(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026270
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】化粧料含浸用基布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/4374 20120101AFI20250214BHJP
D04H 1/04 20120101ALI20250214BHJP
D04H 3/14 20120101ALI20250214BHJP
【FI】
D04H1/4374
D04H1/04
D04H3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017606
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2023130466
(32)【優先日】2023-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松永 篤
(72)【発明者】
【氏名】平松 真由美
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 直樹
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AA13
4L047AA14
4L047AA19
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA28
4L047AA29
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB04
4L047BA04
4L047BA09
4L047BB02
4L047CA05
4L047CC03
4L047CC16
4L047EA02
4L047EA05
4L047EA10
(57)【要約】
【課題】化粧料が含浸されたシートの取り出しや、折り畳まれたものをその状態から広げる際の伸びが抑制され、かつ、肌触りが良好な基布を提供する。
【解決手段】スパンボンド不織布が巻芯に巻かれたスパンボンド不織布ロールを準備する工程、木綿繊維群と、鞘部がポリエチレンからなる熱可塑性芯鞘型複合短繊維群とを混合する工程、
混合した繊維群をパラレルカード機に通してパラレル短繊維ウェブを準備する工程、
スパンボンド不織布ロールを繰り出し、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように、スパンボンド不織布の片面にパラレル短繊維ウェブを重ねて積層ウェブを得る工程、
積層ウェブに高圧水流を噴射して、積層ウェブを交絡させる工程により化粧料含浸用基布を製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を含浸するための基布の製造方法であって、
連続繊維から構成されるスパンボンド不織布が巻芯に巻かれたスパンボンド不織布ロールを準備する工程、
セルロース短繊維群と熱可塑性複合短繊維群とを混合する工程、
前記混合する工程において、熱可塑性複合短繊維が、鞘部がポリエチレンにより構成される芯鞘型複合短繊維により構成される複合短繊維であり、
セルロース短繊維群中には、木綿繊維が含まれており、
混合するにあたって、熱可塑性複合短繊維の混合比が30~60質量%であり、
混合した繊維群をパラレルカード機に通してパラレル短繊維ウェブを準備する工程、
スパンボンド不織布ロールを繰り出し、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように、スパンボンド不織布の片面にパラレル短繊維ウェブを重ねて積層ウェブを得る工程、
積層ウェブに高圧水流を噴射して、積層ウェブを交絡させる工程を含む化粧料含浸用基布の製造方法。
【請求項2】
