(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002603
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】低温融性ガラスフリット組成物並びにこれを含有する接着材およびコーティング材
(51)【国際特許分類】
C03C 8/08 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
C03C8/08
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102897
(22)【出願日】2023-06-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000229874
【氏名又は名称】TOMATEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】梶山 聡
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA09
4G062BB09
4G062CC08
4G062CC10
4G062DA01
4G062DA02
4G062DA03
4G062DB04
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DC04
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4G062DE01
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4G062KK10
4G062MM05
4G062MM08
4G062NN29
4G062NN33
4G062NN34
(57)【要約】
【課題】Li不含有の低温融性ガラスフリット組成物であって、空気中の水分の吸収量の少なく保存性の良いガラスフリット組成物、並びにこれを含有する接着材およびコーティング材を提供すること。
【解決手段】以下の成分(A)~(D)を配合した原料を溶融、粉砕して得られるLi不含有のガラスフリット組成物であって、P/Al比が0.6~1.5であり、成分(C)は、Na2O及びK2Oとからなり、Na2Oの含有量が6.1~21.1モル%であり、K2Oの含有量が12.7~27.7モル%である。
(A)P2O5;15.0~23.5モル%
(B)Al2O3;15.5~24.0モル%
(C)R2O(Na2O及びK2Oの総量);32.4~36.2モル%
(D)F2;10.0~25.0モル%
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)~(D)を配合した原料を焼成粉砕して得られるLi不含有のガラスフリット組成物であって、P/Al比が0.6~1.5であり、成分(C)は、Na2O及びK2Oとからなり、Na2Oの含有量が6.1~21.1モル%であり、K2Oの含有量が12.7~27.7モル%であるガラスフリット組成物。
(A)P2O5;15.0~23.5モル%
(B)Al2O3;15.5~24.0モル%
(C)R2O(Na2O及びK2Oの総量);32.4~36.2モル%
(D)F2;10.0~25.0モル%
【請求項2】
さらに前記原料が以下の成分(E)及び/または(F)を含有する請求項1に記載のガラスフリット組成物。
(E)SiO2;0~4.0モル%
(F)B2O3;0~15.0モル%
【請求項3】
温度20~25℃、湿度80~90%に調整した密閉容器に1週間保管してなるガラスフリット組成物であって、水分吸収による重量増が15%以下である請求項1または2に記載のガラスフリット組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の成分(A)~(D)を混合して第1原料を調製するステップと、
前記第1原料を溶融して融液を作成するステップと、
前記融液を急冷してガラスフリットを作成するステップと、
前記ガラスフリットを所定の平均粒径となるように粉砕するステップと、を有するガラスフリット組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の成分(A)~(D)並びに請求項2に記載の成分(E)及び(F)を混合して第2原料を調製するステップと、
前記第2原料を溶融して融液を作成するステップと、
前記融液を急冷してガラスフリットを作成するステップと、
