(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025973
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】縫製データ作成装置及びプログラム並びにミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 19/10 20060101AFI20250214BHJP
D05B 19/08 20060101ALI20250214BHJP
D05C 5/02 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
D05B19/10
D05B19/08
D05C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131278
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】金剛 猛
【テーマコード(参考)】
3B150
4L044
【Fターム(参考)】
3B150AA15
3B150CB04
3B150CE23
3B150GF01
3B150GG04
3B150LA34
3B150LA67
3B150LB02
3B150LB03
3B150MA07
3B150MA08
3B150NA33
3B150NA62
3B150NB18
3B150NB19
3B150QA06
3B150QA07
3B150QA08
4L044AA20
4L044AB01
4L044AB04
4L044AB07
(57)【要約】
【課題】刺繍、ステッチなどの複数の針落ち点で構成される模様の縫製データの作成及び編集におけるユーザビリティを向上させること。
【解決手段】縫製データ作成装置30は、縫製データを構成する複数の針落ち点(模様要素)を表示するための描画領域を含む編集画面をタッチパネルディスプレイ12に表示させる表示制御部32と、針落ち点がユーザによって選択された場合に、選択された針落ち点を対象針落ち点として特定する針落ち点特定部33と、対象針落ち点が特定されている状態において、対象針落ち点の位置以外の編集画面に指示体が接触したことを検知するタッチ検知部35と、編集画面に接触している指示体の動きに連動して、描画領域における対象針落ち点の位置を移動させる針落ち点移動部36と、指示体の接触が検知されなくなった場合に、対象針落ち点の位置を確定させる針落ち点確定部37とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンに用いられ、模様要素を有する縫製データを作成する縫製データ作成装置であって、
前記模様要素を表示するための描画領域を含む編集画面をタッチパネルディスプレイに表示させる表示制御部と、
前記模様要素がユーザによって選択された場合に、選択された前記模様要素を対象模様要素として特定する模様要素特定部と、
前記対象模様要素が特定されている状態において、前記対象模様要素の位置以外の前記編集画面に指示体が接触したことを検知するタッチ検知部と、
前記編集画面に接触している前記指示体の動きに連動して、前記描画領域における前記対象模様要素の位置を移動させる模様要素移動部と、
前記指示体の接触が検知されなくなった場合に、前記対象模様要素の位置を確定させる模様要素確定部と
を備える縫製データ作成装置。
【請求項2】
前記縫製データは、複数の前記模様要素を含み、
前記表示制御部は、複数の前記模様要素及び各前記模様要素の縫製順序に関する情報を前記描画領域に表示させる請求項1に記載の縫製データ作成装置。
【請求項3】
前記編集画面は、前記描画領域に表示された各前記模様要素を選択するための選択領域を含み、
前記模様要素特定部は、前記選択領域においていずれか一つの模様要素がユーザによって選択された場合に、選択された前記模様要素を対象模様要素として特定し、
前記表示制御部は、前記描画領域における前記対象模様要素を他の模様要素とは異なる態様で表示させる請求項2に記載の縫製データ作成装置。
【請求項4】
前記選択領域には、各前記模様要素の縫製順序がリストとして表示される請求項3に記載の縫製データ作成装置。
【請求項5】
新規の模様要素を追加する入力モードと、既存の前記模様要素の位置を移動させる移動モードとを有し、前記選択領域においていずれか一つの模様要素が選択された場合に、移動モードを設定するモード設定部を備える請求項3に記載の縫製データ作成装置。
【請求項6】
前記編集画面は、前記縫製データの一部又は全部を表示するためのプレビュー領域を含み、前記プレビュー領域は、前記描画領域よりも小さい縮尺とされている請求項1に記載の縫製データ作成装置。
