(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025968
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】リードフレーム、半導体装置及びリードフレームの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
H01L23/50 K
H01L23/50 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131267
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】呉 宗昭
(72)【発明者】
【氏名】丸山 徹
【テーマコード(参考)】
5F067
【Fターム(参考)】
5F067AA01
5F067AA11
5F067AB04
5F067BA02
5F067BB01
5F067BB10
5F067BC04
5F067BC05
5F067DA17
5F067DC11
5F067DC17
5F067DC19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ショート不良の発生を回避しつつリードの変形を抑制するリードフレーム、半導体装置及びリードフレームの製造方法を提供する。
【解決手段】リードフレーム100は、リード120と、めっき層125と、めっき膜126とを有する。リード120は、上面120aと下面120bとを有し、上面120aの幅が下面120bの幅より大きい。めっき層125は、上面120aに設けられた半導体素子との接続部である。めっき膜126は、リードの表面を被覆する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面とを有し、前記上面の幅が前記下面の幅より大きいリードと、
前記上面に設けられた、半導体素子との接続部と、
前記リードの表面を被覆するめっき膜と
を有することを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
前記めっき膜は、
前記上面を被覆する部分の膜厚よりも前記下面を被覆する部分の膜厚が小さい
ことを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
前記めっき膜は、
前記下面を被覆する部分の膜厚よりも前記上面を被覆する部分の膜厚が小さい
ことを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項4】
前記リードは、
前記上面と前記下面との間の側面を有し、
前記めっき膜は、
前記上面又は前記下面を被覆する部分の膜厚よりも前記側面を被覆する部分の膜厚が小さい
ことを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項5】
前記めっき膜の表面は、粗化面であり、
前記めっき膜の表面の表面粗度は、前記リードの表面の表面粗度より大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項6】
前記めっき膜は、
前記上面を被覆する部分の表面粗度が前記下面を被覆する部分の表面粗度よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項7】
前記接続部は、
前記上面を被覆する前記めっき膜上に設けられていると共に、前記めっき膜と異なる材質のめっき層からなる
ことを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項8】
前記リードは、
前記リードの長手方向に垂直な断面において、前記上面の幅が前記下面の幅より大きいテーパ形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項9】
前記半導体素子の搭載面を有するダイパッド
をさらに有し、
前記めっき膜は、
前記ダイパッドの表面を被覆する
ことを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項10】
リードフレームと、
前記リードフレームに搭載される半導体素子と、
前記半導体素子を封止する封止樹脂と
を有し、
前記リードフレームは、
上面と下面とを有し、前記上面の幅が前記下面の幅より大きいリードと、
前記上面に設けられた、前記半導体素子との接続部と、
前記リードの表面を被覆するめっき膜と
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
金属板から、上面と下面とを有し、前記上面の幅が前記下面の幅より大きいリードを成形する工程と、
