(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026427
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】抗A-βタンパク質抗体、その方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20250214BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20250214BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250214BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250214BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250214BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250214BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250214BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250214BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20250214BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250214BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250214BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P25/28
C07K16/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024131943
(22)【出願日】2024-08-08
(31)【優先権主張番号】23190645
(32)【優先日】2023-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.NONIDET
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ペール-オーラ・フレスクガード
(72)【発明者】
【氏名】ギイ・ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ザビーネ・イムホフ-ユング
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ノイバウアー
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・ニーブーナー
(72)【発明者】
【氏名】ペトラ・リューガー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD32
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA21
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒトA-βタンパク質に対する抗体(抗A-βタンパク質抗体)、その製造方法、これらの抗体を含有する医薬組成物及びその使用を提供する。
【解決手段】ヒトA-βタンパク質に結合する抗体であって、特定のアミノ酸配列から選択されるCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む、抗体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトA-βタンパク質に結合する抗体であって、以下から選択されるCDR:
(1)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(2)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(3)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(4)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメインとを含む、抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体であって、以下の特性:
-配列番号45のヒトA-βタンパク質に特異的に結合する;
-前記重鎖CDR2中に、CE-SDSによって決定される少なくとも95%の糖占有率を有するグリコシル化部位を有する;
-任意の非グリコシル化グリコシル化部位を有する種を含まない;
-配列番号45の前記ヒトA-βタンパク質に対するEC50値が0.5nM以下である;
-インビトロでA-βプラークに結合し、脳サンプル中の非A-βタンパク質分子に1μg/mL以下の染色濃度で結合しない;
-ガンテネルマブよりも強くインビボでA-βプラークに結合している;
-一元配置Anovaで決定される皮質及び海馬におけるプラークのインビボでの相対占有率が0.2を超えている;
-68℃を超える熱安定性(DLS Tagg/DLS Tm)を有する、
のうちの1つ又は複数を有する、抗体。
【請求項3】
モノクローナル抗体である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項4】
ヒトA-βタンパク質に結合する抗体断片である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体であって、
(a)配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列;
(b)配列番号80のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列;又は
(c)(a)で定義されるVH配列と(b)で定義されるVL配列、
を含む、抗体。
【請求項6】
配列番号84のVH配列と配列番号80のVL配列とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体であって、前記抗体が、
a)ヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
b)ヒトサブクラスIgG4の完全長抗体、
c)変異L234A、L235A及びP329Gを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
d)両方の重鎖に変異L234A、L235A及びP329Gを有し、一方の重鎖に変異T366W及びS354C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
e)両方の重鎖に変異L234A、L235A及びP329Gを有し、一方の重鎖に変異T366W及びY349C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
f)一方の重鎖に変異T366W及びS354C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有する、ヒトサブクラスIgG4の完全長抗体、
g)一方の重鎖に変異T366W及びY349C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを有する、ヒトサブクラスIgG4の完全長抗体、
h)両方の重鎖に変異L234A、L235A、P329G、I253A、H310A及びH435Aを有し、一方の重鎖に変異T366W及びS354C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
i)両方の重鎖に変異L234A、L235A、P329G、I253A、H310A及びH435Aを有し、一方の重鎖に変異T366W及びY349C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
j)両方の重鎖に変異L234A、L235A、P329G、M252Y、S254T及びT256Eを有し、一方の重鎖に変異T366W及びS354C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
k)両方の重鎖に変異L234A、L235A、P329G、M252Y、S254T及びT256Eを有し、一方の重鎖に変異T366W及びY349C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、又は
l)両方の重鎖に変異L234A、L235A、P329G、H310A、H433A及びY436Aを有し、一方の重鎖に変異i)T366W及びii)S354C又はY349C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異i)T366S、L368A及びY407V、及びii)Y349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、又は
m)a)~l)のうちの1つであり、C末端リジン残基を含まない、抗体。
【請求項8】
配列番号84の重鎖可変ドメイン及び配列番号01の重鎖定常領域を含む重鎖と、配列番号80の軽鎖可変ドメイン及び配列番号29の軽鎖カッパ定常ドメインを含む軽鎖とを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
第1のN末端アミノ酸残基としてグルタミン(Q)残基の代わりにピログルタミン酸(pE)残基を有する配列番号84の重鎖可変ドメイン及び配列番号01の重鎖定常領域を含む重鎖と、配列番号80の軽鎖可変ドメイン及び配列番号29の軽鎖カッパ定常ドメインを含む軽鎖とを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が多重特異性抗体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
単離された核酸分子の組成物であって、前記組成物の前記単離された核酸分子の各々が、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体の1つの鎖をコードする、組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸分子の組成物を含む宿主細胞。
【請求項13】
ヒトA-βタンパク質に結合する抗体を製造する方法であって、
-培養培地中で請求項12に記載の宿主細胞を培養する工程、
-前記宿主細胞又は/及び前記培養培地から前記抗体を回収する工程、並びに
-1つ又は複数のクロマトグラフィー工程を使用して前記抗体を精製する工程
を含む方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物。
【請求項15】
医薬として使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又は請求項14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトA-βタンパク質に対する抗体(抗A-βタンパク質抗体)、その製造方法、これらの抗体を含有する医薬組成物及びその使用に関する。本発明による抗体は、既知の抗A-βタンパク質抗体と比較して改善された技術的及び生物学的特性を示した。
【背景技術】
【0002】
認知症の全症例の約70%が、認知に不可欠な脳領域及び神経回路の選択的損傷に関連するアルツハイマー病(AD)によるものである。ADは、特に海馬の錐体ニューロンにおける神経原線維タングル、及びアミロイド沈着物の密なコア及び緩んだ(defused)ハローを主に含有する多数のアミロイド斑を特徴とする。
【0003】
細胞外神経炎斑は、「アミロイド」、「アミロイドβ」、「A-β」、「Aβ4」、「β-A4」又は「Aβ」と呼ばれる大量の線維性ペプチドを主に含有している。Selkoe,Ann.Rev.Cell Biol.10(1994)373-403;Koo,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96(1999)9989-9990;米国特許第4,666,829号;Glenner BBRC 12(1984)1131を参照)。このアミロイドは、「アルツハイマー前駆体タンパク質/Pアミロイド前駆体タンパク質」(APP)に由来する。APPは、一体型膜糖タンパク質であり(Sisodia,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(1992)6075を参照)、原形質膜プロテアーゼ、α-セクレターゼによってAP配列内で内部タンパク質分解的に切断される(Sisodia(1992),Joe.cit.を参照)。さらに、さらなるセクレターゼ活性、特にβ-セクレターゼ及びγ-セクレターゼ活性は、39アミノ酸(Aβ39)、40アミノ酸(Aβ40)、41アミノ酸(Aβ41)、42アミノ酸(Aβ42)又は43アミノ酸(Aβ43)のいずれかを含むアミロイド-β(Aβ)の細胞外放出をもたらす(Sinha,Proc.Natl.Acad.Sci.96(1999)11094-1053;Price,Science 282(1998)1078-1083;国際公開第00/72880号又はHardy,TINS 20(1997)154を参照)。
【0004】
A-βタンパク質は、いくつかの天然に存在する形態を有し、ヒト形態は、上記のようにAβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42及びAβ43と呼ばれることに留意されたい。最も顕著な形態であるAβ42は、以下のアミノ酸配列を有する(N末端から始まる):DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGV VIA(配列番号45)。Aβ41、Aβ40、Aβ39では、C末端のアミノ酸A、IA及びVIAがそれぞれ欠損している。Aβ43では、追加のトレオニン残基が上記の配列のC末端に含まれる。
【0005】
Aβ40フィブリルを核形成するのに必要な時間は、Aβ42フィブリルを核形成するのに必要な時間よりも有意に長いことが示された(例えば、Lansbury,Jr.,P.T.and Harper,J.D.,Ann.Rev.Biochem.66(1997)385-407を参照)。Wagner(J.Clin.Invest.104(1999)1239-1332)に概説されているように、Aβ42は、神経炎斑に関連してより頻繁に見出され、インビトロでより原線維形成性であると考えられる。Aβ42が、規則正しい非結晶性Aβペプチドの核依存性重合における「種子」として働くことも示唆された(例えば、Jarrett,Cell 93(1993)1055-1058を参照)。改変されたAPPプロセシング及び/又はタンパク質性沈着物を含有する細胞外プラークの生成は、アルツハイマー病からだけでなく、他の神経学的及び/又は神経変性障害に罹患している対象からも知られている。これらの障害には、とりわけ、ダウン症候群、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、クロイツフェルト・ヤコブ病、HIV関連認知症及び運動ニューロパシーが含まれる。
【0006】
これまで、アミロイド関連疾患のための限定された医療介入スキームのみが記載されている。例えば、ガランタミン、リバスチグミン又はドネペジルのようなコリンエステラーゼ阻害剤は、軽度から中等度の疾患のみを有するアルツハイマー患者において有益であると議論されている。しかしながら、これらの薬物のコリン作動性作用に起因する有害事象が報告されている。これらのコリン作動性増強処置はいくらかの症候的利益をもたらすが、治療応答は処置された患者の大部分にとって満足のいくものではない。有意な認知の改善は、処置された患者の約5%のみで起こると推定されており、処置がこの進行性疾患の経過を有意に変化させるという証拠はほとんどない。
【0007】
その結果、より効果的な処置、特に疾患の進行を停止又は遅延させ得る処置に対する多大な臨床的必要性が依然として存在する。
【0008】
さらに、メマンチンのようなNMDA受容体アンタゴニストが使用されている。しかしながら、薬理活性のために有害事象が報告されている。さらに、これらのNMDA受容体アンタゴニストを用いたそのような処置は、単に対症的アプローチと考えることができ、疾患改変アプローチと考えることはできない。
【0009】
さらに、アミロイド関連障害を処置するための免疫調節アプローチが提案されている。国際公開第99/27944号は、A-βペプチドの一部と担体分子とを含み、それにより該担体分子が免疫応答を増強するはずであるコンジュゲートを開示している。別の能動免疫化アプローチは、国際公開第00/72880号に記載されており、A-β断片も免疫応答を誘導するために使用される。
【0010】
さらに、一般的な抗A-β抗体による受動免疫化アプローチが国際公開第99/27944号又は国際公開第01/62801号で提案されており、A-βの部分に対する特異的ヒト化抗体が国際公開第02/46237号、国際公開第02/088306号及び国際公開第02/088307号に記載されている。国際公開第00/77178号は、加水分解中にβ-アミロイドによって採用される遷移状態に結合する抗体を記載している。国際公開第03/070760号は、A-βペプチド上の2つの不連続なアミノ酸配列を認識する抗体分子を開示している。
【0011】
国際公開第2014/033074号は、血液脳関門上の受容体に結合する血液脳関門シャトル及びそれを使用する方法に関する。トランスフェリン受容体モノクローナル抗体を用いたIgG融合タンパク質の血液脳関門薬物送達は、Pardridge,W.,et al.(Exp.Opin.Drug Deliv.12(2015)207-222)によって報告されている。Yu,Y.J.et al.(Sci.Translat.Med.6(2014)261ra154-261ra154)。彼らは、治療的二重特異性抗体が非ヒト霊長類において血液脳関門を通過することを報告した。トランスフェリン受容体及びAβアミロイドペプチドを標的とする四価二重特異性抗体を毎日皮下投与したアルツハイマー病トランスジェニックマウスの脳におけるアミロイド斑の脱凝集は、Sumbria,R.K.,et al.(Mol.Pharm.10(2013)3507-3513)によって報告された。Niewoehner,J.,et al.(Neuron 81(2014)49-609は、一価分子シャトルを使用した治療用抗体の脳浸透及び効力の増加を報告した。
【0012】
国際公開第2016/207240号は、ヒトトランスフェリン受容体のために設計されたオフレートを有する抗トランスフェリン受容体抗体及び血液脳関門シャトルモジュールとしてのそれらの使用を報告した。
【0013】
国際公開第2017/055542号は、ヒトCD20及びヒトトランスフェリン受容体に対する三価二重特異性抗体、それらの製造方法、これらの抗体を含有する医薬組成物、及びそれらの使用を報告した。
【0014】
国際公開第2007/068429号は、可変領域にグリコシル化を有するアミロイドβに対する抗体を報告した。少なくとも1つの抗原結合部位が、重鎖の可変領域(VH)にグリコシル化アスパラギン(Asn)を含むことを特徴とする、精製抗体分子調製物。国際公開第2007/068429号は、重鎖の可変領域にグリコシル化アスパラギン(Asn)を有する1つ又は2つのグリコシル化抗原結合部位を含む抗体の混合物、すなわち、重鎖の可変領域(VH)にグリコシル化Asnを含む抗体のアイソフォームの混合物を報告した。
【0015】
国際公開第2017/055540号は、ヒトA-β及びヒトトランスフェリン受容体に対する三価二重特異性抗体、それらの製造方法、これらの抗体を含有する医薬組成物、及びそれらの使用を報告した。
【0016】
欧州特許第2368907号は、抗Aβ抗体及びその使用を報告した。
【0017】
Edwards,E.らは、バイオプロセス中に治療用抗体グリコシル化を制御する戦略を報告した(Biotechnol.Bioeng.119(2022)1343-1358)。
【発明の概要】
【0018】
本明細書には、ヒトA-βタンパク質に対する抗体(抗A-βタンパク質抗体)、その製造方法、これらの抗体を含有する医薬組成物及びその使用が報告される。
【0019】
本発明による抗体は、抗A-β抗体ガンテネルマブのバリアントである。それらは、それらの親抗体と比較して改善された技術的及び生物学的特性を有する。改善は、とりわけ、改善された生産力価、改善された生産収率及び改善されたプロセスロバスト性などの改善された生産特性を包含する。
【0020】
本発明は、少なくとも部分的に、重鎖CDR2に特定の変異を導入することによって、及び重鎖CDR3を短縮することによって、ガンテネルマブの特性が改善されたという知見に基づいている。この理論に拘束されるものではないが、導入された改変は、Fabにおける糖占有不均一性を減少させ、脱アミド化ホットスポットを除去し、それによって親抗体ガンテネルマブの凝集傾向を低減させることによって、改善された特性をもたらしたと考えられる。
【0021】
本発明は、少なくとも部分的に、親抗体ガンテネルマブの軽鎖が、本発明による改変重鎖と組み合わせた場合に結合親和性及び特異性を保持するために改変を必要としないという知見に基づく。
【0022】
本発明による抗A-βタンパク質抗体は、重鎖CDR2中にグリコシル化部位の実質的かつ最大100%の糖占有を有する。
【0023】
本発明による抗A-βタンパク質抗体は、とりわけ、標的結合、発生特性、IHC/プラーク結合及びPK挙動に関して改善された特性を有する。
【0024】
本発明は、少なくとも以下の実施形態を包含する。
【0025】
1.ヒトA-βタンパク質に結合する抗体であって、以下の特性:
-配列番号45のヒトA-βタンパク質に特異的に結合する;
-重鎖CDR2中に、CE-SDSによって決定される少なくとも95%の糖占有率を有するグリコシル化部位を有する;
-任意の非グリコシル化グリコシル化部位を有する種を含まない;
-配列番号45のヒトA-βタンパク質のEC50値が0.5nM以下である;
-インビトロでA-βプラークに結合し、脳サンプル中の非A-βタンパク質分子に1μg/mL以下の染色濃度で結合しない;
-ガンテネルマブよりも強くインビボでA-βプラークに結合している;
-一元配置Anovaで決定される皮質及び海馬におけるインビボでのプラークの相対占有率が0.2を超えている;
-68℃を超える熱安定性(DLS Tagg/DLS Tm)を有する、
のうちの1つ又は複数を有する、抗体。
【0026】
2.ヒトA-βタンパク質に結合する抗体であって、以下から選択されるCDR:
(1)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(2)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(3)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(4)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメインとを含む、抗体。
【0027】
3.実施形態2に記載の抗体であって、以下の特性:
-配列番号45のヒトA-βタンパク質に特異的に結合する;
-重鎖CDR2中に、CE-SDSによって決定される少なくとも95%の糖占有率を有するグリコシル化部位を有する;
-任意の非グリコシル化グリコシル化部位を有する種を含まない;
-配列番号45のヒトA-βタンパク質のEC50値が0.5nM以下である;
-インビトロでA-βプラークに結合し、脳サンプル中の非A-βタンパク質分子に1μg/mL以下の染色濃度で結合しない;
-ガンテネルマブよりも強くインビボでA-βプラークに結合している;
-一元配置Anovaで決定される皮質及び海馬におけるプラークのインビボでの相対占有率が0.2を超えている;
-68℃を超える熱安定性(DLS Tagg/DLS Tm)を有する、
のうちの1つ又は複数を有する、抗体。
【0028】
4.モノクローナル抗体である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の抗体。
【0029】
5.ヒト化抗体又はキメラ抗体である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の抗体。
【0030】
6.ヒトA-βタンパク質に結合する抗体断片である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の抗体。
【0031】
7.実施形態1~6のいずれか1つに記載の抗体であって、
(a)配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列;
(b)配列番号80のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列;又は
(c)(a)で定義されるVH配列と(b)で定義されるVL配列、
を含む、抗体。
【0032】
8.配列番号84のVH配列及び配列番号80のVL配列を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の抗体。
【0033】
8a.第1のN末端アミノ酸残基としてグルタミン(Q)残基の代わりにピログルタミン酸(pE)残基を有する配列番号84のVH配列及び配列番号80のVL配列を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の抗体。
【0034】
9.配列番号84のVH配列及び配列番号80のVL配列を含むヒトA-βタンパク質に特異的に結合する抗体。
【0035】
10.実施形態1~9のいずれか1つに記載の抗体であって、
a)ヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
b)ヒトサブクラスIgG4の完全長抗体、
c)変異L234A、L235A及びP329Gを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
d)両方の重鎖に変異L234A、L235A及びP329Gを有し、一方の重鎖に変異T366W及びS354C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
e)両方の重鎖に変異L234A、L235A及びP329Gを有し、一方の重鎖に変異T366W及びY349C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
f)一方の重鎖に変異T366W及びS354C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有する、ヒトサブクラスIgG4の完全長抗体、
g)一方の重鎖に変異T366W及びY349C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを有する、ヒトサブクラスIgG4の完全長抗体、
h)両方の重鎖に変異L234A、L235A、P329G、I253A、H310A及びH435Aを有し、一方の重鎖に変異T366W及びS354C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
i)両方の重鎖に変異L234A、L235A、P329G、I253A、H310A及びH435Aを有し、一方の重鎖に変異T366W及びY349C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
j)両方の重鎖に変異L234A、L235A、P329G、M252Y、S254T及びT256Eを有し、一方の重鎖に変異T366W及びS354C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
k)両方の重鎖に変異L234A、L235A、P329G、M252Y、S254T及びT256Eを有し、一方の重鎖に変異T366W及びY349C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、又は
l)両方の重鎖に変異L234A、L235A、P329G、H310A、H433A及びY436Aを有し、一方の重鎖に変異i)T366W及びii)S354C又はY349C並びにそれぞれの他方の重鎖に変異i)T366S、L368A及びY407V、及びii)Y349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、又は
m)a)~l)のうちの1つであり、C末端リジン残基を含まない、抗体。
【0036】
10a.iPSC由来ミクログリアによるインビトロでのAβコーティングビーズの取り込みを媒介する、実施形態10に記載の抗体。
【0037】
10b.c)、d)、e)、h)、i)、j)、k)又はl)のFc領域を有する、実施形態10aに記載の抗体。
