(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026351
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】匂いセンサ素子の感応膜の製造方法、匂いセンサ素子の感応膜、匂いセンサ素子、および匂いセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20250214BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G01N27/12 M
G01N27/12 C
G01N27/12 B
G01N27/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024116100
(22)【出願日】2024-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2023131391
(32)【優先日】2023-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】金澤 岳
【テーマコード(参考)】
2G046
2G060
【Fターム(参考)】
2G046AA22
2G046AA23
2G046AA24
2G046AA25
2G046AA26
2G046BA01
2G046BB02
2G046BD03
2G046EA02
2G046FA01
2G046FB02
2G046FC07
2G046FE03
2G060AA01
2G060AB21
2G060AB22
2G060AB26
2G060AE19
2G060AF07
2G060AG03
2G060BB08
2G060JA01
2G060KA01
(57)【要約】
【課題】感応膜の製造安定性の向上を図りつつ、匂いセンサ素子の感度を高める。
【解決手段】ピペット型のディスペンサ(24)のノズル(28)から樹脂組成物溶液(L1)を吐出して基板(12)上に塗布することにより、基板(12)上に塗膜(F1)を形成し、塗膜(F1)を乾燥させて感応膜(14)を形成する。ノズル(28)からの樹脂組成物溶液(L1)の吐出量は、0.1μL~5.0μLである。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に匂いセンサ素子の感応膜を製造するための方法であって、
先端部に着脱可能なノズルを備えたピペット型のディスペンサを用い、有機溶剤を含む樹脂組成物溶液を貯留した容器から、前記樹脂組成物溶液を前記ノズルに吸入する吸入工程と、
前記吸入工程の終了後に、前記ノズルから前記樹脂組成物溶液を吐出して前記基板上に塗布することにより、前記基板上に塗膜を形成する塗布工程と、
前記塗布工程の終了後に、前記塗膜を乾燥させて前記感応膜を形成する乾燥工程と、を含み、
前記ノズルからの前記樹脂組成物溶液の吐出量は、0.1μL~5.0μLである、匂いセンサ素子の感応膜の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂組成物溶液の粘度は、1mPa・s~500mPa・sであり、前記有機溶剤の沸点は、150℃~250℃である、請求項1に記載の匂いセンサ素子の感応膜の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物溶液の固形分率は、2%~20%である、請求項1に記載の匂いセンサ素子の感応膜の製造方法。
【請求項4】
レオメーターで測定した前記樹脂組成物溶液のチクソインデックスは、1.05~5.00である、請求項1に記載の匂いセンサ素子の感応膜の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物溶液は、フィラーを含む、請求項1に記載の匂いセンサ素子の感応膜の製造方法。
【請求項6】
前記フィラーは、導電性材料である、請求項5に記載の匂いセンサ素子の感応膜の製造方法。
【請求項7】
前記導電性材料は、導電性炭素材料である、請求項6に記載の匂いセンサ素子の感応膜の製造方法。
【請求項8】
前記塗布工程を所定回数実行する毎に、前記ノズルの交換を行う交換工程を更に含む、請求項1に記載の匂いセンサ素子の感応膜の製造方法。
【請求項9】
前記匂いセンサ素子は、前記感応膜の電気抵抗値の変化を匂いの検知指標として用いるケミレジスター型の匂いセンサ素子である、請求項1に記載の匂いセンサ素子の感応膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の、匂いセンサ素子の感応膜の製造方法によって製造された、匂いセンサ素子の感応膜。
【請求項11】
基板と、
請求項1から9のいずれか1項に記載の、匂いセンサ素子の感応膜の製造方法によって前記基板上に製造された感応膜と、を備える、匂いセンサ素子。
【請求項12】
前記感応膜は、匂い物質受容層である、請求項11に記載の匂いセンサ素子。
【請求項13】
前記感応膜は、匂い物質透過層である、請求項11に記載の匂いセンサ素子。
【請求項14】
請求項11に記載の匂いセンサ素子を備える、匂いセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、匂いセンサ素子の感応膜の製造方法、匂いセンサ素子の感応膜、匂いセンサ素子、および匂いセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
匂いセンサ素子の感応膜を製造するための方法として、例えば、特許文献1に示すものが知られている。特許文献1に記載されている製造方法では、シリンジ型のディスペンサが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板上に塗膜を形成する際に、ノズルの先端部に這い上った樹脂組成物溶液が蒸発固化することで、ノズルの先端部の濡れ性が変化する。ノズルの先端部の濡れ性が変化した状態で、感応膜の製造を継続すると、樹脂組成物溶液の塗工量が安定せず、感応膜の製造安定性が低下すると共に、感応膜の表面の平滑性(滑らかさ)が低下して、匂いセンサ素子の感度が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の一態様は、感応膜の製造安定性を高めつつ、匂いセンサ素子の感度を向上させることができる、匂いセンサ素子の感応膜の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、前述の問題を解決するために、試行錯誤を繰り返した結果、先端部に着脱可能なノズルを備えたピペット型のディスペンサを用い、ノズルからの樹脂組成物溶液の吐出量を所定の吐出量に設定することで、ノズルの先端部への樹脂組成物溶液の這い上がりを抑えつつ、感応膜の表面の平滑性(滑らかさ)を高めることができるという、新規な知見を見出し、本発明を完成するに至った。ここで、所定の吐出量とは、0.1μL~5.0μLである。
【0007】
本発明の態様1に係る製造方法は、基板上に匂いセンサ素子の感応膜を製造するための方法であって、先端部に着脱可能なノズルを備えたピペット型のディスペンサを用い、有機溶剤を含む樹脂組成物溶液を貯留した容器から、前記樹脂組成物溶液を前記ノズルに吸入する吸入工程と、前記吸入工程の終了後に、前記ノズルから前記樹脂組成物溶液を吐出して前記基板上に塗布することにより、前記基板上に塗膜を形成する塗布工程と、前記塗布工程の終了後に、前記塗膜を乾燥させて前記感応膜を形成する乾燥工程と、を含む。前記ノズルからの前記樹脂組成物溶液の吐出量は、0.1μL~5.0μLである。
【0008】
本発明の態様2に係る匂いセンサ素子の感応膜は、本発明の態様1に係る、匂いセンサ素子の感応膜の製造方法によって製造されている。
【0009】
本発明の態様3に係る匂いセンサ素子は、基板と、本発明の態様1に係る、匂いセンサ素子の感応膜の製造方法によって前記基板上に製造された感応膜と、を備える。
【0010】
本発明の態様4に係る匂いセンサは、本発明の態様3に係る匂いセンサ素子を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、感応膜の製造安定性を高めつつ、匂いセンサ素子の感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る匂いセンサ素子の模式的な平面図である。
【
図2】
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【
図3】匂いセンサ素子の断面を観察したSEM画像である。
【
図4】本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法における吸入工程を説明する模式図である。
【
図5】本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法における塗布工程を説明する模式図である。
【
図6】本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法における塗布工程を説明する模式図である。
【
図7】本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法における乾燥工程を説明する模式図である。
【
図8】本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第2の製造方法における吸入工程を説明する模式図である。
【
