(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026376
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】電流センサおよび測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
G01R15/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024128748
(22)【出願日】2024-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2023131572
(32)【優先日】2023-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100176371
【弁理士】
【氏名又は名称】笹田 健
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 哲也
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA11
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】電流センサによる電流の検出精度を向上させる。
【解決手段】電流センサ3は、フラックスゲート32と、磁性体によって作られると共にフラックスゲート32を収容する収容空間314を有する環状の第1コア31と、フラックスゲート32によって検出された磁束に基づく信号を生成する信号生成回路50とを備え、前記第1コアに測定対象5を挿通した状態で、前記測定対象に流れる電流を検出する。電流センサ3において、フラックスゲート32は、磁性体によって作られると共に収容空間314に延在する第2コア321と、第2コア321の延在する方向に沿って第2コア321に巻回されたコイル323とを有する。第2コア321の延在方向における一方の端部が第1コア31の一部に接触していると共に、第2コア321の延在方向における他方の端部が第1コア31の他の一部に接触している。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束を検出するフラックスゲートと、磁性体によって作られると共に前記フラックスゲートを収容する収容空間を有する環状の第1コアと、前記フラックスゲートによって検出された磁束に基づく信号を生成する信号生成回路とを備え、前記第1コアに測定対象を挿通した状態で、前記測定対象に流れる電流を検出する電流センサであって、
前記フラックスゲートは、磁性体によって作られると共に前記収容空間に延在する第2コアと、前記第2コアの延在する方向に沿って前記第2コアに巻回されたコイルとを有し、
前記第2コアの延在方向における一方の端部が前記第1コアの一部に接触していると共に、前記第2コアの延在方向における他方の端部が前記第1コアの他の一部に接触している、
電流センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の電流センサにおいて、
前記第2コアは、前記第1コアの周方向に延在する
電流センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の電流センサにおいて、
前記第1コアは、前記収容空間の周囲における前記第1コアの外周側において前記第1コアの周方向に連続して設けられている
電流センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の電流センサにおいて、
前記第1コアは、前記収容空間の周囲における前記第1コアの内周側において前記第1コアの周方向に連続して設けられている
電流センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の電流センサにおいて、
前記第1コアにおける前記測定対象の挿通方向における前記第1コアの一方の面を上面とし、前記第1コアにおける前記測定対象の挿通方向における他方の面を下面とした場合に、前記第1コアは、前記収容空間の周囲における前記上面および前記下面の少なくとも一方の面において前記第1コアの周方向に連続して設けられている
電流センサ。
【請求項6】
請求項3に記載の電流センサにおいて、
前記第1コアの周方向に連続して設けられている部分は一体に形成されている
電流センサ。
【請求項7】
請求項1に記載の電流センサにおいて、
前記第2コアの延在方向における一方の端部および前記第2コアの延在方向における他方の端部が、前記第1コアによって覆われている
電流センサ。
【請求項8】
請求項1に記載の電流センサにおいて、
前記第1コアは、前記第1コアにおける前記測定対象の挿通方向に積層された、磁性体から成る複数の板状部材によって形成され、
前記第2コアの延在方向における一方の端部および前記第2コアの延在方向における他方の端部は、前記挿通方向において二つの前記板状部材によって挟まれている
電流センサ。
【請求項9】
請求項1に記載の電流センサにおいて、
前記フラックスゲートを複数有する
電流センサ。
【請求項10】
請求項9に記載の電流センサにおいて、
二つの前記フラックスゲートを一組とするフラックスゲート対を少なくとも一つ有し、
前記フラックスゲート対を構成する第1フラックスゲートおよび第2フラックスゲートは、前記第2コアを共有し、
前記第1フラックスゲートおよび前記第2フラックスゲートが共有する前記第2コアに前記第1フラックスゲートの前記コイルと前記第2フラックスゲートの前記コイルとがそれぞれ巻回されている
電流センサ。
【請求項11】
請求項10に記載の電流センサにおいて、
前記収容空間は、前記第1フラックスゲートを収容する第1収容空間と、前記第2フラックスゲートを収容する第2収容空間とを含み、
前記第1収容空間と前記第2収容空間とは前記第1コアの周方向に並んで設けられ、
前記第1収容空間と前記第2収容空間との間に、前記第1コアが連続して設けられている
電流センサ。
【請求項12】
請求項1に記載の電流センサにおいて、
前記第1コアと前記第2コアとが一体に形成されている
電流センサ。
【請求項13】
請求項1に記載の電流センサにおいて、
前記電流をゼロフラックス方式で検出する
電流センサ。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13の何れか一つに記載の電流センサと、
前記電流センサによって生成された前記信号に基づいて、前記測定対象に流れる電流を測定する測定装置本体と、を備える
測定装置。
【請求項15】
電流センサを用いて測定対象に流れる電流を測定する測定方法であって、
前記電流センサは、磁束を検出するフラックスゲートと、磁性体によって作られると共に前記フラックスゲートを収容する収容空間を有する環状の第1コアと、前記フラックスゲートによって検出された磁束に基づく信号を生成する信号生成回路とを備え、前記フラックスゲートは、磁性体によって作られると共に前記収容空間に延在する第2コアと、前記第2コアの延在する方向に沿って前記第2コアに巻回されたコイルとを有し、前記第2コアの延在方向における一方の端部が前記第1コアの一部に接触していると共に前記第2コアの延在方向における他方の端部が前記第1コアの他の一部に接触し、
前記第1コアに、前記測定対象を挿通させる第1ステップと、
前記信号生成回路によって生成された前記信号に基づいて、前記測定対象に流れる電流を測定する第2ステップと、を含む
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサおよび測定装置に関し、例えば、磁束を検出可能なフラックスゲートを備えた電流センサ、および当該電流センサを備えた測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導体に流れる電流を検出するための検出器として、磁束を検出可能なフラックスゲートを備えた電流センサが知られている。例えば、特許文献1には、磁性体から構成されたコアを有する電流センサが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された電流センサは、エアギャップを有する環状に構成されたコアを有し、コアのエアギャップ近傍にフラックスゲートが設けられている。当該電流センサは、測定対象の導体を囲むように環状にコアを配置した場合に上記導体に流れる電流によって生じる磁界に基づく磁束をフラックスゲートによって検出することにより、導体に流れる電流に応じた信号を出力する。この電流センサによれば、コアのエアギャップにフラックスゲートを配置しているため、フラックスゲートを通過する磁束が多くなり、電流の検出精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、昨今、エネルギー効率の高い機器を開発するために、電流測定の高精度化が求められ、特許文献1に代表される従来の電流センサより、電流の検出精度が高い電流センサが求められている。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、電流センサによる電流の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施の形態に係る電流センサは、磁束を検出するフラックスゲートと、磁性体によって作られると共に前記フラックスゲートを収容する収容空間を有する環状の第1コアと、前記フラックスゲートによって検出された磁束に基づく信号を生成する信号生成回路と、を備え、前記第1コアに測定対象を挿通した状態で、前記測定対象に流れる電流を検出する。前記電流センサにおいて、前記フラックスゲートは、磁性体によって作られると共に前記収容空間に延在する第2コアと、前記第2コアの延在する方向に沿って前記第2コアに巻回されたコイルとを有し、前記第2コアの延在方向における一方の端部が前記第1コアの一部に接触していると共に、前記第2コアの延在方向における他方の端部が前記第1コアの他の一部に接触している。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電流センサによれば、電流の検出精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る測定装置の構成を示す図である。
