(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025936
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】直動案内装置
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20250214BHJP
F16C 33/76 20060101ALI20250214BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F16C29/06
F16C33/76 Z
F16J15/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131204
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】石上 健人
【テーマコード(参考)】
3J043
3J104
3J216
【Fターム(参考)】
3J043AA11
3J043BA07
3J043CA11
3J043CB13
3J043CB14
3J043DA20
3J104AA03
3J104AA23
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA77
3J104AA78
3J104BA62
3J104CA13
3J104CA15
3J104DA04
3J104DA20
3J104EA01
3J216AA02
3J216AA16
3J216BA01
3J216BA12
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CC70
3J216DA01
3J216DA03
3J216EA10
3J216FA09
(57)【要約】
【課題】サイドシールのメンテナンス頻度を低減し、ランニングコストの削減を図れる直動案内装置を提供する。
【解決手段】直動案内装置は、スライダの移動方向端部に取り付けられたサイドシールを備え、サイドシールは、芯金と、案内レールに当接する複数のシール部と、芯金に対して付勢力を発生する付勢装置と、付勢力をシール部に伝達する伝達機構とを有し、伝達機構は、付勢装置からの基軸方向に沿った付勢力を一つのシール部に伝達する第1伝達部と、基軸方向に沿った付勢力を基軸方向とは異なる異軸方向の付勢力に変換して他のシール部に伝達する第2伝達部とを有する。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、
前記案内レールに対して長手方向に相対移動するように配置されたスライダと、
前記案内レールと前記スライダとの間に形成される転動体転動路内に沿って転動自在に配置される複数の転動体と、
前記スライダの移動方向端部に取り付けられたサイドシールと、を備え、
前記サイドシールは、芯金と、前記案内レールに当接する複数のシール部と、前記芯金に対して付勢力を発生する付勢装置と、前記付勢力を前記シール部に伝達する伝達機構とを有し、
前記伝達機構は、前記付勢装置からの基軸方向に沿った付勢力を一つの前記シール部に伝達する第1伝達部と、前記基軸方向に沿った付勢力を前記基軸方向とは異なる異軸方向の付勢力に変換して他の前記シール部に伝達する第2伝達部とを有する、
ことを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
前記シール部は、前記案内レールの上面に当接する第1シール部と、前記案内レールの側面に当接する第2シール部及び第3シール部であり、
前記第1伝達部は、前記基軸方向に沿った付勢力を前記第1シール部に伝達し、
前記第2伝達部は、前記基軸方向に沿った付勢力を、互いに対向する前記異軸方向の付勢力に変換して前記第2シール部及び前記第3シール部に伝達する、
ことを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記第2伝達部は、前記基軸方向に対して傾いた駆動斜面を有する駆動部を有し、
前記第2シール部及び前記第3シール部は、前記駆動斜面に対して摺動可能に当接する被駆動斜面を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の直動案内装置。
【請求項4】
前記基軸方向に対する前記駆動斜面の傾き角θは、45度未満である、
