置。
6)前記皮膚画像取得部が取得した照射部位の皮膚の色情報に基づき、照射部からの光線を出射させるか否かを判断する光出射制御部を備えると共に、光線出射時には、光線の出力パワーを一定に維持することを特徴とする前記5)に記載の光治療装置。
7)前記皮膚の色情報が、皮膚の色情報と火傷防止リスク低減照射の為の冷却風量の関係閾値を超えた場合、照射部からの光線の出射を禁止することを特徴とする前記6)に記載の光治療装置。
8)照射部位の皮膚の画像情報を記憶する記憶手段を備え、検知した皮膚画像情報が記憶された直前の皮膚画像情報と異なる場合、冷却ファンの風量を変更することを特徴とする前記3)に記載の光治療装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光治療装置は、照射部位の皮膚情報により冷却強度を制御すると共に、照射する光線の出力パワーを維持することができる。これにより、光線の照射による皮膚の温度上昇を抑制し、光線の照射エネルギーを低減することなく、火傷を防止することができる。そのため、皮膚の色が濃い患者や、照射部位に黒子や体毛等がある患者の皮膚に対しても治療効果を減損させることなく火傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の光治療装置の実施態様を示す外観図。
図2】本発明の光治療装置の動作を示すフローチャート。
図3】本発明の光治療装置の実施態様を示す構成図。
図4】本発明の光治療装置の実施態様を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の光治療装置について図面を用いて説明する。図1は本発明の光治療装置の実施態様例の外観模式図である。
【0012】
本発明の光治療装置1は、光線を照射部位である皮膚上面19に向けて照射する光照射部6を備えたプローブ3と、光照射部により光線が照射されているときに照射部位を冷却する冷却部14と、照射部位である皮膚の情報を取得する皮膚情報取得部と、取得した皮膚情報の内容に基づいて応じて冷却部の冷却強度を調整する冷却強度調整部を有する制御部2を備える。
【0013】
光照射部6は、治療用光源を備える。電源は内蔵されていてもよい。治療用光源としては、レーザ、LED、ハロゲンランプ、キセノンランプなどを利用できる。なお、光照射部6は光ファイバ等の導光路を備え、治療用光源からの光線を照射部位まで導光してもよい。
【0014】
制御部2は、照射部位である皮膚の状態に関する情報を取得する皮膚情報取得部、冷却部の冷却強度を調整する冷却強度調整部及び光照射部の光出射を制御する光出射制御部を備える。制御部2と光照射部6とはケーブル4により接続されており、制御部2からの信号に応じて照射の開始及び終了が行われる。
【0015】
冷却部14は、冷却ファンを用いた空冷式の冷却手段を用いたが、ペルチェ素子や、水あるいは冷媒を用いた水冷方式など各種冷却手段を利用できる。冷却強度調整部により、冷却温度や冷却速度を調整し、照射部位の皮膚温度の上昇を抑制することができる。
【0016】
皮膚情報取得部は、照射部位である皮膚の状態に関する情報を取得する手段であり、肌の色、黒子や体毛の有無など皮膚色情報を取得する手段や、皮膚の水分量、皮膚温度、炎症の有無など情報を取得する手段である。皮膚色情報取得は皮膚の色調に関する因子であるメラニン、ヘモグロビン、カロテンなどの色素量の計測手段を用いることができる。例えば、皮膚の分光特性を利用し、400~500nmのメラニン、ヘモグロビンの吸収、500~600nmのオキシヘモグロビンの吸収などを利用した皮膚の色、紅斑の検知を分光測定計で計測することができる。また内蔵カメラ、または外部カメラによる照射部位の皮膚画像の取得、あるいは別途取得した照射部位の画像データを用いることも可能であり、かかる画像データに基づき、皮膚画像解析も行うことができる。
【0017】
図3図4に本発明の光治療装置の実施態様の内部構成を含めた詳細構造を示す。
