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特開2025-2600観察システム、フォーカス位置算出方法、プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002600
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】観察システム、フォーカス位置算出方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/28 20210101AFI20241226BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20241226BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20241226BHJP
   G03B 15/03 20210101ALI20241226BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20241226BHJP
   G02B 7/32 20210101ALI20241226BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20241226BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20241226BHJP
【FI】
G02B7/28 J
G02B21/00
G03B15/02 G
G03B15/02 L
G03B15/03 W
G03B15/00 H
G02B7/32
H04N23/56
H04N23/67 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102892
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平田 唯史
【テーマコード(参考)】
2H052
2H151
5C122
【Fターム(参考)】
2H052AC14
2H052AC30
2H052AF25
2H151AA11
2H151CC02
2H151CC06
2H151CC09
2H151CE22
2H151DA03
2H151DA11
2H151DB01
2H151EA22
2H151EB19
5C122EA01
5C122FA09
5C122FD01
5C122FD04
5C122FH09
5C122FH11
5C122FH15
5C122GD01
5C122GD02
5C122GG03
5C122GG17
5C122GG24
5C122HA13
5C122HA35
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB05
5C122HB06
5C122HB09
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】事前情報なしにフォーカス位置を特定可能な新たな技術を提供する。
【解決手段】システム1は、照明光で観察物を複数の異なる方向から照明する照明装置であり、観察物からの光を集光する対物レンズを含み、対物レンズで集光した光で観察物を撮像する撮像装置である観察装置10と、制御部である制御装置30と、を備える。制御装置30は、対物レンズの光軸方向に互いに異なる観察位置で観察装置10が取得した複数の画像群であって、複数の画像群の各々は観察装置10により互いに異なる方向から照明された観察物の複数の画像を含む、複数の画像群に基づいて、観察装置10のフォーカス位置を算出する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光で観察物を複数の異なる方向から照明する照明装置と、
前記観察物からの光を集光する対物レンズを含み、前記対物レンズで集光した光で前記観察物を撮像する撮像装置と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記対物レンズの光軸方向に互いに異なる観察位置で前記撮像装置が取得した複数の画像群であって、前記複数の画像群の各々は前記照明装置により互いに異なる方向から照明された前記観察物の複数の画像を含む、前記複数の画像群に基づいて、前記撮像装置のフォーカス位置を算出する
ことを特徴とする観察システム。
【請求項2】
請求項1に記載の観察システムにおいて、
前記制御部は、
前記複数の画像間の前記対物レンズの光軸と直交する方向のずれ量を、前記複数の画像に基づいて算出するずれ量算出処理と、
前記ずれ量算出処理で算出された複数のずれ量であって、前記光軸方向に互いに異なる観察位置に対応する前記複数のずれ量に基づいて、前記フォーカス位置を算出するフォーカス位置算出処理と、を行う、
ことを特徴とする観察システム。
【請求項3】
請求項2に記載の観察システムにおいて、
前記ずれ量算出処理は、
各々が前記複数の画像の一部である複数の領域間の相関を算出する処理と、
前記相関がピークを示す複数の領域の位置関係から前記ずれ量を算出する処理と、を含む
ことを特徴とする観察システム。
【請求項4】
請求項3に記載の観察システムにおいて、
前記ずれ量算出処理は、さらに、前記ピークにおける相関値を算出する処理と、を含み、
前記フォーカス位置算出処理は、前記複数のずれ量と、前記ずれ量算出処理で算出された複数の相関値であって、前記光軸方向に互いに異なる観察位置に対応する前記複数の相関値と、に基づいて、前記フォーカス位置を算出する処理を含む
ことを特徴とする観察システム。
【請求項5】
請求項4に記載の観察システムにおいて、
前記フォーカス位置算出処理は、さらに、前記ピークにおける相関値が閾値を下回る観察位置に対応する情報を、前記フォーカス位置を算出するための演算処理から除外する処理を含む
ことを特徴とする観察システム。
【請求項6】
請求項2に記載の観察システムにおいて、
前記フォーカス位置算出処理は、
前記ずれ量が0となる観察位置を推定する処理と、
前記ずれ量が0となると推定した観察位置に基づいて、前記フォーカス位置を特定する処理と、を含む
ことを特徴とする観察システム。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の観察システムにおいて、
前記制御部は、さらに、前記観察位置毎に照明方向を切り替えて前記複数の画像を取得するように前記照明装置と前記撮像装置を制御する画像取得処理を行う
ことを特徴とする観察システム。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の観察システムにおいて、
前記制御部は、さらに、前記フォーカス位置で画像を取得するように前記照明装置と前記撮像装置を制御するフォーカス画像取得処理を行う
ことを特徴とする観察システム。
【請求項9】
請求項2に記載の観察システムにおいて、
前記照明装置は、
前記対物レンズの光軸に対して対称な位置に設けられた複数の光源を有し、
前記複数の光源を選択的に発光することで、前記照明光で前記観察物を前記対称な2方向から照明する
ことを特徴とする観察システム。
【請求項10】
請求項9に記載の観察システムにおいて、
前記ずれ量算出処理は、さらに、前記複数の画像の各々をポジティブコントラスト画像またはネガティブコントラスト画像に変換する画像変換処理を含む
ことを特徴とする観察システム。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載の観察システムにおいて、さらに、
前記観察物を収容する容器に関する情報を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記容器に関する情報に基づいて、前記観察位置の前記光軸方向の範囲を決定する
ことを特徴とする観察システム。
【請求項12】
コンピュータが、
観察物を撮像する撮像装置に含まれる対物レンズの光軸方向に互いに異なる観察位置で前記撮像装置が取得した複数の画像群であって、前記複数の画像群の各々は照明装置により互いに異なる方向から照明された前記観察物の複数の画像を含む、前記複数の画像群に基づいて、前記撮像装置のフォーカス位置を算出する
ことを特徴とするフォーカス位置算出方法。
【請求項13】
コンピュータに、
観察物を撮像する撮像装置に含まれる対物レンズの光軸方向に互いに異なる観察位置で前記撮像装置が取得した複数の画像群であって、前記複数の画像群の各々は照明装置により互いに異なる方向から照明された前記観察物の複数の画像を含む、前記複数の画像群に基づいて、前記撮像装置のフォーカス位置を算出する処理
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、観察システム、フォーカス位置算出方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コントラストAFと呼ばれるオートフォーカス技術が知られている。コントラストAFは、被写体に対する対物レンズの位置を光軸方向に変更しながら取得した複数の画像のコントラストに基づいてフォーカス位置を算出するものであり、位相差AFとは異なり専用のセンサを必要としないため、様々な装置において広く利用されている。
【0003】
しかしながら、コントラストAFでは、光軸方向に対してコントラストのピークが複数生じる環境においては、正確なフォーカス位置の特定が困難である。このような環境は、例えば、培養容器に収容された培養細胞などの位相物体の観察において生じやすい。
【0004】
これに対して、特許文献1には、異なる方向から照明した画像間の位置関係に基づいて幾何学的にフォーカス位置を算出する、コントラストAFとは異なるオートフォーカス技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10921573号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される技術を用いて幾何学的にフォーカス位置を算出するためには、各種のパラメータを事前に把握している必要がある。しかしながら、例えば培養細胞を観察する場合を例にすると、パラメータは、装置設定に加えて、培養容器の形状、培養液の深さ、界面形状などの装置設定以外の要因によっても変化し得る。フォーカス位置を幾何学的に算出するためのこれらのパラメータを事前に把握することは、必ずしも容易ではない。