セルロース短繊維群は、木綿繊維とレーヨン繊維とから構成され、セルロース短繊維群中に木綿繊維が50質量%以上含まれることを特徴とする請求項1記載の化粧料含浸基布の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、熱可塑性複合短繊維群が、鞘部がポリエチレンにより構成される芯鞘型複合短繊維より構成される複合短繊維群に替えて、ポリプロピレンとポリエステルとから構成される分割型複合短繊維、またはポリアミドとポリエステルとから構成される分割型複合短繊維によって構成される分割型複合短繊維群であることを特徴とする請求項1記載の化粧料含浸基布の製造方法。
【請求項4】
請求項1において、熱可塑性複合短繊維群が、鞘部がポリエチレンにより構成される芯鞘型複合短繊維と分割型複合短繊維とから構成され、
分割型複合短繊維が、ポリプロピレンとポリエステルとから構成される分割型複合短繊維またはポリアミドとポリエステルとから構成される分割型複合短繊維のいずれかであること特徴とする請求項1記載の化粧料含浸基布の製造方法。
【請求項5】
スパンボンド不織布は、連続繊維同士が部分的に熱圧接されてなる不織布であることを特徴とする請求項1記載の化粧料含浸用基布の製造方法。
【請求項6】
スパンボンド不織布は白色以外の顔料を含む原着繊維から構成され、化粧料含浸用基布が白以外の色に発色してなることを特徴とする請求項1記載の化粧料含浸用基布の製造方法。
【請求項7】
短繊維ウェブを構成するセルロース短繊維および熱可塑性複合短繊維は、いずれも無着色であるか、または白色顔料を含むものであることを特徴とする請求項6記載の化粧料含浸用基布の製造方法。
【請求項8】
化粧料を含浸するための基布が、シートパック用基布であることを特徴とする請求項1記載のシートパック用基布の製造方法。
【請求項9】
化粧料を含浸するための基布が、化粧落としのためのクレンジング用基布であることを特徴とする請求項1記載のクレンジング用基布の製造方法。
【請求項10】
化粧料を含浸するための基布が、制汗シート用基布であることを特徴とする請求項1記載の制汗シート用基布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、化粧料を含浸するための基布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧料を含浸してなるシートパックやクレンジングシート、制汗シート等の化粧料を含浸するための基材としては、不織布が多く用いられている。不織布としては、コットン繊維のみからなる不織布、レーヨン繊維のみからなる不織布、また、スパンボンド不織布の両表面にセルロース繊維等の短繊維層を積層させた積層不織布(例えば、特許文献1)等が用いられている。
【0003】
特許文献1によれば、伸縮性を有するスパンボンド不織布層を中間層とし、両表面にセルロース繊維等の短繊維層を積層した積層不織布をシートパックのシート基材とすることにより、肌へのフィット性が良好で、長時間使用しても突っ張り感のないものが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1の積層不織布からなるシートパックは、肌へのフィット性は良好であるが、伸縮性を有することから、化粧料が含浸されたシートの取り出しや、折り畳まれたものをその状態から広げる際の伸びるという欠点がある。
【0006】
本発明は、シートパック等の化粧料が含浸されたシートの取り出しや、折り畳まれたものをその状態から広げる際の伸びが抑制され、かつ、肌触りが良好な化粧料含浸用基布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を達成するものであって、
化粧料を含浸するための基布の製造方法であって、
連続繊維から構成されるスパンボンド不織布が巻芯に巻かれたスパンボンド不織布ロールを準備する工程、
セルロース短繊維群と熱可塑性複合短繊維群とを混合する工程、
前記混合する工程において、熱可塑性複合短繊維が、鞘部がポリエチレンにより構成される芯鞘型複合短繊維により構成される複合短繊維であり、
セルロース短繊維群中には、木綿繊維が含まれており、
混合するにあたって、熱可塑性複合短繊維の混合比が30~60質量%であり、
混合した繊維群をパラレルカード機に通してパラレル短繊維ウェブを準備する工程、
