(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026017
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】タイヤ保守支援プログラムおよびタイヤ保守支援装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20250214BHJP
B60C 23/04 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C23/04 140Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131337
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】栗谷 康太郎
(57)【要約】
【課題】タイヤの保守作業におけるミスを抑制し、作業効率を高めることができるタイヤ保守支援プログラムおよびタイヤ保守支援装置を提供する。
【解決手段】タイヤ保守支援プログラムは、情報付加ステップ、図形配置ステップ、操作受付ステップおよび図形移動ステップをコンピュータに実行させる。情報付加ステップは、タイヤを表すタイヤ図形にタイヤの識別情報を付加し、タイヤに設けたセンサを表すセンサ図形にセンサの識別情報を付加する。図形配置ステップは、車軸配列情報に基づいてタイヤ図形およびセンサ図形を表示画面に配置する。操作受付ステップは、図形配置ステップによって配置されたタイヤ図形およびセンサ図形を移動させる作業者の操作を受け付ける。図形移動ステップは、操作受付ステップにより受け付けた操作に基づき、タイヤ図形およびセンサ図形を車軸における装着位置に応じて移動させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されたタイヤを表すタイヤ図形に前記タイヤの識別情報を付加し、前記タイヤに設けたセンサを表すセンサ図形に前記センサの識別情報を付加する情報付加ステップと、
車軸配列情報に基づいて前記タイヤ図形および前記センサ図形を表示画面に配置する図形配置ステップと、
前記図形配置ステップによって配置された前記タイヤ図形および前記センサ図形を移動させる作業者の操作を受け付ける操作受付ステップと、
前記操作受付ステップにより受け付けた操作に基づき、前記タイヤ図形および前記センサ図形を車軸における前記タイヤの装着位置に応じて移動させる図形移動ステップと、
をコンピュータに実行させるタイヤ保守支援プログラム。
【請求項2】
前記図形配置ステップは、前記タイヤに装着されたホイールの表裏を示すホイール図形を前記タイヤ図形に対応して前記表示画面に配置し、
前記図形移動ステップは、前記ホイール図形を前記タイヤ図形とともに移動させる請求項1に記載のタイヤ保守支援プログラム。
【請求項3】
前記図形配置ステップは、前記タイヤのセリアル情報が刻印された側面を示すセリアル面図形を前記タイヤ図形に対応して前記表示画面に配置し、
前記図形移動ステップは、前記セリアル面図形を前記タイヤ図形とともに移動させる請求項1に記載のタイヤ保守支援プログラム。
【請求項4】
前記図形移動ステップは、移動させた前記タイヤ図形に対して移動前後の前記装着位置を表示する請求項1に記載のタイヤ保守支援プログラム。
【請求項5】
前記表示画面において作業者の操作箇所に前記センサ図形に重なった場合に、前記センサの移動前の装着位置を表示する情報表示ステップを更に備える請求項1に記載のタイヤ保守支援プログラム。
【請求項6】
前記表示画面において作業者の操作箇所に前記タイヤ図形に重なった場合に、前記タイヤの仕様を表示する情報表示ステップを更に備える請求項1に記載のタイヤ保守支援プログラム。
【請求項7】
車両に装着されたタイヤを表すタイヤ図形に前記タイヤの識別情報を付加し、前記タイヤに設けたセンサを表すセンサ図形に前記センサの識別情報を付加する情報付加部と、
車軸配列情報に基づいて前記タイヤ図形および前記センサ図形を表示画面に配置する図形配置部と、
前記図形配置部によって配置された前記タイヤ図形および前記センサ図形を移動させる作業者の操作を受け付ける操作受付部と、
前記操作受付部により受け付けた操作に基づき、前記タイヤ図形および前記センサ図形を車軸における前記タイヤの装着位置に応じて移動させる図形移動部と、