【請求項7】
前記模様要素は、針落ち点又は複数の針落ち点を縫製順序で繋げることによって形成されるオブジェクトである請求項1に記載の縫製データ作成装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の縫製データ作成装置を備えるミシン。
【請求項9】
コンピュータを請求項1から7のいずれかに記載の縫製データ作成装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製データ作成装置及びプログラム並びにミシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、模様を縫製するための縫製データをユーザの指示に従って生成したり、編集したりできる機能を備えるミシンが開示されている。具体的には、特許文献1には、複数の針落ち点を含む模様と、模様を調整するための8方向のカーソルボタン等をタッチパネルに表示し、ユーザがカーソルボタン等を操作することにより、針落ち点の指定及び位置調整等を行うことのできるミシンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のミシンにおいて、縫製データの編集画面に表示される各カーソルボタンは、ユーザが指で操作可能なように、ある程度の大きさをもって表示される。このため、編集中の模様イメージを表示する領域が狭くなってしまうという問題があった。
【0005】
また、上記の問題を解消するために、例えば、8方向のカーソルボタンを省略し、タッチパネルに表示された模様イメージに対して、ユーザが針落ち点を直接的に指でタッチし、所望の場所まで移動させることも考えられる。しかしながら、編集対象である針落ち点は、非常に小さな点としてタッチパネルに表示されていることから、針落ち点を指で押さえて移動させようとすると、針落ち点が指で隠れてしまい微調整ができないという問題が生じる。また、このような不都合を解消するために、移動させたい針落ち点の周辺を拡大表示させることも考えられるが、この場合には、模様の全体像を把握しづらくなり、どこまで移動させたらよいのか判断に迷うこととなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、刺繍、ステッチなどの複数の針落ち点で構成される模様の縫製データの作成及び編集におけるユーザビリティを向上させることのできる縫製データ作成装置及びプログラム並びにミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ミシンに用いられ、模様要素を有する縫製データを作成する縫製データ作成装置であって、前記模様要素を表示するための描画領域を含む編集画面をタッチパネルディスプレイに表示させる表示制御部と、前記模様要素がユーザによって選択された場合に、選択された前記模様要素を対象模様要素として特定する模様要素特定部と、前記対象模様要素が特定されている状態において、前記対象模様要素の位置以外の前記編集画面に指示体が接触したことを検知するタッチ検知部と、前記編集画面に接触している前記指示体の動きに連動して、前記描画領域における前記対象模様要素の位置を移動させる模様要素移動部と、前記指示体の接触が検知されなくなった場合に、前記対象模様要素の位置を確定させる模様要素確定部とを備える縫製データ作成装置である。
【0008】
本発明の一態様は、上記縫製データ作成装置を備えるミシンである。
【0009】
本発明の一態様は、コンピュータを上記縫製データ作成装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、刺繍などの縫製データの作成及び編集におけるユーザビリティを向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るミシンの外観図の一例を示した図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るミシンの電気的構成の一例を示したブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るミシンが備える各種機能のうち、縫製データ作成機能(縫製データ作成装置)について示した機能構成図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る編集画面の一例を示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るタッチ検知部、針落ち点移動部、及び針落ち点確定部によって行われる一連の処理について説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る縫製データ作成方法の処理手順の一例を示したフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る縫製データ作成方法の処理手順の一例を示したフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る縫製データ作成方法の処理手順の一例を示したフローチャートである。