スパンボンド不織布ロールを繰り出し、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように、スパンボンド不織布の片面にパラレル短繊維ウェブを重ねて積層ウェブを得る工程、
積層ウェブに高圧水流を噴射して、積層ウェブを交絡させる工程を含む化粧料含浸用基布の製造方法を要旨とするものである。
【0008】
本発明は、化粧料を含浸するための基布の製造方法であり、当該基布は、スパンボンド不織布の機械方向とパラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように積層された積層ウェブにより構成される。
【0009】
本発明で用いるスパンボンド不織布は、ポリオレフィン繊維やポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の連続繊維で構成される。ポリオレフィン繊維は、屈曲性が良好で、柔軟性に優れるため好ましい。また、芯部がポリプロピレン、鞘部がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維もまた柔軟性の観点から好ましい。また、芯部がポリエステル、鞘部がポリエチレンからなる芯鞘複合繊維は、機械的強度を有し、かつ柔軟性も備えるため好ましい。
【0010】
連続繊維の単繊維繊度は、1~3デシテックスが好ましい。より好ましくは1~2デシテックスである。繊度が1デシテックス以上であることにより、実用的な強度を有するものとなり、短繊維との交絡の際に容易に切断されにくいため好ましい。繊度が3デシテックス以下であることにより、連続繊維は柔軟性が優れ、曲げに対して抵抗なく屈曲することから、短繊維との交絡性が向上し、また、基布の柔軟性も良好となる。
【0011】
スパンボンド不織布の目付は、7~25g/m2程度がよい。目付が7g/m2以上であることにより、化粧料含浸用基布の強度を維持し、化粧料が含浸された場合に、変形しにくいシートパックやクレンジングシートが得られる。一方、目付が25g/m2以下であることにより、基布の質量が大きくなり過ぎず、強度と柔軟性との両者を備えたシートパックやクレンジングシート等となる。
【0012】
スパンボンド不織布は、スパンボンド法により製造されたものであり、溶融紡糸された繊維群を移動式コンベアネットに捕集し、その後、連続繊維同士を接合して一体化してスパンボンド不織布となり、その後、巻芯に巻かれてスパンボンド不織布ロールとなる。本発明では、このような巻き芯に巻かれたスパンボンド不織布ロールを準備する。
【0013】
スパンボンド不織布は、連続繊維同士を接合する手段として、熱エンボス加工により、繊維同士が部分的に熱圧接されることにより一体化したものを好ましく用いる。部分的に熱圧接されることにより、柔軟性を有するとともに、機械的強度と寸法安定性を備えたものとなり、化粧料が含浸されたシートパックやクレンジングシートや制汗シートを袋から引っぱり出した際や、また、畳まれた状態のシートパック等を広げる際に、目付が小さくとも、変形しにくく寸法を維持したものとなり好ましい。また、スパンボンド不織布は、溶融紡糸された繊維群を移動式コンベアネットに捕集するため、連続繊維の軸方向が、ほぼ機械方向となるように配列して、堆積され捕集される。したがって、得られるスパンボンド不織布は、連続繊維の繊維軸方向がほぼ機械方向になるように配列しているため、機械方向の強度に優れるとともに、しなやかで柔軟性が高い。
【0014】
スパンボンド不織布の片面には、パラレル短繊維ウェブを積層する。パラレル短繊維ウェブは、セルロース短繊維と熱可塑性複合短繊維とが混合したウェブである。
【0015】
混合ウェブを作成するにあたり、セルロース短繊維群と熱可塑性複合短繊維群とを所定量混合し、混合した短繊維群をパラレルカード機に通して、両者が混合してなるパラレル短繊維ウェブを得る。
【0016】
セルロース短繊維群中には、木綿繊維が含まれており、セルロース短繊維群中に含まれる木綿繊維は50質量%以上とする。木綿繊維は天然繊維であり、肌への刺激が少なく、吸液性に優れるため、良好に化粧料を保持することができるため好ましい。セルロース短繊維群の全てが木綿繊維により構成されてもよいが、セルロース短繊維群中に、木綿繊維以外のセルロース短繊維が50質量%未満の範囲で含まれてもよい。木綿繊維以外のセルロース短繊維としては、レーヨン短繊維や溶剤紡糸セルロース短繊維が挙げられる。