【0038】
11.表面プラズモン共鳴により決定/測定される0.4nM以下の親和性で、配列番号45のヒトA-βタンパク質に結合する、実施形態1~10bのいずれか1つに記載の抗体。
【0039】
12.ヒトサブクラスIgG1の完全長抗体である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の抗体。
【0040】
13.i)配列番号84の重鎖可変ドメイン及び配列番号01の重鎖定常領域を含む重鎖と、ii)配列番号80の軽鎖可変ドメイン及び配列番号29の軽鎖カッパ定常ドメインを含む軽鎖とを含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の抗体。
【0041】
13a.第1のN末端アミノ酸残基としてグルタミン(Q)残基の代わりにピログルタミン酸(pE)残基を有する配列番号84の重鎖可変ドメイン及び配列番号01の重鎖定常領域を含む重鎖と、配列番号80の軽鎖可変ドメイン及び配列番号29の軽鎖カッパ定常ドメインを含む軽鎖とを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体。
【0042】
14.多重特異性抗体である、実施形態1~13aのいずれか1つに記載の抗体。
【0043】
15.ヒトA-βタンパク質に結合する少なくとも1つの結合部位と、ヒトA-βタンパク質に結合しない少なくとも1つの結合部位/第2の非ヒトA-βタンパク質標的とを含む多重特異性抗体である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の抗体。
【0044】
16.ヒトA-βタンパク質に結合しない少なくとも1つの結合部位が、上皮成長因子受容体(EGFR)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、α-シヌクレイン、CD20、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、グルコセレブロシダーゼ、ヒトトランスフェリン受容体1又はヒトTREM2タンパク質に結合する、実施形態14~15のいずれか1つに記載の抗体。
【0045】
17.多重特異性抗体が、以下の両方に結合する、実施形態14~16のいずれか1つに記載の抗体。
i)ヒトA-βタンパク質及びヒトトランスフェリン受容体、又は
ii)ヒトA-βタンパク質及びヒトTREM2タンパク質、又は
iii)ヒトA-βタンパク質及びヒトCD20タンパク質、又は
iv)ヒトA-βタンパク質及びヒトα-シヌクレインタンパク質、又は
v)ヒトA-βタンパク質及びヒトホスホ-タウタンパク質、又は
vi)ヒトA-βタンパク質及びヒトグルコセレブロシダーゼ。
18.実施形態1~17のいずれか1つに記載の抗体であって、
i)配列番号84の重鎖可変ドメインと配列番号80の軽鎖可変ドメインとを含む第1の結合部位、
及び
ii)以下から選択される第2の結合部位
a)配列番号68の重鎖可変ドメインと配列番号72の軽鎖可変ドメイン、又は
b)配列番号54の重鎖可変ドメインと配列番号55の軽鎖可変ドメイン、又は
c)配列番号56の重鎖可変ドメインと配列番号57の軽鎖可変ドメイン、又は
d)配列番号58の重鎖可変ドメインと配列番号59の軽鎖可変ドメイン、又は
e)配列番号60の重鎖可変ドメインと配列番号61の軽鎖可変ドメイン、又は
f)配列番号62の重鎖可変ドメインと配列番号63の軽鎖可変ドメイン、又は
g)配列番号64の重鎖可変ドメインと配列番号65の軽鎖可変ドメイン、又は
h)配列番号66の重鎖可変ドメインと配列番号67の軽鎖可変ドメイン、又は
i)配列番号92の重鎖可変ドメインと配列番号93の軽鎖可変ドメイン、又は
j)配列番号94の重鎖可変ドメインと配列番号95の軽鎖可変ドメイン、又は
k)配列番号96の重鎖可変ドメインと配列番号97の軽鎖可変ドメイン、又は
l)配列番号98の重鎖可変ドメインと配列番号99の軽鎖可変ドメイン、又は
m)配列番号100の重鎖可変ドメインと配列番号101の軽鎖可変ドメイン、又は
n)配列番号102の重鎖可変ドメインと配列番号103の軽鎖可変ドメイン、又は
o)配列番号104の重鎖可変ドメインと配列番号105の軽鎖可変ドメイン、又は
p)配列番号106の重鎖可変ドメインと配列番号107の軽鎖可変ドメイン、又は
q)配列番号108の重鎖可変ドメインと配列番号109の軽鎖可変ドメイン、又は
r)配列番号110の重鎖可変ドメインと配列番号111の軽鎖可変ドメイン、又は
s)配列番号112の重鎖可変ドメインと配列番号113の軽鎖可変ドメイン、又は
t)配列番号114の重鎖可変ドメインと配列番号115の軽鎖可変ドメイン、又は
u)配列番号116の重鎖可変ドメインと配列番号117の軽鎖可変ドメイン、又は
v)配列番号118の重鎖可変ドメインと配列番号119の軽鎖可変ドメイン、
を含む二重特異性抗体である、抗体。
【0046】
18a.ヒトA-βタンパク質に特異的に結合する、又はヒトA-βタンパク質及びヒトTREM2に特異的に結合する、実施形態1~18のいずれか1つに記載の抗体。
【0047】
18b.二価抗体である、実施形態1~18aのいずれか1つに記載の抗体。
【0048】
18c.二価又は三価又は四価の抗体である、実施形態14~18bのいずれか1つに記載の抗体。
【0049】
18d.二価二重特異性抗体である、実施形態14~18cのいずれか1つに記載の抗体。
【0050】
18e.CrossMabフォーマットの二価二重特異性抗体である、実施形態18dに記載の抗体。
【0051】
18f.ヒトA-βタンパク質及びヒトTREM2タンパク質に結合する、実施形態14~18eのいずれか1つに記載の抗体。
【0052】
18g.ヒトA-βタンパク質及びヒトトランスフェリン受容体1に結合する、実施形態14~18eのいずれか1つに記載の抗体。
【0053】
18h.三価二重特異性抗体である、実施形態14~18cのいずれか1つに記載の抗体。
【0054】
18i.BSフォーマット又はTCBフォーマットの三価二重特異性抗体である、実施形態18hに記載の抗体。
【0055】
18j.ヒトA-βタンパク質及びヒトトランスフェリン受容体1に結合する、実施形態14~18c及び18g~18hのいずれか1つに記載の抗体。
【0056】
18k.四価二重特異性抗体である、実施形態14~18cのいずれか1つに記載の抗体。
【0057】
18l.2+2-フォーマットの四価二重特異性抗体である、実施形態18kに記載の抗体。
【0058】
18m.ヒトA-βタンパク質及びヒトTREM2タンパク質に結合する、実施形態14~18c及び18k~18lのいずれか1つに記載の抗体。
【0059】
18n.ヒトA-βタンパク質及びヒトトランスフェリン受容体1に結合する、実施形態14~18c及び18k~18lのいずれか1つに記載の抗体。
【0060】
18o.三価の三重特異性抗体であり、ヒトA-βタンパク質、ヒトトランスフェリン受容体1並びに第3の非ヒトA-β及び非ヒトトランスフェリン受容体1標的に結合している、実施形態14~18cのいずれか1つに記載の抗体。
【0061】
18p.三価三重特異性抗体であり、ヒトA-βタンパク質、ヒトトランスフェリン受容体1及びヒトTREM2に結合している、実施形態14~18c及び18oのいずれか1つに記載の抗体。
【0062】
18q.BSフォーマットの三価三重特異性抗体である、実施形態18o~18pのいずれか1つに記載の抗体。
【0063】
18r.TCBフォーマットの三価三重特異性抗体である、実施形態18o~18pのいずれか1つに記載の抗体。
【0064】
19.実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体と細胞傷害剤とを含む免疫コンジュゲート。
【0065】
20.実施形態1~18rのいずれかに記載の抗体をコードする単離された核酸分子。
【0066】
21.単離された核酸分子の組成物であって、組成物の単離された核酸分子の各々が、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体の1つの鎖をコードする、組成物。
【0067】
22.実施形態20の核酸分子又は実施形態21の核酸分子の組成物を含む宿主細胞。
【0068】
23.ヒトA-βタンパク質に結合する抗体を産生する方法であって、実施形態22の宿主細胞を、抗体の発現に適した条件下で培養培地中で培養することを含む方法。
【0069】
24.宿主細胞又は/及び培養培地から抗体を回収する工程をさらに含む、実施形態23に記載の方法。
【0070】
25.1つ又は複数のクロマトグラフィー工程を用いて、細胞又は/及び培養培地から回収後の抗体を精製する工程をさらに含む、実施形態23~24のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
26.実施形態23~25のいずれか1つに記載の方法によって産生される抗体。
【0072】
27.実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体又は実施形態19の免疫コンジュゲートと、薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物。
【0073】
28.追加の治療剤をさらに含む、実施形態27に記載の医薬組成物。
【0074】
28a.追加の治療剤が抗TREM2抗体である、実施形態28に記載の医薬組成物。
【0075】
28b.アルツハイマー病の処置用である、実施形態27~28aのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0076】
28c.パーキンソン病の処置用である、実施形態27~28aのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0077】
29.医薬として使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0078】
29a.医薬がアルツハイマー病の処置用である、実施形態29に記載の抗体。
【0079】
29b.医薬がパーキンソン病の処置用である、実施形態29に記載の抗体。
【0080】
30.脳におけるアミロイド形成に関連する疾患を有する個体における疾患の処置において使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0081】
31.脳におけるアミロイド斑形成に関連する疾患を有する個体における疾患の処置において使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0082】
32.脳におけるアミロイド疾患又は障害の処置に使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0083】
33.疾患が、認知症、アルツハイマー病、運動ニューロパシー、ダウン症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS又は老化に関連するニューロン障害からなる群から選択される、実施形態30~32のいずれか1つに記載の抗体。
【0084】
34.疾患がアルツハイマー病である、実施形態30~32のいずれか1つに記載の抗体。
【0085】
34a.疾患がパーキンソン病である、実施形態30~32のいずれか1つに記載の抗体。
【0086】
35.脳におけるアミロイド斑の形成を阻害するのに使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0087】
36.脳におけるアミロイド斑の形成を遅らせるのに使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0088】
37.脳におけるアミロイド形成の予防において使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0089】
38.脳におけるアミロイド斑形成の予防において使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0090】
39.脳におけるアミロイド斑を低減させるのに使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0091】
40.脳におけるアミロイド斑を除去するのに使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0092】
41.脳におけるアミロイド斑を崩壊させるのに使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0093】
42.脳におけるアミロイド斑の形成を阻害するのに使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0094】
43.脳におけるアミロイド斑を崩壊させるのに使用するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0095】
44.医薬の製造のための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0096】
45.医薬が、個体の脳におけるアミロイド形成に関連する疾患を処置するためのものである、実施形態44に記載の使用。
【0097】
46.医薬が、個体の脳におけるアミロイド斑形成に関連する疾患を処置するためのものである、実施形態44に記載の使用。
【0098】
47.医薬が脳におけるアミロイド疾患又は障害を処置するためのものである、実施形態44に記載の使用。
【0099】
48.アミロイド疾患が、認知症、アルツハイマー病、運動ニューロパシー、ダウン症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS又は老化に関連するニューロン障害からなる群から選択される、実施形態47に記載の使用。
【0100】
49.医薬がアルツハイマー病の処置用である、実施形態47又は48のいずれか1つに記載の使用。
【0101】
49a.医薬がパーキンソン病の処置用である、実施形態47又は48のいずれか1つに記載の使用。
【0102】
50.医薬が脳におけるアミロイド斑の形成を阻害するためのものである、実施形態44に記載の使用。
【0103】
51.医薬が脳におけるアミロイド斑の形成を遅らせるためのものである、実施形態44に記載の使用。
【0104】
52.医薬が脳におけるアミロイド形成を予防するためのものである、実施形態44に記載の使用。
【0105】
53.医薬が脳におけるアミロイド斑形成を予防するためのものである、実施形態44に記載の使用。
【0106】
54.医薬が脳におけるアミロイド斑を低減させるためのものである、実施形態44に記載の使用。
【0107】
55.医薬が脳におけるアミロイド斑を除去するためのものである、実施形態44に記載の使用。
【0108】
56.医薬が脳におけるアミロイド斑を崩壊させるためのものである、実施形態44に記載の使用。
【0109】
57.医薬が脳におけるアミロイド斑の形成を阻害するためのものである、実施形態44に記載の使用。
【0110】
58.医薬が脳におけるアミロイド斑を崩壊させるためのものである、実施形態44に記載の使用。
【0111】
59.脳におけるアミロイド形成に関連する疾患を有する個体における疾患の処置のための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0112】
60.脳におけるアミロイド斑形成に関連する疾患を有する個体における疾患の処置のための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0113】
61.脳におけるアミロイド疾患又は障害の処置のための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0114】
62.アミロイド疾患が、認知症、アルツハイマー病、運動ニューロパシー、ダウン症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS又は老化に関連するニューロン障害からなる群から選択される、実施形態61に記載の抗体の使用。
【0115】
63.医薬がアルツハイマー病の処置用である、実施形態61~62のいずれか1つに記載の抗体の使用。
【0116】
63a.医薬がパーキンソン病の処置用である、実施形態61~62のいずれか1つに記載の抗体の使用。
【0117】
64.脳におけるアミロイド斑の形成を阻害するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0118】
65.脳におけるアミロイド斑の形成を遅らせるための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0119】
66.脳におけるアミロイド形成の予防のための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0120】
67.脳におけるアミロイド斑形成の予防のための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0121】
68.脳におけるアミロイド斑を低減させるための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0122】
69.脳におけるアミロイド斑を除去するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0123】
70.脳におけるアミロイド斑を崩壊させるための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0124】
71.脳におけるアミロイド斑の形成を阻害するための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0125】
72.脳におけるアミロイド斑を崩壊させるための、実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0126】
73.脳内にアミロイド斑を有する個体を処置する方法であって、個体に、有効量の実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0127】
74.脳内にアミロイド形成を有する個体を処置する方法であって、個体に、有効量の実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0128】
75.脳内にアミロイド斑形成を有する又は発生すると予測される個体を処置する方法であって、個体に、有効量の実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0129】
76.個体に追加の治療剤を投与することをさらに含む、実施形態73~75のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
76a.追加の治療剤が抗TREM2抗体である、実施形態76に記載の方法。
【0131】
77.個体におけるアミロイド形成に関連する疾患を処置する方法であって、アミロイド形成に関連する疾患を処置するために、有効量の実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物を個体に投与することを含む、方法。
【0132】
78.個体における脳内のアミロイド斑形成に関連する疾患を処置する方法であって、アミロイド斑形成に関連する疾患を処置するために、有効量の実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物を個体に投与することを含む、方法。
【0133】
79.個体の脳におけるアミロイド疾患又は障害を処置する方法であって、脳における疾患又は障害を処置するために、有効量の実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物を個体に投与することを含む、方法。
【0134】
80.脳におけるアミロイド疾患又は障害が、認知症、アルツハイマー病、運動ニューロパシー、ダウン症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS又は老化に関連するニューロン障害からなる群から選択される、実施形態79に記載の処置方法。
【0135】
81.疾患がアルツハイマー病である、実施形態79~80のいずれか1つに記載の処置方法。
【0136】
81a.疾患がパーキンソン病である、実施形態79~80のいずれか1つに記載の処置方法。
【0137】
82.個体におけるアミロイド形成に関連する疾患を処置する方法であって、アミロイド形成に関連する疾患を処置するために、有効量の実施形態1~18rのいずれか1つに記載の抗体、又は実施形態19に記載の免疫コンジュゲート、又は実施形態27~28cのいずれか1つに記載の医薬組成物を個体に投与することを含む、方法。
【0138】
描写され、特許請求される様々な実施形態に加えて、本開示の主題は、本明細書に開示されるか又は特許請求される特徴の他の組み合わせを有する他の実施形態も対象とする。したがって、本明細書に提示される特定の特徴は、開示される主題が本明細書に開示された特徴の任意の好適な組合せを含むように、開示される主題の範囲内で他の方法で互いに組み合わせることができる。本開示の主題の特定の実施形態の前述の説明は、例証及び説明目的のために提示されている。包括的であるようにも本開示の主題を開示される実施形態に限定するようにも意図されていない。
【発明を実施するための形態】
【0139】
本発明は、少なくとも部分的に、重鎖CDR2に特定の変異を導入することによって、及び重鎖CDR3を短縮することによって、抗体ガンテネルマブの特性が改善されたという知見に基づいている。この理論に拘束されるものではないが、導入された改変は、Fabにおける糖占有不均一性を減少させ、脱アミド化ホットスポットを除去し、それによって親抗体ガンテネルマブの凝集傾向を低減させることによって、改善された特性をもたらしたと考えられる。
【0140】
本発明は、少なくとも部分的に、親抗体ガンテネルマブの軽鎖が、本発明による改変重鎖と組み合わせた場合に結合親和性及び特異性を回復するために改変を必要としないという知見に基づく。
【0141】
定義
本明細書で特に定義されていない限り、本発明に関連して使用される科学的及び技術的な用語は、当技術分野の当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0142】
本明細書において使用される場合、重鎖及び軽鎖のすべての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda,MD(1991)において説明されるKabatナンバリングシステムによりナンバリングされ、本明細書では「Kabatによるナンバリング」と称される。具体的には、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda,MD(1991)のKabatナンバリングシステム(647~660頁を参照)を、カッパアイソタイプ及びラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用し、Kabat EUインデックス番号付けシステム(661~723頁を参照)を、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3、本明細書では、この場合には、「KabatのEUインデックスによるナンバリング」と称することによってさらに明確にしている)に使用する。
【0143】
ノブ・イントゥー・ホール二量体化モジュール及び抗体操作におけるその使用は、Carter P.;Ridgway J.B.B.;Presta L.G.:Immunotechnology,Volume 2,Number 1,February 1996,pp.73-73(1)に記載されている。
【0144】
ヒト免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は、Kabat,E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載されている。
【0145】
本発明を実施するための有用な方法及び技術は、例えば、Ausubel,F.M.(ed.),Current Protocols in Molecular Biology,Volumes I to III(1997);Glover,N.D.,and Hames,B.D.,ed.,DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II(1985),Oxford University Press;Freshney,R.I.(ed.),Animal Cell Culture-a practical approach,IRL Press Limited(1986);Watson,J.D.,et al.,Recombinant DNA,Second Edition,CHSL Press(1992);Winnacker,E.L.,From Genes to Clones;N.Y.,VCH Publishers(1987);Celis,J.,ed.,Cell Biology,Second Edition,Academic Press(1998);Freshney,R.I.,Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,second edition,Alan R.Liss,Inc.,N.Y.(1987)に記載されている。
【0146】
組換えDNA技術を使用することにより、核酸の誘導体の作製が可能になる。このような誘導体は、例えば、置換、変更、交換、欠失又は挿入によって、個々の又はいくつかのヌクレオチド位置で改変することができる。改変又は誘導体化は、例えば、部位特異的突然変異誘発によって行うことができる。このような改変は、当業者によって容易に行うことができる(例えば、Sambrook,J.ら、Molecular Cloning:A laboratory manual(1999)Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,USA;Hames,B.D.,and Higgins,S.G.,Nucleic acid hybridization-a practical approach(1985)IRL Press,Oxford,Englandを参照)。
【0147】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈において特に明白な規定がない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「1つの細胞(a cell)」への言及は、複数のそのような細胞、及び当業者に公知であるその等価物を含み、他も同様である。同様に、用語「1つの(a)」(又は「1つの(an)」)、「1つ又は複数」、及び「少なくとも1つの」も、本明細書において同義的に使用され得る。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」が同義的に使用され得ることにも留意すべきである。
【0148】
用語「約」は、その後に続く数値の±20%の範囲を意味する。1つの実施形態において、「約」という用語は、その後に続く数値の±10%の範囲を意味する。1つの実施形態において、「約」という用語は、その後に続く数値の±5%の範囲を意味する。
【0149】
「アミロイド斑」という用語は、神経細胞間の空間に形成されるミスフォールドタンパク質の凝集体を意味する。これらの異常に構成されたタンパク質は、アルツハイマー病において中心的な役割を果たすと考えられている。アミロイド斑は、記憶及び他の認知機能に関係する脳の領域で最初に発生する。
【0150】
「決定する」という用語は、本明細書において使用される場合、測定する及び分析するという用語も包含する。
【0151】
「含む(comprising)」という用語は、「からなる(consisting of)」という用語も含む。
【0152】
「抗(ヒト)A-βタンパク質抗体」という用語は、抗体がヒトA-βタンパク質を標的とする上で診断剤及び/又は治療剤として有用であるような十分な親和性でヒトA-βタンパク質を結合することができる抗体を指す。
【0153】
ヒトA-βタンパク質は、いくつかの天然に存在する形態を有し、ヒト形態は、Aβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42及びAβ43と呼ばれることに留意されたい。最も顕著な形態であるAβ42は、配列番号45のアミノ酸配列を有する。Aβ41、Aβ40、Aβ39では、C末端のアミノ酸A、IA及びVIAがそれぞれ欠損している。Aβ43では、追加のスレオニン残基が配列番号45のC末端に含まれる。1つの好ましい実施形態において、本発明による抗体は、配列番号45のアミノ酸配列を有するヒトA-βタンパク質に特異的に結合する。
【0154】
