IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2025-26087コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体
<>
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図1
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図2
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図3
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図4
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図5
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図6
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図7
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図8
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図9
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図10
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図11
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図12
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図13
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図14
  • -コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026087
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20250214BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20250214BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20250214BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F27/28 185
H02J50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131451
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】岡部 将人
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044DA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ワイヤレス電力伝送システムにおいて効率的な電力伝送を実現するコイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体を提供する。
【解決手段】コイルユニット5は、任意の中心軸線Cの周りで渦巻形状に形成されたコイル要素10iを含むコイル10と、第1シールド部材30と、コイル10の外方を周状に延びる外枠70と、を備える。コイル10は、第1主面10aと、第1主面10aとは反対側の面である第2主面10bとを有する。第1シールド部材30及びコイル10は、第2主面10bから第1主面10aに向かう第1方向AD1にこの順で積層されている。外枠70は、フェライトを含む。外枠70は、コイル10の第1主面10aよりも第1方向に突出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の中心軸線の周りで渦巻形状に形成されたコイル要素を含むコイルと、第1シールド部材と、前記コイルの外方を周状に延びる外枠と、を備え、
前記コイルは、第1主面と、前記第1主面とは反対側の面である第2主面とを有し、
前記第1シールド部材及び前記コイルは、前記第2主面から前記第1主面に向かう第1方向にこの順で積層され、
前記外枠は、フェライトを含み、前記コイルの前記第1主面よりも前記第1方向に突出する、コイルユニット。
【請求項2】
前記コイルの内方を周状に延びる内枠を更に備え、
前記内枠は、フェライトを含み、前記コイルの前記第1主面よりも前記第1方向に突出する、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項3】
軸方向に見て、前記外枠は前記第1シールド部材の外縁よりも内側に位置する、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項4】
前記コイルに接続された第1接続端子を更に備え、
前記コイルは、前記中心軸線に近い内方端部と、前記中心軸線から遠い外方端部と、を有し、
前記第1接続端子は、前記コイルの前記内方端部に接続され、軸方向に見て前記コイルの内方から外方へ延び、
前記外枠に、軸方向に見て前記第1接続端子と重なる不連続部が形成されている、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項5】
前記第1シールド部材は、複数のシールド小片に分割され、
前記第1シールド部材には、隣り合うシールド小片間を直線状に延びる間隙であって、軸方向に見て前記コイルの内方から外方へ延びる間隙が形成されており、
前記外枠に、軸方向に見て前記間隙と重なる不連続部が形成されている、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項6】
前記不連続部の幅が0.8mm以上である、請求項4又は5に記載のコイルユニット。
【請求項7】
前記不連続部の幅が5mm以上である、請求項4又は5に記載のコイルユニット。
【請求項8】
前記外枠の比透磁率が1000以上である、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項9】
前記外枠が前記第1主面よりも前記第1方向に突出する突出高さが、1mm以上である、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項10】
前記外枠の幅が3mm以上10mm以下である、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項11】
軸方向に見て、前記外枠と前記コイルとの距離が3mm以下である、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項12】
軸方向に見て、前記内枠と前記コイルとの距離が3mm以下である、請求項2に記載のコイルユニット。
【請求項13】
前記内枠の比透磁率が1000以上である、請求項2に記載のコイルユニット。
【請求項14】
任意の中心軸線の周りで渦巻形状に形成されたコイル要素を含むコイルと、第1シールド部材と、前記コイルの内方を周状に延びる内枠と、を備え、
前記コイルは、第1主面と、前記第1主面とは反対側の面である第2主面とを有し、
前記第1シールド部材及び前記コイルは、前記第2主面から前記第1主面に向かう第1方向にこの順で積層され、
前記内枠は、フェライトを含み、前記コイルの前記第1主面よりも前記第1方向に突出する、コイルユニット。
【請求項15】
前記内枠の比透磁率が1000以上である、請求項14に記載のコイルユニット。
【請求項16】
前記内枠が前記第1主面よりも前記第1方向に突出する突出高さが、1mm以上である、請求項14に記載のコイルユニット。
【請求項17】
前記内枠の幅が3mm以上10mm以下である、請求項14に記載のコイルユニット。
【請求項18】
軸方向に見て、前記内枠と前記コイルとの距離が3mm以下である、請求項14に記載のコイルユニット。
【請求項19】
前記第1シールド部材はフェライトを含む、請求項1又は14に記載のコイルユニット。
【請求項20】
前記第1シールド部材は、複数のシールド小片に分割されている、請求項1又は14に記載のコイルユニット。
【請求項21】
前記コイルユニットは、前記コイルの前記第2主面に直接接触する磁性体樹脂層を備え
る、請求項20に記載のコイルユニット。
【請求項22】
前記磁性体樹脂層の比透磁率が5以上30以下である、請求項21に記載のコイルユニット。
【請求項23】
前記コイルに接続された第1接続端子を更に備え、
前記コイルは、前記中心軸線に近い内方端部と、前記中心軸線から遠い外方端部とを有し、
前記第1接続端子は、前記コイルの前記第2主面の側において前記内方端部に接続され、軸方向に見て前記コイルの内方から外方へ延び、
前記第1シールド部材は、複数のシールド小片に分割され、
前記第1シールド部材には、隣り合うシールド小片間を直線状に延びる間隙であって、前記コイルの内方から外方へ延びる間隙が形成されており、
軸方向に見て、前記第1接続端子は前記間隙内を延びている、請求項1又は14に記載のコイルユニット。
【請求項24】
前記第1接続端子は、前記コイルユニットの側面視において前記第1シールド部材と重なる高さ位置で、前記コイルの内方から外方へ延びている、請求項23に記載のコイルユニット。
【請求項25】
前記コイルに接続された第1接続端子を更に備え、
前記コイルは、前記中心軸線に近い内方端部と、前記中心軸線から遠い外方端部とを有し、
前記第1接続端子は、前記コイルの前記第2主面の側において前記内方端部に接続され、軸方向に見て前記コイルの内方から外方へ延び、
前記第1シールド部材には、軸方向に見て前記コイルの内方から外方へ延びる切欠が形成されており、
軸方向に見て、前記第1接続端子は前記切欠内を延びている、請求項1又は14に記載のコイルユニット。
【請求項26】
前記第1接続端子は、前記コイルユニットの側面視において前記第1シールド部材と重なる高さ位置で、前記コイルの内方から外方へ延びている、請求項25に記載のコイルユニット。
【請求項27】
前記コイル要素は、その内方端部から外方端部に向かって第1周回方向に前記中心軸線の周りを周回しており、
前記第1周回方向に前記第1接続端子と隣り合うシールド小片の面積が、当該シールド小片と前記第1接続端子を挟んで隣り合うシールド小片の面積以上である、請求項23に記載のコイルユニット。
【請求項28】
前記コイル要素は、その内方端部から外方端部に向かって第1周回方向に前記中心軸線の周りを周回しており、
前記第1周回方向に前記第1接続端子と隣り合うシールド小片の面積が、当該シールド小片と前記第1周回方向に隣り合うシールド小片の面積以上である、請求項23に記載のコイルユニット。
【請求項29】
請求項1又は14に記載のコイルユニットを備える、送電装置。
【請求項30】
請求項1又は14に記載のコイルユニットを備える、受電装置。
【請求項31】
送電装置と、受電装置とを備え、
前記送電装置及び前記受電装置のうちの少なくともいずれかが、請求項1又は14に記載のコイルユニットを備える、電力伝送システム。
【請求項32】
請求項1又は14に記載のコイルユニットを備える、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイルユニット、送電装置、受電装置、電力伝送システム及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送電装置から受電装置へ非接触で電力を伝送するワイヤレス電力伝送システムが普及しつつある。特許文献1には、ワイヤレス電力伝送システムの送電装置及び受電装置で用いられるコイルユニットが開示されている。コイルユニットは、渦巻き状に形成されたコイルを備えている。送電装置のコイルに電力を供給すると、当該コイルに磁界が生じる。この磁界の影響により、受電装置のコイルに電流が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-27112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなワイヤレス電力伝送システムにおいて、コイルユニットの性能を向上させて効率的な電力伝送を行うことが望まれている。
【0005】
本開示の課題は、効率的な電力伝送を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]~[32]に関連する。
【0007】
[1]
任意の中心軸線の周りで渦巻形状に形成されたコイル要素を含むコイルと、第1シールド部材と、前記コイルの外方を周状に延びる外枠と、を備え、
前記コイルは、第1主面と、前記第1主面とは反対側の面である第2主面とを有し、
前記第1シールド部材及び前記コイルは、前記第2主面から前記第1主面に向かう第1方向にこの順で積層され、
前記外枠は、フェライトを含み、前記コイルの前記第1主面よりも前記第1方向に突出する、コイルユニット。
【0008】
[2]
前記コイルの内方を周状に延びる内枠を更に備え、
前記内枠は、フェライトを含み、前記コイルの前記第1主面よりも前記第1方向に突出する、[1]に記載のコイルユニット。
【0009】
[3]
軸方向に見て、前記外枠は前記第1シールド部材の外縁よりも内側に位置する、[1]又は[2]に記載のコイルユニット。
【0010】
[4]
前記コイルに接続された第1接続端子を更に備え、
前記コイルは、前記中心軸線に近い内方端部と、前記中心軸線から遠い外方端部と、を有し、
前記第1接続端子は、前記コイルの前記内方端部に接続され、軸方向に見て前記コイルの内方から外方へ延び、
前記外枠に、軸方向に見て前記第1接続端子と重なる不連続部が形成されている、[1]~[3]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0011】
[5]
