(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026431
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ドライフィルム積層体、スクリーンマスク、及びスクリーンマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/095 20060101AFI20250214BHJP
B41N 1/24 20060101ALI20250214BHJP
B41C 1/055 20060101ALI20250214BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20250214BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20250214BHJP
G03F 7/016 20060101ALI20250214BHJP
G03F 7/021 20060101ALI20250214BHJP
G03F 7/028 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G03F7/095
B41N1/24
B41C1/055 511
G03F7/004 512
G03F7/027
G03F7/016
G03F7/021 511
G03F7/028
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024133218
(22)【出願日】2024-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2023130102
(32)【優先日】2023-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000176534
【氏名又は名称】ミタニマイクロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 華奈
(72)【発明者】
【氏名】飯島 芙早子
(72)【発明者】
【氏名】青木 希仁
(72)【発明者】
【氏名】旭 晃一
【テーマコード(参考)】
2H084
2H114
2H225
【Fターム(参考)】
2H084AA30
2H084AA32
2H084CC10
2H114AB09
2H114AB11
2H114AB15
2H114BA02
2H114DA34
2H114DA46
2H114DA51
2H114DA73
2H114EA02
2H225AM53P
2H225CA08
2H225CB02
2H225CB05
2H225CC01
(57)【要約】
【課題】取り扱い性を向上できるドライフィルム積層体、スクリーンマスク、及びスクリーンマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】一形態にかかるドライフィルム積層体は、ベースフィルム部材と、前記ベースフィルムの一方側に積層されるカバー乳剤層と、前記カバー乳剤層の一方側に積層されるベース乳剤層と、前記ベース乳剤層の一方側に積層されるカバーフィルム部材と、を備え、前記カバー乳剤層は少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂、光開始剤およびシリコーン化合物を含む乳剤で構成され、前記ベース乳剤層は、少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂および光開始剤を含む乳剤で構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム部材と、
前記ベースフィルム部材の一方側に積層されるカバー乳剤層と、
前記カバー乳剤層の一方側に積層されるベース乳剤層と、
前記ベース乳剤層の一方側に積層されるカバーフィルム部材と、
を備え、
前記カバー乳剤層は少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂、光開始剤およびシリコーン化合物を含む乳剤で構成され、
前記ベース乳剤層は、少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂および光開始剤を含む乳剤で構成される、ドライフィルム積層体。
【請求項2】
前記カバー乳剤層のシリコーン化合物含有率が前記ベース乳剤層のシリコーン化合物含有率よりも多い、請求項1記載のドライフィルム積層体。
【請求項3】
前記カバー乳剤層のシリコーン化合物含有率が重量比で0.1~10%である請求項2記載のドライフィルム積層体。
【請求項4】
前記カバー乳剤層と前記ベース乳剤層の境目においてシリコーン化合物の含有率が連続的に変化することを特徴とする請求項2記載のドライフィルム積層体。
【請求項5】
前記カバー乳剤層はフッ素化合物を含む、請求項1に記載のドライフィルム積層体。
【請求項6】
前記カバー乳剤層におけるシリコーン化合物の重量比<前記フッ素化合物の重量比である請求項5記載のドライフィルム積層体。
【請求項7】
前記カバー乳剤層のジアゾニウム化合物の量は、前記ベース乳剤層のジアゾニウム化合物の量よりも、多い、請求項1記載のドライフィルム積層体。
【請求項8】
塗布材を透過可能な孔を有するサポート材と、
前記サポート材に設けられ、塗布材を保持可能なパターン開口が形成されたマスク膜と、を備え、
前記マスク膜は、前記サポート材に貼付けられ、ベース乳剤層と、前記ベース乳剤層の一方側に積層されるカバー乳剤層と、を備えるドライフィルムレジストで構成され、
前記カバー乳剤層は少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂、光開始剤およびシリコーン化合物を含む乳剤であり、前記ベース乳剤層は、少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂および光開始剤を含む乳剤である、スクリーンマスク。
