(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026004
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】焼結設備検査装置
(51)【国際特許分類】
F27B 21/14 20060101AFI20250214BHJP
F27B 21/08 20060101ALI20250214BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F27B21/14 B
F27B21/08 A
F27D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131320
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 伸一
(72)【発明者】
【氏名】林川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】野田 恵吾
(72)【発明者】
【氏名】中島 隆博
【テーマコード(参考)】
4K056
【Fターム(参考)】
4K056AA11
4K056CA02
4K056FA11
4K056FA27
(57)【要約】
【課題】焼結設備を全長に亘って精度良く検査可能な焼結設備検査装置を提供する。
【解決手段】焼結設備検査装置100は、1つのパレット台車10と、パレット台車に取り付けられ、2本の軌条201のうちの何れか一方の軌条側に位置するスライドベッド205、受梁202及び軌条の位置を測定するための第1センサ20と、パレット台車に取り付けられ、他方の軌条側に位置するスライドベッド、受梁及び軌条の位置と、を測定するための第2センサ30と、パレット台車の外部の所定位置に設置されたトータルステーション40と、パレット台車の一方の軌条側に取り付けられた第1ターゲット50と、パレット台車の他方の軌条側に取り付けられた第2ターゲット60と、第1センサ及び第2センサの測定結果と、トータルステーションで測定した第1ターゲット及び第2ターゲットの位置とに基づき、焼結設備200を検査する演算部70と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結鉱の原料を搬送しながら加熱することで焼結鉱を生成する焼結設備を検査する焼結設備検査装置であって、
前記焼結設備は、
互いに平行に設けられた2本の軌条と、
前記2本の各軌条をそれぞれ支持する2本の受梁と、
前記2本の軌条上において、前記各軌条に平行な搬送方向に互いに接触するように配置され、それぞれ移動可能な複数のパレット台車と、
前記複数のパレット台車のうちの何れかに前記搬送方向への動力を伝達する動力部と、
前記2本の軌条間において、前記パレット台車の下方に設けられた、空気を吸気するための経路を構成するウィンドボックスと、
前記各軌条とそれぞれ平行に、前記ウィンドボックスの上端に取り付けられた、2本のスライドベッドと、
を備え、
前記パレット台車は、
焼結鉱の原料及び焼結鉱を内部に保持可能なパレットと、
前記各軌条上を回転移動する複数の車輪と、
前記パレットに取り付けられ、前記複数の各車輪をそれぞれ回転自在に支持する複数の車軸と、
前記2本の各スライドベッドと上下方向にそれぞれ対向するように、前記パレットの下部に付勢手段を介してそれぞれ取り付けられ、前記付勢手段によって前記各スライドベッドに向けてそれぞれ付勢される2本のシールバーと、
を有し、
前記焼結設備検査装置は、
1つの前記パレット台車と、
前記パレット台車に取り付けられ、前記2本の軌条のうちの何れか一方の軌条側に位置する前記スライドベッド、前記受梁及び前記一方の軌条の位置を測定するための第1センサと、
前記パレット台車に取り付けられ、前記2本の軌条のうちの何れか他方の軌条側に位置する前記スライドベッド、前記受梁及び前記他方の軌条の位置と、を測定するための第2センサと、
前記パレット台車の外部の所定位置に設置されたトータルステーションと、
前記パレット台車の前記一方の軌条側に取り付けられた第1ターゲットと、
前記パレット台車の前記他方の軌条側に取り付けられた第2ターゲットと、
前記第1センサ及び前記第2センサの測定結果と、前記トータルステーションで測定した前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットの位置とに基づき、前記焼結設備を検査する演算部と、
を備える焼結設備検査装置。
【請求項2】
前記第1センサ及び前記2センサのそれぞれは、前記スライドベッドの上面までの距離を測定する第1レーザ距離計と、前記スライドベッドの側端までの距離を測定する第2レーザ距離計と、前記軌条及び前記受梁を上方から見たときの断面形状を測定する光切断方式のセンサと、を有する、請求項1に記載の焼結設備検査装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記第1センサ及び前記第2センサの測定結果と、前記トータルステーションで測定した前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットの位置とに基づき、前記所定位置を基準とする、前記2本の軌条の上下方向の位置及び前記2本のスライドベッドの上下方向の位置と、前記所定位置を基準とする、前記2本の軌条の蛇行量及び前記2本のスライドベッドの蛇行量とを演算し、前記演算結果に基づき、前記焼結設備を検査する、請求項1又は2に記載の焼結設備検査装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記第1センサ及び前記第2センサの測定結果と、前記トータルステーションで測定した前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットの位置とに基づき、前記所定位置を基準とする、前記2本の軌条間の上下方向の離隔距離及び前記搬送方向に直交する水平方向の離隔距離と、前記所定位置を基準とする、前記2本のスライドベッドの上面間の上下方向の離隔距離及び前記搬送方向に直交する水平方向の離隔距離とを演算し、前記演算結果に基づき、前記焼結設備を検査する、請求項1又は2に記載の焼結設備検査装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記第1センサ及び前記第2センサが有する前記光切断方式のセンサの測定結果と、前記トータルステーションで測定した前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットの位置とに基づき、前記所定位置を基準とする、前記2本の軌条の上面の傾きと、前記所定位置を基準とする、前記2本の受梁の上面の傾きとを演算し、前記演算結果に基づき、前記焼結設備を検査する、請求項2に記載の焼結設備検査装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記演算結果に基づき、前記スライドベッドと前記シールバーとの間で漏風が発生している可能性がある前記搬送方向の位置を特定する、請求項1又は2に記載の焼結設備検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱の原料を搬送しながら加熱することで焼結鉱を生成する焼結設備を検査する焼結設備検査装置に関する。特に、本発明は、原料を供給する給鉱側(搬送方向上流側)から、焼結鉱を排出する排鉱側(搬送方向下流側)までの全長に亘って、軌条やスライドベッドを備える焼結設備を精度良く検査可能な焼結設備検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、焼結設備の概略構成を模式的に示す図である。
