(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026118
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ゲート装置
(51)【国際特許分類】
G07C 9/25 20200101AFI20250214BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G07C9/25
A61B5/11 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131495
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】黒川 郁弥
【テーマコード(参考)】
3E138
4C038
【Fターム(参考)】
3E138AA01
3E138AA11
3E138FA03
3E138GA02
3E138JA01
3E138JB02
3E138JB16
3E138JC05
4C038VA04
4C038VB01
4C038VC05
(57)【要約】
【課題】 対象者が対象ゲートを通行するか否かについて、迅速かつ的確に信頼性の高い判定ができるゲート装置を提供すること。
【解決手段】ゲート装置100は、対象者である通行者HUを含む画像データを取得するデータ取得部41と、取得した画像データから進行に関する複数種のベクトルを抽出するベクトル抽出部62と、抽出した複数種のベクトルを組み合わせて、通行者HUの推定進行ベクトル(進行方向ベクトル)PVを生成するベクトル生成部71と、生成した推定進行ベクトルPVに基づき通行者HUが対象ゲートを通行するか否かの判定をする判定部80とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者を含む画像データを取得するデータ取得部と、
取得した前記画像データから進行に関する複数種のベクトルを抽出するベクトル抽出部と、
抽出した前記複数種のベクトルを組み合わせて、対象者の推定進行ベクトルを生成するベクトル生成部と、
生成した前記推定進行ベクトルに基づき対象者が対象ゲートを通行するか否かの判定をする判定部と
を備えるゲート装置。
【請求項2】
前記ベクトル抽出部は、抽出する前記複数種のベクトルとして、骨格ベクトルに加え、視線ベクトル及び顔ベクトルのうち少なくともいずれかを含む、請求項1に記載のゲート装置。
【請求項3】
前記ベクトル生成部は、前記推定進行ベクトルの生成に際して、前記骨格ベクトルの比重を他のベクトルより大きくしている、請求項2に記載のゲート装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記複数種のベクトルのうち、先に生成されたベクトルに基づいて前記対象ゲートを通行するか否かの可能性判定を順次行い、前記骨格ベクトルが取得された後に、最終判定を行う、請求項2に記載のゲート装置。
【請求項5】
事前登録されている顔認証データに基づき前記対象ゲートでの通行の許否を決定する通行許否決定部を備える、請求項1に記載のゲート装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記対象ゲートを通行するのか、前記対象ゲートに隣接するゲートを通行するのかについて判定する、請求項1に記載のゲート装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記推定進行ベクトルが検知境界を所定回数以上超えているか否かにより、判定を行う、請求項1に記載のゲート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の認証を行って通過の可否を決定するゲート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、入退室認証システムとして、顔の撮影画像における視線が特定空間を向いていることを担保として進行方向を判定しているものが知られている(特許文献1参照)。また、特定の領域を通過しようとする対象の位置の推定を行う情報処理装置として、顔画像検出とは別に水平行方向における顔の位置変化を元に人物位置の推定を行う機能を設け、ゲートの通行を判定しているものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許7075702号公報
【特許文献2】特開2022-164659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、例えば、視線方向の情報だけに頼った場合、視線と進行方向とが異なっているといった可能性があり、判定が信頼性に欠けたものとなるおそれがある。また、上記特許文献2では、顔認証の実施が可能な撮像領域に制限が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、対象者が対象ゲートを通行するか否かについて、迅速かつ的確に信頼性の高い判定ができるゲート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのゲート装置は、対象者を含む画像データを取得するデータ取得部と、取得した画像データから進行に関する複数種のベクトルを抽出するベクトル抽出部と、抽出した複数種のベクトルを組み合わせて、対象者の推定進行ベクトルを生成するベクトル生成部と、生成した推定進行ベクトルに基づき対象者が対象ゲートを通行するか否かの判定をする判定部とを備える。
【0007】
上記ゲート装置では、進行に関する複数種のベクトルを組み合わせて、対象者の推定進行ベクトルを生成し、これに基づき対象者が対象ゲートを通行するか否かの判定をすることで、ゲートが並列して設置されているような場合であっても、迅速かつ的確に信頼性の高い判定が可能となる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、ベクトル抽出部は、抽出する複数種のベクトルとして、骨格ベクトルに加え、視線ベクトル及び顔ベクトルのうち少なくともいずれかを含む。この場合、骨格ベクトルと他のベクトルとの組合せに基づいて判定を行うことができる。
【0009】
本発明の別の側面では、ベクトル生成部は、推定進行ベクトルの生成に際して、骨格ベクトルの比重を他のベクトルより大きくしている。この場合、骨格ベクトルに重点を置いた判定ができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、判定部は、複数種のベクトルのうち、先に生成されたベクトルに基づいて対象ゲートを通行するか否かの可能性判定を順次行い、骨格ベクトルが取得された後に、最終判定を行う。この場合、事前に予測をしつつ、最終判定を的確に行うことができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、登録されている顔認証データに基づき対象ゲートでの通行の許否を決定する通行許否決定部を備える。この場合、顔認証を利用して迅速かつ的確な判定が可能となる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、判定部は、対象ゲートを通行するのか、対象ゲートに隣接するゲートを通行するのかについて判定する。この場合、並列するゲートのいずれを通過するかについて、迅速かつ的確に判定をすることができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、判定部は、推定進行ベクトルが検知境界を所定回数以上超えているか否かにより、判定を行う。この場合、一定の基準に従って画一的に判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態のゲート装置について一構成例を示す斜視図である。