図9】本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第2の製造方法における塗布工程を説明する模式図である。
【
図10】本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第2の製造方法における塗布工程を説明する模式図である。
【
図11】本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第2の製造方法における乾燥工程を説明する模式図である。
【
図12】本実施形態に係る匂いセンサを説明する模式図である。
【
図13】本実施形態に係る匂いセンサ素子の構成の一例を示す上面図である。
【
図14】本実施形態に係る匂いセンサ素子の構成の別の例を示す上面図である。
【
図15】本実施形態に係る匂いセンサ素子の構成の一例を示す斜視図である。
【
図16】実施例において用いたセンサ用基板の製造方法を説明するための概略図である。
【
図17】実施例において用いたセンサ用基板の製造方法を説明するための概略図である。
【
図18】実施例において用いたセンサ用基板の表面の構成を示す概略図である。
【
図19】実施例において用いたセンサ用基板の裏面の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意図する。
【0014】
〔匂いセンサ素子10〕
はじめに、本発明の一態様に係る製造方法を適用して製造される感応膜を備える匂いセンサ素子の一例を
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る匂いセンサ素子10の模式的な平面図である。
図2は、
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【0015】
(匂いセンサ素子10の概要、匂い物質)
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る匂いセンサ素子10は、匂い物質を検出するための匂いセンサ素子である。匂いセンサ素子10は、基板12、匂い物質受容層14、金属配線16、および匂い物質透過層20を備えている。なお、ここでは、匂い物質透過層および匂い物質受容層を有する匂いセンサ素子の製造を例に挙げて説明するが、これに限定されない。例えば、匂い物質受容層のみを有する匂いセンサ素子、および、金属配線16の配置が図示とは異なる匂いセンサ素子等の製造にも適用可能である。
【0016】
ここで、「匂い物質」は、特に限定されないが、例えばヘキサン、酢酸エチル、メタノール、炭酸ジエチル、トルエン、d-リモネン、ボルナン-2-オン、シス-3-ヘキセノール、β-フェニルエチルアルコール、シトラール、L-カルボン、γ-ウンデカラクトン、オイゲノール、リナリルアセテート、メントール、ベンズアルデヒド、バニリン、ヘキサナール、エタノール、吉草酸ペンチル、リナロール、2-プロパノール等が挙げられる。「匂い物質」には、一般的に匂いの原因物質とされていない物質も含まれる。「匂い物質」には、個々の匂い物質だけではなく、複数の匂い物質が含まれる。
【0017】
[基板12]
図1および
図2に示すように、匂いセンサ素子10は、基板12を備えており、基板12は、例えば、ガラスエポキシ板により構成されている。基板12は紙フェノール、ガラスコンポジット、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ガラスセラミック、アルミナ、またはアルミニウム、により構成されていてもよい。また、基板12は、後述する樹脂組成物溶液L1およびL2の濡れ広がりを規制する構造を有している。例えば、
図2に示すように、基板12を側面視した状態において、樹脂組成物溶液(後述)が塗布される領域(塗布領域)は、基板12の他の領域に比べて窪んでいてもよい。塗布領域が基板12の他の領域に比べて窪んでいている構成は、例えば基板12を作成する工程において、塗布領域以外の領域にソルダーレジストを付加することによって形成されてもよい。または、基板12において、塗布領域の外側にテープ等が貼り付けられていてもよい。これらの構成により、基板12では、塗布領域が他の領域に比べて低くなる。そのため、基板12に樹脂組成物溶液が塗布されたとしても、当該樹脂組成物溶液の濡れ広がりが規制され、樹脂組成物溶液が塗布領域を超えて濡れ広がることを抑制することができる。
【0018】
[匂い物質受容層14]
図1および
図2に示すように、匂いセンサ素子10は、基板12上に設けられた感応膜としての匂い物質受容層14を備えており、匂い物質受容層14は、匂い物質を吸着可能である。匂い物質受容層14は、後述の匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法(M1)によって基板12上に製造される。匂い物質受容層14は、樹脂およびフィラーとしての導電性材料を含む樹脂組成物により構成されている。匂い物質受容層14の電気抵抗値(電気伝導性)は、匂い物質の吸着状態に応じて変化する。匂いセンサ素子10は、感応膜としての匂い物質受容層14の電気抵抗値の変化を匂いの検知指標として用いるケミレジスター型の匂いセンサ素子である。
【0019】
匂い物質受容層14の厚さは、0.1μm~250μmであり。好ましくは0.1μm~200μmであり、更に好ましくは0.1μm~120μmであり、更に好ましくは0.1μm~50μmであり、更に好ましくは1μm~25μmである。なお、匂い物質受容層14の厚さは、中心部分と端部分とで異なる場合がある。例えば、
図2に示すように、基板12において、塗布領域が他の領域に比べて窪んだ構成を備えている場合、塗布領域に塗布されて形成される匂い物質受容層14の端部分は、基板12に付着するため、中心部と比べて盛り上がる。そのため、端部分の厚さは中心部分より厚くなる傾向にある。例えば、匂い物質受容層14の中心部の厚さは1~6μm程度となり、端部分は20μm程度となる場合がある。匂い物質受容層14の厚さは、中心部分と端部分とを含む複数箇所の厚さの平均値が上述の値の範囲内であればよい。また、匂い物質受容層14の厚さは、中心部分と端部分とを含む全体に亘って上述の範囲内であることが好ましい。匂い物質受容層14の厚さを前記範囲に設定することにより、匂い物質受容層14の匂い物質の吸着に起因する匂い物質受容層14の電気伝導性の変化を電気信号として精度良く検出することができる。なお、匂い物質受容層14の作成時に、塗工する膜の面積を電極形状等によって規制し、分注する匂い透過層の溶液の蒸発残留分と分注量とを制御することによって、匂い物質受容層14の厚さを制御することが可能である。
【0020】
[金属配線16]
図1および
図2に示すように、匂いセンサ素子10は、基板12上に設けられた一対の金属配線16を備えており、一対の金属配線16は、互いに平行に配置されかつ匂い物質受容層14に覆われている。一対の金属配線16は、匂い物質受容層14の電気伝導性の変化を計測するための電極として機能する。一対の金属配線16には、リード線18が接続されている。各金属配線16の幅は、好ましくは10μm~2mmであり、更に好ましくは10μm~1mmである。各金属配線16の厚さは、好ましくは1μm~100μmであり、更に好ましくは10μm~50μmである。各金属配線16の長さは、好ましくは100μm~50mmであり、更に好ましくは500μm~30mmである。一対の金属配線16の間隔は、好ましくは1μm~3mmであり、更に好ましくは1μm~1.5mmである。
【0021】
[匂い物質透過層20]
図1および
図2に示すように、匂いセンサ素子10は、匂い物質受容層14に覆うように設けられた他の感応膜としての匂い物質透過層20を備えていてもよい。匂い物質透過層20は、後述の匂いセンサ素子の感応膜の第2の製造方法(M2)によって基板12上に匂い物質受容層14を介して製造される。匂い物質透過層20は、匂い物質を選択的に匂い物質受容層14に到達させる機能を有する。匂い物質透過層20は、測定環境の湿度等による匂い物質受容層14の劣化速度を低下させる保護層としても機能を有する。匂い物質透過層20は、樹脂、およびフィラーとしてのゼオライト(結晶性ケイ酸塩の総称)を含む樹脂組成物により構成されている。なお、匂い物質透過層20は、樹脂、およびゼオライト以外のフィラーを含む樹脂組成物により構成されてもよい。匂い物質透過層20は、フィラーを含まない樹脂組成物により構成されてもよい。以下では、フィラーを含む樹脂組成物の場合を例に挙げて説明する。
【0022】
匂い物質透過層20の厚さは、0.1μm~200μmであり、好ましくは1μm~20μmである。匂い物質透過層20の厚さを0.1μm以上としたのは、0.1μm未満であると、匂い物質を選択的に匂い物質受容層14に到達させる機能を十分に発揮できなくなると共に、匂い物質受容層14を十分に保護できなくなるからである。匂い物質透過層20の厚さを200μm以下にしたのは、200μmを超えると、匂い物質受容層14まで到達する匂い物質が少なくなり、匂いセンサ素子10の測定感度が低下するからである。
【0023】
なお、匂いセンサ素子10の構成から他の感応膜としての匂い物質透過層20を省略してもよい。
【0024】
<匂い物質透過層20の厚さの測定方法>
以下、匂い物質透過層20の厚さの測定方法について、
図3を用いて説明する。