【請求項9】
ベース乳剤層と、前記ベース乳剤層に積層されるカバー乳剤層と、を備え、前記カバー乳剤層は少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂、光開始剤およびシリコーン化合物を含む乳剤であり、前記ベース乳剤層は、少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂および光開始剤を含む乳剤であるドライフィルムレジストの、前記ベース乳剤層側の表面を、塗布材を透過可能な孔を有するサポート材に貼付けるDFR貼付処理と、
前記ドライフィルムレジストに、前記カバー乳剤層側から、所定の露光パターンで光を照射する露光する露光処理と、
を備え、
前記ドライフィルムレジストに前記露光のパターンに応じた開口を形成する、スクリーンマスクの製造方法。
【請求項10】
前記DFR貼付処理において、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの一方側に積層されるカバー乳剤層と、前記カバー乳剤層の一方側に積層されるベース乳剤層と、前記ベース乳剤層の一方側に積層されるカバーフィルムと、を備えるドライフィルムレジストの、前記カバーフィルムを剥離し、前記ベース乳剤層の表面を前記サポート材に貼付けた後、前記ベースフィルムを剥離する、請求項9に記載のスクリーンマスクの製造方法。
【請求項11】
前記露光処理において、一方側の面に、フォトマスクを配置し、前記一方側から光を照射する、請求項9に記載のスクリーンマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライフィルム積層体、スクリーンマスク、及びスクリーンマスクの製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷手法の一つであるスクリーン印刷は、基材であるメッシュ上に樹脂組成物で形成された所定のパターン開口が形成されたスクリーンマスクを用い、被印刷物に任意の印刷体を形成する方法である。このスクリーン印刷法は、例えば配線、電極、蛍光材料の印刷等、種々の印刷に用いられ、電子部品等を含む様々な分野で利用されている。
【0003】
例えば、スクリーンマスクは、塗布材を透過可能な孔を有するメッシュと、メッシュに設けられパターン開口を有するマスク膜と、を備える。マスク膜に形成されるパターン開口は、例えば印刷パターンに対応した形状であり、所定の幅を有している。例えばマスク膜を形成する乳剤をメッシュに塗布した後に、露光処理によってパターン開口を形成している。このようなスクリーンマスクにおいて、メッシュにマスク膜を形成する方法として、バケットといわれる塗布治具を用いて一層ずつ感光性樹脂を重ね塗りし、所定の厚さとなるまで塗布を繰り返す方法があるが、厚さ調整のために時間がかかり、厚さにムラができやすい。また、露光時にはフォトマスクを用いる場合があるが、露光時に配置したフォトマスクや印刷時の媒体がマスク膜の表面に密着してはがれにくくなる場合があり、取り扱い性を向上することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなスクリーンマスクにおいて、取り扱い性を向上できる、ドライフィルム積層体、スクリーンマスク、及びスクリーンマスクの製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一形態にかかるドライフィルム積層体は、ベースフィルム部材と、前記ベースフィルムの一方側に積層されるカバー乳剤層と、前記カバー乳剤層の一方側に積層されるベース乳剤層と、前記ベース乳剤層の一方側に積層されるカバーフィルム部材と、を備え、前記カバー乳剤層は少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂、光開始剤およびシリコーン化合物を含む乳剤で構成され、前記ベース乳剤層は、少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂および光開始剤を含む乳剤で構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、取り扱い性を向上できる、ドライフィルム積層体、スクリーンマスク、及びスクリーンマスクの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1及び第2実施形態にかかるスクリーン印刷装置の平面図。
【
図3】同実施形態にかかるスクリーンマスクのDFR積層部材の構成を示す説明図。
【
図4】同実施形態にかかるDFR積層部材の深さ方向のシリコーン濃度変化を示す説明図。
【
図5】同実施形態にかかるDFR積層部材の製造方法を示す説明図。
【
図6】同実施形態にかかるDFR積層部材の製造方法を示す説明図。
【
図7】同実施形態にかかるスクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
【
図8】同実施形態にかかるスクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
【
図9】同実施形態にかかるDFR積層部材の塗工方法を示す説明図。
【
図10】第2実施形態にかかるマスク膜のジアゾ化合物の含有量とベース層の厚さの対応を示す説明図。
【
図11】第2実施形態の実施例1及び実施例2にかかるマスク膜の説明図。
【
図12】実施例1及び実施例2にかかるマスク膜の構成を示す説明図。
【
図13】第2実施形態にかかるマスク膜におけるPVAの含有量及びモノマーの含有量を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態にかかるスクリーン印刷装置10及びスクリーンマスク20について
図1乃至
図5を参照して説明する。
図1は本実施形態に係るスクリーン印刷装置10を示す平面図であり、