を備えるタイヤ保守支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装着されるタイヤの保守を支援するタイヤ保守支援プログラムおよびタイヤ保守支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは、走行状態や走行距離等に応じて摩耗が進行し、装着されている軸位置によって摩耗が偏ることがある。タイヤは、車両内または車両間の軸位置で付け替えるタイヤローテーションによって、偏った摩耗を抑制し、より長く使用できるように保守される。また摩耗が進行しタイヤ溝の残溝量が僅かとなったタイヤは、残溝量が十分にあるタイヤに交換するメンテナンスが行われる。
【0003】
特許文献1には従来のタイヤ管理システムが記載されている。このタイヤ管理システムは、タイヤ情報取得部、センサ情報取得部および管理部を備える。タイヤ情報取得部は、車両に装着されるタイヤの識別情報を取得する。センサ情報取得部は、タイヤに配設されたセンサの識別情報を取得する。管理部は、タイヤ情報取得部によって取得したタイヤの識別情報と、センサ情報取得部によって取得したセンサの識別情報とを対応付けて記憶する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のタイヤ管理システムは、タイヤの識別情報とセンサの識別情報を対応付けて管理している。本発明者は、実際のタイヤローテーションやタイヤ交換などの保守作業において、保守作業のミスを抑制し、作業効率を高める上で、作業対象のタイヤの特定や保守作業を分かりやすく模擬することで、従来のタイヤの保守作業の改善を図ることができると考えた。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タイヤの保守作業におけるミスを抑制し、作業効率を高めることができるタイヤ保守支援プログラムおよびタイヤ保守支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様のタイヤ保守支援プログラムは、車両に装着されたタイヤを表すタイヤ図形に前記タイヤの識別情報を付加し、前記タイヤに設けたセンサを表すセンサ図形に前記センサの識別情報を付加する情報付加ステップと、車軸配列情報に基づいて前記タイヤ図形および前記センサ図形を表示画面に配置する図形配置ステップと、前記図形配置ステップによって配置された前記タイヤ図形および前記センサ図形を移動させる作業者の操作を受け付ける操作受付ステップと、前記操作受付ステップにより受け付けた操作に基づき、前記タイヤ図形および前記センサ図形を車軸における前記タイヤの装着位置に応じて移動させる図形移動ステップと、をコンピュータに実行させる。
【0008】
本発明の別の態様はタイヤ保守支援装置である。タイヤ保守支援装置は、車両に装着されたタイヤを表すタイヤ図形に前記タイヤの識別情報を付加し、前記タイヤに設けたセンサを表すセンサ図形に前記センサの識別情報を付加する情報付加部と、車軸配列情報に基づいて前記タイヤ図形および前記センサ図形を表示画面に配置する図形配置部と、前記図形配置部によって配置された前記タイヤ図形および前記センサ図形を移動させる作業者の操作を受け付ける操作受付部と、前記操作受付部により受け付けた操作に基づき、前記タイヤ図形および前記センサ図形を車軸における前記タイヤの装着位置に応じて移動させる図形移動部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タイヤの保守作業におけるミスを抑制し、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るタイヤ保守支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】表示画面に表示されるタイヤの装着位置を示す模式図である。
【
図3】タイヤ図形等を配置した表示画面の一例を示す模式図である。
【
図4】タイヤ保守支援装置によるタイヤローテーション処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】表示画面中でのタイヤローテーションの一例を示す模式図である。
【
図6】タイヤローテーション後のタイヤ図形等の配置を示す模式図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、図形要素の移動操作を説明するための模式図である。