「中枢神経系」又は「CNS」は、身体機能を制御する神経組織の複合体を指し、脳及び脊髄を含む。
【0155】
「抗体」という用語は、本明細書では広義に使用され、所望のヒトA-βタンパク質結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体、三重特異性抗体)及びそれらの断片を含むがこれらに限定されない様々な抗体構造を包含する。
【0156】
上に詳述したように、本発明による改変抗体は、二重特異性抗体又は多重特異性抗体であり得る。特定の実施形態では、本発明による抗体は、以下のフォーマットの1つの二重特異性抗体である:
-ドメイン交換を伴う完全長抗体(CrossMabフォーマット):
第1のFab断片及び第2のFab断片を含む多重特異性IgG抗体であって、第1のFab断片において、
a)CH1及びCLドメインのみが互いに置換されている(すなわち、第1のFab断片の軽鎖はVL及びCH1ドメインを含み、第1のFab断片の重鎖はVH及びCLドメインを含む);
b)VH及びVLドメインのみが互いに置換されている(すなわち、第1のFab断片の軽鎖はVH及びCLドメインを含み、第1のFab断片の重鎖はVL及びCH1ドメインを含む);又は
c)CH1とCLドメインが互いに置換され、VH及びVLドメインが互いに置換されている(すなわち、第1のFab断片の軽鎖はVH及びCH1ドメインを含み、第1のFab断片の重鎖はVL及びCLドメインを含む);及び
第2のFab断片は、VL及びCLドメインを含む軽鎖と、VH及びCH1ドメインを含む重鎖とを含む;
ドメイン交換を伴う完全長抗体は、CH3ドメインを含む第1の重鎖及びCH3ドメインを含む第2の重鎖を含み、両方のCH3ドメインは、第1の重鎖及び改変された第2の重鎖のヘテロ二量体化を支援するために、それぞれのアミノ酸置換によって相補的に操作される;
-追加の重鎖C末端結合部位を有する完全長抗体(BSフォーマット):
以下を含む多重特異性IgG抗体:
a)完全長抗体軽鎖と完全長抗体重鎖の各々2つの対を含む1つの完全長抗体であって、完全長重鎖と完全長軽鎖の対の各々によって形成される結合部位が第1の抗原に特異的に結合するか、又は一方が第1の抗原に結合し、他方が第2の抗原に結合する、1つの完全長抗体、及び
b)1つの追加のFab断片であって、追加のFab断片が完全長抗体の重鎖のうちの1つのC末端に融合されており、追加のFab断片の結合部位が第2の抗原に特異的に結合するか、又は完全長抗体が第1及び第2の抗原に結合している場合、追加のFabが第3の抗原に結合している、1つの追加のFab断片、
第2の抗原に特異的に結合する追加のFab断片は、i)a)軽鎖可変ドメイン(VL)と重鎖可変ドメイン(VH)が互いに置き換えられている、又はb)軽鎖定常ドメイン(CL)と重鎖定常ドメイン(CH1)が互いに置き換えられているようなドメインクロスオーバーを含むか、又はii)一本鎖Fab断片であり;
完全長抗体は、CH3ドメインを含む第1の重鎖及びCH3ドメインを含む第2の重鎖を含み、両方のCH3ドメインは、第1の重鎖及び改変された第2の重鎖のヘテロ二量体化を支援するために、それぞれのアミノ酸置換によって相補的に操作される;
-2つの追加の重鎖C末端結合部位を有する完全長抗体(2+2-フォーマット):
以下を含む多重特異性IgG抗体:
a)完全長抗体軽鎖と完全長抗体重鎖の各々2つの対を含む1つの完全長抗体であって、完全長重鎖と完全長軽鎖の対の各々によって形成される結合部位が第1の抗原に特異的に結合する、1つの完全長抗体、及び
b)2つの追加のFab断片であって、完全長抗体の重鎖の各C末端に1つの追加のFab断片が融合されており、追加のFab断片の結合部位が第2の抗原に特異的に結合する、2つの追加のFab断片;
-追加の重鎖N末端部位を有する完全長抗体(TCBフォーマット):
以下を含む多重特異性IgG抗体:
a)完全長抗体軽鎖と完全長抗体重鎖の各々2つの対を含む1つの完全長抗体であって、完全長重鎖と完全長軽鎖の対の各々によって形成される結合部位が第1の抗原に特異的に結合するか、又は一方が第1の抗原に結合し、他方が第2の抗原に結合する、1つの完全長抗体、及び
b)1つの追加のFab断片であって、追加のFab断片が完全長抗体のFab断片の1つとFc領域との間に挿入されており、追加のFab断片の結合部位が第2の抗原に特異的に結合するか、又は完全長抗体が第1及び第2の抗原に結合している場合、追加のFabが第3の抗原に結合している、1つの追加のFab断片、
第2の抗原に特異的に結合する追加のFab断片は、a)軽鎖可変ドメイン(VL)と重鎖可変ドメイン(VH)が互いに置き換えられている、又はb)軽鎖定常ドメイン(CL)と重鎖定常ドメイン(CH1)が互いに置き換えられているようなドメインクロスオーバーを含む;
-1アーム一本鎖フォーマット(=1アーム一本鎖抗体):
第1のエピトープ又は抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2のエピトープ又は抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含む抗体であって、個々の鎖は以下の通りである:
-軽鎖(可変軽鎖ドメイン+軽鎖カッパ定常ドメイン)
-軽鎖/重鎖の組み合わせ(可変軽鎖ドメイン+軽鎖定常ドメイン+ペプチドリンカー+可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+ノブ変異を有するCH3)
-重鎖(可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+ホール変異を有するCH3);
-2アーム一本鎖フォーマット(=2アーム一本鎖抗体):
第1のエピトープ又は抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2のエピトープ又は抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含む抗体であって、個々の鎖は以下の通りである:
-軽鎖/重鎖1の組み合わせ(可変軽鎖ドメイン+軽鎖定常ドメイン+ペプチドリンカー+可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+ホール変異を有するCH3)
-軽鎖/重鎖2の組み合わせ(可変軽鎖ドメイン+軽鎖定常ドメイン+ペプチドリンカー+可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+ノブ変異を有するCH3);
-一般的な軽鎖二重特異性フォーマット(=一般的な軽鎖二重特異性抗体):
第1のエピトープ又は抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2のエピトープ又は抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含む抗体であって、個々の鎖は以下の通りである:
-軽鎖(可変軽鎖ドメイン+軽鎖定常ドメイン)
-重鎖1(可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+ホール変異を有するCH3)
-重鎖2(可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+ノブ変異を有するCH3)。
【0157】
本明細書で使用される場合、対応する重鎖ドメイン及び軽鎖ドメインに関して「互いに置き換えられた」という用語は、上述のドメインクロスオーバーを指す。そのため、CH1及びCLドメインが「互いに置き換えられた」場合、この用語は、項目(i)の下で言及されたドメインクロスオーバー、並びに結果として生じる重鎖及び軽鎖ドメイン配列を指す。したがって、VH及びVLが「互いに置き換えられた」場合、この用語は、項目(ii)の下で言及されたドメインクロスオーバーを指し、またCH1及びCLドメインが「互いに置き換えられ」、かつVH及びVLドメインが「互いに置き換えられた」場合、該用語は、項目(iii)の下で言及されたドメインクロスオーバーを指す。
【0158】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部を含み、インタクトな抗体が結合するのと同じ抗原に結合する、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);DutaFab(二重特異性Fab)及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の全ての非共有相互作用の合計の強度を指す。別途指定されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間での1:1の相互作用を反映する、固有の結合親和性を指す。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当技術分野で既知の一般的な方法によって測定することができる。
【0160】
「抗体依存性細胞傷害(ADCC)」という用語は、Fc受容体結合によって媒介される機能であり、エフェクター細胞の存在下での、本明細書に報告される抗体による標的細胞の溶解を指す。ADCCは、単球又はNK(ナチュラルキラー)細胞のような、単離直後のPBMC(末梢血単核細胞)又はバフィーコートから精製されたエフェクター細胞などのエフェクター細胞の存在下において、本発明による抗体で、CD19発現赤血球(例えば、組換えヒトCD19を発現するK562細胞)の調製物を処理することによって測定され得る。標的細胞は、51Crで標識され、その後、抗体とともにインキュベートされる。標識した細胞は、エフェクター細胞とともにインキュベートされ、その上清は、放出された51Crについて分析される。対照としては、標的内皮細胞とエフェクター細胞とのインキュベーションが挙げられるが、抗体は含まれない。ADCCを媒介する初期工程を誘発する抗体の能力は、FcγRI及び/若しくはFcγRIIA又は(本質的にFcγRIIIAを発現する)NK細胞を組み換えにより発現する細胞などの、Fcγ受容体を発現する細胞への、抗体の結合を測定することにより調査される。
【0161】
「多重特異性抗体」は、同じ抗原又は2つの異なる抗原上の少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体を表す。多重特異性抗体は、完全長抗体若しくは抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体又はDutaFab)又はその組み合わせ(例えば、完全長抗体+追加の/融合された1つ又は複数のFv、scFv若しくはFab断片)として調製することができる。2つ、3つ又はより多く(例えば、4つ)の機能的な抗原結合部位を有する操作された抗体が報告されている(例えば、US2002/0004587A1を参照)。
【0162】
「(抗原への)結合」という用語は、抗体の、その同族抗原への結合を意味する。結合は、インビトロアッセイにおいて決定され得る。特定の実施形態では、結合は、抗体を表面に結合し、その抗体への抗原の結合を表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定する結合アッセイにおいて、測定される。結合の親和性は、ka(抗体/抗原複合体からの抗体の会合の速度定数)、kd(解離定数)、及びKD(kd/ka)という語によって定義される。したがって、結合は、抗体とその同族抗原との間の特異的かつ検出可能な相互作用、例えば1E-4M以下の結合親和性(KD)を意味する。「特異的に結合する」とは、1E-8M以下、いくつかの実施形態では1E-13~1E-8M、いくつかの実施形態では1E-13~1E-9Mの結合親和性(KD)を意味する。
【0163】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の供給源又は種に由来する抗体を指し、一方、重鎖及び/又は軽鎖の残りは、異なる供給源又は種に由来する。
【0164】
抗体の「クラス」とは、その重鎖によって保有される定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体には、次の5種類の主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかを、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に更に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、及びμと呼ばれる。
【0165】
本明細書で使用される用語「細胞傷害剤」は、細胞機能を阻害し若しくは防止し、かつ/又は細胞死若しくは破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害剤としては、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体);化学療法剤又は薬物(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤);成長阻害剤;酵素及びその断片、例えば核分解酵素;抗生物質;細菌、真菌、植物又は動物由来の低分子毒素又は酵素的活性毒素等の毒素(その断片及び/又はバリアントを含む);並びに下記に開示される様々な抗腫瘍剤又は抗がん剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0166】
「補体依存性細胞傷害(CDC)」という用語は、補体の存在下で本発明による抗体によって誘導される細胞の溶解を指す。CDCは、補体の存在下での本発明による抗体によるCD19発現ヒト内皮細胞の処理によって測定することができる。細胞をカルセインで標識することができる。抗体が30μg/mlの濃度で標的細胞の20%以上の溶解を誘導する場合、CDCが見出される。補体因子C1qへの結合は、ELISAで測定することができる。そのようなアッセイでは、原則として、ELISAプレートは、精製ヒトC1q又はヒト血清が添加される本発明による抗体の濃度範囲でコーティングされる。C1q結合は、C1qに対する抗体、続いてペルオキシダーゼ標識コンジュゲートによって検出される。結合の検出(最大結合Bmax)を、ペルオキシダーゼ基質ABTS(登録商標)(2,2’-アジノ-ジ-[3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホネート(6)])についての405nmでの光学密度(OD405)として測定する。
【0167】
「エフェクター機能」は、抗体のクラスにより異なっている抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション;並びにB細胞活性化が挙げられる。
【0168】
Fc受容体結合依存性エフェクター機能は、抗体のFc領域と、造血細胞上の専門化した細胞表面受容体であるFc受容体(FcR)との相互作用によりもたらされ得る。Fc受容体は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属しており、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して、免疫複合体の食作用による抗体被覆病原体の除去と、対応する抗体で被覆された赤血球及び他の種々の細胞標的(例えば、腫瘍細胞)の溶解との両方を媒介することが示されてきた(例えば、Van de Winkel,J.G.and Anderson,C.L,J.Leukoc.Biol.49(1991)511-524を参照されたい)。FcRは、免疫グロブリンアイソタイプに対するその特異性により定義される:IgG抗体に対するFc受容体は、FcγRと呼ばれる。Fc受容体結合は、例えば、Ravetch,J.V.and Kinet,J.P.,Annu.Rev.Immunol.9(1991)457-492;Capel,P.J.,et al.,Immunomethods 4(1994)25-34;de Haas,M.,et al.,J.Lab.Clin.Med.126(1995)330-341;及びGessner,J.E.,et al.,Ann.Hematol.76(1998)231-248に記載されている。
【0169】
IgG抗体のFc領域に対する受容体(FcγR)の架橋は、食作用、抗体依存性細胞傷害、及び炎症性メディエータの放出、並びに免疫複合体の排除及び抗体産生の制御を含む、多種多様なエフェクター機能を誘発する。ヒトでは、FcγRの3つのクラスが以下のように特徴づけられている。
-FcγRI(CD64)は、高い親和性で単量体IgGを結合し、マクロファージ、単球、好中球及び好酸球上に発現する。アミノ酸残基E233~G236、P238、D265、N297、A327及びP329(KabatのEUインデックスによるナンバリング)の少なくとも1つにおけるFc領域 IgGの改変がFcγRIへの結合を低減させる。IgG1及びIgG4へと置換された233~236位のIgG2残基は、FcγRIへの結合を103倍低減させ、抗体感作赤血球に対するヒト単球応答を排除した(Armour,K.L.,et al.,Eur.J.Immunol.29(1999)2613-2624);
-FcγRII(CD32)は、複合体化したIgGを中等度から低い親和性で結合し、広範に発現される。この受容体は、2つのサブタイプであるFcγRIIA及びFcγRIIBに分けることができる。FcγRIIAは、殺傷に関与する多くの細胞(例えば、マクロファージ、単球、好中球)に見られ、殺傷プロセスを活性化することができるようである。FcγRIIBは、阻害プロセスにおいて役割を果たすようであり、B細胞、マクロファージ、並びに肥満細胞及び好酸球に認められる。B細胞上では、FcγRIIBは、免疫グロブリン産生、及び、例えばIgEクラスへのアイソタイプ切り替えをさらに抑制する機能を有するようである。マクロファージ上では、FcγRIIBは、FcγRIIAによって媒介される食作用を阻害するように働く。好酸球及び肥満細胞上では、B形態は、IgEの、その別個の受容体への結合を通じて、これらの細胞の活性化の抑制を補助し得る。FcγRIIAに対する結合の低減は、例えば、アミノ酸残基E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292及びK414(KabatのEUインデックスによるナンバリング)の少なくとも1つに変異を有するIgG Fc領域を含む抗体で見られる;
-FcγRIII(CD16)は、中等度から低い親和性でIgGを結合し、2つのタイプとして存在する。FcγRIIIAは、NK細胞、マクロファージ、好酸球並びにいくつかの単球及びT細胞上で見られ、ADCCを媒介する。FcγRIIIBは、好中球で多く発現される。FcγRIIIAに対する結合の低減は、例えば、少なくとも1つのアミノ酸残基E233-G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、S239、E269、E293、Y296、V303、A327、K338及びD376(Kabat EUインデックスによるナンバリング)において変異を有するIgG Fc領域を含む抗体で見られる。
【0170】
Fc受容体に対するヒトIgG1上の結合部位のマッピング、上述の変異部位、並びにFcγRI及びFcγRIIAへの結合を測定するための方法は、Shields,R.L.,ら,J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604において説明されている。
【0171】
薬剤、例えば、医薬製剤の「有効量」は、所望の治療結果又は予防結果を達成するために必要な薬用量及び所要期間で有効な量を指す。
【0172】
本明細書で使用する「Fc受容体」という用語は、受容体と会合した細胞質ITAM配列の存在を特徴とする活性化受容体を指す(例えば、Ravetch,J.V.及びBolland,S.,Annu.Rev.Immunol.19(2001)275-290を参照されたい)。このような受容体は、FcγRI、FcγRIIA及びFcγRIIIAである。「FcγRの結合がない」という用語は、10μg/mlの抗体濃度で、抗体のNK細胞への結合が、国際公開第2006/029879号において報告された抗OX40L抗体LC.001について認められる結合の10%以下であることを表す。
【0173】
IgG4は低減したFcR結合を示すが、他のIgGサブクラスの抗体は強い結合を示す。しかしながら、Pro238、Asp265、Asp270、Asn297(Fc炭水化物の喪失)、Pro329並びに234、235、236及び237 Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434及びHis435は、変更されるとFcR結合も低減させる残基である(Shields,R.L.et al.,J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604;Lund,J.et al.,FASEB J.9(1995)115-119;Morgan,A.et al.,Immunology 86(1995)319-324;及び欧州特許第0307434号)。特定の実施形態では、本発明による抗体はIgG1又はIgG2サブクラスのものであり、変異PVA236、GLPSS331、L234A/L235A又はP329G/L234A/L235Aを含む。特定の実施形態では、本明細書に報告される抗体はIgG4サブクラスのものであり、変異L235Eを含む。特定の実施形態では、本発明による抗体は変異S228Pをさらに含む。
【0174】
「(ヒト起源の)Fc領域ポリペプチド」という用語は、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインの少なくとも部分を含有する(ヒト起源の)免疫グロブリン重鎖のC末端領域を表す。特定の実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域ポリペプチドは、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで伸長する。好ましい一実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号05のアミノ酸配列を含むか、又はそのバリアントである。しかしながら、Fc領域ポリペプチド又は完全な抗体重鎖のC末端リジン(Lys447)は、存在してもしなくてもよい。
【0175】
「抗体のFc領域」は、当業者に周知の用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて規定される。特定の実施形態では、Fc領域はヒトFc領域である。「(ヒト起源の)Fc領域」は、鎖間ジスルフィド結合を形成するヒンジ領域システイン残基を介して互いに共有結合している(ヒト起源の)2つの重鎖Fc領域ポリペプチドを含む。
【0176】
本発明による抗体は、Fc領域として、特定の実施形態では、ヒト起源に由来するFc領域を含む。特定の実施形態では、Fc領域は、ヒト定常領域のすべての部分を含む。抗体のFc領域は、補体活性化、C1q結合、C3活性化、及びFc受容体結合に直接関与している。補体系に対する抗体の影響は、特定の条件に依存するが、C1qへの結合は、Fc領域における規定の結合部位によって引き起こされる。そのような結合部位は、最新技術において公知であり、例えば、Lukas,T.J.ら、J.Immunol.127(1981)2555-2560;Brunhouse,R.及びCebra,J.J.、Mol.Immunol.16(1979)907-917;Burton,D.R.ら、Nature 288(1980)338-344;Thommesen,J.E.ら、Mol.Immunol.37(2000)995-1004;Idusogie,E.E.ら、J.Immunol.164(2000)4178-4184;Hezareh,M.ら、J.Virol.75(2001)12161-12168;Morgan,A.ら、Immunology 86(1995)319-324;及び欧州特許第0307434号に記載される。そのような結合部位は、例えば、L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331及びP329(Kabat EUインデックスによるナンバリング;本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat,E.A.ら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)、NIH Publication 91-3242に記載されるような、EUインデックスとも呼ばれる、EUナンバリングシステムである。サブクラスIgG1、IgG2、及びIgG3の抗体は通常、補体活性化、C1q結合、及びC3活性化を示すのに対し、IgG4は、補体系を活性化せず、C1qと結合せず、C3を活性化しない。
【0177】
「FcRn」という用語はヒト新生児Fc受容体を表す。FcRnは、リソソーム分解経路からIgGをサルベージするように機能して、低減したクリアランス及び増加した半減期を結果としてもたらす。FcRnは、2つのポリペプチド:50kDaのクラスI主要組織適合複合体様タンパク質(α-FcRn)及び15kDaのβ2-マイクログロブリン(β2m)からなるヘテロ二量体タンパク質である。FcRnは、IgGのFc領域のCH2-CH3部分に高い親和性で結合する。IgG及びFcRnの間の相互作用は厳格にpH依存性であり、1:2の化学量論において起こり、1つのIgGがその2つの重鎖を介して2つのFcRn分子に結合する(Huber,A.H.,et al.,J.Mol.Biol.230(1993)1077-1083)。FcRn結合は酸性pH(pH<6.5)のエンドソーム中で起こり、IgGが中性の細胞表面(約7.4のpH)において放出される。相互作用のpH感受性は、エンドソームの酸性環境内の受容体への結合による細胞内分解からの細胞中にピノサイトーシスされたIgGのFcRn媒介性保護を促す。FcRnは次に、細胞表面へのIgGの再利用、及び細胞外の中性pH環境へのFcRn-IgG複合体の曝露の際の血流へのその後の放出を促す。
【0178】
「Fc領域のFcRn結合部分」という用語は、おおよそEU位置243~EU位置261及びおおよそEU位置275~EU位置293及びおおよそEU位置302~EU位置319及びおおよそEU位置336~EU位置348及びおおよそEU位置367~EU位置393及びEU位置408及びおおよそEU位置424~EU位置440に伸長する抗体重鎖ポリペプチドの部分を表す。一実施形態では、KabatのEUナンバリングによる以下のアミノ酸残基のうちの1つ又は複数が変更される:F243、P244、P245 P、K246、P247、K248、D249、T250、L251、M252、I253、S254、R255、T256、P257、E258、V259、T260、C261、F275、N276、W277、Y278、V279、D280、V282、E283、V284、H285、N286、A287、K288、T289、K290、P291、R292、E293、V302、V303、S304、V305、L306、T307、V308、L309、H310、Q311、D312、W313、L314、N315、G316、K317、E318、Y319、I336、S337、K338、A339、K340、G341、Q342、P343、R344、E345、P346、Q347、V348、C367、V369、F372、Y373、P374、S375、D376、I377、A378、V379、E380、W381、E382、S383、N384、G385、Q386、P387、E388、N389、Y391、T393、S408、S424、C425、S426、V427、M428、H429、E430、A431、L432、H433、N434、H435、Y436、T437、Q438、K439、及びS440(EUナンバリング)。
【0179】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)中において以下の配列で現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0180】
「完全長抗体」という用語は、天然抗体の構造に実質的に類似した構造を有する抗体を表す。完全長抗体は、i)可変ドメイン及び定常ドメインをそれぞれ含む2つの完全長抗体軽鎖と、ii)可変ドメイン、第1の定常ドメイン、ヒンジ領域、第2の定常ドメイン及び第3の定常ドメインをそれぞれ含む2つの完全長抗体重鎖とを含む。完全長抗体は、さらなるドメイン、例えば追加のscFv、又は完全長抗体の鎖の1つ又は複数、好ましくは1つ又は複数の重鎖のC末端にコンジュゲートしたscFab若しくはドメイン交換Fabを含み得る。
【0181】
「宿主細胞」及び「宿主細胞株」という用語は互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、これらは、継代数にかかわらず、初代の形質転換された細胞と、初代の形質転換された細胞から誘導された子孫を含む。子孫は、親細胞と完全に同一でなくてもよく、突異を含有してもよい。本明細書では、最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異体の子孫が、含まれる。
