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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026429
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】フィルムロール
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/02 20060101AFI20250214BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B65D65/02 A
G06K19/06 037
G06K19/06 028
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024132053
(22)【出願日】2024-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2023129255
(32)【優先日】2023-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 順之
(72)【発明者】
【氏名】堀江 将人
(72)【発明者】
【氏名】井澤 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】小林 武史
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AB02
3E086AC33
3E086BA02
3E086BA15
3E086BB62
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA31
3E086DA01
3E086DA07
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】フィルムが後加工された後や粉砕後でも識別情報を確認でき、トレーサビリティを確保できるフィルムロールを提供すること。
【解決手段】本発明にかかるフィルムロールは、フィルムを巻き取ってなるフィルムロールであって、フィルムの表面に、当該フィルムの処理履歴を読み取り可能な識別情報を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを巻き取ってなるフィルムロールであって、フィルムの表面に、当該フィルムの処理履歴を読み取り可能な識別情報を有することを特徴とするフィルムロール。
【請求項2】
前記フィルムの少なくとも一方の幅方向の端部から、当該フィルムの幅の全長に対して0%以上25%以下の領域に識別情報が付与されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルムロール。
【請求項3】
フィルムロールの表層部の最端部および/または巻芯部の最端部に識別情報が付与されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のフィルムロール。
【請求項4】
前記識別情報は、2次元コードまたはバーコードによって表現されること特徴とする請求項1または2に記載のフィルムロール。
【請求項5】
前記識別情報は、前記フィルムを結晶化させてなること特徴とする請求項1または2に記載のフィルムロール。
【請求項6】
前記識別情報は、低視認性を有し、かつフィルム表面全体に付与されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムロール。
【請求項7】
前記識別情報は、少なくとも、フィルムの材質、フィルムの厚さ、生産ロット番号、ならびに、前記識別情報の付与方法および付与回数を示す情報を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムロール。
【請求項8】
前記フィルムが、ポリエステルからなることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムロール。
【請求項9】
前記フィルムは、幅が400mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に水平リサイクルに適したフィルムを巻き取ってなるフィルムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムは、食品や医薬品の包装、電子機器の部品など、様々な分野で使用される。使用後に廃棄されたフィルムは、環境汚染の問題を引き起こすことがあるため、リサイクルが求められている。しかしながら、フィルムのリサイクルには、リサイクルプロセスのトレーサビリティの問題がある。リサイクルされた製品が原材料として使用される他の製品において、リサイクルされたフィルムが使用されているかどうかが判明しないことがある。また、リサイクルされた製品がリサイクルプロセスのどの段階で作られた製品かを把握することが困難であるため、製品の品質管理が困難になることがある。このため、フィルムに識別情報を付与することにより品質管理を行うことが検討されてきた。
【0003】
また、製品の識別情報に関しては、従来、製品の包装にバーコードの付与がされたラベルを付すなどといった技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-87450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、長尺物であることが一般的であるフィルムは、該フィルムの包装に識別情報を付与したとしても、包装を解いてロールから巻き出して、フィルムを使用したり加工したりする。この際、長尺物であるフィルムが途中で破断したり、小巻にするなどして複数のフィルムロールとなったりする際には、フィルムロールの情報がトレースできなくなってしまう可能性が生じてしまう。
【0006】
そこで、本発明では、フィルムが後加工された後や粉砕後でも識別情報を確認でき、トレーサビリティを確保できるフィルムロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記に鑑み鋭意検討した結果、フィルムの識別情報を製造工程にて織り込むことで、分別を容易にすることにより上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明の好ましい一態様は以下の通りである。
【0008】
(1)幅が400mm以上のフィルムを巻き取ってなるフィルムロールであって、フィルムの表面に、当該フィルムの処理履歴を読み取り可能な識別情報を有することを特徴とするフィルムロール。