ことを特徴とする請求項3に記載の直動案内装置。
【請求項5】
前記芯金と前記駆動部との間に、前記駆動部を前記基軸方向に沿って案内するガイド部材を配置した、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の直動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内装置にはサイドシール、インナーシール、アンダーシールといった接触シールが使用されている。一般的なサイドシールは、案内レール上面と軌道溝を含む側面に摺接するシールリップを有している。シールリップが摩耗すると案内レールとの接触が維持できなくなり防塵性が低下する虞がある。
【0003】
これに対し特許文献1には、多層構造のシールリップをばねで案内レール側に付勢し、表層のシールリップが摩耗する度に取り除き、新しい表層のシールリップを案内レールに接触させることで、サイドシールを交換せずともシール性能を長期に亘り維持する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、コの字形状のシールを上部と幅方向外側からばねで押圧して、シールリップを案内レール上面及び両側面に接触させており、シールリップが摩耗した場合に表層を取り外す構造を開示する。しかしながら、表層を取り外すためにサイドシールの定期的なメンテナンスが必要となり、それによりランニングコストの増大を招いている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、サイドシールのメンテナンス頻度を低減し、ランニングコストの削減を図れる直動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の直動案内装置は、
案内レールと、
前記案内レールに対して長手方向に相対移動するように配置されたスライダと、
前記案内レールと前記スライダとの間に形成される転動体転動路内に沿って転動自在に配置される複数の転動体と、
前記スライダの移動方向端部に取り付けられたサイドシールと、を備え、
前記サイドシールは、芯金と、前記案内レールに当接する複数のシール部と、前記芯金に対して付勢力を発生する付勢装置と、前記付勢力を前記シール部に伝達する伝達機構とを有し、
前記伝達機構は、前記付勢装置からの基軸方向に沿った付勢力を一つの前記シール部に伝達する第1伝達部と、前記基軸方向に沿った付勢力を前記基軸方向とは異なる異軸方向の付勢力に変換して他の前記シール部に伝達する第2伝達部とを有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サイドシールのメンテナンス頻度を低減し、ランニングコストの削減を図れる直動案内装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る直動案内装置の斜視図である。
【
図5】
図5は、第2シール部と第3シール部を
図2Bと同方向に見た図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態にかかるサイドシールを示す
図2と同様な図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る直動案内装置11の斜視図であり、
図2Aは、
図1に示す直動案内装置11のスライダ15の斜視図である。
図1、
図2Aでは、サイドシール41をエンドキャップ23に固定するネジを省略して示す。ここで、互いに直交するXYZ直交座標系において、X方向を案内レール13の幅方向とし、Y方向を案内レール13の長手方向とし、Z方向を案内レール13及びスライダ15の高さ方向とする。
【0012】
本実施形態に係る直動案内装置11は、案内レール13と、案内レール13に対して移動するスライダ15と、不図示の転動体及び保持器、及び案内レール13とスライダ15との間の隙間を塞ぐシール部材を有する。複数の転動体は、案内レール13とスライダ15との間に形成される転動体転動路内に沿って転動自在に配置され、それにより案内レール13に対してスライダ15が軸方向に移動可能である。
【0013】
ここで、シール部材とは、スライダ15の移動方向端部に取り付けられるサイドシール41、及び図示しないアンダーシール、インナーシールの総称である。
【0014】
