(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026161
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂及びポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 11/04 20060101AFI20250214BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20250214BHJP
C08G 69/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
C08J11/04
C08L77/00
C08G69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131561
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】梅村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 泰和
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴章
【テーマコード(参考)】
4F401
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4F401AA24
4F401BA13
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4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、温室効果ガスを削減しながら物性の低下も抑制したポリアミド樹脂及びポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【解決手段】製造工程又は加工工程における端材、もしくは使用済みである廃材を、一度溶融しペレット化した再生ポリアミド樹脂であり、以下の特徴を満たすもの:1)0.75mm
2以上の黒点を有するペレットが20個/kg以下である;2)水分率が0.75%以下である;3)金属含有ペレットの含有量が10g/kg以下である;4)変色ペレットの含有量が50g/kg以下である;及び5)発泡ペレットの含有量が100g/kg以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造工程又は加工工程における端材、もしくは使用済みである廃材を、一度溶融しペレット化した再生ポリアミド樹脂であり、以下の特徴を満たすもの:
1)0.75mm2以上の黒点を有するペレットが20個/kg以下である;
2)水分率が0.75%以下である;
3)金属含有ペレットの含有量が10g/kg以下である;
4)変色ペレットの含有量が50g/kg以下である;及び
5)発泡ペレットの含有量が100g/kg以下である。
【請求項2】
請求項1に記載の再生ポリアミド樹脂と、バージン品であるポリアミド樹脂の質量比(再生ポリアミド樹脂:バージン品ポリアミド樹脂)が、1:99~100:0である、ポリアミド樹脂。
【請求項3】
請求項2に記載のポリアミド樹脂に対と難燃剤とを含む、ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2に記載のポリアミド樹脂又は請求項3に記載のポリアミド樹脂組成物に関する自動車用途材料又は工業用途材料への適用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂及びポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な社会の実現に向けて、様々な環境対策が行われている。プラスチック等の樹脂類は、燃焼に伴い二酸化炭素を排出することから、カーボンニュートラルを契機に樹脂類の燃焼回避への社会的要請がさらに高まることが想定される。特に、ポリアミド66(PA66)は、樹脂1kgあたりの温室効果ガス(GHG)排出量が比較的多いことから、サーキュラーエコノミー(CE)への対応が急務となっている。このため、樹脂類のバイオ由来資源や他素材への代替が進むとともに、代替できない部分については燃焼回避のためのリサイクルが進展している。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数種のプラスチックから構成されたプラスチック系混合物を含むプラスチック廃材を再資源化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リサイクルにより、GHG排出量は削減が見込めるものの、物性については大幅に低下しバラつきも見られる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、工程端材や使用済み廃材を利用し、GHGを削減しながら物性の低下も抑制したポリアミド樹脂及びポリアミド樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]製造工程又は加工工程における端材、もしくは使用済みである廃材を、一度溶融しペレット化した再生ポリアミド樹脂であり、以下の特徴を満たすもの:
1)0.75mm2以上の黒点を有するペレットの含有量が20個/kg以下である;
2)水分率が0.75%以下である;
3)金属含有ペレットの含有量が10g/kg以下である;
4)変色ペレットの含有量が50g/kg以下である;及び
5)発泡ペレットの含有量が100g/kg以下である。
[2][1]に記載の再生ポリアミド樹脂と、バージン品であるポリアミド樹脂の質量比(再生ポリアミド樹脂:バージン品ポリアミド樹脂)が、1:99~100:0である、ポリアミド樹脂。
