IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026273
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20250214BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20250214BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250214BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20250214BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250214BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/04
C08K3/36
C08L7/00
B60C1/00 Z
B09B5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025959
(22)【出願日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2023131510
(32)【優先日】2023-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 智江
【テーマコード(参考)】
3D131
4D004
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA15
3D131AA32
3D131AA33
3D131AA39
3D131AA45
3D131AA46
3D131BA02
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA08
3D131BB01
3D131BC01
3D131BC02
3D131BC08
3D131BC09
3D131BC39
3D131DA52
3D131LA26
4D004AA11
4D004AC04
4D004BA06
4D004CA24
4J002AC001
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC041
4J002AC051
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AC111
4J002BB181
4J002DA036
4J002DJ017
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD140
4J002FD150
4J002GL00
4J002GM00
4J002GM01
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】低発熱性に優れる上、サステナビリティの向上に寄与し得るゴム組成物を提供する。
【解決手段】ゴム成分(A)と、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が30~110m/gであるカーボンブラック(B)と、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が200m/g以上であるシリカ(C)とを含有し、前記カーボンブラック(B)が、再生カーボンブラックを含み、前記カーボンブラック(B)及び前記シリカ(C)の合計含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して30~80質量部であり、前記カーボンブラック(B)及び前記シリカ(C)の合計に占める前記カーボンブラック(B)の割合が、65質量%以上90質量%以下である、ことを特徴とする、ゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分(A)と、
セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が30~110m/gであるカーボンブラック(B)と、
セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が200m/g以上であるシリカ(C)とを含有し、
前記カーボンブラック(B)が、再生カーボンブラックを含み、
前記カーボンブラック(B)及び前記シリカ(C)の合計含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して30~80質量部であり、
前記カーボンブラック(B)及び前記シリカ(C)の合計に占める前記カーボンブラック(B)の割合が、65質量%以上90質量%以下である、ことを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項2】
前記再生カーボンブラックが、カーボンブラックを含む加硫ゴム製品の熱分解によって得られたものである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記再生カーボンブラックは、灰分量が20質量%以下である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラック(B)における前記再生カーボンブラックの割合が50質量%以上である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分(A)が天然ゴムを含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記シリカ(C)のセチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が210m/g以上である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー、省資源の社会的要請の下、自動車の燃料消費量を節約するため、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。このような要求に対し、タイヤの転がり抵抗を減少させる手法としては、カーボンブラックの使用量を低減させたり、低級カーボンブラックを使用する等により、ヒステリシスロスを低下させたゴム組成物、すなわち発熱性の低いゴム組成物を、タイヤ部材、特にトレッドゴムに用いる方法が知られている。
【0003】
また、所定の性能を保持しつつ低発熱性を達成するために、ゴム組成物にカーボンブラック及びシリカを併用することが、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-249359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、カーボンブラック及びシリカを併用しつつ、所定の構造を有する共役ジエン系重合体を用いることによって発熱性を低減するものである。これに対し、カーボンブラック及びシリカそのものの適正化を図って低発熱性を達成することの要求がある。
【0006】
一方、昨今、社会の持続可能性(サステナビリティ)の観点から、タイヤに使用される各種部材についても、生物資源(バイオマス資源)由来の材料や、再生資源(リサイクル資源)由来の材料といった、所謂、サステナブル材料を使用することが求められており、タイヤ部材用のゴム組成物についても、サステナブル材料の使用率(以下、「サステナブル率」と呼ぶことがある。)の向上が求められている。
【0007】
しかしながら、タイヤのサステナブル率を向上させるために、上述したような従来のタイヤ部材用のゴム組成物について、現在使用されている化石資源由来の材料を単にサステナブル材料へ置き換えただけでは、低発熱性が悪化する虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、低発熱性に優れる上、サステナビリティの向上に寄与し得るゴム組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかるゴム組成物を用いた、低発熱性に優れる上、サステナビリティの向上に寄与し得るタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、上記課題を解決する本発明のゴム組成物及びタイヤの要旨構成は、以下の通りである。
【0010】
[1] ゴム成分(A)と、
セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が30~110m/gであるカーボンブラック(B)と、
セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が200m/g以上であるシリカ(C)とを含有し、
前記カーボンブラック(B)が、再生カーボンブラックを含み、
前記カーボンブラック(B)及び前記シリカ(C)の合計含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して30~80質量部であり、
前記カーボンブラック(B)及び前記シリカ(C)の合計に占める前記カーボンブラック(B)の割合が、65質量%以上90質量%以下である、ことを特徴とする、ゴム組成物。
かかる本発明のゴム組成物は、低発熱性に優れる上、サステナビリティの向上に寄与し得る。
【0011】
[2] 前記再生カーボンブラックが、カーボンブラックを含む加硫ゴム製品の熱分解によって得られたものである、[1]に記載のゴム組成物。
この場合、使用済みゴム製品を有効に活用することができ、環境負荷低減に一層貢献することができる。
【0012】
[3] 前記再生カーボンブラックは、灰分量が20質量%以下である、[1]又は[2]に記載のゴム組成物。
この場合、タイヤ等のゴム製品に要求される諸物性、再生カーボンブラックの品質が向上する。
【0013】
[4] 前記カーボンブラック(B)における前記再生カーボンブラックの割合が50質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のゴム組成物。
この場合、サステナビリティの向上に一層寄与し得る上、低発熱性をより向上させることができる。
【0014】
[5] 前記ゴム成分(A)が天然ゴムを含む、[1]~[4]のいずれかに記載のゴム組成物。
この場合、低発熱性に加えて、耐破壊性や耐亀裂性等の諸特性を向上させることができる。
【0015】
[6] 前記シリカ(C)のセチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が210m/g以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のゴム組成物。
この場合、架橋ゴム(ゴム組成物)及びタイヤ等のゴム製品の耐破壊性及び耐亀裂性等の耐久性をより向上させることができる。
【0016】
[7] [1]~[6]のいずれかに記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
かかる本発明のタイヤは、低発熱性に優れる上、サステナビリティの向上に寄与し得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低発熱性に優れる上、サステナビリティの向上に寄与し得るゴム組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、かかるゴム組成物を用いた、低発熱性に優れる上、サステナビリティの向上に寄与し得るタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明のゴム組成物及びタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0019】
<定義>
本明細書に記載されている化合物は、部分的に、又は全てが化石資源由来であってもよく、植物資源等の生物資源由来であってもよく、使用済タイヤ等の再生資源由来であってもよい。また、化石資源、生物資源、再生資源のいずれか2つ以上の混合物由来であってもよい。
【0020】
本明細書において、「サステナブル率」とは、対象とする材料中の、生物資源(バイオマス資源)由来の成分と、再生資源(リサイクル資源)由来の成分と、の総質量割合である。
【0021】
本明細書において、前記生物資源(バイオマス資源)とは、生物由来のカーボンニュートラルな有機資源を指し、例えば、デンプンやセルロース等の形で蓄えられたもの、植物を食べて成育する動物の体や、植物や動物を加工して得た製品等が包含され、化石資源(石油、石炭、天然ガス等)を除く資源である。該生物資源は、可食であってもよいし、非可食であってもよいが、食料と競合せず、また、資源の有効利用の観点からは、非可食であることが好ましい。
【0022】