【0009】
(2)前記フィルムの少なくとも一方の幅方向の端部から、当該フィルムの幅の全長に対して0%以上25%以下の領域に識別情報が付与されていることを特徴とする(1)に記載のフィルムロール。
【0010】
(3)フィルムロールの表層部の最端部および/または巻芯部の最端部に識別情報が付与されていることを特徴とする、(1)または(2)に記載のフィルムロール。
【0011】
(4)前記識別情報は2次元コードまたはバーコードによって表現されること特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載のフィルムロール。
【0012】
(5)前記識別情報は、前記フィルムを結晶化させてなること特徴とする請求項(1)~(3)のいずれかに記載のフィルムロール。
【0013】
(6)前記識別情報は、低視認性を有し、かつフィルム表面全体にプリントされていることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載のフィルムロール。
【0014】
(7)前記識別情報には、少なくとも、フィルムの材質、フィルムの厚さ、生産ロット番号、ならびに、前記識別情報の付与方法および付与回数を示す情報を含むことを特徴とする、(1)~(6)のいずれかに記載のフィルムロール。
【0015】
(8)前記フィルムが、ポリエステルからなることを特徴とする、(1)~(7)のいずれかに記載のフィルムロール。
【0016】
(9)前記フィルムは、幅が400mm以上であることを特徴とする、(1)~(8)のいずれかに記載のフィルムロール。
【0017】
(10)少なくとも「フィルムの材質、フィルムの厚さ、生産ロット番号、使用されたプリント方法、およびプリント回数」を読み取ることができる識別情報を、情報処理端末を用いて生成する工程と、生成された識別情報を当該フィルムへプリントする工程を含む、フィルムロールの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィルムが後加工された後や粉砕後でも識別情報を確認でき、トレーサビリティを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明における水平リサイクルの概念を説明するための図である。
図2図2は、本発明におけるリサイクルポリエステルフィルムの製造方法の一例に係る、ポリエステルフィルムと無機物とを有する積層体から無機物を剥離すること示す概念図である。
図3図3は、本発明におけるリサイクルポリエステルフィルムの製造方法の一例に係るリサイクルポリエステルフィルムの概念図である。
図4図4は、幅方向端部の領域に識別情報が付与されているフィルムロールの一例を示す概念図である。
図5図5は、幅方向端部の領域に識別情報が付与されているフィルムロールの他の例を示す概念図である。
図6図6は、各拠点におけるラベル情報の内容の一例を示す概念図である。
図7図7は、識別情報をブロックチェーン化して処理する例を示す概念図である。
図8図8は、識別情報をフィルム製造拠点で一元管理する際の情報処理の一例を示す概念図である。
図9図9は、製品ラベルに識別情報を付与した状態で梱包する例を示す概念図である。
図10図10は、フィルムの巻取りコアの端面に識別情報を付与する例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0021】
本発明の好ましい一態様は、フィルムの表面に識別情報を有することを特徴とするフィルムロールである。本態様とすることにより、リサイクルを実施する際の、特に水平リサイクルを実施する際の、フィルムの分別作業を容易に行うことができる。
【0022】
本発明における水平リサイクルとは、リサイクルする対象の使用済み、あるいは未使用品・未使用箇所(従来は廃棄するもの)を集めて、元の同じ製品に戻すことを指す。同義の呼称としては、循環型リサイクル、サーキュラーリサイクル、を挙げることができる。
【0023】
本発明においては、例えば、図1を参照しつつ、積層セラミックコンデンサの誘電体材料を成形するための離型用ポリエステルフィルムを例にして説明する。図1は、本発明における水平リサイクルの概念を説明するための図である。
まず、フィルムの製造拠点でポリエステルフィルム1が製造され、コンバーターで離型加工などの加工を適宜行って離型用ポリエステルフィルム2が得られるか、または、フィルムの製造拠点において加工することによって離型用ポリエステルフィルム2が得られる。その後、離型用ポリエステルフィルム2がユーザーに発送され、該ユーザーにて離型用ポリエステルフィルム2の上に無機物層として積層セラミックコンデンサの誘電体材料が成膜される。その後、成膜材料として出荷されなかった余剰の成膜材料において、無機物層が離型用ポリエステルフィルム2から剥離される。この剥離後の離型用ポリエステルフィルム3は、ユーザーが製造する製品には用いられずに残ったフィルムであり、リサイクル対象のフィルムに相当する。このリサイクル対象の離型用ポリエステルフィルム3やその一部が、リサイクル加工拠点において、例えば細かく裁断された粒子状のリサイクル原料4として適宜加工される。このリサイクル原料4は、ポリエステルフィルム製造拠点において、新たにリサイクルポリエステルフィルム(ポリエステルフィルム1)を製造するために用いられる。このリサイクルの際に、ポリエステルフィルムに適宜加工等を行って、積層セラミックコンデンサの誘電体材料を成形するために好適な物性を示す、リサイクル原料が含まれたポリエステルフィルム1を製造することで、水平リサイクルが達成される。上記例に際し、新たにリサイクルポリエステルフィルム(ポリエステルフィルム1)を製造するが、積層セラミックコンデンサの誘電体材料用に用いないようなフィルムを製造する場合は水平リサイクルではなく単なるリサイクル、あるいはワンウェイリサイクルとなる。
ポリエステルフィルム1は、フィルムを巻き芯に巻き付けてなるロール(以下、フィルムロールともいう)の状態で拠点間を移動する。
【0024】
(実施の形態)