前記第1シールド部材は、複数のシールド小片に分割され、
前記第1シールド部材には、隣り合うシールド小片間を直線状に延びる間隙であって、軸方向に見て前記コイルの内方から外方へ延びる間隙が形成されており、
前記外枠に、軸方向に見て前記間隙と重なる不連続部が形成されている、[1]~[4]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0012】
[6]
前記不連続部の幅が0.8mm以上である、[4]又は[5]に記載のコイルユニット。
【0013】
[7]
前記不連続部の幅が5mm以上である、[4]~[6]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0014】
[8]
前記外枠の比透磁率が1000以上である、[1]~[7]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0015】
[9]
前記外枠が前記第1主面よりも前記第1方向に突出する突出高さが、1mm以上である、[1]~[8]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0016】
[10]
前記外枠の幅が3mm以上10mm以下である、[1]~[9]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0017】
[11]
軸方向に見て、前記外枠と前記コイルとの距離が3mm以下である、[1]~[10]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0018】
[12]
軸方向に見て、前記内枠と前記コイルとの距離が3mm以下である、[2]に記載のコイルユニット。
【0019】
[13]
前記内枠の比透磁率が1000以上である、[2]に記載のコイルユニット。
【0020】
[14]
任意の中心軸線の周りで渦巻形状に形成されたコイル要素を含むコイルと、第1シールド部材と、前記コイルの内方を周状に延びる内枠と、を備え、
前記コイルは、第1主面と、前記第1主面とは反対側の面である第2主面とを有し、
前記第1シールド部材及び前記コイルは、前記第2主面から前記第1主面に向かう第1方向にこの順で積層され、
前記内枠は、フェライトを含み、前記コイルの前記第1主面よりも前記第1方向に突出する、コイルユニット。
【0021】
[15]
前記内枠の比透磁率が1000以上である、[14]に記載のコイルユニット。
【0022】
[16]
前記内枠が前記第1主面よりも前記第1方向に突出する突出高さが、1mm以上である、[14]又は[15]に記載のコイルユニット。
【0023】
[17]
前記内枠の幅が3mm以上10mm以下である、[14]~[16]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0024】
[18]
軸方向に見て、前記内枠と前記コイルとの距離が3mm以下である、[14]~[17]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0025】
[19]
前記第1シールド部材はフェライトを含む、[1]~[18]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0026】
[20]
前記第1シールド部材は、複数のシールド小片に分割されている、[1]~[19]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0027】
[21]
前記コイルユニットは、前記コイルの前記第2主面に直接接触する磁性体樹脂層を備え
る、[20]に記載のコイルユニット。
【0028】
[22]
前記磁性体樹脂層の比透磁率が5以上30以下である、[21]に記載のコイルユニット。
【0029】
[23]
前記コイルに接続された第1接続端子を更に備え、
前記コイルは、前記中心軸線に近い内方端部と、前記中心軸線から遠い外方端部とを有し、
前記第1接続端子は、前記コイルの前記第2主面の側において前記内方端部に接続され、軸方向に見て前記コイルの内方から外方へ延び、
前記第1シールド部材は、複数のシールド小片に分割され、
前記第1シールド部材には、隣り合うシールド小片間を直線状に延びる間隙であって、前記コイルの内方から外方へ延びる間隙が形成されており、
軸方向に見て、前記第1接続端子は前記間隙内を延びている、[1]~[22]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0030】
[24]
前記第1接続端子は、前記コイルユニットの側面視において前記第1シールド部材と重なる高さ位置で、前記コイルの内方から外方へ延びている、[23]に記載のコイルユニット。
【0031】
[25]
前記コイルに接続された第1接続端子を更に備え、
前記コイルは、前記中心軸線に近い内方端部と、前記中心軸線から遠い外方端部とを有し、
前記第1接続端子は、前記コイルの前記第2主面の側において前記内方端部に接続され、軸方向に見て前記コイルの内方から外方へ延び、
前記第1シールド部材には、軸方向に見て前記コイルの内方から外方へ延びる切欠が形成されており、
軸方向に見て、前記第1接続端子は前記切欠内を延びている、[1]~[22]のいずれかに記載のコイルユニット。
【0032】
[26]
前記第1接続端子は、前記コイルユニットの側面視において前記第1シールド部材と重なる高さ位置で、前記コイルの内方から外方へ延びている、[25]に記載のコイルユニット。
【0033】
[27]
前記コイル要素は、その内方端部から外方端部に向かって第1周回方向に前記中心軸線の周りを周回しており、
前記第1周回方向に前記第1接続端子と隣り合うシールド小片の面積が、当該シールド小片と前記第1接続端子を挟んで隣り合うシールド小片の面積以上である、[23]又は[24]に記載のコイルユニット。
【0034】
[28]
前記コイル要素は、その内方端部から外方端部に向かって第1周回方向に前記中心軸線の周りを周回しており、
前記第1周回方向に前記第1接続端子と隣り合うシールド小片の面積が、当該シールド小片と前記第1周回方向に隣り合うシールド小片の面積以上である、[23]又は[24]に記載のコイルユニット。
【0035】
[29]
[1]~[28]のいずれかに記載のコイルユニットを備える、送電装置。
【0036】
[30]
[1]~[28]のいずれかに記載のコイルユニットを備える、受電装置。
【0037】
[31]
送電装置と、受電装置とを備え、
前記送電装置及び前記受電装置のうちの少なくともいずれかが、[1]~[28]のいずれかに記載のコイルユニットを備える、電力伝送システム。
【0038】
[32]
[1]~[28]のいずれかに記載のコイルユニットを備える、移動体。
【発明の効果】
【0039】
本開示の一実施の形態によれば、効率的な電力伝送を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、一実施の形態に係るコイルユニットが適用され得るワイヤレス電力伝送システムを概略的に示す図である。
図2図2は、図1に示すワイヤレス電力伝送システムに用いられるコイルユニットの斜視図である。
図3図3は、図2に示すコイルユニットの分解斜視図である。
図4図4は、図2のIV-IV線に沿ったコイルユニットの断面図である。
図5図5は、図2に示すコイルユニットの平面図である。
図6図6は、図5の二点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す図である。
図7図7は、図6に対応する図であって、コイルユニットの変形例を示す図である。
図8図8は、図6に対応する図であって、コイルユニットの他の変形例を示す図である。
図9図9は、図5に対応する図であって、コイルユニットの更に他の変形例を示す図である。
図10図10は、図2に対応する図であって、コイルユニットの更に他の変形例を示す図である。
図11図11は、図10に示すコイルユニットの分解斜視図である。
図12図12は、図10のXII-XII線に沿ったコイルユニットの断面図である。
図13図13は、図10に示すコイルユニットの平面図である。
図14図14は、シミュレーション1の結果を示す表である。
図15図15は、シミュレーション2の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して一実施の形態及びその変形例について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0042】
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」などの用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば「シート」は、フィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0043】
図1は、一実施の形態に係るコイルユニット5が適用されるワイヤレス電力伝送システムSを概略的に示す。まず、ワイヤレス電力伝送システムS(以下、電力伝送システムSと略す。)について図1を参照しつつ説明する。なお、電力伝送システムSに本実施の形態に係るコイルユニット5とは異なるコイルユニットが適用され得ることは、言うまでもない。
【0044】
<ワイヤレス電力伝送システム>
電力伝送システムSは、送電装置1と、受電装置2とを備える。送電装置1は、コイルユニット5と、高周波電流供給部1Aとを含む。送電装置1におけるコイルユニット5は、送電コイルユニットとして機能する。高周波電流供給部1Aは、送電コイルユニットとしてのコイルユニット5に高周波電流を供給する。
【0045】
受電装置2は、コイルユニット5と、変換部2Aとを含む。受電装置2におけるコイルユニット5は、受電コイルユニットとして機能する。変換部2Aは、コイルユニット5で生じる高周波電流を整形する。変換部2Aは、高周波電流を直流電流に変換する整流回路などを有する。変換部2Aは、例えば複数のダイオードを含む全波整流回路と、平滑化コンデンサーと、を備えてもよい。
【0046】
本実施の形態では、送電装置1及び受電装置2のそれぞれがコイルユニット5を含む。ただし、送電装置1及び受電装置2のうちの一方のみにコイルユニット5が用いられ、他方には異なる形式のコイルユニットが用いられてもよい。
【0047】
送電装置1から受電装置2にワイヤレス(非接触)で電力を伝送する際には、送電装置1が、高周波電流供給部1Aから送電コイルユニットとしてのコイルユニット5に所定の周波数の高周波電流を供給する。この際、コイルユニット5には、電磁誘導により磁界が生じる。そして、この磁界の影響で、受電装置2では、受電コイルユニットとしてのコイルユニット5に高周波電流が生じる。すなわち、受電装置2は送電装置1から磁界を受信して又は送電装置1での磁界の影響を受けて、電磁誘導により高周波電流を通流させる。変換部2Aは、この高周波電流を直流電流に変換し、変換した直流電流を例えば図示しないバッテリに供給する。
【0048】
図1に示す電力伝送システムSは、電力伝送方式として、磁界共鳴方式を採用している。ただし、本実施の形態に係るコイルユニット5は、電磁誘導方式の電力伝送システムで用いられてもよい。また、電力伝送システムSは、電気自動車にワイヤレスで電力を伝送するシステムとして構成される。この場合、送電装置1は、道路、駐車場などに設置される。受電装置2は、電気自動車に設置される。
【0049】
ただし、電力伝送システムSの用途は、電気自動車への電力伝送に限られるものではない。例えば、電力伝送システムSは、ドローンなどの飛行体、ロボットへの電力伝送に用いられてもよい。また、電力伝送システムSは、海中における潜水艇や、探査ロボットへの電力伝送に用いられてもよい。このように、電力伝送システムSは、電気自動車、飛行体、ロボット、潜水艇等、様々な移動体への電力伝送に用いられ得る。また、コイルユニット5の用途は、ワイヤレス電力伝送システムに限られない。例えば、コイルユニット5は、トランス、DC-DCコンバータ、アンテナなどに用いられてもよい。
【0050】
以下、本実施の形態に係るコイルユニット5について説明する。
【0051】
<コイルユニット>
図2は、本実施の形態に係るコイルユニット5の斜視図である。図3は、コイルユニット5の分解斜視図である。図4は、図2のIV-IV線に沿うコイルユニット5の断面図である。図5は、コイルユニット5の平面図である。図3及び図5では、後述する磁性体樹脂層20の図示を省略している。また、図5では、後述する磁性体壁部25の図示を省略している。図6は、図5の二点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す図である。
【0052】
図2乃至図5に示すように、コイルユニット5は、コイル10と、第1シールド部材30と、内枠60と、外枠70と、を備える。図示された例では、コイルユニット5は、更に、磁性体樹脂層20と、磁性体壁部25と、第2シールド部材50と、第1接続端子56と、第2接続端子57と、を備える。図4に示すように、コイル10は、第1主面10a及び第2主面10bを有する。第2主面10bは、第1主面10aとは反対側の面である。第2シールド部材50と、第1シールド部材30と、コイル10及び磁性体樹脂層20とは、第2主面10bから第1主面10aに向かう方向に、この順で配置されている。以下では、第2主面10bから第1主面10aに向かう方向を「第1積層方向AD1」とも呼ぶ。また、以下では、コイルユニット5及びその構成要素について用いる「第1側」及び「第2側」の用語は、それぞれ、コイルユニット5及びその構成要素から見て、第1積層方向AD1に位置する側、及び、第1積層方向AD1とは反対の方向(したがって、第1主面10aから第2主面10bに向かう方向)に位置する側を意味するものとする。
【0053】
(コイル)
図5に示すように、コイル10は、任意の中心軸線Cの周りで渦巻形状に形成されたコイル要素10iを含んでいる。渦巻形状とは、旋回するにつれて中心から遠ざかる(あるいは旋回するにつれて中心に近づく)平面曲線の形を意味する。ここで言う平面曲線には、折れ線状に曲がって連なる平面パターンも含む。図示された本実施の形態において、渦巻形状は、中心軸線Cに直交する仮想平面上に位置している。