案内レール13の側面部には、案内レール13の長手方向に沿って一対の案内レール側軌道面(転動体軌道面)19が形成されている。スライダ15は、スライダ本体21と、スライダ本体21の移動方向(長手方向)の両端部に設けられた一対のエンドキャップ23とを備える。
【0015】
スライダ15には、エンドキャップ23の長手方向両側にサイドシール41がそれぞれ配置され、サイドシール41は、貫通孔43iに挿通される不図示のネジによってエンドキャップ23に固定される。
【0016】
スライダ本体21、エンドキャップ23、サイドシール41は、いずれもU字形状(またはコ字状)の断面をなして案内レール13に跨るように設置される。つまり、スライダ本体21、エンドキャップ23、サイドシール41には、案内レール13を収容する凹溝が中央に形成されている。
【0017】
図2Bは、サイドシール41の芯金43を
図2AのA-A面から矢印方向に見た図であり,案内レール13(ハッチング)とともに示す。ここでは、一方のサイドシール41についてのみ説明を行うが、他方のサイドシール41についても同様であるため、重複説明を省略する。なお、以下において使用する「左」、「右」という用語について、図面において「左」、「右」を意味するものとする。
【0018】
サイドシール41は、エンドキャップ23との間に保持される金属製の芯金43と、芯金43にそれぞれ取り付けられる第1シール部44、第2シール部45、及び第3シール部46と、一対の巻きばね47と、を含む。まず、芯金43から説明する。
【0019】
図3Aは、芯金43を
図2Bと同方向に見た図であり、
図3Bは、芯金43の斜視図である。芯金43もエンドキャップ23と同様にコ字状に形成されており、芯金43の上縁及び側縁は、エンドキャップ23の上縁及び側縁に一致する。また、芯金43の高さも、エンドキャップ23の高さに一致する。このため、エンドキャップ23に芯金43を取り付けたとき、その上縁及び側縁に隙間がないため、異物が進入しにくい構造となっている。
【0020】
コ字状である芯金43の下部中央を切欠部43aとする。芯金43は、Y方向に突出する上縁部43b、一対の側縁部43c、及び切欠部43aを挟んだ下縁部43dを有する。上縁部43bは、X方向に距離をあけて2つのくぼみ43eを有し、各くぼみ43eは、Z方向下方に向かって開放する開口部を有しており、該開口部に対向して上縁部43bから離間した位置に、細長い直方体状の島部43fが形成されている。
【0021】
一対の側縁部43cは、上縁部43bの近傍において、X方向に対向して突出する突出部43gを有する。突出部43gは、島部43fに対して、Z方向の位置及び厚さが略等しくなっている。上縁部43b、側縁部43c、下縁部43d、島部43f、及び突出部43gは、Y方向の端面(
図3Aで紙面垂直方向手前側の面)が平面となっており、これらの端面は、サイドシール41として組付けた際にエンドキャップ23の対向面に密着当接する。上縁部43b、側縁部43c、下縁部43d、島部43f、及び突出部43g以外の芯金43の面(以下、取り付け面という)43hは、ZX面と重なる。上縁部43bに、ネジを挿通するための貫通孔43iがY方向に貫通して形成されている。
【0022】
図4は、第1シール部44を
図2Bと同方向に見た図である。第1シール部44は、Y方向の厚さが均一であり、合成樹脂または天然樹脂(ゴム等)から形成される。第1シール部44は、荷重受け部44aと、上部リップ44bと、左側駆動部44cと、右側駆動部44dと、中央連結部44eと、左側連結部44fと、右側連結部44gと、から連設されている。
【0023】
荷重受け部44aは、X方向に延在する角柱状であり、また、上部リップ44bも、荷重受け部44aと平行にX方向に延在する略角柱状である。上部リップ44bの両端から下方に突出するように、一対の補助リップ44jが形成されている。中央連結部44eは、荷重受け部44aの中央部と上部リップ44bの中央部とをZ方向に沿って連結する。荷重受け部44aと中央連結部44eが第1伝達部を構成する。
【0024】
左側駆動部44cは、上辺がX方向に延在し、左辺がZ方向に延在する直角三角形状を有しており、斜辺に相当する駆動斜面44hが上部リップ44b側を向いている。駆動斜面44hのZ方向に対する傾き角(内角)θは、45度未満であると好ましく、30度以下であればより好ましい。左側連結部44fは、荷重受け部44aの一端近傍と左側駆動部44cの上縁中央部とを連結する。荷重受け部44aと、左側連結部44fと、左側駆動部44cが第2伝達部を構成する。また、第1伝達部と第2伝達部により伝達機構を構成する。