【0182】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において、最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Bethesda MD(1991),NIH Publication 91-3242,Vols.1-3におけるようなサブグループである。特定の実施形態では、VLについて、サブグループは、上記Kabat et al.にあるようなサブグループκIである。特定の実施形態では、VHについて、サブグループは、上記Kabat et al.にあるようなサブグループIIIである。
【0183】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基、及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、HVR(例えばCDR)のすべて又は実質的にすべてが、非ヒト抗体に対応し、FRのすべて又は実質的にすべてが、ヒト抗体に対応する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」とは、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0184】
「超可変領域」又は「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、超可変的な配列(「相補性決定領域」又は「CDR」)であり、及び/又は構造的に定義されるループ(「超可変ループ」)を形成し、及び/又は抗原に接触する残基(「抗原接触」)を含有するアミノ酸残基ストレッチを含む、抗体可変ドメインのそれぞれの領域を指す。一般的に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)及びVLに3つ(L1、L2、L3)の、6つのHVRを含む。
【0185】
HVRには、次のものが含まれる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)に生じる超可変ループ(Chothia,C.及びLesk,A.M.、J.Mol.Biol.196(1987)901-917)、
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)及び95~102(H3)に生じるCDR(Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991),NIH Publication 91-3242.);
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)及び93~101(H3)で生じる抗原接触(MacCallumら、J.Mol.Biol.262:732~745(1996));並びに
(d)アミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、及び94~102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/又は(c)の組み合わせ。
【0186】
特に示されない限り、HVR残基及び可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al.(前出)に従って本明細書ではナンバリングされている。
【0187】
「~に由来する」という用語は、アミノ酸配列が、少なくとも1つの位置において変更を導入することにより親アミノ酸配列に由来することを表す。そのように由来するアミノ酸配列は、少なくとも1つの対応する位置(抗体Fc領域についてのKabat EUインデックスによるナンバリング)において対応する親アミノ酸配列から異なる。特定の実施形態では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、対応する位置における1~15アミノ酸残基により異なる。特定の実施形態では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、対応する位置における1~10アミノ酸残基により異なる。特定の実施形態では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、対応する位置における1~6アミノ酸残基により異なる。同様に、由来するアミノ酸配列は、その親アミノ酸配列に対して高いアミノ酸配列同一性を有する。特定の実施形態では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は80%又はより高いアミノ酸配列同一性を有する。特定の実施形態では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は90%又はより高いアミノ酸配列同一性を有する。特定の実施形態では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は95%又はより高いアミノ酸配列同一性を有する。1つの好ましい実施形態では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は98%又はより高いアミノ酸配列同一性を有する。
【0188】
「(ヒト)Fc領域ポリペプチド」という用語は、「天然」又は「野生型」(ヒト)Fc領域ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を表す。「バリアント(ヒト)Fc領域ポリペプチド」という用語は、少なくとも1つの「アミノ酸変更」のために「天然」又は「野生型」(ヒト)Fc領域ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を表す。「バリアント(ヒト)Fc領域」は2つのFc領域ポリペプチドからなり、それにより、両方がバリアント(ヒト)Fc領域ポリペプチドであり得るか、又は一方が(ヒト)Fc領域ポリペプチドであり、かつ他方がバリアント(ヒト)Fc領域ポリペプチドである。
【0189】
特定の実施形態では、ヒトFc領域ポリペプチドは、ヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドのアミノ酸配列を有するか、又はそのバリアントであるか、又はヒトIgG2 Fc領域ポリペプチドのアミノ酸配列を有するか、又はそのバリアントであるか、又はヒトIgG3 Fc領域ポリペプチドのアミノ酸配列を有するか、又はそのバリアントであるか、又はヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドのアミノ酸配列を有するか、又はそのバリアントである。特定の実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号05又は配列番号17のFc領域ポリペプチドに由来し、配列番号05又は配列番号17のFc領域ポリペプチドと比較して少なくとも1つのアミノ酸変異を有する。特定の実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、約1~約10個のアミノ酸変異を含む/有する。特定の実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、約1~約5個のアミノ酸変異を含む/有する。
【0190】
特定の実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、PGLALA変異及びノブ変異を有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号12)を有し、任意にC末端リジン残基が欠失している。特定の実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、PGLALA変異及びノブ-シス又はホール-シス変異を有するヒトIgG1 Fc領域のアミノ酸配列(配列番号16又は配列番号15)を有し、任意にC末端リジン残基が欠失している。
【0191】
特定の実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号05又は配列番号17のヒトFc領域ポリペプチドと少なくとも約80%の配列相同性を有する。特定の実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号05又は配列番号17のヒトFc領域ポリペプチドと少なくとも約90%の配列相同性を有する。特定の実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号05又は配列番号17のヒトFc領域ポリペプチドと少なくとも約95%の配列相同性を有する。1つの好ましい実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号05又は配列番号17のヒトFc領域ポリペプチドと少なくとも約97.5%の相同性を有する。
【0192】
特定の実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号05又は配列番号17のヒトFc領域ポリペプチドと少なくとも約80%の配列同一性を有する。特定の実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号05又は配列番号17のヒトFc領域ポリペプチドと少なくとも約90%の配列同一性を有する。特定の実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号05又は配列番号17のヒトFc領域ポリペプチドと少なくとも約95%の配列同一性を有する。1つの好ましい実施形態では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号05又は配列番号17のヒトFc領域ポリペプチドと少なくとも約97.5%の同一性を有する。好ましい一実施形態では、C末端リジン残基は欠失している。
【0193】
配列番号05又は配列番号17の親(ヒト)Fc領域ポリペプチドに由来するバリアントFc領域ポリペプチドは、親又は野生型配列と比較して含有されるアミノ酸変化によってさらに定義される。したがって、例えば、P329Gという用語は、(ヒト)Fc領域ポリペプチドに由来するFc領域ポリペプチドであって、配列番号05又は配列番号17のヒトFc領域ポリペプチドに対してアミノ酸位置329にプロリンからグリシンへの変異を有するFc領域ポリペプチドを表す(ナンバリングはKabatに従う)。
【0194】
ヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号05)、任意に、C末端に追加のリジン残基(K)が付加される。
【0195】
変異L234A、L235A(LALA変異)を有するヒトIgG1 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号06)、任意に、C末端に追加のリジン残基(K)が付加される。
【0196】
Y349C、T366S、L368A及びY407V変異(ノブ-シス-変異)を有するヒトIgG1 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号07)、任意に、C末端に追加のリジン残基(K)が付加される。
【0197】
S354C、T366W(ホール-シス-変異)変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号08)、任意に、C末端に追加のリジン残基(K)が付加される。
【0198】
L234A、L235A変異及びY349C、T366S、L368A、Y407V変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号09)、任意に、C末端に追加のリジン残基(K)が付加される。
【0199】
L234A、L235A及びS354C、T366W変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号10)、任意に、C末端に追加のリジン残基(K)が付加される。
【0200】
P329G変異(PG変異)を有するヒトIgG1 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号11)、任意に、C末端に追加のリジン残基(K)が付加される。
【0201】
L234A、L235A変異及びP329G変異(LALAPG変異)を有するヒトIgG1 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号12)、任意に、C末端に追加のリジン残基(K)が付加される。
【0202】
P329G変異及びY349C、T366S、L368A、Y407V変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号13)、任意に、C末端に追加のリジン残基(K)が付加される。
【0203】
P329G変異及びS354C、T366W変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号14)、任意に、C末端に追加のリジン残基(K)が付加される。
【0204】
L234A、L235A、P329G及びY349C、T366S、L368A、Y407V変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号15)、任意に、C末端に追加のリジン残基(K)が付加される。
【0205】
L234A、L235A、P329G変異及びS354C、T366W変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号16)、任意に、C末端に追加のリジン残基(K)が付加される。
【0206】
ヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号17)。
【0207】
S228P及びL235E変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号18)。
【0208】
S228P、L235E変異及びP329G変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLGSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号19)。
【0209】
S354C、T366W変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCQEEMTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号20)。
【0210】
Y349C、T366S、L368A、Y407V変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSQEEMTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号21)。
【0211】
S228P、L235E及びS354C、T366W変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCQEEMTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号22)。
【0212】
S228P、L235E及びY349C、T366S、L368A、Y407V変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSQEEMTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号23)。
【0213】
P329G変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLGSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号24)。
【0214】
P329G及びY349C、T366S、L368A、Y407V変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLGSSIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSQEEMTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号25)。
【0215】
P329G及びS354C、T366W変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLGSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCQEEMTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号26)。
【0216】
S228P、L235E、P329G及びY349C、T366S、L368A、Y407V変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLGSSIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSQEEMTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号27)。
【0217】
S228P、L235E、P329G及びS354C、T366W変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLGSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCQEEMTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号28)。
【0218】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基、及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むものであり、それにおいて、HVR(例えば、CDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに相当し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のものに相当する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0219】
「単離された」抗体は、その天然環境の構成要素から分離された抗体である。特定の実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフ(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー又はイオン交換又は逆相HPLC)分析法によって決定された場合に、95%超又は99%超の純度まで精製される。抗体の純度を評価するための方法の概説については、例えば、Flatman,S.et al.,J.Chrom.B 848(2007)79-87を参照されたい。
【0220】
「単離された」核酸は、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。
【0221】
「抗ヒトA-βタンパク質抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖及び軽鎖(又はそれらの断片)をコードする1つ又は複数の核酸分子を指し、単一のプラスミド又は別個のプラスミド中のそのような核酸分子を含む。
【0222】
「免疫コンジュゲート」とは、細胞傷害剤を含むがそれに限定されない、1つ又は複数の異種分子にコンジュゲートされた抗体である。
【0223】
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されないが、家畜動物(例えばウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えばヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)が含まれる。特定の実施形態では、個体又は対象はヒトである。
【0224】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合するが、例えば、自然発生突然変異を含有するか、又はモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる、起こり得るバリアント抗体は例外であり、かかるバリアントは一般的に少量で存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈すべきではない。例えば、本発明に従うモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない様々な技術によって作製することができ、そのような方法及び本明細書に記載されているモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法を含むがこれらに限定されない。
【0225】
「天然抗体」とは、様々な構造を持つネイティブに存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖で構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端までの各重鎖は、可変重ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、これに3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)が続く。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、これに定常軽(CL)ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2種類の1つに割り当てられ得る。
【0226】
「パッケージ添付文書」との用語は、治療製品の市販パッケージに通常含まれる指示を指すために用いられ、このような治療製品に関する適応症、使用、投薬量、投与、併用療法、禁忌及び/又は警告に関する情報を含有する。
【0227】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列の同一性パーセント(%)」は、配列をアラインメントし、最大の配列同一性パーセントを達成するために、必要ならばギャップを導入した後、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮せずに、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合であると定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のための整列は、当技術分野における技術の範囲内にある種々の方法において、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いて達成され得る。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて生成している。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、使用者用書類と共に、米国著作権局、Washington D.C.、20559に提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.(South San Francisco,California)から公的に入手可能であり、又はそのソースコードからコンパイルし得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標) V4.0Dを含め、UNIXオペレーティングシステムで使用するためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変わらない。
【0228】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Bへの、アミノ酸配列Bとの、又はアミノ酸配列Bに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、アミノ酸配列Bとの、又はアミノ酸配列Bに対する、ある特定のアミノ酸配列同一性%を有する又は含む、所与のアミノ酸配列Aとして記述され得る)は、以下のように計算される。
100×分数X/Y
式中、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムのAとBのアラインメントにおいて同一のマッチとしてスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、A対Bの%アミノ酸配列同一性は、B対Aの%アミノ酸配列同一性に等しくないことが理解されよう。特に明記しない限り、本明細書で使用される全ての%アミノ酸配列同一性の値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して直前の段落に記載されているように得られる。
【0229】
「医薬製剤」という用語は、調製物中に含有される有効成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤を投与する対象にとって許容できないほど有毒である成分を含有しない調製物を指す。
【0230】
「薬学的に許容され得る担体」は、対象に非毒性の、有効成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容され得る担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は保存剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0231】
本明細書で使用されるように、「プラスミド」という用語は、それらが含む別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。用語には、自己複製核酸構造体としてのプラスミド、及びそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたプラスミドが含まれる。特定のプラスミドは、それらが含む核酸の発現を指示することができる。そのようなプラスミドは、本明細書では「発現プラスミド」と称される。
【0232】
「組換え抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、組換え手段により調製、発現、作製又は単離された全ての抗体(キメラ、ヒト化及びヒト)を表す。これは、NS0、HEK、BHK若しくはCHO細胞などの宿主細胞から若しくはヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体又は宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現プラスミドを使用して発現された抗体を含む。組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来及び関連するが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しなくてもよい。
【0233】
本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」(及び「処置する(treat)」又は「処置すること(treating)」などのその文法上の変形)とは、処置されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、予防のために、又は臨床病理過程中に行われ得る。処置の望ましい効果には、疾患の発生又は再発の予防、症候の緩和、疾患の任意の直接的又は間接的病理学的帰結の縮小、疾患進行速度の減少、病状の回復又は寛解、及び緩解又は予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるために、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0234】
「価数」という用語は、本出願で使用される場合、(抗体)分子中の指定された結合部位数の存在を表す。したがって、「二価」、「三価」及び「四価」という用語は、(抗体)分子中にそれぞれ2つの結合部位、3つの結合部位及び4つの結合部位が存在することを意味する。