【0007】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、事前情報なしにフォーカス位置を特定可能な新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る観察システムは、照明光で観察物を複数の異なる方向から照明する照明装置と、前記観察物からの光を集光する対物レンズを含み、前記対物レンズで集光した光で前記観察物を撮像する撮像装置と、制御部と、を備える。前記制御部は、前記対物レンズの光軸方向に互いに異なる観察位置で前記撮像装置が取得した複数の画像群であって、前記複数の画像群の各々は前記照明装置により互いに異なる方向から照明された前記観察物の複数の画像を含む、前記複数の画像群に基づいて、前記撮像装置のフォーカス位置を算出する。
【0009】
本発明の一態様に係るフォーカス位置算出方法は、コンピュータが、観察物を撮像する撮像装置に含まれる対物レンズの光軸方向に互いに異なる観察位置で前記撮像装置が取得した複数の画像群であって、前記複数の画像群の各々は照明装置により互いに異なる方向から照明された前記観察物の複数の画像を含む、前記複数の画像群に基づいて、前記撮像装置のフォーカス位置を算出する。
【0010】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、観察物を撮像する撮像装置に含まれる対物レンズの光軸方向に互いに異なる観察位置で前記撮像装置が取得した複数の画像群であって、前記複数の画像群の各々は照明装置により互いに異なる方向から照明された前記観察物の複数の画像を含む、前記複数の画像群に基づいて、前記撮像装置のフォーカス位置を算出する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上記の態様によれば、事前情報なしにフォーカス位置を特定可能な新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】システム1の構成を例示した図である。
図2】観察装置10の斜視図である。
図3】観察装置10の構成を示した図である。
図4】光源ユニット14と撮像ユニット15の構成を例示した図である。
図5】制御装置30の構成を例示した図である。
図6】システム1が行う処理のフローチャートである。
図7図6に示す画像取得処理のフローチャートである。
図8】観察位置による予備画像の変化を例示した図である。
図9図6に示すずれ量算出処理のフローチャートである。
図10図8に示す予備画像から得られるポジティブコントラスト画像を例示した図である。
図11】観察位置毎の相互相関関数を示すグラフである。
図12図6に示すフォーカス位置算出処理のフローチャートである。
図13】ずれ量を観察位置に対して線形フィッティングしたずれ量関数を示すグラフである。
図14図6に示すフォーカス画像取得処理のフローチャートである。
図15】画像内のエリアを説明する図である。
図16】各エリアの座標範囲を示すテーブルである。
図17】第1の実施形態に係るシステムが行う処理のフローチャートである。
図18図17に示すオートフォーカス処理のフローチャートである。
図19図18に示すフォーカス位置算出処理のフローチャートである。
図20】あるエリアにおける観察位置毎の相互相関関数を示すグラフである。
図21】エリア毎のずれ量関数を示すグラフである。
図22図21に示すずれ量関数から算出されるエリア毎の傾き及びフォーカス位置と画像全体のフォーカス位置を示すテーブルである。
図23】第2の実施形態に係るシステムが行うフォーカス位置算出処理のフローチャートである。
図24】あるエリアにおける観察位置毎の相互相関関数を示すグラフである。
図25】あるエリアにおける相互相関ピーク関数を示すグラフである。
図26】あるエリアにおけるずれ量関数を示すグラフである。
図27】相互相関ピーク関数値を用いた除外データの決定方法を説明するための図である。
図28】ずれ量関数の傾きを用いた除外データの決定方法を説明するための図である。
図29】Z探索範囲を用いた除外データの決定方法を説明するための図である。
図30】エリア毎且つ観察位置毎に算出したフォーカス位置に基づく画像全体のフォーカス位置の決定方法を説明するための図である。
図31】相互相関ピーク関数値を用いた除外データの決定方法を説明するための図である。
図32】エリア毎且つ観察位置毎に算出したフォーカス位置に基づく画像全体のフォーカス位置の決定方法を説明するための図である。
図33】第4の実施形態に係るシステムが行うオートフォーカス処理のフローチャートである。
図34】前回のオートフォーカス処理で取得されたフォーカス情報を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、システム1の構成を例示した図である。図2は、観察装置10の斜視図である。図3は、観察装置10の構成を示した図である。図4は、光源ユニット14と撮像ユニット15の構成を例示した図である。図5は、制御装置30の構成を例示した図である。以下、図1から図5を参照しながら、システム1の構成について説明する。
【0014】
図1に示すシステム1は、培養容器CVに収容された試料の観察に用いられる観察システムであり、試料を培養しながら試料の画像を取得する。システム1は、図1に示すように、培養容器CVに収容された試料を培養容器CVの下方から撮像して試料の画像を取得する1つ以上の観察装置10と、観察装置10を制御する制御装置30と、を備えている。
【0015】
観察装置10の各々と制御装置30は、互いにデータをやり取りできればよい。従って、観察装置10の各々と制御装置30は、有線で通信可能に接続されてもよく、無線で通信可能に接続されてもよい。また、観察物である試料は、例えば、培養細胞であり、試料を収容する培養容器CVは、例えば、フラスコである。ただし、培養容器CVは、フラスコに限らず、ディッシュ、ウェルプレートなどその他の培養容器であってもよい。
【0016】
試料をインキュベータ20から取り出すことなく撮像するために、観察装置10は、例えば、図1に示すように、インキュベータ20内に配置された状態で使用される。より詳細には、観察装置10は、図1及び図2に示すように、培養容器CVが観察装置10の透過窓11に載置された状態でインキュベータ20内に配置され、制御装置30からの指示に従って培養容器CV内の試料の画像を取得する。なお、透過窓11は、観察装置10の筐体12の上面を構成する透明な天板であり、培養容器CVを載置する載置面を構成する。透過窓11は、例えば、ガラスや透明な樹脂などからなる。
【0017】
観察装置10は、図2に示すように、培養容器CVが配置される透明な透過窓11を上面とする箱型の筐体12と、透過窓11(載置面)上で培養容器CVを所定の位置へ位置決めする位置決め部材60を備えている。なお、位置決め部材60は、筐体12に固定されている。ただし、位置決め部材60は、必要に応じて取り外すことが可能であり、使用される容器に応じて形状の異なる別の位置決め部材と交換されてもよい。
【0018】
観察装置10は、図3及び図4に示すように、さらに、筐体12内を移動するステージ13と、試料Sを照明する1対の光源ユニット14と、試料を撮像する撮像ユニット15と、を備えている。ステージ13と光源ユニット14と撮像ユニット15は、筐体12内部に収容されている。光源ユニット14と撮像ユニット15は、ステージ13上に設置されていて、筐体12内でステージ13が移動することで培養容器CVに対して移動する。
【0019】
ステージ13は、観察装置10の移動ユニットの一例であり、培養容器CVに対する撮像ユニット15の相対位置を変更する。ステージ13は、透過窓11(載置面)と平行で且つ互いに直交しているx方向とy方向に移動可能である。また、ステージ13は、さらに、x方向とy方向の両方に直交するz方向にも移動可能である。z方向は、後述する撮像ユニット15の観察光学系18の光軸方向である。
【0020】
なお、図3及び図4には、光源ユニット14と撮像ユニット15がステージ13上に設置され、その結果、一体となって筐体12内を移動する例が示されているが、光源ユニット14と撮像ユニット15は、それぞれ独立して筐体12内を移動してもよい。また、図3及び図4には、1対の光源ユニット14が撮像ユニット15を挟んで左右に配置されている例を示したが、光源ユニット14の配置と数はこの例に限らない。例えば、光源ユニット14は、ステージ13上に3つ以上設けられてもよく、1つだけ設けられてもよい。
【0021】
1対の光源ユニット14は、システム1の照明装置の一例である。1対の光源ユニット14は、後述する観察光学系18の光軸に対して対称な位置に設けられていて、照明光で観察物である試料Sを2つの異なる方向から照明する。光源ユニット14の各々は、図4に示すように、光源16と、拡散板17を備えている。即ち、1対の光源ユニット14は、観察光学系18の光軸に対して対称な位置に設けられた複数の光源16を備えていて、複数の光源16を選択的に発光することで、照明光で観察物である試料Sを対称な2方向から照明する。
【0022】
光源16は、例えば、発光ダイオード(LED)などを含んでいる。光源16は、白色LEDを含んでもよく、R(赤)、G(緑)、B(青)など、複数の異なる波長の光を出射する複数のLEDを含んでもよい。光源16から出射した光は、拡散板17に入射する。
【0023】
拡散板17は、光源16から出射した光を拡散させる。拡散板17は、特に限定しないが、例えば、表面に凹凸を形成したフロスト型の拡散板である。ただし、拡散板17は、表面をコーティングしたオパール型の拡散板であってもよく、その他のタイプの拡散板であってもよい。さらに、拡散板17には拡散光の出射領域を制限するためのマスク17aが形成されてもよい。拡散板17から出射した光は、様々な方向に進行する。
【0024】