前記生物資源の具体例としては、例えば、セルロース系作物(パルプ、ケナフ、麦藁、稲藁、古紙、製紙残渣等)、木材、木炭、堆肥、生ゴミ、植物油カス、水産物残渣、家畜排泄物、食品廃棄物、排水汚泥、天然ゴム、綿花、油脂(パーム油、ヒマシ油、綿実油、大豆油、アマニ油、菜種油、ヤシ油、落花生油、トール油、コーン油、コメ油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、向日葵油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油、ココナッツ油等)、炭水化物系作物(トウモロコシ、小麦、米、籾殻、米ぬか、古米、イモ類、そば、キャッサバ、サゴヤシ、サトウキビ等)、バガス(即ち、サトウキビの搾汁後の残渣)、大豆、おから、精油(松根油、オレンジ油、ユーカリ油等)、パルプ黒液、藻類等が挙げられる。前記生物資源としては、これらを処理したもの(即ち、生物資源由来物質)を利用することもできる。処理方法としては、例えば、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体等の働きを利用した生物学的処理方法;酸、アルカリ、触媒、熱エネルギー、光エネルギー等を利用した化学的処理方法;微細化、圧縮、マイクロ波処理、電磁波処理等の物理的処理方法;等が挙げられる。また、前記生物資源としては、前記生物資源や前記処理を行った生物資源から、抽出、精製したもの(即ち、生物資源由来物質)を利用することもできる。例えば、前記生物資源から精製した糖類、タンパク質、アミノ酸、脂肪酸、脂肪酸エステル等を利用することもできる。前記糖類としては、生物資源由来の、スクロース、グルコース、トレハロース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アロース、タロース、グロース、アルトロース、マンノース、イドース、アラビノース、アピオース、マルトース、セルロース、デンプン、キチン等が挙げられる。前記タンパク質としては、生物資源由来で、アミノ酸(好ましくはL-アミノ酸)が連結してできた化合物が挙げられ、ジペプチド等のオリゴペプチドも包含される。前記アミノ酸としては、生物資源由来の、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、リジン、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン等が挙げられ、これらの中でも、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、フェニルアラニンが好ましい。該アミノ酸は、L-アミノ酸でも、D-アミノ酸でもよいが、天然における存在量が多く、入手容易性の観点から、L-アミノ酸が好ましい。前記脂肪酸としては、生物資源由来の、酪酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。前記脂肪酸エステルとしては、植物油、動物油、生物資源由来の油脂の改質物等が挙げられる。これら生物資源には、種々の材料、不純物が混入していてもよい。
【0023】
本明細書において、前記再生資源(リサイクル資源)とは、一度使用され、又は使用されずに収集され、若しくは廃棄された製品を再生(リサイクル)して得た資源を指す。例えば、再生資源としては、使用済タイヤ等の使用済ゴム製品を再生(リサイクル)して得た資源等が挙げられる。
【0024】
<ゴム組成物>
本発明の一実施形態のゴム組成物(以下、「本実施形態のゴム組成物」と称することがある)は、ゴム成分(A)と、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が30~110m/gであるカーボンブラック(B)と、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が200m/g以上であるシリカ(C)とを含有し、前記カーボンブラック(B)が、再生カーボンブラックを含み、前記カーボンブラック(B)及び前記シリカ(C)の合計含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して30~80質量部であり、前記カーボンブラック(B)及び前記シリカ(C)の合計に占める前記カーボンブラック(B)の割合が、65質量%以上90質量%以下である、ゴム組成物である。
【0025】
なお、以下、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積を、「CTAB比表面積」又は、単に「CTAB」と称することがある。
【0026】
加硫ゴムの発熱は、一般に、加硫ゴムに含まれるカーボンブラック、シリカ等の充填剤が、ゴム中で擦れ合うことにより生じ、従って、シリカが凝集し易い環境では、低発熱性が悪化する傾向にある。これに対し、本発明では、ゴム組成物中のカーボンブラック(B)及びシリカ(C)の比表面積及び配合組成を上記の通りに適正化することで、微粒径であるシリカ(C)が、カーボンブラック(B)同士の隙間に入り、粒子同士の凝集には影響を与えず、低発熱性の状態を維持することができる。
【0027】
更に、上述の通り、本発明では、上記所定の比表面積を有するカーボンブラック(B)として、再生カーボンブラックを用いる。この点に関し、今回驚くべきことに、ヴァージンカーボンブラック(植物由来のカーボンブラック等)を再生カーボンブラックに置き換えると、低発熱性が向上する傾向にあることが見出された。
従って、本実施形態のゴム組成物によれば、サステナビリティの向上に寄与し得るとともに、低発熱性を優れたものとすることができる。
【0028】
(ゴム成分(A))
本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分(A)を含有し、該ゴム成分(A)が、組成物にゴム弾性をもたらす。該ゴム成分(A)は、サステナブル率が30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることがより一層好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0029】
前記ゴム成分(A)としては、生物資源由来のゴム、及び再生資源由来のゴムが好ましい。
ここで、前記生物資源由来のゴムを構成するモノマー成分100mol%中の生物資源由来のモノマー成分の割合は、50mol%以上が好ましく、70mol%以上がより好ましく、80mol%以上が更に好ましく、90mol%以上がより一層好ましく、95mol%以上が特に好ましく、100mol%であってもよい。
また、前記再生資源由来のゴムを構成するモノマー成分100mol%中の再生資源由来のモノマー成分の割合は、50mol%以上が好ましく、70mol%以上がより好ましく、80mol%以上が更に好ましく、90mol%以上がより一層好ましく、95mol%以上が特に好ましく、100mol%であってもよい。
【0030】
前記ゴム成分(A)は、架橋に寄与する成分であり、通常、重量平均分子量(Mw)が1万以上であり、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは500万以下、より好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは130万以下である。
なお、本明細書において、ゴム成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0031】
前記ゴム成分(A)としては、ジエン系ゴムが好ましく、また、該ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、及びブタジエン系ゴムが好ましい。ここで、イソプレン系ゴムとは、モノマー単位としてイソプレン由来の単位を含むゴムを指し、また、ブタジエン系ゴムとは、モノマー単位としてブタジエン由来の単位を含むゴムを指す。
【0032】
前記イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、改質天然ゴム(改質NR)、変性天然ゴム(変性NR)、変性合成イソプレンゴム(変性IR)等が挙げられる。天然ゴム(NR)としては、例えば、RSS#3、TSR20(例えば、SIR20やSTR20)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。天然ゴム(NR)の起源は、特に限定されず、例えば、パラゴムノキ由来、グアユール由来、ロシアタンポポ由来のもの等が挙げられる。合成イソプレンゴム(IR)としては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等が挙げられる。変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等が挙げられる。変性IRとしては、エポキシ化合成イソプレンゴム、水素添加合成イソプレンゴム、グラフト化合成イソプレンゴム等が挙げられる。これらイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、イソプレン系ゴムとしては、NRが好ましい。
【0033】
前記イソプレン系ゴムは、サステナブル率が30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることがより一層好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
前記イソプレン系ゴムのサステナブル率を前記範囲内とするためには、天然ゴム(NR)を使用したり、生物資源由来のイソプレンや再生資源由来のイソプレンをモノマー成分として合成されたポリマーを使用することが好ましい。この際、合成されたポリマーは、生物資源由来のモノマーの単独重合体であってもよいし、再生資源由来のモノマーの単独重合体であってもよいし、生物資源由来のモノマーと再生資源由来のモノマーとの共重合体であってもよいし、生物資源由来のモノマー及び/又は再生資源由来のモノマーと化石資源(石油等)由来のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0034】
上記ゴム成分(A)は、天然ゴムを含むことが好ましい。ゴム成分(A)が天然ゴムを含むことで、低発熱性に加えて、耐破壊性や耐亀裂性等の諸特性を向上させることができる。また、ゴム成分(A)が天然ゴムを含むことで、サステナブル率を向上させることができる。
【0035】
ゴム成分(A)中の天然ゴムの割合は、耐破壊性及び耐亀裂性をより向上させる観点から、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。また、低発熱性をより向上させる観点から、ゴム成分(A)中の天然ゴムの割合は、95質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。
【0036】
前記ブタジエン系ゴムとしては、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴム(例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR))等が挙げられる。ここで、ブタジエン系ゴムの原料となるブタジエンは、生物資源由来又は再生資源由来であることが好ましい。
【0037】
前記ゴム成分(A)は、ブタジエンゴム(BR)を含むことが好ましい。ブタジエンゴムは、ゴム組成物の切断時伸び(EB)等の物性を向上させることができる。
また、前記ゴム成分(A)は、ブタジエンゴム(BR)に加えて、更に天然ゴム(NR)を含むことが特に好ましい。ゴム成分(A)として、天然ゴムとブタジエンゴムとを併用することで、ゴム組成物の熱劣化後の切断時伸び(EB)を更に向上させることができる。
【0038】
本実施形態のゴム組成物においては、前記ゴム成分(A)中の総スチレン量が、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、また、0質量%であってもよい。ゴム成分(A)中の総スチレン量が5質量%以下であれば、ゴム組成物の物性が保持され、熱劣化後の切断時伸び(EB)を十分に向上させることができる。
【0039】
前記ブタジエンゴム(BR)としては、例えば、高シス含量のブタジエンゴム、低シス含量のブタジエンゴム、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するブタジエンゴム等が挙げられる。前記ブタジエンゴム(BR)としては、市販品を利用することができ、該ブタジエンゴムの市販品としては、UBEエラストマー(株)、株式会社ENEOSマテリアルズ、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品が挙げられる。これらブタジエンゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
前記芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴム(例えば、SBR)としては、例えば、乳化重合芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴム(例えば、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(E-SBR))、溶液重合芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴム(例えば、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(S-SBR))等が挙げられる。前記芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴムにおいて、芳香族ビニル化合物(芳香族ビニルモノマー)としては、例えば、スチレン、ビニルナフタレン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。これら芳香族ビニル化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、スチレンが好ましく、生物資源由来のスチレン、及び再生資源由来のスチレンが特に好ましい。即ち、芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴムとしては、SBRが好ましい。なお、前記スチレンは、置換基を有していてもよい。前記芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴムとしては、市販品を利用することができ、該市販品としては、旭化成(株)、株式会社ENEOSマテリアルズ、日本ゼオン(株)、住友化学(株)等の製品が挙げられる。これら芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