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る編集画面の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示の一実施形態に係る縫製データ作成装置及びプログラム並びにミシンについて、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態に係るミシン1の外観図の一例を示した図である。
図1において示される互いに直交する上下方向、前後方向、左右方向は、それぞれミシン1の本体における上下方向、前後方向、及び左右方向を定義するものである。また、上下方向を針落ち方向ともいう。また、前後方向を布送り方向、左右方向を振幅方向ともいう。
【0014】
ミシン1は、例えば、脚柱部3と、アーム部4と、ベッド部5とを備えている。脚柱部3は、ミシン1の右端部を構成し且つ上下方向に延在されている。アーム部4は、脚柱部3の上端部から左側へ延出されている。ベッド部5は、脚柱部3の下端部から左側へ延出されている。
【0015】
ベッド部5の上面には、例えば、針穴を有する針板6が設けられている。針板6の下側、すなわち、ベッド部5内には、送り歯を備える送り機構18(
図2参照)及び送り機構18を駆動する送りモータ16(
図2参照)が設けられている。
【0016】
アーム部4の左下部には、針棒8が設けられている。針棒8の下端部には縫針10が着脱可能に装着される。アーム部4の内部には、針棒8を上下方向に往復駆動させるためのミシンモータ14(
図2参照)、針棒8を左右方向(振幅方向)に移動させるための振幅モータ15(
図2参照)が設けられている。
アーム部4の前面には、タッチパネルディスプレイ12が設けられている。タッチパネルディスプレイ12は、例えば、ユーザがミシン1に対して操作指示を与えるための入力手段及びユーザに対して情報を提供するための表示手段としての機能を実現する。すなわち、タッチパネルディスプレイ12は、ユーザインターフェースとしての機能を実現する。
【0017】
次に、本発明の一実施形態に係るミシン1の電気的構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るミシン1の電気的構成の一例を示したブロック図である。
図2に示すように、ミシン1は、例えば、処理回路(circuitry)20を備えている。処理回路20は、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)21、主記憶装置(Main Memory)22、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)23等を備えている。
主記憶装置22は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPU21の実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
【0018】
二次記憶装置23は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置23の一例として、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、SSD(Solid State Drive)等の半導体メモリ等が挙げられる。
二次記憶装置23には、例えば、通常縫い、アップリケ縫い、刺繍縫い、フリーモーション等の複数の縫製モードの各々を実現させるための制御プログラムが格納されている。また、二次記憶装置23には、各種縫製モードを実現するために参照されるデータ、例えば、模様の縫製を行うための複数の縫製データ等が格納されている。また、二次記憶装置23には、縫製データの新規作成及び縫製データの編集を行うための縫製データ作成プログラムが格納されている。
【0019】
また、処理回路20は、外部インターフェース13を介してミシン1を構成する各駆動部、タッチパネルディスプレイ12などと接続されている。例えば、外部インターフェース13には、タッチパネルディスプレイ12、針棒8を上下方向に往復移動させるミシンモータ14、針棒8を左右方向(振幅方向)に移動させるための振幅モータ15、及び布等の被縫製物を前方向に送る送り機構18を駆動する送りモータ16が接続されている。
