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2025-26220表皮付発泡成形品及び表皮付発泡成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026220
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】表皮付発泡成形品及び表皮付発泡成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/18 20060101AFI20250214BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20250214BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B29C44/18
B29C44/00 A
B29C39/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131682
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】松田 章太郎
【テーマコード(参考)】
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
4F204AA42
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD07
4F204AD16
4F204AD24
4F204AG03
4F204AG20
4F204AH27
4F204AM32
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB13
4F204EF05
4F204EF27
4F204EK17
4F204EK19
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD07
4F214AD16
4F214AD24
4F214AG03
4F214AG20
4F214AH27
4F214AM32
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB14
4F214UD17
4F214UD19
4F214UF05
4F214UF27
(57)【要約】
【課題】袋形表皮材の内側の舌片の付近にガス溜まりを生じさせにくくすること。
【解決手段】表皮付発泡成形品は、発泡成形体を覆う袋形表皮材から内側に1対の舌片が張り出して重なり合い、それら1対の舌片の間に、前記発泡成形体の原料の注入口が設けられる表皮付発泡成形品であって、前記1対の舌片の少なくとも一方において、該舌片の基部よりも先端側に設けられ、前記舌片を貫通する貫通部を備える表皮付発泡成形品である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形体を覆う袋形表皮材から内側に1対の舌片が張り出して重なり合い、それら1対の舌片の間に、前記発泡成形体の原料の注入口が設けられる表皮付発泡成形品であって、
前記1対の舌片の少なくとも一方において、該舌片の基部よりも先端側に設けられ、前記舌片を貫通する貫通部を備える表皮付発泡成形品。
【請求項2】
前記貫通部は、互いに重ならないように前記1対の舌片において位置をずらして設けられるか、一方の前記舌片のみに設けられている請求項1に記載の表皮付発泡成形品。
【請求項3】
前記貫通部は、前記舌片の先端に達する切れ込みである請求項1に記載の表皮付発泡成形品。
【請求項4】
前記貫通部を通過した前記原料が発泡硬化して前記1対の舌片同士を接着している請求項1に記載の表皮付発泡成形品。
【請求項5】
袋形表皮材から内側に張り出して重なり合う1対の舌片の間から、前記袋形表皮材内に発泡原料を注入して発泡成形体を発泡成形し、表皮付発泡成形品を製造する製造方法であって、
前記1対の舌片の少なくとも一方を貫通するガス抜き部を設けておき、