前記ガラスフリットを所定の平均粒径となるように粉砕するステップと、を有するガラスフリット組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載のガラスフリット組成物を含有してなる接着材またはコーティング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温融性ガラスフリット組成物並びにこれを含有する接着材およびコーティング材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、基材に強固に接着する材料として、ガラスフリット粉砕物を含有する接着材やコーティング材が一般に用いられており、被接着物や被コーティング物の変形や強度低下をきたさないようにするために低温融性のガラスフリット組成物を含有する接着材やコーティング材が好適に用いられている。
【0003】
低温融性のためには、ガラスの網目形成酸化物としてケイ酸塩系、ホウ酸塩系、リン酸塩系を選択するのが好ましく、網目修飾酸化物としては、有害性を有しコスト高につながる鉛、ビスマス、亜鉛を使用しないほうが良く、アルカリ金属やアルカリ土類金属の使用が好ましい。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の低融点乳白ガラス組成物は、リン酸塩系ガラスを網目形成酸化物として、アルカリ金属酸化物及び/またはアルカリ土類金属酸化物等を網目修飾酸化物として含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の低融点乳白ガラス組成物は、リン酸塩系ガラスを網目形成酸化物とし、アルカリ金属酸化物としてLi2O、Na2O及びK2Oが選択されている。実施例として実施例1~10が開示されているが、全ての実施例にはLi2Oが含有されている。
【0007】
リチウムは陶磁器や釉薬の製造をはじめとする窯業分野で広く用いられているが、近年、リチウムイオン電池の需要拡大に伴い、その価格が高騰している。リチウム原料の価格高騰に伴って窯業分野の製造コストも上がってきている。
Li2Oを原料として含有させたリン酸塩系ガラスは、低温融性の特性を維持しつつ、空気中の水分の吸水率も小さく保存性が良いという特徴を有している。
一方、Li2Oを含まず、Na2O及びK2Oのみを原料とした場合は、特に保存性に問題が生じる。保存性が悪い現象とは、ガラスフリットを保管すると空気中の水分を吸収してべたべたとなる現象のことをいう。
【0008】
本発明の目的は、Li不含有の低温融性ガラスフリット組成物であって、空気中の水分の吸収量が少なく保存性の良いガラスフリット組成物、並びにこれを含有する接着材およびコーティング材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(1)は、以下の成分(A)~(D)を配合した原料を焼成粉砕して得られるLi不含有のガラスフリット組成物であって、P/Al比が0.6~1.5であり、成分(C)は、Na2O及びK2Oとからなり、Na2Oの含有量が6.1~21.1モル%であり、K2Oの含有量が12.7~27.7モル%であるガラスフリット組成物である。
(A)P2O5;15.0~23.5モル%
(B)Al2O3;15.5~24.0モル%
(C)R2O(Na2O及びK2Oの総量);32.4~36.2モル%
(D)F2;10.0~25.0モル%
【0010】
本発明(1)では、(A)成分のP2O5及び(B)成分のAl2O3を含有するリン酸塩系ガラスを網目形成酸化物とするガラスであるので、基本的に低温融性を有する。水分の吸収量を抑制して耐水性を向上させるために、P/Al比を調整すると耐水性に対する効果がある。(A)成分は、多すぎると耐水性が悪くなるが、逆に少なすぎるとガラス化しにくいという現象が発生する。(B)成分は、少ないと耐水性が悪い。多すぎると分相が発生するという現象が発生する。分相とは、液相温度以下の温度域において,単一相のガラスが2種類以上のガラス相に分離する現象であり好ましくない現象である。
【0011】
P/Al比が0.6~1.5であると低温融性という特性を維持しつつ、耐水性を向上させることができるので好ましい。上限は、1.4がより好ましく、1.3がさらにより好ましく、1.2が特に好ましく、1.1がさらに特に好ましい。下限は、0.7がより好ましく、0.8がさらにより好ましく、0.9が特に好ましい。