上記した本発明の好ましい一態様について、図2および図3を参照しつつ、上記積層セラミックコンデンサの誘電体材料を成形するための離型用ポリエステルフィルムを例にして説明する。図2は、本発明におけるリサイクルポリエステルフィルムの製造方法の一例に係る、ポリエステルフィルムと無機物とを有する積層体から無機物を剥離すること示す概念図である。図3は、本発明におけるリサイクルポリエステルフィルムの製造方法の一例に係るリサイクルポリエステルフィルムの概念図である。離型用ポリエステルフィルム2の上に誘電体材料(無機物層7)が積層されてなる積層体5(成膜材料)から(図2の(a)参照)、剥離工程を経ることで、剥離済みの離型用ポリエステルフィルム3と、積層セラミックコンデンサの誘電体材料(無機物層7)とが得られる(図2の(b)参照)。なお、離型用ポリエステルフィルム2は、ポリエステルフィルム1にコーティング層6が積層されてなる。また、積層セラミックコンデンサの誘電体材料(無機物層7)には無機物が含まれている。剥離済みの離型用ポリエステルフィルム3(図3参照)からコーティング層6を必要に応じて適宜洗浄し、その後適宜必要に応じて裁断、再溶融させて粒子化させ、ポリエステルフィルム1の一部8を構成していたチップを得る(図3参照)。そして、このチップに、必要に応じて新たなポリエステル樹脂原料9を添加して、溶融押出などによりフィルム状に成型することでリサイクルポリエステルフィルム10を得ることができる。この際、リサイクルポリエステルフィルムを製造する工程の中で、フィルム表面に識別情報を付与することで、リサイクルポリエステルフィルム10がどういった工程を経て作られたものであるかを、フィルム自体から把握することが可能となる。ここで、リサイクル製品にラベルを貼付して適宜管理することでもリサイクルポリエステルフィルムがどのような工程を経て作られたものであるかを把握することも不可能ではないが、長尺物であるフィルムは途中で破断したり、小巻にしたりなどして複数のフィルムロールとなったりする際には、フィルムロールの情報がトレースできなくなってしまう可能性が生じてしまうし、複雑な工程でのラベル貼り間違いなどにより把握ができなくなる場合もあることから、製品自体にそれまで受けた工程の履歴情報を含ませておくことで、安心して分別作業を容易に行うことが可能となる。
【0025】
本発明において好ましい一態様は、幅400mm以上のフィルムロールであって、フィルム表面に識別情報を有することである。図4を参照しつつフィルム表面に識別情報を有することを例にして説明する。図4は、幅方向端部の領域に識別情報が付与されているフィルムロールの一例を示す概念図である。フィルム表面とは、ロール状にフィルムを巻取った際のロール表面のことではなく、ロール状のフィルムを巻きほぐした際の、フィルムの表面および/または裏面のうちの表面を指す。ここでの表面は、巻き取り時に先に巻き取られたフィルム(すなわち巻き芯側のフィルム)側とは反対側の面を指す。
【0026】
ここでいう識別情報とは、当該フィルムロール11の成分がどういう経路を経て作製されたものであるかの処理履歴を検出器等で読み取り可能な情報であり、ロール(フィルム)を加工する際に、ヒトや、加工機に付属する読み取り装置、または検出器が認識して、分別するために必要な情報のことを指す。
【0027】
本発明において好ましい一態様は、フィルムの少なくとも一方の幅方向端部から、幅方向の全長D1に対して、0%以上25%以下の領域D2に識別情報が付与されていることである。なお、0%の領域に識別情報12が設けられる場合、該識別情報12の端部がフィルムの幅方向の縁端に位置する。ここで、フィルムロール11における、フィルム幅方向の端部とは、フィルムロール11を巻出した際に、巻出しに対して左側、右側にある端部である。すなわち、フィルム幅方向(以下、単に幅方向ということもある)とは、フィルムの表面に対し、該フィルムの長手方向(幅方向と直交する方向であって、かつフィルムの巻取り/巻出しを行う方向に沿う方向)と直交する方向を指す。フィルムロール11においては、塗工などの高次加工を行う際に最端部には塗工などはされない未塗工部となるため、フィルムの幅方向の端部に、先述の識別情報12を付与することは好ましい態様である。識別情報12は、フィルムの長手方向に沿って複数付与される。各識別情報12は、予め設定された間隔で配設される。識別情報12は、フィルムを一巻分巻き返した際に、ロール表面に少なくとも一つが露出する間隔、例えば、100mm間隔で配設される。当該箇所に識別情報12を付与すると、長手方向に対して、識別情報部分を含む部分が破断した際、小巻のロールが複数生じた場合でも、小巻ロール上に識別情報が失われる可能性が無くなり、トレーサビリティを担保できるため、好ましい。なお、フィルムの幅方向において、少なくとも片方の端部から領域D2に識別情報12がプリントされていればよいが、図4に示すように、両方の端部からそれぞれ領域D2に識別情報12が付与されていてもよい。この際、当該端部から0%以上25%以下の領域D2以外には付与されていないことが、巻姿を良好に保つうえで好ましい。
【0028】
端部の未塗工部は、加工工程により各々の態様となるが、各種フィルムロールにおいて設けられるものである。識別情報12は、フィルムの幅方向に対する端部から、該幅方向の全長の0%以上25%以下の領域に付与されていることが好ましく、より好ましくは0%以上2.5%以下の領域、さらに好ましくは0%以上1.25%以下の領域である。歩留まりに影響を及ぼさない範囲で識別情報12を付与することができる。
【0029】
本発明における識別情報は、識別情報を印刷方式で付与されるものに限らず、後述するヒートエンボスやレーザー彫刻等により、識別情報をフィルム上に付与することも含む。一態様としては、リサイクルフィルム中間製品にインクジェット方式印刷装置により識別情報12を付与することが例に挙げられる。
【0030】
また、識別情報12を付与したフィルムロールの製造方法の他の例について、図5を参照して説明する。図5は、幅方向端部の領域に識別情報が付与されているフィルムロールの他の例を示す概念図である。図5に示す例では、リサイクルフィルム中間製品13からそれぞれ生成されるフィルムロール11にインクジェット方式印刷装置14により識別情報12を付与する。この際、リサイクルフィルム中間製品13を構成するフィルム母材に、フィルムロール11のサイズに応じてインクジェット方式印刷装置14が識別情報12を印刷する。その後、識別情報12がフィルムの幅方向に対して上述した領域に配設されるようにリサイクルフィルム中間製品13を裁断することによって、リサイクルフィルム中間製品13から、識別情報12がそれぞれ付与された二つのフィルムロール11を得る。この際、フィルムの長手方向の端部には、インクジェット方式印刷装置14または他のインクジェット方式印刷装置によって、別途識別情報12が付与される。
【0031】
さらに、本発明においては、図4に示すように、フィルムロールの表層部の最端部および/または巻芯部の最端部に識別情報が付与されていることがさらに好ましい一態様である。フィルムロールの表層部および巻芯部の最端部とは、ロール状のフィルムを巻き出した際の、長手方向に対するフィルムの最端部であって、互いに異なる側の最端部を指す。また、表層部は、製品を巻き出した際の1巻き分であり、巻芯部は、巻き芯にまとわりついた1巻き分である。これら部分は高次加工を実施する際に、製品として採取されない領域となることが多い。このため、当該箇所に識別情報12を付与すると、フィルムロールの使用前後に、そのロールの履歴をトレースできることができるので好ましい。同様の観点から、表層部や巻芯部において、1巻き分以上であり、かつ50m以内に識別情報12が付与されていることがより好ましく、表層部や巻芯部において、1巻き分以上であり、かつ10m以内に識別情報12が付与されていることがさらに好ましい。