[3][2]に記載のポリアミド樹脂に対と難燃剤とを含む、ポリアミド樹脂組成物。
[4][2]に記載のポリアミド樹脂又は[3]に記載のポリアミド樹脂組成物に関する自動車用途又は工業用途への適用。
【発明の効果】
【0008】
上記様態によれば、GHGを削減しながら物性の低下も抑制したポリアミド樹脂及びポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0011】
なお、本明細書において、「ポリアミド」とは主鎖中にアミド(-NHCO-)基を有する重合体を意味する。
【0012】
<再生ポリアミド樹脂>
本実施形態の再生ポリアミド樹脂は、製造工程や加工工程における端材、もしくは使用済みである廃材を、一度溶融しペレット化したものである。
【0013】
再生方法としては、溶融混練工程、及び前記溶融混練工程後の溶融物をペレット化して再生品のペレットを得るペレット化工程を含む。
【0014】
溶融混練を行う装置としては、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロール等の溶融混練機が好ましく用いられる。
【0015】
溶融混練の温度は、好ましくはポリアミド樹脂の融点より1℃以上100℃以下程度高い温度、より好ましくは10℃以上50℃以下程度高い温度である。
混練機での剪断速度は100sec-1以上程度であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は0.5分間以上5分以下程度であることが好ましい。
この溶融時、金属メッシュを通して、異物を除去する工程を含めても良い。
【0016】
ペレット化工程では、溶融混練工程後の溶融物をペレット化して再生品のペレットを得る。具体的には、溶融物を冷却し、ペレタイザー、カッター等の公知の装置を用いて、切断して、所望の大きさのペレットを得る。
【0017】
ポリアミド樹脂としては、例えば、(A-a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、(A-b)ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、(A-c)ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びに、これらの共重合物等が挙げられる。ポリアミド樹脂としては、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(A-a)ポリアミドの製造に用いられるラクタムとしては、以下に制限されないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタム、ドデカラクタム等が挙げられる。
(A-b)ポリアミドの製造に用いられるω-アミノカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω-アミノ脂肪酸等が挙げられる。
また、上記ラクタム又は上記ω-アミノカルボン酸としては、それぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
【0019】
(A-c)ポリアミドの製造に用いられるジアミン(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、直鎖状の脂肪族ジアミン、分岐鎖状の脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
直鎖状の脂肪族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、2-メチルペンタンジアミン、2-エチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
脂環族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミン、シクロオクタンジアミン等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン等が挙げられる。
(A-c)ポリアミドの製造に用いられるジカルボン酸(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、フタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
上記した単量体としてのジアミン及びジカルボン酸は、それぞれ単独又は2種以上組み合わせて縮合させてもよい。
【0020】
ポリアミド樹脂として具体的には、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及び、これらを構成成分として含む共重合ポリアミド等が挙げられる。
中でも、ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミド66/6、又はポリアミド66/6Iが好ましい。
【0021】
ポリアミド樹脂の末端は、公知の末端封止剤により末端封止されていてもよい。
このような末端封止剤は、上記ジカルボン酸と上記ジアミンと、必要に応じて、上記ラクタム及び上記アミノカルボン酸のうち少なくともいずれか一方とから、ポリアミド樹脂を製造する際に、分子量調節剤としても添加することができる。
【0022】
末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等が挙げられる。酸無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水フタル酸等が挙げられる。これら末端封止剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、末端封止剤としては、モノカルボン酸又はモノアミンが好ましい。ポリアミド樹脂の末端が末端封止剤で封鎖されていることにより、熱安定性により優れる傾向にある。