【
図8】タイヤの向きを反転する操作について説明するための模式図である。
【
図9】移動前後の装着位置を表示する場合の表示画面の一例を示す模式図である。
【
図10】
図10(a)および
図10(b)は、移動させた図形要素に対して表示形態を変更した例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに
図1から
図10を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るタイヤ保守支援装置100の機能構成を示すブロック図である。タイヤ保守支援装置100は、操作部10、表示部15、記憶部20および制御部30を備える。タイヤ保守支援装置100は、タイヤのローテーションや交換等の保守作業において用いられる。
【0013】
タイヤ保守支援装置100は、タイヤおよびセンサの配置、移動および交換に関する画像を表示する。タイヤ保守支援装置100は、タイヤおよびセンサを模した図形要素を表示画面上に表示し、作業者の操作によって図形要素が移動する。またタイヤ保守支援装置100は、作業者が表示画面上で操作するカーソルの位置によって、タイヤおよびセンサに関する情報を表示する。
【0014】
タイヤ保守支援装置100における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子からなる電子処理回路や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0015】
操作部10は、例えばタッチパネル、スイッチ、キーボードおよびマウスデバイスなどの操作可能な入力装置である。作業者は、操作部10を操作することによって、表示部15に表示されたタイヤを表す図形(以下、タイヤ図形と表記する。)、およびセンサを表す図形(以下、センサ図形と表記する。)を移動させる。作業者は、タイヤ図形およびセンサ図形を表示画面上で移動させることによって、タイヤのローテーションやセンサの入れ替えを模擬する。
【0016】
表示部15は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置である。表示部15は、車軸配列を模した図形、タイヤ図形、センサ図形および移動させるタイヤを車軸位置から外して置いておく仮置き箇所の図形を表示装置に画面表示する。作業者は、表示部15に表示された表示画面を見ながらタイヤ図形を移動させる。
【0017】
記憶部20は、例えばSSD(Solid State Drive)、ハードディスク、CD-ROM、DVD等によって構成される記憶装置である。記憶部20は、制御部30で実行するコンピュータプログラム、運行管理データ20a、車軸配列データ20b、装着状況データ20cおよび仕様データ20dなどを記憶する。
【0018】
運行管理データ20aは、例えば運送事業者で運行管理されている1または複数の輸送用トラック等の車両識別情報を含む。車軸配列データ20bは、車両識別情報に対応する車軸配列およびタイヤ装着位置を含む情報である。車両の車軸配列やタイヤ装着位置は、車両の車名および車両型式などに対応して決まっている。或る車名の輸送用トラックの車軸配列データ20bは、例えば車両の前部から後部にかけて3軸が配列されており、前部の1軸の左右にタイヤが1本ずつ、中央部から後部にかけての2軸の左右にタイヤが2本ずつ装着されている、という情報を含む。この車両の場合、タイヤは合計10本装着されている。
【0019】
装着状況データ20cは、車両識別情報に対応する車両の各装着位置に装着されているタイヤの識別情報、タイヤのセリアル面の向きを示す情報、センサの識別情報、および各タイヤ付属のホイールの向きを示す情報を含む。タイヤの幅方向に交差する2つの側面のうち一方の側面には、タイヤの製造番号や、商品名、サイズ、タイヤ幅、偏平率などのセリアル情報が刻印されている。タイヤの製造番号等のセリアル情報が刻印された面をセリアル面という。タイヤのセリアル面の向きを示す情報は、セリアル面が車両の左右のいずれを向いているかを示す。ホイールの向きを示す情報は、ホイール表面が車両の左右のいずれを向いているかを示す。
【0020】