【0020】
図3は、本実施形態に係るミシン1が備える各種機能のうち、縫製データ作成機能(縫製データ作成装置)について示した機能構成図である。なお、ミシン1は、後述する縫製データ作成機能の他、上述したミシンモータ等の各種モータを制御することにより、様々な縫製を実現するためのミシン制御機能などを備えている。なお、各種縫製を実現するための手法については、公知の技術を適宜採用すればよいため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0021】
縫製データ作成装置30が備える後述する各部の機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置23に記憶されており、このプログラムをCPU21が主記憶装置22に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置23に予めインストールしておく形態や、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。なお、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体の具体例は、上述した通りである。
【0022】
図3に示すように、縫製データ作成装置30は、記憶部31、表示制御部32、針落ち点特定部(模様要素特定部)33、モード設定部34、タッチ検知部35、針落ち点移動部(模様要素移動部)36、針落ち点確定部(模様要素確定部)37等を備えている。
【0023】
記憶部31には、複数の縫製データ、縫製データを作成及び変更するために必要となる各種データが格納されている。縫製データは、例えば、複数の模様要素を含んでいる。模様要素とは、例えば、針落ち点、複数の針落ち点を縫製順序で繋げることによって形成されるオブジェクト(模様)等をいう。本実施形態において、模様とは、刺繍、ステッチ、ジグザグ縫い、文字縫いなどを含む概念である。すなわち、刺繍縫いだけでなく、通常縫いでも縫製できる模様も含まれる。
【0024】
縫製データは、複数の針落ち点レコードを有している。針落ち点レコードは、各針落ち点の位置(座標)と縫製順序とを関連付けた情報である。また、記憶部31は、縫製データの作成、編集の際に針落ち点レコードなどを一時的に保存するための記憶領域としても使用される。
【0025】
表示制御部32は、タッチパネルディスプレイ12の表示を制御する。例えば、表示制御部32は、編集画面50をタッチパネルディスプレイ12に表示させる。また、タッチパネルディスプレイ12において行われるユーザの入力操作等に従って、タッチパネルディスプレイ12の表示を制御する。
【0026】
図4は、編集画面50の一例を示した図である。
図4に示すように、編集画面50は、針落ち点(模様要素)を表示するための描画領域51を有している。描画領域51には、縫製データを構成する複数の針落ち点が描画されている。
図4に例示した描画領域51では、縦軸を送り方向(前後方向)、横軸を振幅方向(左右方向)とする直交座標系に複数の針落ち点が描画されている。横軸はミシン1における絶対位置を示し、縦軸は、ミシン1の送り歯による送り量に相当する相対的なパラメータを示している。
また、描画領域51には、各針落ち点の縫製順序に関する情報が表示されている。
図4に示した描画領域51において、針落ち点の近傍に示された数字は、縫製順序を示している。
【0027】
編集画面50は、描画領域51に表示された各針落ち点を選択するための選択領域52を有している。選択領域52には、描画領域51に表示された各針落ち点の縫製順序がリストとして表示される。例えば、
図4に示した編集画面50を例に挙げて説明すると、選択領域52には、縫製順序1~8が表示されており、これらの縫製順序1~8は、描画領域51に表示されている針落ち点とそれぞれ対応付けられている。
図4では、7番目の針落ち点が選択されている場合が示されている。
【0028】
編集画面50は、縫製データの一部又は全部を表示するためのプレビュー領域53を有している。ここで、プレビュー領域53は、描画領域51よりも小さい縮尺とされている。例えば、描画領域51には、ユーザが縫製データを構成する各針落ち点の位置(座標)を認識できる程度に拡大して表示する必要がある。この場合、単純な模様であれば、描画領域51の描画から模様の全体イメージを把握することは可能である。しかしながら、複雑な模様や大きな模様の場合、描画領域51の表示から模様全体のイメージを把握することは難しくなる。このような場合であっても、編集画面50に、模様全体のイメージを縮小して表示するプレビュー領域53を設けることにより、ユーザは模様全体を俯瞰できることから、模様全体をイメージしやすく、また、模様の編集作業も容易に行うことが可能となる。
