(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026082
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20250214BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20250214BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20250214BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F27/28 185
H02J50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131445
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】大槻 純也
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044DA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイルユニットの薄型化及び効率的な電力伝送を実現するコイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体を提供する。
【解決手段】ワイヤレス電力伝送システムにおいて、コイルユニット5は、中心軸線Cの周りで渦巻形状に形成されたコイル10と、コイルに対向する表側面20aと、表側面とは反対側の面である裏側面20bと、を有する第1シールド部材20と、コイル1の径方向の外方及び/又は内方に、第1シールド部材の表側面に対向して配置された第2シールド部材30とを、第3方向D3にこの順で積層している。第1シールド部材及び第2シールド部材は、磁性を有する。第1シールド部材は、複数の第1小片20Pに分割されている。軸方向に見て、第1シールド部材の隣り合う第1小片の間に間隙Gが形成されている。第2シールド部材は、軸方向に見て第1シールド部材の間隙の少なくとも一部と重なっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の中心軸線の周りで渦巻形状に形成されたコイルと、
前記コイルに対向する表側面と、前記表側面とは反対側の面である裏側面と、を有する第1シールド部材と、
前記コイルの径方向の外方及び/又は内方に、前記第1シールド部材の前記表側面に対向して配置された第2シールド部材と、
を備え、
前記第1シールド部材及び前記第2シールド部材は、磁性を有し、
前記第1シールド部材は、複数の第1小片に分割され、
軸方向に見て、前記第1シールド部材の隣り合う第1小片の間に間隙が形成され、
軸方向に見て、前記第2シールド部材は、前記第1シールド部材の前記間隙の少なくとも一部と重なっている、コイルユニット。
【請求項2】
前記第2シールド部材は、前記コイルの径方向の外方に配置され、軸方向に見て、前記コイルの外方に存在する前記間隙の少なくとも80%以上を覆っている、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項3】
前記第2シールド部材は、前記コイルの径方向の内方に配置され、軸方向に見て、前記コイルの内方に存在する前記間隙の少なくとも80%以上を覆っている、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項4】
前記第1シールド部材及び前記第2シールド部材はフェライトを含む、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項5】
前記第1シールド部材及び前記第2シールド部材の比透磁率が、500以上である、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項6】
前記第1シールド部材の前記裏側面に対向して配置された第3シールド部材を更に備え、
前記コイルと前記第3シールド部材との距離が30mm以下である、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項7】
前記第1シールド部材の前記裏側面に対向して配置された第3シールド部材を更に備え、
前記第1シールド部材と前記第3シールド部材との距離が25mm以下である、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項8】
前記コイルは、径方向に配列され且つ一方向に延びる複数の直線部から成る直線部群を含み、
軸方向に見て、前記間隙の少なくとも一部が、直線状に延びて前記直線部群の少なくとも一部を横断している、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項9】
軸方向に見て、前記直線部と前記間隙の少なくとも一部とが成す角度が、80°以上100°以下である、請求項8に記載のコイルユニット。
【請求項10】
前記コイルは、径方向に配列され且つ周方向に沿って延びる複数の曲線部から成る曲線部群を含み、
軸方向に見て、前記間隙の少なくとも一部が、直線状に延びて前記曲線部群の少なくとも一部を横断している、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項11】
軸方向に見て、前記曲線部の接線と前記間隙の少なくとも一部とが成す角度が、80°以上100°以下である、請求項10に記載のコイルユニット。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のコイルユニットを備える、送電装置。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のコイルユニットを備える、受電装置。
【請求項14】
送電装置と、受電装置とを備え、
前記送電装置及び前記受電装置のうちの少なくともいずれかが、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のコイルユニットを備える、電力伝送システム。
【請求項15】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のコイルユニットを備える、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送電装置から受電装置へ非接触で電力を伝送するワイヤレス電力伝送システムが普及しつつある。特許文献1には、ワイヤレス電力伝送システムの送電装置及び受電装置で用いられるコイルユニットが開示されている。コイルユニットは、渦巻状に形成されたコイルを備えている。送電装置のコイルに電力を供給すると、当該コイルの周りに磁界が生じる。この磁界の影響により、受電装置のコイルに電流が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなワイヤレス電力伝送システムにおいて、コイルユニットの性能を向上させて効率的な電力伝送を行うことが望まれている。同時に、コイルユニットの薄型化及び軽量化が望まれている。
【0005】
本開示の課題は、コイルユニットの薄型化及び効率的な電力伝送を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]~[15]に関連する。