仕様データ20dは、タイヤおよびセンサの仕様の情報を含む。タイヤの仕様は、例えばメーカー、商品名、型番、タイヤサイズ、タイヤ幅、扁平率、耐摩耗性能、タイヤ強度、静的剛性、動的剛性、タイヤ外径、ロードインデックス、製造年月日など、タイヤの性能に関する情報が含まれる。センサの仕様は、メーカー、商品名、型番、計測内容、製造年月日などの情報を含む。
【0021】
制御部30は、情報付加部31、図形配置部32、操作受付部33、図形移動部34、位置管理部35および情報表示部36を有する。制御部30は例えばCPU(中央処理装置)である。制御部30の各部は、記憶部20に記憶されたアプリケーションプログラムをCPUに読み込んで、演算等の処理を実行することによって機能する。
【0022】
図2は表示画面に表示されるタイヤの装着位置を示す模式図であり、
図3はタイヤ図形6等を配置した表示画面の一例を示す模式図である。情報付加部31は、ユーザによって選択された車両の識別情報に基づき、記憶部20の車軸配列データ20bから車軸配列およびタイヤ装着位置を読み出す。この際、作業者は、操作部10を操作し、運行管理データ20aに基づいて車両を選択する。操作受付部33は、操作部10で選択された車両の識別情報を情報付加部31へ出力する。
【0023】
情報付加部31は、装着状況データ20cに基づき、車両における各装着位置に装着されているタイヤの識別情報、タイヤのセリアル面の向きを示す情報、および各タイヤに設けられたセンサの識別情報を読み出す。情報付加部31は、表示画面に配置するタイヤ図形6およびセンサ図形7に対して、タイヤおよびセンサの識別情報を付加する。
【0024】
図2を参照し、図形配置部32は、車軸配列データ20bに基づいて、表示画面中に車両の前方から順に車軸A1、A2およびA3を配置する。図形配置部32は、車軸配列データ20bに基づいて、各車軸におけるタイヤの装着位置B11、B12等を配置する。
図2に示す例では、車軸A1に2箇所の装着位置B11、B12があり、車軸A2に4箇所の装着位置B21、B22、B23、B24があり、車軸A3に4箇所の装着位置B31、B32、B33、B34がある。
【0025】
また図形配置部32は、タイヤ図形6等を一旦移動させておく場所を表す仮置き箇所の図形Cを表示画面中に配置する。作業者は、タイヤ図形6等を仮置き箇所の図形に一旦移動させておくことで、タイヤローテーションを分かり易く模擬することができる。
【0026】
図3を参照し、図形配置部32は、タイヤの装着位置ごとに、タイヤ、ホイールおよびセンサのタイヤセットを示すタイヤセット図形5を配置する。図形配置部32は、タイヤセット図形5の内側に、装着位置を示すB11、B12等の記号が表示する。
【0027】
図形配置部32は、タイヤセット図形5の内側に、タイヤ図形6、センサ図形7およびホイール図形8を配置する。図形配置部32は、情報付加部31によってタイヤ図形6に付加されたタイヤの識別情報をタイヤ図形6の内側に表示する。図形配置部32は、情報付加部31によってセンサ図形7に付加されたセンサの識別情報をセンサ図形7の内側に表示する。タイヤ図形6は、タイヤのセリアル面の向きを示すセリアル面図形61を含む。
図3に示す例では、セリアル面図形61は線分で示されており、当該線分が表示されているタイヤの側面にセリアル情報が刻印されている。
【0028】
図形配置部32は、装着状況データ20cからホイールの向きを示す情報を読み出し、タイヤ図形6におけるホイールの表面が向く側にホイール図形8を配置する。ホイールの表面が向く側は、装着位置に応じて定められており、装着状況データ20cにおけるホイールの向きを示す情報と矛盾しないものとなっている。尚、
図3において、タイヤの識別情報はTID01、TID02等で表し、センサの識別情報はSID01、SID02等で表している。
【0029】
操作受付部33は、操作部10による作業者の操作入力を受け付ける。操作受付部33は、表示画面中で装着位置にあるタイヤセット図形5を仮置き箇所の図形Cの位置に移動させる操作を受け付ける。操作受付部33は、表示画面中で装着位置にあるタイヤセット図形5をタイヤセット図形5が無い別の装着位置に移動させる操作、仮置き箇所の図形Cにあるタイヤセット図形5をタイヤセット図形5が無い装着位置に移動させる操作を受け付ける。
【0030】
操作受付部33は、表示画面中で装着位置にあるタイヤセット図形5を、別の車軸位置に存在するタイヤセット図形5に重なるように移動させる操作を受け付けるようにしてもよいし、受け付けないようにしてもよい。