図1(a)は、焼結設備の全体構成を示す側面図(搬送方向に直交する水平方向から見た図)である。
図1(b)は、1つのパレット台車近傍を示す正面図(搬送方向から見た図)である。
図1(c)は、
図1(b)における破線Aで囲った領域の拡大図である。
図1に示すように、焼結設備200は、焼結鉱の原料(鉱石粉、石灰粉、石炭粉)を給鉱側から排鉱側まで、
図1(a)に太線矢印Fで示す方向に搬送しながら加熱することで、焼結鉱を生成する設備である。なお、
図1及び以下の説明では、焼結鉱の原料及び焼結鉱の双方を同じ符号Sで表す。
【0003】
焼結設備200は、互いに平行に設けられた2本の軌条201(201a、201b)と、2本の各軌条201をそれぞれ支持する2本の受梁202(202a、202b)と、2本の軌条201上において、各軌条201に平行な搬送方向に互いに接触するように配置され、それぞれ移動可能な複数のパレット台車10と、複数のパレット台車10のうちの何れかに搬送方向への動力を伝達する動力部203と、2本の軌条201間において、パレット台車の下方に設けられた、空気を吸気するための経路を構成するウィンドボックス204と、各軌条201とそれぞれ平行に、ウィンドボックス204の上端に取り付けられた、2本のスライドベッド205(205a、205b)と、を備える。
図1に示す例では、動力部203は、後述するパレット台車10の車軸103に噛み合うスプロケットから構成されている。車軸103に噛み合うスプロケットが回転することで、この車軸103を有するパレット台車10に搬送方向への動力が伝達される。
【0004】
また、焼結設備200は、ウィンドボックス204に連通するウィンドレグ206と、ウィンドレグ206に連通する主排風管207と、を備える。これらウィンドボックス204、ウィンドレグ206及び主排風管207によって、空気を吸気するための経路が形成されている。
さらに、焼結設備200は、焼結鉱の原料Sをパレット台車10に供給する給鉱部208と、原料Sを着火する点火炉209と、を備える。
原料Sの搬送方向上流側に位置する給鉱部208からパレット台車10に供給された原料Sは、パレット台車10の移動に伴って、点火炉209で着火され、次いでウィンドボックス204等の経路で空気が吸気される。これにより、原料Sが焼成反応し、吸気に伴って焼成反応が原料Sの上部から下部に向けて原料S全体に拡大することで、焼結鉱Sが生成される。生成された焼結鉱Sは、搬送方向下流側でパレット台車10から排出され、パレット台車10のみが
図1(a)に太線矢印Rで示す方向に移動して、再び給鉱部208から焼結鉱の原料Sが供給される動作が繰り返される。
【0005】
パレット台車10は、焼結鉱の原料及び焼結鉱Sを内部に保持可能なパレット101と、各軌条201上を回転移動する複数の車輪102と、パレット101に取り付けられ、複数の各車輪102をそれぞれ回転自在に支持する複数の車軸103と、2本の各スライドベッド205と上下方向にそれぞれ対向するように、パレット101の下部にバネ等の付勢手段104を介してそれぞれ取り付けられ、付勢手段104によって各スライドベッド205に向けてそれぞれ付勢される2本のシールバー105と、を有する。具体的には、2本のシールバー105は、パレット101の下面に形成された凹部内に設けられた付勢手段104に取り付けられている。
また、図示を省略するが、パレット台車10は、搬送方向に隣接する一対のパレット101の間において、一対のパレット101のうちの何れか一方のパレット101に取り付けられ、何れか他方のパレット101に接触するプレート状の端面ライナーを有する。
【0006】
以上に説明した構成を有する焼結設備200においては、スライドベッド205及び軌条201の上下方向及び水平方向(搬送方向に直交する水平方向)の位置の管理が課題となっている。
例えば、スライドベッド205と軌条201との間の上下方向の離隔距離が、付勢手段104の伸び限界及び縮み限界等によって決まる所定の管理範囲よりも小さくなれば、スライドベッド205とシールバー105との間に隙間が生じ、その隙間において、焼結鉱Sの生産性を低下させる要因となる漏風(ウィンドボックス204内に、焼成反応における吸気に必要な空気以外の不要な空気が侵入する現象であり、ウィンドボックス204での吸気を困難なものとする原因となる)が発生するおそれがある。逆に、スライドベッド205と軌条201との間の上下方向の離隔距離が、上記の管理範囲よりも大きくなれば、シールバー105がスライドベッド205に強く押し付けられることで、シールバー105及びスライドベッド205が摩耗し易くなり、摩耗した箇所で漏風が発生するおそれがある。
【0007】
また、例えば、スライドベッド205と軌条201との間の水平方向の離隔距離が、所定の管理範囲を超えていれば(所定の管理範囲よりも大きくなったり小さくなったりすれば)、シールバー105及びスライドベッド205の摩耗が偏り、偏った摩耗箇所で漏風が発生するおそれがある。
さらに、例えば、2本の軌条201間の水平方向の離隔距離が、所定のしきい値以上であれば、車輪102が軌条201から外れる脱輪等の操業トラブルが生じるおそれがある。
【0008】
上記のような理由から、スライドベッド205及び軌条201の上下方向及び水平方向の位置の管理が課題となっているが、一般的に、焼結設備200の原料Sを供給する給鉱側から焼結鉱Sを排出する排鉱側までの距離は、100mを超える長さを有する。このため、一般的な距離測定装置や形状測定装置を用いて、その全長に亘って、スライドベッド205及び軌条201の上下方向及び水平方向の位置を測定するには、長時間に亘って焼結設備200の操業を休止する必要があり、高頻度に測定を実行することができないという問題がある。
【0009】
例えば、特許文献1には、軌条(レール)の断面形状を測定する光切断方式の装置が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の装置を焼結設備200の1つのパレット台車10に取り付けて、このパレット台車10を移動させれば、軌条201等の位置を全長に亘って測定可能であると考えられる。