【0007】
[1]
任意の中心軸線の周りで渦巻形状に形成されたコイルと、
前記コイルに対向する表側面と、前記表側面とは反対側の面である裏側面と、を有する第1シールド部材と、
前記コイルの径方向の外方及び/又は内方に、前記第1シールド部材の前記表側面に対向して配置された第2シールド部材と、
を備え、
前記第1シールド部材及び前記第2シールド部材は、磁性を有し、
前記第1シールド部材は、複数の第1小片に分割され、
軸方向に見て、前記第1シールド部材の隣り合う第1小片の間に間隙が形成され、
軸方向に見て、前記第2シールド部材は、前記第1シールド部材の前記間隙の少なくとも一部と重なっている、コイルユニット。
【0008】
[2]
前記第2シールド部材は、前記コイルの径方向の外方に配置され、軸方向に見て、前記コイルの外方に存在する前記間隙の少なくとも80%以上を覆っている、[1]に記載のコイルユニット。
【0009】
[3]
前記第2シールド部材は、前記コイルの径方向の内方に配置され、軸方向に見て、前記コイルの内方に存在する前記間隙の少なくとも80%以上を覆っている[1]又は[2]に記載のコイルユニット。
【0010】
[4]
前記第1シールド部材及び前記第2シールド部材はフェライトを含む、[1]~[3]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0011】
[5]
前記第1シールド部材及び前記第2シールド部材の比透磁率が、500以上である、[1]~[4]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0012】
[6]
前記第1シールド部材の前記裏側面に対向して配置された第3シールド部材を更に備え、
前記コイルと前記第3シールド部材との距離が30mm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0013】
[7]
前記第1シールド部材の前記裏側面に対向して配置された第3シールド部材を更に備え、
前記第1シールド部材と前記第3シールド部材との距離が25mm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0014】
[8]
前記コイルは、径方向に配列され且つ一方向に延びる複数の直線部から成る直線部群を含み、
軸方向に見て、前記間隙の少なくとも一部が、直線状に延びて前記直線部群の少なくとも一部を横断している、[1]~[7]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0015】
[9]
軸方向に見て、前記直線部と前記間隙の少なくとも一部とが成す角度が、80°以上100°以下である、[8]に記載のコイルユニット。
【0016】
[10]
前記コイルは、径方向に配列され且つ周方向に沿って延びる複数の曲線部から成る曲線部群を含み、
軸方向に見て、前記間隙の少なくとも一部が、直線状に延びて前記曲線部群の少なくとも一部を横断している、[1]~[7]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0017】
[11]
軸方向に見て、前記曲線部の接線と前記間隙の少なくとも一部とが成す角度が、80°以上100°以下である、[10]に記載のコイルユニット。
【0018】
[12]
[1]~[11]のいずれかに記載のコイルユニットを備える、送電装置。
【0019】
[13]
[1]~[11]のいずれかに記載のコイルユニットを備える、受電装置。
【0020】
[14]
送電装置と、受電装置とを備え、
前記送電装置及び前記受電装置のうちの少なくともいずれかが、[1]~[11]のいずれかに記載のコイルユニットを備える、電力伝送システム。
【0021】
[15]
[1]~[11]のいずれかに記載のコイルユニットを備える、移動体。
【発明の効果】
【0022】
本開示の一実施の形態によれば、コイルユニットの薄型化及び効率的な電力伝送を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るコイルユニットが適用され得るワイヤレス電力伝送システムを概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態に係るコイルユニットの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿ったコイユニットの断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に対応する図であって、コイルユニットの変形例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、実施例1及び比較例1の測定結果を示す表である。
【
図7】
図7は、実施例2及び比較例2の送電コイルユニットの構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施例2及び比較例2の伝送最大効率を示す表である。
【0024】
以下、図面を参照して一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0025】
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」などの用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば「シート」は、フィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0026】
図1は、一実施の形態に係るコイルユニット5が適用されるワイヤレス電力伝送システムSを概略的に示す。まず、ワイヤレス電力伝送システムS(以下、電力伝送システムSと略す。)について
図1を参照しつつ説明する。
【0027】
<ワイヤレス電力伝送システム>
電力伝送システムSは、送電装置1と、受電装置2とを備える。送電装置1は、コイルユニット5と、高周波電流供給部1Aとを含む。送電装置1におけるコイルユニット5は、送電コイルユニットとして機能する。高周波電流供給部1Aは、送電コイルユニットとしてのコイルユニット5に高周波電流を供給する。
【0028】
受電装置2は、コイルユニット5と、変換部2Aとを含む。受電装置2におけるコイルユニット5は、受電コイルユニットとして機能する。変換部2Aは、コイルユニット5で生じる高周波電流を整形する。変換部2Aは、高周波電流を直流電流に変換する整流回路などを有する。変換部2Aは、例えば複数のダイオードを含む全波整流回路と、平滑化コンデンサーと、を備えてもよい。
【0029】
本実施の形態では、送電装置1及び受電装置2のそれぞれがコイルユニット5を含む。ただし、送電装置1及び受電装置2のうちの一方のみにコイルユニット5が用いられ、他方には異なる形式のコイルユニットが用いられてもよい。
【0030】
送電装置1から受電装置2にワイヤレス(非接触)で電力を伝送する際には、送電装置1が、高周波電流供給部1Aから送電コイルユニットとしてのコイルユニット5に所定の周波数の高周波電流を供給する。この際、コイルユニット5には、電磁誘導により磁界が生じる。そして、この磁界の影響で、受電装置2では、受電コイルユニットとしてのコイルユニット5に高周波電流が生じる。すなわち、受電装置2は送電装置1から磁界を受信して又は送電装置1での磁界の影響を受けて、電磁誘導により高周波電流を通流させる。変換部2Aは、この高周波電流を直流電流に変換し、変換した直流電流を例えば図示しないバッテリに供給する。