図3は、匂い物質受容層14および匂い物質透過層20を備える匂いセンサ素子10の断面を2.5万倍で観察した走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。匂い物質受容層14および匂い物質透過層20を備える匂いセンサ素子10の断面は、例えばクロスセクションポリッシャ、具体的にはIB-19530CP(日本電子株式会社製商品名)を用いて成形される。
図3において符号X1~符号X20で示す線は、それぞれの箇所における匂い物質受容層14と匂い物質透過層20との境界から匂い物質透過層20の表面までの長さを示す線である。以下では、匂い物質受容層14と匂い物質透過層20との境界から匂い物質透過層20の表面までの長さを、匂い物質透過層20の断面長さと称する。なお、匂い物質受容層14と匂い物質透過層20との境界は、例えばSEMの反射観察、電子像SEM-EDX、またはSTEM等を用いて決定することができる。
【0025】
匂い物質透過層20の厚さは、匂い物質透過層20の複数箇所における断面長さの平均値であってもよい。匂い物質透過層20の厚さの算出基準となる断面長さの測定箇所は、最も厚い箇所と最も薄い箇所との2箇所であってもよいし、匂い物質透過層20の中で任意に選択された10箇所であってもよいし、さらに多くともよい。一例として、
図3に示す例において符号X1~符号X20で示す20箇所の断面長さの平均値を匂い物質透過層20の厚さとしてもよい。匂い物質透過層20の厚さとして、複数箇所の断面長さの平均値が、上述した数値範囲に収まればよい。
【0026】
<匂い物質受容層14の厚さの測定方法>
また、匂い物質透過層20の厚さの測定方法と同様の方法を用いて、匂い物質受容層14の厚さが測定されてもよい。なお、匂い物質受容層14の厚さを測定する場合、匂い物質受容層14と匂い物質透過層20との境界から基板12の表面までの長さを、匂い物質受容層14の断面長さとする。
【0027】
〔匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法(M1)〕
図4から
図7を参照して、本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法(M1)について説明する。
図4は、本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法(M1)における吸入工程(M1-2)を説明する模式図である。
図5および
図6は、本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法(M1)における塗布工程(M1-3)を説明する模式図である。
図7は、本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法(M1)における乾燥工程(M1-4)を説明する模式図である。
【0028】
(匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法(M1)の概要)
図4から
図7に示すように、本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法(M1)は、基板12上に感応膜としての匂い物質受容層14を製造するための方法である。本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法(M1)は、準備工程(M1-1)と、吸入工程(M1-2)と、塗布工程(M1-3)と、乾燥工程(M1-4)と、交換工程(M1-5)と、を含む。そして、本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法(M1)における各工程の具体的な内容は、次の通りである。なお、第1の製造方法(M1)を開始する前に、予め金属配線16が配置された基板12を作成する工程が行われる。また、作成される基板12には、後述する樹脂組成物溶液L1またはL2の濡れ広がりが規制される構成が設けられる。
【0029】
(準備工程(M1-1))
樹脂およびフィラーとしての導電性材料を含む樹脂組成物に有機溶剤を加えて、撹拌機で均一に混練することで、スラリー状の樹脂組成物溶液L1(
図4参照)を生成して、容器22(
図4参照)に収容する。なお、樹脂組成物溶液L1は、界面活性剤を含んでいてもよい。一例として、10ml程度の樹脂組成物溶液L1を作製する場合、容器22は、20ml程度の容量のスクリュー管であってもよい。
【0030】
ここで、樹脂組成物溶液L1に含まれる樹脂は、特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂、ポリアルキレンオキサイド、アクリル樹脂、フッ素基含有樹脂、ビニル樹脂(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール等)、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、又はポリエステル樹脂等であってもよい。
【0031】
樹脂組成物溶液L1は、フィラーを含んでいてもよい。樹脂組成物溶液L1に含まれるフィラーとしての導電性材料は、導電性炭素材料であり、より具体的には、体積固有抵抗が0.25Ω・cm以下の炭素材料である。導電性炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、又はグラフェン等が挙げられる。導電性炭素材料の形状は、好ましくは、繊維状又は球状である。導電性炭素材料が繊維状である場合には、繊維径は、好ましくは、0.1μm~10μmであり、更に好ましくは、0.1μm~5μmである。繊維長は、好ましくは、0.1μm~10μmであり、更に好ましくは、1μm~10μmである。導電性炭素材料が球状である場合には、1次粒子径は、好ましくは、10nm~200nmであり、更に好ましくは、20nm~150nmである。
【0032】
樹脂中に分散した導電性材料同士が互いに接触して導電経路を形成することで、樹脂組成物が導電性を有する。また、匂いセンサ素子10の十分な導電性を発現する観点、および匂いセンサ素子10の十分な感度を発現する観点から、導電性材料の含有量は、樹脂組成物の合計量を100重量%とした場合に、好ましくは、10重量%~70重量%である。
【0033】
樹脂組成物溶液L1に含まれる界面活性剤は、導電性材料の分散剤としての作用を呈する。界面活性剤は、イオン性界面活性等の公知の界面活性剤から適宜に選ぶことが可能である。イオン性界面活性剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、又はノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0034】
樹脂組成物溶液L1に含まれる有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酪酸エチル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酪酸ブチル、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、トルエン、キシレン、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル、または、ジベンジルエーテルが挙げられる。
【0035】
E型粘度計(不図示)を用いた樹脂組成物溶液L1の粘度は、1mPa・s~500mPa・sであり、好ましくは、1mPa・s~300mPa・sである。樹脂組成物溶液L1の粘度を1mPa・s以上にしたのは、1mPa・s未満であると、樹脂組成物溶液L1を吸い上げた後にノズル28(
図4参照)の先端から漏れ出る可能性が高いからである。樹脂組成物溶液L1の粘度を500mPa・s以下としたのは、500mPa・sを超えると、基板12上に樹脂組成物溶液L1を塗布した後に樹脂組成物溶液L1が濡れ広がらないからである。粘度は、E型粘度計[型式「TV-22」、東機産業(株)製]でコーンローター:1°34’×R24、測定温度:25℃、ローター回転数:2rpmにて、測定開始60秒後の値を読み取る。
【0036】
樹脂組成物溶液L1に含まれる有機溶剤の沸点は、150℃~250℃である。有機溶剤の沸点を150℃以上としたのは、150℃未満であると、樹脂組成物溶液L1を貯留中に有機溶剤が揮発し固形分率が変化してしまうからである。ここで、樹脂組成物溶液L1の固形分率とは、樹脂組成物溶液L1の全体に対する固形分の割合を指し、例えば、一定量の樹脂組成物溶液L1における乾燥前の重量と乾燥させた後の重量との比であってもよい。有機溶剤の沸点を250℃以下にしたのは、250℃を超えると、乾燥工程(M1-4)で有機溶剤を除去しきれないからである。沸点は、1気圧(101325Pa)下における沸点を意味する。沸点は、沸点計により測定される値であり、例えばタイタンテクノロジーズ(株)製のDosaTherm300を用いて測定することができる。
【0037】
樹脂組成物溶液L1の固形分率は、2%~20%である。樹脂組成物溶液の固形分率を2%以上としたのは、2%未満であると、乾燥後の塗膜厚さが薄くなるため、感応膜としての匂い物質受容層14の表面の平滑性が低下するからである。樹脂組成物溶液L1の固形分率を20%以上としたのは、20%を超えると、樹脂組成物溶液L1の粘度が高くなり、ノズル28で樹脂組成物溶液L1を吸い上げにくくなるからである。樹脂組成物溶液L1の固形分率は、樹脂組成物溶液L1中の固形分の割合を示す値であり、JIS K0067:1992に基づいて測定される不揮発分である。ただし、樹脂組成物溶液L1の乾燥方法を減圧乾燥機、乾燥温度を100℃、乾燥時間を2時間とした。
