(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002624
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】空気調和機及び空気調和機における熱交換器の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
F28G 7/00 20060101AFI20241226BHJP
F24F 13/20 20060101ALI20241226BHJP
B08B 5/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F28G7/00 A
F24F1/0007 401E
B08B5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102935
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 敦則
(72)【発明者】
【氏名】山口 瑠偉
【テーマコード(参考)】
3B116
3L051
【Fターム(参考)】
3B116AA47
3B116AB53
3B116BB22
3B116BB83
3B116CD42
3B116CD43
3L051BJ10
(57)【要約】
【課題】空気調和機を分解することなく、汚れに対するメンテナンスを容易に行う。
【解決手段】空気を内部へ吸い込み、加熱または冷却された熱交換器2のフィン2aの間を空気が通過することによって、調和された空気を得るに際して、熱交換器2のフィン2aに圧電素子12を取り付けることにより超音波振動子7を構成し、超音波振動子7によって熱交換器2を振動させて、熱交換器2に付着した汚れを浮き上がらせて熱交換器2に付着した液体へ溶かし出して汚れを除去する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を内部へ吸い込み、加熱または冷却された熱交換器のフィンの間を空気が通過することによって、調和された空気を得ることができる空気調和機において、
前記熱交換器の前記フィンに圧電素子を取り付けることにより超音波振動子を構成し、
前記超音波振動子によって前記熱交換器を振動させて、前記熱交換器に付着した汚れを浮き上がらせて前記熱交換器に付着した液体へ溶かし出して汚れを除去する空気調和機。
【請求項2】
前記熱交換器の前記フィンに対して洗浄用水を噴出させるための洗浄用水噴霧装置を設けた請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記熱交換器を室内機又は室外機に設置した請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
請求項2記載の前記空気調和機における前記熱交換器の洗浄方法であって、
前記熱交換器に対して前記洗浄用水噴霧装置により前記洗浄用水を噴出した後、前記超音波振動子を振動させて、前記熱交換器に付着した汚れを浮き上がらせて前記洗浄用水に溶出させる空気調和機における熱交換器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は空気調和機及び空気調和機における熱交換器の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室内機は、室内空気を内部へ吸い込み、加熱または冷却された熱交換器のフィンの間を室内空気が通過することによって調和された空気を得ることができる。しかし熱交換器には、フィルタを通り抜けた室内空気の塵埃、浮遊油が付着して堆積する。熱交換器に付着した塵埃又は油は、常に取り除かれる事が望まれている。
【0003】
熱交換器のフィンの奥に堆積した塵埃又は油は、使用者が空気調和機の室内機を分解して洗浄専用スプレーを吹き付けるか、あるいは専門の業者に依頼することを定期的に行う必要があった。
【0004】
熱交換器に付着した塵埃又は油を取り除く方法として、室内熱交換器の温度を上昇させ、室内熱交換器の表面の油を軟化(又は液化、流動化)させた後、室内熱交換器の凍結及び解凍を順次に行うことで、室内熱交換器の表面の油を塵埃とともに洗い流すようにしているものがある(特許文献1参照)。
又空気調和機は、熱交換器の温度を下げる運転を行い、熱交換器を急激に冷却して、熱交換器のフィンの表面に霜若しくは氷を付着させる動作を行い、凍結運転の後に、空気調和機は、熱交換器の温度を上げる運転を行い、熱交換器を急激に加熱して、霜(氷)を解凍する動作を行い、更に空気調和機は、解凍運転を行うことにより、霜(氷)を水に戻し、その際に、空気調和機は、解凍された水が落下する勢いを利用して熱交換器に付着した微細な塵埃を流し落とすものがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6945100号
【特許文献2】特許第6400147号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の空気調和機において、熱交換器を加熱することによって熱交換器に付着した油を溶解したり、あるいは熱交換器を冷却して結露させることにより洗浄する方法においては、水に溶けない油が全て溶解して熱交換器から離れるとは限らないという問題があった。すなわち汚れを洗浄するには改善の余地があった。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、簡単に熱交換器のメンテナンスを行うことのできる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の空気調和機は、空気を内部へ吸い込み、加熱または冷却された熱交換器のフィンの間を空気が通過することによって、調和された空気を得ることができるものであって、
