IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図1
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図2
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図3
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図4
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図5
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図6
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図7
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図8
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図9
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図10
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図11
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図12
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図13
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図14
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図15
  • -温度制御装置及び画像形成装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026053
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】温度制御装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20250214BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G03G21/00 500
G03G15/20 510
G03G15/20 555
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131397
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 豊
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033AA42
2H033BB03
2H033BB12
2H033BB29
2H033BB30
2H033CA06
2H033CA34
2H270LA25
2H270MA35
2H270MB25
2H270MB28
2H270NE01
2H270RB09
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC05
(57)【要約】
【課題】温度検出要素の故障発生時における定着器温度の異常上昇を抑制する。
【解決手段】ヒータに電力を供給することにより、ヒータから熱が伝播する温度制御対象の温度を制御する一実施形態に係る温度制御装置の温度補正部は、ヒータへの通電に基づいて温度制御対象の温度を推定する温度推定部の温度推定結果と、温度センサによる温度制御対象の温度検出結果と、に基づいて、温度補正値を算出する。温度バイアス補正部は、温度推定結果を、プリセットされたバイアス値により補正する。故障判断部は、温度推定結果と温度検出結果との差分に基づいて、温度センサ又は温度検出結果の伝送経路についての故障判断をする。選択部は、故障判断結果に基づいて、温度補正部の出力または温度バイアス補正部の出力を選択する。信号生成部は、選択された出力に基づいて、ヒータに供給する電力を制御するための通電パルスを出力する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータに電力を供給することにより、前記ヒータから熱が伝播する温度制御対象の温度を制御する温度制御装置であって、
前記ヒータへの通電に基づいて前記温度制御対象の温度を推定する温度推定部と、
前記温度推定部の温度推定結果と、温度センサによる前記温度制御対象の温度検出結果と、に基づいて、温度補正値を算出する温度補正部と、
前記温度推定部の前記温度推定結果を、プリセットされたバイアス値により補正する温度バイアス補正部と、
前記温度推定部の前記温度推定結果と、温度センサによる前記温度制御対象の温度検出結果と、の差分に基づいて、前記温度センサ又は前記温度検出結果の伝送経路についての故障判断をする故障判断部と、
前記故障判断部の判断結果に基づいて、前記温度補正部の出力または前記温度バイアス補正部の出力を選択する選択部と、
前記選択された前記温度補正部の出力または前記温度バイアス補正部の出力に基づいて、前記ヒータに供給する電力を制御するための通電パルスを出力する信号生成部と、
を具備する、
温度制御装置。
【請求項2】
前記選択部は、
故障していないという前記故障判断部の判断結果に応じて、前記温度補正部の出力を選択し、
故障しているという前記故障判断部の判断結果に応じて、前記温度バイアス補正部の出力を選択する、
請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
媒体上に形成されたトナー像を加熱して前記媒体上に定着させる定着用回転体と、前記定着用回転体を加熱するヒータと、を有する定着器と、
前記ヒータから熱が伝播する前記定着用回転体の温度を検出し、温度検出結果を出力する温度センサと、
前記ヒータに電力を供給することにより、前記ヒータから熱が伝播する前記定着用回転体の温度を制御する温度制御部と、を具備し、
前記温度制御部は、
前記ヒータへの通電に基づいて前記定着用回転体の温度を推定する温度推定部と、
前記温度推定部の温度推定結果と、温度センサによる前記定着用回転体の温度検出結果と、に基づいて、温度補正値を算出する温度補正部と、
前記温度推定部の前記温度推定結果を、プリセットされたバイアス値により補正する温度バイアス補正部と、
前記温度推定部の前記温度推定結果と、温度センサによる前記定着用回転体の温度検出結果と、の差分に基づいて、前記温度センサ又は前記温度検出結果の伝送経路についての故障判断をする故障判断部と、
前記故障判断部の判断結果に基づいて、前記温度補正部の出力または前記温度バイアス補正部の出力を選択する選択部と、
前記選択された前記温度補正部の出力または前記温度バイアス補正部の出力に基づいて、前記ヒータに供給する電力を制御するための通電パルスを出力する信号生成部と、
を備える、温度制御部と、
を具備する、
画像形成装置。
【請求項4】
前記温度制御部の前記故障判断部の前記判断結果が故障であった場合に、前記定着器を用いた画像形成動作が実行中でなければ、以降の前記画像形成動作を禁止するコントローラを更に具備する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記コントローラは、複数枚の媒体を含む媒体セットに対する画像形成を指示されているときに前記判断結果が故障であった場合、前記媒体が前記定着用回転体の位置で停止しないように制御して、前記画像形成動作を停止させる、請求項4に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、温度制御装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、定着器によって印刷媒体に熱及び圧力を与えることにより、印刷媒体にトナー像を定着させる定着器を備える。定着器は、定着用回転体(ヒートローラ)、加圧部材(プレスローラ)、加熱部材(ランプ又はIH(Induction Heating)ヒータ等)及び温度センサを備える。温度センサは、ヒートローラの表面の温度を検出する。
【0003】
定着器を制御するコントローラは、温度センサの検出信号(温度センサ信号)に基づいて、ヒータに対する通電量を増減させることにより、ヒートローラの表面温度が目標値となるように制御する。即ち、コントローラは、検出温度が高い場合はヒータに対する通電量を減らし、検出温度が低い場合はヒータに対する通電量を増加させる。
【0004】
例えば、温度センサに故障が発生したり、温度センサからコントローラへの検出信号の伝送経路つまり物理的な配線に断線が発生したりすると、コントローラに検出信号が入力されなくなる。すると、コントローラは、温度低下と誤判断して、ヒータに対する通電量を増加させ続けてしまうことになる。これによりヒートローラを含む定着器の温度が異常上昇することとなり、定着器の部品にストレスを掛け、部品の故障に繋がる。
【0005】
定着器の温度が異常上昇していくと、最終的には、別途設けられているサーモスタットにより、強制的にヒータに対する通電が遮断されることで、安全は確保される。しかしながら、この通電の遮断に伴って、その時点で画像形成装置自体も印刷動作を停止する。これにより、未だ排紙されていない搬送途中の印刷媒体が画像形成装置内に留まることとなり、ユーザはそれを手作業で取り除くことが必要となる。ユーザは、画像形成装置の印刷動作の終了が温度センサ又は検出信号の伝送経路の断線などの故障に起因することを知る術が無いため、単なる用紙ジャムと判別して、印刷媒体を取り除いた後、画像形成装置を再起動させる。これにより、同じ事が繰り返されることとなり、ユーザは、印刷を完了させることができないまま、何度も画像形成装置内の印刷媒体を取り除く作業を行わなければならない。
【0006】
また、トナーを印刷媒体に溶融圧着させている最中に、つまり印刷媒体が定着器の位置で停止していた場合、その印刷媒体を取り除いても、ヒートローラにトナー滓が残ってしまい、このトナー滓がそれ以降の印字品質を低下させてしまう。
【0007】
温度センサ及び温度検出結果の伝送経路を含むヒートローラの温度検出要素の故障発生時における定着器温度の異常上昇は、画像形成装置に複数の温度検出要素を搭載することで防止することができる。しかしながら、これは、画像形成装置のコストを増大させることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-48422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、温度検出要素の故障発生時における定着器温度の異常上昇を抑制することが可能な温度制御装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態に係る温度制御装置は、ヒータに電力を供給することにより、ヒータから熱が伝播する温度制御対象の温度を制御する温度制御装置であって、温度推定部と、温度補正部と、温度バイアス補正部と、故障判断部と、選択部と、信号生成部と、を具備する。温度推定部は、ヒータへの通電に基づいて温度制御対象の温度を推定する。温度補正部は、温度推定部の温度推定結果と、温度センサによる温度制御対象の温度検出結果と、に基づいて、温度補正値を算出する。温度バイアス補正部は、温度推定部の温度推定結果を、プリセットされたバイアス値により補正する。故障判断部は、温度推定部の温度推定結果と、温度センサによる温度制御対象の温度検出結果と、の差分に基づいて、温度センサ又は温度検出結果の伝送経路についての故障判断をする。選択部は、故障判断部の判断結果に基づいて、温度補正部の出力または温度バイアス補正部の出力を選択する。信号生成部は、選択された温度補正部の出力または温度バイアス補正部の出力に基づいて、ヒータに供給する電力を制御するための通電パルスを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る画像形成装置の構成の例について説明するための図である。
図2図2は、一実施形態に係るヒータ通電制御回路の構成の例について説明するための図である。
図3図3は、一実施形態に係る温度推定結果を得るための熱移動を表現する熱回路について説明するための図である。
図4図4は、一実施形態に係るヒータ通電制御回路の動作の例について説明するための図である。
図5図5は、一実施形態に係るヒータ通電制御回路の動作の例について説明するための図である。
図6図6は、一実施形態に係るヒータ通電制御回路の動作の例について説明するための図である。
図7図7は、一実施形態に係るヒータ通電制御回路の動作の例について説明するための図である。
図8図8は、一実施形態に係るヒータ通電制御回路の動作の例について説明するための図である。
図9図9は、一実施形態に係るヒータ通電制御回路の動作の例について説明するための図である。
図10図10は、一実施形態に係るヒータ通電制御回路の動作の例について説明するための図である。
図11図11は、一実施形態に目標温度の例について説明するための図である。
