IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-情報処理方法 図1
  • 特開-情報処理方法 図2
  • 特開-情報処理方法 図3
  • 特開-情報処理方法 図4
  • 特開-情報処理方法 図5
  • 特開-情報処理方法 図6
  • 特開-情報処理方法 図7
  • 特開-情報処理方法 図8
  • 特開-情報処理方法 図9
  • 特開-情報処理方法 図10
  • 特開-情報処理方法 図11
  • 特開-情報処理方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002621
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241226BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241226BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20241226BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20241226BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
G01C21/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102929
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 賢
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129BB22
2F129BB38
2F129BB39
2F129BB40
2F129BB66
2F129CC12
2F129CC16
2F129CC17
2F129CC18
2F129DD15
2F129DD19
2F129DD20
2F129DD62
2F129DD63
2F129DD64
2F129EE36
2F129EE43
2F129EE52
2F129EE79
2F129EE81
2F129FF02
2F129FF11
2F129FF14
2F129FF18
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF63
2F129FF65
2F129GG17
2F129GG18
2F129GG22
2F129GG24
2F129HH12
2F129HH14
2F129HH18
2F129HH19
2F129HH20
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
(57)【要約】
【課題】無線通信を伴う走行機能が搭載された車両の走行時の安全性を向上すること。
【解決手段】本開示に係る情報処理方法は、複数の基地局のうちのいずれかとの間における無線通信の通信帯域を示す通信帯域マップを取得し、前記複数の基地局のうちのいずれかとの間で無線通信する車両の位置を推定し、前記車両の位置及び前記通信帯域マップに基づき、前記複数の基地局のうちのいずれかとの間の無線通信において予測される通信帯域を示す帯域予測値を推定し、前記帯域予測値に応じて前記車両の車両挙動を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局のうちのいずれかとの間における無線通信の通信帯域を示す通信帯域マップを取得し、
前記複数の基地局のうちのいずれかとの間で無線通信する車両の位置を推定し、
前記車両の位置及び前記通信帯域マップに基づき、前記複数の基地局のうちのいずれかとの間の無線通信において予測される通信帯域を示す帯域予測値を推定し、
前記帯域予測値に応じて前記車両の車両挙動を制御する、
情報処理方法。
【請求項2】
前記複数の基地局のうちのいずれかと前記車両との間の無線通信における現在の通信帯域を示す帯域実測値を取得し、
前記車両の位置及び前記帯域実測値を用いて前記通信帯域マップを補正することにより、帯域予測値を推定する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、前記帯域予測値に基づき通信帯域の混雑が予測されるエリアが有る場合に、当該エリアにおける車両台数が制限されるように前記車両の走行経路及び車速の少なくとも一方を変更又は案内することを含む、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、前記帯域予測値が予め定められた閾値以下であることが予測される場合に、前記車両の走行帯を前記帯域予測値がより高い走行帯へ変更又は案内することを含む、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、前記帯域予測値が予め定められた閾値以下であることが予測される場合に、前記複数の基地局のうちのいずれかとの間における無線通信において、予め定められた走行に関する機能を優先して他の機能に関する通信帯域を制限することを含む、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、前記帯域予測値が予め定められた閾値より大きくなった場合に、前記他の機能に関する通信帯域の制限を解除することを含む、
請求項5に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、前記帯域予測値が予め定められた閾値以下であることが予測される場合に、前記複数の基地局のうちのいずれかとの間における無線通信の通信態様を変更することを含む、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項8】
ユーザの入力に基づいて前記車両の走行経路を設定し、
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、設定された前記走行経路の全体に亘って前記複数の基地局のうちのいずれかとの間における自動走行機能に関する無線通信に要求される予め定められた閾値より前記帯域予測値が高いか否かに基づいて、前記走行経路の全体に亘って前記自動走行機能を実行可能か事前に判定することを含む、
請求項1から請求項7のうちのいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項9】
ユーザの入力に基づいて前記車両の走行経路を設定し、
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、設定された前記走行経路の少なくとも一部において前記帯域予測値が予め定められた閾値以下であることが予測される場合に、自動運転機能の停止と、前記複数の基地局のうちのいずれかとの間における無線通信の通信態様の変更と、前記車両の車速の制限と、前記ユーザへの通知とのうちのいずれかを事前に実行することを含む、
請求項1から請求項7のうちのいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記走行経路の設定は、走行経路の候補における前記通信帯域マップと、前記帯域予測値に関する情報とのうちのいずれかを表示することを含む、
請求項9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記走行経路の設定は、時間、距離、通信帯域及び料金のうちのいずれを優先して走行経路の候補を生成するかを指定する検索条件の前記ユーザの入力を受け付けることを含む、
請求項9に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記車両を移動させながら前記複数の基地局のうちのいずれかとの間で無線通信し、
前記複数の基地局のうちの通信先の基地局との間における無線通信の使用周波数帯の帯域幅を示す通信周波数情報に基づいて、前記通信先の基地局あたりの通信帯域の帯域幅を示す基地局帯域幅を推定し、
前記基地局帯域幅と、前記通信先の基地局の時間帯ごとの収容台数とに基づいて、前記通信帯域マップを生成又は更新する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記通信先の基地局との間の無線通信における現在の通信帯域を示す帯域実測値及び電波強度と、前記通信先の基地局の位置と、前記基地局帯域幅とに基づいて、前記収容台数を推定する、
請求項12に記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記車両の移動経路と、前記通信先の基地局との間における無線通信において取得された、前記通信先の基地局を一意に識別するための基地局情報、前記使用周波数帯及び電波強度とに基づいて、前記通信先の基地局の位置を推定する、
請求項13に記載の情報処理方法。
【請求項15】
前記車両を移動させながら前記複数の基地局のうちのいずれかとの間で無線通信し、
前記複数の基地局のうちのいずれかと前記車両との間の無線通信における現在の通信帯域を示す帯域実測値を取得し、
