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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026021
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20250214BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20250214BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20250214BHJP
【FI】
F04B39/00 102Z
F04B39/12 Z
F04B39/12 J
F04B39/00 102V
F04B39/00 106A
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131341
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】手島 淳夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 達人
【テーマコード(参考)】
3H003
5H770
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB05
3H003AC03
3H003BA02
3H003BB08
3H003CE02
3H003CF01
5H770AA07
5H770AA21
5H770BA05
5H770DA03
5H770DA41
5H770PA24
5H770PA42
5H770QA08
5H770QA28
5H770QA31
5H770QA33
5H770QA36
(57)【要約】
【課題】電動圧縮機の運転時におけるインバータケースでの共振の発生を抑制する。
【解決手段】電動圧縮機1は、電動モータ4と、電動モータ4によって駆動される圧縮機構5と、電動モータ4を駆動するインバータ6と、電動モータ4を収容するモータハウジング20と、モータハウジング20に当接させて固定され、かつ、インバータ6を収容するインバータケース7と、を備える。モータハウジング20は、筒状の本体部24と、本体部24の外周面に設けられた第1の突出部41と、を有する。インバータケース7は端壁30を有し、端壁30の外面30aは、本体部24の一方の端面(前端面24a)に当接する当接部分30a1と、外部に露出する露出部分30a2と、を含む。端壁30の外面30aの露出部分30a2には、第2の突出部42が設けられている。第1の突出部41が第2の突出部42に直接的又は間接的に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータによって駆動される圧縮機構と、
前記電動モータを駆動するインバータと、
前記電動モータを収容するモータハウジングと、
前記モータハウジングに当接させて固定され、かつ、前記インバータを収容するインバータケースと、
を備える電動圧縮機であって、
前記モータハウジングは、筒状の本体部と、前記本体部の外周面に設けられた第1の突出部と、を有し、
前記インバータケースは端壁を有し、該端壁の外面は、前記本体部の一方の端面に当接する当接部分と、外部に露出する露出部分と、を含み、
前記端壁の外面の前記露出部分には、第2の突出部が設けられており、
前記第1の突出部が前記第2の突出部に直接的又は間接的に固定されている、
電動圧縮機。
【請求項2】
前記第1の突出部が前記第2の突出部に当接し、
前記第1の突出部がボルトによって前記第2の突出部に直接的に固定されている、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記第1の突出部が連結部材を介して前記第2の突出部に間接的に固定されている、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記連結部材は、前記第1の突出部に面接触する第1の取付部と、前記第2の突出部に面接触する第2の取付部と、を含み、
前記第1の取付部が前記第1の突出部に固定されており、
前記第2の取付部が前記第2の突出部に固定されている、請求項3に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記第1の取付部の前記第1の突出部に対する固定と、前記第2の取付部の前記第2の突出部に対する固定とが、それぞれ、ボルト締結によって行われており、
前記第1の取付部及び前記第2の取付部の各々が、前記ボルトの締め付け時の前記第1の突出部及び前記第2の突出部に対する前記連結部材の回転を抑制する回転止めとして機能するように構成されている、請求項4に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記連結部材は補強部を更に含む、請求項4に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記本体部には、前記端面に隣接するように吸入ポートが形成されており、
前記圧縮機構は、前記吸入ポートから前記本体部内に吸入された冷媒を圧縮して吐出するように構成されており、
前記端壁の内面のうち前記当接部分に隣接する部分には、前記インバータを構成するスイッチング素子が設けられている、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項8】
前記電動圧縮機は車両に搭載され、
前記本体部が水平方向に延び、
前記インバータケースが上下方向に延び、
前記インバータケースの上部には、前記車両への固定用の突起部が設けられており、
前記インバータケースは、前記本体部よりも下方に張り出している、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項9】
前記第1の突出部が、前記本体部の外周面における下端部に設けられており、
