(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026142
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】燃料タンク装置
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20250214BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B60K15/03 C
F02M37/00 301N
F02M37/00 301J
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131535
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 秀紀
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA09
3D038CB01
3D038CC12
(57)【要約】
【課題】サブタンクからメインタンクへ効率よく燃料を供給しつつ、安定的にエンジンへ燃料を供給することができる燃料タンク装置を提供すること。
【解決手段】車両の内燃機関に燃料を供給するため複数の燃料タンクを備える燃料タンク装置であって、前記内燃機関へ前記燃料を供給する吸い込み口を有したメインタンクと、前記メインタンクへ前記燃料を補給するためのサブタンクと、前記メインタンクとサブタンクとを連通し、前記サブタンクから前記メインタンクへ燃料を供給する供給ポンプを備えた接続管と、を備え、前記接続管は、前記メインタンク内において、端部に第1開口部が設けられており、且つ、周面に前記第1開口部より小さな複数の第2開口部が設けられ、前記複数の第2開口部は前記吸い込み口の近傍に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関に燃料を供給するための燃料タンクを複数備える燃料タンク装置であって、
前記内燃機関へ前記燃料を供給する吸い込み口を有したメインタンクと、
前記メインタンクへ前記燃料を補給するためのサブタンクと、
前記メインタンクとサブタンクとを連通し、前記サブタンクから前記メインタンクへ燃料を供給する供給ポンプを備えた接続管と、を備え、
前記接続管は、前記メインタンク内において、端部に第1開口部が設けられており、且つ、周面に前記第1開口部より小さな複数の第2開口部が設けられ、前記複数の第2開口部は前記吸い込み口の近傍に配置されていることを特徴とする燃料タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料タンク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックなどの車両は、一度で走行できる距離を長くするためメインタンクの他に、サブタンクが設けられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、燃料吸い込み口及び燃料戻し口が設けられたメインタンクである第2タンクと、第2タンクとそれぞれ繋がるサブタンクである第1タンク及び第3タンクが備えられた車両の燃料タンク構造が開示されている。
【0004】
また、エンジン(内燃機関)から燃料タンクに戻される戻り燃料について、例えば、特許文献2には、インジェクターがディーゼル機関の各気筒にそれぞれ取り付けられ、インジェクターに燃料タンクに通じる燃料配管が接続された構成において、噴射されなかった余剰燃料が燃料配管を通じ燃料タンクへ戻される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-180303号公報
【特許文献2】特開2006-207499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示の技術のようにメインタンクとサブタンクを備える車両においては、エンジンから燃料タンクへの戻り燃料はメインタンクへ戻されるが、この戻り燃料は、メインタンクの燃料よりも高温となっていることがある。
【0007】
そのため、メインタンクの燃料が少量の場合は、戻り燃料によってメインタンクの燃料が高温になることがある。また、高温の燃料をエンジンへ供給すると噴射系に悪影響を及ぼす虞がある。そこで、メインタンクの燃料よりも低温であるサブタンクの燃料をメインタンクへ供給しメインタンクの燃料の温度を下げることが考えられる。
【0008】
また、サブタンクからメインタンクへの燃料供給は、特許文献1に開示の技術のように各燃料タンクの下方に連通管を備えたものの他、供給ポンプを用いてサブタンクからメインタンクに燃料を供給するものがある。
【0009】
このような場合、サブタンクの低温の燃料を少しでも多くエンジンに供給できるようにするため、メインタンクにあるエンジンへ燃料を供給するための吸い込み口付近にサブタンクからの燃料を供給することが望ましい。
【0010】
しかし、サブタンクから供給される燃料は、メインタンクへの供給時に空気(気泡)が混じる虞があり、燃料に空気(気泡)が混じるとエンジンへ燃料を送る際の安定供給の妨げになることが考えられる。
【0011】
そこで本開示の目的は、サブタンクからメインタンクへ効率よく燃料を供給しつつ、エンジンへ燃料供給を安定化させることができる燃料タンク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0013】
