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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026040
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B41J2/14 303
B41J2/14 603
B41J2/14 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131374
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】324006865
【氏名又は名称】理想テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 正勝
(72)【発明者】
【氏名】楠 竜太郎
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG32
2C057AG45
2C057AG68
2C057BA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水撃現象を抑制できる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、ノズルを有するノズルプレートと、液体流路と、を備える。液体流路は、複数の前記ノズルにそれぞれ連通する圧力室を構成する複数のアクチュエータ溝1135と、第1方向に延び、複数のアクチュエータ溝1135に連通する1以上の共通流路1162を有するとともに、液体が供給される供給口1111を有する。ノズルプレートの厚さがTmmのとき、共通流路1162に液体が供給される供給部117から、共通流路1162における最も遠いアクチュエータ溝1135までの第1方向の距離である最大供給距離Lmmと、共通流路1162の前記第1方向と交差する第2方向の寸法である流路幅Wmmとの関係は(式1)を満たす。

前記ノズルプレートは、可撓性フィルムで構成され、ヤング率は9.1Gpa以上に形成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを有するノズルプレートと、
複数の前記ノズルにそれぞれ連通する圧力室を構成する複数のアクチュエータ溝と、第1方向に延び、前記複数のアクチュエータ溝に連通する1以上の共通流路を有するとともに、液体が供給される供給口を有する、液体流路と、
を備え、
ノズルプレートの厚さがTmmのとき、前記共通流路に液体が供給される供給部から、前記共通流路における最も遠い前記アクチュエータ溝までの第1方向の距離である最大供給距離Lmmと、前記共通流路の前記第1方向と交差する第2方向の寸法である流路幅Wmmと、の関係は
【数1】
を満たし、
前記ノズルプレートは、可撓性フィルムで構成され、ヤング率は9.1Gpa以上に形成される、
液体吐出ヘッド。
【請求項2】
1または複数の前記共通流路を有し、少なくともいずれかの前記共通流路に前記供給口が形成され、
前記共通流路に液体が供給される前記供給部は、前記供給口、あるいは、前記共通流路の前記第1方向の端部である、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記最大供給距離Lは、同じ前記共通流路において配される複数の供給口の間の第1方向の距離の1/2、あるいは前記共通流路の前記第1方向の端部から同じ前記共通流路に配される供給口までの距離の1/2、あるいは前記共通流路の前記第1方向の長さの1/2である、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ノズルは少なくとも前記第1方向において複数設けられ、
複数の前記アクチュエータ溝が形成されるとともに前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向において前記ノズルプレートに対向配置されるアクチュエータを備え、
前記アクチュエータは、前記第1方向に複数の前記アクチュエータ溝を有し、それぞれの前記アクチュエータ溝は前記第1方向と交差する前記第2方向に延び、