撮像ユニット15は、システム1の撮像装置の一例である。撮像ユニット15は、図4に示すように、観察光学系18と、撮像素子19を備えている。観察光学系18は、透過窓11を透過することによって筐体12内に入射した光を集光する。観察光学系18は、特に限定しないが、例えば、有限な位置に像を形成する有限遠補正型の対物レンズである。ただし、観察光学系18は、無限遠補正型の対物レンズを含んでもよく、観察光学系18全体として有限遠補正光学系を構成すればよい。試料Sが存在する培養容器CVの底面に焦点を合わせた観察光学系18が筐体12内に入射した光を撮像素子19上に集光することで、撮像素子19上に試料Sの光学像が形成される。
【0025】
撮像素子19は、検出した光を電気信号に変換する光センサである。撮像素子19は、具体的には、イメージセンサであり、特に限定しないが、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary MOS)イメージセンサなどである。撮像ユニット15は、観察物(試料S)からの光を集光する対物レンズを含み、撮像素子19を用いて対物レンズで集光した光で観察物(試料S)を撮像する。
【0026】
以上のように構成された観察装置10では、位相物体である培養容器CV内の試料Sを可視化するために、偏射照明が採用されている。具体的には、光源16が発した光は、拡散板17で拡散し、観察光学系18を経由することなく筐体12外へ出射する。その後、筐体12外へ出射した光のうちの一部が、例えば、培養容器CVの上面などで反射することで、試料S上方で偏向され、さらに、試料S上方で偏向された光のうちの一部が、試料Sに照射され、試料S及び透過窓11を透過することによって筐体12内に入射する。そして、筐体12内に入射した光のうちの一部が、観察光学系18によって集光され、撮像素子19上に試料Sの像を形成する。最後に、観察装置10は、撮像素子19から出力された電気信号に基づいて試料の画像を生成し、制御装置30へ出力する。
【0027】
なお、試料Sを透過して観察光学系18に入射する光の角度は、観察装置10の各種設定のみによっては定まらず、培養容器などの観察装置10以外の要因によっても変化する。例えば、図4に示すように、培養容器CVを用いた場合に試料S経由で観察光学系18に入射する光線L1と、培養容器CVとは異なる高さの培養容器CV1を用いた場合に試料S経由で観察光学系18に入射する光線L2では、入射角が異なる。また、培養液CLの界面が表面張力で湾曲している場合とおよそ平面となっている場合では、界面での屈折力が異なるため、観察光学系18への入射角が変化する。このように、システム1において事前に入射角等の情報を特定することは必ずしも容易ではない。
【0028】
制御装置30は、観察装置10を制御する装置であり、システム1の制御部の一例である。制御装置30は、ステージ13と光源ユニット14と撮像ユニット15とを制御する。なお、制御装置30は、プロセッサ31と、記憶装置32と、を含んでいればよく、標準的なコンピュータであってもよい。
【0029】
制御装置30は、例えば、図5に示すように、例えば、プロセッサ31と、記憶装置32と、入力装置33と、表示装置34と、通信装置35を備えていてもよく、それがバス36を通じて接続されていてもよい。
【0030】
プロセッサ31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などを含むハードウェアであり、記憶装置32に記憶されているプログラム32aを実行することで、プログラムされた処理を行う。また、プロセッサ31は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などを含んでもよい。
【0031】
記憶装置32は、例えば、1つ又は複数の任意の半導体メモリを含み、さらに、1つ又は複数のその他の記憶装置を含んでもよい。半導体メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)、プログラマブルROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含んでいる。RAMには、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが含まれてもよい。その他の記憶装置には、例えば、磁気ディスクを含む磁気記憶装置、光ディスクを含む光学記憶装置などが含まれてもよい。
【0032】
なお、記憶装置32は、非一時的なコンピュータ読取可能媒体であり、システム1の記憶部の一例である。記憶装置32は、プログラム32aや観察装置10が撮像した試料の画像に加えて、後述するオートフォーカス処理で算出される各種情報(オートフォーカス情報と記す)などを記憶する。
【0033】
入力装置33は、利用者が直接操作する装置であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどである。表示装置34は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどである。ディスプレイには、タッチパネルが内蔵されてもよい。通信装置35は、有線通信モジュールであっても、無線通信モジュールであってもよい。
【0034】
図5に示す構成は、制御装置30のハードウェア構成の一例であり、制御装置30はこの構成に限定されるものではない。制御装置30は、汎用装置に限らず、専用装置であってもよい。
【0035】
観察装置10は、制御装置30からの指示に従って、試料Sの画像を取得する。制御装置30は、インキュベータ20内に置かれた観察装置10へ画像取得指示を送信し、観察装置10によって取得された画像を受信する。制御装置30は、制御装置30が備える表示装置34に、観察装置10で取得した画像を表示してもよく、これにより、システム1は、利用者に培養中の試料Sの画像を提供し、試料Sの画像を利用者による試料の観察に供してもよい。なお、制御装置30は、図1に示すクライアント端末(クライアント端末40、クライアント端末50)と通信してもよく、クライアント端末が備える表示装置に、観察装置10で取得した画像を表示してもよい。
【0036】
以上のように構成されたシステム1では、制御装置30が観察装置10を制御することで、オートフォーカス処理が実行され、フォーカスの合った試料Sの画像(以降、フォーカス画像と記す。)が取得される。これにより、利用者は、フォーカス画像で試料Sを観察することが可能となる。以下、図6から図14を参照しながら、フォーカス画像を取得するためにシステム1が行う処理について説明する。
【0037】
図6は、システム1が行う処理のフローチャートである。図7は、図6に示す画像取得処理のフローチャートである。図8は、観察位置による予備画像の変化を例示した図である。図9は、図6に示すずれ量算出処理のフローチャートである。図10は、図8に示す予備画像から得られるポジティブコントラスト画像を例示した図である。図11は、観察位置毎の相互相関関数を示すグラフである。図12は、図6に示すフォーカス位置算出処理のフローチャートである。図13は、ずれ量を観察位置に対して線形フィッティングしたずれ量関数を示すグラフである。図14は、図6に示すフォーカス画像取得処理のフローチャートである。
【0038】
図6に示す処理は、プロセッサ31が記憶装置32に記憶されているプログラムを実行することで開始される。図6に示す処理は、画像取得処理と、ずれ量算出処理と、フォーカス位置算出処理と、フォーカス画像取得処理を含んでいる。
【0039】
プロセッサ31は、まず、観察装置10を制御することで予備画像を取得する画像取得処理を行う(ステップS10)。より詳細には、プロセッサ31は、図7に示す画像取得処理を行うことで、観察位置毎に照明方向を切り替えて複数の予備画像を取得するように観察装置10を制御する。
【0040】
予備画像とは、フォーカス位置を算出するために利用される画像をいい、後に詳述するずれ量算出処理とフォーカス位置算出処理で用いられる。なお、フォーカス位置とは、試料S(培養容器CV)に対する撮像ユニット15の相対的な位置(以降、単に撮像ユニット15の相対位置)のうち、フォーカス画像が取得されるときの撮像ユニット15の相対位置をいう。また、撮像ユニット15の相対位置のうち、予備画像が取得されるときの撮像ユニット15の相対位置を観察位置と記す。
【0041】
画像取得処理では、プロセッサ31は、図7に示すように、まず、スキャン範囲を決定する(ステップS11)。スキャン範囲は、予備画像を取得するときの観察位置の光軸方向(Z方向)の範囲のことをいい、z探索範囲とも呼ばれる。
【0042】
ステップS11では、プロセッサ31は、例えば、記憶装置32に記憶されている容器に関する情報に基づいてスキャン範囲を決定してもよい。予備画像は、フォーカス位置付近で取得されることが望ましく、フォーカス位置が存在する範囲は試料Sを収容する培養容器CVによってある程度限定される。このため、プロセッサ31は、容器に関する情報に基づいてフォーカス位置付近を含むスキャン範囲を決定してもよい。
【0043】
スキャン範囲が決定されると、プロセッサ31は、スキャン範囲を指定して観察装置10に予備画像の取得を指示する。これにより、観察装置10がステップS12からステップS15の処理を繰り返すことで、予備画像を取得する。つまり、プロセッサ31は、観察装置10にステップS12からステップS15の処理を行わせる。
【0044】
観察装置10は、まず、ステージ13を制御して撮像ユニット15の相対位置を光軸方向に変更する(ステップS12)。ここでは、観察装置10は、制御装置30から指定されたスキャン範囲に基づいて、相対位置をスキャン範囲の下限、つまり、スキャン範囲内の複数の観察位置のうちの下端へ移動する。
【0045】
相対位置を観察位置へ移動すると、観察装置10は、光源ユニット14を制御して試料Sを正方向から照明しながら、撮像ユニット15を制御して試料Sを撮像する(ステップS13)。これにより、正方向から照明された試料Sの予備画像を取得する。
【0046】
さらに、観察装置10は、光源ユニット14を制御して試料Sを負方向から照明しながら、撮像ユニット15を制御して試料Sを撮像する(ステップS14)。これにより、負方向から照明された試料Sの予備画像を取得する。