【0012】
アルカリ金属酸化物である(C)成分のR2Oは、多すぎると耐水性を低下させる。少なすぎると軟化温度が上昇するが、基本的に低温融性のリン酸塩系ガラスを採用しているので軟化温度上昇の悪影響はさほどない。
(C)成分は、Na2O及びK2Oとからなり、Na2Oの含有量が6.1~21.1モル%であり、K2Oの含有量が12.7~27.7モル%であると好ましい。
Na2Oの含有量の下限値は、概ね、7.0モル%がより好ましく、8.0モル%がさらにより好ましく、9.0モル%が特に好ましく、10.0モル%がさらに特に好ましく、12.0モル%が極めて好ましく、14.0モル%さらに極めて好ましい。
Na2Oの含有量の上限値は、概ね、20.0モル%がより好ましく、19.0モル%がさらにより好ましく、18.0モル%が特に好ましく、17.0モル%がさらに特に好ましい。
K2Oの含有量の下限値は、概ね、14.0モル%がより好ましく、15.0モル%さらにより好ましく、16.0モル%が特に好ましい。
K2Oの含有量の上限値は、概ね、25.0モル%がより好ましく、24.0モル%がさらにより好ましく、22.0モル%が特に好ましく、21.0モル%がさらに特に好ましく、20.0モル%が極めて好ましく、19.0モル%がさらに極めて好ましく、18.0モル%がさらに優れて好ましい。
【0013】
(D)成分のF2は、多いとガラスが結晶化しやすくになり、低温融性の特性が悪くなるが、基本的に低温融性のリン酸塩系ガラスを採用しているので軟化温度上昇の悪影響はさほどない。耐水性に関して、(D)成分の含有量は、10.0~25.0モル%が好ましく、下限値は、12.0モル%がより好ましく、14.0モル%がさらにより好ましく、16.0モル%が特により好ましく、18.0モル%がさらに特により好ましい。
【0014】
本発明(2)は、さらに前記原料が以下の成分(E)及び/または(F)を含有する本発明(1)のガラスフリット組成物である。
(E)SiO2;0~4.0モル%
(F)B2O3;0~15.0モル%
【0015】
(E)成分のSiO2は、多いと軟化温度が上がるという問題を生じるが、耐水性を向上させるという効果もある。(F)成分のB2O3は、(E)成分と同じく、多いと軟化温度が上がるという問題を生じるが、耐水性を向上させるという効果もある。
SiO2の含有量の下限値は、概ね、1.0モル%がより好ましく、2.0モル%がさらにより好ましく、3.0モル%が特に好ましい。
B2O3の含有量の下限値は、概ね、概ね、3.0モル%がより好ましく、6.0モル%がさらにより好ましく、9.0モル%が特に好ましく、11.0モル%がさらに特に好ましい。
【0016】
本発明(3)は、温度20~25℃、湿度80~90%に調整した密閉容器に1週間保管してなるガラスフリット組成物であって、水分吸収による重量増が15%以下である本発明(1)または(2)のガラスフリット組成物である。
【0017】
本発明(3)は、本発明(1)または(2)のガラスフリット組成物の耐水性に関する性能を示すものである。本発明(1)または(2)のガラスフリット組成物は、製造直後には水分を含んでいない。しかし、空気中で保管しておくと空気中の水分を吸収して本発明(1)及び(2)の成分は変化を受ける。本発明(1)または(2)のガラスフリット組成物であれば、温度20~25℃、湿度80~90%に調整した密閉容器に1週間保管しても重量増を15%以下に抑えることができる。
【0018】
本発明(4)は、本発明(1)の成分(A)~(D)を混合して第1原料を調製するステップと、前記第1原料を溶融して融液を作成するステップと、前記融液を急冷してガラスフリットを作成するステップと、前記ガラスフリットを所定の平均粒径となるように粉砕するステップと、を有するガラスフリット組成物の製造方法である。
【0019】
本発明(4)では、第1原料粉の混合調製をするステップと、溶融するステップと、急冷破砕するするステップと、平均粒径を調整する4つの工程からなっており、このような簡単な方法でガラスフリット組成物を製造することができる。
【0020】
本発明(5)は、本発明(1)の成分(A)~(D)並びに本発明(2)の成分(E)及び(F)を混合して第2原料を調製するステップと、前記第2原料を溶融して融液を作成するステップと、前記融液を急冷してガラスフリットを作成するステップと、前記ガラスフリットを所定の平均粒径となるように粉砕するステップと、を有するガラスフリット組成物の製造方法である。
【0021】