【0031】
図1に示す電力伝送システムSは、電力伝送方式として、磁界共鳴方式を採用している。ただし、本実施の形態に係るコイルユニット5は、電磁誘導方式の電力伝送システムで用いられてもよい。また、電力伝送システムSは、電気自動車にワイヤレスで電力を伝送するシステムとして構成される。この場合、送電装置1は、道路、駐車場などに設置される。受電装置2は、電気自動車に設置される。
【0032】
ただし、電力伝送システムSの用途は、電気自動車への電力伝送に限られるものではない。例えば、電力伝送システムSは、ドローンなどの飛行体、ロボットへの電力伝送に用いられてもよい。また、電力伝送システムSは、海中における潜水艇や、探査ロボットへの電力伝送に用いられてもよい。このように、電力伝送システムSは、電気自動車、飛行体、ロボット、潜水艇等、様々な移動体への電力伝送に用いられ得る。また、コイルユニット5の用途は、ワイヤレス電力伝送システムに限られない。例えば、コイルユニット5は、トランス、DC-DCコンバータ、アンテナなどに用いられてもよい。
【0033】
以下、本実施の形態に係るコイルユニット5について説明する。
【0034】
<コイルユニット>
以下、本実施の形態に係るコイルユニット5について説明する。
図2は、コイルユニット5の斜視図である。
図3は、
図2に示すコイルユニット5のIII-III線に沿った断面図である。
図4は、
図2に示すコイルユニット5の平面図である。ただし、
図4において、後述する熱伝導層50及び絶縁層55の図示が省略されている。また、
図4において、理解を容易にするため、後述するコイル10及び第2シールド部材30にハッチングが付されているが、これらのハッチングはコイル10及び第2シールド部材30の断面を示すものではない。
【0035】
図2及び
図3に示すように、コイルユニット5は、コイル10と、第1シールド部材20と、第2シールド部材30と、を備えている。図示された例では、コイルユニット5は、更に、第3シールド部材40と、熱伝導層50と、絶縁層55と、第1接続端子61と、第2接続端子62と、を備えている。
図3に示すように、第3シールド部材40、絶縁層55、第1シールド部材20、熱伝導層50、並びに、コイル10及び第2シールド部材30は、第3方向D3にこの順で積層されている。
【0036】
コイルユニット5及びその構成要素は、それぞれ、第3方向D3を向く表側面と、表側面とは反対側の裏側面とを有する。コイル10は、第1シールド部材20に対面する裏側面10bと、裏側面10bとは反対側の表側面10aと、を有する。コイルユニット5及びその構成要素について用いる「表側」及び「裏側」の用語は、それぞれ、表側面10aが向く方向と同じ方向を向く側、及び、裏側面10bが向く方向と同じ方向を向く側、を意味するものとする。
図2乃至
図4に示す例では、コイル10がコイルユニット5の表側面を形成し、第3シールド部材40がコイルユニット5の裏側面を形成している。
【0037】
(コイル)
コイル10は、
図2及び
図4に示すように渦巻形状である。コイル10は、導電材料から形成される。図示された例では、コイル10は銅を含む。具体的には、コイル10は、銅から形成される。ただし、コイル10は、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等で形成されてもよい。
【0038】
コイル10は板状である。
図3に示すように、コイル10が渦巻形状に周回する方向に直交する方向でのコイル10の断面形状は、矩形状である。
【0039】
図2乃至
図4に示す符号Cは、コイル10の中心軸線を示している。中心軸線Cは、コイル10の渦巻形状の中心を通る。言い換えると、コイル10は、中心軸線Cの周りで渦巻形状をなすように形成されている。なお、本開示で言う渦巻形状とは、螺旋状に巻いた平面曲線の形を意味する。ここで言う平面曲線には、図示のような折れ線状に曲がりつつ繰り返し周回する平面パターンも含む。また、言い換えると、渦巻形状とは、旋回するにつれて中心から遠ざかる(あるいは旋回するにつれて中心に近づく)平面曲線の形を意味する。
【0040】
以下、「軸方向」とは、中心軸線C上を延びる方向又は中心軸線Cと平行な方向を意味する。上述した第3方向D3は、軸方向に沿った方向である。また、「径方向」とは、中心軸線C上の任意の点を中心として中心軸線Cと直交する平面上に描かれた円の半径方向を意味する。また、コイル10及びこれを構成するターン部10nの径方向の内方とは、当該径方向において中心軸線Cに近づく方向を意味する。また、コイル10及びターン部10nの径方向の外方とは、当該径方向において中心軸線Cから離れる方向を意味する。
【0041】
コイル10は、複数のターン部10nにより渦巻形状をなす導電体10Eを有する。コイル10の複数のターン部10nは、渦巻形状の中心軸線Cに直交する方向に配列される。詳しくは、当該複数のターン部10nは、渦巻形状の中心軸線Cから径方向の外方に向かって中心軸線Cから次第に離れるように接続される。これにより渦巻形状が形成される。
【0042】
ターン部10nは、基本的には線状の導体部分が環状をなさずに中心軸線Cの周りを360度周回する形状である。いわゆる平面コイルである場合には、ターン部10nの両端部は、径方向にずれる。複数のターン部10nでは、或るターン部10nの径方向の外方の端部に他のターン部10nの径方向の内方の端部が接続し、他のターン部10nが中心軸線Cから離れるように延びていく。図示された例では、コイル10は、ターン部101~108を有する。複数のターン部10nのうちの中心軸線Cに最も近いものが、ターン部101である。複数のターン部10nのうちの中心軸線Cから最も遠いものが、ターン部108である。以下において複数のターン部10nのそれぞれに共通となる事項を説明する際には、基本的に、ターン部10nと称す。
【0043】
図示された例では、ターン部10nが全体として四角形状をなすように周回する。ただし、ターン部10nは、四角形状以外の多角形状(例えば、六角形状、八角形状、十二角形状)や、円形状をなすように周回する形状でもよい。
【0044】
ここで、中心軸線Cは、本開示では次のようにして定められる。まず、最内周のターン部101の径方向の内方の端部から最内周のターン部101と相似の形状の線状の仮想ターン部を径方向の内方に渦巻形状をなすように順次描画していく。そして、直径1cm内に収まる仮想ターン部が描画できるまで描画を継続する。そして、直径1cm内に収まる仮想ターン部の径方向の内方の領域を、渦巻形状の周方向及び径方向に直交する方向に通過する線が、中心軸線Cとして定められる。
【0045】
上述したように、図示された例では、ターン部10nが全体として四角形状をなすように周回する。各ターン部10nは、第1~第4直線部11~14を有する。第1~第4直線部11~14は、中心軸線Cを中心とする円の周方向に沿って、この順で接続している。第1直線部11及び第3直線部13は、第1方向D1に沿って延びる。第2直線部12及び第4直線部14は、第2方向D2に沿って延びる。第1方向D1及び第2方向D2は、軸方向と直交する平面に沿った方向である。第2方向D2は、第1方向D1と交差する方向である。図示された例では、第2方向D2は第1方向D1と直交しているが、これに限られない。