図12図12は、一実施形態に係る差分DIFとデューティ値DUTYとの関係について説明するための図である。
図13図13は、一実施形態に係るヒータ通電制御回路により生成される通電パルス列を説明するための図である。
図14図14は、一実施形態に係るデューティ値と発生電力及び通電パルス列と発生電力との関係を説明するための図である。
図15図15は、一実施形態に係るデューティ値のサンプリング例について説明するための図である。
図16図16は、一実施形態に係るシステムコントローラの動作の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態に係る温度制御装置及び画像形成装置について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る画像形成装置1の構成例について説明するための説明図である。
【0013】
画像形成装置1は、例えば、印刷媒体Pを搬送しながら画像形成等の各種処理を行うMFP(Multifunction Peripheral)である。画像形成装置1は、例えば、印刷媒体Pを搬送しながら画像形成等の各種処理を行うLED(Light Emitting Diode)アレイを走査する固体走査方式のプリンタ(例えばLEDプリンタ)である。
【0014】
例えば、画像形成装置1は、トナーカートリッジからトナーを受け取り、受け取ったトナーにより印刷媒体Pに画像を形成する構成を備える。トナーは、単色のトナーであってもよいし、例えばシアン、マゼンタ、イエロー及びブラック等の色のカラートナーであってもよい。また、トナーは、熱が加えられた場合に消色する消色トナーであってもよい。
【0015】
図1に示されるように、画像形成装置1は、筐体11、通信インタフェース12、システムコントローラ13、ヒータ通電制御回路14、表示部15、操作インタフェース、複数の用紙トレイ17、排紙トレイ18、搬送部19、画像形成部20及び定着器21を備える。
【0016】
筐体11は、画像形成装置1の本体である。筐体11は、通信インタフェース12、システムコントローラ13、ヒータ通電制御回路14、表示部15、操作インタフェース16、複数の用紙トレイ17、排紙トレイ18、搬送部19、画像形成部20、及び定着器21を収容する。
【0017】
まず、画像形成装置1の制御系の構成について説明する。
通信インタフェース12は、他の機器と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース12は、例えば、上位装置(外部機器)との通信に用いられる。外部機器は、例えば、パーソナルコンピュータ等のユーザ端末やクラウド上のサーバ装置を含む。通信インタフェース12は、例えば、LAN(Local Area Network)コネクタ等として構成される。また、通信インタフェース12は、Bluetooth(登録商標)又はWi-fi(登録商標)等の規格に従って他の機器と無線通信を行うものであってもよい。
【0018】
システムコントローラ13は、画像形成装置1の制御を行う。システムコントローラ13は、例えば、プロセッサ22及びメモリ23を備える。
【0019】
プロセッサ22は、演算処理を実行する演算素子である。プロセッサ22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。CPUは、マルチコア/マルチスレッドのものであって良く、複数の処理を併行して実行することができる。プロセッサ22は、例えば、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)などであってもよい。あるいは、プロセッサ22は、これらのうちの複数を組み合わせたものであってもよい。プロセッサ22は、メモリ23に記憶されているプログラム等のデータに基づいて種々の処理を行う。プロセッサ22は、メモリ23に格納されているプログラムを実行することにより、種々の動作を実行可能な制御部として機能する。
【0020】
プロセッサ22は、メモリ23に記憶されているプログラムを実行することにより、種々の情報処理を行う。例えば、プロセッサ22は、通信インタフェース12を介して外部機器から取得した画像に基づいて、印刷ジョブを生成する。プロセッサ22は、生成した印刷ジョブを、メモリ23に格納する。
【0021】
印刷ジョブは、印刷媒体Pに形成する画像を示す画像データを含む。画像データは、1枚の印刷媒体Pに画像を形成するためのデータであってもよいし、複数枚の印刷媒体Pに画像を形成するためのデータであってもよい。さらに、印刷ジョブは、カラー印刷かモノクロ印刷かを示す情報、印刷に使用する印刷媒体Pを示す情報等の情報を含む。印刷ジョブは、印刷部数(ページセット数)、1部当たりの印刷枚数(ページ数)等の情報を含んでいてもよい。
【0022】
また、プロセッサ22は、生成した印刷ジョブに基づいて、搬送部19、画像形成部20及び定着器21の動作を制御するための印刷制御情報を生成する。印刷制御情報は、通紙のタイミングを示す情報を含む。プロセッサ22は、印刷制御情報をヒータ通電制御回路14に供給する。
【0023】
また、プロセッサ22は、メモリ23に記憶されているプログラムを実行することにより、搬送部19及び画像形成部20の動作を制御するコントローラ(エンジンコントローラ)として機能する。即ち、プロセッサ22は、搬送部19による印刷媒体Pの搬送の制御及び画像形成部20による印刷媒体Pへの画像の形成の制御等を制御する。
【0024】
メモリ23は、プログラム及びプログラムで用いられるデータ等を記憶する記憶媒体である。また、メモリ23は、ワーキングメモリとしても機能する。すなわち、メモリ23は、プロセッサ22の処理中のデータ及びプロセッサ22が実行するプログラム等を一時的に格納する。
【0025】
なお、画像形成装置1は、エンジンコントローラをシステムコントローラ13とは別に備える構成であってもよい。この場合、エンジンコントローラが、搬送部19による印刷媒体Pの搬送の制御及び画像形成部20による印刷媒体Pへの画像の形成の制御等を行う。また、この場合、システムコントローラ13は、エンジンコントローラにおける制御に必要な情報をエンジンコントローラに供給する。
【0026】
また、画像形成装置1は、交流電源ACの交流電圧を用いて、画像形成装置1内の種々の構成に直流電圧を供給する図示されない電力変換回路を備える。電力変換回路は、プロセッサ22及びメモリ23の動作に必要な直流電圧をシステムコントローラ13に供給する。また、電力変換回路は、画像形成に必要な直流電圧を画像形成部20に供給する。また、電力変換回路は、印刷媒体Pの搬送に必要な直流電圧を搬送部19に供給する。また、電力変換回路は、定着器21のヒータの駆動用の直流電圧をヒータ通電制御回路14に供給する。
【0027】
ヒータ通電制御回路14は、後述する定着器21のヒータへの通電を制御する温度制御装置(温度制御部)である。ヒータ通電制御回路14は、定着器21のヒータを通電させるための通電電力PCを生成し、定着器21のヒータに供給する。ヒータ通電制御回路14の詳細な説明については後述する。
【0028】
表示部15は、システムコントローラ13又は図示されないグラフィックコントローラなどの表示制御部から入力される映像信号に応じて画面を表示するディスプレイを備える。例えば、表示部15のディスプレイには、画像形成装置1の種々の設定のための画面が表示される。
【0029】
操作インタフェース16は、操作部材を含む。操作インタフェース16は、操作部材の操作に応じた操作信号をシステムコントローラ13に供給する。操作部材は、例えば、タッチセンサ、テンキー、電源キー、用紙フィードキー、種々のファンクションキー又はキーボード等である。タッチセンサは、ある領域内において指定された位置を示す情報を取得する。タッチセンサは、表示部15と一体にタッチパネルとして構成されることにより、表示部15に表示された画面上のタッチされた位置を示す信号をシステムコントローラ13に入力する。
【0030】
複数の用紙トレイ17は、それぞれ印刷媒体Pを収容するカセットである。用紙トレイ17は、筐体11の外部から印刷媒体Pを供給可能に構成されている。例えば、用紙トレイ17は、筐体11から引き出し可能に構成されている。
【0031】
排紙トレイ18は、画像形成装置1から排出された印刷媒体Pを支持するトレイである。
【0032】
次に、画像形成装置1の印刷媒体Pを搬送する構成について説明する。
搬送部19は、画像形成装置1内で印刷媒体Pを搬送する機構である。図1に示されるように、搬送部19は、複数の搬送路を備える。例えば、搬送部19は、給紙搬送路31及び排紙搬送路32を備える。
【0033】
給紙搬送路31及び排紙搬送路32は、それぞれ図示されない複数のモータ、複数のローラ、及び複数のガイドにより構成される。複数のモータは、システムコントローラ13の制御に基づいて、軸を回転させることにより、軸の回転に連動するローラを回転させる。複数のローラは、回転することにより印刷媒体Pを移動させる。複数のガイドは、印刷媒体Pの搬送方向を制御する。
【0034】
給紙搬送路31は、用紙トレイ17から印刷媒体Pを取り込み、取り込んだ印刷媒体Pを画像形成部20に供給する。給紙搬送路31は、各用紙トレイに対応したピックアップローラ33を備える。各ピックアップローラ33は、それぞれ用紙トレイ17の印刷媒体Pを給紙搬送路31に取り込む。
【0035】
排紙搬送路32は、画像が形成された印刷媒体Pを、筐体11から排出する搬送路である。排紙搬送路32によって排出された印刷媒体Pは、排紙トレイ18により支持される。
【0036】
次に、画像形成部20について説明する。
画像形成部20は、印刷媒体Pに画像を形成する構成である。具体的には、画像形成部20は、プロセッサ22により生成された印刷ジョブに基づいて、印刷媒体Pに画像を形成する。
【0037】
画像形成部20は、複数のプロセスユニット41、複数の露光器42及び転写機構43を備える。画像形成部20は、プロセスユニット41毎に、露光器42を備える。なお、複数のプロセスユニット41及び複数の露光器42は、それぞれ同じ構成であるため、1つのプロセスユニット41及び1つの露光器42についてそれぞれ説明する。
【0038】
まず、プロセスユニット41について説明する。
プロセスユニット41は、トナー像を形成する構成である。例えば、複数のプロセスユニット41は、トナーの種類ごとに設けられる。例えば、複数のプロセスユニット41は、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック等のカラートナーにそれぞれ対応する。具体的には、各プロセスユニット41には、異なる色のトナーを有するトナーカートリッジが接続される。
【0039】
トナーカートリッジは、トナー収容容器及びトナー送出機構を備える。トナー収容容器は、トナーを収容する容器である。トナー送出機構は、トナー収容容器内のトナーを送り出すスクリューなどにより構成される機構である。
【0040】
プロセスユニット41は、感光ドラム51、帯電チャージャ52及び現像器53を備える。
感光ドラム51は、円筒状のドラムと、ドラムの外周面に形成された感光層とを備える感光体である。感光ドラム51は、図示されない駆動機構によって一定の速度で回転する。
【0041】
帯電チャージャ52は、感光ドラム51の表面を一様に帯電させる。例えば、帯電チャージャ52は、帯電ローラを用いて、感光ドラム51に電圧(現像バイアス電圧)を印加することにより、感光ドラム51を一様な負極性の電位(コントラスト電位)に帯電させる。帯電ローラは、感光ドラム51に対して所定の圧力を加えた状態で、感光ドラム51の回転によって回転する。
【0042】
現像器53は、トナーを感光ドラム51に付着させる装置である。現像器53は、現像剤容器、撹拌機構、現像ローラ、ドクターブレード、及びオートトナーコントロール(ATC)センサ等を備える。
【0043】
現像剤容器は、トナーカートリッジから送り出されたトナーを受け取り、収容する容器である。現像剤容器内には、予めキャリアが収容されている。トナーカートリッジから送り出されたトナーは、撹拌機構によってキャリアと撹拌されることにより、トナーとキャリアとが混合された現像剤を構成する。キャリアは、現像器53の製造時に現像剤容器内に収容される。
【0044】
現像ローラは、現像剤容器内で回転することにより、表面に現像剤を付着させる。ドクターブレードは、現像ローラの表面と所定の間隔を隔てて配置された部材である。ドクターブレードは、回転する現像ローラの表面に付着した現像剤の一部を除去する。これにより、現像ローラの表面に、ドクターブレードと現像ローラの表面との間隔に応じた厚さの現像剤の層が形成される。
【0045】
ATCセンサは、例えば、コイルを有し、コイルに生じた電圧値を検出する磁束センサである。ATCセンサの検出電圧は、現像剤容器内のトナーからの磁束の密度により変化する。即ち、システムコントローラ13は、ATCセンサの検出電圧に基づき、現像剤容器に残っているトナーのキャリアに対する濃度比(トナー濃度比)を判断する。システムコントローラ13は、トナー濃度比に基づいて、トナーカートリッジの送出機構を駆動する図示されないモータを動作させ、トナーカートリッジから現像器53の現像剤容器にトナーを送り出させる。