【
図2】(A)及び(B)は、ゲート装置に設けたカメラによる検知範囲について示す概念的な平面図である。
【
図3】(A)~(C)は、ベクトルの抽出及び合成について説明するための概念図である。
【
図4】(A)及び(B)は、ゲート装置における仮想検知ラインについて一例を説明するための概念的な平面図である。
【
図5】(A)~(H)は、骨格ベクトルの抽出方法について一例を説明するための概念図である。
【
図6】ゲート装置の機能的側面について一構成例について説明するためのブロック図である。
【
図7】(A)~(C)は、隣接するカメラ間における検知範囲の重なりに起因して発生すると想定される課題の一例を説明するための概念的な平面図である。
【
図8】(A)~(D)は、カメラを利用することに起因して発生すると想定される課題の一例を示す概念的な平面図であり、(E)~(G)は、他の一例を示す概念的な平面図である。
【
図9】ゲート装置における一連の動作(全体動作)について、一例を説明するためのフローチャートである。
【
図10】ゲート装置における一連の動作について、他の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】ベクトルに基づく通行意思の有無判定について、一例を説明するためのフローチャートである。
【
図12】ゲート装置の概要について説明するための概念図である。
【
図13】(A)~(D)は、ゲート装置の動作態様についての一変形例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1等を参照して、一実施形態のゲート装置について、一例を説明する。
図1は、本実施形態のゲート装置100とその一適用例について説明するための斜視図であり、ゲート装置100の外観を示す図である。本実施形態では、図示のように、複数のゲート装置100が横方向に並列して設けられており、隣接するゲート装置100は、例えば隔壁部PWを共有して構成されている。
【0016】
各ゲート装置100は、カメラ10と、ICカードリーダ20と、フラップ(ドア)30とを備え、カメラ10やICカードリーダ20を介して取得した通行者の情報に基づいて、当該通行者の通過の許否を決定し、決定にしたがって、フラップ(ドア)30の開閉動作を行う。
【0017】
本実施形態のゲート装置100では、顔認証による通過の許否決定が可能となっている。このため、ゲート装置100は、通行者の通過に際して、カメラ10において顔画像データを取得し、取得した顔画像のデータと、予め登録されている顔画像のデータ(顔データあるいは顔認証データとする。)との照合を行う。
【0018】
さらに、本実施形態では、カメラ10において取得した画像を利用して、対象者である通行者が、当該カメラ10に対応する対象ゲートを通行する意思を有するか否かの判定をするものとなっている。特に、ここでは、対象画像中に含まれる顔画像のうちから、眼の動きに基づき視線を抽出した視線ベクトルや、顔の向きについて抽出した顔ベクトルのみならず、通行者についての画像から通行者の体の向き(姿勢)について抽出した骨格ベクトルを用いて推定進行ベクトルを生成し、生成した推定進行ベクトルに基づいて、対象ゲートを通行しようとしているか否かの判定を行っている。これにより、
図1に示す場合のように、複数のゲート装置100により、ゲートが並列して設置されているような場合であっても、これらのうち、一のカメラ10が対応している対象ゲートを通過するつもりであるのか否かについて、迅速かつ的確に信頼性の高い判定が可能となる。
【0019】
上記のような構成とすべく、ゲート装置100のうち、カメラ10は、図示のように、ゲート装置100のうち、通行者の進行方向について、隔壁部PWの中央辺りに設けられ、ゲート装置100に近づく通行者の候補なる者を撮像する。なお、
図2(A)及び
図2(B)として示す概念的な平面図にあるように、ゲート装置100に設けられたカメラ10による検知範囲のうち、撮像範囲IAは、ある程度の広がりを持っており、このうち、特に、カメラ10に近い側の範囲が、顔画像のデータ(顔データ)について取得可能な顔画像取得範囲FAとなっている。
図2(A)に示すように、複数のゲート装置100(100A,100B,100C)おいては、各通路(通路1,通路2,通路3)が形成されているが、図示では、これらのうち、通路1に対応して設けられたカメラ10Aについて示しており、
図2(B)においても同様としているが、他の通路(
図2(A)の通路2,通路3)においても、同様に、対応するカメラ10B,10Cによる撮像(検知)がなされている。
【0020】
一方、ゲート装置100には、ICカードリーダ20が設けられており、ゲート装置100は、顔認証のほかに、ICカードによる認証も受付可能となっている。すなわち、通行者が、自身が所持するICカード(図示略)を、ICカードリーダ20に翳すことで、通過許可を得られるようにもなっている。
【0021】
フラップ(ドア)30は、カメラ10やICカードリーダ20において取得した各種情報に基づいた判定結果すなわち通過の許否に関する決定に応じて、ドア開閉動作をする。なお、開閉については、
図2(A)に例示するように、ゲート装置100(ゲート装置100Aについてのみ示し、他は図示を省略している。)の通路途中において、通路を横切るようにIR光を発するIRセンサSS1,SS2をフラップ(ドア)30の前後に設けておき、通路の通過に際して、IRセンサSS1,SS2で当該IR光の遮光が検知されることで、通行者の通過検知をするようにしておく、といった態様が考えられる。
【0022】
このほか、
図2(A)に例示するように、ゲート装置100は、上記各種判定処理や動作指令等を統括的に行うための制御部50や、顔認証やICカードの情報に基づく判定に際して、予め登録されている情報との照合を行うためのデータ照合部90を備える。なお、
図2(A)では、制御部50については、ゲート装置100ごとに設けられている一方、データ照合部90については、複数並ぶゲート(ゲート装置100A,100B,…)に対して共通する1つのデータ照合部90に接続されるものについて例示しているが、これに限らず、例えば、制御部50についても、複数並ぶゲート(ゲート装置100A,100B,…)を、1つの制御部50で統括的に動作制御を行う態様とすることも可能であり、ゲート装置100ごとに制御部50だけでなくデータ照合部90まで有する構成とすることも可能である。また、複数のゲート装置100を纏めて1つのゲート装置と捉えることもできる。
【0023】
なお、