【0031】
操作受付部33は、表示画面中でタイヤ図形6およびセンサ図形7を個々に別の装着位置や仮置き箇所の図形Cに移動させる作業者の操作入力を受け付けるようにしてもよい。また操作受付部33は、タイヤセット図形5およびタイヤ図形6の移動に当たり、左右を反転する操作入力を受け付けるようにしてもよい。
【0032】
図形移動部34は、操作受付部33によって受け付けた作業者の操作を表示画面に反映させる。例えば、作業者が表示画面中でタイヤセット図形5を仮置き箇所の図形Cへ移動させる操作を行うと、図形移動部34は、タイヤセット図形5を仮置き箇所の図形Cへ移動させる。
【0033】
図形移動部34は、表示画面中で装着位置にあるタイヤセット図形5をタイヤセット図形5が無い別の装着位置に移動させる。図形移動部34は、表示画面中で仮置き箇所の図形Cにあるタイヤセット図形5をタイヤセット図形5が無い装着位置に移動させる。図形移動部34は、タイヤセット図形5とともに、同図形内の装着位置の表示、タイヤ図形6、センサ図形7およびホイール図形8も移動させる。
【0034】
作業者が表示画面中でタイヤ図形6およびセンサ図形7を個々に移動させる操作を行うと、図形移動部34は、タイヤ図形6およびセンサ図形7を別の装着位置や仮置き箇所の図形Cに移動させる。
【0035】
図形移動部34は、タイヤセット図形5の移動によりタイヤ図形6を移動させた場合、およびタイヤ図形6を単独で移動させた場合に、タイヤセット図形5に移動前後の装着位置を表示する。
【0036】
作業者が表示画面中でタイヤセット図形5およびタイヤ図形6の左右を反転させる操作を行うと、図形移動部34は、ホイール図形8をタイヤ図形6に配置する側を左右反転して表示する。またタイヤ図形6にはセリアル面図形61が含まれており、図形移動部34は、タイヤ図形6の左右反転に伴って、セリアル面図形61のタイヤ図形6上での配置も左右反転させる。図形移動部34は、セリアル面図形61の配置が左右反転した場合に、表示形態を変更してもよい。図形移動部34は、セリアル面図形61の配置が左右反転した場合に、表示形態を例えば黒色の線分から青色の線分などに変更してもよい。
【0037】
図形移動部34は、表示画面中でのタイヤローテーションの模擬試行における操作を記憶部20に記憶させておき、作業者の操作を初めから再生する機能を有していてもよい。図形移動部34によって再生したタイヤ図形6等の移動を、別の作業者や車両のユーザが確認したり、実際のタイヤローテーションを車両で実施する際に再生して確認しながら、作業することができる。
【0038】
位置管理部35は、表示画面中でのタイヤローテーション後の各装着位置に対応する、タイヤ図形6が示すタイヤの識別情報、セリアル面図形61が示すセリアル面の向き、センサ図形7が示すセンサの識別情報、およびホイール図形8が示すホイールの向きを、装着状況データ20cとして記憶部20に記憶させる。記憶部20は、装着状況データ20cをタイヤローテーションごとに書き換えてもよいし、タイヤローテーション前のデータを残して新たに追加し履歴を残していくようにしてもよい。
【0039】
情報表示部36は、作業者が操作部10で行う操作に対応して、タイヤおよびセンサに関する情報を表示画面に表示する。例えば操作部10のマウスデバイスを作業者が操作することによって、表示画面中における作業者の操作箇所を示すカーソルが移動する。表示画面中のカーソルの位置情報は、操作受付部33によって取得され、情報表示部36へ入力される。またタッチパネルを用いた操作入力では、作業者の操作箇所は、例えばタッチパネル上での作業者のタッチを検知した箇所となる。以下、操作箇所としてカーソルが表示画面に表示される場合を例にして説明する。
【0040】
情報表示部36は、カーソルがタイヤ図形6に重なった場合に、タイヤ図形6に対応するタイヤの仕様を仕様データ20dから読み出し、表示画面中に表示する。情報表示部36は、カーソルがセンサ図形7に重なった場合に、センサ図形7の移動前の装着位置を表示画面中に表示する。また情報表示部36は、カーソルがセンサ図形7に重なった場合に、センサ図形7に対応するセンサの仕様を仕様データ20dから読み出し、表示画面中に表示してもよい。
【0041】
次にタイヤ保守支援装置100の動作について説明する。