【
図2A】電流センサによる電流検出の原理を説明するための図である。
【
図2B】電流センサによる電流検出の原理を説明するための図である。
【
図3】実施の形態1に係る電流センサの外観を示す斜視図である。
【
図6】実施の形態1に係る第1コアの外観を示す正面図である。
【
図7】実施の形態1に係る第1コアの斜視図である。
【
図8】実施の形態1に係る第1コアの分解斜視図(一部)である。
【
図9】実施の形態1に係る第1コアの断面図である。
【
図10】実施の形態1に係る第1コアの分解斜視図(全部)である。
【
図11】実施の形態1に係る電流センサにおける第2コアと第1コアとの位置関係を模式的に示す図である。
【
図12】実施の形態2に係る第1コアの外観を示す正面図である。
【
図13】実施の形態2に係る第1コアの分解斜視図(一部)である。
【
図14】実施の形態2に係る第1コアの分解斜視図(全部)である。
【
図15】実施の形態2に係る電流センサにおける第2コアと第1コアとの位置関係を模式的に示す図である。
【
図16】フラックスゲートの別の配置例を示す図である。
【
図17】第2コアと第1コアとを一体に形成した電流センサを模式的に示す図である。
【
図18】電流センサにおける第2コアと第1コアとの位置関係の別の一例に示す図である。
【
図19】電流センサにおける第2コアと第1コアとの位置関係の別の一例に示す図である。
【
図20】電流センサにおける第2コアと第1コアとの位置関係の別の一例に示す図である。
【
図21】電流センサにおける第2コアと第1コアとの位置関係の別の一例に示す図である。
【
図22】電流センサにおける第2コアと第1コアとの位置関係の別の一例に示す図である。
【
図23A】第1コアが環状に形成された貫通型の電流センサの外観を示す斜視図である。
【
図23B】第1コアが環状に形成された貫通型の電流センサの外観を示す正面図である。
【
図24】複数の磁性体部材によって構成された第1コアの一例を示す図である。
【
図25】二つのフラックスゲートを一組とするフラックスゲート対を用いた磁気平衡式の電流センサの回路例を示す図である。
【
図26】二つのフラックスゲートを一組とするフラックスゲート対を用いた磁気平衡式の電流センサの構成を示す図である。
【
図27】二つのフラックスゲートを一組とするフラックスゲート対の周囲に形成される磁束を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0011】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る電流センサ(3,3A~3H,3J,3K)は、磁束を検出するフラックスゲート(32,32A,32B,32C,32K_1,32K_2)と、磁性体によって作られると共に前記フラックスゲートを収容する収容空間(314,314K_1,314K_2)を有する環状の第1コア(31,31_1,31_2)と、前記フラックスゲートによって検出された磁束に基づく信号を生成する信号生成回路(50,50A,50K)と、を備え、前記第1コアに測定対象(5)を挿通した状態で、前記測定対象に流れる電流を検出する。前記電流センサにおいて、前記フラックスゲートは、磁性体によって作られると共に前記収容空間に延在する第2コア(321,321A,321B,321C,321K)と、前記第2コアの延在する方向に沿って前記第2コアに巻回されたコイル(323,323K_1,323K_2)とを有し、前記第2コアの延在方向における一方の端部が前記第1コアの一部に接触していると共に前記第2コアの延在方向における他方の端部が前記第1コアの他の一部に接触していることを特徴とする。
【0012】
〔2〕上記〔1〕に記載の電流センサ(3,3A~3H,3J,3K)において、前記第2コアは、前記第1コアの周方向に延在してもよい。
【0013】
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の電流センサ(3,3A~3H,3J,3K)において、前記第1コアは、前記収容空間の周囲における前記第1コアの外周側において前記第1コアの周方向に連続して設けられていてもよい。
【0014】
〔4〕上記〔1〕乃至〔3〕に記載の電流センサ(3,3A~3H,3J,3K)において、前記第1コアは、前記収容空間の周囲における前記第1コアの内周側において前記第1コアの周方向に連続して設けられていてもよい。
【0015】
〔5〕上記〔1〕乃至〔4〕の何れか一つに記載の電流センサ(3,3A,3B,3C,3E~3H,3J,3K)において、前記第1コアにおける前記測定対象5の挿通方向(P,Z軸方向)における前記第1コアの一方の面を上面(310_1)とし、前記第1コアにおける前記測定対象5の挿通方向における他方の面を下面(310_8)とした場合に、前記第1コアは、前記収容空間の周囲における前記上面および前記下面の少なくとも一方の面において前記第1コアの周方向に連続して設けられていてもよい。
【0016】
〔6〕上記〔3〕乃至〔5〕の何れか一つに記載の電流センサ(3,3A,3B,3C,3E~3H,3J,3K)において、前記第1コアの周方向に連続して設けられている部分は一体に形成されていてもよい。
【0017】
〔7〕上記〔1〕乃至〔6〕の何れか一つに記載の電流センサ(3,3A~3H,3J,3K)において、前記第2コア(321A)の延在方向における一方の端部(321Aa)および前記第2コアの延在方向における他方の端部(321Ab)が、前記第1コアによって覆われていてもよい。
【0018】
〔8〕上記〔1〕乃至〔7〕の何れか一つに記載の電流センサ(3,3A~3H,3J,3K)において、前記第1コア(31)は、前記第1コアにおける前記測定対象5の挿通方向に積層された、磁性体から成る複数の板状部材(310_1~310_8)によって形成され、前記第2コアの延在方向における一方の端部(321Aa)および前記第2コアの延在方向における他方の端部(321Ab)は、前記挿通方向において二つの前記板状部材(310_4,310_5)によって挟まれていてもよい。
【0019】
〔9〕上記〔1〕乃至〔8〕の何れか一つに記載の電流センサ(3,3A~3H,3J,3K)において、前記フラックスゲートを複数有していてもよい。
【0020】
〔10〕上記〔9〕に記載の電流センサ(3K)において、二つの前記フラックスゲートを一組とするフラックスゲート対(32KP)を少なくとも一つ有し、前記フラックスゲート対を構成する第1フラックスゲート(32K_1)および第2フラックスゲート(32K_2)は、前記第2コア(321K)を共有し、前記第1フラックスゲートおよび前記第2フラックスゲートが共有する前記第2コアに前記第1フラックスゲートの前記コイルと前記第2フラックスゲートの前記コイルとがそれぞれ巻回されていてもよい。
【0021】
〔11〕上記〔10〕に記載の電流センサ(3K)において、前記収容空間は、前記第1フラックスゲートを収容する第1収容空間(314K_1)と、前記第2フラックスゲートを収容する第2収容空間(314K_2)とを含み、前記第1収容空間と前記第2収容空間とは前記第1コアの周方向に並んで形成され、前記第1収容空間と前記第2収容空間との間に、前記第1コアが連続して設けられていてもよい。
【0022】
〔12〕上記〔1〕乃至〔11〕の何れか一つに記載の電流センサ(3,3A~3H,3J,3K)において、前記第1コア(31,31_1,31_2,31K)と前記第2コア(321,321A,321B,321C,321K)とが一体に形成されていてもよい。このとき、前記第1コアと前記第2コアは同一の磁性体であってもよい。
【0023】
〔13〕上記〔1〕乃至〔12〕の何れか一つに記載の電流センサ(3,3A~3H,3J,3K)において、前記電流をゼロフラックス方式で検出してもよい。