図1の例では、通行者の進行方向の両端にICカードリーダ20が設けられて双方向からの入場を受け付ける態様となっているものを例示しているが、一方向のみからの入場を受け付ける態様とすることもできる。なお、各態様に応じて、例えばカメラ10における撮像範囲(角度範囲)等についても、適宜設定できる。
【0024】
以下、
図3として、概念図に示す一例を参照して、上述した複数種のベクトルの抽出及びこれらの合成について説明する。
図3(A)は、画像中の人物画像から各ベクトルを抽出する様子を示す概念図であり、
図3(B)は、各ベクトルを平面視した状態を示す概念的な平面図であり、
図3(C)は、
図3(B)に示す各ベクトルを合成して推定方向ベクトルとしての進行方向ベクトルを生成した様子を示した平面図である。なお、各ベクトルは、3次元空間ベクトルであるが、図示において平面視して2次元ベクトルとして捉えることも可能である。
【0025】
まず、
図3(A)に示すように、ここでは、判定の対象となる対象者を示す通行者HUの画像(以後、人物に関する画像についても単に通行者HU等と表すこととする)中から、人の眼に相当する部分に着目し、ここから視線ベクトルV1を抽出する。視線ベクトルV1につての抽出方法は、種々の態様が考えられるが、例えば通行者HUの白目と黒目の部分の境界等から視線の方向を推定し、これをベクトルとして表すといった手法を用いることが考えられる。なお、視線ベクトルV1に相当する方向の抽出については、既存の種々の方法を適用することが可能である。
【0026】
次に、顔ベクトルV2については、例えば輪郭や眼、鼻、口、耳等の配置から顔が向いている方向を推定し、これをベクトルとして表すといった手法を用いることが考えられる。なお、顔ベクトルV2に相当する方向の抽出については、既存の種々の方法を適用することが可能である。
【0027】
最後に、骨格ベクトルV3については、通行者HUの体全体、特に背骨(背筋)の延びる方向と両肩の並びの方向とに基づいて、通行者HUの姿勢を推定し、これをベクトルとして表すといった手法を用いることが考えられる。なお、これについて、より詳しくは、一例を後述する。
【0028】
以上のようにして定めた各ベクトルV1,V2,V3を組み合わせて、
図3(C)に例示するように、対象者である通行者HUの推定進行ベクトルPVを生成する。すなわち、ここでは、ベクトルV1と、ベクトルV2と、ベクトルV3とを足し合わせたものを、推定進行ベクトルPVとする。
【0029】
ゲート装置100では、上記のようにして求めた推定進行ベクトルPVが、予め定めた検知境界を超えているか否かにより、対象ゲートを通行するか否かの判定を行う。なお、図示の場合、ゲート装置100Aを構成するカメラ10Aにおける検知範囲に対応する通路1を、監視の対象となっている対象者である通行者HUが通るか否かを判定することに相当する。
【0030】
ここで、上記のような推定進行ベクトルPVの生成に際して、各ベクトルV1,V2,V3のうち、骨格ベクトルV3の比重を、他のベクトルV1,V2より大きくしておくことが考えられる。この場合、骨格ベクトルV3により重点を置いた判定を行うことができる。仮に、視線や顔の向きの情報だけに頼った場合、例えば通行者HUが顔を横に向けた状態で歩行しているといった場合には、視線や顔の向きが、進行方向(通行者HUが進もうとする意思を持っている方向)とは異なった状態になっていることになる。したがって、これだけに基づいて判定を行うと、信頼性に欠けたものなるおそれがある。これを回避すべく、本実施形態では、骨格ベクトルV3を加えたものに基づいて判断を行っている。したがって、特に、骨格ベクトルV3に重点を置くことで、通行者HUが対象ゲートを通行するつもりであるのか否かをより的確に判定できるものとなると考えられる。
【0031】
本実施形態では、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、ゲート装置100(100A)において、予め定めた検知境界として仮想検知ラインVLを設け、仮想検知ラインVLを推定進行ベクトルPV(ここでは平面視において2次元平面的なものとして捉える)が超えているか否かによって、判定を行う。例えば
図4(A)に示す場合では、仮想検知ラインVLを、対象ゲートとなっているゲート装置100(100A)の入り口の個所に設定している。これに対して、
図4(B)に示すように、推定進行ベクトルPVの先端が、仮想検知ラインVLを超えていれば、通行者HUは、当該ゲート装置100(100A)を通過しようとする意思があるものとして、ゲート装置100(100A)において取り扱われる。見方を変えると、仮想検知ラインVLは、推定進行ベクトルPVが、通行者HUの意思判定の基準となるゲート装置100(100A)内の特定領域と交わっているか否かを示すものとなっている。
【0032】
ただし、上記に関して、当該ゲート装置100(100A)を通過しようとする意思の無い通行者HUが、瞬間的な姿勢の変化をした場合に、その姿勢の変化の影響で、例えば1回だけ(一瞬だけ)、推定進行ベクトルPVの先端が仮想検知ラインVLを超えた状態が偶発的に生じる、といった可能性も考えられる。それに対しては、例えば、推定進行ベクトルPVの先端が仮想検知ラインVLを超えた状態が、予め想定した回数以上検知された場合(あるいは予め想定した一定時間以上継続して超えていることが検知された場合)に、通過意思ありとして取り扱うようにするといった対応をとることとすればよい。
【0033】
以下、
図5(A)~
図5(H)として示す概念図を利用して、上記のうち、骨格ベクトルV3の抽出方法について一例を説明する。
図5(A)は、撮像を行うカメラ10の配置について説明するための概念的な平面図であり、
図5(B)は、
図5(A)の状態で撮像された画像GGについて、一例を示す図である。なお、画像GGには、対象者である通行者HUが含まれている。
【0034】
まず、前提として、
図5(A)や
図5(B)に示すように、カメラ10の設置状況すなわち撮像を行う向きについて、画像の横方向(水平方向)をx方向とし、縦方向(垂直方向)をy方向とし、x方向及びy方向に垂直な方向である撮像方向(カメラ10のレンズ軸の延びる方向)をz方向とする。
図5(A)に示すようにここでの一例では、カメラ10が-z方向に向けて撮像を行うものとなっている。
【0035】
以上のような撮像状況において、
図5(C)に示すように、撮像された画像GG中に含まれる通行者HUを含む画像部分GGdを抽出することで通行者HUの存在が検知される。なお、上記のような画像中からの人物の抽出・検知の方法については、例えば既存の種々の画像処理技術を用いることができる。
【0036】
通行者HUを含む画像部分GGdが抽出されると、制御部50において、当該画像部分GGdについて、さらに、骨格・姿勢検知が行われる。具体的には、
図5(D)に示すように、通行者HUから点と線で構成される骨格情報HUcが抽出され、さらに、
図5(E)に示すように、骨格情報HUcから通行者HUの背骨(背筋)の延びる方向に対応する直線Lbと、両肩の並びの方向に対応する直線Lsとが抽出される。この上で、
図5(F)に示すように、直線Lbと直線Lsとが交わる個所を交点CSとする。ここで、