【0054】
以下、軸方向とは、中心軸線C上を延びる方向又は中心軸線Cに平行な方向を意味する。また、径方向とは、中心軸線C上の任意の点を中心として中心軸線Cと直交する平面上に描かれた円の半径方向を意味する。また、周方向とは、中心軸線Cを中心とする円に沿った方向(当該円の周方向)を意味する。
【0055】
コイル要素10iは、導電材料から形成される。本実施の形態では、コイル要素10iが銅から形成されるが、これに限られない。コイル要素10iは、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等で形成されてもよい。
【0056】
図2乃至図6に示す例では、コイル10は単一のコイル要素10iから構成される。コイル要素10iは板状である。すなわち、コイル要素10iは平面コイルである。詳しくは、コイル要素10iは、非リッツ線の平面コイル要素である。図4に示すように、コイル要素10iの渦巻形状の周回方向に直交する方向での導線断面形状は矩形状になっている。
【0057】
コイル要素10iは、渦巻形状を有する導電体10Eを含む。導電体10Eは、径方向に並ぶ複数のターン部10nを含む。複数のターン部10nは、渦巻形状の中心軸線Cに直交する方向に配列される。詳しくは、当該複数のターン部10nは、中心軸線Cから径方向の外方に向かって中心軸線Cから次第に離れるように接続される。これにより、複数のターン部10nは全体として渦巻形状をなす。
【0058】
より詳しくは、ターン部10nは、基本的には線状の導体部分が環状をなさずに中心軸線Cの周りを360度周回する形状である。いわゆる平面コイルである場合には、ターン部10nの両端部は、径方向にずれる。複数のターン部10nでは、或るターン部10nの径方向の外方の端部に、他のターン部10nの径方向の内方の端部が接続する。これにより、複数のターン部10nが全体として中心軸線Cから離れるように延びていく。
【0059】
以下では、複数のターン部10nのうちの中心軸線Cに最も近いものを、ターン部101と称す場合がある。また、ターン部101に接続するターン部を、ターン部102と称す場合がある。以下において複数のターン部10nのそれぞれに共通となる事項を説明する際には、基本的に、ターン部10nと称す。
【0060】
本実施の形態では、ターン部10nは多角形をなすように周回する。なお、本明細書及び本開示で言う渦巻形状とは、螺旋状に巻いた平面曲線の形を意味する。ここで言う平面曲線には、図示のような折れ線状に曲がりつつ繰り返し周回する平面パターンも含む。また、言い換えると、渦巻形状とは、旋回するにつれて中心から遠ざかる(あるいは旋回するにつれて中心に近づく)平面曲線の形を意味する。
【0061】
図示された例では、コイル要素10iの導電体10Eは、第1~第8ターン部101~108を含む。第1~第8ターン部101~108は、径方向の内側から外側に向けて、この順に並んでいる。言い換えると、第1ターン部101が径方向の最も内方に位置し、第8ターン部108が径方向の最も外方に位置している。更に言い換えると、第1ターン部101がコイル要素10iの最内周部を形成する。また、第8ターン部108がコイル要素10iの最外周部を形成する。なお、ある部材の径方向の内方とは、当該部材よりも中心軸線Cに近い位置のことを意味する。また、ある部材の径方向の外方とは、当該部材よりも径方向の外方に離れた位置のことを意味する。例えば「コイル要素10iの径方向の内方」と言う場合、これは、最内周のターン部101よりも中心軸線Cに近い位置のことを意味する。「コイル要素10iの径方向の外方」と言う場合、これは、最外周のターン部108よりも径方向の外方に離れた位置のことを意味する。
【0062】
各ターン部101~108は、上記仮想平面上を延びている。第1~第8ターン部101~108は、この順に連なり、これによりコイル要素10iは渦巻形状を形成している。図示された例では、コイル要素10iは全体として八角形状である。コイル要素10i(導電体10E)は、各ターン部101~108が概ね八角形を成すように巻き回されている。しかしながら、コイル要素10iの形状は、これに限られない。コイル要素10iは、全体として八角形状以外の多角形状(例えば、四角形状や六角形状、十二角形状)であってもよい。この場合、各ターン部101~108は、八角形以外の多角形(例えば、四角形や六角形、十二角形)を概ね成すように巻き回されていてよい。また、コイル要素10iは、全体として円形状であってもよい。この場合、各ターン部101~108は、円形を概ね成すように巻き回されていてよい。
【0063】
各ターン部101~108の一方の端部は、当該ターン部の101~108の他方の端部よりも、径方向の内方に位置している。言い換えると、各ターン部101~108の他方の端部は、当該ターン部の101~108の一方の端部よりも、径方向の外方に位置している。
【0064】
各ターン部101~108は、中心軸線Cの周りに配置された複数の直線部11~18を含む。中心軸線Cを中心とする円の周方向に隣り合う直線部11~18は、互いに接続されている。図示された例では、第1~第8ターン部101~108は、第1~第8直線部11~18を含む。第1~第8直線部11~18は、周方向に沿ってこの順で並んでいる。
【0065】
第1直線部11及び第5直線部15は、第1方向D1に延びる。第2直線部12及び第6直線部16は、第2方向D2に延びる。第3直線部13及び第7直線部17は、第3方向D3に延びる。第4直線部14及び第8直線部18は、第4方向D4に延びる。第1方向D1と第2方向D2と第3方向D3と第4方向D4とは、互いに非平行である。
【0066】
各ターン部101~108において、周方向に隣り合う直線部11,12;12,13;13,14;14,15;15,16;16,17;17,18の隣り合う端部は、互いに接続されている。例えば、第1ターン部101の第1直線部11と第2直線部12とは、互いに接続されている。第1ターン部101の第2直線部12と第3直線部13とは、互いに接続されている。各ターン部101~108において、周方向に隣り合う直線部11,12;12,13;13,14;14,15;15,16;16,17;17,18の隣り合う端部は、周方向に沿って湾曲する曲線部を介して接続されていてもよい。
【0067】
さらに、径方向に隣り合うターン部101,102;・・・;107,108の第8直線部18及び第1直線部11は、互いに接続されている。例えば、第1ターン部101の第8直線部18及び第2ターン部102の第1直線部11の周方向に隣り合う端部は、互いに接続されている。第2ターン部102の第8直線部18及び第3ターン部103の第1直線部11の周方向に隣り合う端部は、互いに接続されている。径方向に隣り合うターン部101,102;・・・;107,108の第8直線部18及び第1直線部11は、周方向に沿って湾曲する曲線部を介して接続されていてもよい。
【0068】
複数のターン部101~108の第1直線部11は、径方向に配列されて第1直線部群11Gを形成する。また、複数のターン部101~108の第2直線部12は、径方向に配列されて第2直線部群12Gを形成する。また、複数のターン部101~108の第3直線部13は、径方向に配列されて第3直線部群13Gを形成する。また、複数のターン部101~108の第4直線部14は、径方向に配列されて第4直線部群14Gを形成する。また、複数のターン部101~108の第5直線部15は、径方向に配列されて第5直線部群15Gを形成する。また、複数のターン部101~108の第6直線部16は、径方向に配列されて第6直線部群16Gを形成する。また、複数のターン部101~108の第7直線部17は、径方向に配列されて第7直線部群17Gを形成する。また、複数のターン部101~108の第8直線部18は、径方向に配列されて第8直線部群18Gを形成する。径方向に隣り合う直線部11,11;12,12;13,13;14,14;15,15;16,16;17,17;18,18は、互いから径方向に離間している。
【0069】
第1直線部群11G及び第5直線部群15Gは、その間を中心軸線Cが通るように配置されている。第2直線部群12G及び第6直線部群16Gは、その間を中心軸線Cが通るように配置されている。第3直線部群13G及び第7直線部群17Gは、その間を中心軸線Cが通るように配置されている。第4直線部群14G及び第8直線部群18Gは、その間を中心軸線Cが通るように配置されている。
【0070】
さらに、図示された例では、軸方向に見て、コイル10は、全体として正八角形状である。言い換えると、コイル要素10i(導電体10E)は、各ターン部101~108が概ね正八角形を成すように巻き回されている。コイル要素10iは、正八角形の8つの辺に沿って延びる8つの直線部群11G~18Gを含む。本件発明者が得た知見によれば、コイル10が全体として八角形状である場合、コイル10の形状を正八角形状に近づけることで、コイルユニット5の性能を向上させることができる。
【0071】
以上に説明したコイル要素10iは、一例として銅板やアルミ板等の金属板から渦巻形状に打ち抜かれて形成される。一方で、コイル要素10iは、銅箔やアルミ箔等の金属箔を渦巻形状にエッチングすることでも形成され得る。
【0072】
コイル要素10iの半径(中心軸線Cから径方向で最も離れた部分までの距離)は80mm以上でもよく、450mm以下でもよい。コイル10が磁界共鳴方式で電気自動車に電力を伝送する電力伝送システムSの送電コイルユニット又は受電コイルユニットで用いられる場合、コイル要素10iの半径は、通常、200mm以上で350mm以下である。
【0073】
コイル要素10iの厚さ(導電体10Eの厚さ)は、コイル要素10iの軸方向に沿って測定される。コイル要素10iの厚さ(導電体10Eの厚さ)は、例えば0.1mm以上2.0mm以下でもよく、0.2mm以上1.0mm以下でもよく、0.3mm以上10.7mm以下でもよい。コイル要素10iの厚さ(導電体10E)は、例えば0.15mm以上0.35mm以下でもよい。磁界共鳴方式で電気自動車に電力を伝送する場合、10kHzから200kHz、特に79kHzから90kHzの高周波電流の周波数域で、1kW以上、望ましくは5kW以上の電力を伝送可能とすることが望ましい。この場合、銅で形成されるコイル要素10iの厚さは、0.4mm以上であることが好ましい。
【0074】
コイル要素10iにおける導電体10Eの線幅は、特に限られない。ただし、例えば79kHzから90kHzの高周波電流の周波数域で、1kW以上、好ましくは5kW以上の電力を伝送可能とすることを考慮すると、各ターン部101~108の線幅は、2mm以上20mm以下でもよく、2mm以上16mm以下、2mm以上12mm以下、2mm以上8mm以下でもよい。なお、線幅とは、導電体10Eが周回する方向に直交する断面での導電体10Eの内周面と外周面との間の距離のことを意味する。
【0075】
また、断面形状が矩形となるコイル要素10i(導電体10E)のアスペクト比は、コイル要素10i(導電体10E)の線幅(各ターン部10nの径方向での幅)をコイル要素10i(導電体10E)の厚さで割ることにより定められる。コイル要素10i(導電体10E)のアスペクト比は、2以上12以下でもよいし、3以上10以下でもよい。
【0076】
導電体10Eの厚さ及び線幅の測定は、コイルユニット5を軸方向に切断して導電体10Eを露出させた断面において、導電体10Eの各部を定規などで測定することにより行ってもよいし、断面画像の解析で行ってもよい。また、コイルユニット5からコイル要素10iを取り出して、導電体10Eの厚さを、定規、ノギス等で測定してもよい。同様に、コイルユニット5の他の部材の寸法も、その断面を定規などで測定することにより行ってもよいし、断面画像の解析で行ってもよい。
【0077】
コイル10は、第1接続端子56が接続される端部10e1と、第2接続端子57が接続される10e2とを有する。図示された例では、コイル10は、単一のコイル要素10iから構成される。このため、一方の端部10e1は、コイル10の径方向の内方に位置する内方端部である。また、他方の端部10e2は、コイル10の径方向の外方に位置する外方端部である。内方端部10e1は、コイル要素10iの第1ターン部101の端部である。外方端部10e2は、コイル要素10iの第8ターン部108の端部である。内方端部10e1は、外方端部10e2に比べて中心軸線Cに近い。言い換えると、外方端部10e2は、内方端部10e1に比べて中心軸線Cから遠い。
【0078】
図2乃至図6に示す例では、第2~第8ターン部102~108のピッチは等しい。しかしながら、図5に示すように、コイル要素10iの内方端部10e1と第2ターン部102の第1直線部11との距離は、第2ターン部102の第1直線部11と第3ターン部103の第1直線部11との距離よりも大きい。より具体的には、内方端部10e1を含むコイル要素10iの内方端部領域(図2乃至図6に示す例では、第1ターン部101の第1直線部11)と第2ターン部102の第1直線部11との距離が、第2ターン部102の第1直線部11と第3ターン部103の第1直線部11との距離よりも大きい。本件発明者が得た知見によれば、第1接続端子56がコイル要素10iの内方端部10e1に接続される例において、内方端部10e1が第2ターン部102から離れていることにより、コイルユニット5の損失を抑制することができる。とりわけ、軸方向に見て、コイル要素10iの上記内方端部領域と重なるシールド小片31の鉄損を、効果的に抑制することができる。ここで、鉄損とは、第1シールド部材30の磁束によって生じる損失のことである。もちろん、コイル要素10iの内方端部10e1と第2ターン部102の第1直線部11との距離は、第2ターン部102の第1直線部11と第3ターン部103の第1直線部11との距離と等しくてもよい。言い換えると、第1~第8ターン部101~108のピッチは、互いに等しくてもよい。
【0079】