【0046】
複数のターン部101~108の第1直線部11が第1直線部群11Fを形成する。また、複数のターン部101~108の第2直線部12が第2直線部群12Fを形成する。また、複数のターン部101~108の第3直線部13が第3直線部群13Fを形成する。また、複数のターン部101~108の第4直線部14が第4直線部群14Fを形成する。
【0047】
第1直線部群11Fと第3直線部群13Fとの間には、中心軸線Cが位置している。第2直線部群12Fと第4直線部群14Fとの間には、中心軸線Cが位置している。第2直線部群12Fは、第1直線部群11Fの一端と第3直線部群13Fの一端との間に位置している。第4直線部群14Fは、第1直線部群11Fの他端と第3直線部群13Fの他端との間に位置している。
【0048】
図示された例では、周方向に隣り合う直線部11,12;12,13;13,14;14,11は、それぞれ、周方向に沿って湾曲する第1~第4曲線部15~18によって接続されている。複数のターン部101~108の第1曲線部15が第1曲線部群15Fを形成する。また、複数のターン部101~108の第2曲線部16が第2曲線部群16Fを形成する。また、複数のターン部101~108の第3曲線部17が第3曲線部群17Fを形成する。また、複数のターン部101~108の第4曲線部18が第4曲線部群18Fを形成する。
【0049】
コイル10は、一例として銅板やアルミ板等の金属板から渦巻形状に打ち抜かれて形成される。ただし、コイル10は、銅箔やアルミ箔等の金属箔を渦巻形状にエッチングすることでも形成され得る。
【0050】
コイル10の厚さ(導電体10Eの厚さ)は、コイル10の軸方向に沿って測定される。コイル10の厚さ(導電体10Eの厚さ)は、例えば0.1mm以上1.0mm以下でもよく、0.2mm以上0.7mm以下でもよく、0.3mm以上0.4mm以下でもよい。
【0051】
また、コイル10の半径(中心軸線Cから径方向で最も離れた部分までの距離)は80mm以上でもよく、80mm以上450mm以下でもよい。また、断面形状が矩形となるコイル10(導電体10E)のアスペクト比は、コイル10(導電体10E)の線幅(径方向での幅)をコイル10(導電体10E)の厚さで割ることにより定められる。コイル10(導電体10E)のアスペクト比は、2以上12以下でもよいし、3以上10以下でもよい。
【0052】
導電体10Eの厚さの測定は、コイルユニット5を軸方向に切断して導電体10Eを露出させた断面において、導電体10Eの各部を定規などで測定することにより行ってもよいし、断面画像の解析で行ってもよい。また、コイルユニット5からコイル10を取り出して、導電体10Eの厚さを、定規、ノギス等で測定してもよい。同様に、コイルユニット5の他の部分の寸法も、その断面を定規などで測定することにより行ってもよいし、断面画像の解析で行ってもよい。
【0053】
(第1シールド部材)
第1シールド部材20は、磁界の透過及び/又は漏れ磁界の抑制のために設けられる。第1シールド部材20は、コイル10の裏側に配置されている。第1シールド部材20は、第3シールド部材40とコイル10との間に設けられている。
【0054】
第1シールド部材20は、全体として平板状に形成され、コイル10の軸方向に垂直な面に沿って拡がっている。第1シールド部材20は、軸方向に見て、その外縁20eがコイル10の外側に位置する大きさを有している。第1シールド部材20の表側面20aは、コイル10に対向する。第1シールド部材20の裏側面20bは、第3シールド部材40に対向する。
【0055】
第1シールド部材20は磁性体を含む。これにより、第1シールド部材20は、コイル10において中心軸線Cに対して全方向に広がるように生じる磁界(磁力線)を、中心軸線C側に配向することができる。これにより、コイルユニット5の磁気効率を高めることができる。また、第1シールド部材20によって、磁力線の周辺部品への到達を抑制することができる。言い換えると、第1シールド部材20によって、電流の発生に寄与しない漏れ磁界が抑制される。
【0056】
第1シールド部材20は好ましくは軟磁性体を含む。より具体的には、第1シールド部材20はフェライトを含む、好ましくはソフトフェライトを含む。また、第1シールド部材20は、ナノ結晶磁性体を含んでもよい。
【0057】
第1シールド部材20の比透磁率は、500以上でもよく、1000以上でもよい。第1シールド部材20の比透磁率は、500以上3000以下でもよいし、1000以上3000以下でもよい。なお、本開示における比透磁率は、周波数85kHzで、環境温度23度で測定した際の値である。
【0058】
図示された例では、第1シールド部材20は、複数の第1小片20Pに分割されている。言い換えると、第1シールド部材20は、同一平面内に配置された複数の第1小片20Pを含む。軸方向に見た各第1小片20Pの寸法は、150mm以下×150mm以下であってよい。第1シールド部材20を複数の第1小片20Pで構成することにより、寸法の大きな第1シールド部材20の形成が容易になる。
【0059】
図示された例では、各第1小片20Pは、三角形状または四角形状の平面形状を有するが、これに限られない。第1小片20Pの平面形状としては、三角形状や四角形状以外の多角形状や円形状など、任意の形状を採用可能である。
【0060】
隣り合う第1小片20P,20Pの間には、間隙Gが形成されている。間隙Gの幅は任意であるが、第1小片20Pの製造公差を考慮すると、間隙Gの幅は1mm以上であることが好ましい。また、間隙Gを通じた磁力線の透過を抑制する観点から、間隙Gの幅は6mm以下であることが好ましい。
【0061】
図示された例では、第1シールド部材20に形成された間隙Gの一部は、直線状に延びて、第1直線部群11Fの少なくとも一部を横断している。言い換えると、当該間隙Gは、第1直線部11と平行に延びていない。これにより、第1直線部11の周囲に形成される磁力線が当該間隙Gを通じて第3シールド部材40に到達することが、抑制される。これにより、第1直線部11の周囲に形成される磁力線によって第3シールド部材40に渦電流が発生することを、抑制することができる。このことは、コイルユニット5の磁気効率のさらなる向上に寄与する。
【0062】
同様に、図示された例では、第1シールド部材20に形成された間隙Gの他の一部は、直線状に延びて、第2~第4直線部群12F~14Fの少なくとも一部を横断している。これにより、第2~第4直線部12~14の周囲に形成される磁力線が当該間隙Gを通じて第3シールド部材40に到達することが、抑制される。これにより、第2~第4直線部12~14の周囲に形成される磁力線によって第3シールド部材40に渦電流が発生することを、抑制することができる。このことは、コイルユニット5の磁気効率のさらなる向上に寄与する。
【0063】
軸方向に見て、第1~第4直線部11~14と、当該直線部11~14と交差する間隙Gとがなす角度は、例えば80°~100°であってよい。この場合、第1~第4直線部11~14の周囲に形成される磁力線によって第3シールド部材40に渦電流が発生することを、効果的に抑制することができる。図示された例では、第1~第4直線部11~14と、当該直線部11~14と交差する間隙Gとがなす角度は、90°である。この場合、第1~第4直線部11~14の周囲に形成される磁力線によって第3シールド部材40に渦電流が発生することを、さらに効果的に抑制することができる。