【0023】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、ポリアミド樹脂の末端に存在し得るアミノ基との反応性を有するものであればよい。モノカルボン酸として具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等が挙げられる。
脂環族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
芳香族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等が挙げられる。
これらモノカルボン酸は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、ポリアミド樹脂の末端に存在し得るカルボキシ基との反応性を有するものであればよい。モノアミンとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族モノアミン、脂環族モノアミン、芳香族モノアミン等が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等が挙げられる。
脂環族アミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等が挙げられる。
これらモノアミンは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
末端封止剤により末端封止されたポリアミド樹脂は、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び剛性により優れる傾向にある。
【0026】
<黒点>
黒点としては、樹脂の加熱による炭化物が製造ラインに固着して混入したもの等があげられ、例えば再生時の溶融混練工程における金属メッシュや、黒点選別機により除去することが可能である。これらが黒点を有効に除去できているかは、サンプリングを行い、目視による確認等が有効である。
【0027】
<水分率>
水分率は、例えばカールフィッシャー法水分計(三菱化学社製、CA-200/VA-200)により測定することができる。水分率は、乾燥機の使用等により調整をすることが可能である。
【0028】
<金属>
金属は、例えば再生時の溶融混練工程における金属メッシュや金属選別機により除去することが可能である。金属を有効に除去できているかは、サンプリングを行い、マグネットによる手選別を実施して確認すること等が有効である。
【0029】
<変色>
変色は、例えば再生時の溶融混練工程における金属メッシュや黒点選別機により除去することが可能である。有効に除去できているかは、サンプリングを行い、目視による確認等が有効である。
【0030】
<発泡>
発泡は、ペレット内部に空隙が発生するものであり、目視による確認が有効である。再生時の溶融混練工程において、原料の水分率や脱気をコントロールすることにより調整可能である。
【0031】
<バージン品>
本実施形態のバージン品は、原料モノマーから調製された化合物もしくは組成物を意味し、再生品を含まない。
【0032】
<難燃剤>
難燃剤としては、特に限定されないが、ハロゲン元素を含む難燃剤、リン系難燃剤、メラミンシアヌレート等が挙げられる。また、難燃剤を複数種組み合わせて用いても良いし、難燃助剤と組み合わせて用いても良い。
【0033】
再生ポリアミド樹脂とバージン品のポリアミド樹脂、難燃剤等を加えてポリアミド樹脂組成物にする方法としては、溶融混練によるコンパウンドが好ましい。
【0034】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0035】
ポリアミド重合工程で出る端材(ペレット化する際に発生する形状不良品等)を回収し、溶融混練及びペレット化を行い、再生ポリアミド樹脂を得た。これに対し、バージン品、難燃剤等を加え、溶融混練によるコンパウンドを行い、ポリアミド樹脂組成物を得た。その中のいくつかを表1の実施例に示す。
【0036】
<構成成分>
[(A)バージンポリアミド樹脂]
A-1:ポリアミド66
A-2:ポリアミド6I
A-3:ポリアミド66/6I
【0037】
[(B)再生ポリアミド樹脂]
B-1:再生したポリアミド66
B-2:再生したポリアミド6I
B-3:再生したポリアミド66/6I
B-4:再生したポリアミド66/6I
(0.75mm2以上の黒点を有するペレット40個/kg)
B-5:再生したポリアミド66/6I(水分率:2.0%)
B-6:再生したポリアミド66/6I(金属含有ペレット30g/kg)
B-7:再生したポリアミド66/6I(変色ペレット100g/kg)
B-8:再生したポリアミド66/6I(発泡ペレット200g/kg)
【0038】
[(C)難燃剤]
C-1:臭素化ポリスチレン(ALBEMARLE CORPORATION社製、SAYTEXHP-3010G)
C-2:メラミンシアヌレート(日産化学(株)製、MC-4500)
C-3:ホスフィン酸アルミニウム(Clariant社製、Exolit OP1230)
【0039】
[(D)難燃助剤]
D-1三酸化アンチモン(第一エフ・アール(株)社製、三酸化アンチモン)
【0040】
[(E)ポリアミド以外の樹脂]
E-1:m化PPE(無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル)
【0041】
[(F)添加剤]
F-1:硫化亜鉛(ZnS)(SACHTOLITH HD-S)
