(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002594
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20241226BHJP
F16F 9/49 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F16F9/32 H
F16F9/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102883
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】森 拓仁
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069CC06
3J069CC09
3J069EE01
3J069EE51
(57)【要約】
【課題】液圧ロック機能を発揮できるとともに製造が容易で製造コストを低減できる緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、液体と気体とを貯留するとともに圧側室R2に連通されてシリンダ1内に出入りするピストンロッド2の体積を補償するリザーバRと、ピストン3がシリンダ1に対して中立位置にある状態で液面Sよりも上方となる位置を移動下限としてリザーバR内に上下方向へ移動可能に収容されてリザーバR内を上方室Uと下方室Lとに仕切る可動仕切4と、下方室Lから上方室Uへ向かう液体の流れに抵抗を与える抵抗要素5と、可動仕切4に当接した状態で可動仕切4が上昇すると可動仕切4を下方へ向けて付勢するばね要素6とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドに連結されるとともに前記シリンダ内に移動可能に挿入されて前記シリンダ内を液体が充満する伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
液体と気体とを貯留するとともに前記圧側室に連通されて前記シリンダ内に出入りする前記ピストンロッドの体積を補償するリザーバと、
前記ピストンが前記シリンダに対して中立位置にある状態で液面よりも上方となる位置を移動下限として前記リザーバ内に上下方向へ移動可能に収容されて前記リザーバ内を上方室と下方室とに仕切る可動仕切と、
前記下方室から前記上方室へ向かう液体の流れに抵抗を与える抵抗要素と、
前記可動仕切に当接した状態で前記可動仕切が上昇すると前記可動仕切を下方へ向けて付勢するばね要素とを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記可動仕切は、前記シリンダと前記外筒の一方に摺接して上下方向へ移動可能であって、
前記抵抗要素は、前記シリンダと前記外筒との他方と前記可動仕切との間の隙間によって形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記抵抗要素は、
前記可動仕切に設けられて前記上方室と前記下方室とを連通する流入通路と戻り通路と、
前記流入通路を前記下方室から前記上方室へ向けて通過する液体の流れのみを許容するととも前記液体の流れに抵抗を与えるバルブと、
前記戻り通路を前記上方室から前記下方室へ向けて通過する液体の流れのみを許容するチェックバルブとを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記抵抗要素は、
前記可動仕切に設けられて前記上方室と前記下方室とを連通するとともに上方室側へ向かうほど狭くなる絞り通路を含んで形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記可動仕切は、前記上方室と前記下方室とを連通するとともに前記ばね要素に当接すると遮断されるとともに前記ばね要素から離間すると開放される戻り流路を有するとともに、移動下限に配置される状態では、前記ばね要素と上下方向に隙間を空けて対向する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記ばね要素は、ゴム製のクッションである
ことを特徴とする請求項5に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に利用される緩衝器にあっては、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドの先端に連結されるとともにシリンダ内に移動可能に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダを覆ってシリンダとの間にシリンダ内に出入りするピストンロッドの体積を補償するリザーバを形成する外筒とを備えている。
【0003】
このように構成された従来の緩衝器では、最収縮時の衝撃を緩和するためにシリンダから外方へ突出するピストンロッドの外周に装着されるバンプクッションラバーをシリンダの上端に取り付けられたバンプクッションに衝合させるものが一般的であるが、近年のスポーツ・ユーティリティ・ビークルのブームによって、年々車両重量が重くなるとともに車両の重心高さが高くなっており、急制動時や急転舵時の車体の振動を軽減すべく、収縮側のストロークエンドでの衝撃の緩和について弾性反発を生じない油圧を用いたオイルロックの利用が要望されるようになってきた。
【0004】
このような要望に応えるため、圧側室内にサブシリンダを設けて、ピストンがシリンダ内で下降すると、サブシリンダとシリンダとの間の空間をオイルロック室として機能させる緩衝器が開発されるに至っている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
このようにシリンダ内にオイルロック室を備えた緩衝器では、収縮作動時に圧側室からリザーバへ向かう作動油の流れに与えるベースバルブの他に、オイルロックの特性を調整するためのバルブを備えており、最収縮時の底付きの防止と衝撃の緩和を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オイルロック室を備えた緩衝器は、収縮側のストロークエンドでの衝撃の緩和について前記要望に十分に応えることができるのであるが、緩衝器の内部の構造が複雑で、オイルロック機能を発揮するための部品同士の嵌め合いの関係から高精度の寸法管理が求められるとともに、組立が煩雑化するため、製造コストと製造の難易度が高くなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、液圧ロック機能を発揮できるとともに製造が容易で製造コストを低減できる緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドに連結されるとともにシリンダ内に移動可能に挿入されてシリンダ内を液体が充満する伸側室と圧側室とに区画するピストンと、液体と気体とを貯留するとともに圧側室に連通されてシリンダ内に出入りするピストンロッドの体積を補償するリザーバと、ピストンがシリンダに対して中立位置にある状態で液面よりも上方となる位置を移動下限としてリザーバ内に上下方向へ移動可能に収容されてリザーバ内を上方室と下方室とに仕切る可動仕切と、下方室から上方室へ向かう液体の流れに抵抗を与える抵抗要素と、可動仕切に当接した状態で可動仕切が上昇すると可動仕切を下方へ向けて付勢するばね要素とを備えている。