前記車両の位置及び前記帯域実測値に基づいて、前記通信帯域マップを生成又は更新する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線基地局との間における無線通信を用いて、移動中の車両において車両制御などの運転支援や動画再生などの車内エンターテイメントの提供を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、ユーザが所望したタイミングで通信が行えないケースに対して、電波強度マップを用いてコンテンツダウンロード中に所定の電波強度を得られるように車両の走行経路を修正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-135100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電波資源は有限であり、例えば、無線基地局あたりの通信帯域が自車両を含む全体で共有される。このため、無線基地局あたりの収容台数、すなわち通信の混雑具合により自車両が利用可能な通信帯域が大きく変化する。また、5Gや6Gといった高周波帯の電波(ミリ波)は指向性が高く、エリアによって自車両が利用可能な通信帯域が大きく変化する。また、通信帯域は、日時や天候によっても大きく変化する。これらのことから、電波強度を十分に得られる場合であっても所定の通信帯域が得られず、例えば無線通信を伴う走行機能が搭載された車両においては、その走行時の安全性に影響が生じるおそれがあった。
【0005】
本開示が解決しようとする課題は、無線通信を伴う走行機能が搭載された車両の走行時の安全性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る情報処理方法は、複数の基地局のうちのいずれかとの間における無線通信の通信帯域を示す通信帯域マップを取得し、前記複数の基地局のうちのいずれかとの間で無線通信する車両の位置を推定し、前記車両の位置及び前記通信帯域マップに基づき、前記複数の基地局のうちのいずれかとの間の無線通信において予測される通信帯域を示す帯域予測値を推定し、前記帯域予測値に応じて前記車両の車両挙動を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、無線通信を伴う走行機能が搭載された車両の走行時の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る車両挙動制御装置を搭載する車両の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係る車両挙動制御装置を含む情報処理システムの構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る情報処理システムの各装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る車両挙動制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係るデータ処理装置の機能構成の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る情報処理システムにより実行される、走行前の車両挙動制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、図6の処理において表示される表示画面の一例を示す図である。
図8図8は、実施形態に係る情報処理システムにより実行される、走行中の車両挙動制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、図8の処理において表示される表示画面の一例を示す図である。
図10図10は、図8の処理において表示される表示画面の別の一例を示す図である。
図11図11は、図8の処理における車両挙動の制御の一例について説明するための図である。
図12図12は、実施形態に係る情報処理システムにより実行される、通信帯域マップ生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る情報処理装置、車両、情報処理システム、情報処理方法、プログラム及び記憶媒体の実施形態について説明する。
【0010】
なお、本開示の説明において、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、説明を適宜省略する場合もある。また、同一又は略同一の部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表されている場合もある。また、例えば図面の視認性を確保する観点から、各図面の説明において主要な構成要素だけに参照符号を付し、既出の図において前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素であっても参照符号を付していない場合もある。
【0011】
図1は、実施形態に係る車両挙動制御装置3を搭載する車両1の一例を模式的に示す図である。車両1は、図1に示すように、車体12と、車体12に所定方向に沿って配置された二対の車輪13とを有する。二対の車輪13は、一対のフロントタイヤ13f及び一対のリアタイヤ13rを含む。
【0012】
ここで、実施形態に係るフロントタイヤ13fは、第1の車輪の一例である。また、実施形態に係るリアタイヤ13rは、第2の車輪の一例である。なお、図1は、四つの車輪13を有する車両1を例示するが、これに限らない。車両1は、少なくとも一つのフロントタイヤ13fと、少なくとも一つのリアタイヤ13rを有していればよい。車両1の車輪13の数は二つ、三つ又は五つ以上の複数であってもよい。
【0013】
車両1の車輪13のうちの少なくとも1つの車輪(操舵輪)の向きは、例えば運転席130の正面に配置されるステアリングホイールの回転角度、つまり操舵角と電気的又は機械的に連動する。つまり、車両1は、操舵により右左折することができる。なお、操舵輪は、リアタイヤ13rでもよいし、フロントタイヤ13f及びリアタイヤ13rの両方であってもよい。
【0014】
車体12は、車輪13により支持される。車両1は、図示しない駆動機を有し、当該駆動機の動力によって車両1の車輪13のうちの少なくとも1つの車輪(駆動輪)を駆動することにより移動可能である。なお、駆動機としては、ガソリンや水素などを燃料とするエンジンやバッテリからの電力を用いるモータ、あるいはエンジンとモータとの組合せなど、任意の駆動機が適用可能である。この場合、二対の車輪13が配置される所定方向が車両1の走行方向となる。車両1は、不図示のギアの切り替え等により前進又は後退することができる。
【0015】
また、車体12は、フロントタイヤ13f側の端部である前端部Fと、リアタイヤ13r側の端部である後端部Rを有する。車体12は上面視で略矩形をしており、略矩形状の4つの角部を端部と呼ぶ場合もある。
【0016】
車体12の前後端部F,Rであって、車体12の下端付近には一対のバンパー14が設けられている。一対のバンパー14のうちのフロントバンパー14fは、車体12の下端部付近の前面全体と側面の一部とを覆う。一対のバンパー14のうちのリアバンパー14rは、車体12の下端部付近の後面全体と側面の一部とを覆う。
【0017】
図2は、実施形態に係る車両挙動制御装置3を含む情報処理システム9の構成の一例を示す図である。情報処理システム9は、図2に示すように、車両挙動制御装置3を搭載する車両1に加えて、無線基地局5と、低遅延クラウドサーバ6とを含む。
【0018】
情報処理システム9は、低遅延クラウドサーバ6と、当該低遅延クラウドサーバ6との間で無線基地局5を介した無線通信を行うクライアントとしての車両挙動制御装置3と、を含むサーバクライアント型のシステムとして構築することができる。
【0019】
情報処理システム9は、実施形態に係る車両挙動制御処理及び通信帯域マップ生成処理を実行可能に構成されている。ここで、実施形態に係る車両挙動制御処理及び通信帯域マップ生成処理の少なくともいずれかは、情報処理方法により実現される情報処理の一例である。また、実施形態に係る車両挙動制御装置3及び低遅延クラウドサーバ6の少なくともいずれかは、情報処理装置の一例である。
【0020】
実施形態に係る車両挙動制御処理及び通信帯域マップ生成処理のそれぞれは、車両挙動制御装置3により実行されるクライアント側の処理と、低遅延クラウドサーバ6により実行されるサーバ側の処理と、を含む。また、実施形態に係る車両挙動制御処理は、走行経路の設定時などの走行経路が決定される前の時点や走行開始前の時点で事前処理として実行される処理と、例えば走行中の時点などの走行開始後の時点でリアルタイム処理として実行される処理と、を含む。また、実施形態に係る通信帯域マップ生成処理は、車両挙動制御処理に先立って実行される場合と、車両挙動制御処理で得られた情報を用いて実行される場合とがあり得る。
【0021】
車両1は、図2に示すように、車載センサ21、HMI22、無線通信装置23、車両制御装置24及び車両挙動制御装置3を搭載する。車載センサ21、HMI22、無線通信装置23及び車両制御装置24のそれぞれは、CAN(Controller Area Network)やEthernet(登録商標)などを含む車載ネットワークを介して車両挙動制御装置3に接続される。
【0022】