この際、例えば、表層部の最端部における識別情報12の配設領域D3は、フィルムの長手方向の最端部に対し、幅方向の識別情報12の配設領域(領域D2)と同等の長さによって決まる領域である。巻芯部の最端部においても同様であるが、表層部の最端部における識別情報12の配設領域と、巻芯部の最端部における識別情報12の配設領域とは、その領域が互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
なお、フィルムロールの表層部および/または巻芯部の最端部に識別情報12を有しない構成としてもよい。
【0032】
本発明において、識別情報12は、図4に示すような2次元コードやバーコードであることが好ましい態様である。2次元コードおよびバーコードは、幅広い態様で使用されており、黒白あるいは明暗のコントラストといったシンプルな情報の記録形態であるため、読み取りエラーが少ない。このため、識別情報12としては好ましい形態である。識別情報12は、その他、文字情報、色、RF-IDタグを使用することができる。
【0033】
本発明において、識別情報12は、ヒトが視認できない、または視認することが難しい低視認性を有し、かつフィルム表面全体にプリントされていることが、さらに好ましい実施形態である。ヒトが視認できない識別情報12をフィルムの全幅に付与することで、裁断された後のフィルムからでも、識別情報12を読み取れる可能性が高まるため、さらに好ましい。識別情報12は先述のように黒白や明暗のコントラストにて情報を付与しているが、この情報が、目視で確認されるフィルム上の欠点と混同する可能性があることから、識別情報については、ヒトが視認できないことがより望ましい。また、視認されない識別情報12をフィルムに付与する場合は、識別情報12をフィルム全幅の位置に付与することが、フィルムを断裁後にも識別情報12がフィルムに残る確率が高くなるため、好ましい。「目視で確認できない」とは、正常な視力を有するヒトの肉眼にて、以下の環境、例えば、自然光、蛍光灯、白色灯、LED灯下の反射光および透過光にて、500mmの距離で、対象物を確認できないことを意味する。
【0034】
目視で確認できない識別情報は、例えば、ブラックライト(高周波の紫外線ライト)を照射して可視化できるが、先述の環境下では視認できない、いわゆる不可視インクを使用することもできる。
【0035】
本発明においては、識別情報12は、少なくとも、フィルムの材質、フィルムの厚さ、生産ロット番号、識別情報の付与方法および付与回数の情報を含むことを特徴とすることが好ましい。
さらに好ましくは、識別情報12は、拠点におけるID、発行日、当該水平リサイクルシステムにおいての連続する番号、フィルムの品種(タイプ名)、製造工場、フィルムロールの幅・長さ、包装資材の種類、巻芯の材質、フィルムロールの次の仕向け先を含むことによって、さらに詳細なトレーサビリティを担保できる。
【0036】
すなわち、本発明のフィルムロールの製造方法の好ましい一態様は、少なくとも「フィルムの材質、フィルムの厚さ、生産ロット番号、使用された識別情報付与方法、および付与回数」を読み取ることができる識別情報12を、情報処理端末を用いて生成する工程と、生成された識別情報を当該フィルムへ付与する工程とを含むフィルムロールの製造方法である。さらに、「当該水平リサイクルシステムにおいての連続する番号、フィルムの品種(タイプ名)、製造工場、フィルムロールの幅・長さ、包装資材の種類、巻芯の材質、フィルムロールの次の仕向け先」も読み取ることができるような識別情報を生成・付与することが好ましい。
【0037】
本発明においては、フィルムが、種々の材料、例えば樹脂によって形成することが可能であるが、ポリエステルからなることが好ましい。ポリエステルからなるフィルムロールは、印刷やヒートエンボス加工、レーザー彫刻に対する加工性が良好である。その他、ポリエステルからなるフィルムロールは、加工適性にも優れているため、広範な用途で使用することが可能なフィルムロールとなる。リサイクルを行うための物量を確保できる点からも、ポリエステルからなるフィルムロールは、本発明において好ましい実施態様である。また、この際、識別情報12は、上述したような印刷のほか、フィルムを結晶化させることにより付与されるようにしてもよい。「フィルムを結晶化させる」とは、熱をフィルムに与えて、フィルムを結晶化温度以上に昇温することにより、フィルムに明暗の情報を付与することを指す。フィルムを結晶化温度以上に昇温する方法においては公知の方法にて実施することができるが、好ましくは、ヒートエンボスや、レーザー彫刻による結晶化手法が挙げられる。ヒートエンボスとは、予め凹凸が付与された版を加熱してフィルムに接触させることにより、フィルム表面を結晶化させる方法である。この際、凹凸は識別情報のパターンにより変更することが可能である。レーザー彫刻はフィルム表面や内面に焦点を当てて高エネルギーのレーザーを照射してフィルムを結晶化させる結晶化手法である。これら方法は、洗浄工程にて識別情報が剥離されてしまう可能性を低減することができるので好ましい。また、リサイクルした際に識別情報部分由来の異物の発生の低減にもつなげることができる。同様な理由に加えフィルムの表面物性に影響を小さくすることができる観点では、識別情報21は、レーザー彫刻によりフィルム内面(フィルムの内層)に付与されるものであることがさらに好ましい。フィルム内面に識別情報が付与される場合であっても、当該識別情報はフィルムの表面から検出器等で読み取りが可能であり、識別情報の付与態様として「フィルム表面に付与された識別情報」に含まれる。
【0038】
本発明においては、識別情報12が付与された箇所と、識別情報12が付与されない箇所とのヘイズ差が10%以上であることが、識別情報を検出しやすくなり好ましい。ヘイズはJISK7136(2000年)に準拠して求めるものとする。ヘイズ差はより好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上が好ましい実施形態である。また、識別情報12が付与された箇所が、識別情報12が付与されない箇所との表面粗さ(算術平均粗さ:SRa JISB0601(2001年)の算術平均粗さを3次元的に拡張したもの)差が1000nm以上であることが好ましい。なお、ヘイズ値は、識別情報12が付与されている箇所の方が高くなる。