【0010】
このように構成された緩衝器によれば、収縮作動時にピストンがシリンダに対して中立位置から収縮方向へ移動する際に、リザーバ内の液面が可動仕切に到達すると、収縮が進むのに伴って収縮を妨げる減衰力を徐々に高めて、最収縮時の衝撃の緩和と底付きの防止が可能である。また、リザーバ内に可動仕切とばね要素とを収容して抵抗要素を設けるだけで緩衝器における最収縮時の衝撃の緩和と底付きの防止とが可能となり、従来の緩衝器のように、シリンダ内にサブシリンダを設けるとともにサブシリンダとサブシリンダ内に他部品を嵌合するなどいった部品同士の嵌め合いが不要であるので、高精度の寸法管理が求められることがなく、構造も簡素であるから組立も容易である。
【0011】
また、可動仕切がシリンダと外筒の一方に摺接して上下方向へ移動可能であって、抵抗要素がシリンダと外筒との他方と可動仕切との間の隙間によって形成されてもよい。このように構成された緩衝器によれば、可動仕切がシリンダ或いは外筒の干渉を受けずにリザーバ内でスムーズに移動でき、液面が可動仕切に到達してから収縮を継続しても減衰力が急変せず滑らかに上昇する特性を実現でき、より一層車両における乗心地を向上できる。
【0012】
さらに、抵抗要素が可動仕切に設けられて上方室と下方室とを連通する流入通路と戻り通路と、流入通路を下方室から上方室へ向けて通過する液体の流れのみを許容するととも液体の流れに抵抗を与えるバルブと、戻り通路を上方室から下方室へ向けて通過する液体の流れのみを許容するチェックバルブとを備えてもよい。このように構成された緩衝器によれば、バルブの設定によって液圧ロック機能を発揮した際の緩衝器の特性を容易にチューニングでき、緩衝器の伸長作動時に上方室へ移動した液体を下方室へ速やかに戻すことができるため、緩衝器が伸縮作動を繰り返しても下方室内の液体の液面が下降することが無く、緩衝器がストロークエンド近傍まで収縮する際には液圧ロック機能を安定して発揮できる。
【0013】
また、抵抗要素が可動仕切に設けられて上方室と下方室とを連通するとともに上方室側へ向かうほど狭くなる絞り通路を含んで形成されてもよい。このように構成された緩衝器によれば、液圧ロック機能を発揮する前後での減衰力の変化割合がより緩和されるので、液圧ロック機能を発揮してもより一層車両における乗心地を向上できる。
【0014】
そして、さらに、可動仕切が上方室と下方室とを連通するとともにばね要素に当接すると遮断されるとともにばね要素から離間すると開放される戻り流路を有するとともに、移動下限に配置される状態では、ばね要素と上下方向に隙間を空けて対向してもよい。このように構成された緩衝器によれば、ばね要素の圧縮に対して発生する弾発力の特性の設定によって液圧ロック機能を発揮した際の緩衝器の特性を容易にチューニングでき、緩衝器の伸長作動時に上方室へ移動した液体を下方室へ速やかに戻すことができるため、緩衝器が伸縮作動を繰り返しても下方室内の液体の液面が下降することが無く、緩衝器がストロークエンド近傍まで収縮する際には液圧ロック機能を安定して発揮できる。
【0015】
また、ばね要素がゴム製のクッションであってもよい。このように構成された緩衝器によれば、可動仕切に当接すると可動仕切に密着して戻り流路を漏れなく遮断できるので、液圧ロック機能を安定的に発揮できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の緩衝器によれば、液圧ロック機能を発揮できるとともに製造が容易で製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施の形態における緩衝器の断面図である。
【
図2】一実施の形態における緩衝器の一部拡大断面図である。
【
図3】一実施の形態の第1変形例の緩衝器の一部拡大断面図である。
【
図4】一実施の形態の第2変形例の緩衝器の一部拡大断面図である。
【
図5】一実施の形態の第3変形例の緩衝器の一部拡大断面図である。
【
図6】一実施の形態の第3変形例の緩衝器の可動仕切の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の緩衝器を図に基づいて説明する。一実施の形態における緩衝器Dは、
図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に挿入されるピストンロッド2と、シリンダ1内に挿入されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、液体と気体とを貯留するリザーバRと、リザーバR内に上下方向へ移動可能に収容されてリザーバR内を上方室Uと下方室Lとに仕切る可動仕切4と、下方室Lから上方室Uへ向かう液体の流れに抵抗を与える抵抗要素5と、上方室U内に収容されて可動仕切4の上端に対向するばね要素6とを備えている。緩衝器Dは、図示しない車両における車体と車輪との間に介装されて伸縮時に減衰力を発生して車体の振動を抑制する。
【0019】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。シリンダ1は、筒状であって内部に前述したようにピストンロッド2およびピストン3が軸方向となる
図1中上下方向へ移動可能に挿入されている。シリンダ1内は、ピストン3によって、
図1中上方の伸側室R1と
図1中下方の圧側室R2とに区画されている。また、伸側室R1と圧側室R2内には、液体として、具体的にはたとえば、作動油が充填されている。なお、液体としては、作動油の他にも、水、水溶液等を充填してもよい。
【0020】
また、シリンダ1は、外周側に配置される有底筒状の外筒7内に収容されており、シリンダ1と外筒7との間の環状隙間でリザーバRが形成されている。このリザーバR内は、この場合、液体としての作動油と気体とが貯留されている。なお、リザーバR内に充填される気体は、作動油の劣化を防止するべく窒素等といった不活性ガスとされているが、それ以外の気体とされてもよい。また、リザーバRは、本実施の形態では、シリンダ1と外筒7との間に形成されているが、シリンダ1とは別個に設けられたタンクによってリザーバRが形成されてもよい。