なお、図2は、車載センサ21、HMI22、無線通信装置23及び車両制御装置24のそれぞれが、車両挙動制御装置3に含まれない場合を例示するが、これに限らない。これらの一部又はすべてが車両挙動制御装置3に含まれていてもよい。
【0023】
車載センサ21は、例えば図1に例示するように、ソナー(Sound Navigation And Ranging)211及び全周囲カメラ212を含む。
【0024】
ソナー211は、例えば車体12の所定の端部に設けられ、超音波等の音波の送受波を行う。ソナー211は、送受波部211f,211rを含む。例えば、フロントバンパー14fには、一つ以上の送受波部211fが配置され、リアバンパー14rには、一つ以上の送受波部211rが配置される。また、送受波部211f,211rの数及び/又は位置は、図1に示す例に限らず、適宜変更可能である。例えば、車両1は、左右の側方に送受波部211f,211rを備えていてもよい。
【0025】
ソナー211は、音波の送受結果に基づいて、車両1の周囲の障害物を検出する。また、ソナー211は、音波の送受結果に基づいて、車両1の周囲の障害物と車両1との距離を計測する。
【0026】
なお、本実施形態においては、超音波等の音波を使用するソナー211を例示するが、これに限らない。例えば、車両1は、ソナー211に代えて、あるいはソナー211に加えて、電波を送受波するレーダー(RADAR:Radio Detection and Ranging)やレーザ光を送受波するLiDAR(Light Detection And Ranging)を有していてもよい。
【0027】
全周囲カメラ212は、車両1の周囲を撮影可能に車両1に設けられている。一例として、車両1は、全周囲カメラ212として、前方を撮影する前方カメラ212a、後方を撮影する後方カメラ212b、左側方を撮影する左側方カメラ212c及び右側方を撮影する右側方カメラ(図示を省略)を有する。
【0028】
全周囲カメラ212は、車両1の周囲の映像を撮影する。全周囲カメラ212は、例えば、可視光及び/又は赤外光に基づく画像を撮影するカメラである。なお、全周囲カメラ212が撮影する画像は、動画でもよいし、静止画でもよい。
【0029】
なお、全周囲カメラ212の位置及び/又は数は、図1に示す例に限らず適宜変更可能である。例えば、車両1は、前方カメラ212a及び後方カメラ212bの二台のみを有していてもよい。あるいは、車両1は、上述の例の他に、さらに他のカメラを有していてもよい。例えば、全周囲カメラ212の一部又は全部は、車両1の車室空間(車内)に設けられていてもよい。また、全周囲カメラ212は、車両1に内蔵されたカメラであってもよいし、車両1に後付けされたドライブレコーダのカメラ等であってもよい。
【0030】
また、車載センサ21は、図示しない各種のセンサを含む。一例として、車載センサ21は、運転者によるステアリングホイールの操作量、すなわち操舵角に応じた信号を出力する操舵角センサを含む。一例として、車載センサ21は、車輪13の回転速度及び回転方向に応じた信号を出力する車輪速センサを含む。一例として、車載センサ21は、運転者によるブレーキペダルの操作量を検知するブレーキセンサを含む。一例として、車載センサ21は、運転者によるアクセルペダルの操作量を検知するアクセルセンサを含む。一例として、車載センサ21は、車両1に加わる加速度に応じた信号を出力する加速度センサを含む。一例として、車載センサ21は、車両1に加わる角速度に応じた信号を出力するジャイロセンサを含む。加速度センサ及びジャイロセンサは、例えばそれぞれ3軸で設けられて慣性計測ユニット(IMU)として構成されていてもよい。一例として、車載センサ21は、GPS(Global Positioning System)センサなどの車両1の位置情報を出力する全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)センサを含む。なお、GNSSセンサとは、衛星からの電波を受信するGNSSアンテナと、当該GNSSアンテナにより受信した少なくとも二の衛星からの電波に基づき位置情報を得るGNSS回路とを含む。
【0031】
HMI22は、車両1の運転者に経路案内や通知、警告などの各種情報を出力するためのインタフェースである。また、HMI22は、車両1の運転者による各種情報の入力を受け付けるためのインタフェースである。ここで、実施形態に係るHMI22は、表示部及び入力部の一例である。HMI22は、車両1の運転者が認識可能に各種情報を出力したり、車両1の運転手の各種操作を受け付けたりできればよく、例えば車両1の運転席の周囲に設けられるが、後部座席などの運転席の周囲の他の部分に設けられていてもよい。
【0032】
一例として、HMI22は、車両1のダッシュボードやコンソールに設けられ、映像を出力可能に構成されたディスプレイを含む。ディスプレイは、例えば液晶ディスプレイ(LCD)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。なお、当該ディスプレイは、タッチパネルディスプレイとして構成されていてもよい。また、当該ディスプレイは、車両1に搭載されたカーナビゲーション装置の一部であってもよい。また、当該ディスプレイは、運転手の前方、例えばフロントガラスやダッシュボード(コンソール)上に設けられた表示領域などに映像(虚像)を投影するHead Up Display(HUD)などの投影型の表示デバイスであってもよい。なお、HMI22は、通知音や警告音、音声を出力可能に構成されたスピーカなどの他の出力デバイスを含んでいてもよい。
【0033】
一例として、HMI22は、入力デバイスとして、タッチパネルディスプレイのタッチパネルを含む。なお、HMI22は、ボタンやダイヤル、スイッチ、マイクなどの他の入力デバイスを含んでいてもよい。これらの入力デバイスは、例えば車両1のダッシュボードやインストルメントパネル、ステアリングホイール、コンソールなどに配置される。
【0034】
なお、HMI22としては、タブレット端末やスマートフォン、リモートコントローラ、電子キーなどの車両1の外部から車両1に対して信号を送信又は送受信可能な操作端末が利用されてもよい。
【0035】
無線通信装置23は、車両1と無線基地局5との間で情報を伝送する無線信号を送受信する。無線通信装置23は、アンテナ(図示しない)を有し、アンテナを介して、車両1と、無線基地局5との間で無線信号の送受信を実行可能に構成される。無線信号の送受信は、例えば、3G、LTE、4G、5GなどのIMT2020の規定や3GPP(登録商標)の仕様に応じた各世代の移動通信システム、あるいはBeyond 5G(6G)といった次世代移動通信システムなど、任意のセルラーV2X方式で行われる。
【0036】
なお、通信方式は、例えばIEEE準拠のDSRC方式や車車間・路車間通信(Vehicle-to-cellular-Network:V2N)方式などの他の通信方式であってもよい。
【0037】
車両制御装置24は、操舵制御装置及び駆動・ブレーキ制御装置を含む。
【0038】
操舵制御装置は、車両1の操舵を制御する。操舵制御装置は、例えば、運転者によるステアリングホイールの操作量に応じた制御信号、あるいは車両挙動制御装置3又はデータ処理装置7からの制御信号に応じた方向に車輪13を偏向する。なお、操舵制御装置は、車両挙動制御装置3又はデータ処理装置7からの制御信号に従いステアリングホイールの回転角を変更する操舵アクチュエータ(図示しない)を有していてもよい。
【0039】
駆動・ブレーキ制御装置は、車両1の加減速を制御する。駆動・ブレーキ制御装置は、例えば、ブレーキアクチュエータ(図示しない)及びエンジンコントローラ(図示しない)を有する。ブレーキアクチュエータは、運転者によるブレーキペダルの操作量を検知するブレーキセンサ(図示しない)の検知結果、あるいは車両挙動制御装置3又はデータ処理装置7からの制御信号に基づいて、ブレーキを動作させたり、シフト(ギア比)を変更したり、エンジンやモータなどの駆動機の出力を制御したりすることにより、車両1に制動をかけたり車両1を減速したりする。アクセルコントローラは、運転者によるアクセルペダルの操作量を検知するアクセルセンサ(図示しない)の検知結果、あるいは車両挙動制御装置3又はデータ処理装置7からの制御信号に基づいて、エンジンやモータなどの駆動機の出力を制御することにより車両1を加速させる。
【0040】
車両挙動制御装置3は、車両1に搭載可能な情報処理装置の一例である。車両挙動制御装置3は、データ処理装置7と協働することにより、実施形態に係る車両挙動制御処理及び通信帯域マップ生成処理を実行可能に構成されている。具体的には、車両挙動制御装置3は、車両挙動制御処理及び通信帯域マップ生成処理のそれぞれのクライアント側の処理を実行するように構成されている。車両挙動制御装置3は、例えば、車両1の内部に設けられたECU(Electronic Control Unit)、あるいはOBU(On Board Unit)により実現される。あるいは、車両挙動制御装置3は、車両1のダッシュボード付近に設置された外付けのコンピュータであってもよい。なお、車両挙動制御装置3は、カーナビゲーション装置等を兼ねてもよい。
【0041】