【0024】
〔14〕本実施の形態に係る代表的な測定装置(1)は、上記〔1〕乃至〔13〕の何れか一つに記載の電流センサ(3,3A~3H,3J,3K)と、前記第1コアが測定対象を取り囲んで環状をなす状態において前記電流センサによって生成された前記信号に基づいて、前記測定対象に流れる電流を測定する測定装置本体(2)と、を備えることを特徴とする。
【0025】
〔15〕本実施の形態に係る代表的な測定方法は、電流センサ(3,3A~3H,3J,3K)を用いて測定対象に流れる電流を測定する測定方法である。前記電流センサは、磁束を検出するフラックスゲート(32,32A,32B,32C,32K_1,32K_2)と、磁性体によって作られると共に前記フラックスゲートを収容する収容空間(314,314K_1,314K_2)を有する環状の第1コア(31,31_1,31_2)と、前記フラックスゲートによって検出された磁束に基づく信号を生成する信号生成回路(50,50A,50K)とを備え、前記フラックスゲートは、磁性体によって作られると共に前記収容空間に延在する第2コア(321,321A,321B,321C,321K)と、前記第2コアの延在する方向に沿って前記第2コアに巻回されたコイル(323,323K_1,323K_2)とを有し、前記第2コアの延在方向における一方の端部が前記第1コアの一部に接触し、前記第2コアの延在方向における他方の端部が前記第1コアの他の一部に接触している。前記測定方法は、前記第1コアに、前記測定対象を挿通させる第1ステップと、前記信号生成回路によって生成された前記信号に基づいて、前記測定対象に流れる電流を測定する第2ステップと、を含むことを特徴とする。
【0026】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0027】
≪実施の形態1≫
図1に示すように、実施の形態1に係る測定装置1は、例えば、測定対象5(例えば、導線)に流れる電流を測定可能な電流測定装置である。測定装置1は、測定対象5に対して電気的に非接触の状態で、測定対象5に流れる電流を測定することができるように構成されている。
【0028】
具体的に、測定装置1は、電流センサ3と測定装置本体2とを備えている。例えば、電流センサ3によって測定対象5を環状に囲んだ状態において、電流センサ3が測定対象5に流れる電流を検出し、測定装置本体2が電流センサ3による検出結果に基づいて、測定対象5に流れる電流の電流値を測定(算出)する。
【0029】
電流センサ3は、測定対象5に流れる電流を検出し、検出結果に応じた信号を出力する装置である。電流センサ3は、測定対象5を環状に囲んだ状態において測定対象5に流れる電流を非接触で検出するセンサであり、所謂貫通型の電流センサや所謂クランプ式の電流センサを例示することができる。本実施の形態では、主として、電流センサ3がクランプ式の電流センサである場合を例にとり説明する。
【0030】
後述するように、電流センサ3は、磁性体によって作られた第1コア31と、第1コア31の内部に配置され、第2コアを有するフラックスゲート32とを主たる構成要素として有し、第1コア31を介してフラックスゲート32の第2コアを通過する磁束をフラックスゲート32によって検出することにより、電流を検出する。
【0031】
以下の説明において、第1コア31を「主コア31」と表記する場合がある。
【0032】
測定装置本体2は、電流センサ3による検出結果(出力信号Vout)に基づいて、測定対象5に流れる電流の電流値を測定(算出)する装置である。測定装置本体2は、主コア31が測定対象5を取り囲んで環状をなす状態において電流センサ3によって生成された出力信号Voutに基づいて、測定対象5に流れる電流を測定する。
【0033】
図1に示すように、測定装置本体2は、例えば、測定部11、操作部12、表示部13、制御部14、および記憶部15を有している。
【0034】
測定部11は、制御部14からの制御に応じて、電流センサ3から出力された電流の検出結果としての出力信号Voutに基づいて、測定対象5に流れている電流の電流値を算出する機能部である。測定部11は、例えば、マイクロコントローラ等のプログラム処理装置によって実現されている。
【0035】
操作部12は、ユーザによる測定装置1に対する指示等を入力するためのユーザインターフェースである。操作部12は、例えば、操作スイッチ、キーボード、タッチパネル等によって実現されている。操作部12は、ユーザによる操作部12に対する操作に応じた操作信号を制御部14に出力する。ユーザは、操作部12を操作することにより、例えば、測定条件に係る情報を測定装置1に設定し、測定の開始および停止を測定装置1に指示することができる。
【0036】
なお、測定装置1への測定条件等の設定や指示等は、上述した操作部12に対する操作に限定されず、例えば、有線通信又は無線通信によって測定装置1と接続されたパーソナルコンピュータ、サーバ、および携帯端末等の情報処理装置から入力されてもよい。
【0037】
表示部13は、各種情報を表示する装置である。表示部13は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のユーザが視認可能な情報を出力する装置によって実現されている。表示部13は、制御部14からの制御に応じて、例えば、測定条件の入力のためのメニュー情報や測定対象5に流れる電流の電流値の測定結果の情報等を表示する。
【0038】
記憶部15は、例えば、測定装置1が電流測定装置としての機能を実現するためのプログラムや各種パラメータ、測定対象5の測定結果等を記憶するための機能部である。記憶部15は、例えば、SSDやHDD等の不揮発性の記憶装置等によって実現されている。
【0039】
制御部14は、測定装置1を統括的に制御する機能部である。制御部14は、例えば、測定部11と同様に、マイクロコントローラ等のプログラム処理装置によって実現されている。制御部14は、例えば、操作部12からの操作信号に応じて、測定部11、表示部13、および記憶部15を制御することにより、測定対象5に流れる電流の測定、測定結果の記憶および表示等を実現する。
【0040】
ここで、
図2Aおよび
図2Bを用いて、電流センサ3による電流検出方法について説明する。
【0041】
図2Aには、磁気比例式(オープンループ方式)の電流検出方法が示され、
図2Bには、磁気平衡式(クローズドループ方式、ゼロフラックス方式)の電流検出方法が示されている。
【0042】
図2Aに示すように、磁気比例式の電流検出方法では、主コア31によって測定対象5(例えば、導線)を環状に囲む。この状態において、主コア31内部に配置されたフラックスゲート32が、測定対象5に流れる電流I1によって主コア31内に発生した磁束60を検出し、信号生成回路50が、フラックスゲート32によって検出された磁束60に基づく出力信号Voutを生成する。
【0043】
信号生成回路50は、例えば、駆動回路51、信号処理回路52、および増幅回路(AMP)54を含む。フラックスゲート32は、駆動回路51からの電力供給によって動作可能となっている。フラックスゲート32は、検出した磁束60に応じた電圧を生成する。信号処理回路52は、フラックスゲート32によって生成された電圧を同期検波またはパルス幅変調した電圧を生成する。増幅回路54は、信号処理回路52によって生成された電圧を増幅し、出力信号Voutとして出力する。
【0044】
図2Bに示すように、磁気平衡式の電流検出方法では、磁気比例式の電流検出方法と同様に、主コア31によって測定対象5を環状に囲んだ状態において、フラックスゲート32が、測定対象5に流れる電流I1によって主コア31内に発生した磁束60を検出し、信号生成回路50Aが、フラックスゲート32によって検出された磁束60に基づく出力信号Voutを生成する。
【0045】
信号生成回路50Aは、駆動回路51、信号処理回路53、増幅回路(AMP)57、主コア31に巻回されたコイル55、および電圧生成回路(例えば、シャント抵抗)56を含む。フラックスゲート32は、駆動回路51からの電力供給によって動作可能となっている。フラックスゲート32は、測定対象5に電流I1が流れることによって発生した磁束60を検出し検出した磁束60に応じた電圧を生成する。信号処理回路53は、フラックスゲート32によって生成された電圧を同期検波またはパルス幅変調した電圧を生成し、その電圧を電流に変換して出力する。
【0046】
増幅回路57は、フラックスゲート32によって検出した磁束60(電流I1による磁束)を打ち消す磁束61を発生させるように、信号処理回路53から出力された電流に基づいて、コイル55に電流I2を供給する(ゼロフラックス動作)。電圧生成回路(例えば、シャント抵抗)56は、コイル55に流れる電流I2を電圧に変換し、出力信号Voutとして出力する。
【0047】
次に、電流センサ3の構成について説明する。
なお、本実施の形態では、一例として、電流センサ3が磁気平衡式によって電流検出が可能な構成を有しているものとして説明する。
【0048】
図3に示すように、電流センサ3は、例えば、把持部21、センサ部22、接続ケーブル23を有している。