【0064】
図示された例では、第1シールド部材20に形成された間隙Gの一部は、直線状に延びて、第1曲線部群15Fの少なくとも一部を横断している。言い換えると、当該間隙Gは、第1曲線部15と平行に延びていない。これにより、第1曲線部15の周囲に形成される磁力線が当該間隙Gを通じて第3シールド部材40に到達することが、抑制される。これにより、第1曲線部15の周囲に形成される磁力線によって第3シールド部材40に渦電流が発生することを、抑制することができる。
【0065】
同様に、図示された例では、第1シールド部材20に形成された間隙Gの他の一部は、直線状に延びて、第2~第4曲線部群16F~18Fの少なくとも一部を横断している。これにより、第2~第4曲線部群16F~18Fの周囲に形成される磁力線が当該間隙Gを通じて第3シールド部材40に到達することが、抑制される。これにより、第2~第4曲線部群16F~18Fの周囲に形成される磁力線によって第3シールド部材40に渦電流が発生することを、抑制することができる。
【0066】
軸方向に見て、第1~第4曲線部15~18の接線L15~L18と、当該曲線部15~18と交差する間隙Gとがなす角度は、例えば80°~100°であってよい。この場合、第1~第4曲線部15~18の周囲に形成される磁力線によって第3シールド部材40に渦電流が発生することを、効果的に抑制することができる。図示された例では、第1~第4曲線部15~18の接線L15~L18と、当該曲線部15~18と交差する間隙Gとがなす角度は、90°である。この場合、第1~第4曲線部15~18の周囲に形成される磁力線によって第3シールド部材40に渦電流が発生することを、さらに効果的に抑制することができる。
【0067】
もちろん、第1シールド部材20の分割の態様は、上述した態様に限られない。例えば、第1シールド部材20は、
図5に示すように分割されていてもよい。
図5に示すように、第1シールド部材20の間隙Gの一部が、軸方向に見て、コイル10の第1~第4直線部11~14のいずれかと平行に延びていてもよい。
【0068】
また、図示された例では、間隙Gは、軸方向に見て、コイル10の外方を延びる部分と、コイル10の内方を延びる部分と、を含む。以下では、間隙Gのうち、コイル10の外方を延びる部分を「外方間隙GO」とも称する。また、間隙Gのうち、コイル10の内方を延びる部分を「内方間隙GI」とも称する。
【0069】
第1シールド部材20の厚さは、任意であるが、例えば0.01mm以上であり、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることが更に好ましい。第1シールド部材20の厚さが0.01mm以上であることにより、コイル10の熱による第1シールド部材20の熱変形が抑制される。
【0070】
第1シールド部材20とコイル10との距離は、任意であるが、例えば1mm以下であり、0.7mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることが更に好ましい。これにより、コイルユニット5を効果的に薄型化することができる。
【0071】
(第2シールド部材)
第2シールド部材30も、磁界の透過及び/又は漏れ磁界の抑制のために設けられる。とりわけ、第2シールド部材30は、第1シールド部材20の間隙Gを通じた磁界の透過を抑制するために設けられる。
【0072】
第2シールド部材30は磁性体を含む。軸方向に見て、第2シールド部材30は、コイル10の径方向の外方及び/又は内方に配置されている。第2シールド部材30は、軸方向に見て、第1シールド部材20の間隙Gの少なくとも一部と重なっている。これにより、間隙Gを通じた磁力線の透過を抑制することができる。したがって、コイルユニット5の磁気効率を、さらに向上させることができる。
【0073】
第2シールド部材30は、軸方向に見てコイル10と重なる位置には配置されていない。これにより、コイルユニット5が第2シールド部材30を含むことによるコイルユニット5の重量の増大を、抑制することができる。したがって、コイルユニット5の磁気効率向上と軽量化を両立させることができる。
【0074】
第2シールド部材30は、第1シールド部材20の表側面20aに対向して配置される。言い換えると、第2シールド部材30は、第1シールド部材20の表側に配置される。第2シールド部材30は、コイル10の径方向の外側及び/又は内側に配置される。言い換えると、
図3に示すように、第2シールド部材30の側面は、コイル10の側面と径方向に対向する。さらに言い換えると、第2シールド部材30は、コイル10と同じ軸方向位置に配置されている。これにより、コイルユニット5が第2シールド部材30を含むことによるコイルユニット5の厚さの増大を、抑制することができる。したがって、コイルユニット5の磁気効率向上と薄型化とを両立させることができる。
【0075】
図示された例では、第2シールド部材30は、複数の第2小片30Pを含む。各第2小片30Pは、全体として平板状に形成され、コイル10の軸方向に垂直な面に沿って拡がっている。複数の第2小片30Pの一部は、コイル10の径方向の外方に配置されている。複数の第2小片30Pの他の一部は、コイル10の径方向の内方に配置されている。以下では、複数の第2小片30Pのうち、コイル10の径方向の外方に配置された第2小片30Pを、「第2外方小片30PO」とも称する。また、複数の第2小片30Pのうち、コイル10の径方向の内方に配置された第2小片30Pを、「第2内方小片30PI」とも称する。
【0076】
第2外方小片30POは、軸方向に見て、外方間隙GOの少なくとも一部と重なっている。第2外方小片30POは、軸方向に見てコイル10の外方に存在する外方間隙GOの少なくとも80%を覆っている。これにより、外方間隙GOを通じた磁力線の透過を、効果的に抑制することができる。
【0077】
第2内方小片30PIは、軸方向に見て、内方間隙GIの少なくとも一部と重なっている。第2内方小片30PIは、軸方向に見てコイル10の内方に存在する内方間隙GIの少なくとも80%を覆っている。これにより、内方間隙GIを通じた磁力線の透過を効果的に抑制することができる。
【0078】
各第2小片30Pによっても、コイル10において中心軸線Cに対して全方向に広がるように生じる磁界(磁力線)を、中心軸線C側に配向することができる。これにより、コイルユニット5の磁気効率を高めることができる。また、第2小片30Pによっても、磁力線の周辺部品への到達を抑制することができる。言い換えると、第2小片30Pによっても、電流の発生に寄与しない漏れ磁界が抑制される。
【0079】
図示された例では、各第2小片30Pは、三角形状又は四角形状の平面形状を有するが、これに限られない。第2小片30Pの平面形状としては、三角形状や四角形状以外の多角形状や円形状など、任意の形状を採用可能である。
【0080】
第2シールド部材30の厚さは、任意であるが、例えば0.01mm以上であり、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることが更に好ましい。第2シールド部材30の厚さが0.01mm以上であることにより、コイル10の熱による第2シールド部材30の熱変形が抑制される。
【0081】