【0021】
ピストンロッド2は、シリンダ1の
図1中上端に嵌合する環状のロッドガイド8の内周に挿通されて先端側がシリンダ1内に挿入されており、基端側となる
図1中上端がシリンダ1の外方へ突出している。ロッドガイド8は、環状であって外周にフランジ8aを備えており、シリンダ1の上端内周にフランジ8aよりも小径の部分を嵌合させつつ、フランジ8aの外周を外筒7の上端内周に嵌合させて、シリンダ1と外筒7の上端を閉塞する。また、ロッドガイド8は、ピストンロッド2の外周に摺接して、内周側に挿通されるピストンロッド2のシリンダ1に対する軸方向への移動を案内する。また、ロッドガイド8の
図1中上方には、ピストンロッド2と外筒7との間に挿入される環状のシール部材9が積層されている。シール部材9は、ピストンロッド2と外筒7との間を封止して、シリンダ1および外筒7からの液体および気体の漏洩を防止している。
【0022】
ピストン3は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路3aおよび圧側通路3bと、伸側通路3aに設けられて伸側室R1から圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するとともに当該作動油の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ3cと、圧側通路3bに設けられて圧側室R2から伸側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容する圧側チェックバルブ3dとを備えている。
【0023】
さらに、シリンダ1の
図1中下端には外筒7の底部に載置されるバルブケース10が嵌合されている。バルブケース10は、
図1中で下端の外周に外筒7の内周に嵌合するとともにシリンダ1の下端に当接するフランジ10aを備えており、シール部材9、ロッドガイド8およびシリンダ1とともに外筒7内に挿入され、外筒7の上端に螺子結合されるキャップ11と外筒7の底部とで挟持されて外筒7内で固定される。
【0024】
また、バルブケース10は、圧側室R2とリザーバRとを仕切っており、圧側室R2とリザーバRとを連通する排出通路10bおよび吸込通路10cと、排出通路10bに設けられて圧側室R2からリザーバRへ向かう作動油の流れのみを許容するとともに当該作動油の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブ10dと、吸込通路10cに設けられてリザーバRから圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容する伸側チェックバルブ10eとを備えている。
【0025】
よって、緩衝器Dは、シリンダ1に対してピストン3が
図1中上方へ移動する伸長作動時には、ピストン3の移動によって縮小される伸側室R1の作動油が伸側減衰バルブ3cを通過して拡大する圧側室R2へ移動し、作動油の流れに対して伸側減衰バルブ3cが抵抗を与えて伸側室R1の圧力が上昇するため、伸長作動を妨げる減衰力を発生する。また、緩衝器Dの伸長作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内から退出するため、ピストンロッド2がシリンダ1内から退出する体積分の作動油が伸側チェックバルブ10eを介してリザーバRからシリンダ1内に供給される。
【0026】
また、緩衝器Dは、シリンダ1に対してピストン3が
図1中下方へ移動する収縮作動時には、ピストン3の移動によって縮小される圧側室R2の作動油が圧側チェックバルブ3dを通過して拡大する伸側室R1へ移動し、圧側チェックバルブ3dが作動油の流れに対して然程抵抗を与えないため、伸側室R1と圧側室R2との圧力は略等しくなる。緩衝器Dの収縮作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内に侵入して、ピストンロッド2がシリンダ1内へ侵入する体積分の作動油がシリンダ1内で過剰となるため、過剰分の作動油が圧側減衰バルブ10dを通過してリザーバRへ排出される。このように、作動油がシリンダ1内からリザーバRへ排出される際に、作動油の流れに対して圧側減衰バルブ10dが抵抗を与えるために伸側室R1および圧側室R2の圧力が略等しく上昇する。ここで、ピストン3の圧側室R2の圧力を受ける受圧面積がピストン3の伸側室R1の圧力を受ける受圧面積よりもピストンロッド2の断面積だけ大きいため、伸側室R1と圧側室R2との圧力の上昇によってピストン3を押し上げる力が大きくなり、緩衝器Dは収縮作動を妨げる減衰力を発生する。
【0027】
このように、緩衝器Dは、振動の入力によって伸縮作動を呈すると伸縮を妨げる減衰力を発生する。また、リザーバRは、緩衝器Dの伸縮作動によってシリンダ1内に出入りするピストンロッド2の体積分の作動油をシリンダ1とでやり取りすることによって、シリンダ1内に出入りするピストンロッド2の体積を補償する。
【0028】
つづいて、可動仕切4は、環状であって、シリンダ1と外筒7との間に形成されたリザーバR内に
図1中上下方向へ移動可能に収容されている。可動仕切4は、内周をシリンダ1の外周に摺接させており、外周を微小な隙間を空けて外筒7の内周面に対向させて、リザーバR内を上方室Uと下方室Lとに仕切っている。
【0029】
また、可動仕切4は、外周に
図2中上端から下端へ通じる複数の溝4aを備えている。溝4aが形成された可動仕切4の外周面と外筒7の内周面との間の隙間は、リザーバRにおける上方室Uと下方室Lとを連通する制限流路として機能しており、上方室Uと下方室Lとを行き来する作動油の流れに抵抗を与える抵抗要素5を形成している。よって、可動仕切4の外周に溝4aの断面積、設置数の変更によって抵抗要素5が通過する作動油の流れに与える抵抗の大きさをチューニングできる。また、抵抗の大きさによっては、溝4aを設けずに可動仕切4と外筒7との間の隙間で抵抗要素5を形成してもよい。
【0030】
さらに、可動仕切4は、下端から下方へ延びる棒状の足4bを備えている。可動仕切4は、足4bを備えているので、リザーバR内で足4bがバルブケース10のフランジ10aの上端に当接すると、リザーバRに対してそれ以上
図1中下方への移動が規制される。
【0031】
このように、可動仕切4は、リザーバR内で