前記第2の突出部が、前記端壁の外面の前記露出部分における、前記第1の突出部と同等の高さ位置か、又は、前記第1の突出部よりも下方の高さ位置に設けられている、請求項8に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置で冷媒の圧縮に用いられる電動圧縮機の多くは、圧縮機構を駆動する電動モータと、インバータとを有する。そして、車載バッテリなどからの直流電力をインバータにて交流電力に変換しながら電動モータへの給電を制御することによって電動モータを駆動している。この点、特許文献1は、電動モータを収容するモータハウジングと、インバータを収容するインバータケースとを、電動圧縮機の軸方向に突き合わせて、両者を固定することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-138248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電気自動車の高電圧化が進んでいる。これに伴い、インバータについては、高電圧での絶縁距離の確保のため、電子基板の大型化が進んでおり、その結果、インバータケースも大型化している。このため、電動圧縮機の軸方向に見て、インバータケースが、モータハウジングの輪郭から大きく張り出してしまう。このインバータケースの張り出し部は、曲げ剛性が低く、また、固有振動数が低いので、電動圧縮機の運転時に共振が発生する恐れがあった。尚、この共振は、インバータの破損を招きかねない。
【0005】
そこで、本発明は、電動圧縮機の運転時におけるインバータケースでの共振の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、電動圧縮機が提供される。この電動圧縮機は、電動モータと、前記電動モータによって駆動される圧縮機構と、前記電動モータを駆動するインバータと、前記電動モータを収容するモータハウジングと、前記モータハウジングに当接させて固定され、かつ、前記インバータを収容するインバータケースと、を備える。前記モータハウジングは、筒状の本体部と、前記本体部の外周面に設けられた第1の突出部と、を有する。前記インバータケースは端壁を有する。前記端壁の外面は、前記本体部の一方の端面に当接する当接部分と、外部に露出する露出部分と、を含む。前記端壁の外面の前記露出部分には、第2の突出部が設けられている。前記第1の突出部が前記第2の突出部に直接的又は間接的に固定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動圧縮機の運転時におけるインバータケースでの共振の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態における電動圧縮機の概略縦断面図である。
図2図1のA-A矢視図である。
図3】前記第1実施形態における電動圧縮機の正面図である。
図4】前記第1実施形態における電動圧縮機の底面図である。
図5】前記第1実施形態におけるモータハウジングの正面図である。
図6】前記第1実施形態における連結部材の斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態における連結部材の斜視図である。
図8】本発明の第3実施形態における連結部材の斜視図である。
図9】本発明の第4実施形態における連結部材の斜視図である。
図10】前記第4実施形態における、後方から見た、連結部材の取付状況を示す図である。
図11】前記第4実施形態における、下方から見た、連結部材の取付状況を示す図である。
図12】前記第4実施形態における連結部材の回転止め機能を説明するための図である。
図13】本発明の第5実施形態における電動圧縮機の概略縦断面図である。
図14図13のB-B矢視図である。
図15】前記第5実施形態における電動圧縮機の底面図である。
図16】前記第5実施形態の電動圧縮機の変形例を示す図である。
図17】本発明の第6実施形態における電動圧縮機の左側面図である。
図18】前記第6実施形態における電動圧縮機の概略縦断面図である。
図19図17及び図18のC-C矢視図である。
図20】前記第6実施形態における電動圧縮機の正面図である。
図21】前記第6実施形態におけるモータハウジングの正面図である。
図22】前記第6実施形態の電動圧縮機の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の第1実施形態における電動圧縮機1の概略縦断面図である。図2は、図1のA-A矢視図である。図3及び図4は、それぞれ、電動圧縮機1の正面図及び底面図である。図5は、モータハウジング20の正面図である。尚、図2では、図示簡略化のため、モータハウジング20内の構成要素の図示を省略している。以下では、電動圧縮機1について、前後・左右・上下を、図1及び図2に示すように便宜上規定して、説明する。
【0011】
電動圧縮機1は、例えば、車両に搭載されて車両用空調装置の冷媒回路の一部を構成し、冷媒(本実施形態では気体冷媒)を圧縮して吐出するように構成され得る。
【0012】
電動圧縮機1は、ハウジング2と、回転軸3と、回転軸3を回転させる電動モータ4と、回転軸3によって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機構5と、電動モータ4を駆動するインバータ6と、インバータケース7とを有する。回転軸3、電動モータ4、及び圧縮機構5は、ハウジング2に収容されている。ここにおいて、電動モータ4及び圧縮機構5は、ハウジング2内において、回転軸3の軸方向(電動圧縮機1の軸方向)に直列に配置されている。インバータ6は、インバータケース7に収容されている。
【0013】
本実施形態では、電動圧縮機1は、電動スクロール圧縮機であり、圧縮機構5は、スクロール圧縮機構である。圧縮機構5は、固定スクロール8と、固定スクロール8に対して旋回運動する旋回スクロール(可動スクロール)9とを含む。固定スクロール8と旋回スクロール9とは、電動圧縮機1の軸方向に対向配置されている。
【0014】
旋回スクロール9は、回転軸3によってクランク機構10を介して駆動され、固定スクロール8に対して旋回運動するように、換言すれば、固定スクロール8の軸心周りに公転するように構成されている。
【0015】
クランク機構10は、回転軸3と旋回スクロール9とを連結すると共に、回転軸3の回転運動を旋回スクロール9の旋回運動に変換するように構成されている。圧縮機構5は、旋回スクロール9が固定スクロール8に対して旋回運動を行うことで低圧の冷媒を取り込んで圧縮するように構成されている。
【0016】
ハウジング2は、例えば金属製である。ハウジング2は、フロントハウジングとも称されるモータハウジング20と、リアハウジング21とを含む。モータハウジング20(後述する本体部24)は、回転軸3及び電動モータ4を収容している。リアハウジング21(後述する前筒部25)は圧縮機構5を収容している。モータハウジング20の後端面(後述する後端面24b)をリアハウジング21の前端面(後述する前端面25a)に突き合わせた状態で両者を図示省略の締結具などによって締結することで、ハウジング2が構成されている。