図4は、タイヤ保守支援装置100によるタイヤローテーション処理の手順を示すフローチャートである。タイヤ保守支援装置100の情報付加部31は、表示画面に表示するタイヤ図形6およびセンサ図形7にタイヤの識別情報およびセンサの識別情報を付加する(S1)。図形配置部32は、表示画面中に、車軸配列、タイヤの装着位置、タイヤセット図形5、タイヤ図形6、センサ図形7、ホイール図形8および仮置き箇所の図形Cなどの図形要素を表示画面に配置する(S2)。
【0042】
操作受付部33は、終了ボタンが押下されたか否かを判定する(S3)。操作受付部33は、終了ボタンが押下されなかったと判定した場合(S3:NO)、次のステップS4へ移行する。尚、終了ボタンは、例えば表示画面中に配置されており、作業者が表示画面中で終了ボタンを押下する操作を行う。
【0043】
操作受付部33は、タイヤセット図形5、タイヤ図形6およびセンサ図形7に対する作業者の移動操作の入力を受け付ける(S4)。図形移動部34は、操作受付部33によって受け付けた作業者の操作に従って、タイヤの装着位置および仮置き箇所においてタイヤ図形等を移動させ、作業者の操作を表示画面に反映させて(S5)、ステップS3へ帰還する。
【0044】
ステップS3において、終了ボタンが押下されたと判定した場合(S3:YES)、位置管理部35は、表示画面中でのタイヤローテーション後の各装着位置に対応する、タイヤ図形6が示すタイヤの識別情報、セリアル面図形61が示すセリアル面の向き、センサ図形7が示すセンサの識別情報、およびホイール図形8が示すホイールの向きを、装着状況データ20cとして記憶部20に記憶させ(S6)、処理を終了する。
【0045】
タイヤ保守支援装置100は、操作受付部33でタイヤ図形の移動に関する作業者の操作を受け付け、装着位置および仮置き箇所においてタイヤ図形を移動させることによって、視覚的に分かり易くタイヤローテーションを模擬し、タイヤローテーション作業を支援することができる。
【0046】
タイヤ保守支援装置100は、表示画面中でのタイヤローテーションにおいて、タイヤ図形6およびセンサ図形7にそれぞれの識別情報を付加することによって、作業者が移動対象のタイヤおよびセンサを容易に特定することができ、作業効率を高めることができる。
【0047】
またタイヤ保守支援装置100は、タイヤローテーション後の各装着位置におけるタイヤの識別情報、セリアル面の向き、センサの識別情報、およびホイールの向きを、装着状況データ20cとして記憶することによって、タイヤおよびセンサの移動状況を把握するためのデータを提供することができる。
【0048】
図5は表示画面中でのタイヤローテーションの一例を示す模式図であり、
図6はタイヤローテーション後のタイヤ図形等の配置を示す模式図である。この例では、
図5に示すように、装着位置B12のタイヤセット図形5を仮置き箇所の図形Cへ移動させ、装着位置B23のタイヤセット図形5を装着位置12へ移動させ、仮置き箇所の図形Cにあったタイヤセット図形5を装着位置B23へ移動させている。タイヤローテーション操作の終了後、
図6に示すように移動に関係したタイヤセット図形5等が操作どおりに配置される。
【0049】
図7(a)~
図7(c)は、図形要素の移動操作を説明するための模式図である。
図7(a)に示すように、タイヤ保守支援装置100は、タイヤセット図形5をカーソルによって選択し、タイヤ図形6、センサ図形7およびホイール図形8を一緒に移動操作することができる。
【0050】
図7(b)に示すように、タイヤ保守支援装置100は、タイヤ図形6のみをカーソルで選択し、タイヤ図形6を単独で移動操作することができる。
図7(c)に示すように、タイヤ保守支援装置100は、センサ図形7のみをカーソルで選択し、センサ図形7を単独で移動操作することができる。
【0051】
図8は、タイヤの向きを反転する操作について説明するための模式図である。操作受付部33は、作業者が例えば表示画面中に表示される反転ボタンを操作する入力を受け付け、図形移動部34へ出力する。図形移動部34は、移動操作前の状態でタイヤ図形6の一方の側に設けたホイール図形8を、装着位置に応じて移動操作後にタイヤ図形6の他方の側へ反転させる場合と、反転させない場合がある。また図形移動部34は、タイヤ図形6におけるセリアル面図形61の配置を左右反転させる。