本発明の光治療装置1は、制御部2と、光照射部6を内蔵したプローブ3とを備え、制御部2及びプローブ3はケーブル4により電気的に接続されている。制御部2は、皮膚画像取得部22、冷却風強度調整部23及び光出射制御部21を備える。制御部2からプローブ3の筐体5へ電源供給がなされる。
【0018】
皮膚画像取得部22は、少なくとも1つのプロセッサ、記憶部及びその周辺回路等を有している。皮膚画像取得部22は、内蔵されたカメラ17または外部機器から皮膚画像を取り込み、皮膚画像の色情報の内容を記憶するとともに冷却風強度調整部23へと送信する。色情報は、明度情報及び色度情報の少なくともいずれかの情報を含む。皮膚画像取得部22は、入出力部、例えば、ディスプレイ等の表示部や、操作ボタンやタッチパネル等の入力インターフェースを有していてもよい。
【0019】
冷却風強度調整部23は、少なくとも1つのプロセッサ、記憶部及びその周辺回路等を有している。冷却風強度調整部23は、皮膚画像取得部22から受信した皮膚画像の色情報の内容と、予め記憶部に記憶されている皮膚画像の色情報の内容と冷却強度との対応関係に基づいて、冷却部14の動作を制御する。
【0020】
光出射制御部21は、少なくとも1つのプロセッサ及びその周辺回路等を有している。光出射制御部21は、冷却風強度調整部23からの信号を受けて、光照射部6の動作を制御する。
【0021】
プローブ3は、円筒状の筐体5を有している。筐体5は、筐体の内部に配置された光照射部6を有している。光が照射された標的部位の表面の部分を光の照射野という。
【0022】
冷却部14にはファン15を冷却手段として利用しており、冷却風の風量を制御することにより、冷却強度を調整する。本体部の側面には、吸気口12が設けられている。吸気口12に対して反対側の本体部の側面には、排気口13が設けられている。排気口13は、本体部の前端部近傍の側面に設けられ、吸気口12が排気口13よりも前端部から離間した位置に設けられている。
【0023】
プローブ3は、吸気口12から本体部内に噴射される冷却風を供給する冷却部を有している。冷却部14は、本体部の側面に隣接して配置されたファン15と、ファン15及び吸気口12を接続するダクト16とを有している。したがって、ファン15の回転により取り込まれた空気は、ダクト16を介して吸気口12に導かれる。なお、電源は内蔵されていてもよい。冷却風強度調整部23はケーブルを通じてファン15に接続されている。制御部2の信号に応じて冷却風の風量を制御することによって冷却強度を調整する。
【0024】
ファン15は、本体部の側面から離間する方向の空気流を生成するように構成されている。すなわち、こうした空気流が生成されるように、ファンの羽形状及びファンの回転方向が決定される。本体部の側面から離間する方向の空気流によって、本体部の表面から熱を奪い、本体部、ひいてはプローブ全体を冷却することが可能となる。
光照射部6は、治療用光源としては低出力レーザを備えている。
【0025】
図2は、光治療装置1の動作を示すフローチャートである。まず皮膚画像取得部22が皮膚画像データを受信し、各画素の色情報を取得する。なお、皮膚画像撮影時には、撮影条件の違いによる縮尺や色調のばらつきを補正するため、照射部位付近に画像補正用カラーチャートを置き、照射部位及び画像補正用カラーチャートが共に写るようにして撮影してもよい。この場合には、制御部内の画像処理部で画像を開き、画像中の画像補正用カラーチャートの白・黒・グレーをクリックしてレベル補正基準値を入力すると画像全体が色調補正される。
【0026】
皮膚画像取得部22が取得する色情報には、例えばグレースケール画像の場合には画素値、カラー画像の場合にはRGB値から算出したL*a*b*表色系の明度L*及び色度(色相+彩度)a*の値を用いることができる。
【0027】