【0046】
次に、露光器42について説明する。
露光器42は、複数の発光素子を備える。露光器42は、発光素子から光を、帯電した感光ドラム51に照射することにより、感光ドラム51上に潜像を形成する。発光素子は、例えば発光ダイオード(LED)などである。1つの発光素子は、感光ドラム51上の1点に光を照射するように構成されている。複数の発光素子は、感光ドラム51の回転軸と平行な方向である主走査方向に配列されている。
【0047】
露光器42は、主走査方向に配列された複数の発光素子により感光ドラム51上に光を照射することにより、感光ドラム51上に1ライン分の潜像を形成する。さらに、露光器42は、回転する感光ドラム51に連続して光を照射することにより、複数ラインの潜像を形成する。
【0048】
上記の構成において、帯電チャージャ52により帯電された感光ドラム51の表面に、露光器42から光が照射されると、静電潜像が形成される。現像ローラの表面に形成された現像剤の層が、感光ドラム51の表面に近接すると、現像剤に含まれるトナーが、感光ドラム51の表面に形成された潜像に付着する。これにより、感光ドラム51の表面にトナー像が形成される。
【0049】
次に、転写機構43について説明する。
転写機構43は、感光ドラム51の表面に形成されたトナー像を、印刷媒体Pに転写する構成である。
【0050】
転写機構43は、例えば、1次転写ベルト61、2次転写対向ローラ62、複数の1次転写ローラ63及び2次転写ローラ64を備える。
【0051】
1次転写ベルト61は、2次転写対向ローラ62及び複数の巻付ローラに巻き付けられた無端ベルトである。1次転写ベルト61は、内側の面(内周面)が2次転写対向ローラ62及び複数の巻付ローラに接触し、外側の面(外周面)がプロセスユニット41の感光ドラム51と対向する。
【0052】
2次転写対向ローラ62は、図示されないモータによって回転する。2次転写対向ローラ62は、回転することにより、1次転写ベルト61を所定の搬送方向に搬送する。複数の巻付ローラは、自由に回転可能に構成されている。複数の巻付ローラは、2次転写対向ローラ62による1次転写ベルト61の移動に従って回転する。
【0053】
複数の1次転写ローラ63は、プロセスユニット41の感光ドラム51に1次転写ベルト61を接触させる構成である。複数の1次転写ローラ63は、複数のプロセスユニット41の感光ドラム51に対応するように設けられている。具体的には、複数の1次転写ローラ63は、それぞれ対応するプロセスユニット41の感光ドラム51と、1次転写ベルト61を挟んで対向する位置に設けられている。1次転写ローラ63は、1次転写ベルト61の内周面側に接触し、1次転写ベルト61を感光ドラム51側に変位させる。これにより、1次転写ローラ63は、1次転写ベルト61の外周面を感光ドラム51に接触させる。
【0054】
2次転写ローラ64は、1次転写ベルト61と対向する位置に設けられる。2次転写ローラ64は、1次転写ベルト61の外周面に接触し、且つ圧力を加える。これにより、2次転写ローラ64と1次転写ベルト61の外周面とが密着する転写ニップが形成される。2次転写ローラ64は、転写ニップを印刷媒体Pが通過する場合、転写ニップを通過する印刷媒体Pを1次転写ベルト61の外周面に押し当てる。
【0055】
2次転写ローラ64及び2次転写対向ローラ62は、回転することにより、給紙搬送路31から供給された印刷媒体Pを挟んだ状態で搬送する。これにより、印刷媒体Pが転写ニップを通過する。
【0056】
上記の構成において、1次転写ベルト61の外周面が感光ドラム51に接触すると、感光ドラムの表面に形成されたトナー像が1次転写ベルト61の外周面に転移する。画像形成部20が複数のプロセスユニット41を備える場合、1次転写ベルト61は、複数のプロセスユニット41の感光ドラム51からトナー像を受け取る。1次転写ベルト61の外周面に転写されたトナー像は、1次転写ベルト61によって、2次転写ローラ64と1次転写ベルト61の外周面とが密着した転写ニップまで搬送される。転写ニップに印刷媒体Pが存在する場合、1次転写ベルト61の外周面に転写されたトナー像は、転写ニップにおいて、印刷媒体Pに転写される。
【0057】
次に、画像形成装置1の定着に関する構成について説明する。
定着器21は、トナー像が転写された印刷媒体Pに、トナー像を定着させる。定着器21は、システムコントローラ13及びヒータ通電制御回路14の制御に基づいて動作する。定着器21は、定着用回転体と、加圧部材と、加熱部材とを備える。定着用回転体は、例えばヒートローラ71である。ヒートローラ71は、印刷媒体P上に形成されたトナー像を加熱して印刷媒体P上に定着させる。また、加圧部材は、例えばプレスローラ72である。加熱部材は、例えばヒートローラ71を加熱するヒータ73である。またさらに、定着器21は、ヒートローラ71の温度を検出する温度センサ(サーマルセンサ)74を備える。
【0058】
ヒートローラ71は、図示されないモータにより回転する定着用回転体である。ヒートローラ71は、中空状に金属で形成された芯金と、芯金の外周上に形成された弾性層とを有する。ヒートローラ71は、中空状に形成された芯金の内側に配置されたヒータ73により、芯金の内側が熱される。芯金の内側に生じた熱は、外部であるヒートローラ71の表面(即ち弾性層の表面)に伝達する。
【0059】
プレスローラ72は、ヒートローラ71に対向する位置に設けられる。プレスローラ72は、所定の外径で金属により形成された芯金と、芯金の外周上に形成された弾性層とを有する。プレスローラ72は、図示されないテンション部材から加わる応力によって、ヒートローラ71に対して圧力を加える。プレスローラ72からヒートローラ71に圧力が加わることにより、プレスローラ72とヒートローラ71とが密着したニップ(定着ニップ)が形成される。プレスローラ72は、図示されないモータにより回転する。プレスローラ72は、回転することにより、定着ニップに進入した印刷媒体Pを移動させるとともに、印刷媒体Pをヒートローラ71に押し当てる。
【0060】
ヒータ73は、ヒータ通電制御回路14から供給された通電電力PCによって発熱する装置である。ヒータ73は、例えばハロゲンヒータである。ヒータ73は、ヒータ通電制御回路14から供給された通電電力PCが熱源であるハロゲンランプヒータに通電することにより、ハロゲンランプヒータから放射された電磁波によって、ヒートローラ71の芯金の内側を発熱させる。また、ヒータ73は、例えばIHヒータなどであってもよい。
【0061】
温度センサ74は、ヒートローラ71の温度を検出する。ここでは、温度センサ74がヒートローラ71の表面温度を検出するものとして説明する。温度センサ74は、ヒートローラ71の表面の近傍の空気の温度を検出してもよい。温度センサ74は、複数であってもよい。例えば、温度センサ74は、ヒートローラ71の回転軸と平行に複数配列されてもよい。なお、温度センサ74は、少なくともヒートローラ71の表面温度の変化を検出することができる位置に設けられていればよい。温度センサ74は、温度センサ74によるヒートローラ71の温度検出結果Tdをヒータ通電制御回路14に供給する。温度検出結果Tdは、温度センサ74により検出されたヒートローラ71の表面温度である。温度検出結果Tdは、温度センサ74により検出されたヒートローラ71の表面温度を示す信号を指すこともある。
【0062】
上記の構成により、ヒートローラ71及びプレスローラ72は、定着ニップを通過する印刷媒体Pに対して、熱及び圧力を加える。印刷媒体P上のトナーは、ヒートローラ71から与えられた熱によって融解し、ヒートローラ71とプレスローラ72とにより与えられた圧力によって、印刷媒体P表面に塗布される。これにより、定着ニップを通過した印刷媒体Pにトナー像が定着する。定着ニップを通過した印刷媒体Pは、排紙搬送路32に導入され、排紙トレイ18に排出される。
【0063】
次に、ヒータ通電制御回路14について説明する。
ヒータ通電制御回路14は、定着器21のヒータ73への通電を制御することにより、ヒータ73に電力を供給する。ヒータ通電制御回路14は、ヒータ73に電力を供給することにより、ヒータ73から熱が伝播するヒートローラ71の表面温度を制御する。ヒータ通電制御回路14は、定着器21のヒータ73を通電させるための通電電力PCを生成し、定着器21のヒータ73に供給する。
【0064】
図2に示されるように、ヒータ通電制御回路14は、温度推定部81、推定履歴保持部82、高周波成分抽出部83、係数加算部84、選択部85、差分比較部86、制御デューティ生成部87、外部リミット部88、デューティパルス変換部89、電源回路90、故障判断部91及び温度バイアス補正部92を備える。また、ヒータ通電制御回路14には、温度センサ74からの温度検出結果Tdが入力され、システムコントローラ13から目標温度TGT、システム保護情報LMT、故障判定差分DT及びプリセットバイアス値TPが入力される。ヒータ通電制御回路14からは、ヒータ73に通電電力PCが供給され、システムコントローラ13に故障判断結果JRが出力される。
【0065】
温度推定部81は、ヒートローラ71の表面温度を推定する温度推定処理を行う。温度推定部81には、温度センサ74からの温度検出結果Td、推定履歴保持部82からの推定履歴PREV及び外部リミット部88からのデューティ値LDが入力される。
【0066】
推定履歴PREVは、温度推定部81による温度推定結果ESTの履歴である。推定履歴PREVは、温度推定部81による温度推定結果ESTの履歴を示す信号を指すこともある。温度推定部81による温度推定結果ESTの履歴は、微小時間前の過去の複数の温度推定結果ESTを含む。温度推定結果ESTは、温度推定部81により少なくともデューティ値LDに基づいて推定されたヒートローラ71の表面温度である。温度推定結果ESTは、温度推定部81により少なくともデューティ値LDに基づいて推定されたヒートローラ71の表面温度を示す信号を指すこともある。
【0067】
デューティ値LDは、デューティ値DUTYに基づくデューティ値である。デューティ値LDは、デューティ値DUTYに基づくデューティ値を示す信号を指すこともある。デューティ値LDは、デューティ値DUTYと同じ値のデューティ値である場合もあるし、デューティ値DUTYとは異なる値のデューティ値である場合もある。外部リミット部88がデューティ値DUTYを制限しない場合、デューティ値LDは、デューティ値DUTYと同じ値のデューティ値である。外部リミット部88がデューティ値DUTYを制限する場合、デューティ値LDは、外部リミット部88による制限後のデューティ値であって、デューティ値DUTYとは異なる値のデューティ値である。
【0068】
デューティ値DUTYは、制御デューティ生成部87により生成されたデューティ値である。デューティ値DUTYは、制御デューティ生成部87により生成されたデューティ値を示す信号を指すこともある。
【0069】
温度推定部81は、デューティ値LDに基づいてヒートローラ71の表面温度を推定し、温度推定結果ESTを生成する。温度推定部81は、温度推定結果ESTを推定履歴保持部82及び高周波成分抽出部83に出力する。上述のように、デューティ値LDは、デューティ値DUTYに基づくデューティ値である。そのため、デューティ値LDに基づいてヒートローラ71の表面温度を推定することは、デューティ値DUTYに基づいてヒートローラ71の表面温度を推定することの一例である。後述するように、実際にヒータ73に印加される通電電力PCは、デューティ値LDに基づいて生成されるので、温度推定部81による温度推定演算もこのデューティ値LDを使って行う必要がある。言い換えれば、温度推定部81において実際の動作と同等のシミュレーション結果(温度)を得るには、デューティ値LDで演算する必要がある。よって、上述のように、デューティ値LDは、外部リミット部88による制限後のデューティ値とすることが望ましい。そのため、デューティ値LDに基づいてヒートローラ71の表面温度を推定することは、外部リミット部88による制限後のデューティ値に基づいてヒートローラ71の表面温度を推定することを含む。
【0070】
典型例では、温度推定部81は、推定履歴PREVと、デューティ値LDと、に基づいてヒートローラ71の表面温度を推定し、温度推定結果ESTを生成する。推定履歴PREVと、デューティ値LDと、に基づいてヒートローラ71の表面温度を推定することは、推定履歴PREVと、デューティ値DUTYと、に基づいてヒートローラ71の表面温度を推定することの一例である。推定履歴PREVと、デューティ値LDと、に基づいてヒートローラ71の表面温度を推定することは、推定履歴PREVと、外部リミット部88による制限後のデューティ値と、に基づいてヒートローラ71の表面温度を推定することを含む。
【0071】
推定履歴保持部82は、推定履歴PREVを保持する。推定履歴保持部82は、推定履歴PREVを温度推定部81に出力する。
【0072】
高周波成分抽出部83は、温度推定結果ESTの高周波成分を抽出するハイパスフィルタ処理を行う。例えば、高周波成分抽出部83は、温度推定結果ESTのうち直流分をキャンセルし、高周波成分のみを抽出する。高周波成分抽出部83は、高周波成分HPFを生成し、高周波成分HPFを係数加算部84に出力する。高周波成分HPFは、高周波成分抽出部83により抽出された温度推定結果ESTの高周波成分である。高周波成分HPFは、高周波成分抽出部83により抽出された温度推定結果ESTの高周波成分を示す信号を指すこともある。