発泡ガスを前記ガス抜き部を通して前記袋形表皮材外に排出する表皮付発泡成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡成形体が袋形表皮材で覆われた表皮付発泡成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表皮付発泡成形品として、袋形表皮材から内側に張り出して重なり合う1対の舌片の間から発泡成形体の原料を注入して発泡させてなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-136397号公報(段落[0022]~[0023]、図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の表皮付発泡成形品では、袋形表皮材の内側の舌片の付近にガス溜まりが生じ易くなるという問題が考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の一態様は、発泡成形体を覆う袋形表皮材から内側に1対の舌片が張り出して重なり合い、それら1対の舌片の間に、前記発泡成形体の原料の注入口が設けられる表皮付発泡成形品であって、前記1対の舌片の少なくとも一方において、該舌片の基部よりも先端側に設けられ、前記舌片を貫通する貫通部を備える表皮付発泡成形品である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る表皮付発泡成形品の側断面図
図2図2は、袋形表皮材の下方斜視図
図3図3Aは、表皮片同士の境目に設けられた注入口と1対の舌片との下方斜視図、図3Bは、表皮片同士の境目に設けられた注入口と1対の舌片との上方斜視図
図4図4Aは、袋形表皮材の1対の舌片の平断面図、図4Bは、袋形表皮材内で発泡成形体が発泡成形されて貫通部が形成されたときの1対の舌片の平断面図
図5図5Aは、他の例に係る1対の舌片の上方斜視図、図5Bは、他の例に係る1対の舌片の平断面図
図6図6は、型開き状態の発泡成形金型にセットされた袋形表皮材の側断面図
図7図7は、型閉じ状態の発泡成形金型にセットされた袋形表皮材の側断面図
図8図8は、袋形表皮材内で発泡成形された発泡成形体の側断面図
図9図9は、袋形表皮材の貫通部付近の拡大側断面図
図10図10Aは、他の実施形態に係る表皮付発泡成形品の貫通部の上方斜視図、図10Bは、他の実施形態に係る表皮付発泡成形品の貫通部の上方斜視図
図11図11Aは、他の実施形態に係る表皮付発泡成形品の貫通部の上方斜視図、図11Bは、他の実施形態に係る表皮付発泡成形品の貫通部の上方斜視図
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態に係る表皮付発泡成形品10は、乗り物用(例えば車両用)のシート90のヘッドレストとして用いられる。表皮付発泡成形品10は、発泡成形体15を、外側から袋形表皮材20で覆った構成になっている。具体的には、本実施形態の例では、表皮付発泡成形品10は、発泡成形体15が袋形表皮材20内で発泡成形されて表皮材20と一体になったものである。
【0008】
本実施形態の例では、袋形表皮材20は、複数の表皮片21が縫い合わされて形成された縫製品である。なお、袋形表皮材20には、ヘッドレストをシート90の背もたれ部91に取り付けるためのステー12の脚部12Aを突出させるための開口17K(図2参照)が形成されていると共に、発泡成形体15の成形時に発泡成形体15の原料35が注入される注入口20Kも形成されている。なお、ステー12は、左右方向(車幅方向)に並ぶ1対の脚部12Aと、それら脚部12Aの上端を連絡する連絡部12Bとを備えている。例えば、連絡部12Bは、ステー12のうち脚部12Aから前側に曲げられた部分になっている。
【0009】
本実施形態の例では、表皮片21同士は、それら表皮片21のうち表皮付発泡成形品10の外側に露出する表側面同士が重ね合わされるようにして表皮片21の縁部25同士が縫い合わされている。図3A及び図3Bに示すように、縫い合わされた表皮片21同士は、その縫製部(縫い目22)で互いに反対側に折り曲げられ、表皮片21同士の重ね合わされた縁部25同士(即ち、縫い代)は、袋形表皮材20の内側に張り出す。この重ね合わされた縁部25同士には、互いに縫い合わされずに袋形表皮材20の内外を連通させる上記注入口20Kを形成する1対の舌片27が含まれている。例えば、1対の舌片27は、表皮片21同士の重ね合わされた縁部25において、他の部分よりも袋形表皮材20の内側への突出量が大きくなっている(図3B参照)。本実施形態では、例えば、注入口20Kは1箇所設けられ、例えば、袋形表皮材20の下面に開口する(図2参照)。
【0010】
なお、本実施形態の例では、注入口20Kを間に形成する表皮片21同士の境目は、左右方向に延び、1対の舌片27は、前後に対向する(図1参照)。なお、例えば、表皮付発泡成形品10では、注入口20Kは、発泡成形体15によって1対の舌片27が互いに押し付けられて閉じられている。図2には、注入口20Kが広げられた状態の袋形表皮材20が示されている。なお、本実施形態の例では、1対の舌片27では、左右方向の両端部のみが縫合されている(図2参照)。そして、1対の舌片27のうち非縫合部分(図2に示す例では、1対の舌片27の左右方向の中央部)同士の間に、注入口20Kが形成されている。
【0011】