複数のアクチュエータ溝の、前記第2方向の一端側と他端側において、それぞれ前記共通流路が前記第1方向に沿って形成される、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタなどの液体吐出装置において、小型でインク吐出量が大きい高生産性が求められる。このため、サイドシュータタイプのインクジェットヘッドのアクチュエータ溝の両サイドからインクを供給する構造でインク流量を確保し、高生産性に対応したものがある。液体吐出ヘッドを小型化するためにインクを供給するインク流路の大きさに制限がかかる。一方で、インク流路の大きさによっては、ヘッド内を流れるインク流量が大きい状態からインク流量が小さい印字に切り替わる場合に、ウォーターハンマー現象(水撃現象)が発生し、安定吐出に必要なメニスカスの安定に影響を与える場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-077801号公報
【特許文献2】特開2017-185817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は水撃現象を抑制できる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、ノズルプレートと、液体流路と、を備える。ノズルプレートはノズルを有する。液体流路は、複数の前記ノズルにそれぞれ連通する圧力室を構成する複数のアクチュエータ溝と、第1方向に延び、前記複数のアクチュエータ溝に連通する1以上の共通流路を有するとともに、液体が供給される供給口を有する。ノズルプレートの厚さがTmmのとき、前記共通流路に液体が供給される供給部から、前記共通流路における最も遠い前記アクチュエータ溝までの第1方向の距離である最大供給距離Lmmと、前記共通流路の前記第1方向と交差する第2方向の寸法である流路幅Wmmと、の関係は、
【数1】
を満たす。
前記ノズルプレートは、可撓性フィルムで構成され、ヤング率は9.1Gpa以上に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図。
図2】同液体吐出ヘッドのヘッド本体の構成を示す斜視図。
図3】同液体吐出ヘッドの構成を示す下面図。
図4】同液体吐出ヘッドの一部の構成を示す断面図。
図5】同液体吐出ヘッドの一部の構成を示す断面図。
図6】同液体吐出ヘッドの流路の構成を示す説明図。
図7】実施形態に係る液体吐出装置の構成を示す説明図。
図8】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの流路の構成を示す説明図。
図9】他の実施形態にかかる液体吐出ヘッドの流路の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド1及び液体吐出ヘッド1を用いた液体吐出装置2について、図1乃至図7を参照して説明する。図1は本実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図であり、図2はヘッド本体の構成を示す斜視図である。図3は、液体吐出ヘッドの構成を示す下面図であり、図4は液体吐出ヘッドの一部の構成を示す断面図である。図5は同液体吐出ヘッドの一部の構成を示す断面図であり、図6は液体吐出ヘッドの流路の構成を示す説明図である。図7は本実施形態に係る液体吐出装置の構成を示す説明図である。図中X、Y、Zは互いに直交する第1方向、第2方向、及び第3方向をそれぞれ示す。なお、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0008】
液体吐出ヘッド1は、例えば、図7に示すインクジェット記録装置などの液体吐出装置2に設けられるシェアモードのインクジェットヘッドである。液体吐出ヘッド1は例えば圧力室1131と空気室1132とを交互に備える独立駆動構造である。液体吐出ヘッド1は、液体吐出装置2に設けられた液体収容部としての供給タンク2132を含むヘッドユニット2130に設けられる。
【0009】
液体吐出ヘッド1は、供給タンク2132に貯留された液体としてのインクが供給される。なお、液体吐出ヘッド1は、インクを循環させない非循環式のヘッドであってもよく、また、インクを循環させる循環式のヘッドであってもよい。本実施形態において、液体吐出ヘッド1は、非循環式のヘッドの例を用いて説明する。
【0010】
図1乃至図7に示すように、液体吐出ヘッド1は、ヘッド本体11と、マニフォールドユニット12と、カバー15と、を備える。例えば、液体吐出ヘッド1は、アクチュエータ113を一対有するヘッド本体11を二組有する、サイドシュータタイプの4列一体構造ヘッドである。
【0011】
ヘッド本体11は、液体を吐出する。ヘッド本体11は、基板111と、枠体112と、複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を有するアクチュエータ113と、ノズルプレート114と、を備える。ヘッド本体11の内部に、ノズル1141に連通する圧力室1131を通る所定のインク流路16を形成する。インク流路16は液体流路である。