前記リードの表面を被覆するめっき膜を形成する工程と、
を有することを特徴とするリードフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム、半導体装置及びリードフレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばIC(Integrated Circuit)チップなどの半導体素子を金属製のリードフレームに搭載する半導体装置が知られている。すなわち、例えばリードフレームの中央に設けられる面状のダイパッドに半導体素子が搭載され、この半導体素子がダイパッドの周囲に設けられる複数のリードに例えばワイヤボンディングによって接続される。そして、リードフレームに搭載された半導体素子が例えばエポキシ樹脂などの樹脂によって封止され、半導体装置が形成されることがある。
【0003】
かかる半導体装置においては、リードの数を増加することが促進されており、リードの数の増加に伴って、リードの幅を狭くする設計が行われている。リードの幅が狭くなるほどリードの強度が低下してリードに変形が生じる可能性がある。これに対し、リードの側面に突起を形成し、リードの強度を向上することなどが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-159273号公報
【特許文献2】特開2017-228795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リードの側面に突起を形成してリードの強度を向上する場合には、隣り合うリード間の距離が十分に確保されないため、隣り合うリードどうしが接触するショート不良が発生する恐れがある。一方、リードの強度を向上する構造が設けられないと、リードが変形し易くなり、リードフレームの生産性が低下する。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、ショート不良の発生を回避しつつリードの変形を抑制することができるリードフレーム、半導体装置及びリードフレームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示するリードフレームは、一つの態様において、リードと、接続部と、めっき膜とを有する。リードは、上面と下面とを有し、上面の幅が下面の幅より大きい。接続部は、上面に設けられた、半導体素子との接続部である。めっき膜は、リードの表面を被覆する。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示するリードフレームの一つの態様によれば、ショート不良の発生を回避しつつリードの変形を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るリードフレームの集合体の具体例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るリードフレームの構造を示す上面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るリードフレームの構造を示す下面図である。
【
図5】
図5は、リードの長手方向に垂直な断面を示す図である。
【
図6】
図6は、めっき膜の表面の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、めっき膜の膜厚の具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、めっき膜の膜厚の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、めっき膜による被覆範囲の具体例を示す図である。
【
図10】
図10は、めっき膜による被覆範囲の具体例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るリードフレームの製造方法を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、DFRラミネート工程の具体例を示す図である。
【
図14】
図14は、露光及び現像工程の具体例を示す図である。
【
図17】
図17は、めっき膜形成工程の具体例を示す図である。
【
図18】
図18は、銅の粗化めっきを行うめっき装置の構成例を示す図である。
【
図19】
図19は、レジスト塗布工程の具体例を示す図である。
【
図20】
図20は、露光及び現像工程の具体例を示す図である。
【
図22】
図22は、レジスト剥離工程の具体例を示す図である。
【
図23】
図23は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図24】