【0017】
セルロース短繊維群と熱可塑性複合短繊維群とを混合するにあたり、その混合比率(質量比)は、セルロース短繊維群:熱可塑性複合短繊維群=40~70:60~30とする。熱可塑性複合短繊維の比率が60質量%を超えると、得られる基布の保液量が低下する傾向となり、また、肌当たり性にも劣る傾向となる。一方、熱可塑性複合短繊維の混合比が30質量%未満となると、熱可塑性複合短繊維が有する機能性を基布に付与しにくくなる。
【0018】
熱可塑性複合短繊維としては、鞘部がポリエチレンにより構成される芯鞘型複合短繊維がよい。芯部は、鞘部のポリエチレンよりも高融点の熱可塑性樹脂により構成されるものがよい。このような高融点熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレンやポリエステルが挙げられる。鞘部のポリエチレンは加熱することにより溶融軟化するため、基布にヒートシール性や熱成型性を付与することができる。また、鞘部がポリエチレンにより構成される芯鞘型複合短繊維は、柔軟性に優れるため、上記したように加熱処理により溶融軟化させてバインダー繊維として機能させるのではなく、加熱せず非加熱の状態のままとし、基布の柔軟性向上に寄与することもできる。
【0019】
熱可塑性複合短繊維としては、上記した芯鞘型複合短繊維に替えて、2種の重合体により構成された分割型複合短繊維を用いることも好ましい。分割型複合短繊維としては、ポリプロピレンとポリエステルとから構成される分割型複合短繊維、ポリアミドとポリエステルとから構成される分割型複合短繊維が挙げられる。また、生分解性を有する重合体同士の組合せ、例えば、ポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートとからなる分割型複合短繊維もよい。分割型複合短繊維は、交絡処理工程における高圧水流の圧力により、分割割繊し、極細繊維が発現する。分割型複合繊維の分割形状としては、2種の重合体が横断面において放射状に交互に配してなるものが好ましい。
【0020】
また、熱可塑性複合短繊維群として、上記した芯鞘型複合短繊維と分割型複合短繊維の両者を用いてもよい。
【0021】
短繊維ウェブを構成する短繊維の繊維長は、20~55mm程度がよい。また、単繊維繊度は、肌触り性を考慮すると、細繊度であることが好ましく、2.5デシテックス以下が好ましく、より好ましくは2.0デシテックス以下である。単繊維繊度の下限は、0.1デシテックス程度でよい。また、2.5デシテックス以下であることにより、繊維が屈曲しやすく、スパンボンド不織布と交絡一体化の際に、連続繊維に絡み付きやすいため好ましく、また、肌当たりが優しいため好ましい。
【0022】
短繊維ウェブの目付は、15~55g/m2が好ましい。短繊維ウェブは、セルロース短繊維が40~70質量%含まれるため、吸液性に優れ、基布に含浸させる化粧料を良好に吸液するとともに、吸液した化粧料を良好に保持する役割も担う。目付が上記の範囲内であると、良好に吸液し、保持することができる。目付が15g/m2未満であると、化粧料を十分に保持しにくい傾向となり、一方、55g/m2を超えると、化粧料を多量に吸液してしまい、例えば、シートパックの場合には、使用者が顔面等に貼り付けた際に、重く感じる場合がある。短繊維ウェブは、スパンボンド不織布の少なくとも片面に積層されるが、両面に積層する場合においては、両方の面に積層する短繊維ウェブの合計目付が15~55g/m2であることが好ましい。
【0023】