前記熱交換器の前記フィンに圧電素子を取り付けることにより超音波振動子を構成し、
前記超音波振動子によって前記熱交換器を振動させて、前記熱交換器に付着した汚れを浮き上がらせて前記熱交換器に付着した液体へ溶かし出して汚れを除去するものである。
又本開示の空気調和機における熱交換器の洗浄方法は、前記熱交換器に対して洗浄用水噴霧装置により洗浄用水を噴出した後、前記超音波振動子を振動させて、前記熱交換器に付着した汚れを浮き上がらせて前記洗浄用水に溶出させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の空気調和機及び空気調和機における熱交換器の洗浄方法によれば、簡単に熱交換器のメンテナンスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1による空気調和機が備える室内機を示す断面図である。
【
図2】超音波振動子を熱交換器のフィンへ取り付けた状態を示す断面図である。
【
図3】実施の形態1による空気調和機の機能を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態2による空気調和機が備える室内機を示す断面図である。
【
図5】実施の形態2による空気調和機が備える室内機を示す斜視図である。
【
図6】実施の形態2による空気調和機が備える洗浄用水噴霧装置の周辺を示す断面図である。
【
図7】実施の形態2による空気調和機が備える洗浄用水噴霧装置を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は実施の形態1による空気調和機が備える室内機を示す断面図である。
図1において、空気調和機が備える室内機1には、熱交換器2、送風ファン3、ドレインパン4、フィルタ5、超音波振動子7が備えられている。そして室内機1においては、室内空気を内部へ吸い込み、加熱または冷却された熱交換器2のフィンの間を室内空気が通過することによって、調和された空気を得ることができる。
【0012】
図2は超音波振動子を熱交換器のフィンへ取り付けた状態を示す断面図である。一対を構成する圧電素子12を、ボルト13およびナット11、更にはフィン2a間の距離に等しい厚みを有するワッシャ14によって熱交換器2に固定する。
【0013】
図3は空気調和機の機能を示すブロック図であり、室内機1および室外機26の機能ブロック図である。
図3において、室内機1は、リモコン送受信部16、室内機制御部19、室内温度センサ20を備えている。リモコン送受信部16は、赤外線通信によってリモコン15との間で所定の情報のやりとりを行う。室内機制御部19は、図示しないCPU、ROM、RAM、及び各種インターフェース回路を含んでいる。ROMに格納されたプログラムによってCPUが各種の処理を実行する仕組みになっている。
【0014】
室内機制御部19によって室内ファンモータ17及びフラップ制御モータは制御される。室内ファンモータ17は送風ファン3の回転速度を制御することにより室内機1からの送風量が設定される。フラップ制御モータ18は送風ファン3からの送風の向きを決めるフラップの方向性を決定するためのモータである。
室内温度センサ20は、室内空気の温度を検出したデータを室内機制御部19で取り込んで室外機制御部22へ送信される。
超音波発振器24は22kHzまたは40kHzの周波数で発振して超音波振動子7を22kHzまたは40kHzの周波数で振動させる。超音波発振器24は室内機制御部19によって制御され、熱交換器の掃除運転を実施する時にオンされる。
【0015】
室外機26は、室外機制御部22を備えている。室外機制御部22には、図示しないCPU、ROM、RAM、及び各種インターフェース回路を含んでいる。ROMに格納されたプログラムによってCPUが各種の処理を実行する。
室外機制御部22によって、圧縮機モータ23、四方弁30、膨張弁25は制御される。圧縮機モータ23は室内機1と室外機26それぞれの熱交換器内に配線されている冷媒配管に充填されている冷媒ガスを圧縮することにより高温にする。四方弁30は冷媒ガスが圧縮機へ流れる方向を変えることにより、冷房運転と暖房運転を切り替える。膨張弁25は高圧、高温になった冷媒ガスの圧力を下げて低温にしてから熱交換器へ送ることにより冷媒ガスと空気との間で熱交換できるようにする。
又室外機制御部22によって室外ファンモータ21は制御される。
【0016】
次に、実施の形態1の動作について説明する。本実施の形態における空気調和機の室内機1の熱交換器2の洗浄方法については、まず熱交換器2を冷却する運転を行った時に熱交換器2において結露により水滴を付着させる。次に超音波振動子7によって熱交換器2を振動させて、熱交換器2に付着した汚れを浮き上がらせて水滴に溶出させる。超音波振動子7は圧電素子で構成されており、汚れを効果的に浮き上がらせるために効果的な22kHzまたは40kHzで振動させる。汚れを含んだ水滴はドレインパン4へと流れ落ち、図示していないドレインホースから室外へ排出される。
本実施の形態による空気調和機によれば、超音波の作用によって熱交換器2に固着した汚れを浮き上がらせて、熱交換器2に付着した液体(水分等)へ溶かし出して除去する。従って、空気調和機の室内機を分解することなく、汚れに対するメンテナンスができるという優れた効果を奏し得る。
【0017】
実施の形態2.