図5(G)に示すように、交点CSを通り、直線Lbと直線Lsとの双方に垂直な直線を直線PPとする。なお、
図5(G)は、xyz座標に示すように、
図5(B)~
図5(F)に示す画像GG又はそこから抽出した画像図とは視点が異なっている。
【0037】
図5(G)における直線PPの延びる方向は、直線Lbと直線Lsとによって張られる平面の法線方向に相当し、かつ、直線PPは、通行者HUの骨格の中心を示す交点CSから延びている。そこで、ここでは、直線PPの方向が通行者HUの進行方向を示すものとして取り扱われるものとすべく、
図5(H)に示すように、直線PPの方向に平行でカメラ10に近づく側へ向かう方向の方向ベクトルを、基本骨格ベクトルSVとする。ここで、基本骨格ベクトルSVとは、直線PPの方向に平行な方向に延びるベクトルであって、長さが1であるもの、つまり単位ベクトルであるものとする。
【0038】
ここで、本実施形態では、基本骨格ベクトルSVに、予め設定された重み(スカラー量)を掛けたものを、骨格ベクトルV3(
図3参照)とする。また、視線ベクトルV1や顔ベクトルV2についても、抽出された視線の方向や顔の向いている方向について、長さを1とする(正規化する)処理を行って基本ベクトル(単位ベクトル)とし、これにそれぞれ(正規化する)予め設定された重み(スカラー量)を掛けて視線ベクトルV1や顔ベクトルV2を規定することができる。つまり、推定進行ベクトルPVは、各基本ベクトルに重み(スカラー量)をかけたものを足し合わせたものとなる。この場合、予め設定する重みについて、ゲート装置100の設置環境等に応じて適宜調整することで、判定を行う際の基準となる推定進行ベクトルPVの最適化を図ることができる。
【0039】
以下、
図6として示すブロック図を参照して、ゲート装置100の機能的側面を示す一構成例について説明する。ここでは、ゲート装置100の機能のうち、特に、上記のような画像処理や演算処理に基づく画像抽出からベクトル生成を行って、対象者(通行者HU)が対象ゲートを通行するか否か(該当ゲート装置100を通過する意思があるか否か)の判定に至るまでの処理に関係する各部を中心に説明する。
【0040】
図6に示すように、また、既述のように、本実施形態のゲート装置100は、カメラ10や、ICカードリーダ20、フラップ(ドア)30で構成されるが、ここでは、上記各部を制御する制御部50と、データの照合を行うためのデータ照合部90とについても、ゲート装置100を構成する一部であるものとして説明する。
【0041】
制御部50は、例えば各種回路装置等で構成され、カメラ10等の動作制御を行うとともに、上記した画像データからのベクトルの抽出といった画像に関する処理や、抽出したベクトルに関する演算や判定等の各種処理を統括的に行う。このため、制御部50は、カメラ制御部11と、ゲート制御部31と、データ取得部41と、データ入出力部42と、画像処理部60と、演算処理部70と、判定部80とを備える。そのほか、制御部50は、例えば各種データを保管するために、ストレージデバイス等で構成されるデータ保管部DSを備える。
【0042】
上記のうち、カメラ制御部11は、カメラ10の撮像動作の制御を司り、ゲート制御部31は、フラップ(ドア)30の開閉動作の制御を司る。
【0043】
データ取得部41は、カメラ10での撮像による画像データや、ICカードリーダ20で読み取ったID情報を受け付け、データ保管部DSに格納することで、各種情報(データ)を取得する。また、データ取得部41は、画像処理部60やデータ入出力部42に対して、受け付けた各種データを出力する。例えば、データ取得部41は、対象者(通行者HU)を含む画像データをカメラ10から取得すると、これを画像処理部60に対して出力する。なお、画像処理部60では、データ取得部41で取得した画像データから、上述した各ベクトルを抽出したり、顔認証のための特徴量の抽出を行ったりする。一方、データ取得部41は、ICカードリーダ20で読み取ったID情報を取得すると、データ照合部90において照合を行うために、データ入出力部42に対して出力する。
【0044】
データ入出力部42は、データ照合のためのデータの出入力を行うデータ照合部90とのインターフェース部として機能する。具体的には、データ取得部41を介して受け取ったICカードリーダ20からのID情報や、画像処理部60での処理を経た画像データに基づく顔認証に関する情報について、認証判定を行うべく、データ照合部90に対して出力する。また、データ入出力部42は、データ照合部90から照合の結果についての情報を受け付ける。
【0045】
画像処理部60は、人物検知部61と、ベクトル抽出部62と、顔画像特徴量抽出部63とを備える。
【0046】
人物検知部61は、カメラ10で取得した画像データに含まれている人物画像を切り出して人物検知を行う人物検知エンジンソフトHDで構成されている。なお、人物検知エンジンソフトHDについては、人物の抽出が可能であれば、種々のプログラムを適用でき、既存の手法を用いるものとしてもよい。
【0047】
ベクトル抽出部62は、データ取得部41で取得した取得した画像データから、人物検知部61において検知され対象者となった者(通行者HU)について、進行に関する複数種のベクトルを抽出する。このため、ベクトル抽出部62は、視線方向判定エンジンソフトGDと、顔方向判定エンジンソフトFDと、姿勢推定エンジンソフトPEとを有している。
【0048】
ベクトル抽出部62のうち、視線方向判定エンジンソフトGDは、対象者(通行者HU)について、対応する画像(画像部分)から例えば眼の部分を解析して、視線の方向を推定し、これをベクトルとして表すためのプログラムで構成されている。例えば、既存の手法を用いて視線の方向を特定し、これについての基本ベクトル(単位ベクトル)を生成するプログラムで構成することが想定される。
【0049】
顔方向判定エンジンソフトFDは、対象者(通行者HU)について、対応する画像(画像部分)のうち特に顔に相当する箇所について抽出し、抽出した顔の部分から例えば輪郭や眼、鼻、口、耳等の配置を解析して、顔が向いている方向を推定し、これをベクトルとして表すためのプログラムで構成されている。例えば、既存の手法を用いて顔が向いている方向を特定し、これについての基本ベクトル(単位ベクトル)を生成するプログラムで構成することが想定される。
【0050】
姿勢推定エンジンソフトPEは、対象者(通行者HU)について、対応する画像(画像部分)から例えば背骨(背筋)の延びる方向と両肩の並びの方向とを抽出し、これらに基づいて、通行者HUの姿勢を推定し、これをベクトルとして表すためのプログラムで構成されている。すなわち、
図6等を参照して説明した手法について一連の処理を行って基本骨格ベクトル(基本ベクトル)SVを算出するプログラムで構成することが想定される。
【0051】
以上の場合、ベクトル抽出部62は、抽出する複数種のベクトルとして、骨格ベクトルに加え、視線ベクトル及び顔ベクトルを含むものとなっている。
【0052】
顔画像特徴量抽出部63は、対象者(通行者HU)について、対応する画像(画像部分)のうち特に顔に相当する箇所について抽出し、抽出した顔の部分から顔認証のための特徴量を抽出するためのプログラム(顔画像特徴量抽出プログラム)で構成されている。顔画像特徴量抽出部63において抽出された顔認証のための特徴量(顔認証に関する情報)は、既述のように、データ入出力部42を介してデータ照合部90に対して出力され、データ照合部90において、認証判定が行われる。