【0017】
モータハウジング20の本体部24は、前後方向(水平方向)に延びる筒状であり、特に本実施形態では円筒状である。本体部24は、その前端面(一方の端面)24aが閉口し、後端面(他方の端面)24bが開口している。
【0018】
リアハウジング21は、前後2段の筒状である。リアハウジング21は、モータハウジング20の本体部24の外径と同等の外径を有する円筒状の前筒部25と、前筒部25よりも外径が小さい円筒状の後筒部26とを有する。前筒部25の前端面25aが開口している。後筒部26の後端面26bが閉口している。尚、前筒部25と後筒部26とは別部材であってもよい。
【0019】
電動モータ4は、例えば三相同期モータ(ブラシレスDCモータ)で構成されており、ステータコアユニット13と、ロータ14とを含む。
【0020】
ステータコアユニット13は、モータハウジング20の本体部24の内周面に固定されている。ステータコアユニット13には、図示しない車載バッテリなどからの直流電流がインバータ6によって三相交流電流に変換されて供給される。
【0021】
ロータ14は、ステータコアユニット13の径方向内側に所定の隙間を有して配置されている。ロータ14には永久磁石(図示せず)が組み込まれている。ロータ14は、円筒状に形成されており、その中空部に回転軸3が挿通された状態で回転軸3に固定されている。すなわち、ロータ14は、回転軸3と一体化されている。
【0022】
電動モータ4は、インバータ6からの給電によってステータコアユニット13に磁界が発生すると、ロータ14の永久磁石に回転力が作用してロータ14が回転し、これによって、回転軸3を回転させる。
【0023】
モータハウジング20の本体部24の上部には、前端面24aに隣接するように、吸入ポートP1が形成されている。吸入ポートP1は、図示省略の接続管などを介して前記冷媒回路(の低圧側)に接続されている。
【0024】
図1に示すように、本実施形態において、電動圧縮機1は、低圧の冷媒が流入する吸入室H1と、低圧の冷媒を圧縮する圧縮室H2と、圧縮室H2で圧縮された冷媒が吐出される吐出室H3とを有する。
【0025】
吸入室H1は、モータハウジング20の本体部24によって区画形成されている。吸入室H1には、吸入ポートP1を介して、前記冷媒回路からの低圧の冷媒が流入する。吸入室H1内の低圧の冷媒は、冷媒通路L1を通って、圧縮機構5の近傍の空間H4に至る。
【0026】
圧縮室H2は、圧縮機構5内、すなわち、固定スクロール8と旋回スクロール9との間に形成される。圧縮機構5は、圧縮室H2の形成時に空間H4から低圧の冷媒を取り込むことで低圧の冷媒を圧縮するように構成されている。
【0027】
吐出室H3は、リアハウジング21の後筒部26内に配置されている。固定スクロール8の基板8aには、圧縮室H2と吐出室H3とを連通する吐出孔L2が形成されている。このため、吐出室H3には、圧縮機構5の圧縮室H2で圧縮された冷媒が吐出孔L2を介して吐出される。尚、固定スクロール8の基板8aにおける、吐出室H3に臨む側の面には、圧縮室H2から吐出室H3への冷媒の流通を許容するが、吐出室H3から圧縮室H2への冷媒の流通を規制する、例えばリード弁からなる逆止弁15が取り付けられている。
【0028】
吐出室H3内には、冷媒(気体冷媒)に含まれる潤滑油を分離するオイルセパレータ16が配置されている。リアハウジング21の後筒部26の上部には、吐出室H3(オイルセパレータ16)に連通するように、吐出ポートP2が形成されている。吐出ポートP2は、図示省略の接続管などを介して前記冷媒回路(の高圧側)に接続されている。ゆえに、吐出室H3に流入した冷媒については、オイルセパレータ16によって潤滑油が分離され、その後、吐出ポートP2から前記冷媒回路の高圧側へと導出される。
【0029】
従って、前記冷媒回路からの低圧の冷媒は、吸入ポートP1を介して吸入室H1に流入して電動モータ4の隙間を通過し、その後、冷媒通路L1を介して圧縮機構5の近傍の空間H4に導かれる。空間H4に導かれた低圧の冷媒は、旋回スクロール9の旋回運動に伴って、圧縮機構5の圧縮室H2に取り込まれて圧縮される。圧縮室H2で圧縮された冷媒は、吐出孔L2(及び逆止弁15)を介して吐出室H3に吐出され、その後、オイルセパレータ16にて潤滑油が分離される。そして、オイルセパレータ16にて潤滑油が分離された冷媒は吐出ポートP2から前記冷媒回路へと導出される。
【0030】
ここで、吸入ポートP1を介して吸入室H1に流入する低温低圧の冷媒によって、モータハウジング20の本体部24の前端面24aと、電動モータ4(ステータコアユニット13及びロータ14)とが冷却され得る。また、電動モータ4によって駆動される圧縮機構5は、吸入ポートP1からモータハウジング20の本体部24内(吸入室H1内)に吸入された冷媒を圧縮して吐出するように構成されている。
【0031】
尚、本実施形態では、ハウジング2の上部(モータハウジング20の上部とリアハウジング21の上部との少なくとも一方)に1つ以上の突起部27が設けられている。この突起部27は、ハウジング2を車両に固定するために用いられ得る。突起部27は、ハウジング2の上部(モータハウジング20の上部とリアハウジング21の上部との少なくとも一方)から上方に突出している。突起部27は、例えば直方体状(角柱状)又は円柱状であり得る。
【0032】
インバータケース7は、例えば金属製である。インバータケース7は、モータハウジング20の本体部24の前方に配置されている。インバータケース7は、モータハウジング20の本体部24に当接させて固定されている。
【0033】
インバータケース7は、端壁(底壁)30と、端壁30の周縁部から立ち上がると共に端壁30に対向する開口部を画定する周壁31と、を有する。インバータケース7は、本実施形態では、上下方向に延びる矩形の箱状であり、インバータケース7の後端部が端壁30によって構成されている。インバータケース7の前端部には、前記開口部を閉塞するためのインバータカバー32が着脱可能に取り付けられている。このインバータカバー32のインバータケース7への固定には、複数(本実施形態では12個)のボルト33が用いられている。
【0034】
電動圧縮機1の軸方向に見て、インバータケース7が、モータハウジング20の本体部24の輪郭から上下左右に張り出している。特に本実施形態では、電動圧縮機1の軸方向に見て、インバータケース7が、モータハウジング20の本体部24の輪郭から下方に大きく張り出している。
【0035】