【0029】
編集画面50において、ユーザによって各針落ち点の調整が行われている場合には、この調整に伴ってプレビュー領域53における対応する針落ち点の位置を反映させることにより、ユーザは全体の模様の全体イメージをつかみながら、描画領域において針落ち点の細かい調整を行うことが可能となる。
更に、編集画面50は、プレビュー領域において、アニメーション表示を行う機能を有していてもよい。例えば、プレビュー領域には、アニメーションの再生及び停止を操作するための再生・停止ボタン57が設けられている。再生ボタンを押下することで、編集中の縫製データに基づく縫製の様子をプレビュー領域にアニメーションで表示させることができる。また、停止ボタンは、アニメーションを停止させるためのボタンである。
【0030】
また、編集画面50には、モードを切り替えるための切替ボタン54が設けられている。例えば、縫製データ作成装置30は、入力モード、移動モードを含む複数のモードを有している。入力モードは、新規の針落ち点を追加するモードである。また、移動モードは、縫製データに登録されている針落ち点の位置を移動させるモードである。切替ボタン54は、ユーザがこれらのモードの切り替えを指示するためのボタンである。例えば、切替ボタン54が押下されることにより、移動モードから入力モードに切り替えることができる。
【0031】
また、編集画面50には、編集作業を効率的に行うための機能ボタン55が設けられている。機能ボタン55は、削除ボタン、挿入ボタン、コピーボタン、ペーストボタン、アンドゥボタン、リドゥボタンなどを備えている。削除ボタンは、ユーザが選択した針落ち点を削除するためのボタンである。例えば、いずれかの針落ち点が選択されている状態で削除ボタンが押下されると、選択された針落ち点が削除される。また、針落ち点の削除に伴い、それ以降の針落ち点の縫製順序が繰り上げられることとなる。
【0032】
また、コピーボタン、ペーストボタンは、選択された針落ち点と同じ位置情報(座標値)を持つ針落ち点を追加するためのボタンである。
アンドゥボタンは、直前の編集作業を取り消して、元の状態に戻すためのボタンであり、連続的に押下されることで、連続して前の状態に戻すことができるものである。また、リドゥボタンは、アンドゥボタンを押下することで取りやめた編集作業を元の状態に戻すためのボタンである。
【0033】
また、編集画面50には、縫い実行ボタン56が設けられている。縫製データの編集作業が完了したときに、縫い実行ボタン56が押下されることにより、ミシン1において解釈されるデータ形式に縫製データが変換され、記憶部31に格納される。
【0034】
図3に戻り、針落ち点特定部33は、上述した編集画面50において、いずれか一つの針落ち点がユーザによって選択された場合に、選択された針落ち点を対象針落ち点(対象模様要素)として特定する。例えば、針落ち点特定部33は、選択領域52においていずれか一つの針落ち点がユーザによって選択された場合に、選択された針落ち点を対象針落ち点として特定する。なお、この例に限れず、描画領域51においていずれか一つの針落ち点がタッチされた場合に、タッチされた針落ち点を対象針落ち点として特定することも可能である。
表示制御部32は、針落ち点特定部33によって対象針落ち点が特定された場合に、描画領域51における対象針落ち点を他の針落ち点とは異なる態様で表示させることとしてもよい。これにより、どの針落ち点を編集しようとしているのかをユーザに用意に把握させることが可能となる。異なる態様の一例として、色を変える、点滅させる、サイズを変える等が挙げられる。
【0035】
モード設定部34は、入力モードと移動モードとの間でモードを切り替えて設定する。例えば、モード設定部34は、例えば、選択領域52において、いずれか一つの針落ち点がユーザによって選択された場合に、移動モードを設定する。また、モード設定部34は、切替ボタン54がユーザによって押下された場合に、入力モードを設定する。
【0036】
タッチ検知部35は、対象針落ち点が特定されている状態において、対象針落ち点の位置以外の編集画面50に指示体が接触したことを検知する。指示体の一例として、例えば、ユーザの指、タッチペンなどが挙げられる。ここで、タッチ検知部35は、対象針落ち点を基点として設定される対象針落ち点の近くである操作領域内であって、対象針落ち点の位置以外に指示体が接触した場合に、指示体の接触を検知することとしてもよい。これにより、対象針落ち点の近くでタッチ操作が行われた場合に限って、対象針落ち点の移動操作を許可することが可能となる。