図2は断面図である。
図3はDFR積層部材230Aの構成を示す説明図であり、
図4は実施形態にかかるDFR積層部材の深さ方向のシリコーン濃度変化を示す説明図である。
図5及び
図6はDFR積層部材230Aの製造方法を示す説明図である。
図7及び
図8はスクリーンマスクの製造方法を示す説明図である。なお、各図では説明のため、適宜構成を拡大、縮小、省略して示している。図中矢印X,Y,Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示している。一例として、図中Z軸が厚さ方向及び深さ方向に沿う姿勢として説明する。
【0010】
図1に示すように、スクリーン印刷装置10は、スクリーンマスク20と、スクリーンマスク20の印刷面側とは反対の裏面(他方の面)に当接した状態で移動可能に構成されたスキージ13と、スキージ13を移動させる移動部と、スクリーンマスク20を印刷媒体Bに対向して支持する支持部と、を備える。
【0011】
スクリーン印刷装置10は、印刷媒体の表面に、各種印刷材料を所定のパターンで形成する。例えばスクリーン印刷装置10は、チップ部品(コンデンサー、チップ抵抗、インダクター、サーミスター等)、タッチパネル、液晶基板(Liquid crystal display, LCD)シール、LTCC(Low Temperature Co-fired ceramics)基板、太陽電池用電極、その他の電子部品等の製造に用いられる。
【0012】
図1乃至
図3に示すように、スクリーンマスク20は、フレーム21と、フレーム21に張設された基材(サポート材)であるメッシュ22と、メッシュ22に形成されたマスク膜23と、を備える。スクリーンマスク20において、印刷を行う際に支持体12に支持される印刷媒体Bの表面に対向する側を表面とし、その反対側の、塗布材Peが供給される側を裏面とする。
【0013】
フレーム21は、互いに平行な2対の縁部を有し、例えば所望のサイズの方形の開口を備える枠状に構成される。フレーム21はメッシュ22の外周縁を支持し、開口にはメッシュ22が張設される。本実施形態では一例として、開口のY方向の寸法が275mm、X方向の寸法が275mmのフレーム21を用いる。
【0014】
またフレーム21は、所定量の塗布材をマスク膜23の裏面側に保持する枠としても機能する。フレーム21とメッシュ22は、例えば合成ゴム系やシアノアクリレート系の接着剤により接合部で接合されている。
【0015】
メッシュ22は、経糸22aと緯糸22bとが編まれて形成された織物であり、塗布材を透過可能に開口した孔部22cを多数有している。経糸22aと緯糸22bとは、例えばステンレス等の金属、あるいはポリエステル等の樹脂で構成されたワイヤ、または繊維である。経糸22aと緯糸22bは、それぞれ例えばスキージ13の移動方向(第1方向)に対して、斜めに延びている。
【0016】
メッシュ22に、所定のパターン開口24を有するマスク膜23が形成される。すなわち、メッシュ22は、フレーム21の開口部分にマスク膜23を保持する。
【0017】
マスク膜23は、積層構造であるドライフィルム積層体としてのドライフィルムレジスト230を有する。
【0018】
具体的には、マスク膜23は、メッシュ22に塗布されるベースコート層231と、ベースコート層231上に貼付けられるドライフィルムレジスト230と、を備える。
【0019】
ベースコート層231は、少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂、光開始剤で構成される。ベースコート層231は、ドライフィルムレジスト230を貼付ける前に、液状のベースコート材231aをメッシュ22に塗布し、ベースコート材231aが乾燥する前にドライフィルムレジスト230を貼付け、乾燥させることで、メッシュ22に密着する所定の厚さの樹脂層である。
【0020】
ドライフィルムレジスト230は、複数の樹脂層を備える積層体であり、複数の液体状の乳剤を、乾燥することでシート状に形成される。ドライフィルムレジスト230は、ベース乳剤層233、とカバー乳剤層234との2層構造で構成される。一例として、ドライフィルムレジスト230は、メッシュ22に貼付けられる前は、ベースフィルム232(ベースフィルム部材)と、カバー乳剤層234、ベース乳剤層233と、カバーフィルム235(カバーフィルム部材)とが、厚さ方向に順番に積層されて構成されたDFR(ドライフィルムレジスト)積層部材230Aとして構成される。DFR積層部材230Aが、メッシュ22へ貼付けられる直前にカバーフィルム235が剥がされ、貼付け後にベースフィルム232が剥がされることで、2層構造のドライフィルムレジスト230がメッシュ22上に設けられる。
【0021】
ベースフィルム232は例えばPETでシート状に構成されるフィルム部材である。例えばベースフィルム232の厚さは50μm~125μmである。
【0022】
カバーフィルム235は、例えばPEによりシート状に形成されるフィルム部材である。カバーフィルム235の厚さは、例えば10~30μmである。
【0023】
ベース乳剤層233は少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂および光開始剤を含む乳剤で形成される樹脂層である。
【0024】
カバー乳剤層234は少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂、光開始剤及びシリコーン化合物(シリコーン)を含む乳剤で形成される樹脂層である。
【0025】
紫外線硬化樹脂として、例えば日本化薬製KAYARADシリーズ、三菱ケミカル製UVシリーズが挙げられる。
【0026】
光開始剤として、例えば日本化薬製KAYACUREシリーズ、日本化学工業所製Nikkacureシリーズ、ADEKA製アデカアークルズシリーズが挙げられる。
【0027】