前記ブタジエン系ゴムは、サステナブル率が30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることがより一層好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
前記ブタジエン系ゴムのサステナブル率を前記範囲内とするためには、例えば、生物資源由来のブタジエン、再生資源由来のブタジエン、生物資源由来の芳香族ビニル化合物(例えば、生物資源由来のスチレン)、再生資源由来の芳香族ビニル化合物(例えば、再生資源由来のスチレン)をモノマー成分として合成されたポリマーを使用すればよい。この際、合成されたポリマーは、生物資源由来のモノマーの単独重合体であってもよいし、再生資源由来のモノマーの単独重合体であってもよいし、生物資源由来のモノマーと再生資源由来のモノマーとの共重合体であってもよいし、生物資源由来のモノマー及び/又は再生資源由来のモノマーと化石資源(石油等)由来のモノマーとの共重合体であってもよい。なお、生物資源(バイオマス資源)由来のブタジエンゴム(B-BR)、生物資源由来の芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴム(例えば、生物資源(バイオマス資源)由来のスチレン-ブタジエンゴム(B-SBR))には、ブタジエン等を従来法に従って重合して得たゴムだけではなく、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体(以下、「微生物等」とも呼ぶ。)による反応や酵素反応により得られたゴムも包含される。
【0042】
また、前記ゴム成分(A)全体のサステナブル率を前記範囲内とするためには、ゴム成分(A)として、上述の通り天然ゴム(NR)を使用したり、生物資源由来のモノマー成分や再生資源由来のモノマー成分をモノマー成分として合成されたポリマーを使用することが好ましい。
【0043】
一般に、タイヤ用ゴム組成物の素材(ゴム及びそのモノマー、充填剤、樹脂等)は、その製造に大規模な製造装置を要するため、通常、特定地域の大工場で生産され、原料及び製品の保管、輸送に多くのエネルギーを要する。これに対して、生物資源(バイオマス資源)由来の素材は、各地域の農産物、森林等に由来し、また、微生物の発酵、触媒反応により小規模でも製造できるため、各地域の生産物や廃棄物を活用することで、原料の輸送及び保管に要するエネルギーを削減でき、更には製造した素材のタイヤ工場への輸送及び保管に要するエネルギーも削減でき、環境に優しい。また、再生資源(リサイクル資源)由来の素材は、例えば、使用済タイヤを解体、熱分解して、ゴム、充填剤、スチールコード等、タイヤを構成する材料を取り出すことで入手できる。その他にも、生物資源又は生物資源の処理物を脱硫して、当該生物資源又は生物資源の処理物から硫黄含有物質を取り除く脱硫工程と、該脱硫工程で発生した脱硫処理残渣から硫黄を回収する回収工程と、回収した硫黄を加硫用硫黄に加工する加工工程と、を含む方法(例えば、特願2022-140390に記載の方法)等により、生物資源又は生物資源の処理物から硫黄を得ることができ、各種廃棄物や使用済み物品からタイヤ用ゴム組成物の素材を入手することができる。このように、サステナブル材料(生物資源由来の素材や、再生資源由来の素材)を用いることで、ライフサイクル全体における二酸化炭素排出量(LCCO2)の削減、ライフサイクル全体におけるエネルギー消費量(LCE)の削減、ライフサイクル全体で発生するコスト(LCC)の削減、化石資源の使用量削減等、タイヤ製造において総合的に環境負荷を低減できる。
【0044】
また、前記ゴム組成物を製造する際の、生物資源、再生資源、化石資源(例えば、化石資源由来のモノマー成分)の供給状況及び/又は市場の要求(例えば、生物資源の食料としての需要)に応じて、生物資源由来のモノマー成分、再生資源由来のモノマー成分、及び化石資源由来のモノマー成分の比率を適宜選択して、生物資源由来のモノマー成分、再生資源由来のモノマー成分、及び化石資源由来のモノマー成分を重合することにより、従来の合成ゴムを用いた場合と同等の性能を有するサステナブル材料(生物資源由来の素材や、再生資源由来の素材)由来のゴムを得ることができる。なお、再生資源由来のモノマー成分を用いる場合は、該モノマーの製造工程上の理由から、化石資源由来のモノマー成分と分けることが困難な場合もある。その場合は、マスバランスの考え方を採用することで、環境に対する影響を評価することができる。
【0045】
前記ゴム成分(A)全体中の各モノマー単位(例えば、イソプレンに由来する単位、ブタジエンに由来する単位、芳香族ビニル化合物に由来する単位)の比率は、適用先の部材等に応じて、適宜調整することができる。該ゴム成分(A)全体中の各モノマー単位の比率は、例えば、上述のイソプレン系ゴム、ブタジエン系ゴムを適宜組み合わせることで調整できる。また、ブタジエンに由来する単位中のシス結合単位の比率についても、適用先の部材等に応じて適宜調整することができる。
なお、本明細書において、「モノマー単位」とは、ポリマーの構成単位を意味し、「イソプレンに由来する単位」とは、モノマーであるイソプレンに基づいて構成されるポリマー中の構成単位(天然ゴム中のイソプレン単位も含む)を意味し、「ブタジエンに由来する単位」とは、モノマーであるブタジエンに基づいて構成されるポリマー中の構成単位を意味し、芳香族ビニル化合物に由来する単位とは、モノマーである芳香族ビニル化合物に基づいて構成されるポリマー中の構成単位を意味する。
また、本明細書において、各モノマー単位の比率は、NMRにより測定される。
【0046】
前記ゴム成分(A)は、上述のイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴム(例えば、SBR)の他にも、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムを含んでもよい。これらゴム成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
前記ゴム成分(A)には、変性により、カーボンブラック、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基が導入されていてもよい。該官能基としては、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、シリル基、アルコキシシリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基等が挙げられ、また、これら官能基は、置換基を有していてもよい。これら官能基は、1種単独でゴム成分に導入してもよいし、2種以上を組み合わせてゴム成分に導入してもよい。これらの中でも、アミノ基、アルコキシ基、及びアルコキシシリル基が好ましく、アミノ基の水素原子が炭素数1~6のアルキル基で置換された置換アミノ基、炭素数1~6のアルコキシ基、及び炭素数1~6のアルコキシシリル基が更に好ましい。
【0048】
前記官能基は、例えば、該官能基を有する化合物(変性剤)を前記ゴム成分と反応させることで導入できる。該官能基は、シリカやカーボンブラックといった充填剤に対して相互作用性を有する変性官能基であり、例えば、含窒素官能基、含ケイ素官能基、含酸素官能基等が挙げられる。含窒素官能基を有する化合物(変性剤)としては、アミノ基含有化合物等が挙げられ、含ケイ素官能基を有する化合物(変性剤)としては、ハロゲン化ケイ素、ヒドロカルビルオキシシラン化合物等が挙げられ、含酸素官能基を有する化合物(変性剤)としては、アルコキシ基含有化合物、アルキレンオキシド基含有化合物、トリアルキルシリロキシ基含有化合物等が挙げられる。より具体的には、国際公開第2016/194316号、国際公開第2019/117256号に記載の化合物等が挙げられる。これら変性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
前記サステナブル材料(生物資源由来の素材や、再生資源由来の素材)由来のゴムは、例えば、生物資源由来のモノマー成分や、再生資源由来のモノマー成分を用い、必要に応じて、化石資源由来のモノマー成分を用いて、従来の化石資源由来の合成ゴムの製造方法と同様にして製造することができる。また、前記サステナブル材料由来のゴム(特には、生物資源由来のゴム)は、微生物等による反応や酵素反応により得ることもできる。
【0050】
上述の生物資源から生物資源由来ゴムを調製する方法については、例えば、特開2022-179158号公報に記載の方法を用いることができる。例えば、モノマー成分として生物資源から得られたブタジエンを用いることで、生物資源(バイオマス資源)由来のブタジエンゴム(B-BR)を得ることができ、また、モノマー成分として生物資源から得られたスチレンと、生物資源から得られたブタジエンを用いることで、生物資源(バイオマス資源)由来のスチレン-ブタジエンゴム(B-SBR))を得ることができる。ここで、生物資源からB-BR、B-SBRを得る方法としては、人工的に重合する方法の他、生体内で重合する方法、生物由来酵素で重合する方法等が挙げられる。得られるB-BR、B-SBRの分子量、分岐、ミクロ構造等は、目的のタイヤ性能に応じて、公知の方法に従って重合条件を変更することにより適宜調整することができる。
【0051】
前記生物資源から得られたブタジエンとしては、アルキルアルコール類(好ましくはエタノール、及びブタノール、より好ましくはブタノール)由来のブタジエン、アルケン類(好ましくはエチレン)由来のブタジエン、不飽和カルボン酸類(好ましくはチグリン酸)由来のブタジエンを好適に使用できる。また、これらのブタジエンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、前記生物資源から得られたスチレンとしては、植物(好ましくはマンサク科、エゴノキ科、キョウチクトウ科に属する植物、より好ましくはフウ属、エゴノキ属、ニチニチソウ属に属する植物、更に好ましくはモミジバフウ、エゴノキ、ニチニチソウ)により得られたスチレン、微生物(好ましくはペニシリウム属、エシェリキア属に属する微生物、より好ましくはP.citrinum、形質転換されたE.coli)により得られたスチレンを好適に使用できる。また、これらのスチレンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0052】
昨今、バイオエタノール、バイオエチレン等を中心としたバイオマスコンビナートが計画されているが、バイオエタノール及びバイオエチレンは、生物資源として、主に糖類及び/又はセルロース類を用いて製造され、タンパク質、脂質、アミノ酸等の他の生物資源を有効に活用できない。更に、糖類は、食料と競合し、セルロース類の過度の利用は、森林伐採に繋がる。そのため、種々の生物資源の供給状況の他、再生資源の供給状況、化石資源の供給状況、及び市場の要求(例えば、バイオマス資源の食料としての需要)に応じて、前記生物資源由来のモノマー成分として、生物資源由来のモノマー成分を複数種使用したり、生物資源由来のモノマー成分と再生資源由来のモノマー成分と化石資源由来のモノマー成分とを併用し、更にこれらのモノマー成分の比率を適宜調整して使用することが好ましい。これにより、1種類の生物資源に頼ることなく、糖、タンパク質、脂質等、幅広い生物資源や、再生資源を有効に活用でき、また、サステナブル材料由来のゴムを安定的に供給でき、更には、製造時の状況に応じて環境に配慮することもできる。
なお、生物資源由来のモノマー成分を複数種類使用する場合には、異なる生物資源に由来するモノマー成分、即ち、異なる生物資源から得られたモノマー成分を使用することが好ましい。具体的には、生物資源由来のブタジエンとして、由来が異なる複数種類の生物資源由来のブタジエンの混合物を使用すること、及び/又は、生物資源由来のスチレンとして、由来が異なる複数種類の生物資源由来のスチレンの混合物を使用することが好ましい。これにより、複数種類の生物資源を有効活用できる。
【0053】
(カーボンブラック(B))
本実施形態のゴム組成物は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が30~110m/gであるカーボンブラック(B)を含有する。カーボンブラックのCTAB比表面積が30m/g未満であると、耐破壊性及び耐亀裂性等の耐久性が悪化する虞があり、また、110m/gを超えると、低発熱性が悪化する。カーボンブラック(B)のCTAB比表面積は、耐久性をより向上させる観点から、50m/g以上であることが好ましく、70m/g以上であることがより好ましい。また、カーボンブラック(B)のCTAB比表面積は、低発熱性をより向上させる観点から、100m/g以下であることが好ましく、90m/g以下であることがより好ましい。
なお、カーボンブラックのCTAB比表面積は、JIS K 6217-3:2001(比表面積の求め方-CTAB 吸着法)に準拠した方法で測定することができる。
【0054】
カーボンブラック(B)のグレードとしては、CTAB比表面積が上記範囲となるものであれば特に制限されず、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が挙げられる。
【0055】