【0047】
その後、観察装置10は、スキャンが完了したか、つまり、スキャン範囲内のすべての観察位置で予備画像が取得されたか否かを判定する(ステップS15)。観察装置10は、スキャンが完了していないと判断すると、ステップS12において相対位置を次の観察位置へ移動し、ステップS13及びステップS14において新たな観察位置で予備画像を取得する。観察装置10は、ステップS12からステップS15の処理をスキャン範囲内のすべての観察位置で予備画像が取得されるまで繰り返し、図7に示す画像取得処理を終了する。
【0048】
このように、図7に示す画像取得処理では、観察装置10は観察位置を変更しながら、各観察位置において照明方向を切り替えて撮像を繰り返す。これにより、観察位置毎に1対の光源ユニット14によって互いに異なる方向から照明された試料Sの複数の予備画像が取得される。
【0049】
図8には、図7に示す画像取得処理で得られた予備画像が例示されている。画像P1から画像P5は、それぞれ光軸方向に異なる観察位置で正方向照明時に取得された画像であり、画像N1から画像N5は、それぞれ光軸方向に異なる観察位置で負方向照明時に取得された画像である。
【0050】
以降では、同じ観察位置で取得された、照明装置(1対の光源ユニット14)により互いに異なる方向から照明された試料Sの複数の予備画像を、画像群と記す。図8では、同じ観察位置で取得された画像P1と画像N1、画像P2と画像N2、画像P3と画像N3、画像P4と画像N4、画像P5と画像N5がそれぞれ画像群を構成し、計5つの画像群が示されている。
【0051】
換言すると、プロセッサ31は、図7に示す画像取得処理を行うことで、観察光学系18に含まれる対物レンズの光軸方向に互いに異なる観察位置で撮像ユニット15が取得した複数の画像群を、観察装置10から取得する。
【0052】
図8に示すように、偏斜照明画像である予備画像は、焦点面FPとサンプル面SPが一致している場合、つまり、フォーカスが合っている場合には、観察光学系18(対物レンズ)の光軸上に位置付けられた被写体は、予備画像内において画像中心に表れる。この様子は、画像P3、画像N3に示されている。
【0053】
これに対して、焦点面FPとサンプル面SPが一致していない場合、つまり、フォーカスが合っていない場合には、被写体は、予備画像内において画像中心からずれた位置に表れる。この画像中心からのずれの大きさは、焦点面FPとサンプル面SPとの間の距離が大きいほど大きくなる。このことは、例えば、画像P1と画像P2を比較することで確認できる。また、この画像中心からのずれの方向は、照明方向によって定まり、反対方向から照明することで得られた2画像間では、ずれも反対方向に生じる。このことは、例えば、画像P1と画像N1を比較することで確認できる。
【0054】
なお、被写体が光軸上にある場合を例に説明したが、サンプル面における被写体の位置と画像内における被写体の位置との対応関係は、被写体が光軸上にある場合と光軸からずれた位置にある場合とで変わりはない。被写体が光軸上にない場合では、フォーカスが合っているならば、被写体はサンプル面における被写体の位置に対応する予備画像内の中心ではない位置に現れる。すなわち、焦点面FPとサンプル面SPが一致している場合、つまり、フォーカスが合っている場合、被写体は、予備画像内においてサンプル面上と同じ位置に現れる。一方、焦点面FPとサンプル面SPが一致していない場合、つまり、フォーカスが合っていない場合には、被写体は、予備画像内においてサンプル面上とは異なる位置に現れる。
【0055】
図7に示す画像取得処理により予備画像が取得されると、プロセッサ31は、上述した予備画像(偏斜照明画像)の特徴を利用して、観察装置10から取得した予備画像(複数の画像群)を用いてずれ量算出処理とフォーカス位置算出処理を行う(ステップS20、ステップS30)。
【0056】
まず、プロセッサ31は、図9に示すずれ量算出処理を行うことで、同一の画像群を構成する複数の予備画像に基づいて、その複数の予備画像間の対物レンズ(観察光学系18)の光軸と直交する方向のずれ量を算出する(ステップS20)。なお、ずれ量算出処理は、画像群(観察位置)毎に行われ、画像群(観察位置)毎に画像群を構成する予備画像間のずれ量が算出される。
【0057】
図8に示すように、偏斜照明画像である予備画像では、試料Sは背景に対して明部と暗部で表される。また、画像群を構成する照明方向が反対の2つの予備画像では、予備画像内の明部と暗部がおよそ反転した関係にある。この関係はフォーカスが合うほど顕著になる。
【0058】
そこで、2つの予備画像間の試料Sの位置の比較を容易にするため、図9に示すずれ量算出処理では、プロセッサ31は、まず、画像群を構成する2つの予備画像に対して画像変換処理を行う(ステップS21)。ここでは、プロセッサ31は、試料Sが背景に対して明部または暗部の一方で表されるように、2つの予備画像に対して画像変換を行う。より詳細には、プロセッサ31は、2つの予備画像の各々をポジティブコントラスト画像またはネガティブコントラスト画像に変換する画像変換を行う。
【0059】
図10は、図8に示す画像P1から画像P5及び画像N1から画像N5に対してステップS21の画像変換処理を行うことで得られたポジティブコントラスト画像(画像PC11から画像PC15、画像PC21からPC25)を示している。ポジティブコントラスト画像とは、試料Sを背景よりも明るい明部で表現した画像である。なお、ステップS21の画像変換処理では、予備画像を、試料Sを背景よりも暗い暗部で表現したネガティブコントラスト画像に変換してもよい。
【0060】
画像変換処理により各画像群を構成する2画像がポジティブコントラスト画像に統一されると、プロセッサ31は、画像群毎(観察位置毎)に相関関数を算出する(ステップS22)。ステップS22で算出される相関関数は、画像群を構成する2画像(ポジティブコントラスト画像)間の相互相関関数である。この相互相関関数は、それぞれが2画像の一部である2つの領域間の相関を、2つの領域間の位置ずらし量を変数にして算出した関数である。なお、位置ずらし量は、画像内での2領域の位置の違いを示す量であり、より詳細には、照明方向に関する位置の違いを示す量である。
【0061】
相関関数が算出されると、プロセッサ31は、ピーク位置を特定する(ステップS23)。図11は、ステップS22で観察位置z毎に算出された位置ずらし量dyを変数とする相関関数Cを示している。ステップS23では、プロセッサ31は、図11に示す相関関数のピーク位置dypeak(つまり、相関値が最大になる位置ずらし量)を観察位置z毎に特定する。
【0062】
ピーク位置が特定されると、プロセッサ31は、各画像群を構成する2画像間のずれ量を特定する(ステップS24)。ピーク位置は、相関がピークを示す2領域間の位置関係、つまり、2画像間で最も類似した2領域間の位置関係、を示している。このため、ピーク位置が示す位置ずらし量は、画像中に写る被写体の位置のずれ量と考えられるため、2画像間のずれ量とみなし得る。ステップS24では、プロセッサ31は、ピーク位置が示す位置ずらし量を2画像間のずれ量とみなして、ずれ量を特定する。
【0063】
このように、図9に示すずれ量算出処理では、プロセッサ31は、ステップS21及びステップS22の処理により2画像内の2領域の相関を算出し、ステップS23及びステップS24において、相関がピークを示す2領域の位置関係から2画像間のずれ量を算出する。
【0064】
図9に示すずれ量算出処理により観察位置毎のずれ量が算出されると、プロセッサ31は、図12に示すフォーカス位置算出処理を行うことで、光軸方向に互いに異なる観察位置に対応する複数のずれ量に基づいてフォーカス位置を算出する(ステップS30)。
【0065】
図8を参照しながら上述したように、フォーカスが合っていない場合には、光軸上に位置付けられた被写体は、照明方向に応じた方向へ画像中心からずれた位置に表れるのに対して、フォーカスが合っている場合には、被写体は、照明方向によらず画像中心に表れる。このことから、フォーカス位置は画像間のずれ量が0となる観察位置とみなすことができる。また、フォーカスが合っていない場合に生じるずれ量は、フォーカスずれが大きいほど大きくなる。このことから、観察位置毎に得られるずれ量をフィッティングすることで、ずれ量が0となる観察位置を推定することができる。
【0066】
プロセッサ31は、まず、観察位置を変数としたずれ量関数を線形フィッティングにより算出する(ステップS31)。ここでは、プロセッサ31は、ずれ量算出処理で観察位置毎に算出された複数のずれ量に基づいて、最小二乗法を用いて、観察位置に対して線形なずれ量関数を算出する。図13に示す破線は、ステップS31で算出されたずれ量関数である。図13では、複数のずれ量に対して線形フィッティングによりずれ量関数が算出された様子が示されている。
【0067】
その後、プロセッサ31は、ずれ量関数に基づいて推定したずれ量が0となる観察位置をフォーカス位置として特定する(ステップS32)。ここでは、プロセッサ31は、ずれ量関数のずれ量に0を代入して観察位置を推定し、推定した観察位置をフォーカス位置として特定する。なお、図13に示すグラフ上では、フォーカス位置はz切片に対応する。
【0068】
図12に示すフォーカス位置算出処理によりフォーカス位置が算出されると、プロセッサ31は、図14に示すフォーカス画像取得処理を行うことで、観察装置10を制御してフォーカス位置で画像を取得する(ステップS40)。
【0069】
フォーカス画像取得処理では、プロセッサ31は、フォーカス位置を指定して観察装置10にフォーカス画像の取得を指示する。これにより、観察装置10が、まず、ステージ13を制御して撮像ユニット15の相対位置をフォーカス位置へ移動する(ステップS41)。その後、観察装置10は、光源ユニット14を制御して試料Sを正方向(または負方向)から照明しながら、撮像ユニット15を制御して試料Sを撮像する(ステップS42)。これにより、フォーカス画像が取得される。観察装置10が取得したフォーカス画像は、制御装置30へ送信される。
【0070】