カバー乳剤層234のシリコーン化合物含有率(重量%)はベース乳剤層233のシリコーン化合物含有率よりも高い。また、カバー乳剤層234のシリコーン化合物含有率が重量比で0.1~10%である。
【0028】
ドライフィルムレジスト230において、ベース乳剤層233とカバー乳剤層234は、境目においてシリコーン化合物の含有率が連続的に変化する。すなわち、カバー乳剤層234の表面からの深さ方向の位置が離れるにしたがって、シリコーン化合物含有率が漸次的に少なくなり、変曲点を有するカーブを描く。
【0029】
図4はDFR積層部材の深さ方向のシリコーン濃度変化を示すグラフであり、1層目と2層目の境界部分のシリコーン濃度が連続的に変化することを示す。ここでいう濃度とは、形成した膜の固形分の重量に対して含まれるシリコーン成分の重量である。縦軸はシリコーンの濃度(%)、横軸は、ドライフィルムレジスト230の、カバー乳剤層234側の表面からの、厚さ方向(深さ方向)における位置(μm)を示す。
【0030】
マスク膜23の積層方向の寸法である厚さ(厚み)は例えば10μm~100μmに構成されている。例えばマスク膜23において、カバー乳剤層234の厚さがベース乳剤層233の厚さよりも小さい。一例としてカバー乳剤層234の厚さはベース乳剤層233の厚さの1%~40%の厚さに構成される。例えば本実施形態において、メイン乳剤であるベース乳剤層233は厚さが3μm以上100μm以下、カバーコート層であるカバー乳剤層234の厚さは0.5μm以上5μm以下に構成される。
【0031】
例えばDFR積層部材230Aは、乳剤層233,234の厚さが最小の場合、ベースフィルム232が75μmと、ベース乳剤層233が3μm、カバー乳剤層234が0.5μmと、カバーフィルム235が25μmに構成され、乳剤層233,234の厚さが最大の場合、ベースフィルム232が75μmと、ベース乳剤層233が100μm、カバー乳剤層234が5μmと、カバーフィルム235が25μmに構成される。
【0032】
マスク膜23は、フレーム21の開口部分に配されるメッシュ22に形成される。マスク膜23には、露光によって、印刷用の所定のパターン開口24が形成されている。
【0033】
また、マスク膜23は、貫通孔であるパターン開口24の他に、凹部などの段差を有していてもよい。
【0034】
なお、パターン開口24の最小開口幅、すなわち、パターン開口24の最も狭い部分における開口の幅寸法は、30μm以下である。ここでは、一例として、マスク膜23の表面、すなわち印刷媒体Bに対向する表面における寸法を基準とした。
【0035】
パターン開口24は、印刷パターンに対応する形状のパターン孔であってマスク膜23を厚さ方向(深さ方向)に貫通する。例えばパターン開口24はスリットなどを組み合わせて構成される。パターン開口24は塗布材を保持可能に構成される。印刷パターンの形状は適宜設定可能である。一例として、本実施形態においては複数の同じパターンユニットがマトリクス状に配されたパターン形状を有する。
【0036】
マスク膜23は、パターン開口24において感光性樹脂が存在せず、よってパターン開口24がメッシュ22の孔部を通過して塗布材が裏面から表面へと透過可能な印刷部を構成する。マスク膜23のパターン開口24以外の、メッシュ22の孔部が感光性樹脂で塞がれた部位は、塗布材としてのインクを透過しない非印刷部を構成する。
【0037】
マスク膜23が形成されたメッシュ22は、例えば
図2で上側となる裏面側に配置されたスキージ13による押圧力によって撓み変形し、押圧力が解除されることで復元するように、弾性変形可能に構成されている。マスク膜23のパターン開口24に塗布材が保持された状態で、メッシュ22及びマスク膜23の弾性変形によりマスク膜23が印刷媒体Bに接離することで、塗布材がパターン開口24から、マスク膜23の印刷面側に対向配置された印刷媒体Bに塗布材Peが転写される。
【0038】
スキージ13は例えばウレタンゴム・シリコンゴム・合成ゴム・金属・プラスチック等の材料から、例えば薄い板状に構成される。例えば、スキージ13は先端の厚さが低減するように面取りされている。スキージ13はフレーム21に対して移動可能に構成されている。例えばスキージ13は移動方向と直交する方向においてマスク膜23の領域の全長にわたる長さを有する。スキージ13の先端部分がスクリーンマスク20の裏面に当接し、表側に押しつけられた状態で、
図1中矢印に沿う移動方向に移動することで、マスク膜23の全面を押圧し、塗布材が予め充填されたパターン開口24から塗布材Peを表側に押し出す。
【0039】
次に、本実施形態にかかるスクリーンマスク20の製造方法について
図5乃至
図8を参照して説明する。
図5、
図6はDFR積層部材230Aの製造方法を示す説明図である。
図7及び
図8はスクリーンマスク20の製造方法を示す説明図である。
【0040】
まず、DFR積層部材230Aの製造方法を説明する。DFR積層部材230Aの製造工程は、第1の塗布処理ST11、第1の乾燥処理ST12、第1の巻き取り処理ST13、第2の塗布処理ST14、第2の乾燥処理ST15、第2の巻き取り処理ST16、を有する。
【0041】
まず、ST11に先だって、第1の乳剤としてのカバーコート剤234aを作製する。具体的にはポリビニルアルコール、ジアゾ化合物、紫外線硬化モノマー、光重合開始剤、シリコーン化合物を含んだ乳剤を、固形分比15%、粘度600mPa・sに調合し、カバーコート剤を作製する。固形分中のシリコーン化合物は0.1~10wt%(好ましくは0.3~1.0wt%)となるように液体乳剤を調整する。
【0042】
ST11において、カバーコート剤234aを、ベースフィルム232に塗布する第1の塗布処理を行う。塗布方法は、オフセットグラビア、グラビア、スロットダイ等の各種の方法を用いることができるが、一例としてグラビア法を用いる。
【0043】
例えば