【0025】
右側駆動部44dは、上辺がX方向に延在し、右辺がZ方向に延在する直角三角形状を有しており、斜辺に相当する駆動斜面44iが上部リップ44b側を向いている。駆動斜面44iのZ方向に対する傾き角(内角)θは、45度未満であると好ましく、30度以下であればより好ましい。右側連結部44gは、荷重受け部44aの一端近傍と右側駆動部44dの上縁中央部とを連結する。荷重受け部44aと、右側連結部44gと、右側駆動部44dが第2伝達部を構成する。また、第1伝達部と第2伝達部により伝達機構を構成する。
【0026】
なお、
図4にて破線で示すように、例えば鋼製の補強材44mを、インサート成形により荷重受け部44aと、中央連結部44eと、左側連結部44fと、右側連結部44gに埋設して、これら部位の剛性を高めることもできる。
【0027】
図5は、第2シール部45と第3シール部46を
図2Bと同方向に見た図である。第2シール部45と第3シール部46とは、芯金43の中心線を挟んで対称の形状を有する。
【0028】
第2シール部45は、合成樹脂または天然樹脂(ゴム等)から形成され、直角台形状の本体部45aと、本体部45aの右側縁中央付近からX方向右方に突出するように形成された半円形部45bと、半円形部45bのX方向頂点からX方向右方に突出するように形成された凸部45cとを有する。本体部45aは、半円形部45bに対向して被駆動斜面45dを有する。
【0029】
第3シール部46は、合成樹脂または天然樹脂(ゴム等)から形成され、直角台形状の本体部46aと、本体部46aの側縁中央付近からX方向左方に突出するように形成された半円形部46bと、半円形部46bのX方向頂点からX方向左方に突出するように形成された凸部46cとを有する。本体部46aは、半円形部46bに対向して被駆動斜面46dを有する。
【0030】
第1シール部44と、第2シール部45と、第3シール部46は、
図2Bに示すように、芯金43に組付けられ、紙面垂直方向奥側の面がそれぞれ取り付け面43hに接した状態となる。より具体的に、第1シール部44の荷重受け部44aは、上縁部43bと島部43fとの間に配置されてX方向に沿って延在する。上縁部43bと島部43fとの間に、荷重受け部44aが保持されるため、第1シール部44の芯金43からのZ方向の脱落を阻止することができる。案内レール13に組付けた初期状態では、荷重受け部44aと島部43fとの間には、隙間が存在する。
【0031】
また、中央連結部44eは、一対の島部43fの間を通過し、上部リップ44bは、島部43fのZ方向下方に位置することとなる。
【0032】
一方、左側連結部44fは、左側の突出部43gと島部43fとの間を通過し、第2シール部45は、左側の突出部43g及び島部43fのZ方向下方に位置することとなる。さらに、右側連結部44gは、右側の突出部43gと島部43fとの間を通過し、第3シール部46は、右側の突出部43g及び島部43fのZ方向下方に位置することとなる。
【0033】
また、第2シール部45及び第3シール部46の本体部45a、46aの下縁は、芯金43の下縁部43dに当接し、これに案内されてX方向に沿って移動可能となる。すなわち、下縁部43dは、第2シール部45及び第3シール部46のX方向のガイドとなる。
【0034】
本体部45aの被駆動斜面45dが、左側駆動部44cの駆動斜面44hに摺動可能に当接し、また本体部46aの被駆動斜面46dが、右側駆動部44dの駆動斜面44iに摺動可能に当接する。本実施形態では、左側の側縁部43cと左側駆動部44cとの間、及び右側の側縁部43cと右側駆動部44dとの間にガイド部材GD(後述する変形例)を配置しておらず、左側の側縁部43cと左側駆動部44cとの間、及び右側の側縁部43cと右側駆動部44dとの間には、0.1mm~0.2mmの隙間がある。かかる隙間があるので、左側駆動部44cと右側駆動部44dのZ方向変位が阻害されない。
【0035】
付勢装置を構成する一対の巻きばね47が、X方向に離間したくぼみ43e内に、それぞれ組付けられる。Z方向に圧縮された巻きばね47は、くぼみ43eの奥壁43kに対して、荷重受け部44aをZ方向下方(基軸方向という)に安定して付勢している。