制御装置30は、観察装置10から受信したフォーカス画像を、表示装置34に表示してもよい。また、制御装置30は、フォーカス画像をクライアント端末(クライアント端末40またはクライアント端末50)へ送信して、クライアント端末の表示装置にフォーカス画像を表示させてもよい。
【0071】
このように、図6に示す処理では、プロセッサ31は、対物レンズの光軸方向に互いに異なる観察位置で撮像ユニット15が取得した複数の画像群に基づいて、撮像ユニット15のフォーカス位置を算出する。複数の画像群の各々は、1対の光源ユニット14により互いに異なる方向から照明された観察物の複数の画像を含んでいる。プロセッサ31は、複数の画像群に基づいて、異なる照明方向から照明された被写体の見え方の違いが観察位置に応じてどのようなに変化するかを特定することが可能であり、その変化に基づいてフォーカス位置を算出する。このため、システム1によれば、事前に詳細なパラメータ情報を用意することなしにフォーカス位置を精度良く算出することができる。
【0072】
また、図6に示す処理では、プロセッサ31は、画像群を構成する画像間のずれ量を算出し、光軸方向に互いに異なる観察位置に対応する複数のずれ量に基づいてフォーカス位置を算出する。このように、コントラストの高低ではなくずれ量に基づいてフォーカス位置が算出されるため、システム1によれば、コントラストのピークが複数生じ得る環境においても、フォーカス位置を算出することができる。
【0073】
以下、各実施形態において、図6に示す処理の具体例を説明する。
(第1の実施形態)
図15は、画像内のエリアを説明する図である。図16は、各エリアの座標範囲を示すテーブルである。図17は、第1の実施形態に係るシステムが行う処理のフローチャートである。図18は、図17に示すオートフォーカス処理のフローチャートである。図19は、図18に示すフォーカス位置算出処理のフローチャートである。図20は、あるエリアにおける観察位置毎の相互相関関数を示すグラフである。図21は、エリア毎のずれ量関数を示すグラフである。図22は、図21に示すずれ量関数から算出されるエリア毎の傾き及びフォーカス位置と画像全体のフォーカス位置を示すテーブルである。以下、図15から図22を参照しながら、本実施形態に係るシステムが行う処理について説明する。なお、本実施形態に係るシステムは、システム1と同じ構成を有している。このため、システム1と同じ構成要素については、同一の符合で参照する。
【0074】
本実施形態では、画像が複数のエリアに分割され、エリア毎にフォーカス位置が算出される。その後、エリア毎のフォーカス位置から画像全体のフォーカス位置が算出される。なお、エリアの数は特に限定しないが、画像は、例えば、図15に示すように、エリアa0からエリアa8の3×3の計9つのエリアに分割されてもよい。図16は、9つのエリアに分割した場合の各エリアの詳細な座標範囲を示している。以下、タイムラプス撮影が行われる場合を例にして、図17に示す処理について具体的に説明する。
【0075】
図17に示す処理は、プロセッサ31が記憶装置32に記憶されているプログラムを実行することで開始される。プロセッサ31は、まず、記憶装置32からプロジェクト設定を読み出すことで取得する(ステップS101)。プロジェクト設定には、例えば、タイムラプス撮影の各種条件(撮影インターバルや撮影位置座標)や、使用する容器に関する情報(容器の種類)などが含まれている。
【0076】
なお、ステップS101では、プロジェクト設定に加えて、後述するオートフォーカス処理で使用する各種パラメータを取得してもよい。パラメータは、例えば、Δz、p、M、NA、dymin、dymaxなどである。
【0077】
Δzは、撮像ユニット15の光軸方向への移動ピッチである。Δzの単位はステージ13のモータの駆動パルス(pulse)であり、1駆動パルスは0.0016mmに対応する。pは、撮像素子19の画素ピッチである。pの単位はmmである。Mは、観察光学系18の横倍率である。NAは、観察光学系18の物体側開口数である。dymin、dymaxは、それぞれ相関関数を算出する際の位置ずらし量の最大値と最小値であり、dymin、dymaxの単位はピクセルである。
Δz=32pulse
p=0.0024mm
M=2.2
NA=0.25
dymin=‐30pixel
dymax=+30pixel
【0078】
プロジェクト設定が取得されると、プロセッサ31は、撮影予定時刻まで待機する(ステップS102)。撮影予定時刻になると、プロセッサ31は、観察装置10を制御して、撮像ユニット15を撮影位置へ移動する(ステップS103)。ここでは、ステージ13がxy方向に移動することで、撮像ユニット15を撮影位置へ移動する。
【0079】
その後、プロセッサ31は、オートフォーカス処理を行う(ステップS104)。オートフォーカス処理の詳細について後述する。
【0080】
オートフォーカス処理により撮像ユニット15がフォーカス位置へ移動すると、プロセッサ31は、観察装置10を制御してフォーカス画像を取得する(ステップS105)。
【0081】
さらに、プロセッサ31は、全ての撮影位置でフォーカス画像が取得された否かを判定する(ステップS106)。多点撮影の場合で全ての撮影位置でフォーカス画像が取得されていない場合には、プロセッサ31は、全ての撮影位置でフォーカス画像が取得されるまでステップS103からステップS105の処理を繰り返す。
【0082】
プロセッサ31は、予定された撮影がすべて終了したか否かを判定する(ステップS107)。撮影が終了していない場合には、プロセッサ31は、次の撮影時刻まで待機し、ステップS102からステップS106の処理を繰り返す。予定された撮影がすべて終了すると、プロセッサ31は、図17に示す処理を終了する。これにより、タイムラプス撮影でフォーカスの合った画像を取得することができる。
【0083】
ステップS104で行われるオートフォーカス処理について説明する。ステップS104で行われるオートフォーカス処理が開始されると、プロセッサ31は、スキャン範囲を指定して観察装置10に予備画像の取得を指示する。即ち、予備画像取得処理を行う。これにより、図18に示すステップS111からステップS115の処理が観察装置10で行われる。
【0084】
なお、スキャン範囲は、プロジェクト設定に含まれる容器に関する情報に基づいて決定される。この例では、プロジェクト設定から容器がT75フラスコであると特定され、その結果、プロセッサ31は、スキャン範囲を以下の範囲に決定する。なお、スキャン範囲の上下限である下限zと上限zは、基準位置からの駆動パルス数で表される。
スキャン範囲の下限z=2123pulse
スキャン範囲の上限z=2283pulse
【0085】
観察装置10は、まず、ステージ13を制御して撮像ユニット15の相対位置をスキャン範囲の下限zへ移動する(ステップS111)。その後、観察装置10は、光源ユニット14を制御して試料Sを正方向から照明しながら、撮像ユニット15を制御して試料Sを撮像する(ステップS112)。さらに、観察装置10は、光源ユニット14を制御して試料Sを負方向から照明しながら、撮像ユニット15を制御して試料Sを撮像する(ステップS113)。
【0086】
観察装置10は、撮像ユニット15の相対位置がスキャン範囲の上限zに達しているかを判定する(ステップS114)。相対位置がスキャン範囲の上限zに達していない場合には、観察装置10は、相対位置をΔz(この例では32puluse)だけ移動することで次の観察位置へ移動し(ステップS115)、ステップS112及びステップS113の処理を繰り返す。観察装置10は、以上の処理を相対位置がスキャン範囲の上限zに達するまで繰り返す。
【0087】
予備画像取得処理が終了すると、プロセッサ31は、観察装置10で取得した予備画像に基づいて、図19に示すフォーカス位置算出処理を行う(ステップS116)。
【0088】
まず、プロセッサ31は、予備画像の照明ムラを除去する(ステップS121)。ステップS121では、プロセッサ31は、複数の予備画像のそれぞれに対して、低周波成分をカットするフィルタ処理を行う。このフィルタ処理は、画像領域全体に対して行われる。これにより、撮影により得られた複数の予備画像(以降、複数のオリジナル画像とも記す。)が、照明ムラが除去された複数の画像(以降、複数のフィルタ済画像と記す。)に変換される。
【0089】
なお、以降では、複数のオリジナル画像のうち、正方向照明時に取得したオリジナル画像の各画素の強度をIo,pulse(x,y,z)で参照し、負方向照明時に取得したオリジナル画像の各画素の強度をIo,minus(x,y,z)で参照する。複数のフィルタ済画像のうち、正方向照明時に取得したオリジナル画像をフィルタ処理したフィルタ済画像の各画素の強度をILCF,pulse(x,y,z)で参照し、負方向照明時に取得したオリジナル画像をフィルタ処理したフィルタ済画像の各画素の強度をILCF,minus(x,y,z)で参照する。xは画素の行番号、yは画素の列番号、zは観察位置である。
【0090】
次に、プロセッサ31は、画像強度を規格化する(ステップS122)。ステップS122では、プロセッサ31は、複数のフィルタ済画像を規格化して、平均強度の等しい複数の規格化画像に変換する。具体的には、プロセッサ31は、例えば、複数の規格化画像の各画素が以下の式で計算される強度を有するように、複数の規格化画像を生成すればよい。
【数1】
【0091】
ここでは、Inml,pulse(x,y,z)は複数の規格化画像のうちの正方向照明に対応する規格化画像の各画素の強度であり、Inml,minus(x,y,z)は複数の規格化画像のうちの負方向照明に対応する規格化画像の各画素の強度である。Iaveは複数の規格化画像の平均画素強度である。nはフィルタ済画像の画素数である。
【0092】
さらに、プロセッサ31は、ポジティブコントラスト画像へ変換する(ステップS123)。ステップS123では、プロセッサ31は、以下の演算を行い、ポジティブコントラスト画像を生成する。
【数2】
【0093】
ここでは、Ipc,plus(x,y,z)は正方向照明に対応する規格化画像から生成されたポジティブコントラスト画像の各画素の強度である。Ipc,minus(x,y,z)は負方向照明に対応する規格化画像から生成されたポジティブコントラスト画像の各画素の強度である。Uはコントラスト調整値である。
【0094】