本発明(5)では、第1原料粉の代わりに第2原料粉を混合調製するステップ以外は、本発明(4)と同じである。
【0022】
本発明(6)は、本発明(1)または(2)のガラスフリット組成物を含有してなる接着材またはコーティング材である。
【0023】
本発明(1)または(2)のガラスフリット組成物は、低温融性の特性を有するので、接着材またはコーティング材に混入させて使用しても、被対象物の物性に悪影響を及ぼす可能性が少ない。また、本発明(1)または(2)のガラスフリット組成物は、空気中の水分の吸収量の少なく保存性の良いガラスフリット組成物であるので、接着材またはコーティング材を製造する際に、ガラスフリット組成物の保管に対してあまり注意を払わなくて済む。
【発明の効果】
【0024】
本発明の低温融性ガラスフリット組成物を用いることによって、コスト的メリットがあり、空気中の水分の吸収量の少なく保存性の良いガラスフリット組成物、及びこれの製造方法、並びにこれを含有する接着材及びコーティング材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に実施例及び比較例を説明する。
実施例及び比較例を調製するための原料は、以下の表1に示すものを用いた。
【表1】
【0026】
[フリットの作成方法]
所定の成分比になるように計量された原料粉100gを混合し、シャモット坩堝に投入して、温度1000℃~1300℃で、時間5分~60分溶融して融液を作成した。
できた融液をロールに流し出し急冷することによってフリットを作成した。
【0027】
[フリット粉末の作成方法]
できたフリットを、ボールミル粉砕機を用いて、平均粒径D50が4~20μmとなるように粉砕した。
平均粒径D50が4~20μmであることの確認を、レーザー式粒度分布測定装置を用いて確認した。
【0028】
[焼成特性評価のための円板状ペレットの作成方法]
ガラスフリットの焼成特性を調べるために、作成されたフリット粉末2gを使って、直径12mm、高さ14mmの円板状ペレットを作成した。加える圧力は300kg/mm2とした。
【0029】
[焼成特性評価のための方法]
熱示差分析装置(DTA)を用いて、ガラス転移点温度(Tg)及びガラス屈伏点温度(Td)を測定した。
【0030】
【0031】
下記表3に、参考例としてLi
2Oを含有するガラスフリット組成物の成分と特性を示す。成分の単位はモル%であり、以下の表4~9についても同じである。
【表3】
Al
2O
3とP
2O
5を含有するリン酸塩系ガラスであり、Li
2Oを12.2モル%含有している。P/Al比は1.2でアルカリ金属酸化物R
2Oの含有量は35.2モル%であった。
耐水性試験では、重量増は3.6%であり非常に良好であった。
熱示差分析試験の結果は、Tg及びTd共に良好で、焼結性も非常に良好であった。
この参考例の結果は、Li
2Oを含むことによって、耐水性、低温融性及び焼結性の全てにおいて良好な結果が得られた。これらの特性は、リン酸塩系ガラスにLi
2Oを含ませることによって得られるものと考えられる。
【0032】
下記表4に、比較例及び実施例としてLi
2Oを含有しないガラスフリット組成物の成分と特性を示す。この表4に示す実験系は、Al
2O
3とP
2O
5の含有量を調節して、P/Al比を変化させた結果を示すものである。
【表4】
実施例1~6の結果では、P/Al比が0.6~2.0の範囲で耐水性は合格であったが、P/Al比が2.0(比較例3)では低温融性及び焼結性が不合格となった。
比較例1及び2では、耐水性、低温融性及び焼結性の全てが×で、比較例3では、耐水性が許容範囲の△ではあったが、低温融性及び焼結性のいずれも×であった。
これらの結果から、P/Al比は1.5以下が好ましく、P
2O
5は15.0~23.5モル%が好ましく、Al
2O
3は15.5~24.0モル%が好ましいことがわかる。
【0033】
下記表5に、比較例及び実施例としてLi
2Oを含有しないガラスフリット組成物の成分と特性を示す。この表5に示す実験系は、アルカリ金属酸化物R
2Oを変化させた結果を示すものである。
【表5】
実施例7~10の結果では、R
2Oが32.4~36.2mol%の範囲で耐水性は合格であった。低温融性及び焼結性についても合格であった。
比較例4及び5では、耐水性及び低温融性及については合格であったが焼結性が不合格であった。
これらの結果から、R
2O含有量は32.4~36.2mol%の範囲が好ましく、32.4~33.7mol%がより好ましい。