【0039】
さらに、本発明においては、フィルムロール自体への印字以外にも識別情報、より好ましくはバーコード情報を付与することが好ましい。例えば、製品ラベルにも識別情報を印字することで、出荷・納入時および製品加工前にてトレーサビリティを確保することができる。他にも、パレットまたはコンテナなどの荷資材に識別情報付与することも好ましい。基本的に、パレットまたはコンテナと、フィルムロール製品とは、互いに関連付けられて一対一に対応するため、ラベル情報と紐づけることによって、トレーサビリティ確保が容易になる。フィルム巻取り用コアに識別情報を付与することも、上記の理由から好ましい。
【0040】
ここで、各拠点間における識別情報の内容の一例について、図6を参照して説明する。図6は、各拠点における識別情報の内容の一例を示す概念図である。なお、図6では、識別情報である二次元コードに含まれる情報を例にして説明する。まず、フィルム製造拠点において製造されたフィルムには、本フィルム製造拠点のバーコードのID、当該識別情報の発行日、当該フィルムの品種(材質や厚さを含む)、当該フィルムの製膜シリーズ、ロット番号を含む識別情報が付与される。その後、コンバーターにおいて処理されたフィルムには、当該コンバーターのバーコードのID、当該識別情報の発行日、当該コンバーターの会社名、コンバーター(コーティング層)の品種、フィルム製造拠点のバーコードIDを含む識別情報が付与される。そして、ユーザーにおける処理後のフィルムには、当該ユーザーのバーコードのID、当該識別情報の発行日、当該ユーザーの会社名、屑種の識別情報、フィルム製造拠点のバーコードID、コンバーターのバーコードIDを含む識別情報が付与される。その後、リサイクル加工拠点における処理後のフィルムには、当該リサイクル加工拠点のバーコードのID、当該識別情報の発行日、当該リサイクル加工拠点の会社名、屑種の識別情報、フィルム製造拠点のバーコードID、コンバーターのバーコードID、ユーザーのバーコードIDを含む識別情報が付与される。その後、フィルム製造拠点に戻ったチップを含んで作製されたフィルムには、本フィルム製造拠点のバーコードのID、当該識別情報の発行日、当該フィルムの品種、当該フィルムの製膜シリーズ、ロット番号に加え、リサイクル加工拠点のバーコードIDや、識別情報の付与方法・回数を含む識別情報が付与される。なお、リサイクル加工拠点における識別情報は、例えば、チップが収容される袋等に付与される。また、図6に示す情報種は一例である。
このようにして、上述した情報を含む識別情報を次に扱う拠点に引き継ぐことによって、フィルム製造拠点においてリサイクルする際に、当該フィルム(チップ)の処理経路をフィルム製造拠点の作業者に把握させることが可能となる。
各拠点では、例えば、受け入れ時に識別情報を読み取って、当該拠点に対応する識別情報を生成し、加工後に生成した識別情報を付与する。この際、必要に応じて外部のサーバー等に識別情報を送信する。
【0041】
本発明においては、識別情報12は、前工程にて生成された識別情報をすべて内包することが望ましい。
【0042】
ここで、情報管理の一態様として、各拠点において情報を付加することによって識別情報をブロックチェーン化して管理する態様が挙げられる。図7は、識別情報をブロックチェーン化して処理する例を示す概念図である。例えば、識別情報15は、フィルム製造拠点において製造されたフィルムに付与される情報である。また、コンバーターでは識別情報16が生成され、ユーザーでは識別情報17が生成され、リサイクル加工拠点では識別情報18が生成されるものとする。なお、各拠点において生成される識別情報は、例えば、図6に示す情報である。この際、フィルム製造拠点は、識別情報15のほか、各拠点から識別情報16~18を取得して、識別情報15~18を繋げてなる、当該フィルムに関するフィルム管理情報19が生成される。コンバーターの識別情報16がユーザーに引き渡される際には、ユーザーの識別情報17に、コンバーターの情報が付加される。さらに、リサイクル加工拠点の識別情報18には、コンバーターおよびユーザーの情報が付加される。これらは、物流とともに冗長性を持たせた履歴情報がラベルとして追加されることを示し、これら情報のチェーンを紐解くことによって、履歴の追跡が可能となる。このブロックチェーン化された識別情報は、当該フィルムロールがリサイクルされ続ける限り、情報が引き継がれ更新されていく。なお、フィルム製造拠点以外の拠点において、次の拠点に引き継ぐ識別情報と、各拠点がフィルム製造拠点に送信する情報とを異なるものとし、拠点間で情報の種別に応じてフィルム製造拠点以外の拠点への開示/非開示を制御してもよい。
【0043】
ブロックチェーン化して処理する場合、物流に伴い情報を取り交わす二つの拠点の間、および、フィルム製造拠点と各拠点とのピアツーピア接続で情報が共有され、当該情報が蓄積されトレーサビリティ情報を管理することによって、フィルムの履歴を追跡することが可能となる。例えば、図7においてコンバーターの識別情報16がユーザーに引き渡される際には、ユーザーの識別情報17に、コンバーターの情報が付加される際には、同時にフィルム製造拠点にも識別情報17が送付される。すなわち物流が生じる度に、フィルムの製造拠点には、時系列で拠点ごとの識別情報が蓄積される。この際、コンバーターには、今回の物流にて送付された他の拠点の識別情報が渡ることが無い。すなわち、この場合において循環リサイクルの全体像を把握できるのはフィルム製造拠点のみである。これら循環リサイクルの系には、偽造ラベルが入り込む余地が無く、仮に偽造情報が流通した際には、リサイクル加工拠点との照合により判明するか、ブロックチェーン化された情報に矛盾点が生じるためいずれにしても偽造が判明する。このため、好ましい偽造対策を施すことができる。さらには、識別情報が暗号化されていることが好ましく、これら暗号は、識別情報を流通する2者のみで解読可能であることがさらに好ましい。
【0044】
これら識別情報は、物流に伴い識別情報を取り交わす2者の拠点の間、および、フィルム製造拠点と各拠点とのピアツーピア接続で情報を共有することにより、製品に関する機密情報が、限定された当事者のみに共有されるため好ましい。コンバーター、ユーザーともに、複数の供給者や顧客を持っており、それぞれは敵対関係にある場合も有る。一つの識別情報を読み込んだだけでも、トレース情報等の全体像が、把握できない仕組みとなるため、製品の秘密保持上好ましい管理の形態である。さらには、リサイクルするチップの循環回数も定量化できるため、リサイクル回数の上限を判定することや、例えば、鎖伸長剤を添加してポリマーの機能を回復するなど、リサイクル耐性を高めるための施策を、適切なタイミングで実施することもできる。