【0012】
ヘッド本体11は、インク流路16の一部として、アクチュエータ113の複数の圧力室1131と連通する共通流路部116を有する。複数の圧力室1131の一次側とは、液体の流れる方向における複数の圧力室1131の上流側である。複数の圧力室1131の二次側とは、液体の流れる方向における複数の圧力室1131の下流側である。
【0013】
また、ヘッド本体11は、基板111及びアクチュエータ113に形成される電極膜で構成される電極部を有する。具体的には、ヘッド本体11は、電極部として、アクチュエータ113の複数の圧力室1131をそれぞれ駆動する複数の個別電極と、複数の圧力室1131を同時に駆動する単数又は複数の共通電極と、を有する。
【0014】
本実施形態の例においては、ヘッド本体11がアクチュエータ113を2つ有し、共通流路部116は、1つの第1共通流路1161、及び、2つの第2共通流路1162を有する例を用いて説明する。共通流路部116は、例えば、アクチュエータ113の複数の圧力室1131の一方の開口(圧力室1131の入口)と連通する第1共通流路1161と、アクチュエータ113の複数の圧力室1131の二次側の開口(圧力室1131の出口)と連通する第2共通流路1162と、を有する。
すなわち、それぞれが第2方向(Y方向)に延びる複数のアクチュエータ溝1135の、第2方向(Y方向)の一端側に第1共通流路1161が配置され、一対のアクチュエータ113におけるアクチュエータ溝1135の他端側にそれぞれ第2共通流路1162が配置される。そして、第1共通流路1161と第2共通流路1162は第1方向における両端部でそれぞれ連通している。
【0015】
基板111は、例えばアルミナなどのセラミックス材料により矩形板状に形成される。基板111は、例えば、一方向(X方向)に長い矩形状に形成される。基板111の一方側の主面であり研磨面を構成する表面には、電極膜が形成される。基板111の表面には、基板111の短手方向(Y方向)に並んで一対のアクチュエータ113が設けられる。基板111は、液体が通る開口である単数の供給口1111と、を有する。供給口1111は、基板111の両主面間を貫通する貫通孔である。
【0016】
なお、基板111の裏面はマニフォールド121に対向し、マニフォールド121の対向面に形成され冷却水が流れる冷却流路を形成する溝を覆う。すなわち基板111は、マニフォールド121とともに冷却流路を形成する。
【0017】
供給口1111は、インクを第1共通流路1161に供給する入口である。供給口1111は、基板111の短手方向の中央に形成される貫通孔である。供給口1111は、基板111の長手方向に沿って延びる。換言すると、供給口1111は、例えば、アクチュエータ113の長手方向及び第1共通流路1161の長手方向に沿って一方向に長い長孔である。供給口1111は、一対のアクチュエータ113の間に設けられ、第1共通流路1161と対向する位置に開口する。供給口1111の内壁面には、共通電極の一部が形成されていてもよい。
【0018】
基板111上にはアクチュエータ113及び枠体112が設けられる。基板111における枠体112の内側はインクが配される接液領域となり、枠体112の外側は各種電子部品が接続可能な実装領域となる。
【0019】
枠体112は、基板111の一方の主面に接着剤等により固定される。枠体112は、基板111に設けられた供給口1111、及び、アクチュエータ113を囲う。
【0020】
例えば、枠体112は、矩形枠状に形成されることで、枠体112の長手方向に沿って一方向に長い開口を形成する。枠体112は表面の一部が凹む段構造を有していてもよい。枠体112の開口には、一対のアクチュエータ113、及び供給口1111が配置される。枠体112は、ノズルプレート114と基板111との間においてアクチュエータ113の周りを囲み、内部に液体を保持可能に構成される。すなわち、枠体112と、ノズルプレート114と基板111と、アクチュエータ113によって、ヘッド本体11内に、圧力室1131や共通流路1161,1162を含む所定のインク流路が形成される。
【0021】
一対のアクチュエータ113は、基板111の表面に接着される。一対のアクチュエータ113は供給口1111を挟んで二列に並んで基板111に設けられる。アクチュエータ113は、一方向に長い板状の部材である。アクチュエータ113は、枠体112の開口内に配置され、基板111の表面に接着される。
【0022】
アクチュエータ113は、長手方向の中央側に、長手方向に等間隔に配置された複数の圧力室1131と、長手方向に等間隔に配置されるとともに、隣り合う圧力室1131の間に配置された空気室1132と、を有する。換言すると、アクチュエータ113には、長手方向に沿って、複数の圧力室1131及び空気室1132が交互に配置される。複数の圧力室1131及び複数の空気室1132は並び方向と交差する方向、例えばアクチュエータ113の短手方向に、延出する。
