(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026219
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】3Dプリント埋設型枠による基礎構造及び基礎の製造方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20250214BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20250214BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20250214BHJP
【FI】
E02D27/01 D
B33Y10/00
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131678
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197848
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 良一
(72)【発明者】
【氏名】井上 昭生
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊亮
(72)【発明者】
【氏名】堀内 康平
(72)【発明者】
【氏名】石関 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】北村 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】田口 拓望
(72)【発明者】
【氏名】郷 富雄
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA12
2D046BA16
(57)【要約】
【課題】3Dプリンタ技術を利用して基礎構造物の周面摩擦を増大させ、当該基礎構造物の支持性能を効果的に向上させることが可能な、3Dプリント埋設型枠による基礎構造及び基礎の製造方法を提供する。
【解決手段】積層型の3Dプリンタにより形成された3Dプリント埋設型枠10と、該3Dプリント埋設型枠10によって区画された範囲に充填される充填コンクリート20と、を少なくとも有する3Dプリント埋設型枠による基礎構造100であって、前記3Dプリント埋設型枠10は、上方に積層される複数の積層材層12からなる隔壁11を有し、前記積層材層12は凹凸形状を構成するとともに、該凹凸形状の縦横比が調整されて成ることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層型の3Dプリンタにより形成された3Dプリント埋設型枠と、該3Dプリント埋設型枠によって区画された範囲に充填される充填コンクリートと、を少なくとも有する3Dプリント埋設型枠による基礎構造であって、
前記3Dプリント埋設型枠は、上方に積層される複数の積層材層からなる隔壁を有し、
前記積層材層は凹凸形状を構成するとともに、該凹凸形状の縦横比が調整されて成る
ことを特徴とする3Dプリント埋設型枠による基礎構造。
【請求項2】
前記凹凸形状の縦横比(H/V) は0.13~0.44である
請求項1に記載の3Dプリント埋設型枠による基礎構造。
【請求項3】
積層型の3Dプリンタにより形成された3Dプリント埋設型枠と、該3Dプリント埋設型枠によって区画された範囲に充填される充填コンクリートと、を少なくとも有する3Dプリント埋設型枠による基礎構造であって、
前記3Dプリント埋設型枠は、上方に積層される複数の積層材層からなる隔壁を有し、
前記積層材層の外側端部は、上方及び/又は下方に隣接する積層材層の外側端部よりも、前記隔壁の外側方向に突出する突出部を備える
ことを特徴とする3Dプリント埋設型枠による基礎構造。
【請求項4】
積層型の3Dプリンタにより形成された3Dプリント埋設型枠と、該3Dプリント埋設型枠によって区画された範囲に充填される充填コンクリートと、を少なくとも有する3Dプリント埋設型枠による基礎構造であって、
前記3Dプリント埋設型枠は、上方に積層される複数の積層材層からなる隔壁を有し、
前記積層材層の内側端部は、上方及び/又は下方に隣接する積層材層の内側端部よりも、前記隔壁の内側方向に突出する突出部を備える
ことを特徴とする3Dプリント埋設型枠による基礎構造。
【請求項5】
前記突出部は、前記隔壁の水平断面において所定間隔にて複数箇所に形成される