【0045】
上記観点から、識別情報を付与したフィルムにおける情報処理方法の好ましい一態様は、フィルムの表面に有する識別情報を用い、前工程にて生成された識別情報にすべて内包させ、物流に伴い識別情報を取り交わす2者の拠点間、および、フィルム製造拠点と各拠点とのピアツーピア接続で情報を共有しており、当該識別情報が蓄積されトレーサビリティ情報を管理するものである。また、フィルム製造拠点で収集したトレーサビリティ情報を用いて、リサイクルされたチップの混率や、チップの使用ロットの組み合わせを設計することによって、製品の品質を安定に保つことができる。
【0046】
また、情報管理の他の態様として、フィルム製造拠点において、識別情報が一元管理される。この際、フィルム製造拠点では、サーバーにおいて、識別情報が記憶、更新される。図8は、識別情報をフィルム製造拠点で一元管理する際の情報処理の一例を示す概念図である。フィルムの履歴に関するフィルム管理情報20は、フィルム製造拠点において製造されたフィルムに付与される情報を含み、かつ、フィルムの流れに応じた拠点ごとの識別情報を含むものである。また、この態様では、フィルム製造拠点と、コンバーター、ユーザー、リサイクル加工拠点とが、それぞれ通信可能に接続される。すなわち、コンバーター、ユーザー、リサイクル加工拠点は、各々フィルム製造拠点とのみ通信し、識別情報をフィルム製造拠点に送信する。具体的には、コンバーターでは生成された識別情報16、ユーザーで生成された識別情報17、リサイクル加工拠点で生成された識別情報18がそれぞれフィルム製造拠点に送信される。フィルム製造拠点は、当該フィルム製造拠点において生成した識別情報と、各拠点から取得した識別情報16~18とを含むフィルム管理情報20を生成して管理する。この際、例えば、フィルム製造拠点以外の拠点では、フィルムの生産ロット番号、ならびに、識別情報の付与方法および付与回数を、先の拠点から受け入れたフィルムに付与されている識別情報から知り得るようにして、フィルム製造拠点には、それらの情報と、自身の拠点に関連する情報とを含めた識別情報が、フィルム製造拠点に送信されるようにしてもよい。なお、フィルム製造拠点以外の拠点間においてフィルムに付与される識別情報には、上述した、フィルムの生産ロット番号、ならびに、識別情報の付与方法および付与回数が含まれていればよく、共通の識別情報をフィルムに付与してもよい。
【0047】
この一元管理では、フィルム製造拠点がフィルム管理情報20を都度更新して保持することによって、フィルムの処理履歴等が管理される。この場合、拠点間での情報のやり取りの成否によらず、フィルム製造拠点においてフィルムの履歴を確認することが可能となる。
なお、フィルム製造拠点以外の拠点において、次の拠点に引き継ぐ、フィルム付与用の識別情報と、各拠点がフィルム製造拠点に送信する情報とを異なるものとし、拠点間で情報の種別に応じてフィルム製造拠点以外の拠点への開示/非開示を制御してもよい。
【0048】
本発明に示す識別情報によるトレーサビリティの確保手法は、積層セラミックコンデンサ用の水平リサイクルに適用されることが、さらに好ましい実施形態となる。高度な技術が集積されている、積層セラミックコンデンサのサプライチェーンにおいては、技術要求に応えられる加工拠点(加工会社)が限定される。積層セラミックコンデンサ用の水平リサイクルにおいては、例えばPETボトルのリサイクルのような、屑発生源の特定が困難な要素が無く、比較的「顔の見えた」加工拠点が絡む循環系である。これら、適度な規模の循環系が、積層セラミックコンデンサ用の水平リサイクルの系であるため、さらに最適な実施形態である。
【0049】
本実施の形態によれば、フィルムの少なくとも一方の幅方向端部から、幅方向の全長D1に対して、0%以上25%以下の領域D2に識別情報が付与されるようにしたので、フィルムが後加工された後や粉砕後でも識別情報を確認でき、トレーサビリティを確保できる。
【0050】
なお、上述したフィルムの水平リサイクルにおいて、他の処理拠点を含むようにしてもよい。例えば、ユーザーとリサイクル加工拠点との間に、スラリー剥離拠点が介在する流れとしてもよい。
【0051】
(その他の実施の形態)
図9は、製品ラベルに識別情報を付与した状態で梱包する例を示す概念図である。図9は、フィルムロール11に、棒状のフィルム巻取りコア21が挿通され、フィルムロール11およびフィルム巻取りコア21が、梱包用ポリチューブ23に覆われている状態を示している。また、梱包用ポリチューブ23には、製品ラベル22が貼付されている(図9の(a)参照)。製品ラベル22は、例えば、梱包用ポリチューブ23等の梱包に用いられる梱包用テープ24を用いて梱包用ポリチューブ23の表面に貼付される。製品ラベル22には、識別情報として二次元バーコードが付与されている。この二次元バーコードは、例えばインクジェット方式によって印字される。
【0052】
また、梱包用ポリチューブ23を覆う第2の梱包用ポリチューブ25が設けられる場合、この第2の梱包用ポリチューブ25の表面に貼付される管理ラベル26に、識別情報が付与されてもよい(図9の(b)参照)。この識別情報は、例えば二次元バーコードであって、例えばインクジェット方式によって印字される。
【0053】
さらに、フィルムロール11を積載するパレットまたはコンテナに、同様のバーコード印字されたシールを貼り付けることによって、荷資材にもトレーサビリティ情報を付与することができる。
【0054】
また、フィルム巻取りコア21に、識別情報を付与してもよい。図10は、フィルムの巻取りコアの端部に識別情報を付与する例を示す概念図である。図10に示すように、フィルム巻取り用コア21の端面にバーコード印字されたシールを貼付する。ここで、「端面」とは、フィルム巻取りコア21の表面であって、フィルムロール11が巻き付けられる側面に連なる、長手方向の端部の表面であって、フィルムロール11が巻き付いた状態において露出している表面である。
【0055】
図9図10に示す態様で付与される識別情報を加工前後にてバーコードリーダーで読み込むことで、加工日時等のトレーサビリティ確保が容易になる。
【実施例0056】
以下、実施例で本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
(1)ポリエステルペレットの作成
(ポリエステルAの作成)
テレフタル酸86.5質量部およびエチレングリコール37.1質量部を255℃で、水を留出しながらエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、トリメチルリン酸0.02質量部、酢酸マグネシウム0.06質量部、酢酸リチウム0.01質量部、三酸化アンチモン0.0085質量部を添加し、引き続いて、減圧下、290℃まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、固有粘度0.63dl/gのポリエステルAのペレットを得る。