スパンボンド不織布の片面に積層する短繊維ウェブは、パラレルカード機により作成したパラレル短繊維ウェブである。一般に、短繊維ウェブを作成する方法としては、繊維の方向性として、ウェブの機械方向に繊維の軸方向が配列するパラレルウェブ、また、パラレルウェブを機械方向と直行する方向が繊維方向となるように反転させて堆積させ、繊維の軸方向が機械方向と直行する方向に配列してなるクロスウェブ、気流による遠心力によって繊維を搬送して繊維の方向性が一定ではなく個々の繊維がランダムな方向を向いて堆積してなるランダムウェブが挙げられる。また、ランダムウェブと同じく、繊維の方向性が一定ではなくランダムな方向に堆積したエアレイウェブも挙げられる。本発明においては、前記したウェブのうち、繊維の配向方向が機械方向であり、繊維配向が一方向であるパラレルウェブを採用することにより、肌触りが良好な化粧料含浸用基布が得られる。なお、パラレルウェブは繊維の配向方向が機械方向であるため、機械方向(MD方向)とこれに直交する方向(CD方向)との強度比が大きく、強度のバランスが悪いため、このような短繊維のみからなるパラレルウェブのみを用いて、水流交絡処理を施したり、交絡処理後の乾燥処理、また基布を特定の形状に裁断する際やシートパックとして特定の形状に打ち抜きする際の処理工程等において、CD方向の強度が小さいために幅入りし、機械方向に伸びてしまい、処理工程での加工性に問題が生じるが、本発明においては、このようなパラレルウェブとスパンボンド不織布とを積層して一体化するため、寸法安定性に優れ、工程での幅入りが生じにくく、取り扱い性が良好な基布となる。
【0024】
本発明は、上記した連続繊維から構成されるスパンボンド不織布が巻芯に巻かれたスパンボンド不織布ロールを準備し、また、一方で、上記した混合短繊維ウェブであって、パラレルカード機により作成されたパラレル短繊維ウェブを準備し、スパンボンド不織布ロールを繰り出し、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように、スパンボンド不織布の片面にパラレル短繊維ウェブを重ねて積層ウェブを得、この積層ウェブに高圧水流を噴射して、水流交絡処理を施す。積層ウェブは、スパンボンド不織布を構成する連続繊維も機械方向に配向し、また、短繊維ウェブを構成する短繊維も機械方向に配向し、両者ともに機械方向に配向していることから、噴射される高圧水流によって配向状態をほぼ維持したまま短繊維ウェブ同士交絡するとともに、短繊維が連続繊維に絡み、積層ウェブは、交絡一体化する。連続繊維および短繊維はともにほぼ機械方向に配向し、構成繊維が同じ方向に配向していることにより、柔軟性が良好で、肌触りが良く、地合いの良好な化粧料含浸用基布を得ることができる。また、スパンボンド不織布が積層されることにより、実用的な強度を有し、幅入りしにくく、寸法安定性に優れ、加工性が良好となり、化粧料を含ませてシートパックやクレンジングシートとした際に、袋から取り出した際に伸びや変形が生じにくい。また、短繊維ウェブは、構成繊維同士が水流交絡処理により交絡一体化しているため、シートパック、クレンジングシートや制汗シートとして化粧料を含ませた際に、セルロース短繊維自体が化粧料を吸液するとともに、交絡により形成される繊維間空隙内に良好に化粧料を保持することができる。
【0025】
スパンボンド不織布に短繊維ウェブを積層する際、スパンボンド不織布の片面に上記したパラレル短繊維ウェブを積層した2層構造のものであるが、さらに、スパンボンド不織布の他方の面に短繊維ウェブが積層され、スパンボンド不織布の両面に短繊維ウェブを積層した3層構造のものであってもよい。3層構造の場合に、他方の面に積層する短繊維ウェブもまたパラレル短繊維ウェブの場合は、柔軟性が良好なものとなる。また、他方の面に積層する短繊維ウェブが、パラレル短繊維ウェブではなく、ランダムウェブやクロスウェブを採用する場合には、柔軟性の観点から、片面に積層するパラレルウェブの目付と同程度や同等もしくはそれよりも小さい目付のものを採用するとよい。
【0026】
本発明においては、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように、スパンボンド不織布の片面にパラレル短繊維ウェブを重ねて積層ウェブを得、この積層ウェブに高圧水流を噴射して、水流交絡処理を施す。水流交絡処理における高圧水流は、例えば、1~10MPaの圧力の水流を積層ウェブに衝突させることにより行う。まず、1~3MPa程度の高圧水流で予備交絡を行い、次いで4~10MPaの圧力の水流で本交絡を行うと、地合いの良好なものが得られる。また、水流の圧力が10MPaを超えると、スパンボンド不織布と短繊維ウェブとの交絡が強くなりすぎて、やや柔軟性に劣る傾向となる。