図1中上下方向へ移動できるが、足4bによってリザーバR内で移動できる範囲の下限となる移動下限が設定されている。移動下限は、ピストン3がシリンダ1に対して中立位置にある状態でリザーバR内の液面Sよりも上方となる位置に設定されている。なお、中立位置は、ピストン3のシリンダ1に対するストローク中心であってもよいし、緩衝器Dを車両における車体と車輪との間に介装した際にピストン3がシリンダ1に対する配置される位置であってもよい。
【0032】
可動仕切4は、緩衝器Dが収縮作動を呈してピストン3がストロークエンドに到達するよりも少し前に作動油が下方室Lから上方室Uへ向けて抵抗要素5を通過することで下方室L内の圧力とともにシリンダ1内の圧力を上昇させて緩衝器Dのそれ以上の収縮作動を妨げることを期待されているので、可動仕切4の移動下限は、緩衝器Dが最収縮するよりも少し前に作動油の液面Sが可動仕切4に到達するような位置に設定されるのが好ましい。緩衝器Dの収縮作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内に侵入することでリザーバRへ作動油が排出されてリザーバR内で作動油の液面Sが上昇するが、車両が凹凸の少ない良路を走行中に入力される振動で緩衝器Dが収縮しても、液面Sが移動下限に到達しないようにするとよい。
【0033】
なお、足4bは、外筒7或いはバルブケース10のフランジ10aへの当接によって可動仕切4の移動下限を設定できる限りにおいて、棒状以外にも環状であってもよいし、形状および構造について任意に設計変更できる。
【0034】
また、可動仕切4に足4bを設けて可動仕切4の移動下限を設定しているが、シリンダ1或いは外筒7にストッパを設けて、可動仕切4が上方から下方へ向けて移動して移動下限に到達すると当該ストッパに当接して可動仕切4の移動下限よりも下方への移動を規制してもよい。当該ストッパは、シリンダ1の外周或いは外筒7の内周に環状溝を設けて、当該環状溝に装着されるCリング等で構成されてもよい。
【0035】
可動仕切4の上方となる上方室U内には、可動仕切4の上方室U側の端部に軸方向で対向するばね要素6が設けられている。ばね要素6は、コイルばね6aと、コイルばね6aと可動仕切4との間に配置される筒状のばね受6bとを備えており、ロッドガイド8のフランジ8aと可動仕切4との間に配置されている。ばね受6bは、
図1に示すように、シリンダ1の外周に摺接する筒部6b1と、筒部6b1の上端外周に設けられてコイルばね6aの
図1中下端を指示するフランジ状の受部6b2とを備えており、筒部6b1の下端を可動仕切4の上方室U側の端部となる
図1中上端に当接させて、コイルばね6aが発する弾発力を可動仕切4に伝達している。また、ばね要素6は、コイルばね6aが発生する付勢力で可動仕切4を移動下限に位置決めるとともに、可動仕切4が移動下限から上方室U側となる
図1中上方へ変位すると、当該変位に応じて可動仕切4を移動下限へ戻す方向へ付勢する。
【0036】
ばね要素6は、
図1中では、上方室U内でコイルばね6aを上方にばね受6bを下方にして配置されているが、コイルばね6aを下方にばね受6bを上方にして配置されてもよい。また、ばね要素6は、本実施の形態では、可動仕切4の
図1中上方側への移動よってコイルばね6aが最圧縮して密着長となると、可動仕切4のそれ以上の上方側への移動を規制して、移動上限を設定するストッパとしても機能する。よって、可動仕切4は、移動下限からコイルばね6aを密着長とする移動上限までの範囲でリザーバR内を
図1中で上下方向へ移動できる。
【0037】
なお、ばね要素6の下端は、可動仕切4が上方室Uを最圧縮する前に可動仕切4に当接してコイルばね6aが可動仕切4を下方室L側へ向けて付勢できれば、可動仕切4が移動下限に配置されている状態で、可動仕切4の上方室U側の端部との間に隙間を空けて対向していてもよい。ばね受6bは、スペーサとして機能して、コイルばね6aの長さが足りなくても可動仕切4に付勢力を伝達し得るが、不要であれば省略できる。よって、ばね要素6は、可動仕切4に当接した状態で可動仕切4がリザーバR内で上昇すると、可動仕切4を下方へ向けて付勢できればよい。
【0038】
また、ばね要素6は、可動仕切4が上方室Uを最圧縮する前に可動仕切4に当接して可動仕切4を下方室L側へ向けて付勢できればよいので、コイルばね以外にもウェーブワッシャや皿ばねを積層したものであってもよいし、ゴム等の弾性体であってもよい。さらに、ばね要素6は、前述したところでは、上方室U内に収容されているが、下方室L内に収容されて可動仕切4に連結されて可動仕切4が
図1中上方へ移動すると伸長して可動仕切4を下方へ向けて付勢してもよい。
【0039】
緩衝器Dは、以上のように構成されており、以下に緩衝器Dの作動を説明する。緩衝器Dが伸縮作動を呈すると減衰力を発生するのは前述した通りであるが、シリンダ1に対してピストン3が
図1中下方へ移動する収縮作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内に侵入することによって、作動油が排出通路10bを通じてリザーバRへ排出される。よって、緩衝器Dの収縮作動時には作動油がリザーバRに流入してリザーバR内の作動油の液面Sが上昇する。
【0040】
ピストン3がシリンダ1内で中立位置にある状態では、リザーバR内の液面Sは、移動下限に配置された可動仕切4の
図1中下面よりも下方に位置しているが、ピストン3のシリンダ1に対する下降に伴って上昇して、ピストン3の下降が進むとやがて可動仕切4に到達する。
【0041】
リザーバR内の気体は、溝4aで形成される抵抗要素5を然程の抵抗を受けずに下方室Lから上方室Uへ移動できるが、作動油が抵抗要素5を通過する際には抵抗を受ける。よって、緩衝器Dの収縮作動によって、液面Sが可動仕切4に到達すると、作動油が抵抗要素5を通過して可動仕切4で仕切られた下方室Lから上方室Uへ移動するようになり、作動油の流れに抵抗要素5が抵抗を与えるので下方室L内の圧力が上昇する。下方室Lの圧力が上昇する分、シリンダ1内の圧力も上昇するため、緩衝器Dは、液面Sが可動仕切4に到達する前よりも高い減衰力を発生して自身の収縮を妨げるようになる。
【0042】
また、下方室Lの圧力が上方室Uの圧力よりも高くなり、ばね要素6が可動仕切4を
図1中下方へ押圧する付勢力と、下方室Lの圧力と上方室Uの圧力との差圧によって可動仕切4を
図1中上方へ押圧する力とがバランスするまでコイルばね6aが縮むため、可動仕切4は、リザーバR内で
図1中上方へ移動する。よって、シリンダ1に対してピストン3の中立位置から下方へ移動する移動量に応じて、可動仕切4は、抵抗要素5によって作動油の流れに抵抗を与えつつリザーバR内で上昇する。下方室L内の圧力は、ばね要素6の付勢力に依存して大きくなるので、液面Sが可動仕切4に到達すると、シリンダ1に対するピストン3の中立位置からの変位量が大きくなればなるほど、緩衝器Dが発生する減衰力が高くなる。