【0023】
アクチュエータ113の基板111とは反対側の面である頂面部は、ノズルプレート114に接着される。アクチュエータ113は、長手方向に等間隔に並んで配置され、長手方向に直交する方向に沿う複数のアクチュエータ溝1135が形成される。複数のアクチュエータ溝1135は、複数の圧力室1131と、複数の空気室1132と、を形成する。換言すると、アクチュエータ113は、長手方向に等間隔に並んで配置された、間にアクチュエータ溝1135を形成する壁を構成する駆動素子である複数の圧電体1133を有する。複数の圧電体1133は、隣り合う圧電体1133の間に複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を形成し、駆動電圧が印加することで、圧力室1131の容積を変化させる。
【0024】
アクチュエータ113は、例えば、短手方向の幅が、頂部側から基板111側に向かって漸次大きくなる。アクチュエータ113の長手方向に直交する方向(短手方向)に沿った断面の断面形状は、台形状に形成される。即ち、アクチュエータ113は、短手方向の側面部に傾斜する傾斜面1134を有する。側面部(傾斜面1134)は、第1共通流路1161及び第2共通流路1162に対向配置される。傾斜面1134には、所定のパターンにて電極膜が形成される。
【0025】
具体例として、アクチュエータ113は、一方向に長い矩形板状の二枚の圧電材料を、互いの分極方向が逆向きとなるように対向して接着した積層圧電部材により形成される。ここで、圧電材料は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)である。アクチュエータ113は、例えば接着剤によって基板111の表面に接着される。そして、アクチュエータ113は、傾斜面1134を有する。アクチュエータ113は、複数の圧力室1131及び複数の空気室1132を形成する複数のアクチュエータ溝1135が形成され、隣り合うアクチュエータ溝1135の間を区切る側壁である圧電体(駆動素子)1133が形成される。
【0026】
また、アクチュエータ113には、個別電極や共通電極を構成する電極膜が所定のパターンにて形成される。
【0027】
圧力室1131は、液体吐出ヘッド1による印字等の動作時に、変形することで、インクをノズル1141から噴射させる。圧力室1131は、入口が第1共通流路1161に開口し、出口が第2共通流路1162に開口する。圧力室1131は、入口からインクが流入し、出口からインクが流出する。なお、圧力室1131は、入口及び出口として説明した両開口からインクが流入する構成であってもよい。圧力室1131を構成するアクチュエータ溝1135内には、個別電極がそれぞれ形成される。
【0028】
空気室1132は、入口側及び出口側が、感光性樹脂等により形成された防液壁によって塞がれることで、第1共通流路1161及び第2共通流路1162と隔てられる。空気室1132の防液壁は、空気室1132を形成するアクチュエータ溝1135内において電極上に、紫外線硬化樹脂を注入した後、露光マスク等を用いて、露光する領域、例えば、アクチュエータ溝1135の入口側及び出口側である両端部に紫外線を照射することで形成される。このような防液壁は、空気室1132へのインクの侵入を防止する。また、空気室1132は、ノズルプレート114によって塞がれ、ノズル1141が配置されない。よって、空気室1132には、インクが流入しない。
【0029】
ノズルプレート114は、板状に形成される。ノズルプレート114は、ポリイミドフィルム等の可撓性フィルムで構成される。ノズルプレート114は、ヤング率が9.1GPa以上である。ノズルプレート114はアクチュエータ113の第3方向(Z方向)の一方側に対向配置される。たとえばノズルプレート114は、対向する圧力室1131の圧力変動時において、圧力緩衝ダンパーとして機能する。ノズルプレート114は、枠体112の基板111とは反対側の主面に接着剤等により固定される。ノズルプレート114は、複数の圧力室1131と対向する位置に形成された複数のノズル1141を有する。本実施形態において、ノズルプレート114は、複数のノズル1141が一方向に並ぶノズル列1142を二列有する。
【0030】
第1共通流路1161は、一対のアクチュエータ113の両端部を除く中央側の間に形成され、供給口1111から各アクチュエータ113の複数の圧力室1131の一次側の開口(入口)へのインクの流路を構成する。第1共通流路1161は、アクチュエータ113の長手方向に沿って延びる。第1共通流路1161はインク流路16の一部を構成する。