F-2:ポリオキシメチレンモノラウレート(花王(株)製、エマノーン)
F-3:ステアリン酸カルシウム(日本油脂(株)製、ステアリン酸カルシウム)
F-4:レーザー光透過性着色剤(オリエント化学工業社製、eBIND LTW-8071H)
F-5:酸化防止剤(ビーエーエスエフ社製、Irganоx1098)
【0042】
[(G)添加剤]
G-1:ガラス繊維(日本電気硝子社製、ECS 03T-275H)
G-2:ガラス繊維ロービング(重慶国際複合材料有限公司社製、ER4301H)
【0043】
<(A)バージンポリアミド樹脂及び(B)再生ポリアミド樹脂の製造方法>
[原料]
実施例及び比較例において用いた(A)バージンポリアミド樹脂及び(B)再生ポリアミド樹脂は、下記(a)及び(b)を適宜用いて製造した。
((a)ジカルボン酸)
a-1:アジピン酸(ADA)(和光純薬工業製)
a-2:イソフタル酸(IPA)(和光純薬工業製)
((b)ジアミン)
b-1:1,6-ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン)(C6DA)(東京化成工業製)
【0044】
[合成例1]バージンポリアミド樹脂A-1(ポリアミド66)の合成
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を以下のとおり実施した。
まず、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1500gを蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110℃以上150℃以下の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、内部温度が245℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけて圧力を降圧した。その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、バージンポリアミド樹脂A-1を得た。
得られたバージンポリアミド樹脂A-1(ポリアミド66)は、重量平均分子量(Mw)=35000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=2であった。
【0045】
[合成例2]バージンポリアミド樹脂A-2(ポリアミド6I)の合成
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を以下のとおり実施した。
まず、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1500g、及び、全等モル塩成分に対して1.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110℃以上150℃以下の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、内部温度が245℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、30分かけて圧力を降圧した。その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、バージンポリアミド樹脂A-2を得た。
得られたバージンポリアミド樹脂A-2(ポリアミド6I)は、Mw=35000、Mw/Mn=2であった。
【0046】
[合成例3]バージンポリアミド樹脂A-3(ポリアミド66/6I)の合成
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を以下のとおり実施した。
まず、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩450g、及び、全等モル塩成分に対して1.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水450gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。また、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1050gを蒸留水1050gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。これらの水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110℃以上150℃以下の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、内部温度が245℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、30分かけて圧力を降圧した。その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、バージンポリアミド樹脂A-3を得た。
得られたバージンポリアミド樹脂A-3(ポリアミド66/6I)は、Mw=35000、Mw/Mn=2であった。
【0047】
[合成例4]再生ポリアミド樹脂B-1~B-3(ポリアミド66、6I、66/6I)の合成