【0038】
レオメーター(不図示)で測定した樹脂組成物溶液L1のチクソインデックスは、1.05~5.00である。樹脂組成物溶液L1のチクソインデックスを1.05以上としたのは、1.05未満であると、ノズル28で樹脂組成物溶液L1を吸い上げにくく、かつ塗布しにくくなるからである。樹脂組成物溶液L1のチクソインデックスを5.00以下にしたのは、5.00を超えると、吸い上げ時や塗布時にかかるせん断により樹脂組成物溶液L1の構造が破壊されやすくなるからである。
【0039】
チクソ性とは、せん断速度が大きくなるにつれて、粘度が減少する現象をいう。チクソ性を表す指標として、チクソインデックス(thixotropic index:TI値)が一般に用いられる。TI値とは低せん断速度における粘度を、高せん断速度における粘度で除した値で、1より大きいものはチクソ性を有すると言える。E型粘度計[型式「TV-22」、東機産業(株)製]でコーンローター:1°34‘×R24、測定温度:25℃、ローター回転数:2rpmにて、測定開始60秒後の値(2rpmでの粘度)を読み取る。さらに20rpmにて、測定開始60秒後の値(20rpmでの粘度)を読み取る。そして、2rpmでの粘度を20rpmでの粘度で除した値をチクソインデックスとする。
【0040】
(吸入工程(M1-2))
準備工程(M1-1)の途中又は終了後に、
図4に示すピペット型のディスペンサ24を用意する。ここで、ピペット型のディスペンサ24は、空気を吸入吐出可能なピペット26と、ピペット26の先端部に着脱可能に設けられたノズル28とを備えている。ノズル28は、ピペットチップと称されることもあり、樹脂組成物溶液L1の塗布量に合わせたサイズのものが使用される。本実施形態においては、例えば10μLのノズル28が使用される。ノズル28の形状として、標準タイプのものを使用しているが、ロングタイプ又は先細りタイプのものを使用してもよい。ノズル28として、一般に市販されている樹脂製ノズルを用いてもよく、ノズル28を構成する樹脂としては、例えばポリプロピレンが用いられる。
【0041】
準備工程(M1-1)の終了後に、
図4に示すように、ピペット型のディスペンサ24を用い、容器22に貯留した樹脂組成物溶液L1中にノズル28を浸漬させる。そして、ピペット26の吸入動作によって容器22から樹脂組成物溶液L1をノズル28に吸入する。
【0042】
(塗布工程(M1-3))
吸入工程(M1-2)の終了後に、
図5に示すように、ノズル28の先端部を基板12上の所定の部位に対向した状態で接近させる。そして、ピペット26の吐出動作によってノズル28から樹脂組成物溶液L1を吐出して、基板12上の所定の部位に塗布する。これにより、
図6に示すように、基板12上の所定の部位に塗膜F1を形成することができる。ノズル28の先端部と基板12との間の距離は、例えば0.3mmであってもよい。
【0043】
ここで、ノズル28からの樹脂組成物溶液L1の吐出量は、0.1μL~5.0μL、好ましくは、0.1μL~1μLである。樹脂組成物溶液L1の吐出量を0.1μL以上としたのは、0.1μL未満であると、基板12上に塗膜F1を安定的に形成することが困難になるからである。樹脂組成物溶液L1の吐出量を5.0μL以下としたのは、5.0μLを超えると、塗膜F1の表面の平滑性(滑らかさ)および均一性、すなわち感応膜としての匂い物質受容層14の表面の平滑性(滑らかさ)および均一性を高めることが困難になるからである。
【0044】
本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第1の製造方法(M1)において、塗布工程(M1-3)は、複数回繰り返されてもよい。なお、塗布工程(M1-3)は塗膜F1をそれぞれ異なる位置に形成するために行われる工程であり、樹脂組成物溶液L1を1か所に塗り重ねる工程ではない。例えば、1つの基板12上の複数箇所においてそれぞれ1回ずつ塗布工程(M1-3)が行われてもよいし、複数の基板12上においてそれぞれ1回ずつ塗布工程(M1-3)を行われてもよい。塗布工程(M1-3)を複数回繰り返すことで、複数の所定の部位に塗膜F1が形成された1つの基板12を作成したり、基板12上の所定の部位に塗膜F1が形成された複数の基板12を作成したりすることができる。また、同じノズル28を用いて複数回の塗布工程(M1-3)を繰り返す場合、1回の塗布工程(M1-3)毎にノズル28を交換しなくともよい。これにより、1回の塗布工程(M1-3)後にノズル28内に残る樹脂組成物溶液L1を無駄にせずに塗布を行うことができる。また、ノズル28の交換に要する時間を省略できるため、匂いセンサ素子10の生産速度を向上させることができる。
【0045】
(乾燥工程(M1-4))
塗布工程(M1-3)の終了後に、
図7に示すように、塗膜F1を乾燥させて、乾固物としての匂い物質受容層14を形成する。これにより、基板12上に感応膜としての匂い物質受容層14を製造することができる。
【0046】
塗膜F1の乾燥手法としては、特に限定されないが、例えば、常圧100℃で1時間加熱し、その後、真空乾燥機内で減圧しながら100℃で1時間加熱してもよい。なお、乾燥工程(M1-3)では、塗膜F1を乾燥させることができればよく、温度および減圧の条件は上述のものに限られない。例えば、乾燥工程(M1-3)において、塗膜F1を乾燥させるときの温度は40℃~160℃であってもよい。また、乾燥時の温度は徐々に上昇するなどの変動があってもよい。さらに、乾燥工程(M1-3)において減圧が行われる時間は0.5時間~3時間、例えば2時間であってもよい。また、乾燥工程(M1-3)において減圧は必須ではなく、省略されてもよい。
【0047】
(交換工程(M1-5))
塗布工程(M1-3)を所定回数実行する毎に、ノズル28の交換を行う。具体的には、塗布工程(M1-3)を所定回数実行した後に、ピペット26の先端部から使用済みのノズル28を離脱させて、ピペット26の先端部に未使用のノズル28を装着する。ここで、所定回数はノズル28における樹脂組成物の先端部への樹脂組成物溶液L1の這い上がりの具合に応じて任意に設定可能であり、1回であってもよいし、10回でもよいし、30回であってもよい。
【0048】
本実施形態に係る匂いセンサ素子10の感応膜の第1の製造方法の構成によると、前述のように、先端部に着脱可能なノズル28を備えたピペット型のディスペンサ24を用い、ノズル28から樹脂組成物溶液L1を吐出して、基板12上の所定の部位に塗布することで、基板12上の所定の部位に塗膜F1を形成している。また、ノズル28からの樹脂組成物溶液L1の吐出量は、0.1μL~5.0μLである。そのため、ノズル28の先端部への樹脂組成物溶液L1の這い上がりを抑えつつ、塗膜F1の表面の平滑性(滑らかさ)を高めて、感応膜としての匂い物質受容層14の表面の平滑性を高めることができる。その結果、本実施形態に係る匂いセンサ素子10の感応膜の第1の製造方法によれば、匂い物質受容層14の製造安定性を高めつつ、匂いセンサ素子10の感度を向上させることができる。
【0049】
樹脂組成物溶液L1を所定回数以上吸入したノズル28を用いて、樹脂組成物溶液L1を吸入すると、ノズル28の先端部への樹脂組成物溶液L1の這い上がりによる影響が大きくなる。そこで、塗布工程(M1-3)を所定回数実行する毎にノズル28の交換を行う。これにより、ノズル28の先端部への樹脂組成物溶液L1の這い上がりを抑えつつ、匂い物質受容層14の表面の平滑性をより高めて、匂いセンサ素子10の感度をより向上させることができる。
【0050】
樹脂組成物溶液L1がフィラーとしての導電性材料(導電性炭素材料)を含む場合には、ノズル28の液切りが良好になり、匂い物質受容層14の製造安定性をより高めることができると共に、匂い物質受容層14における樹脂比率を下げて、匂いセンサ素子10の感度をより向上させることができる。
【0051】
〔匂いセンサ素子10の感応膜の第2の製造方法(M2)〕
図8から
図11を参照して、本実施形態に係る匂いセンサ素子10の感応膜の第2の製造方法(M2)について説明する。
図8は、本実施形態に係る匂いセンサ素子10の感応膜の第2の製造方法(M2)における吸入工程(M2-2)を説明する模式図である。
図9および
図10は、本実施形態に係る匂いセンサ素子10の感応膜の第2の製造方法(M2)における塗布工程(M2-3)を説明する模式図である。
図11は、本実施形態に係る匂いセンサ素子10の感応膜の第2の製造方法における乾燥工程(M2-4)を説明する模式図である。
【0052】
(匂いセンサ素子10の感応膜の第2の製造方法(M2)の概要)
図8から
図11に示すように、本実施形態に係る匂いセンサ素子10の感応膜の第2の製造方法(M2)は、基板12上に感応膜としての匂い物質透過層20を匂い物質受容層14を介して製造するための方法である。本実施形態に係る匂いセンサ素子10の感応膜の第2の製造方法(M2)は、準備工程(M2-1)と、吸入工程(M2-2)と、塗布工程(M2-3)と、乾燥工程(M2-4)と、交換工程(M2-5)とを含む。そして、本実施形態に係る匂いセンサ素子10の感応膜の第2の製造方法(M2)における各工程の具体的な内容は、次の通りである。なお、匂いセンサ素子10が匂い物質透過層20を備えない構成である場合、第2の製造方法(M2)における各工程は省略される。
【0053】
(準備工程(M2-1))
樹脂およびフィラーを含む樹脂組成物に有機溶剤を加えて、撹拌機で均一に混練することで、樹脂組成物を生成する。なお、樹脂組成物はフィラーを含んでいてもよいし含んでいなくともよい。そして、樹脂組成物を溶解することで、樹脂組成物溶液L2(
