(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025985
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】粉末材料及び粉末材料ペースト
(51)【国際特許分類】
C03C 3/066 20060101AFI20250214BHJP
C03C 12/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
C03C3/066
C03C12/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131293
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北村 嘉朗
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA10
4G062BB01
4G062CC10
4G062DA03
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4G062NN29
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4G062PP14
(57)【要約】
【課題】耐酸性に優れ、低温で焼成でき、かつ不活性雰囲気中で焼成しても金属成分が析出し難い粉末材料を提供する。
【解決手段】ガラス組成として、モル%で、ZnO 20~60%、B2O3 10~40%、SiO2 5~30%、V2O5 0.1~13%、Al2O3 0~4%、Li2O+Na2O+K2O 0~5%、MgO 0~5%、CaO 0~13%、Bi2O3 0~4%、Fe2O3 0~1%を含有し、PbOを実質的に含有しないことを特徴とする粉末材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成として、モル%で、ZnO 20~60%、B2O3 10~40%、SiO2 5~30%、V2O5 0.1~13%、Al2O3 0~4%、Li2O+Na2O+K2O 0~5%、MgO 0~5%、CaO 0~13%、Bi2O3 0~4%、Fe2O3 0~1%を含有し、PbOを実質的に含有しないことを特徴とする粉末材料。
【請求項2】
軟化点が640℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の粉末材料。
【請求項3】
線熱膨張係数が50×10-7/℃~80×10-7/℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末材料。
【請求項4】
オーバーコート層の形成に用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末材料。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の粉末材料とビークルとを含有することを特徴とする粉末材料ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末材料及び粉末材料ペーストに関し、例えば、電子回路等にオーバーコート層を形成するための粉末材料及び粉末材料ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
オーバーコート層は、ソーダライムガラス基板、アルミナ基板等の基板上に形成された抵抗体等を保護、絶縁するために形成される。従来から、オーバーコート層の形成には、粉末材料ペーストが用いられている。この粉末材料ペーストは、一般的に、ガラス粉末とビークルの混合物であり、必要に応じて、セラミック粉末が添加される場合がある。
【0003】
オーバーコート層は、抵抗体等を形成した基板上に塗布した粉末材料ペーストを焼成することにより形成される。ここで、焼成温度は、抵抗体等と粉末材料の反応により、抵抗体等の特性が劣化する事態を防止するために、650℃以下に制限される。このため、粉末材料(粉末材料ペースト)には、650℃以下の温度で焼成可能であることが要求される。また、粉末材料には、焼成後に、基板に反りを発生させず、基板から容易に剥離しないことも要求される。
【0004】
オーバーコート層が形成された電子回路には、防食性、光学特性、機械的特性、電気的特性等の特性を付与するために、メッキ処理が施される場合がある。このメッキ処理では、オーバーコート層がメッキ溶液に浸漬される。メッキ溶液は、通常、酸性溶液である。このため、メッキ処理が施される場合、オーバーコート層には、耐酸性が要求される。すなわち粉末材料には、耐酸性が要求される。なお、抵抗体の抵抗値を一定の範囲内に調整するために、Nd:YAGやNd:YVO4等の近赤外レーザー(波長:1064nm)をオーバーコート層の上部より照射することによりオーバーコート層と抵抗体の一部をトリミングする必要がある。
【0005】
上記の要求特性を満たす粉末材料として、従来まで、PbO-B2O3-SiO2系ガラスが使用されてきた(特許文献1参照)。
【0006】
近年、環境保護の観点から、環境負荷物質の削減、例えばPbOの削減が推進されており、PbO-B2O3-SiO2系ガラスに代わって、各種無鉛ガラスが提案されるに到っている。例えば、特許文献2~4には、Bi2O3-B2O3-ZnO系ガラスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58-64245号公報