無線基地局5は、複数の車両1のそれぞれと、低遅延クラウドサーバ6との間の通信を中継する。具体的には、無線基地局5は、カバーするエリア内の複数の車両1のそれぞれとの間で情報を伝送する無線信号を送受信する。また、無線基地局5は、有線又は無線の電気通信回線を介して低遅延クラウドサーバ6に接続され、低遅延クラウドサーバ6との間で情報を送受信する。ここで、実施形態に係る無線基地局5は、複数の基地局のうちの通信先の基地局の一例である。
【0042】
なお、図2では、車両1が情報の送受信を行う通信先の基地局として、任意の1つの無線基地局5を例示するが、情報処理システム9は、複数の無線基地局5を含む。複数の無線基地局5は、それぞれ隣接する他の無線基地局5とカバーするエリアが重複するように設置されている。無線基地局5がカバーするエリアとは、情報の送受信が可能な車両1やスマートフォンなどの各種の情報処理端末の位置の範囲である。なお、無線基地局5としては、路側機などの道路側設備が利用されても構わない。
【0043】
低遅延クラウドサーバ6は、クラウドコンピューティングを提供する少なくとも1つのサーバ装置である。一例として、低遅延クラウドサーバ6は、エッジコンピューティングを提供する少なくとも一つのエッジサーバ装置である。
【0044】
低遅延クラウドサーバ6は、複数の車両1からのデータを用いた処理を実行する情報処理装置の一例である。データ処理装置7は、車両挙動制御装置3と協働することにより、実施形態に係る車両挙動制御処理及び通信帯域マップ生成処理を実行可能に構成されている。具体的には、データ処理装置7は、車両挙動制御処理及び通信帯域マップ生成処理のそれぞれのサーバ側の処理を実行するように構成されている。サーバ側の処理は、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)処理や急発進防止処理などの先進運転支援システム(Advanced Driving Assistant System:ADAS)の各機能に係る処理、高負荷のAI処理、車両1の位置を推定する自車位置推定処理、車両1による自動運転や自動駐車、ナビゲーションに供される走行経路を生成する経路生成処理のうちのいずれかであってもよい。
【0045】
低遅延クラウドサーバ6は、低レイテンシであるといった特性を有する。ここで、低レイテンシであるとは、車両1から見た通信のレイテンシが小さい、あるいは遅延時間が短いことを意味する。一例として、低遅延クラウドサーバ6は、車両1からの無線信号を中継する無線基地局5、あるいはその近傍に配置される。なお、低遅延クラウドサーバ6は、車両1からの無線信号を中継する中継する無線基地局5に限らず、複数の無線基地局5を束ねている交換局や、当該交換局をハブとする他の無線基地局5、当該交換局に基幹ネットワークなどを介して接続されている同一エリア内の他の交換局又は他の無線基地局5、あるいはこれらの近傍に配置されていてもよい。
【0046】
ここで、「Aの近傍」とは、例えば、Aを経由する通信を伴う処理についての車両から見たレイテンシが予め定められたしきい値を超えない範囲であってもよく、Aからの物理的な距離が予め定められたしきい値を超えない範囲であってもよい。また、同一エリア内とは、例えば同一市内、あるいは同一県内であってもよい。
【0047】
低遅延クラウドサーバ6は、図2に示すように、クラウドGW(ゲートウェイ)61、データ展開装置62及びデータ処理装置7を有する。
【0048】
クラウドGW61は、車両1からの無線基地局5を介した通信を低遅延クラウドサーバ6に接続する。一例として、クラウドGW61は、無線基地局5を介して車両1から受信するデータ、あるいは無線基地局5を介して車両1へ送信するデータ処理装置7からのデータに関し、通信のプロトコルやデータ形式を変換する。
【0049】
データ展開装置62は、クラウドGW61により変換された車両1からのデータをデータ処理装置7へ展開する。具体的には、データ展開装置62は、低遅延クラウドサーバ6の複数のデータ処理装置7のうちの処理を実行するデータ処理装置7へ車両1からのデータを振り分ける。
【0050】
データ処理装置7は、複数の車両1からのデータを用いた処理を実行する情報処理装置の一例である。データ処理装置7は、車両挙動制御装置3と協働することにより、実施形態に係る車両挙動制御処理及び通信帯域マップ生成処理を実行可能に構成されている。具体的には、データ処理装置7は、車両挙動制御処理及び通信帯域マップ生成処理のそれぞれのサーバ側の処理を実行するように構成されている。また、データ処理装置7は、処理後のデータをクラウドGW61へ出力する。
【0051】
なお、図2では、任意の車両1からのデータを用いた処理を実行する1つのデータ処理装置7を例示するが、情報処理システム9は、複数のデータ処理装置7を含んでいてもよい。一例として、複数のデータ処理装置7は、複数のプロセッサを搭載し、複数のプロセッサのうちのいずれか、すなわち少なくとも1つのプロセッサにより実施形態に係るサーバ側の処理を実行可能に構成されている。あるいは、当該サーバ側の処理は、複数のデータ処理装置7のうちの少なくとも1つのデータ処理装置7により実行可能に構成されていてもよい。
【0052】
なお、データ展開装置62は、必須の構成では無く、低遅延クラウドサーバ6に設けられていなくてもよい。あるいは、データ展開装置62は、データ処理装置7の一機能として実現されても構わない。
【0053】
図3は、実施形態に係る情報処理システム9の各装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0054】
情報処理システム9の各装置(例えば車両挙動制御装置3及びデータ処理装置7)のそれぞれは、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)41、ROM(Read Only Memory)42、RAM(Random Access Memory)43、HDD(Hard Disk Drive)44及びI/F(インタフェース)45を有する。CPU41、ROM42、RAM43、HDD44及びI/F(インタフェース)45は、バス49などによって相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0055】
CPU41は、情報処理システム9の各装置においてその全体を制御する演算装置である。CPU41は、ROM42やHDD44に記憶されたプログラムをRAM43にロードして実行することにより、後述する各処理を実現する。
【0056】
なお、実施形態に係るCPU41は、情報処理システム9の各装置におけるプロセッサの一例である。当該プロセッサとしては、CPU41に代えて、あるいはCPU41に加えて、他のプロセッサが設けられてもよい。他のプロセッサとしては、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などの各種プロセッサや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)で実現される専用演算回路などが適宜利用可能である。
【0057】
ROM42は、CPU41による各種処理を実現するプログラムやパラメータ等を記憶する。RAM43は、情報処理システム9の各装置の主記憶装置であり、CPU41による各種処理に必要なデータを一時的に記憶する。HDD44は、情報処理システム9の各装置で使用される各種のデータやプログラム等を記憶する。なお、HDD44に代えて、あるいはHDD44に加えて、SSD(Solid State Drive)、Flashメモリ等の各種の記憶媒体や記憶装置が適宜利用可能である。
【0058】
なお、ROM42、RAM43及びHDD44を区別しない場合には、単に「内部メモリ」と記載する場合もある。
【0059】
一例として、車両挙動制御装置3の内部メモリには、予め生成された通信帯域マップと、車両挙動制御装置3において生成された通信帯域マップと、車両挙動制御装置3において補正された通信帯域マップとのうちのいずれかが格納されている。なお、当該内部メモリには、補正された通信帯域マップに代えて、補正係数などが格納されてもよい。
【0060】
I/F45は、データを送受信するためのインタフェースである。
【0061】
一例として、車両挙動制御装置3のI/F45は、車両1に設けられた他のデバイス、例えば車載センサ21やHMI22及び無線通信装置23からのデータを受信してもよい。また、車両挙動制御装置3のI/F45は、車両1に設けられた他のデバイス、例えばHMI22、無線通信装置23及び車両制御装置24へデータを送信してもよい。
【0062】
なお、車両挙動制御装置3のI/F45は、車両1の車載ネットワークを介して車両1に搭載された他のECUとの間で情報の送受信をしてもよいし、インターネット等のネットワークを介して車両1の外部の情報処理装置と通信をしてもよい。
【0063】
一例として、車両挙動制御装置3のI/F45は、車載ネットワークを介して他のECUから、ステアリング、車速、タイヤパルス、ヨーレートを含む角速度、加速度、位置情報、シフト情報、車両ログなどの車両1の状態に関する情報を取得してもよい。
【0064】
図4は、実施形態に係る車両挙動制御装置3の機能構成の一例を示す図である。車両挙動制御装置3は、RAM43にロードされたプログラムをCPU41で実行することにより、車両情報取得部301、自車位置推定部302、通信品質判定部303、通信制御部304、車両制御部305及び表示制御部306としての機能を実現する。
