(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026127
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20250214BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250214BHJP
C08F 255/08 20060101ALI20250214BHJP
C09D 123/20 20060101ALI20250214BHJP
C09D 123/26 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B32B27/32 102
B32B27/00 L
C08F255/08
C09D123/20
C09D123/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131511
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】鬼木 絵美
(72)【発明者】
【氏名】有間 愛由
【テーマコード(参考)】
4F100
4J026
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK08B
4F100AK51B
4F100AL04B
4F100AL06B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100EH46B
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JA06A
4F100JA06B
4F100JB04B
4F100JB05B
4F100JL11
4F100JL14
4F100YY00A
4F100YY00B
4J026AA11
4J026BA35
4J026BB01
4J026DA02
4J026DA08
4J026DA15
4J026DB05
4J026DB15
4J026DB38
4J038CB121
4J038CB141
4J038DG191
4J038DG261
4J038KA03
4J038NA10
4J038NA12
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】離型性に優れるとともに、基材層に対する密着性にも優れる4-メチル-1-ペンテン系重合体層を含む積層体を提供すること。
【解決手段】基材層(I)と、下記要件(a)~(c)を満たすグラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)およびイソシアネート化合物(C)を含む組成物(X)から形成される層(II)と、を含む積層体:(a)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が180℃を超え220℃以下である;(b)示差走査熱量計(DSC)で測定した融解(吸熱)曲線における吸熱終了温度(TmE)が230℃以下である;(c)示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化(発熱)曲線における発熱開始温度(TcS)が210℃以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(I)と、
下記要件(a)~(c)を満たすグラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)およびイソシアネート化合物(C)を含む組成物(X)から形成される層(II)と、
を含む積層体:
(a)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が180℃を超え220℃以下である;
(b)示差走査熱量計(DSC)で測定した融解(吸熱)曲線における吸熱終了温度(TmE)が230℃以下である;
(c)示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化(発熱)曲線における発熱開始温度(TcS)が210℃以下である。
【請求項2】
前記グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が、0.5~5.0dl/gである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)が、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のグラフト変性体であり、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(U1)と、所望により、炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く。)から導かれる構成単位(U2)と、を含み、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、前記構成単位(U1)の含有量が84~100モル%であり、前記構成単位(U2)の含有量が0~16モル%である(ただし、前記構成単位(U1)の含有量と前記構成単位(U2)の含有量との合計を100モル%とする。)、
請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材層(I)が、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が200℃以下のポリオレフィンを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)のグラフト変性量が、0.1~5.0質量%である、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記組成物(X)において、前記イソシアネート化合物(C)の含有量が、前記グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)100質量部に対し、0.2~30質量部である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記層(II)における前記基材層(I)に向かう面とは反対の面における表面自由エネルギーが32mN/m以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記層(II)における前記基材層(I)に向かう面とは反対の面における水接触角が97°以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の前記構成単位(U2)が、炭素数6~18のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く。)から導かれる構成単位である、請求項3に記載の積層体。
【請求項10】
前記層(II)の厚さが25μm以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項11】
前記基材層(I)における融点(Tm)が200℃以下の前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンおよびポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項4に記載の積層体。
【請求項12】
前記基材層(I)における融点(Tm)が200℃以下の前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンを含む、請求項11に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
4-メチル-1-ペンテン系重合体は、表面張力が低いことにより離型性に優れており、かつ耐熱性も高い。したがって、4-メチル-1-ペンテン系重合体層と基材層とを含む積層体は、産業用離型フィルム等として使用されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-74775号公報
【特許文献2】特開2013-227421号公報
【特許文献3】特開2015-34258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
4-メチル-1-ペンテン系重合体層は、離型性に優れるものの、基材層に対する密着性が低い傾向にある。本開示の目的の一つは、離型性に優れるとともに、基材層に対する密着性にも優れる4-メチル-1-ペンテン系重合体層を含む積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、例えば以下の[1]~[12]に関する。