なお、袋形表皮材20は、積層構造をなしていてもよいし、単層構造であってもよい。積層構造の例としては、例えば、最外層として合皮層(例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分として含んでいるもの等)を有するものが挙げられ、例えば、最内層に、発泡成形体15と同種の樹脂(例えば、ポリウレタン系樹脂)の層を有するものであってもよい。最内層をこのようにすれば、発泡成形体15と袋形表皮材20との接着を容易にすることが可能となる。
【0012】
発泡成形体15は、熱硬化性樹脂の発泡体であってもよいし、熱可塑性樹脂の発泡体であってもよい。本実施形態の例では、発泡成形体15は、ポリウレタン系樹脂の発泡体であるが、ゴムの発泡体であってもよいし、フェノール系樹脂の発泡体であってもよいし、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂の発泡体であってもよい。
【0013】
図3B及び図4Aに示すように、本実施形態の表皮付発泡成形品10は、1対の舌片27のうち少なく一方を貫通する貫通部30を備えている。本実施形態の例では、貫通部30は、1対の舌片27のうち一方の舌片27にのみ設けられている。貫通部30は、どちらの舌片27に設けてもよい。なお、図5A及び図5Bに示すように、貫通部30は、両方の舌片27に設けられていてもよい。この場合、貫通部30は、互いに重ならないように1対の舌片27において位置をずらして設けられていることが好ましい。なお、貫通部30は、少なくとも一方の舌片27に複数設けられていてもよい。
【0014】
図4B示すように、本実施形態の例では、発泡成形体15の原料35が貫通部30を通過して発泡硬化することで貫通樹脂部18が形成されている。この貫通樹脂部18は、1対の舌片27同士を接着している。これにより、貫通部30の口を開くにくくすることが可能となる。また、一方の舌片27に貫通部30が設けられる場合に、他方の舌片27のうち前記一方の舌片27の貫通部30と重なる位置に、貫通部30が設けられていないことで、貫通樹脂部18を他方の舌片27でせき止めることが可能となる。これにより、貫通樹脂部18が注入口20Kから袋形表皮材20の外側に飛び出すことを抑制可能となる。
【0015】
本実施形態の例では、貫通部30は、舌片27の基部28側から舌片27の先端に達する切れ込みであり、例えば、直線状をなしている。貫通部30は、舌片27の突出方向に延びていてもよいし、該突出方向に対して傾斜する方向に延びていてもよい(図11B参照)。なお、図3A及び図3Bに示すように、舌片27の基部28は、舌片27のうち表皮片21の折れ曲がり角部に位置する付け根部であり、貫通部30は、舌片27のうち基部28よりも先端側(即ち、舌片27の突出先端側)に設けられている。本実施形態の例では、貫通部30を、舌片27の先端から切れ込みを入れることで形成できるので、貫通部30の形成を容易にすることが可能となる。また、貫通部30を、基部28よりも舌片27の先端側に設けるので、貫通樹脂部18が基部28よりも外側に飛び出すことを抑制可能となる。
【0016】
本実施形態の表皮付発泡成形品10は、例えば、以下のようにして製造される。まず、図2に示すように、複数の表皮片21が縫い合わされてなる袋形表皮材20が用意される。袋形表皮材20には、上述のように、1対の舌片27の間に発泡成形体15の原料35を注入するための注入口20Kを設けておくと共に、ステー12の脚部12Aを挿通するための開口17Kを設けておく。また、注入口20Kを間に形成する表皮片21同士の舌片27のうち一方の舌片27には、その舌片27を貫通する貫通部30を形成しておく(図3B参照)。なお、袋形表皮材20は、表皮片21同士が裏側面を外側向きにするように(即ち、舌片27を含む縁部25が外側に突出するように)縫い合わされて得られた縫製品を、注入口20Kを返し口として表返しすることで得られる。これにより、袋形表皮材20では、表皮片21の表側面が外側を向き、舌片27を含む縁部25が袋形表皮材20の内側に突出することになる。
【0017】
袋形表皮材20が得られると、次いで、袋形表皮材20とステー12が発泡成形金型30にセットされる(図6参照)。このとき、袋形表皮材20は、注入口20Kが上側を向くように配置される。なお、ステー12は、脚部12Aが袋形表皮材20の開口17Kに挿通された状態でセットされる。
【0018】