(1)本適用例に係る燃料タンク装置は、車両の内燃機関に燃料を供給するため複数の燃料タンクを備える燃料タンク装置であって、前記内燃機関へ前記燃料を供給する吸い込み口を有したメインタンクと、前記メインタンクへ前記燃料を補給するためのサブタンクと、前記メインタンクとサブタンクとを連通し、前記サブタンクから前記メインタンクへ燃料を供給する供給ポンプを備えた接続管と、を備え、前記接続管は、前記メインタンク内において、端部に第1開口部が設けられており、且つ、周面に前記第1開口部より小さな複数の第2開口部が設けられ、前記複数の第2開口部は前記吸い込み口の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0014】
このように接続管のメインタンク側端部の第1開口部に加えて、周面に複数の第2開口部を形成することで、サブタンク側に貯留された燃料をメインタンクへ補給する際に、接続管から放出される燃料が分散され、燃料の補給流量を落とすことなく気泡の発生を抑制することができる。また、第2開口部を吸い込み口の近傍に配置することで、戻り燃料より低温であるサブタンクの燃料の多くが吸い込み口から吸い込まれることとなる。このように気泡の発生を抑えられた低温の燃料を効率的にエンジンンに供給できることで、エンジンへの燃料供給を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の燃料タンク装置の外観を示す平面図である。
【
図2】本実施形態の燃料タンク装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図3】接続管の第1開口部及び第2開口部を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明において、上下方向とは車両の高さ方向(鉛直方向)、前後方向とは車両の進行方向とする。また、以下、端部とは先端面だけでなく、先端面から所定の範囲を含むものとする。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態における車両の燃料タンク装置1の外観を示す平面図であり、
図2は燃料タンク装置1の側面図を模式的に示す概略構成図である。本実施形態の車両の燃料タンク装置1が搭載される車両は、トラック等の貨物車である。燃料タンク装置1は、
図1及び
図2に示すように、メインタンク11、サブタンク12、メインタンク11とサブタンク12とを連通し供給ポンプ14を備えた接続管13、とを備えている。
【0018】
メインタンク11及びサブタンク12は、略同サイズの略直方体形状の容器であり、車両の左サイドレール2に、前後方向に並んで設けられる。メインタンク11及びサブタンク12は、それぞれ上面の車幅方向外側寄りに、外部からタンク内に燃料を注入するための注入口21a、21bが形成されている。各注入口21a、21bは、タンク上面から突出した円筒状をなし、先端には蓋が設けられている。
【0019】
メインタンク11は、上面中央部分に供給管22と戻り管23が接続されている。供給管22及び戻り管23は、図示しないエンジンと接続されている。
【0020】
供給管22は、メインタンク11からエンジンに燃料を供給するための配管である。
図2に示すように、供給管22はメインタンク11の上面を貫通し、メインタンク11の底部近傍まで延出している。供給管22は、先端に燃料を吸い込む吸い込み口22aを有している。吸い込み口22aの周囲には、吸い込み口22aを取り囲むようにフィルタ25が配設されている。本実施形態のフィルタ25は、略直方体形状であり、底部がメッシュ状をなし、吸い込み口22aへ異物が混入するのを防止する機能を有する。
【0021】
戻り管23は、エンジンからの余剰燃料をメインタンク11に戻すための配管である。
図2に示すように、戻り管23はメインタンク11の上面を貫通し、上面から内側にわずかに突出している。
【0022】
さらに、メインタンク11は、側壁部内面に沿って上下に可動するレベルセンサ24を備える。レベルセンサ24は、例えばフロートが使用され、メインタンク11内部の燃料の液面高さを検出し、燃料レベルFLの情報を生成する機能を有する。
【0023】
接続管13は、一端がサブタンク12内に設けられた供給ポンプ14に接続され、他端がメインタンク11内の吸い込み口22aの近傍に配置される。具体的には、接続管13は、供給ポンプ14から上方に延出し、サブタンク12の上面を貫通して車両前方のメインタンク11側に延びている。そして、接続管13は、メインタンク11の上面を貫通してメインタンク11の底部近傍まで延出し、底面に沿って供給管22の吸い込み口22aの近傍となる位置まで延びている。このように接続管13は、メインタンク11の内部とサブタンク12の内部とを連通させる配管であり、サブタンク12に貯留された燃料をメインタンク11に補給可能とする連通路を形成している。
【0024】
図3は、メインタンク11内に配置された接続管13の端部を拡大した拡大側面図であり、
図4は
図3を底面から見た拡大底面図である。
【0025】
図3及び
図4を参照すると、メインタンク11内に配置された接続管13の先端面には、第1開口部13aが形成されている。接続管13は円管であり、第1開口部13aは円孔である。
【0026】
また、接続管13の第1開口部13a近傍であって、接続管13の周面の吸い込み口22a側には、接続管13の長手方向に等間隔に並んで複数(本実施形態では5つ)の第2開口部13bが形成されている。各第2開口部13bは円孔であり、その孔径は、第1開口部13aの孔径より小さい。
【0027】
供給ポンプ14は、サブタンク12内に設けられた電動ポンプである。また、供給ポンプ14は、サブタンク12内に貯留された燃料を吸い上げ、吸い上げた燃料を接続管13を介してメインタンク11内に供給する。また、本実施形態の供給ポンプ14はメインタンク11内に供給する燃料の流量を調整する機能を有する。