【特許文献2】特開2009-221027号公報
【特許文献3】特開2007-63105号公報
【特許文献4】特許第4598008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、抵抗体の一部にCu等の酸化しやすい材料を用いる場合、粉末材料ペーストの焼成は窒素、アルゴンまたはヘリウム等の不活性雰囲気中で行われる。
【0009】
しかしながら、特許文献1~4に記載のガラスを不活性雰囲気中で焼成すると、金属鉛又は金属ビスマスが析出し絶縁性等の特性を維持し難いという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、耐酸性に優れ、低温で焼成でき、かつ不活性雰囲気中で焼成しても金属成分が析出し難い粉末材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、種々の実験を行った結果、特定の組成を有するZnO-B2O3-SiO2-V2O5系ガラス粉末により上記技術課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明のガラス粉末は、ガラス組成として、モル%で、ZnO 20~60%、B2O3 10~40%、SiO2 5~30%、V2O5 0.1~13%、Al2O3 0~4%、Li2O+Na2O+K2O 0~5%、MgO 0~5%、CaO 0~13%、Bi2O3 0~4%、Fe2O3 0~1%を含有し、PbOを実質的に含有しないことを特徴とする。ここで、「Li2O+Na2O+K2O」は、Li2O、Na2O及びK2Oの合量である。「実質的に含有しない」とは、ガラス成分として該当成分を意図的に添加しないことを意味し、不可避的に混入する不純物まで完全に排除することを意味するものではない。具体的には、不純物を含めた該当成分の含有量が0.1質量%未満であることを意味する。
【0012】
本発明の粉末材料は、軟化点が640℃以下であることが好ましい。ここで、「軟化点」は、マクロ型示差熱分析計(DTA)で測定した第四の変曲点の値を指す。
【0013】
本発明の粉末材料は、線熱膨張係数が50×10-7/℃~80×10-7/℃であることが好ましい。ここで、「線熱膨張係数」は、熱機械分析装置(TMA)により30~300℃の温度範囲で測定した値である。
【0014】
本発明の粉末材料は、オーバーコート層の形成に用いることが好ましい。
【0015】
本発明の粉末材料ペーストは、上記の粉末材料とビークルとを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐酸性に優れ、低温で焼成でき、かつ不活性雰囲気中で焼成しても金属成分が析出し難い粉末材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の粉末材料は、ガラス組成として、モル%で、ZnO 20~60%、B2O3 10~40%、SiO2 5~30%、V2O5 0.1~13%、Al2O3 0~4%、Li2O+Na2O+K2O 0~5%、MgO 0~5%、CaO 0~13%、Bi2O3 0~4%、Fe2O3 0~1%を含有し、PbOを実質的に含有しないことを特徴とする。上記のように各成分の含有範囲を規制した理由を以下に説明する。なお、各成分の含有範囲の説明において、%表示は、モル%であることを意味する。
【0018】
ZnOは、軟化点と線熱膨張係数を低下させる成分である。ZnOの含有量は、20~60%であり、好ましくは35~55%、より好ましくは45~52%である。ZnOの含有量が少なくなると、軟化点が上昇して、650℃以下の温度で焼成し難くなる。また、線熱膨張係数が上昇して、オーバーコート層と抵抗体との線熱膨張係数差に起因する応力が大きくなり、オーバーコート層に割れが生じ易くなる。一方、ZnOの含有量が多くなると、耐酸性が低下し易くなる。
【0019】
B2O3は、ガラス骨格を形成し、更にガラス化範囲を広げる成分である。B2O3の含有量は、10~40%であり、好ましくは15~35%、より好ましくは18~30%である。B2O3の含有量が少なくなると、熱的安定性が低下し易くなる。一方、B2O3の含有量が多くなると、耐酸性が低下しやすくなる。
【0020】
SiO2は、ガラス骨格を形成する成分であると共に、耐酸性を高める成分である。SiO2の含有量は、5~30%であり、好ましくは7~25%、より好ましくは10~22%である。SiO2の含有量が少なくなると、耐酸性が低下し易くなる。一方、SiO2の含有量が多くなると、軟化点が上昇して、650℃以下の温度で焼成し難くなる。
【0021】
V2O5は、耐酸性を高める成分である。V2O5の含有量は、0.1~13%であり、好ましくは2~11%、より好ましくは3~9%である。V2O5の含有量が少なくなると、耐酸性が低下し易くなる。一方、V2O5の含有量が多くなると、熱的安定性が低下し易くなる。
【0022】
Al2O3は、耐酸性を高める成分であるが、軟化点を著しく高める成分である。Al2O3の含有量は0~4%であり、好ましくは0.1~3%、より好ましくは0.5~2%である。Al2O3の含有量が少なくなると、耐酸性が低下し易くなる。一方、Al2O3の含有量が多くなると、軟化点が上昇して、650℃以下の温度で焼成し難くなる。