図8参照)を生成して、容器30(
図8参照)に収容する。なお、樹脂組成物溶液L2は、界面活性剤を含んでいてもよい。なお、容器30は、容器22と同様の形状の容器であってよい。
【0054】
ここで、樹脂組成物溶液L2に含まれる樹脂は、特に限定されないが、例えば、ビニル樹脂(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール等)又はシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアルキレンオキサイド、アクリル樹脂、フッ素基含有樹脂、ビニル樹脂(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール等)、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、又はポリエステル樹脂等であってもよい。
【0055】
樹脂組成物溶液L2に含まれる有機溶剤は、特に限定されないが、樹脂組成物溶液L1(
図4参照)に含まれる有機溶剤と同じ有機溶剤を用いてもよい。
【0056】
E型粘度計を用いた樹脂組成物溶液L2の粘度は、樹脂組成物溶液L1の粘度の設定理由と同じ理由により、1mPa・s~500mPa・sであり、好ましくは、1mPa・s~300mPa・sである。また、樹脂組成物溶液L2に含まれる有機溶剤の沸点は、樹脂組成物溶液L1に含まれる有機溶剤の沸点の設定理由と同じ理由により、150℃~250℃である。
【0057】
樹脂組成物溶液L2の固形分率は、樹脂組成物溶液L1の固形分率の設定理由と同じ理由により、2%~20%である。また、レオメーター(不図示)で測定した樹脂組成物溶液L2のチクソインデックスは、樹脂組成物溶液L1のチクソインデックスの設定理由と同じ理由により、1.05~5.00である。
【0058】
(吸入工程(M2-2))
準備工程(M2-1)の終了後に、
図8に示すように、ピペット型のディスペンサ24を用い、容器30に貯留した樹脂組成物溶液L2中にノズル28を浸漬させる。そして、ピペット26の吸入動作によって容器30から樹脂組成物溶液L2をノズル28に吸入する。
【0059】
(塗布工程(M2-3))
吸入工程(M2-2)の終了後に、
図9に示すように、ノズル28の先端部を基板12上の所定の部位に対向した状態で、塗布面から0.3mm程度の距離まで接近させる。そして、ピペット26を吐出動作させることで、ノズル28から樹脂組成物溶液L2を吐出して、基板12上の所定の部位に匂い物質受容層14を覆うように塗布する。これにより、
図10に示すように、基板12上の所定の部位に匂い物質受容層14を介して塗膜F2を形成することができる。
【0060】
ここで、ノズル28からの樹脂組成物溶液L2の吐出量は、ノズル28からの樹脂組成物溶液L1の吐出量の設定理由と同じ理由により、0.1μL~5.0μL、好ましくは、0.1μL~1μLである。
【0061】
本実施形態に係る匂いセンサ素子10の感応膜の第2の製造方法(M2)において、塗布工程(M2-3)は、複数回繰り返してもよい。塗布工程(M2-3)を複数回繰り返すことで、複数の基板12上の所定の部位に匂い物質受容層14を介して塗膜F2を形成したり、基板12の複数の所定の部位に匂い物質受容層14を介して塗膜F2を形成したりすることができる。
【0062】
(乾燥工程(M2-4))
塗布工程(M2-3)の終了後に、
図11に示すように、塗膜F2を乾燥させて、乾固物としての匂い物質透過層20を形成する。これにより、基板12上に感応膜としての匂い物質透過層20を匂い物質受容層14を介して製造することができる。
【0063】
塗膜F2の乾燥手法としては、特に限定されないが、塗膜F1の乾燥手法と同じ手法を用いてもよい。なお、塗膜F2の乾燥工程(M2-3)における乾燥温度および時間等の条件は、塗膜F1の乾燥工程(M1-3)における乾燥温度および時間等の条件とは同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0064】
(交換工程(M2-5))
塗布工程(M2-3)を所定回数(1回を含む)だけ実行した後に、ノズル28の交換を行う。具体的には、塗布工程(M2-3)を所定回数だけ実行した後に、ピペット26の先端部から使用済みのノズル28を離脱させて、ピペット26の先端部に未使用のノズル28を装着する。
【0065】
本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第2の製造方法の構成によると、前述のように、先端部に着脱可能なノズル28を備えたピペット型のディスペンサ24を用い、ノズル28から樹脂組成物溶液L2を吐出して、基板12上の所定の部位に匂い物質受容層14を覆うように塗布することで、基板12上の所定の部位に匂い物質受容層14を介して塗膜F2を形成している。また、ノズル28からの樹脂組成物溶液L2の吐出量は、0.1μL~5.0μLである。そのため、ノズル28の先端部への樹脂組成物溶液L2の這い上がりを抑えつつ、塗膜F2の表面の平滑性(滑らかさ)を高めて、感応膜としての匂い物質透過層20の表面の平滑性を高めることができる。その結果、本実施形態に係る匂いセンサ素子の感応膜の第2の製造方法によれば、匂い物質透過層20の製造安定性を高めつつ、匂いセンサ素子10の感度を向上させることができる。
【0066】
塗布工程(M2-3)を所定回数だけ実行した後に、ノズル28の交換を行う場合には、樹脂組成物溶液L2を一度吸入したノズル28を用いて、樹脂組成物溶液L2を再度吸入することはない。これにより、ノズル28の先端部への樹脂組成物溶液L2の這い上がりをより十分に抑えて、匂い物質透過層20の表面の平滑性をより高めて、匂いセンサ素子10の感度をより向上させることができる。
【0067】
樹脂組成物溶液L2がフィラーとしてのゼオライトを含む場合には、ノズル28の液切りが良好になり、匂い物質透過層20の製造安定性をより高めることができると共に、匂い物質透過層20における樹脂比率を下げて、匂いセンサ素子10の感度をより向上させることができる。なお、樹脂組成物溶液L2がフィラーとして含む物質はゼオライトに限られず、ゼオライトとは異なる無機粒子または樹脂粒子であってもよい。
【0068】
〔匂いセンサ32〕
匂いセンサ素子10を備える匂いセンサの構成例を、
図12を参照して説明する。
図11は、本実施形態に係る匂いセンサ32を説明する模式図である。
図12には、匂いセンサ素子10を1つ備える匂いセンサ32を示しているが、これに限定されない。例えば、匂いセンサ32は、樹脂組成物が互いに異なる匂いセンサ素子10を複数備える構成であってもよい。
【0069】
(匂いセンサ32の概要、筐体34、対象試料受入部36)
図12に示すように、本実施形態に係る匂いセンサ32は、匂い物質を検出するためのセンサであり、匂いセンサ素子10を備えている。匂いセンサ32は、匂いセンサ素子10を収納するための筐体34を備えている。筐体34には、匂い物質を含む空気を筐体34内に導入するための導入口34iが形成されており、筐体34における導入口34iから離隔した位置には、匂い物質を含む空気を筐体34内から排出するための排出口34eが形成されている。また、筐体34の導入口34iは、対象試料から発生した匂い物質を含む気体を収容する前室としての対象試料受入部36に接続されている。対象試料受入部36に収容された、対象試料から発生した匂い物質を含む気体は、例えば窒素および空気などを対象試料受入部36に送ることによって、筐体34内へと導入される。
【0070】
(定電圧電源38、電圧計40)
匂いセンサ32は、匂いセンサ素子10に給電するための電源としての定電圧電源38を備えており、定電圧電源38は、リード線18を介して一対の金属配線16に接続されている。定電圧電源38は、匂いセンサ素子10にリード線18を介して定電圧を供給する。定電圧電源38が供給する電圧値は、0.5V~10Vであり、例えば2.5V又は5.0Vである。また、匂いセンサ32は、定電圧電源38から定電圧を匂い物質受容層14に供給された場合に、一対の金属配線16の間の電位差を測定する測定機器としての電圧計40を備えている。電圧計40は、リード線18を介して一対の金属配線16に接続されている。電圧計40は、解析装置(不図示)に接続されており、解析装置は、電圧計40から出力された測定値に基づいて、匂いセンサ素子10の電気伝導性を示す値(例えば、電気抵抗値およびインピーダンス等)を算出する。
【0071】
なお、匂いセンサ32は、匂い物質測定用回路において、電圧計40の前段にアンプ(不図示)を備えており、当該アンプは取得した信号を増幅して電圧計40に供給する。また、匂いセンサ32は、匂い物質測定用回路の他に、リファレンス回路(不図示)を備えており、電圧計40は、匂い物質測定用回路において取得された値とリファレンス回路において取得された値との差(電位差)を電圧値として取得する。
【0072】
匂いセンサ32は、定電圧電源38の代替として不図示の定電流源(電源)、電圧計40の代替として不図示の電流計(測定機器)を備えていてもよい。この場合には、定電流源は、匂いセンサ素子10に給電するための電源として機能し、匂いセンサ素子10にリード線18を介して定電流を印加する。一方、電流計は、匂い物質受容層14に定電流が印加された場合に、一対の金属配線16の間を流れる電流値を測定する。
【0073】
<匂いセンサ素子10の構成例>