【0065】
車両情報取得部301は、車載センサ21からのセンサデータを、例えばI/F45を介して取得する。一例として、車両情報取得部301は、車載センサ21としてのソナー211や全周囲カメラ212、RADAR、LiDAR、IMUからの各種センサデータを取得する。
【0066】
車両情報取得部301は、車両1の状態に関する情報を、例えばI/F45を介して取得する。一例として、車両情報取得部301は、他のECUとの車載ネットワークを介した通信により、ステアリング、車速、タイヤパルス、ヨーレートを含む角速度、加速度、位置情報、シフト情報、車両ログなどの車両1の状態に関する情報を取得する。
【0067】
自車位置推定部302は、無線基地局5との間で無線通信する車両1の位置を推定する自車位置推定処理を行う。一例として、自車位置推定部302は、車両情報取得部301により例えば車載センサ21から取得された情報を用いて、車両1の移動量及び移動方向を含む車両1の現在位置の位置座標を取得する。なお、自車位置推定部302は、車載センサ21のGNSSセンサにより車両1の現在位置の位置座標を取得することにより自車位置推定処理を行ってもよい。
【0068】
通信品質判定部303は、通信品質を判定し、通信品質に応じた車両挙動の制御を行う。通信品質判定部303は、低い通信品質が予測される場合、車両挙動の制限又は変更を行う。ここで、通信品質とは、無線基地局5との間の無線通信における通信帯域、あるいは無線基地局5との間の無線通信において任意の車両1が確保可能又は利用可能な通信帯域であるとする。通信品質判定部303は、車両挙動の制御を行う際、HMI22により車両挙動を制限すること、あるいは制限される車両挙動についてユーザに案内してもよい。
【0069】
一例として、通信品質判定部303は、無線基地局5との間における無線通信の通信帯域を示す通信帯域マップを内部メモリ又は低遅延クラウドサーバ6から取得する。
【0070】
一例として、通信品質判定部303は、HMI22を介して入力された、経路候補を検索するための検索条件や目的地などのユーザ入力を受け付ける。ここで、経路候補とは、ユーザへ提示する車両1を目的地まで案内するための走行経路の候補である。また、検索条件とは、「時間優先」、「距離優先」、「帯域優先」及び「料金優先」といった経路候補の検索における優先事項を指定する条件である。時間優先、距離優先、帯域優先及び料金優先は、それぞれ、時間が短い経路、距離が短い経路、通信帯域が得られやすい経路及び料金が安い経路を、経路候補として検索することを指示するための条件である。
【0071】
一例として、通信品質判定部303は、通信帯域マップを参照し、現在位置、経路候補又は走行経路の通信帯域に関する情報を取得する。ここで、現在位置、経路候補又は走行経路の通信帯域に関する情報とは、現在位置、経路候補又は走行経路の推定される通信帯域を示す帯域予測値を含む。例えば、通信品質判定部303は、現在の無線基地局5との間の無線通信における現在の通信帯域を示す帯域実測値を取得し、帯域実測値と、現在位置とを用いて、通信帯域マップを補正する。そして、通信品質判定部303は、補正後の通信帯域マップに基づいて、経路候補上で予測される通信帯域を示す帯域予測値を推定する。
【0072】
一例として、通信品質判定部303は、設定された走行経路において低い通信品質が予測されるかを事前に判定する。例えば、通信品質判定部303は、設定された走行経路の全体に亘って最低限の通信帯域が確保されているかを事前に判定する。換言すれば、通信品質判定部303は、設定された走行経路の少なくとも一部において帯域予測値が予め定められた閾値以下であるかを事前に判定する。例えば、通信品質判定部303は、設定された走行経路の全体に亘って最低限の通信帯域が確保されていない、あるいは設定された走行経路の少なくとも一部において帯域予測値が予め定められた閾値以下であることが事前に予測された場合、設定された走行経路において低い通信品質が予測されると判定する。なお、最低限の通信帯域とは、例えば予め定められて車両挙動制御装置3の内部メモリなどに格納された通信帯域のしきい値である。最低限の通信帯域は、例えば、車両1の自動走行機能を実行するために必要な無線通信の通信帯域に基づいて設定されるが、任意に設定可能である。
【0073】
一例として、通信品質判定部303は、現在位置又は進路上において低い通信品質が予測されるかを走行中に判定する。例えば、通信品質判定部303は、現在位置又は進路上の位置において帯域予測値が予め定められた閾値以下であるかを走行中に判定する。例えば、通信品質判定部303は、現在位置又は進路上の位置において帯域予測値が予め定められた閾値以下である場合、現在位置又は進路上において低い通信品質が予測されると判定する。
【0074】
一例として、車両挙動の制御は、設定された走行経路において低い通信品質が事前に予測された場合、自動走行機能の停止(無効化)と、無線基地局5との間における無線通信の通信態様の変更と、車両1の車速の制限と、ユーザへの通知とのうちのいずれかを含む。つまり、実施形態に係る通信品質判定部303は、設定された走行経路の全体に亘って自動走行機能を実行可能か事前に判定する。
【0075】
一例として、車両挙動の制御は、現在位置又は進路上において低い通信品質が走行中に予測された場合、無線基地局5との間における無線通信の通信態様の変更と、車両1の車速の制限と、ユーザへの通知とのうちのいずれかを含む。
【0076】
ここで、通信態様の変更とは、無線通信における、通信方式、送受信するデータの圧縮率、送受信する画像データの解像度、送受信する映像データのフレームレート、送受信するセンサデータのサンプリングレートのうちのいずれかの変更を含む。なお、この通信態様の変更は、無線通信における送受信データの取捨選択に限らず、車載センサ21などによるデータ取得自体を制御するものであってもよい。
【0077】
また、車両1の車速の制限とは、帯域予測値での無線通信によって、車両1の機能のうちの、走行及び安全に係る機能を実行可能な車速以下に車両1の速度を制限することである。例えば、自動運転における車速の制限は、帯域予測値での無線通信の下で安全に自動運転を実行可能な車速として、予め定められた値又は算出式に基づく。
【0078】
また、ユーザへの通知とは、自動走行機能の停止や通信態様の変更、車速の制限といった車両1の機能を縮退すること、あるいはその内容を案内することを含む。また、自動走行機能の停止に関するユーザへの通知は、所定の通信帯域が得られるまでの手動運転の誘導表示を含む。
【0079】
一例として、車両挙動の制御は、帯域予測値に基づき通信帯域の混雑が予測されるエリアが有る場合に、当該エリアにおける車両台数が制限されるように車両1の走行経路及び車速の少なくとも一方を変更すること、あるいはその変更の案内(図11参照)を含む。
【0080】
一例として、車両挙動の制御は、車両1が走行する走行帯(走行レーン)の、帯域予測値がより高い走行帯、あるいは帯域予測値がより高いエリアに近い側の走行帯へ変更すること、あるいはその変更の案内を含む。
【0081】
一例として、車両挙動の制御は、無線基地局5との間の無線通信に関し、自動運転機能や自宅駐車機能などの走行支援機能(例えばADAS機能)、ドライバーモニター機能といった予め定められた安心・安全に関する機能を優先して、車両ログ機能や車両エンタメ機能(車載エンターテイメント機能)、車載インフォテインメント(In-Vehicle Infotainment:IVI)機能といった他の機能に関する通信帯域を制限すること、あるいはその制限の案内を含む。
【0082】
通信制御部304は、無線基地局5との間の無線通信装置23による無線通信を制御する。
【0083】
一例として、通信制御部304は、通信品質判定部303による車両挙動の制御に従い、通信態様を変更する。
【0084】
一例として、通信制御部304は、無線基地局5を介した無線通信により、車両1の通信を伴う処理を含む各機能に関するデータの送受信をデータ処理装置7との間で行う。
【0085】
一例として、通信制御部304は、無線基地局5を介した無線通信により、ユーザの目的地や検索条件、車両1の現在位置を含む経路の検索情報をデータ処理装置7へ送信する。また、通信制御部304は、車両1からの経路の検索情報に応じた経路候補の検索結果をデータ処理装置7から受信する。
【0086】
車両制御部305は、車両1の操舵、制動及び加減速の少なくともいずれかを制御する。
【0087】
一例として、車両制御部305は、通信品質判定部303による車両挙動の制御に従い、ユーザ操作又はデータ処理装置7の処理結果に応じて車両1の操舵、制動及び加減速の少なくともいずれかを制御する。
【0088】
表示制御部306は、HMI22よる表示を制御する。
【0089】
一例として、表示制御部306は、通信品質判定部303による車両挙動の制御に従い、通信帯域に関する情報を含む表示画面をHMI22より表示する。ここで、通信帯域に関する情報とは、帯域予測値に関する情報、通信帯域マップ及び車両挙動の制御の案内のうちのいずれかを含む。
【0090】
図5は、実施形態に係るデータ処理装置7の機能構成の一例を示す図である。データ処理装置7は、RAM43にロードされたプログラムをCPU41で実行することにより、盗難防止処理部701、走行支援処理部702、ドラモニ処理部703、車両ログ処理部704及び車両エンタメ処理部705としての機能を実現する。