請求項3又は4に記載の3Dプリント埋設型枠による基礎構造。
【請求項6】
前記基礎構造は、柱状体基礎又は杭基礎である
請求項1乃至4のいずれかに記載の3Dプリント埋設型枠による基礎構造。
【請求項7】
前記基礎構造は、柱状体基礎又は杭基礎である
請求項5に記載の3Dプリント埋設型枠による基礎構造。
【請求項8】
積層型の3Dプリンタにより形成された3Dプリント埋設型枠と、該3Dプリント埋設型枠によって区画された範囲に充填される充填コンクリートと、を少なくとも有する3Dプリント埋設型枠による基礎の製造方法であって、
複数の積層材層を上方に積層して隔壁を形成し、3Dプリント埋設型枠を製造するステップと、
前記3Dプリント埋設型枠によって区画された範囲に充填コンクリートを充填するステップと、を少なくとも有し、
前記3Dプリント埋設型枠を製造するステップでは、前記積層材層を凹凸形状にて積層するとともに、該凹凸形状の縦横比を調整する
ことを特徴とする3Dプリント埋設型枠による基礎の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンタによって形成された埋設型枠を基礎構造物に適用した、3Dプリント埋設型枠による基礎構造及び基礎の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、3Dプリンタによってフーチングの隔壁を形成し、隔壁内にコンクリートを充填するようにして、効率的に構造物を構築する技術が開示されている。
【0003】
また特許文献2には、モルタルを吐出する3Dプリンタによって積層構造物を作製し、当該積層構造物を型枠として利用し、コンクリートを充填して壁や柱を構築することが記載されている。
【0004】
近年、上記したような3Dプリンタの適用が盛んに行われ、自動化・省力化技術として様々な検討が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-199939
【特許文献2】特開2022-174879
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基礎構造物、特に柱状体基礎や杭基礎などでは、支持力の計算、及び、設計に用いる地盤反力係数や地盤反力度の上限値は、基準通りの値しか見ることができず、基礎を小さくすることができない。そうなると、他の埋設物や重要構造物が近傍にあるような場所では、基礎構造の成立案が得られない場合がある。
【0007】
そこで本願発明は、上記した問題点等に鑑み、前述した3Dプリンタ技術を利用して基礎構造物の周面摩擦を増大させ、当該基礎構造物の支持性能を効果的に向上させることが可能な、3Dプリント埋設型枠による基礎構造及び基礎の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)に係る発明は、積層型の3Dプリンタにより形成された3Dプリント埋設型枠と、該3Dプリント埋設型枠によって区画された範囲に充填される充填コンクリートと、を少なくとも有する3Dプリント埋設型枠による基礎構造であって、前記3Dプリント埋設型枠は、上方に積層される複数の積層材層からなる隔壁を有し、前記積層材層は凹凸形状を構成するとともに、該凹凸形状の縦横比が調整されて成ることを特徴とする3Dプリント埋設型枠による基礎構造である。
【0009】
(2)に係る発明は、前記凹凸形状の縦横比(H/V) は0.13~0.44である上記(1)に記載の3Dプリント埋設型枠による基礎構造である。
【0010】
(3)に係る発明は、積層型の3Dプリンタにより形成された3Dプリント埋設型枠と、該3Dプリント埋設型枠によって区画された範囲に充填される充填コンクリートと、を少なくとも有する3Dプリント埋設型枠による基礎構造であって、前記3Dプリント埋設型枠は、上方に積層される複数の積層材層からなる隔壁を有し、前記積層材層の外側端部は、上方及び/又は下方に隣接する積層材層の外側端部よりも、前記隔壁の外側方向に突出する突出部を備えることを特徴とする3Dプリント埋設型枠による基礎構造である。
【0011】
(4)に係る発明は、積層型の3Dプリンタにより形成された3Dプリント埋設型枠と、該3Dプリント埋設型枠によって区画された範囲に充填される充填コンクリートと、を少なくとも有する3Dプリント埋設型枠による基礎構造であって、前記3Dプリント埋設型枠は、上方に積層される複数の積層材層からなる隔壁を有し、前記積層材層の内側端部は、上方及び/又は下方に隣接する積層材層の内側端部よりも、前記隔壁の内側方向に突出する突出部を備えることを特徴とする3Dプリント埋設型枠による基礎構造である。