しかしながら、パレット台車10が、軌条201上のどの位置を移動するかは不明であるし、パレット台車10が搬送方向(移動方向)周りに傾くこともあるため、特許文献1に記載の装置を1つのパレット台車10に取り付けただけの構成では、スライドベッド205及び軌条201の上下方向及び水平方向の位置を精度良く測定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、原料を供給する給鉱側から、焼結鉱を排出する排鉱側までの全長に亘って、軌条やスライドベッドを備える焼結設備を精度良く検査可能な焼結設備検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明者らは、ターゲットまでの距離及び角度を測定可能なトータルステーションを利用することに着眼した。ターゲットを1つのパレット台車の一方の軌条側及び他方の軌条側にそれぞれ取り付ける一方、トータルステーションをパレット台車の外部の所定位置に設置し、トータルステーションで各ターゲットまでの距離及び角度(すなわち、トータルステーションが設置されている所定位置を基準とする各ターゲットの位置)を測定すれば、所定位置を基準とする、パレット台車の位置(搬送方向の位置、搬送方向に直交する水平方向の位置)や傾き(搬送方向周りの傾き)を算出可能である。そこで、本発明者らは、パレット台車にスライドベッドや軌条の位置を測定するためのセンサを取り付けて、そのセンサの測定結果と、トータルステーションで測定したターゲットの位置(換言すれば、所定位置を基準とするパレット台車の位置や傾き)とを組み合わせれば、パレット台車の位置や傾きの影響を受けずに(パレット台車の位置や傾きの影響が相殺されるように)、スライドベッドや軌条の位置(所定位置を基準とする位置)を精度良く演算できることに想到し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、焼結鉱の原料を搬送しながら加熱することで焼結鉱を生成する焼結設備を検査する焼結設備検査装置であって、前記焼結設備は、互いに平行に設けられた2本の軌条と、前記2本の各軌条をそれぞれ支持する2本の受梁と、前記2本の軌条上において、前記各軌条に平行な搬送方向に互いに接触するように配置され、それぞれ移動可能な複数のパレット台車と、前記複数のパレット台車のうちの何れかに前記搬送方向への動力を伝達する動力部と、前記2本の軌条間において、前記パレット台車の下方に設けられた、空気を吸気するための経路を構成するウィンドボックスと、前記各軌条とそれぞれ平行に、前記ウィンドボックスの上端に取り付けられた、2本のスライドベッドと、を備え、前記パレット台車は、焼結鉱の原料及び焼結鉱を内部に保持可能なパレットと、前記各軌条上を回転移動する複数の車輪と、前記パレットに取り付けられ、前記複数の各車輪をそれぞれ回転自在に支持する複数の車軸と、前記2本の各スライドベッドと上下方向にそれぞれ対向するように、前記パレットの下部に付勢手段を介してそれぞれ取り付けられ、前記付勢手段によって前記各スライドベッドに向けてそれぞれ付勢される2本のシールバーと、を有し、前記焼結設備検査装置は、1つの前記パレット台車と、前記パレット台車に取り付けられ、前記2本の軌条のうちの何れか一方の軌条側に位置する前記スライドベッド、前記受梁及び前記一方の軌条の位置を測定するための第1センサと、前記パレット台車に取り付けられ、前記2本の軌条のうちの何れか他方の軌条側に位置する前記スライドベッド、前記受梁及び前記他方の軌条の位置と、を測定するための第2センサと、前記パレット台車の外部の所定位置に設置されたトータルステーションと、前記パレット台車の前記一方の軌条側に取り付けられた第1ターゲットと、前記パレット台車の前記他方の軌条側に取り付けられた第2ターゲットと、前記第1センサ及び前記第2センサの測定結果と、前記トータルステーションで測定した前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットの位置とに基づき、前記焼結設備を検査する演算部と、を備える焼結設備検査装置を提供する。
なお、本発明における「スライドベッド、受梁及び軌条の位置」は、上下方向の位置及び水平方向(搬送方向に直交する水平方向)の位置の少なくとも何れか一方を意味する。
また、本発明における「第1ターゲット及び第2ターゲットの位置」は、上下方向の位置及び水平方向(搬送方向に直交する水平方向)の位置の少なくとも何れか一方と、搬送方向の位置と、を意味する。
【0014】
本発明に係る焼結設備検査装置においては、1つのパレット台車に、一方の軌条側に位置するスライドベッド、受梁及び軌条の位置を測定するための第1センサと、他方の軌条側に位置するスライドベッド、受梁及び軌条の位置を測定するための第2センサが取り付けられている。したがって、このパレット台車が移動することで、第1センサ及び第2センサによって、双方の軌条側に位置するスライドベッド、受梁及び軌条の位置をその全長に亘って測定可能である。
上記のようにして、測定されるスライドベッド、受梁及び軌条の位置は、第1センサ及び第2センサが取り付けられたパレット台車を基準とする位置である。このため、例えば、このパレット台車が軌道に対して水平方向に蛇行すれば、仮にスライドベッド、受梁及び軌条が真っ直ぐに延びていたとしても、測定されるスライドベッド、受梁及び軌条の位置(水平方向の位置)は、パレット台車の蛇行に応じて水平方向に変動することになる。また、パレット台車が移動中に、搬送方向(移動方向)周りに傾いた場合には、測定されるスライドベッド、受梁及び軌条の位置(上下方向の位置)は、パレット台車の傾きに応じて上下方向に変動することになる。
【0015】
しかしながら、第1センサ及び第2センサが取り付けられたパレット台車には、一方の軌条側に第1ターゲットが取り付けられ、他方の軌条側に第2ターゲットが取り付けられ、このパレット台車の外部の所定位置に設置されたトータルステーションによって、第1ターゲット及び第2ターゲットの位置が測定される。トータルステーションによって第1ターゲット及び第2ターゲットの位置(トータルステーションが設置されている所定位置を基準とする第1ターゲット及び第2ターゲットの位置)を測定すれば、所定位置を基準とする、パレット台車の位置(搬送方向の位置、搬送方向に直交する水平方向の位置)や傾き(搬送方向周りの傾き)を算出可能である。
本発明に係る焼結設備検査装置が備える演算部は、第1センサ及び第2センサの測定結果(パレット台車を基準とするスライドベッド、受梁及び軌条の位置)と、トータルステーションで測定した第1ターゲット及び第2ターゲットの位置(換言すれば、所定位置を基準とするパレット台車の位置や傾き)とに基づき、焼結設備を検査する。このため、演算部は、パレット台車の位置や傾きの影響を受けずに(パレット台車の位置や傾きの影響が相殺されるように)、スライドベッドや軌条の位置(所定位置を基準とする位置)を精度良く演算可能であり、この演算結果に基づき、焼結設備を精度良く検査可能である。
以上のように、本発明に係る焼結設備検査装置によれば、1つのパレット台車に、スライドベッド、受梁及び軌条の位置を測定するためのセンサ(第1センサ、第2センサ)が取り付けられていると共に、パレット台車の外部の所定位置に設置されたトータルステーションによって位置が測定されるターゲット(第1ターゲット及び第2ターゲット)が取り付けられているため、このパレット台車が移動することで、給鉱側から排鉱側までの全長に亘って、軌条やスライドベッドを備える焼結設備を精度良く検査可能である。
【0016】
好ましくは、前記第1センサ及び前記2センサのそれぞれは、前記スライドベッドの上面までの距離を測定するための第1レーザ距離計と、前記スライドベッドの側面までの距離を測定するための第2レーザ距離計と、前記軌条及び前記受梁を上方から見たときの断面形状を測定するための光切断方式のセンサと、を有する。
【0017】
上記の好ましい構成によれば、第1レーザ距離計及び光切断方式のセンサによって、スライドベッド、受梁及び軌条の上下方向の位置を容易に測定可能であり、第2レーザ距離計及び光切断方式のセンサによって、スライドベッド、受梁及び軌条の水平方向の位置を容易に測定可能である。
【0018】
好ましくは、前記演算部は、前記第1センサ及び前記第2センサの測定結果と、前記トータルステーションで測定した前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットの位置とに基づき、前記所定位置を基準とする、前記2本の軌条の上下方向の位置及び前記2本のスライドベッドの上下方向の位置と、前記所定位置を基準とする、前記2本の軌条の蛇行量及び前記2本のスライドベッドの蛇行量とを演算し、前記演算結果に基づき、前記焼結設備を検査する。