【0073】
係数加算部84は、温度検出結果Tdの補正である係数加算処理を行う。係数加算部84には、温度センサ74からの温度検出結果Td及び高周波成分抽出部83からの高周波成分HPFが入力される。係数加算部84は、高周波成分HPFに基づいて温度検出結果Tdを補正し、補正温度値WAEを生成する。例えば、係数加算部84は、高周波成分HPFと温度検出結果Tdを加算するなどの演算をして、補正温度値WAEを生成する。補正温度値WAEは、高周波成分HPFに基づいて温度検出結果Tdを補正した値であって、推定されたヒートローラ71の表面温度である。補正温度値WAEは、高周波成分HPFに基づいて温度検出結果Tdを補正した値を示す信号を指すこともある。係数加算部84は、補正温度値WAEを、選択部85を介して差分比較部86に出力する。
【0074】
具体的には、係数加算部84は、高周波成分HPFと予め設定された係数Kとを乗算する。係数加算部84は、高周波成分HPFと係数Kとを乗算して得られる値を温度検出結果Tdに加算する。係数加算部84は、(Td+K×HPF)により得られる値を補正温度値WAEとして求める。高周波成分HPFは、温度推定結果ESTに基づいているので、補正温度値WAEは、温度推定結果EST及び温度検出結果Tdに基づいているといえる。係数加算部84は、補正温度値WAEを求める演算部の一例である。
【0075】
例えば、係数Kが1である場合、係数加算部84は、温度検出結果Tdに高周波成分HPFをダイレクトに加算する。また、例えば、係数Kが0.1である場合、係数加算部84は、高周波成分HPFの10分の1の値を温度検出結果Tdに加算する。この場合、高周波成分HPFの効果はほとんど無くなり、温度検出結果Tdに近くなる。また、例えば、係数Kが1以上である場合、高周波成分HPFの効果をより強く表現することができる。係数加算部84において設定される係数Kは、あまり極端な値ではなく、1近傍の値が良いという結果が実験において出ている。
【0076】
選択部85は、係数加算部84からの補正温度値WAEと温度バイアス補正部92からのバイアス補正温度値TBCとの一方を選択して、差分比較部86に入力する。選択部85は、故障判断部91による故障判断結果に基づいて、この選択を実施する。温度センサ74自体の異常、温度検出結果Tdの伝送経路の断線、などの温度検出要素の故障がない通常状態では、選択部85は、係数加算部84からの補正温度値WAEを差分比較部86に入力する。
【0077】
以下、先ず、通常状態の場合を例に、各部について説明する。
差分比較部86は、差分計算処理を行う。差分比較部86には、選択部85からの補正温度値WAEと、システムコントローラ13からの目標温度TGTとが入力される。
【0078】
目標温度TGTは、ヒートローラ71の表面温度の目標値である。目標温度TGTは、ヒートローラ71の表面温度の目標値を示す信号を指すこともある。目標温度TGTは、プロセッサ22からの指令により変更可能である。ヒートローラ71の表面温度の目標値は、メモリ23に記憶されていてもよい。また、目標温度TGTは、ヒータ通電制御回路14内に記憶していてもよい。この場合、目標温度TGTは、プロセッサ22からの指令による書き換えにより変更可能である。
【0079】
例えば、目標温度TGTは、印刷プロセス毎に設定されることができる。
一例では、目標温度TGTは、各印刷プロセスで用いられる印刷媒体Pの質に応じて異なる。例えば、質は、厚さである。一般に、目標温度TGTは、印刷媒体Pが普通紙の場合に所定の温度を保てるように決められている。印刷媒体Pが定着器21を通過する際に印刷媒体Pによってヒートローラ71から奪われる熱量は、普通紙よりも厚い厚紙の方が、普通紙よりも増加する。ヒートローラ71の表面温度は、普通紙に対する印刷よりも、厚紙に対する印刷の方が下がりやすい。印刷媒体Pが厚紙の場合、目標温度TGTは、厚紙によってヒートローラ71から奪われる熱量を考慮し、普通紙に関連付けられた目標温度TGTよりも高い。これにより、ヒートローラ71の表面温度は、所定の温度を保ち易くなる。印刷媒体Pが普通紙よりも薄い場合、目標温度TGTは、普通紙に関連付けられた目標温度TGTよりも低い。
【0080】
別の例では、目標温度TGTは、印刷プロセスのステータスに応じて異なる。印刷プロセスのステータスに応じた目標温度TGTの例については後述する。
【0081】
差分比較部86は、目標温度TGTと、補正温度値WAEとを比較する。差分比較部86は、目標温度TGTと、補正温度値WAEとの比較に基づき差分DIFを算出する。差分DIFは、目標温度TGTと、補正温度値WAEとの差分である。差分DIFは、目標温度TGTと、補正温度値WAEとの差分を示す信号を指すこともある。差分比較部86は、差分DIFを制御デューティ生成部87に出力する。差分比較部86は、比較部の一例である。
【0082】
ここでは、差分DIFは、補正温度値WAEから目標温度TGTを引いて得られる値であるものとして説明するが、逆であってもよい。この例では、補正温度値WAEが目標温度TGTよりも低い場合、差分DIFは、負の値である。補正温度値WAEが目標温度TGTよりも高い場合、差分DIFは、正の値である。差分DIFには、目標温度TGTと、補正温度値WAEとの関係が現れる。
【0083】
制御デューティ生成部87は、デューティ値DUTYを生成するデューティ値生成処理を行う。制御デューティ生成部87には、差分比較部86からの差分DIFが入力される。制御デューティ生成部87は、差分DIFに基づいてデューティ値DUTYを生成する。デューティ値DUTYは、差分DIFに応じたデューティ値である。補正温度値WAEが目標温度TGTに等しい場合、デューティ値DUTYは、デューティのセンター値(基準値)である。補正温度値WAEが目標温度TGTよりも低い場合、制御デューティ生成部87は、ヒータ73への通電量を増やすためにデューティのセンター値よりもデューティ値を増やす。デューティ値DUTYは、デューティのセンター値よりも高い値である。他方、補正温度値WAEが目標温度TGTよりも高い場合、制御デューティ生成部87は、ヒータ73への通電量を減らすためにデューティのセンター値よりもデューティ値を減らす。デューティ値DUTYは、デューティのセンター値よりも低い値である。デューティ値DUTYは、実数である。例えば、デューティ値は、0~100の分解能であってもよい。制御デューティ生成部87は、デューティ値DUTYを外部リミット部88に出力する。制御デューティ生成部87は、デューティ生成部の一例である。
【0084】
上述のように、補正温度値WAEは、温度推定結果EST及び温度検出結果Tdに基づいているといえる。差分DIFは、目標温度TGTと、補正温度値WAEとの差分である。そのため、差分DIFに基づいてデューティ値DUTYを生成することは、温度推定結果ESTと、温度検出結果Tdと、目標温度TGTと、に基づいて、デューティ値を生成することを含む。
【0085】
外部リミット部88は、デューティ値DUTYを制限する制限処理を行う。外部リミット部88には、プロセッサ22からのシステム保護情報LMT及び制御デューティ生成部87からのデューティ値DUTYが入力される。外部リミット部88は、デューティ値DUTYにシステム保護情報LMTを反映し、デューティ値DUTYに基づいてデューティ値LDを生成する。デューティ値DUTYにシステム保護情報LMTを反映することは、デューティ値DUTYにシステム保護情報LMTを適用することを含む。デューティ値DUTYがシステム保護情報LMTで示される制限を満たさない場合、外部リミット部88は、デューティ値DUTYにシステム保護情報LMTを反映することで、デューティ値DUTYを制限する。デューティ値DUTYがシステム保護情報LMTで示される制限を満たす場合、外部リミット部88は、デューティ値DUTYにシステム保護情報LMTを反映したとしても、デューティ値DUTYを制限しない。外部リミット部88は、デューティ値LDを温度推定部81及びデューティパルス変換部89に出力する。外部リミット部88は、リミット部の一例である。
【0086】
システム保護情報LMTは、画像形成装置1を保護するためにデューティ値を制限するための情報である。システム保護情報LMTは、画像形成装置1を保護するためにデューティ値を制限するための情報を示す信号を指すこともある。システム保護情報LMTは、プロセッサ22からの指令により変更可能である。
【0087】
一例では、システム保護情報LMTは、デューティ値の上限値及び下限値の少なくとも何れか一方の値の情報である。デューティ値の上限値は、ヒータ73に供給可能な電力又は電流に基づいて決まる値である。デューティ値の下限値は、任意に設定可能である。デューティ値DUTYがデューティ値の上限値を超える場合、デューティ値DUTYは、システム保護情報LMTで示される制限を満たさない。デューティ値DUTYがデューティ値の下限値未満である場合、デューティ値DUTYは、システム保護情報LMTで示される制限を満たさない。デューティ値DUTYがデューティ値の下限値以上かつ上限値以下である場合、デューティ値DUTYは、システム保護情報LMTで示される制限を満たす。
【0088】
例えば、デューティ値の上限値が85であり、下限値が0であるものとする。デューティ値DUTYが90の場合について説明する。デューティ値DUTYはデューティ値の上限値を超えるので、デューティ値DUTYは、システム保護情報LMTで示される制限を満たさない。外部リミット部88は、デューティ値DUTYにシステム保護情報LMTを反映することで、デューティ値DUTYを制限する。外部リミット部88は、デューティ値DUTYに基づいてデューティ値LDを生成する。デューティ値LDは、制限後のデューティ値である。制限後のデューティ値は、デューティ値の上限値に対応する85である。デューティ値DUTYが80の場合について説明する。デューティ値DUTYはデューティ値の下限値以上かつ上限値以下であるので、デューティ値DUTYは、システム保護情報LMTで示される制限を満たす。外部リミット部88は、デューティ値DUTYにシステム保護情報LMTを反映したとしても、デューティ値DUTYを制限しない。外部リミット部88は、デューティ値DUTYに基づいてデューティ値LDを生成する。デューティ値LDは、デューティ値DUTYと同じ80である。
【0089】
別の例では、システム保護情報LMTは、画像形成装置1の危険を回避するための停止を指示の情報である。デューティ値DUTYが0以外の値である場合、デューティ値DUTYは、システム保護情報LMTで示される制限を満たさない。この場合、外部リミット部88は、デューティ値DUTYにシステム保護情報LMTを反映することで、デューティ値DUTYを制限する。外部リミット部88は、デューティ値DUTYに基づいてデューティ値LDを生成する。デューティ値LDは、制限後のデューティ値である。制限後のデューティ値は、0である。デューティ値DUTYが0である場合、デューティ値DUTYは、システム保護情報LMTで示される制限を満たす。この場合、外部リミット部88は、デューティ値DUTYにシステム保護情報LMTを反映したとしても、デューティ値DUTYを制限しない。外部リミット部88は、デューティ値DUTYに基づいてデューティ値LDを生成する。デューティ値LDは、デューティ値DUTYと同じ0である。
【0090】
デューティパルス変換部89は、デューティ値LDに基づいてヒータ73に供給する電力を制御するための通電パルスPsを生成する生成処理を行う。通電パルスPsは、ヒータ73に供給する電力を制御するためのパルス信号である。通電パルスPsは、トライアックのゲート信号である。デューティパルス変換部89には、外部リミット部88からのデューティ値LDが入力される。デューティパルス変換部89は、デューティ値LDを通電パルス列に変換する。デューティパルス変換部89は、通電パルス列を構成する通電パルスPsを生成する。デューティパルス変換部89は、通電パルスPsを電源回路90に出力する。デューティパルス変換部89は、通電パルスPsを生成する信号生成部の一例である。
【0091】
上述のように、デューティ値LDは、外部リミット部88による制限後のデューティ値であることもある。そのため、デューティ値LDに基づいて通電パルスPsを生成及び出力することは、外部リミット部88による制限後のデューティ値に基づいて通電パルスPsを生成及び出力することを含む。デューティ値LDに基づいて通電パルスPsを生成及び出力することは、デューティ値DUTYに基づいて通電パルスPsを生成及び出力することの一例である。
【0092】
デューティパルス変換部89は、デューティ値LDに基づいてデューティパターンを選択し、選択されたデューティパターンに応じて通電パルスPsを生成してもよい。デューティパターンは、デューティ値に対応するパターンである。デューティパターンは、「0」又は「1」の値をデューティ値に応じた数並べて構成される通電パルス列を示す。「1」は、導通(オン)の信号を示す。「0」は、遮断(オフ)の信号を示す。「1」の値の数は、デューティ値に応じて異なる。デューティパターンは、メモリ23に記憶されていてもよい。