【0012】
(5)に係る発明は、前記突出部は、前記隔壁の水平断面において所定間隔にて複数箇所に形成される上記(3)又は(4)に記載の3Dプリント埋設型枠による基礎構造である。
【0013】
(6)及び(7)に係る発明は、前記基礎構造は、柱状体基礎又は杭基礎である上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の3Dプリント埋設型枠による基礎構造である。
【0014】
(8)に係る発明は、積層型の3Dプリンタにより形成された3Dプリント埋設型枠と、該3Dプリント埋設型枠によって区画された範囲に充填される充填コンクリートと、を少なくとも有する3Dプリント埋設型枠による基礎の製造方法であって、複数の積層材層を上方に積層して隔壁を形成し、3Dプリント埋設型枠を製造するステップと、前記3Dプリント埋設型枠によって区画された範囲に充填コンクリートを充填するステップと、を少なくとも有し、前記3Dプリント埋設型枠を製造するステップでは、前記積層材層を凹凸形状にて積層するとともに、該凹凸形状の縦横比を調整することを特徴とする3Dプリント埋設型枠による基礎の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
上記(1)及び(2)、(8)に係る発明によれば、3Dプリント埋設型枠の積層材層に凹凸形状を構成するとともに、当該凹凸形状の縦横比を調整することで、凹凸形状の縦横比を調整していなかった従来構造よりも、基礎の周面摩擦を増加させてその支持性能の向上を図ることが可能となる。また、特に凹凸形状の縦横比(H/V)を0.13~0.44とすることで、表面が平滑なコンクリート板に比べて、摩擦角の正接(tanφ)を約1.49倍まで増加させることが可能となり、基礎の周面摩擦を増加させてその支持性能の向上を図ることが可能となる。
【0016】
より詳細には、支持力算出に使用する周面摩擦力度や、地盤のせん断抵抗(例えば、基礎側面の水平方向せん断地盤反力係数およびその地盤反力度の上限値、基礎周面の鉛直方向せん断地盤反力係数およびその地盤反力度の上限値)を従来より大きく取ることができ、その結果、従来より基礎の断面寸法を小さくしたり、基礎を深さ方向に短くすることが可能になる。
【0017】
上記(3)及び(4)に係る発明によれば、3Dプリント埋設型枠における積層材層の外側端部又は内側端部を、上方及び/又は下方に隣接する積層材層の外側端部又は内側端部よりも突出させることにより、基礎の周面摩擦を増加させてその支持性能の向上を図ることが可能となる。
【0018】
上記(5)に係る発明によれば、3Dプリント埋設型枠における積層材層で形成された突出部は、3Dプリント埋設型枠の水平断面において所定間隔にて複数箇所に形成されることで、基礎の周面摩擦を増加させつつ周面摩擦及び支持性能を調整(設定)することが可能となる。
【0019】
上記(6)及び(7)に係る発明によれば、前述した3Dプリント埋設型枠の断面構成を柱状体基礎又は杭基礎に適用した場合は、周面摩擦を増加させて支持性能の向上を図ることができることに加え、例えば、埋設物や重要構造物が近傍にある場合などには、基礎を小さく(短く)して施工条件をクリアすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第一実施形態における、柱状体基礎の斜視図である。
【
図2】(a)は
図1のa部における上面視平面図であり、(b)は(a)におけるA-A断面図である。
【
図3】(a)は本発明の第二実施形態における、
図2(a)のA-A断面図であり、(b)は本発明の第三実施形態における、
図2(a)のA-A断面図である。
【
図4】本発明の第四実施形態における、
図2(a)のA-A断面図である。
【
図5】(a)は本発明の第四実施形態における、3Dプリント埋設型枠の平断面図であり、(b)は(a)におけるA-A断面図とB-B断面図である。
【
図6】一面せん断試験機を使用した摩擦試験について説明する断面図である。
【
図7】粘性土における摩擦試験で得られた鉛直応力と最大せん断応力との関係を、本実施形態の3Dプリント埋設型枠とコンクリート板とで比較したグラフである。
【
図8】各土質における摩擦試験の結果を示した表である。
【