インバータケース7の端壁30の外面30aは、モータハウジング20の本体部24の前端面24aに当接する当接部分30a1と、外部に露出する露出部分30a2とからなる。
【0036】
インバータケース7に収容されるインバータ6は、複数(本実施形態では6つ)のスイッチング素子(パワースイッチング素子)35と、スイッチング素子35を制御する制御回路が実装された制御基板36とを有する。制御基板36は、インバータケース7内における、端壁30から前記開口部側に離れた位置に配置されている。制御基板36は、図示しない取付部材によってインバータケース7に取り付けられている。スイッチング素子35は、インバータケース7の端壁30の内面30bのうち前記当接部分30a1に隣接する部分(換言すれば、本体部24の前端面24aに隣接する部分)に設けられている。
【0037】
インバータケース7をモータハウジング20の本体部24に固定するために、複数(本実施形態では8個)の第1のボルト51が用いられている。このため、インバータケース7の端壁30には、第1のボルト51の雄ねじ部を挿入するための複数(本実施形態では8個)の貫通孔38が形成されている。また、モータハウジング20の本体部24(前端面24a)には、第1のボルト51の雄ねじ部が螺合する雌ねじ部24cが複数(本実施形態では8個)形成されている。ゆえに、第1のボルト51はインバータケース7の内側からねじ込まれる。ここにおいて、前述のボルト33と、第1のボルト51とは、共に、前方から後方に向けて(つまり同じ方向に)ねじ込まれている。尚、本実施形態では、複数(本実施形態では8個)の第1のボルト51が、本体部24の周方向に沿って、互いに間隔をあけて並んでいる。
【0038】
尚、本実施形態では、インバータケース7の上部に1つ以上の突起部39が設けられている。この突起部39は、インバータケース7を車両に固定するために用いられ得る。突起部39は、インバータケース7の上部から上方に突出している。突起部39は、例えば直方体状又は円柱状であり得る。
【0039】
本実施形態では、電動圧縮機1の軸方向に見て、インバータケース7が、モータハウジング20の本体部24の輪郭から下方に大きく張り出している。このため、インバータケース7が、いわゆる片持ち状態となっている。この片持ち状態を軽減するため、本実施形態では、モータハウジング20とインバータケース7とが、それぞれ、第1の突出部41と第2の突出部42とを有する。
【0040】
第1の突出部41は、モータハウジング20の本体部24の外周面における下端部に設けられており、当該下端部から下方に突出している。すなわち、第1の突出部41は、モータハウジング20の本体部24の外周面から径方向外方に突出している。第2の突出部42は、インバータケース7の端壁30の外面30aの露出部分30a2における、第1の突出部41よりも下方の高さ位置に設けられており、当該位置から後方に突出している。本実施形態では、第1の突出部41及び第2の突出部42は、それぞれ、直方体状であるが、この他、円柱状であってもよい。
【0041】
本実施形態では、第1の突出部41が連結部材100を介して第2の突出部42に間接的に固定されている。ここで、連結部材100について、前述の図1図5に加えて、図6を用いて説明する。図6は、連結部材100の斜視図である。
【0042】
連結部材100は、一方向に延びる矩形板状の主部101と、主部101の一方の端部に形成される矩形板状の第1の取付部111と、主部101の他方の端部に形成される矩形板状の第2の取付部112とを含む。本実施形態では、例えば1枚の金属板を折り曲げることで、主部101と第1の取付部111と第2の取付部112とを形成することができる。
【0043】
第1の取付部111は、第1の突出部41の下端面に面接触する。第1の取付部111の第1の突出部41に対する固定にはボルト121が用いられている。このため、第1の取付部111には、ボルト121の雄ねじ部を挿入するための貫通孔113が形成されている。尚、第1の突出部41には、ボルト121の雄ねじ部が螺合する雌ねじ部43が形成されている。
【0044】
第2の取付部112は、第2の突出部42の後端面に面接触する。第2の取付部112の第2の突出部42に対する固定にはボルト122が用いられている。このため、第2の取付部112には、ボルト122の雄ねじ部を挿入するための貫通孔114が形成されている。尚、第2の突出部42には、ボルト122の雄ねじ部が螺合する雌ねじ部44が形成されている。
【0045】
本実施形態において、前述のインバータケース7の片持ち状態の軽減という観点に基づくと、第2の突出部42は、第1の突出部41から下方に極力離れた位置に設けられることが好ましい。また、複数の連結部材100を用いるために、各連結部材100ごとに対応するように第1の突出部41と第2の突出部42とを設けてもよいことは言うまでもない。つまり、電動圧縮機1が複数の連結部材100と複数の第1の突出部41と複数の第2の突出部42とを備えてもよい。
【0046】
本実施形態によれば、電動圧縮機1は、電動モータ4と、電動モータ4によって駆動される圧縮機構5と、電動モータ4を駆動するインバータ6と、電動モータ4を収容するモータハウジング20と、モータハウジング20に当接させて固定され、かつ、インバータ6を収容するインバータケース7と、を備える。モータハウジング20は、筒状の本体部24と、本体部24の外周面に設けられた第1の突出部41と、を有する。インバータケース7は端壁30を有し、端壁30の外面30aは、本体部24の前端面24a(一方の端面)に当接する当接部分30a1と、外部に露出する露出部分30a2と、を含む。端壁30の外面30aの露出部分30a2には、第2の突出部42が設けられている。第1の突出部41が第2の突出部42に連結部材100を介して間接的に固定されている。これにより、電動圧縮機1の運転時におけるインバータケース7での共振の発生を抑制することができる。尚、第1の突出部41と第2の突出部42との少なくとも一方が直方体状又は円柱状であることが好ましい。
【0047】
また本実施形態によれば、連結部材100は、第1の突出部41に面接触する第1の取付部111と、第2の突出部42に面接触する第2の取付部112と、を含む。第1の取付部111が第1の突出部41に固定されている。第2の取付部112が第2の突出部42に固定されている。これにより、簡素な構成で、連結部材100を構成することができる。
【0048】