【0093】
デューティパルス変換部89は、システム動作と非同期に通電パルスPsを生成してもよい。具体的には、デューティパルス変換部89は、AC電圧周波数50Hz/60Hzに合わせてパルス周波数と通電パルスPsの発出時刻を調整してもよい。デューティパルス変換部89は、交流電圧位相を取得し、交流電圧位相に基づいて、交流電圧に同期して通電パルス列を構成する通電パルスPsを出力する同期出力処理を行う。デューティパルス変換部89は、交流電圧のゼロクロスに同期して通電パルスPsを出力する。
【0094】
電源回路90は、通電パルスPsに基づいて、ヒータ73に通電電力PCを供給する。電源回路90は、図示されないAC電圧源から供給される交流電圧を用いて、定着器21のヒータ73への通電を行う。電源回路90は、例えば、通電パルスPsに基づき、AC電圧源からの交流電圧がヒータ73に供給される状態と供給されない状態とを切り替えることにより、ヒータ73に通電電力PCを供給する。即ち、電源回路90は、通電パルスPsに応じて、定着器21のヒータ73への通電時間を変更する。
【0095】
なお、電源回路90は、定着器21と一体に構成されていてもよい。即ち、ヒータ通電制御回路14は、通電電力PCのヒータ73に供給するのではなく、通電パルスPsを定着器21のヒータ73の電源回路に供給する構成であってもよい。
【0096】
上記のように、ヒータ通電制御回路14は、温度推定結果ESTの高周波成分HPFを温度検出結果Tdに加算するなどの演算を施して得られるシミュレーション温度である補正温度値WAEを実測温度である温度検出結果Tdの代わりに制御に利用することで、定着器21のヒータ73への電力量を調整する。これにより、ヒータ通電制御回路14は、ヒータ73により加熱されるヒートローラ71の表面温度を制御する。このような実測温度の代わりにシミュレーション温度を利用する制御を、Weighted Average control with Estimate temperature(WAE制御)とここでは称することにする。
【0097】
故障判断部91は、温度センサ74及び温度検出結果Tdの伝送経路を含む温度検出要素の故障が発生しているか否かの判断処理を行う。故障判断部91には、温度推定部81からの温度推定結果EST、温度センサ74からの温度検出結果Td及びシステムコントローラ13からの故障判定差分DTが入力される。
【0098】
故障判定差分DTは、故障が発生しているか否か判断するための閾値である。故障判定差分DTは、プロセッサ22からの指令により変更可能である。故障発生判断の閾値は、メモリ23に記憶されていてもよい。また、故障判定差分DTは、ヒータ通電制御回路14内に記憶していてもよい。この場合、故障判定差分DTは、プロセッサ22からの指令による書き換えにより変更可能である。
【0099】
故障判断部91は、温度推定結果ESTと温度検出結果Tdの差分と、故障判定差分DTと、の関係に基づいて故障発生の有無を判断し、故障判断結果JRを生成する。具体的には、故障判断部91は、温度推定結果ESTの値と温度検出結果Tdの値の差分値が故障判定差分以下であれば、故障は発生していないと判断し、温度推定結果ESTの値と温度検出結果Tdの値の差分値が故障判定差分DTよりも大きければ、故障が発生していると判断する。故障判断部91は、故障判断結果JRを、選択部85に出力すると共に、システムコントローラ13にも出力する。
【0100】
具体的数値例を用いて説明すると、例えば、温度推定結果ESTが130度、温度検出結果Tdが125度、故障判定差分DTが40度であったとすると、130-125≦40であるので、故障判断部91は、故障していない即ち正常という故障判断結果JRを出力する。
【0101】
また、例えば、温度推定結果EST及び故障判定差分DTが同様に130度及び40度であったとして、温度検出結果Tdが異常値である10度となった場合には、130-10>40であるので、故障判断部91は、故障という故障判断結果JRを出力する。
【0102】
なお、この例ではEST-Td≦DT及びEST-Td>DTで故障判断を行うとしたが、EST-Td<DT及びEST-Td≧DTで判断するものとしてもよいことは勿論である。
【0103】
温度バイアス補正部92は、温度推定部81からの温度推定結果ESTをバイアス補正する処理を行う。温度バイアス補正部92には、温度推定部81からの温度推定結果ESTと、システムコントローラ13からのプリセットバイアス値TPが入力される。
【0104】
プリセットバイアス値TPは、バイアス補正する補正量を示す値である。プリセットバイアス値TPは、プロセッサ22からの指令により変更可能である。バイアス補正の補正量は、メモリ23に記憶されていてもよい。また、プリセットバイアス値TPは、ヒータ通電制御回路14内に記憶していてもよい。この場合、プリセットバイアス値TPは、プロセッサ22からの指令による書き換えにより変更可能である。
【0105】
温度バイアス補正部92は、温度推定結果ESTの値にプリセットバイアス値TPを加算して、バイアス補正温度値TBCを生成する。温度バイアス補正部92は、バイアス補正温度値TBCを、選択部85に出力する。
【0106】
具体的数値例を用いて説明すると、例えば、温度推定結果ESTが130度、プリセットバイアス値TPが-5度であったとすると、温度バイアス補正部92は、125度というバイアス補正温度値TBCを出力する。このバイアス補正温度値TBCは、正常であった場合の温度検出結果Tdと温度推定結果ESTの結果から得られる補正温度値WAEとほぼ同じ値になる。
【0107】
前述したように、選択部85は、故障判断部91からの故障判断結果JRに基づいて、係数加算部84からの補正温度値WAEと温度バイアス補正部92からのバイアス補正温度値TBCとの一方を選択して、差分比較部86に入力する。具体的には、選択部85は、故障判断結果JRが故障していない即ち正常という結果であったならば、係数加算部84からの補正温度値WAEを選択して、差分比較部86に入力する。選択部85は、故障判断結果JRが故障という結果であったならば、温度バイアス補正部92からのバイアス補正温度値TBCを選択して、差分比較部86に入力する。
【0108】
なお、ヒータ通電制御回路14の温度推定部81、推定履歴保持部82、高周波成分抽出部83、係数加算部84、選択部85、差分比較部86、制御デューティ生成部87、外部リミット部88、デューティパルス変換部89、故障判断部91及び温度バイアス補正部92は、それぞれ電気回路により構成されていてもよいし、ソフトウエアにより構成されていてもよい。ソフトウエアにより構成される場合、プロセッサ22又はプロセッサ22とは異なるプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより実現してもよい。プロセッサは、例えば、CPU等の処理回路である。
【0109】
温度推定結果ESTを得るための熱移動を表現する熱回路について説明する。
図3は、温度推定結果ESTを得るための熱移動を表現する熱回路について説明するための図である。
熱の移動は、電気回路のCR時定数(Cはキャパシタ、Rは抵抗)と同等の熱回路で表現することができる。熱回路は、V、C、Rの素子で構成される。
【0110】
熱源V1は、電気回路で直流電圧源と同等である。加熱抵抗R1は、電気回路で可変抵抗と同等である。加熱抵抗R1は、熱源からの熱の伝わりにくさを表す物理量に相当する。加熱抵抗R1は、可変因子としてデューティ値LDを用いる。例えば、デューティ値LDで示されるデューティ値が100%である場合、加熱抵抗R1は、Rのままであるものとする。ここでは、例えば、Rは、100Ωであるものとする。デューティ値LDで示されるデューティ値が0%である場合、加熱抵抗Raは、100Ω×10,000,000(極めて大きい値)であるものとする。デューティ値LDで示されるデューティ値が0より大きく、100より小さい場合、加熱抵抗R1は、100Ω×(デューティ値LD/100)であるものとする。ヒータ73の熱容量であるヒータ容量C1は、電気回路で容量と同等である。ヒータ容量C1は、加熱抵抗R1と合わせて第1のCR時定数回路を形成する。ヒータ容量C1は、微小時間dt前の推定履歴PREVを参照し、現時刻の温度に更新する。
【0111】
放熱抵抗R2は、ヒートローラ71から定着器21内の空間へ熱が逃げていく時の抵抗値である。定着器21の熱容量であるユニット容量C2は、放熱抵抗R2と合わせて第2のCR時定数回路を形成する。ユニット容量C2は、微小時間dt前の推定履歴PREVを参照し、現時刻の温度に更新する。
【0112】
外気抵抗R3は、定着器21内の空間(ヒートローラ71の外部)から外気へ熱が逃げる経路の抵抗値である。外気温V2は、電気回路で直流電圧源と等価である。熱源V1と外気温V2との関係は、熱源V1≧外気温V2である。具体的には、起動前の熱源V1と外気温V2との関係は熱源V1=外気温V2であり、動作時の熱源V1と外気温V2との関係は熱源V1>外気温V2である。
【0113】
例えば、温度推定部81は、推定履歴PREVと、デューティ値LDと、に基づいてエネルギー保存則を用いた上記のような熱回路のリアルタイムシミュレーションを行う。温度推定部81は、熱回路のリアルタイムシミュレーションにより、ヒートローラ71の表面温度の推定として、C1電圧(温度)を導き出す。温度推定部81は、C1電圧(温度)を現時刻の温度推定結果ESTとして生成する。
【0114】
以下、ヒータ通電制御回路14の動作について詳細に説明する。
図4及び図5は、ヒータ通電制御回路14のメイン動作について説明するためのフローチャートである。また、図6は、ヒータ通電制御回路14において通常時に使用される補正温度値WAEの算出動作について説明するためのフローチャートであり、図7は、ヒータ通電制御回路14において温度検出要素の故障発生時に使用されるバイアス補正温度値TBCの算出動作について説明するためのフローチャートである。これら図4及び図5図6図7に示される動作は、画像形成装置1の電源がオンされている間、システムコントローラ13から停止指令を受けるまで、常時実行される。また、図8及び図9は、ヒータ通電制御回路14の動作における各信号などについて説明するための説明図である。図8及び図9の横軸は、時間を示す。図8及び図9の縦軸は、温度を示す。
【0115】
温度推定部81は、図6に示されるように、画像形成装置1の機体内温度を取得する(ACT201)。なお、機体内温度の変化は緩慢であるので、温度推定部81による機体内温度の取得頻度は低くてよい。
【0116】
温度推定部81は、温度センサ74から現時刻の温度検出結果Tdを取得する(ACT202)。
【0117】
図8に示されるように、温度検出結果Tdと実際のヒートローラ71の表面温度との間には差が生じている。ヒートローラ71の表面温度は、ヒータ73による加熱が間欠的に行われているため、細かい周期で変化している。これに対し、温度センサ74は、自身の熱容量や感温素材の特性により、温度変化の応答性が悪い場合がある。特に安価な温度センサほど応答性が悪い傾向にある。その結果、温度検出結果Tdが実際のヒートローラ71の表面温度を正確に追従できていない。即ち、温度検出結果Tdは、ヒートローラ71の表面温度に対して遅延した状態で温度センサ74により検出される。また、温度検出結果Tdは、ヒートローラ71の表面温度の細かい変化が再現されず、平滑化された状態で温度センサ74により検出される。
【0118】
温度推定部81は、推定履歴保持部82から微小時間dt前の推定履歴PREVを取得する(ACT203)。
【0119】
温度推定部81は、上述のような熱回路を構成するV、C及びR素子相当の各パラメータを取得する(ACT204)。
【0120】
温度推定部81は、熱流入量を計算する(ACT205)。ACT205では、例えば、温度推定部81は、入力側のV1、Rとデューティ値LDとに基づいて熱流入量を計算する。熱流入量は、I=R/V1×(100/デューティ値LD)で計算することができる。デューティ値LDで示されるデューティ値が0%である場合、加熱抵抗R1は∞となり、入力側からの熱流入は、0である。他方、デューティ値LDで示されるデューティ値が100%である場合、I=R/V1となり、入力側からの熱流入は、最も多くなる。
【0121】
温度推定部81は、取得した推定履歴PREVからヒートローラ71の表面温度相当の値であるVbを取得する(ACT206)。
【0122】
温度推定部81は、熱流入によるdt後のVb上昇をエネルギー保存則から計算する(ACT207)。
【0123】
温度推定部81は、取得した推定履歴PREVから画像形成装置1の筐体内温度相当の値であるVeを取得する(ACT208)。
【0124】
温度推定部81は、熱流出量を計算する(ACT209)。ACT209では、例えば、温度推定部81は、ヒートローラ71の表面温度と筐体内温度との温度差(Vb-Ve)を計算する。温度推定部81は、温度差(Vb-Ve)に対して放熱抵抗R2により規定される熱流出量を計算する。
【0125】
温度推定部81は、熱流出によるdt後のVb下降をエネルギー保存則から計算する(ACT210)。
【0126】