また、カーボンブラック(B)の窒素吸着比表面積(NSA)は、70m/g以上が好ましい。カーボンブラック(B)のNSAが70m/g以上であることで、架橋ゴム(ゴム組成物)及びタイヤの耐破壊性及び耐亀裂性をより向上することができる。また、カーボンブラック(B)のNSAは、140m/g以下が好ましい。カーボンブラック(B)のNSAが140m/g以下であることで、ゴム組成物中のカーボンブラック(B)の分散性を優れたものとすることができる。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K 6217-2:2017(ISO 4652:2012)によって求められる。
【0056】
カーボンブラック(B)のジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)は、70ml/100g以上が好ましい。カーボンブラック(B)のDBP吸油量が70ml/100g以上であることで、架橋ゴム(ゴム組成物)及びタイヤの耐破壊性及び耐亀裂性等の耐久性をより向上することができる。また、ゴム組成物の加工性の観点から、カーボンブラック(B)のDBP吸油量は、140ml/100g以下が好ましい。
なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K 6217-4:2001(オイル吸収量の求め方)によって求められる。
【0057】
前記カーボンブラック(B)の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、カーボンブラック(B)の含有量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がより一層好ましい。
【0058】
そして、本実施形態のゴム組成物においては、カーボンブラック(B)及びシリカ(C)(後述)の合計含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して30~80質量部であり、カーボンブラック(B)及びシリカ(C)の合計含有量が、ゴム成分(A)100質量部に対して30質量部未満であると、架橋ゴム(ゴム組成物)及びタイヤの耐破壊性及び耐亀裂性等の耐久性が悪化する虞があり、80質量部を超えると、架橋ゴム(ゴム組成物)及びタイヤの低発熱性が悪化する虞がある。また、ゴム成分(A)100質量部に対するカーボンブラック(B)及びシリカ(C)の合計含有量は、架橋ゴム(ゴム組成物)及びタイヤの耐破壊性をより向上させる観点から、50質量部以上であることが好ましく、55質量部以上であることがより好ましい。また、ゴム成分(A)100質量部に対するカーボンブラック(B)及びシリカ(C)の合計含有量は、架橋ゴム(ゴム組成物)及びタイヤの低発熱性をより向上させる観点から、70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。
【0059】
更に、本実施形態のゴム組成物においては、前記カーボンブラック(B)及び前記シリカ(C)の合計に占める前記カーボンブラック(B)の割合が、65質量%以上90質量%以下である。上記合計に占める前記カーボンブラック(B)の割合が65質量%未満であると、架橋ゴム(ゴム組成物)及びタイヤの低発熱性が悪化する虞がある。また、上記合計に占める前記カーボンブラック(B)の割合が90質量%超であると、耐亀裂性が悪化する虞がある。
【0060】
-再生カーボンブラック-
本実施形態のゴム組成物においては、上記カーボンブラック(B)が、再生カーボンブラックを含むことを要する。本明細書において、「再生カーボンブラック」とは、リサイクルに供された廃棄物である原材料から回収して得られるカーボンブラックを指す。上記リサイクルに供された廃棄物としては、使用済ゴム及び使用済タイヤに代表される、カーボンブラックを含むゴム製品(特には、加硫ゴム製品)、廃油等が挙げられる。「再生カーボンブラック」は、石油や天然ガスなどの炭化水素を原材料から直接製造されるカーボンブラック、すなわち、リサイクル品ではないカーボンブラックとは異なる。なお、ここでの「使用済」とは、実際に使用された後で廃棄されたものだけではなく、製造されたものの実際には使用されずに廃棄されたものも含む。
【0061】
前記カーボンブラック(B)における前記再生カーボンブラックの割合は、50質量%以上であることが好ましい。この場合、サステナビリティの向上に一層寄与し得る上、低発熱性をより向上させることができる。同様の観点から、前記カーボンブラック(B)における前記再生カーボンブラックの割合は、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%(即ち、カーボンブラック(B)が、再生カーボンブラックのみからなること)が特に好ましい。
【0062】
また、本実施形態で用いる再生カーボンブラックは、カーボンブラックを含む加硫ゴム製品の熱分解によって得られたものであることが好ましい。この場合、使用済みゴム製品を有効に活用することができ、環境負荷低減に一層貢献することができる。更に、本実施形態で用いる再生カーボンブラックは、上記カーボンブラックを含む加硫ゴム製品の熱分解によって生成する固形残渣から得られたものであることが好ましい。カーボンブラックを含むゴム製品を熱分解した際に、固形残渣と揮発成分(オイル)とが得られ、いずれからも再生カーボンブラックを回収することが可能である。しかし、本実施形態で用いる再生カーボンブラックには、オイルから回収されるカーボンブラックは含まれないことが好ましい。
【0063】
使用済ゴム及び使用済タイヤに代表される廃棄物を熱分解して得られる固形残渣には、 カーボンブラックの他、灰分が含まれる。灰分は、ゴムやタイヤに含まれる不揮発成分に 由来する。このため、当該固形残渣から得られる再生カーボンブラックは、相対的にカーボンブラックの含有量が低くなる。一方で、再生カーボンブラックを用いて製造されるタイヤに要求される諸物性を考慮すると、再生カーボンブラックにおけるカーボン含有量は、高いほど好ましい。本実施形態で用いる再生カーボンブラックにおいて、カーボン含有量は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、87質量%以上であることがより好ましく、89質量%以上であることが更に好ましい。本実施形態で用いる再生カーボンブラックにおけるカーボン含有量は、97質量%以下であることが好ましい。なお、上記カーボン含有量は、吸着水分を含まない値である。
【0064】
灰分には、具体的に、酸化亜鉛、硫化亜鉛、シリカ、鉄化合物(酸化鉄)、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等が含まれる。廃棄物を熱分解して得られる固形残渣から製造される再生カーボンブラックの場合、灰分を除去する種々の工程を行っても、灰分が一定量残留する。本実施形態においては、再生カーボンブラックに灰分が含まれることを許容する。本実施形態で用いる再生カーボンブラックは、灰分量の下限値は0.5質量%であっても良い。一方、タイヤ等のゴム製品に要求される諸物性、再生カーボンブラックの品質等を考慮すると、再生カーボンブラックにおける灰分量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることが更に好ましい。
ここで、本明細書において、カーボンブラックの灰分量は、カーボンブラックを550℃±25℃で燃焼させて灰化し、燃焼しない成分(灰分)の質量から算出する。
【0065】
また、再生カーボンブラックは、使用済み空気入りタイヤの熱分解プロセスから得ることができる。例えば、欧州特許出願公開第3427975号明細書では、「ゴム化学と技術」、Vol.85、No.3、408~449頁(2012)、特に、438、440、442頁に言及し、酸素を排除した550~800℃での有機材料の熱分解、または、比較的低い温度での真空熱分解により得られることが記載されている([0027])。このような熱分解プロセスから得られるカーボンブラックは、特許第6856781号の[0004]で言及されているように、通常、その表面に官能基を欠くものである(熱分解カーボンブラックと市販のカーボンブラックとの表面形態および化学の比較、PowderTechnology160(2005)190~193)。
【0066】
再生カーボンブラックは、その表面に官能基を欠くものであってもよく、又は、その表面に官能基を含むように処理されたものであってもよい。再生カーボンブラックの表面に官能基を含むようにする処理は、常法により実施することができる。例えば、欧州特許出願公開第3173251号明細書では、熱分解プロセスから得られたカーボンブラックを、酸性条件下で、過マンガン酸カリウムで処理することにより、その表面にヒドロキシル及び/又はカルボキシル基を含むカーボンブラックを得ている。また、特許第6856781号では、熱分解プロセスから得られたカーボンブラックを、少なくとも1つのチオール基又はジスルフィド基を含むアミノ酸化合物で処理して、その表面が活性化されたカーボンブラックを得ている。本実施形態にかかる再生カーボンブラックは、これらの表面に官能基を含むように処理されたカーボンブラックをも含むものである。
【0067】
また、使用済みタイヤ等の架橋ゴム製品(加硫ゴム製品)の熱分解としては、例えば、650℃以上の温度の熱分解法が挙げられる。本実施形態で用いる再生カーボンブラックは、窒素吸着比表面積NSAが20~150m/gであることが好ましく、また、DBP吸油量が50~150ml/100gであることが好ましい。なお、本実施形態における再生カーボンブラックとしては、市販品を用いることができ、かかる市販品としては、例えば、Enrestec社製の商品名「PB365」が挙げられる。PB365は、使用済みタイヤの熱分解を経て生成される再生カーボンブラックであり、NSAが73.6m/gである。また、PB365は、灰分を17質量%程度含んでいる。
【0068】
-再生カーボンブラック以外のカーボンブラック-
本実施形態のゴム組成物は、カーボンブラック(B)として、上述した再生カーボンブラックに加えて、再生カーボンブラック以外のカーボンブラック(ヴァージンカーボンブラック)を更に含有してもよい。再生カーボンブラック以外のカーボンブラックとしては、植物由来のカーボンブラックが挙げられ、植物由来のカーボンブラックとしては、例えば、ヒマシ油、松脂油に由来するものが挙げられる。前記カーボンブラックのグレードとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。前記再生カーボンブラック以外のカーボンブラックとしては、市販品を利用することができ、該再生カーボンブラック以外のカーボンブラックの市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、日鉄カーボン(株)、Birla Carbon社等の製品を使用できる。これらカーボンブラックは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
前記再生カーボンブラック以外のカーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、再生カーボンブラック以外のカーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、20m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましく、70m/g以上がより好ましく、90m/g以上が更に好ましく、また、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。
【0070】
前記再生カーボンブラック以外のカーボンブラックは、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が50~150mL/100gであることが好ましい。また、再生カーボンブラック以外のカーボンブラックは、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が50~150mL/100gで、且つ窒素吸着比表面積(NSA)が20~130m/gであることが更に好ましくジブチルフタレート(DBP)吸油量が80~130mL/100gで、且つ窒素吸着比表面積(NSA)が20~60m/gであることが更に好ましい。ジブチルフタレート(DBP)吸油量が80~130mL/100gで、且つ窒素吸着比表面積(NSA)が20~60m/gであるカーボンブラックを、前記再生カーボンブラック(B)と組み合わせることにより、ゴム組成物の耐破壊性をより一層確実に維持できる。
【0071】
(シリカ(C))
本実施形態のゴム組成物は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が200m/g以上であるシリカ(C)を含有する。シリカのCTAB比表面積が200m/g未満であると、架橋ゴム(ゴム組成物)及びタイヤの耐破壊性と耐亀裂性等の耐久性が悪化する虞がある。シリカ(C)のCTAB比表面積は、架橋ゴム(ゴム組成物)及びタイヤ等のゴム製品の耐破壊性及び耐亀裂性等の耐久性をより向上させる観点から、210m/g以上であることが好ましい。一方、シリカ(C)のCTAB比表面積の上限は、特に制限されないが、現時点において、300m/gを超える製品は入手することができない。
なお、シリカのCTAB比表面積は、ASTM-D3765-80の方法に準拠した方法で測定することができる。
【0072】
シリカ(C)としては、CTAB比表面積が200m/g以上であれば、特に限定されず、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、シラノール基が多い点で、湿式シリカが好ましい。これらシリカ(C)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