【0043】
そして、シリンダ1に対してピストン3が下方へ向けてストロークエンドの近傍まで変位すると、コイルばね6aが最圧縮されて密着長となり可動仕切4のそれ以上の上昇が規制されるため、下方室Lの圧力上昇によって可動仕切4を押し上げることで、下方室Lを拡大できなくなる。すると、緩衝器Dが収縮作動することにより、リザーバR内に流入した作動油の全流量が抵抗要素5を通過するようになり、下方室Lの圧力が高くなって、緩衝器Dは、液圧ロック機能を発揮してより高い減衰力を発生して収縮を妨げるようになり、シリンダ1に対するピストン3の移動速度を低下させて最収縮時の衝撃を緩和する。
【0044】
このように、緩衝器Dは、シリンダ1に対してピストン3が
図1中下方へ移動する収縮作動時において、液面Sが可動仕切4の移動下限にまで到達し、その後、ピストン3が
図1中下方へ移動すると、液圧ロック機能を発揮してピストン3の移動量の増加に伴って抵抗要素5によって減衰力を徐々に高くして、可動仕切4の上方への移動が規制されるようになると減衰力を最も高くして衝撃の緩和と底付きを防止する。
【0045】
緩衝器Dが収縮作動を呈して、可動仕切4がリザーバR内で上方へ移動するとともに、作動油が抵抗要素5を通じて下方室Lから上方室Uへ移動した後、緩衝器Dの伸縮方向が切り換わって伸長作動を呈すると、ピストンロッド2がシリンダ1から退出してリザーバRから作動油がシリンダ1内に移動するため、下方室Lの圧力が減少する。また、可動仕切4は、ばね要素6の付勢力を受けて下方へ向けて押圧されるので、リザーバR内を下方へ向けて移動して移動下限まで戻り、上方室U内に流入した液体が抵抗要素5を通じて下方室Lへ戻される。
【0046】
なお、緩衝器Dが最収縮する前に可動仕切4が移動上限に達するように設定すれば、緩衝器Dが収縮側のストロークエンドに達する前に減衰力を最大にして緩衝器Dの衝撃の緩和と底付きの防止を効果的に防止できるが、緩衝器Dが収縮側のストロークエンドに達しても可動仕切4の上方側への移動を規制しないようにしてもよい。
【0047】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、密着長となったコイルばね6aをストッパとして機能させることで、可動仕切4の移動上限を設定しているが、シリンダ1或いは外筒7に可動仕切4が移動上限に達すると可動仕切4に当接して可動仕切4が移動上限を超えて上方へ移動させないストッパを設けてもよい。なお、当該ストッパは、シリンダ1の外周或いは外筒7の内周に環状溝を設けて、当該環状溝に装着されるCリング等で構成されてもよい。
【0048】
以上、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されるとともにシリンダ1内に移動可能に挿入されてシリンダ1内を作動油(液体)が充満する伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、作動油(液体)と気体とを貯留するとともに圧側室R2に連通されてシリンダ1内に出入りするピストンロッド2の体積を補償するリザーバRと、ピストン3がシリンダ1に対して中立位置にある状態で液面Sよりも上方となる位置を移動下限としてリザーバR内に上下方向へ移動可能に収容されてリザーバR内を上方室Uと下方室Lとに仕切る可動仕切4と、下方室Lから上方室Uへ向かう液体の流れに抵抗を与える抵抗要素5と、可動仕切4に当接した状態で可動仕切4が上昇すると可動仕切4を下方へ向けて付勢するばね要素6とを備えている。
【0049】
このように構成された緩衝器Dは、収縮作動時にピストン3がシリンダ1に対して中立位置から収縮方向へ移動する際に、リザーバR内の液面Sが可動仕切4に到達すると、収縮が進むのに伴って収縮を妨げる減衰力を徐々に高めて、最収縮時の衝撃の緩和と底付きの防止が可能である。また、本実施の形態の緩衝器Dでは、リザーバR内に可動仕切4とばね要素6とを収容して抵抗要素5を設けるだけで最収縮時の衝撃の緩和と底付きの防止が可能となり、従来の緩衝器のように、シリンダ内にサブシリンダを設けるとともにサブシリンダとサブシリンダ内に他部品を嵌合するなどいった部品同士の嵌め合いが不要であるので、高精度の寸法管理が求められることがなく、構造も簡素であるから組立も容易で、製造コストを低減でき製造の難易度が易しくなる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、液圧ロック機能を発揮できるとともに製造が容易で製造コストを低減できる。さらに、本実施の形態の緩衝器Dは、液面Sが可動仕切4に到達してさらに収縮を継続すると、徐々に減衰力を高めて収縮を抑制するので、液圧ロック機能の発揮の前後で緩衝器Dが発生する減衰力の急変を緩和でき、液圧ロック機能の発揮によって車両における乗心地を損なうこともない。
【0050】
また、本実施の形態の緩衝器Dにおける可動仕切4は、シリンダ1の外周に摺接して上下方向へ移動可能であって、抵抗要素5は、可動仕切4と外筒7との間の隙間によって形成されている。このように構成された緩衝器Dによれば、可動仕切4がシリンダ1の外周のみに摺接して、抵抗要素5が可動仕切4と外筒7との間の隙間によって形成されるから、可動仕切4が外筒7の干渉を受けずにリザーバR内でスムーズに移動でき、液面Sが可動仕切4に到達してから収縮を継続しても減衰力が急変せず滑らかに上昇する特性を実現でき、より一層車両における乗心地を向上できる。なお、本実施の形態では、溝4aが設けられた可動仕切4の外周と外筒7との間の隙間で抵抗要素5を形成しているので、溝4aの断面積や設置数によって抵抗要素5が作動油の流れに与える抵抗を容易にチューニングできる。また、溝4aは、可動仕切4の外周に軸方向に沿って設けられているが、液圧ロック機能を発揮する際の特性に応じて、螺旋状に設けられてもよし、蛇行して設けられてもよいし、軸方向に傾斜して設けられてもよい。
【0051】
また、前述したところでは、可動仕切4は、シリンダ1の外周に摺接して上下方向へ移動可能であって、抵抗要素5は、外筒7と可動仕切4との間の隙間によって形成されているが、可動仕切4の外周を外筒7の内周に摺接させて、シリンダ1の内周と可動仕切4の内周との間の隙間によって抵抗要素5を形成してもよい。
【0052】