グレースケール画像では、皮膚色が濃いほど全体的に暗く写り、また黒子や体毛等がある領域は周囲と比較してより暗く写る。暗いほど画素値は小さい値をとる。よって、皮膚色が濃いほど画素値は全体的に小さい値をとり、また黒子や体毛等がある領域に対応する画素の画素値は周囲より相対的に小さい値をとる。グレースケール画像の場合には、画素値に関して、所定値以下、あるいは最大値から所定値以下の値を有する画素が、所定面積以上隣接して存在している箇所を黒子や体毛等とする。皮膚色に関しては、画素値の最頻値とすることが望ましい。
【0028】
カラー画像では、一般的にL*a*b*表色系の明度L*がメラニン量を反映する皮膚の黒化の度合いの指標として、色度a*がヘモグロビン量を反映する皮膚の紅斑や炎症の度合いの指標として用いることができる。メラニンは幅広い波長の光を吸収するため、冷却風強度調整には基本的にL*値を用いることが望ましい。光の波長が青色や緑色の場合には紅斑や炎症部位の光吸収量が多いので、a*値も使用して冷却風強度調整を行うことが望ましい。メラニン量が多いすなわち皮膚の黒化の度合いが高いほどL*値は小さく、またヘモグロビン量が多いすなわち皮膚の紅斑や炎症の度合いが高いほどa*値は大きい。
【0029】
カラー画像の場合には、L*値に関して、所定値以下、あるいは最大値から所定値以下の値を有する画素が所定面積以上隣接して存在している箇所を黒子や体毛とする。また、a*値に関して、所定値以上、あるいは最小値から所定値以上の値を有する画素が所定面積以上隣接して存在している箇所を紅斑や炎症部位とする。皮膚色に関しては、L*値及び/又はa*値の最頻値とする。
【0030】
なお、皮膚色の表記法には、上記で説明したL*a*b*表色系の他にマンセル表色系やXYZ表色系など様々な方法があり、L*a*b*表色系に代えて用いることができる。但し、黒子やシミのような色素沈着の表記法としてはL*a*b*表色系が最も一般的な方法である。
【0031】
冷却風強度の設定には、上記の判定方法により特定した黒子や体毛がある領域のうち最も光吸収の大きい場所の色情報の値を使用する。すなわち、グレースケール画像の場合には画素値の最小値、カラー画像の場合にはL*値の最小値及び/又はa*値の最大値が望ましい。こうすることで、照射領域の中で最も火傷リスクの高い箇所に合わせて冷却風強度を設定することが可能となる。平均値や最頻値では、撮影領域の大半を地肌が占める場合に局所的に存在する黒子や炎症等の色の濃さを過小評価してしまう恐れがある。
【0032】
冷却風強度調整部23は、皮膚画像取得部22から色情報、すなわちグレースケール画像の場合には画素値の最小値、カラー画像の場合にはL*値の最小値及び/又はa*値の最大値を受信する。冷却風強度調整部23の記憶部には画素値並びにL*値及びa*値と火傷リスクを低減する冷却風強度の値の対応関係が記憶されている。冷却風強度調整部23は、皮膚画像取得部22から受信した画素値の最小値並びにL*値の最小値及び/又はa*値の最大値と、記憶部にある画素値並びにL*値及びa*値と火傷リスクを低減する冷却風強度の値の対応関係から冷却風強度を設定し、ファンを起動させる。
【0033】
光出射制御部21は、冷却風強度調整部23からのファン15を起動させる信号を受信し、光照射を可とする。冷却風強度調整部23が皮膚画像取得部22から受信した画素値あるいはL*値及び/又はa*値が、記憶部にある画素値並びにL*値及びa*値と火傷リスクを低減する冷却風強度の値の対応関係に当てはまらない値であるか、対応関係で光照射不可とされている値である場合には、照射不可とする。光出射制御部21が光照射を可とする場合には、ファン15の起動に応じて光照射部6からの光照射が開始される。光出射制御部21と光照射部6は、光線の出力パワーを照射時間中は一定に維持する。これにより、出力パワーの低下による治療効果の低減を防ぐ。
【0034】
上記の冷却風強度の判定により、照射領域の皮膚の色に応じた火傷リスクを低減する冷却風強度が設定され、安全に治療を行うことが可能となる。
【0035】
図3に示すように、プローブ3の筐体5の先端の開口部18が照射部位である皮膚上面19に密着した場合に、開口部18が皮膚上面19により密閉される、あるいは開口部18と皮膚上面19との間の距離が指1本分に相当する12mm未満である構造を有している。この構造により、光線が標的部位以外に照射されることを防止し、光線の照射をより安全かつ適切に行うことができる。