【0036】
第1シール部44と、第2シール部45と、第3シール部46と、巻きばね47を組み付けた芯金43を、スライダ15のエンドキャップ23の端面に組み付けることで、サイドシール41がスライダ15に組付けられ、また第1シール部44等が芯金43から脱落することが阻止される。
【0037】
このスライダ15を案内レール13に組み付けたとき、
図2Bに示すように、第1シール部44の上部リップ44bが案内レール13の上面に当接可能となる。このとき、上部リップ44bの両端の補助リップ44jが、案内レール13の上面両脇の案内レール側軌道面18に係合するとともに、第2シール部45及び第3シール部46の上端に当接する。
【0038】
また、第2シール部45及び第3シール部46の本体部45a、46a及び半円形部45b、46bが、案内レール13の側面に当接可能となる。このとき、凸部45c、46cが、案内レール側軌道面19に進入して当接する。以上により、案内レール13の上面と側面とがシールされるため、スライダ15内への異物の侵入が抑制される。
【0039】
(サイドシールの作用)
巻きばね47のZ方向の付勢力は、荷重受け部44aから中央連結部44eを介して上部リップ44bに伝達され、これにより上部リップ44bが案内レール13の上面に対して押し付けられるため、上部リップ44bの締め代を確保でき、シール性を高めることができる。
【0040】
また、巻きばね47のZ方向の付勢力は、荷重受け部44aから左側連結部44fを介して、左側駆動部44cに伝達される。これにより、左側駆動部44cがZ方向下方に変位するが、駆動斜面44hと被駆動斜面45dとが摺動可能に当接しており、第2シール部45は下縁部43dに案内されてX方向(異軸方向という)にのみ変位可能であるから、左側駆動部44cのZ方向下方変位(付勢力)は、第2シール部45のX方向右方変位(付勢力)に変換される。このため、第2シール部45が案内レール13の左側面に向かって押し付けられ、それにより第2シール部45の締め代を確保でき、シール性を高めることができる。
【0041】
同様に、巻きばね47のZ方向の付勢力は、荷重受け部44aから右側連結部44gを介して、右側駆動部44dに伝達される。これにより、右側駆動部44dがZ方向下方に変位するが、駆動斜面44iと被駆動斜面46dとが摺動可能に当接しており、第3シール部46は下縁部43dに案内されてX方向にのみ変位可能であるから、右側駆動部44dのZ方向下方変位(付勢力)は、第3シール部46のX方向左方変位(付勢力)に変換される。このため、第3シール部46が案内レール13の右側面に向かって押し付けられ、それにより第3シール部46の締め代を確保でき、シール性を高めることができる。
【0042】
さらに直動案内装置11の使用時に、スライダ15が案内レール13に対してスライドすると、上部リップ44bが案内レール13の上面に対して摺動し、それに応じて上部リップ44bの摺動部が摩耗することとなる。本実施形態によれば、巻きばね47のZ方向の付勢力が、荷重受け部44aから中央連結部44eを介して上部リップ44bに伝達されているため、上部リップ44bの摺動部が摩耗したときは、摩耗した分だけ上部リップ44bがZ方向下方に変位し、それにより上部リップ44bの締め代を確保して、シール性を維持できる。
【0043】
また、スライダ15が案内レール13に対してスライドすると、第2シール部45が案内レール13の左側面に対して摺動し、それに応じて本体部45a及び半円形部45bの摺動部が摩耗することとなる。本実施形態によれば、巻きばね47のZ方向の付勢力が、荷重受け部44aから左側連結部44fを介して左側駆動部44cに伝達され、さらに駆動斜面44hと被駆動斜面45dとによりX方向付勢力に変換されて、第2シール部45に伝達されている。したがって、本体部45a及び半円形部45bの摺動部が摩耗したときは、摩耗した分だけ第2シール部45がX方向右方に変位し、それにより第2シール部45の締め代を確保して、シール性を維持できる。
【0044】