【0028】
また、車両には、VCU31(Vehicle Control Unit、制御部)が搭載されている。VCU31は、中央処理装置(CPU)と、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される主記憶装置(ROM、RAMなど)、入出力装置、タイマカウンタなどを備えるコンピュータである。VCU31は、車両内通信ネットワークであるCAN(Control Area Network)を介して、車両に搭載された各種機器や他の制御ユニットを通信可能に接続されている。本実施形態のVCU31は、供給ポンプ14、レベルセンサ24と通信可能に接続されている。
【0029】
詳しくは、VCU31は、レベルセンサ24からメインタンク11内に貯留されている燃料の液面高さの情報を、所定の時間周期で、燃料レベルFLとして、取得し、メインタンク11内の燃料を監視する機能を有する。また、VCU31は、取得した燃料レベルFLを、予めVCU31内の主記憶装置に記憶されている第1の燃料レベルFL1と比較し(燃料レベル判定)、燃料レベルFLが第1の燃料レベルFL1より低い場合に、サブタンク12からの燃料補給が必要と判定する。第1の燃料レベルFL1は例えば供給管22の吸い込み口22a及び接続管13のメインタンク11側の端部よりも高い位置に設定されている。
【0030】
そして、VCU31は、サブタンク12からの燃料補給が必要と判定すると、供給ポンプ14を駆動制御し、サブタンク12内に貯留された燃料を、接続管13を介してメインタンク11に供給する。
【0031】
このようにVCU31は、レベルセンサ24からの液面高さの情報に基づいて、メインタンク11への燃料の補給が必要か否かを判定し、補給が必要と判定した場合、供給ポンプ14を稼働させてサブタンク12内の燃料をメインタンク11内へ供給する。
【0032】
次に、サブタンク12からメインタンク11への燃料補給時の燃料の流れにつき説明する。
【0033】
VCU31により供給ポンプ14が稼働すると、
図2にて白抜き矢印で示すように、サブタンク12内の燃料は吸い上げられて接続管13を通ってメインタンクに移送される。
【0034】
図3、
図4に詳しく示すように、接続管13のメインタンク11側の端部は、第1開口部13aに加えて、周面に複数の第2開口部13bが設けられていることで、サブタンク12からの燃料は、各開口部13a、13bに分散されてメインタンク11内に放出される。このように燃料が分散されて放出されることで、第1開口部13aのみから放出される場合よりも、各開口部13a、13bから放出される燃料の流速は小さくなり、気泡の発生が抑制される。一方で、メインタンク11内に供給される流量は変わらず、供給ポンプ14の吸い上げる量に依存する。つまり、本実施形態の燃料タンク装置1では、サブタンク12からメインタンク11に補給される燃料は、サブタンク12からの吸い上げ量に対してメインタンク11内に緩やかに供給される。
【0035】
さらに、接続管13のメインタンク11側の端部は、供給管22の吸い込み口22aの近傍に配置されており、特に第2開口部13bは当該吸い込み口22a側に向かって開口している。そのため、戻り燃料より低温であるサブタンク12からの燃料の多くが直接的に吸い込み口22aに吸い込まれることになる。
【0036】
以上のように本実施形態の車両の燃料タンク装置1によれば、接続管13のメインタンク11側の端部に、第1開口部13aに加えて複数の第2開口部13bを形成している。これにより、サブタンク12側に貯留された燃料をメインタンク11へ補給する際に、接続管13から放出される燃料が分散され、燃料の補給流量を落とすことなく気泡の発生を抑制することができる。また、第2開口部13bは供給管22の吸い込み口22aの近傍に配置されることから、戻り燃料より低温であるサブタンク12の燃料の多くが吸い込み口22aから吸い込まれることとなる。このように気泡の発生を抑えられた低温の燃料を効率的にエンジンンに供給できることで、エンジンへの燃料供給を安定化させることができる。
【0037】
以上で本発明に係る車両の燃料タンク装置1の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0038】
図2から
図4に基づく上記実施形態においては、第2開口部13bが5つ形成されているが、第2開口部から供給される燃料による気泡の発生を抑制できれば、第2開口部の数は5つに限られず、2つ以上形成されていればよい。また、第2開口部の配置も上記実施形態の配置に限られるものではなく、例えば、長手方向に並んだ複数の第2開口部を複数列形成してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、フィルタ25は底面がメッシュ状であるが、吸い込み口への異物混入を防止できるものであれば、他のフィルタ構造であってもよい。例えば、フィルタはケース内部にろ紙を有していてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、接続管13の先端面には第1開口部13aが形成されているが、第1開口部13aを形成することなく、複数の第2開口部13bだけを形成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 燃料タンク装置
11 メインタンク
12 サブタンク
13 接続管
13a 第1開口部
13b 第2開口部
14 供給ポンプ
21 注入口
22 供給管
22a 吸い込み口
23 戻り管
24 レベルセンサ
25 フィルタ
31 VCU(制御部)