図13は、匂いセンサ32に含まれる1つの匂いセンサ素子10の一例である匂いセンサ素子10Aの構成の一例を示す上面図である。匂いセンサ素子10A、基板12上に配置された一対の金属配線16と、金属配線16上に形成された円状の匂い物質受容層14Aと、を備える。なお、
図13には示していないが、匂いセンサ素子10Aは、匂い物質透過層20を備えていてもよい。一対の金属配線16は、第1金属配線16Aと第2金属配線16Bとを含む。第1金属配線16Aおよび第2金属配線16Bはそれぞれ、匂い物質受容層14Aの電気伝導性の変化を計測するための電極として機能する金属配線である。匂い物質受容層14Aの直径Rは、0.2mm以上、5mm以下である。
図13において、匂いセンサ素子10Aが備える匂い物質受容層14Aの形状は一例として楕円状であるが、これに限定されない。匂い物質受容層14Aの形状が楕円である場合は、短径と、長径との平均が0.2mm以上、5mm以下であってよい。また、匂い物質受容層14Aの形状は真円であってもよい。
【0074】
図14は、1つの匂いセンサ素子10の別の例である匂いセンサ素子10Bを示す上面図である。匂いセンサ素子10Bは、基板12上に配置された金属配線16(第1金属配線16A、第2金属配線16B)と、金属配線16上に形成された帯状の匂い物質受容層14Bと、を備える。匂い物質受容層14Bの短方向の幅の長さWは、0.2mm以上、5mm以下である。なお、以下の説明において特に匂い物質受容層14Aと14Bとを区別しない場合、「匂い物質受容層14」と総称する。
【0075】
匂いセンサ32が含む匂いセンサ素子10の金属配線16は、それぞれ第1金属配線および第2金属配線を有し、第1金属配線および第2金属配線は、平行線状、平行曲線状、櫛形状、または同心円状に配置されていてもよい。第1金属配線および第2金属配線は、前記のどの形状が採用される場合においても、互いに線対称、または点対称で配置されていることが好ましい。このように第1金属配線および第2金属配線が配置されることにより、匂いセンサ32は、気体に含まれる匂い物質を高精度に測定することができる。
【0076】
図13の匂いセンサ素子10Aは、第1金属配線16Aと、第2金属配線16Bを有している。また、一例として、第1金属配線16Aは、金属配線161Aと、金属配線161Bとから構成されている電極であり、2本の金属配線は、互いに垂直になるようT字状に配されている。第2金属配線16Bは、第1金属配線16Aと同様に2本の金属配線161C、161Dから構成されている電極であり、2本の金属配線が互いに垂直になるようT字状に配されるよう構成されている。また、第1金属配線16Aと、第2金属配線16Bとは、金属配線161Aと、金属配線161Cとが向かい合うように平行線状に配置されている。
【0077】
例えば、金属配線16が櫛形状に配置されている場合は、第1金属配線16Aと第2金属配線16Bとの間の距離が短くなり、金属配線16の抵抗値が小さくなり過ぎる虞がある。これに対して、第1金属配線16Aおよび第2金属配線16Bは、特に、互いにT字状に配されていることにより、第1金属配線16Aと、第2金属配線16Bとを好適な距離に設置することができ、金属配線16(電極)の抵抗値を安定化させることができる。また、第1金属配線16Aおよび第2金属配線16Bが互いにT字状に配されていることにより、上述の匂いセンサ素子10の製造方法の塗布工程において、樹脂組成物が濡れ広がる領域の端部に、濡れ広がりを妨げ得る金属配線16の凹凸部分が存在しないため、樹脂組成物が濡れ広がり易くなる。また、樹脂組成物が濡れ広がり易くなることより、乾燥後の匂い物質受容層14および匂い物質透過層20の厚みが一定になるという効果がある。
【0078】
図15は、1つの匂いセンサ素子10Aの構成の一例を示す斜視図である。
図15に示すように、匂いセンサ素子10Aにおいて、第1金属配線16Aおよび第2金属配線16Bは、第1金属配線16Aおよび第2金属配線16Bが互いに対向しない方の端部において、それぞれピン22と接続されている。ピン22は第1金属配線16Aおよび第2金属配線16Bと、匂いセンサ32の他の部材とを電気的に接続するための導電部材である。なお、図示されていないが、
図14に示す匂いセンサ素子10Bも、
図15に示すピン22を備えている。
【0079】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る匂いセンサ素子の感応膜の製造方法は、基板上に匂いセンサ素子の感応膜を製造するための方法であって、先端部に着脱可能なノズルを備えたピペット型のディスペンサを用い、有機溶剤を含む樹脂組成物溶液を貯留した容器から、前記樹脂組成物溶液を前記ノズルに吸入する吸入工程と、前記吸入工程の終了後に、前記ノズルから前記樹脂組成物溶液を吐出して前記基板上に塗布することにより、前記基板上に塗膜を形成する塗布工程と、前記塗布工程の終了後に、前記塗膜を乾燥させて前記感応膜を形成する乾燥工程と、を含む。前記ノズルからの前記樹脂組成物溶液の吐出量は、0.1μL~5.0μLである。
【0080】
本発明の態様2に係る匂いセンサ素子の感応膜の製造方法は、前記態様1において、前記樹脂組成物溶液の粘度は、1mPa・s~500mPa・sであり、前記有機溶剤の沸点は、150℃~250℃であってもよい。
【0081】
本発明の態様3に係る匂いセンサ素子の感応膜の製造方法は、前記態様1又は2において、前記樹脂組成物溶液の固形分率は、2%~20%であってもよい。
【0082】
本発明の態様4に係る匂いセンサ素子の感応膜の製造方法は、前記態様1から3のいずれかにおいて、レオメーターで測定した前記樹脂組成物溶液のチクソインデックスは、1.05~5.00であってもよい。
【0083】
本発明の態様5に係る匂いセンサ素子の感応膜の製造方法は、前記態様1から4のいずれかにおいて、前記樹脂組成物溶液は、フィラーを含んでもよい。
【0084】
本発明の態様6に係る匂いセンサ素子の感応膜の製造方法は、前記態様5において、前記フィラーは、導電性材料であってもよい。
【0085】
本発明の態様7に係る匂いセンサ素子の感応膜の製造方法は、前記態様6において、前記導電性材料は、導電性炭素材料であってもよい。
【0086】
本発明の態様8に係る匂いセンサ素子の感応膜の製造方法は、前記態様5において、前記フィラーは、ゼオライトであってもよい。
【0087】
本発明の態様9に係る匂いセンサ素子の感応膜の製造方法は、前記態様1から8のいずれかにおいて、前記塗布工程を所定回数実行する毎に、前記ノズルの交換を行う交換工程を更に含んでもよい。
【0088】
本発明の態様10に係る匂いセンサ素子の感応膜の製造方法は、前記態様1から9のいずれかにおいて、前記匂いセンサ素子は、前記感応膜の電気抵抗値の変化を匂いの検知指標として用いるケミレジスター型の匂いセンサ素子であってもよい。
【0089】
本発明の態様11に係る匂いセンサ素子の感応膜は、前記態様1から10のいずれかの匂いセンサ素子の感応膜の製造方法によって製造されている。
【0090】
本発明の態様12に係る匂いセンサ素子は、基板と、前記態様1から10のいずれかの匂いセンサ素子の感応膜の製造方法によって前記基板上に製造された感応膜と、を備える。
【0091】
本発明の態様13に係る匂いセンサ素子は、前記態様12において、前記感応膜は、匂い物質受容層であってもよい。
【0092】
本発明の態様14に係る匂いセンサ素子は、前記態様12において、前記感応膜は、匂い物質透過層であってもよい。
【0093】
本発明の態様15に係る匂いセンサは、前記態様12から14のいずれかの態様に係る匂いセンサ素子を備える。
【0094】
〔付記事項〕
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例0095】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0096】
実施例および比較例で使用する各種材料に関する説明を以下に示す。
【0097】
<樹脂(A)>
A1:ポリアミド樹脂(後述の<ポリアミド樹脂A1>に記載の方法に基づいて製造)
A2:ブチラール樹脂(クラレ(株)製、「モビタールB75H」)
A3:シリコーン樹脂(DOWSIL RSN-0255 Flake Reasin、ダウ・東レ(株)製)
<フィラー(B)>
B1:カーボンブラック(デンカ(株)製、「デンカブラック」、一次粒子径:48nm、DBP吸油量:177cm3/100g)
B2:カーボンブラック(MTI Corporation社製、「SuperC65」、一次粒子径:50nm、DBP吸油量:254cm3/100g)
B3:カーボンナノチューブ(昭和電工(株)製、「VGCF-H」)
B4:ハイシリカゼオライト(東ソー(株)製、「HSZ―690HOA」)
<界面活性剤(C)>
C1:ポリエーテルリン酸エステルのアミン塩(ディスパロンDA-325、楠本化成(株)製)
<溶媒(D)>
D1:N-メチル-2-ピロリドン(沸点:202℃)
D2:酪酸ブチル(沸点:165℃)
D3:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:230℃)
D4:N,N-ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)
D5:酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:247℃)
D6:メチルエチルケトン(沸点:80℃)
D7:ジベンジルエーテル(沸点:297℃)
D8:1-デカノール(沸点:232℃)
<添加剤(E)>