図24は、半導体素子搭載工程の具体例を示す図である。
【
図25】
図25は、ワイヤボンディング接続工程の具体例を示す図である。
【
図29】
図29は、実施形態の変形例に係るリードフレームの断面図である。
【
図30】
図30は、
図29に示すリードフレームを用いて製造された半導体装置の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示するリードフレーム、半導体装置及びリードフレームの製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0011】
図1は、実施形態に係るリードフレーム100の集合体の具体例を示す図である。
図1に示すように、リードフレーム100は、枠体110によって囲まれる領域に複数のリードフレーム100が連結された集合体として製造される。
図1に示す例では、例えば銅又は銅合金の金属板を材料としてエッチング及びめっきなどが施されることにより、3行2列に連結した6個のリードフレーム100が製造されている。
【0012】
このように複数のリードフレーム100の集合体を製造することにより、リードフレーム100を効率的に製造することができ、コストの低減を図ることができる。集合体として製造された複数のリードフレーム100は、それぞれ個片化されて半導体素子などの電子部品を搭載するためのリードフレーム100が得られる。
【0013】
図2は、実施形態に係るリードフレーム100の構造を示す上面図であり、
図3は、実施形態に係るリードフレーム100の構造を示す下面図である。
図4は、
図1のIV-IV線における断面図である。
図2~
図4においては、集合体における1つのリードフレーム100を拡大して図示している。以下の説明では、リードフレーム100に半導体素子を搭載する際に半導体素子側に位置する面を「上面」と呼び、半導体素子とは反対側に位置する面を「下面」と呼ぶとともに、これに準じて上下方向を規定する。ただし、リードフレーム100は、例えば上下反転して製造及び使用されてもよく、任意の姿勢で製造及び使用されてよい。
【0014】
リードフレーム100は、枠体110、複数のリード120、ダイパッド130及び連結部140を有する。
【0015】
枠体110は、1つのリードフレーム100の外周を規定し、リード120を支持する。枠体110の上面と、リード120の上面120aと、ダイパッド130の上面130aとは同一の平面内に位置する。複数のリード120は、それぞれ枠体110からダイパッド130の方向へ延び、ダイパッド130は、連結部140によって枠体110に連結されている。なお、リードフレーム100を用いて半導体装置が形成される場合には、リードフレーム100が
図2及び
図3の破線において切断されることにより、リード120及び連結部140が枠体110から分離される。
【0016】
リード120は、枠体110からダイパッド130の方向へ延び、リードフレーム100に半導体素子などの電子部品が搭載された場合に、この電子部品と外部の部品とを電気的に接続する端子を形成する。リードフレーム100の半導体素子が搭載される上面側においては、リード120にめっき層125が形成されている。具体的には、リード120は、枠体110に接続される第1部分121、第1部分121よりも厚さが厚い第2部分122、及び第2部分122よりも厚さが薄い第3部分123を有し、第3部分123の先端上面にめっき層125が形成されている。めっき層125としては、銀、又はニッケル/パラジウム/金(ニッケル層、パラジウム層、金層をこの順に積層しためっき層)を用いることができる。リードフレーム100に半導体素子が搭載される場合には、リードフレーム100に搭載された半導体素子は、リード120の上面120aにおいて、ワイヤボンディングによってめっき層125に接続される。すなわち、リード120の上面120aは、半導体素子との接続面となり、めっき層125は、半導体素子との接続部となる。そして、リードフレーム100に搭載された半導体素子が封止樹脂によってモールドされて半導体装置が形成されると、リード120の第2部分122の下面が封止樹脂から露出し、半導体装置の端子を形成する。
【0017】
ダイパッド130は、リードフレーム100の中央に形成される板状の領域であり、例えば4つの連結部140によって枠体110に連結されている。ダイパッド130の上面130aには、半導体素子が搭載される。すなわち、ダイパッド130の上面130aは、半導体素子の搭載面となる。ダイパッド130の下面の外周には、段差面が形成されている。
【0018】
本実施形態では、リードフレーム100の表面に、
図4に示すように、めっき膜126が形成されている。めっき膜126は、枠体110、リード120、ダイパッド130及び連結部140(