【0091】
盗難防止処理部701は、車両1の盗難防止機能に係るサーバ側の処理を実行する。盗難防止機能は、車両1の無線通信を伴う処理を含む機能である。盗難防止機能は、車両1の安心・安全に関する機能の一例であってもよい。
【0092】
走行支援処理部702は、車両1の自動運転機能や自宅駐車機能などの走行支援機能(例えばADAS機能)に係るサーバ側の処理を実行する。走行支援機能は、車両1の無線通信を伴う処理を含む機能である。走行支援機能は、車両1の安心・安全に関する機能の一例である。
【0093】
ドラモニ処理部703は、車両1のドライバーの運転姿勢や、目線、顔の向き、まぶたの開閉状態などを監視するドライバーモニター機能に係るサーバ側の処理を実行する。ドライバーモニター機能は、車両1の無線通信を伴う処理を含む機能である。ドライバーモニター機能は、車両1の安心・安全に関する機能の一例である。
【0094】
車両ログ処理部704は、車両1のログ収集や収集されたログの分析処理を行う車両ログ機能に係るサーバ側の処理を実行する。車両ログ機能は、車両1の無線通信を伴う処理を含む機能である。車両ログ機能は、車両1の安心・安全に関する機能の他の機能の一例である。
【0095】
車両エンタメ処理部705は、車両1の音楽再生、動画再生、スマートフォン連携といったユーザに車両1の車内でのエンターテイメントを提供する車両エンタメ機能に係るサーバ側の処理を実行する。車両エンタメ機能は、車両1の無線通信を伴う処理を含む機能である。車両エンタメ機能は、車両1の安心・安全に関する機能の他の機能の一例である。
【0096】
次に、以上のように構成された情報処理システム9で実行される処理の流れを説明する。図6は、実施形態に係る情報処理システム9により実行される、走行前の車両挙動制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7は、図6の処理において表示される表示画面801の一例を示す図である。
【0097】
車両挙動制御装置3は、検索条件に応じて検索された経路候補と、経路候補の通信帯域に関する情報とを、HMI22より表示する(S101)。
【0098】
一例として、車両挙動制御装置3の表示制御部306は、検索された経路候補の通信帯域に関する情報として、図7に示すように、帯域予測値に関する情報を、HMI22より表示する。図7の例では、表示画面801は、経路候補を表示する道路マップ803と、検索条件805を設定又は変更するための表示と、経路候補の帯域予測値に関する情報の表示807,809を含む。図7は、検索条件805として「帯域優先」が選択されたことに応じて、経路候補の帯域予測値に関する情報として、その経路候補が「〇〇Mbps以上出せるルート」であることを示す表示807と、その経路候補が「ルートの〇%以上が〇〇Mbps以上」であることを示す表示809とが行われた場合を例示する。
【0099】
なお、図7は、経路候補を表示する際に、通信帯域に関する情報が合わせて表示される場合を例示するが、これに限らない。経路候補を表示する画面と、通信帯域に関する情報を表示する画面とが切り替え可能に表示されてもよい。このため、表示画面801には、画面切り替え、あるいは通信帯域に関する情報の表示/非表示を選択するための操作ボタンが表示されてもよい。また、経路候補を表示する際、通信帯域に関する情報の表示は必須ではなく、通常の経路候補の提示だけ行われる態様もあり得る。また、検索条件805として「帯域優先」が選択されていない場合に通信帯域に関する情報が表示されてもよい。また、経路候補を表示する際、通信帯域に関する情報として、後述する通信帯域マップ(図9及び図10参照)を表示してもよい。
【0100】
車両挙動制御装置3は、走行経路が決定されたかを判定する(S102)。走行経路が決定されたと判定されなかった場合(S102:No)、図6の流れはS102の処理へ戻る。一方、走行経路が決定されたと判定された場合(S102:Yes)、車両挙動制御装置3は、走行経路に亘って最低限の通信帯域が確保されているかを判定する(S103)。
【0101】
一例として、車両挙動制御装置3の通信品質判定部303は、経路候補を表示する際に通信帯域に関する情報が取得されていない場合、本ステップにおいて通信帯域マップを参照し、選択された経路候補の通信帯域に関する情報の取得、すなわち走行経路上で予測される通信帯域を示す帯域予測値の推定を行う。
【0102】
一例として、車両挙動制御装置3の通信品質判定部303は、経路候補を表示する際に通信帯域に関する情報が取得されている場合、選択された経路候補の帯域予測値に基づいて走行経路に亘って最低限の通信帯域が確保されているかを判定する。
【0103】
走行経路に亘って最低限の通信帯域が確保されていると判定された場合(S103:Yes)、図6の流れは終了する。
【0104】
一方、走行経路に亘って最低限の通信帯域が確保されていると判定されなかった場合(S103:No)、車両挙動制御装置3は、車両挙動を制限する(S104)。その後、図6の流れは終了する。
【0105】
このように、実施形態に係る情報処理システム9では、車両1を目的地まで案内する経路候補を検索する際、走行時の通信帯域の確保を優先する検索条件を指定することができる。具体的には、ユーザは、走行経路を設定する際、HMI22により時間、距離、通信帯域及び料金のうちのいずれを優先して走行経路の候補を生成するかを指定する検索条件を入力することができる。これにより、ユーザは、安定した通信帯域を得ることができる経路候補を容易に検索することができる。
【0106】
また、実施形態に係る情報処理システム9では、走行経路を設定する際、走行経路の候補における通信帯域マップと、帯域予測値に関する情報(経路候補の通信帯域に関する情報)とのうちの少なくとも一方を提供することができる。これにより、ユーザは、目的地までの走行時に得られる通信帯域を参考に車両1を案内するための経路を選択することができる。
【0107】
また、実施形態に係る情報処理システム9では、選択された経路候補、すなわち走行経路に亘って最低限の通信帯域が確保できないことが予測された場合、車両1の車両挙動を制限する。これにより、最後まで自動走行可能かといった判断を事前に、例えば走行前に実施し、途中で自動走行が停止するといった問題を抑制することができる。
【0108】
図8は、実施形態に係る情報処理システム9により実行される、走行中の車両挙動制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。図9は、図8の処理において表示される表示画面811の一例を示す図である。ここでは、例えば、図6の流れで走行経路が設定された後の走行中に実行される場合を例に図8の流れを説明する。なお、この走行は例えば自動運転機能による自動走行であってもよいし、ナビゲーションシステムの案内に沿った手動運転機能による走行であってもよい。
【0109】
車両挙動制御装置3は、自車位置を推定(S201)し、自車位置に応じた通信帯域マップを取得(S202)する。そして、車両挙動制御装置3は、自車位置と、走行経路と、通信帯域マップとを、HMI22より表示する(S203)。
【0110】
一例として、車両挙動制御装置3の表示制御部306は、走行経路の通信帯域に関する情報として、図9に示すように、通信帯域マップ819を、HMI22より表示する。図9の例では、表示画面811は、道路マップ813と、道路マップ813上の自車位置815と、道路マップ813上の走行経路817と、通信帯域マップ819とを含む。図9の例では、通信帯域マップ819が自車位置815及び走行経路817とともに、道路マップ813に重畳表示される場合を例示する。
【0111】
なお、図9は、通信帯域マップ819が道路マップ813に重畳表示される場合を例示するが、これに限らない。通信帯域マップ819を表示する画面と、道路マップ813を表示する画面とが切り替え可能に表示されてもよい。このため、表示画面811には、画面切り替え、あるいは通信帯域に関する情報の表示/非表示を選択するための操作ボタンが表示されてもよい。また、経路候補を表示する際、通信帯域に関する情報の表示は必須ではなく、通常の経路案内の表示だけ行われる態様もあり得る。また、また、走行経路の通信帯域に関する情報として、通信帯域マップに基づく帯域予測値に関する情報(図7参照)が表示されてもよい。
【0112】
なお、通信帯域マップの表示は、表示画面811の例に限らない。図10は、図8の処理において表示される表示画面811の別の一例としての表示画面821を示す図である。図10の例では、表示画面821は、道路マップ823と、道路マップ823上の自車位置825と、道路マップ823上の走行経路827と、通信帯域マップ829とを含む。図10の例では、通信帯域マップ819は、例えば渋滞情報の表示が従来行われているのと同様に、走行経路827に沿って、道路上又は道路に沿った位置に重畳表示される場合を例示する。
【0113】
また、車両挙動制御装置3は、現在の通信品質を判定し、通信帯域マップを用いて走行経路に沿う進路上の通信品質を推定する(S204)。
【0114】