[1]基材層(I)と、下記要件(a)~(c)を満たすグラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)およびイソシアネート化合物(C)を含む組成物(X)から形成される層(II)と、を含む積層体:
(a)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が180℃を超え220℃以下である;
(b)示差走査熱量計(DSC)で測定した融解(吸熱)曲線における吸熱終了温度(TmE)が230℃以下である;
(c)示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化(発熱)曲線における発熱開始温度(TcS)が210℃以下である。
[2]前記グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が、0.5~5.0dl/gである、項[1]に記載の積層体。
[3]前記グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)が、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のグラフト変性体であり、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(U1)と、所望により、炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く。)から導かれる構成単位(U2)と、を含み、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、前記構成単位(U1)の含有量が84~100モル%であり、前記構成単位(U2)の含有量が0~16モル%である(ただし、前記構成単位(U1)の含有量と前記構成単位(U2)の含有量との合計を100モル%とする。)、項[1]または[2]に記載の積層体。
[4]前記基材層(I)が、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が200℃以下のポリオレフィンを含む、項[1]~[3]のいずれか1項に記載の積層体。
[5]前記グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)のグラフト変性量が、0.1~5.0質量%である、項[1]~[4]のいずれか1項に記載の積層体。
[6]前記組成物(X)において、前記イソシアネート化合物(C)の含有量が、前記グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)100質量部に対し、0.2~30質量部である、項[1]~[5]のいずれか1項に記載の積層体。
[7]前記層(II)における前記基材層(I)に向かう面とは反対の面における表面自由エネルギーが32mN/m以下である、項[1]~[6]のいずれか1項に記載の積層体。
[8]前記層(II)における前記基材層(I)に向かう面とは反対の面における水接触角が97°以上である、項[1]~[7]のいずれか1項に記載の積層体。
[9]前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の前記構成単位(U2)が、炭素数6~18のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く。)から導かれる構成単位である、項[3]~[8]のいずれか1項に記載の積層体。
[10]前記層(II)の厚さが25μm以下である、項[1]~[9]のいずれか1項に記載の積層体。
[11]前記基材層(I)における融点(Tm)が200℃以下の前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンおよびポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項[4]~[11]のいずれか1項に記載の積層体。
[12]前記基材層(I)における融点(Tm)が200℃以下の前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンを含む、項[11]に記載の積層体。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、離型性に優れるとともに、基材層に対する密着性にも優れる4-メチル-1-ペンテン系重合体層を含む積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態の積層体の断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において数値範囲に関する「A~B」との記載は、特に断りがなければ、A以上B以下であることを表す。例えば、「10~20%」との記載は、10%以上20%以下を意味する。
また、本開示における各種モノマーは、化石原料由来であってもよく、バイオマス由来であってもよい。
【0009】
以下、本開示の積層体について詳細に説明する。
本開示の積層体は、基材層(I)と、グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)およびイソシアネート化合物(C)を含む組成物(X)から形成される層(II)と、を含む。
以下では、組成物(X)について説明した後、積層体について説明する。
【0010】
<組成物(X)>
組成物(X)は、グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)と、イソシアネート化合物(C)とを含む。
【0011】
[グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)]
グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)(以下、「重合体(B)」ともいう。)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)(以下、「重合体(A)」ともいう。)のグラフト変性体であり、例えば、重合体(A)をエチレン性不飽和単量体でグラフト変性して得られる。
【0012】
重合体(A)および重合体(B)は、それぞれ、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を含む。重合体(A)および重合体(B)は、それぞれ、炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く。)から導かれる構成単位をさらに含んでもよい。
【0013】
以下の記載において、重合体(A)および重合体(B)における、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を「構成単位(U1)」ともいう。同様に、重合体(A)および重合体(B)における、炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く。)から導かれる構成単位を「構成単位(U2)」ともいう。
【0014】
重合体(B)は、以下に説明する要件(a)~(c)を満たす。
【0015】
〔要件(a)〕
重合体(B)の融点(Tm)は、180℃を超え220℃以下であり、好ましくは184~217℃、より好ましくは188~215℃である。融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)により測定され、その測定方法の詳細は実施例欄に記載する。融点(Tm)が上記範囲にある重合体(B)は、耐熱性に優れる。このため、組成物(X)から形成される層(II)も、耐熱性に優れる傾向にある。
【0016】
融点(Tm)は、重合体(B)の立体規則性、および重合体(B)における構成単位(U2)の含有量に依存する傾向がある。このため後述するオレフィン重合用触媒を用い、さらには構成単位(U2)の含有量を制御することにより、融点(Tm)を調整できる。
【0017】
〔要件(b)〕
重合体(B)の、融解(吸熱)曲線における吸熱終了温度(TmE)は、230℃以下であり、好ましくは230℃未満、より好ましくは228℃以下、さらに好ましくは228℃未満である。吸熱終了温度は、DSCにより測定され、その測定方法の詳細は実施例欄に記載する。吸熱終了温度とは、融解が終了した温度を意味する。吸熱終了温度および後述する発熱開始温度は、一般にいう、ベースラインと定常ライン接線との交点であるオンセット、オフセットとは異なる指標である。
【0018】
吸熱終了温度は、例えば、重合体(A)を合成する際のオレフィン重合用触媒を適切に選択すること、および構成単位(U2)の含有量を制御することなどにより、所望の値とすることができる。
【0019】