図5に示すように、予めロール状に巻かれたシート材であるベースフィルム232を巻きだして所定の搬送路に沿って搬送しながら、第1タンク73に収容された液状のカバーコート材234aを、第1塗布ヘッド74により、ベースフィルム232に供給し、こすりつけ、塗布する。このとき、乾燥後の厚さ0.5~5.0μm、好ましくは1.0~2.0μmとなるように厚さを設定する。
ST12において、カバーコート剤234aを乾燥させる。具体的には、
図5に示すように、カバーコート234aが塗布されたベースフィルム232を、第1乾燥炉72内に送り、所定時間をかけて乾燥炉72を通過させる。
【0044】
このとき、塗工速度及び乾燥エリアの長さL1によって乾燥の時間を調整することができる。例えば10mの乾燥エリアで塗工速度を5m/分に設定し、120秒程度、乾燥させることができる。
【0045】
ST12の乾燥処理によって、液状のカバーコート剤234aが硬化し、ベースフィルム232上にカバー乳剤層234が形成される。
【0046】
そしてST13として、乾燥後のベースフィルム232上にカバー乳剤層234が形成された積層体234Aをロール状に巻き取る。
【0047】
次に、
図6を参照してST14~ST16の工程を説明する。
【0048】
まず、ST14に先だって、2層目に塗布する第2の乳剤としてのベース剤233aを作製する。例えば、ポリビニルアルコール、ジアゾ化合物、紫外線硬化モノマー、光重合開始剤を含んだ乳剤を、固形分比25~30%、粘度1350mPa・sに調合する。
【0049】
ST14において、ベース剤233aを、カバー乳剤層234上に塗布する第2の塗布処理を行う。塗布方法は、グラビア、スロットダイ、ナイフコーター、コンマコーター、ロールコーター等の各種の方法を用いることができる。一例としてスロットダイにより塗布する。
【0050】
例えば
図6に示すように、ロール状に巻き取られたカバー乳剤層234及びベースフィルム232の積層体を巻きだして、所定の搬送路に沿って搬送しながら、第2のタンク76に収容された液状のベース材233aを、スロットダイヘッド77により、カバー乳剤層234上に供給し、塗布する。このとき、乾燥後の厚さが3~100μm、好ましくは5~75μmとなるように厚さを設定する。
【0051】
続いてST15として、ベース剤233aを乾燥させる。具体的には、
図6に示すように、ベース剤233aが塗布されたベースフィルム232を、乾燥炉78内に送り、所定時間をかけて乾燥炉78を通過させる。
【0052】
このとき、塗工速度や長さL2によって乾燥の時間を調整することができる。例えば10mの乾燥エリアを2m/分に設定し、300秒程度、乾燥させることができる。
【0053】
ST15の乾燥処理によって、液状のベース剤233aが硬化し、ベースフィルム232上にカバー乳剤層234及びベース層233が積層された積層体を構成する。
【0054】
つづいて、ST16として、ベースフィルム232上にカバー乳剤層234及びベース層233が積層された積層体を、カバーフィルム235と重ねてロール状に巻き取る。このとき、カバーフィルム235がベース乳剤層233に対向して重なるよう巻き込んでロール状にする。そして、所定の長さ毎にカットすることで、ロール状に巻かれたDFR積層部材230Aが完成する。
【0055】
次に
図7及び
図8を参照してスクリーンマスク20の製造方法を説明する。
【0056】
本実施形態にかかるスクリーンマスク20の製造方法は、メッシュ22にベースコート層を形成するベース成膜工程ST21と、ベースコート層上にドライフィルムレジスト230を貼付ける貼付工程ST22(DFR貼付処理)と、ドライフィルムレジスト230を乾燥させる乾燥工程ST23と、露光処理ST24、現像処理ST25と、を備える。
【0057】
まずST21において、メッシュ22にベースコート層231を形成する。具体的には、バケットを用いて、一端側から他端側に、ベースコート材231aを塗布する。
【0058】
続いて、ST22として、液状のベースコート材231aが形成されたメッシュ22に、ドライフィルムレジスト230を貼付ける。具体的には予め準備したDFR積層部材230Aの、カバーフィルム235を剥離して、露出したベース乳剤層233側がベースコート層231a上に対向配置される向きで、貼付ける。
【0059】
貼付け後、ベースフィルム232を剥離することで、2層構造のドライフィルムレジスト230がメッシュ22上に形成される。
【0060】
続いて、ST23として、乾燥庫79に配置し、乾燥させる。以上により、ドライフィルムレジスト230及びベースコート層231が固化され、マスク膜23が形成される。
【0061】
続いて、ST24として、露光処理を行う。露光処理は、印刷面側から光を照射する露光処理であり、所定のパターンで露光することにより、露光パターンに対応する領域を硬化させる。露光処理として、ドライフィルムレジスト230上に、所定のパターンを有するフォトマスクMを重ねて配置し、印刷面側から光を照射する露光処理を行う。具体的には、所定の露光パターン領域に、ドライフィルムの表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照射ヘッドに向けて配置し、照射ヘッドにより光を照射させ、ドライフィルムレジスト230の表面を照らす露光処理を行う。
【0062】
例えばST24において、所定の露光パターン領域において、DFRの表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照明に向けて配置し、照明により光を照射させ、乳剤の表面を照らす露光処理を行う。例えば、DFRの表面のうち露光処理によって露光される部位は紫外線によって硬化する硬化部Paとなり、露光されない部位は乳剤が硬化しない未硬化部Pbとなり、第1未硬化部Pb(非露光部位)が、後の工程で除去されることで開口24を形成する除去対象部を構成する。すなわち、本実施形態において、パターニング工程では、パターン開口24となる部位を未硬化部位Pbとし、その他の領域を硬化部Paとする。なお、乳剤によっては、反対に、露光部を未硬化、非露光部を硬化部とし、露光した部位がエッチングにより除去される部位となることもある。