【0019】
上記の好ましい構成によれば、演算部によって、所定位置を基準とする(すなわち、パレット台車の位置や傾きの影響を受けない)2本の軌条の上下方向の位置及び2本のスライドベッドの上下方向の位置が演算される。また、所定位置を基準とする2本の軌条の蛇行量(水平方向の位置の変化量)及び2本のスライドベッドの蛇行量が演算される。
例えば、スライドベッドの上下方向の位置と軌条の上下方向の位置とから算出される、スライドベッドと軌条との間の上下方向の離隔距離が、所定の管理範囲を超えていれば、演算部は、漏風が発生するおそれがあると判定することが可能である。また、スライドベッドの蛇行量と軌条の蛇行量とから算出される、スライドベッドと軌条との間の水平方向の離隔距離が、所定の管理範囲を超えていれば、演算部は、漏風が発生するおそれがあると判定することが可能である。
【0020】
好ましくは、前記演算部は、前記第1センサ及び前記第2センサの測定結果と、前記トータルステーションで測定した前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットの位置とに基づき、前記所定位置を基準とする、前記2本の軌条間の上下方向の離隔距離及び前記搬送方向に直交する水平方向の離隔距離と、前記所定位置を基準とする、前記2本のスライドベッドの上面間の上下方向の離隔距離及び前記搬送方向に直交する水平方向の離隔距離とを演算し、前記演算結果に基づき、前記焼結設備を検査する。
【0021】
上記の好ましい構成によれば、演算部によって、所定位置を基準とする(すなわち、パレット台車の位置や傾きの影響を受けない)2本の軌条間の上下方向の離隔距離及び搬送方向に直交する水平方向の離隔距離が演算される。また、所定位置を基準とする2本のスライドベッドの上面間の上下方向の離隔距離及び搬送方向に直交する水平方向の離隔距離が演算される。
例えば、2本の軌条間の水平方向の離隔距離が所定のしきい値以上であれば、演算部は、車輪が軌条から外れる脱輪等の操業トラブルが生じるおそれがあると判定することが可能である。また、2本の軌条間の上下方向の離隔距離や、2本のスライドベッドの上面間の上下方向の離隔距離が、所定の管理範囲を超えていれば、一方のスライドベッドが摩耗し易くなるため、演算部は、漏風が発生するおそれがあると判定することが可能である。さらに、2本のスライドベッドの上面間の水平方向の離隔距離が、所定の管理範囲を超えていれば、シールバーとスライドベッドとの接触面積が小さくなるため、演算部は、漏風が発生するおそれがあると判定することが可能である。
【0022】
好ましくは、前記演算部は、前記第1センサ及び前記第2センサが有する前記光切断方式のセンサの測定結果と、前記トータルステーションで測定した前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットの位置とに基づき、前記所定位置を基準とする、前記2本の軌条の上面の傾きと、前記所定位置を基準とする、前記2本の受梁の上面の傾きとを演算し、前記演算結果に基づき、前記焼結設備を検査する。
【0023】
上記の好ましい構成によれば、演算部によって、所定位置を基準とする(すなわち、パレット台車の位置や傾きの影響を受けない)2本の軌条の上面の傾きが演算される。また、所定位置を基準とする2本の受梁の上面の傾きが演算される。
例えば、軌条の上面の傾きや受梁の上面の傾きが所定のしきい値以上であれば、パレット台車の蛇行が生じ易くなるため、演算部は、漏風や脱輪等の操業トラブルが生じるおそれがあると判定することが可能である。
【0024】
好ましくは、前記演算部は、前記演算結果に基づき、前記スライドベッドと前記シールバーとの間で漏風が発生している可能性がある前記搬送方向の位置を特定する。
【0025】
上記の好ましい構成によれば、演算部によって、漏風が発生している可能性がある搬送方向の位置が特定されるため、特定された位置をオペレータが重点的に点検する等の処置を施すことが可能になるという利点が得られる。
なお、漏風が発生している可能性がある搬送方向の位置の特定は、例えば、スライドベッドの上下方向の位置と軌条の上下方向の位置とから算出される、スライドベッドと軌条との間の上下方向の離隔距離が所定の管理範囲を超えていたり、スライドベッドの蛇行量と軌条の蛇行量とから算出される、スライドベッドと軌条との間の水平方向の離隔距離が所定の管理範囲を超えている、搬送方向の位置として特定することが可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、原料を供給する給鉱側から、焼結鉱を排出する排鉱側までの全長に亘って、軌条やスライドベッドを備える焼結設備を精度良く検査可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】焼結設備の概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る焼結設備検査装置の概略構成を模式的に示す図である。
【
図3】
図2に示す光切断方式のセンサ23の測定箇所を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る焼結設備検査装置による検査結果の一例を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る焼結設備検査装置による検査結果の一例を説明する図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る焼結設備検査装置による検査結果の他の例を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る焼結設備検査装置による検査結果の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る焼結設備検査装置について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る焼結設備検査装置100の概略構成を模式的に示す図である。
図2(a)は、焼結設備検査装置100の全体構成を示す平面図である。
図2(b)は、焼結設備検査装置100の全体構成を拡大して示す正面図(搬送方向から見た図)である。
図2(c)は、
図2(b)における破線Bで囲った領域の拡大図である。
図3は、焼結設備検査装置100が有する光切断方式のセンサ23の測定箇所を説明する図である。なお、焼結設備検査装置100を適用する焼結設備の全体構成は、前述の
図1(a)に示す焼結設備200と同様であり、焼結設備200の1つのパレット台車10に代えて、焼結設備検査装置100が配置される。
図2(a)では、便宜上、焼結設備検査装置100を構成する1つのパレット台車10のみを図示しているが、実際には、このパレット台車10に対して搬送方向に隣接する複数のパレット台車10が存在する。
【0029】
[焼結設備検査装置100の全体構成]
図2に示すように、焼結設備検査装置100は、1つのパレット台車10を備える。このパレット台車10は、焼結設備200が備える他のパレット台車10と異なり、後述の第1センサ20及び第2センサ30を取り付けられる構造を有する。好ましい態様として、このパレット台車10は、端面ライナーの代わりに設けられたセンサ取り付け用ライナー11(