【0049】
センサ部22は、上述した、電流センサ3の主たる構成要素としての主コア31およびフラックスゲート32を備え、測定対象5をクランプ可能に構成されている。ここで、クランプとは、測定対象5(例えば、導線)を環状に囲むことをいう。
【0050】
センサ部22は、環状に開閉(変形)可能に構成されている。例えば、
図3に示すように、センサ部22は、正面視半環状に構成された第1センサ部22_1および第2センサ部22_2が組み合わさって実現されている。
【0051】
第1センサ部22_1の周方向の一端と第2センサ部22_2の周方向の一端とは、互いに接触可能に構成されている。
図3に示すように、第1センサ部22_1の周方向の一端と第2センサ部22_2の周方向の一端とが互いに接触することにより、センサ部22(主コア31)が一つの環状となる。
【0052】
なお、第1センサ部22_1および第2センサ部22_2の詳細の構成については、後述する。
【0053】
把持部21は、センサ部22による測定対象5のクランプ作業に際して利用者が把持する部位である。
図3に示すように、把持部21の一端部側(
図3における左端部側)にセンサ部22が配設されている。把持部21の内部には、上述した信号生成回路50A(50)が構成された回路基板(不図示)が収容されている。また、把持部21の他端部側(
図4における右端部側)から、信号生成回路50A(50)に接続された接続ケーブル23が引き出されている。接続ケーブル23は、電流センサ3による検出結果を測定装置1に入力する。具体的には、接続ケーブル23は、信号生成回路50A(50)から出力された出力信号Voutを測定装置1に入力するための導線を含んで構成されている。
【0054】
把持部21には、センサ部22を開閉操作するための開閉操作部210が設けられている。例えば、ユーザによって開閉操作部210が操作されていないとき、第1センサ部22_1および第1センサ部22_1がばね等の付勢手段によって第1センサ部22_1の周方向の一端と第2センサ部22_2の周方向の一端とが互いに接触した状態となる。一方、ユーザが開閉操作部210を押し下げたとき、第1センサ部22_1の上記一端と第2センサ部22_2の上記一端の少なくとも一方が他方から離れる方向に移動して、第1センサ部22_1の上記一端と第2センサ部22_2の上記一端が非接触の状態となる。
【0055】
図3に示すように、例えば、第1センサ部22_1および第2センサ部22_2は、樹脂製のケース20_1,20_2にそれぞれ覆われている。
【0056】
図4には、ケース20_1,20_2を外した状態のセンサ部22が示されている。
図4に示すように、第1センサ部22_1は、磁束を検出する磁気検出部25_1と、磁気検出部25_1の周囲に巻回されたコイル26と、を有する。同様に、第2センサ部22_2は、磁束を検出する磁気検出部25_2と、磁気検出部25_2の周囲に巻回されたコイル26と、を有する。コイル26は、上述した信号生成回路50Aにおけるコイル55を構成する。
【0057】
図5には、磁気検出部25_1と磁気検出部25_2の外観が示されている。
図4に示した、磁気検出部25_1と磁気検出部25_2とは略同一の構成を有しているため、
図5には、代表的に、磁気検出部25_1のみを示し、磁気検出部25_2の図示を省略する。また、
図5において、コイル26の図示を省略している。
【0058】
図4および
図5に示すように、磁気検出部25_1,25_2は、例えば、コイル26が巻回されるカバー38_1,38_2と、カバー38_1,38_2内に収容された主コア31_1,31_2をそれぞれ有している。また、磁気検出部25_1,25_2は、主コア31_1,31_2の内部に配置されたフラックスゲート32をそれぞれ有している。なお、実施の形態1では、主コア31は、主コア31_1,31_2から構成される。
【0059】
カバー38_1,38_2は、主コア31_1,31_2およびフラックスゲート32を収容可能に構成されるとともに、主コア31_1,31_2の周囲にコイル26を巻回するためのボビンとして機能するように巻き崩れ防止用の複数の鍔部が設けられている。
【0060】
なお、
図4では、コイル26がカバー38_1,38_2を介して主コア31_1,31_2の周囲に巻回される場合が例示されているが、例えば、カバー38_1,38_2を設けずに、コイル26を主コア31_1,31_2に直接巻回してもよい。
【0061】
図6には、センサ部22が環状となった状態での主コア31_1,31_2の正面図が示されている。
図6には、X軸、Y軸、およびZ軸の3つの基準軸からなる3次元空間において、主コア31_1の周方向がX-Y平面と平行になるように主コア31_1,31_2が配置された場合が示されている。
【0062】
主コア31_1,31_2は、磁性体(磁性部材)によって形成されている。主コア31_1,31_2を形成する磁性体としては、強磁性を有するニッケルNiを35~80%含むニッケル‐鉄合金(所謂パーマロイ、PCパーマロイ)、アモルファス磁性体等を例示することができる。
【0063】
主コア31_1,31_2は、センサ部22の形状に合うように、正面視半環状に構成されている。例えば、センサ部22によって測定対象5をクランプしたとき、すなわち第1センサ部22_1の周方向の一端と第2センサ部22_2の周方向の一端が接触して、第1センサ部22_1と第2センサ部22_2とが環状になったとき、主コア31_1の周方向Qの一端と主コア31_2の周方向Qの一端とが接触し、且つ主コア31_1の周方向Qの他端と主コア31_2の周方向Qの他端とが接触した状態になる。これにより、
図6に示すような一つの環状の主コア31が構成される。
【0064】
より具体的には、主コア31_1と主コア31_2によって構成される主コア31は、測定対象5に流れる電流を測定する場合(測定対象5をクランプした場合)に、測定対象5を囲んだ状態で環状となるように構成されている。
【0065】
例えば、把持部21における開閉操作部210が操作されていないとき、主コア31_1の上記一端と主コア31_2の上記一端とが接触した状態となる。一方、開閉操作部210が押し下げられている間は、第1センサ部22_1および第2センサ部22_2の少なくとも一方が他方から離れる方向に移動することにより、主コア31_1の上記一端と主コア31_2の上記一端とが非接触の状態となる。このように、クランプ式の電流センサにおいて、主コア31は、環状に変形可能(開閉可能)に構成されている。
【0066】
ここで、環状とは、例えば、正面視円形状(例えば、真円状または楕円状)であってもよいし、正面視矩形状や多角形状であってもよい。実施の形態1では、一例として、
図6に示すように、主コア31_1と主コア31_2とが互いに周方向に接触することにより、正面視楕円形状の一つの主コア31を構成するものとする。なお、主コア31_1と主コア31_2は、一体に形成されて環状になっていてもよい。
【0067】
主コア31は、フラックスゲート32を収容する収容空間314を有している。例えば、
図6に示すように、センサ部22において、主コア31は、複数のフラックスゲート32を収容し、各フラックスゲート32は、互いに離間して配置されている。なお、主コア31に配置するフラックスゲート32は一つであってもよい。
【0068】
実施の形態1では、一例として、主コア31_1の収容空間314に一つのフラックスゲート32が収容され、主コア31_2の収容空間314に一つのフラックスゲート32が収容されているものとする。また、
図6に示すように、2つフラックスゲート32は、環状の主コア31を主コア31における測定対象5の挿通方向から見たときの主コア31の中心または重心Pに対して、互いに点対称となる位置に配置されているものとする。
【0069】
次に、主コア31_1,31_2の構造について詳細に説明する。
実施の形態1では、主コア31_1と主コア31_2が同一の構造を有するものとし、代表的に主コア31_1の構造について詳細に説明する。
【0070】
図7乃至
図10に、主コア31_1の構成を示す。
図7乃至
図10には、X軸、Y軸、およびZ軸の3つの基準軸からなる3次元空間において、主コア31_1の周方向がX-Y平面と平行になるように主コア31_1が配置された場合が示されている。また、
図9には、
図7におけるA-A断面における主コア31_1の断面形状が示されている。
【0071】
図8乃至
図10に示すように、主コア31_1の内部の収容空間314に、フラックスゲート32が配置されている。なお、必ずしもフラックスゲート32全体が収容空間314に収容されている必要はなく、フラックスゲート32の一部が収容空間314から外に出ていてもよい。この場合、収容空間314から外に出ているフラックスゲート32の一部は主コア31に覆われていることが好ましい。
【0072】
フラックスゲート32は、磁束を検出するフラックスゲートの一例である。フラックスゲート32は、例えば、磁性体によって作られたコア321(第2コアの一例)と、コア321に巻回されたコイル(巻線)323を含む。フラックスゲート32は、コア321を通過する磁束に応じた電流をコイル323から出力する。