ばね要素6は、前述したように可動仕切4がリザーバR内で上方室Uを圧縮する方向となる上方へ移動すると下方へ向けて付勢する付勢力を高めるため、緩衝器Dの収縮側へのストローク量に対する緩衝器Dの液圧ロック機能時の減衰力の特性をばね要素6の付勢力の特性によってチューニングすることができる。よって、たとえば、緩衝器Dの収縮側へストロークしていくと緩衝器Dの液圧ロック機能時の減衰力の特性の傾きを途中で大きくしたい場合、ばね要素6の圧縮が進むとばね要素6の付勢力が途中から大きくなるようにすればよい。具体的に、ばね要素6の圧縮が進むとばね要素6の付勢力が途中から大きくする場合、コイルばね6aを上方と下方とでピッチが異なるばねとするか、或いは、ばね要素6をピッチの異なる2つのばねを直列に配置して構成して、ピッチが狭いばね或いは部分を先に密着長とするように設定してもよいし、長さの異なる並列された2つのコイルばねでばね要素6を構成してもよい。
【0053】
さらに、
図3に示した第1変形例の緩衝器D1のように、抵抗要素5aが可動仕切15に設けられて上方室Uと下方室Lとを連通するとともに上方室U側へ向かうほど狭くなる絞り通路15aを含んで形成されてもよい。詳しくは、可動仕切15は、環状であって、内周をシリンダ1の外周に摺接させてリザーバR内を上下方向へ移動可能とされて、リザーバR内を上方室Uと下方室Lとに仕切っており、外周に軸方向に沿って
図3中上方へ向かうほど断面積が小さくなる絞り通路15aを備えて、外周面を外筒7の内周面に摺接させている。また、可動仕切15は、シリンダ1の外周に固定されたストッパ14によって移動下限が設定されており、ばね要素6によって
図3中下方へ付勢さている。
【0054】
可動仕切15をリザーバR内に収容すると、可動仕切15の絞り通路15aを通じて上方室Uと下方室Lとが連通されるので、当該絞り通路15aによって下方室Lから上方室Uへ向かう作動油の流れに低区尾を与える抵抗要素5aが形成される。絞り通路15aは、上方室U側へ向かうほど断面積が小さくなっているので、上方室U側へ向かうほど狭くなっている。よって、緩衝器D1が収縮作動を呈して、可動仕切15に液面Sが到達してもさらに収縮を継続すると、作動油は抵抗要素5aを形成する絞り通路15aを通過して下方室Lから上方室Uへ移動するが、作動油が上方室Uへ向かうまでに絞り通路15aから受ける抵抗が上方室Uへ向かえば向かうほど徐々に大きくなる。よって、このように構成された可動仕切15を備えた第1変形例の緩衝器D1によれば、液圧ロック機能を発揮する前後での減衰力の変化割合がより緩和されるので、液圧ロック機能を発揮してもより一層車両における乗心地を向上できる。なお、絞り通路15aは、可動仕切15の外周に形成されると加工が容易となるが、内周或いは可動仕切15内に設けられてもよい。また、可動仕切15は、シリンダ1と外筒7とに摺接しているが、シリンダ1或いは外筒7の一方に摺接するとともにシリンダ1或いは外筒7の他方に対して僅かな隙間を空けて非接触とされてもよい。さらに、絞り通路15aを可動仕切15の内周或いは外周に、螺旋状に設けるようにすれば、通路長を確保でき、通路の断面積の減少割合を穏やかにすることができ、より一層減衰力の変化割合を緩和できる。また、絞り通路15aは、
図3に示したように、深さが上方室U側へ向かうほど浅くなることによって上方室U側へ向かうほど断面積が小さくなっていてもよいし、可動仕切15の周方向に沿う幅が上方室U側へ向かうほど狭くなることによって上方室U側へ向かうほど断面積が小さくなっていてもよい。
【0055】
また、
図4に示した第2変形例の緩衝器D2のように、抵抗要素5bは、可動仕切16に設けられて上方室Uと下方室Lとを連通する流入通路16aと戻り通路16bと、流入通路16aを下方室Lから上方室Uへ向けて通過する作動油の流れのみを許容するととも作動油の流れに抵抗を与えるバルブ17と、戻り通路16bを上方室Uから下方室Lへ向けて通過する作動油の流れのみを許容するチェックバルブ18とを備えてもよい。
【0056】
より詳細には、可動仕切16は、環状であってリザーバR内に収容されてリザーバR内を上方室Uと下方室Lとに仕切っており、上端から下端へ通じて上方室Uと下方室Lとを連通する流入通路16aと戻り通路16bとを備えている。
【0057】
バルブ17は、可動仕切16の
図4中上端に積層される複数枚の環状板で形成されており、内周がホルダ19によって可動仕切16に積層された状態に固定されるとともに、外周の撓みが許容されて、流入通路16aの
図4中上端を開閉できる。また、バルブ17は、下方室Lからの圧力を受けて撓むと流入通路16aを開いて下方室Lから上方室Uへ向かう作動油の流れを強要するとともに当該作動油の流れに抵抗を与える。なお、バルブ17を構成する環状板の枚数は任意に変更できる。
【0058】
チェックバルブ18は、可動仕切16の
図4中下端に積層される環状板で形成されており、内周がホルダ19によって可動仕切16に積層された状態に固定されるとともに、外周の撓みが許容されて、戻り通路16bの
図4中下端を開閉できる。チェックバルブ18は、可動仕切16の下端に全体が当接しても流入通路16aを閉塞しないに孔18aを備えている。
【0059】
また、チェックバルブ18は、上方室Uからの圧力を受けて撓むと戻り通路16bを開いて上方室Uから下方室Lへ向かう作動油の流れを許容するとともに当該作動油の流れに然程の抵抗を与えない。なお、チェックバルブ18を構成する環状板の枚数は任意に変更できる。
【0060】
ホルダ19は、筒状であって、上下端の外周に互いに上下方向で対向する一対の支持部19a,19bを備えており、支持部19a,19bによってバルブ17、可動仕切16およびチェックバルブ18を挟持することでこれらを保持している。このようにホルダ19によって保持されたバルブ17およびチェックバルブ18は、内周側が固定されて外周側の撓みが許容されてそれぞれ対応する流入通路16aおよび戻り通路16bとを開閉する。
【0061】
このように、一体となったバルブ17、可動仕切16、チェックバルブ18およびホルダ19の組立体は、ホルダ19の内周をシリンダ1の外周に摺接させるとともに可動仕切16の外周を外筒7の内周に摺接させてリザーバR内に収容されており、シリンダ1の外周に固定されたストッパ14によって移動下限が設定されて、ばね要素6によって
図4中下方へ付勢さている。
【0062】
そして、緩衝器D2が収縮作動を呈して、可動仕切16に液面Sが到達してもさらに収縮を継続すると、作動油は抵抗要素5bにおけるバルブ17を押し開けて流入通路16aを通過して下方室Lから上方室Uへ移動し、バルブ17が当該作動油の流れに抵抗を与える。よって、このように構成された第2変形例の緩衝器D2によれば、バルブ17が作動油の流れに抵抗を付与して液圧ロック機能を発揮でき、バルブ17の撓み剛性の設定によって液圧ロック機能を発揮した際の緩衝器D2の特性を容易にチューニングできる。また、緩衝器D2が収縮して液圧ロック機能を発揮した後、緩衝器D2の伸縮方向が転じて伸長作動に切り換わると、下方室Lが減圧されてチェックバルブ18が開弁するので上方室Uに流入した作動油が殆ど抵抗なく速やかに下方室Lへ戻される。よって、第2変形例の緩衝器D2によれば、緩衝器D2の伸長作動時に上方室Uへ移動した作動油(液体)を下方室Lへ速やかに戻すことができるため、緩衝器D2が伸縮作動を繰り返しても下方室L内の作動油(液体)の液面Sが下降することが無く、緩衝器D2がストロークエンド近傍まで収縮する際には液圧ロック機能を安定して発揮できる。