E1:シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBE-13」)
樹脂(A)の製造例1を示す。
【0098】
製造例1-1(ポリエステル樹脂P1の製造)
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管、還流管、コック付き脱水管および減圧装置を備えた反応容器に、12-ヒドロキシステアリン酸58.2部、ε-カプロラクトン441.8部を仕込み、窒素雰囲気下で140℃まで4時間かけて昇温し、その後2時間反応させ、ε-カプロラクトンの残量が1%以下になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕して粒子化し、ポリエステル樹脂P1を得た。ポリエステル樹脂P1の数平均分子量(Mn)は2600で、酸価が21.7mg KOH/gであった。
【0099】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mv)の測定方法>
数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mv)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(HLC-802A(東ソー(株)製))を用いて下記の条件で測定した。
カラム:G4000PWXL(東ソー(株)製)、G5000PWXL(東ソー(株)製)以上2本を直列に配した。
移動相:20%アセトニトリル(50mM塩化リチウムを含む)
流速:0.8mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:L-6200((株)日立製作所製)
検出器:L-3300(RI:示差屈折計、(株)日立製作所製)およびL-4200(UV-VIS:紫外可視吸光計、(株)日立製作所製)
試料溶液:0.5重量%のアセトニトリル溶液
試料注入量:200μL。
【0100】
<酸価の測定方法>
酸価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定した。
【0101】
製造例1-2(ポリアミド樹脂A1の製造)
製造例1-1に記載の反応容器と同じ構成の反応容器に、キシレン120部、ポリアリルアミン20%水溶液(ニットーボーメディカル(株)製、商品名「PAA-03」、重量平均分子量)82.3部を投入し、密閉下、撹拌しながら160℃まで昇温し、コック付き脱水管にて溜出した水を除去した。この間、溜出物中のキシレンは、水と分離し、反応容器に返流した。その後、製造例1-1で得たポリエステル樹脂P1のキシレン溶液83.5部を加え、160℃で3時間撹拌を継続した。3時間後、減圧装置によりキシレンを除去し、酸価が14.9mgKOH/g、重量平均分子量が10,200のポリアミド樹脂A1を得た。
【0102】
以下、樹脂組成物溶液の製造例を示す。
【0103】
製造例2<樹脂組成物溶液(S-1)>
下記の成分を下記の量でサンプル瓶に量り取り、混合物を得た。
【0104】
樹脂A1(ポリアミド樹脂) 30重量部
フィラーB1 20重量部
溶剤D1 450重量部
当該混合物を、自転/公転ミキサー((株)シンキー製ARE-310)を用いて2000回転/分で20分間撹拌して、スラリーを得た。こうして当該スラリーとして樹脂組成物溶液(S-1)を得た。
【0105】
製造例3~19<樹脂組成物溶液(S-2)~(S-18)>
表1に記載の配合量に基づき、サンプル瓶に量り取り、樹脂組成物溶液(S-1)と同様にして、樹脂組成物(S-2)~(S-18)を作製した。なお、界面活性剤(C1)または添加剤(E1)を用いる場合は、他の成分と同様にサンプル瓶に量り取った。
【0106】
樹脂組成物溶液それぞれの組成および物性値を表1に示す。
【0107】
【0108】
<センサ用基板K-1の製造>
〔基板の製造〕
図16および
図17は、実施例において用いたセンサ用基板K-1の製造方法を説明するための概略図である。本実施例では、縦150mm、横100mm、厚み1.0mmのガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層板FR-4.0(パナソニック電工(株)製)を用い、
図16および
図17に示すように、当該積層板上に設計したセンサ用基板(実施形態中の基板12に対応)を、後述の方法により、縦方向に16行、横方向に16列(合計256個分)製造した。この時、余白部分として上下部分に各11mm、左右部分に各10mmを確保した。
【0109】
〔配線パターンの設計〕
図18および
図19は、実施例として用いたセンサ用基板K-1の構成を示す概略図である。
図18は、センサ素子(実施形態中の匂いセンサ素子10に対応)の表面(
図14において金属配線16および匂い物質受容層14が配置される面)を示し、
図19は、センサ素子の裏面(表面に対して反対側の面)を示す。
図16に示すように、基板サイズが縦8mm、横5mmの、
図14に示したT字型の金属配線(第1金属配線16Aおよび第2金属配線16B)が向かい合う形状であり、金属配線161Aおよび金属配線161Cの長さが2.5mm、金属配線161Bおよび金属配線161Dの長さが2mm、金属配線161Aと金属配線161Cとの間隔が1.5mm、各金属配線の幅が0.3mmである配線パターンを、上述の積層板上に合計256個分設計した。さらに、
図18および
図19に示すように、匂いセンサの他の部材と電気的に接続するための導電部材であるピンを挿す部分として、第1金属配線16Aおよび第2金属配線16Bが互いに対向しない方の端部に直径1mmの円形状の導通部を設け、裏面の同じ位置にも同様に直径1mmの円形状の導通部を設計した。
【0110】
〔スルーホール作製工程〕
各センサ用基板にピン(実施形態中のピン22に対応)を実装するため、直径1mmの円形状の導通部分にNCドリルマシンを用いてスルーホール用の穴を開け、まず無電解銅めっき、次いで硫酸銅めっきを施して厚さ25μmの銅めっき層を有するスルーホールを作製した。
【0111】
〔パターン形成工程〕
センサ用基板の両面に感光性ドライフィルムレジスト(商品名「フォテックRD-3025」、膜厚25μm、昭和電工マテリアルズ(株)製)をロールラミネータ(圧力0.4MPa、温度110℃、ラミネート速度0.4m/min)を用いて貼り付けた。その後、紫外線露光機にて感光性ドライフィルムレジスト側から表面用ネガ型フォトマスクおよび裏面用ネガ型フォトマスクを介し、紫外線(波長355nm)を85mJ/cm2照射し、未露光部分の感光性ドライフィルムレジストを35℃の5重量%の炭酸ナトリウム水溶液で除去した。その後、塩化第二鉄水溶液を用いて、感光性ドライフィルムレジストが除去されむき出しになった部分の銅箔をエッチングにより除去し、35℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、露光部分の感光性ドライフィルムレジストを除去した。
【0112】
この時に使用した表面用ネガ型フォトマスクは、設計したセンサ用基板を、縦方向に8mmおきに16行、横方向に5mmおきに16列配置したパターン、裏面用ネガ型フォトマスクは、表面用ネガ型フォトマスクの円形状部分と一致する位置に直径1mmの円形状を配置したパターンを使用した。
【0113】
〔ソルダーレジスト工程〕
二液性アルカリ現像型ソルダーレジストインキ(太陽インキ製造(株)製、商品名「PSR-4000 AUS320/CA-40 AUS320」)を、表面側は、銅箔部分、スルーホール部分、および帯状の匂い物質受容層14部分(
図18において斜線で示す部分)を除く部分、裏面側は、銅箔部分およびスルーホール部分を除く部分にパターン印刷し、80℃で30分間加熱し仮乾燥した後、紫外線(波長355nm)を600mJ/cm
2照射し、未露光部分を35℃の1重量%の炭酸ナトリウム水溶液で除去した。その後、150℃で60分間加熱しソルダーレジストインキを硬化させた。センサ用基板上に形成されるソルダーレジストは、後の工程で塗布される樹脂組成物溶液の濡れ広がりを規制することができる。
【0114】
〔表面処理工程〕
センサ用基板を、脱脂、ソフトエッチング、および酸洗浄し、触媒付与液(奥野製薬工業(株)製、商品名「ICPアクセラCOA」)に25℃で5分間浸漬後、水洗し、90℃の無電解Niめっき液(奥野製薬工業(株)製、商品名「トップニコロンSA-98-MLF」100mlおよび「トップニコロンSA-98-1LF」55mlで建浴)に6分間浸漬して3μmの厚さのNi被膜を形成し、その後、純水にて洗浄を実施した。
【0115】
次に、センサ用基板を、置換型金めっき液(小島化学薬品(株)製、商品名「オーエル2300」)に85℃で5分間浸漬し、Ni被膜上に0.05μmの厚さの置換金被膜を形成し、銅箔部分が、ニッケル及び金のめっきに被覆された基板を得た。
【0116】
〔基板のVカット〕
Vカットマシンを用いて、1個のセンサ用基板ごとに切り離すことができるように縦8mm、横5mmのサイズごとにVカットを行った。
【0117】
〔ピンの実装〕
作製したスルーホールにIC用端子((株)マックエイト製、商品名「ハイブリットIC用端子」、φ0.6mm、長さ5mm)をはんだ付けした。これらにより
図18および
図19に示すセンサ用基板K-1を合計256個作製した。
【0118】
<センサ素子>
実施例1