【0036】
図4は、皮膚画像取得部がプローブに内蔵されたカメラ17を備える場合を示す。制御部2の皮膚画像取得部22は、カメラ17で撮影された皮膚画像を取り込み、皮膚画像の色情報の内容を記憶するとともに冷却風強度調整部23へと送信する。光治療装置1にカメラ17が備えられていることで、治療の都度、治療前に冷却風強度の調整を行うことが可能となる。これにより、治療期間中の皮膚の状態変化に対応して常に適切な冷却風強度にて治療を実施することができる。
【0037】
皮膚画像取得部22は、単数のカメラでも、図4に示すような複数個のカメラ17,17‘を備えていてもよい。照射部位が複数存在する場合や照射部位の面積が大きい場合などには、1台のカメラで照射野全てを撮影範囲に収めることが困難である可能性がある。複数個のカメラが備えられていることで、患者がカメラの位置を調整することなく照射野全てを撮影することが容易となる。
【0038】
かかる内蔵式のカメラ17に代えて、光治療装置1に別途備えられた可動式カメラを備えることも可能である。複数個のカメラを備える代わりに可動式カメラを備えることにより、患者がカメラの位置を調整することなく照射野全てを撮影することを容易にする。
【0039】
患者は照射部位近傍に事前に施されたマーキングが写っていることを確認して皮膚画像を撮影する。皮膚画像取得部では、マーキングに対する相対的な大きさと位置座標から照射野を特定し、照射野についての色情報を取得する。
【0040】
皮膚画像取得部22がカメラ17を備える場合、皮膚画像取得部22は色情報の時系列データを取得するのが望ましい。光照射中にも冷却風強度の判定を行い、皮膚画像取得部22から受信した画素値の最小値並びにL*値の最小値及び/又はa*値の最大値と、記憶部にある画素値並びにL*値及びa*値と火傷リスクを低減する冷却風強度の値の対応関係から設定される冷却風強度が直前の時刻における設定値と異なる場合には、冷却風強度の変更を行う。これにより、例えば青色や緑色の波長の光線を照射中に照射野の皮膚色が赤色に変化してしまった場合に、冷却風強度を皮膚色の変化に応じて適切な値に変更することで火傷リスクを低減することが可能となる。
【0041】
本実施形態において、前記のように筐体5の開口部18が皮膚上面19により密閉される、あるいは開口部と皮膚上面との間の距離が近い場合、カメラは筐体内部に備えられていることが望ましい。筐体内部に備えられていることにより、光照射中の撮影が可能となる。
【0042】
本実施形態においては、冷却部14は冷却風の強度を変化させることにより冷却強度を調整する。冷却風強度調整部23は、制御部2の信号に応じてファン15の回転数を制御することによって冷却風強度を調整する。光線がペルチェ素子や冷媒などを通過する場合には、それらに光エネルギーが吸収されてしまい、照射野に到達する光線の出力パワーが減損してしまう恐れがある。冷却部14として冷却風を使用することにより、光線の出力パワーの損失なしに光線を照射野に照射することが可能となる。冷却風を使用する場合には、冷却風の強度の制御のほか、冷却風の温度の調整によって冷却強度の調整を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の光治療装置1は、過敏性腸症候群に対する低出力光治療などの医療機器として、また脱毛治療等の美容機器として利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 光治療装置
2 制御部
3 プローブ
4 ケーブル
5 筐体
6 光照射部
12 吸気口
13 排気口
14 冷却部
15 ファン
16 ダクト
17、17‘ カメラ
18 開口部
19 皮膚上面(照射部位)
21 光出射制御部
22 皮膚画像取得部
23 冷却風強度調整部
図1
図2
図3
図4