図3に示す例では、第2シールド部材30の裏側面は、コイル10の裏側面10bと面一であるが、これに限られない。第2シールド部材30の裏側面は、コイル10の裏側面10bよりも第1シールド部材20に近接していてもよいし、第1シールド部材20から離隔していてもよい。
【0082】
図3に示す例では、第2シールド部材30は、コイル10の表側面10aよりも第3方向D3に突出している。これにより、第2シールド部材30は、コイル10において中心軸線Cに対して全方向に広がるように生じる磁界(磁力線)を、効果的に中心軸線C側に配向することができる。
【0083】
もちろん、第2シールド部材30は、コイル10の表側面10aよりも第3方向D3に突出していなくてもよい。第2シールド部材30の表側面は、コイル10の表側面10aと面一であってもよい。また、コイル10が、第2シールド部材30の表側面よりも第3方向D3に突出していてもよい。
【0084】
第2シールド部材30は好ましくは軟磁性体を含む。より具体的には、第2シールド部材30はフェライトを含む、好ましくはソフトフェライトを含む。また、第2シールド部材30は、ナノ結晶磁性体を含んでもよい。第2シールド部材30は、第1シールド部材20と同様の材料で形成されていてよい。
【0085】
第2シールド部材30の比透磁率は、500以上でもよく、1000以上でもよい。第2シールド部材の比透磁率は、500以上3000以下でもよいし、1000以上3000以下でもよい。
【0086】
第2シールド部材30と第1シールド部材20との距離は、任意であるが、例えば1mm以上であることが好ましい。第2シールド部材30と第1シールド部材20との距離が1mm以上であることにより、第2シールド部材30と第1シールド部材20との間で放電が生じることを抑制することができる。なお、第2シールド部材30と第1シールド部材20との間に絶縁性の高い層を配置することで、第2シールド部材30と第1シールド部材20との距離が1mm未満であっても、第2シールド部材30と第1シールド部材20との間で放電が生じることを抑制することができる。
【0087】
(第3シールド部材)
第3シールド部材40は、第1シールド部材20の裏側に配置されている。言い換えると、第3シールド部材40は、第1シールド部材20の裏側面20bに対向して配置されている。第3シールド部材40は、コイル10で発生した電磁波を、裏側から遮蔽する。コイル10で発生した電磁波が第3シールド部材40によって遮断されることにより、当該電磁波が他の電子部品や人体等に影響を与えることを抑制することができる。第3シールド部材40を形成する材料としては、例えばアルミニウム等の金属を採用可能である。コイルユニット5が自動車に取り付けられる場合、第3シールド部材40は自動車の車体(ボディ)を構成する金属板であってよい。
【0088】
図示された例では、第3シールド部材40は、全体として平板状に形成され、コイル10の軸方向に垂直な面に沿って拡がっている。第3シールド部材40は、軸方向に見て、その外縁40eがコイル10の外側に位置する大きさを有している。
【0089】
第3シールド部材40の厚さは、任意であるが、例えば1mm以上であり、2mm以上であることが好ましい。
【0090】
第3シールド部材40とコイル10との距離は、任意であるが、例えば30mm以下であり、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが更に好ましい。また、第3シールド部材40と第1シールド部材20との距離は、任意であるが、例えば25mm以下であり、15mm以下であることが好ましく、5mm以下であることが更に好ましい。これにより、コイルユニット5を効果的に薄型化することができる。
【0091】
(熱伝導層)
図2及び
図3に示すように、コイル10及び第2シールド部材30と第1シールド部材20との間には、熱伝導層50が配置されている。第1シールド部材20はコイル10の熱によって加熱される。熱伝導層50により、第1シールド部材20の放熱を促進することができる。図示された例では、熱伝導層50は、第1シールド部材20と接触している。
【0092】
熱伝導層50はシート状に形成されている。軸方向に見て、熱伝導層50は、コイル10の内方から外方に亘って連続して広がっている。言い換えると、軸方向に見て、熱伝導層50は、その外縁50eがコイル10の外側に位置する大きさを有している。このような熱伝導層50によれば、第1シールド部材20の熱が熱伝導層50の面方向に分散され、第1シールド部材20の面方向の温度勾配を小さくすることができる。とりわけ図示された例では、第1シールド部材20は、複数の第1小片20Pに分割されている。熱伝導層50が連続して広がっていることで、第1小片20Pの熱を、熱伝導層50の面方向に沿って移動させることができる。この結果、一部の第1小片20Pが高温に維持される虞を抑制することができる。
【0093】
熱伝導層50は、絶縁性を有する材料で形成されていることが好ましい。これにより、第1シールド部材20と他の部材(例えば、コイル10や第2シールド部材30)との電気的接続を防止することができる。
【0094】
熱伝導層50を形成する材料としては、例えば、北川工業株式会社製の「クールプロバイド(登録商標)CPSH」や、「クールプロバイド(登録商標)CPVG-2」を採用することができる。あるいは、熱伝導層50は、例えば、絶縁性の樹脂に熱伝導フィラーを分散させることにより作製された絶縁性放熱材料を用いて形成することができる。
【0095】
(絶縁層)
図2及び
図3に示すように、第1シールド部材20と第3シールド部材40との間には、絶縁層55が配置されている。これにより、第1シールド部材20と第3シールド部材40との電気的接続を防止することができる。
【0096】
図示された例では、絶縁層55はシート状に形成されている。この例において、絶縁層55は、軸方向に見て熱伝導層50を網羅する大きさを有している。なお、絶縁層55は、シート状に形成されていなくてもよい。例えば、絶縁層55はブロック状に形成された複数の絶縁部材から構成されてよい。この場合、複数の絶縁部材は、互いから離間していてもよい。このような絶縁層55によっても、第1シールド部材20と第3シールド部材40との間隔を所定の間隔に維持することができ、第1シールド部材20と第3シールド部材40との電気的接続を防止することができる。
【0097】
絶縁層55は、熱伝導性を有していてもよい。この場合、絶縁層55によってコイルユニット5からの放熱を促すことができる。また、この場合、絶縁層55は、熱伝導層50と同様の材料で形成されてよい。
【0098】
(接続端子)
図2に示すように、第1接続端子61及び第2接続端子62は、それぞれ、コイル10の径方向の外方の端部及び内方の端部に接続されている。より具体的には、第1接続端子61は、ターン部108に接続され、第2接続端子62は、ターン部101に接続されている。第1接続端子61及び第2接続端子62は、例えば高周波電流供給部1A又は変換部2Aとの接続の際に用いられ得る。第1接続端子61とターン部108との接続及び第2接続端子62とターン部101との接続は、超音波接合で行われてもよい。ただし、その接続手法は限られず、例えば導電性接着剤による接続が採用されてもよい。
【0099】
送電コイルユニットとしてコイルユニット5を用いる場合、第1接続端子61及び第2接続端子62は、