図2及び
図3参照)を被覆している。めっき膜126の材料としては、例えば、銅又はニッケル等を用いることができる。
【0019】
ここで、
図5を参照して、リード120及びめっき膜126の形状をさらに具体的に説明する。
図5は、リード120の長手方向に垂直な断面を示す図である。
図5においては、
図4のV-V線における断面を示している。
【0020】
めっき膜126は、リード120の上面120a、下面120b及び側面120cを含む全ての表面を被覆している。めっき膜126において、リード120の上面120aを被覆する部分の膜厚と、リード120の下面120bを被覆する部分の膜厚とは、同一であり、例えば1~5μm程度である。また、めっき膜126において、リード120の側面120cを被覆する部分の膜厚は、例えば0.5~2.5μmである。ここで、めっき膜126において、上面120a及び下面120bを被覆する部分の膜厚より、側面120cを被覆する部分の膜厚を小さくしても良い。
【0021】
このように、本実施形態では、リード120の周囲がめっき膜126によって全体的に被覆されている。これにより、リード120の側面120cに補強用の突起を形成することなくリード120の強度を向上することができるとともに、隣り合うリード120間の距離を十分に確保することができる。結果として、隣り合うリード120間のショート不良の発生を回避しつつリード120の変形を抑制することができる。
【0022】
リード120は、リード120の長手方向に垂直な断面において、下面120bの幅よりも上面120aの幅が大きいテーパ形状を有しており、めっき膜126の上面120aを被覆する部分の幅が下面120bを被覆する部分の幅よりも大きくなっている。このように、リード120の上面120aが比較的に幅広のめっき膜126によって被覆されることにより、半導体素子との接続面であるリード120の上面120aの幅をめっき膜126の幅の分だけ実質的に拡大することができる。結果として、リード120の上面120aに形成されるめっき層125の表面積を増大させることができ、ワイヤボンディングによる半導体素子とめっき層125との接続信頼性を向上することができる。
【0023】
図6は、めっき膜126の表面の具体例を示す図である。めっき膜126は、例えば、銅の粗化めっきにより形成される。よって、
図6に示すように、めっき膜126の表面は、表面粗度が大きくなっている粗化面である。すなわち、めっき膜126の表面の表面粗度は、リード120の上面120a、下面120b及び側面120cを含む全ての表面の表面粗度よりも大きい。このため、リードフレーム100に搭載された半導体素子が封止樹脂によってモールドされる場合に、めっき膜126の粗化部分に封止樹脂が充填され、アンカー効果によってめっき膜126を介したリード120と封止樹脂との密着性を向上することができる。
【0024】
また、めっき膜126において、リード120の上面120aを被覆する部分の表面粗度は、リード120の下面120bを被覆する部分の表面粗度よりも大きい。このため、リードフレーム100に搭載された半導体素子が封止樹脂によってモールドされる場合に、リード120の下面120bと比較して封止樹脂との接触面積が大きいリード120の上面120aと封止樹脂との密着性を向上することができる。なお、めっき膜126において、リード120の上面120aを被覆する部分の表面粗度を、リード120の側面120cを被覆する部分の表面粗度よりも大きくしても良い。
【0025】
なお、めっき膜126において、リード120の上面120aを被覆する部分の膜厚と、リード120の下面120bを被覆する部分の膜厚とは必ずしも同一でなくてもよい。
図7及び
図8は、めっき膜126の膜厚の具体例を示す図である。例えば、
図7に示すように、めっき膜126において、リード120の上面120aを被覆する部分の膜厚よりもリード120の下面120bや側面120cを被覆する部分の膜厚が小さくてもよい。この場合、リード120の上面120aを被覆する部分の膜厚は、例えば1~5μm程度とすることができ、リード120の下面120bや側面120cを被覆する部分の膜厚は、例えば0.5~2.5μmとすることができる。また、例えば、
図8に示すように、めっき膜126において、リード120の下面120bや側面120cを被覆する部分の膜厚よりもリード120の上面120aを被覆する部分の膜厚が小さくてもよい。この場合、リード120の上面120aを被覆する部分の膜厚は、例えば0.5~2.5μmとすることができ、リード120の下面120bや側面120cを被覆する部分の膜厚は、例えば1~5μm程度とすることができる。リード120の表面を被覆するめっき膜126の膜厚を局所的に小さくすることにより、めっき膜126の膜厚を含むリード120の厚みの増大を抑制しつつ、リード120の強度を向上することができる。