さらに、スライダ15が案内レール13に対してスライドすると、第3シール部46が案内レール13の右側面に対して摺動し、それに応じて本体部46a及び半円形部46bの摺動部が摩耗することとなる。本実施形態によれば、巻きばね47のZ方向の付勢力が、荷重受け部44aから右側連結部44gを介して右側駆動部44dに伝達され、さらに駆動斜面44iと被駆動斜面46dとによりX方向付勢力に変換されて、第3シール部46に伝達されている。したがって、本体部46a及び半円形部46bの摺動部が摩耗したときは、摩耗した分だけ第3シール部46がX方向左方に変位し、それにより第3シール部46の締め代を確保して、シール性を維持できる。本実施形態によれば、サイドシール41のメンテナンス頻度を低減し、直動案内装置11のランニングコストの削減を図れる。
【0045】
(変形例)
本実施形態の変形例として、
図2Bに点線で示すように、例えばPTFE製のガイド部材GDを、左側の側縁部43cと左側駆動部44cとの間、及び右側の側縁部43cと右側駆動部44dとの間に配置することができる。かかる場合、ガイド部材GDは、左側の側縁部43c(または左側駆動部44c)に固定され、また右側の側縁部43c(または右側駆動部44d)に固定されうる。
【0046】
左側連結部44fを介してZ方向下方への付勢力を受けたとき、左側駆動部44cは、被駆動斜面45dからの反力でX方向左方に押し返される。このとき、ガイド部材GDが、該反力を支持しつつ左側駆動部44c(または側縁部43c)に対して摺動し、これにより左側駆動部44cのX方向左方への変位を抑制し、Z方向下方に沿って案内することができる。したがって、第2シール部45の安定したX方向右方への変位を確保できる。
【0047】
また、右側連結部44gを介してZ方向下方への付勢力を受けたとき、右側駆動部44dは、被駆動斜面46dからの反力でX方向右方に押し返される。このとき、ガイド部材GDが、該反力を支持しつつ右側駆動部44d(または側縁部43c)に対して摺動し、これにより右側駆動部44dのX方向右方への変位を抑制し、Z方向下方に沿って案内することができる。したがって、第3シール部46の安定したX方向左方への変位を確保できる。
【0048】
なお、ガイド部材GDを配置する代わりに、側縁部43cの肉厚をそれぞれ増大させて、左側の側縁部43cと左側駆動部44cとを摺動可能に当接させ、また右側の側縁部43cと右側駆動部44dとを摺動可能に当接させてもよい。
【0049】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態にかかるサイドシール41Aを示す
図2Bと同様な図であるが、ガイドレールは省略する。本実施形態においては、芯金43Aと、付勢装置として巻きばねの代わりに設けた弾性部材47Aのみが第1の実施形態と異なるため、共通する構成については同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0050】
芯金43Aは、上縁部43Abに形成したくぼみ43AeがX方向に拡大されて単一となっている点が第1の実施形態と異なるため、それ以外の共通する構成については重複説明を省略する。
【0051】
本実施形態においては、合成樹脂または天然樹脂製であるブロック状の弾性部材47Aは、弾性変形可能であり、Z方向に圧縮された状態でくぼみ43Aeに配置されている。弾性部材47Aは、くぼみ43Aeの奥壁43Akに対して、荷重受け部44aをZ方向下方に安定して付勢している。これにより、第1の実施形態と同様に、第1シール部44をZ方向下方に変位させ、かつ第2シール部45と第3シール部46を、X方向に近接させるように変位させることができる。
【0052】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
11 直動案内装置
13 案内レール
15 スライダ
18 案内レール側軌道面
19 案内レール側軌道面
21 スライダ本体
23 エンドキャップ
41,41A サイドシール
43,43A,43B 芯金
43a 切欠部
43b,43Ab 上縁部
43c 側縁部
43d 下縁部
43f 島部
43g 突出部
43h 取り付け面
43i 貫通孔
43k,43Ak 奥壁
44,44B 第1シール部
44a 荷重受け部
44b 上部リップ
44c 左側駆動部
44d 右側駆動部
44e 中央連結部
44f 左側連結部
44g 右側連結部
44h,44i 駆動斜面
44j 補助リップ
44m 補強材
45 第2シール部
45a,46a 本体部
45b,46b 半円形部
45c,46c 凸部
45d,46d 被駆動斜面
46,46B 第3シール部
47A 弾性部材