針落ち点移動部36は、編集画面50(例えば、描画領域51)に接触している指示体の動きに連動して、描画領域51における対象針落ち点の位置を移動させる。
針落ち点確定部37は、指示体の接触が検知されなくなった場合に、対象針落ち点の位置を確定させる。
【0037】
次に、上述したタッチ検知部35、針落ち点移動部36、及び針落ち点確定部37によって行われる一連の処理について、
図5を参照して説明する。
例えば、
図5に示すように、針落ち点Ta,Tb,Tcのうち、針落ち点Tcが対象針落ち点として特定されている状態において、ユーザが指で座標P0にタッチ(接触)し、軌跡Sのように指を動かして座標P3まで移動させて、指を離した場合を想定する。
【0038】
この場合、タッチ検知部35において、座標P0における指の接触が検知される。また、タッチ検知部35は、指の接触が検知できなくなるまでタッチ位置の座標を検出する。タッチ検知部35は、例えば、タッチパネルディスプレイ12が備えるタッチセンサなどの信号に基づいて座標を検出する。
【0039】
針落ち点移動部36は、タッチ検知部35によって繰り返し検出される指の座標と、最初のタッチ位置の座標P0との位置関係に基づいて所定の時間間隔で座標P0からのベクトルを演算する。針落ち点移動部36は、例えば、タッチ検知部35によって最初の指の接触が検知された座標P0を基点とし、座標P0からの距離と方向で規定されるベクトル(例えば、V1,V2,V3等)を所定の時間間隔で検出する。そして、針落ち点移動部36は、検出したベクトル(V1,V2,V3等)を対象針落ち点Tcの座標T0に加算することで、ユーザの指の移動に連動して、対応針落ち点Tcを随時移動させる。
そして、ユーザの指が座標P3で離れると、針落ち点確定部37は、指が離れたときの対応針落ち点の座標T3を確定する。これにより、対象針落ち点Tcは、ユーザの指の動きと同様の軌跡を描いて座標T0から座標T1,T2を経由して座標T3に移動し、座標T3において位置が確定されることとなる。
【0040】
次に、本実施形態に係る縫製データ作成方法について図面を参照して説明する。
図6乃至
図8は、本実施形態に係る縫製データ作成方法の処理手順の一例を示したフローチャートである。以下に説明する一連の処理は、一例として、プログラム(例えば、縫製データ生成プログラム)の形式で二次記憶装置23に記憶されており、このプログラムをCPU21が主記憶装置22に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、以下の処理が実行される。
本実施形態に係る縫製データ作成処理は、例えば、ミシン1が備える各種機能の一つとして取り扱われる。例えば、タッチパネルディスプレイ12に表示される各種メニューの中から「ステッチ作成機能」などのメニューをユーザが選択することにより、以下の処理が縫製データ作成装置30によって実行される。
【0041】
まず、タッチパネルディスプレイ12に編集画面50を表示させる(SA1)。この編集画面50は、デフォルトにおいて入力モードに設定されている。この時点では、針落ち点は1つも設定されていないので、描画領域51、選択領域52、及びプレビュー領域53には、何も表示されていない状態である。
【0042】
続いて、選択領域52において、いずれかの針落ち点が選択されたか否かを判定する(SA2)。この時点では、上述したように、選択領域52には、針落ち点が登録されていない。そのため、NOと判定し、描画領域51にタッチが検知されたか否かを判定する(SA3)。この結果、描画領域51にタッチが検知されない場合には(SA3:NO)、ステップSA2に戻り、上述した処理を繰り返し行う。
【0043】
一方、描画領域51にタッチが検知された場合には(SA3:YES)、タッチが検知された座標と縫製順序とを関連付けた針落ち点レコードを生成し、記憶部31に記憶する(SA4)。続いて、記憶した針落ち点レコードに基づいて、描画領域51に針落ち点を描画し(SA5)、選択領域52に針落ち点の縫製順序(リスト)を追加し(SA6)、プレビュー領域に当該針落ち点を描画し(SA7)、ステップSA2に戻る。
【0044】
これにより、例えば、入力モードにおいて、ユーザが描画領域51において所望の位置を次々とタッチすることにより、描画領域51においてタッチした位置に針落ち点が順次描画されるとともに、針落ち点にそれぞれ対応する縫製順序が選択領域52に表示される。また、プレビュー領域53にも各針落ち点が次々と表示されることとなる。また、記憶部31には、各針落ち点の針落ち点レコードが生成されて格納される。
【0045】