吸熱終了温度が上記範囲にある重合体(B)は、耐熱性に優れる。このため、組成物(X)から形成される層(II)も、耐熱性に優れる傾向にある。吸熱終了温度が上記範囲にある重合体(B)は、吸熱終了温度が上記範囲にないグラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体に比べて、コーティング剤の調製時に使用可能な溶媒に溶解しやすい。このため、吸熱終了温度が上記範囲にある重合体(B)を用いて調製されたコーティング剤等の性状が均一になる傾向にある。
【0020】
〔要件(c)〕
重合体(B)の、結晶化(発熱)曲線における発熱開始温度(TcS)は、210℃以下であり、好ましくは210℃未満、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは200℃未満である。発熱開始温度は、DSCにより測定され、その測定方法の詳細は実施例欄に記載する。
【0021】
発熱開始温度は、例えば、重合体(A)を合成する際のオレフィン重合用触媒を適切に選択すること、および構成単位(U2)の含有量を制御することなどにより、所望の値とすることができる。
【0022】
発熱開始温度が上記範囲にある重合体(B)は、耐熱性に優れる。このため、組成物(X)から形成される層(II)も、耐熱性に優れる傾向にある。発熱開始温度が上記範囲にある重合体(B)は、発熱開始温度が上記範囲にないグラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体に比べて、コーティング剤の調製時に使用可能な溶媒に溶解しやすい。このため、発熱開始温度が上記範囲にある重合体(B)を用いて調製されたコーティング剤等の性状が均一になる傾向にある。
【0023】
重合体(B)は、要件(a)~(c)を満たすので、耐熱性を保ちつつ、溶媒への溶解性にも優れる。また、要件(a)~(c)を満たす重合体(B)は、溶媒への溶解性に優れるため、溶媒中で溶解したままの状態を保ちやすい。このため、要件(a)~(c)を満たす重合体(B)は、要件(a)~(c)のいずれか1つ以上を満たさないグラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体に比べて、溶媒に溶解された場合の保存安定性も良好である。
【0024】
重合体(B)の結晶化温度(Tc)は、好ましくは110~200℃、より好ましくは120~195℃、さらに好ましくは130~190℃である。結晶化温度は、DSCにより測定され、その測定方法の詳細は実施例欄に記載する。結晶化温度が上記範囲にある重合体(B)は、耐熱性および成形性の観点から好ましい。
【0025】
結晶化温度(Tc)は、重合体(B)の立体規則性、および重合体(B)における構成単位(U2)の含有量に依存する傾向がある。このため後述するオレフィン重合用触媒を用い、さらには構成単位(U2)の含有量を制御することにより、結晶化温度(Tc)を調整できる。
【0026】
重合体(B)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、好ましくは0.5~5.0dl/g、より好ましくは0.6~4.0dl/g、さらに好ましくは0.8~3.0dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲にある重合体(B)は、耐熱性が良好である。極限粘度[η]が上記範囲にある重合体(B)を含むコーティング剤は、塗工性に優れ、層(II)の形成に適している。極限粘度[η]は、例えば、重合体(A)を製造する際の重合工程における水素の添加量により調整できる。
【0027】
重合体(A)において、構成単位(U1)の含有量は、好ましくは84~100モル%、より好ましくは87~99.0モル%、さらに好ましくは90~98.5モル%であり、構成単位(U2)の含有量は、好ましくは0~16モル%、より好ましくは1.0~13モル%、さらに好ましくは1.5~10モル%である。ただし、構成単位(U1)の含有量と構成単位(U2)の含有量との合計を100モル%とする。
【0028】
構成単位(U1)および構成単位(U2)のそれぞれの含有量は、13C-NMRにより求められ、具体的には、実施例欄に記載の方法により求められる。構成単位(U1)の含有量および構成単位(U2)の含有量がそれぞれ上記範囲にある重合体(A)は、耐熱性に優れる傾向にあり、したがって重合体(B)も、耐熱性に優れる傾向にある。このため、組成物(X)から形成される層(II)も、耐熱性に優れる傾向にある。
【0029】
構成単位(U2)を導くα-オレフィンは、炭素数2~20のα-オレフィンであり、好ましくは炭素数6~18のα-オレフィンである。構成単位(U2)を導くα-オレフィンは、好ましくは、直鎖状α-オレフィンである。構成単位(U2)を導くα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセンおよび1-エイコセンが挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点から、炭素数6~18の直鎖状α-オレフィンが好ましい。具体的には、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセンおよび1-オクタデセンが好ましく、これらの中でも、1-デセン、1-ヘキサデセンおよび1-オクタデセンが特に好ましい。
【0030】
重合体(A)における構成単位(U2)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
重合体(B)における構成単位(U2)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0031】
重合体(A)としては、重合性モノマーから導かれる構成単位が構成単位(U1)および構成単位(U2)のみからなる共重合体が挙げられる。この場合、重合体(A)における重合性モノマーから導かれる全構成単位100モル%中、構成単位(U1)の含有量と構成単位(U2)の含有量との合計は100モル%である。
【0032】
重合体(A)は、構成単位(U1)および構成単位(U2)の他に、4-メチル-1-ペンテンおよび炭素数2~20のα-オレフィン以外の他の重合性モノマーから導かれる構成単位をさらに含んでもよい。重合体(A)における重合性モノマーから導かれる全構成単位100モル%中、他の重合性モノマーから導かれる全構成単位の含有量は、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは3モル%以下である。
【0033】
重合体(A)における他の重合性モノマーから導かれる構成単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。重合体(B)における他の重合性モノマーから導かれる構成単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0034】
他の重合性モノマーの好ましい具体例としては、スチレン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサンおよびビニルノルボルナン等の環状構造を有するビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエンおよび2,3-ジメチルブタジエン等の共役ジエン類;1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネンおよび2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン等の非共役ポリエン類が挙げられる。
【0035】
重合体(A)は、例えば、オレフィン重合用触媒の存在下、4-メチル-1-ペンテンを、所望により炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く。)と、さらに所望により上記他の重合性モノマーとともに、公知の方法により重合することにより得ることができる。
【0036】
重合体(A)の製造の際に使用可能なオレフィン重合用触媒の例として、メタロセン触媒を挙げることができる。好ましいメタロセン触媒としては、国際公開第01/053369号、国際公開第01/027124号、特開平03-193796号公報、特開平02-041303号公報、国際公開第06/025540号、あるいは、国際公開第2014/123212号に記載のメタロセン触媒が挙げられる。
【0037】
グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)は、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)をエチレン性不飽和単量体でグラフト変性して得られる。