図2においてドット状のハッチングを施した部材)を有する。
また、焼結設備検査装置100は、センサ取り付け用ライナー11に取り付けられ、2本の軌条201(201a、202b)のうちの何れか一方の軌条201a側に位置するスライドベッド205(205a)、受梁202(202a)及び一方の軌条201aの位置を測定するための第1センサ20を備える。また、他方の軌条201b側については詳細な図示を省略しているが、
図2(c)に示す一方の軌条201a側と同様に、焼結設備検査装置100は、センサ取り付け用ライナー11に取り付けられ、2本の軌条201(201a、202b)のうちの何れか他方の軌条201b側に位置するスライドベッド205(205b)、受梁202(202b)及び他方の軌条201bの位置を測定するための第2センサ30を備える。
【0030】
また、焼結設備検査装置100は、パレット台車10の外部の所定位置(焼結設備200の操業時に変化しない位置)に設置されたトータルステーション40を備える。トータルステーション40は、ターゲットに向けてスポット状のレーザ光(
図2(a)において破線の矢印で示す)を出射し、ターゲットまでの距離及び角度を測定可能な測量機器である。トータルステーション40の構成は、公知のトータルステーションと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
また、焼結設備検査装置100は、パレット台車10の一方の軌条201a側に取り付けられた第1ターゲット50と、パレット台車10の他方の軌条側201bに取り付けられた第2ターゲット60と、を備える。
さらに、焼結設備検査装置100は、第1センサ20及び第2センサ30の測定結果と、トータルステーション40で測定した第1ターゲット50及び第2ターゲット60の位置とに基づき、焼結設備200を検査する演算部70を備える。
【0031】
[パレット台車10]
本実施形態に係る焼結設備検査装置100を構成するパレット台車10が有するセンサ取り付け用ライナー11は、パレット101の搬送方向に垂直な面にねじ留め等によって取り付けられている。通常の端面ライナーと同様に、センサ取り付け用ライナー11は、このセンサ取り付け用ライナー11が取り付けられたパレット101と搬送方向に隣接する他のパレット101に接触することになる。
本実施形態のセンサ取り付け用ライナー11は、一方の軌条201a側に位置するセンサ取り付け用ライナー11aと、他方の軌条201b側に位置するセンサ取り付け用ライナー11bとが分離した構成とされている。センサ取り付け用ライナー11aと、センサ取り付け用ライナー11bとは、同様の構成である。ただし、本発明はこれに限るものではなく、一方の軌条201a側と他方の軌条201b側とが一体となった構成を採用することも可能である。
センサ取り付け用ライナー11は、パレット101に取り付けられたセンサ取り付け用ライナー本体111と、センサ取り付け用ライナー本体111から軌条201の上方に向けて延在するフレーム112と、を有する。
パレット台車10が有するセンサ取り付け用ライナー11以外の部材の構成については、
図1を参照して説明した通常のパレット台車10と同様であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0032】
[第1センサ20]
第1センサ20は、スライドベッド205(205a)の上面までの距離を測定するための第1レーザ距離計21を有する。
本実施形態の第1レーザ距離計21は、センサ取り付け用ライナー本体111に取り付けられている。具体的には、センサ取り付け用ライナー本体111に厚み方向(パレット台車10の移動方向、
図2(b)及び
図2(c)の紙面に垂直な方向)に凹んだ凹部が形成されており、この凹部に第1レーザ距離計21が嵌め込まれて取り付けられている。凹部の深さは、第1レーザ距離計21の前記厚み方向の寸法以上とされているため、センサ取り付け用ライナー本体111が隣接する他のパレット101に接触しても、第1レーザ距離計21が破損するおそれがない。
また、第1レーザ距離計21は、直下にシールバー105が存在しない位置に取り付けられている。具体的には、本実施形態に係る焼結設備検査装置100を構成するパレット台車10のシールバー105と、隣接するパレット台車10のシールバー105との間の直上に取り付けられている。このため、
図2(c)において破線の矢印で示す第1レーザ距離計21から出射したスポット状のレーザ光は、シールバー105に遮られることなく、スライドベッド205の上面に照射され、スライドベッド205の上面までの距離を測定可能である。
【0033】
本実施形態では、好ましい態様として、水平方向に並置された一対の第1レーザ距離計21a、21bが取り付けられている。このため、仮に、パレット台車10が蛇行して、何れか一方の第1レーザ距離計21から出射したレーザ光がスライドベッド205の上面に照射されなくなっても、他方の第1レーザ距離計21から出射したレーザ光がスライドベッド205の上面に照射されるため、スライドベッド205の上面までの距離を確実に測定可能である。
以上に説明した第1レーザ距離計21によって、スライドベッド205の上面までの距離、換言すれば、スライドベッド205の上下方向の位置(第1レーザ距離計21が取り付けられているセンサ取付用ライナー11の位置を基準とする上下方向の位置)が測定される。
【0034】
また、第1センサ20は、スライドベッド205(205a)の側面までの距離を測定するための第2レーザ距離計22を有する。
本実施形態の第2レーザ距離計22は、出射するスポット状のレーザ光(
図2(c)において破線の矢印で示す)が遮られることなくスライドベッド205の側面に照射されるように、フレーム112に取り付けられている。具体的には、第2レーザ距離計22は、搬送方向(
図2(b)及び
図2(c)の紙面に垂直な方向)から見てパレット101から外れたフレーム112の位置に取り付けられている。このため、前述のセンサ取り付け用ライナー本体111のように凹部を形成することなくフレーム112上に単に取り付けたとしても、フレーム112の一部が隣接する他のパレット101に接触したときに、第2レーザ距離計22が破損するおそれがない。
【0035】
本実施形態では、好ましい態様として、上下方向に並置された一対の第2レーザ距離計22a、22bが取り付けられている。このため、仮に、スライドベッド205や軌条201の摩耗によって、何れか一方の第2レーザ距離計22から出射したレーザ光がスライドベッド205の側面に照射されなくなっても、他方の第2レーザ距離計22から出射したレーザ光がスライドベッド205の側面に照射されるため、スライドベッド205の側面までの距離を確実に測定可能である。
以上に説明した第2レーザ距離計22によって、スライドベッド205の側面までの距離、換言すれば、スライドベッド205の水平方向の位置(第2レーザ距離計22が取り付けられているセンサ取付用ライナー11の位置を基準とする水平方向の位置)が測定される。
【0036】
さらに、第1センサ20は、軌条201(201a)及び受梁202(202a)を上方から見たときの断面形状を測定するための光切断方式のセンサ23を有する。