図1に示すフロー図に従って、まずはバージン品を製造した。次いでグレード別に規格外品を回収し、水分率調整を行った後に二軸押出機(コペリオン社製、ZSK-26MC)による溶融混練を行った。すなわち、ポリアミド66の規格外品、ポリアミド6Iの規格外品、ポリアミド66/6Iの規格外品についてそれぞれ100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、水分率調整を実施した上で、溶融混練を行った。二軸押出機は、押出機上流側から1番目のバレルに供給口を有しており、供給口からダイまでの温度を各ポリアミドの融点Tm2+20℃に設定し、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hに設定した。この溶融混練の際、金属メッシュ(メッシュ数:200)を通して黒点や金属、変色に繋がる異物などを除去した上で、ストランド状で冷却し、ペレタイズ、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、再生ポリアミド樹脂を得た。
なお、再生ポリアミド樹脂の原料である規格外品は黒点、金属、変色の原因となりうる異物なども混入量バラつきが大きいため、必要に応じて、製造した再生ポリアミド樹脂を黒点選別機や金属異物除去装置に通し、黒点や金属、変色ペレットを除去することも可能である。
【0048】
[合成例5]再生ポリアミド樹脂B-4(ポリアミド66/6I、0.75mm2以上の黒点を有するペレット40個/kg)の合成
上記合成例4から、溶融混練の際に、金属メッシュを100メッシュとすること以外、同条件として再生ポリアミド樹脂B-4を得た。
【0049】
[合成例6]再生ポリアミド樹脂B-5(ポリアミド66/6I、水分率:2.0%)の合成
上記合成例4から、ペレタイズの際のストランド状で冷却する際のストランド浸漬長を1.5倍とし、窒素雰囲気下の乾燥を実施しないこと以外、同条件として再生ポリアミド樹脂B-5を得た。
【0050】
[合成例7]再生ポリアミド樹脂B-6(ポリアミド66/6I、金属含有ペレット30g/kg)の合成
上記合成例4から、溶融混練の際に、金属メッシュを50メッシュとすること以外、同条件として再生ポリアミド樹脂B-6を得た。
【0051】
[合成例8]再生ポリアミド樹脂B-7(ポリアミド66/6I、変色ペレット100g/kg)の合成
上記合成例4から、溶融混練の際に金属メッシュを用いないこと、ペレタイズの際のストランド状で冷却する際のストランド浸漬長を0.5倍とすること以外、同条件として再生ポリアミド樹脂B-7を得た。
【0052】
[合成例9]再生ポリアミド樹脂B-8(ポリアミド66/6I、発泡ペレット200g/kg)の合成
上記合成例4から、溶融混練の際に原料となる規格外のポリアミド66について、100℃、窒素雰囲気下での12時間乾燥を実施しないこと以外、同条件として再生ポリアミド樹脂B-8を得た。
【0053】
<ポリアミド樹脂組成物の製造方法>
[実施例1~4及び比較例1~9共通]
上記(A)バージンポリアミド樹脂、(B)再生ポリアミド樹脂、(C)難燃剤、(D)難燃助剤、(E)ポリアミド以外の樹脂、(F)添加剤、(G)充填剤を下表1に記載の種類及び割合となるように用いて、各ポリアミド樹脂組成物を以下の方法で製造した。
ポリアミド樹脂組成物の製造装置としては二軸押出機(コペリオン社製、ZSK-26MC)を用いた。二軸押出機は、押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流側第1供給口を有し、9番目のバレルに下流側第2供給口を有していた。また、二軸押出機において、上流側供給口からダイまでの温度を各ポリアミドの融点Tm2+20℃に設定し、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hに設定した。
【0054】
[実施例1~3及び比較例1~8]
上記製造装置を用いた具体的な製造方法としては、(A)バージンポリアミド樹脂、(B)再生ポリアミド樹脂、(C)難燃剤、(D)難燃助剤、(E)ポリアミド以外の樹脂、(F)添加剤を混合しした後に、二軸押出機の上流側供給口より供給し、二軸押出機の下流側第1供給口より、(G)充填剤を供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして各ポリアミド組成物のペレットを得た。得られたポリアミド組成物のペレットを、窒素気流中で乾燥し、ポリアミド組成物中の水分量を500ppm以下にした。
【0055】
[実施例4及び比較例9]
上記製造装置を用いた具体的な製造方法としては、(A)バージンポリアミド樹脂、(B)再生ポリアミド樹脂、(C)難燃剤、「F-4:レーザー光透過性着色剤」を除く(F)添加剤を、ドライブレンドした後に二軸押出機の上流側供給口より供給し、二軸押出機の下流側第1供給口より、(G)充填剤を供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてポリアミド組成物のペレットを得た。こうして得られたペレットとF-4:レーザー光透過性着色剤をドライブレンドした後に単軸押出機の上流側供給口より供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして目的のポリアミド組成物(レーザー光透過性ポリアミド樹脂組成物)のペレットを得た。
得られたポリアミド組成物のペレットを、窒素気流中で乾燥し、ポリアミド組成物中の水分量を500ppm以下にした。
【0056】
<物性及び評価>
まず、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットを、窒素気流中で乾燥し、樹脂組成物中の水分量を500ppm以下にした。次いで、水分量を調整した各樹脂組成物のペレットを用いて下記の方法を用いて、各種物性の測定及び各種評価を実施した。
【0057】
[ポリアミド樹脂組成物製造時の押出性]
ポリアミド樹脂組成物を得るための溶融混練を行う際に、押出性の判定を行った。評価判定は下記の通りとした。
A:問題なく押出が可能である。
C:原料フィーダーに水滴が溜まり、フィード不良が発生することがある。
【0058】
[難燃性試験(UL94 0.7mm、0.8mm、1.6mm)]