【0038】
重合体(B)のグラフト変性量は、好ましくは0.1~5.0質量%、より好ましくは0.3~4.0質量%、さらに好ましくは0.5~3.0質量%である。グラフト変性量とは、重合体(B)の質量に対する、グラフト変性で用いられたエチレン性不飽和単量体から導かれる構成単位の質量の割合を意味する。グラフト変性量は、赤外分光法(IR)により測定され、その測定条件の一例を実施例欄に記載する。グラフト変性量が上記範囲にある重合体(B)およびイソシアネート化合物(C)を含む組成物(X)から形成される層(II)は、離型性と、基材層(I)に対する密着性と、のバランスに優れる傾向にある。
【0039】
エチレン性不飽和単量体としては、イソシアネート化合物(C)中に含まれるイソシアネート基と反応し得る官能基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、不飽和カルボン酸、および不飽和カルボン酸の誘導体がより好ましい。不飽和カルボン酸およびその誘導体としては、例えば、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物とアルキルアルコールとのエステル、および無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物が挙げられる。
【0040】
不飽和化合物が有する不飽和基としては、例えば、ビニル基、ビニレン基および不飽和環状炭化水素基が挙げられる。エチレン性不飽和単量体の中では、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好ましく、マレイン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物がより好ましい。
【0041】
エチレン性不飽和単量体は、1種または2種以上用いることができる。すなわち、重合体(B)におけるグラフト変性で用いたエチレン性不飽和単量体から導かれる構成単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0042】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)をエチレン性不飽和単量体でグラフトさせる方法としては、例えば、溶液法および溶融混練法等の、従来公知のグラフト重合法が挙げられる。グラフト重合法としては、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を溶融し、エチレン性不飽和単量体を添加してグラフト反応させる方法、および、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を溶媒に溶解して溶液とし、そこへエチレン性不飽和単量体を添加してグラフト反応させる方法が挙げられる。
【0043】
組成物(X)の固形分100質量%中における重合体(B)の含有量は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。組成物(X)の固形分100質量%中における重合体(B)の含有量は、例えば100質量%未満でもよく、99.9質量%以下でもよく、99質量%以下でもよく、98質量%以下でもよく、95質量%以下でもよく、90質量%以下でもよい。本明細書において、組成物(X)の固形分とは、後述する溶媒(D)を除く全成分をいう。
【0044】
[イソシアネート化合物(C)]
組成物(X)は、イソシアネート化合物(C)を含む。
【0045】
イソシアネート化合物(C)は、イソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されないが、硬化性を向上させる観点から、1分子内に2以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート化合物であることが好ましい。
【0046】
1分子内に2つのイソシアネート基を有する2官能イソシアネート化合物としては、例えば、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジプロピルエーテルジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタンジイソシアネート、3-メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、3-ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテルジイソシアネート、およびチオジヘキシルジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;
m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネート、2,7-ナフタレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、およびテトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ならびに
水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。
【0047】
イソシアネート化合物(C)は、2官能イソシアネート化合物の3量体であるビウレット体またはイソシアヌレート体でもよく、トリメチロールプロパン等のポリオールと2官能イソシアネート化合物との付加体(すなわち、アダクト体)でもよく、メタノール等のアルコールと2官能イソシアネート化合物との付加体(すなわち、アロファネート体)でもよい。
【0048】
これらの中でも、積層体の変色抑制の観点から、イソシアネート化合物(C)は、脂肪族イソシアネート化合物であることが好ましく、1分子内に2以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物であることがより好ましく、脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体、脂肪族ジイソシアネートとアルコールとのアロファネート体、または脂肪族ジイソシアネートとポリオールとのアダクト体であることがさらに好ましく、脂肪族ジイソシアネート、または脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体であることが特に好ましい。
【0049】
組成物(X)におけるイソシアネート化合物(C)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0050】
組成物(X)におけるイソシアネート化合物(C)の含有量は、重合体(B)100質量部に対し、好ましくは0.2~30質量部、より好ましくは0.3~25質量部、さらに好ましくは0.4~20質量部である。イソシアネート化合物(C)の含有量が上記範囲にある組成物(X)は、保存安定性に優れる傾向にあるとともに、基材層(I)に対する密着性に優れる層(II)を容易に形成できる傾向にある。組成物(X)におけるイソシアネート化合物(C)の含有量は、重合体(B)100質量部に対し、10質量部以下でもよい。このような組成物(X)は、保存安定性により優れる傾向にある。
【0051】
[溶媒(D)]
組成物(X)は、溶媒(D)を含んでもよい。溶媒(D)を含む組成物(X)は、例えば液状であり、コーティング剤でもよい。組成物(X)は、一実施形態において、重合体(B)を溶媒(D)中に溶解または分散させたコーティング剤でもよい。
【0052】
溶媒(D)は、重合体(B)を溶解または分散することができれば特に制限はないが、好ましくは有機溶媒である。有機溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンおよび酢酸エチル等の脂肪族炭化水素;トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これらの中でも、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、酢酸エチル等を好適に用いることができる。溶媒(D)は、例えば、室温(25℃)で液状であり、1気圧での沸点が150℃以下にある溶媒である。
【0053】
組成物(X)は、1種または2種以上の溶媒(D)を含んでもよい。
【0054】
組成物(X)が溶媒(D)を含む場合における溶媒(D)の含有量は、好ましくは50~99.9質量%、より好ましくは70~99質量%、さらに好ましくは90~98質量%である。このような組成物(X)は、例えば、コーティング剤として好適である。組成物(X)に含まれる溶媒(D)の含有量が上記範囲にあると、組成物(X)を後述する基材層(I)に塗布することが容易である。
【0055】