図9】摩擦試験で使用された3Dプリント埋設型枠における、凹凸形状の縦横比(H/V)を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の3Dプリント埋設型枠による基礎構造の各実施形態について説明する。
【0022】
図1には、本発明の第一実施形態として柱状体基礎の基礎構造100を示す斜視図が図示されており、当該基礎構造100は、柱状体基礎の外殻に、積層型の3Dプリンタにより形成された3Dプリント埋設型枠10を有し、当該3Dプリント埋設型枠10によって区画された範囲に充填される充填コンクリート20を少なくとも備えた構成となっている。
【0023】
図2(a)には上記
図1のa部における上面視平面図が示され、
図2(b)は
図2(a)におけるA-A断面図が示されている。本実施形態では、例えば、3Dプリンタ用プレミックスモルタルを
図2(b)に示されるように鉛直方向に積層し、3Dプリント埋設型枠10の隔壁11を形成している。
【0024】
本実施形態では3Dプリンタ用プレミックスモルタルを使用しており、当該3Dプリンタ用プレミックスモルタルは、ポルトランドセメント、細骨材、硬化促進剤、チキソ性調整剤、有機繊維を混合して積層材としたものであるが、このような積層材はあくまでも一例であって適宜変更することも可能である。そして、複数の積層材層12を上方に積層して隔壁11を形成している。なお、本実施形態では積層の間隔を5mm程度、形成される凹凸の高さは1mm程度となっている。
【0025】
積層材層12の積層に際しては、
図2(b)に示されるように、各積層材層12の外側端部121が凹凸形状を構成するとともに、縦横比(H/V)0.13~0.44の範囲で凹凸形状を成すように調整して積層している。
【0026】
より詳細に説明すると、
図9には、上記のようにして形成された3Dプリント埋設型枠10において、各積層材層12が形成する凹凸の縦寸法すなわち凸部の幅(V)と、横寸法すなわち凸部の高さ(H)、さらにこれらから求められる縦横比(H/V)が示されている。そして
図7には、粘性土における摩擦試験で得られた鉛直応力と最大せん断応力との関係を、上記3Dプリント埋設型枠とコンクリート板とで比較したグラフが示されている。
【0027】
図7に示される摩擦試験の結果から明らかなように、上記した縦横比(H/V)0.13~0.44の範囲で凹凸形状を形成することで、表面が平滑なコンクリート板に比べて、摩擦角の正接(tanφ)を約1.49倍まで増加させることが可能となる。
【0028】
このような摩擦抵抗の向上効果により、特に柱状体基礎や杭基礎では周面摩擦を増加させて支持性能の向上を図ることができる。したがって、例えば、埋設物や重要構造物が近傍にある場合など、基礎を小さく(短く)して施工することが可能となる。
【0029】
続いて、
図3(a)には、本発明の第二実施形態における
図2(a)のA-A断面図が示され、
図3(b)には、本発明の第三実施形態にける
図2(a)のA-A断面図が示されている。
【0030】
すなわち、
図3(a)の第二実施形態、及び
図3(b)の第三実施形態では、積層材層12の外側端部121は、上方及び下方に隣接する積層材層12の外側端部121よりも、隔壁11の外側方向に突出する突出部111を備えるように構成されている。これにより、基礎の周面摩擦を増加させてその支持性能の向上を図ることが可能となる。
【0031】
また、
図4には、本発明の第四実施形態にける
図2(a)のA-A断面図が示されており、当該第四実施形態では、積層材層12の外側端部121は、上方又は下方に隣接する積層材層12の外側端部121よりも、隔壁11の外側方向に突出する突出部111を備えるように構成されている。これにより、基礎の周面摩擦を増加させてその支持性能の向上を図ることが可能となる。
【0032】
続いて、
図5(a)には、本発明の第五実施形態における、3Dプリント埋設型枠10の平断面図が示され、
図5(b)には
図5(a)におけるA-A断面図とB-B断面図が示されている。
【0033】
すなわち、第五実施形態では、
図5(a)の平断面図に示されるように、突出部111は、3Dプリント埋設型枠10の隔壁11の水平断面において所定間隔にて複数箇所に設けられるように構成されている。これにより、基礎の周面摩擦を増加させつつ周面摩擦及び支持性能を調整(設定)することが可能となる。
【0034】
以上、本発明の第二実施形態から第五実施形態について説明したところであるが、第五実施形態の
図5(b)のA-A断面において、第二実施形態や第三実施形態、第四実施形態の断面構成を適用することも可能である。