CTAB比表面積が200m/g以上であるシリカ(C)は、市販品であってもよく、例えば、Solvay社のZeosil Premium200MP(商品名)として、入手することができる。
【0074】
前記シリカ(C)は、窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g以上であることが好ましく、100m/g以上であることがより好ましく、150m/g以上であることが更に好ましく、また、350m/g以下であることが好ましく、250m/g以下であることがより好ましく、230m/g以下であることが更に好ましく、200m/g以下であることがより一層好ましい。
なお、本明細書において、シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0075】
カーボンブラック(B)のCTAB比表面積(カーボンブラックCTAB)とシリカ(C)のCTAB比表面積(シリカCTAB)との比率としては、架橋ゴム(ゴム組成物)及びタイヤの耐破壊性、耐亀裂性等の耐久性を一層向上させる観点からは、(シリカCTAB/カーボンブラックCTAB)=1.8以上2.5以下の範囲とすることが好ましく、一方、架橋ゴム(ゴム組成物)及びタイヤの低発熱性を一層向上させる観点からは、(シリカCTAB/カーボンブラックCTAB)=2.5超6.7以下の範囲とすることが好ましい。
【0076】
(シランカップリング剤)
本実施形態のゴム組成物は、シリカ(C)を含有するため、シリカ(C)-ゴム成分(A)間の結合を強化して補強性を更に高めた上で、シリカ(C)の分散性を向上させるために、シランカップリング剤を含有することが好ましい。該シランカップリング剤としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、市販品を利用することができ、該シランカップリング剤の市販品としては、例えば、Evonik社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東レ・ダウコーニング(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)等の製品を使用できる。これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
前記シランカップリング剤の含有量は、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、シランカップリング剤の含有量は、前記シリカ(C)100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましく、8質量部以上が更に好ましく、また、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下が更に好ましく、10質量部以下がより一層好ましい。
【0078】
なお、シランカップリング剤の原材料として、バイオエタノールを用いることもできる。バイオエタノールは、生物資源として、主に糖類及び/又はセルロース類を用いて製造され、タンパク質、脂質、アミノ酸等の他の生物資源を有効に活用できない。更に、糖類は、食料と競合し、セルロース類の過度の利用は、森林伐採に繋がる。そのため、種々の生物資源の供給状況の他、再生資源の供給状況、化石資源の供給状況、及び市場の要求(例えば、バイオマス資源の食料としての需要)に応じて、前記生物資源由来のモノマー成分として、生物資源由来のモノマー成分を複数種使用したり、生物資源由来のモノマー成分と再生資源由来のモノマー成分と化石資源由来のモノマー成分とを併用して使用することが好ましい。これにより、1種類の生物資源に頼ることなく、糖、タンパク質、脂質等、幅広い生物資源や、再生資源を有効に活用でき、また、製造時の状況に応じて環境に配慮することもできる。
【0079】
(樹脂)
本実施形態のゴム組成物は、樹脂を含有してもよい。該樹脂としては、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、C系樹脂、C-C系樹脂、C系樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、芳香族系樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、クマロン-インデン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら樹脂の中でも、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、C系樹脂、C-C系樹脂、C系樹脂、シクロペンタジエン系樹脂及び芳香族系樹脂が好ましく、テルペン系樹脂及びロジン系樹脂が特に好ましい。テルペン系樹脂及びロジン系樹脂は、天然由来のサステナブルな樹脂であるため、環境負荷をより低減できると共に、乾燥路面、湿潤路面、積雪路面、凍結路面等の各種路面状態でのグリップ性能等、タイヤ性能を更に向上させることができる。また、C系樹脂、C系樹脂、C-C系樹脂、シクロペンタジエン系樹脂は、耐摩耗性及び低燃費性をバランス良く向上させることができる。また、芳香族系樹脂は、グリップ性能、耐摩耗性及びゴム強度をバランス良く向上させることができる。
【0080】
前記樹脂は、水素添加されていてもよく、即ち、水素添加樹脂(水添樹脂)であってもよい。また、前記樹脂には、変性により、カーボンブラック、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基が導入されていてもよい。該官能基としては、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、シリル基、アルコキシシリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基等が挙げられる。
【0081】
前記テルペン系樹脂は、松属の木からロジンを得る際に同時に得られるテレビン油、或いはこれから分離した重合成分を配合し、フリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体状の樹脂であり、β-ピネン樹脂、α-ピネン樹脂等がある。また、テルペン系樹脂には、テルペン-芳香族化合物系樹脂も包含され、該テルペン-芳香族化合物系樹脂としては、代表例としてテルペン-フェノール樹脂、スチレン-テルペン樹脂等が挙げられる。該テルペン-フェノール樹脂は、テルペン類と種々のフェノール類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させたり、或いは更にホルマリンで縮合する方法で得ることができる。また、前記スチレン-テルペン樹脂は、スチレンとテルペン類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させることで得ることができる。原料のテルペン類としては、特に制限はなく、α-ピネンやリモネン等のモノテルペン炭化水素が好ましく、α-ピネンを含むものがより好ましく、α-ピネンが特に好ましい。
【0082】
前記ロジン系樹脂としては、天然樹脂ロジンとして、生松ヤニやトール油に含まれるガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等があり、また、変性ロジン、ロジン誘導体、変性ロジン誘導体として、例えば、重合ロジン、その部分水添ロジン;グリセリンエステルロジン、その部分水添ロジンや完全水添ロジン;ペンタエリスリトールエステルロジン、その部分水添ロジンや重合ロジン;等が挙げられる。
【0083】
前記C系樹脂としては、石油化学工業のナフサの熱分解によって得られるC留分を(共)重合して得られる脂肪族系石油樹脂が挙げられる。C留分には、通常1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン等のオレフィン系炭化水素、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,2-ブタジエン等のジオレフィン系炭化水素等が含まれる。
【0084】
前記C-C系樹脂とは、C-C系合成石油樹脂を指し、C-C系樹脂としては、例えば、石油由来のC-C11留分を、AlCl、BF等のフリーデルクラフツ触媒を用いて重合して得られる固体重合体が挙げられ、より具体的には、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン等を主成分とする共重合体等が挙げられる。C-C系樹脂としては、C以上の成分の少ない樹脂が、ゴム成分との相溶性の観点から好ましい。ここで、「C以上の成分が少ない」とは、樹脂全量中のC以上の成分が50質量%未満、好ましくは40質量%以下であることを言うものとする。
【0085】
前記C系樹脂とは、C系合成石油樹脂を指し、例えばAlClやBF等のフリーデルクラフツ型触媒を用い、C留分を重合して得られる固体重合体を指す。C系樹脂としては、例えば、インデン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等を主成分とする共重合体等が挙げられる。
【0086】
前記シクロペンタジエン系樹脂は、モノマー単位としてシクロペンタジエン系モノマー由来の単位を含む樹脂を指す。該シクロペンタジエン系樹脂としては、シクロペンタジエン系モノマーの単独重合体、2種以上のシクロペンタジエン系モノマーの共重合体、シクロペンタジエン系モノマーと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。ここで、シクロペンタジエン系モノマーとしては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン等が挙げられ、これらの中でも、ジシクロペンタジエンが好ましく、即ち、前記シクロペンタジエン系樹脂としては、ジシクロペンタジエン系樹脂が好ましい。該ジシクロペンタジエン系樹脂は、例えば、AlClやBF等のフリーデルクラフツ型触媒等を用い、ジシクロペンタジエンを重合して得られる樹脂を指す。ジシクロペンタジエン系樹脂としては、ジシクロペンタジエンの単独重合体、ジシクロペンタジエンと芳香族系モノマーとの共重合体、ジシクロペンタジエンとC留分(ビニルトルエン、インデン等)との共重合体等が挙げられる。
【0087】
前記芳香族系樹脂は、モノマー単位として芳香族系モノマー由来の単位を含む樹脂を指す。該芳香族系樹脂としては、芳香族系モノマーの単独重合体、2種以上の芳香族系モノマーの共重合体、芳香族系モノマーと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。ここで、芳香族系モノマーとしては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、p-フェニルスチレン等のスチレン系モノマー;フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール等のフェノール系モノマー;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール等のナフトール系モノマー;等が挙げられる。
【0088】
前記樹脂は、軟化点が30℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがより好ましく、110℃より高いことがより好ましく、116℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがより好ましく、123℃以上であることがより好ましく、127℃以上であることが更に好ましい。また、前記樹脂は、加工性の観点から、軟化点が160℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、145℃以下であることがより好ましく、141℃以下であることがより好ましく、136℃以下であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2015(ISO 28641:2010)に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0089】
前記樹脂としては、市販品を利用することができ、該樹脂の市販品としては、例えば、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、エクソンモービル社、クレイトン社、ヤスハラケミカル(株)、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、クレイトンポリマー社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0090】
前記樹脂の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、樹脂の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、5~100質量部の範囲が好ましく、10~60質量部の範囲が更に好ましい。
【0091】
(ゴム粉)