組成物(X)が溶媒(D)を含む場合における組成物(X)の固形分の含有量は、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは2~10質量%である。組成物(X)に含まれる固形分の含有量が上記範囲にあると、組成物(X)のハンドリング性と層(II)を形成する際に組成物(X)からの溶媒(D)の除去の容易性とのバランスが良好である。
【0056】
[その他の成分]
組成物(X)は、さらに必要に応じて、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、レベリング剤、強化剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスおよび充填剤が挙げられる。組成物(X)から形成される層(II)にも、上記その他の成分が含まれ得る。
【0057】
組成物(X)におけるその他の成分の総含有量は、特に限定されないが、組成物(X)の固形分100質量%中、好ましくは0.005~5質量%、より好ましくは0.01~3質量%である。
【0058】
[組成物(X)の製造方法]
組成物(X)は、例えば、重合体(B)と、イソシアネート化合物(C)と、所望により溶媒(D)と、所望によりその他の成分と、を混合することにより製造できる。組成物(X)の一実施形態であるコーティング剤は、例えば、溶媒(D)に重合体(B)、イソシアネート化合物(C)、および所望によりその他の成分を添加し、溶媒(D)の沸点未満の温度で、所定の時間撹拌することで製造できる。
【0059】
<積層体>
本開示の積層体は、基材層(I)と、上述した組成物(X)から形成される層(II)と、を含む。
【0060】
積層体中に含まれる層(II)は、1層でもよく、2層以上でもよい。積層体中に層(II)が2層以上含まれる場合は、2層以上の層(II)は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0061】
積層体は、基材層(I)の片側のみに層(II)を含んでもよく、基材層(I)の両側に層(II)を含んでもよい。例えば、積層体は、基材層(I)と、基材層(I)の一方の面上に設けられた層(II)と、を含んでもよく、第1の層(II)と、基材層(I)と、第2の層(II)と、を積層方向にこの順に含んでもよい。
【0062】
図1および
図2に、積層体の一実施形態に係る断面図を示す。
図1に示す積層体1は、基材層(I)10と、層(II)20と、を含む。
図2に示す積層体1は、第1の層(II)20Aと、基材層(I)10と、第2の層(II)20Bと、を含む。
【0063】
本開示の積層体の厚さは、好ましくは10~600μm、より好ましくは20~500μm、さらに好ましくは30~400μm、よりさらに好ましくは40~300μm、特に好ましくは50~200μmである。本明細書において、積層体および各層の厚さは、積層体の表面に対して垂直な方向における積層体の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することにより測定される。
【0064】
[基材層(I)]
基材層(I)は、例えば、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアミドが挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンおよびポリ4-メチル-1-ペンテンが挙げられる。ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12およびポリアミド6-66共重合体が挙げられる。熱可塑性樹脂の中でも、層(II)に対する密着性という観点からポリオレフィンが好ましく、ポリエチレンおよびポリプロピレンがより好ましく、ポリプロピレンがさらに好ましい。
【0065】
ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレン単独重合体およびプロピレン共重合体が挙げられる。プロピレン共重合体は、例えば、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。プロピレン共重合体においてプロピレンと共重合されるコモノマーとしては、例えば、プロピレン以外のα-オレフィン、およびジエン化合物が挙げられる。プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンおよび1-テトラデセン等の、炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、プロピレンを除く。)が挙げられる。
【0066】
ポリプロピレンにおけるプロピレンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上であり、上記コモノマーから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
【0067】
ポリプロピレンとしては、具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・3-メチル-1-ブテンランダム共重合体、およびプロピレン・4-メチル-1-ペンテンランダム共重合体が挙げられる。
【0068】
ポリプロピレンにおける、ASTM D 1238に準拠して温度230℃、荷重2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1~100g/10分、より好ましくは0.3~30g/10分、さらに好ましくは0.5~20g/10分、特に好ましくは1~10g/10分である。
【0069】
基材層(I)は、1種または2種以上の熱可塑性樹脂を含んでもよい。
【0070】
基材層(I)における熱可塑性樹脂(例えばポリオレフィン)の含有量は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
基材層(I)は、一実施形態において、ポリプロピレンを含む。基材層(I)におけるポリプロピレンの含有量は、一実施形態において、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0071】
ポリオレフィンの融点(Tm)は、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、さらに好ましくは180℃以下、特に好ましくは175℃以下である。ポリオレフィンの融点(Tm)は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上、特に好ましくは150℃以上である。融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)により測定され、その測定方法の詳細は実施例欄に記載する。
ポリオレフィンの融点(Tm)が上記範囲にあると、基材となるフィルムを容易に製膜することが可能であり、該フィルムは包材などの汎用基材として使用することができる。
【0072】
基材層(I)は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、および無機または有機の充填剤が挙げられる。
基材層(I)は、1種または2種以上の添加剤を含んでもよい。
【0073】
基材層(I)は、例えば、基材フィルムでもよい。基材フィルムは、例えば、上述した熱可塑性樹脂を含み、所望により上述した添加剤を含んでもよい。基材フィルムは、例えば、Tダイキャスト成形法およびインフレーション成形法などの押出成形法、または溶液流延法により製造できる。基材フィルムは、延伸されていてもよい。基材フィルムは、例えば、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムでもよい。
【0074】
基材フィルムは、単層体でもよく、複層体でもよい。
【0075】
基材層(I)における層(II)と接する面には、コロナ処理等の従来公知の表面処理を施してもよい。表面処理により、例えば、基材層(I)と層(II)との接着強度を向上できる。
【0076】
基材層(I)の厚さは、好ましくは10~500μm、より好ましくは20~400μm、さらに好ましくは30~300μm、よりさらに好ましくは40~200μm、特に好ましくは50~150μmである。
【0077】
[層(II)]
層(II)は、上述した組成物(X)から形成される層である。
層(II)は、一実施形態において、重合体(B)とイソシアネート化合物(C)との反応物を含む。組成物(X)から形成される層(II)は、基材層(I)に対する密着性に優れる。これは、重合体(B)とイソシアネート化合物(C)との硬化反応により、重合体(B)とイソシアネート化合物(C)とが化学的および物理的に相互作用するためであると推測される。
【0078】