【0063】
続いて、現像処理ST25として、水や溶剤により、マスク膜23の少なくとも片側を洗い流す。この処理によって、乳剤の未硬化部Pbが洗い流され、厚さ方向において表面側から裏面側まで貫通する開口24が形成される。
【0064】
次に、本実施形態にかかるスクリーン印刷装置10を用いたスクリーン印刷方法により印刷物を製造する方法について、
図1及び
図2を参照して説明する。まず、スクリーンマスク20の表面側を印刷媒体Bの表面に対向させて配置する。例えばこのとき、位置決めピン等の位置決め部材により、スクリーンマスク20を位置決めする。
【0065】
そして、高粘度のペースト状の塗布材Peをスクリーンマスク20の裏面側、すなわち、印刷媒体Bとは反対側の面から供給し、塗布材をパターン開口24内に充填させる。
【0066】
次に、スクリーンマスク20の裏面、すなわち印刷面側とは反対側の面に、スキージ13を配置する。このとき、例えばスキージ13を、印刷媒体Bの表側の面に対して所定の角度で傾斜させて配置する。そして、スキージ13をメッシュ22及びマスク膜23の裏面において、所定の印圧で印刷媒体B側に向けて押しつけながら、所定の速度で移動させる。マスク膜23の裏面全面にわたる領域で、スキージ13がマスク膜23を押圧する。スキージ13の押圧により、マスク膜23は押圧される部分が表側に変位するように変形し、印刷媒体Bに当接する。スキージ13の通過により押圧された塗布材Peがパターン開口24から印刷媒体B側に押し出される。
【0067】
スキージ13が通過した後、マスク膜23及びメッシュ22が復元するように変形して印刷媒体Bから離れるとともに、一部の塗布材Peが印刷媒体B上に転写されて残ることで、印刷媒体B上にパターン印刷がなされ、印刷物が完成する。このとき、塗布材Peは裏側の一部がマスク膜23側に残っていてもよい。なお塗布材Peは、例えば金属材や樹脂材などを含む各種材料であり、印刷対象の種類、例えば、電子部品、ディスプレイ、等によって、多様な材料が用いられる。
【0068】
以上のように構成されたスクリーンマスク20は、メイン乳剤であるベース乳剤層233の上にカバーコート層であるカバー乳剤層234が形成されており、カバー乳剤層234に含まれているシリコーン化合物が離型性を有している。このため、露光後スクリーンマスク20からフォトマスクMをはがしやすく、また印刷時も基板などの印刷媒体Bとの密着が防止でき、印刷にじみを低減できる。
【0069】
また、メッシュ22にドライフィルムレジスト230を貼付けることでマスク膜23を形成するため、厚さ調整が容易となる。すなわち、予め厚さが異なる複数種類の230を高精度で塗工しておき、スクリーンマスクの仕様に合わせて、ドライフィルムレジスト230の厚さを選択し、メッシュに貼り付けることにより、塗布治具(バケット)で何回も塗り返す方法と比べ、厚さが調整しやすく、時間短縮ができるとともに、異物が混入しにくい。また、メッシュ22の凹凸の影響を受けにくく、平滑性を向上できる。さらに、ドライフィルムレジスト230を用いたことによりパターンの直線性が良く、ダメージを受けにくい。このため、印刷を繰り返す場合に、パターンエッジ部が物理的に損傷することを防止できる。
【0070】
また、上記実施形態において予めフィルム部材としてベースフィルム232やカバーフィルム235を有する構成として、ベースフィルム232を有した状態でメッシュ22に貼り付け、乾燥するために、乾燥後もベースフィルム232の平滑性が維持される。したがってベースフィルム232を剥がした後の平滑性も維持され、平滑性が良好なスクリーンマスク20が製造できる。また、カバー乳剤層234にシリコーンが含まれていることで、スクリーン印刷時に印刷媒体Bとの摩擦が減少し、印刷時の耐久性が向上する。また、フォトマスクMを用いたパターン露光時には表面のべたつきを防止でき、より高精細なパターニングが可能である。さらに表面にシリコーン化合物を含有することで撥水・撥油性を有するため、溶剤などでスクリーンマスクを洗浄する際に、ダメージを与えにくく、さらに素早く乾燥できるメリットがある。
【0071】
すなわち、スクリーンマスクにおいては、表面のべたつき防止、印刷耐久性と高解像性といった異なる特性が求められ、べたつき防止、高解像性のためにはシリコーン化合物を添加すれば、多くの場合効果が得られる。しかし、シリコーンの添加は解像性を悪化させる要因になり、シリコーンの量が増え、感光性樹脂の量が減るとパターン形成時の解像度が低下する。したがって上記実施形態にかかるスクリーンマスクにおいては、スクリーン印刷面側の表面を構成する層にのみシリコーン化合物を添加することで、べたつき防止や印刷耐久性を確保したうえで、ベース乳剤部分(ベース乳剤層233)は高解像性を重視してシリコーン化合物を加えない構成の2層DFRにより、異なる特性を両立させることができる。
【0072】
[第2実施形態]
以下、第2の実施形態にかかるマスク膜23Aについて、
図1乃至
図13を参照して説明する。
【0073】
本実施形態にかかるマスク膜23Aにおいて、カバー層234はフッ素化合物を含み、カバー層234に含まれるフッ素化合物の重量比は、シリコーン化合物の重量比よりも大きい。また、カバー層234に含まれるジアゾ化合物の量は、ベース層233に含まれるジアゾ化合物の量以上であり、カバー層234の乳剤はベース層233の乳剤より軟らかい材料で構成される。また、カバー層234はPVAの量がモノマーの量より多く、一方でベース層233はPVAの量がモノマーの量より少ない。その他の構成についてはマスク膜23と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0074】
マスク膜23Aは、積層構造であるドライフィルム積層体としてのドライフィルムレジスト230を有する。
【0075】
具体的には、マスク膜23Aは、メッシュ22に塗布されるベースコート層231と、ベースコート層231上に貼付けられるドライフィルムレジスト230と、を備える。