本実施形態のゴム組成物は、ゴム粉を含有してもよい。該ゴム粉は、使用済タイヤ等の使用済ゴム製品を粉砕し、所望により、鋼材類、繊維類等の補強材、ダスト類、ガラス類、砂、石等を取り除き、又はゴム粉を製造するために新たに加硫済ゴム組成物を準備し、粉砕することで得てもよい。例えば、「Rubber Chemistry And Technology」に記載の方法により、加硫ゴムからゴム粉を得ることができる。加硫ゴムを粉砕してゴム粉を得る工程においては、機械的処理や低温処理を利用してもよい。例えば、機械的処理では、加硫ゴムを微粒子に機械的に粉砕するために、クラッカーミル、グラニュレータ等の種々の破砕機器を使用できる。また、低温処理では、細かく刻まれた加硫ゴムを極低温で凍結させ、続いて、微粒子に粉砕する。また、鋼材類の除去には、磁選機等を用いることができ、繊維類の除去には、空気選別機等を用いることができる。前記ゴム粉としては、市販品を利用することもでき、該ゴム粉の市販品としては、Global Corporation又はNantong Huili Rubber Corporation等の製品が挙げられる。環境負荷低減の観点から、使用済タイヤ等の使用済ゴム製品を粉砕することで得られるゴム粉を用いることが好ましい。前記ゴム粉は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
前記ゴム粉の組成は、特に限定されず、原料となる使用済ゴム製品(使用済タイヤ)等の加硫ゴムの組成による。一実施形態において、ゴム粉は、ゴム成分、カーボンブラック、シリカ等を含む。ゴム粉に含まれるゴム成分、カーボンブラック、シリカ等は、上述した本実施形態のゴム組成物に含まれるゴム成分、カーボンブラック、シリカ等と同様であってもよいし、異なってもよい。
【0093】
前記ゴム粉は、体積平均粒子径が1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることがより一層好ましい。また、ゴム粉の体積平均粒子径は、小さい程好ましく、下限は特に限定されない。
なお、本明細書において、体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定され、例えば、堀場製作所(株)製「CAPA500」を用いて測定できる。
【0094】
前記ゴム粉は、60メッシュ篩残分が1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、下限は特に限定されない。また、前記ゴム粉は、80メッシュ篩残分が10質量%未満であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましく、下限は特に限定されない。
なお、本明細書において、篩残分は、ASTM D5644-01に従って測定される。
【0095】
前記ゴム粉は、アセトン抽出分が12質量%以下であることが好ましく、11質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、また、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、ゴム粉中のアセトン抽出分とは、JIS K6350に準拠するアセトン抽出法により求められるアセトン抽出分(%)をいう。
【0096】
前記ゴム粉の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、ゴム粉の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がより一層好ましく、また、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、100質量部以下がより好ましく、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましく、10質量部以下がより一層好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
【0097】
(液状軟化剤)
本実施形態のゴム組成物は、液状軟化剤を含有してもよい。ここで、「液状軟化剤」とは、25℃(室温)で液状であり、ゴム組成物を軟化させる作用を有する配合剤である。該液状軟化剤としては、特に限定されず、オイル、液状ポリマー等が挙げられ、これらの中でも、オイルが好ましい。これら液状軟化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
前記オイルとは、ゴム成分に含まれる伸展油、及び、ゴム組成物の配合剤として添加する液状の油分の総称であり、例えば、植物油、プロセスオイル、植物油やプロセスオイルのリサイクルにより得られたオイル、又はその混合物等が挙げられる。環境負荷低減の観点から、オイルとしては、植物油、リサイクルにより得られたオイルが好ましい。前記植物油としては、パーム油、ヒマシ油、綿実油、大豆油、アマニ油、菜種油、ヤシ油、落花生油、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、コメ油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、向日葵油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油、ココナッツ油等が挙げられる。また、前記プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等が挙げられる。前記オイルとしては、市販品を利用することができ、該オイルの市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、ENEOS(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。これらオイルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
前記液状ポリマーとしては、液状ジエン系ポリマーが好ましい。該液状ジエン系ポリマーとしては、液状スチレン-ブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ポリブタジエン(液状BR)、液状ポリイソプレン(液状IR)、液状スチレン-イソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ポリファルネセン、液状ファルネセン-ブタジエン共重合体等が挙げられる。これら液状ポリマーは、水素添加されていてもよいし、末端や主鎖が官能基(極性基)で変性されていてもよい。これら液状ポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
前記液状軟化剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、液状軟化剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上が更に好ましく、また、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましく、30質量部以下がより一層好ましい。
【0101】
(老化防止剤)
本実施形態のゴム組成物は、老化防止剤を含有してもよい。該老化防止剤としては、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(AW)、6-アニリノ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等が挙げられる。前記老化防止剤としては、市販品を利用することができ、該老化防止剤の市販品としては、大内新興化学工業(株)、住友化学(株)、精工化学(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これら老化防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
前記老化防止剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、老化防止剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2質量部以上が更に好ましく、また、12質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下が更に好ましい。
【0103】
(ワックス)
本実施形態のゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。該ワックスとしては、例えば、植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;エチレンの重合物、プロピレンの重合物等の合成ワックス;等が挙げられる。前記ワックスとしては、市販品を利用でき、該ワックスの市販品としては、精工化学(株)、日本精蝋(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらワックスは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
前記ワックスの含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、ワックスの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、また、10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。
【0105】
(ステアリン酸)
本実施形態のゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。該ステアリン酸としては、市販品を利用でき、該ステアリン酸の市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらステアリン酸の市販品は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
前記ステアリン酸の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、ステアリン酸の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、また、10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。
【0107】
(酸化亜鉛)
本実施形態のゴム組成物は、酸化亜鉛(亜鉛華)を含有してもよい。該酸化亜鉛としては、リサイクルにより得られた酸化亜鉛が好ましい。該酸化亜鉛としては、市販品を利用でき、該酸化亜鉛の市販品としては、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)等の製品を使用できる。これら酸化亜鉛の市販品は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、酸化亜鉛に用いられる亜鉛としては、亜鉛地金だけでなく、再生亜鉛や亜鉛ドロスにより得られた亜鉛であってもよい。
【0108】
前記酸化亜鉛の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、酸化亜鉛の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、また、10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。
【0109】
(硫黄)
本実施形態のゴム組成物は、硫黄を含有することが好ましい。該硫黄としては、化石資源由来のもの、再生資源由来のもの、生物資源由来材料の処理によるもの等を用いることができ、環境負荷低減の観点から、生物資源に由来する廃棄物から得られる硫黄を用いることが特に好ましい。生物資源に由来する廃棄物から硫黄を得る方法としては、例えば、上述の特願2022-140390に記載の方法等が挙げられる。また、前記硫黄としては、ゴム工業において一般的に架橋剤として用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等を用いてもよい。前記硫黄としては、市販品を利用でき、該硫黄の市販品としては、鶴見化学工業(株)、細井化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これら硫黄は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
前記硫黄の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、硫黄の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.8質量部以上が更に好ましく、また、8質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0111】
(加硫促進剤)
本実施形態のゴム組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。該加硫促進剤は、化石資源由来、再生資源由来、生物資源由来を問わず使用可能であるが、環境負荷低減の観点から、生物資源由来であることが好ましい。生物資源由来の加硫促進剤については、例えば、特開2005-139239号公報等に開示される方法にて得ることができる。
前記加硫促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、o-トリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール(M)、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS、DM)等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラステアリルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤等が挙げられる。前記加硫促進剤としては、市販品を利用でき、該加硫促進剤の市販品としては、大内新興化学工業(株)、住友化学(株)等の製品を使用できる。これら加硫促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