【0073】
より具体的には、
図8乃至
図10に示すように、フラックスゲート32は、コア321を収容するボビン322を更に有する。ボビン322は、中空の筒状に構成されている。コア321は、ボビン322の中空の筒に挿通されている。ボビン322の外周面にコイル323が巻回されている。ボビン322は、コア321とコイル323を離隔して絶縁し、コイル323を巻きやすくしたりするために用いられる。ボビン322の代わりに他の手段(絶縁テープなど)を用いることにより、フラックスゲート32をボビン322のない構成にすることも可能である。
【0074】
コア321は、磁性体(磁性部材)によって構成されている。例えば、コア321を構成する磁性体は、アモルファス磁性体又はパーマロイ(例えば、PCパーマロイ)である。コア321を構成する磁性体は、高透磁率であることが望ましい。
【0075】
コア321は、例えば、棒状または帯状に構成されている。実施の形態1では、一例として、コア321が一方向に延在する薄板状に形成されているものとする。
【0076】
フラックスゲート32は、磁性体である主コア31によって、X方向正側、X方向負側、Z方向正側またはZ方向負側から見て覆われている。例えば、
図8および
図9に示すように、フラックスゲート32は、主コア31の内部に形成された収容空間314に配置され、且つ収容空間314を画成する主コア31の内壁315によって囲まれている。
【0077】
図8に示すように、収容空間314の主コア31の外周側(収容空間314のX軸方向正側)において、主コア31が周方向Qに一体に形成されている。具体的には、主コア31の収容空間314の外周側に、周方向Qにおいて主コア31を連結する連結部310aが形成されている。換言すれば、収容空間314の外周側において、主コア31にエアギャップが形成されていない。
これによれば、フラックスゲート32は、収容空間314の周囲において一体に形成されている主コア31がフラックスゲート32のシールドとなって外周側からの外部磁界の影響を受け難くなる。
【0078】
また、
図8に示すように、収容空間314の主コア31の内周側(収容空間314のX軸方向負側)において、主コア31が周方向Qに一体に形成されている。具体的には、主コア31の収容空間314の内周側に、周方向Qにおいて主コア31を連結する連結部310bが形成されている。換言すれば、収容空間314の内周側において、主コア31にエアギャップが形成されていない。
これによれば、フラックスゲート32は、収容空間314の周囲において一体に形成されている主コア31がフラックスゲート32のシールドとなって内周側からの外部磁界の影響を受け難くなる。
【0079】
更に、環状になった主コア31を主コア31における測定対象5の挿通方向(Z軸方向)から見て、フラックスゲート32のコア321(収容空間314)は、主コア31によって覆われている。換言すれば、主コア31における測定対象5の挿通方向(Z軸方向)における主コア31の一方の面を上面(後述する板状部材310_1)とし、主コア31における測定対象5の挿通方向における他方の面を下面(後述する板状部材310_8)とした場合に、主コア31は、上面および下面の少なくとも一方の面において周方向Qに一体に形成されている。
【0080】
例えば、
図6および
図8に示すように、フラックスゲート32のコア321は、収容空間314の周囲において一体に形成されている主コア31がフラックスゲート32のシールドとなって主コア31における測定対象5の挿通方向(Z軸方向)からの外部磁界の影響を受け難くなる。
【0081】
図7乃至
図10に示すように、主コア31_1,31_2には、例えば、主コア31_1,31_2の内壁315から主コア31_1,31_2の表面まで貫通する孔312_1,312_8が形成されている。孔312_1,312_8は、主コア31の内部に配置されたフラックスゲート32のコイル323と主コア31の外部に設けられた信号生成回路50A)とを接続する配線を引き出すための孔である。例えば、コイル323を構成する導線の両端は、それぞれ孔312_1,312_8から引き出され、信号生成回路50A(50)の信号処理回路53(52)に接続される。
【0082】
ここで、“フラックスゲート32が主コア31によって覆われている”状態とは、フラックスゲート32の全体が完全に主コア31によって覆われている状態のみならず、上述した孔312_1,312_8や隙間(以下、孔等と称する。)が主コア31に形成され、フラックスゲート32の一部が主コア31の孔等から露出している状態も含む。
【0083】
図10に示すように、主コア31_1(31_2)は、例えば、磁性体によって作られた正面視半環状の複数の板状部材310_1~310_n(nは2以上の整数)が積層されることにより、構成されていてもよい。
図10には、一例として、8枚(n=8)の板状部材310_1~310_8をZ軸方向に積層して主コア31_1が構成された場合が示されている。
【0084】
図10において、Z軸正方向を上、Z軸負方向を下とした場合、最上位層の板状部材310_1と最下位層の板状部材310_8との間に設けられる中間層の板状部材310_2~310_7には、フラックスゲート32を収容するための収容空間314を画成する孔(貫通孔)313_2~313_7がそれぞれ形成されている。孔313_2~313_7は、フラックスゲート32を収容可能な開口面積を有している。最上位層の板状部材310_1および最下位層の板状部材310_8には、上述した配線を引き出すための孔312_1,312_8がそれぞれ形成されている。
【0085】
図10に示すように、板状部材310_1~310_8をZ軸方向に積層することにより、中間層の板状部材310_2~310_7の孔(貫通孔)313_2~313_7によって形成された収容空間314が、Z方向から最上位層の板状部材310_1および最下位層の板状部材310_8によって塞がれる。これにより、フラックスゲート32のコア321の周囲が板状部材310_1~310_8によって覆われるので、外部磁界の影響を受け難い構造を容易に実現することが可能となる。
【0086】
なお、中間層の板状部材310の積層数や孔313_2~313_7の面積は、
図8乃至
図10に示した例に限定されず、収容するフラックスゲート32のサイズ等に応じて変更してもよい。
【0087】
図11は、実施の形態1に係る電流センサ3におけるフラックスゲート32と主コア31との位置関係を模式的に示す図である。
図11には、主コア31に収容されたフラックスゲート32のX-Y平面に沿った断面構造が示されている。
【0088】
図11に示すように、フラックスゲート32のコア321は、収容空間314に延在している。具体的には、コア321は、環状の主コア31の周方向Qに沿って延在するように配置される。なお、コア321を環状の主コア31の周方向Qに沿って延在するように配置すると、コア321の延在方向の長さが主コア31の径方向の幅によって制限されなくなるので、フラックスゲート32を大きくできるため、電流の検出精度を上げることができる。
コイル323は、コア321が延在する方向に沿ってコア321に巻回されている。
【0089】
コア321の延在方向における一方の端部321aが、主コア31の周方向Qにおける一部に接触し、コア321の延在方向における他方の端部321bが、主コア31の周方向Qにおける他の一部に接触している。例えば、コア321の端部321aが、収容空間314を画成する主コア31の内壁315の周方向Qの一方の面に接触し、コア321の321bが、内壁315の周方向の他方の面に接触している。
図11では、一例として、コア321の両端部321a,321bが板状部材310_5の内壁315に接触している場合が示されている。
【0090】
上述した構造を有する電流センサ3によれば、主コア31に対する測定対象5(導体)の位置による磁束の検出精度の変動を抑えることが可能となり、電流の検出精度の低下を抑制することが可能となる。
【0091】
すなわち、従来の電流センサでは主コアのエアギャップから磁束が漏れるので、主コア31およびフラックスゲート32のコア321の外に磁束の流れが生じてその影響によって検出精度の変動が生ずる。これに対し、上述した構成を有する電流センサ3は、フラックスゲート32のコア321の一方の端部321aが主コア31の一部に接触し、フラックスゲート32のコア321の他方の端部321bが主コア31の他の一部に接触している。換言すれば、フラックスゲート32のコア321が主コアのエアギャップを連結する。これによれば、エアギャップが形成されないので、主コア31に対する測定対象5(導体)の位置による磁束の検出精度の変動が抑えられ、電流の検出精度の低下を抑制することが可能となる。
【0092】
また、コア321(ボビン322)にコイル323を巻いてフラックスゲート32を組み立てた後に、フラックスゲート32を主コア31の収容空間314に配置することにより、コア321の延在方向の一端をその一端に対向する主コア31に接触させ、コア321の延在方向の他端を、その他端に対向する主コア31に接触させることができる。このように、電流センサ3の組み立てが容易となる。