【0058】
(ポリエステルBの作成)
さらに別に、シード法によるジビニルベンゼン80質量%、エチルビニルベンゼン15質量%、スチレン5質量%からなるモノマーを吸着させる方法によって得た体積平均粒径0.3μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度が3のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子(架橋度80%)の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレット(ポリエステルAのペレット)に、ベント式二軸混練機を用いて含有させ、体積平均粒径0.3μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し1質量%含有するマスターペレット(ポリエステルBのペレット)を得る。
なお、体積形状係数fは次式で表される。
f=V/Dm
ここでVは粒子体積(μm)、Dmは粒子の投影面における最大径(μm)である。体積形状係数fは、粒子が球のとき、最大のπ/6をとる。
【0059】
(回収原料Aの作成)
下記処方のa層/b層/a層=1.5μm/22.0μm/1.5μmのフィルムを製造した後のフィルムを回収し、ペレット化したものを回収原料Aとする。なお、以下に記載する比率は、当該層全体の質量に対する質量比(質量%)で表す。
a層
ポリエステルA:70.0
ポリエステルB:30.0
b層
ポリエステルA:100.0
【0060】
(2)ポリエステルペレットの調合
A層、B層それぞれの層の押出機に供給するポリエステルペレットは、以下の比率にて調合する。なお以下に記載する比率は、各々の層を構成するポリエステルペレットに対する質量比(単位:質量%)である。
A層
ポリエステルA:70.0
ポリエステルB:30.0
B層
ポリエステルA:70.0
回収原料A :30.0
【0061】
(3)ポリエステルフィルムAの製造
先述の、各層について調合した原料を、ブレンダー内で攪拌した後、A層の原料は、攪拌後の原料を、A層用のベント付き二軸押出機に供給し、B層の原料は160℃で8時間減圧乾燥し、B層用の一軸押出機に供給する。A層は、5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度なフィルターにて濾過する。B層はタンデム押出機にて275℃で溶融押出し、5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度なフィルターにて濾過した後に、合流ブロックでA層、B層を合流積層し、A層、B層、A層からなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し未延伸フィルムの全幅に対して静電印加を行う静電印加キャスト法を用いて、表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得る。この未延伸積層フィルムに対して、長手方向、幅方向の逐次延伸を実施する。まず長手方向の延伸を実施し、105℃で搬送した後に、長手方向に120℃で3.8倍延伸して一軸延伸フィルムとする。この一軸延伸フィルムをステンター内で横方向に115℃で4.0倍延伸し、続いて230℃で熱固定し、その際幅方向に5%弛緩し搬送工程にて冷却させる。延伸後のフィルムは、搬送工程にて冷却させた後、エッジを切断後巻取り、幅が2000mm、長手方向の長さが6500mの中間製品を得る。中間製品はスリット工程により幅・長にスリットされてコアに巻き取られ、厚さ31μmのポリエステルフィルムAのロールが得られる。次に、中間製品のスリット開始からスリット終了まで、中間製品を切断する前のパスライン上にて、インクジェット方式にて、2次元バーコードを、フィルム上に付与する。2次元バーコードを、フィルム上に付与する位置は、中間製品を切断する工程の直前のロール上に、それぞれの切断点にてフィルムの幅方向端部から、10mmの領域に5mm幅、150mmピッチで付与する。切断後巻取り、幅が900mm、長さが6000mのリサイクルフィルムロールを得る。
【0062】
なお、ポリエステルフィルムAの厚さの比は、A層/B層/A層=5μm/21μm/5μmであった。
【0063】
(4)識別情報の読み取り
次に、巻取り直後のポリエステルフィルムAに対し、ポリエステルフィルムAのロール表面に付与された識別情報を、ハンディータイプのバーコードリーダーで走査し、識別情報を読み取る。読み取ったデータはコンピューターに入力された後、識別情報を管理するサーバーにて保存される。
【0064】
(5)離型層の塗布
次に、このポリエステルフィルムAのA層の表面に、離型層を塗布する。まず、離型層を塗布する前に、ポリエステルフィルムAのロール表面に付与された識別情報を、バーコードリーダーで走査し、識別情報を読み取る。読み取ったデータは、コンピューターに入力された後、サーバーにて保管される。データ読み取り後のポリエステルフィルムAのA層の表面に、架橋プライマー層(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、商品名:BY24-846)を固形分1質量%に調整した塗布液を塗布し、乾燥させる。具体的には、乾燥後の塗布厚さが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化させた。その後1時間以内に付加反応型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、商品名:“LTC”(登録商標)750A)100質量部、白金触媒(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、商品名:SRX212)2質量部を固形分5質量%に調整した塗布液を、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化した後に巻き取り、離型ポリエステルフィルムを得る。識別情報は離型ポリエステルフィルムの非コート部に残るため識別可能である。
【0065】
(6)離型ポリエステルフィルムのスリット
次に、この離型ポリエステルフィルムをスリットする。離型層をスリットする前に、離型コートしたフィルムのロール表面に付与された識別情報を、バーコードリーダーで走査し、識別情報を読み取る。スリットは450mm幅に断裁する。端部はトリミングせず6000m長で巻取る。識別情報は離型ポリエステルフィルムのいずれかの端に残っているため識別可能である。