なお、例えば、図6に示すように、発泡成形金型30は、表皮一体発泡成形に用いられる公知の金型であって、本実施形態の例では、第1下型31と、それに対して回動可能な第2下型32とを横並びにして備え、第1下型31の上部と第2下型32の上部に、第1上型33と第2上型34を回動可能に備えた構造になっている。第2下型32及び第2上型34には、表皮付発泡成形品10の前側部分を成形するための成形面が設けられ、第1下型31及び第1上型33には、表皮付発泡成形品10の後側部分を成形するための成形面が設けられている。なお、袋形表皮材20が発泡成形金型30にセットされた状態で、袋形表皮材20の注入口20K(即ち、1対の舌片27)は、第1上型33と第2上型34の境目付近に配置されることが好ましい。これにより、後述するように、袋形表皮材20内のガスを注入口20Kから逃がし易くすることが可能となる。
【0019】
次に、袋形表皮材20の1対の舌片27の間の注入口20Kから、発泡成形体15の原料35が袋形表皮材20内に注入される。なお、例えば、ノズル36が注入口20Kに挿通され、ノズル36から袋形表皮材20内に原料35が注入される。また、例えば、袋形表皮材20内へ発泡成形体15の原料35(例えば、ポリウレタン樹脂発泡体の原料)を注入できるように、第1上型33は開放されている。
【0020】
図7に示すように、原料35が袋形表皮材20内に注入されると、第1上型33が閉じられて発泡成形金型30が型閉じされる。そして、例えば、発泡成形金型30が袋形表皮材20の前側が下がるように発泡成形金型30が傾けられる。なお、このような傾きの調整によっても、舌片27付近に発生するガス溜まりの発生の抑制を図ることが可能となる。例えば、発泡成形金型30をどちら側に傾けるかは、ガス溜まりの発生し易い位置に応じて決めることができる。
【0021】
図8に示すように、原料35が発泡硬化することで、発泡成形体15が発泡成形され、袋形表皮材20と一体化する。そして、一体化した発泡成形体15と袋形表皮材20とを発泡成形金型30から取り外し、図1に示す袋付発泡成形品10が得られる。
【0022】
ここで、このように袋形表皮材20内で発泡成形を行う場合、袋形表皮材20内に空気等のガス溜まりが生じることが考えられる。そして、本実施形態の袋形表皮材20のように、原料35の注入口20Kが上側を向く配置となる場合、下側から原料35が発泡してくると、袋形表皮材20の内側の舌片27の付近に(例えば、舌片27に面する位置等に)、外部に逃げられなかったガスが溜まるという事態が生じ得た。
【0023】
これに対し、図9に示すように、本実施形態の例では、舌片27に(少なくとも一方の舌片27に)、貫通部30が設けられているので、貫通部30を通して注入口20Kから袋形表皮材20外に発泡ガスや空気を排出することが可能となる。即ち、貫通部30が、発泡ガスや空気等のガスの通過を許容するガス抜き部として機能する。このように、本実施形態では、舌片27に貫通部30が設けられることで、袋形表皮材20内のガス溜まりの発生の抑制を図ることが可能となる。また、舌片27の付近にガス溜まりが発生しにくくなることで、発泡成形体15によって1対の舌片27同士を押し付け易くすることが可能となり、注入口20Kを開きにくくすることが可能となる。なお、袋形表皮材20外に放出されたガスは、例えば、第1上型33と第2上型34の境目等から発泡成形金型30外に放出される。
【0024】
ここで、舌片27に貫通部30が設けられることで、袋形表皮材20内のガスが抜けやすくなる一方で、発泡成形体15の原料35が貫通部30から漏れ出ることが考えられる。これに対し、本実施形態では、図4Aから図4Bへの変化に示すように、1対の舌片27のうち貫通部30を備える一方の舌片27に対して、他方の舌片27が重ねられることで、原料35が貫通部30を通過しても、他方の舌片27でせき止めることが可能となる。これにより、貫通樹脂部18が注入口20K(即ち、基部28)から漏れ出て表皮付発泡成形品10の見栄えが悪くなることを抑制可能となる。また、貫通部30を通過して他方の舌片27に到達した原料35が発泡硬化して貫通樹脂部18が形成されることで、1対の舌片27同士を接着することができる。これにより、貫通部30の口を開くにくくすることが可能となると共に、1対の舌片27同士の間の注入口20Kも開きにくくすることが可能となる。
【0025】
以上のように、本実施形態では、貫通部30により、袋形表皮材20内のガス溜まりの発生の抑制を図ることが可能となると共に、袋形表皮材20外への樹脂漏れの抑制も図ることが可能となる。その結果、表皮付発泡成形品10の生産性の向上を図ることが可能となる。また、本実施形態によれば、表皮付発泡成形品やその製造方法、袋形表皮材係る新規な技術が提供される。
【0026】
[他の実施形態]
表皮付発泡成形品10は、シートのヘッドレストに限定されるものではなく、例えば、シートのアームレストであってもよい。なお、シートは、乗り物用(例えば車両用)のものであってもよいし、建物用のものであってもよい。