【0063】
また、第2変形例の緩衝器D2では、可動仕切16、バルブ17およびチェックバルブ18がホルダ19によって一体されているが、これらを上下で挟むコイルばねによってばね要素6を構成して、ばね要素6によって可動仕切16、バルブ17およびチェックバルブ18の一体性を失わずに上下方向へ移動させるようにしてもよい。
【0064】
さらに、本実施の形態では、可動仕切16に戻り通路16bを設けてチェックバルブ18で開閉する構造を採用しているが、上方室U内の作動油を下方室Lへ戻すための戻り通路とチェックバルブは他の構造を採用してもよい。たとえば、上方室Uから下方室Lへ戻り通路を可動仕切16と外筒7との間の隙間とする場合、可動仕切16の外周に環状溝を設け、当該環状溝内を上下移動可能な環状のチェックバルブを収容してもよい。この場合のチェックバルブは、環状であって外周を外筒7の内周面に摺接させるとともに可動仕切16の外周の環状溝内に上下方向へ移動可能に挿入され、内周に上端と下端とを連通する縦溝と、下端に径方向に沿って形成されて縦溝を外周に連通する横溝とでなる通路とを備えていればよい。このように構成されたチェックバルブは、下方室Lの圧力が上方室Uの圧力よりも高いと、環状溝内で最上方に移動して上端を環状溝の上方側の側壁に当接させるため、縦溝と横溝とでなる通路が閉塞されて、可動仕切16と外筒7との間を介して作動油が下方室Lから上方室Uへ移動するのを阻止でき、上方室Uの圧力が下方室Lの圧力よりも高いと、環状溝内で最下方に移動して下端を環状溝の下方側の側壁に当接させるため、縦溝と横溝とでなる通路が開放されて、可動仕切16と外筒7との間を介して作動油が上方室Uから下方室Lへ移動するのを許容できる。
【0065】
さらに、
図5に示した第3変形例の緩衝器D3のように、ばね要素がゴム製のクッション20とされるとともに、可動仕切21は、上方室Uと下方室Lとを連通するとともにクッション20に当接すると遮断されるとともにクッション20から離間すると開放される戻り流路Pを有するとともに、移動下限に配置される状態でクッション20と上下方向に隙間を空けて対向してもよい。
【0066】
より詳細には、可動仕切21は、
図5および
図6に示すように、環状であって、外周の中央に周方向に沿って設けられた突部21aと、下端から軸方向に沿って突部21aの中央にまでかけて形成される切欠21bと、突部21aの外周に軸方向に沿って設けられて切欠21bに通じる溝21cと、内周から径方向へ突出する6つの突条21dと、突条21d,21d間の空隙で形成される戻り流路Pとを備えて、リザーバR内に
図5中上下方向へ移動可能に収容されてリザーバR内を上方室Uと下方室Lとに仕切っている。
【0067】
可動仕切21は、各突条21dの先端をシリンダ1の外周に摺接させており、突部21aの外周を極小さな隙間を介して外筒7の外周に対向させていて、溝21cおよび切欠21bとを通じて上方室Uと下方室Lとを連通させる他、突条21d,21d間の空隙で形成される戻り流路Pを介して上方室Uと下方室Lとを連通させる。切欠21bの断面積は、溝21cの断面積と比べて大きく、作動油は、可動仕切21と外筒7との間を通過する際に、溝21cの通過時に大きな抵抗を付与される。よって、この場合、溝21cによって抵抗要素5cが形成されている。戻り流路Pの流路面積は、通過する作動油の流れに抵抗を与えないように充分な流路面積が確保されている。なお、溝21cの断面積と設置数は、任意に設計変更でき、切欠21bについても溝21cのみで上方室Uと下方室Lとを連通できる限りにおいて廃止できる。
【0068】
また、第3変形例の緩衝器D3の場合、外筒7は、軸方向の中央から少し上方に寄った部分を外周側から加締められて内側に突出する突起7aを備えており、可動仕切21の突部21aの下方側が突起7aに当接すると、可動仕切21のそれ以上の
図5中下方への移動が規制される。このように、外筒7における突起7aは、可動仕切21の下方への移動を規制するストッパとして機能しており、可動仕切21の移動下限を設定している。なお、可動仕切21に切欠21bを周方向に並べて多数設けることで、可動仕切21の突起7aに当接する接触面積を減少させることができ、可動仕切21が移動下限に戻って突起7aに接触する際の打音を小さくできる。また、突起7aは、外筒7に対して周方向に環状に設けられてもよいし、図示したように、周方向で離間した複数個所に設けられてもよいし、ストッパとして機能できる限りにおいて1か所のみに設けられてもよい。
【0069】
また、第3変形例における緩衝器D3では、ロッドガイド8に装着されてクッション20の上端を支持する支持筒22を備えている。支持筒22は、シリンダ1の外周に配置される筒部22aと、筒部22aの下端に設けられた受部22bとを備えており、筒部22aの上端がロッドガイド8のフランジ8aよりも下方の外周に嵌合することによってロッドガイド8に取り付けられている。受部22bは、筒部22aの下端に取り付けられており、
図5中下方へ向かうほど内径が拡径している。
【0070】
クッション20は、ゴム製であって筒状に成型されており、上下の開口端の内周にテーパ状の面取り部20a,20bを備えていて、シリンダ1の外周に若干の締代をもって嵌合されている。クッション20は、可動仕切21が突起7aに当接して下方への移動が制限される移動下限に配置される場合、軸方向で可動仕切21の上端との間に少し隙間を空けて対向する。
【0071】
よって、可動仕切21が移動下限に配置されると、クッション20と可動仕切21との間には隙間が形成されるので、可動仕切21の突条21d,21d間の空隙で形成される戻り流路Pの上端の開口が開放されて、上方室Uと下方室Lとを連通する。他方、可動仕切21が液面Sの上昇に伴って下方室Lの圧力を受けて
図5中上方へ移動すると可動仕切21の上端面とクッション20の下端面とが当接すると、前記戻り流路Pが遮断されて戻り流路Pを介しての上方室Uと下方室Lとの連通が断たれる。
【0072】