このようにして少なくとも1つの針落ち点が描画領域51に表示されている状態で、ユーザによって選択領域52に表示されている縫製順序が選択されると、ステップSA2において「YES」と判定し、
図7のステップSA8に移行する。
ステップSA8では、移動モードに設定し(SA8)、続いて、選択された縫製順序に対応する針落ち点を対象針落ち点として特定し(SA9)、描画領域51において、対象針落ち点を他の針落ち点と異なる態様(例えば、異なる色)で表示することにより強調表示する(SA10)。
【0046】
続いて、対象針落ち点の座標T0を記憶部31に格納されている針落ち点レコードから取得し、一時的に記憶する(SA11)。
次に、編集画面50でタッチを検知したか否かを判定する(SA12)。この結果、タッチが検知されない場合には(SA12:NO)、タッチが検知されるまで待機する。タッチが検知された場合には(SA12:YES)、最初のタッチの座標P0を記憶し(SA13)、タッチの移動に連動した対象針落ち点の移動処理を行う(SA14)。この移動処理では、ステップSA11において一時記憶された対象針落ち点の座標T0が用いられる。なお、移動処理については、
図5を用いて上述した通りであるからここでの詳細な説明は省略する。
【0047】
次に、タッチが継続しているか否かを判定する(SA15)。タッチが継続している場合には(SA15:YES)、SA14に戻り移動処理を継続して行う。一方、ユーザが指を離すことにより、タッチが検知されなくなった場合には(SA15:NO)、記憶部31に記憶されている対象針落ち点の針落ち点レコードにおける座標T0を現在の座標Tnに更新することによって、針落ち点レコードを更新する(SA16)。続いて、対象針落ち点の特定を解除することにより、描画領域51における強調表示を元の状態に戻すとともに、更新後の針落ち点レコードに基づいてプレビュー領域の表示を更新する(SA17)。
【0048】
次に、選択領域52において、いずれかの針落ち点が再度選択されたか否かを判定する(
図8のSA18)。この結果、針落ち点が選択された場合には(SA18:YES)、
図7のステップSA9に戻り、以降の処理を繰り返し行う。一方、針落ち点が選択されていない場合には(SA18:NO)、切替ボタン54が押下されたか否かを判定する(SA19)。この結果、切替ボタン54が押下された場合には(SA19:YES)、入力モードを設定し(SA20)、
図6のステップSA2に戻り、以降の処理を繰り返し行う。また、切替ボタン54が押下されていない場合には(SA19:NO)、縫い実行ボタン56が押下されたか否かを判定する(SA21)。この結果、縫い実行ボタン56が押下されていない場合には(SA21:NO)、
図8のステップSA9に戻り、以降の処理を繰り返し行う。一方、縫い実行ボタン56が押下されている場合には(SA21:YES)、記憶部31に格納されている複数の針落ち点レコードからなる縫製データを生成し、生成した縫製データをミシン1が解釈できるフォーマットに変換して記憶部31に格納し(SA22)、本処理を終了する。
【0049】
上述の縫製データ作成処理が実行されることにより、例えば、入力モードにおいて、ユーザが描画領域51をタッチすることにより、タッチした位置に針落ち点を設定することが可能となる。そして、ユーザが作成したい模様のイメージに沿って描画領域51を次々とタッチすることで、描画領域51には、複数の針落ち点が描画され、各針落ち点に対応する縫製順序が選択領域52に表示される。なお、各針落ち点については、移動モードで詳細な位置決めをすることが可能なため、おおよその位置をタッチすれば足りる。
【0050】
また、ユーザは、いずれかの針落ち点の位置を調整したい場合には、所望する針落ち点に対応する縫製番号を選択領域52において選択する。これにより、ユーザによって選択された対象針落ち点が描画領域51において強調表示される。ユーザは、描画領域51の任意の位置をタッチし、換言すると、描画領域51において対象針落ち点に重ならない位置をタッチし、そのまま指を動かすことにより、対象針落ち点を所望の位置に移動させ、指を離す。これにより、対象針落ち点の座標を容易に調整することが可能となる。移動後の対象針落ち点の座標は読み取られ、当該針落ち点の針落ち点レコードの座標が更新される。
そして、ユーザは、入力モードにおける針落ち点の入力、移動モードにおける針落ち点の移動などを行うことにより、所望の模様を作成すると、縫い実行ボタン56を押下する。これにより、作成した各針落ち点のレコードに基づいて縫製データが作成され、記憶部31に格納されることとなる。
【0051】