【0066】
(7)グリーンシートの成形塗布
次に、グリーンシートを成形塗布する前に、離型ポリエステルフィルムのロール表面に付与された識別情報を、バーコードリーダーで走査し、識別情報を読み取る。読み取ったデータはコンピューターに入力された後、サーバーにて保管される。離型ポリエステルフィルムのロール表面にチタン酸バリウム(富士チタン工業(株)製、商品名:HPBT-1)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学(株)製、商品名:BL-1)10質量部、フタル酸ジブチル5質量部、トルエン-エタノール(質量比30:30)60質量部に、数平均粒径2mmのガラスビーズを加え、ジェットミルにて20時間混合・分散させた後、濾過してペースト状のセラミックスラリーを調整した。得られたセラミックスラリーを、離型ポリエステルフィルムの上に乾燥後の厚みが0.5μmとなるように、ダイコーターにて塗布し乾燥させた。スラリーの塗布は400mm幅にて実施したため、識別情報は離型ポリエステルフィルムのいずれかの端に残っており識別可能である。
【0067】
(8)内部電極の塗布とグリーンシートの積層
Ni粒子44.6質量部と、テルピネオール52質量部と、エチルセルロース3質量部と、ベンゾトリアゾール0.4質量部とを、混練し、スラリー化して内部電極層用塗料を得る。内部電極層用塗料を、グリーンシートの上に、スクリーン印刷法によって所定パターンで塗布し、内部電極パターンを有するセラミックグリーンシートを得た。電極の印刷は、グリーンシート上の幅にのみ付与されるものであり、識別情報は離型ポリエステルフィルムのいずれかの端に残っており識別可能である。
【0068】
(9)グリーンシート積層・剥離
上記の方法により積層したグリーンシートを、積層、剥離し巻き取った。なお、剥離後の離型フィルムには無機物層の残りが多少残っていた。識別情報は離型ポリエステルフィルムのいずれかの端に残っており識別可能である。
【0069】
(10)剥離後離型ポリエステルフィルムの洗浄
次に、グリーンシート剥離後の離型ポリエステルフィルムの洗浄する前に、離型ポリエステルフィルムのロール表面に付与された識別情報を、バーコードリーダーで走査し、識別情報を読み取る。読み取ったデータはコンピューターに入力された後、サーバーにて保管される。剥離後の離型ポリエステルフィルムをグラインダーにて粉砕してフレークにする。フレークはアルカリ水溶液にて攪拌洗浄し、無機物と分離させる。
【0070】
(11)フレークの再チップ化
フレークを真空乾燥させ二軸押出機に投入し、溶融、押出することで、リサイクルチップを得た。これを回収原料Bとする。
【0071】
(12)リサイクルポリエステルフィルムの製造
A層、B層それぞれの層の押出機に供給するポリエステルペレットは、以下の比率にて調合した。なお以下に記載する比率は、各々の層を構成するポリエステルペレットに対する質量比(単位:質量%)である。
A層
ポリエステルA:70.0
ポリエステルB:30.0
B層
ポリエステルA:70.0
回収原料B :30.0
【0072】
以降はポリエステルフィルムAと同様に、リサイクルポリエステルフィルムを製造した。
【0073】
(実施例2)
実施例1の処理に加えて、(6)離型ポリエステルフィルムのスリットの工程において、スリット工程の、切断する前のパスライン上にて、レーザー彫刻方式にて、2次元バーコードを、離型層を塗布した面の反対の表面に付与した。レーザー彫刻に際しては、ベタ印刷(すべてのピクセルを印刷する)を行い、その際のベタ印刷面と非ベタ印刷面との算術平均粗さSRaの差をZygo社製の測定装置で計測したところ、その数値は2000nmであった。ベタ印刷面と非ベタ印刷面とのヘイズの差をJIS K7105(1981年)に準じ、ヘイズメータ(スガ試験機製、商品名:HGM-2DP(C光源用))を用いて計測したところ、その数値は50%であった。なお、本印刷する際の2次元バーコードを、フィルム上に付与する位置は、それぞれの切断点にて20mm幅、150mmピッチで付与する。離型ポリエステルフィルムの機能上影響を及ぼさないことを、その後の(7)グリーンシートの成形塗布にて確認できた。この際、識別情報は離型ポリエステルフィルムのスリット時に耳を切断した場合でも、識別情報を残すことができる。
【0074】
(実施例3)
実施例1において、(3)ポリエステルフィルムAの製造工程にて、中間製品を切断する前のパスライン上にて、インクジェット方式にて、2次元バーコードをフィルム上に付与する代わりに、中間製品を繰り出すパスライン上にてインクジェット方式で不可視インクを、中間製品のフィルムの幅方向に20点、長手方向で150mmピッチにて、離型コートする反対面に付与した。実施例1と同じく、スリット後の離型ポリエステルフィルムは、幅が450mm、長さが6000mである。
【0075】
該離型ポリエステルフィルム上にグリーンシートの成形塗布、内部電極の塗布とグリーンシートの積層、グリーンシート積層・剥離を行ったあとの離型フィルムを洗浄する際に、離型フィルムをグラインダーにて粉砕してフレークにした後でのフレークにおいても、識別情報が判読可能なものがあるため、得られたフレークから任意の群を抽出して識別情報をスキャンすることや、全数スキャンすることで、フレークの識別までできるようになる。
【0076】
この際、スキャンした識別情報は、ピアツーピア接続した情報処理端末により当該情報が取得される。ポリエステルフィルムの製造拠点に設置された情報処理端末には識別情報が蓄積される。そこで、リサイクルチップの加工を行うリサイクル加工拠点から到着した識別情報を解読すると、このチップが手元に届く前に、例えば過去3回の循環サイクルを経ている等が判る。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のポリエステル樹脂原料チップや、ポリエステルフィルムは、特に水平リサイクルに適したポリエステルフィルム離型用途に、好適に用いられる。
【符号の説明】
【0078】
1 ポリエステルフィルム
2 離型用ポリエステルフィルム
3 剥離済みの離型用ポリエステルフィルム
4 リサイクル原料
5 積層体
6 コーティング層
7 無機物層
8 ポリエステルフィルムの一部
9 ポリエステル樹脂原料
10 リサイクルポリエステルフィルム
11 フィルムロール
12、15~18 識別情報
13 リサイクルフィルム中間製品
14 インクジェット方式印刷装置
19、20 フィルム管理情報
21 フィルム巻取りコア
22 製品ラベル
23 梱包用ポリチューブ
24 梱包用テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10