図1で示したような高周波電流供給部1A又は交流電源に接続される。高周波電流供給部1A又は交流電源からコイル10に電流が供給されることで、コイル10に中心軸線Cに沿う磁力線を含む磁界が発生する。
【0100】
一方で、受電コイルユニットとしてコイルユニット5を用いる場合、第1接続端子61及び第2接続端子62は、
図1で示したような変換部2Aに接続される。コイル10が中心軸線Cに沿う磁力線を含む磁界を受けると、コイル10に高周波電流が発生する。そして、この高周波電流を、第1接続端子61又は第2接続端子62から変換部2Aやバッテリに供給できる。
【0101】
<コイルユニットの用途>
本実施形態に係るコイルユニット5は、上述したワイヤレス電力伝送システムSの送電装置1における送電コイルとして用いることができ、受電装置2における受電コイルとして用いることができる。
【0102】
送電コイルとしてコイルユニット5を用いる場合、第1接続端子61及び第2接続端子62が
図1で示したような高周波電流供給部1A又は交流電源に接続される。高周波電流がコイルユニット5に供給されると、電流を、第1接続端子61からコイル10に流した後、第2接続端子62から高周波電流供給部1A又は交流電源に流すことができる。また、電流を、第2接続端子62からコイル10に流した後、第1接続端子61から高周波電流供給部1A又は交流電源に流すことができる。これにより、コイル10の中心軸線Cに沿う磁力線を含む磁界を発生させることができる。
【0103】
一方で、受電コイルとしてコイルユニット5を用いる場合、コイル10の内側を通過するように磁力線を含む磁界を受ける又は発生させることで、コイル10に高周波電流を発生させることができる。そして、この高周波電流を、第1接続端子61又は第2接続端子62から外部の装置に供給できる。
【0104】
また、コイルユニット5は、トランス、アンテナなどでも用いることができる。例えばトランスにおける一次側コイルとしてコイルユニット5が機能する場合には、第1接続端子61及び第2接続端子62が交流電源に接続される。そして、高周波電流を供給されることで、コイル10の中央側から鉄心に磁束を供給できる。
【0105】
次に、第2シールド部材30の有無による、コイルユニット5の性能の違いを説明する。
【0106】
<実施例1>
実施例1のコイルユニット5として、第1のコイルユニット5a及び第2のコイルユニット5bを準備した。
第1のコイルユニット5aは、
図5に示すコイルユニット5と同様に構成され、渦巻状に形成されたコイル10と第1シールド部材20と第2シールド部材30と第3シールド部材40と熱伝導層50と絶縁層55とを備えていた。
第2のコイルユニット5bは、第3シールド部材40と絶縁層55とを含まない点で第1のコイルユニット5aと異なっていた。その他の点では、第2のコイルユニット5bは第1のコイルユニット5aと同様であった。
第1及び第2のコイルユニット5aにおけるコイル10は、銅で形成され、その線幅は6mmであり、厚さは0.5mmであった。コイル10の第1方向D1及び第2方向D2に沿った寸法は、それぞれ、296mm及び296mmであった。
第1シールド部材20は、10の第1小片20Pに分割して形成された。各第1小片20Pはフェライト板であった。隣り合う第1小片20P,20P間の間隙Gの幅は、1mmであった。第1シールド部材20の第1方向D1及び第2方向D2の寸法は、それぞれ、360mm及び360mmであった。第1シールド部材20の厚さは、3mmであった。また、第1シールド部材20とのコイル10との間の距離は、1mmであった。
第2シールド部材30は、8つの第2小片30Pを含んでいた。各第2小片30Pはフェライト板であった。8つの第2小片30Pのうちの1つは、コイル10の内方に配置された。他の第2小片30Pは、コイル10の外方に配置された。コイル10の内方に配置された第2小片30Pは、軸方向に見て、コイル10の内方に存在する間隙Gの80%を覆っていた。コイル10の外方に配置された第2小片30Pは、軸方向に見て、コイル10の外方に存在する間隙Gの80%を覆っていた。第2シールド部材30の厚さは、3mmであった。第2シールド部材30の裏側面は、コイル10の裏側面10bと面一であった。
第3シールド部材40は、アルミニウムで形成された。第3シールド部材40の第1方向D1及び第2方向D2の寸法は、それぞれ、400mm及び400mmであった。また、第3シールド部材40の厚さは2mmであった。また、第1シールド部材20と第3シールド部材40との間の距離は、0.5mmであった
熱伝導層50は、北川工業株式会社製の「クールプロバイド(登録商標)CPSH」を用いて形成された。熱伝導層50の厚さは、2mmであった。
絶縁層55は、プラスチック製のシートであった。絶縁層55の厚さは、0.5mmであった。
【0107】
<比較例1>
比較例1のコイルユニット205として、第3のコイルユニット205a及び第4のコイルユニット205bを準備した。
第3のコイルユニット205aは、第2シールド部材30を含まない点で、第1のコイルユニット5aと異なっていた。その他の点では、第3のコイルユニット205aは第1のコイルユニット5aと同様であった。
第4のコイルユニット205bは、第2シールド部材30を含まない点で、第2のコイルユニット5bと異なっていた。その他の点では、第4のコイルユニット205bは第2のコイルユニット5bと同様であった。
【0108】
(評価1)
次に、このようにして作製された第1のコイルユニット5a、第2のコイルユニット5b、第3のコイルユニット205a及び第4のコイルユニット205bのコイル10に、それぞれ、85kHzの高周波電流を流し、各コイルユニット5a,5b,205a,205bのQ値、インダクタンス(L)及びインピーダンス(Z)を測定した。
図6に測定結果を示す。
【0109】
図6から理解されるように、第3のコイルユニット205aと第4のコイルユニット205bとを比較した場合、第3のコイルユニット205aのQ値は、第4のコイルユニット205bのQ値に対して26%低かった。一方、第1のコイルユニット5aと第2のコイルユニット5bとを比較した場合、第1のコイルユニット5aのQ値は、第2のコイルユニット5bのQ値に対して13%低いだけであった。なお、第3のコイルユニット205aと第4のコイルユニット205bとの違いは、前者が第3シールド部材40を有するのに対し、後者が第3シールド部材40を有していない点である。また、第1のコイルユニット5aと第2のコイルユニット5bとの違いは、前者が第3シールド部材40を有するのに対し、後者が第3シールド部材40を有していない点である。また、第1のコイルユニット5aと第3のコイルユニット205aとの違いは、前者が第2シールド部材30を有するのに対し、後者が第2シールド部材30を有していない点である。また、第2のコイルユニット5bと第4のコイルユニット205bとの違いは、前者が第2シールド部材30を有するのに対し、後者が第2シールド部材30を有していない点である。
【0110】
図6の結果から、比較例1のコイルユニットでは、第3シールド部材40の存在によってQ値が26%低下するのに対し、実施例1のコイルユニット5では、第3シールド部材40の存在によってQ値が13%低下するだけであることが理解される。このことから、実施例1のコイルユニット5では、第2シールド部材30の存在により、コイル10で発生した磁界の第3シールド部材40への到達が抑制される、ということが理解される。