本実施形態のセンサ23は、フレーム112に取り付けられている。具体的には、センサ23は、搬送方向から見てパレット101から外れたフレーム112の先端部に取り付けられている。このため、前述のセンサ取り付け用ライナー本体111のように凹部を形成することなくフレーム112上に単に取り付けたとしても、フレーム112の一部が隣接する他のパレット101に接触したときに、センサ23が破損するおそれがない。
センサ23は、水平方向に線状に延びるレーザ光(
図2(b)及び
図3において破線の矢印で示す)を鉛直方向上方から出射する光源(図示せず)と、鉛直方向に対して搬送方向に傾斜した光軸を有し、照射されたレーザ光を撮像して撮像画像を取得する撮像手段(図示せず)と、画像処理手段(図示せず)と、を具備する。センサ23は、画像処理手段によって抽出した撮像画像におけるレーザ光に相当する画素領域の位置によって、軌条201及び受梁202を上方から見たときの断面形状(軌条201及び受梁202のレーザ光が照射されている部分の形状)を測定するためのセンサである。
【0037】
以上に説明した光切断方式のセンサ23によって、
図3に示すように、軌条201の上面201uの上下方向の位置の平均値が、軌条201の上下方向の位置(センサ23が取り付けられているセンサ取付用ライナー11の位置を基準とする上下方向の位置)として測定される。また、受梁202の上面202uの上下方向位置の平均値が、受梁202の上下方向の位置(センサ23が取り付けられているセンサ取付用ライナー11の位置を基準とする上下方向の位置)として測定される。さらに、軌条201の足のエッジ(外側のエッジ)201eの位置が、軌条201の水平方向の位置(センサ23が取り付けられているセンサ取付用ライナー11の位置を基準とする水平方向の位置)として測定される。
なお、本実施形態では、光切断方式のセンサ23が、画像処理手段を具備し、軌条201及び受梁202の断面形状を測定したり、この断面形状に基づき、軌条201の上下方向の位置、受梁202の上下方向の位置及び軌条201の水平方向の位置を測定する態様について説明したが、本発明はこれに限るものではない。センサ23自体は、照射されたレーザ光を撮像して撮像画像を取得するだけの構成とし、センサ23に電気的に接続された演算部70が、センサ23から入力された撮像画像に基づき、軌条201及び受梁202の断面形状、軌条201の上下方向の位置、受梁202の上下方向の位置及び軌条201の水平方向の位置を演算する態様を採用することも可能である。
【0038】
[第2センサ30]
第2センサ30も、第1センサ20と同様に、スライドベッド205(205b)の上面までの距離を測定するための第1レーザ距離計21と、スライドベッド205(205b)の側面までの距離を測定するための第2レーザ距離計22と、軌条201(201b)及び受梁202(202b)を上方から見たときの断面形状を測定するための光切断方式のセンサ23と、を有する。
第2センサ30は、他方の軌条201b側に位置するセンサ取り付け用ライナー11bに取り付けられ、左右反転した構成となっている点を除き、一方の軌条201a側に位置するセンサ取り付け用ライナー11aに取り付けられている第1センサ20と同様の構成を有するため、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0039】
なお、第1センサ20及び第2センサ30を構成する一対の第1レーザ距離計21a、21bの間に、スライドベッド205の上面を撮像するための撮像手段(図示せず)を取り付けることが好ましい。この好ましい構成によれば、例えば、後述のように演算部70によってスライドベッド205とシールバー105との間で漏風が発生している可能性があると判定された場合、上記の撮像手段で取得したスライドベッド205の上面の撮像画像をオペレータが目視することで、漏風の原因がスライドベッド205の摩耗であるか否かを推測することが可能になる。
【0040】
[トータルステーション40]
図2(a)に示すように、本実施形態のトータルステーション40は、焼結設備200が備える、パレット台車10の上方において一方の軌条201a側から他方の軌条201b側に架け渡されたオーバーブリッジ210上に設置されている。
本実施形態では、好ましい態様として、一対のトータルステーション40(後述の第1ターゲット50の位置を測定するためのトータルステーション40a、及び、後述の第2ターゲット60の位置を測定するためのトータルステーション40b)が設置されている。トータルステーション40aは、第1ターゲット50の位置(トータルステーション40aが設置されている所定位置を基準とする上下方向の位置、水平方向の位置及び搬送方向の位置)を測定し、トータルステーション40bは、第2ターゲット60の位置(トータルステーション40bが設置されている所定位置を基準とする上下方向の位置、水平方向の位置及び搬送方向の位置)を測定する。
【0041】
[第1ターゲット50、第2ターゲット60]
第1ターゲット50は、パレット台車10の一方の軌条201a側に取り付けられている。本実施形態の第1ターゲット50は、パレット101の内部における第1センサ20の近傍位置に取り付けられている。
第2ターゲット60は、パレット台車10の他方の軌条201b側に取り付けられている。本実施形態の第2ターゲット60は、パレット101の内部における第2センサ30の近傍位置に取り付けられている。
第1ターゲット50及び第2ターゲット60としては、トータルステーション40から出射されたレーザ光を、出射された方向と同一方向逆向きに反射する反射プリズムが好適に用いられる。
【0042】
[演算部70]
演算部70は、例えば、第1センサ20、第2センサ30及びトータルステーション40に電気的に接続されたコンピュータから構成される。すなわち、本実施形態では、演算部70は、例えば、第1センサ20及び第2センサ30がそれぞれ有する第1レーザ距離計21、第2レーザ距離計22及び光切断方式のセンサ23と、トータルステーション40a、40bに電気的に接続されたコンピュータから構成される。演算部70には、所定の演算、検査を実行するためのプログラムが記憶されており、第1センサ20及び第2センサ30からそれぞれ入力された第1レーザ距離計21、第2レーザ距離計22及び光切断方式のセンサ23の測定結果と、トータルステーション40a、40bからそれぞれ入力された第1ターゲット50及び第2ターゲット60の位置とに対して、記憶されたプログラムを実行することで、所定の演算を行い、その演算結果に基づき、焼結設備200を検査する。演算部70は、例えば、パレット101の内部に設置される。
【0043】
以下、以上に説明した構成を有する焼結設備検査装置100による検査結果の一例について説明する。
図4及び
図5は、焼結設備検査装置100による検査結果の一例を説明する図である。
図4(a)は、第2センサ30によって測定され、演算部70に入力された、スライドベッド205b、受梁202b及び軌条201bの上下方向の位置と、トータルステーション40bによって測定され、演算部70に入力された第2ターゲット60の上下方向の位置との一例を示す。
図4(b)は、第2センサ30によって測定され、演算部70に入力された、スライドベッド205b及び軌条201bの水平方向の位置と、トータルステーション40bによって測定され、演算部70に入力された第2ターゲット60の水平方向の位置との一例を示す。
図5(a)は、
図4(a)に示す測定結果に基づき演算部70が演算した、トータルステーション40bが設置されている所定位置を基準とする、スライドベッド205b、受梁202b及び軌条201bの上下方向の位置を示す。
