(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026229
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】高剛性段ボール
(51)【国際特許分類】
B31F 1/08 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B31F1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023138445
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】591048139
【氏名又は名称】三浦 公亮
(71)【出願人】
【識別番号】304020074
【氏名又は名称】三浦 智子
(72)【発明者】
【氏名】三浦 公亮
【テーマコード(参考)】
3E078
【Fターム(参考)】
3E078BB03
3E078BB15
3E078BB23
3E078BC04
3E078DD11
(57)【要約】
【課題】高剛性段ボール
【解決の手段】 ベースとなる辺L、その上に小さい内角θが、90度より小さい角度θである斜辺で規定される平行四辺形Pを単位とし、該平行四辺形の、ベースラインLに沿った隙間ない併進と、ベースラインを鏡とする鏡像の繰り返しで規定される、ジグザグラインZとベースラインLが指定された紙について、すべてのラインについて、ヒンジの筋押し加工を与えて形成される、段ボールコアシートCSの、すべての折り目(ジグザグ谷折りA,ジグザグ山折りB、山折り谷折り変動するC)ヒンジを起動して、形成される段ボールコアCRを、二枚の表面材(紙その他)Fの間に挿入接合することによって形成される段ボール。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースとなる辺L、その上に小さい内角θが、90度より小さい角度θである斜辺で規定される平行四辺形Pを単位とし、該平行四辺形の、ベースラインLに沿った隙間ない併進と、ベースラインを鏡とする鏡像の繰り返しで規定される、ジグザグラインZとベースラインLが指定された紙について、すべてのラインについて、ヒンジの筋押し加工を与えて形成される、段ボールコアシートCS。
【請求項2】
前記の段ボールコアシートCSの、すべての折り目(ジグザグ谷折りA,ジグザグ山折りB、山折り谷折り変動するC)ヒンジを起動して、形成される、段ボールコアCR。
【請求項3】
前記段ボールコアCRを、二枚の表面材(紙その他)Fの間に挿入接合することによって形成される段ボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール構造において、面外(垂直、曲げ)荷重に対して、高い剛性を有し、段ボール建築・仮設住宅などの主構造面材に利用可能な、高剛性段ボールに関する。
【背景技術】
【0002】
段ボール建築およびそれを利用する仮設住宅は、建築の容易さ、軽量、コスト、災害対策等の見地から、最近特に注目されている。しかしながら、建築構造としての剛性に関するかぎり、問題を内包している。その主たる理由は、建築の大部分を担う面材段ボールの、脆弱性にある。この問題を解決することによって、エコロジーに適応性のある紙材の利用を拡げることにもなろう。
【0003】
面材段ボールの基本的構成は、2枚の表面材と、芯材の一方向の波形材からなるサンドイッチ構造である。通常の段ボール芯材の主たる目的は、剛性を保つという目的よりも、クッション性で、内部荷物を保護することにある。中芯にいわゆるハニカムコアを使う場合は、高い剛性を保つが、コストの制約があり、多くの場合波形材である。ローコストで、ハニカム構造に匹敵する、段ボール構造が求められる。
【0004】
これに関連するサンドイッチ構造の概念が、金属利用であるが、以前提案されている(非特許文献1)。現在の段ボールのコア材を一方向波形と呼ぶとして、二方向波形のコア材を用いたサンドイッチ構造で、Zeta-Core Sandwichと呼ばれている。
【先行技術文献】
【0005】
【非特許文献】
【非特許文献】Miura,K. and Pellegrino、S. Forms and Concepts for Lightweight Structures,Cambridge University Press,2020,Chapter 7. P.188,Fig.6.31.