前記加硫促進剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、加硫促進剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましく、また、8質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましく、5.5質量部以下が更に好ましい。
【0113】
(セルロースナノファイバー)
本実施形態のゴム組成物は、セルロースナノファイバー(CNF)を含有してもよい。セルロースナノファイバーは、ゴム組成物に配合することにより、ゴム組成物を補強できる。該セルロースナノファイバーとしては、変性セルロースナノファイバーが好ましく、該変性セルロースナノファイバーは、変性セルロースを原料とする微細繊維である。セルロースナノファイバーの繊維径は、特に限定されないが、3~500nm程度である。セルロースナノファイバーの平均繊維径及び平均繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察した結果から得られる繊維径及び繊維長を平均することによって得ることができる。前記セルロースナノファイバーは、セルロースを解繊することによって得ることができる。また、微細繊維の平均繊維長と平均繊維径は、酸化処理、解繊処理により調整することができる。
【0114】
前記セルロースナノファイバーの原料は、セルロースを含んでいればよく、特に限定されるものではないが、例えば、植物(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、晒クラフトパルプ(BKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えば、ホヤ類)、藻類、微生物(例えば、酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等が挙げられる。これらセルロース原料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
前記セルロースナノファイバーの含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、セルロースナノファイバーの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対し、1~100質量部の範囲が好ましく、5~70重量部の範囲がより好ましく、10~40質量部の範囲が更に好ましい。
【0116】
(多孔質セルロース粒子)
本実施形態のゴム組成物は、多孔質セルロース粒子を含有してもよい。該多孔質セルロース粒子は、好ましくは空隙率が75~95%の多孔質構造を持つセルロース粒子であり、ゴム組成物に配合することにより、氷上性能を向上させることができる。多孔質セルロース粒子の空隙率が75%以上であることにより、氷上性能の向上効果に優れ、また、空隙率が95%以下であることにより、粒子の強度を高めることができる。該空隙率は、より好ましくは80~90%である。前記多孔質セルロース粒子の空隙率は、一定質量の試料(即ち、多孔質セルロース粒子)の体積をメスシリンダーで測定し、嵩比重を求めて、下記式から求めることができる。
空隙率(%)={1-[試料の嵩比重(g/mL)]/[試料の真比重(g/mL)]}×100
ここで、セルロースの真比重は1.5である。
【0117】
前記多孔質セルロース粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、耐摩耗性の観点から、平均粒径が1000μm以下のものが好ましい。平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、5μm以上であることが好ましい。平均粒径は、より好ましくは100~800μmであり、更に好ましくは200~800μmである。
前記多孔質セルロース粒子としては、長径/短径の比が1~2である球状粒子が好ましい。このような球状構造の粒子を用いることにより、ゴム組成物中への分散性が向上して、氷上性能の向上、耐摩耗性等の維持に寄与することができる。前記長径/短径の比は、より好ましくは1.0~1.5である。
前記多孔質セルロース粒子の平均粒径と、長径/短径の比は、次のようにして求められる。即ち、多孔質セルロース粒子を顕微鏡で観察して画像を得て、この画像を用いて、粒子の長径と短径(長径と短径が同じ場合には、ある軸方向の長さとこれに直交する軸方向の長さ)を100個の粒子について測定し、その平均値を算出することで平均粒径が得られ、また、長径を短径で割った値の平均値により長径/短径の比が得られる。
【0118】
前記多孔質セルロース粒子としては、レンゴー株式会社から「ビスコパール」として市販されており、また、特開2001-323095号公報、特開2004-115284号公報等に記載されており、それらを好適に用いることができる。
【0119】
前記多孔質セルロース粒子の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、多孔質セルロース粒子の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対し、0.3~20質量部の範囲が好ましく、1~15重量部の範囲がより好ましく、3~15質量部の範囲が更に好ましい。
【0120】
(固体微粒子)
本実施形態のゴム組成物は、固体微粒子を含有してもよい。該固体微粒子は、ゴム組成物に配合することにより、氷上性能を向上させることができる。該固体微粒子は、平均粒子径が1μm以上であることが好ましく、また、1000μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。前記固体微粒子としては、籾殻、胡桃粉又は胡桃の殻等の植物より得られた植物由来の粉体;卵殻(卵殻粉)、骨粉等の動物より得られた動物由来の粉体;シラス等の天然鉱物由来の粉体;グラファイト、酸化亜鉛ウィスカ等の無機微粒子;硫酸マグネシウム、リグニンスルホン酸の金属塩等の水溶性金属塩微粒子;グラスファイバー等の非金属繊維;等が挙げられ、これらの中でも、籾殻、胡桃の殻、卵殻、及びシラスが好ましい。
【0121】
前記固体微粒子の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、固体微粒子の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対し、0.3~20質量部の範囲が好ましく、1~15重量部の範囲がより好ましく、3~15質量部の範囲が更に好ましい。
【0122】
(その他)
本実施形態のゴム組成物には、上述の成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている各種添加剤、例えば、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等の充填剤;有機過酸化物;等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができ、例えば、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部の範囲が好ましい。
【0123】
(ゴム組成物の製造方法)
本実施形態のゴム組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、前記ゴム成分に、必要に応じて適宜選択した各種成分を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。また、得られたゴム組成物を加硫することで、加硫ゴムとすることができる。
【0124】
前記混練りの条件としては、特に制限はなく、混練り装置の投入体積やローターの回転速度、ラム圧等、及び混練り温度や混練り時間、混練り装置の種類等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。混練り装置としては、通常、ゴム組成物の混練りに用いるバンバリーミキサーやインターミックス、ニーダー、ロール等が挙げられる。
【0125】
前記熱入れの条件についても、特に制限はなく、熱入れ温度や熱入れ時間、熱入れ装置等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。該熱入れ装置としては、通常、ゴム組成物の熱入れに用いる熱入れロール機等が挙げられる。
【0126】
前記押出の条件についても、特に制限はなく、押出時間や押出速度、押出装置、押出温度等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。押出装置としては、通常、ゴム組成物の押出に用いる押出機等が挙げられる。押出温度は、適宜に決定することができる。
【0127】
前記加硫を行う装置や方式、条件等についても、特に制限はなく、目的に応じて適宜に選択することができる。加硫を行う装置としては、通常、ゴム組成物の加硫に用いる金型による成形加硫機等が挙げられる。加硫の条件として、その温度は、例えば100~190℃程度である。
【0128】
(用途)
本実施形態のゴム組成物は、タイヤの種々の構成部材に適用することができ、例えば、トレッド(キャップトレッド、ベーストレッド、アンダートレッド)、クッションゴム、ショルダー、サイドウォール、クリンチ、ビードフィラー、カーカスのコーティングゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等に用いることができ、また、ランフラットタイヤのサイド補強層等に用いることもできる。また、本実施形態のゴム組成物は、タイヤの他にも、コンベアベルト等のベルト、ゴムクローラ、各種ホース、防振ゴム、免震ゴム等にも適用することができる。
【0129】
また、本実施形態のゴム組成物は、ベルト補強層のコーティングゴムに適用することができる。ベルト補強層は、例えば、タイヤ周方向に対し実質的に平行(例えば、タイヤ周方向に対する角度が0~5°)に配列した補強コード(有機繊維コード)を補強層ゴム(エラストマー)で被覆してなる部材であってもよい。該ベルト補強層は、有機繊維コードをエラストマーで被覆して準備した幅狭のストリップをタイヤ周方向に連続して螺旋状に巻回して形成され得る。
【0130】
ベルト補強層に適用する有機繊維コードとしては、例えば、切断強度が6.5cN/dtex以上、切断伸度が10%以上、且つ7%伸長時の弾性率が6.0mN/(dtex・%)以上である有機繊維コードであってもよい。
【0131】
切断強度が6.5cN/dtex以上、切断伸度が10%以上、且つ7%伸長時の弾性率が6.0mN/(dtex・%)以上である有機繊維コードは、切断時の強度が高く、切断時の伸びが大きく、7%伸長時の弾性率も高いため、かかる物性の有機繊維コードをベルト補強層に適用する場合、タイヤのプランジャー耐久性を確保しつつ、タイヤの操縦安定性を向上させることができる。
【0132】
有機繊維コードの材質としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフランジカルボキシレート(PEF)等のポリエステル;6-ナイロン、6,6-ナイロン、4,6-ナイロン、4,10-ナイロン等のナイロン;レーヨン、リヨセル等のセルロース;が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートが好ましく、即ち、ベルト補強層の補強材としての有機繊維コードは、ポリエチレンテレフタレートからなるコード(以下、単に「ポリエチレンテレフタレートコード」と称することがある。)であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートコードは、一般的に用いられているナイロンコード等に比べて剛性が高く、タイヤのプランジャー耐久性及び操縦安定性の向上効果に優れる。また、上記有機繊維コードの原材料は、特に限定されず、合成品由来でもよいし、生物由来でもよいし、ペットボトル等のPET製品を粉砕、溶融、再紡糸してなるメカニカルリサイクル由来でもよいし、ペットボトル等のPET製品を解重合し、再重合してなるケミカルリサイクル由来でもよい。
【0133】
また、本実施形態のゴム組成物は、ベルト層のコーティングゴムに適用するすることができる。ベルト層においては、典型的には、複数本のベルトコードが並列に引き揃えられる。かかるベルトコードは、一般的には、スチールコードである。また、かかるベルトコードの構造としては、特に限定されない。但し、タイヤの耐久性向上と低転がり抵抗化とを効果的に両立させる観点から、当該ベルトコードは、N本のフィラメントを撚り合わせてなる1×N構造(Nは2以上の整数である)、M本(ここで、Mは、1以上の整数である)のコアフィラメント(ここで、該コアフィラメントは、撚り合わせたものであってもよいし、撚り合わせずに束ねたものであってもよい)の周りに、N本(ここで、Nは、1より大きい整数である)のシースフィラメントを螺旋状に撚ったM+N構造であってもよいし、前記1×N構造又はM+N構造のものをさらに複数本撚り合わせた複撚り構造でもよい。また、当該コードは、モノフィラメントであって、互いに撚り合わされずに並列に引き揃えられていることも好ましい。