また本実施形態によれば、本体部24には、前端面24a(一方の端面)に隣接するように吸入ポートP1が形成されている。圧縮機構5は、吸入ポートP1から本体部24内に吸入された冷媒を圧縮して吐出するように構成されている。端壁30の内面30bのうち当接部分30a1に隣接する部分には、インバータ6を構成するスイッチング素子35が設けられている。ゆえに、吸入ポートP1を介して本体部24内に流入する低温低圧の冷媒によって、本体部24の前端面24a及びインバータケース7の端壁30を介して、スイッチング素子35を冷却することができる。
【0049】
また本実施形態によれば、電動圧縮機1は車両に搭載される。本体部24が水平方向に延びている。インバータケース7が上下方向に延びている。インバータケース7の上部には、車両への固定用の突起部39が設けられている。インバータケース7は、本体部24よりも下方に張り出している。そして、第1の突出部41が、本体部24の外周面における下端部に設けられている。第2の突出部42が、端壁30の外面30aの露出部分30a2における、第1の突出部41よりも下方の高さ位置に設けられている。これにより、前述のインバータケース7の片持ち状態の軽減を図ることができる。ここにおいて、本体部24は円筒状であり、第1の突出部41は、本体部24の外周面から径方向外方に突出している。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態について、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態における連結部材100の斜視図である。前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0051】
本実施形態では、連結部材100が、左右一対の補強部102を更に含む。各補強部102は、屈曲している連結部材100(主部101、第1の取付部111、及び第2の取付部112)の変形を抑制するように、連結部材100(主部101、第1の取付部111、及び第2の取付部112)の屈曲内側に設けられている。補強部102は、連結部材100を構成する主部101、第1の取付部111、及び第2の取付部112の各々の左右両縁部に立設されている。
【0052】
特に本実施形態によれば、連結部材100が、左右一対の補強部102を更に含む。これにより、連結部材100の剛性を高めることができ、ひいては、電動圧縮機1の運転時におけるインバータケース7での共振の発生を更に抑制することができる。
【0053】
次に、本発明の第3実施形態について、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態における連結部材100’の斜視図である。前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0054】
本実施形態における連結部材100’では、前述の主部101が省略されており、例えば1枚の金属板を直角に折り曲げることで、第1の取付部111と第2の取付部112とを形成している。第1の取付部111と第2の取付部112との連結部分である角部には、左右一対の補強部102’が設けられている。各補強部102’は、直角に屈曲している連結部材100(第1の取付部111、及び第2の取付部112)の変形を抑制するように、前述の角部に溶接等で固定されている。
【0055】
特に本実施形態によれば、連結部材100’が、左右一対の補強部102’を更に含む。これにより、連結部材100’の剛性を高めることができ、ひいては、電動圧縮機1の運転時におけるインバータケース7での共振の発生を更に抑制することができる。
【0056】
次に、本発明の第4実施形態について、図9図12を用いて説明する。図9は、本実施形態における連結部材100”の斜視図である。図10は、本実施形態における、後方から見た、連結部材100”の取付状況を示す図である。図11は、本実施形態における、下方から見た、連結部材100”の取付状況を示す図である。図12は、本実施形態における連結部材100”の回転止め機能を説明するための図である。ここにおいて、図10は、前述の図2に対応するものである。前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0057】
本実施形態における連結部材100”では、前述の連結部材100における第1の取付部111に、第1の突出部41の左側面に面接触する矩形板状の延長部111aが設けられている。そして、第1の取付部111の延長部111aには、ボルト121の雄ねじ部を挿入するための貫通孔113’が形成されている。尚、第1の突出部41には、ボルト121の雄ねじ部が螺合する雌ねじ部(図示せず)が形成されている。
【0058】
本実施形態において、ボルト121は、左方から右方に向けてねじ込まれる。一方、ボルト122は、後方から前方に向けてねじ込まれる。この点、図12には、ボルト121のねじ込み方向D1と、ボルト121をねじ込む際のボルト121の回転方向R1と、ボルト122のねじ込み方向D2と、ボルト122をねじ込む際のボルト122の回転方向R2とが、それぞれ図示されている。
【0059】
ボルト121をねじ込み方向D1に(すなわち左方から右方に向けて)ねじ込むときには、ボルト121が時計回りに(回転方向R1に沿って)回転する。これに伴って、連結部材100”も時計回りに(回転方向R1に沿って)回転しようとするが、この回転が、第2の突出部42に面接触している第2の取付部112によって阻止される。つまり、第2の取付部112が、ボルト121の締め付け時の第1の突出部41に対する連結部材100”の回転を抑制する回転止めとして機能している。
【0060】
一方、ボルト122をねじ込み方向D2に(すなわち後方から前方に向けて)ねじ込むときには、ボルト122が時計回りに(回転方向R2に沿って)回転する。これに伴って、連結部材100”も時計回りに(回転方向R2に沿って)回転しようとするが、この回転が、第1の突出部41に面接触している第1の取付部111の延長部111aによって阻止される。つまり、第1の取付部111の延長部111aが、ボルト122の締め付け時の第2の突出部42に対する連結部材100”の回転を抑制する回転止めとして機能している。
【0061】
特に本実施形態によれば、第1の取付部111(延長部111a)の第1の突出部41に対する固定と、第2の取付部112の第2の突出部42に対する固定とが、それぞれ、ボルト121,122によるボルト締結によって行われている。第1の取付部111(延長部111a)及び第2の取付部112の各々が、ボルト121,122の締め付け時の第1の突出部41及び第2の突出部42に対する連結部材100”の回転を抑制する回転止めとして機能するように構成されている。これにより、連結部材100”の組付作業を効率よく行うことができる。