図5(b)は、
図4(b)に示す測定結果に基づき演算部70が演算した、トータルステーション40bが設置されている所定位置を基準とする、スライドベッド205b及び軌条201bの蛇行量(水平方向の位置の変化量)を示す。
なお、
図4及び
図5において、スライドベッド205bの位置は太線で、軌条201bの位置は細線で図示している。また、
図4において、第2ターゲット60の位置は太線で図示している。さらに、
図4(a)及び
図5(a)において、受梁202bの位置は破線で図示している。
図4及び
図5の横軸に示す搬送方向の位置は、トータルステーション40bによって測定され、演算部70に入力された第2ターゲット60の搬送方向の位置に相当する。
図4(a)及び
図4(b)において、軌条201b、受梁202b及び第2ターゲット60の縦軸は、測定開始位置での値を原点(=0mm)にし、スライドベッド205bの縦軸は、第2センサ30を構成する第1レーザ距離計及び第2レーザ距離計の所定の基準点を原点にしている。
図4(a)の縦軸は、原点よりも上方に位置する場合を正の値にし、原点よりも下方に位置する場合を負の値にしている。また、
図4(b)の縦軸は、原点よりも水平方向内側(
図2(b)の右側)に位置する場合を正の値にし、水平方向外側(
図2(b)の左側)に位置する場合を負の値にしている。
図5(a)及び
図5(b)の縦軸の原点は、それぞれ
図4(a)及び
図4(b)の縦軸の原点と同じである。
【0044】
図4に示すように、パレット台車10が搬送方向に移動することで、センサ取り付け用ライナー11bに取り付けられた第2センサ30も搬送方向に移動し、スライドベッド205b、受梁202b及び軌条201bの上下方向の位置、並びに、スライドベッド205b及び軌条201bの水平方向の位置を全長に亘って測定可能である。
そして、演算部70は、
図4(a)に示す、スライドベッド205b、受梁202b及び軌条201bの上下方向の位置と、第2ターゲット60の上下方向の位置との差分演算をそれぞれ行うことで、
図5(a)に示す、所定位置を基準とする、スライドベッド205b、受梁202b及び軌条201bの上下方向の位置を算出可能である。すなわち、パレット台車10の位置や傾きの影響を受けない、スライドベッド205b、受梁202b及び軌条201bの上下方向の位置を算出可能である。
また、演算部70は、
図4(b)に示す、スライドベッド205b及び軌条201bの水平方向の位置と、第2ターゲット60の水平方向の位置との差分演算をそれぞれ行うことで、
図5(b)に示す、所定位置を基準とする、スライドベッド205b及び軌条201bの水平方向の位置を算出可能である。すなわち、パレット台車10の位置や傾きの影響を受けない、スライドベッド205b及び軌条201bの水平方向の位置を算出可能である。
【0045】
なお、測定結果の図示を省略するが、パレット台車10が搬送方向に移動することで、センサ取り付け用ライナー11aに取り付けられた第1センサ20も搬送方向に移動し、スライドベッド205a、受梁202a及び軌条201aの上下方向の位置、並びに、スライドベッド205a及び軌条201aの水平方向の位置を全長に亘って測定可能である。
そして、スライドベッド205a、受梁202a及び軌条201aの上下方向の位置と、第1ターゲット50の上下方向の位置との差分演算をそれぞれ行うことで、
図5(a)に示す結果と同様に、所定位置を基準とする、スライドベッド205a、受梁202a及び軌条201aの上下方向の位置を算出可能である。すなわち、パレット台車10の位置や傾きの影響を受けない、スライドベッド205a、受梁202a及び軌条201aの上下方向の位置を算出可能である。
また、スライドベッド205a及び軌条201aの水平方向の位置と、第1ターゲット50の水平方向の位置との差分演算をそれぞれ行うことで、
図5(b)に示す結果と同様に、所定位置を基準とする、スライドベッド205a及び軌条201aの水平方向の位置を算出可能である。すなわち、パレット台車10の位置や傾きの影響を受けない、スライドベッド205a及び軌条201aの水平方向の位置を算出可能である。
【0046】
演算部70は、例えば、
図5(a)に示すスライドベッド205bの上下方向の位置と軌条201bの上下方向の位置との差分演算を更に行うことで、スライドベッド205bと軌条201bとの間の上下方向の離隔距離を算出可能である。軌道側201aについても同様に、演算部70は、スライドベッド205aの上下方向の位置と軌条201aの上下方向の位置との差分演算を更に行うことで、スライドベッド205aと軌条201aとの間の上下方向の離隔距離を算出可能である。
そして、演算部70に、付勢手段104の伸び限界等によって決まる管理範囲の下限や、付勢手段104の縮み限界等によって決まる管理範囲の上限を予め設定して記憶させておけば、演算部70は、上記の差分演算によって算出したスライドベッド205aと軌条201aとの間の上下方向の離隔距離、又は、上記の差分演算によって算出したスライドベッド205bと軌条201bとの間の上下方向の離隔距離が、管理範囲の上限又は下限を超えるか否かを判定できる。そして、演算部70は、上下方向の離隔距離が管理範囲を超えた場合に、その超えた搬送方向位置を、スライドベッド205とシールバー105との間で漏風が発生している可能性がある搬送方向の位置として特定可能である。このように、演算部70によって、漏風が発生している可能性がある搬送方向の位置が特定されれば、特定された位置をオペレータが重点的に点検する等の処置を施すことが可能である。
【0047】
なお、焼結設備検査装置100による検査の内容(演算部70が実行する演算、検査の内容)としては、上記の内容に限るものではなく、種々の態様が考えられる。
図6は、焼結設備検査装置100による検査結果の他の例を説明する図である。
図6(a)は、第1センサ20及び第2センサ30の測定結果と、トータルステーション40で測定した第1ターゲット50及び第2ターゲット60の位置とに基づき演算部70が演算した、トータルステーション40が設置されている所定位置を基準とする、2本の軌条201a、201b間の上下方向の離隔距離と、2本のスライドベッド205a、205bの上面間の上下方向の離隔距離と、2本の受梁202a、202b間の上下方向の離隔距離との一例を示す。
具体的には、
図6(a)は、トータルステーション40が設置されている所定位置を基準とし、軌条201bの上方向を正、軌条201bの下方向を負と見なした、2本の軌条201a、201b間の上下方向の離隔距離と、トータルステーション40が設置されている所定位置を基準とし、スライドベッド205bの上方向を正、スライドベッド205bの下方向を負と見なした、2本のスライドベッド205a、205bの上面間の上下方向の離隔距離と、トータルステーション40が設置されている所定位置を基準とし、受梁202bの上方向を正、受梁202bの下方向を負と見なした、2本の受梁202a、202b間の上下方向の離隔距離との一例を示す。
図6(b)は、第1センサ20及び第2センサ30の測定結果と、トータルステーション40で測定した第1ターゲット50及び第2ターゲット60の位置とに基づき演算部70が演算した、トータルステーション40が設置されている所定位置を基準とする、2本の軌条201a、201b間の水平方向の離隔距離と、2本のスライドベッド205a、205bの上面間の水平方向の離隔距離との一例を示す。
