(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002607
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】感温センサー
(51)【国際特許分類】
G01K 11/06 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
G01K11/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102902
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】599140781
【氏名又は名称】株式会社ジークエスト
(74)【代理人】
【識別番号】100076093
【弁理士】
【氏名又は名称】藤吉 繁
(72)【発明者】
【氏名】小田代 健
(72)【発明者】
【氏名】荷口 みどり
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056UB01
(57)【要約】
【課題】
化学物質やワックスなどの融解現象を利用した従来の温度感知シールでは、設定温度超過の事実は、この温度感知シールの設置場所において、直接目視しなければ知ることが出来ず、遠隔地や高所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下にある場所などでの温度管理は、この従来の温度感知シールでは無理だった。
【手段】
それぞれリード線の一端が接続された一対の導電性金属板が、予め設定された温度で固体から液体に相変化する固形状かつ非導電性の熱融解物質片を挟み込んだ状態で、絶縁性の外殻内に、この外殻の壁面内側との間に介装されたバネによって相互に接近する方向に付勢されつつ収容せしめて感温センサーを構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれリード線の一端が接続された一対の導電性金属板が、予め設定された温度で固体から液体に相変化する固形状かつ非導電性の熱融解物質片を挟み込んだ状態で、絶縁性の外殻内に、この外殻の壁面内側との間に介装されたバネによって相互に接近する方向に付勢されつつ収容されていることを特徴とした感温センサー。
【請求項2】
外殻の壁面内側と導電性金属板との間に介装されるバネがコイルバネであることを特徴とする請求項1記載の感温センサー。
【請求項3】
熱融解物質片が炭化水素を主成分とするワックスであることを特徴とする請求項1記載の感温センサー。
【請求項4】
バネが接する側の導電性金属板の周縁に上方に立上がった凸条が形成されていることを特徴とする請求項1記載の感温センサー。
【請求項5】
外殻が箱型を呈していることを特徴とする請求項1記載の感温センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は感温センサー、詳しくは、温度管理を必要とする各種機器類に取り付け、あらかじめ設定された温度に達したとき、その事実を不可逆的に表示する感温センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種機器類の温度管理は、機器類の安定的な稼動の為に重要であることは言うまでもなく、あらかじめ設定された温度に達したとき、発色現象によってその事実を表示する温度感知シールを対象機器類に貼付して温度管理の用に供することは、従来から広く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在主流となっている温度感知シールは、あらかじめ設定された設定温度で融解して固体から液体に変化する化学物質やワックスなどの融解物質を薄い紙に浸み込ませたシート状の不透明な感温材を、一方の面に色彩が施された紙の彩色面の上に重ね合せ、この融解物質の融解現象によって、それまで外部から遮蔽され見えなかった彩色が施された紙の彩色面が透けて見える様にすることにより、設定温度超過の事実を不可逆的に表示するものであり、各種機器類の所望部位に簡単に貼付出来、狭いスペースにも適用可能で、電源等を必要とせず、安価であるので、あらゆる産業界において広く用いられている。
【0006】
しかし、この温度感知シールによる温度管理の場合、これを設置した場所において直接目視しなければ設定温度超過の事実を知ることが出来ず、遠隔地や高い場所、狭隘箇所、あるいは人体に有害な環境下にある場所などでの温度管理は、この温度感知シールでは無理であった。
【0007】
設置個所の温度変化を電気的に感知し、電気信号に変え、外部に伝えられる様にするなら、遠隔地や高い場所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下にある場所などでの温度感知も可能となるが、その為には、発色現象を用いた上述の温度感知シールよりはるかに複雑な構造のものを必要とし、それに伴い製造コストも上昇するので、安価なことが大きなメリットである従来の温度感知シールの代替には到底なり得なかった。
【0008】
本発明者は、遠隔地や高い場所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下など、従来の温度感知シールを用いることが困難な場所でも、低コストかつ高精度で不可逆的な温度感知が可能となる感温センサーを実現すべく鋭意研究を行った結果、従来の温度感知シールと同等の手軽さで設置出来、感知結果を離れた場所でも知ることが出来る画期的な感温センサーを開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
それぞれリード線の一端が接続された一対の導電性金属板を、予め設定された温度で固体から液体に相変化する固形状かつ非導電性の熱融解物質片を挟み込んだ状態で、絶縁性の外殻内に、この外殻の壁面内側との間に介装されたバネによって相互に接近する方向に付勢されつつ収容することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
温度測定しようとする機器類の所望位置に取り付けたり、所望箇所に載置すると共に、接続されているリード線を所望の観測地点まで延設し、観測地点に電球などの表示手段を配置して使用に供するものであり、機器類の取り付け位置や載置箇所があらかじめ設定された設定温度を超えると、一対の導電性金属板の間に挟み込まれている熱融解物質片は融解して液状化するが、一対の導電性金属板はバネによって相互に接近する方向に付勢されているので、熱融解物質片は液状化すると同時に一対の導電性金属板の間から強制的に押し出され、一対の導電性金属板はバネの押圧力によって相互に密着し、両者は電気的に接続される。