【0053】
演算処理部70は、各種演算処理を行うものであるが、ここでは、特に、画像処理部60のベクトル抽出部62において抽出された各ベクトル(複数種のベクトル)を組み合わせて、対象者(通行者HU)が対象ゲートを通行するか否かの判定を行う際の基準となる推定進行ベクトルPVの生成についての演算処理を行うものとなっている。このため、演算処理部70は、ベクトル生成部71と、重み付け設定部72とを備え、ベクトル生成部71は、ベクトル抽出部62において抽出された各ベクトルを合成するベクトル合成部VCを有しており、これらにより、推定進行ベクトルPVの生成を行っている。より具体的には、演算処理部70において、ベクトル生成部71は、ベクトル抽出部62で算出された各基本ベクトルについて、重み付け設定部72において予め基本ベクトルごとに設定されている重み(スカラー量)の値を読み出し、ベクトル合成部VCにおいて、読み出した重み(スカラー量)の値を対応する基本ベクトルに掛けて視線ベクトルV1、顔ベクトルV2及び骨格ベクトルV3を算出し、さらに、これらを足し合わせることで合成し、推定進行ベクトルPVを生成する。ここで、ベクトル生成部71における推定進行ベクトルPVの生成に際して、骨格ベクトルV3の比重を他のベクトルより大きくしている。これにより、骨格ベクトルV3により重点を置いた判定とすることができる。なお、そのための具体的方法としては、例えば、重み付け設定部72における重み(スカラー量)の値について設定を行うに際して、視線ベクトルV1、顔ベクトルV2及び骨格ベクトルV3にそれぞれ対応するものを、重みm1,m2,m3とした場合に、m3>m1、m3>m2としておくことが考えられる。なお、この場合、その差異は、各ベクトルV1,V2,V3の長さの差として表されることになる。
【0054】
判定部80は、演算処理部70において生成された推定進行ベクトルPVに基づいて、対象者(通行者HU)が対象ゲートを通行するか否かの判定をする。すなわち、
図4(A)及び
図4(B)を参照して説明した一例のように、検知境界として設けた仮想検知ラインVLと生成された推定進行ベクトルPVとについて、予め定めた規定に基づいて、カメラ10Aに対応する通路1を、対象者(通行者HU)が通過するか否かについての判定を行う。
【0055】
以上のようにして、制御部50において、対象者(通行者HU)が対象ゲートであるゲート装置100を通過する意思があるか否かの判定に至るまでの処理が行われる。
【0056】
以下、データ照合部90について、説明する。データ照合部90は、既述のように、ゲート装置100における通過許否を決定するためのデータ照合(ID情報の照合)を行うための装置であり、ここでは、既述のように、顔認証に基づく通過許否の決定と、ICカードのID情報に基づく通過許否の決定とが併存するものとなっている。つまり、データ照合部90は、顔データ(ID情報としての顔認証データ)に基づく顔認証のための照合と、ICデータ(ICカードのID情報)に基づくIC認証のための照合とを行うものとなっている。
【0057】
上記態様を可能とすべく、データ照合部90は、図示のように、顔認証サーバ91と、IC認証サーバ92とを有し、顔認証サーバ91は、顔照合部91cと、顔データベース91dとで構成され、IC認証サーバ92は、IC照合部92cと、ICデータベース92dとで構成されている。
【0058】
上記のうち、顔認証サーバ91について、顔照合部91cは、顔データベース91dに事前登録されている顔データ(顔特徴量に基づいて作成される顔認証データ)と、制御部50のデータ入出力部42を介して受け付けた顔認証に関する情報である顔認証のための特徴量のデータとを照合して、一致するものが存在するか否かを確認する。
【0059】
次に、IC認証サーバ92について、IC照合部92cは、ICデータベース92dに予め登録されているICデータ(ID情報)と、制御部50のデータ入出力部42を介して受け付けたICカードリーダ20で読み取ったID情報とを照合して、一致するものが存在するか否かを確認する。
【0060】
データ照合部90は、顔照合部91cやIC照合部92cにおける照合結果を、制御部50に対して出力する。制御部50は、受け付けた照合結果に基づいて、ゲート制御部31によるフラップ(ドア)30の開閉動作の制御態様を決定する。以上の場合、例えば顔認証を行うに際して、制御部50は、事前登録されている顔認証データに基づき対象ゲートでの通行の許否を決定する通行許否決定部として機能している、ということになる。また、例えばICカードでの認証を行うに際して、制御部50は、ICカードリーダ20でのICカードの読取結果に基づき対象ゲートでの通行の許否を決定する通行許否決定部として機能している、ということになる。
【0061】
以下、
図7等を参照して、カメラ10での撮像を利用した認証を行うに際して、生じ得る課題と本実施形態におけるその対応について、説明する。
【0062】
例えば、
図7(A)~
図7(C)として示す概念的な平面図にあるように、ゲートが並列して設置されている場合、各カメラ10による撮像範囲IAにある程度の広がりがあると、隣接するカメラ10の間(例えば、カメラ10Aとカメラ10Bとの間や、カメラ10Bとカメラ10Cとの間)で、重複領域IAdが存在し得る。例えば、
図7(B)において破線で囲って示す範囲DD3を通過する通行者HUであれば、ゲート装置100A~100Cのうち、カメラ10Cが設置されたゲート装置100Cに向かうと想定される。つまり、カメラ10Cの撮像範囲IAに範囲DD3を通過する通行者HUが到達すると、カメラ10Cにおいて取得された画像の解析に基づき通行者HUが検知されることになる。しかし、
図7(C)に示すように、範囲DD3のうち、重複領域IAdに通行者HUが到達すると、カメラ10Cのみならず、カメラ10Bにおいても、すなわちゲート装置100Bにおいても、通行者HUが検知されることになる。これに対して、本実施形態では、通行者HUの視線や顔の向きだけに依らず、骨格の向きを考慮して、通行者HUの進行方向の推定を行っていることで、上記の場合のように、ゲート装置100Bのカメラ10Bにより、範囲DD3を通過する通行者HUが捉えられても、通行者HUがどのゲートを通過しようとする意思があるのかを的確に捉えることができる。すなわち、上記態様において、ゲート装置100Bでは、通行者HUがここを通過する意思がないものと判定し、ゲート装置100Cでは通過する意思があるものと判定するものとなるようにできる。
【0063】
ここで、別の観点として、上記のような事態を回避すべく、重複領域IAdのような領域が形成されないように、撮像範囲IAを狭めておく、という考え方もある。しかしながら、この場合、検知を行う範囲が狭くなる分、通過判定の開始が遅れることになり、ゲート装置100における人流の許容量が制限される可能性がある。これに対して、本実施形態では、重複領域IAdの発生を認めつつ、的確な処理を維持できるものとなっている。
【0064】