【0062】
次に、本発明の第5実施形態について、図13図15を用いて説明する。図13は、本実施形態における電動圧縮機1の概略縦断面図である。図14は、図13のB-B矢視図である。図15は、本実施形態における電動圧縮機1の底面図である。尚、図13では、図2と同様に、図示簡略化のため、モータハウジング20内の構成要素の図示を省略している。前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0063】
本実施形態では、第2の突出部42が、インバータケース7の端壁30の外面30aの露出部分30a2における、第1の突出部41と同等の高さ位置に設けられており、当該位置から後方に突出している。そして、第1の突出部41の前端面が第2の突出部42の後端面に当接した状態で、第1の突出部41がボルト123によって第2の突出部42に直接的に固定されている。このため、第1の突出部41には、ボルト123の雄ねじ部を挿入するための貫通孔115が形成されている。また、第2の突出部42には、ボルト123の雄ねじ部が螺合する雌ねじ部116が形成されている。ゆえに、ボルト123は、後方から前方に向けてねじ込まれている。
【0064】
特に本実施形態によれば、第1の突出部41が第2の突出部42に当接している。そして、第1の突出部41がボルト123によって第2の突出部42に直接的に固定されている。これにより、前述の連結部材100,100’,100”を省略することができる。
【0065】
図16は、本実施形態の電動圧縮機1の変形例を示す図である。本変形例では、インバータケース7の端壁30及び第2の突出部42に、ボルト123の雄ねじ部を挿入するための貫通孔115’が形成されている。また、第1の突出部41には、ボルト123の雄ねじ部が螺合する雌ねじ部116’が形成されている。ゆえに、ボルト123はインバータケース7の内側からねじ込まれる。また、前述したように、第1のボルト51も、インバータケース7の内側からねじ込まれる。更に、ボルト123と第1のボルト51とは、共に、前方から後方に向けて(つまり同じ方向に)ねじ込まれる。従って、ボルト123のねじ込み作業と第1のボルト51のねじ込み作業とを、一連の作業で実施することができる。
【0066】
前述の第1~第5実施形態及びその変形例から把握し得る条項(clauses)の例を以下に記載する。
【0067】
[条項1]
電動モータと、
前記電動モータによって駆動される圧縮機構と、
前記電動モータを駆動するインバータと、
前記電動モータを収容するモータハウジングと、
前記モータハウジングに当接させて固定され、かつ、前記インバータを収容するインバータケースと、
を備える電動圧縮機であって、
前記モータハウジングは、筒状の本体部と、前記本体部の外周面に設けられた第1の突出部と、を有し、
前記インバータケースは端壁を有し、該端壁の外面は、前記本体部の一方の端面に当接する当接部分と、外部に露出する露出部分と、を含み、
前記端壁の外面の前記露出部分には、第2の突出部が設けられており、
前記第1の突出部が前記第2の突出部に直接的又は間接的に固定されている、
電動圧縮機。
【0068】
[条項2]
前記第1の突出部が前記第2の突出部に当接し、
前記第1の突出部がボルトによって前記第2の突出部に直接的に固定されている、条項1に記載の電動圧縮機。
【0069】
[条項3]
前記第1の突出部が連結部材を介して前記第2の突出部に間接的に固定されている、条項1に記載の電動圧縮機。
【0070】
[条項4]
前記連結部材は、前記第1の突出部に面接触する第1の取付部と、前記第2の突出部に面接触する第2の取付部と、を含み、
前記第1の取付部が前記第1の突出部に固定されており、
前記第2の取付部が前記第2の突出部に固定されている、条項3に記載の電動圧縮機。
【0071】
[条項5]
前記第1の取付部の前記第1の突出部に対する固定と、前記第2の取付部の前記第2の突出部に対する固定とが、それぞれ、ボルト締結によって行われており、
前記第1の取付部及び前記第2の取付部の各々が、前記ボルトの締め付け時の前記第1の突出部及び前記第2の突出部に対する前記連結部材の回転を抑制する回転止めとして機能するように構成されている、条項4に記載の電動圧縮機。
【0072】
[条項6]
前記連結部材は補強部を更に含む、条項4又は条項5に記載の電動圧縮機。
【0073】
[条項7]
前記本体部には、前記端面に隣接するように吸入ポートが形成されており、
前記圧縮機構は、前記吸入ポートから前記本体部内に吸入された冷媒を圧縮して吐出するように構成されており、
前記端壁の内面のうち前記当接部分に隣接する部分には、前記インバータを構成するスイッチング素子が設けられている、条項1~条項6のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0074】
[条項8]
前記電動圧縮機は車両に搭載され、
前記本体部が水平方向に延び、
前記インバータケースが上下方向に延び、
前記インバータケースの上部には、前記車両への固定用の突起部が設けられており、
前記インバータケースは、前記本体部よりも下方に張り出している、条項1~条項7のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0075】
[条項9]
前記第1の突出部が、前記本体部の外周面における下端部に設けられており、
前記第2の突出部が、前記端壁の外面の前記露出部分における、前記第1の突出部と同等の高さ位置か、又は、前記第1の突出部よりも下方の高さ位置に設けられている、条項8に記載の電動圧縮機。
【0076】
[条項10]
前記本体部は円筒状であり、
前記第1の突出部は、前記本体部の外周面から径方向外方に突出している、条項1~条項9のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0077】
[条項11]
前記第1の突出部と前記第2の突出部との少なくとも一方が直方体状又は円柱状である、条項1~条項10のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0078】