【0031】
第2共通流路1162は、各アクチュエータ113と枠体112との間にそれぞれ形成される。第2共通流路1162は、複数の圧力室1131の二次側の開口(出口)からのインクの流路を形成する。第2共通流路1162は、アクチュエータ113の長手方向に沿って延びる。第2共通流路1162は、インク流路16の一部を構成する。
【0032】
この液体吐出ヘッド1において、図6にサイド流路である第2共通流路1162へのインクの流れを示すように、液体は、供給口1111に流れ込み、中央の第1共通流路1161から、アクチュエータ113の第1方向両端の外側を通って、第2共通流路1162に流れ込む。すなわち、供給口1111から供給されたインクは、供給口1111に近い方の中央流路である第1共通流路1161と、供給口1111から遠いサイド流路である第2共通流路1162を通過し、アクチュエータ溝1135の延出方向であるY方向の両側から、圧力室1131を形成するアクチュエータ溝1135へインクが供給される。
【0033】
すなわち、供給口1111とアクチュエータ113を挟んで反対側となるサイド側流路の並び方向の中央にあるアクチュエータ溝1135の入口が、供給口1111から最も遠い位置のアクチュエータ溝1135の入口となる。
【0034】
ノズルプレートのZ方向の寸法である厚さがTmmのとき、第2共通流路1162に液体が供給される供給部117から、最も遠いアクチュエータ溝1135までの第1方向の距離を最大供給距離Lmmとし、第2共通流路1162の第2方向における幅寸法を流路幅Wmmとすると、LとTとWの関係は
【数2】
を満たす。
【0035】
なお、図5に示すように、第2共通流路1162の断面の第2方向における幅寸法Wは、例えば深さ方向によって幅が変化する形状の場合、第2共通流路1162がノズルプレート114に面する部位の幅寸法とする。
【0036】
例えば供給口1111が第2共通流路1162とは異なる部位に配置される場合には、供給部117は、第2共通流路1162の一次側の端部とする。すなわち、最大供給距離Lは、第1方向(X方向)におけるアクチュエータ113の端部であって、第2共通流路1162に液体が流入する入口となる連通部を供給部117とし、当該供給部117から、最も離れた位置のアクチュエータ溝1135までの距離となる。
【0037】
複数の個別電極は、駆動素子である複数の圧電体1133に個別に駆動電圧を印加する。複数の個別電極は、各圧力室1131を個別に変形させる。個別電極は、基板111に形成された配線パターン及びアクチュエータ113に形成された配線パターンにより形成される。
【0038】
共通電極は、複数の圧電体1133の全てに同じ駆動電圧を印加する。共通電極は、複数の圧力室1131を同時に変形させる。共通電極は、基板111に形成された配線パターン及びアクチュエータ113に形成された配線パターンにより形成される。
【0039】
アクチュエータ113の個別電極または共通電極は、カバー15内に配置されるとともにドライバICを搭載した回路基板に接続される。例えば回路基板は、ドライバICにより駆動電圧をアクチュエータ113の配線パターンに印加することでアクチュエータ113を駆動し、圧力室1131の容積を増減させて、ノズル1141から液滴を吐出させる。
【0040】
マニフォールドユニット12は、マニフォールド121と、インク供給管123とを備える。マニフォールドユニット12はさらに、冷却水供給管及び冷却水排出管を備えていてもよい。
【0041】
マニフォールド121は、板状又はブロック状に形成される。マニフォールド121は、例えば、複数の部材が一体に組み立てられることで形成され、供給路1211及び冷却流路を形成する。
【0042】
例えばマニフォールド121は、基板111の供給口1111と連続するとともに液体供給流路を形成する供給路1211と、冷却用の流体の流路を形成する冷却流路と、を備える。なお、マニフォールド121は、一対のヘッド本体11に接続されることから、一対の供給路1211を有する。
【0043】
マニフォールド121の一方の主面は、基板111の主面に固定される。また、マニフォールド121は、基板111が固定される主面とは反対の主面に、天板が設けられる。また、マニフォールド121には、インク供給管123が、天板を介して固定される。
【0044】
供給路1211は、インク供給管123及び基板111の供給口1111を流体的に接続する。供給路1211は、インク供給管123及び供給口1111の間の液体の流路である。
【0045】