このように構成された第3変形例の緩衝器D3が収縮作動を呈して、液面Sが上昇すると、やがて液面Sが移動下限に配置されている可動仕切21に到達するようになる。そして、可動仕切21に液面Sが到達してもさらに収縮を継続すると、クッション20と可動仕切21とが離間しているため、作動油は戻り流路Pと溝21cで形成された抵抗要素5cを通過して下方室Lから上方室Uへ移動するようになる。クッション20と可動仕切21とが離間していると、可動仕切21は、クッション20からの付勢力を受けていないので、作動油が戻り流路Pを通過する際に与えられる抵抗によって下方室Lの圧力が上方室Uの圧力よりも少し上昇するため、
図5中上方へ移動してクッション20に当接するようになる。
【0073】
クッション20に対して可動仕切21が当接すると戻り流路Pが遮断されて、下方室Lの液体は抵抗要素5cのみを通過して上方室Uへ移動するようになり、抵抗要素5cが作動油の流れに与える抵抗によって下方室Lの圧力を上昇させ、下方室Lの圧力上昇によって可動仕切21が上方へ移動してクッション20を圧縮する。
【0074】
可動仕切21が
図5中で上昇してクッション20を圧縮していくと、クッション20の付勢力が圧縮量に伴って指数関数的に上昇し、可動仕切21の上昇を抑制する一方で、下方室Lの圧力もクッション20の付勢力に応じて上昇するので、緩衝器D3の収縮が進むにつれて液圧ロック機能による減衰力が増大して、緩衝器D3の収縮が妨げられる。
【0075】
よって、このように構成された第3変形例の緩衝器D3によれば、リザーバR内の液面Sが上昇して可動仕切21に到達すると、戻り流路Pがクッション(ばね要素)20によって遮断されて抵抗要素5cが作動油の流れに抵抗を付与して液圧ロック機能を発揮でき、クッション(ばね要素)20が圧縮に対して発生する弾発力の特性の設定によって液圧ロック機能を発揮した際の緩衝器D3の特性を容易にチューニングできる。また、緩衝器D3が収縮して液圧ロック機能を発揮した後、緩衝器D3の伸縮方向が転じて伸長作動に切り換わると、下方室Lが減圧されて可動仕切21が緩衝器D3の伸長作動とともに下降してクッション(ばね要素)20から離間すると戻り流路Pが開放されるので、上方室Uに流入した作動油が殆ど抵抗なく速やかに下方室Lへ戻される。
【0076】
なお、ばね要素は、可動仕切21に当接すると戻り流路Pを遮断し、可動仕切21から離間すると戻り流路Pを開放できる態様であれば、ゴム製でなくてもよく、たとえば、コイルばねとコイルばねの下端に可動仕切21の上端面の全体に亘って当接可能な環状のばね受を備えるものであってもよい。ただし、本実施の形態の緩衝器D3のように、ばね要素をゴム製のクッション20とする場合、クッション20が可動仕切21に当接すると可動仕切21に密着して戻り流路Pを漏れなく遮断するシール性を発揮するため、液圧ロック機能を安定的に発揮できる点で優れる。
【0077】
なお、クッション20は、弾性を備えて若干の締代をもってシリンダ1の外周に嵌合されており圧縮状態から元の状態へ戻る際にシリンダ1から摩擦抵抗を受ける。他方、可動仕切21もシリンダ1の外周に摺接しており、可動仕切21がリザーバR内で下降する際に、シリンダ1との間で摩擦抵抗を受けるが、可動仕切21がシリンダ1との間でクッション20よりも摩擦抵抗が小さい材料で形成されていると、可動仕切21がクッション20の下端から離間し易くなり、戻り流路Pが開放されるタイミングが早くなって、上方室U内に流入した作動油が下方室Lへ戻りやすくなる。よって、可動仕切21は、シリンダ1との間でゴム製であるクッション20よりも摩擦抵抗が小さな材料で形成されるのが好ましく、たとえば、自己潤滑性を備えた合成樹脂や金属とされるとよい。
【0078】
よって、第3変形例の緩衝器D3によれば、緩衝器D3の伸長作動時に上方室Uへ移動した作動油(液体)を下方室Lへ速やかに戻すことができるため、緩衝器D3が伸縮作動を繰り返しても下方室L内の作動油(液体)の液面Sが下降することが無く、緩衝器D3がストロークエンド近傍まで収縮する際には液圧ロック機能を安定して発揮できる。
【0079】
また、クッション20を支持する支持筒22におけるクッション20に当接する受部22bの内径がクッション20側へ向かうほど拡径しており、クッション20の下端の内周面がテーパ面とされているので、クッション20が可動仕切21の上昇によって圧縮される際に、クッション20の上端が径方向へ拡径するのが受部22bによって抑制され、可動仕切21に効率的にクッション20の付勢力を作用させ得る。また、本実施の形態では、クッション20の上端開口部に面取り部20aを設けてボリュームが少なくなっているので、受部22bの内周側の空間にクッション20の上端が入り易く、圧縮時のクッション20の拡径の抑制効果を高め得るが、面取り部20aを省略してもよい。
【0080】
さらに、クッション20は、下端開口端の内周にテーパ状の面取り部20bを備えているので、可動仕切21の上端に当接した際に、下端が可動仕切21の戻り流路Pを避けて当接できるので、下端が突条21d,21d間の戻り流路Pに押し込まれて劣化するのを防止できる。
【0081】
また、前述した可動仕切21は、外周に抵抗要素5cとして機能する溝21cを備えているが、溝21cの代わりに可動仕切21の上端に内周から外周へ通じるとともに突条21d,21d間に開口する溝を設けて、当該溝を抵抗要素として利用してもよい。この場合、緩衝器D3が収縮作動して、可動仕切21がクッション20の下端に当接すると戻り流路Pと前記溝とが直列して上方室Uと下方室Lとを連通するため、作動油が溝を通過する際に作動油の流れに抵抗を与えて液圧ロック機能を発揮でき、緩衝器D3が伸長作動して可動仕切21とクッション20とが離間すると戻り流路Pによって速やかに上方室Uから下方室Lへ作動油を戻すことができる。さらに、抵抗要素は、可動仕切21に設けられる溝によって形成されることに代えて、可動仕切21に設けられて上方室Uと下方室Lとを連通して孔によって形成されてもよい。また、戻り流路Pは、可動仕切21に対して、クッション20の下端に可動仕切21の上端が当接することによって閉塞されるとともにクッション20から可動仕切21が離間すると開放されればよいので、その限りにおいて可動仕切21に対して溝や孔を形成することで設置されてもよい。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1・・・シリンダ、2・・・ピストンロッド、3・・・ピストン、4,15,16,21・・・可動仕切、5,5a,5b,5c・・・抵抗要素、6・・・ばね要素、7・・・外筒、15a・・・絞り通路、16a・・・流入通路、16b・・・戻り通路、17・・・バルブ、18・・・チェックバルブ、20・・・クッション、D,D1,D2,D3・・・緩衝器、P・・・戻り流路、R・・・リザーバ、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室