図4は実施の形態2による空気調和機が備える室内機を示す断面図、
図5は実施の形態2による空気調和機が備える室内機を示す斜視図であり、筐体を取り外した状態を示している。
図6は実施の形態2による空気調和機が備える洗浄用水噴霧装置の周辺を示す断面図、
図7は実施の形態2による空気調和機が備える洗浄用水噴霧装置を示す拡大図である。
図中、実施の形態1と同一の符号を付した部分は同一部分を示している。
本実施の形態においては、実施の形態1における室内機1に加え、洗浄用水噴霧装置6を備えているものである。又洗浄用水噴霧装置6には、洗浄用水注入口8及び噴霧器9が設けられている。又
図7において、10は噴射された洗浄用水を示している。
【0018】
熱交換器2を洗浄する動作を行う時、洗浄用水噴霧装置6から洗浄用水を熱交換器2へ向かって噴霧する。洗浄用水噴霧装置6は、洗浄用水を熱交換器2全体に行き渡らせるために熱交換器2の幅に等しい長さとなっている(
図5、6、7参照)。また、熱交換器2のフィン2aに対して平行に洗浄用水を噴出させるために、洗浄用水が適切な方向に向かって進むように洗浄用水噴霧装置6は備えられている(
図6参照)。
図7に示すように、洗浄用水噴霧装置6に設けられた噴霧器9は熱交換器2へ向かって一定の間隔で複数個備えられている。
【0019】
一定期間熱交換器2に対して洗浄用水が噴霧された後、熱交換器2に設置された超音波振動子7を振動させて、熱交換器2へ付着した汚れを浮き上がらせて洗浄用水に溶出させる。これにより汚れを含んだ洗浄用水はドレインパン4へ流れ落ち、図示していないドレインホースから室外へ排出される。
【0020】
熱交換器2の洗浄運転を実施する時は、送風ファン3を停止しなければ洗浄によって熱交換器2から浮き上がった汚れを送風によって室内へ撒き散らす可能性がある。空気調和機の運転時間を積算するタイマーによって、空気調和機を停止する操作がされた時に、運転時間の積算時間が所定の時間に達していれば洗浄運転を実施するように室内機制御部19においてプログラムしてもよい。
【0021】
熱交換器2を冷却する運転を行った際には、熱交換器2のフィンに結露による水滴が発生するが、この湿気はカビが発生する原因となっている。カビの原因となる湿気に対しては、熱交換器2を超音波振動子7で振動させることにより熱交換器2に付着した水分を蒸発させる事ができる。従って熱交換器2を乾燥した状態に保ち、カビの発生を予防できるので、空気調和機の室内機1からの送風を清潔に保つ事ができる。尚上記においては、室内機1の熱交換器2について説明したが、室外機26に設置された熱交換器についても応用できる。
更に上記の空気調和機の洗浄装置は、「ルームエアコン」、「パッケージエアコン」の室内機又は室外機に用いることができる。
【0022】
尚、本開示の空気調和機は、上述の実施の形態にのみ限定されるものではなく、本実施の形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本開示の明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0023】
1 室内機、2 熱交換器、2a フィン、3 送風ファン、4 ドレインパン、
5 フィルタ、6 洗浄用水噴霧装置、7 超音波振動子、8 洗浄用水注入口、
9 噴霧器、11 ナット、12 圧電素子、13 ボルト、14 ワッシャ、
26 室外機。