図8に示す例では、作業者による反転操作入力に基づき、装着位置の関係からセリアル面図形61の配置は左右反転し、ホイール図形8の配置は左右反転していない。ホイール図形8の配置は、移動後の装着位置に応じて左右が反転される。タイヤ保守支援装置100は、ホイール図形8やセリアル面図形61をタイヤ図形6とともに移動させることでタイヤの左右方向の向きを識別することができ、反転操作を受け付けて実際のタイヤローテーションにおけるタイヤの向きの変更を模擬することができる。また図形移動部34は、セリアル面図形61およびホイール図形8の配置がともに反転する場合と、一方だけが反転する場合をカテゴリが異なる反転動作であると認識してもよい。
【0052】
図9は、移動前後の装着位置を表示する場合の表示画面の一例を示す模式図である。図形移動部34は、移動させたタイヤ図形6に対して移動前後の装着位置を表示するようにしてもよい。
図9において、図形移動部34は、タイヤ図形6が移動した装着位置B12にあるタイヤセット図形5には装着位置B23からB12へ移動したことを表示し、装着位置B23にあるタイヤセット図形5には装着位置B12からB23へ移動したことを表示する。
【0053】
タイヤ保守支援装置100は、移動させたタイヤ図形6に対して移動前後の装着位置を表示することによって、作業者に分かり易く移動前後の装着位置の情報を提供することができる。
【0054】
タイヤ保守支援装置100の情報表示部36は、作業者が表示画面中で操作するカーソルがタイヤ図形6に重なった場合に、タイヤ図形6に対応するタイヤの仕様を表示することによって、表示画面中に配置されたタイヤの仕様を提供することができる。また情報表示部36は、作業者が表示画面中で操作するカーソルがセンサ図形7に重なった場合に、センサ図形7の移動前の装着位置を表示画面中に表示することによって、センサの移動前の装着位置を作業者に知得させることができる。
【0055】
図形移動部34は、移動させた図形要素に対する表示形態が移動していない図形要素と異なるように変更してもよい。図形移動部34は、タイヤセット図形5、タイヤ図形6、セリアル面図形61、センサ図形7およびホイール図形8が移動した場合に、それらの表示形態を変更する。
【0056】
図10(a)および
図10(b)は、移動させた図形要素に対して表示形態を変更した例を示す模式図である。
図10(a)および
図10(b)では、装着位置B11からB12へタイヤを移動させる例を示している。
図10(a)に示すように、図形移動部34は、タイヤセット図形5が移動した場合に、タイヤセット図形5の枠部分を移動前の色と別の色に変更する。また
図10(b)に示すように、図形移動部34は、タイヤセット図形5が移動した場合に、タイヤセット図形5およびタイヤ図形6の外形線を移動前の色と別の色に変更する。図形移動部34は、例えば黒色から青色に変更する。図形移動部34による図形要素の表示形態の変更は、枠や外形線の色変更に限らず、図形の塗りつぶし、形状や線種の変更などとしてもよい。
【0057】
図形移動部34は、タイヤセット図形5が移動した場合に、タイヤ図形6、セリアル面図形61、センサ図形7およびホイール図形8が一緒に移動しており、タイヤセット図形5と同様に、タイヤ図形6等の表示形態を変更してもよい。図形移動部34は、セリアル面図形61およびホイール図形8の配置が左右反転するような操作についても移動操作の一形態とし、これらの図形の表示形態を変更してもよい。図形移動部34は、上述のカテゴリが異なる反転動作に対して、表示形態の変更の仕方を異なるものとし、作業者に異なる反転動作であることを知得させるようにしてもよい。
【0058】
タイヤ図形6、セリアル面図形61、センサ図形7およびホイール図形8に対する表示形態の変更は、これらの図形要素の周囲にある図形要素、即ちタイヤセット図形5の表示形態の変更を含んでいる。タイヤ図形6、セリアル面図形61、センサ図形7およびホイール図形8に対する表示形態の変更には、これらの図形要素を囲むタイヤセット図形5の枠線色などの表示形態の変更が含まれると考えてもよい。
【0059】
タイヤ保守支援装置100は、移動させたタイヤセット図形5、タイヤ図形6、セリアル面図形61、センサ図形7およびホイール図形8に対する表示形態を変更することによって、操作によって移動させた図形要素を分かり易く作業者に知得させ、保守作業におけるミスを抑制し、作業効率を高めることができる。
【0060】