温度推定部81は、dt後のVcを計算する(ACT211)。dt後のVcは、温度推定結果ESTに相当する。ACT211では、例えば、温度推定部81は、Vc=Vc履歴値+Vb上昇分-Vb下降分により、dt後のVcを計算する。Vc履歴値は、dt前のVcの値である。つまり、dt後のVcは、Vbの増分からVbの下降分を差し引いて得られる値を、dt前のVcの値に上乗せすることで求まる値である。
【0127】
図8に示されるように、温度推定結果ESTは、実際のヒートローラ71の表面温度の変化を適切に追従している。しかしながら、温度推定結果ESTは、シミュレーション結果であるため、条件の相違などにより絶対値が実際のヒートローラの表面温度と差が出る可能性がある。
【0128】
高周波成分抽出部83は、温度推定結果ESTに相当するVcを時間微分し、変化分を抽出する(ACT212)。
【0129】
高周波成分抽出部83は、微分値を積分し、ハイパスフィルタを構成する(ACT213)。高周波成分抽出部83は、ハイパスフィルタにより温度推定結果ESTのうち直流分をキャンセルし、高周波成分のみを抽出する。高周波成分抽出部83は、高周波成分HPFを生成する。
【0130】
図8に示されるように、高周波成分HPFは、実際のヒートローラ71の表面温度の変化を適切に追従している。
【0131】
係数加算部84は、温度センサ74から現時刻の温度検出結果Tdを取得する(ACT214)。
【0132】
係数加算部84は、補正温度値WAEを計算する(ACT215)。ACT215では、例えば、係数加算部84は、(Td+K×HPF)により得られる値を補正温度値WAEとして求める。
【0133】
図9は、実際のヒートローラ71の表面温度と、温度検出結果Tdと、補正温度値WAEとの例について説明するための説明図である。WAE制御では、温度検出結果Tdと温度推定結果ESTの高周波成分HPFとに基づき、ヒートローラ71の表面温度の細かな温度の変化を推定する。このため、図9に示されるように、補正温度値WAEは、ヒートローラ71の表面温度を適切に追従した値となる。
【0134】
推定履歴保持部82は、温度推定結果ESTを推定履歴PREVに上書きする(ACT216)。
【0135】
温度推定部81、高周波成分抽出部83及び係数加算部84は、システムコントローラ13から図示しない制御線によりWAE制御の停止指令を受けたか否か判断する(ACT217)。WAE制御の停止指令を受けていない場合、処理は、ACT217からACT202に遷移する。温度推定部81、高周波成分抽出部83及び係数加算部84は、WAE制御の停止指令を受けた場合、処理を終了する。なお、システムコントローラ13は、WAE制御の停止指令を温度推定部81、高周波成分抽出部83及び係数加算部84に供給する代わりに、それらへの電源供給を停止させるものとしてもよい。このような構成とした場合、ACT217は不要となり、ACT216からACT202に遷移するものとなる。
【0136】
図4に示されるように、ヒータ通電制御回路14において、故障判断部91は、温度センサ74から現時刻の温度検出結果Tdを取得する(ACT101)。
【0137】
また、故障判断部91は、上記ACT211で温度推定部81が計算した温度推定結果ESTを取得する(ACT102)。
【0138】
故障判断部91は、取得した温度検出結果Td及び温度推定結果ESTとシステムコントローラ13はからの故障判定差分DTとに基づいて、温度検出要素における故障発生の有無を判断する(ACT103)。
【0139】
故障判断部91は、故障判断結果JRを、選択部85及びシステムコントローラ13に出力する(ACT104)。
【0140】
選択部85は、故障判断結果JRが故障であるか否か確認する(ACT105)。故障が発生していない即ち通常時であれば(NO)、処理は、ACT105からACT106に遷移する。これに対して、故障が発生していれば(YES)、処理は、ACT105からACT114に遷移する。
【0141】
まず、故障の無い通常時の動作について説明する。
故障が発生していないならば、選択部85は、上記ACT215で計算された補正温度値WAEを選択して、差分比較部86に出力する(ACT106)。
【0142】
差分比較部86は、システムコントローラ13から目標温度TGTを取得する(ACT107)。
【0143】
差分比較部86は、目標温度TGTと、選択部85から出力された補正温度値WAEとの比較に基づき差分DIFを算出する(ACT108)。
【0144】
制御デューティ生成部87は、差分DIFに基づいてデューティ値DUTYを生成する(ACT109)。
【0145】
外部リミット部88は、デューティ値DUTYにシステム保護情報LMTを反映し、デューティ値を制限する(ACT110)。ACT110では、例えば、外部リミット部88は、デューティ値DUTYにシステム保護情報LMTを反映することにより、デューティ値DUTYに基づいてデューティ値LDを生成する。
【0146】
デューティパルス変換部89は、デューティ値LDを通電パルス列に変換する(ACT111)。デューティパルス変換部89は、通電パルス列を構成する通電パルスPsを生成する。
【0147】
デューティパルス変換部89は、交流電圧に同期して通電パルス列を構成する通電パルスPsを出力する(ACT112)。
【0148】
ヒータ通電制御回路14の各部は、システムコントローラ13から図示しない制御線により動作停止指令を受けたか否か判断する(ACT113)。動作停止指令を受けていない場合、処理は、ACT113からACT101に遷移する。ヒータ通電制御回路14は、動作停止指令を受けた場合、処理を終了する。なお、システムコントローラ13は、ヒータ通電制御回路14の停止指令をヒータ通電制御回路14の各部に供給する代わりに、それらへの電源供給を停止させるものとしてもよい。このような構成とした場合、ACT113は不要となり、ACT112からACT101に遷移するものとなる。
【0149】
上記したように、ヒータ通電制御回路14は、あるサイクル(当該サイクル)の処理を行う場合、1つ前のサイクルにおける値(デューティ値LD及び温度推定結果EST:推定履歴PREV)と、当該サイクルにおける温度検出結果Tsとに基づいて、WAE制御を行う。すなわち、ヒータ通電制御回路14は、次のサイクルで値を継承する。ヒータ通電制御回路14は、温度推定計算を前回の計算の履歴をもとに再計算する。したがって、ヒータ通電制御回路14は、稼働中に常に計算を行っている。ヒータ通電制御回路14において、計算結果は、メモリ等に保持され、次のサイクルの計算で再利用される。
【0150】
図10は、ヒータ通電制御回路14における処理のサイクルについて説明するための説明図である。図10の横軸は、時間を示す。例えば、温度推定部81は、時刻t(n)において温度推定処理を行い、それからdtだけ時刻が進んだt(n+1)において次の温度推定処理を行い、さらにdtだけ時刻が進んだt(n+2)において温度推定処理を行う。このように、温度推定部81は、繰り返し温度推定処理を行う。温度推定部81は、各サイクルの温度推定処理において、前回の温度推定結果ESTを、新たな温度の推定に用いる。
【0151】
時刻t(n)では、時刻t(n)における温度検出結果Td、前回である時刻t(n-1)のデューティ値LD及び前回である時刻t(n-1)の温度推定結果EST(推定履歴PREV)が用いられる。温度推定部81は、入力された信号に基づいて処理を行い、時刻t(n)における温度推定結果ESTを出力する。高周波成分抽出部83、係数加算部84、差分比較部86、制御デューティ生成部87、外部リミット部88及びデューティパルス変換部89は、入力された信号に基づいて処理を行い、デューティパルス変換部89は、時刻t(n)における通電パルスPsを出力する。
【0152】
時刻t(n+1)では、新たに時刻t(n+1)で検出された温度検出結果Td、時刻t(n)のデューティ値LD及び時刻t(n)の温度推定結果ESTである推定履歴PREVが用いられる。温度推定部81は、入力された信号に基づいて処理を行い、時刻t(n+1)における温度推定結果ESTを出力する。高周波成分抽出部83、係数加算部84、差分比較部86、制御デューティ生成部87、外部リミット部88及びデューティパルス変換部89は、入力された信号に基づいて処理を行い、デューティパルス変換部89は、時刻t(n+1)における通電パルスPsを出力する。
【0153】
時刻t(n+2)では、新たに時刻t(n+2)で検出された温度検出結果Td、時刻t(n+1)のデューティ値LD及び時刻t(n+1)の温度推定結果ESTである推定履歴PREVが温度推定部81に入力される。温度推定部81は、入力された信号に基づいて処理を行い、時刻t(n+2)における温度推定結果ESTを出力する。高周波成分抽出部83、係数加算部84、差分比較部86、制御デューティ生成部87、外部リミット部88及びデューティパルス変換部89は、入力された信号に基づいて処理を行い、デューティパルス変換部89は、時刻t(n+2)における通電パルスPsを出力する。
【0154】
なお、上記の微小時間dtは、固定の値であってもよいし、初期値設定において設定される構成であってもよい。例えば、微小時間dtは、100[msec]で設定される。
【0155】
印刷プロセスのステータスに応じた目標温度TGTについて説明する。
図11は、印刷プロセスのステータスに応じた目標温度TGTの例について説明するための説明図である。
図11の横軸は、時間を示す。図11の縦軸は、温度を示す。実線は、目標温度TGTを示す。破線は、実際のヒートローラ71の表面温度を示す。
【0156】
印刷プロセスのステータスは、印刷プロセスに関する種々のステータスを含む。例えば、印刷プロセスのステータスは、突入電流防止、起動加熱、レディ、印刷開始、印刷中及び省エネレディなどを含むが、これらに限定されない。各ステータスの目標温度TGTは互いに異なる。各ステータスの目標温度TGTは予め決められていてもよいし、可変であってもよい。
【0157】
突入電流防止のステータスでは、急に大電流が流れないように、目標温度TGTは段階的に上がるように設定されている。起動加熱のステータスでは、印刷に適した基準温度に早く達するように、目標温度TGTは高めに設定されている。レディのステータスでは、印刷準備が整った後の省エネのために、目標温度TGTは起動加熱のステータスの目標温度TGTよりも若干低く設定されている。印刷開始のステータスでは、印刷初頭で温度低下しないように、目標温度TGTは、印刷の少し前から、印刷中のステータスの目標温度TGTよりも高く設定されている。印刷中のステータスでは、目標温度TGTは印刷に適した基準温度に設定されている。省エネレディのステータスでは、長時間レディが続く場合、目標温度TGTはレディのステータスの目標温度TGTよりも低く設定されている。
【0158】
差分DIFとデューティ値DUTYとの関係について説明する。
図12は、差分DIFとデューティ値DUTYとの関係について説明する図である。 図12の横軸は、差分DIFを示す。図12の縦軸は、デューティ値DUTYを示す。実線は、差分DIFとデューティ値DUTYとの関係を示す。
【0159】
ここでは、差分DIFが0の場合のデューティ値DUTYであるデューティのセンター値は45%と設定したものとする。差分DIFの最大値は1と設定し、差分DIFの最小値は-1と設定したものとする。差分DIFが最大値の場合のデューティ値DUTYは0と設定したものとする。差分DIFが最小値の場合のデューティ値DUTYは100と設定したものとする。差分DIFとデューティ値DUTYとの関係は、上記設定に基づく線形関数として表現したものとする。この例では、デューティ値DUTY=45-差分DIF×傾き(45/1)である。
【0160】
補正温度値WAEが目標温度TGTよりも低い場合、デューティ値DUTYは、デューティのセンター値よりも高い値である。他方、補正温度値WAEが目標温度TGTよりも高い場合、デューティ値DUTYは、デューティのセンター値よりも低い値である。制御デューティ生成部87は、図12に例示する差分DIFとデューティ値DUTYとの関係を用いて、処理のサイクル毎に、差分DIFに基づいてデューティ値DUTYを生成する。
【0161】
デューティパルス変換部89により生成される通電パルス列について説明する。
図13は、デューティパルス変換部89により生成される通電パルス列を説明するための図である。
【0162】
ここでは、通電パルス列は、10パルスで表現されるものとする。1つのパルスは、10msであるものとする。各マスは1つのパルスを示す。斜線のマスは、導通(オン)の信号の「1」を示す通電パルスPsである。白色のマスは、遮断(オフ)の信号の「0」を示す。デューティ値DUTYが0%の場合、通電パルス列を示す10個のマスは、全て白色のマスである。そのため、100msの通電パルス列は、100msのうちの100%が「0」の信号である。デューティ値DUTYが20%の場合、通電パルス列を示す10個のマスは、2つの斜線のマスを含む。そのため、100msの通電パルス列は、100msのうちの20%が「1」の信号であり、100msのうちの80%が「0」の信号である。デューティ値DUTYが50%の場合、通電パルス列を示す10個のマスは、5つの斜線のマスを含む。そのため、100msの通電パルス列は、100msのうちの50%が「1」の信号であり、100msのうちの50%が「0」の信号である。デューティ値DUTYが50%の場合、通電パルス列を示す10個のマスは、8つの斜線のマスを含む。そのため、100msの通電パルス列は、100msのうちの80%が「1」の信号であり、100msのうちの20%が「0」の信号である。デューティ値DUTYが100%の場合、通電パルス列を示す10個のマスは、全て斜線のマスである。そのため、100msの通電パルス列は、100msのうちの100%が「1」の信号である。