【0026】
また、めっき膜126は、リード120の表面を部分的に被覆してもよい。
図9及び
図10は、めっき膜126による被覆範囲の具体例を示す図である。例えば、
図9に示すように、めっき膜126は、リード120の上面120aに形成されてリード120の上面120aのみを被覆してもよい。この場合、リード120の下面120bと側面120cはめっき膜126から露出する。また、例えば、
図10に示すように、めっき膜126は、リード120の下面120b及び側面120cに形成されてリード120の下面120b及び側面120cのみを被覆してもよい。この場合、リード120の上面120aはめっき膜126から露出する。リード120の表面がめっき膜126によって部分的に被覆されることにより、めっき膜126の膜厚を含むリード120の厚みの増大を抑制しつつ、リード120の強度を向上することができる。
【0027】
また、めっき膜126は、リード120の全ての表面に加えて、ダイパッド130の全ての表面を被覆している。すなわち、めっき膜126は、半導体素子の搭載面であるダイパッド130の上面130a、下面及び側面を含む全ての表面を被覆している。ダイパッド130の表面を被覆するめっき膜126の膜厚又は表面粗度は、リード120の表面を被覆するめっき膜126の膜厚又は表面粗度と同様である。ダイパッド130の周囲がめっき膜126によって全体的に被覆されることにより、ダイパッド130の強度を向上することができる。結果として、ダイパッド130の変形を抑制することができる。
【0028】
次に、上記のように構成されるリードフレーム100の製造方法について、
図11を参照しながら、具体的に例を挙げて説明する。
図11は、実施形態に係るリードフレーム100の製造方法を示すフローチャートである。以下に説明する工程は、例えば
図1に示したようなリードフレーム100の集合体に対して施されるが、以下では、1つのリードフレーム100に注目して各工程の具体例を説明する。
【0029】
まず、例えば
図12に示すように、リードフレーム100の基材となる金属板200が準備される(ステップS101)。
図12は、金属板200の構造の具体例を示す図である。金属板200の材料としては、例えば銅又は銅合金等の金属を使用することができる。金属板200の厚さは、例えば0.1~0.25mm程度とすることができる。
【0030】
そして、金属板200の表面にエッチングレジストであるドライフィルムレジスト(DFR:Dry Film Resist)がラミネートされる(ステップS102)。具体的には、例えば
図13に示すように、金属板200の上面及び下面に、DFR210がラミネートされる。
図13は、DFRラミネート工程の具体例を示す図である。
【0031】
DFR210がラミネートされると、露光及び現像が行われることにより(ステップS103)、所定の開口部を有するDFR210が形成される。具体的には、例えば
図14に示すように、金属板200の上面側及び下面側において、DFR210に対する露光及び現像が行われることにより、開口部211~213を有するDFR210が形成される。
図14は、露光及び現像工程の具体例を示す図である。金属板200の上面側において、貫通エッチング加工が施される部分に開口部211が形成される。また、金属板200の下面側において、貫通エッチング加工及びハーフエッチング加工が施される部分に開口部212が形成される。また、金属板200の下面側において、ハーフエッチング加工が施される部分に開口部213が形成される。
【0032】
開口部211~213を有するDFR210が金属板200の上面側及び下面側に形成されると、この金属板200が、エッチング液に浸漬されエッチングが行われる(ステップS104)。具体的には、例えば硫酸-過酸化水素や過硫酸塩などのエッチング液に金属板200が浸漬されることにより、DFR210の開口部211~213から露出している金属板200の表面が溶解し、リードフレーム100の形状に成形される。
【0033】
すなわち、例えば
図15に示すように、上面及び下面が開口部211及び開口部212から露出する領域においては、金属板200が上面及び下面から溶解し、リード120とダイパッド130とが分離する。また、下面のみが開口部212及び開口部213から露出する領域においては、金属板200が下面から溶解しハーフエッチングされることで、リード120における第1部分121及び第3部分123が形成される。
図15は、エッチング工程の具体例を示す図である。
【0034】