【0023】
Li2O、Na2O及びK2Oは、軟化点を低下させる成分であるが、耐酸性及び熱的安定性を低下させる成分である。Li2O、Na2O及びK2Oの合量及び個別含有量は、0~5%であり、好ましくは0~2%、より好ましくは0~1%である。Li2O、Na2O及びK2Oの合量及び個別含有量が多くなると、耐酸性及び熱的安定性が低下し易くなる。
【0024】
MgOは、軟化点を低下させる成分であるが、耐酸性を低下させる成分である。MgOの含有量は0~5%であり、好ましくは0.1~4.5%、より好ましくは0.5~4%である。MgOの含有量が少なくなると、軟化点が上昇して、650℃以下の温度で焼成し難くなる。一方、MgOの含有量が多くなると、耐酸性が低下し易くなる。
【0025】
CaOは、軟化点を低下させる成分であり、またガラスを安定化させる成分であるが、耐酸性を低下させる成分である。CaOの含有量は0~13%であり、好ましくは1~12%、より好ましくは3~10%である。CaOの含有量が少なくなると、軟化点が上昇して、650℃以下の温度で焼成し難くなる。一方、CaOの含有量が多くなると、耐酸性が低下し易くなる。
【0026】
Bi2O3は、耐酸性を大きく低下させることなく、軟化点を低下させる成分であるが、不活性雰囲気中での焼成時に還元し、金属成分として析出し易い成分である。Bi2O3の含有量は0~4%であり、好ましくは0~3%、より好ましくは0.1~1%である。Bi2O3の含有量が少なくなると、軟化点が上昇して、650℃以下の温度で焼成し難くなる。一方、Bi2O3の含有量が多くなると、不活性雰囲気中での焼成時に金属成分が析出し易くなる。
【0027】
Fe2O3は、適量ではガラスの熱的安定性を高める効果があるが、多すぎると逆に熱的安定性を低下させる成分である。Fe2O3の含有量は0~1%であり、好ましくは0~0.8%、より好ましくは0.1~0.6%である。Fe2O3の含有量が少なくても多くても、熱的安定性が低下し易くなる。
【0028】
環境面の観点から、PbOを実質的に含有せず、F、Clも実質的に含有しないことが好ましい。
【0029】
本発明の粉末材料において、軟化点は、640℃以下、特に635℃以下であることが好ましい。軟化点が高すぎると、緻密なオーバーコート層を得るためには、焼成温度を上昇しなければならず、その場合、抵抗体等と粉末材料が反応して、抵抗体等の特性が劣化しやすくなる。軟化点の下限は特に限定されないが、現実的には500℃以上である。
【0030】
本発明の粉末材料において、線熱膨張係数は、50×10-7/℃~80×10-7/℃、特に53×10-7/℃~70×10-7/℃であることが好ましい。このようにすれば、オーバーコート層と抵抗体との線熱膨張係数差に起因する応力が小さくなり、オーバーコート層に割れが生じ難くなる。
【0031】
本発明の粉末材料において、平均粒径D50は3μm以下が好ましく、最大粒径Dmaxは20μm以下が好ましい。平均粒径D50、最大粒径Dmaxが大きすぎると、オーバーコート層の平滑性が悪化し易くなる。ここで、「平均粒径D50」とは、レーザー回折装置で測定した値を指し、レーザー回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して50%である粒子径を表す。また「最大粒径Dmax」とは、レーザー回折装置で測定した値を指し、レーザー回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して99%である粒子径を表す。
【0032】
本発明の粉末材料は、トリミング性等の調整のために、コーディエライト、ウィレマイト、β-ユークリプタイト、アルミナ、ムライト、ジルコン等の粉末をフィラー粉末として添加して用いても良い。フィラー粉末の添加量は、粉末材料100質量部に対して0~10質量部、0.1~9質量部、特に1~8質量部であることが好ましい。フィラー粉末の添加量が多すぎると、相対的に粉末材料の割合が少なくなりすぎて、緻密なオーバーコート層を形成し難くなる。なお、オーバーコート層の平滑性の観点から、フィラー粉末の平均粒径D50は0.2~10μmであることが好ましい。
【0033】
本発明の粉末材料ペーストは、粉末材料とビークルとを含有する粉末材料ペーストにおいて、粉末材料が上記の粉末材料であることを特徴とする。ここで、ビークルは、粉末材料を分散させて、ペースト化するための材料であり、通常、樹脂、可塑剤、溶剤等により構成される。
【0034】
次に、本発明の粉末材料、及び粉末材料ペーストの製造方法について説明する。
【0035】
まず、溶融ガラスをフィルム状に成形した後、得られたガラスフィルムを粉砕、分級することにより、ガラスからなる粉末材料(以下、ガラス粉末材料という)を作製する。
【0036】
その後、ガラス粉末材料とビークルを所定の割合で混合、混練することにより粉末材料ペーストを作製する。なお、ビークルは例えば有機溶剤、樹脂の他、可塑剤、分散剤等を含有する。
【0037】
有機溶剤はガラス粉末材料をペースト化するための材料であり、例えばターピネオール(Ter)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタジオールモノイソブチレート、ジヒドロターピネオール等を単独または混合して使用することができる。その含有量は10~40質量%であることが好ましい。
【0038】