なお、中心軸線Cは、本実施の形態では次のようにして定められる。まず、第2ターン部102の径方向の内方の端部から第2ターン部102と相似の形状の線状の仮想ターン部を径方向の内方に渦巻形状をなすように順次描画していく。そして、直径1cm内に収まる仮想ターン部が描画できるまで描画を継続する。そして、直径1cm内に収まる仮想ターン部の径方向の内方の領域を、渦巻形状の周方向及び径方向に直交する方向に通過する線が、中心軸線Cとして定められる。
【0080】
(磁性体樹脂層)
磁性体樹脂層20は、磁気の透過及び/又は漏れ磁界の抑制のために設けられている。磁性体樹脂層20は、コイル10の軸方向でコイル10と重なる。この状態で、磁性体樹脂層20は、コイル10の第2主面10bに直接接触している。言い換えると、磁性体樹脂層20は、導電体10Eと直接接触している。図示された例では、磁性体樹脂層20は、コイル10の第2主面10bに密着している。言い換えると、磁性体樹脂層20は、導電体10Eと密着している。図示された例では、磁性体樹脂層20は、その外縁が、軸方向に見てコイル10の外側に位置するように形成されている。
【0081】
磁性体樹脂層20は磁性を有する。コイルユニット5で生じる磁界は、コイル10の中心軸線Cに対して全方向に広がるように生じる。この際、磁性体樹脂層20は磁性を有することで、広がろうとする磁束線を中心軸線C側に配向できる。また、コイルユニット5で生じる磁界がコイルユニット5の周辺に位置する周辺部品に到達すると、周辺部品に悪影響が生じる場合がある。そのため、磁性体樹脂層20は、磁力線の周辺部品への到達を抑制するために設けられている。これにより、磁性体樹脂層20は電流の発生に寄与しない漏れ磁界を抑制できる。
【0082】
磁性体樹脂層20は、一例として、樹脂を含む保持材料と、磁性体で構成される複数又は無数の磁性体粒子と、を含む。磁性体粒子は、保持材料に保持される。保持材料は絶縁性であり、詳しくは非磁性且つ絶縁性である。
【0083】
磁性体樹脂層20の保持材料を形成するための樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド等の熱硬化性樹脂を採用可能である。この場合、後述するようにコイル10と磁性体樹脂層20とを熱プレスによって一体化する際、磁性体樹脂層20の樹脂を、熱硬化の過程で、コイル10の形状に沿って変形させることが容易である。また、磁性体樹脂層20を形成するための樹脂として、ナイロンやポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂も採用可能である。この場合も、磁性体樹脂層20の樹脂を、コイル10の形状に沿って変形させることが容易である。また、保持材料は、例えば繊維強化プラスチックを含むか、又は繊維強化プラスチックから形成されてもよい。例えば、保持材料は、ガラス繊維強化ポリアミドを含むか、又はガラス繊維強化ポリアミドから形成されてよい。
【0084】
磁性体樹脂層20の磁性体粒子は、フェライト、特に軟磁性材料のフェライト、ナノ結晶磁性体、ケイ素鋼、電磁軟鉄、及びアモルファス金属のうちのいずれか又は二種以上から形成されてもよい。
【0085】
図4に示すように、磁性体樹脂層20は、コイル10の渦巻形状に対応する渦巻形状の凹部22を有する。凹部22は、磁性体樹脂層20のうち、コイル10の軸方向に、言い換えると磁性体樹脂層20の厚さ方向に窪んだ部分である。凹部22は、コイル10の軸方向に見て渦巻形状である。そして、コイル10の少なくとも一部は、その渦巻形状を凹部22の渦巻形状に整合させた状態で、凹部22内に収納されている。詳しくは、凹部22は、導電体10Eの全体を収納する。このため、図4に示すように、磁性体樹脂層20は、コイル10の第1主面10a以外の3つの面に直接接触している。
【0086】
本実施の形態では、導電体10Eは磁性体樹脂層20から突出しない。言い換えると、コイル10の第1主面10aと磁性体樹脂層20の第1側を向く面とは面一である。ただし、コイル10の一部が磁性体樹脂層20から突出するように、コイル10の一部のみが凹部22内に収納されてもよい。また、磁性体樹脂層20に凹部22が形成されず、平坦な磁性体樹脂層20の面にコイル10が設けられてもよい。また、導電体10Eは、外部に露出しない状態で磁性体樹脂層20に埋め込まれてもよい。
【0087】
上述したように、図示された例では、磁性体樹脂層20は、コイル10の第2主面10bに密着している。具体的には、磁性体樹脂層20は、コイル10に凹部22において溶着している。すなわち、コイル10と磁性体樹脂層20とは、凹部22においてアンカー効果で接合されている。コイル10と磁性体樹脂層20とは例えば熱プレスにより一体化される。この際、磁性体樹脂層20の一部がコイル10の表面の凹所に入り込み、その後、硬化する。これにより、コイル10と磁性体樹脂層20とが溶着され、磁性体樹脂層20はコイル10と密着する。
【0088】
磁性体樹脂層20は、後述する第1シールド部材30と同様に、複数に分割されていてもよい。この場合、磁性体樹脂層20は、複数の磁性体樹脂要素を含んでいてもよい。
【0089】
磁性体樹脂層20の比透磁率は、2.0以上であることが好ましく、2.0以上20.0以下でもよい。磁性体樹脂層20の比透磁率は、5.0以上であることがより好ましく、5.0以上20.0以下でもよい。磁性体樹脂層20の比透磁率は特に限られないが、大き過ぎると磁性体樹脂層20の柔軟性や強度が不所望に損なわれる場合がある。したがって、磁性体樹脂層20の比透磁率は30以下でもよい。
【0090】
(磁性体壁部)
磁性体壁部25は、図4に示すように、コイル10の第1主面10aよりも第1積層方向AD1に突出している。また、図2及び図4から理解されるように、軸方向に見て、磁性体壁部25は、コイル要素10iの複数のターン部101~108の間の隙間に沿って延びている。図示された例では、磁性体壁部25は渦巻形状であり、軸方向に見て、コイル要素10iの複数のターン部101~108の間の隙間と重なっている。
【0091】
磁性体壁部25は磁性を有する。磁性体壁部25は、渦電流による損失や漏れ磁束を抑制するために設けられる。また、磁性体壁部25は、他のコイルユニットとの結合係数を高くするために設けられる。磁性体壁部25の材料としては、上述した磁性体樹脂層20の材料と同じ材料を採用可能である。磁性体壁部25は、磁性体樹脂層20と一体に形成されてよい。
【0092】
磁性体壁部25の比透磁率は、2.0以上であることが好ましく、2.0以上20.0以下でもよい。磁性体壁部25の比透磁率は、5.0以上であることがより好ましく、5.0以上20.0以下でもよい。磁性体壁部25の比透磁率は特に限られないが、大き過ぎると磁性体壁部25の柔軟性や強度が不所望に損なわれる場合がある。したがって、磁性体壁部25の比透磁率は30以下でもよい。
【0093】
磁性体壁部25がコイル10の第1主面10aよりも第1積層方向AD1に突出する突出高さ25Hは、特に限られるものではないが、例えば0.5mm以上でもよく、1.0mm以上でもよい。
【0094】
(第1シールド部材)
第1シールド部材30は、磁気の透過及び/又は漏れ磁界の抑制のために設けられている。第1シールド部材30は、第2シールド部材50と、コイル10及び磁性体樹脂層20との間に設けられている。第1シールド部材30は、板状に形成され、コイル10の軸方向に垂直な面に沿って拡がっている。第1シールド部材30は、軸方向に見て、その外周縁が磁性体樹脂層20及びコイル10の外側に位置する大きさを有している。図示された例では、第1シールド部材30は、軸方向に見て四角形状である。
【0095】
第1シールド部材30は磁性体を含む。上述したように、コイルユニット5で生じる磁界は、コイル10の中心軸線Cに対して全方向に広がるように生じる。この際、第1シールド部材30は磁性を有することで、広がろうとする磁束線を中心軸線C側に配向できる。また、第1シールド部材30は、磁力線の周辺部品への到達を抑制するために設けられている。これにより、第1シールド部材30は電流の発生に寄与しない漏れ磁界を抑制できる。
【0096】
第1シールド部材30は好ましくは軟磁性体を含む。より具体的には、第1シールド部材30はフェライトを含む、好ましくはソフトフェライトを含む。また、第1シールド部材30は、ナノ結晶磁性体を含んでもよい。
【0097】
図4に示す例では、第1シールド部材30は磁性体樹脂層20から離間して配置されているが、これに限られない。第1シールド部材30は、磁性体樹脂層20に接していてもよい。第1シールド部材30が磁性体樹脂層20から離間して配置される場合、第1シールド部材30と磁性体樹脂層20との間には、図示しないスペーサが配置されていてよい。これにより、第1シールド部材30と磁性体樹脂層20との間の距離を、所定の距離に維持することができる。第1シールド部材30と磁性体樹脂層20との間の距離は、特に限定されないが、例えば3mm以下である。なお、第1シールド部材30と磁性体樹脂層20との間の距離が長くなるほど、コイルユニット5から放熱されづらくなりコイルユニット5が高温になる虞がある。このため、第1シールド部材30と磁性体樹脂層20との間の距離は、1mm以下であることが好ましい。第1シールド部材30と磁性体樹脂層20との間の距離は、0mmであってもよい。言い換えると、第1シールド部材30と磁性体樹脂層20とは、直接接触または密着していてもよい。第1シールド部材30と磁性体樹脂層20との間の距離を小さくすることは、コイルユニット5の寸法(とりわけ、軸方向に沿った寸法)を小さくするためにも好ましい。
【0098】
図示された例では、第1シールド部材30は、複数のシールド小片30Pに分割されている。言い換えると、第1シールド部材30は、同一平面内に配置された複数のシールド小片30Pを含む。第1シールド部材30を複数のシールド小片30Pによって形成することにより、軸方向に見て外縁がコイル10の外側に位置する大きさの第1シールド部材30を、容易に作製することができる。軸方向に見た各シールド小片30Pの寸法は、当該シールド小片30Pを150mm×150mmの正方形の輪郭で囲むことが可能な寸法であってよい。
【0099】
図示された例では、第1シールド部材30は、第1~第8シールド小片31~38を含む。図示された例では、各シールド小片31~38は、フェライトを含む。より具体的には、各シールド小片31~38は、フェライト板で形成されている。
【0100】
隣り合うシールド小片31,32;32,33;33,34;34,35;35,36;36,37;37,38;38,31の間には、間隙40が形成されている。間隙40の幅は任意であるが、シールド小片31~38の製造公差を考慮すると、間隙40の幅は1mm以上であることが好ましい。また、間隙40を通じた磁力線の透過を抑制する観点から、間隙40の幅は6mm以下であることが好ましい。
【0101】
図示された例では、各シールド小片31~38は、全体として三角形状である。より具体的には、各シールド小片31~38は、全体として直角三角形状である。隣り合うシールド小片31,32;32,33;33,34;34,35;35,36;36,37;37,38;38,31の間に形成された第1~第8間隙41~48は、中心軸線Cから放射状に延びている。軸方向に見て、第1~第8間隙41~48は、それぞれ、第1~第8直線部群11G~18Gの少なくとも一部を横断する。図示された例では、軸方向に見て、第1~第8間隙41~48は、それぞれ、第1~第8直線部群11G~18Gを横断する。言い換えると、軸方向に見て、第1~第8間隙41~48は、それぞれ、第1~第8直線部群11G~18Gよりも径方向の内方から径方向の外方に亘って延びている。
【0102】
第1間隙41が第1直線部11を横断するようにシールド小片31,38が配置されていることにより、第1直線部11の周囲に形成される磁力線が第1間隙41を通じて第2シールド部材50に到達することが抑制される。これにより、第1直線部11の周囲に形成される磁力線によって、第2シールド部材50に渦電流が発生することを抑制することができる。このことは、第1間隙41の存在によるコイルユニット5の損失の増大を抑制可能であることを意味する。
【0103】
同様に、第2~第8間隙42~48がそれぞれ第2~第8直線部12~18を横断するようにシールド小片31,32;32,33;33,34;34,35;35,36;36,37;37,38が配置されていることにより、第2~第8直線部12~18の周囲に形成される磁力線が第2~第8間隙42~48を通じて第2シールド部材50に到達することが抑制される。これにより、第2~第8直線部12~18の周囲に形成される磁力線によって、第2シールド部材50に渦電流が発生することを抑制することができる。このことは、第2~第8間隙42~48の存在によるコイルユニット5の損失の増大を抑制可能であることを意味する。
【0104】
軸方向に見て、第1間隙41と第1直線部11とが成す角度は、例えば80°~100°であってよい。この場合、第1間隙41の存在によるコイルユニット5の損失の増大を効果的に抑制することができ、第1間隙41の存在によるコイルユニット5の性能の低下を効果的に抑制することができる。さらに、図5から理解されるように、軸方向に見て、第1間隙41と第1直線部11とが成す角度は、90°であってもよい。この場合、第1間隙41の存在によるコイルユニット5の損失の増大を更に効果的に抑制することができる。
【0105】
同様に、軸方向に見て、第2~第8間隙42~48と第2~第8直線部12~18とが成す角度は、それぞれ、例えば80°~100°であってよい。この場合、第2~第8間隙42~48の存在によるコイルユニット5の損失の増大を効果的に抑制することができる。さらに、図5から理解されるように、軸方向に見て、第2~第8間隙42~48と第2~第8直線部12~18とが成す角度は、90°であってもよい。この場合、第2~第8間隙42~48の存在によるコイルユニット5の損失の増大を更に効果的に抑制することができる。なお、軸方向に見て間隙40がターン部101~108の曲線部と交わる場合、軸方向に見て、間隙40と、当該間隙40とターン部101~108との交点における上記曲線部の接線と、が成す角度が80°~100°であることが好ましく、90°であることがより好ましい。この場合も、当該間隙40の存在によるコイルユニット5の損失の増大を効果的に抑制することができる。