【0034】
下記表6に、比較例及び実施例としてLi
2Oを含有しないガラスフリット組成物の成分と特性を示す。この表6に示す実験系は、アルカリ金属酸化物R
2Oを一定値として、Na
2O及びK
2Oの成分比を変化させたときの結果を示すものである。
【表6】
実施例11~14の結果では、全ての範囲で耐水性、低温融性及び焼結性について合格であった。
比較例6では、耐水性及び低温融性及については合格であったが焼結性が不合格であった。
これらの結果から、Na
2Oの含有量が6.1~21.1モル%であり、K
2Oの含有量が12.7~27.7モル%であるのが好ましいことがわかる。
【0035】
下記表7に、比較例及び実施例としてLi
2Oを含有しないガラスフリット組成物の成分と特性を示す。この表7に示す実験系は、P/Al比、R
2O含有量、Na
2O含有量、K
2O含有量を一定値として、SiO
2の成分を変化させたときの結果を示すものである。
【表7】
実施例15~17の結果では、全ての範囲で耐水性、低温融性及び焼結性について合格であった。
比較例7では、耐水性及び低温融性及については合格であったが焼結性が不合格であった。
これらの結果から、SiO
2の含有量が0.0~4.0モル%であるのが好ましいことがわかる。
【0036】
下記表8に、比較例及び実施例としてLi
2Oを含有しないガラスフリット組成物の成分と特性を示す。この表8に示す実験系は、P/Al比、R
2O含有量、Na
2O含有量、K
2O含有量及びSiO
2含有量を一定値として、B
2O
3の成分を変化させたときの結果を示すものである。
【表8】
実施例18~21の結果では、全ての範囲で耐水性、低温融性及び焼結性について合格であった。
比較例8では、耐水性及び低温融性及については合格であったが焼結性が不合格であった。
これらの結果から、B
2O
3の含有量が0.0~15.0モル%であるのが好ましいことがわかる。
【0037】
下記表9に、比較例及び実施例としてLi
2Oを含有しないガラスフリット組成物の成分と特性を示す。この表9に示す実験系は、P/Al比、R
2O含有量、Na
2O含有量、K
2O含有量、SiO
2含有量及びB
2O
3含有量を一定値として、F2の成分を変化させたときの結果を示すものである。
【表9】
実施例22~25の結果では、全ての範囲で耐水性、低温融性及び焼結性について合格であった。
比較例9では、耐水性及び低温融性及については合格であったが焼結性が不合格であった。
これらの結果から、F2の含有量が10.0~25.0モル%であるのが好ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のガラスフリット組成物は、接着材およびコーティング材用のガラスフリットとして好適に使用できる。また、耐水性に優れているので保管が簡便で製造においても好適に使用できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)~(F)を配合した原料を焼成粉砕して得られるLi不含有のガラスフリット組成物であって、P/Al比が0.6~1.5であり、成分(C)は、Na2O及びK2Oとからなり、Na2Oの含有量が6.1~21.1モル%であり、K2Oの含有量が12.7~27.7モル%であるガラスフリット組成物。
(A)P2O5;15.0~23.5モル%
(B)Al2O3;15.5~24.0モル%
(C)R2O(Na2O及びK2Oの総量);32.4~36.2モル%
(D)F2;10.0~25.0モル%
(E)SiO
2
;0~4.0モル%
(F)B
2
O
3
;0~15.0モル%
【請求項2】
温度20~25℃、湿度80~90%に調整した密閉容器に1週間保管してなるガラスフリット組成物であって、水分吸収による重量増が15%以下である請求項1に記載のガラスフリット組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の成分(A)~(F)を混合して第1原料を調製するステップと、
前記第1原料を溶融して融液を作成するステップと、
前記融液を急冷してガラスフリットを作成するステップと、
前記ガラスフリットを所定の平均粒径となるように粉砕するステップと、を有するガラスフリット組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のガラスフリット組成物を含有してなる接着材またはコーティング材。