【0027】
貫通部30の形状は、上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、貫通部30は、舌片27の先端から基部28に向かって延びてから舌片27の幅方向に延びるように折れ曲がった形状でもよい(図10A参照)。また、貫通部30は、舌片27の幅方向に延びて(例えば、舌片27の幅方向の両端部間に延びて)いてもよい(図10B参照)。貫通部30は、切れ込みでなくてもよく、例えば、孔であってもよい。この場合、貫通部30は、例えば、丸穴でもよいし、長孔(例えばスリット)でもよい。また、貫通部30は、舌片27の端(例えば突出先端)から切り欠かれた形状であってもよい。例えば、このような切欠き形状としては、半円形状や、三角形状(図11A参照)等が挙げられる。
【0028】
上記実施形態において、袋形表皮材20が、複数の表皮片21が縫い合わされた縫製品でなくてもよく、複数の表皮片21が接合されてなるもの(例えば溶着やヒートシールされてなるもの等)であってもよい。また、袋形表皮材20が、複数の表皮片21で構成されてなくてもよく、袋状に成形された樹脂成形品であってもよい。これらの場合でも、袋形表皮材20の内側に張り出して重なり合う1対の舌片27を設け、それら1対の舌片27の間に、注入口20Kを設ければよい。
【0029】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、これら特徴群は、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0030】
例えば、本開示の以下の特徴群は、「発泡成形体が袋形表皮材で覆われた表皮付発泡成形品」や「袋形表皮材」に関し、「従来の表皮付発泡成形品として、袋形表皮材から内側に張り出して重なり合う1対の舌片の間から発泡成形体の原料を注入して発泡させてなるものが知られている(例えば、特開2014-136397号公報(段落[0022]~[0023]、図4等)参照)。」という背景技術について、「上述した従来の表皮付発泡成形品では、袋形表皮材の内側の舌片の付近にガス溜まりが生じ易くなるという問題が考えられる。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。また、従来から、表皮付発泡成形品やその製造方法、袋形表皮材係る新規な技術の開発が求められている。
【0031】
[特徴1]
発泡成形体を覆う袋形表皮材から内側に1対の舌片が張り出して重なり合い、それら1対の舌片の間に、前記発泡成形体の原料の注入口が設けられる表皮付発泡成形品であって、
前記1対の舌片の少なくとも一方において、該舌片の基部よりも先端側に設けられ、前記舌片を貫通する貫通部を備える表皮付発泡成形品。
【0032】
[特徴2]
前記貫通部は、互いに重ならないように前記1対の舌片において位置をずらして設けられるか、一方の前記舌片のみに設けられている特徴1に記載の表皮付発泡成形品。
【0033】
[特徴3]
前記貫通部は、前記舌片の先端に達する切れ込みである特徴1又は2に記載の表皮付発泡成形品。
【0034】
[特徴4]
前記貫通部を通過した前記原料が発泡硬化して前記1対の舌片同士を接着している請求項1から3の何れか1の特徴に記載の表皮付発泡成形品。
【0035】
[特徴5]
袋形表皮材から内側に張り出して重なり合う1対の舌片の間から、前記袋形表皮材内に発泡原料(原料35)を注入して発泡成形体を発泡成形し、表皮付発泡成形品を製造する製造方法であって、
前記1対の舌片の少なくとも一方を貫通するガス抜き部(貫通部30)を設けておき、
発泡ガスを前記ガス抜き部を通して前記袋形表皮材外に排出する表皮付発泡成形品の製造方法。
【0036】
[特徴6]
発泡成形体を覆う袋形をなすと共に、内側に1対の舌片が張り出して重なり合い、それら1対の舌片の間が、前記発泡成形体の原料の注入口になる袋形表皮材であって、
前記1対の舌片の少なくとも一方において、該舌片の基部よりも先端側に設けられ、前記舌片を貫通する貫通部を備える袋形表皮材。
【0037】
上記特徴によれば、従来よりも、袋形表皮材の内側の舌片の付近にガス溜まりを生じにくくすることが可能となる。また、上記特徴によれば、表皮付発泡成形品やその製造方法、袋形表皮材係る新規な技術が提供される。
【0038】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0039】
10 表皮付発泡成形品
15 発泡成形体
20 袋形表皮材
20K 注入口
27 舌片
28 基部
30 貫通部
35 原料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11