このように、エッチングにより、リード120及びダイパッド130が分離されると同時に、リード120における第1部分121及び第3部分123が形成される。また、リード120においては、第1部分121と第3部分123との間のエッチングが行われずに、第1部分121及び第3部分123よりも厚さが厚い第2部分122が残存する。
【0035】
エッチングが完了すると、例えばアミン系又は非アミン系の剥離液を用いてDFR210が剥離され(ステップS105)、リード120及びダイパッド130を有するリードフレーム100が得られる。すなわち、例えば
図16に示すように、リード120及びダイパッド130が分離しているリードフレーム100が得られる。
図16は、DFR剥離工程の具体例を示す図である。
【0036】
リードフレーム100が成形されると、銅の粗化めっきによってリードフレーム100の表面全体にめっき膜126が形成される(ステップS106)。すなわち、例えば
図17に示すように、銅の粗化めっきによって枠体110、リード120、ダイパッド130及び連結部140(
図2及び
図3参照)を被覆するめっき膜126が形成される。
図17は、めっき膜形成工程の具体例を示す図である。めっき膜126は、リード120の上面120a、下面120b及び側面120cを含む全ての表面を被覆するように形成される。このとき、銅の粗化めっきに用いられる硫酸銅めっき液の組成及び電解銅めっき条件を適宜調整することにより、リード120の上面120aと下面120bとで、異なる表面粗度又は膜厚のめっき膜126が形成されてもよい。
【0037】
具体的には、めっき膜126において、リード120の上面120aを被覆する部分の表面粗度は、リード120の下面120bを被覆する部分の表面粗度よりも大きくてもよい。この場合、例えば、リード120の上面120aを被覆する部分の表面粗度を表す表面積率Sratioは、例えば1.5~2.0程度とし、リード120の下面120bを被覆する部分の表面積率Sratioは、例えば1.1~1.5程度とすることができる。表面積率Sratioは、平面視での面積がS0である領域の実表面積がSである場合の面積S0に対する実表面積Sの比であり、「S/S0」で表される。表面積率Sratioが大きくなるほど、表面粗度が大きくなる。なお、リード120の下面120bを被覆する部分の表面積率Sratioを1.1未満に設定することにより、めっき膜126においてリード120の下面120bを被覆する部分の表面を平滑な面としてもよい。
【0038】
また、めっき膜126において、リード120の上面120aを被覆する部分の膜厚よりもリード120の下面120bを被覆する部分の膜厚が小さくてもよい。この場合、リード120の上面120aを被覆する部分の膜厚は、例えば1~5μm程度とすることができ、リード120の下面120bを被覆する部分の膜厚は、例えば0.5~2.5μmとすることができる。また、めっき膜126において、リード120の下面120bを被覆する部分の膜厚よりもリード120の上面120aを被覆する部分の膜厚が小さくてもよい。この場合、リード120の上面120aを被覆する部分の膜厚は、例えば0.5~2.5μmとすることができ、リード120の下面120bを被覆する部分の膜厚は、例えば1~5μm程度とすることができる。
【0039】
銅の粗化めっきに用いられる硫酸銅めっき液の組成は、例えば以下のようなものである。
硫酸銅: 200g/L
硫酸: 100g/L
塩素: 50ppm
ポリマー(抑制剤): 20mL/L
ブライトナー(促進剤): 2mL/L
レベラー: 10mL/L
【0040】
上記のような硫酸銅めっき液を用いた銅の粗化めっきが、例えば
図18に示すめっき装置を用いて、所定の電解銅めっき条件の下で行われる。
図18は、銅の粗化めっきを行うめっき装置の構成例を示す図である。
図18に示すめっき装置300は、めっき槽301、一対の電極303,304、極性反転電源305及び直流電源306を有する。
【0041】
めっき槽301は、硫酸銅めっき液307を貯留する。めっき槽301に貯留される硫酸銅めっき液307の組成は、例えば上述の通りである。成形されたリードフレーム100は、銅の粗化めっきを行う際に、めっき槽301内に設置される。
【0042】
電極303は、めっき槽301内において、リードフレーム100の一方の主面100aと対向して配置される。リードフレーム100の一方の主面100aは、リード120の上面120a及び下面120bのうちの一方の面側に位置する。電極304は、めっき槽301内において、リードフレーム100の他方の主面100bと対向して配置される。リードフレーム100の他方の主面100bは、リード120の上面120a及び下面120bのうちの他方の面側に位置する。
【0043】
極性反転電源305は、リードフレーム100と電極303とに接続されており、極性が周期的に反転するパルス電流をリードフレーム100及び電極303に供給する。