ポジティブコントラスト画像が生成されると、プロセッサ31は、エリア毎且つ観察位置毎に相互相関関数を算出する(ステップS124)。ここでは、プロセッサ31は、各画像群を構成する一組の予備画像から生成された一組のポジティブコントラスト画像から相互相関関数を算出する。より詳細には、画像を上述した9つのエリアに分けて、以下の式を用いてエリア毎に相互相関関数を算出する。
【数3】
【0095】
ここでは、anはエリア番号である。dyはずらし量である。Can(dy,z)はずらし量dyと観察位置zを変数とする相互相関関数である。xan_min,xan_max,yan_min,yan_maxはエリア番号nのエリアの最小x座標、最大x座標、最小y座標、最大y座標である。
【0096】
これにより、図20に示すように、エリア毎且つ観察位置毎に相互相関関数が算出される。なお、図20には、所定のエリア(例えば、a4)の観察位置毎に相互相関関数のみが示されている。相互相関関数が算出されると、プロセッサ31は、エリア毎且つ観察位置毎に相互相関関数のピーク位置をずれ量dypeakとして特定する(ステップS125)。
【0097】
その後、プロセッサ31は、エリア毎に観察位置を変数とするずれ量関数を線形フィッティングする(ステップS126)。ここでは、プロセッサ31は、エリア毎に、同じエリアについて算出された観察位置の異なる複数のずれ量dypeakを最小二乗法で線形にフィッティングして、ずれ量関数dypeak_an(z)を算出する。これにより、エリア毎のずれ量関数とともにずれ量関数の傾きkも算出される。エリア毎のずれ量関数の傾きkは、例えば、図22に示す通りである。
【0098】
ずれ量dypeakは、フォーカス位置から観察位置までの距離に比例し、フォーカス位置において0になると仮定すると、ずれ量関数dypeak_an(z)は、以下の式で表される。ここでは、zbest_anは、エリア番号nのエリアのフォーカス位置である。kは、ずれ量関数の傾きである。
【数4】
【0099】
ステップS126では、ずれ量関数の傾きkをフィッティングにより算出するが、傾きkは理論的には以下の式で表される。ただし、Kは、照明状態に依存する値であり、0<|K|<1である。特に、偏斜照明の場合、0.2<|K|<0.9である。なお、本容器では、Kは0.4から0.5の範囲内である。
【数5】
【0100】
図21には、ステップS126で算出されたずれ量関数が示されている。図21(a)には、エリアa0からa2に対応する3つのずれ量関数が、図21(b)には、エリアa3からa5に対応する3つのずれ量関数が、図21(c)には、エリアa6からa8に対応する3つのずれ量関数が、示されている。
【0101】
エリア毎にずれ量関数が算出されると、プロセッサ31は、エリア毎にフォーカス位置を特定する(ステップS127)。ここでは、プロセッサ31は、ずれ量が0となる相対位置、即ち、ずれ量関数のz切片をフォーカス位置として推定して、エリア毎のフォーカス位置を特定する。エリア毎のフォーカス位置は、例えば、図22に示す通りである。
【0102】
エリア毎にフォーカス位置が特定されると、プロセッサ31は、画像全体のフォーカス位置を算出する(ステップS128)。ここでは、プロセッサ31は、エリア毎のフォーカス位置の平均を画像全体のフォーカス位置として算出する。この例では、図22に示すように、画像全体のフォーカス位置は、z=2187pulseと算出される。
【0103】
画像全体のフォーカス位置が算出され、図22に示すフォーカス位置算出処理が完了すると、プロセッサ31は、観察装置10を制御して、算出したフォーカス位置へ移動して(ステップS117)、図18に示すオートフォーカス処理を終了する。
【0104】
以上のように、本実施形態に係るシステムによれば、システム1と同様に、事前に詳細なパラメータ情報を用意することなしにフォーカス位置を精度良く算出することができる。また、コントラストの高低ではなくずれ量に基づいてフォーカス位置が算出されるため、コントラストのピークが複数生じ得る環境においても、フォーカス位置を算出することができる点もシステム1と同様である。さらに、本実施形態に係るシステムによれば、エリア毎にフォーカス位置を算出してその後に画像全体のフォーカス位置が算出されるため、光軸方向の高さのばらつきが大きい試料Sに対しても良好にフォーカス位置を決定することができる。
【0105】
なお、オートフォーカス処理では、以下の式を満たすことが望ましいが、本実施形態に係るシステムは、これらの式を全て満たしている。
【数6】
【0106】
式(8)は、オートフォーカス処理における撮像ユニット15の光軸方向への移動ピッチΔzとして望ましい範囲を示している。Δzが式(8)の下限(=1/k)以下になると、撮像ユニット15の移動によって生じる像ずれが1画素未満となるため、ずれ量に正しく反映されない可能性がある。このため、フィッティング精度が低下してフォーカス位置の精度の低下を招く虞があり、望ましくない。また、Δzが式(8)の上限以上になると、スキャン範囲内で観察位置を複数点設けることができなくなる。このため、フィッティングが行えず、フォーカス位置を算出することが困難となってしまう。
【0107】
式(9)は、相関関数算出時の位置ずらし量の最大値と最小値の差として望ましい範囲を示している。差が式(9)の下限以下になると、ピーク位置を含む相関関数が算出されない可能性が高くなる。また、差が式(9)の上限以上になると、相関関数の算出に要する計算量が増大し、その結果、オートフォーカス処理に時間がかかってしまう。
【0108】
(第2の実施形態)
図23は、第2の実施形態に係るシステムが行うフォーカス位置算出処理のフローチャートである。図24は、あるエリアにおける観察位置毎の相互相関関数を示すグラフである。図25は、あるエリアにおける相互相関ピーク関数を示すグラフである。図26は、あるエリアにおけるずれ量関数を示すグラフである。図27は、相互相関ピーク関数値を用いた除外データの決定方法を説明するための図である。図28は、ずれ量関数の傾きを用いた除外データの決定方法を説明するための図である。図29は、Z探索範囲を用いた除外データの決定方法を説明するための図である。図30は、エリア毎且つ観察位置毎に算出したフォーカス位置に基づく画像全体のフォーカス位置の決定方法を説明するための図である。以下、図23から図30を参照しながら、本実施形態に係るシステムが行う処理について説明する。
【0109】
本実施形態で用いられる容器は、第1の実施形態の容器と同じであり、Kは0.4から0.5の範囲内である。本実施形態に係るシステムは、第1の実施形態に係るシステムと同じ構成を有している。ただし、図19に示すフォーカス位置算出処理の代わりに、図23に示すフォーカス位置算出処理を行う点が、第1の実施形態に係るシステムとは異なる。なお、図23に示すフォーカス位置算出処理は、試料の高さのばらつきが特に大きいなど、スキャン範囲を広くとる必要がある場合に好適である。
【0110】
本実施形態で使用されるパラメータのうち、第1の実施形態で使用されるパラメータと値が異なるものは以下の通りである。スキャン範囲を第1の実施形態よりも広くとり、且つ、オートフォーカス処理における画像取得枚数の増大を抑えるためにΔzを第1の実施形態よりも大きくとっている。
Δz=48pulse
スキャン範囲の下限z=1931pulse
スキャン範囲の上限z=2411pulse
【0111】
以下、図23に示すフォーカス位置算出処理について具体的に説明する。なお、ステップS201からステップS205の処理は、図19のステップS121からステップS125の処理と同じである。
【0112】
図24は、エリアa4について算出された相互相関関数を示している。図24(a)は、スキャン範囲の下限に近い観察位置における相互相関関数を、図24(b)は、スキャン範囲の中心付近の観察位置における相互相関関数を、図24(c)は、スキャン範囲の上限に近い観察位置における相互相関関数を、示している。
【0113】
スキャン範囲を広くとった場合には、フォーカス位置算出処理に使用される複数の予備画像に、フォーカス位置から大きく外れた観察位置で取得した予備画像が含まれることになる。このような画像では、画像間のずれ量も大きくなるため、相関関数のピークが位置ずらし量の最大値と最小値の範囲外に生じてしまい、その結果、算出した相関関数中に真のピークが現れず誤ったずれ量を算出してしまう可能性がある。図24(a)及び図24(c)に示す相関関数は、このケースに該当する。また、仮に画像間のずれ量が位置ずらし量の最大値と最小値の範囲内に収まっていたとしても、画像のボケが強いため、相関関数にはっきりとしたピークが生じないことがある。この場合も、画像間のずれ量は正しく算出されない。
【0114】
このように、スキャン範囲が広い場合には、観察位置毎に算出した画像間のずれ量には、正しくない値が含まれ得る。このため、本実施形態では、このような正しくないずれ量に起因する情報がフォーカス位置の算出に使用されないように、演算処理から除外してから、フォーカス位置を算出する。
【0115】
正しくないずれ量を見分けるために、本実施形態では、プロセッサ31は、エリア毎且つ観察位置毎に、ピーク位置における相関値を特定する(ステップS206)。つまり、プロセッサ31は、ピーク位置(ずれ量)とともにピーク位置における相関値も算出し、以降のステップにおいて、複数のずれ量と複数のピーク位置における相関値とに基づいてフォーカス位置を算出する。なお、図25は、ステップS206で算出したピーク位置における相関値を用いた、あるエリア(例えば、エリアa4)における相互相関ピーク関数Can_max(z)を示している。
【0116】
その後、プロセッサ31は、第1の実施形態ではエリア毎に行っていたずれ量関数のフィッティングとフォーカス位置の推定を、エリア毎且つ観察位置毎に行う(ステップS207、ステップS208)。これは、エリア毎にフィッティングとフォーカス位置の推定を行うと、フォーカス位置から大きく外れた観察位置の情報が各エリアに関する計算中に必然的に含まれることになり、精度が低下してしまうためである。これに対して、エリア毎且つ観察位置毎にフィッティングとフォーカス位置の推定を行うと、フォーカス位置から大きく外れた観察位置の情報を使用した計算と使用しない計算を分けることが可能である。これにより、フォーカス位置から大きく外れた観察位置の情報を使用しない計算結果のみを選択してフォーカス位置の算出に利用することで、フォーカス位置を精度よく算出することができる。