【0035】
また、上記した第二実施形態から第五実施形態では、3Dプリント埋設型枠10の外側に突出部111を設けた例を示したが、当該突出部111を3Dプリント埋設型枠10の内側に設けることも可能であり、これによっても基礎の周面摩擦を増加させてその支持性能の向上を図ることが可能である。
【0036】
また、突出部111において形成される各積層材層12の傾斜角度は、未硬化の積層材が安定して自立することを考慮すると、図示されるように45°以上で形成するのが好ましい。ただし、別途支保工などを用いることにより、傾斜角度45°以下で突出部111を形成することも可能である。
【0037】
(摩擦試験による検証結果)
本発明における3Dプリント埋設型枠に対して、
図6に示されるような一面せん断試験機を使用して摩擦試験を実施した。すなわち、標準型一面せん断試験機を使用し、下せん断箱の代わりに平滑な表面を有するコンクリート板、及び、3Dプリント埋設型枠を固定して、それぞれの摩擦試験を行った。
【0038】
図6に示される例では、3Dプリント埋設型枠の上にせん断箱の上半分を置き、中に直径60mm、厚さ1cmの粘性土試料を配置して拘束圧をかけ、圧密が完了するまで2日程静置している。なお、本検証試験では粘性土に笠岡粘土を使用し、柔らかい沖積粘土層をイメージして含水比を60%に調整している。
【0039】
試験時は3Dプリント埋設型枠を水平方向に動かすわけであるが、拘束圧を変えて6回(10、20、40、50、100、200kPaの6種類)の試験を行い、得られた鉛直応力σと最大せん断応力τとの関係より、最小二乗法にて摩擦角φを求めた。
【0040】
上記拘束圧の決定方法は、静止土圧係数Kh=0.5及び土の湿潤単位体積重量γt=19kN/m3を用い、σ’=Khγtの式により、地中20mでの水平静止土圧を想定して50、100、200kPaとした。そして、これら拘束圧のもと、一度試験を行い、摩擦角φ及び粘着力cを得た。
【0041】
上記した試験の結果、
図7に示される摩擦試験の結果から明らかなように、前述した縦横比(H/V)0.13~0.44の範囲で凹凸形状を有する3Dプリント埋設型枠は、表面が平滑なコンクリート板に比べて、摩擦角の正接(tanφ)を約1.49倍まで増加させることが可能となる。当然ながら、縦横比(H/V)0.13~0.44の範囲で凹凸形状を有する3Dプリント埋設型枠よりも大きな突出部111を有する第二実施形態から第五実施形態の3Dプリント埋設型枠では、更に大きな周面摩擦力を得ることが可能となる。
【0042】
さらに
図8には、粘性土以外の乾燥細砂、飽和細砂、乾燥粗砂、飽和粗砂における摩擦試験の結果が示されている。いずれも摩擦角tanφは、コンクリート板に比べて1.12倍から1.28倍まで増加しており、いずれの土質においても基礎の周面摩擦を増加させてその支持性能の向上を図ることが可能である。
【0043】
以上、本発明の各実施形態や検証実験の結果について説明したが、本発明によれば、3Dプリント埋設型枠10に形成した特徴的な凹凸形状によって、地盤との周面摩擦を効果的に大きくすることができる。これにより、支持力算出に使用する周面摩擦力度や、地盤のせん断抵抗(例えば、基礎側面の水平方向せん断地盤反力係数およびその地盤反力度の上限値、基礎周面の鉛直方向せん断地盤反力係数およびその地盤反力度の上限値)を従来より大きく取ることができる。その結果、従来より基礎の断面寸法を小さくしたり、基礎の鉄筋量を抑えることが可能となる。さらに、基礎を深さ方向に短くすることも可能となる。
【0044】
また、前述の各実施形態では、積層材層12の積層の間隔を5mm程度、形成される凹凸の高さを1mm程度としたが、必ずしもこのような寸法に限定されるものではなく、例えば、積層の間隔を10mm程度とすることも可能である。このように積層の間隔(厚さ)を大きくすることで、同時に凹凸の高さも大きくなり、これにより基礎の周面摩擦をさらに大きくすることが可能となる。
【0045】
本発明の範囲は、上記した各実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記実施形態に記載された具体的な材質、寸法形状等は本発明の課題を解決する範囲において、変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 3Dプリント埋設型枠
11 隔壁
111 突出部
12 積層材層
121 外側端部
122 内側端部
20 充填コンクリート
100 基礎構造