【0076】
ベースコート層231は、少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂、光開始剤で構成される。ベースコート層231は、ドライフィルムレジスト230を貼付ける前に、液状のベースコート材231aをメッシュ22に塗布し、ベースコート材231aが乾燥する前にドライフィルムレジスト230を貼付け、乾燥させることで、メッシュ22に密着する所定の厚さの樹脂層である。
【0077】
ドライフィルムレジスト230は、複数の樹脂層を備える積層体であり、複数の液体状の乳剤を、乾燥することでシート状に形成される。ドライフィルムレジスト230は、ベース乳剤層233、とカバー乳剤層234との2層構造で構成される。一例として、ドライフィルムレジスト230は、メッシュ22に貼付けられる前は、ベースフィルム232(ベースフィルム部材)と、カバー乳剤層234、ベース乳剤層233と、カバーフィルム235(カバーフィルム部材)とが、順番に積層されて構成されたDFR(ドライフィルムレジスト)積層部材230Aとして構成される。DFR積層部材230Aが、メッシュ22へ貼付けられる直前にカバーフィルム235が剥がされ、貼付け後にベースフィルム232が剥がされることで、2層構造のドライフィルムレジスト230がメッシュ22上に設けられる。
【0078】
ベースフィルム232は例えばPETでシート状に構成されるフィルム部材である。例えばベースフィルム232の厚さは50μm~125μmである。
【0079】
カバーフィルム235は、例えばPEによりシート状に形成されるフィルム部材である。カバーフィルム235の厚さは、例えば10~30μmである。
【0080】
ベース乳剤層233は少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂および光開始剤を含む乳剤で形成される樹脂層である。例えばベース層233はフッ素化合物を含まない。
【0081】
カバー乳剤層234は少なくともポリビニルアルコール、ジアゾニウム化合物、紫外線硬化樹脂、光開始剤及びシリコーン化合物(シリコーン)を含む乳剤で形成される樹脂層である。また、カバー乳剤層234は、フッ素化合物を含む。ここで、カバー乳剤層234における、含有量は、重量%で、フッ素化合物>シリコーン化合物である。一例として、カバー乳剤層234における、含有量は、重量%で、フッ素系:シリコーン系=2:1とした。
【0082】
紫外線硬化樹脂として、例えば日本化薬製KAYARADシリーズ、三菱ケミカル製UVシリーズが挙げられる。
【0083】
光開始剤として、例えば日本化薬製KAYACUREシリーズ、日本化学工業所製Nikkacureシリーズ、ADEKA製アデカアークルズシリーズが挙げられる。
【0084】
カバー乳剤層234のシリコーン化合物含有率(重量%)はベース乳剤層233のシリコーン化合物含有率よりも高い。また、カバー乳剤層234のシリコーン化合物含有率が重量比で0.1~10%である。
【0085】
ドライフィルムレジスト230において、ベース乳剤層233とカバー乳剤層234は、境目においてシリコーン化合物の含有率が連続的に変化する。すなわち、カバー乳剤層234の表面からの深さ方向の位置が離れるにしたがって、シリコーン化合物含有率が漸次的に少なくなり、変曲点を有するカーブを描く。
【0086】
マスク膜23Aの積層方向の寸法である厚さは例えば10μm~100μmに構成されている。例えばマスク膜23Aにおいて、カバー乳剤層234の厚さがベース乳剤層233の厚さよりも小さい。一例としてカバー乳剤層234の厚さはベース乳剤層233の厚さの1%~40%の厚さに構成される。例えば本実施形態において、メイン乳剤であるベース乳剤層233は厚さが3μm以上100μm以下、カバーコート層であるカバー乳剤層234の厚さは0.5μm以上5μm以下に構成される。
【0087】
例えばDFR積層部材230Aは、乳剤層233、234の厚さが最小の場合、ベースフィルム232が75μmと、ベース乳剤層233が3μm、カバー乳剤層234が0.5μmと、カバーフィルム235が25μmに構成され、乳剤層233、234の厚さが最大の場合、ベースフィルム232が75μmと、ベース乳剤層233が100μm、カバー乳剤層234が5μmと、カバーフィルム235が25μmに構成される。
【0088】
本実施形態において、マスク膜23Aは、重量%で、カバー層234ジアゾニウム化合物の含有量≧ベース層233のジアゾニウム化合物の含有量であることが好ましい。
図10は、本実施形態にかかるマスク膜23Aについて、ジアゾニウム化合物の含有量が異なる2つの実施例1及び実施例2について、ジアゾ化合物の含有量とベース層233の厚さの対応を示す説明図である。
【0089】
実施例1は、ベース層の厚さが20μmの場合で、ジアゾニウム化合物の含有量は3wt%とした。また、実施例1において、カバー層は厚さが1.5μmで、ジアゾニウム化合物の含有量は4wt%とした。
実施例2はベース層の厚さが40μmの場合であり、ジアゾニウム化合物の含有量は2wt%である。また、実施例2において、カバー層は厚さが1.5μmで、ジアゾニウム化合物の含有量は4wt%とした。
【0090】
なお、ジアゾニウム化合物の量と乳剤の硬化の関係として、乳厚が厚い場合、ジアゾニウム化合物は少ない方が、奥の方が硬化しやすい。例えば、ジアゾニウム化合物の含有率が多い場合、露光の光源から遠い、奥にあるジアゾニウム化合物に光を受け取れないため、奥側の乳剤が固まり難くなる。一方で、ジアゾニウム化合物の含有率が少ない場合、露光の奥側にあるジアゾニウム化合物も光を受け取れるため、乳剤全体が硬化しやすい。
【0091】
ここで、
図11に、マスク膜23Aを2層とした時のジアゾの固まり方をグラフで示す。
図11のグラフにおいて、横軸は、厚さ方向の寸法であり、縦軸は硬化度を示す。