【0117】
具体的には、プロセッサ31は、注目する観察位置のずれ量と、その観察位置に隣接する別の観察位置のずれ量の2つ情報からずれ量関数を線形フィッティングする(ステップS207)。つまり、2点を直線で結んでずれ量関数を算出する。さらに、プロセッサ31は、2点を結んで算出したずれ量関数毎に、ずれ量が0となる観察位置をフォーカス位置として推定する(ステップS208)。図26は、ステップS207で、あるエリア(例えば、エリアa4)について観察位置毎に算出された複数のずれ量関数をつなげて示した図である。
【0118】
ステップS208でフォーカス位置が推定されると、プロセッサ31は、推定された複数のフォーカス位置のうち、真のフォーカス位置を決定するための演算処理から除外すべきものを決定する(ステップS209)。なお、3つの判断基準を用いて、除外すべきフォーカス位置を決定する。
【0119】
まず1つ目の基準は、相互相関ピーク関数値(相関値)を用いたものである。ピーク位置における相関値が小さい観察位置はフォーカス位置から大きく外れていることが想定される。この想定に基づいて、不要な情報を見分けることできる。
【0120】
プロセッサ31は、注目する観察位置zについて算出された相関関数のピーク位置における相関値Can_max(z)と、その観察位置に隣接した観察位置zi+1について算出された相関関数のピーク位置における相関値Can_max(zi+1)の平均値Can_max(i)を、エリア毎に算出する。なお、iは注目する観察位置(以降、単に注目位置と記す。)を示している。
【0121】
さらに、プロセッサ31は、同じ観察位置に注目して算出された異なる複数のエリアの平均値Can_max(i)を以下の式でさらに平均して、新たな平均値Cave(i)を算出する。
【数7】
【0122】
その後、プロセッサ31は、注目位置iをスキャン範囲でずらしながら、全ての注目位置iについて平均値を算出する。すべての平均値が算出されると、最大の平均値が1となるように以下の式で注目位置の平均値を規格化する。Cnorm(i)は規格化された平均値である。
【数8】
【0123】
プロセッサ31は、規格化された平均値が閾値以下である注目位置についてはフォーカス位置から除外する。換言すると、プロセッサ31は、相関のピークにおける相関値が閾値を下回る注目位置(観察位置)に対応する情報を、以降で行われるフォーカス位置を算出するための演算処理から除外する。なお、閾値は、例えば、0.3である。図27には、0.3を閾値としてフォーカス位置から除外すべき注目位置を選択した様子が示されている。この例では、注目位置i=0、1、2、8、9の5点が除外されている。
【0124】
2つ目の基準は、ずれ量関数の傾きを用いたものである。観察位置がフォーカス位置からずれている方向(つまり、焦点面がサンプル面からずれている方向)によって被写体が画像内でずれる方向が定まるため、ずれ量関数の傾きの正負は、予め既知である。ずれ量関数の傾きが想定される傾きとは逆符号となる場合には、その観察位置において正しいずれ量が算出されていないとみなし得る。このため、ずれ量関数の傾きに基づいて、不要な情報を見分けることができる。
【0125】
プロセッサ31は、以下の式を用いて、ずれ量関数の傾きを注目位置毎且つエリア毎に算出する。kan(i)は、注目位置i、n番目のエリアanにおけるずれ量関数の傾きである。
【数9】
【0126】
プロセッサ31は、ずれ量関数の傾きが所定の符号になるエリアと注目位置との組み合わせについては、フォーカス位置から除外する。所定の符号は、この例ではマイナスである。図28には、フォーカス位置から除外すべき注目位置とエリアの組み合わせを選択した様子が示されている。この例では、注目位置とエリアの組み合わせ(i,n)=(0,8)、(1,0)、(1,8)、(2,0)、(2,1)、(2,2)、(2,3)、(2,6)、(2,7)、(2,8)、(7,6)、(7,7)、(9,3)、(9,4)、(9,6)が除外されている。
【0127】
3つ目の基準は、スキャン範囲(Z探索範囲)を用いたものである。スキャン範囲内にフォーカス位置が存在する前提でスキャン範囲は設定されている。ステップS208で推定されるフォーカス位置がスキャン範囲外にある場合、誤って推定された可能性が高い。このため、推定されたフォーカス位置がスキャン範囲内か否かに基づいて、不要な情報を見分けることができる。
【0128】
ステップS208で算出されるフォーカス位置は、ずれ量関数のz切片であるため、以下の式で表される。zbest_an(i)は、注目位置i、エリアanにおける推定されたフォーカス位置である。
【数10】
【0129】
プロセッサ31は、推定されたフォーカス位置がスキャン範囲外にあるエリアと注目位置との組み合わせについては、フォーカス位置から除外する。この例では、スキャン範囲は、1931から2411pulseである。図29には、フォーカス位置から除外すべき注目位置とエリアの組み合わせを選択した様子が示されている。この例では、注目位置とエリアの組み合わせ(i,n)=(0,0)から(0,8)、(1,0)から(1,3)、(1,5)から(1,8)、(2,0)から(2,8)、(8,0)から(8,8)、(9,0)から(9,8)が除外されている。
【0130】
推定されたフォーカス位置から不適切なフォーカス位置が除外されると、プロセッサ31は、除外後に残った推定されたフォーカス位置に基づいて、画像全体のフォーカス位置を決定する(ステップS210)。
【0131】
ステップS210では、プロセッサ31は、まず、同じ注目位置(観察位置)について推定された複数のエリアのフォーカス位置の平均と標準偏差を、以下の式で算出する。ここで、neffは除外後に残ったエリア数であり、注目位置毎に異なり得る。zbest_ave(i)は、注目位置iについて推定された平均フォーカス位置である。zbest_stdev(i)は、注目位置iについて推定されたフォーカス位置の標準偏差である。
【数11】
【0132】
図30には、ステップS210で算出された平均フォーカス位置とフォーカス位置の標準偏差が示されている。平均フォーカス位置とフォーカス位置の標準偏差が算出されると、プロセッサ31は、標準偏差が最小となる注目位置の平均フォーカス位置を画像全体のフォーカス位置に決定する。なお、標準偏差が最小の注目位置に着目するのは、標準偏差が最小の注目位置ではエリア毎に推定されるフォーカス位置の差が小さく、フォーカス位置から外れるほど顕著に生じる様々な要因の誤差が少ないことを意味するためである。
【0133】
以上のように、本実施形態に係るシステムによっても、第1の実施形態に係るシステムと同様に、事前に詳細なパラメータ情報を用意することなしにフォーカス位置を精度良く算出することが可能であり、コントラストのピークが複数生じ得る環境においても、フォーカス位置を算出することができる。さらに、本実施形態に係るシステムによれば、スキャン範囲を広くとる必要がある場合であっても、正しいフォーカス位置を算出することができる。
【0134】
(第3の実施形態)
図31は、相互相関ピーク関数値を用いた除外データの決定方法を説明するための図である。図32は、エリア毎且つ観察位置毎に算出したフォーカス位置に基づく画像全体のフォーカス位置の決定方法を説明するための図である。以下、図31及び図32を参照しながら、本実施形態に係るシステムが行う処理について説明する。
【0135】
本実施形態に係るシステムは、上述した第2の実施形態に係るシステムと同じ構成を有し、さらに、図23に示すフォーカス位置算出処理を行う点についても、第2の実施形態に係るシステムと同様である。ただし、本実施形態に係るシステムは、フォーカス位置算出処理において、図23のステップS209で行われる除外すべき情報を決定する処理と、図23のステップS210で行われる画像全体のフォーカス位置を決定する処理が、第2の実施形態に係るシステムとは異なる。本実施形態に係るシステムが行うフォーカス位置算出処理は、例えば、細胞が1つしか映っていない場合など画像内において被写体が局所的に分布している場合において特に好適である。
【0136】
本実施形態で用いられる容器は、例えば、第2の実施形態とは異なり、T25フラスコである。この容器では、Kは、0.6から0.8の範囲内である。その他、本実施形態で使用されるパラメータのうち、第2の実施形態で使用されるパラメータと値が異なるものは以下の通りである。
スキャン範囲の下限z=1865pulse
スキャン範囲の上限z=2345pulse
【0137】
本実施形態でも、ステップS209において、プロセッサ31は、3つの判断基準を用いて、除外すべきフォーカス位置を決定する。このうちの2つは、ずれ量関数の傾きを用いるものとスキャン範囲を用いるものであり、第2の実施形態の2つ目と3つ目の判断基準と同様であるので、説明を省略する。
【0138】
残りの一つの基準は、相互相関ピーク関数値(相関値)を用いたものであり、この基準は、第2の実施形態の1つ目の基準に類似している。具体的には、プロセッサ31は、まず、注目する観察位置zについて算出された相関関数のピーク位置における相関値Can_max(z)と、その観察位置に隣接した観察位置zi+1について算出された相関関数のピーク位置における相関値Can_max(zi+1)の平均値Can_max(i)を、エリア毎に算出する。この点は、第2の実施形態と同様である。
【0139】
その後、プロセッサ31は、注目位置iをスキャン範囲でずらしながら、全ての注目位置iについて平均値Can_max(i)を算出する。すべての平均値が算出されると、最大の平均値が1となるように以下の式で注目位置の平均値を規格化する。Can_norm(i)は規格化された平均値である。このように、本実施形態では、規格化された平均値をエリア毎に算出する点が、第2の実施形態とは異なっている。
【数12】
【0140】