【0163】
デューティ値と発生電力及び通電パルス列と発生電力との関係について説明する。
図14は、デューティ値と発生電力及び通電パルス列と発生電力との関係を説明するための図である。
図14の横軸は、デューティ値を示す。図14の縦軸は、電力量を示す。
【0164】
デューティ値と発生電力及びパルス列と発生電力との関係によれば、デューティ値とパルス列は、比例関係になることが分かる。なお、これは、ヒートローラ71の抵抗値を一定とした場合である。ヒートローラ71の抵抗値が変化する場合は、テーブルを用いてデューティ値と電力量との関係を補正してもよい。その場合でも、デューティ値とパルス列の関係は比例関係である。そのため、温度推定部81が温度推定結果ESTを生成するために、通電パルスPsに代えてデューティ値を用いることができることが分かる。
【0165】
デューティ値のサンプリング例について説明する。
図15は、一実施形態に係るデューティ値のサンプリング例について説明するための図である。
図15に示されるデューティ値LDで示されるデューティ値と、デューティ値の検出結果との比較から分かるように、プロセッサは、自己生成したデューティ値を利用するので、デューティ値を遅延することなく検出することができる。また、図15に示されるサンプリング間隔から分かるように、プロセッサは、自己生成したデューティ値を利用するので、高速サンプリングを必要としない。
【0166】
次に、上述のWAE制御を具体的な数値例を用いて説明する。
図3に例示する熱回路を構成するV、C及びR素子相当の各パラメータは、以下のとおりであるものとする。
熱源V1は、500+273(ケルビン)である。外気温V2は、25+273(ケルビン)である。加熱抵抗R1は、10(Ω)であるものとする。放熱抵抗R2は、2(Ω)である。外気抵抗R3は、5(Ω)である。ヒータ容量C1は、10(F)である。ユニット容量C2は、100(F)である。
【0167】
この場合、WAE制御における各値は、以下のとおりであるものとする。
温度推定結果ESTは、126+273(ケルビン)である。温度検出結果Tdは、115+273(ケルビン)である。高周波成分HPFは、5(ケルビン)である。係数Kは、1である。補正温度値WAEは、Td+K×HPF=115+273+5×1である。目標温度TGTは、118+273(ケルビン)である。差分DIFは、WAE-TGT=2である。デューティ値DUTYは、48である。通電パルス列が10パルスで表現される場合、デューティ値LDは、50である。この場合、通電パルスPsは、通電パルス列を表現する10パルスのうちの5個が通電パルスPsである。通電パルス列が100パルスで表現される場合、デューティ値LDは、48である。この場合、通電パルス列を表現する100パルスのうちの48個が通電パルスPsである。
【0168】
なお、温度推定部81は、AC電圧変動を考慮してもよい。
【0169】
AC電圧が100Vである場合、E1は400であり、R1は100Ωであるものとする。なお、デューティ値LDで示されるデューティ値は100%であるものとする。この場合、入力電力は、E1×E1/R1=1600(Watt)である。
【0170】
AC電圧が110Vである場合、E1は400×110/100=440であり、R1は100Ωであるものとする。なお、デューティ値LDで示されるデューティ値は100%であるものとする。この場合、入力電力は、E1×E1/R1=1936(Watt)である。
【0171】
AC電圧が90Vである場合、E1は400×90/100=360であり、R1は100Ωであるものとする。なお、デューティ値LDで示されるデューティ値は100%であるものとする。この場合、入力電力は、E1×E1/R1=1296(Watt)である。
【0172】
次に、温度センサ自体の異常、温度検出結果の伝送経路の断線、などの温度検出要素に故障が発生した場合の動作を説明する。
温度バイアス補正部92は、図7に示されるように、システムコントローラ13からプリセットバイアス値TPを取得する(ACT301)。
【0173】
更に、温度バイアス補正部92は、上記ACT211で温度推定部81が計算した温度推定結果ESTを取得する(ACT302)。
【0174】
そして、温度バイアス補正部92は、それら取得したプリセットバイアス値TPと温度推定結果ESTとを加算することで、バイアス補正温度値TBCを計算する(ACT303)。
【0175】
温度バイアス補正部92は、システムコントローラ13から図示しない制御線によりバイアス補正温度値TBCの算出動作の停止指令を受けたか否か判断する(ACT304)。バイアス補正温度値TBCの算出動作の停止指令を受けていない場合、処理は、ACT304からACT302に遷移する。温度バイアス補正部92は、バイアス補正温度値TBCの算出動作の停止指令を受けた場合、処理を終了する。なお、システムコントローラ13は、バイアス補正温度値TBCの算出動作の停止指令を温度バイアス補正部92に供給する代わりに、そこへの電源供給を停止させるものとしてもよい。このような構成とした場合、ACT304は不要となり、ACT303からACT302に遷移するものとなる。
【0176】
図5に示されるように、故障が発生しているならば、選択部85は、上記ACT303で計算されたバイアス補正温度値TBCを取得する(ACT114)。
【0177】
そして、選択部85は、この取得したバイアス補正温度値TBCを選択して、差分比較部86に出力する(ACT115)。
【0178】
以降のACT116乃至ACT121は、前述したACT107乃至ACT112と同様である。但し、ACT117における目標温度TGTとの差分を算出する対象は、上記ACT108では補正温度値WAEであったのに対して、選択部85から出力されたバイアス補正温度値TBCとなる。
【0179】
そして、ACT122において、ヒータ通電制御回路14の各部は、上記ACT113と同様、システムコントローラ13から図示しない制御線により動作停止指令を受けたか否か判断する。動作停止指令を受けていない場合、処理は、ACT122からACT114に遷移する。ヒータ通電制御回路14は、動作停止指令を受けた場合、処理を終了する。
【0180】
次に、ヒータ通電制御回路14から故障判断結果JRを受けたシステムコントローラ13の動作について説明する。
図16は、故障判断に係わるプロセッサ22の動作について説明するためのフローチャートである。この図16に示される動作は、画像形成装置1の電源がオンされると開始される。
【0181】
プロセッサ22は、ヒータ通電制御回路14に動作開始指令を送信する(ACT1)。即ち、プロセッサ22は、ヒータ通電制御回路14の動作を開始させる。
【0182】
そして、プロセッサ22は、ヒータ通電制御回路14の故障判断部91から故障判断結果JRを受信するのを待つ(ACT2)。
【0183】
故障判断結果JRを受信したならば、プロセッサ22は、故障判断結果JRが故障であるか否か確認する(ACT3)。故障が発生していない即ち通常時であれば(NO)、処理は、ACT3からACT2に遷移する。これに対して、故障が発生していれば(YES)、処理は、ACT3からACT4に遷移する。
【0184】
故障が発生している場合、プロセッサ22は、現在印刷中であるか否か判断する(ACT4)。印刷中でなければ(NO)、処理は、ACT4からACT5に遷移する。これに対して、印刷中であれば(YES)、処理は、ACT4からACT8に遷移する。
【0185】
先ず、印刷中でない場合について説明する。
この場合、プロセッサ22は、印刷動作を停止する(ACT5)。即ち、プロセッサ22は、搬送部19、画像形成部20及び定着器21を含む印刷動作に係わる各部の動作を停止させる。プロセッサ22は、印刷中でなければ、これ以降の印刷動作を禁止すると言うこともできる。
【0186】
また、プロセッサ22は、ヒータ通電制御回路14に動作停止指令を送信する(ACT6)。即ち、プロセッサ22は、ヒータ通電制御回路14の動作を終了させる。プロセッサ22は、これ以降のヒータ通電制御回路14の動作を禁止すると言うこともできる。
【0187】
そして、プロセッサ22は、故障発生を報知して(ACT7)、処理を終了する。プロセッサ22は、例えば、通信インタフェース12によりクラウド上のサーバ装置へ、故障発生を報知するためのエラー通知を送信する。このエラー通知は、温度センサ74及び温度検出結果Tdの伝送経路を含む温度検出要素に故障が発生したことを示すエラーコードと、当該画像形成装置1を特定するための機体IDとを含むことができる。このエラー通知を受信したサーバ装置は、自動的に、サービスマンによる当該画像形成装置1の点検修理を手配することができる。
【0188】
勿論、プロセッサ22は、これと共に、或いはこの代わりに、表示部15に、温度センサ74及び温度検出結果Tdの伝送経路を含む温度検出要素に故障が発生した旨のメッセージ又はそのことを示すエラーコードを表示することで、この故障発生をユーザに報知するようにしもよい。更に、画像形成装置1がスピーカを備えていれば、プロセッサ22は、この表示と合わせて、エラー音を発生させることができる。こうして故障発生の報知を受けたユーザは、サービスマンに対して点検修理を手配することができる。
【0189】
次に、印刷中であった場合について説明する。
この場合には、プロセッサ22は、印刷残数つまり未印刷の印刷枚数が規定枚数以下か否か判断する(ACT8)。
【0190】
プロセッサ22は、メモリ23に格納された印刷ジョブにおける印刷部数(ページセット数)、1部当たりの印刷枚数(ページ数)等の情報と、印刷済みの枚数とに基づいて、印刷残数を知ることができる。
【0191】
規定枚数は、補正温度値WAEの代わりにバイアス補正温度値TBCに基づく温度制御であっても、それ程、印字品質に影響を及ぼさない程度の数、例えば5枚等の少数である。補正温度値WAEの代わりにバイアス補正温度値TBCに基づく温度制御では、時間が経過するにつれて、補正温度値WAEに基づく温度制御に比較して、その精度が低下していく。そこで、バイアス補正温度値TBCに基づく温度制御は、温度制御の精度が余り低下しない期間に留めておくことが好ましい。印刷ジョブで規定される一つの印刷セットでは、それぞれ一定時間が掛かる1枚毎の印刷媒体Pへの印刷が繰り返すことから、経過時間は印刷枚数と表現することができる。そこで、本実施形態では、必要な温度制御の精度が得られる時間を、規定枚数により規定している。規定枚数は、必要される印字品質、画像形成部20の印字品質性能、使用される印刷媒体等の条件に基づいて決定された複数の値が予めメモリ23に記憶されることができる。プロセッサ22は、メモリ23に格納された印刷ジョブにおけるカラー印刷かモノクロ印刷かを示す情報、印刷に使用する印刷媒体Pを示す情報等の情報に基づいて、複数の規定枚数の内の一つを選択する。
【0192】
例えば、印刷済み枚数が5枚、印刷ジョブで示される印刷枚数が10枚、規定枚数が5枚である場合、プロセッサ22は、印刷残数は規定枚数以下であると判断する。このように印刷残数が規定枚数以下であれば(YES)、処理は、ACT8からACT9に遷移する。また、印刷済み枚数が5枚、印刷ジョブで示される印刷枚数が100枚、規定枚数が5枚であったとすると、プロセッサ22は、印刷残数は規定枚数を超えると判断する。このように印刷残数が規定枚数以下でないならば(NO)、処理は、ACT8からACT10に遷移する。
【0193】
印刷残数が規定枚数以下の場合、プロセッサ22は、印刷動作を継続する(ACT9)。そして、残りの印刷枚数の印刷が終了したならば、処理は、ACT9から上記ACT5に遷移して、印刷動作を停止することとなる。よって、確実に、印刷途中の印刷媒体Pは定着器21のヒートローラ71の位置で停止することなく印刷が完了され、排紙トレイ18に排紙される。プロセッサ22は、定着器21を用いた印刷動作を停止させる際、印刷媒体Pがヒートローラ71の位置で停止しないように制御すると言うことができる。
【0194】
また、印刷残数が規定枚数を超える場合、プロセッサ22は、残りの印刷枚数の内の規定枚数まで印刷動作を継続する(ACT10)。例えば、印刷済み枚数が5枚、印刷ジョブで示される印刷枚数が100枚、規定枚数が5枚であったとすると、プロセッサ22は、6枚目から10枚目まで印刷させる。なお、印刷高速化のために、印刷済みの印刷媒体Pの排紙を待たずに次の印刷媒体Pへの印刷動作が開始される画像形成装置1も存在する。このような画像形成装置1の場合には、プロセッサ22は、10枚目の印刷媒体Pが用紙トレイ17から取り出された段階で、次の11枚目の印刷媒体Pに対する印刷は開始しないように制御する。こうして、規定枚数に達した10枚目の印刷が終了したならば、処理は、ACT10から上記ACT5に遷移して、印刷動作を停止することとなる。よって、この場合も、確実に、印刷途中の印刷媒体Pは定着器21のヒートローラ71の位置で停止することなく印刷が完了され、排紙トレイ18に排紙される。