【0044】
直流電源306は、リードフレーム100と電極304とに接続されており、一定の電流をリードフレーム100及び電極304に供給する。
【0045】
上記のめっき装置300において用いられる電解銅めっき条件は、形成されるめっき膜126の表面粗度又は膜厚に応じて任意に調整され得る。例えば、極性反転電源305から供給されるパルス電流の大きさや、パルス電流の正側及び負側夫々の供給時間等が、形成されるめっき膜126の表面粗度又は膜厚に応じて任意に調整される。また、例えば、直流電源306から供給される電流の大きさが、形成されるめっき膜126の表面粗度又は膜厚に応じて任意に調整される。銅の粗化めっきに用いられる硫酸銅めっき液の組成及び電解銅めっき条件が調整されることにより、リード120の上面120aと下面120bとで、異なる表面粗度又は膜厚のめっき膜126が形成され得る。
【0046】
リードフレーム100の表面にめっき膜126が形成された後、リード120の上面120aにめっきを行うためのレジストが塗布される(ステップS107)。具体的には、例えば
図19に示すように、枠体110、リード120及びダイパッド130の表面全体にレジスト220が塗布される。レジスト220は、電着レジストの電着により形成しても良い。
図19は、レジスト塗布工程の具体例を示す図である。なお、レジスト220は、実際にはめっき膜126を介して枠体110、リード120及びダイパッド130の表面全体に塗布されるが、以下においては、便宜上、めっき膜126の説明が適宜省略される。
【0047】
レジスト220が塗布されると、露光及び現像が行われることにより(ステップS108)、所定の開口部を有するレジスト220が形成される。具体的には、例えば
図20に示すように、リードフレーム100の上面側において、レジスト220に対する露光及び現像が行われることにより、開口部221を有するレジスト220が形成される。
図20は、露光及び現像工程の具体例を示す図である。開口部221においては、半導体素子との接続面となるリード120の上面120aの一部(ワイヤボンディング部分)が露出する。
【0048】
リード120の上面120aの一部がレジスト220の開口部221から露出するリードフレーム100は、例えば銀めっき用のめっき液に浸漬されめっきが行われる(ステップS109)。具体的には、例えばシアン化銀とシアン化カリウムを主成分とするめっき液にリードフレーム100が浸漬され、電解めっきが行われることにより、リード120の上面120aにめっき層125が形成される。
【0049】
すなわち、例えば
図21に示すように、レジスト220の開口部221から露出するリード120の上面120aの一部にめっき液に含まれる銀が析出し、例えば厚さ0.1~10μmのめっき層125が形成される。
図21は、めっき工程の具体例を示す図である。
【0050】
めっき層125が形成されると、例えば剥離液を用いてレジスト220が剥離され(ステップS110)、リードフレーム100が完成する。すなわち、例えば
図22に示すように、リード120の上面120aにめっき層125が形成され、枠体110、リード120、ダイパッド130がめっき膜126によって被覆されたリードフレーム100が完成する。
図22は、レジスト剥離工程の具体例を示す図である。
【0051】
このように、リード120及びダイパッド130を分離するエッチングの後に、銅の粗化めっきにより、リード120の全ての表面を被覆するめっき膜126が形成される。このため、リード120の側面120cに補強用の突起を形成することなくリード120の強度を向上することができるとともに、隣り合うリード120間の距離を十分に確保することができる。結果として、隣り合うリード120間のショート不良の発生を回避しつつリード120の変形を抑制することができる。また、めっき膜126がリード120の全ての表面に加えてダイパッド130の全ての表面を被覆するため、ダイパッド130の強度が向上し、ダイパッド130の変形を抑制することもできる。
【0052】
次に、リードフレーム100に半導体素子を搭載して半導体装置を製造する工程について、
図23を参照しながら、具体的に例を挙げて説明する。
図23は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0053】
まず、リードフレーム100のダイパッド130に半導体素子が搭載される(ステップS121)。具体的には、例えば
図24に示すように、はんだ又はダイアタッチペーストなどの接合材230によってダイパッド130の上面130aに半導体素子240が接合される。
図24は、半導体素子搭載工程の具体例を示す図である。
【0054】