プロセッサ31は、規格化された平均値が閾値以下である注目位置とエリアの組み合わせについてはフォーカス位置から除外する。換言すると、プロセッサ31は、相関のピークにおける相関値が閾値を下回る注目位置(観察位置)に対応する情報を、以降で行われるフォーカス位置を算出するための演算処理から除外する。なお、閾値は、例えば、0.3である。図31には、エリアa4について0.3を閾値としてフォーカス位置から除外すべき注目位置を選択した様子が示されている。この例では、エリアa4について注目位置i=0、1、2、3、7、8、9の7点が除外されている。
【0141】
推定されたフォーカス位置から不適切なフォーカス位置が除外されると、プロセッサ31は、除外後に残った推定されたフォーカス位置に基づいて、画像全体のフォーカス位置を決定する(ステップS210)。
【0142】
ステップS210では、プロセッサ31は、まず、隣接する注目位置(観察位置)について算出された、同じエリアのフォーカス位置の差分と隣接平均を、エリア毎に以下の式で算出する。ここで、Zan (2)(i)はフォーカス位置の差分であり、Zbest_an (ave)(i)はフォーカス位置の隣接平均である。
【数13】
【0143】
図32は、エリアa4について算出されたフォーカス位置の差分と隣接平均を示している。フォーカス位置の差分と隣接平均が算出されると、図32に示すように、プロセッサ31は、エリア毎に、差分が最小となる注目位置を特定し、特定した注目位置に関するフォーカス位置の隣接平均Zbest_an_eff (ave)(i)をそのエリアのフォーカス位置として決定する。この例では、差分が最小の注目位置としてi=4が特定され、i=4の隣接平均がエリアa4のフォーカス位置として決定される。
【0144】
なお、フォーカス位置の差分が最小の注目位置に着目するのは、外乱の影響によってフォーカス位置の推定精度が低下することを回避するためである。正しくフォーカス位置が推定されるのであれば、推定されたフォーカス位置は注目位置によらず近似しているはずである。従って、隣接する注目位置間でフォーカス位置の差分が大きいところは推定されたそれらのフォーカス位置が外乱の影響で大きく異なっていると考えられ、そのような隣接する注目位置で推定されたフォーカス位置を信用することは望ましくない。一方で、隣接する注目位置で推定されたフォーカス位置の差分が最小となる場合には、それらのフォーカス位置はほぼ一定であり、安定した推定結果が得られていることから、外乱の影響を受けておらず信頼できると判断可能である。以上の理由から、本実施形態では、フォーカス位置の差分が最小となる隣接する注目位置において推定されたフォーカス位置を用いてフォーカス位置を特定する。
【0145】
また、各エリアのフォーカス位置は、以下のとおりである。この例では、ステップS209において除外されなかったエリアa1、a4、a6、a8のデータから算出されるため、これらのエリアのフォーカス位置のみが算出されている。
best_a1_eff (ave)(4)=2109.0pulse
best_a4_eff (ave)(4)=2106.9pulse
best_a6_eff (ave)(4)=2110.9pulse
best_a8_eff (ave)(4)=2108.8pulse
【0146】
最後に、プロセッサ31は、算出された全エリア(この例では4つ)のフォーカス位置を平均して、画像全体のフォーカス位置として決定する。この例では、最終的なフォーカス位置は、2109pulseである。
【0147】
以上のように、本実施形態に係るシステムによっても、第1の実施形態、第2の実施形態に係るシステムと同様に、事前に詳細なパラメータ情報を用意することなしにフォーカス位置を精度良く算出することが可能であり、コントラストのピークが複数生じ得る環境においても、フォーカス位置を算出することができる。さらに、本実施形態に係るシステムによれば、エリアをまたがった計算を極力排除することによりエリア毎のフォーカス位置を正しく算出し、それ等のフォーカス位置に基づいて画像全体のフォーカス位置が決定される。従って、被写体が局所的にのみ存在する場合であっても、正しいフォーカス位置を算出することができる。
【0148】
(第4の実施形態)
図33は、第4の実施形態に係るシステムが行うオートフォーカス処理のフローチャートである。図34は、前回のオートフォーカス処理で取得されたフォーカス情報を示すテーブルである。以下、図33及び図34を参照しながら、本実施形態に係るシステムが行う処理について説明する。
【0149】
本実施形態に係るシステムは、第2の実施形態に係るシステムと同じ構成を有し、図17に示すタイムラプス撮影処理を行う点も、第2の実施形態に係るシステムと同様である。ただし、各撮影点についての2回目以降の撮影において、図33に示すオートフォーカス処理を行う点が、第2の実施形態に係るシステムとは異なる。
【0150】
なお、図34には、1回目の撮影時に行われたオートフォーカス処理で算出されたフォーカス位置とエリア毎のずれ量関数の傾きを示している。プロセッサ31は、1回目の撮影時に、これらの値を記憶装置32に格納している。
【0151】
以下、図33に示すオートフォーカス処理について具体的に説明する。なお、図33に示すオートフォーカス処理は、ずれ量関数の傾きは1回目撮影時以降に大きく変化しないという前提で、オートフォーカス処理における画像取得枚数を大幅に削減し、高速なフォーカス合わせを可能とするものである。
【0152】
まず、プロセッサ31は、記憶装置32から前回のフォーカス情報を取得する(ステップS401)。フォーカス情報には、図34に示すように、前回算出したフォーカス位置Zevaと各エリアのずれ量関数の傾きkan_evaが含まれる。
【0153】
次に、プロセッサ31は、観察装置10を制御することで、観察位置をステップS401で取得したフォーカス位置Zevaへ移動し(ステップS402)、正方向から照明しながら撮像し(ステップS403)、さらに負方向から撮像しながら撮像する(ステップS404)。さらに、プロセッサ31は、得られた2枚の予備画像からエリア毎のずれ量を算出する(ステップS405)。ステップS405の処理は、第2の実施形態と同様であり、図23のステップS201からステップS205と同様である。
【0154】
エリア毎のずれ量が算出されると、フォーカス情報を用いてエリア毎のフォーカス位置を改めて算出する(ステップS406)。具体的には、エリア毎のフォーカス位置Zbest_an_evaは、以下の式で算出される。
【数14】
【0155】
最後に、プロセッサ31は、エリア毎に算出したフォーカス位置を平均して、画像全体のフォーカス位置を算出する(ステップS407)。
【0156】
以上のように、本実施形態に係るシステムによれば、2回目以降のオートフォーカスを少ない画像取得枚数で高速に行うことができるため、撮影時間を大幅に短縮することができる。
【0157】
なお、以上では、2回目以降のオートフォーカス処理で、1つの画像群(1対の予備画像)のみを取得する例を示したが、2回目以降のオートフォーカス処理において、2つの画像群(2対の予備画像)を取得してもよい。この場合、2つの画像群を取得する観察位置を前回のフォーカス位置の近傍に設定すればよく、2つの画像群からフォーカス位置を再計算する方法としては、例えば、第1の実施形態で説明した方法を用いればよい。2つの画像群を取得する場合についても1つの画像群を取得する場合と同様に、オートフォーカス処理に要する時間を短縮することができる。
【0158】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態を変形した変形形態および上述した実施形態に代替する代替形態が包含され得る。つまり、各実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形することが可能である。また、1つ以上の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、新たな実施形態を実施することができる。また、各実施形態に示される構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよく、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加してもよい。さらに、各実施形態に示す処理手順は、矛盾しない限り順序を入れ替えて行われてもよい。即ち、本発明の観察システム、フォーカス位置算出方法、プログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0159】
上述した実施形態では、観察装置と制御装置が別々の装置である場合を例示したが、これらは単一の装置として構成されてもよい。即ち、観察システムは、観察装置単体で構成されてもよく、観察装置の制御部が制御装置として動作してもよい。また、観察装置は、上述した実施形態において例示した装置に限らず、例えば、オートフォーカス機能を備えた顕微鏡装置であってもよい。顕微鏡装置は、正立顕微鏡装置であってもよく、倒立顕微鏡装置であってもよい。また、透過型顕微鏡装置であってもよく、落射型顕微鏡装置であってもよい。
【0160】
上述した実施形態では、観察位置毎に予備画像を2枚取得する例を示したが、3枚以上取得してもよい。また、180°方向の異なる2方向から試料Sを照明して予備画像を取得する例を示したが、3方向以上の異なる方向から試料Sを照明して予備画像を取得してもよい。
【0161】
また、第2の実施形態及び第3の実施形態では、フォーカス位置の決定に適当でない情報を除外してからフォーカス位置を算出する例を示したが、フォーカス位置の決定に適当でない情報を除外する処理は、第1の実施形態において行われてもよい。
【符号の説明】
【0162】
1 :システム
10 :観察装置
13 :ステージ
14 :光源ユニット
15 :撮像ユニット
16 :光源
18 :観察光学系
19 :撮像素子
20 :インキュベータ
30 :制御装置
31 :プロセッサ
32 :記憶装置
32a :プログラム
33 :入力装置
34 :表示装置
35 :通信装置
36 :バス
CV、CV1 :培養容器
FP :焦点面
S :試料
SP :サンプル面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34