インク供給管123は、供給路1211に接続される。本実施形態において液体吐出ヘッド1は、ヘッド本体11を一対備えることから、インク供給管123は、それぞれ一対設けられる。
【0046】
カバー15は、例えば、一対のヘッド本体11の側面、及びマニフォールドユニット12を覆う外郭体と、一対のヘッド本体11のノズルプレート114側の一部を覆うマスクプレートと、を備える。
【0047】
また、外郭体は、例えば、マニフォールドユニット12のうちインク供給管123を外部に露出させる。
【0048】
マスクプレートは、一対のヘッド本体11のうち、複数のノズル1141及びノズルプレート114の複数のノズル1141の周囲を除く部位を覆う。
【0049】
このように構成された液体吐出ヘッド1は、ヘッド本体11に、各圧電体1133に駆動電圧をそれぞれ個別に印加できる複数の個別電極、及び、全ての圧電体1133に駆動電圧を印加できる共通電極を有する。
【0050】
このため、液体吐出ヘッド1は、複数の圧力室1131を選択的に、個別に、又は、共通して駆動することができる。そして、圧力室1131が駆動すると、圧力室1131がシェアモード変形し、圧力室1131内に供給されたインクが加圧される。よって、液体吐出ヘッド1は、加圧されたインクを、圧力室1131に対向するノズル1141から選択的に吐出することができる。
【0051】
液体吐出ヘッド1は、マニフォールドユニット12によって、液体吐出部であるヘッド本体11を冷却する。
【0052】
以下、液体吐出ヘッド1を有する液体吐出装置2について、図7を参照して説明する。液体吐出装置2は、筐体2111と、媒体供給部2112と、画像形成部2113と、媒体排出部2114と、支持装置である搬送装置2115と、メンテナンス装置2117と、制御部2118と、を備える。また、液体吐出装置2は、液体吐出ヘッド1に供給するインクの温度を調整する冷却装置を備えている。
【0053】
液体吐出装置2は、媒体供給部2112から画像形成部2113を通って媒体排出部2114に至る所定の搬送路2001に沿って、吐出対象物である記録媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行うインクジェットプリンタである。
【0054】
媒体供給部2112は複数の給紙カセット21121を備える。画像形成部2113は、用紙を支持する支持部2120と、支持部2120の上方に対向配置された複数のヘッドユニット2130と、を備える。媒体排出部2114は、排紙トレイ21141を備える。
【0055】
支持部2120は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト21201と、搬送ベルト21201を裏側から支持する支持プレート21202と、搬送ベルト21201の裏側に備えられた複数のベルトローラ21203と、を備える。
【0056】
ヘッドユニット2130は、複数のインクジェットヘッドである液体吐出ヘッド1と、各液体吐出ヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしての複数の供給タンク2132と、インクを供給するポンプ2134と、液体吐出ヘッド1と供給タンク2132とを接続する接続流路2135と、を備える。
【0057】
本実施形態において、液体吐出ヘッド1としてシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色の液体吐出ヘッド1と、これらの各色のインクをそれぞれ収容する4色の供給タンク2132を備える。供給タンク2132は接続流路2135によって液体吐出ヘッド1に接続される。
【0058】
ポンプ2134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。ポンプ2134は、制御部2118に接続され、制御部2118により駆動制御される。
【0059】
接続流路2135は、液体吐出ヘッド1のインク供給管123に接続される供給流路を備える。
【0060】
搬送装置2115は、媒体供給部2112の給紙カセット21121から画像形成部2113を通って媒体排出部2114の排紙トレイ21141に至る搬送路2001に沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置2115は、搬送路2001に沿って配置される複数のガイドプレート対21211~21218と、複数の搬送用ローラ21221~21228と、を備えている。搬送装置2115は、用紙Pを液体吐出ヘッド1に相対移動可能に支持する。
【0061】