従って、一対の導電性金属板にそれぞれ接続されている一対のリード線が導通し、観測地点において電球の点灯などにより設定温度超過の事実を表示する。
【0011】
なお、この感温センサーの設置箇所の温度が設定温度超過後に設定温度以下に低下したとしても、一対の導電性金属板のバネによる接合状態はそのまま維持されるので、設定温度超過の事実はそのまま不可逆的に表示され続ける。
又、一対の導電性金属板の接合はバネによるものなので、この感温センサーに振動が加わったとしても、接合状態は安定的に維持される。
この様に、この感温センサーにおいては、バネによる一対の導電性金属板の接合という単純だが確実な手段を用いているので、設置個所の設定温度超過の事実を正確、確実かつ安定的に感知し、電気信号として取り出すことが出来、遠隔地や高所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下など、従来の温度感知シールを用いることが困難な場所でも低コストかつ高精度で不可逆的な温度感知が実現出来るすぐれた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明に係る感温センサーの一実施例の拡大横断面図。
【
図2】同じく、その主要構成要素である導電性金属板1と熱融解物質片2とバネ6の相互の位置関係を説明する為、外殻4の一部を切欠いて描いた拡大斜視図。
【
図3】同じく、導電性金属板1の他の例を示した拡大斜視図。
【
図4】同じく、熱融解性物質片2が融解し、導電性金属板1、1同士が接合し、回路が形成された状態の拡大横断面図。
【
図5】一対の導電性金属板1、1がそれぞれ別々のバネ6.6によって押圧されている実施例の拡大横断面図。
【
図6】導電性金属板1を押圧するバネとして板バネ7を用いた実施例の拡大横断面図。
【
図7】バネ6によって押圧される導電性金属板1の周縁に上方立上り辺8が形成されている実施例の拡大横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
それぞれリード線の一端が接続された一対の導電性金属板を、予め設定された温度で固体から液体に相変化する固形状かつ非導電性の熱融解物質片を挟み込んだ状態で、絶縁性の外殻内に、この外殻の壁面内側との間に介装されたバネによって相互に接近する方向に付勢させつつ収容せしめた点に最大の特徴が存する。
【実施例0014】
図1乃至
図7を参照しながら、この発明に係る感温センサーの実施例について説明する。
図中1は小径の円盤状をなした導電性金属板であり、リード線9の一端が接続されており、このリード線9は観測地点まで延設され、観測地点に設置された電球10などの表示手段11に電気的に接続されている。なお、この実施例においては、
図2に示す様に、導電性金属板1は円盤状を呈しているが、
図3に示す様に、板状やブロック状でもよく、その形状は問わない。
【0015】
そして、これら一対の導電性金属板1、1の間には、板状をなした非導電性の固形状の熱融解物質片2が挟み込まれており、
図1に示す様に、導電性金属板1、熱融解物質片2、導電性金属板1の順で重ね合わされ、感温体3を構成している。
【0016】
熱融解物質片3に用いる熱融解物質とは、予め設定された温度で融解して固体から液体に相変化する物質であり、直鎖状炭化水素を主成分とするワックスやトリラウリン、ミリスチン酸、ベヘン酸、ステアリン酸アミドなどの化学物質がこれに該当し、従来の感温ラベルに用いられている熱融解物質と基本的に同じである。
そして、一対の導電性金属板1、1と熱融解物質片2とからなるこの感温体3は、
図1に示す様に、箱型を呈した絶縁性の外殻4内に、その壁面内側5との間に介装されたバネ6によって、相互に接近する方向に付勢された状態で収容されている。
なお、
図1及び
図2に示すこの実施例においては、バネ6はコイルバネを用いたが、必ずしもコイルバネを用いる必要はなく、
図6に示すものの様に、板バネ7を用いても良く、バネの種類は問わない。又、
図1及び
図2に示す実施例においては、バネ6は一方の導電性金属板1と外殻4の内側壁面5との間のみに介装されているが、
図5に示すものの様に、両方の導電性金属板1と壁面内側5との間に介装しても良い。
更に、
図7に示すものの様に、バネ6によって押圧される導電性金属板1のバネ6が接触する側の上面周縁に上方に立上った凸条8を形成しても良く、そうすれば、何らかの理由でバネ6が導電性金属板1からズレたり、はずれてしまうことを確実に阻止することが出来る。
【0017】
この実施例は上記の通りの構成を有するものであり、温度測定しようとする機器類の所望位置に取り付けたり、所望箇所に載置すると共に、接続されているリード線9を所望の観測地点まで延設し、観測地点に電球10などの表示手段11を配置して使用に供するものであり、機器類の取り付け位置や載置箇所があらかじめ設定された設定温度を超えると、一対の導電性金属板1、1の間に挟み込まれている熱融解物質片2は融解して液状化するが、一対の導電性金属板1、1はバネ6によって相互に接近する方向に付勢されているので、熱融解物質片2は液状化すると同時に一対の導電性金属板1、1の間から強制的に押し出され、
図4に示す様に、一対の導電性金属板1、1はバネ6によって強固に密着し、両者は電気的に接続される。
従って、一対の導電性金属板1、1にそれぞれ接続されている一対のリード線9が導通し、観測地点において電球10の点灯などにより設定温度超過の事実を表示する。
【0018】
なお、この感温センサーの設置箇所の温度が設定温度超過後に設定温度以下に低下したとしても、一対の導電性金属板1、1のバネ6による接合状態はそのまま強固に維持されるので、設定温度超過の事実はそのまま不可逆的に表示され続ける。
又、一対の導電性金属板1、1の接合はバネ6によるものなので、この感温センサーに振動が加わったとしても、接合状態は安定的に維持される。
この様に、この感温センサーにおいては、バネ6による一対の導電性金属板1、1の接合という単純だが確実な手段を用いているので、設置個所の設定温度超過の事実を正確、確実かつ安定的に感知し、電気信号として取り出すことが出来、遠隔地や高所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下など、従来の温度感知シールを用いることが困難な場所でも低コストかつ高精度で不可逆的な温度感知が実現出来るすぐれた効果を有する。