【0027】
水流交絡処理を施して得られる積層体には、高圧水流処理により水が含有されているので、この水を脱水乾燥工程を経て除去し、化粧料含浸用基布を得る。脱水乾燥工程は従来公知の方法が採用され、例えば、積層体をマングル等で搾液した後、乾燥機を通すことにより行われる。
【0028】
化粧料含浸用基布は、スパンボンド不織布と短繊維ウェブとが積層されてなり、短繊維同士が絡むとともに、短繊維がスパンボンド不織布に絡むことにより一体化してなる。なお、スパンボンド不織布に絡みついた一部の短繊維が、スパンボンド不織布表面に存在することもある。
【0029】
基布の目付は、25~65g/m2の範囲がよい。25g/m2以上であることによって適度な強度を有するとともに、化粧料を良好に保持することができる。一方、65g/m2以下であることによって、化粧料を含んだシートパック自体やクレンジングシート自体の質量が大きくなり過ぎず、取り扱いが良好となる。
【0030】
本発明において、化粧料含浸用基布が白以外の色の着色がなされていることも好ましい。化粧料含浸用基布は、いわゆる清潔感のイメージである白色を呈するものが一般的であるが、白以外の色の着色がなされることによって清潔感以外の美観性等の意匠性を付与することができる。また、着色の色相に応じて、種々のイメージを持たせることもできる。
【0031】
色相としては、青色、淡い水色、紫色、緑色、緋色、黄色、桃色等が挙げられる。青色や水色については、清潔感や清涼感を有するとともに、落ち着いた気分となりやすく、緑色、緋色、黄色については、使用者は、エネルギーが与えられる気分となりやすく、紫や桃色については、使用者は、華やかな気分となりやすい。得られた基布を用いて、シートパック等とした際に、そのシートパック等を収納する袋等の収納体においても、基布と同様の着色を呈したものとすることにより、より意匠性や統一感を持たせることもできる。また、基布に含浸させる化粧料の効能やイメージ等に応じて、基布に付与する色を選択することも好ましい。
【0032】
化粧料含浸用基布に着色する方法としては、得られた基布を所望の色に染色してもよい。また、化粧料含浸用基布を構成するスパンボンド不織布として、染色により着色されたスパンボンド不織布や、不織布を構成する繊維が、白色以外の色を呈する顔料を含有する原着のスパンボンド不織布を用いることも好ましい。着色されたスパンボンド不織布を用いる場合、スパンボンド不織布の色相を発揮させるために、短繊維ウェブを構成するセルロース短繊維および熱可塑性複合短繊維はいずれも無着色であるか、白色顔料を含む熱可塑性複合短繊維を用いるとよい。また、スパンボンド不織布の色相をより発揮させるために、熱可塑性複合短繊維がスパンボンド不織布と同系色の顔料を含む原着短繊維、同系色の染料で染色されたセルロース短繊維、同系色の染料で染色された熱可塑性複合短繊維であることもよい。
【0033】
得られた化粧料含浸用基布は、例えば、打ち抜き加工処理等によって、顔の全部または一部を覆う形状、首、首と胸元を覆う形状等の所望の形状の基布とし、ローション等の化粧液、美容液、乳液等の化粧料を含ませてシートパックとする。化粧料を含ませたシートパックは適宜折り畳み、袋等に収納するとよい。本発明の基布により得られるシートパックは、寸法安定性が良好であるため、袋から取り出す際に伸びにくく、また肌ざわりが非常に良好である。
【0034】
また、得られた化粧料含浸用基布は、例えば、適宜の大きさに裁断し、化粧メイク落とし用のクレンジングローションやクレンジング乳液等の化粧料を含ませて、クレンジングシートとする。クレンジングシートは、適宜折り畳み、また複数枚の折り畳まれたクレンジングシートを収納体に収納するとよく、複数枚収納する際には、クレンジングシートの一部がこれに積層される他のクレンジングシートの折り畳み部に挟まれるように組み合わせて、順次取り出し可能とするとよい。本発明の基布により得られるクレンジングシートは、寸法安定性が良好であるため、袋から取り出す際に伸びにくく、順次取り出し可能な形態としても変形しにくく、また肌ざわりが非常に良好である。