また、別の事態として、顔認証による通過許否を行う場合において、仮に、本実施形態で行うような通行者HUの進行方向の推定等をしないと、例えば
図8(A)~
図8(D)に示すように、顔認証の事前登録をしている通行者HUαが偶然ゲート装置100付近を通りかかったため、顔認証の事前登録をしていない通行者HUβすなわち通行を許可されないはずの者が、ゲート装置100を通過できてしまう、ということが生じてしまう可能性がある。具体的に説明すると、
図8(A)に示すように、通行者HUβがゲート装置100に向かう一方、通行者HUαはゲート装置100には向かわずこれを横切るような方向に進んでいる場合において、
図8(B)に示すように、通行者HUβがカメラ10の撮像範囲IAに到達し、その後、
図8(C)に示すように、通行者HUβがゲート装置100の入り口に到達するよりも前に通行者HUαも撮像範囲IAに入ったとする。この場合、カメラ10で検知された通行者HUαの顔認証に基づいて、ゲート装置100での通過が許可されてしまい、
図8(D)に示すように、本来通過を許可されないはずの通行者HUβがゲート装置100を通過してしまう、といった事態が生じ得る。これに対して、本実施形態では、通行者HUαについての通過許否に際して、通行者HUαの顔認証に併せて通行者HUαの進行方向の推定を行うことで、上記態様においては、通行者HUαに通過意思がないことを判定できるので、かかる事態を回避することができる。すなわち、ゲート装置100において、判定部80は、対象ゲートを通行するのか、対象ゲートに隣接するゲートを通行するのかについて判定することが可能となっている。
【0065】
また、他の事態として、例えば
図8(E)~
図8(G)に示すように、1つのゲート装置100(100B)において、通行者HUγと通行者HUδとの両方に許可を出してしまう可能性がある。具体的に説明すると、前提として、ともに顔認証の事前登録をしている通行者HUγと通行者HUδとが、それぞれ、通行者HUγは、ゲート装置100B(通路2)を通過しようとし、通行者HUδは、ゲート装置100C(通路3)を通過しようとしているものとする。この場合において、
図8(E)に示すように、通行者HUδが通行者HUγよりも若干先行していると、まず、ゲート装置100Cにおいて通行者HUδが検知される。その後、
図8(F)に示すように、通行者HUδが重複領域IAdに到達すると、通行者HUδは、ゲート装置100Cのみならず、ゲート装置100Bにおいても検知されるものとなってしまう。さらに、このような状況下において、
図8(G)に示すように、通行者HUδよりも若干遅れて通行者HUγがゲート装置100Bの撮像範囲IAに到達すると、ゲート装置100Bでは、通行者HUδに加えて通行者HUγも検知する(1つのゲート装置100Bにおいて重複検知が生じる)ことになってしまう。
【0066】
これに対して、本実施形態では、通行者HUγと通行者HUδとについて、それぞれ通過許否に際して、通行者HUγ,HUδの顔認証に併せて通行者HUγ,HUδの進行方向の推定をそれぞれ行っている。これにより、通行者HUγは、通路2を通過しようとする意思を有しているものとして取り扱われ、通行者HUδは、通路3を通過しようとする意思を有しているものとして取り扱われるため、かかる事態を回避することができる。
【0067】
以下、
図9として示すフローチャートを参照して、ゲート装置100における一連の動作(全体動作)について、一例を説明する。ここでは、特に顔認証により、ゲート装置100を通過する場合の一連の動作について説明する。
【0068】
まず、カメラ10による画像撮影がなされると(ステップS101)、撮像された画像について人物検知が実施され(ステップS102)、人物が検知されたか否かの確認が行われる(ステップS103)。
【0069】
ステップS103において、検知がなされなければ(ステップS103:No)、再度ステップS101からの動作を繰り返し、ステップS103において、検知がなされれば(ステップS103:Yes)、検知された人物を対象者(通行者HU)とし、対象者(通行者HU)の通行意思について判定を行う(ステップS104)。すなわち、上述した推定進行ベクトルPVに基づく各処理による通行意思の有無についての判定処理がなされる。
【0070】
ステップS105における判定の結果、通行意思がないとされた場合(ステップS105:No)、これまでの処理を廃棄して(ステップS106)、一連の処理を完了し、ステップS101からの動作に戻る。
【0071】
一方、ステップS105における判定の結果、通行意思があるとされた場合(ステップS105:Yes)、ステップS104に際して、制御部50において併せて処理された顔認証の特徴量の情報が、データ照合部90の顔認証サーバ91に送信され(ステップS107)、当該特徴量に基づく顔データ(ID情報としての顔認証データ)について、データ照合部90は、顔データベース91dに格納されたデータすなわち事前登録されている顔認証データ(顔データ)と照合する(ステップS108)。
【0072】
ステップS108での照合の結果、一致する顔データが存在しない場合(ステップS109:No)、これまでの処理を破棄して(ステップS110)、一連の処理を完了し、ステップS101からの動作に戻る。
【0073】
一方、ステップS108での照合の結果、一致する顔データが存在する場合(ステップS109:Yes)、当該顔データ(ID情報)に通行資格があるか否かを確認し(ステップS111)、通行資格がなければ(ステップS111:No)これまでの処理を廃棄して(ステップS112)、一連の処理を完了し、ステップS101からの動作に戻る一方、通行資格があれば(ステップS111:Yes)、既に当該顔データ(ID情報)に対して、一定時間内に通行クレジット(一定時間認められている通行許可)を付与しているか否かを確認する(ステップS113)。すなわち、重複して通行クレジットを付与することを防止するための確認が行われる。なお、通行クレジットとして通行許可が認められている一定時間については、例えば約3秒と設定し、一定時間経過後(3秒経過後)は、当該通行クレジットは破棄されることになる。見方を変えると、以前の通行クレジット付与から3秒以上経過していれば、以前の通行クレジットとの重複は生じず、新たなデータ照合に基づく通行クレジットの付与がなされることになる。
【0074】
ステップS113において、既に通行クレジットを付与していると判定された場合(ステップS113:Yes)、これまでの処理を廃棄して(ステップS114)、一連の処理を完了し、ステップS101からの動作に戻る。
【0075】