【0111】
(実施例2)
次に、実施例1の第1のコイルユニット5aを受電コイルユニットとし、送電コイルユニットとの間の伝送最大効率値(ηmax)を求めた。より具体的には、送電コイルユニットを下記「<送電コイルユニットの構成>」のように構成し、下記「<3つの場合>」について伝送最大効率値(ηmax)を求めた。なお、いずれの場合も、受電コイルユニットをアジレント・テクノロジー株式会社製のLCRメータ「Agilent 4248A」に接続し、測定周波数85kHzでのインダクタンス及びインピーダンスを測定した。インダクタンスは、OPEN補正モードでのインダクタンス(Lopen)及びSHORT補正モードでのインダクタンス(Lsc)を測定した。
【0112】
<送電コイルユニットの構成>
送電コイルユニット305は、
図7に示すように、コイル310と、第1シールド部材320と、第2シールド部材330と、第3シールド部材340と、放熱シート360と、を有する。第3シールド部材340と放熱シート360と第2シールド部材330と第1シールド部材320とコイル310とは、コイル310の中心軸線に沿った方向に、この順で積層されている。
コイル310は、リッツ線で形成された。コイル310は、中心軸線300Cの周りで渦巻状に形成された。リッツ線は、直径0.05mmのエナメル線を1600本撚り合わせたものを用いた。コイル310は、巻き数10のコイル要素が軸方向に1層積層されるようにリッツ線を捲回することにより、作製された。リッツ線の太さ(直径)は3.5mmであった。コイル310の第1方向D1及び第2方向D2に沿った寸法は、それぞれ、500mm及び650mmであった。
第1シールド部材320は、フェライト板であった。第1シールド部材320の第1方向D1及び第2方向D2の寸法は、それぞれ、600mm及び700mmであった。第1シールド部材320の厚さは、3mmであった。また、第1シールド部材320とのコイル10との間の距離は、2mmであった。
第2シールド部材330は、フェライト板であった。第2シールド部材330の第1方向D1及び第2方向D2の寸法は、それぞれ、600mm及び700mmであった。第2シールド部材330の厚さは、3mmであった。また、第2シールド部材330と第1シールド部材320との間の距離は、2mmであった。
放熱シート360は、アルミニウムで形成された。放熱シート360の第1方向D1及び第2方向D2の寸法は、それぞれ、600mm及び700mmであった。また、第3シールド部材40の厚さは35mmであった。放熱シート360と第2シールド部材330との間の距離は、2mmであった。
第3シールド部材340は、アルミニウムで形成された。第3シールド部材340の第1方向D1及び第2方向D2の寸法は、それぞれ、680mm及び750mmであった。また、第3シールド部材340の厚さは5mmであった。また、第3シールド部材340と放熱シート360との間の距離は、0.5mmであった。
【0113】
<3つの場合>
・第1の場合
受電コイルユニットと送電コイルユニットとの第3方向D3に沿った距離が120mmである。
受電コイルユニットのコイルの中心軸線Cと送電コイルユニットのコイルの中心軸線300Cとが一致している。
・第2の場合
受電コイルユニットと送電コイルユニットとの距離が150mmである。
受電コイルユニットのコイルの中心軸線Cが、送電コイルユニットのコイルの中心軸線300Cから、第1方向D1に75mm、第2方向D2に100mmずれている。
・第3の場合
受電コイルユニットと送電コイルユニットとの距離が250mmである。
受電コイルユニットのコイルの中心軸線Cが、送電コイルユニットのコイルの中心軸線300Cから、第1方向D1に75mm、第2方向D2に100mmずれている。
【0114】
なお、伝送最大効率値(η
max)は、次の計算式により求められる理論値である。
【数1】
ここで、kは受電コイルユニットと送電コイルユニットの結合係数であり、Q
1は送電コイルユニットのQ値であり、Q
2は受電コイルユニットのQ値である。
結合係数(k)は、次の計算式により求められる。
【数2】
【0115】
(比較例2)
また、比較例1の第1のコイルユニット205aを受電コイルユニットとし、送電コイルユニットとの間の伝送最大効率値(ηmax)を求めた。送電コイルユニットの構成は、実施例2で用いた送電コイルユニットの構成と同じであった。伝送最大効率値(ηmax)の求め方も、実施例2の場合と同じであった。
【0116】
(評価2)
図8に、各コイルユニット5a,205aの第1~第3の場合における伝送最大効率値(η
max)を示す。
図8において、X及びYは、それぞれ、受電コイルユニット5a,205aの中心軸線Cと、送電コイルユニットの中心軸線300Cとの、第1方向D1及び第2方向D2に沿った距離を意味する。また、
図8において、Zは、受電コイルユニット5a,205aと送電コイルユニットの軸方向に沿った距離を意味する。
【0117】
図8から理解されるように、第1~第3のいずれの場合も、実施例2の伝送最大効率値(η
max)は、比較例2の伝送最大効率値(η
max)よりも高い。とりわけ、受電コイルユニットと送電コイルユニットとの距離が離れており、第3の場合(すなわち、受電コイルユニットの中心軸線Cが送電コイルユニットの中心軸線300Cからずれている場合)には、実施例2の伝送最大効率値(η
max)は、比較例2の伝送最大効率値(η
max)よりも顕著に高いことが理解される。
【0118】
以上に説明してきた実施形態及びその変形例によるコイルユニット5は、コイル10と、第1シールド部材20と、第2シールド部材30と、を備えている。コイル10は、任意の中心軸線Cの周りで渦巻形状に形成されている。第1シールド部材20は、コイル10に対向する表側面20aと、表側面20aとは反対側の面である裏側面20bとを有する。第2シールド部材30は、コイル10の径方向の外方及び/又は内方に、第1シールド部材20の表側面20aに対向して配置されている。第1シールド部材20及び第2シールド部材30は、磁性を有する。第1シールド部材20は、複数の第1小片20Pに分割されている。軸方向に見て、第1シールド部材20の隣り合う第1小片20P,20Pの間に間隙Gが形成されている。軸方向に見て、第2シールド部材30は、第1シールド部材20の間隙Gの少なくとも一部と重なっている。このようなコイルユニット5によれば、第1シールド部材20の間隙Gを通じた磁力線の透過を抑制することができ、コイルユニット5の性能を向上させることができる。また、第2シールド部材30によるコイルユニット5の軸方向の寸法の増大を,抑制することができる。
【0119】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 送電装置
2 受電装置
5 コイルユニット
10 コイル
10n ターン部
11 第1直線部
11F 第1直線部群
12 第2直線部
12F 第2直線部群
13 第3直線部
13F 第3直線部群
14 第4直線部
14F 第4直線部群
20 第1シールド部材
20a 表側面
20b 裏側面
20P 第1小片
30 第2シールド部材
30P 第2小片
30PI 第2内方小片
30PO 第2外方小片
40 第3シールド部材
50 熱伝導層
55 絶縁層
C 中心軸線
G 間隙
S ワイヤレス電力伝送システム