【0106】
上述したように磁性体樹脂層20が複数の磁性体樹脂要素を含む場合、各磁性体樹脂要素は、軸方向に重なるシールド小片と同様の寸法及び形状を有していてよい。この場合、隣り合う磁性体樹脂要素間を延びる隙間は、軸方向に見て、シールド小片31~38間を延びる間隙41~48と一致していてもよい。
【0107】
(第2シールド部材)
第2シールド部材50は、コイル10の第2側に配置されている。第2シールド部材50は、コイル10が発する電磁波を第2側から遮蔽する。コイルユニット5が発する電磁波が第2シールド部材50によって遮断されることにより、当該電磁波が他の電子部品や人体等に影響を与えることを抑制することができる。第2シールド部材50を形成する材料としては、例えばアルミニウム等の金属を採用可能である。
【0108】
図4に示すように、第2シールド部材50は、第1シールド部材30から離間して配置されている。第2シールド部材50と第1シールド部材30との間には、スペーサ55が配置されていてよい。これにより、第2シールド部材50と第1シールド部材30との距離を、所定の距離に維持することができる。スペーサ55は、絶縁性の部材であれば特に限定されないが、熱伝導部材であることが好ましい。これにより、スペーサ55によってコイルユニット5からの放熱を促すことができる。第1シールド部材30と第2シールド部材50とは、スペーサ55としての熱伝導部材を介して接続されていてもよい。
【0109】
スペーサ55としての熱伝導部材は、例えば、絶縁性の樹脂に熱伝導性の高い材料を分散させることにより作製された絶縁性放熱材料で形成することができる。また、スペーサ55に高い熱伝導性が要求される場合には、スペーサ55は、上記絶縁性放熱材料と金属製の部材とを用いて作製されてもよい。例えば、アルミなどの金属で作製された金属製ブロックを上記絶縁性放熱材料で作製されたフィルムで挟むことにより、高い熱伝導性を有するスペーサ55を作製することができる。このように作製されたスペーサ55は、第1シールド部材30と金属製ブロックとの間、及び、第2シールド部材50と金属製ブロックとの間に上記フィルムが位置するように、第1シールド部材30と第2シールド部材50との間に配置されることで、第1シールド部材30と第2シールド部材50との間の絶縁性を担保しつつ、コイルユニット5からの放熱を効果的に促進することができる。
【0110】
ここで、第2シールド部材50を第1シールド部材30に接近して配置すると、例えば第2シールド部材50と第1シールド部材30との距離を10mm以下にすると、コイル10で生じた磁力線が第2シールド部材50に到達しやすくなり、これにより第2シールド部材50に渦電流が発生しやすくなると考えられる。第2シールド部材50に渦電流が発生しやすくなると、第2シールド部材50の損失が大きくなり、コイルユニット5の損失が大きくなる。とりわけ、本実施の形態のコイルユニット5では、第1シールド部材30に間隙40が形成されている。このため、上記磁力線は第1シールド部材30の間隙40を通じて第2シールド部材50に到達するものと考えられる。このため、本実施の形態のコイルユニット5において第2シールド部材50を第1シールド部材30に接近させると、第1シールド部材30に間隙40が形成されていないコイルユニットと比較して、コイルユニット5の損失が大きくなると考えられる。
【0111】
しかしながら、本件発明者が得た知見によれば、コイルユニット5がコイル10の第2主面10bに直接接触(あるいは密着)した磁性体樹脂層20を含むことにより、第2シールド部材50を第1シールド部材30に接近させることによるコイルユニット5の損失の増大を、抑制することができる。さらに、本件発明者が得た知見によれば、コイル10とシールド小片31~38間の間隙41~48との位置関係を上述した位置関係にすることにより、第2シールド部材50を第1シールド部材30に接近させることによるコイルユニット5の損失の増大を、抑制することができる。このことは、コイルユニット5の寸法(とりわけ、軸方向に沿った寸法)を小さくすることに寄与する。
【0112】
なお、コイルユニット5を自動車に搭載する場合、その設置可能なスペースは限られている。このため、コイルユニット5の寸法を小さくすることは、有利である。したがって、本実施の形態では、コイルユニット5が自動車に設置される受電コイルユニットである場合、第2シールド部材50と第1シールド部材30との間の距離は、10mm以下であってもよく、5mm以下であってよく、3mm以下であってよく、2mm以下であってよく、1mm以下であってもよい。一方、コイルユニット5が道路や駐車場に設置される送電コイルユニットである場合、第2シールド部材50と第1シールド部材30との間の距離は、10mm以上であってもよく、15mm以上であってもよく、20mm以上であってもよい。ただし、第2シールド部材50と第1シールド部材30との間の距離が長くなるほど、コイルユニット5から放熱されづらくなりコイルユニット5が高温になる虞がある。このため、コイルユニット5が道路や駐車場に設置される場合であっても、第2シールド部材50と第1シールド部材30との間の距離は、1mm以下であることが好ましい。また、第2シールド部材50と第1シールド部材30との間の距離が1mm以上である場合は、スペーサ55として、上述した高い熱伝導性を有するスペーサを用いることが好ましい。
【0113】
(接続端子)
図3に示すように、第1接続端子56は、コイル要素10iの最内周部を形成する第1ターン部101の第1直線部11に接続されている。第2接続端子57は、コイル要素10iの最外周部を形成する第8ターン部108の第8直線部18に接続されている。第1接続端子56及び第2接続端子57は、例えば高周波電流供給部1A又は変換部2Aとの接続の際に用いられ得る。
【0114】
送電コイルユニットとしてコイルユニット5を用いる場合、第1接続端子56及び第2接続端子57が図1で示したような高周波電流供給部1A又は交流電源に接続される。高周波電流がコイルユニット5に供給されると、電流を、第1接続端子56からコイル10に流した後、第2接続端子57から高周波電流供給部1A又は交流電源に流すことができる。また、電流を、第2接続端子57からコイル10に流した後、第1接続端子56から高周波電流供給部1A又は交流電源に流すことができる。これにより、コイル10の中心軸線に沿う磁力線を含む磁界を発生させることができる。
【0115】
一方で、受電コイルユニットとしてコイルユニット5を用いる場合、コイル10の中心軸線に沿う磁力線を含む磁界を受けることで、コイル10に高周波電流を発生させることができる。そして、この高周波電流を、第1接続端子56又は第2接続端子57から外部の装置に供給できる。
【0116】
図5に示す例では、第1接続端子56は、コイル10の第2主面10bの側において、コイル10の内方端部10e1に接続されているが、これに限られない。第1接続端子56は、コイル10の第1主面10aの側において、コイル10の内方端部10e1に接続されていてもよい。第1接続端子56は、軸方向に見て、コイル10の内方から外方へ延びている。この例において、図4から理解されるように、接続端子56は、導電性の接続部58を介してコイル10に接続されている。接続端子56は、コイル10の第2~第8ターン部102~108から軸方向に離間して、コイル10の内方から外方へ延びている。
【0117】
図5に示すように、第1接続端子56は、軸方向に見て、コイル10の内方から外方へ延びる間隙40内を延びていてよい。また、図4に示すように、第1接続端子56は、コイルユニット5の側面視において、シールド小片30Pと重なる高さ位置で、コイル10の内方から外方へ延びていてよい。本件発明者が得た知見によれば、これにより、第1シールド部材30の損失を抑制可能である。
【0118】
第1接続端子56と接続部58、接続部58とコイル10、及び、第2接続端子57とコイル10の接続は、超音波接合で行われる。ただし、その接続手法は限られず、例えば導電性接着剤による接続が採用されてもよい。
【0119】
(内枠)
内枠60は、図2に示すように、コイル10の内方を周状に延びている。図4から理解されるように、内枠60は、コイル10の第1主面10aよりも第1積層方向AD1に突出している。また、内枠60は、第1シールド部材30の第1側、言い換えると第1シールド部材30よりもコイル10の側、に位置している。
【0120】
内枠60は磁性を有する。内枠60は、渦電流による損失(いわゆるジュール損)や漏れ磁束を抑制するために設けられる。また、内枠60は、他のコイルユニットとの結合係数を高くするために設けられる。ここで、ジュール損とは、コイル10又は第2シールド部材50の電流によって生じる損失のことである。
【0121】
本実施の形態における内枠60は、好ましくは軟磁性体を含む。より具体的には、内枠60はフェライトを含む、好ましくはソフトフェライトを含む。また、内枠60は、ナノ結晶磁性体を含んでもよい。
【0122】
内枠60の比透磁率は特に限られないが、100以上であることが好ましく、100以上10000以下でもよい。内枠60の比透磁率は、500以上であってもよく、1000以上であってもよく、2000以上であってもよく、2500以上であってもよい。内枠60の比透磁率は8000以下であってもよく、6000以下であってもよく、4000以下であってもよく、3500以下であってもよい。
【0123】
図4に示す例では、内枠60の下端部は、磁性体樹脂層20に埋め込まれている。磁性体樹脂層20の第1側を向く面には、内枠60を収容する凹部23が設けられている。もちろん、内枠60は、磁性体樹脂層20の第1側を向く面上に配置されていてもよい。
【0124】
内枠60が第1主面10aよりも第1積層方向AD1に突出する突出高さ60Hは、特に限られるものではないが、例えば0.5mm以上でもよく、1.0mm以上でもよく、2.0mm以上でもよく、3.0mm以上でもよい。内枠60の幅60Wは、特に限られるものではないが、例えば3mm以上でもよく、5mm以上でもよい。内枠60の幅60Wは、10mm以下でもよい。
【0125】
図示された例では、コイル10が全体として多角形状であることに対応して、内枠60は全体として多角形状である。内枠60は、棒状に形成された複数の内枠要素61~69を含む。各内枠要素61~69は、コイル要素10iの直線部11~18に沿って、直線状に延びる。
【0126】
図示された例では、コイル10が全体として八角形状であることに対応して、内枠60は全体として八角形状である。内枠60は、第1~第9内枠要素61~69を含む。第1~第8内枠要素61~68は、それぞれ、コイル要素10iの第1ターン部101の第1~第8直線部11~18に沿って、直線状に延びる。第9内枠要素69は、コイル要素10iの第2ターン部102の第1直線部11に沿って、直線状に延びる。図示された例では、第9内枠要素69は、軸方向に見て、第8内枠要素68と第1接続端子56との間を延びている。第9内枠要素69は、軸方向に見て、第1接続端子56と重なっていない。
【0127】
コイル10と内枠60との距離60Lは、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であってもよく、1mm以下であってもよく、0.5mm以下であってもよい。より詳しくは、第1ターン部101の第1~第8直線部11~18と第1~第8内枠要素61~68との距離60Lは、それぞれ、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であってもよく、1mm以下であってもよい。また、第2ターン部102の第1直線部11と第9内枠要素69との距離60Lは、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であってもよく、1mm以下であってもよい。距離60Lは、0mmであってもよい。すなわち、コイル10と内枠60は互いに直接接触していてもよい。したがって、距離60Lは、0mm以上3mm以下であってよい。
【0128】
複数の内枠要素61~69は、互いから分離していてもよい。この場合、複数の内枠要素61~69の周方向に隣り合う端部の距離は、0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましい。この場合、周方向に隣り合う内枠要素61,62;62,63;63,64;64,65;65,66;66,67;67,68;68,69の間からの磁束の漏れが抑制される。複数の内枠要素61~69の周方向に隣り合う端部の距離は、0mmであってもよい。すなわち、周方向に隣り合う内枠要素61,62;62,63;63,64;64,65;65,66;66,67;67,68;68,69は、互いに直接接触していてもよい。もちろん、複数の内枠要素61~69は、一体に形成されていてもよい。
【0129】
(外枠)
外枠70は、図2に示すように、外枠70は、コイル10の外方を周状に延びている。図4から理解されるように、外枠70は、コイル10の第1主面10aよりも第1積層方向AD1に突出している。また、軸方向に見て、外枠70は、第1シールド部材30の外縁30eよりも内側に位置する。外枠70は、第1シールド部材30の第1側、言い換えると第1シールド部材30よりもコイル10の側、に位置している。
【0130】
外枠70は磁性を有する。外枠70は、渦電流による損失(いわゆるジュール損)や漏れ磁束を抑制するために設けられる。また、外枠70は、他のコイルユニットとの結合係数を高くするために設けられる。
【0131】
本実施の形態における外枠70は、は好ましくは軟磁性体を含む。より具体的には、外枠70はフェライトを含む、好ましくはソフトフェライトを含む。また、外枠70は、ナノ結晶磁性体を含んでもよい。
【0132】
外枠70の比透磁率は特に限られないが、100以上であることが好ましく、100以上10000以下でもよい。外枠70の比透磁率は、1000以上であってもよく、2000以上であってもよく、3000以上であってもよい。外枠70の比透磁率は8000以下であってもよく、6000以下であってもよく、4000以下であってもよい。
【0133】