【0035】
また、得られた化粧料含浸用基布は、例えば、適宜の大きさに裁断し、制汗シート用のローション等の化粧料を含ませて、制汗シートとする。制汗シートは、適宜折り畳み、また複数枚の折り畳まれた制汗シートを収納体に収納するとよく、複数枚収納する際には、制汗シートの一部がこれに積層される他の制汗シートの折り畳み部に挟まれるように組み合わせて、順次取り出し可能とするとよい。本発明の基布により得られる制汗シートは、寸法安定性が良好であるため、袋から取り出す際に伸びにくく、順次取り出し可能な形態としても変形しにくく、また肌ざわりが非常に良好である。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、地合いが良好で、肌触りがよく、また、寸法安定性が良好で、加工性に優れる化粧料含浸用基布を提供することができる。
【実施例0037】
実施例1
[スパンボンド不織布の準備]
スパンボンド法によって得られたスパンボンド不織布であって、紫色が発色するように調合された顔料を含有する原着ポリプロピレン連続繊維からなり、熱エンボス加工が施されたスパンボンド不織布(目付20g/m2、連続繊維の単繊維繊度2.2デシテックス)が巻芯に巻かれたスパンボンド不織布ロール(前田工繊株式会社製 品番SP-1020E-PLV)を準備した。
[パラレル短繊維ウェブの準備]
平均繊維長25mmの木綿繊維群と、単繊維繊度2.2デシテックス、繊維長38mmの鞘部がポリエチレン、芯部がポリエチレンテレフタレートにより構成される芯鞘型複合短繊維群とを、木綿繊維群:芯鞘型複合短繊維群=50:50(質量比)で混合し、パラレルカード機で開繊及び集積して、目付25g/m2の木綿繊維と芯鞘型複合繊維とが混合してなるパラレル短繊維ウェブを準備した。
[化粧料含浸用基布]
上記準備したスパンボンド不織布ロールを繰り出して、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように、スパンボンド不織布の上にパラレル短繊維ウェブを重ねて積層した積層ウェブを、90メッシュの織物からなる支持体に載置して、高圧水流噴出装置(孔径0.12mmの噴出孔が孔間隔0.6mmで横一列に配置されてなる装置)に通し、短繊維ウェブ側から2MPaの噴出圧力で高圧水流を施し、次いで3MPaの噴出圧力で高圧水流を施した。この後、積層ウェブを反転させて、スパンボンド不織布側から5MPaの噴射圧力を2回高圧水流を施し、さらに反転して短繊維ウエブ側から5MPaの噴射圧力を2回を施し、交絡一体化させた積層体とした。その後、135℃で120秒加熱し、積層体に含まれる水分を蒸発させ、基布を得た。
【0038】
実施例2
[スパンボンド不織布の準備]
実施例1で準備したスパンボンド不織布ロールを準備した。
[パラレル短繊維ウェブの準備]
平均繊維長25mmの木綿繊維群と、単繊維繊度2.2デシテックス、繊維長38mmの鞘部がポリエチレン、芯部がポリエチレンテレフタレートにより構成される芯鞘型複合短繊維群とを、木綿繊維群:芯鞘型複合短繊維群=50:50(質量比)で混合し、パラレルカード機で開繊及び集積し、目付18g/m2の木綿繊維と芯鞘型複合繊維とが混合してなるパラレル短繊維ウェブを準備した。
[ランダム短繊維ウェブの準備]
平均繊維長25mmの木綿繊維群と、単繊維繊度2.2デシテックス、繊維長38mmの鞘部がポリエチレン、芯部がポリエチレンテレフタレートにより構成される芯鞘型複合短繊維群とを、木綿繊維群:芯鞘型複合短繊維群=50:50(質量比)で混合し、ランダムカート機で開繊及び集積し、目付17g/m2の木綿繊維と芯鞘型複合繊維とが混合してなるランダム短繊維ウェブを準備した。
[化粧料含浸用基布]
上記準備したランダム短繊維ウェブ上に、スパンボンド不織布ロールを繰り出して積層し、スパンボンド不織布の上に、スパンボンド不織布の機械方向と、パラレル短繊維ウェブの機械方向とが一致するように積層した。得られた3層積層の積層ウェブを、90メッシュの織物からなる支持体に載置して、高圧水流噴出装置(孔径0.12mmの噴出孔が孔間隔0.6mmで横一列に配置されてなる装置)に通し、パラレル短繊維ウェブ側から2MPaの噴出圧力で高圧水流を施し、次いで3MPaの噴出圧力で高圧水流を施した。