武蔵エンジニアリング株式会社製の1μPIPETMASTERを用い、ビオラモ製ビオラモサクラチップ(容量10μL、材質ポリプロピレン。専用ラック収納品)を取り付けた後、作製した樹脂組成物溶液(S-1)を貯留した容器から樹脂組成物溶液(S-1)を10μL吸入した。吸入後のピペットチップを容器の縁に付け液切りを行った後、作製したセンサ用基板K-1上に樹脂組成物溶液(S-1)を0.1μL吐出することで、金属配線部に塗布した。塗布後、100℃に加熱した循風乾燥機で3時間乾燥させ、乾燥後、室温まで冷却することで、センサ素子(E1-1)を作製した。なお、上記の吐出工程以降の操作を連続で10回行い、センサ素子(E1-1)を10個作製した。
【0119】
実施例2~実施例27、比較例2、3
表2に記載の吐出量、連続吐出回数に基づき、実施例1と同様の操作を行い、センサ素子(E1-2)~(E1-27)、(E’1-2)~(E’1-3)を各10個作製した。なお、連続吐出回数が10回未満のものは、連続吐出回数だけ吐出した後、ビオラモサクラチップを廃棄し、新品のビオラモサクラチップを取り付けて実施例1に記載の吸入工程、吐出工程、乾燥工程の操作を行った。
【0120】
実施例28~実施例54、比較例6、7
表3の匂い物質受容層の欄に記載の樹脂組成物溶液および吐出量、連続吐出回数に基づき、実施例1と同様の操作を行い、匂い物質受容層を有するセンサ素子を各10個作製した。その後、使用したビオラモサクラチップを廃棄し、新品のビオラモサクラチップを取り付けて、表3の匂い物質透過層の欄に記載の樹脂組成物溶液および吐出量、連続吐出回数に基づき、実施例1と同様の操作を行い、匂い物質透過層を有するセンサ素子(E2-1)~(E2-27)、(E’2-3)~(E’2-4)を各10個作製した。
【0121】
比較例1
SUS製金属ニードルノズル(内径0.1mmΦ,外形0.23mm)を取り付けたシリンジに、樹脂組成物溶液(S-1)を注ぎ入れ、プランジャを押し込むことで噛みこんだ空気を除去してから、武蔵エンジニアリング株式会社製のIMAGE MASTER350PCSmartに取り付けた。これを用いて、作製したセンサ用基板K-1上に樹脂組成物溶液(S-1)を0.1μL吐出することで、金属配線部に塗布した。塗布後、100℃に加熱した循風乾燥機で3時間乾燥させた。乾燥後、室温まで冷却することで、センサ素子(E’1-1)を作製した。なお、同様の操作を10回繰り返し行い、センサ素子(E’1-1)を10個作製した。
【0122】
比較例4、5
表3の匂い物質受容層の欄に記載の樹脂組成物溶液および吐出量、連続吐出回数に基づき、比較例1と同様の操作を行い、匂い物質受容層を有するセンサ素子を各10個作製した。その後、使用したシリンジとは別のシリンジを用い、表2の匂い物質透過層の欄に記載の樹脂組成物溶液および吐出量、連続吐出回数に基づき、比較例1と同様の操作を行い、匂い物質透過層を有するセンサ素子(E’2-1)~(E’2-2)を各10個作製した。
【0123】
<匂いセンサの構築>
検体(匂い物質)を導入する導入口および温度調整用のアルミブロック恒温槽を備えた対象試料受入部と、気体供給用の窒素ガスボンベ、マスフローコントローラ、センサチャンバとを備えた筐体を作製した。この時、対象試料受入部の容積は、センサチャンバの容積の5倍となるように設計した。
【0124】
センサの端子を外部へ取り出すためのリード線を、評価対象のセンサ素子(E1-1)~(E1-27)、(E2-1)~(E2-27)、(E’1-1)~(E’1-3)、(E’2-1)~(E’2-4)それぞれにはんだ付けし、センサチャンバ内に設置した。センサ素子(E1-1)~(E1-27)、(E2-1)~(E2-27)、(E’1-1)~(E’1-3)、(E’2-1)~(E’2-4)それぞれに対し、センサチャンバ外部に取り出したリード線の末端に5Vの定電圧電源と300Ωの固定抵抗を直列に接続し、センサ素子の両端子にかかる電圧を測定するための電圧計を接続した。こうして、センサ素子(E1-1)~(E1-27)、(E2-1)~(E2-27)および比較用センサ素子(E’1-1)~(E’1-3)、(E’2-1)~(E’2-4)のいずれかを有する複数の匂いセンサを構築した。なお、匂いセンサの番号と匂いセンサが有するセンサ素子の番号との対応は、表2、3に示すとおりである。
【0125】
〔評価〕
<イオン交換水測定の電圧変化量(ΔV)の測定>
匂いセンサ1~54およびc1~c7のそれぞれについて、実験室内(温度25℃、湿度50%)に設置し、アルミブロック恒温槽を用いて、対象試料受入部内部を30℃に温調した上で、対象試料受入部に検体としてイオン交換水を5ml入れた。その後、キャリアガス導入部からキャリアガスとしての窒素をセンサ素子が設置されているチャンバ内へ、ガスフロー調整器によって1L/minの流量で流し、外部に排出した。この間、センサ素子に接続されている電圧計の測定値をコンピュータで記録した。こうして、匂いセンサにおける10個のセンサ素子のそれぞれの電圧値を測定した。各匂いセンサの各センサ素子について、検体導入前の出力電圧V0および検体導入後中の電圧Vの差の最大値ΔV(水)を算出した。そして、各匂いセンサで得られた10個の最大値ΔVのデータの平均値μ(水)を算出した。
【0126】
<エタノール測定の電圧変化量(ΔV)およびΔV変動係数の測定>
検体としてイオン交換水に代えて、エタノールを用いたこと以外は同じにして、ΔV(エタノール)および平均値μ(エタノール)を算出した。さらにΔV(エタノール)の標準偏差σ(エタノール)を算出し、各センサ素子のΔV変動係数(=σ/μ)を求めた。
【0127】
<ヘキサン測定の電圧変化量(ΔV)の測定>
検体としてイオン交換水に代えて、ヘキサンを用いたこと以外は同じにして、ΔV(ヘキサン)および平均値μ(ヘキサン)を算出した。
【0128】
<電圧変化量(ΔV)の比>
検体として、イオン交換水、エタノール、およびヘキサンを測定した場合の各電圧変化量(ΔV)を、センサ素子ごとにイオン交換水の電圧変化量(ΔV)で割り、電圧変化量(ΔV)の比を算出した。
【0129】
実施例1~27の匂いセンサ1~27、および比較例1~3の匂いセンサc1~c3について、それぞれで用いたディスペンサの形状および樹脂組成物溶液の種類、吐出量を表2に示す。
【0130】
【0131】
実施例28~54の匂いセンサ28~54、および比較例4~7の匂いセンサc4~c7について、それぞれで用いたディスペンサの形状および樹脂組成物溶液の種類、吐出量を表3に示す。
【0132】
【0133】
表2および表3において、各検体のΔVの比は、匂いセンサの感度の観点では、3つの数値の差が大きいほど好ましい。一方で、ΔV変動係数は、当該ばらつき低減の観点では、小さいほど好ましい。
【0134】
<考察>
表2および表3に示されるように、匂いセンサ1~54は、いずれも比較例である匂いセンサc1~c7に比べて、よりΔV比の差が大きく、およびより低いΔV変動係数を示している。
【0135】
実施例1~54と比較例1、4、5との対比によれば、ピペット型のディスペンサを用いない方法で製造した匂い物質受容層または匂い物質透過層を備える匂いセンサc1、c4、c5はΔV比の差が小さく、ΔV変動係数は大きくなることが分かった。
【0136】
実施例1~54と比較例2、3、6、7との対比によれば、吐出量が0.1μL未満または5.0μLより多い方法で製造した匂い物質受容層または匂い物質透過層を備える匂いセンサc2、c3、c6、c7はΔV比の差が小さく、ΔV変動係数は大きくなることが分かった。
【0137】
実施例5、9~19、28、32~42の対比によれば、樹脂組成物溶液の粘度または有機溶剤の沸点に関わらず実用上問題ないΔVの比およびΔV変動係数が得られている。特に粘度が8mPa・sであり、有機溶剤の沸点が202℃である樹脂組成物溶液を使用して製造したセンサ素子を備える匂いセンサ5が最もΔV比の差が大きく、ΔV変動係数が最も小さい値であった。
【0138】
実施例5、11、12、19、28、34、35、42の対比によれば、樹脂組成物溶液の固形分率に関わらず実用上問題ないΔVの比およびΔV変動係数が得られている。特に固形分率が10%である樹脂組成物溶液を使用して製造したセンサ素子を備える匂いセンサ5が最もΔV比の差が大きく、ΔV変動係数が最も小さい値であった。
【0139】
実施例5、11、12、19、28、34、35、42の対比によれば、樹脂組成物溶液のチクソインデックスに関わらず実用上問題ないΔVの比およびΔV変動係数が得られている。特にチクソインデックスが1.1である樹脂組成物溶液を使用して製造したセンサ素子を備える匂いセンサ5が最もΔV比の差が大きく、ΔV変動係数が最も小さい値であった。
【0140】
実施例5と25との対比、または28と48との対比および実施例12、20、21の対比によれば、フィラーの有無やフィラーの種類が異なる場合でも、実用上問題ないΔVの比およびΔV変動係数が得られている。
【0141】
よって、先端部に着脱可能なノズルを備えたピペット型のディスペンサを用い、有機溶剤を含む樹脂組成物溶液を貯留した容器から、前記樹脂組成物溶液を前記ノズルに吸入する吸入工程と、前記吸入工程の終了後に、前記ノズルから前記樹脂組成物溶液を吐出して前記基板上に塗布することにより、前記基板上に塗膜を形成する塗布工程と、前記塗布工程の終了後に、前記塗膜を乾燥させて前記感応膜を形成する乾燥工程と、を含み、前記ノズルからの前記樹脂組成物溶液の吐出量は、0.1μL~5.0μLである製造方法によって製造した匂いセンサ素子は、実用上問題ないΔV比およびΔV変動係数を示すことが分かった。すなわちこのような匂いセンサを搭載した匂い測定装置は、匂いの検出感度が高くかつ安定した測定結果を出力することができることから、匂い識別性能が高いと言える。