【0006】
この構造概念は元来、超音速航空機の、機体構造を提案したもので、コア材は高温に耐える金属素材を用い、金属の伸縮を伴う加工を前提としていたので、紙素材には直接適用できない。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
段ボール建築、仮設住宅などに用いる、段ボール構造であって、最少の材料によって、その面に直角方向の荷重に対する剛性、及び曲げ剛性が格段に高いことを本質とする、段ボール構造を求める。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
ベースとなる辺L、その上に小さい内角θが、90度より小さい角度θである斜辺で規定される平行四辺形Pを単位とし、該平行四辺形の、ベースラインLに沿った隙間ない併進と、ベースラインを鏡とする鏡像の繰り返しで規定される、ジグザグラインZとベースラインLが指定された紙について、すべてのラインについて、ヒンジの筋押し加工を与えて形成される、段ボールコアシートCS。
【0009】
前記の段ボールコアシートCSの、すべての折り目(ジグザグ谷折りA,ジグザグ山折りB、山折り谷折り変動するC)ヒンジを起動して、形成される、段ボールコアCR。
【0010】
前記段ボールコアCRを、二枚の表面材(紙その他)Fの間に挿入接合することによって形成される段ボール。
【発明の効果】
【0011】
通常の段ボールの基本的原理は、二枚の表面用紙の間に波形のコア材を挿入したサンドイッチ構造が形成することである。しかし、その波形のコア材は該サンドイッチ構造面に垂直な荷重に対して本質的に弱い。この見地からすると、むしろそのクッション性を利用するのが主目的で、従って、面に垂直な荷重、あるいは曲げ荷重に耐える目的には十分に適応しない。
【0012】
以前、超音速航空機に利用するサンドイッチ構造に関連して、構造内部を冷却する機能を求めて、波形を更に別の方向の波形を与えた二方向の波形のコア材により、二方向に剛性を保ち、且つ冷却液を循環できるサンドイッチ心材が研究開発された。コア材と面板で構成される複合的立体的トラス構造である。力学的にはユニークなアイデアであるが、複雑な加工を前提としているので、紙素材には適用できないと思われてきた。
【0013】
実は、金属素材を用いて二方向の波形を実現するのは、前記のように至難であるが、紙で代表される伸縮しない素材で、可能な解が存在する。これは前記非特許文献1の、金属素材を用いた研究開発の過程で、導かれた解、Developable Dual Corrugated Surface(DDC面)がそれである。
【0014】
最近の研究開発によって、上記のコア材に近い形状が、適切な紙の折り加工により製造可能となりつつある
【0015】
図1で示すように、DDC面は、ベースとなる辺の上に内角θが90度より小さい平行四辺形Pを単位として、規定される。DDC面は、フラットな状態では、複数のそれぞれ平行なジグザグ谷折りライン▲A▼、複数のそれぞれ平行なジグザグ山折りライン▲B▼、及びそれぞれ平行で変化する水平ライン▲C▼で構成される。
【0016】
DDC面では、すべての折りが同期連動して動くという、一自由度の性質、または制約がある。弾性体の一部に加えられた変形は、あたかも生物における情報伝達のメカニズム、シナプスと類似の作用をする。現実の弾性体では、同期に遅れがあり、一挙に連動ではないが、一部に加えられた折りの情報は、隣接領域に少し減衰しながらも、正確に伝わる。
【0017】
その情報の根拠は、平坦折りに関する折り紙の基本、前川の定理で説明できる。「平坦折りで、折り目の交点に集まる山折り、谷折りの差は、常に2である。」本題に関して言えば、交点に集まる折りの総数は常に4だから、可能な解は、山折り3で谷折り1か、山折り1で,谷折り3に限られる。
【0018】
図1の状態を実現するために、
図2に示すスリット加工した用紙を準備する。
1. 特定のジグザグライン例えば左端の縦のジグザグライン▲A▼(スリット加工すみ)の部分を、金型などを用いて押し込んで、谷折り(破線)にすると、該ジグザグラインを谷折りとし 左右の支線の山谷分布が確定する。
2. 以上の操作の結果、隣接のジグザグライン▲B▼の山折り(直線)への変化をもたらす。その影響に従って、これを山折りと確定すると、ジグザグラインを山折りとする、左右の支線▲c▼の山谷分布が確定する。
3. 以上の谷折り、山折りを交互に行うことで、右端までの全領域の折り構造の心材が生成される。
4. 該心材を、二枚の面材F1,F2の間に挟み、位置を調整の上、接合する(
図3)。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例0019】
図3の透視図に示すように、コアシートCSは、二枚の面板の間に接合されて、サンドイッチ構造を形成する。
図4では、表面板とコアしーとが、複合的なトラス構造を形成し、有効な立体折板構造であることが、示されている。
本発明では、一般に強度・剛性が弱いとされる段ボールを、力学的な組み合わせによって、シンプルでありながら、高い強度・剛性の段ボールの構造を提供するもので、災害時の臨時住居などを、低コストでの実現を可能とするものである。また、素材のリサイクル性も高く、エコロジーにも寄与できる。