図4に示す例では、外枠70の下端部は、磁性体樹脂層20に埋め込まれている。磁性体樹脂層20の第1側を向く面には、外枠70を収容する凹部24が設けられている。もちろん、外枠70は、磁性体樹脂層20の第1側を向く面上に配置されていてもよい。
【0134】
外枠70が第1主面10aよりも第1積層方向AD1に突出する突出高さ70Hは、特に限られるものではないが、例えば0.5mm以上でもよく、1.0mm以上でもよく、2.0mm以上でもよく、3.0mm以上でもよい。外枠70の幅70Wは、特に限られるものではないが、例えば3mm以上でもよく、5mm以上でもよい。外枠70の幅70Wは、10mm以下でもよい。
【0135】
図示された例では、コイル10が全体として多角形状であることに対応して、外枠70は全体として多角形状である。外枠70は、棒状に形成された複数の外枠要素71~79を含む。各外枠要素71~79は、コイル要素10iの直線部11~18に沿って、直線状に延びる。
【0136】
図示された例では、コイル10が全体として八角形状であることに対応して、外枠70は全体として八角形状である。外枠70は、第1~第9外枠要素71~79を含む。第1~第8外枠要素71~78は、それぞれ、コイル要素10iの第8ターン部108の第1~第8直線部11~18に沿って、直線状に延びる。第9外枠要素79は、コイル要素10iの第7ターン部107の第8直線部18に沿って、直線状に延びる。図示された例では、第9外枠要素79は、軸方向に見て、第1外枠要素71と第2接続端子57との間を延びている。第9外枠要素79は、軸方向に見て、第2接続端子57と重なっていない。
【0137】
コイル10と外枠70との距離70Lは、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であってもよく、1mm以下であってもよく、0.5mm以下であってもよい。より詳しくは、第8ターン部108の第1直線部11と第1外枠要素71との距離は、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であってもよく、1mm以下であってもよい。同様に、第8ターン部108の第2~第8直線部12~18と第2~第8外枠要素72~78との距離は、それぞれ、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であってもよく、1mm以下であってもよい。また、第7ターン部107の第8直線部18と第9外枠要素79との距離は、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であってもよく、1mm以下であってもよい。距離70Lは、0mmであってもよい。すなわち、コイル10と外枠70は互いに直接接触していてもよい。したがって、距離70Lは、0mm以上3mm以下であってよい。
【0138】
図5に示すように、第8外枠要素78と第9外枠要素79とは、互いから離間している。第2接続端子57は、第8外枠要素78と第9外枠要素79との間を通って外枠70の内側から外側へ延び出る。他の外枠要素71~78も、互いから分離していてもよい。外枠要素71及び79も、互いから分離していてよい。この場合、外枠要素71~78の周方向に隣り合う端部の距離及び外側要素79,71の周方向に隣り合う端部の距離は、0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましい。この場合、周方向に隣り合う外枠要素71,72;72,73;73,74;74,75;75,76;76,77;77,78;79,71の間からの磁束の漏れが抑制される。外枠要素71~78の周方向に隣り合う端部の距離及び外側要素79,71の周方向に隣り合う端部の距離は、0mmであってもよい。すなわち、周方向に隣り合う外枠要素71,72;72,73;73,74;74,75;75,76;76,77;77,78;79,71は、互いに直接接触していてもよい。もちろん、複数の外枠要素71~79は、一体に形成されていてもよい。
【0139】
図示された例では、外枠70は、さらに、第10~第11外枠要素80,81を有している。第10~第11外枠要素80,81は、軸方向に見て、第2接続端子57の両側で、第2接続端子57に沿って延びている。
【0140】
第10外枠要素80の一方の端部は、第8外枠要素78の近傍に配置されている。第10外枠要素80の上記一方の端部と第8外枠要素78との距離は、0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましい。この場合、第10外枠要素80と第8外枠要素78との間からの磁束の漏れが抑制される。第10外枠要素80の上記一方の端部と第8外枠要素78との距離は、0mmであってもよい。もちろん、第10外枠要素80は、複数の外枠要素71~79と一体に形成されていてもよい。
【0141】
第11外枠要素81の一方の端部は、第9外枠要素79の近傍に配置されている。第11外枠要素81の一方の端部と第9外枠要素79との距離は、0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましい。この場合、第11外枠要素81と第9外枠要素79との間からの磁束の漏れが抑制される。第11外枠要素81の上記一方の端部と第9外枠要素79との距離は、0mmであってもよい。もちろん、第11外枠要素81は、複数の外枠要素71~79と一体に形成されていてもよい。
【0142】
図示された例では、図6に示すように、第1外枠要素71は、不連続部85を含む。不連続部85は、第1外枠要素71の両端部の間に形成されている。より詳しくは、第1外枠要素71は、第1外枠要素71の第1方向D1に沿って並ぶ第1部分71a及び第2部分71bを含む。第1部分71aの一方の端部71aaは、第1外枠要素71の一方の端部を形成する。第1部分71aの他方の端部71abは、第2部分71bの一方の端部71baと第1方向D1に対面する。第2部分71bの他方の端部71bbは、第1外枠要素71の他方の端部を形成する。第1部分71aの他方の端部71abと第2部分71bの一方の端部71baとの間に、不連続部85が形成されている。不連続部85は、軸方向に見て、第1接続端子56と重なる。
【0143】
本件発明者が得た知見によれば、第1接続端子56がコイル10の内方端部10e1に接続されたコイルユニット5において、外枠70に、軸方向に見て第1接続端子56と重なる不連続部85が形成されていることにより、コイルユニット5の損失(とりわけ、第1シールド部材30の鉄損)を効果的に抑制することができる。とりわけ、軸方向に見て、コイル要素10iの上記内方端部領域(図示された例では、第1ターン部101の第1直線部11)と重なるシールド小片31の鉄損を、効果的に抑制することができる。
【0144】
図6に示す例では、不連続部85の幅85Wは、第1接続端子56の幅よりも大きいが、これに限られない。図7に示すように、不連続部85の幅85Wは、第1接続端子56の幅よりも小さくてもよい。不連続部85の幅85Wは、0.8mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。不連続部85の幅85Wは、2mm以上であってもよく、5mm以上であってもよく、10mm以上であってもよく、20mm以上であってもよく、30mm以上であってもよく、40mm以上であってもよい。不連続部85の幅85Wが5mm以上であれば、コイルユニット5に振動や衝撃が加わって第1外枠要素71の第1部分71a及び第2部分71bが移動しても、不連続部85の幅85Wが0.8mm未満になる虞が抑制される。なお、不連続部85の幅85Wは、不連続部85を挟んで対面する外枠70の端部71ab及び71baの距離である。
【0145】
また、図6に示すように、軸方向に見て、不連続部85が第1接続端子56と重なり、且つ、不連続部85の幅85Wが第1接続端子56の幅よりも大きい場合、磁界が過度に漏洩するのを防止する観点から、不連続部85を形成する外枠70の端部71ab,71baと第1接続端子56との距離71La,71Lbは、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。
【0146】
<変形例>
なお、上述した一実施の形態に対して、様々な変更を加えることが可能である。以下に説明する変形例において、上述したコイルユニット5と同様の部分には同一又は同様の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0147】
図2乃至図7に示す例では、コイルユニット5は、内枠60及び外枠70を有するが、これに限られない。コイルユニット5は、内枠60及び外枠70の一方のみを有していてもよい。この場合も、コイルユニット5の損失(とりわけジュール損)を抑制することができる。
【0148】
また、図示された例では、内枠60は周状に形成されているが、これに限られない。内枠60は、軸方向に見てコイル10の内方領域を連続して広がる板またはブロックの形状であってもよい。軸方向に見て、内枠60は、コイル10の第1ターン部11近傍から中心軸線Cに亘って、連続して広がっていてもよい。中心軸線Cが内枠60を通過してもよい。
【0149】
また、図2乃至図7に示す例では、不連続部85は、軸方向に見て第1接続端子56と重なっているが、これに限られない。図8に示すように、不連続部85は、軸方向に見て第1接続端子56と重なっていなくてもよい。この場合も、コイルユニット5の損失(とりわけ鉄損)を抑制することができる。
【0150】
また、本件発明者が得た知見によれば、不連続部85は、軸方向に見てシールド小片30P間の間隙40と重なっていてもよい。この場合、不連続部85は、軸方向に見て第1接続端子56と重なっていなくてもよい。この場合も、コイルユニット5の損失(とりわけ鉄損)を効果的に抑制することができる。
【0151】
また、図2乃至図8に示す例では、外枠70は不連続部85を有するが、これに限られない。外枠70は不連続部85を有していなくてもよい。この場合も、コイルユニット5の損失(とりわけジュール損)を抑制することができる。
【0152】
また、図2乃至図8に示す例では、第1シールド部材30は、複数のシールド小片30Pに分割されているが、これに限られない。第1シールド部材30は、複数のシールド小片30Pに分割されていなくてもよい。
【0153】
また、第1シールド部材30の分割の態様は、図2乃至図6に示す態様に限られない。例えば、図2乃至図6に示す例では複数のシールド小片30Pは概ね同じ大きさであるが、図9に示すように、複数のシールド小片30Pの大きさが互いに異なっていてもよい。なお、発明者が得た知見によれば、コイル要素10iが内方端部10e1から外方端部10e2に向かって中心軸線Cの周りを周回する方向を第1周回方向CD1とした場合、第1周回方向CD1に第1接続端子56と隣り合うシールド小片31の面積が大きいほど、当該シールド小片31の鉄損を小さくすることができ、第1シールド部材30全体の鉄損を小さくすることができる。言い換えると、第1シールド部材30の鉄損を抑制する観点では、第1周回方向CD1に第1接続端子56と隣り合うシールド小片31を小さくすることは好ましくない。したがって、第1周回方向CD1に第1接続端子56と隣り合うシールド小片31の面積は、当該シールド小片31と第1接続端子56を挟んで隣り合うシールド小片38の面積以上であることが好ましい。また、第1周回方向CD1に第1接続端子56と隣り合うシールド小片31の面積は、当該シールド小片31と第1周回方向CD1に隣り合うシールド小片32の面積以上であることが好ましい。
【0154】
図2乃至図6に示す例では、コイル10の形状を全体として正八角形状とすることで、コイルユニット5の性能を向上させているが、これに限られない。発明者が得た知見によれば、コイル10が全体として十二角形状である場合、コイル10の形状を正十二角形状に近づけることで、コイルユニット5の性能を向上させることができる。したがって、コイル10は全体して正十二角形状であってもよい。この場合、コイル要素10i(導電体10E)は、各ターン部101~108が概ね正十二角形を成すように巻き回されていてよい。
【0155】
また、図2乃至図6に示す例では、第1シールド部材30は、複数のシールド小片30Pに分割され、第1接続端子56は、軸方向に見て、隣り合うシールド小片30P間の間隙40内を延びているが、これに限られない。第1シールド部材30に、軸方向に見てコイル10の内方から外方へ延びる切欠を形成し、この切欠内を第1接続端子56が延びていてもよい。この場合も、第1接続端子56は、コイルユニット5の側面視において第1シールド部材30と重なる高さ位置で、コイル10の内方から外方へ延びていてよい。
【0156】
また、図2乃至図9に示す例では、コイル10は単一のコイル要素10iを含むが、これに限られない。図10乃至及び図13に示すように、コイル10は、複数のコイル要素10j,10jjを有していてもよい。この場合も、コイルユニット5が内枠60及び/又は外枠70を備えることにより、コイルユニット5の損失(とりわけジュール損)を抑制することができる。
【0157】
以下、図10乃至図13を参照して、複数のコイル要素10j,10jjを含むコイル10を備えたコイルユニット5について、説明する。図10は、本変形例に係るコイルユニット5の斜視図である。図11は、図10に示すコイルユニット5の分解斜視図である。図12は、図10のXII-XII線に沿うコイルユニット5の断面図である。図13は、コイルユニット5の平面図である。図11及び図13では、磁性体樹脂層20の図示を省略している。また、図13では、磁性体壁部25の図示を省略している。
【0158】
図10乃至図13に示す例では、コイル10は、軸方向に並ぶ第1コイル要素10j及び第2コイル要素10jjを含んでいる。第2コイル要素10jj及び第1コイル要素10jは、第1積層方向AD1にこの順で並んでいる。第1コイル要素10j及び第2コイル要素10jjの軸方向に沿ったピッチは、例えば、5mm以上40mm以下である。
【0159】