【0039】
この後、積層ウェブを反転させて、ランダム短繊維ウェブ側から5MPaの噴射圧力と9MPaの噴射圧力を施し1回高圧水流を施し、さらに反転してパラレル短繊維ウエブ側から5MPaの噴射圧力と9MPaの噴射圧力を施し、交絡一体化させた積層体とした。その後、135℃で120秒加熱し、積層体に含まれる水分を蒸発させ、基布を得た。
【0040】
比較例1
[パラレル短繊維ウェブの準備]
平均繊維長25mmの木綿繊維群と、単繊維繊度2.2デシテックス、繊維長38mmの鞘部がポリエチレン、芯部がポリエチレンテレフタレートにより構成される芯鞘型複合短繊維群とを、木綿繊維群:芯鞘型複合短繊維群=50:50(質量比)で混合し、パラレルカード機で開繊及び集積し、目付20g/m2の木綿繊維と芯鞘型複合繊維とが混合してなるパラレル短繊維ウェブを準備した。
[ランダム短繊維ウェブの準備]
平均繊維長25mmの木綿繊維群と、単繊維繊度2.2デシテックス、繊維長38mmの鞘部がポリエチレン、芯部がポリエチレンテレフタレートにより構成される芯鞘型複合短繊維群とを、木綿繊維群:芯鞘型複合短繊維群=50:50(質量比)で混合し、ランダムカード機で開繊及び集積し、目付35g/m2の木綿繊維と芯鞘型複合繊維とが混合してなるからなるランダム短繊維ウェブを準備した。
[化粧料含浸用基布]
上記準備したパラレル短繊維ウェブとランダム短繊維ウェブを積層し、得られた2層積層の積層ウェブを、90メッシュの織物からなる支持体に載置して、高圧水流噴出装置(孔径0.12mmの噴出孔が孔間隔0.6mmで横一列に配置されてなる装置)に通し、パラレル短繊維ウェブ側から2MPaの噴出圧力で高圧水流を施し、次いで7MPaの噴出圧力で高圧水流を施した。この後、積層ウェブを反転させて、ランダム短繊維ウェブ側から7MPaの噴射圧力で2回高圧水流を施し、さらに反転してパラレル短繊維ウエブ側から7MPaの噴射圧力を2回施し、交絡一体化させた積層体とした。その後、135℃で120秒加熱し、積層体に含まれる水分を蒸発させ、基布を得た。
【0041】
得られた実施例1、2、比較例1の基布について、下記物性を測定し、その結果を表1に示す。
(1)目付(g/m2):標準状態の試料から試験片(縦10cm×横10cm)10点を作成し、各試料片の質量を秤量し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し目付とした。
(2)引張強力(N/50mm幅):JIS L-1913)に記載のストリップ法に準じ、巾50mm×長さ300mmの試験片を用いて、つかみ間隔100mm、引張速度100mm/分として、5%伸長時応力、10%伸長時応力、最大引張強力を測定した。試験片は、MD方向、CD方向、MD方向に対して45°斜め方向それぞれ5点作成し、その平均値をそれぞれの応力および引張強力とした。
また、測定においては、標準状態(ドライ状態)と湿潤状態(ウェット状態)のいずれの状態の試験片を準備した。湿潤状態の試験片は、所定の大きさの試験片に、その試験片の自重の3.5倍の質量の水道水を含ませた湿潤状態の試験片を作成し、この湿潤状態の試験片について応力および引張強力を測定した。
(3)保水量(g):巾150mmx長さ150mmの試験片を3点作成し、水道水をバットにいれ、その中に試験片を5分間浸漬し、その後3分間吊るして、試験片が含んだ余剰水分を自然落下させた後、その水道水を含む試験片の質量を測定し、浸漬前の試験片の質量との差(水道水を含むことにより増加した質量)を求め、増加した質量(保水量)によって試験片の保液性を評価した。
【0042】
【0043】
比較例1に比べ、実施例1および実施例2は、液体を含浸状態である湿潤状態において、MD方向、CD方向、45°方向のいずれにおいても、5%および10%伸長時応力が高いものであった。よって、化粧料を保液した基布において、袋等のパッケージに収納された状態から、引き出して使用するにあたり、変形しにくく、取り出しやすい安定して形状を維持しうる基布であることがわかる。