一例として、車両挙動制御装置3の通信品質判定部303は、現在の無線基地局5との間の無線通信の帯域実測値を取得し、帯域実測値と、自車位置の通信帯域マップの通信帯域とに基づいて通信品質としての帯域予測値を推定する。
【0115】
なお、表示画面811の通信帯域マップ819の表示は、本ステップでの帯域予測値の推定結果に応じて更新されてもよいし、本ステップの帯域予測値の推定が表示画面811の表示に先立って行われてもよい。
【0116】
また、通信品質判定部303は、推定された帯域予測値により、通信帯域マップを補正してもよい。その際、通信品質判定部303は、内部メモリに格納された通信帯域マップ自体を更新してもよいし、その差分を別ファイルとして格納してもよい。
【0117】
また、車両挙動制御装置3は、進路上の帯域予測値が予め定められた所定の閾値以下であるか、すなわち進路上において低い通信品質が予測されるかを判定する(S205)。進路上において低い通信品質が予測されなかった場合(S205:No)、図8の流れは終了する。
【0118】
一方、進路上において低い通信品質が予測された場合(S205:Yes)、車両挙動制御装置3は、通信品質に応じた車両挙動の制御を行う(S206)。その後、図6の流れは終了する。
【0119】
なお、帯域予測値に応じた車両挙動の制御(S206)は、進路上の帯域予測値が予め定められた所定の閾値より大きくなった場合(S205:No)に、その制御前の状態に戻すことを含んでいてもよい。例えば、通信品質判定部303は、自動走行機能の停止(無効化)を解除したり、車両1の車速の制限を解除したり、安心・安全に係る機能の他の機能に関する通信帯域の制限を解除したりしてもよい。
【0120】
このように、実施形態に係る情報処理システム9では、予め作成された通信帯域マップを用いて、車両1の進路上の帯域予測値に応じた車両挙動の制御を行うことができる。具体的には、低い通信品質が予測される場合には車両挙動が変更されるため、ユーザは、走行中に安定した通信帯域を得たり、得られる通信帯域の下で安全に走行したりすることができる。
【0121】
また、データ処理装置7においては、同一のエリア内を走行する、あるいは設定された走行経路が同一のエリアを通過する複数の車両1のそれぞれに関して、サーバ側の車両挙動制御処理を実行する。このため、実施形態に係る情報処理システム9では、例えば通信帯域の混雑が予想されるエリアにおける車両1の台数が制限されるように、各車両1の走行経路や車速を制御する。図11は、図8の処理における車両挙動の制御の一例について説明するための図である。情報処理システム9では、図11に示すように、各車両1の走行経路や車速の制御により、帯域予測値が高いエリアを通過する走行経路851に多く車両1を誘導し、帯域予測値が低いエリアを通過する走行経路853を走行する車両1の台数を制限する。これにより、走行経路853における通信帯域の混雑を抑制し、複数の車両1のそれぞれの安心・安全な走行を支援することができる。また、複数の車両1のそれぞれは、サーバ側の車両挙動制御処理に応じた車両挙動の制御を行うことで、安心・安全な走行を得ることができる。なお、同一のエリア内で許容する車両1の台数は、そのエリアの帯域予測値に応じて決定されればよい。
【0122】
ここで、実施形態に係る通信帯域マップの生成について説明する。図12は、実施形態に係る情報処理システム9により実行される、通信帯域マップ生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0123】
車両挙動制御装置3は、自車位置の履歴、すなわち移動経路と、各位置における通信強度、基地局ID及び使用バンド(使用周波数帯)とに基づいて、基地局位置を推定する(S301)。
【0124】
一例として、車両挙動制御装置3は、時間帯ごとに、走行中の車両1において自車位置を推定し、車両1の移動経路を取得する。また、車両挙動制御装置3は、時間帯ごとに、走行中の車両1において無線基地局5との間で予め定められた一定間隔で一定パケットを送受信する無線通信を行い、各位置での無線通信の通信強度及び基地局IDを取得する。また、車両挙動制御装置3は、その無線通信で使用した波数帯を示す使用バンドを例えば通信態様の設定を読み出すことにより取得する。ここで、基地局ID通信先の無線基地局5を一意に識別するための基地局情報の一例である。
【0125】
なお、基地局位置は、車両挙動制御装置3により推定する場合に限らず、予め登録されて内部メモリに格納されていてもよいし、データ処理装置7など外部から取得してもよい。
【0126】
また、車両挙動制御装置3は、通信周波数情報に基づいて、基地局あたりの通信帯域の帯域幅を示す基地局帯域幅を推定する(S302)。
【0127】
ここで、通信周波数情報とは、無線基地局5との間の無線通信の使用バンドごとに規定される通信帯域の帯域幅、すなわち使用バンドの伝送チャネルが占有する周波数範囲を示す情報である。通信周波数情報は、予め登録されて内部メモリなどに格納されていてもよいし、データ処理装置7など外部から取得してもよい。
【0128】
また、車両挙動制御装置3は、推定された基地局帯域幅と、実通信帯域と、電波強度とに基づいて、基地局ごとの通信台数(収容台数)を時間帯ごとに推定する(S303)。
【0129】
一例として、車両挙動制御装置3は、予め定められた一定間隔で一定パケットを送受信する無線通信における、一定パケットの送受信に要した時間に基づいて、無線基地局5との間の無線通信の実通信帯域、すなわち帯域実測値を取得する。
【0130】
なお、時間帯ごとの各基地局の収容台数は、車両挙動制御装置3により推定する場合に限らず、予め登録されて内部メモリに格納されていてもよいし、データ処理装置7など外部から取得してもよい。
【0131】
そして、車両挙動制御装置3は、時間帯ごとの各基地局の収容台数と、基地局帯域幅とに基づいて、時間帯ごとの各位置における通信帯域を推定し、時間帯ごとの通信帯域マップを生成する(S304)。
【0132】
なお、図12の流れは、例えば上述の図8の流れとともに実行されるなど、生成済の通信帯域マップを更新する通信帯域マップ更新処理として実現されてもよい。
【0133】
また、図12の流れは、より簡易な処理として実現されてもよい。例えば、車両挙動制御装置3は、走行中の車両1において無線基地局5との間で無線通信を行うことにより、上述と同様にして、車両1の位置及び帯域実測値を取得する。そして、車両挙動制御装置3は、取得した各位置の帯域実測値をプロットした通信帯域マップを生成する。なお、この通信帯域マップ生成処理は、図12の流れで生成された通信帯域マップの更新処理として実現されてもよい。同様に、この通信帯域マップ生成処理で生成された通信帯域マップが図12の流れで更新されてもよい。
【0134】
このように、実施形態に係る情報処理システム9では、少なくとも帯域実測値を用いて時間帯ごとに通信帯域マップを生成又は更新する。これにより、5Gや6Gなどの指向性の強いミリ波帯を用いた無線通信のように、エリアによって使える通信帯域が大きく変わる通信方式であっても、通信帯域マップを用いた車両挙動制御により、安全かつ快適な走行が可能となる。また、通信帯域は、無線通信の指向性に限らず、通信の混雑具合や日時、天候によっても大きく変化するが、時間帯ごとに生成又は更新される通信帯域マップを用いた車両挙動制御により、安全かつ快適な走行が可能となる。
【0135】
なお、上述の実施形態では、時間帯ごとの通信帯域マップを生成、更新又は使用する情報処理システム9を説明した。ここで、時間帯ごとの通信帯域マップとは、1日を複数の区間に分割した場合の複数の区間それぞれについての通信帯域マップであってもよいし、2以上の区間では共通の通信帯域マップとしてもよい。例えば、通常時の通信帯域マップと、通勤時間帯などの特定時間帯の通信帯域マップとが設定される態様もあり得る。また、通信帯域マップは、1日を分割した区間に限らず、曜日や月といった時間帯ごとに設定されてもよい。この場合、月末などの特定時間帯の通信帯域マップを設定することもできる。さらに、通信帯域マップは、時間帯に代えて、あるいは時間帯に加えて天候ごとに設定されてもよい。例えば通信帯域マップとして、1つの時間帯について天候ごとに複数の通信帯域マップが設定される場合もあり得る。
【0136】
なお、上述の実施形態に係る車両挙動制御処理及び通信帯域マップ生成処理は、異なる車両1において実施されても構わない。つまり、実施形態に係る車両挙動制御処理は、自車両において生成された通信帯域マップを使用してもよいし、他車両において生成された通信帯域マップを使用してもよい。また、実施形態に係るデータ処理装置7は、複数の車両1において生成された通信帯域マップを結合してもよい。この結合は、エリアや時間帯、通信方式が異なる複数の通信帯域マップを統合することであってもよいし、少なくとも一部のエリアや時間帯、通信方式が同一の複数の通信帯域マップを、例えば平均値や中央値を取るなど、統計処理により統合することであってもよい。
【0137】
なお、上述の実施形態に係る車両挙動制御装置3によるクライアント側の車両挙動制御処理及び通信帯域マップ生成処理における処理の一部又は全部は、データ処理装置7など車両1の外部で実行されてもよい。例えば、通信帯域マップが低遅延クラウドサーバ6の側で保持されるなど、上述の通信帯域マップを用いる車両挙動制御処理及び通信帯域マップ生成処理がデータ処理装置7など車両1の外部で実行されてもよい。同様に、上述の実施形態に係るデータ処理装置7による処理の一部又は全部は、車両挙動制御装置3など車両1の内部で実行されてもよい。あるいは、実施形態に係る車両挙動制御装置3及びデータ処理装置7は、一体に構成されていてもよい。これらの構成であっても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0138】