また図形移動部34は、車軸における装着位置の間での図形要素の移動、および仮置き箇所の図形Cへの図形要素の移動において、タイヤセット図形5、タイヤ図形6、セリアル面図形61、センサ図形7およびホイール図形8に対する表示形態を変更する。タイヤ保守支援装置100は、仮置き箇所を経由する図形要素に対しても表示形態の変更によって、移動操作の途中過程の図形要素を分かり易く作業者に知得させることができる。
【0061】
次に実施形態に係るタイヤ保守支援プログラムおよびタイヤ保守支援装置の特徴について説明する。
タイヤ保守支援プログラムは、情報付加ステップ、図形配置ステップ、操作受付ステップおよび図形移動ステップをコンピュータに実行させる。情報付加ステップは、車両に装着されたタイヤを表すタイヤ図形6にタイヤの識別情報を付加し、タイヤに設けたセンサを表すセンサ図形7にセンサの識別情報を付加する。図形配置ステップは、車軸配列情報に基づいてタイヤ図形6およびセンサ図形7を表示画面に配置する。操作受付ステップは、図形配置ステップによって配置されたタイヤ図形6およびセンサ図形7を移動させる作業者の操作を受け付ける。図形移動ステップは、操作受付ステップにより受け付けた操作に基づき、タイヤ図形6およびセンサ図形7を車軸におけるタイヤの装着位置に応じて移動させる。このタイヤ保守支援プログラムによれば、作業者が移動対象のタイヤおよびセンサを容易に特定することができ、タイヤの保守作業におけるミスを抑制し、作業効率を高めることができる。
【0062】
また図形配置ステップは、タイヤに装着されたホイールの表裏を示すホイール図形8をタイヤ図形6に対応して表示画面に配置する。図形移動ステップは、ホイール図形8をタイヤ図形6とともに移動させる。このタイヤ保守支援プログラムによれば、タイヤの左右方向の向きを識別することができ、反転操作を受け付けて実際のタイヤローテーションにおけるタイヤの向きの変更を模擬することができる。
【0063】
また図形配置ステップは、タイヤのセリアル情報が刻印された側面を示すセリアル面図形61をタイヤ図形6に対応して表示画面に配置する。図形移動ステップは、セリアル面図形61をタイヤ図形6とともに移動させる。このタイヤ保守支援プログラムによれば、タイヤの左右方向の向きを識別することができ、反転操作を受け付けて実際のタイヤローテーションにおけるタイヤの向きの変更を模擬することができる。
【0064】
また図形移動ステップは、移動させたタイヤ図形6に対して移動前後の装着位置を表示する。このタイヤ保守支援プログラムによれば、作業者に分かり易く移動前後の装着位置の情報を提供することができる。
【0065】
また表示画面において作業者の操作箇所にセンサ図形7に重なった場合に、センサの移動前の装着位置を表示する情報表示ステップを更に備える。このタイヤ保守支援プログラムによれば、センサの移動前の装着位置を作業者に知得させることができる。
【0066】
また表示画面において作業者の操作箇所にタイヤ図形6に重なった場合に、タイヤの仕様を表示する情報表示ステップを更に備える。このタイヤ保守支援プログラムによれば、表示画面中に配置されたタイヤの仕様を提供することができる。
【0067】
タイヤ保守支援装置100は、情報付加部31、図形配置部32、操作受付部33および図形移動部34を備える。情報付加部31は、車両に装着されたタイヤを表すタイヤ図形6にタイヤの識別情報を付加し、タイヤに設けたセンサを表すセンサ図形7にセンサの識別情報を付加する。図形配置部32は、車軸配列情報に基づいてタイヤ図形6およびセンサ図形7を表示画面に配置する。操作受付部33は、図形配置部32によって配置されたタイヤ図形6およびセンサ図形7を移動させる作業者の操作を受け付ける。図形移動部34は、操作受付部33により受け付けた操作に基づき、タイヤ図形6およびセンサ図形7を車軸におけるタイヤの装着位置に応じて移動させる。これにより、タイヤ保守支援装置100は、作業者が移動対象のタイヤおよびセンサを容易に特定することができ、タイヤの保守作業におけるミスを抑制し、作業効率を高めることができる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0069】
6 タイヤ図形、 7 センサ図形、 8 ホイール図形、
31 情報付加部、 32 図形配置部、 33 操作受付部、
34 図形移動部、 61 セリアル面図形、 100 タイヤ保守支援装置。