【0235】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体のその抗原への結合に関与する、抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は、一般に、各ドメインが4つのフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む、類似の構造を有する(例えば、Kindt,T.J.et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,N.Y.(2007),page 91を参照)。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するために充分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体のVH又はVLドメインを使用し、それぞれ、相補的VL又はVHドメインのライブラリーをスクリーニングして、単離してもよい。例えば、Portolano,S.ら,J.Immunol.150(1993)880-887、Clackson,T.ら,Nature 352(1991)624-628)を参照されたい。抗体重鎖可変ドメインと抗体軽鎖可変ドメインとの(同族)対は結合部位を形成する。
【0236】
用語「バリアント」は、それぞれの親分子のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する分子を意味する。典型的には、そのような分子は、1つ又は複数の変化(変異)、挿入又は欠失を有する。特定の実施形態では、本発明による抗体は、天然には存在しないFc領域の少なくとも一部を含む。そのような分子は、親抗体と100%未満の配列同一性を有する。特定の実施形態では、バリアント抗体は、親抗体のアミノ酸配列と約75%から100%未満まで、特に約80%から100%未満まで、特に約85%から100%未満まで、特に約90%から100%未満まで、特に約95%から100%未満までのアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。好ましい一実施形態では、親抗体及びバリアント抗体は、1(単一)、2、3、5、7又は10個のアミノ酸残基が異なる。
【0237】
アミロイド形成不全
アミロイド斑は、β-アミロイドと呼ばれるタンパク質片が凝集すると形成される。β-アミロイドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)と呼ばれるはるかに大きなタンパク質が分解されると生成される。APPは771個のアミノ酸から構成され、2つの酵素によって切断されてβ-アミロイドを生成する。大きなタンパク質は、最初にβ-セクレターゼによって切断され、次にγ-セクレターゼによって切断され、38、40又は42個のアミノ酸で構成され得るβ-アミロイドピースを生成する。42個のアミノ酸で構成されるβ-アミロイドは、他の長さよりも化学的に「粘着性」であり、したがってプラークを形成する可能性がより高い。研究は、初期段階のアルツハイマー病に関連する3つの遺伝子異常がそれぞれ、Aβ42の産生の増加をもたらす方法でγ-セクレターゼの機能を変化させることを示した。
【0238】
どのようにしてβ-アミロイドが神経細胞に毒性損傷を引き起こすかは明確ではないが、いくつかの研究は、それが断片に分裂してフリーラジカルを放出し、その後ニューロンを攻撃し得ることを示唆している。別の理論は、β-アミロイドが神経膜に小孔を形成し、これが神経細胞死を引き起こし得るカルシウムの無調節流入をもたらすというものである。β-アミロイドが神経損傷を引き起こす正確な病理学的プロセスにかかわらず、その結果はニューロンが死滅することである。
【0239】
これらの変性ニューロンとβ-アミロイド凝集体との混合物で構成されるプラークが形成される。これらのプラークは、身体によって分解及び除去することができないため、徐々に脳に蓄積する。このアミロイドの蓄積はアミロイドーシスをもたらし、これはいくつかの神経変性疾患の一因であると考えられている。
【0240】
アミロイド斑は、アルツハイマー病の2つの定義される特徴のうちの一方を形成し、他方は神経原線維タングルである。β-アミロイドはまた、これらのタングルの形成の原因であると考えられており、これもニューロンを損傷し、認知症の症候を引き起こす。技術的には、人はアルツハイマー病のすべての特徴を提示し得るが、脳生検又は陽電子放射断層撮影法がアミロイド斑又は神経原線維タングルの存在を明らかにしない場合、アルツハイマー病の診断は行われない。
【0241】
本発明の実施形態の説明
ガンテネルマブは、N末端アミノ酸及び中心アミノ酸の両方からなるAβの立体配座エピトープに対してナノモル以下の親和性で結合する完全ヒトIgG1抗体である。それは、タンパク質の原線維形態への結合を好む。この抗体の治療原理は、ミクログリアを動員し、食作用を活性化することによってアミロイド斑を解体及び分解するように中枢的に作用することである。それは、新たなプラーク形成を防止する。ガンテネルマブは、実質と血管の両方の凝集した脳Aβと優先的に相互作用する。抗体は、ヒトマクロファージと共培養されたAD脳切片中のヒトAβ沈着物の食作用を誘発する。それはまた、ラット脳における長期増強に対するオリゴマーAβ42媒介阻害効果を中和する。APP/PS1トランスジェニックマウスでは、ガンテネルマブは脳Aβに結合し、ミクログリアを動員することによって小さなプラークを低減させ、新しいプラーク形成を防ぐ。ガンテネルマブはAβの全身レベルを変化させず、これは可溶性Aβのクリアランスが妨げられないことを示唆する。第3相多施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験であるSCarlet RoADガンテネルマブは、標的の関与を示し、プラークのクリアランスをもたらし、脊髄液中のリン酸化タウのレベルが低減した(例えば、Sumner,I.L.,et al.,Front.Neurosci.12(2018)article 254;https://www.alzforum.org/therapeutics/gantenerumabを参照)。
【0242】
ガンテネルマブは、グリコシル化部位の2つの群を有する:第1の群は、重鎖CDR2内の各Fab内のグリコシル化部位を包含し、第2の群は、Asn297の各Fc領域内のグリコシル化部位を包含する(ナンバリングはKabatに従う)。
【0243】
グリコシル化部位のグリコシル化パターン、すなわち糖占有は、グリコシル化部位の両方の群の間で異なる。Fc領域中の各グリコシル化部位の糖鎖占有は均一であり、互いに、並びに他の組換え生産抗体に匹敵する。これとは対照的に、Fab中のグリコシル化部位の糖鎖占有は多様であり、すなわち、両方のグリコシル化部位がグリコシル化されているか、又はこれらのグリコシル化部位のうちの1つのみがグリコシル化されているか、又はこれらのグリコシル化部位のいずれもグリコシル化されていない。したがって、組換え生産されたガンテネルマブは、産生細胞から3つの異なるグリコシル化アイソフォームの混合物として得られる。糖鎖占有及びグリコシル化パターンが薬物動態特性並びにプラーク結合に影響を及ぼすので、非グリコシル化アイソフォームを除去する必要がある。異なるグリコフォームは、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)などのクロマトグラフィーを使用して区別及び分離することができる。
【0244】
ここで、本発明者らは、重鎖CDR2に特定の変異を導入することによって、及び重鎖CDR3を短縮することによって、ガンテネルマブの特性が改善されたことを見出した。この理論に拘束されるものではないが、導入された改変は、Fabにおける糖占有不均一性を減少させ、脱アミド化ホットスポットを除去し、それによって親抗体ガンテネルマブの凝集傾向を低減させることによって、改善された特性をもたらしたと考えられる。
【0245】
さらに、本発明者らは、親抗体ガンテネルマブの軽鎖が、本発明による改変重鎖と組み合わせた場合に結合親和性及び特異性を保持するために改変を必要としないことを見出した。
【0246】
したがって、本発明の態様は、ヒトA-βタンパク質に対する抗体(抗A-βタンパク質抗体)、その製造方法、これらの抗体を含有する医薬組成物及びその使用である。
【0247】
本発明による抗体は、抗A-β抗体ガンテネルマブのバリアントである。それらは、それらの親抗体と比較して改善された技術的及び生物学的特性を有する。改善は、とりわけ、改善された生産力価、改善された生産収率、改善されたグリコシル化均一性、低減した凝集傾向及び改善されたプロセスロバスト性を包含する。
【0248】
本発明による抗A-βタンパク質抗体は、重鎖CDR2中にグリコシル化部位の実質的かつ最大100%の糖占有を有する。
【0249】
本発明による抗A-βタンパク質抗体は、とりわけ、標的結合、発生特性、IHC/プラーク結合及びPK挙動に関して改善された特性を有する。
【0250】
本発明は、少なくとも部分的には、ガンテネルマブのFab内のグリコシル化部位の完全な除去が、それぞれプラーク結合の低減又はクリアランスの増加をもたらしたという知見に基づいている。したがって、ガンテネルマブのFabグリコシル化部位のグリコシル化の低減又はさらには排除をもたらす改変は不利であり、防止する必要がある。
【0251】
改変されたFab糖鎖占有を有するガンテネルマブの4つの異なるバリアントが生成されている。
【0252】
改変された重鎖を有する2つのバリアント(ナンバリングはKabatに従う):
-重鎖S53T変異を導入することによる完全なFabグリコシル化(mAb675);
-重鎖N52Q変異を導入することによるFabグリコシル化の完全な除去(mAb663);
改変された重鎖及び軽鎖を有する2つのバリアント(ナンバリングはKabatに従う):
-重鎖S53T変異を導入することによる完全なFabグリコシル化及び軽鎖M95H変異を導入することによる重鎖改変の補償(mAb651);
-重鎖N52Q変異を導入することによるFabグリコシル化の完全な除去及び軽鎖M95H変異を導入することによる重鎖改変の補償(mAb638)。
【0253】
ガンテネルマブの4つのバリアントは、完全にFabグリコシル化されているか、又は完全にFabグリコシル化されていないかのいずれかである。mAb651を除いて、すべてのバリアントは、ヒトA-βタンパク質に対して同じインビトロ結合親和性を有する。
【表1】
【0254】
異なるグリコシル化レベルは、
図1~
図3に示すように、親水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって確認されている。
【0255】
図1は、重鎖CDRにおける配列NASを有する親抗体ガンテネルマブの部分的グリコシル化を示す(約22~24秒の整列時間に2つのピーク)。
【0256】
図2は、重鎖CDRにおける配列QASを有するバリアント抗体mAb663の完全な非グリコシル化を示す(約22秒の整列時間に1つのピーク)。
【0257】
図3は、重鎖CDRにおける配列QASを有するバリアント抗体mAb675の完全なグリコシル化を示す(約23秒の整列時間に1つのピーク)。
【0258】
本発明による抗体並びにガンテネルマブは小規模で生成されており、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いる第1の精製工程の後及び分取サイズ排除クロマトグラフィーを用いる第2の精製工程の後に副生成物分布が分析されている。結果を以下の表に示す。
【表2】
【0259】
4つのバリアントは、それらの結合特性及び特異性に関してさらに特徴付けられている。定性的結果を以下の表に示す。
【表3】
【0260】
個々の特性については、以下でより詳細に説明する。
【0261】
インビトロでのA-βプラーク装飾
親抗体のガンテネルマブは、特に1μg/mlの濃度で、強い特異的プラーク結合及びいくらかのバックグラウンド、非特異的結合を示す(
図4)。
【0262】
MAb675(「142」)は、強い特異的プラーク結合を示し、検出可能なバックグラウンド、非特異的結合を示さない(
図5)。
【0263】
MAb663(「143」)は、特に1μg/mlの濃度で、低い特異的プラーク結合及びいくらかのバックグラウンド、非特異的結合を示す(
図6)。
【0264】
MAb651(「144」)は、1μg/mlの濃度でさえ、特異的プラーク結合をほとんど示さず、バックグラウンド結合及び非特異的結合も示さない(
図7)。
【0265】
MAb638は、特に1μg/mlの濃度で、低い特異的プラーク結合及びいくらかのバックグラウンド、非特異的結合を示す。
【0266】
したがって、mAb675は、予想外にも、ガンテネルマブと比較した場合に等しい特異的プラーク結合を示したが、バックグラウンド、非特異的結合がはるかに少なかった。したがって、Fab中の完全にグリコシル化されたグリコシル化部位は、1μg/mLの濃度で、インビトロでバックグラウンド、非特異的結合を低減させることが見出された。
【0267】
染色結果を定性的な形で以下の表に要約する。
【表4-1】
【表4-2】
【0268】
インビボでのA-βプラーク装飾
雄APP/PS2マウス(9月齢、群あたりn=3)に、それぞれ20mg/kgのガンテネルマブ及び4つのバリアントを投与した。注射7日後、脳切片における抗体分布を決定した(検出抗体:Alexa555にコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG抗体(Invitrogen(#A21433));A-βタンパク質の共染色:Amylo Glo,Biosensisカタログ番号TR-300-AG;画像設定:倍率30倍)。結果を
図8及び
図9に示す。
【0269】
その結果、mAb675(
図8及び
図9の「142」)は、予想外にも、ガンテネルマブと比較した場合、インビボでのプラーク結合の改善を示した。したがって、Fab内の完全にグリコシル化されたグリコシル化部位がインビボでのA-βプラーク結合を増加させることが見出された。
【0270】
薬物動態
4つのガンテネルマブバリアントの薬物動態をラット及びマウスで決定した。
【0271】
Fabグリコシル化がなく、軽鎖可変ドメインが改変されていないmAb663は、ラットにおいて血漿クリアランス速度の増加を示すことが見出された。他のすべてのバリアントは、ガンテネルマブと同様の血漿クリアランス速度を示す。
【0272】
【0273】
予想外にも、mAb638、mAb675及びmAb651は、ガンテネルマブよりも低いクリアランス速度を有する(履歴データ)。血漿クリアランス速度の差は、mAb638のプラーク装飾の差を説明しないことを指摘しなければならない。
【0274】
ガンテネルマブバリアントの単一用量薬物動態(SDPK)特性は、FcRnとヘパリンのアフィニティークロマトグラフィーの組み合わせを使用してさらに評価されている。
【0275】
FcRnアフィニティークロマトグラフィー及びヘパリンアフィニティークロマトグラフィーの組み合わせは、FcRn及びヘパリンアフィニティークロマトグラフィーカラム保持時間閾値、及びそれにより、遅いクリアランス、すなわち、長い全身循環半減期を有する抗体が同定され得る二次元保持時間領域を定義することを可能とする。したがって、この組み合わせは、とりわけ、長い全身循環半減期を有する抗体の選択を可能にする。
【0276】
特性評価のために、FcRnアフィニティークロマトグラフィーカラム及びヘパリンアフィニティークロマトグラフィーカラムでの保持時間を、それぞれのカラムでの参照抗体の保持時間に基づいて正規化する。それにより、主に遅いクリアランスを有する抗体を含む相対保持時間領域が定義される。より詳細には、この領域は、1.78未満のFcRnアフィニティークロマトグラフィーカラム上の相対保持時間(参照抗体として酸化された(H
2O
2処理された)抗Her3抗体調製物が用いられる)及び0.87未満のヘパリンアフィニティークロマトグラフィーカラム上の相対保持時間(参照抗体として抗pTau抗体が用いられる)により定義される。この方法の詳細については、国際公開第2018/197533号を参照されたい。
【表5】
【0277】
熱安定性
mAb675、mAb663及びmAb638の熱安定性を動的光散乱によって決定した。凝集温度(T
agg)及び融解温度(T
m)は、熱ランプの適用によって決定されている。予想外にも、試験した3つ全てのバリアントは、親ガンテネルマブと比較して改善された値を示す。
【表6】
【0278】
安定性評価
MAb675、mAb663及びmAb638を、異なる緩衝系における高温でのインキュベーションによって熱ストレスに供した。
【0279】
mAb638は、リン酸緩衝生理食塩水中でのインキュベーションによって実質的な単量体損失を示すことが見出されている。
【0280】
しかしながら、予想外にも、3つ全てのガンテネルマブバリアントは、親ガンテネルマブと比較して標的結合に関して改善された安定性を示した。
【表7】
【0281】
すべてのデータ(100%の均一なFab糖占有、脱アミド部位除去、野生型軽鎖)を考慮して、mAb675は、改善された特性を有する最も有利なガンテネルマブバリアントとして同定された。
【0282】
本発明による例示的な抗ヒトA-βタンパク質抗体
したがって、本発明は、少なくとも以下の実施形態を包含する。
【0283】
一態様では、本発明は、ヒトA-βタンパク質に結合する抗体を提供する。
【0284】
一態様では、本発明は、ヒトA-βタンパク質に結合する単離された抗体を提供する。
【0285】
一態様では、本発明は、ヒトA-βタンパク質に特異的に結合する抗体を提供する。
【0286】
本発明のすべての態様及び実施形態の特定の実施形態では、本発明による抗A-β抗体は、以下の特性の1つ又は複数を有する:
-配列番号45のヒトA-βタンパク質に特異的に結合する;
-重鎖CDR2中に、CE-SDSによって決定される少なくとも95%の糖占有率を有するグリコシル化部位を有する;
-任意の非グリコシル化グリコシル化部位を有する種を含まない;
-配列番号45のヒトA-βタンパク質のEC50値が0.5nM以下である;
-インビトロでA-βプラークに結合し、脳サンプル中の非A-βタンパク質分子に1μg/mL以下の染色濃度で結合しない;
-ガンテネルマブよりも強くインビボでA-βプラークに結合している;
-一元配置Anovaで決定される皮質及び海馬におけるインビボでのプラークの相対占有率が0.2を超えている;
-68℃を超える熱安定性(DLS Tagg/DLS Tm)を有する、
のうちの1つ又は複数を有する、抗体。
【0287】
一態様では、本発明は、以下から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は6つすべてのCDRを含む抗A-βタンパク質抗体を提供する:
(1)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(2)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(3)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(4)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L3。
【0288】
一態様では、本発明は、以下から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つすべてのVH CDR配列を含む抗体を提供する:
(1)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
又は
(2)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
又は
(3)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
又は
(4)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3。
【0289】
好ましい一態様では、抗体は、配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。
【0290】
別の態様では、本発明は、以下から選択される少なくとも1つのVL CDR配列、少なくとも2つのVL CDR配列又は3つすべてのVL CDR配列を含む抗体を提供する:
(1)
(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(c)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(2)
(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(c)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(3)
(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(c)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(4)
(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(c)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L3。
【0291】
別の態様では、本発明の抗体は、以下を含む:
(a)以下から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つすべてのVH CDR配列を含むVHドメイン:
(1)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
又は
(2)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
又は
(3)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
又は
(4)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3、
(b)以下から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つすべてのVL CDR配列を含むVLドメイン:
(1)
(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(c)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(2)
(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(c)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(3)
(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(c)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(4)
(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(c)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L3。
【0292】
別の態様では、本発明は、以下を含む抗A-βタンパク質抗体を提供する:
(1)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(2)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(3)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
又は
(4)
(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(f)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR-L3。
【0293】
別の態様では、本発明による抗A-βタンパク質抗体は、配列番号84又は配列番号88のVHのCDR配列のうちの1つ又は複数を含む。別の実施形態では、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号80又は配列番号90のVLのCDR配列の1つ又は複数を含む。別の実施形態では、抗A-β抗体は、(1)配列番号84のVHのCDR配列及び配列番号80のVLのCDR配列;又は(2)配列番号88のVHのCDR配列及び配列番号80のVLのCDR配列;又は(3)配列番号84のVHのCDR配列及び配列番号90のVLのCDR配列;又は(4)配列番号88のVHのCDR配列及び配列番号90のVLのCDR配列を含む。
【0294】
好ましい一態様では、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号84のVHドメインのCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3アミノ酸配列並びに配列番号80のVLドメインのCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3アミノ酸配列を含む。
【0295】
一態様では、本発明による抗A-βタンパク質抗体は、配列番号84のVHドメインの重鎖CDRアミノ酸配列のうちの1つ又は複数と、配列番号84のVHドメインのフレームワークアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性のフレームワークとを含む。一態様では、本発明による抗A-βタンパク質抗体は、配列番号84のVHドメインの3つの重鎖CDRアミノ酸配列と、配列番号84のVHドメインのフレームワークアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性のフレームワークとを含む。一態様では、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号84のVHドメインの3つの重鎖CDRアミノ酸配列と、配列番号84のVHドメインのフレームワークアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。別の態様では、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号84のVHドメインの3つの重鎖CDRアミノ酸配列と、配列番号84のVHドメインのフレームワークのアミノ酸配列に対して少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
【0296】
一態様では、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号80のVLドメインの軽鎖CDRアミノ酸配列の1つ又は複数と、配列番号80のVLドメインのフレームワークアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性のフレームワークとを含む。一態様では、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号80のVLドメインの3つの軽鎖CDRアミノ酸配列と、配列番号80のVLドメインのフレームワークアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性のフレームワークとを含む。一態様では、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号80のVLドメインの3つの軽鎖CDRアミノ酸配列と、配列番号80のVLドメインのフレームワークアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。別の態様では、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号80のVLドメインの3つの軽鎖CDRアミノ酸配列と、配列番号80のVHドメインのフレームワークアミノ酸配列に対して少なくとも特に少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
【0297】
一態様では、抗A-βタンパク質抗体は、(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2、(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3、(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(f)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するVHドメイン、及び配列番号80のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するVLドメインを含む。好ましい一実施形態では、VHドメインは、配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、VLドメインは、配列番号80のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0298】