図11において、カバー層234のジアゾ含有率を4wt%としてベース層233のジアゾの含有率を3wt%とした実施例1と、カバー層234のジアゾ含有率を4wt%としてベース層233のジアゾの含有率を2wt%とした実施例2について、硬化度を比較したグラフである。
図11によれば、ベース層233の乳剤が厚い場合にジアゾニウムを減らすことで、奥まで乳剤が固まりやすくなることが分かる。
【0092】
なお、カバー層234については、厚さと、ジアゾニウム化合物の量の関係として、1~2μmの厚さの場合、2.5~4.5wt%、1μm以下の厚さでは3.5~5.5wt%が好ましい。1.5μmで4%とした。
【0093】
図12は実施例1及び実施例2について、カバー層234及びベース層233の液体乳剤を乾燥(DFRの状態)させた状態におけるwt%を示す。
【0094】
なお、カバー層234はベース層233より薄いので、しっかり固める必要があり、ジアゾを4wt%にしている。一方、ベース層233は厚さに応じて、ジアゾニウム化合物の含有量を、3wt%あるいは2wt%とし、厚さに対応する含有量に設定した。例えば、ベース層233については厚さ(μm)×ジアゾニウム含有量(wt%)が120以下となるように設定した。
【0095】
また、
図13に示すように、マスク膜23Aにおいて、ベース層233におけるPVAの含有量<モノマーの含有量とする。すなわちベース層233は解像性を重視するためモノマーを多く含む。
【0096】
一方で、カバー層234はPVAの含有量>モノマーの含有量とすることが好ましい。例えば、カバー層234は、スクリーン版の表面を構成するため、PVAを多くすることで、伸び性を確保し、印刷耐久性を確保できる。
【0097】
また、本実施形態において、マスク膜23を構成するカバー層234の乳剤はベース層233の乳剤より軟らかい材料で構成される。軟らかさは、カバー層及びベース層の乳剤を単独でフィルム化し、露光した後に、それぞれを引張試験機によって引き延ばして破断するまでの伸び量の測定により行う。伸び量が大きいほうを軟らかいと判断する。フィルムの厚みは30~50μmの厚みが好ましい。
その他の構成については第1実施形態のマスク膜23と同様とした。
【0098】
本実施形態によれば、カバー層にフッ素化合物を含むことで、洗浄の影響を受けにくく、露光後乳剤表面からフォトマスクをはがしやすい。したがって、印刷物のペーストが版に再付着しにくいという効果が得られる。なお、フッ素化合物の方がシリコーン化合物より、少ない量で撥水、撥油性の効果が大きく、マスク膜(DFR)全体のうちのフッ素化合物の量を多くしすぎると、DFRを生産するときにはじきが大きくなりすぎて好ましくない。フッ素化合物は耐久性に優れており、フッ素化合物は水と油をはじくが、シリコーン化合物は水しかはじかない。一方、シリコーン化合物は柔軟性に優れる。したがって、本実施形態においては、カバー層に主にフッ素化合物を含む構成とすることで、フッ素化合物の長所を活かすことができる。
【0099】
また、厚さに対応してジアゾニウム化合物を調整することで、奥まで光を到達させやすく、露光性能を向上できる。したがって、全体の乳剤の厚さが厚い場合にはジアゾニウム化合物の含有量を減らすことで、光が奥まで届くため、紗内厚が増加し、露光時間を短縮できる。
【0100】
なお、パターン開口24の構成や配置は上記に限られるものではなく、印刷形状に応じて適宜変更可能であり、高さの設定も設定可能である。例えば段差がある構成としてもよい。2層に分けて貼付けて、段差を形成させてもよい。
【0101】
なお、パターン開口24は、部位によって深さ寸法が異なっていてもよい。例えばパターン開口24は、複数の独立した開口を有してもよいし、連続する開口において部位によって厚さが異なるものでもよい。例えば連続するライン状のパターン開口24において、一部の塗布厚さを増減させてもよいし、異なる塗布厚さの複数のパターン開口24が形成されていてもよい。例えばパターン開口24は例えばスリット状のラインパターンや、角形状、円形状、の開口部等種々の形状に設定可能である。また、未露光部がエッチングにより除去される例を示したが、逆であってもよい。露光部位が開口を形成する、露光及び材料を用いてもよい。
【0102】
また、上記各実施形態において、メッシュ22としていわゆるシングルメッシュを例示したが、これに限られるものではない。例えば、メッシュ22として、メインメッシュ26とメインメッシュ26の外周に設けられるサポートメッシュ27を備える、いわゆるコンビネーション型のメッシュ構造を用いてもよい。また、メッシュ22の中央部分の一部にのみマスク膜23が形成されていても、全域にマスク膜23が形成されていてもよい。
【0103】
また、マスク膜23はパターン開口24の形状についても上記実施形態に限られるものではない。例えばパターン開口24は深さ方向に断面形状が変化する開口としてもよく、パターン開口24の深さを設定することもできる。あるいは開口24に連続する突起を形成することも可能である。
【0104】
また、上述した複数の異なる実施形態における特徴を組み合わせてもよい。
【0105】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0106】
この他、上記実施形態に例示された各構成要素を削除してもよく、各構成要素の形状、構造、材質等を変更してもよい。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。素材の寸法比を調整することで、縦横の伸び量の差を低減できるため印刷精度が向上できる。
【符号の説明】
【0107】
10…スクリーン印刷装置、13…スキージ、20…スクリーンマスク、21…フレーム、22…メッシュ、22a…経糸、22b…緯糸、22c…孔部、23…マスク膜、230…ドライフィルムレジスト、230A…DFR積層部材、232…ベースフィルム(ベースフィルム部材)、233…ベース乳剤層、234…カバー乳剤層、235…カバーフィルム(カバーフィルム部材)、24…パターン開口。