一方、ステップS113において、通行クレジットの付与がまだされていないと判定された場合(ステップS113:No)、通行クレジットを付与する処理を行う(ステップS115)。すなわち、通行許可とする状態を一定時間保持するものとし、この状態の維持を開始する。その後、制御部50は、一定時間内に物理センサであるIRセンサSS1,SS2での検知が上記一定時間内になされ、それに伴い、フラップ30を開閉させる処理を行う(ステップS116~S119)。具体的には、ステップS115における通行クレジットの一定時間保持開始すると、まず、一定時間内(例えば3秒以内)に入口側のIRセンサSS1においてIR光の遮光が検知されたか否かを確認し(ステップS116)、確認がなされると(ステップS116:Yes)、これに伴いフラップ(ドア)30を開き(ステップS117)、さらに、一定時間内に出口側のIRセンサSS2においてIR光の遮光が検知されたか否かを確認し(ステップS118)、確認がなされると(ステップS118:Yes)、これに伴いフラップ(ドア)30を閉め、通行を完了したものとして取り扱う(ステップS119)。すなわち、ステップS119において、付与した通行クレジットが消化されたものとして取り扱う処理がなされる。
【0076】
以上のようにして、一連の処理を終えると、次の通行者HUを検知すべく、再度、ステップS101からの動作に戻る。
【0077】
なお、上記のうち、ステップS116やステップS118において確認がなされない場合(ステップS116:NoあるいはステップS118:No)、ステップS115において付与した通行クレジットを破棄し(ステップS120,S121)、一連の処理を完了し、ステップS101からの動作に戻る。なお、このような場合の典型例としては、何らかの事情で対象者(通行者HU)がゲート装置100の通過をしなかった場合や、IRセンサSS1,SS2の故障等が想定される。
【0078】
以下、
図10として示すフローチャートを参照して、ゲート装置100における一連の動作について、他の一例を説明する。
図9のフローチャートでは、特に顔認証により、ゲート装置100を通過する場合の一連の動作について説明したが、ここでは、
図10のフローチャートを参照して、ICカードを利用したゲート装置100の通過に関して、すなわちICカードリーダ20でのID情報の読取りに基づくゲート通過に関して、動作の一例を説明する。
【0079】
まず、ゲート装置100に対して、入館証(ICカード)の提示があったか否かすなわちICカードリーダ20に入館証(ICカード)が翳されたか否かの検知(ステップS201)を継続して行い、検知がなされると(ステップS201:Yes)、ICカードに記録されているID情報を読み込んで(ステップS202)、通行資格の有無を確認する(ステップS203)。すなわち、制御部50は、ICカードリーダ20において取得したID情報について、データ照合部90のIC認証サーバ92へ問い合わせて、ID情報の照合を行う。
【0080】
ステップS203での確認(通行資格の有無の判定)の結果、通行資格がないと判定された場合(ステップS204:No)、制御部50は、通行させないようにする(通行不可とする)ための処理を行って、一連の処理を終了し(ステップS205)、ステップS201からの動作に戻る。
【0081】
一方、ステップS203での確認の結果、通行資格があると判定された場合(ステップS204:Yes)、通行クレジットを付与する処理を行う(ステップS206)。すなわち、通行許可とする状態を一定時間保持するものとし、この状態の維持を開始する。その後、制御部50は、ステップS116~S121と同様の処理を行う。すなわち、一定時間内に物理センサであるIRセンサSS1,SS2での検知が上記一定時間内になされ、それに伴い、フラップ30を開閉させる処理を行う(ステップS207~S210)。一方、一定時間内にIRセンサSS1やIRセンサSS2においてIR光の遮光が検知されない場合、付与した通行クレジットを破棄し(ステップS211,S212)、一連の処理を完了し、ステップS201からの動作に戻る。
【0082】
なお、以上のようなICカードを利用したゲート装置100の通過に関する一連の処理については、顔認証による処理とは別個独立して行う態様とするものとしてもよいが、顔認証による処理に組み込むことも考えられる。具体的には、例えば、
図9のステップS101~S108にかけての通行意思の確認から顔認証までの処理を行う場合において、顔認証でNGとなった場合であっても、直ちには処理を破棄せず、ICカードの提示について確認を併せて行う態様とする、といったことが考えられる。
【0083】
以下、
図11として示すフローチャートを参照して、上述したベクトルに基づく通行意思の有無判定のための一連の処理について、一例を説明する。これは、
図9のうち、ステップS104の処理、すなわち推定進行ベクトルPVに基づく各処理による対象者(通行者HU)の通行意思の有無についての判定処理の具体的一例に相当する。ここでは、一の対象者(通行者HU)について、複数回(以下、この回数を試行回数とし、試行回数を、試行回数カウンタにおいて行っているものとする。)の確認を行い、その結果に応じて、通行意思の有無を判定する。具体的には、予め定めた試行回数の上限内において、
図4に例示した仮想検知ラインVLを超えた回数(期待値)が、あらかじめ設定した閾値を超えたか否かによって、通行意思の有無を判定する。なお、仮想検知ラインVLを超えた回数のカウントを、ベクトル交差カウンタにおいて行っているものとする。
【0084】
まず、カメラ10により撮像された画像から人物検知がなされると(ステップS301)、これを受けて、制御部50は、当該画像中の人物である対象者(通行者HU)について、試行回数カウンタをインクリメントする(ステップS302)。すなわち、当該対象者(通行者HU)について、何回目の通行意思の確認であるかをカウントする。
【0085】
次に、制御部50は、当該画像中の通行者HUについて、骨格、顔、視線の情報を抽出し(ステップS303)、さらに、これらから骨格ベクトル、顔ベクトル、視線ベクトルの算出を行い(ステップS304)、これらを組み合わせて、進行方向ベクトルすなわち推定進行ベクトルPVの算出をする(ステップS305)。
【0086】
次に、制御部50は、ステップS305で算出された推定進行ベクトル(進行方向ベクトル)PVが、ゲート装置100における特定領域と交わっているか否か、すなわち
図4に例示した仮想検知ラインVLを超えたか否かを確認する(ステップS306)。
【0087】
ステップS306において、特定領域と交わっている(推定進行ベクトルPVが仮想検知ラインVLを超えている)と判定した場合(ステップS306:Yes)、制御部50は、ベクトル交差カウンタをインクリメントする(ステップS307)。一方、ステップS306において、特定領域と交わっていないと判定した場合(ステップS306:No)、制御部50は、特段の処理を行うことなく、次のステップへと進む。
【0088】
次に、制御部50は、試行回数カウンタが、予め定めた回数(上限回数)に達したかを確認し(ステップS308)、達していなければ(ステップS308:No)、ステップS301からの処理を繰り返す。一方、試行回数カウンタが、上限回数)に達すると(ステップS308:Yes)、制御部50は、推定進行ベクトルPVが仮想検知ラインVLを超えた回数を示す期待値を算出し(ステップS309)、これが予め設定した閾値以上となっているか否かを確認する(ステップS310)。
【0089】
ステップS310において、期待値が閾値以上となっている場合(ステップS310:Yes)、制御部50において、対象としている通行者HUは、ゲート装置100についての通過意思ありとの判定がなされ(ステップS311)、ステップS310において、期待値が閾値以上となっていない場合(ステップS310:No)、制御部50において、対象としている通行者HUは、ゲート装置100についての通過意思なしとの判定がなされる(ステップS312)。