1つの態様では、抗A-βタンパク質抗体は、(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3;(d)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(e)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(f)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3、並びに配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するVHドメイン、及び配列番号80のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するVLドメインを含み;該抗体はヒトA-βタンパク質に特異的に結合する。好ましい一実施形態では、VHドメインは、配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、VLドメインは、配列番号80のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0299】
別の態様では、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。一態様では、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号84のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、基準配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有するが、その配列を含む抗A-βタンパク質抗体は、ヒトA-βタンパク質に結合する能力を保持する。特定の態様では、配列番号84において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。特定の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。任意に、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号84のVH配列を含み、これにはその配列の翻訳後修飾が含まれる。特定の態様では、VHは、以下から選択される1つ、2つ又は3つのCDRを含む:(a)配列番号85のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号86のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H3。別の態様では、抗A-βタンパク質抗体であって、配列番号80のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含む抗体が提供される。一態様では、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号80のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含む。特定の態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、基準配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有するが、その配列を含む抗A-βタンパク質抗体は、ヒトA-βタンパク質に結合する能力を保持する。特定の態様では、配列番号80において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されている。特定の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。任意に、抗A-βタンパク質抗体は、配列番号80のVL配列を含み、これにはその配列の翻訳後修飾が含まれる。特定の態様では、VLは、以下から選択される1つ、2つ又は3つのCDRを含む:(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(c)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR-L3。
【0300】
別の態様では、抗A-βタンパク質抗体であって、上に提供される態様のいずれかのVH配列及び上に提供される態様のいずれかVL配列を含む抗体が提供される。一態様では、抗体は、配列番号84及び配列番号80のVH配列及びVL配列をそれぞれ含み、これらにはそれらの配列の翻訳後修飾が含まれる。
【0301】
本発明のさらなる態様において、上記の態様のいずれかによる抗A-βタンパク質抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一態様では、抗A-βタンパク質抗体は、抗体断片、例えばFv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、又はF(ab’)2断片である。別の態様では、抗体は、完全長抗体、例えば、本明細書で定義されるインタクトなIgG1抗体又は他の抗体クラス若しくはアイソタイプである。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【0302】
特定の実施形態では、本発明による抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、本発明による抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。本発明による抗体のアミノ酸配列バリアントは、本発明による抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することによって、又はペプチド合成によって調製され得る。そのような改変としては、例えば、本発明による抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、並びに/又はそれへの挿入、及び/若しくは抗体のアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられるが、これらに限定されない。欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせは、最終構築物が、所望の特徴(例えば、抗原結合)を有する限り、最終構築物に到達するように行うことができる。
【0303】
本発明によるすべての態様及び実施形態の特定の実施形態では、本発明による抗体の重鎖可変ドメインは、第1の残基としてグルタミン(Q)残基の代わりにピログルタミン酸(pE)残基を含む。
【0304】
a)置換、挿入、及び欠失バリアント
特定の実施形態では、1つ又は複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換による突然変異誘発のための目的の部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、以下の表において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、以下の表において、「例示的な置換」の見出しの下に提供されており、また、アミノ酸側鎖クラスに関しては以下でさらに説明するとおりである。目的の抗体中にアミノ酸置換を導入することができ、その産物を、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、又は改善されたADCC若しくはCDCについてスクリーニングする。
【表9-1】
【表9-2】
【0305】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って分類され得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0306】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0307】
ある種類の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ又は複数の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、更なる試験ために選択される結果として生じるバリアント(複数可)は、親抗体と比較して特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)の改変(例えば、改善)を有し、かつ/又は実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有する。例示的な置換型バリアントは、親和性成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して、簡便に生成され得る。簡潔には、1つ又は複数のHVR残基が変異され、バリアント抗体がファージ上に提示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0308】
変更(例えば、置換)は、抗体親和性を改善するために、例えば、HVRにおいて行われてもよい。そのような変更は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,P.S.、Methods Mol.Biol.207(2008)179-196)、及び/又は抗原と接触する残基において行われてもよく、得られたバリアントVH又はVLを結合親和性について試験する。二次ライブラリーの構築及び二次ライブラリーからの再選択による親和性成熟は、例えばHoogenboom,H.R.ら、Methods in Molecular Biology 178(2002)1-37に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様性が、様々な方法(例えば、エラー.プローンPCR、鎖シャフリング、又はオリゴヌクレオチド指向性突然変異誘発)のうちのいずれかによって、成熟させるために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリーが作製される。次いで、このライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有する抗体バリアントを同定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)をランダム化する、HVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発又はモデリングを使用して、特異的に特定され得る。特に、CDR-H3及びCDR-L3は、しばしば標的とされる。
【0309】
特定の実施形態では、置換、挿入、又は欠失は、そのような改変が抗原に結合する本発明による抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つ又は複数のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVR中で行われてよい。そのような変化は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であり得る。上に提供されるバリアントVH及びVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、改変されていないか、又は1つ、2つ、若しくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0310】
突然変異誘発を標的とし得る抗体の残基又は領域の同定のための有用な方法は、Cunningham,B.C.及びWells,J.A.、Science 244(1989)1081-1085によって記載されるように、「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、残基又は標的残基群(例えば、帯電した残基、例えば、Arg、Asp、His、Lys及びGlu)が同定され、中性又は負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換えられる。さらなる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入されてもよい。あるいは、又は加えて、抗体と抗原との間の接点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、又は除去されてもよい。バリアントは、所望の特性を含有するか否かを判定するためにスクリーニングされてもよい。
【0311】
アミノ酸配列挿入には、1個の残基から100個以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに1個以上のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントには、抗体のN末端又はC末端と酵素(例えば、ADEPTの場合)又は抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドとの融合が含まれる。
【0312】
b)Fc領域グリコシル化バリアント
特定の実施形態では、本発明による抗体は、抗体Fc領域がグリコシル化される程度を増加又は減少させるように変更される。本発明による抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ又は複数のグリコシル化部位を創出するか又は除去するように、アミノ酸配列を改変することによって簡便に達成されうる。
【0313】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。典型的には、哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって通常結合している分枝状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright,A.and Morrison,S.L.,TIBTECH 15(1997)26-32を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐型オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体におけるオリゴ糖の改変は、特定の改善された特性を有する抗体バリアントを生成するために行われうる。
【0314】
特定の実施形態では、Fc領域に(直接又は間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体内のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%又は20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されているMALDI-TOF質量分析により測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合物、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対して、Asn297の糖鎖内のフコースの平均量を算出することにより決定される。Asn297とは、Fc領域内のおよそ297位(Fc領域残基のEUナンバリング)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体のわずかな配列のバリエーションに起因して、297位から上流又は下流に±3アミノ酸、すなわち294位から300位の間に位置する場合もある。このようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号;同第2004/0093621号を参照のこと。「脱フコシル化」又は「フコース欠乏」抗体バリアントに関する刊行物の例としては:米国特許出願公開第2003/0157108号明細;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;同第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;Okazaki,Aら、J.Mol.Biol.336(2004)1239-1249;Yamane-Ohnuki,N.ら、Biotech.Bioeng.87(2004)614-622が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka,J.ら、Arch.Biochem.Biophys.249(1986)533-545;米国特許出願公開第2003/0157108号;及び国際公開第2004/056312号、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki,N.ら、Biotech.Bioeng.87(2004)614-622;Kanda,Y.ら、Biotechnol.Bioeng.94 2006)680-688;及び国際公開第2003/085107号)が挙げられる。
【0315】
例えば、抗体のFc領域に付着した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体バリアントがさらに提供さ与される。そのような抗体バリアントは、低減されたフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、国際公開第2003/011878号;米国特許第6,602,684号;及び米国特許出願公開第2005/0123546号に記載されている。Fc領域に付着したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。このような抗体バリアントの例は、例えば、国際公開第1997/30087号;同第1998/58964号;及び同第1999/22764号に記載されている。
【0316】
c)Fc領域バリアント
特定の実施形態では、1つ又は複数のアミノ酸改変が、本発明による抗体のFc領域内に導入され、それによってFc領域バリアントが生成され得る。Fc領域バリアントは、1つ又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0317】
特定の実施形態では、本明細書において、全てではないが一部のエフェクター機能を有し、それによりインビボでの抗体の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(例えば補体及びADCCなど)が不要又は有害である用途にとって望ましい候補となる、抗体バリアントが企図される。インビトロ及び/又はインビボ細胞毒性アッセイを行って、CDC及び/又はADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcR結合を欠いている(そのため、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞が、FcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch,J.V.及びKinet,J.P.,Annu.Rev.Immunol.9(1991)457-492の464ページの表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83(1986)7059-7063;及びHellstrom,I.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82(1985)1499-1502を参照されたい);米国特許第5,821,337号(例えば、Bruggemann,M.ら、J.Exp.Med.166(1987)1351-1361を参照されたい)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリー(CellTechnology,Inc.Mountain View,CAのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい)。このようなアッセイに有用なエフェクタ細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは、又は加えて、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes,R.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95(1998)652-656に開示されているような動物モデルで評価してもよい。また、抗体がC1qに結合することができず、CDC活性を欠いていることを確認するために、C1q結合アッセイを実施してもよい。例えば、国際公開第2006/029879号及び同第2005/100402号におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してもよい(例えば、Gazzano-Santoro,H.ら、J.Immunol.Methods 202(1996)163-171;Cragg,M.S.ら、Blood 101(2003)1045-1052;及びCragg,M.S.及びM.J.Glennie、Blood 103(2004)2738-2743を参照されたい)。FcRn結合及びインビボでのクリアランス/半減期の決定は、当技術分野で公知の方法を用いて行うこともできる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int.Immunol.18(2006:1759-1769を参照されたい)。
【0318】
低減したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ又は複数の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc領域バリアントには、アミノ酸265、269、270、297及び327位のうちの2つ以上で置換を有するFcバリアント、例えば、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fcバリアントが挙げられる(米国特許第7,332,581号)。
【0319】
FcRへの結合が改善又は減少した特定の抗体バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第2004/056312号、及びShields,R.L.ら、J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604を参照されたい)。
【0320】
特定の実施形態では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位、及び/又は334位(残基のEUナンバリング)での置換を有するFc領域を含む。
【0321】
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie,E.E.ら、J.Immunol.164(2000)4178-4184に記載されているように、C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)の変化(すなわち、改善又は減少)をもたらすFc領域内での変更が行われる。
【0322】
増加した半減期と、母体IgGの胎児への移送に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合とを有する抗体(Guyer,R.Lら、J.Immunol.117(1976)587-593、及びKim,J.K.ら、J.Immunol.24(1994)2429-2434)は、米国特許出願公開第2005/0014934号に記載されている。それらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つ又は複数の置換をFc領域内に有するFc領域を含む。そのようなFc領域バリアントには、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434の1つ又は複数における置換、例えば、Fc領域残基434の置換が含まれる(米国特許第7,371,826号)。
【0323】
Fc領域バリアントの他の例に関して、Duncan,A.R.及びWinter,G.、「Nature」第322巻(1988年)第738~740頁;米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及び国際公開第94/29351号も参照。
【0324】
d)システイン操作された抗体バリアント
特定の実施形態では、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン人工抗体、例えば、「thioMAb」を作成することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、置換残基は、抗体の接近可能な部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基が抗体の接近可能部位に配置され、それは、本明細書でさらに説明するように、例えば薬物部分又はリンカー-薬物部分などの他の部分に抗体をコンジュゲートさせて免疫コンジュゲートを作製するために使用され得る。特定の実施形態では、以下の残基の1つ又は複数がシステインで置換され得る:軽鎖のV205(Kabatナンバリング)、重鎖のA118(EUナンバリング)、及び重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように作製され得る。
【0325】
e)抗体誘導体
特定の実施形態では、本発明による抗体は、当技術分野で公知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するように更に改変され得る。抗体の誘導体化に適した部位としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量であってもよく、分岐していても、分岐していなくてもよい。抗体に接続するポリマーの数は、さまざまであってもよく、1つより多いポリマーが接続する場合、ポリマーは、同じ分子であってもよく、又は異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、限定するものではないが、改良される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が定義された条件下で治療に使用されるかどうか等の考慮事項に基づいて決定することができる。
【0326】
特定の実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体及び非タンパク質性部分の複合体が提供される。特定の実施形態では、非タンパク質部分はカーボンナノチューブである(Kam,N.W.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102(2005)11600-11605)。放射線は、任意の波長であってよく、限定されないが、通常の細胞に有害ではないが、非タンパク質性部分を、抗体-非タンパク質性部分に近位の細胞が死滅する温度まで加熱する波長を含む。
【0327】
組換え方法及び組成物
本発明による抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されているように、組換え方法及び組成物を使用して産生され得る。本発明は、本発明による抗ヒトA-β抗体をコードする1つ又は複数の単離された核酸分子を提供する。そのような核酸分子は、本発明による抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/又は抗体のVHを構成するアミノ酸配列(例えば、本発明による抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードしていてもよい。特定の実施形態では、そのような核酸分子を含む1つ又は複数のプラスミド(例えば、発現プラスミド)が提供される。特定の実施形態では、そのような核酸分子を含む宿主細胞が提供される。好ましい一実施形態では、宿主細胞は、以下を含む(例えば、以下を用いて形質転換されている):(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする第1の核酸分子及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする第2の核酸分子を含むプラスミド、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸分子を含む第1のプラスミド及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸分子を含む第2のプラスミド。特定の実施形態では、宿主細胞は、真核生物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ球系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp2/0細胞)である。特定の実施形態では、抗ヒトA-βタンパク質抗体を作製する方法であって、上記に提供される抗体をコードする1つ又は複数の核酸分子を含む宿主細胞を、その抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗体を宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から回収することとを含む、方法が提供される。