冷却装置2116は、冷却水タンク、冷却水を供給する配管やチューブ等の冷却用回路、冷却水を供給するポンプ及び冷却水の温度を調整する冷却器等を有する。冷却装置2116は、冷却器で所定の温度に調整した冷却水タンクの冷却水を、ポンプの送水によって冷却用回路を介してマニフォールド内の冷却流路に供給し、あるいはマニフォールド内の冷却流路を通って排出された水を回収する。なお、冷却器は、例えば、クーラーである。
【0062】
メンテナンス装置2117は、例えば、メンテナンス時にノズルプレート114の外面に残存するインクを吸引し、回収する。また、液体吐出ヘッド1が非循環式である場合には、メンテナンス装置2117は、メンテナンス時に、ヘッド本体11内のインクを回収する。このようなメンテナンス装置2117は、回収したインクを貯留するトレイやタンク等を有する。
【0063】
制御部2118は、処理回路を有するプロセッサの一例としてのCPU21181と、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等のメモリと、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
【0064】
このように構成された液体吐出ヘッド1及び液体吐出装置2によれば、ノズルを形成するノズルプレートを圧力緩衝ダンパーとして使用することで、水撃の影響を抑制することができる。また、例えばインク吐出量の多い高生産性インクジェットヘッドでは、インクを吐出するアクチュエータ溝1135の両側からインクを供給することが望ましいため、アクチュエータ溝1135を形成するアクチュエータ基板両端部から迂回してサイド側の第2共通流路1162を通り、溝の両側からインクを供給することで、インク吐出量を確保できる。このとき、高速印字、高速駆動のインク供給量が多い高生産性インクジェットヘッドの場合、高DUTYから急激にDUTYが減少するとインク流量が急減することで、ウォーターハンマー現象(水撃現象)が発生し、安定印字に必要なメニスカスの安定に影響を与える恐れがあるが、ノズルプレート114の厚さがTmmのとき、供給口と最も遠いアクチュエータ113との距離Lmmと、インク流路幅Wmm、の関係は
【数3】
を満たす寸法設定とすることで、最も遠い位置にある圧力室においても、所望の吐出性能を維持することができる。
【0065】
なお、本発明の実施形態は上述した構成に限定されない。
【0066】
例えば上述した例において、一対のアクチュエータ113の間に長孔である供給口1111が配置され両側の第2共通流路1162には供給口が配置されていない構成を例示したが、これに限られるものではない。供給口1111の形状、数、及び配置は適宜設定可能である。例えば共通流路1162にも、貫通口であって液体が流入する供給口1111が形成されていてもよい。例えば、両側の第2共通流路1162の第1方向の中央部に供給口1111を設ける場合、最大供給距離Lの長さは半分になり、供給口1111の配置の間隔を小さくすればインク流路の長さLも小さくなる。
【0067】
例えば供給口から最も遠いアクチュエータ溝1135がある共通流路1162に、供給口1111が形成される場合と、形成されていない場合、あるいはその位置に応じて、最大供給距離Lの基準位置となる供給部117の位置は変わる。すなわち、共通流路1162に液体が供給される供給部117は、当該共通流路1162に形成される供給口1111となるか、あるいは、共通流路1162の第1方向の端部となる。したがって、最大供給距離Lは、同じ共通流路1162に配される複数の供給口1111の間の第1方向の距離の1/2となる場合もあるし、あるいは当該共通流路1162の第1方向の端部から同じ共通流路1162に配される供給口1111までの距離の1/2となる場合もある。また、最大供給距離Lは、あるいは共通流路1162の第1方向の長さの1/2となることもある。
【0068】
例えば他の実施形態として、図8に示すように、中央の第1共通流路1161に形成された供給口1111の他に、両側部の第2共通流路1162に、供給口1111が設けられていてもよい。すなわち例えば図8図9に示すように、供給口1111と、最も遠いアクチュエータ溝1135の入口とが、同じ共通流路1162に配置される場合には、供給口1111が供給部117となる。たとえば図8に示すように、共通流路1162の中央に供給口1111が設けられる流路構成の場合、Lは共通流路1162に沿って並ぶ2つの供給部117の間の距離の1/2倍であり、例えば、共通流路1162の端部の供給部117と、中央の供給部117との距離の1/2倍である。例えば第2共通流路1162の中央に供給口1111がある場合には、Lは、供給口1111から最も遠いアクチュエータ溝1135がある共通流路1162に供給口1111がなくアクチュエータ113の第1方向の端部が基準となる場合の1/2倍となる。そして、供給口1111から最も遠いアクチュエータ溝1135までの流路長さが部位によって異なる場合には、最も長い距離をLとし、ノズルプレート114の厚さがTmmのとき、供給口1111または供給部117と最も遠いアクチュエータ溝1135との距離Lmmと、インク流路幅Wmm、の関係は