【0134】
前記ベルトコードを構成するフィラメントは、当該フィラメントの直径をX(mm)とし、当該フィラメントの引張強度をY(MPa)としたときに、下記式:
4000-2000X≦Y≦4500-2000X
を満たすことが好ましい。前記式を満たすフィラメントをベルト層に用いることで、ベルト層の強度をより向上させ、プランジャーレベルを向上させて、タイヤの耐カット性を補うことができる。ここで、フィラメントの引張強度は、ISO 17832:2009の規定に従って決定する。
【0135】
前記ベルトコードを構成するフィラメントにおいては、耐疲労性の観点から、当該フィラメントの表層の硬度が、内層の硬度に対して90~110%であることが好ましく、100%であることが特に好ましい。当該硬度は、例えば、ビッカース硬さで測定することができる。また、フィラメントの表層とは、最表面から0.01mmの深さまでの層を意味し、それより内側をフィラメントの内層とする。硬度の測定は、表層については最表面から0.005mm、内層については0.04mmより深い領域にて測定することができる。
【0136】
前記ベルトコードを構成するフィラメントの製造方法は、特に限定されない。該フィラメントは、例えば、鉄鉱石を精錬、伸線して得たものでもよく、廃鉄スクラップを精錬、伸線して得たものでもよく、或いは、タイヤから取り出したスチールをリサイクルして得たものでもよい。
【0137】
<タイヤ>
本発明の一実施形態のタイヤ(以下、「本実施形態のタイヤ」と称することがある)は、上述したゴム組成物を用いたことを特徴とする。換言すると、本実施形態のタイヤは、上述したゴム組成物を備えることを特徴とする。かかる本実施形態のタイヤは、上述したゴム組成物を備えるため、低発熱性に優れる上、サステナビリティの向上に寄与し得る。
【0138】
本実施形態のタイヤは、上述のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造することができる。例えば、本実施形態のタイヤは、適用するタイヤの種類に応じ、未加硫のゴム組成物を用いて成形後に加硫して得てもよく、又は予備加硫工程等を経た半加硫ゴムを用いて成形後、更に本加硫して得てもよい。なお、本実施形態のタイヤは、好ましくは空気入りタイヤであり、空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例0139】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、下記の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0140】
(第1の評価)
表1に示す配合処方に従って、参考実施例及び参考比較例のゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物につき、生物資源(バイオマス資源)由来の材料と、再生資源(リサイクル資源)由来の材料と、の総質量割合を算出して、サステナブル材料比率を算出した。結果を表1に示す。
【0141】
また、各ゴム組成物を145℃で33分間加硫して、加硫ゴム試験片を得た。得られた加硫ゴム試験片の損失正接(tanδ)を、粘弾性測定装置(上島製作所製スぺクトロメーター)を用いて、温度60℃、歪1%、周波数52Hzの条件で測定した。そして、参考比較例1の低発熱性を100として指数表示した。結果を表1に示す。指数値が大きいほど、低発熱性に優れることを示す。
【0142】
【表1】
【0143】
*1 低Tg変性SBR:下記の方法で合成したヒドロカルビルオキシシラン化合物変性スチレン-ブタジエンゴム、Tg=-65℃、SP値=8.65(cal/cm1/2
*2 高Tg変性SBR:下記の方法で合成した変性スチレンスチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ゴム成分100質量部に対してオイル分10.0質量部を含む、重量平均分子量(Mw)=85.2×10、分子量200×10以上500×10以下の割合=4.6%、収縮因子(g’)=0.59
*3 カーボンブラック:旭カーボン株式会社製、商品名「#78」
*4 再生カーボンブラック:Enrestec社製、商品名「PB365」、灰分量=17質量%
*5 シリカ:東ソー・シリカ工業株式会社製、商品名「ニプシルAQ」
*6 シランカップリング剤:Evonik社製、商品名「Si75」
*7 ハイジライト:レゾナック社製、商品名「ハイジライトH-43M」
*8 その他薬品:硫黄、加硫促進剤、リターダー、密着防止剤、老化防止剤、ワックス、樹脂、軟化剤の合計量、参考比較例と参考実施例とでは同比率
【0144】
〔低Tg変性SBR(*1)の合成方法〕
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン67.5g及びスチレン7.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、変性剤としてN,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミンを0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBR(低Tg変性SBR)を得た。
得られた変性SBRのミクロ構造を測定した結果、結合スチレン量が10質量%であり、また、ガラス転移温度(Tg)は、-65℃であった。
【0145】
〔高Tg変性SBR(*2)の合成方法〕
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器とした。予め水分除去した、1,3-ブタジエンを17.2g/分、スチレンを10.5g/分、n-ヘキサンを145.3g/分の条件で混合した。この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを0.117mmol/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給した。更に、極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.019g/分の速度で、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを0.242mmol/分の速度で、攪拌機で激しく混合する重合反応器の底部へ供給し、連続的に重合反応を継続させた。反応器頂部出口における重合溶液の温度が75℃となるように温度を制御した。重合が十分に安定したところで、反応器頂部出口より、カップリング剤添加前の重合体溶液を少量抜出し、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように添加した後に溶媒を除去し、110℃のムーニー粘度及び各種の分子量を測定した。
次に、反応器の出口より流出した重合体溶液に、カップリング剤として2.74mmol/Lに希釈したテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン(表中、「A」と略す。)を0.0302mmol/分(水分5.2ppm含有n-ヘキサン溶液)の速度で連続的に添加し、カップリング剤を添加された重合体溶液はスタティックミキサーを通ることで混合されカップリング反応した。このとき、反応器の出口より流出した重合溶液にカップリング剤が添加されるまでの時間は4.8分、温度は68℃であり、重合工程における温度と、変性剤を添加するまでの温度との差は7℃であった。カップリング反応した重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように0.055g/分(n-ヘキサン溶液)で連続的に添加し、カップリング反応を終了した。酸化防止剤と同時に、重合体100gに対してオイル(JX日鉱日石エネルギー社製 JOMOプロセスNC140)が10.0gとなるように連続的に添加し、スタティックミキサーで混合した。スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性共役ジエン系重合体(高Tg変性SBR)を得た。上記の方法で、得られた変性共役ジエン系重合体が窒素原子を有すること、ケイ素原子を有することを確認した。
なお、変性共役ジエン系重合体は、カップリング剤の官能基数と添加量から想定される分岐数に相当する「分岐度」は8であり(収縮因子の値からも確認できる)、カップリング剤1分子が有するSiORの総数から反応により減じたSiOR数を引いた値に相当する「SiOR残基数」は4である。
【0146】
表1より、ゴム組成物に含まれる各種材料のうち、カーボンブラック(ヴァージンカーボンブラック)の少なくとも一部を再生カーボンブラックに置き換えることにより、低発熱性が向上し得ることが分かる。また、かかる置き換えは、サステナビリティの向上にも寄与するものである。
【0147】
(第2の評価)
表2に示す配合処方のゴム組成物を、常法に従って調製した。次いで、調製したゴム組成物をタイヤケースゴムに用いて、タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を試作し、試作タイヤから加硫ゴムを切り出した。この加硫ゴムについて、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、温度60℃、歪5%、周波数15Hzでtanδを測定した。参考比較例2のtanδを100として下記式にて指数表示した。結果を表2示す。発熱性指数が大きいほど、低発熱性に優れることを示す。
発熱性指数=(参考比較例2の加硫ゴムのtanδ/各加硫ゴムのtanδ)×100
【0148】
【表2】
【0149】
*11 天然ゴム:RSS#1
*12 ブタジエンゴム:株式会社ENEOSマテリアル製、商品名「BR01」
*13 CB-1:旭カーボン社製、商品名「旭#55」(CTAB:31m/g、DBP吸油量:26ml/100g、NSA:87m/g)
*14 CB-2:旭カーボン社製、商品名「旭#65」(CTAB:70m/g、DBP吸油量:42ml/100g、NSA:120m/g)
*15 シリカ-1:日本シリカ工業株式会社製、商品名「ニップシールAQ」(CTAB:150m/g)
*16 シリカ-2:下記製造方法により製造したシリカ(CTAB:230m/g)
*17 シランカップリング剤:信越化学工業株式会社製、ABC-856
*18 加硫促進剤:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーCZ-G」
*19 老化防止剤:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック 6C」
【0150】
〔シリカ-2(*16)の製造方法〕
10g/Lの濃度を有する珪酸ナトリウム溶液(3.5のSiO/NaO質量比)の12Lを25Lのステンレス鋼製反応器に導入した。この溶液を80℃に加熱した。全反応をこの温度で実施した。80g/Lの濃度を有する硫酸をpHが8.9の値に達するまで撹拌しながら(300rpm、プロペラ攪拌機)導入した。
【0151】
230g/Lの濃度を有する珪酸ナトリウム溶液(3.5のSiO/NaO質量比を有する)を76g/分の速度で、及び80g/Lの濃度を有する硫酸を反応混合物のpHを8.9の値に維持するように設定された速度で該反応器に15分にわたって同時に導入した。しかして、かろうじて凝集した粒子のゾルが得られた。このゾルを回収し、そして冷水が循環している銅コイルを使用して急速に冷却した。反応器を迅速に清浄にした。
【0152】
4Lの純水をこの25L反応器に導入した。80g/Lの濃度を有する硫酸をpHが4の値に達するまで導入した。195g/分の流量での冷却ゾル及びpHを4に設定するのを可能にする流量での硫酸(80g/Lの濃度を有する)の同時添加を40分にわたって実施した。10分間続く熟成工程を実施した。
【0153】
同時ゾル/硫酸添加の40分後には、20分間にわたる76g/分の流量での珪酸ナトリウム(第1の同時添加の場合と同一の珪酸ナトリウム)及び反応混合物のpHを4の値に維持するように設定された流量での硫酸(80g/L)の同時添加があった。20分後に、酸の流れを8のpHが得られるまで停止させた。
【0154】
新たな同時添加を60分にわたって76g/分の珪酸ナトリウム流量で(第1の同時添加の場合と同一の珪酸ナトリウム)及び反応混合物のpHを8の値に維持するように設定された硫酸(80g/Lの濃度を有する)の流量で実施した。撹拌速度を混合物が非常に粘稠になったときに増加させた。
【0155】
この同時添加後に、反応混合物を80g/Lの濃度を有する硫酸によって5分間にわたって4のpHにした。混合物を10分にわたってpH4で熟成させた。
スラリーを減圧下で濾過及び洗浄し(15%のケーク固形分)、希釈後、得られたケークを機械的に砕解した。得られたスラリーをタービン噴霧乾燥機によって噴霧乾燥させ、シリカ-2を得た。
【0156】
表2より、参考実施例2のゴム組成物は、参考比較例2のゴム組成物に比べ、低発熱性に優れることが分かる。
【0157】
そして、これら第1の評価及び第2の評価に基づけば、本発明のゴム組成物及びそれを用いたタイヤは、低発熱性に優れるとともに、サステナビリティの向上にも寄与し得ることが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明によれば、低発熱性に優れる上、サステナビリティの向上に寄与し得るゴム組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、かかるゴム組成物を用いた、低発熱性に優れる上、サステナビリティの向上に寄与し得るタイヤを提供することができる。