図示された例では、各コイル要素10j,10jjは、渦巻形状を有する導電体10Eを含む。導電体10Eは、径方向に並ぶ複数のターン部101~105を含む。図示された例では、導電体10Eは、第1~第5ターン部101~105を含む。第1~第5ターン部101~105は、径方向の内側から外側に向けて、この順に並んでいる。
【0160】
図12及び図13から理解されるように、第1コイル要素10jの第1~第5ターン部101~105は、それぞれ、第2コイル要素10jjの第1~第5ターン部101~105と軸方向に整列している。
【0161】
各コイル要素10j,10jjの各ターン部101~105は、中心軸線Cの周りに配置された複数の直線部11~17を含む。中心軸線Cを中心とする円の周方向に隣り合う直線部11~17は、互いに接続されている。各コイル要素10j,10jjの第1~第4ターン部101~104は、ターン接続部19を含む。第1~第4ターン部101~104は、それぞれ、そのターン接続部19において、第2~第5ターン部102~105に接続する。
【0162】
図13に示すように、第1~第4ターン部101~104のターン接続部19は、ターン接続部群19Gを形成する。ターン接続部群19Gは、全体として第4方向D4に延びている。ターン接続部群19Gと第4直線部群14Gとの間を中心軸線Cが通るように、ターン接続部群19Gは配置されている。
【0163】
図13から理解されるように、第1コイル要素10jの第1ターン部101の第1~第7直線部11~17及びターン接続部19は、それぞれ、第2コイル要素10jjの第1ターン部101の第1~第7直線部11~17及びターン接続部19と軸方向に整列している。同様に、第1コイル要素10jの第2~第4ターン部102~104の第1~第7直線部11~17及びターン接続部19は、それぞれ、第2コイル要素10jjの第2~第4ターン部102~104の第1~第7直線部11~17及びターン接続部19と軸方向に整列している。また、第1コイル要素10jの第5ターン部105の第1~第7直線部11~17は、それぞれ、第2コイル要素10jjの第5ターン部105の第1~第7直線部11~17と軸方向に整列している。
【0164】
図12から理解されるように、第1コイル要素10jの第1ターン部101と、第2コイル要素10jjの第1ターン部101とが、電気的に接続されている。図示された例では、第1コイル要素10jと第2コイル要素10jjとは、導電性の接続部59を介して接続されている。また、第2コイル要素10jjの第5ターン部105の第1直線部11に、第1接続端子56が接続されている。また、第1コイル要素10jの第5ターン部105の第7直線部17に、第2接続端子57が接続されている。
【0165】
図12に示すように、第1コイル要素10jがコイル10の第1主面10aを形成する。また、第2コイル要素10jjがコイル10の第2主面10bを形成する。磁性体樹脂層20は、コイル10の第2主面10bに密着している。図12に示す例では、コイル10は磁性体樹脂層20に埋め込まれている。図12に示す例では、磁性体樹脂層20は、第1コイル要素10jの第2側を向く面にも密着している。しかしながら、これに限られず、磁性体樹脂層20は第1コイル要素10jの第2側を向く面に密着していなくてもよい。
【0166】
図10乃至図13に示す例では、内枠60は、第1~第8内枠要素61~68を含む。第1~第7内枠要素61~67は、それぞれ、第1コイル要素10jの第1ターン部101の第1~第7直線部11~17に沿って、直線状に延びる。第8内枠要素68は、第1コイル要素10jの第1ターン部101のターン接続部19に沿って延びる。
【0167】
図10乃至図13に示す例では、外枠70は、第1~第8外枠要素71~78を含む。第1~第7外枠要素71~77は、それぞれ、コイル要素10jの第5ターン部105の第1~第7直線部11~17に沿って、直線状に延びる。第8外枠要素78は、第1コイル要素10jの第4ターン部104のターン接続部19に隣接して配置されている。第8外枠要素78は、第4方向D4に沿って、直線状に延びる。図示された例では、第8外枠要素78は、軸方向に見て、第1外枠要素71と第7外枠要素77との間を延びている。
【0168】
第8外枠要素78は、2つの不連続部85,86を含む。不連続部85,86は、第8外枠要素78の両端部の間に形成されている。より詳しくは、第8外枠要素78は、第4方向D4に沿って並ぶ第1~第3部分78a~78c含む。第1部分78aの一方の端部は、第8外枠要素78の一方の端部を形成する。第1部分78aの他方の端部は、第2部分78bの一方の端部と第4方向D4に対面する。第2部分78bの他方の端部は、第3部分78cの一方の端部と第4方向D4に対面する。第3部分78cの他方の端部は、第8外枠要素78の他方の端部を形成する。第1部分78aの他方の端部と第2部分78bの一方の端部との間に、不連続部85が形成されている。不連続部85は、軸方向に見て、第1接続端子56と重なる。第2部分78bの他方の端部と第3部分78cの一方の端部との間に、不連続部86が形成されている。第2接続端子57は、不連続部86を通じて外枠70の内側から外側に延び出る。
【0169】
図10乃至図13に示す例でも、外枠70は、不連続部85,86を有する。これにより、コイルユニット5の損失(とりわけ鉄損)を抑制することができる。さらに、不連続部85は、第1接続端子56と重なっている。これにより、コイルユニット5の損失(とりわけ鉄損)を効果的に抑制することができる。
【0170】
<コイルユニットの用途>
本実施形態に係るコイルユニット5は、上述したワイヤレス電力伝送システムSの送電装置1における送電コイルとして用いることができ、受電装置2における受電コイルとして用いることができる。
【0171】
送電コイルとしてコイルユニット5を用いる場合、第1接続端子56及び第2接続端子57が図1で示したような高周波電流供給部1A又は交流電源に接続される。高周波電流がコイルユニット5に供給されると、電流を、第1接続端子56からコイル10に流した後、第2接続端子57から高周波電流供給部1A又は交流電源に流すことができる。また、電流を、第2接続端子57からコイル10に流した後、第1接続端子56から高周波電流供給部1A又は交流電源に流すことができる。これにより、コイル10の中心軸線Cに沿う磁力線を含む磁界を発生させることができる。
【0172】
一方で、受電コイルとしてコイルユニット5を用いる場合、コイル10の内側を通過するように磁力線を含む磁界を受ける又は発生させることで、コイル10に高周波電流を発生させることができる。そして、この高周波電流を、第1接続端子56又は第2接続端子57から外部の装置に供給できる。
【0173】
また、コイルユニット5は、トランス、アンテナなどでも用いることができる。例えばトランスにおける一次側コイルとしてコイルユニット5が機能する場合には、第1接続端子56及び第2接続端子57が交流電源に接続される。そして、高周波電流を供給されることで、コイル10の中央側から鉄心に磁束を供給できる。
【0174】
<コイルユニット5の性能評価シミュレーション1>
以下、実施例1-1~1-5及び比較例1にかかるコイルユニットの性能評価のために行ったシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、ムラタソフトウェア株式会社製のFemtet(登録商標)で行った。
【0175】
実施例1-1~1-5及び比較例1のシミュレーションにおける共通の条件は、以下の通りである。
・コイルユニット5は、図2乃至図6に示す例と同様の、渦巻状に形成されたコイル10と、磁性体樹脂層20と、磁性体壁部25と、第1シールド部材30と、第2シールド部材50と、第1接続端子56と、第2接続端子57と、を含む。
・コイル10は、単一のコイル要素10iを有する。
・コイル要素10iは、概ね正八角形状に巻き回されている。
・コイル要素10iは、第1~第8ターン部101~108を有する。
・第2~第8ターン部102~108において、隣り合うターン部102,103;・・・;107,108間の距離は、6mmである。第1ターン部101の第1直線部11と第2ターン部102の第1直線部11との間の距離は、3mmである。
・コイル要素10iは、銅で形成される。
・コイル要素10iの線幅は6mmであり、厚さは0.5mmである。
・コイル10の第1方向D1及び第1方向D1に直交する第3方向D3に沿った寸法は、それぞれ、295mm及び295mmである。
・磁性体樹脂層20は、コイル10の第2主面10bに密着している。
・磁性体樹脂層20の比透磁率は10である。
・磁性体壁部25の比透磁率は10である。
・コイル10と第1シールド部材30との間の隙間の寸法は、1.0mmである。
・第1シールド部材30の比透磁率は、3000である。
・第1シールド部材30は、8つのシールド小片31~38に分割されている。
・各シールド小片31~38はフェライト板で形成される。
・隣り合うシールド小片31,32;32,33;33,34;34,35;35,36;36,37;37,38;38,31間の間隙41~48は、中心軸線Cから放射状に延びる。
・第1~第8間隙41~48は、軸方向に見て、それぞれ、第1~第8直線部11~18と直交している。
・第1~第8間隙41~48の幅は、5mmである。
・第1シールド部材30の第1方向D1及び第3方向D3の寸法は、それぞれ、300mm及び300mmである。
・磁性体樹脂層20と第1シールド部材30との間の距離は、1mmである。
・第2シールド部材50は、アルミニウムで形成される。
・第2シールド部材50の第1方向D1及び第3方向D3の寸法は、それぞれ、320mm及び320mmである。
・第1シールド部材30と第2シールド部材50との間の距離は、1mmである。
・第1接続端子56は、コイル10の内方端部10e1に接続され、コイル10の内方から外方へ延びている。軸方向に見て、第1接続端子56は、第1直線部群11Gを横断している。第1接続端子56は、軸方向に見て、第1間隙41内を延びている。
・供給する高周波電流は、40Aであり、周波数は、85KHzである。
【0176】
実施例1-1~1-5のシミュレーションにおける共通の条件は、以下の通りである。
【0177】
・コイルユニット5は、図2乃至図6に示す例と同様の内枠60及び外枠70を有する。
・内枠60の比透磁率は3000である。
・内枠60は、第1~第9内枠要素61~69を含む。
・各内枠要素61~69は、フェライト棒で形成される。
・内枠60の幅60Wは3mmであり、突出高さ60Hは3mmである。
・軸方向に見て、第1~第8内枠要素61~68と第1ターン部101の第1~第8直線部11~18との距離は、それぞれ、0.5mmである。軸方向に見て、第9内枠要素69と第2ターン部102の第1直線部11との距離は、0.5mmである。
・周方向に隣り合う内枠要素61~69の距離は、0.5mmである。
・外枠70の比透磁率は3000である。
・外枠70は、上述した第1~第9外枠要素71~79を含む。
・各外枠要素71~79は、フェライト棒で形成される。
・各外枠要素71~81の幅70Wは3mmであり、突出高さ70Hは3mmである。
・軸方向に見て、第1~第8外枠要素71~78と第8ターン部108の第1~第8直線部11~18との距離は、それぞれ、0.5mmである。軸方向に見て、第9外枠要素79と第7ターン部107の第8直線部18との距離は、0.5mmである。
・周方向に隣り合う外枠要素71~79の距離は、0.5mmである。
【0178】
実施例1-1~1-5及び比較例1のシミュレーションにおける個別の条件は、以下の通りである。
<実施例1-1>
・第1~第9外枠要素71~79のいずれにも、不連続部85は形成されていない。
<実施例1-2>
・第1外枠要素71に、不連続部85が形成されている。
・軸方向に見て、不連続部85は、第1接続端子56と重なっていない。
・不連続部85の幅85Wは、1mmである。
<実施例1-3>
・第1外枠要素71に、不連続部85が形成されている。
・軸方向に見て、不連続部85は、第1接続端子56と重なっている。
・不連続部85の幅85Wは、1mmである。
<実施例1-4>
・第1外枠要素71に、不連続部85が形成されている。
・軸方向に見て、不連続部85は、第1接続端子56と重なっている。
・不連続部85の幅85Wは、15mmである。
<実施例1-5>
・第1外枠要素71に、不連続部85が形成されている。
・軸方向に見て、不連続部85は、第1接続端子56と重なっている。
・不連続部85の幅85Wは、45mmである。
<比較例1>
・コイルユニットは内枠60及び外枠70のいずれも有していない。
【0179】
<評価>
図14に、シミュレーション1の結果を示す。図14中、「Q値」、「L」及び「Z」は、コイルユニット5のQ値、インダクタンス及びインピーダンスを意味する。「ジュール損」は、コイル10又は第2シールド部材50の電流によって生じる損失を意味する。「鉄損」は、第1シールド部材30の磁束によって生じる損失を意味する。「全損失」は、「ジュール損」と「鉄損」の合計である。
【0180】
図14から理解されるように、内枠60及び外枠70を有するコイルユニット5(実施例1-1~1-5のコイルユニット5)の損失は、内枠60及び外枠70を含まないコイルユニット(比較例1のコイルユニット)の損失よりも低い。とりわけ、実施例1-1~1-5のコイルユニット5は、比較例1のコイルユニットと比較して、ジュール損が抑制される。
【0181】
また、図14から理解されるように、外枠70に不連続部85が設けられたコイルユニット5(実施例1-2~1-5のコイルユニット5)は、外枠70に不連続部85が設けられていないコイルユニット5(実施例1-1のコイルユニット5)と比較して、第1シールド部材30の鉄損が顕著に抑制される。
【0182】
また、図14から理解されるように、軸方向に見て不連続部85が第1接続端子56と重なっているコイルユニット5(実施例1-3~1-5のコイルユニット5)は、軸方向に見て不連続部85が第1接続端子56と重なっていないコイルユニット5(実施例1-2のコイルユニット5)と比較して、第1シールド部材30の鉄損が顕著に抑制される。
【0183】
<コイルユニット5の性能評価シミュレーション2>