【0195】
なお、ACT8では、印刷残数が規定枚数以下か否か判断するものとしているが、規定枚数未満か否か判断するものとしてもよいことは勿論である。
【0196】
このように、印刷している最中に温度センサ74及び温度検出結果Tdの伝送経路を含む温度検出要素に故障が発生した場合、ヒータ通電制御回路14において、WAE制御用の温度推定結果ESTに基づいてその故障発生を検出し、温度推定結果ESTをプリセットバイアス値TPによりバイアス補正したバイアス補正温度値TBCに基づいて定着器21のヒートローラ71への通電を制御することで、画像形成装置1は、印刷動作を継続する。そして、画像形成装置1は、区切りの良い所で印刷を終了し、通信インタフェース12によりサーバ装置へ自動サービスマンコールを行ったり、表示部15によりユーザにエラー理由を表示したりする。印刷を終了する区切りの良い所とは、印刷途中の印刷媒体Pがヒートローラ71の位置で停止しない所である。
【0197】
なお、温度推定部81は、温度推定結果ESTの推定に当たり、外部リミット部88からのデューティ値LDを用いるようにしているが、デューティパルス変換部89からの通電パルスPsを用いるようにしてもよい。
【0198】
また、図7に示したバイアス補正温度値TBCの算出動作は、電源がオンされると開始するものとして説明したが、ACT105において故障判断結果JRが故障であると判断されたことに応じて開始するようにしても構わない。
【0199】
上記したように、画像形成装置1は、印刷媒体P上に形成されたトナー像を加熱して印刷媒体P上に定着させるヒートローラ71と、ヒートローラ71を加熱するヒータ73と、を有する定着器21と、温度制御装置(ヒータ通電制御回路14)とを備える。ヒータ通電制御回路14は、ヒータ73に電力を供給することにより、ヒータ73から熱が伝播するヒートローラ71の温度を制御する。ヒータ通電制御回路14は、ヒータへの通電に基づいてヒートローラ71の温度を推定する温度推定部81を備える。ヒータ通電制御回路14は、温度推定部81による温度推定結果ESTと、温度センサ74による制御対象であるヒートローラ71の温度検出結果Tdと、に基づいて、補正温度値WAEを算出する温度補正部としての高周波成分抽出部83及び係数加算部84を備える。ヒータ通電制御回路14は、温度推定結果ESTをプリセットバイアス値TPにより補正したバイアス補正温度値TBCを算出する温度バイアス補正部92と、温度推定結果ESTと温度検出結果Tdとの差分に基づいて、温度センサ74又は温度検出結果Tdの伝送経路についての故障判断をする故障判断部91と、この故障判断部91の判断結果に基づいて、補正温度値WAEまたはバイアス補正温度値TBCを選択する選択部85を備える。ヒータ通電制御回路14は、選択された補正温度値WAEまたはバイアス補正温度値TBCに基づいて、ヒータ73に供給する電力を制御するための通電パルスPsを出力する信号生成部としての差分比較部86、制御デューティ生成部87、外部リミット部88及びデューティパルス変換部89を備える。
【0200】
具体的には、選択部85は、故障判断部91からの故障判断結果JRが故障していないというものであれば、補正温度値WAEを選択し、故障しているというものであれば、バイアス補正温度値TBCを選択する。
【0201】
このような構成によると、温度制御装置は、温度センサ74又は温度検出結果Tdの伝送経路に故障が発生していない通常状態において、温度センサ74によるヒートローラ71の温度検出の応答性が悪い場合であっても、温度推定結果ESTと温度検出結果Tdとに基づく補正温度値WAEに基づいてヒートローラ71の表面温度を追従することができる。これにより、温度センサ74のコストを抑え、且つオーバーシュート及び温度リップルなどが生じることを防ぐことができる。そして、温度センサ74又は温度検出結果Tdの伝送経路に故障が発生した場合には、故障判断部91によりそのことを検知し、温度検出結果Tdに基づく補正温度値WAEに代えてバイアス補正温度値TBCに基づいて、つまり、正確でない温度センサ74からの温度検出結果Tdを無視して、ヒートローラ71の表面温度を追従する。よって、温度センサ74又は温度検出結果Tdの伝送経路に故障が発生したとしても、定着器温度の異常上昇を抑制することが可能となる。従って、定着器21が異常温度になることがないので、定着器21の部品の故障に導くような部品に対するストレスを与えない。
【0202】
また、画像形成装置1は、ヒータ73から熱が伝播するヒートローラ71の温度を検出し、温度検出結果Tdを出力する温度センサ74と、ヒータ通電制御回路14とに加えて、ヒータ通電制御回路14の故障判断部91の故障判断結果JRが故障であった場合に、定着器21を用いた画像形成動作つまり印刷動作が実行中でなければ、以降の印刷動作を禁止するシステムコントローラ13を備える。
【0203】
このような構成によると、画像形成装置1は、正確でない温度制御による印刷を防止することができる。
【0204】
これに対して、印刷ジョブで規定される一つの印刷セットつまり複数枚の印刷媒体Pに対する印刷を指示されているときに故障判断結果JRが故障であった場合には、システムコントローラ13は、印刷媒体Pがヒートローラ71の位置で停止しないように制御して、印刷動作を停止させる。
【0205】
このような構成によると、印刷媒体Pがヒートローラ71の位置で停止することがないので、ヒートローラ71の位置で停止した印刷媒体Pを取り除く手間が掛からない。また、ヒートローラ71にトナー滓が残ってしまうことを防止することができ、よって、トナー滓がそれ以降の印字品質を低下させてしまう恐れを無くすことができる。
【0206】
ここで、システムコントローラ13は、故障判断結果JRが故障であった場合に、印刷セットの残りの印刷枚数が予め決められた規定枚数以下であれば、印刷セットに対する印刷動作を継続した後、印刷動作を停止させる。
【0207】
このような構成によると、画像形成装置1は、残りの印刷枚数が少ない場合には、バイアス補正温度値TBCに基づくヒートローラ71の通電制御により印刷を継続することができるので、或る程度の品質を保ったまま、印刷を完了させることができる。
【0208】
これに対して、故障判断結果JRが故障であった場合に、印刷セットの残りの印刷枚数が規定枚数より多ければ、システムコントローラ13は、規定枚数までの印刷媒体Pに対する印刷動作を継続し、印刷セットの残りの印刷媒体Pに対する印刷動作は停止させる。
【0209】
このような構成によると、画像形成装置1は、残りの印刷枚数が多い場合には、バイアス補正温度値TBCに基づくヒートローラ71の通電制御により、規定枚数分は印刷を継続することができるので、或る程度の品質を保ったまま、或る程度の枚数の印刷を完了させることができる。
【0210】
また、画像形成装置1は、ネットワークを経由して外部機器であるサーバ装置と通信する通信インタフェース12を更に備え、システムコントローラ13は、故障判断結果JRが故障であった場合、通信インタフェース12によりサーバ装置へ、温度センサ74及び温度検出結果Tdの伝送経路を含む温度検出要素に故障が発生したことを示すエラーコードと、当該画像形成装置1を特定するための機体IDとを含む、故障発生を報知するエラー通知を送信する。
【0211】
このような構成によると、画像形成装置1は、サーバ装置にエラー通知を送信することで、それを受信したサーバ装置により自動的にサービスマンによる当該画像形成装置1の点検修理を手配することが可能となる。
【0212】
或いは、画像形成装置1は、表示部15を更に備えシステムコントローラ13は、故障判断結果JRが故障であった場合、表示部15に、温度センサ74及び温度検出結果Tdの伝送経路を含む温度検出要素に故障が発生した旨のメッセージ又はそのことを示すエラーコードを、故障発生のエラーとして表示させる。
【0213】
このような構成によると、画像形成装置1は、表示部15によりユーザに故障発生を報知することができ、この報知を確認したユーザは、サービスマンによる当該画像形成装置1の点検修理を手配することが可能となる。
【0214】
なお、信号生成部を構成する制御デューティ生成部87は、選択された補正温度値WAEまたはバイアス補正温度値TBCと、目標温度TGTと、に基づいて、デューティ値DUTYを生成し、同じく信号生成部を構成するデューティパルス変換部89は、デューティ値DUTYに基づいてヒータ73に供給する電力を制御するための通電パルスPsを出力する。温度推定部81は、デューティ値DUTYに基づいてヒートローラ71の温度を推定する。温度推定部81は、温度推定結果ESTの履歴と、デューティ値DUTYと、に基づいて、ヒートローラ71の温度を推定する。制御デューティ生成部87は、信号生成部を構成する差分比較部86によって算出した、目標温度TGTと温度推定結果EST及び温度検出結果Tdに基づく補正温度値WAEとの差分DIF、または、目標温度TGTと温度バイアス補正部92で温度推定結果ESTをプリセットバイアス値TPでバイアス補正したバイアス補正温度値TBCとの差分DIF、の何れかに基づいてデューティ値DUTYを算出する。
【0215】
このような構成によると、温度制御装置は、温度センサ74又は温度検出結果Tdの伝送経路に故障が発生していない場合、WAE制御に効果的なシンプルなフィードバック制御を実現し、フィードバック制御を高速化することができる。温度制御装置は、WAE制御及びWAE制御に効果的なフィードバック制御により、精度の高い温度コントロールを可能にする。これにより、温度制御装置は、温度センサ74のコストを抑え、且つ温度リップル等が生じることを防ぐことができる。さらに、温度制御装置は、デューティ値DUTYに基づいてヒートローラ71の温度を推定するので、通電パルスの周波数が高い場合であっても、パルスの変化を検出する仕組みを必要としない。そのため、温度制御装置は、高速サンプリングを必要としないので、処理負荷の増加を抑えることができる。したがって、温度制御装置は、安価なプロセッサで実現することができる。温度制御装置は、ファームウエア実装が容易である。また、温度センサ74又は温度検出結果Tdの伝送経路に故障が発生した場合、温度センサ74の温度検出結果Tdを使用しないで、限られた時間内ではあるが、ほぼ同様の効果を得ることができる。
【0216】
また、信号生成部を構成する外部リミット部88は、デューティ値DUTYを制限し、デューティパルス変換部89は、外部リミット部88による制限後のデューティ値に基づいて通電パルスPsを出力する。温度推定部81は、制限後のデューティ値に基づいてヒートローラ71の温度を推定する。
【0217】
このような構成によると、温度制御装置は、デューティ値DUTYを制限することにより、画像形成装置1の危険を回避することができる。
【0218】
なお、上述の温度制御装置は、画像形成装置1に適用されることに限定されない。温度制御装置は、熱を利用する種々の機器に適用可能である。例えば、温度制御装置は、トナーを熱溶融させるタイプの複写機、複合機、又は印刷機に適用可能である。温度制御装置は、温度を一定に保つ、又は徐々に変化させる炉、溶融炉から結晶を引き上げ成長させる単結晶材料製造機に適用可能である。温度制御装置は、温度によって発色を変えるカラーサーマルプリンタに適用可能である。温度制御装置は、合金を製造する溶解炉に適用可能である。複写機又はカラーサーマルプリンタであれば、印刷が綺麗で大量印刷しても色合いの経時変化が出ないなど印刷品質の向上が見込める。溶融炉関連では、温度管理が精密に行えることから、これにより製造される物の歩留まり向上、結晶品質の向上(結晶欠陥率の減少)、合金の性能向上などが見込める。
【0219】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0220】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0221】
1…画像形成装置、11…筐体、12…通信インタフェース、13…システムコントローラ、14…ヒータ通電制御回路、15…表示部、…操作インタフェース、17…用紙トレイ、18…排紙トレイ、19…搬送部、20…画像形成部、21…定着器、22…プロセッサ、23…メモリ、31…給紙搬送路、32…排紙搬送路、33…ピックアップローラ、41…プロセスユニット、42…露光器、43…転写機構、51…感光ドラム、52…帯電チャージャ、53…現像器、61…1次転写ベルト、62…2次転写対向ローラ、63…1次転写ローラ、64…2次転写ローラ、71…ヒートローラ、72…プレスローラ、73…ヒータ、74…温度センサ、81…温度推定部、82…推定履歴保持部、83…高周波成分抽出部、84…係数加算部、85…選択部、86…差分比較部、87…制御デューティ生成部、88…外部リミット部、89…デューティパルス変換部、90…電源回路、91…故障判断部、92…温度バイアス補正部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16