【0093】
また、上述したように、収容空間314に配置されたフラックスゲート32の周囲を主コア31によって覆う構造とすることにより、磁気シールドとして機能させる部品を別途設ける必要がないため、コストを抑えつつ、外部磁界の影響を受け難い小型の電流センサ3を実現することが可能となる。
【0094】
≪実施の形態2≫
図12乃至
図15に、実施の形態2に係る電流センサ3Aの構成を示す。
図12乃至
図15には、X軸、Y軸、およびZ軸の3つの基準軸からなる3次元空間において、主コア31_1の周方向がX-Y平面と平行になるように主コア31_1が配置された場合が示されている。具体的には、
図12には、環状となった主コア31_1,31_2の正面図が示されている。
図13には実施の形態2に係る主コア31_1(31_2)の分解斜視図(一部)が示されている。
図14には、実施の形態2に係る主コア31_1(31_2)の分解斜視図(全部)が示されている。
図15には、フラックスゲート32AのX-Y平面に沿った断面構造が示されている。
【0095】
実施の形態2に係る電流センサ3Aは、フラックスゲート32Aを構成するコア(第2コア)321Aの両端部321Aa,321Abが主コア31_1,31_2(第1コア)に覆われている点において、実施の形態1に係る電流センサ3と相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る電流センサ3と同様である。
【0096】
フラックスゲート32Aは、実施の形態1に係るフラックスゲート32と同様に、磁性体によって作られたコア(第2コアの一例)321Aを有する。コア321Aは、実施の形態1に係るコア321と同様に、薄板状に構成されている。コア321Aは、ボビン322の中空の筒に収容されている。例えば、
図12乃至
図15に示すように、コア321Aの延在方向の一方の端部321Aaおよび他方の端部321Abは、ボビン322の両端から突出している。
【0097】
図12乃至
図15に示すように、フラックスゲート32Aのコア321Aは、主コア31(31_1,31_2)の周方向Qに沿って延在している。具体的には、コア321Aの一部が収容空間314に延在し、コア321Aの延在方向の一方の端部321Aaおよび他方の端部321Abが収容空間314から突出して、主コア31(31_1,31_2)に覆われている。例えば、主コア31を構成する板状部材310_2~310_7(310_5)に構成された孔313_2~313_7の周方向Qにおける長さ(収容空間314の周方向Qの長さ)をLaとし、フラックスゲート32Aのコア321Aの延在方向(周方向Q)の長さをLpgとしたとき、La<Lpgである。
【0098】
図12乃至
図15に示すように、フラックスゲート32Aのコア321Aの延在方向における一方の端部321Aaおよびコア321Aの延在方向における他方の端部321Abは、主コア31における測定対象5の挿通方向において二つの板状部材310によって挟まれている。例えば、フラックスゲート32Aのボビン322から突出したコア321Aの両端部321Aa,321Abは、主コア31_1を構成する中間層の2つの板状部材310(例えば310_4と板状部材310_5)によって挟まれている。これにより、コア321Aの両端部321Aa,321Abが主コア31によって覆われて固定される。特に、コア321Aを薄板状に形成しているので、主コア31_1を構成する中間層の2つの板状部材310によってコア321Aを挟みやすくなり、コア321Aの固定が容易となる。また、フラックスゲートのコアは原理的に磁気飽和状態にさせる必要があるが、コア321Aを薄板状に形成したことにより、磁気飽和状態にし易い。
【0099】
以上、実施の形態2に係る電流センサ3Aによれば、コア321Aの端部321Aa,321Abが主コア31によって覆われているので、フラックスゲート32Aのコア321を主コア31により確実に接触させることができる。これにより、主コア31とコア321との接触面積が大きくなるので、より確実に磁束の漏れを防止することができる。また、主コア31を構成する2つの板状部材310によってコア321Aの両端部321Aa,321Abを挟むことにより、フラックスゲート32を主コア31に接触した状態で主コア31内に容易に固定することができる。これにより、主コア31およびフラックスゲート32の組み立てが容易となる。
【0100】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本願発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0101】
例えば、上記実施の形態1,2では、主コア31がフラックスゲートとしての2つのフラックスゲート32(32A)を備える場合を例示したが、フラックスゲート32の数はこれに限定されない。具体的には、主コア31は、偶数個のフラックスゲート32(32A)を有していてもよい。
【0102】
例えば、
図16に示すように、例えば6個のフラックスゲート32を主コア31に設ける場合、主コア31_1と主コア31_2にそれぞれ3つの収容空間314をそれぞれ設け、各収容空間314にフラックスゲート32をそれぞれ配置する。この場合、
図16に示すように、一つのフラックスゲート32(32A)と他の一つのフラックスゲート32(32A)は、環状の主コア31を主コア31における測定対象5の挿通方向から見たときの主コア31の中心または重心Pに対して互いに点対称となる位置にそれぞれ配置されていてもよい。
【0103】
このように、複数のフラックスゲート32(32A)を配置した上で、各フラックスゲート32(32A)の検出結果の平均値等を算出し、算出した値を電流の検出結果とすることにより、より精度の高い電流センサを実現することが可能となる。すなわち、主コア31に複数のフラックスゲートを設けることにより、主コア31に対する測定対象5(導線)の位置による検出の偏りを低減することができるので、より精度の高い電流センサを実現することが可能となる。
【0104】
また、例えば、実施の形態1,2では、主コア31とフラックスゲート32のコア321,321Aがそれぞれ個別に形成される場合を例示したが、これに限られない。例えば、
図17に示す電流センサ3Bのように、主コア31とフラックスゲート32Bのコア321Bとが一体に形成されていてもよい。これによれば、以下に説明するように、フラックスゲート32Bを内蔵した電流センサ3Bの製造が容易となる。
【0105】
図17に示すフラックスゲート32Bの製造方法の一例を説明する。
先ず、主コア31を構成する少なくとも1枚の板状部材310(例えば、板状部材310_5)にQ方向に沿って2つの孔314a,314bを板状部材310の径方向に互いに離間して形成し、2つの孔314a,314bの間にある板状部材310の一部分をフラックスゲート32Bのコア321B(第2コア)とする。次に、ボビン322の中空の筒の中心線または重心線に沿って半分に切った形状を有する2つの半体を、上述した2つの孔314a,314bの間にある板状部材310の一部分であるコア321を挟み込むように配置して固定する。次にボビン322にコイル323を巻回させる。最後に、板状部材310_1~310_8をZ軸方向に積層する。
このように、主コア31とフラックスゲート32Bのコア321Bとを一体に形成することにより、フラックスゲート32Bを内蔵した電流センサ3Bの製造が容易となる。
なお、互いに隣接する複数の板状部材310に2つの孔314a,314bを形成することにより、より厚みのあるコア321B(第2コア)を実現してもよい。
【0106】
また、上記実施の形態1,2では、フラックスゲート32,32Aのコア321,321Aが主コア31の周方向Qに延在する場合を例示したが、これに限られない。すなわち、フラックスゲート32,32Aのコア321,321Aが主コア31の周方向Qと異なる方向(周方向Qと交差する方向)に延在し、主コア31に接触していてもよい。
【0107】
例えば、
図18に示す電流センサ3Cのように、フラックスゲート32Cのコア321Cは、環状になった主コア31の径方向Rに沿って延在するように配置される。コア321Cの延在方向の一方の端部321Caは、収容空間314を画成する内壁315の径方向Rの一方の端部315cに接触している。コア321Cの延在方向の他方の端部321Cbは、内壁315の径方向Rの他方の端部315dに接触している。
なお、電流センサ3Aと同様に、コア321の両端部321Ca,321Cbを、主コア31を構成する中間層の2つの板状部材310(例えば310_4と板状部材310_5)によって挟むことにより、コア321の両端部321Ca,321Cbが主コア31に挿入された構造を実現してもよい。
【0108】
これによれば、上記実施の形態1,2に係る電流センサ3,3Aと同様に、主コア31とフラックスゲート32Cのコア321Cとの間にエアギャップが形成されないので、磁束が漏れることを防ぐことができ、電流の検出精度の低下を抑制することが可能となる。