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の方法を用いて測定を行った。なお、試験片は、射出成形機(日精工業(株)製PS40E)にUL試験片の金型(金型温度=100℃)を取り付けて、シリンダー温度:290℃で、各ポリアミド組成物を成形することにより作製した。射出圧力はUL試験片成形する際の完全充填圧力+2%の圧力で行った。難燃等級は、UL94規格(垂直燃焼試験)に準じて、V-0、V-1、V-2のうちいずれかの等級にあたるか評価した。なお、等級の数値が小さいほど、難燃性が高い。
【0059】
[引張強度]
射出成形機(PS-40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、ISO 3167に準拠し、それぞれ多目的試験片A型の成形片に成形した。具体的な成形条件は、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度を80℃、溶融樹脂温度をポリアミドの高温側の融解ピーク温度(Tm2)+20℃に設定した。
得られた多目的試験片A型の成形片を用いて、ISO 527に準拠し、23℃の温度条件下、引張試験を行い、引張降伏応力を測定し、引張強度とした。
【0060】
[曲げ弾性率]
射出成型機(FN-3000:日精樹脂株式会社製)を用いてISO3167に準拠し、それぞれ多目的試験片A型の成形片に成形した。具体的な成形条件は、射出+保圧時間25秒、冷却時間25秒、金型温度を80℃、溶融樹脂温度をポリアミドの高温側の融解ピーク温度(Tm2)+20℃に設定した。さらに、多目的試験片Aを、曲げ試験用試験片に切削加工した。
得られた曲げ試験用試験片を用いて、ISO178に準じてオートグラフ(島津製作所社製:AG-5000D型)で、クロスヘッドスピード5mm/min、スパン64mmの条件下で、曲げ弾性率の測定を行った。
【0061】
[レーザー溶着強度]
(1)レーザー光透過材の製造
各ポリアミド樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、商品名「NEX50III-5EG」)を用いて、シリンダー温度をポリアミド組成物の融点(Tm2)+20℃に設定し、金型温度80℃で平板(60×60×1mm)を成形して、レーザー光透過材を得た。
【0062】
(2)レーザー光吸収材の製造
ポリアミド及びレーザー光吸収着色剤をドライブレンドした後に二軸押出機の上流側供給口より供給し、二軸押出機の下流側第1供給口より、リン系難燃剤、及び充填材を供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして、レーザー光吸収性樹脂組成物のペレットを得た。二軸押出機のシリンダー温度設定を熱可塑性樹脂の融点(Tm2)+20℃で設定し、回転数300rpm、吐出量400kg/時間で運転した。得られたペレットをレーザー光透過材と同様の成形方法で成形し、レーザー光吸収材を得た。なお、原料詳細は以下の通りである。
【0063】
ポリアミド:バージンポリアミド樹脂A-1(ポリアミド66)
レーザー光吸収着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製、一次粒径27nm)
リン系難燃剤:ジエチルホスフィン酸アルミニウム(Clariant社製 Exolit OP1230)
充填剤:ガラス繊維(日本電気硝子社製、ECS 03T-275H)
また、配合比率は質量比で、ポリアミド:レーザー光吸収着色剤:リン系難燃剤:充填剤=57:5:18:20とした。
【0064】
(3)レーザー光透過材とレーザー光吸収材のレーザー溶着
このレーザー光透過材とレーザー光吸収材の平板をそれぞれ固定した状態で、レーザー溶着機のヘッドを走査速度62.8mm/secで走査径φ20mmの円を描くようにレーザーを照射し、同時にその部分をエアーで冷却してレーザー溶着体を作製した。レーザー光源としては、半導体レーザー(波長940nm)、及びファイバーレーザー(波長1060nm)を用いた。なお、レーザー出力は、溶着強度や製品ヤケの状況に応じて適宜設定した。
【0065】
(4)評価
上述した方法で得られたレーザー溶着体について、溶着後の溶着状態を確認して、以下の基準で評価した。
A:溶着状態及び外観共に良好、剥離評価で母材破壊が発生し、溶着部を引き剥がせない。
C:溶着せず。
【0066】
[色調]
ポリアミド樹脂組成物に関して、色調を目視で確認し、判定を行った。評価は下記の通りとした。
A:色調にバラつきがなく、品質が安定している。
C:色調がバラついており、品質が不安定である。
【0067】
[輸送効率]
ポリアミド樹脂組成物に関して、25kg包装袋に包装を実施し、輸送効率について判定を行った。評価は下記の通りとした。
A:問題なく25kgの包装ができ、輸送効率に問題はない。
C:ペレットの嵩密度が低く、25kgの包装ができず、輸送効率に悪影響がある。
【0068】
[環境負荷(GHG排出量)]
再生ポリアミド樹脂の使用比率からGHG排出量を概算し、下記の通り、環境負荷への低減度合いを評価した。
A:再生品を使用しており、環境負荷を低減できている材料である。
B:再生品を使用しているが、強度、押出性、色調、輸送効率などに問題がありその箇所がロスとなることによって環境負荷を与えてしまっている。
C:再生品を使用しておらず、環境負荷が高い材料である。
【0069】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、機械的性質に優れ、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、並びに日用及び家庭品用等、各種部品の成形材料として好適に使用することができる。