次に、本発明の第6実施形態について、図17図21を用いて説明する。図17は、本実施形態における電動圧縮機1の左側面図である。図18は、本実施形態における電動圧縮機1の概略縦断面図である。図19は、図17及び図18のC-C矢視図である。図20は、本実施形態における電動圧縮機1の正面図である。図21は、本実施形態におけるモータハウジング20の正面図である。尚、図17については、後述する第2のボルト52の取付箇所での部分断面も図示している。また、図19では、図2と同様に、図示簡略化のため、モータハウジング20内の構成要素の図示を省略している。前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0079】
本実施形態では、前述の第1の突出部41及び第2の突出部42が省略されている。そして、モータハウジング20が、前述の本体部24に加えて、フランジ部130を有している。フランジ部130は、本体部24の前端面(一方の端面)24aに形成されている。フランジ部130は、本体部24の前端面24aから径方向外方に張り出している。フランジ部130は、電動圧縮機1の軸方向に見て、本体部24の外周面を外側から囲むような正方形状の輪郭を有している。電動圧縮機1の軸方向に見て、本体部24の外周面が、フランジ部130の正方形状の輪郭に内接することが好ましい。これにより、本体部24の外周面からのフランジ部130の張り出しを必要最小限にとどめることができる。
【0080】
本実施形態では、モータハウジング20の本体部24の前端面24aとフランジ部130とがインバータケース7の端壁30の外面30aに当接している。本実施形態では、電動圧縮機1の軸方向に見て、インバータケース7が、モータハウジング20のフランジ部130の輪郭から上下左右に張り出している。
【0081】
本実施形態では、インバータケース7をモータハウジング20のフランジ部130に固定するために、複数(本実施形態では4個)の第2のボルト52が用いられている。このため、インバータケース7の端壁30には、第2のボルト52の雄ねじ部を挿入するための複数(本実施形態では4個)の貫通孔38’が形成されている。また、モータハウジング20のフランジ部130には、第2のボルト52の雄ねじ部が螺合する雌ねじ部131が複数(本実施形態では4個)形成されている。ゆえに、第2のボルト52はインバータケース7の内側からねじ込まれる。また、前述したように、第1のボルト51も、インバータケース7の内側からねじ込まれる。更に、第1のボルト51と第2のボルト52とは、共に、前方から後方に向けて(つまり同じ方向に)ねじ込まれる。従って、第1のボルト51のねじ込み作業と第2のボルト52のねじ込み作業とを、一連の作業で実施することができる。尚、本実施形態では、正方形状の輪郭のフランジ部130の四隅にそれぞれ第2のボルト52が配置されている。
【0082】
特に本実施形態によれば、電動圧縮機1は、電動モータ4と、電動モータ4によって駆動される圧縮機構5と、電動モータ4を駆動するインバータ6と、電動モータ4を収容するモータハウジング20と、インバータ6を収容するインバータケース7と、インバータケース7をモータハウジング20に当接させて固定するための、少なくとも1つの第1のボルト51及び少なくとも1つの第2のボルト52と、を備える。モータハウジング20は、筒状の本体部24と、本体部24の前端面24a(一方の端面)に形成されたフランジ部130とを有する。本体部24の前端面24aとフランジ部130とがインバータケース7に当接する。第1のボルト51は、インバータケース7を本体部24に固定する。第2のボルト52は、インバータケース7をフランジ部130に固定する。これにより、電動圧縮機1の運転時におけるインバータケース7での共振の発生を抑制することができる。
【0083】
また本実施形態によれば、本体部24は円筒状であり、フランジ部130は本体部24の前端面24a(一方の端面)から径方向外方に張り出している。これにより、簡素な構成で、インバータケース7に対するモータハウジング20の接触面積を増加させて、多点で互いにボルト締結することができる。
【0084】
また本実施形態によれば、インバータケース7は端壁30を有し、端壁30の外面30aにて、本体部24の前端面24a(一方の端面)とフランジ部130とに当接する。端壁30には、少なくとも1つの貫通孔38が形成されている。本体部24(前端面24a)には、少なくとも1つの雌ねじ部24cが形成されている。第1のボルト51の雄ねじ部が、端壁30の貫通孔38に挿通され、かつ、雌ねじ部24cに螺合される。これにより、第1のボルト51をインバータケース7の内側からねじ込むことができる。
【0085】
また本実施形態によれば、インバータケース7は端壁30を有し、端壁30の外面30aにて、本体部24の前端面24a(一方の端面)とフランジ部130とに当接する。端壁30には、少なくとも1つの貫通孔38’が形成されている。フランジ部130には、少なくとも1つの雌ねじ部131が形成されている。第2のボルト52の雄ねじ部が、端壁30の貫通孔38’に挿通され、かつ、フランジ部130の雌ねじ部131に螺合される。これにより、第2のボルト52をインバータケース7の内側からねじ込むことができる。
【0086】
また本実施形態によれば、本体部24には、前端面24a(一方の端面)に隣接するように吸入ポートP1が形成されている。圧縮機構5は、吸入ポートP1から本体部24内に吸入された冷媒を圧縮して吐出するように構成されている。インバータケース7は端壁30を有し、端壁30の外面30aにて、本体部24の前端面24aとフランジ部130とに当接する。端壁30の内面30bのうち本体部24の前端面24aに隣接する部分には、インバータ6を構成するスイッチング素子35が設けられている。ゆえに、吸入ポートP1を介して本体部24内に流入する低温低圧の冷媒によって、本体部24の前端面24a及びインバータケース7の端壁30を介して、スイッチング素子35を冷却することができる。
【0087】
また本実施形態によれば、電動圧縮機1は車両に搭載される。本体部24が水平方向に延びている。インバータケース7が上下方向に延びている。インバータケース7の上部には、車両への固定用の突起部39が設けられている。インバータケース7は、本体部24よりも下方に張り出している。このような形態の電動圧縮機1において、電動圧縮機1の運転時におけるインバータケース7での共振の発生を抑制することができる。
【0088】
図22は、本実施形態の電動圧縮機1の変形例を示す図であり、前述の図19に対応するものである。本変形例では、フランジ部130に、複数(本変形例では4個)の貫通孔(図示せず)が形成されている。また、インバータケース7の端壁30に、複数(本変形例では4個)の雌ねじ部(図示せず)が形成されている。そして、第2のボルト52の雄ねじ部が、フランジ部130の前記貫通孔に挿通され、かつ、インバータケース7の端壁30の前記雌ねじ部に螺合される。ゆえに、第2のボルト52は、後方から前方に向けてねじ込まれる。