以下、実施例2-1~2-3及び比較例2にかかるコイルユニットの性能評価のために行ったシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、ムラタソフトウェア株式会社製のFemtet(登録商標)で行った。
【0184】
実施例2-1~2-3及び比較例2のシミュレーションにおける共通の条件は、以下の通りである。
・コイルユニット5は、図10乃至図13に示す例と同様の、渦巻状に形成されたコイル10と、磁性体樹脂層20と、磁性体壁部25と、第1シールド部材30と、第2シールド部材50と、第1接続端子56と、第2接続端子57と、を含む。
・コイル10は、第1コイル要素10j及び第2コイル要素10jjを有する。
・第1コイル要素10j及び第2コイル要素10jjは、概ね正八角形状に巻き回されている。
・第1コイル要素10j及び第2コイル要素10jjは、それぞれ、第1~第5ターン部101~105を有する。
・隣り合うターン部101,102;・・・;104,105間の距離は、6mmである。
・各コイル要素10j,jjは、銅で形成される。
・各コイル要素10j,jjの線幅は6mmであり、厚さは0.5mmである。
・コイル10の第1方向D1及び第3方向D3に沿った寸法は、それぞれ、295mm及び295mmである。
・磁性体樹脂層20は、コイル10の第2主面10bに密着している。
・磁性体樹脂層20の比透磁率は10である。
・磁性体壁部25の比透磁率は10である。
・コイル10と第1シールド部材30との間の隙間の寸法は、1.0mmである。
・第1シールド部材30の比透磁率は、3000である。
・第1シールド部材30は、8つのシールド小片31~38に分割されている。
・各シールド小片31~38はフェライト板で形成される。
・隣り合うシールド小片31,32;32,33;33,34;34,35;35,36;36,37;37,38;38,31間の間隙41~48は、中心軸線Cから放射状に延びる。
・第1~第8間隙41~48は、軸方向に見て、それぞれ、第1~第8直線部11~18と直交している。
・第1~第8間隙41~48の幅は、5mmである。
・第1シールド部材30の第1方向D1及び第3方向D3の寸法は、それぞれ、300mm及び300mmである。
・磁性体樹脂層20と第1シールド部材30との間の距離は、1mmである。
・第2シールド部材50は、アルミニウムで形成される。
・第2シールド部材50の第1方向D1及び第3方向D3の寸法は、それぞれ、320mm及び320mmである。
・第1シールド部材30と第2シールド部材50との間の距離は、1mmである。
・第1接続端子56及び第2接続端子58は、それぞれ、コイル要素10jj,10jの最外周のターン部105に接続されている。
・供給する高周波電流は、40Aであり、周波数は、85KHzである。
【0185】
実施例2-1~2-3及び比較例2のシミュレーションにおける個別の条件は、以下の通りである。
<実施例2-1>
・コイルユニット5は、図10乃至図13に示す例と同様の内枠60を有する。
・内枠60の比透磁率は3000である。
・内枠60は、第1~第8内枠要素61~68を含む。
・各内枠要素61~68は、フェライト棒で形成される。
・内枠60の幅60Wは3mmであり、突出高さ60Hは3mmである。
・軸方向に見て、第1~第8内枠要素61~68と第1ターン部101の第1~第8直線部11~18との距離は、それぞれ、0.5mmである。
・周方向に隣り合う内枠要素61~69の距離は、0.5mmである。
・コイルユニット5は、外枠70を有さない。
<実施例2-2>
・コイルユニット5は、図10乃至図13に示す例と同様の外枠70を有する。
・外枠70の比透磁率は3000である。
・外枠70は、上述した第1~第8外枠要素71~78を含む。
・各外枠要素71~78は、フェライト棒で形成される。
・各外枠要素71~78の幅70Wは3mmであり、突出高さ70Hは3mmである。
・軸方向に見て、第1~第7外枠要素71~77と第8ターン部108の第1~第7直線部11~17との距離は、それぞれ、0.5mmである。軸方向に見て、第8外枠要素78と第7ターン部107のターン接続部19との距離は、0.5mmである。
・周方向に隣り合う外枠要素71~78の距離は、0.5mmである。
・第8外枠要素78に、不連続部85,86が形成されている。
・軸方向に見て、不連続部85は、第1接続端子56と重なっている。
・不連続部85の幅85Wは、45mmである。
・コイルユニット5は、内枠60を有さない。
<実施例2-3>
・コイルユニット5は、図10乃至図13に示す例と同様の内枠60及び外枠70を有する。
・内枠60の比透磁率は3000である。
・内枠60は、第1~第8内枠要素61~68を含む。
・各内枠要素61~68は、フェライト棒で形成される。
・内枠60の幅60Wは3mmであり、突出高さ60Hは3mmである。
・軸方向に見て、第1~第8内枠要素61~68と第1ターン部101の第1~第8直線部11~18との距離は、それぞれ、0.5mmである。
・周方向に隣り合う内枠要素61~69の距離は、0.5mmである。
・外枠70の比透磁率は3000である。
・外枠70は、上述した第1~第8外枠要素71~78を含む。
・各外枠要素71~78は、フェライト棒で形成される。
・各外枠要素71~78の幅70Wは3mmであり、突出高さ70Hは3mmである。
・軸方向に見て、第1~第7外枠要素71~77と第8ターン部108の第1~第7直線部11~17との距離は、それぞれ、0.5mmである。軸方向に見て、第8外枠要素78と第7ターン部107のターン接続部19との距離は、0.5mmである。
・周方向に隣り合う外枠要素71~78の距離は、0.5mmである。
・第8外枠要素78に、不連続部85,86が形成されている。
・軸方向に見て、不連続部85は、第1接続端子56と重なっている。
・不連続部85の幅85Wは、45mmである。
<比較例2>
・コイルユニットは内枠60及び外枠70のいずれも有していない。
【0186】
<評価>
図15に、シミュレーション2の結果を示す。図15中、「Q値」、「L」及び「Z」は、コイルユニット5のQ値、インダクタンス及びインピーダンスを意味する。「ジュール損」は、コイル10又は第2シールド部材50の電流によって生じる損失を意味する。「鉄損」は、第1シールド部材30の磁束によって生じる損失を意味する。「全損失」は、「ジュール損」と「鉄損」の合計である。
【0187】
図15から理解されるように、内枠60及び外枠70を有するコイルユニット5(実施例2-1~2-3のコイルユニット5)の損失は、内枠60及び外枠70を含まないコイルユニット(比較例2のコイルユニット)の損失よりも低い。とりわけ、実施例2-1~2-3のコイルユニット5は、比較例2のコイルユニットと比較して、ジュール損が抑制される。
【0188】
また、図15から理解されるように、内枠60及び外枠70を有するコイルユニット5(実施例2-1~2-3のコイルユニット5)の全損失は、内枠60及び外枠70を含まないコイルユニット(比較例2のコイルユニット)の全損失よりも低い。とりわけ、実施例2-1~2-3のコイルユニット5は、比較例2のコイルユニットと比較して、ジュール損が抑制される。
【0189】
以上に説明してきた一実施の形態及びその変形例によるコイルユニット5は、任意の中心軸線Cの周りで渦巻形状に形成されたコイル要素10i;10j,10jjを含むコイル10と、第1シールド部材30と、コイル10の外方を周状に延びる外枠70と、を備える。コイル10は、第1主面10aと、第1主面10aとは反対側の面である第2主面10bとを有する。第1シールド部材30及びコイル10は、第2主面10bから第1主面10aに向かう第1方向AD1にこの順で積層されている。外枠70は、フェライトを含み、コイル10の第1主面10aよりも第1方向AD1に突出する。このようなコイルユニット5によれば、コイルユニット5の損失(とりわけジュール損)を抑制することができる。
【0190】
一実施の形態及びその変形例によるコイルユニット5は、コイル10の内方を周状に延びる内枠60を更に備える。内枠60は、フェライトを含み、コイル10の第1主面10aよりも第1方向AD1に突出する。このようなコイルユニット5によれば、コイルユニット5の損失(とりわけジュール損)を抑制することができる。
【0191】
一実施の形態及びその変形例によるコイルユニット5は、コイル10に接続された第1接続端子56を更に備える。コイル10は、中心軸線Cに近い内方端部10e1と、中心軸線Cから遠い外方端部10e2と、を有する。第1接続端子56は、コイル10の第2主面10bの側において、内方端部10e1に接続され、軸方向に見てコイル10の内方から外方へ延びている。外枠70に、軸方向に見て第1接続端子56と重なる不連続部85が形成されている。このようなコイルユニット5によれば、コイルユニット5の損失(とりわけ鉄損)を抑制することができる。
【0192】
一実施の形態及びその変形例によるコイルユニット5において、第1シールド部材30は、複数のシールド小片30Pに分割されている。第1シールド部材30には、隣り合うシールド小片30P間を直線状に延びる間隙40であって、軸方向に見てコイル10の内方から外方へ延びる間隙40が形成されている。外枠70に、軸方向に見て間隙40と重なる不連続部85が形成されている。このようなコイルユニット5によれば、コイルユニット5の損失(とりわけ鉄損)を抑制することができる。
【0193】
あるいは、一実施の形態及びその変形例によるコイルユニット5は、任意の中心軸線Cの周りで渦巻形状に形成されたコイル要素10i;10j,10jjを含むコイル10と、第1シールド部材30と、コイル10の内方を周状に延びる内枠60と、を備えている。コイル10は、第1主面10aと、第1主面10aとは反対側の面である第2主面10bとを有している。第1シールド部材30及びコイル10は、第2主面10bから第1主面10aに向かう第1方向AD1にこの順で積層されている。内枠60は、フェライトを含み、コイル10の第1主面10aよりも第1方向AD1に突出する。このようなコイルユニット5によれば、コイルユニット5の損失(とりわけジュール損)を抑制することができる。
【0194】
一実施の形態及びその変形例によるコイルユニット5は、コイル10に接続された第1接続端子56を更に備える。コイル10は、中心軸線Cに近い内方端部10e1と、中心軸線Cから遠い外方端部10e2とを有する。第1接続端子56は、コイル10の第2主面10bの側において内方端部10e1に接続され、軸方向に見てコイル10の内方から外方へ延びている。第1シールド部材30は、複数のシールド小片30Pに分割されている。第1シールド部材30には、隣り合うシールド小片30P間を直線状に延びる間隙40であって、コイル10の内方から外方へ延びる間隙40が形成されている。軸方向に見て、第1接続端子56は間隙40内を延びている。このようなコイルユニット5によれば、コイルユニット5の損失(とりわけ鉄損)を抑制することができる。
【0195】
変形例によるコイルユニット5は、コイル10に接続された第1接続端子56を更に備える。コイル10は、中心軸線Cに近い内方端部10e1と、中心軸線Cから遠い外方端部10e2とを有する。第1接続端子56は、コイル10の第2主面10bの側において内方端部10e1に接続され、軸方向に見てコイル10の内方から外方へ延びている。第1シールド部材30には、軸方向に見てコイル10の内方から外方へ延びる切欠が形成されている。軸方向に見て、第1接続端子56は上記切欠内を延びている。このようなコイルユニット5によれば、コイルユニット5の損失(とりわけ鉄損)を抑制することができる。
【0196】
一実施の形態及びその変形例によるコイルユニット5において、第1接続端子56は、コイルユニット5の側面視で第1シールド部材30と重なる高さ位置で、コイル10の内方から外方へ延びている。このようなコイルユニット5によれば、コイルユニット5の損失(とりわけ鉄損)を抑制することができる。
【0197】
変形例によるコイルユニット5において、コイル要素10i;10j,10jjは、その内方端部から外方端部に向かって第1周回方向CD1に中心軸線Cの周りを周回している。第1周回方向CD1に第1接続端子56と隣り合うシールド小片31の面積が、当該シールド小片31と第1接続端子56を挟んで隣り合うシールド小片38の面積以上である。このようなコイルユニット5によれば、コイルユニット5の損失(とりわけ鉄損)を抑制することができる。
【0198】
変形例によるコイルユニット5において、コイル要素10i;10j,10jjは、その内方端部から外方端部に向かって第1周回方向CD1に中心軸線Cの周りを周回している。第1周回方向CD1に第1接続端子56と隣り合うシールド小片31の面積が、当該シールド小片31と第1周回方向CD1に隣り合うシールド小片32の面積以上である。このようなコイルユニット5によれば、コイルユニット5の損失(とりわけ鉄損)を抑制することができる。
【0199】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0200】
1 送電装置
2 受電装置
5 コイルユニット
10 コイル
10a 第1主面
10b 第2主面
10i,10j,10jj コイル要素
11 第1直線部
11G 第1直線部群
12 第2直線部
12G 第2直線部群
13 第3直線部
13G 第3直線部群
14 第4直線部
14G 第4直線部群
15 第5直線部
15G 第5直線部群
16 第6直線部
16G 第6直線部群
17 第7直線部
17G 第7直線部群
18 第8直線部
18G 第8直線部群
19 ターン接続部
19G ターン接続部群
20 磁性体樹脂層
30 第1シールド部材
30P シールド小片
40 間隙
50 第2シールド部材
60 内枠
70 外枠
85 不連続部
101 第1ターン部
102 第2ターン部
103 第3ターン部
104 第4ターン部
105 第5ターン部
106 第6ターン部
107 第7ターン部
108 第8ターン部
C 中心軸線
S ワイヤレス電力伝送システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15