樹脂は、乾燥後の膜強度を高め、また柔軟性を付与する成分であり、その含有量は、0.1~20質量%程度が一般的である。樹脂は熱可塑性樹脂、具体的にはポリブチルメタアクリレート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチルメタアクリレート、エチルセルロース等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用する。
【0039】
可塑剤は、乾燥速度をコントロールするとともに、乾燥膜に柔軟性を与える成分であり、その含有量は0~10質量%程度が一般的である。可塑剤としてはブチルベンジルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジカプリルフタレート、ジブチルフタレート等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用する。
【0040】
分散剤としては、イオン系またはノニオン系の分散剤が使用可能であり、イオン系としてはカルボン酸、ジカルボン酸系等のポリカルボン酸系、アミン系等の分散剤、ノニオン系としてはポリエステル縮合型や多価アルコールエーテル型の分散剤が使用可能である。その使用量としては0~5質量%が一般的である。
【0041】
粉末材料ペーストを用いて、オーバーコート層を形成するには、まず抵抗体等が形成された基板上に、スクリーン印刷法、一括コート法等により粉末材料ペーストを塗布し、所定の膜厚の塗布層を形成した後、乾燥させて、乾燥膜を得る。その後、乾燥膜を550~650℃の温度で5~20分間焼成することにより、所定のオーバーコート層を形成することができる。なお、焼成温度が低すぎたり、焼成時間(保持時間)が短すぎると、乾燥膜が十分に焼結せず、緻密な焼成膜を形成し難くなる。一方、焼成温度が高すぎたり、保持時間が長すぎると、抵抗体等と粉末材料が反応して、抵抗体等の特性が劣化し易くなる。
【0042】
オーバーコート層の形成方法として、粉末材料ペーストを用いる方法を例にして説明したが、それ以外の方法を選択することもできる。例えば、グリーンシート法、感光性ペースト法、感光性グリーンシート法等の方法を採択してもよい。
【0043】
本発明のガラス粉末材料、及び粉末材料ペーストは、チップ抵抗器のオーバーコート層の形成に用いることが好ましい。
【実施例0044】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。以下の実施例は単なる例示である。
【0045】
表1は本発明の実施例(試料No.1~4)及び比較例(試料No.5、6)を示している。
【0046】
【0047】
まず表1に示すガラス組成になるように、原料を調合して、均一に混合した。次いで、白金ルツボに入れて1200℃で2時間溶融した。次に、溶融ガラスの一部を線熱膨張係数の測定試料としてステンレス製の金型に流し出し、その他の溶融ガラスを水冷ローラーによりフィルム状に成形した。得られたガラスフィルムをボールミルにて粉砕した後、気流分級して平均粒径D503μm以下、最大粒径Dmax20μm以下のガラス粉末材料を得た。得られたガラス粉末材料を用いて、軟化点を評価した。
【0048】
軟化点は、マクロ型示差熱分析計(DTA)で測定した第四の変曲点の値とした。
【0049】
線熱膨張係数は、上記線熱膨張係数の測定試料を、30~300℃の温度範囲において、熱機械分析装置(TMA)で測定したものである。
【0050】
次に、ガラス粉末材料とビークル(エチルセルロースを5質量%、且つアセチルクエン酸トリブチルを3質量%含むターピネオール)を混合し、3本ロールミルにて混練して、粉末材料ペーストを得た。更に、約10μmのオーバーコート層が得られるように、粉末材料ペーストを酸化ルテニウム(RuO2)抵抗体付きのアルミナ基板上にスクリーン印刷法で塗布した後、塗布膜を乾燥し、電気炉で、窒素雰囲気中にて640℃で10分間焼成した。得られたオーバーコート層付き基板を用いて、金属成分の析出の有無、及び耐酸性を評価した。
【0051】
金属成分の析出の有無は、上記のオーバーコート層付き基板に、Nd:YAGレーザー(波長:1064nm)を用いてトリミングを行った後、トリミング部を走査型顕微鏡(SEM)で観察し、金属成分が析出していないものを「〇」、金属成分が析出していたものを「×」として評価した。
【0052】
耐酸性は次のようにして評価した。オーバーコート層付き基板を30℃の0.05モル/Lの硫酸に30分間浸漬した上で、水洗、乾燥した後、質量減少を測定し、質量減少の割合(質量減少の割合(%)=(浸漬前のオーバーコート層の質量-浸漬後のオーバーコート層の質量)/(浸漬前のオーバーコート層の質量)×100)を算出した。なお、質量減少の割合が0.5質量%以下であれば、耐酸性に優れていることを意味する。
【0053】
表から明らかなように、試料No.1~4は、軟化点が638℃以下と低く、線熱膨張係数が54×10-7/℃~60×10-7/℃と所望の値であった。さらに、金属成分が析出しておらず、耐酸性にも優れていた。一方、試料No.5は金属ビスマスが析出していた。試料No.6は、耐酸性に劣っていた。
本発明の粉末材料及び粉末材料ペーストは、オーバーコート層の形成、特にチップ抵抗器のオーバーコート層の形成に特に好適であるが、それ以外の用途、例えば、電子部品材料用バインダ、封着用材料等の用途に適用することもできる。