【0109】
また、上記実施の形態では、フラックスゲート32(32A,32B,32C)のコア321(321A,321B,321C)が主コア31によって全面的に覆われている場合を例示したが、これに限られない。具体的には、収容空間314の周囲において主コア31が周方向Qに連続して設けられていなくてもよいし、少なくとも一部が周方向Qに連続して設けられていてもよい。
【0110】
例えば、
図19に示す電流センサ3Dのように、主コア31の径方向R(X軸方向)において、フラックスゲート32A(32)のコア321A(321)が、主コア31によって覆われていなくてもよい。換言すれば、収容空間314の主コア31の外周側および内周側において、主コア31が周方向Qに連続して設けられていなくてもよい。この場合、主コア31の径方向Rと周方向Qとに垂直な方向(主コア31における測定対象5の挿通方向(Z軸方向))において、フラックスゲート32が主コア31によって覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。
【0111】
また、例えば、主コア31の外周側だけフラックスゲート32が主コア31によって覆われていてもよい。具体的には、
図20に示す電流センサ3Eのように、主コア31は、収容空間314の外周側において周方向Qに連続して設けられていてもよい。この場合、主コア31における測定対象5の挿通方向(Z軸方向)において、フラックスゲート32が主コア31によって覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。
【0112】
また、例えば、主コア31の内周側だけフラックスゲート32が主コア31によって覆われていてもよい。具体的には、
図21に示す電流センサ3Fのように、主コア31は、収容空間314の内周側において周方向Qに連続して設けられていてもよい。この場合、主コア31における測定対象5の挿通方向(Z軸方向)において、フラックスゲート32が主コア31によって覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。
【0113】
また、例えば、
図22に示す電流センサ3Gのように、主コア31の外周側および内周側において、フラックスゲート32が主コア31によって覆われ、主コア31の径方向Rと周方向Qとに垂直な方向(主コア31の積層方向(Z軸方向))において、フラックスゲート32が主コア31によって覆われていなくてもよい。換言すれば、主コア31の上面(板状部材310_1)および下面(板状部材310_8)の少なくとも一方の面において、Z軸方向から見て収容空間314と重なる領域に開口が形成されていてもよい。
【0114】
また、例えば、フラックスゲート32(32A,32C)のコア321(321A,321C)を構成する磁性体の透磁率は、主コア31_1(31_2)を構成する磁性体の透磁率より大きくてもよい。これによれば、フラックスゲート32(32A,32C)のコア321(321A,321C)に磁束が通りやすくなるので、より感度の高い電流センサを実現することが可能となる。
【0115】
また、例えば、主コア31_1(31_2)を構成する複数の板状部材310_1~310_nの全部を一体に形成してもよい。これによれば、部品点数が少なくなるので、製造工数を下げることが可能となる。
【0116】
また、上記実施の形態では、信号生成回路50A(50)が電流センサ3内に設けられる場合を例示したが、信号生成回路50,50Aは、測定装置本体2に内蔵されていてもよい。この場合、電流センサ3(3A~3G)は、少なくとも、主コア31およびフラックスゲート32(32,32A,32B,32C)を含んでいればよい。
【0117】
また、上記実施の形態では、電流センサ3等が、主コア31が環状に変形可能なクランプ式の電流センサである場合について説明したが、これに限られず、電流センサ3等は、
図23Aおよび
図23Bに示すような、主コア31が環状に形成された所謂貫通型の電流センサであってもよい。
【0118】
図23Aおよび
図23Bに示す貫通型の電流センサ3Hは、センサ部(主コア)が変形可能ではない点において、上述したクランプ式の電流センサ3等と相違し、その他の点においては他の電流センサ3等と同様である。例えば、電流センサ3Hは、環状のセンサ部22の挿通孔200に挿通方向に沿って測定対象5(導線)を挿通させた後に電流センサ3Hを設置場所に固定することにより、使用される。
【0119】
電流センサ3Hにおいて、センサ部22Hは、環状に形成された主コア31Hと、主コア31Hを覆うケース20Hとを有している。主コア31Hの収容空間314にはフラックスゲート32が設けられ、コア(第2コア)321の両端が主コア31Hに接触している。主コア31は、一つの環状の磁性体部材によって形成されていてもよいし、
図6に示したように複数の磁性体部材(主コア31_1,31_2)が連結されて形成されていてもよい。また、電流センサ3Hにおけるフラックスゲート32の構成とフラックスゲート32の周囲の主コア31の構成として、上述した電流センサ3,3A,3B,3C,3D,3E,3F,3Gのうち何れか一つと同一の構成を採用することができる。
【0120】
電流センサ3Hによれば、他の実施の形態に係る電流センサ3等と同様に、電流の検出精度の向上が期待できる。
【0121】
また、上記実施の形態では、
図6に示すように、主コア31を2つの磁性体部材(主コア31_1,31_2)を連結することによって実現する場合を例示したが、これに限られない。例えば、主コア31を1つの磁性体部材によって実現してもよいし、主コア31を3つ以上の磁性体部材を連結することによって実現してもよい。
【0122】
また、主コア31_1および主コア31_2の少なくとも一方が複数の磁性体部材によって構成されていてもよい。例えば、
図24に示す電流センサ3Jのように、主コア31J_1が第1磁性体部材31Ja(板状部材310Ja)と第2磁性体部材31Jb(板状部材310Jb)とによって構成されていてもよい。この場合、第1磁性体部材31Jaと第2磁性体部材31Jbとは主コア31J_1の周方向において互いに接触していればよい。なお、複数の磁性体部材で主コア31を実現する場合には、各磁性体部材が互いに異なる種類の磁性体によって作られていてもよい。
【0123】
上記実施の形態では、一つのフラックスゲートを用いた電流センサを例示したが、これに限られない。例えば、二つのフラックスゲートを一組とするフラックスゲート対を用いた電流センサにも本開示の技術的特徴を採用することができる。以下、図を用いて詳細に説明する。
【0124】
図25は、二つのフラックスゲートを一組とするフラックスゲート対を用いた磁気平衡式の電流センサ3Kの回路例を示す図である。
【0125】
図25に示すように、電流センサ3Kは、主コア31Kと、二つのフラックスゲート32K_1,32K_2を一組とするフラックスゲート対32KPと、信号生成回路50Kとを有する。
【0126】
電流センサ3Kには、少なくとも一つのフラックスゲート対32KPが設けられている。フラックスゲート32K_1とフラックスゲート32K_2とは差動型のフラックスゲート対32KPを構成している。すなわち、フラックスゲート32K_1,32K_2のそれぞれから励磁される磁束が互いに対向する方向に発生するように、フラックスゲート32K_1,32K_2が主コア31Kに配置されている。
【0127】
信号生成回路50Kは、例えば、駆動回路51_1,51_2、信号処理回路53K、増幅回路(AMP)57、主コア31に巻回されたコイル55(帰還巻線)、および電圧生成回路(例えば、シャント抵抗)56を含む。フラックスゲート32K_1は、駆動回路51_1からの電力供給によって動作可能となっている。フラックスゲート32K_2は、駆動回路51_2からの電力供給によって動作可能となっている。フラックスゲート32K_1,32K_2は、測定対象5に電流I1が流れることによって発生した磁束60を検出し、検出した磁束60に応じた電圧を生成する。フラックスゲート32K_1,32K_2は、互いに逆相の電圧を生成する。信号処理回路53Kは、フラックスゲート32K_1,32K_2によって生成されたそれぞれの電圧を同期検波またはパルス幅変調した電圧を生成し、その電圧を電流に変換して出力する。
【0128】
増幅回路57は、フラックスゲート32K_1,32K_2によって検出した磁束60(電流I1による磁束)を打ち消す磁束61を発生させるように、信号処理回路53から出力された電流に基づいて、コイル55に電流I2を供給する(ゼロフラックス動作)。電圧生成回路(例えば、シャント抵抗)56は、コイル55に流れる電流I2を電圧に変換し、出力信号Voutとして出力する。
【0129】
図26は、二つのフラックスゲートを一組とするフラックスゲート対を用いた磁気平衡式の電流センサ3Kの構成を示す図である。
【0130】
図26には、電流センサ3Kにおけるフラックスゲート32K_1,32K_2のX-Y平面に沿った断面構造が示されている。
【0131】