半導体素子240がダイパッド130に接合されると、半導体素子240とリード120がワイヤボンディング接続される(ステップS122)。すなわち、例えば
図25に示すように、半導体素子240の電極がワイヤ250によってリード120の上面120aにおけるめっき層125と電気的に接続される。
図25は、ワイヤボンディング接続工程の具体例を示す図である。
【0055】
そして、リードフレーム100に搭載された半導体素子240を封止樹脂により封止するモールドが行われる(ステップS123)。具体的には、半導体素子240を搭載したリードフレーム100が金型に収容され、流動化した封止樹脂が金型内に注入される。そして、封止樹脂が所定の温度に加熱されて硬化することにより、例えば
図26に示すように、半導体素子240の周囲の空間に封止樹脂260が充填され、リードフレーム100に搭載された半導体素子240が封止される。このとき、リード120の全ての表面を被覆するめっき膜126の表面が粗化面であるため、めっき膜126の粗化部分に封止樹脂260が充填され、アンカー効果によってめっき膜126を介したリード120と封止樹脂260との密着性を向上することができる。これにより、封止樹脂260からリード120が剥離する可能性を低減することができる。
図26は、モールド工程の具体例を示す図である。
【0056】
リードフレーム100に搭載された半導体素子240が封止樹脂260によって封止された段階においては、枠体110の下面と、リード120の第2部分122の下面と、ダイパッド130の下面とが封止樹脂260の下面から露出している。そこで、これらの露出面を被覆するためのめっきが行われる(ステップS124)。具体的には、例えば
図27に示すように、錫やはんだ等の電解めっきが行われることにより、封止樹脂260から露出している枠体110の下面、リード120の第2部分122の下面、及びダイパッド130の下面に外装めっき層270が形成される。
図27は、めっき工程の具体例を示す図である。
【0057】
封止樹脂260から露出しているリードフレーム100の露出面に外装めっき層270が形成されると、
図27に示す破線部分において、封止樹脂260が切断されるとともにリード120及び連結部140が枠体110から切断される(ステップS125)。これにより、リードフレーム100から枠体110が分離・除去され、例えば
図28に示すように、リード120、ダイパッド130、半導体素子240及び封止樹脂260を有する半導体装置が完成する。
図28は、半導体装置の構造を示す図である。
図28に示す半導体装置においては、リード120の第2部分122の下面が封止樹脂260の下面から露出し、外部に接続する端子となる。また、ダイパッド130の下面が封止樹脂260の下面から露出する。
【0058】
以上のように、実施形態に係るリードフレーム(一例として、リードフレーム100)は、リード(一例として、リード120)と、接続部(一例として、めっき層125)と、めっき膜(一例として、めっき膜126)とを有する。リードは、上面(一例として、上面120a)と下面(一例として、下面120b)とを有し、上面の幅が下面の幅より大きい。接続部は、上面に設けられた、半導体素子との接続部である。めっき膜は、リードの表面を被覆する。これにより、ショート不良の発生を回避しつつリードの変形を抑制することができる。
【0059】
(変形例)
上記実施形態に係るリードフレーム100では、ダイパッド130の上面130aに半導体素子が搭載される例を示したが、リード120の上面120aに半導体素子を搭載することが可能な場合には、ダイパッド130が省略されてもよい。すなわち、例えば
図29に示すように、変形例に係るリードフレーム100は、ダイパッド130を有さず、リード120の上面120aが半導体素子の搭載面となり且つ半導体素子との接続面となっている。
図29は、実施形態の変形例に係るリードフレーム100の断面図である。変形例に係るリードフレーム100においても、めっき膜126は、リード120の上面120a、下面120b及び側面120cを含む全ての表面を被覆している。
【0060】
図30は、
図29に示すリードフレーム100を用いて製造された半導体装置の構造を示す図である。
図30に示す半導体装置においては、半導体素子240が、リード120の上面120aにおいてフリップチップ接続される。すなわち、半導体素子240の電極が、はんだ245によってリード120の上面120aにおけるめっき層125と電気的に接続される。
【符号の説明】
【0061】
100 リードフレーム
110 枠体
120 リード
120a 上面
120b 下面
120c 側面
121 第1部分
122 第2部分
123 第3部分
130 ダイパッド
130a 上面
140 連結部
240 半導体素子
260 封止樹脂