本開示の積層体は、一実施形態において、一方の最外層を構成する層(II)を含むことが好ましく、あるいは、一方の最外層を構成する第1の層(II)と、他方の最外層を構成する第2の層(II)と、を含むことが好ましい。このような積層体は、後述するように離型フィルムとして好適に用いられる。
【0079】
層(II)における基材層(I)に向かう面とは反対の面における表面自由エネルギーは、好ましくは32mN/m以下、より好ましくは30mN/m以下、さらに好ましくは28mN/m以下である。層(II)の上記表面自由エネルギーは、例えば15mN/m以上でもよく、20mN/m以上でもよい。表面自由エネルギーが上記範囲にある層(II)は、離型性に優れる傾向にある。表面自由エネルギーは、実施例欄に記載の方法により測定される。
【0080】
層(II)における基材層(I)に向かう面とは反対の面における水接触角は、好ましくは97°以上、より好ましくは98°以上、さらに好ましくは99°以上である。層(II)の上記水接触角は、例えば135°以下でもよく、130°以下でもよい。水接触角が上記範囲にある層(II)は、高い疎水性を有し、極性が高い材料に対して高い離型性を有する傾向にあり、また、撥水性に優れる傾向にある。水接触角は、実施例欄に記載の方法により測定される。
【0081】
層(II)の厚さは、好ましくは25μm以下、より好ましくは0.01~20μm、さらに好ましくは0.03~10μm、よりさらに好ましくは0.05~5μm、特に好ましくは0.1~3μmである。層(II)の厚さが上記範囲にあると、基材層(I)の一方の側だけに層(II)を形成した場合でも、得られる積層体にカールが発生しづらくなる。また、層(II)の厚さが上記範囲であることにより、基材層(I)がカールを抑制するための中間層を備えた多層構造となっていない場合においても、積層体でカールが発生しづらくなる。
【0082】
[他の層]
本開示の積層体は、それぞれ上述した基材層(I)および層(II)以外の、他の層をさらに含んでもよい。積層体は、例えば、基材層(I)と層(II)との間に、プライマー層をさらに含んでもよい。プライマー層は、例えば、基材層(I)と層(II)との密着性を向上させるために設けられる。プライマー層は、例えば、基材層(I)の表面に設けられる。
【0083】
[積層体の製造方法]
本開示の積層体は、例えば、以下の製造方法により好適に製造できる。すなわち、重合体(B)、イソシアネート化合物(C)および溶媒(D)を含む組成物(X)を準備する工程(1)と、基材層(I)の少なくとも一方の面に組成物(X)を塗布し、層(II)を形成する工程(2)とを含む方法等により、積層体が製造され得る。
【0084】
以下、層(II)を形成する工程(2)で行われる処理の例を説明する。この例では、組成物(X)の一実施形態であるコーティング剤を用いる。工程(2)では、具体的には、コーティング剤を、基材層(I)の少なくとも一方の面に塗布し、コーティング剤中の溶媒(D)の沸点に近い温度に加熱することでコーティング剤中の溶媒(D)をある程度、除去する。コーティング剤を塗布する方法としては、例えば、はけやブラシを用いた塗布、スプレーによる吹き付け、スクリーン印刷法、フローコーティング、スピンコート、ディッピングによる方法や、バーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターナイフ、ロールコート、ダイコート等を用いる方法が挙げられる。
【0085】
溶媒(D)の除去とは、コーティング剤中から溶媒(D)を完全に除去することのみを意味するものではなく、層を形成し得る程度に溶媒(D)を除去することも含む。溶媒(D)の除去には、具体的には、コーティング剤を用いて形成された層(II)の質量100%に対して、溶媒(D)の含有量が0.001~0.5質量%程度になるまで、溶媒(D)を除去することが含まれる。溶媒(D)を除去する方法は特に限定されず、放置することで乾燥してもよいが、一般的には30~220℃で加熱し乾燥することで溶媒(D)は除去される。加熱温度は、イソシアネート化合物(C)の硬化反応を促進させる観点から、好ましくは50~200℃、より好ましくは70~180℃、さらに好ましくは90~160℃である。重合体(B)の熱劣化や熱分解を防ぐために、重合体(B)の融点(Tm)未満の温度で溶媒(D)を除去することが好ましい。乾燥後の層(II)中に残留する溶媒(D)は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下である。
【0086】
<積層体の用途>
本開示の積層体は、上述のように離型性に優れるため、離型フィルムとして好適に用いることができる。離型フィルムは、例えば、光学部材の製造工程で用いられる離型フィルム、薄膜セラミックコンデンサーの製造工程で用いられる離型フィルム、テープ・その他粘着用のセパレーター、粘着・樹脂シート製膜用のセパレーター、または、建築用ウィンドウフィルムのセパレーターである。光学部材としては、例えば、導光板、偏光フィルム、光拡散フィルム、位相差フィルムおよび反射防止フィルムが挙げられる。
【0087】
本開示の積層体は、上述のように耐熱性に優れるため、保護用フィルムとして好適に用いることができる。保護用フィルムは、例えば、表示デバイス、半導体デバイス、光学部材、プリント回路基板、キャパシタ等のための保護用フィルムである。
【実施例0088】
以下、実施例に基づいて本開示の積層体をより具体的に説明するが、本開示の積層体はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0089】
<重合体の物性の測定方法>
[組成]
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)中の4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(U1)の含有量、および、炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く。)から導かれる構成単位(U2)の含有量は、以下の装置を用いて下記条件下で得られる13C-NMRスペクトルより算出した。以下、構成単位(U1)の含有量を4-メチル-1-ペンテン量とも記載し、炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く。)をコモノマー種とも記載し、構成単位(U2)の含有量をコモノマー量とも記載する。
【0090】
日本電子(株)製のECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒:o-ジクロロベンゼン/重ベンゼン(80容量%/20容量%)混合溶媒、試料濃度:55mg/0.6mL、測定温度:120℃、観測核:13C(125MHz)、シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間:5.5秒、積算回数:1万回以上、ケミカルシフトの基準値:27.50ppmの条件で、測定を実施した。得られた13C-NMRスペクトルにより、4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィンの組成を定量化した。
【0091】
[極限粘度[η]]
極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。すなわち、試料である重合体(A)または重合体(B)を約20mg計り取り、デカリン15mLに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0092】
[グラフト変性量]
グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)のグラフト変性量、すなわち、グラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)の質量を100質量%とした場合における、グラフト変性に使用されたエチレン性不飽和単量体から導かれる構成単位の含有量は、以下の方法で求めた。
【0093】
まず、試料とするグラフト変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)を250℃、予熱5分、プレス3分で処理してプレスフィルムを作製し、該プレスフィルムに対して、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製、FT-IR410型)により、透過法でIR測定を行った。下記製造例では、グラフト変性に無水マレイン酸を用いたため、1860cm-1のピーク強度と4321cm-1のピーク強度とより、グラフト変性量を算出した。
【0094】
[融点(Tm)、吸熱終了温度(TmE)、発熱開始温度(TcS)および結晶化温度(Tc)]
セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計(DSC)測定装置(型番:DSC220C)を用い、ASTM D3418に準拠して発熱・吸熱曲線を求め、以下のように融点(Tm)と結晶化温度(Tc)とを求めた。
【0095】
試料約5mgを測定用アルミパンにつめ、10℃/分の加熱速度で20℃から280℃に昇温し、280℃で5分間保持した後、10℃/分の冷却速度で20℃まで降温し、結晶化(発熱)曲線を得た。20℃で5分間保持した後、再度10℃/分の加熱速度で20℃から280℃に昇温して、融解(吸熱)曲線を得た。1回目の降温時に発現した結晶化ピークの頂点の温度を、結晶化温度(Tc)とした。結晶化ピークが複数検出された場合は、温度が最大のものを結晶化温度(Tc)とした。2回目の昇温時に発現した融解ピークの頂点の温度を、融点(Tm)とした。融解ピークが複数検出された場合は、温度が最大のものを融点(Tm)とした。
【0096】
上記融解(吸熱)曲線の、吸熱が終了したときの温度を吸熱終了温度(TmE)とした。また、上記結晶化(発熱)曲線の、発熱が開始されたときの温度を発熱開始温度(TcS)とした。吸熱の終了点とは、吸熱の終了時付近の上記融解(吸熱)曲線において、融解ピークに対して高温側のベースラインに対し、ベースラインから曲線が乖離して熱量に差が出始めたことが確認できる点である。発熱の開始点とは、発熱の開始時付近の上記結晶化(発熱)曲線において、結晶化ピークに対して高温側のベースラインに対し、ベースラインから曲線が乖離して熱量に差が出始めたことが確認できる点である。
【0097】
<調製例1:(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドの調製>
国際公開第2014/123212号の予備実験5(段落[0346]~[0348])に記載の方法を用いて、(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドを合成した。
【0098】
<製造例1a:重合体(1a)の製造>
[合成例1-1:オレフィン重合用触媒の製造]
撹拌機を付けた、充分に窒素置換した200mLの三つ口フラスコ中に、30℃、窒素気流下で、精製デカンを30mL、および粒子状でありD50が28μm、アルミニウム原子含有量が43質量%である固体状ポリメチルアルミノキサン(国際公開第2014/123212号に記載の方法を用いて合成)をアルミニウム原子換算で14.65mmol装入し、懸濁液を得た。その懸濁液に、調製例1で得られた(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド50.0mg(0.0586mmol)を4.58mmol/Lのトルエン溶液として撹拌しながら加えた。1時間後、撹拌を止め、得られた混合物をデカンテーション法によりデカン100mLで洗浄した後、デカンを加え50mLのスラリー液を得た(ジルコニウム原子担持率98%)。
【0099】
[合成例1-2:予備重合触媒成分の調製]
撹拌機を付けた、充分に窒素置換した反応器内に、合成例1-1で調製したスラリー液を装入した。上記スラリー液に、25℃、窒素気流下で、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)のデカン溶液(アルミニウム原子換算で0.5mmol/mL)を1.0mL加えた。15℃に冷却した後、4-メチル-1-ペンテン10mLを60分かけて反応器内に装入した。4-メチル-1-ペンテンの装入開始時点を予備重合開始とした。予備重合開始から2時間後に撹拌を止め、得られた混合物をデカンテーション法によりデカン100mLで3回洗浄した。予備重合触媒成分はデカンスラリー(9.5g/L、ジルコニウム原子換算で0.56mmol/L)とした。
【0100】
[重合体(1a)の製造]
室温、窒素気流下で、内容積1Lの撹拌機を付けたSUS製重合器に、精製デカンを425mL装入し40℃まで昇温した。40℃到達後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)のデカン溶液(アルミニウム原子換算で0.5mmol/mL)を0.8mL(アルミニウム原子換算で0.4mmol)装入し、次いで合成例1-2の予備重合触媒成分のデカンスラリーをジルコニウム原子換算で0.00175mmol装入した。水素を23.75NmL装入し、次いで、4-メチル-1-ペンテン230mLと製品名:リニアレン168(出光興産(株)製、1-ヘキサデセンと1-オクタデセンとの混合物)22.4mLとの混合液を2時間かけて重合器内へ連続的に一定の速度で装入した。上記混合液の装入開始時点を重合開始とし、45℃で4.5時間保持した。重合開始から1時間後および2時間後にそれぞれ水素を23.75NmL装入した。重合開始から4.5時間経過後、室温まで降温し、脱圧した後、ただちに白色固体を含む重合液を濾過して固体状物質を得た。この固体状物質を減圧下、80℃で8時間乾燥し、重合体(1a)を得た。収量は142gであった。重合体(1a)中の構成単位(U1)の含有量は96.5モル%、構成単位(U2)の含有量は3.5モル%であった。重合体(1a)の融点(Tm)は201℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は1.0dl/gであった。重合体(1a)のその他の物性を表1に示す。
【0101】
<製造例1b:重合体(1b)の製造>
重合体(1a)を100質量部、無水マレイン酸を2質量部、および有機過酸化物として2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3(パーヘキシン25B、日油(株)製)を0.02質量部配合し、東洋精機製作所社製ラボプラストミルのミキサーを使用して、樹脂温度280℃、スクリュー回転数150rpmで混錬することにより、重合体(1b)を得た。
【0102】
重合体(1b)中の構成単位(U1)および構成単位(U2)の含有量は、重合体(1a)と同じであるとした。重合体(1b)の融点(Tm)は201℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は1.0dl/g、グラフト変性量は1.5質量%であった。重合体(1b)のその他の物性を表1に示す。
【0103】
<製造例2~7:重合体(2b)~(7b)の製造>
4-メチル-1-ペンテン量、コモノマー種、コモノマー量およびグラフト変性量が表1に記載したとおりになるように製造条件を変更したこと以外は製造例1aおよび1bと同様にして、重合体(2b)~(7b)を得た。重合体(2b)~(7b)の各種物性を表1に示す。
【0104】
<製造例8:重合体(8a)の製造>
充分に窒素置換した容量1.5Lの撹拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4-メチル-1-ペンテン500mLとヘプタン220mLとを装入した。このオートクレーブに、1-デセン30mLと、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mLトルエン溶液0.3mLとを続けて装入し、撹拌を開始した。次に、オートクレーブに水素を140mL装入し、オートクレーブを内温60℃まで加熱した。
【0105】
その後、予め調製しておいた液体状のメチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で0.039mmol含み、さらに、調製例1で得られた(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドを0.00013mmol含むトルエン溶液2mLを、窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。
【0106】
重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始10分後、オートクレーブにメタノール5mLを窒素で圧入して重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。アセトンに反応溶液を撹拌しながら注ぎ、重合体を析出させた。得られた重合体(8a)を130℃、減圧下で10時間乾燥した。重合体(8a)の各種物性を表1に示す。
【0107】
<製造例9:重合体(9a)の製造>
充分に窒素置換した容量1.5Lの撹拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4-メチル-1-ペンテン500mLとヘプタン230mLとを装入した。このオートクレーブに、1-デセン15mLと、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mLトルエン溶液0.3mLとを続けて装入し、撹拌を開始した。次に、オートクレーブに水素を140mL装入し、オートクレーブを内温60℃まで加熱した。