【0089】
前述の第6実施形態及びその変形例から把握し得る条項の例を以下に記載する。
【0090】
[条項12]
電動モータと、
前記電動モータによって駆動される圧縮機構と、
前記電動モータを駆動するインバータと、
前記電動モータを収容するモータハウジングと、
前記インバータを収容するインバータケースと、
前記インバータケースを前記モータハウジングに当接させて固定するための、少なくとも1つの第1のボルト及び少なくとも1つの第2のボルトと、
を備える電動圧縮機であって、
前記モータハウジングは、筒状の本体部と、前記本体部の一方の端面に形成されたフランジ部とを有し、
前記本体部の前記端面と前記フランジ部とが前記インバータケースに当接し、
前記第1のボルトは、前記インバータケースを前記本体部に固定し、
前記第2のボルトは、前記インバータケースを前記フランジ部に固定する、
電動圧縮機。
【0091】
[条項13]
前記本体部は円筒状であり、
前記フランジ部は前記本体部の前記端面から径方向外方に張り出している、条項12に記載の電動圧縮機。
【0092】
[条項14]
前記インバータケースは端壁を有し、該端壁の外面にて、前記本体部の前記端面と前記フランジ部とに当接し、
前記端壁には、少なくとも1つの貫通孔が形成されており、
前記フランジ部には、少なくとも1つの雌ねじ部が形成されており、
前記第2のボルトの雄ねじ部が、前記端壁の前記貫通孔に挿通され、かつ、前記フランジ部の前記雌ねじ部に螺合される、条項12又は条項13に記載の電動圧縮機。
【0093】
[条項15]
前記本体部には、前記端面に隣接するように吸入ポートが形成されており、
前記圧縮機構は、前記吸入ポートから前記本体部内に吸入された冷媒を圧縮して吐出するように構成されており、
前記インバータケースは端壁を有し、該端壁の外面にて、前記本体部の前記端面と前記フランジ部とに当接し、
前記端壁の内面のうち前記本体部の前記端面に隣接する部分には、前記インバータを構成するスイッチング素子が設けられている、条項12~条項14のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0094】
[条項16]
前記電動圧縮機は車両に搭載され、
前記本体部が水平方向に延び、
前記インバータケースが上下方向に延び、
前記インバータケースの上部には、前記車両への固定用の突起部が設けられており、
前記インバータケースは、前記本体部よりも下方に張り出している、条項12~条項15のいずれか1つに記載の電動圧縮機。
【0095】
前述の第6実施形態及びその変形例にて説明した、少なくとも1つの第2のボルト52を用いる、インバータケース7とモータハウジング20のフランジ部130との固定方法を、前述の第1~第5実施形態及びその変形例にて説明した電動圧縮機1に適用可能であることは言うまでもない。
【0096】
前述の第1~第6実施形態及びその変形例では、複数の第1のボルト51が、インバータケース7とモータハウジング20の本体部24との固定に用いられている。この点、複数の第1のボルト51のうちのいくつかを長いボルトとして、インバータカバー32とインバータケース7とモータハウジング20の本体部24とを一括して固定するようにしてもよい。これにより、複数のボルト33のうちのいくつかを省略することができる。
【0097】
前述の第6実施形態及びその変形例では、複数の第2のボルト52が、インバータケース7とモータハウジング20のフランジ部130との固定に用いられている。この点、複数の第2のボルト52のうちのいくつかを長いボルトとして、インバータカバー32とインバータケース7とモータハウジング20のフランジ部130とを一括して固定するようにしてもよい。これにより、複数のボルト33のうちのいくつかを省略することができる。
【0098】
前述の第1~第6実施形態及びその変形例では、電動圧縮機1に関して、説明の便宜上、前述のように前後・左右・上下を規定した。しかしながら、これは、電動圧縮機1の方向性を限定することを意図したものではない。つまり、前述の第1~第6実施形態及びその変形例では、電動圧縮機1は、ハウジング2内に電動モータ4及び圧縮機構5が水平方向に直列に配置される横置き式の電動圧縮機であるが、この他、ハウジング2内に電動モータ4及び圧縮機構5が鉛直方向に直列に配置される縦置き式の電動圧縮機であってもよい。
【0099】
前述の第1~第6実施形態及びその変形例では、電動圧縮機1がスクロール圧縮機であるが、電動圧縮機1はスクロール圧縮機に限らない。例えば、電動圧縮機1が、いわゆる斜板式圧縮機であってもよい。
【0100】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、前述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0101】
1…電動圧縮機、2…ハウジング、3…回転軸、4…電動モータ、5…圧縮機構、6…インバータ、7…インバータケース、8…固定スクロール、8a…基板、9…旋回スクロール、10…クランク機構、13…ステータコアユニット、14…ロータ、15…逆止弁、16…オイルセパレータ、20…モータハウジング、21…リアハウジング、24…本体部、24a…前端面、24b…後端面、24c…雌ねじ部、25…前筒部、25a…前端面、26…後筒部、26b…後端面、27…突起部、30…端壁、30a…外面、30a1…当接部分、30a2…露出部分、30b…内面、31…周壁、32…インバータカバー、33…ボルト、35…スイッチング素子、36…制御基板、38,38’…貫通孔、39…突起部、41…第1の突出部、42…第2の突出部、43,44…雌ねじ部、51…第1のボルト、52…第2のボルト、100,100’,100”…連結部材、101…主部、102,102’…補強部、111…第1の取付部、111a…延長部、112…第2の取付部、113,113’,114,115,115’…貫通孔、116,116’…雌ねじ部、121,122,123…ボルト、130…フランジ部、131…雌ねじ部、D1,D2…ねじ込み方向、H1…吸入室、H2…圧縮室、H3…吐出室、H4…空間、L1…冷媒通路、L2…吐出孔、P1…吸入ポート、P2…吐出ポート、R1,R2…回転方向
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