なお、上述の説明では、編集画面50においてユーザが最初から縫製データを作成する場合について説明したが、これに限られない。例えば、記憶部31に予め格納されている所望の模様の縫製データを読み出し、読み出した縫製データの針落ち点を編集画面50において編集することにより、新たな縫製データを作成したり、予め格納されている縫製データを更新したりすることも可能である。
【0052】
以上説明してきたように、本実施形態に係る縫製データ作成装置30及びプログラム並びにミシン1によれば、縫製データの複数の針落ち点を座標上に描画するとともに、各針落ち点の縫製順序に関する情報を表示するための描画領域を含む編集画面50をタッチパネルディスプレイ12に表示させる表示制御部32と、いずれか一つの針落ち点がユーザによって選択された場合に、選択された針落ち点を対象針落ち点として特定する針落ち点特定部33と、対象針落ち点が特定されている状態において、描画領域51に指が接触したことを検知するタッチ検知部35と、指の動きに連動して対象針落ち点を移動させる針落ち点移動部36と、指の接触が検知されなくなった場合に、現在の対象針落ち点を確定させる針落ち点確定部37とを備えている。
【0053】
これにより、ユーザは描画領域の任意の位置を指でタッチして移動させることで、対象針落ち点を所望の位置に移動させることが可能となる。これにより、従来のように、編集画面に8方向のカーソルボタンを表示する必要がなくなり、ユーザが編集を行う描画領域51を広く設定することが可能となる。これにより、編集画面全体を有効に用いることが可能となる。更に、ユーザは描画領域の任意の位置をタッチし、タッチした状態を維持しながら指を移動させることにより、対象針落ち点を所望の位置まで移動させることができる。これにより、対象針落ち点が指に隠れて見えないといった不都合も解消することが可能となる。以上のことにより、縫製データの作成及び編集におけるユーザビリティを向上させることができる。
【0054】
更に、編集画面50には、針落ち点を縫製順序に沿ってつなぎ合わせた縫製データを描画するプレビュー領域53が設けられている。これにより、ユーザはプレビュー領域53に表示されたプレビューを確認することにより、模様の全体イメージを容易に把握することが可能となる。
【0055】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記実施形態で説明した方法の手順も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0056】
例えば、上記実施形態では、縫製データ作成装置(縫製データ作成機能)30がミシン1に搭載されている場合について説明したが、これに限られない。例えば、縫製データ作成装置30は、アプリケーションプログラムの形でユーザに提供されることとしてもよい。例えば、ユーザが有する情報処理装置(例えば、ノートPC、ディスクトップ型PC、タブレット端末、スマートフォン等)にアプリケーションプログラムをインストールすることにより、縫製データの作成や編集を行えるようにしてもよい。アプリケーションプログラムは、例えば、ネットワークを介してダウンロード可能に提供されてもよいし、コンピュータ読み込み可能な記録媒体に記録された状態で提供されてもよい。
また、情報処理装置において作成された縫製データは、ネットワークを介してミシン1に送信されることとしてもよいし、ミシン1がアクセス可能なネットワーク上のサーバ等に格納されることとしてもよい。サーバ上に格納された場合には、ミシン1は、所定のタイミングでサーバにアクセスし、サーバから縫製データをダウンロードして用いることとしてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、縫製データを構成する各針落ち点(模様要素)を編集画面50で編集する場合について説明したが、編集可能な単位はこれに限られない。例えば、
図9に示すように、複数の針落ち点を縫製順序で繋げることによって形成されるオブジェクト単位での選択を可能とし、描画領域51において、対象オブジェクト(対象模様要素)を同様の手法によって所望の位置に移動するような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 :ミシン
12 :タッチパネルディスプレイ
13 :外部インターフェース
20 :処理回路
21 :CPU
22 :主記憶装置
23 :二次記憶装置
30 :縫製データ作成装置
31 :記憶部
32 :表示制御部
33 :針落ち点特定部(模様要素特定部)
34 :モード設定部
35 :タッチ検知部
36 :針落ち点移動部(模様要素移動部)
37 :針落ち点確定部(模様要素確定部)
50 :編集画面
51 :描画領域
52 :選択領域
53 :プレビュー領域
54 :切替ボタン
55 :機能ボタン
56 :縫い実行ボタン