【数4】
を満たす。本実施形態においても、インク流路の水撃の影響を抑えることができる。
たとえば他の実施形態として図9に示すように、共通流路1162において複数個所に供給口1111が設けられていてもよい。そして、供給口1111または共通流路1162の端部である供給部117から最も遠いアクチュエータ溝1135までの距離が部位によって異なる場合には、最も長い距離をLとする。例えば図9に示す流路構成の場合、共通流路1162上の2箇所の供給口1111から、その中間の位置にあるアクチュエータ溝1135までの距離がLとなる。本実施形態においても、ノズルプレート114の厚さがTmmのとき、供給口1111または供給部117と最も遠いアクチュエータ溝1135との距離Lmmと、インク流路幅Wmm、の関係は、
【数5】
を満たす。
本実施形態においても、インク流路の水撃の影響を抑えることができる。
【0069】
また、上記実施形態においては、サイドシュータタイプのインクジェットヘッドを例示したが、これに限られるものではなく、エンドシュータタイプであってもよい。
例えば圧力室1131の両側の共通流路が供給側であって、両側からインクが流入する構成としたが、これに限られるものではない。一例として、圧力室1131の一方側が供給側であり、他方側が排出側であり、インクが圧力室1131の一方側から流入して他方側から流出するインクジェットヘッドであってもよい。あるいは供給側と排出側が逆であってもよく、あるいは切り替え可能に構成されていてもよい。
【0070】
また、上述した例では、液体吐出ヘッド1は、非循環式の例を説明したが循環式でもよい。例えば排出側にも流路を形成する構成として、基板111の例えば第1方向の両端部に排出口が形成され、マニフォールドには基板111の排出口に連続する液体排出路が形成され、さらに、接続流路2135として、液体排出路に接続される回収流路が設けられる構成としてもよい。
【0071】
例えば本実施形態においてアクチュエータ113の断面が台形であり、第2共通流路1162の断面も片側が傾斜する台形状である例を示したが、これに限られるものではない。例えば長方形状その他の断面形状であってもよい。
【0072】
また、例えば、吐出する液体は印字用のインクに限られるものではなく、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する装置等であってもよい。
【0073】
また、上記実施形態において、インクジェットヘッドは、インクジェットプリンタ等の液体吐出装置に用いられる例を示したが、これに限られるものではなく、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、小型軽量化及び低コスト化が可能である。
【0074】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、水撃を抑制できる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1…液体吐出ヘッド、2…液体吐出装置、11…ヘッド本体、12…マニフォールドユニット、15…カバー、16…インク流路(液体流路)、111…基板、112…枠体、113…アクチュエータ、114…ノズルプレート、116…共通流路部、117…供給部、121…マニフォールド、123…インク供給管、1111…供給口、1131…圧力室、1132…空気室、1133…圧電体、1134…傾斜面、1135…アクチュエータ溝、1141…ノズル、1142…ノズル列、1161…第1共通流路、1162…第2共通流路(共通流路)、1211…供給路、2001…搬送路、2111…筐体、2112…媒体供給部、2113…画像形成部、2114…媒体排出部、2115…搬送装置、2116…冷却装置、2117…メンテナンス装置、2118…制御部、2120…支持部、2130…ヘッドユニット、2132…供給タンク、2134…ポンプ、2135…接続流路、21121…給紙カセット、21141…排紙トレイ、21181…CPU、21201…搬送ベルト、21202…支持プレート、21203…ベルトローラ、21211~21218…ガイドプレート対、21221~21228…搬送用ローラ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9