【0328】
抗ヒトA-βタンパク質抗体の組換え産生のために、例えば上記のような抗体をコードする核酸分子を単離し、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のために1つ又は複数のプラスミドに挿入する。そのような核酸分子は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定され得る。
【0329】
抗体をコードする核酸分子のクローニング又は発現のために適した宿主細胞には、本明細書に記載される原核細胞又は真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、特に糖鎖修飾やFcエフェクター機能を必要としない場合には、細菌中で産生されてもよい。細菌中の抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、US 5,648,237号、US 5,789,199号及びUS 5,840,523号を参照。(大腸菌における抗体断片の発現を記載するCharlton,K.A.,In:Methods in Molecular Biology,Vol.248,Lo,B.K.C.(ed.),Humana Press,Totowa,NJ(2003),pp.245-254も参照。)発現後、抗体は、適切なフラクション中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、更に精製されてもよい。
【0330】
原核生物に加えて、糸状菌や酵母等の真核生物は、抗体をコードするベクターのクローニング又は発現宿主として適しており、その中には、グリコシル化経路が「ヒト化」された菌株や酵母株が含まれ、その結果、部分的又は完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体が産生される。Gerngross,T.U.、Nat.Biotech.22(2004)1409-1414;及びLi,H.ら、Nat.Biotech.24(2006)210-215を参照されたい。
【0331】
(グリコシル化)抗体の発現に適した宿主細胞も、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多くのバキュロウイルス株が同定されており、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、これを昆虫細胞と組み合わせて使用してもよい。
【0332】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、米国特許第6,040,498号、米国特許第6,420,548号、米国特許第7,125,978号及び米国特許第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照されたい。
【0333】
脊椎動物細胞も、宿主として使用され得る。例えば、懸濁物中で成長するように適合した哺乳動物細胞株が有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(例えばGraham,F.L.et al.,J.Gen Virol.36(1977)59-74に記載されるような293細胞又は293細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,J.P.,Biol.Reprod.23(1980)243-252に記載されるようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリサル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト頸部癌腫細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT060562)、TRI細胞(例えば、Mather,J.P.et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383(1982)44-68に記載)、MRC5細胞及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR-CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub,G.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)4216-4220)、及び、骨髄腫細胞株、例えば、Y0、NS0及びSp2/0が挙げられる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞の総説については、例えば、Yazaki,P.及びWu,A.M.、Methods in Molecular Biology、第248巻、Lo,B.K.C.(編.)、Humana Press、Totowa、NJ(2004)、255-268頁を参照されたい。
【0334】
診断及び検出のための方法及び組成物
特定の実施形態では、本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体のいずれかは、生物学的サンプルにおけるA-βタンパク質の存在を検出するために有用である。本明細書で使用される場合、「検出」という用語は、定量的又は定性的な検出を包含する。特定の実施形態では、生物学的サンプルは、細胞又は組織を含む。
【0335】
特定の実施形態では、診断又は検出の方法において使用するための本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体が提供される。特定の実施形態では、生物学的サンプル中のA-βタンパク質の存在を検出する方法が提供される。特定の実施形態では、本方法は、A-βタンパク質に対する抗ヒトA-βタンパク質抗体の結合に許容される条件下で、生物学的サンプルを本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体と接触させること、及び、複合体が抗ヒトA-βタンパク質抗体とA-βタンパク質との間で形成されるかどうかを検出することを含む。そのような方法は、インビトロ又はインビボ方法であり得る。
【0336】
特定の実施形態では、本発明による標識抗ヒトA-βタンパク質抗体が提供される。標識としては、限定されないが、直接的に検出される標識又は部分(例えば、蛍光、色素体、電子密度の高い、化学発光及び放射性標識)、及び例えば酵素反応又は分子相互作用によって、間接的に検出される部分(例えば、酵素又はリガンド)が挙げられる。例示的な標識には、放射性同位体32P、14C、125I、3H、及び131I、希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体などのフルオロフォア、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)などのルセリフェラーゼ類(luceriferases)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン類、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼなどの糖オキシダーゼ、過酸化水素を使用して、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はマイクロペルオキシダーゼなどの色素前駆体を酸化するために過酸化水素を利用する酵素と結合した、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなどの複素環式オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定フリーラジカルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0337】
医薬製剤
本発明による抗ヒトA-β抗体の医薬製剤は、所望の純度を有するそのような抗体を1つ又は複数の任意の薬学的に許容され得る担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Oslo,A.(ed.)(1980))と、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で混合することによって調製される。薬学的に許容され得る担体は、一般的に、採用される用量及び濃度において受領者に無毒であり、以下を含むが、これらに限定されるものではない:リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸のような緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリ(ビニルピロリドン)等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸。単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトールのような糖類;ナトリウムのような塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤。本明細書における例示的な薬学的に許容され得る担体は、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)等の間質性薬物分散剤、例えばrhuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)等のヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質をさらに含む。rhuPH20を含む、一部の例示的なsHASEGP及び使用方法は、US 2005/0260186及びUS 2006/0104968に記載されている。特定の実施形態では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ又は複数の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0338】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号及び国際公開第2006/044908号に記載されるものが含まれ、後者の製剤は、酢酸ヒスチジン緩衝液を含む。
【0339】
本明細書における製剤はまた、処置される特定の適応症に必要な2つ以上の有効成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有してもよい。そのような有効成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0340】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技法によって、又は界面重合、例えば、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンにおいて、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルによって調製されたマイクロカプセル内に封入することができる。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Oslo,A.(ed.)(1980)に開示されている。
【0341】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、これらのマトリクスは、成形物品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第US3773919号)、L-グルタミン酸とγ-L-グルタミン酸エチルとのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)などの分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、並びにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0342】
インビボ投与に使用される製剤は、一般に、滅菌のものである。滅菌は、例えば滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成され得る。一実施形態では、製剤は等張性である。
【0343】
治療方法及び組成物
本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体のいずれかは、治療方法において使用され得る。
【0344】
一態様では、医薬として使用するための本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体が提供される。さらなる態様では、アミロイド形成及び/又はアミロイド斑形成に関連する疾患の予防及び/又は処置に使用するための本発明による抗ヒトA-β抗体が提供される。特定の実施形態では、処置方法において使用するための本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体が提供される。特定の実施形態では、アミロイド形成及び/又はアミロイド斑形成に関連する疾患を有する個体を処置する方法において使用するための本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体であって、有効量の本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体を個体に投与することを含む、本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体が本明細書で提供される。特定の実施形態では、本方法は、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤、例えば以下に列挙するもの、又は抗pTau若しくは抗αシヌクレイン抗体を個体に投与することをさらに含む。さらなる実施形態では、プラークの形成及び/又はβ-アミロイド斑の崩壊を阻害するのに使用するための本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体が本明細書で提供される。特定の実施形態では、本明細書中には、個体におけるプラークの形成及び/又はβ-アミロイド斑の崩壊を阻害する方法における使用のための本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体であって、プラークの形成を阻害するために、及び/又はβ-アミロイド斑を崩壊させるために、有効量の本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体を個体に投与することを含む抗ヒトA-βタンパク質抗体が提供される。上記の実施形態のいずれかによる「個体」は、好ましくはヒトである。
【0345】
さらなる態様では、医薬の製造又は調製における本発明による抗ヒトA-β抗体の使用が本明細書で提供される。特定の実施形態では、医薬は、アミロイド形成及び/又はアミロイド斑形成に関連する疾患を処置するためのものである。特定の実施形態では、医薬は、アミロイド形成及び/又はアミロイド斑形成に関連する疾患を有する個体に有効量の医薬を投与することを含む、アミロイド形成及び/又はアミロイド斑形成に関連する疾患を処置する方法に使用するためのものである。特定の実施形態では、本方法は、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤、例えば以下に列挙するもの、又は抗pTau若しくは抗αシヌクレイン抗体を個体に投与することをさらに含む。特定の実施形態では、医薬は、プラークの形成及び/又はβ-アミロイド斑の崩壊の阻害のためのものである。特定の実施形態では、医薬は、個体におけるプラークの形成及び/又はβ-アミロイド斑の崩壊を阻害する方法において使用するためのものであり、プラークの形成を阻害するため、及び/又はβ-アミロイド斑を崩壊させるために有効な量の医薬を個体に投与することを含む。上記の実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0346】
さらなる態様では、アミロイド形成及び/又はアミロイド斑形成に関連する疾患を処置する方法が本明細書で提供される。特定の実施形態では、本方法は、アミロイド形成及び/又はアミロイド斑形成に関連する疾患を有する個体に、有効量の本発明の抗ヒトA-βタンパク質抗体を投与することを含む。特定の実施形態では、本方法は、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤、例えば以下に示すもの、又は抗pTau若しくは抗αシヌクレイン抗体を個体に投与することをさらに含む。上記の実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0347】
さらなる態様では、個体におけるプラークの形成を阻害する及び/又はβ-アミロイド斑を崩壊させる方法が本明細書で提供される。特定の実施形態では、本方法は、プラークの形成を阻害するために、及び/又はβ-アミロイド斑を崩壊させるために、有効量の本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体を個体に投与することを含む。一実施形態では、「個体」は、ヒトである。
【0348】
さらなる態様では、例えば、上記の治療方法のいずれかで使用するための、本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体のいずれかを含む医薬製剤が本明細書で提供される。特定の実施形態では、医薬製剤は、本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体のいずれかと、薬学的に許容され得る担体とを含む。特定の実施形態では、医薬製剤は、本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体のいずれかと、例えば以下に示されるような少なくとも1つの追加の治療剤又は抗pTau若しくは抗αシヌクレイン抗体とを含む。
【0349】
本発明による抗体は、単独で、又は治療において他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明による抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与され得る。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、本発明による抗体が処置のために使用されているのと同じ又は異なる神経障害を処置するのに有効な治療剤である。例示的な追加の治療剤には、上記の様々な神経薬、コリンエステラーゼ阻害剤(ドネペジル、ガランタミン、ロバスチグミン及びタクリンなど)、NMDA受容体アンタゴニスト(メマンチンなど)、アミロイドβペプチド凝集阻害剤、抗酸化剤、γ-セクレターゼモジュレーター、神経成長因子(NGF)模倣物又はNGF遺伝子治療、PPARγアゴニスト、HMS-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)、アンパキン、カルシウムチャネル遮断薬、GABA受容体アンタゴニスト、グリコーゲンシンターゼキナーゼ阻害剤、静脈内免疫グロブリン、ムスカリン受容体アゴニスト、ニコチン受容体モジュレーター、活性又は受動的アミロイドβペプチド免疫化、ホスホジエステラーゼ阻害剤、セロトニン受容体アンタゴニスト及び抗アミロイドβペプチド抗体が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、少なくとも1つの追加の治療剤は、神経学的薬物の1つ又は複数の副作用を軽減する能力について選択される。
【0350】
上述のそのような併用療法は、併用投与(同じ又は別個の製剤中に2つ以上の治療剤が含まれる)及び別個の投与を包含し、別個の投与の場合、本明細書に報告される抗体の投与は、追加の治療剤(単数又は複数)の投与前、投与と同時に、及び/又は投与後に行われ得る。特定の実施形態では、本発明による抗ヒトA-β抗体の投与及び追加の治療剤の投与は、互いに約1ヶ月以内、又は約1、2若しくは3週間以内、又は約1、2、3、4、5若しくは6日以内に行われる。本発明による抗体はまた、限定されないが、放射線療法、行動療法、又は当技術分野で公知であり、処置又は予防される神経障害に適した他の治療法などの他の介入療法と組み合わせて使用することもできる。
【0351】
本発明による抗体(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに局所処置のために望まれる場合、病変内投与を含む、任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が挙げられる。投薬は、投与が短時間であるか、又は慢性的であるかに部分的に応じて、任意の好適な経路によるもの、例えば、静脈内注射又は皮下注射等の注射によるものであり得る。単回又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス輸注を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが、本明細書では企図される。
【0352】
本発明による抗体は、良好な医療行為と一致した方法で製剤化され、投与され、投与されるであろう。これに関連して考慮すべき要因としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療従事者に既知である他の要因が挙げられる。抗体は、必ずしもそうである必要はないが、任意に、問題の障害を予防又は処置するために現在使用されている1つ又は複数の薬剤とともに製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する本発明による抗体の量、障害又は処置の種類、及び上で論じた他の要因に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載のものと同じ投薬量及び投与経路によって、又は本明細書に記載の投薬量の約1~99%、又は適切であると経験的/臨床的に判断される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0353】
本発明による抗体又は本発明による抗体を含む融合構築物をBBBを横切って輸送する脂質ベースの方法としては、限定されないが、BBBの血管内皮上の受容体に結合する一価結合実体にカップリングされたリポソームに抗体又は融合構築物をカプセル化すること(例えばUS2002/0025313を参照)、及び低密度リポタンパク質粒子(例えばUS2004/0204354を参照)又はアポリポタンパク質E(例えばUS2004/0131692を参照)に一価結合実体をコーティングすることが挙げられる。
【0354】
疾患の予防又は処置について、本発明による抗体の適切な投薬量は(単独で、又は1つ又は複数の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)、処置される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的又は治療目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴及び抗体への応答、並びに主治医の裁量に依存するだろう。本発明による抗体は、患者に一度に又は一連の処置にわたって適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば1つ又は複数の個別投与によるか、持続注入によるかに関わらず、約1μg/kg-15mg/kg(例えば、0.5mg/kg~10mg/kg)の抗体が上記患者への投与のための初期候補用量となり得る。典型的な1日投薬量は、上述の因子に依存して、約1μg/kg~100mg/kgの範囲であってもよい。数日間又はそれ以上にわたる反復投与において、症状に応じ、処置は通常、疾患症候の所望の抑制が生じるまで続けられる。抗体の1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲であろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、又は10mg/kg(又はこれらの任意の組み合わせ)のうちの1つ又は複数の用量が、患者に投与され得る。かかる用量は、断続的に、例えば毎週又は3週間毎(例えば、患者が約2~約20回、又は例えば約6回の用量の抗体を受容するように)投与されてもよい。最初のより高い負荷用量、続いて1つ又は複数のより低い用量を投与してもよい。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であってもよい。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0355】
上記の製剤又は治療方法のいずれかは、本発明による抗ヒトA-βタンパク質抗体の代わりに、又はそれに加えて、本明細書に記載の免疫コンジュゲートを使用して実施され得ることが理解される。
【0356】
製造品
本発明による別の態様では、上述の障害の処置、予防及び/又は診断に有用な材料を含有する製造品が提供される。製造品は、容器と、容器に挿入されるか、又は容器に付随するラベル又はパッケージ添付文書とを備えている。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、組成物をそれ自体で、又は症状を処置し、予防し、且つ/若しくは診断するのに有効な別の組成物と組み合わせて保持しており、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する静脈用溶液袋又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明による抗体である。ラベル又は添付文書は、組成物が、選択される症状を処置するために使用されることを示す。さらに、製造品は、(a)本発明による抗体を含む組成物が中に収容されている第1の容器;及び(b)さらなる細胞傷害性剤又はその他の治療剤を含む組成物が中に収容されている第2の容器を備えてもよい。この実施形態における製造品は、組成物が特定の症状を処置するために使用され得ることを示す添付文書をさらに含み得る。これに代えて、又はこれに加えて、製造品は、薬学的に許容され得る緩衝液、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、Ringer溶液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器をさらに備えていてもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、ニードル及びシリンジを含め、商業的及びユーザの観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
【0357】
上記の製造品のいずれも、本発明による抗体の代わりに、又はそれに加えて、本明細書に記載の免疫コンジュゲートを含み得ることが理解される。
【0358】
以下の図、配列及び実施例は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の要旨から逸脱することなく、記載された手順に改変を加えることができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0359】
【
図4】ガンテネルマブによるインビトロでのA-βプラーク装飾。
【
図5】mAb675によるインビトロでのA-βプラーク装飾。
【
図6】mAb663によるインビトロでのA-βプラーク装飾。
【
図7】mAb651によるインビトロでのA-βプラーク装飾。
【0360】
配列の説明
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【実施例0361】