電流センサ3Kは、二つのフラックスゲート32K_1,32K_2を一組とするフラックスゲート対32KPを少なくとも一つ有する点において、実施の形態1に係る電流センサ3と相違し、その他の点においては、実施の形態2に係る電流センサ3Aと同様である。
図26には、一例として、電流センサ3Kの主コア31K_1側の一部が代表的に図示されている。
【0132】
フラックスゲート対32KPを構成するフラックスゲート32K_1およびフラックスゲート32K_2は、コア321Kを共有している。換言すれば、フラックスゲート32K_1およびフラックスゲート32K_2は、互いに共通する一つのコア321Kを有している。
【0133】
コア321Kは、実施の形態1に係るコア321等と同様に、例えば、棒状または帯状(薄板状)の磁性体によって作られている。例えば、
図26に示すように、コア321Kは、主コア31Kの周方向Qに沿って延在している。
【0134】
フラックスゲート32K_1のコイル323K_1とフラックスゲート32K_2のコイル323K_2とは、フラックスゲート32K_1およびフラックスゲート32K_2が共有するコア321Kにそれぞれ巻回されている。具体的には、コイル323K_1およびコイル323K_2は、ボビンを介してコア321Kにそれぞれ巻回されている。
【0135】
より具体的には、フラックスゲート32K_1,32K_2は、ボビン322K_1,322K_2をそれぞれ有している。
図26に示すように、主コア31Kの周方向Qと筒状のボビン322K_1,322K_2の中空の筒の中心線または重心線とが平行になるようにボビン322K_1,322K_2が並んで配置されている。コア321Kは、ボビン322K_1,322K_2の中空の筒の中心線または重心線に沿ってボビン322K_1,322K_2の内部に挿通されている。ボビン322K_1の外周面にコイル323K_1が巻回され、ボビン322K_2の外周面にコイル323K_2が巻回されている。
【0136】
フラックスゲート32K_1およびフラックスゲート32K_2は、互いに異なる収容空間に配置されている。
図26に示すように、主コア31K_1(31K_2)には、フラックスゲート32K_1を収容する収容空間314K_1と、フラックスゲート32K_2を収容する収容空間314K_2とがそれぞれ形成されている。
【0137】
ここで、収容空間314K_1と収容空間314K_2とは互いに、コア321Kの周方向Qに離間して形成されていることが好ましい。換言すれば、収容空間314K_1と収容空間314K_2との間には、コア321K(磁性体)が連続して形成されている。ここで、収容空間314K_1と収容空間314K_2との間の距離をLsとしたとき、1.0mm≦Ls≦10.0mmであることが好ましい。より好ましくは、1.0mm≦Ls≦5.0mmである。
【0138】
この場合、主コア31Kは、収容空間314K_1,314K_2の外周側および内周側の少なくとも一方の側において、主コア31Kの周方向Qに連続して形成されていることが好ましい(
図20および
図21参照)。
図26には、一例として、収容空間314K_1,314K_2の外周側および内周側の両方に、主コア31Kが周方向Qに連続して形成されている場合が示されている。なお、主コア31における測定対象5の挿通方向(Z軸方向)において、フラックスゲート32K_1,32K_2(収容空間314K_1,314K_2)が主コア31Kによって覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。
【0139】
図26に示すように、コイル323K_1が巻回され、且つコア321Kが挿通されたボビン322K_1が収容空間314K_1に収容され、コイル323K_2が巻回され、且つコア321Kが挿通されたボビン322K_2が収容空間314K_2に収容される。これにより、フラックスゲート32K_1とフラックスゲート32K_2とが、主コア31K_1(31K_2)としての磁性体を挟んで、主コア31Kの周方向Qに並んで配置される。この場合に、フラックスゲート32K_1およびフラックスゲート32K_2によってそれぞれ励磁される磁束が互いに対向する方向に発生するように、コイル323K_1およびコイル323K_1の巻回の方向を定めることが望ましい。
【0140】
以上、電流センサ3Kは、上述したように、共有する一つのコア321Kにコイル323K_1,323K_2がそれぞれ巻回されたフラックスゲート対32KPを有している。これによれば、フラックスゲート32K_1,32K_2のコイル323K_1,323K_2から発生する電圧が、ノイズとして主コア31と主コア31に巻回されたコイル55(帰還巻線)に寄生容量を介して重畳することを抑制することが可能となる。例えば、フラックスゲート32K_1,32K_2が互いに逆相の電圧を発生させるようにフラックスゲート対32KPを配置することにより、フラックスゲート32K_1から発生したノイズをフラックスゲート32K_1から発生したノイズによって相殺することができる。これにより、主コア31およびコイル55(帰還巻線)に重畳するノイズを低減することが可能となり、電流センサ3Kによる電流の検出精度を向上させることが可能となる。
【0141】
また、電流センサ3Kにおいて、フラックスゲート32K_1を収容する収容空間314K_1とフラックスゲート32K_2を収容する収容空間314K_2とが主コア32Kの周方向Qに並んで形成され、収容空間314K_1と収容空間314K_2との間に、主コア31Kが連続して形成されている。
これによれば、フラックスゲート32K_1,32K_2が互いに逆相の電圧を発生させるようにフラックスゲート対32KPを配置した場合であっても、フラックスゲート32K_1のコイル323K_1およびフラックスゲート32K_2のコイル323K_2のそれぞれが励磁する磁束が互いに打ち消し合うことを防止することができる。すなわち、
図27に示すように、収容空間314K_1と収容空間314K_2との間に磁性体(主コア31K)が存在することにより、コイル323K_1,323K_2のそれぞれから発生する磁束Φ1,Φ2がフラックスゲート32K_1,32K_2の周囲に存在する主コア32Kを通るように形成される。これにより、磁束Φ1,Φ2がループ状となり、磁束Φ1,Φ2が互いに打ち消し合うことを防止することができるので、差動構成のフラックスゲート対を有する電流センサを容易に実現することが可能となる。
【0142】
また、収容空間314K_1と収容空間314K_2との間の距離Lsについて、1.0mm≦Ls≦10.0mmとすることにより、フラックスゲート対32KPの2つのコイル323K_1,323K_2を近づけることができるので、主コア31およびコイル55に重畳するノイズをより低減することができる。更に、1.0mm≦Ls≦5.0mmとすることにより、フラックスゲート対32KPの2つのコイル323K_1,323K_2を更に近づけることができるので、主コア31およびコイル55に重畳するノイズを更に低減することができる。
【0143】
なお、
図26では、実施の形態2に係るコア321Aと同様に、コア321Kの一部が収容空間314K_1,314K_2に延在し、コア321Aの延在方向の一方の端部および他方の端部が収容空間314K_1,314K_2から突出している場合が示されているが、これに限られない。例えば、実施の形態1に係るコア321と同様に、コア321Kの延在方向における一方の端部が、収容空間314K_1を画成する主コア31Kの内壁315K_1の周方向Qの一方の面に接触し、コア321Kの延在方向における他方の端部が、収容空間314K_2を画成する主コア31Kの内壁315K_2の周方向の他方の面に接触していてもよい。また、電流センサ3Bのように、主コア31Kとフラックスゲート32K_1,32K_2のコア321Kとが一体に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0144】
1…測定装置、2…測定装置本体、3,3A~3H,3J,3K…電流センサ、5…測定対象、11…測定部、12…操作部、13…表示部、14…制御部、15…記憶部、21…把持部、22…センサ部、22_1…第1センサ部、22_2…第2センサ部、23…接続ケーブル、25_1,25_2…磁気検出部、26…コイル、31,31_1,31_2,31J,31K…主コア(第1コア)、31Ja…第1磁性体部材、31Jb…第2磁性体部材、32,32A,32B,32C,32K_1,32K_2…フラックスゲート、32KP…フラックスゲート対、50,50A,50K…信号生成回路、51,51_1,51_2…駆動回路、52,53,53K…信号処理回路、54,57…増幅回路、55…コイル、56…電圧生成回路、310,310_1~310_8,310Ja,310Jb…板状部材、312_1,312_8…孔、313_2~313_7…孔、314,314K_1,314K_2…収容空間、315,315K_1,315K_2…内壁、321,321A,321B,321C,321K…コア(第2コア)、322,322K_1,322K_2…ボビン、323,323K_1,323K_2…コイル(巻線)。