【0090】
ステップS311又はステップS312の判定結果がなされると、制御部50は、試行回数カウンタ及びベクトル交差カウンタの値をクリアし(ステップS313)、ステップS301からの動作に戻る。
【0091】
以下、
図12として示す概念図を参照して、本実施形態のゲート装置100の概要について説明する。
【0092】
図示のように、また既述のように、本実施形態のゲート装置100は、対象者である通行者HU(
図2等参照)を含む画像データを、データ取得部41において取得すると、ベクトル抽出部62やベクトル生成部71において、当該画像データすなわち通行者HUについての画像中から、複数種のベクトルを抽出し、さらに、これらから通行者HUのゲート通過意思の判定を行う際の基準となるベクトル(進行方向ベクトル)を生成する。より具体的には、画像中から視線や顔、骨格について抽出し、これらに関するベクトルを算出するとともに、算出した各ベクトルを組み合わせて(足し合わせて)、推定進行ベクトル(進行方向ベクトル)PV(
図4等参照)を生成する。そして、生成された推定進行ベクトルPVから通行者HUが対象ゲートを通過するか否かを、判定部80において判定している。
【0093】
以上のように、本実施形態のゲート装置100は、対象者である通行者HUを含む画像データを取得するデータ取得部41と、取得した画像データから進行に関する複数種のベクトルを抽出するベクトル抽出部62と、抽出した複数種のベクトルを組み合わせて、通行者HUの推定進行ベクトル(進行方向ベクトル)PVを生成するベクトル生成部71と、生成した推定進行ベクトルPVに基づき通行者HUが対象ゲートを通行するか否かの判定をする判定部80とを備える。上記ゲート装置100では、進行に関する複数種のベクトルを組み合わせて、対象者である通行者HUの推定進行ベクトルPVを生成し、これに基づき通行者HUが対象ゲートを通行するか否かの判定をすることで、ゲートが並列して設置されているような場合であっても、迅速かつ的確に信頼性の高い判定が可能となる。
【0094】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0095】
まず、上記では、ゲート装置100を通過するか否かの判定について、原則として1つのゲート装置100に対して1人の通行者HUが接近する場合における判定について説明したが、例えば
図13(A)及び
図13(B)に示すように、複数の者が縦(通過方向)に並んで1つのゲート装置100に続けて入場する場合も想定され、このような場合においても、対処可能なものとすることができる。
【0096】
図示の一例では、先行する通行者HUfの直後に続く通行者HUbが存在する場合を例示している。このような場合、カメラ10において、通行者HUfについては、処理が可能となる一方、通行者HUbについては、処理が開始できない可能性がある。具体的には、通行者HUfについては、
図13(B)において一点鎖線で示すように、全身が捉えられ、
図13(A)に示すように、各ベクトルV1~V3に基づいて推定進行ベクトルPVが生成され、判定部80(
図4等参照)における判定処理が迅速になされる。一方、通行者HUbについては、
図13(B)において二点鎖線で示すように、顔は捉えられるものの全身の画像が取得できない状態となってしまい、
図13(A)に示すように、視線ベクトルV1や顔ベクトルV2の暫定は可能であるが、骨格ベクトルV3の算出ができない、という状態となってしまう場合が考えられる。このような場合、判定部80は、
図13(A)に示すように、例えば視線ベクトルV1と顔ベクトルV2とを足し合わせた暫定ベクトルPVpを算出し、暫定ベクトルPVpに基づいて事前判定を行っておき、例えば
図13(C)及び
図13(D)に示すように、通行者HUbの骨格ベクトルV3の算出が可能となって生成された推定進行ベクトルPVに基づいて最終判定を行うようにしてもよい。なお、この場合、例えば算出された暫定ベクトルPVpに応じて、予め定められている試行回数カウンタでの上限回数やベクトル交差カウンタでの閾値等の値を変更する(減らす)ものとしてもよい。以上のように、判定部80が、複数種のベクトルV1~V3のうち、先に生成されたベクトル(例えば視線ベクトルV1と顔ベクトルV2)に基づいて対象ゲートを通行するか否かの可能性判定を順次行い、骨格ベクトルV3が取得された後に、最終判定を行うものとすることで、事前に予測をしつつ、最終判定を的確に行うことができる。
【0097】
また、上記では、顔認証とICカードによる認証とが併存する場合について、説明しているが、例えば顔認証を専用とするゲート装置において、本発明を適用することも可能である。また、ICカードによる認証を専用とする場合において、通行者の通行意思を予測するために本発明を適用する、という利用態様とすることも可能である。
【0098】
また、視線検知や顔の向きの抽出、骨格の向きの抽出については、上記したもの以外にも、必要な精度や迅速性を維持できるものであれば、種々のものが利用可能である。また、カメラ10の設置態様等についても種々の変形例が考えられ、例えばゲート本体から離隔した位置にカメラを設置したり、複数のカメラを設置したりする態様とすることも考えられる。
【0099】
また、上記では、推定進行ベクトルPVの生成に関して、視線、顔、骨格についての各ベクトルについて谷ベクトル化した上で、これに重みを付け、さらにこれらを足し合わせて算出するものとしているが、推定進行ベクトルPVの生成については、適切な基準となるものであれば、これに限らず、種々の手法で、推定進行ベクトルPVの生成方法を規定するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10,10A,10B,10C…カメラ、11…カメラ制御部、20…ICカードリーダ、30…フラップ(ドア)、31…ゲート制御部、41…データ取得部、42…データ入出力部、50…制御部、60…画像処理部、61…人物検知部、62…ベクトル抽出部、63…顔画像特徴量抽出部、70…演算処理部、71…ベクトル生成部、72…設定部、80…判定部、90…データ照合部、91…顔認証サーバ、91c…顔照合部、91d…顔データベース、92…IC認証サーバ、92c…IC照合部、92d…ICデータベース、100,100A,100B,100C…ゲート装置、CS…交点、DD3…範囲、DS…データ保管部、FA…顔画像取得範囲、FD…顔方向判定エンジンソフト、GD…視線方向判定エンジンソフト、GG…画像、GGd…画像部分、HD…人物検知エンジンソフト、HU,HUb,HUf,HUα,HUβ,HUγ,HUδ……通行者、HUc…骨格情報、IA…撮像範囲、IAd…重複領域、Lb,Ls…直線、PE…姿勢推定エンジンソフト、PP…直線、PV…推定進行ベクトル(進行方向ベクトル)、PVp…暫定ベクトル、PW…隔壁部、SS1,SS2…IRセンサ、SV…基本骨格ベクトル(基本ベクトル)、V1…視線ベクトル、V2…顔ベクトル、V3…骨格ベクトル、VC…ベクトル合成部、VL…仮想検知ライン