具体的には、
図6(b)は、トータルステーション40が設置されている所定位置を基準とし、軌条201bの水平方向を正負で示した、2本の軌条201a、201b間の水平方向の離隔距離と、トータルステーション40が設置されている所定位置を基準とし、スライドベッド205bの水平方向を正負で示した、2本のスライドベッド205a、205bの上面間の水平方向の離隔距離との一例を示す。
【0048】
所定位置を基準とする2本の軌条201a、201b間の上下方向の離隔距離は、所定位置を基準とする各軌条201a、201bの上下方向の位置の差分演算によって算出可能である。所定位置を基準とする2本のスライドベッド205a、205bの上面間の上下方向の離隔距離は、所定位置を基準とする各スライドベッド205a、205bの上下方向の位置の差分演算によって算出可能である。所定位置を基準とする2本の受梁205a、205b間の上下方向の離隔距離は、所定位置を基準とする各受梁205a、205bの上下方向の位置の差分演算によって算出可能である。
また、所定位置を基準とする2本の軌条201a、201b間の水平方向の離隔距離は、所定位置を基準とする各軌条201a、201bの水平方向の位置の差分演算によって算出可能である。所定位置を基準とする2本のスライドベッド205a、205bの上面間の水平方向の離隔距離は、所定位置を基準とする各スライドベッド205a、205bの水平方向の位置の差分演算によって算出可能である。
なお、
図6(a)及び
図6(b)において、スライドベッド205に関する演算値は太線で、軌条201に関する演算値は細線で図示している。また、
図6(a)において、受梁202に関する演算値は破線で図示している。
図6の横軸に示す搬送方向の位置は、トータルステーション40によって測定され、演算部70に入力された第1ターゲット50及び第2ターゲット60の中点の搬送方向の位置に相当する。
図6(a)の縦軸は、軌条201b、受梁202b及びスライドベッド205bの方が、それぞれ軌条201a、受梁202a及びスライドベッド205aよりも上方に位置する場合を正の値にし、下方に位置する場合を負の値にしている。
図6(b)の縦軸は、2本の軌条201a、201b間の水平方向の離隔距離が原点よりも大きくなった場合を正の値にし、小さくなった場合を負の値にしている。
【0049】
例えば、演算部70に、所定のしきい値を予め設定して記憶させておけば、演算部70は、
図6(b)に示すような、所定位置を基準とする2本の軌条201a、201b間の水平方向の離隔距離を算出し、この算出した離隔距離が、しきい値以下であるか否かを判定できる。そして、演算部70は、算出した離隔距離がしきい値以上である場合に、車輪102が軌条201から外れる脱輪等の操業トラブルが生じるおそれがあると判定することが可能である。また、演算部70に、所定の管理範囲を予め設定して記憶させておけば、演算部70は、
図6(b)に示すような、所定位置を基準とする2本のスライドベッド205a、205bの上面間の水平方向の離隔距離を算出し、この算出した離隔距離が、所定の管理範囲を超えているか否かを判定できる。そして、演算部70は、算出した離隔距離が管理範囲を超えていれば、シールバー105とスライドベッド205との接触面積が小さくなるため、漏風が発生するおそれがあると判定することが可能である。
同様に、演算部70に、所定の管理範囲を予め設定して記憶させておけば、演算部70は、
図6(a)に示すような、所定位置を基準とする、2本の軌条201a、201b間の上下方向の離隔距離や、2本のスライドベッド205a、205b間の上下方向の離隔距離を算出し、この算出した離隔距離が、所定の管理範囲を超えているか否かを判定できる。そして、演算部70は、算出した離隔距離が管理範囲を超えていれば、一方のスライドベッド205が摩耗し易くなるため、漏風が発生するおそれがあると判定することが可能である。
【0050】
図7は、焼結設備検査装置100による検査結果の他の例を説明する図である。
図7は、第2センサ30が有する光切断方式のセンサの測定結果と、トータルステーション40で測定した第1ターゲット50及び第2ターゲット60の位置とに基づき演算部70が演算した、トータルステーション40が設置されている所定位置を基準とする、軌条201bの上面の傾きと、受梁202bの上面の傾きとの一例を示す。具体的には、
図7は、第2センサ30が有する光切断方式のセンサの測定結果から算出される軌条201bの上面の傾き及び受梁202bの上面の傾きを、トータルステーション40で測定した第1ターゲット50及び第2ターゲット60の位置によって算出されるパレット101の傾きでそれぞれ補正した結果の一例を示す。
なお、
図7において、軌条201bの上面の傾きは実線で、受梁202bの上面の傾きは破線で図示している。
図7の横軸に示す搬送方向の位置は、トータルステーション40bによって測定され、演算部70に入力された第2ターゲット60の搬送方向の位置に相当する。
図7の縦軸は、測定開始位置での軌条201bの上面の傾き及び受梁202bの上面の傾きを原点(=0°)にし、原点よりも水平方向外側(
図2(b)の左側)が高くなるように上面が傾斜する場合を正の値にし、原点よりも水平方向外側が低くなるように上面が傾斜する場合を負の値にしている。
【0051】
例えば、演算部70に、所定のしきい値を予め設定して記憶させておけば、演算部70は、
図7に示すような、所定位置を基準とする、2本の軌条201a、201bの上面の傾きや、2本の受梁202a、202bの上面の傾きを算出し、この算出した傾きが、しきい値以下であるか否かを判定できる。そして、演算部70は、算出した傾きがしきい値以上である場合には、パレット台車10の蛇行が生じ易くなるため、演算部70は、漏風や脱輪等の操業トラブルが生じるおそれがあると判定することが可能である。
【0052】
以上に説明したように、本実施形態に係る焼結設備検査装置100によれば、1つのパレット台車10に、スライドベッド205、受梁202及び軌条201の位置を測定するための第1センサ20及び第2センサ30が取り付けられていると共に、このパレット台車10の外部の所定位置に設置されたトータルステーション40によって位置が測定される第1ターゲット50及び第2ターゲット60が取り付けられているため、第1センサ20及び第2センサ30の測定結果と、トータルステーション40で測定した第1ターゲット50及び第2ターゲット60の位置とを組み合わせることで、パレット台車10の位置や傾きの影響を受けずに(パレット台車の10位置や傾きの影響が相殺されるように)、スライドベッド205や軌条201の位置(所定位置を基準とする位置)を精度良く演算可能であり、このパレット台車10が移動することで、給鉱側から排鉱側までの全長に亘って、焼結設備200を精度良く検査可能である。
【符号の説明】
【0053】
10・・・パレット台車
11・・・センサ取り付け用ライナー
20・・・第1センサ
21、21a、21b・・・第1レーザ距離計
22、22a、22b・・・第2レーザ距離計
23・・・光切断方式のセンサ
30・・・第2センサ
40・・・トータルステーション
50・・・第1ターゲット
60・・・第2ターゲット
70・・・演算部
100・・・焼結設備検査装置
105・・・シールバー
200・・・焼結設備
201、201a、201b・・・軌条
202、202a、202b・・・受梁
スライドベッド・・・205、205a、205b
S・・・焼結鉱の原料、焼結鉱