実施例1
材料及び一般的方法
ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関連する一般的な情報は、Kabat,E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda,MD(1991)に与えられる。抗体鎖のアミノ酸は、Kabat(Kabat,E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991))によるナンバリングに従ってナンバリングされ、参照される。
【0362】
組換えDNA技術
標準的な方法を使用し、Sambrook,J.ら、Molecular Cloning:A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989に記載されるように、DNAを操作した。分子生物学的試薬は、製造者の指示にしたがって使用した。
【0363】
遺伝子合成
化学合成によって作られるオリゴヌクレオチドから、所望の遺伝子セグメントを調製した。PCR増幅を含めて、オリゴヌクレオチドをアニーリング及び連結することによって、単一の制限エンドヌクレアーゼ切断部位に隣接する長い遺伝子セグメントを構築し、その後、示された制限部位を介してクローニングした。DNA配列決定によって、サブクローニングされた遺伝子断片のDNA配列を確認した。所与の仕様に従って、Geneart(Regensburg、Germany)に遺伝子合成断片を注文した。
【0364】
DNA配列決定
MediGenomix GmbH(Martinsried、Germany)又はSequiServe GmbH(Vaterstetten、Germany)で行われた二本鎖配列決定によって、DNA配列を決定した。
【0365】
DNA及びタンパク質配列分析及び配列データ管理
配列作成、マッピング、分析、注釈付け及び図示のために、GCG(Genetics Computer Group、Madison、Wisconsin)ソフトウェアパッケージバージョン10.2及びInfomaxのVector NT1 Advance suiteバージョン8.0を使用した。
【0366】
発現ベクター
本発明による抗体の発現のために、CMV-イントロンAプロモーターを用いた若しくは用いないcDNA構成又はCMVプロモーターを用いたゲノム構成のいずれかに基づく(例えば、HEK293細胞における)一過性発現のための発現プラスミドを適用することができる。
【0367】
抗体発現カセット以外に、ベクターは、
-大腸菌においてこのプラスミドの複製を可能にする複製起点、
-大腸菌においてアンピシリン耐性を与えるβ-ラクタマーゼ遺伝子
を含有する。
【0368】
抗体遺伝子の転写ユニットは、以下の要素:
-5’末端の固有の制限部位
-ヒトサイトメガロウイルス由来の最初期遺伝子及びプロモーター、
-cDNA構成の場合におけるイントロンA配列、
-ヒト抗体遺伝子由来の5’-非翻訳領域、
-免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
-cDNAとしての又はゲノムエクソン-イントロン構成での、それぞれの抗体鎖をコードする核酸、
-ポリアデニル化シグナル配列を有する3’未翻訳領域、
-3’末端の固有の制限部位
から構成される。
【0369】
抗体鎖をコードする融合遺伝子は、PCR及び/又は遺伝子合成によって作製され、例えば、それぞれのベクター中の固有の制限部位を用いて、一致した核酸セグメントの接続によって、公知の組換え方法及び技術によって組み立てられる。DNA配列決定によって、サブクローニングされた核酸配列を確認する。一過性トランスフェクションのために、形質転換された大腸菌培養物(Nucleobond AX、Macherey-Nagel)からのプラスミド調製によって、大量のプラスミドを調製する。
【0370】
細胞培養技術
Current Protocols in Cell Biology(2000),Bonifacino,J.S.,Dasso,M.,Harford,J.B.,Lippincott-Schwartz,J.and Yamada,K.M.(eds.),John Wiley&Sons,Inc.に記載されている標準的な細胞培養技術が使用される。
【0371】
HEK293-F系における一過性トランスフェクション
抗体は一過性発現によって産生された。したがって、HEK293-Fシステム(Invitrogen)を製造者の指示に従って使用して、それぞれのプラスミドによるトランスフェクションを行った。簡潔に述べれば、シェークフラスコ又は撹拌発酵槽のいずれかにおいて無血清FreeStyle(商標)293発現培地(Invitrogen)中で懸濁状態で生育させたHEK293-F細胞(Invitrogen)に各々の発現プラスミド及び293fectin(商標)又はfectin(Invitrogen)のミックスをトランスフェクトした。2Lシェークフラスコ(Corning)の場合、HEK293-F細胞を600mL中1.0*1E6細胞/mLの密度で播種し、120rpm、8% CO2でインキュベートする。翌日、約1.5*1E6細胞/mLの細胞密度で、細胞を、A)600μgの総プラスミドDNA(1μg/mL)を含む20mLのOpti-MEM培地(Invitrogen)及びB)1.2mLの293フェクチン又はフェクチン(2μL/mL)が補充された20mlのOpti-MEM培地の約42mLの混合物でトランスフェクションする。グルコース消費に従って発酵の経過の間にグルコース溶液を加える。分泌された抗体を含有する上清を5~10日後に採取し、抗体を上清から直接精製するか、又は上清を凍結及び貯蔵する。
【0372】
タンパク質決定
Pace,ら,Protein Science 4(1995)2411-1423に従って、アミノ酸配列に基づいて計算されるモル吸光係数を用いて、280nmでの光学密度(OD)を決定することによって、精製された抗体及び誘導体のタンパク質濃度を決定した。
【0373】
上清中の抗体濃度決定
細胞培養物上清中の抗体の濃度を、プロテインAアガロースビーズ(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)による免疫沈降によって推定した。したがって、60μLのプロテインAアガロースビーズをTBS-NP40(50mM NaCl及び1%Nonidet-P40を補充した150mM Tris緩衝液、pH7.5)で3回洗浄した。その後、1~15mLの細胞培養物上清を、TBS-NP40中で予め平衡状態にしたプロテインAアガロースビーズに適用した。室温で1時間インキュベートした後、ビーズを、Ultrafree-MC-フィルタカラム(Amicon)上で、0.5mL TBS-NP40で1回、0.5mLの2xリン酸緩衝生理食塩水(2×PBS、Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)で2回洗浄し、0.5mL 100mM クエン酸Na緩衝液(pH5.0)で4回、簡単に洗浄した。結合した抗体を、35μLのNuPAGE(登録商標)LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)を加えることによって溶出させた。サンプルの半分を、それぞれNuPAGE(登録商標)サンプル還元剤と合わせ、又は還元せずに残し、70℃で10分間加熱した。その結果、5~30μlを4~12%NuPAGE(登録商標)Bis-Tris SDS-PAGEゲル(Invitrogen)(非還元SDS-PAGE用のMOPS緩衝液及び還元SDS-PAGE用のNuPAGE(登録商標)抗酸化ランニング緩衝液添加剤(Invitrogen)を含むMES緩衝液を含む)に適用し、クーマシーブルーで染色した。
【0374】
細胞培養物上清中の抗体の濃度を、アフィニティHPLCクロマトグラフィーによって定量的に測定した。簡単に説明すると、プロテインAに結合する抗体を含有する細胞培養物上清を、200mM KH2PO4、100mM クエン酸ナトリウム(pH7.4)中、Applied Biosystems Poros A/20カラムに適用し、Agilent HPLC 1100システムで、200mM NaCl、100mMクエン酸(pH2.5)を用いて溶出させた。溶出した抗体をUV吸光度及びピーク面積の積分によって定量した。精製した標準IgG1抗体を標準とした。
【0375】
又は、細胞培養物上清中の抗体及び誘導体の濃度を、サンドイッチ-IgG-ELISAによって測定した。簡単に説明すると、StreptaWell High Bind Streptavidin A-96ウェルマイクロタイタープレート(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)を、100μL/ウェルのビオチン化抗ヒトIgG捕捉分子F(ab’)2<h-Fcγ>BI(Dianova)で、0.1μg/mLで室温で1時間かけて、又は4℃で一晩かけてコーティングし、その後、200μL/ウェルのPBS、0.05% Tween(PBST、Sigma)を用いて3回洗浄した。その後、それぞれの抗体含有細胞培養物上清のPBS(Sigma)における100μL/ウェルの希釈系列をウェルに加え、室温で振盪機で1~2時間インキュベートした。ウェルを200μL/ウェルPBSTで3回洗浄し、結合した抗体を、室温で振盪機で1~2時間インキュベートすることにより、検出抗体として0.1μg/mLの100μL F(ab’)2<hFcγ>POD(Dianova)を用いて検出した。未結合の検出抗体を、200μL/ウェルのPBSTで3回洗浄することによって除去した。結合した検出抗体を、100μL ABTS/ウェルを添加し、続いてインキュベートすることによって検出した。吸光度の決定は、Tecan Fluor Spectrometerで、測定波長405nm(リファレンス波長492nm)で行った。
【0376】
分取抗体精製
標準プロトコルを参照して、ろ過された細胞培養物上清から抗体を精製した。簡潔に述べると、抗体を、プロテインA Sepharoseカラム(GE healthcare)に適用し、PBSで洗浄した。抗体の溶出をpH2.8で達成した後、直ちに中和した。凝集したタンパク質を、PBS又は150mM NaClを含む20mMヒスチジン緩衝液(pH6.0)中のサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200,GE Healthcare)によって単量体抗体から分離した。単量体抗体画分をプールし、(必要に応じて)例えばMILLIPORE Amicon Ultra(30 MWCO)遠心濃縮器を用いて濃縮し、凍結し、-20℃又は-80℃で保存した。サンプルの一部が、その後のタンパク質分析、及び、例えばSDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又は質量分析による分析的特性評価のために、提供された。
【0377】
SDS-PAGE
NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen)を、製造業者の説明書に従って、使用した。特に、10%又は4~12%のNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)Bis-TRIS Pre-Castゲル(pH6.4)、及びNuPAGE(登録商標)MES(還元型ゲル、NuPAGE(登録商標)抗酸化ランニング緩衝液添加剤を含む)又はMOPS(非還元型ゲル)ランニング緩衝液を使用した。
【0378】
CE-SDS
マイクロ流体Labchip技術(PerkinElmer、USA)を使用して、CE-SDSによって純度及び抗体完全性を分析した。したがって、製造業者の説明書に従ってHT Protein Express Reagent Kitを使用して、CE-SDS分析用に5μlの抗体溶液を調製し、HT Protein Express Chipを使用してLabChip GXIIシステムで分析した。LabChip GX Softwareを使用してデータを分析した。
【0379】
分析用サイズ排除クロマトグラフィ
抗体の凝集及びオリゴマー状態の決定のためのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、HPLCクロマトグラフィーによって実施した。簡潔に述べると、プロテインA精製抗体を、Dionex Ultimate(登録商標)システムで300mM NaCl、50mM KH2PO4/K2HPO4緩衝液(pH7.5)中のTosoh TSKgel G3000SWカラムに、又はDionex HPLC-Systemの2×PBS中のSuperdex 200カラム(GE Healthcare)に適用した。溶出した抗体をUV吸光度及びピーク面積の積分によって定量した。BioRad Gel Filtration Standard 151-1901が標準として機能した。
【0380】
質量分析法
このセクションでは、二重特異性抗体の特徴付けを、それらの正しいアセンブリに重点を置いて説明する。予想される一次構造を、脱グリコシル化インタクト抗体、及び特別な場合には脱グリコシル化/制限LysC消化抗体のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)によって分析した。
【0381】
抗体を、リン酸緩衝液又はTris緩衝液中、タンパク質濃度1mg/mlで、37℃で17時間までの時間、N-グリコシダーゼFを用いて脱グリコシル化した。制限LysC(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)消化は、Tris緩衝液(pH8)中、100μgの脱グリコシル化抗体を用いて、それぞれ室温で120時間又は37℃で40分間行った。質量分析の前に、サンプルを、Sephadex G25カラム(GE Healthcare)でのHPLCによって脱塩した。合計質量を、TriVersa NanoMate source(Advion)が取り付けられたmaXis 4G UHR-QTOF MSシステム(Bruker Daltonik)でのESI-MSによって決定した。
【0382】
化学分解試験
サンプルを3つのアリコートに分け、20mM His/His*HCl、140mM NaCl、pH6.0又はPBSにそれぞれ再緩衝化し、40°C(His/NaCl)又は37℃(PBS)で保存した。対照サンプルを-80℃で保存した。
【0383】
インキュベーションが終了した後、サンプルを相対活性濃度(BIAcore)、凝集(SEC)及び断片化(キャピラリー電気泳動又はSDS-PAGE)について分析し、未処理対照と比較した。
【0384】
熱安定性
サンプルを、20mMヒスチジン/ヒスチジンクロリド、140mM NaCl中、pH 6.0で1mg/mLの濃度にて調製し、0.4μmフィルタプレートで遠心分離して光学384ウェルプレートに移し、パラフィンオイルで覆った。流体力学的半径を、サンプルを25℃から80℃まで0.05℃/分の速度で加熱しながら、DynaProプレートリーダー(ワイアット)で動的光散乱法によって繰り返し測定した。
【0385】
あるいは、サンプルを10μLのマイクロキュベットアレイに移し、25℃~90℃まで0.1℃/分の速度で加熱しながら、静的光散乱データ、並びに266nmレーザーで励起した際の蛍光データを、Optim1000装置(Avacta Inc.)を用いて記録した。
【0386】
凝集開始温度は、流体力学半径(DLS)又は散乱光強度(Optim1000)が増加し始める温度として定義される。
【0387】
あるいは、サンプルを9μLのマルチキュベットアレイに移した。Optim1000装置(Avacta Analytical Inc.)において、マルチキュベットアレイを35℃から90℃まで0.1℃/分の一定速度で加熱した。装置は、およそ0.5℃ごとにデータ点を用いて266nmレーザーの散乱光の強度を連続的に記録する。光散乱強度を温度に対してプロットした。凝集開始温度(Tagg)は、散乱光強度が増加し始める温度であると定義される。
【0388】
融点は、蛍光強度対波長のグラフの変曲点として定義される。
【0389】
マウス
マウスFcRn鎖遺伝子を欠損しているが、ヒトFcRn鎖遺伝子について半接合性トランスジェニックであるB6.Cg-Fcgrttm1DcrTg(FCGRT)276Dcrマウス(muFcRn-/-huFcRn tg+/-、系統276)を薬物動態研究のために使用した。マウスの飼育を特定の病原体を含まない条件下で行った。マウスはJackson Laboratory(Bar Harbor、ME、USA)から得た(雌、4~10週齢、投薬時に体重17~22g)。全ての動物実験はthe Government of Upper Bavaria、Germanyにより承認され(許可番号55.2-1-54-2532.2-28-10)、the European Union Normative for Care and Use of Experimental Animalsに従ってAAALAC認定動物施設において行われた。動物を標準的なケージ中で飼育し、研究の全期間中に食餌及び水を自由にとらせた。
【0390】
薬物動態研究
抗体の単回用量を10mg/kgの用量レベルにおいて側尾静脈を介してi.v.で注射した。計9つの血清収集時点(投薬後0.08、2、8、24、48、168、336、504及び672時間)をカバーするようにマウスを各6匹のマウスの3つの群に分けた。各マウスを2回、イソフルラン(商標)(CP-Pharma GmbH、Burgdorf、Germany)を用いた浅麻酔下で行った後眼窩出血に供し、3つ目の血液サンプルを安楽死の時点で収集した。血液を血清チューブ(Microvette 500Z-Gel、Sarstedt、Numbrecht、Germany)に収集した。2hのインキュベーション後に、サンプルを9.300gで3分間遠心分離して血清を得た。遠心分離後に、血清サンプルを分析まで-20℃で凍結貯蔵した。
【0391】
PK分析
WinNonlin(商標)1.1.1(Pharsight、CA、USA)を使用してノンコンパートメント解析により薬物動態パラメーターを算出した。
【0392】
簡潔に述べれば、抗体の非線形減少に起因する対数台形法により曲線下面積(AUC0-inf)値を算出し、最後の時点において観察された濃度からの外挿を用いて、見かけの終点速度定数λzを使用して無限大に外挿した。
【0393】
投薬速度(D)をAUC0-infで割ったものとして血漿クリアランスを算出した。見かけの消失半減期(T1/2)は式T1/2=ln2/λzから導出した。
【0394】
実施例2
発現及び精製
抗体は、一般的な材料及び方法のセクションで上述したように作製した。
【0395】
抗体をプロテインAアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーの組み合わせによって上清から精製した。得られた生成物を、質量分析法によって属性について特性決定し、CE-SDSによって純度、単量体含有量及び安定性などの分析特性を特性決定した。
【0396】
予想される一次構造を、一般的な方法のセクションに記載されるように、脱グリコシル化インタクト抗体及び脱グリコシル化/プラスミン消化抗体又は代替的に脱グリコシル化/制限LysC消化抗体のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)によって分析した。
【0397】
追加の分析方法(例えば、熱安定性、質量分析及び機能評価)は、プロテインA及びSEC精製後にのみ適用した。
【0398】
実施例3
ELISAによるインビトロでのAβ1-40繊維への結合の決定
原線維Aβに対する抗体の結合をELISAアッセイによって測定する。簡潔には、Aβ(1-40)を、PBS中7μg/mLでMaxisorbプレート上に37℃で3日間コーティングして、原線維Aβを生成し、次いで、室温で3時間乾燥させる。プレートをPBS(ブロッキング緩衝液)中の1% CroteinC及び0.1% RSAで室温で1時間ブロッキングし、次いで洗浄緩衝液で1回洗浄する。抗体又は対照をブロッキング緩衝液中100nMまでの濃度で添加し、4℃で一晩インキュベートする。4回の洗浄工程の後、ブロッキング緩衝液(1 RT)中の1:10,000希釈での抗ヒト-IgG-HRP(Jackson Immunoresearch)の添加、その後の6回の洗浄及びTMB(Sigma)中でのインキュベーションによって構築物を検出する。1N HClで発色を停止させた後、吸光度を450nmで読み取る。
【0399】
実施例4
本発明による抗体を使用した間接免疫蛍光法によるアルツハイマー病患者の脳切片からの天然ヒトβ-アミロイド斑の染色
抗体は、間接免疫蛍光を使用する免疫組織化学分析によって、天然のヒトβアミロイド斑を染色する能力について試験することができる。真のヒトβ-アミロイド斑の特異的かつ高感度の染色を実証することができる。アルツハイマー病と陽性に診断された患者から死後に得られた側頭皮質からの非固定組織のクライオスタット切片を間接免疫蛍光法によって標識する。2工程インキュベーションを使用して、Alexa555色素(Molecular Probes)にコンジュゲートさせた親和性精製ヤギ抗ヒト(GAH555)IgG(H+L)によって明らかにされる結合二重特異性抗体を検出する。対照は、無関係のヒトIgG1抗体(Sigma)及び二次抗体のみを含むことができ、これらはすべて陰性結果を与えるはずである。
【0400】
実施例5
アルツハイマー病のマウスモデルにおける本発明による抗体によるインビボβ-アミロイド斑装飾
抗体を、インビボでβ-アミロイド斑を免疫装飾するそれらの能力について、AD関連アミロイドーシスのマウスモデルであるAPP/PS2二重トランスジェニックマウス(Richards,J.Neuroscience,23(2003)8989-9003)において試験した。これにより、脳浸透及びアミロイド-βプラークへの結合の程度の評価が可能になった。抗体を異なる用量で投与し、6日後、動物にリン酸緩衝食塩水を灌流し、脳をドライアイス上で凍結し、凍結切片化のために調製する。
【0401】
β-アミロイド斑に結合した抗体の存在を、15μg/mlの濃度でAlexa555色素(GAH555)(Molecular Probes)にコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG(H+L)を用いた単一標識間接免疫蛍光法のいずれかにより、室温で1時間、非固定クライオスタット切片を用いて評価した。アミロイド斑の対比染色は、0.5μg/mlの濃度でAlexa488にコンジュゲートしたAβに対するマウスモノクローナル抗体であるBAP-2と室温で1時間インキュベートすることによって行うことができる。スライドを蛍光封入剤(S3023 Dako)で包埋し、共焦点レーザー顕微鏡法によって画像化を行う。
【0402】
実施例6
FcRn及びヘパリンのアフィニティークロマトグラフィー
FcRnアフィニティーカラムの調製
HEK293細胞中でのFcRnの発現
FcRn及びβ-2-マイクログロブリンのコーディング配列を含有する2つのプラスミドのHEK293細胞へのトランスフェクションによりFcRnを一過的に発現させた。トランスフェクトされた細胞をシェーカーフラスコ中、36.5℃、120rpm(シェーカー振幅5cm)、80%の湿度及び7%のCO2で培養した。細胞を2~3日毎に3~4*105細胞/mlの密度に希釈した。
【0403】
一過性発現のために、14lステンレス鋼バイオリアクターを36.5℃、pH7.0±0.2、pO2 35%(N2及び空気でのガス処理、総気体流れ200ml分-1)並びに100~400rpmの撹拌器速度において8lの培養体積と共に開始させた。細胞密度が20*105細胞/mlに達した時に、10mgのプラスミドDNA(等モル量の両方のプラスミド)を400mlのOpti-MEM(Invitrogen)に希釈した。20mlの293fectin(Invitrogen)をこの混合物に加え、これを次に室温で15分間インキュベートした後、発酵槽に移した。翌日から、細胞に連続モードで栄養分を供給した。フィード溶液を500ml/日の速度で加え、必要に応じてグルコースを加えて2g/lより高いレベルを保った。4000rpmで90分間、1lバケツを用いるスイングヘッド遠心分離機を使用してトランスフェクションの7日後に上清を回収した。上清(13L)をSartobran Pフィルタ(0.45μm+0.2μm、Sartorius)により除去し、FcRnβ-2-マイクログロブリン複合体をそこから精製した。
【0404】
新生児Fc受容体のビオチン化
3mgのFcRnβ-2-マイクログロブリン複合体を150mMの塩化ナトリウムを含有する5.3mLの20mMリン酸二水素ナトリウム緩衝液に溶解/希釈し、250μLのPBS及び1タブレット完全プロテアーゼ阻害剤(complete ULTRA Tablets、Roche Diagnostics GmbH)に加えた。製造者の指示(Bulk BIRA、Avidity LLC)に従ってAvidityからのビオチン化キットを使用してFcRnをビオチン化した。ビオチン化反応を室温で終夜行った。
【0405】
ビオチン化FcRnを140mMのNaCl、pH5.5を含む20mMのMES緩衝液(緩衝液A)に対して4℃で終夜透析して過剰なビオチンを除去した。
【0406】
ストレプトアビジンセファロースへの連結
ストレプトアビジンセファロースへの連結のために、1mLのストレプトアビジンセファロース(GE Healthcare、United Kingdom)をビオチン化及び透析されたFcRnβ-2-マイクログロブリン複合体に加え、4℃で一晩インキュベートした。FcRnβ-2-マイクログロブリン複合体誘導体化セファロースを4.6mm×50mmのクロマトグラフィーカラム(Repligen)に充填した。カラムを80%の緩衝液A及び20%の緩衝液B(20mMのTris(ヒドロキシメチル)アミノメタンpH8.8、140mMのNaCl)中で貯蔵した。
【0407】
FcRnアフィニティーカラム及びpH勾配を使用するクロマトグラフィー
条件:
カラム寸法:50mmx4.6mm
ローディング:30μgのサンプル
緩衝液A:20mMのMES、140mMのNaClを含有、pH5.5に調整
緩衝液B:20mMのTris/HCl、140mMのNaClを含有、pH8.8に調整
【0408】
30μgのサンプルを、緩衝液Aで平衡化したFcRnアフィニティーカラムに適用した。0.5mL/分の流速での20%の緩衝液B中の10分の洗浄工程後に、70分にわたる20%から70%への緩衝液Bの線形勾配を用いて溶出を行った。280nmの波長におけるUV光吸収を検出のために使用した。各実施後に20%の緩衝液Bを使用してカラムを10分間再生させた。
【0409】
相対保持時間の算出のために、(Bertoletti-Ciarlet,A.,et al.,Mol.Immunol.46(2009)1878-1882)に従って0.02%の過酸化水素を用いて18時間酸化させた標準サンプル(抗Her3抗体(配列番号52及び53)をシークエンスの開始時及び各10回のサンプル注入後に流した。
【0410】
簡潔に述べれば、10mMのリン酸ナトリウムpH7.0中の抗体(9mg/mL)を0.02%の最終濃度までH2O2と混合し、室温で18時間インキュベートした。反応をクエンチするために、予備冷却された10mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH5.0にサンプルを徹底的に透析した。
【0411】
相対保持時間は以下の式に従って算出した。
t_(rel,i)=(t_i-t_ピーク2)/(t_ピーク3-t_ピーク2)
【0412】
ピークの定義については、国際公開第2018/197533号の
図1を参照されたい。
【0413】
ヘパリンアフィニティーカラム及びpH勾配を使用するクロマトグラフィー
条件:
カラム寸法:50mmx5.0mm
ローディング:20~50μgのサンプル
緩衝液A:50mMのTRIS pH7.4
緩衝液B:50mMのTRIS pH7.4、1000mMのNaCl
【0414】
低塩緩衝液(≦25mMのイオン強度)中の20~50μgのタンパク質サンプルを、室温で緩衝液Aを用いて予備平衡化されたTSKgel Heparin-5PW Glass column、5.0×50mm(Tosoh Bioscience、Tokyo/Japan)に適用した。0.8mg/mLの流速において32分にわたり0~100%の緩衝液Bの線形勾配を用いて溶出を行った。280nmの波長におけるUV光吸収を検出のために使用した。あらゆる注入シークエンスを保持時間標準品(抗pTau抗体;配列番号50及び51)と共に開始し、それを使用して以下の式に従って相対保持時間を算出した。
t_(rel,i)=t_i/t_pTau
(trel,i:ピークiの相対保持時間;ti:ピークiの保持時間;tpTau:抗pTau抗体ピークの保持時間)。
【0415】
上述の発明を、理解を明確にする目的で、説明及び実施例によって、ある程度詳細に説明してきたが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。