【0108】
その後、予め調製しておいた液体状のメチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で0.06mmol含み、さらに、調製例1で得られた(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドを0.0002mmol含むトルエン溶液2mLを、窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。
【0109】
重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始30分後、オートクレーブにメタノール5mLを窒素で圧入して重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。アセトンに反応溶液を撹拌しながら注ぎ、重合体を析出させた。得られた重合体(9a)を130℃、減圧下で10時間乾燥した。重合体(9a)の各種物性を表1に示す。
【0110】
【0111】
<組成物(X)の調製>
[組成物(Xc1)および(X1-1)の調製]
重合体(1b)100質量部に対し、酸化防止剤としてのトリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートを0.1質量部、耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートを0.1質量部添加し、固形分濃度が6.25質量%になるようにメチルシクロヘキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)を添加して、90℃、3時間、200rpmで撹拌した。その後、固形分濃度が5質量%になるよう酢酸エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)を添加して、60℃、15分間、200pmで撹拌することで、重合体(1b)を含む組成物(Xc1)を調製した。
【0112】
組成物(Xc1)を23℃へ降温後、組成物(Xc1)中の重合体(1b)100質量部に対し、イソシアネート化合物(C)としてタケネートD170N(三井化学(株)製)を0.6質量部添加して、5分間、200rpmで撹拌した。このようにして、コーティング剤として、重合体(1b)とイソシアネート化合物(C)とを含む組成物(X1-1)を調製した。
【0113】
[組成物(X1-2)~(X1-4)の調製]
イソシアネート(C)の量を表2に記載したとおりに変更したこと以外は組成物(X1-1)の調製と同様にして、コーティング剤として、組成物(X1-2)~(X1-4)を調製した。
【0114】
[組成物(X2)~(X7)の調製]
重合体種を表2に記載したとおりに変更したこと以外は組成物(X1-2)の調製と同様にして、コーティング剤として、組成物(X2)~(X7)を調製した。
【0115】
[組成物(Xc8-1)および(Xc8-2)の調製]
重合体(8a)100質量部に対し、酸化防止剤としてのトリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートを0.1質量部、耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートを0.1質量部添加し、固形分濃度が5質量%になるようにメチルシクロヘキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)を添加して、90℃、1時間、200rpmで撹拌して、重合体(8a)を含む組成物(Xc8-1)を調製した。
【0116】
組成物(Xc8-1)を23℃へ降温後、組成物(Xc8-1)中の重合体(8a)100質量部に対し、イソシアネート化合物(C)としてタケネートD170N(三井化学(株)製)を0.8質量部添加して、5分間、200rpmで撹拌した。このようにして、コーティング剤として、重合体(8a)とイソシアネート化合物(C)とを含む組成物(Xc8-2)を調製した。
【0117】
[組成物(Xc9)~(Xc10)の調製]
重合体種を表2に記載したとおりに変更したこと以外は組成物(Xc8-2)の調製と同様にして、コーティング剤を調製した。
【0118】
[実施例1]
ポリプロピレン((株)プライムポリマー製、銘柄:プライムポリプロF113G、融点(Tm):163℃、MFR:3.0g/10分)を、Tダイ付きキャストフィルム成形機を用い、シリンダー温度230℃でフィルム成形することで、厚さ100μmのキャストフィルム(基材フィルム(I-1))を得た。基材フィルム(I-1)にコロナ処理を施し、基材フィルム(I-2)を得た。得られた基材フィルム(I-2)を基材層(I)として用いた。
【0119】
上記で調製した組成物(X1-1)より形成される層(II)の乾燥後の厚さが0.3μmとなるようにアプリケーターの設定を調整し、組成物(X1-1)を上記で作製した基材フィルム(I-2)のコロナ処理面に25℃で塗布して、アプリケーターで均一に伸ばした後、100℃で20秒乾燥して、層(II)を形成した。このようにして、基材フィルム(I-2)および層(II)を含む積層体を得た。
得られた積層体について、物性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0120】
[実施例2~12、比較例1~5]
表2に記載したとおりに各要素を変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体の作製、および、物性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0121】
[比較例6]
基材フィルム(1-I)をそのまま用いて、水接触角および表面自由エネルギーの測定を行った。得られた結果を表2に示す。
【0122】
[保存安定性]
コーティング剤としての組成物(X)および(Xc)を調製する際に、イソシアネート化合物(C)(タケネートD170N)を添加した後に、コーティング剤を24時間、室温(23℃)で保管した。イソシアネート化合物(C)の添加直後および添加後24時間経過したコーティング剤の液粘度を、室温(23℃)でB型粘度計を使用して測定し、保存安定性を評価した。なお、イソシアネート化合物(C)を添加していない組成物については、組成物の調製直後および調製後24時間経過したコーティング剤の液粘度を、室温(23℃)でB型粘度計を使用して測定し、保存安定性を評価した。
(評価基準)
Δ(液粘度)=添加後24時間の液粘度-添加直後の液粘度
A:Δ(液粘度)<100000
B:Δ(液粘度)≧100000
【0123】
[表面自由エネルギー]
表面張力の異なる液体として蒸留水、ジヨードメタンおよびブロモナフタレンを選択し、これらの液体を用いて表面自由エネルギーを求めた。具体的には、上記で作製した積層体の層(II)または層(IIc)の表面に、選択したこれらの液体を滴下し、該液体による積層体の濡れの状態をDropMaster500画像処理式・固液界面解析システム(協和界面科学(株)製)を用いて解析することにより、層(II)または層(IIc)の表面自由エネルギー(mN/m)を求めた。比較例6の場合は、基材フィルムの表面自由エネルギーを求めた。
(評価方法)
試験温湿度:23℃、50%RH
滴下量:1.5μL
測定時間:滴下10秒後
拡張Fowkes理論
【0124】
[水接触角の測定]
DropMaster500画像処理式・固液界面解析システム(協和界面科学(株)製)を用いて、実施例および比較例で得られた積層体の層(II)または層(IIc)の表面に水滴を落としたときの接触角値を測定した。比較例6の場合は、基材フィルムの接触角値を測定した。
(評価方法)
試験温湿度:23℃、50%RH
滴下量:1.5μL
測定時間:滴下10秒後
【0125】
[基材層(I)/層(II)または層(IIc)の密着性評価]
得られた積層体の層(II)または層(IIc)の表面に対し、JIS K5600-5-6:1999に記載されているクロスカット法の方法に準じて格子パターンを付けて、試験片を作製した。ただし、格子数を100個に変更し、以下の通りに評価した。粘着テープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標))を試験片の格子パターン上に貼り付けた後、これを速やかに60度の方向に引っ張り剥離させ、格子数100個のうち、剥離されなかった格子数を数え、基材層(I)と層(II)または層(IIc)との密着性を評価した。
(評価基準)
A:剥離されなかった格子数が100
B:剥離されなかった格子数が99以下
【0126】
【0127】
【0128】