なお、上述の各実施形態において「Aであるかを判定する」とは、Aであることを判定することであってもよいし、Aではないことを判定することであってもよいし、Aであるか否かを判定することであっても構わない。
【0139】
上述の各実施形態に係る情報処理システム9の各装置で実行される各プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、FD、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供される。
【0140】
また、上述の各実施形態に係る情報処理システム9各装置で実行される各プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の各実施形態に係る情報処理システム9の各装置で実行される各プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0141】
また、上述の各実施形態に係る情報処理システム9の各装置で実行される各プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0142】
また、上述の各実施形態に係る情報処理システム9の各装置で実行されるプログラムは、上述した各機能部を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU41がROM42又はHDD44からプログラムを読み出して実行することにより上記各機能部がRAM43上にロードされ、上記各機能部がRAM43上に生成されるようになっている。
【0143】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、無線通信を伴う走行機能が搭載された車両の走行時の安全性を向上することができる。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0145】
(付記)
以上の実施の形態の記載により、下記の技術が開示される。
(1)
複数の基地局のうちのいずれかとの間における無線通信の通信帯域を示す通信帯域マップを取得し、
前記複数の基地局のうちのいずれかとの間で無線通信する車両の位置を推定し、
前記車両の位置及び前記通信帯域マップに基づき、前記複数の基地局のうちのいずれかとの間の無線通信において予測される通信帯域を示す帯域予測値を推定し、
前記帯域予測値に応じて前記車両の車両挙動を制御する、
情報処理方法。
(2)
前記複数の基地局のうちのいずれかと前記車両との間の無線通信における現在の通信帯域を示す帯域実測値を取得し、
前記車両の位置及び前記帯域実測値を用いて前記通信帯域マップを補正することにより、帯域予測値を推定する、
上記(1)に記載の情報処理方法。
(3)
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、前記帯域予測値に基づき通信帯域の混雑が予測されるエリアが有る場合に、当該エリアにおける車両台数が制限されるように前記車両の走行経路及び車速の少なくとも一方を変更又は案内することを含む、
上記(1)又は上記(2)に記載の情報処理方法。
(4)
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、前記帯域予測値が予め定められた閾値以下であることが予測される場合に、前記車両の走行帯を前記帯域予測値がより高い走行帯へ変更又は案内することを含む、
上記(1)から上記(3)のうちのいずれか一項に記載の情報処理方法。
(5)
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、前記帯域予測値が予め定められた閾値以下であることが予測される場合に、前記複数の基地局のうちのいずれかとの間における無線通信において、予め定められた走行に関する機能を優先して他の機能に関する通信帯域を制限することを含む、
上記(1)から上記(4)のうちのいずれか一項に記載の情報処理方法。
(6)
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、前記帯域予測値が予め定められた閾値より大きくなった場合に、前記他の機能に関する通信帯域の制限を解除することを含む、
上記(5)に記載の情報処理方法。
(7)
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、前記帯域予測値が予め定められた閾値以下であることが予測される場合に、前記複数の基地局のうちのいずれかとの間における無線通信の通信態様を変更することを含む、
上記(1)から上記(6)のうちのいずれか一項に記載の情報処理方法。
(8)
ユーザの入力に基づいて前記車両の走行経路を設定し、
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、設定された前記走行経路の全体に亘って前記複数の基地局のうちのいずれかとの間における自動走行機能に関する無線通信に要求される予め定められた閾値より前記帯域予測値が高いか否かに基づいて、前記走行経路の全体に亘って前記自動走行機能を実行可能か事前に判定することを含む、
上記(1)から上記(7)のうちのいずれか一項に記載の情報処理方法。
(9)
ユーザの入力に基づいて前記車両の走行経路を設定し、
前記帯域予測値に応じた前記車両挙動の制御は、設定された前記走行経路の少なくとも一部において前記帯域予測値が予め定められた閾値以下であることが予測される場合に、自動運転機能の停止と、前記複数の基地局のうちのいずれかとの間における無線通信の通信態様の変更と、前記車両の車速の制限と、前記ユーザへの通知とのうちのいずれかを事前に実行することを含む、
上記(1)から上記(8)のうちのいずれか一項に記載の情報処理方法。
(10)
前記走行経路の設定は、走行経路の候補における前記通信帯域マップと、前記帯域予測値に関する情報とのうちのいずれかを表示することを含む、
上記(9)に記載の情報処理方法。
(11)
前記走行経路の設定は、時間、距離、通信帯域及び料金のうちのいずれを優先して走行経路の候補を生成するかを指定する検索条件の前記ユーザの入力を受け付けることを含む、
上記(9)又は上記(10)に記載の情報処理方法。
(12)
前記車両を移動させながら前記複数の基地局のうちのいずれかとの間で無線通信し、
前記複数の基地局のうちの通信先の基地局との間における無線通信の使用周波数帯の帯域幅を示す通信周波数情報に基づいて、前記通信先の基地局あたりの通信帯域の帯域幅を示す基地局帯域幅を推定し、
前記基地局帯域幅と、前記通信先の基地局の時間帯ごとの収容台数とに基づいて、前記通信帯域マップを生成又は更新する、
上記(1)から上記(11)のうちのいずれか一項に記載の情報処理方法。
(13)
前記通信先の基地局との間の無線通信における現在の通信帯域を示す帯域実測値及び電波強度と、前記通信先の基地局の位置と、前記基地局帯域幅とに基づいて、前記収容台数を推定する、
上記(12)に記載の情報処理方法。
(14)
前記車両の移動経路と、前記通信先の基地局との間における無線通信において取得された、前記通信先の基地局を一意に識別するための基地局情報、前記使用周波数帯及び電波強度とに基づいて、前記通信先の基地局の位置を推定する、
上記(13)に記載の情報処理方法。
(15)
前記車両を移動させながら前記複数の基地局のうちのいずれかとの間で無線通信し、
前記複数の基地局のうちのいずれかと前記車両との間の無線通信における現在の通信帯域を示す帯域実測値を取得し、
前記車両の位置及び前記帯域実測値に基づいて、前記通信帯域マップを生成又は更新する、
上記(1)から上記(14)のうちのいずれか一項に記載の情報処理方法。
(16)
上記(1)から上記(15)のうちのいずれか一項に記載の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
(17)
コンピュータにより実行されるプログラムであって、上記(16)に記載のプログラムが記録された記憶媒体(Computer Program Product)。
【符号の説明】
【0146】
1 車両
12 車体
13 車輪
14 バンパー
21 車載センサ
211 ソナー
212 全周囲カメラ
22 HMI
23 無線通信装置
24 車両制御装置
3 車両挙動制御装置
301 車両情報取得部
302 自車位置推定部
303 通信品質判定部
304 通信制御部
305 車両制御部
306 表示制御部
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 HDD
45 I/F
49 バス
5 無線基地局
6 低遅延クラウドサーバ
61 クラウドGW
62 データ展開装置
7 データ処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12