(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026442
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】てんかんを治療または予防するための医薬品の組合せ及びその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20250214BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20250214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250214BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
A61K36/185
A61P25/08
A61P43/00 121
A61K31/55
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024134368
(22)【出願日】2024-08-09
(31)【優先権主張番号】18/446,761
(32)【優先日】2023-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508040603
【氏名又は名称】輔仁大學學校財團法人輔仁大學
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】王 素珍
(72)【発明者】
【氏名】洪 啓峯
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC32
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA06
4C086ZC75
4C088AB25
4C088MA02
4C088NA14
4C088ZA06
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】てんかんを治療または予防するとともに従来の抗てんかん薬の用量を減らせる白樺樹液抽出物含有の医薬品の組合せを提供する。
【解決手段】本発明はてんかんを治療または予防するための白樺(Betula platyphylla)樹液抽出物の組成物及び薬剤を製造するにおける用途を提供し、該組成物はほかの成分を含むことで抗てんかん作用を増強させる。本発明の組成物は高効果、安全、便利の特性を有し、てんかん発作を有効に治療または予防できるとともに、該抗てんかん薬の副作用を軽減させる。本発明も該組成物を使用して、てんかん発作を予防または治療する方法を提供する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
てんかんを治療または予防するための薬剤を製造するために白樺(Betula platyphylla)樹液抽出物とカルバマゼピン(carbamazepine)の用途であって、前記白樺樹液抽出物は冬から春に採集された白樺樹液を室温で濾過、濃縮することによって取得し、単糖分析方法によって分析して、前記白樺樹液抽出物に含む果糖、ぶどう糖とフコースの比率は27:17:10であることを特徴とする用途。
【請求項2】
前記白樺樹液抽出物は日本北海道で成長した白樺から採集することを特徴とする請求項1に記載の用途。
【請求項3】
前記てんかんは脳神経細胞の損傷によって引き起こされることを特徴とする請求項1に記載の用途。
【請求項4】
前記てんかんは神経膠細胞(glial cell)の活性化によって引き起こされることを特徴とする請求項1に記載の用途。
【請求項5】
前記てんかんは炎症分子による脳の炎症反応から引き起こされることを特徴とする請求項1に記載の用途。
【請求項6】
前記炎症分子はインターロイキン1β(linterleukin-1β、IL-1β)、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α、TNF-α)、高移動度群タンパク質(high mobility group Box 1、HMGB1)、インターロイキン1受容体1(IL-1R1)、トール様受容体4(Toll-like receptor-4、TLR-4)を組み合わせたグループから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の用途。
【請求項7】
白樺樹液抽出物と少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬を含み、前記白樺樹液抽出物は冬から春に採集された白樺樹液を室温で濾過、濃縮することによって取得し、単糖分析方法によって分析して、前記白樺樹液抽出物に含む果糖、ぶどう糖とフコースの3種類の主要な単糖の濃度比率は27:17:10であり、前記少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬はカルバマゼピン、前記ほかの抗てんかん薬の用量は単独に投与する時の用量より少ないことを特徴とするてんかんを治療または予防する医薬品の組合せ。
【請求項8】
前記白樺樹液抽出物と前記少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬は同時に、順番にまたは間隔を置いて患者に投与することを特徴とする請求項7に記載の医薬品の組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はてんかんを治療または予防するための医薬品の組合せ及びその用途に関し、特に白樺樹液抽出物と少なくとも一つの薬剤の医薬品の組合せ及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術の説明は本発明を理解するための役立つ情報が含まれ、本明細書で提供したあらゆる情報が背景技術または本発明と関係する技術と見なすべきではない。また、明示的にまたは隠喩的に引用したあらゆる出版物は背景技術として見なすべきではない。
【0003】
てんかんは神経系の慢性疾患であり、脳卒中、偏頭痛とアルツハイマー病に続いて4番目の神経系疾患で、世界中には約7千万人が悩まされている。この病気の特徴は、脳神経細胞の異常放電による反復性、自発性と予測不可能性の発作を起こし、主に大脳皮質と海馬で発生する。てんかんの原因は先天的または後天的な脳病変と関係しており、例えば脳内ダメージ、感染、脳卒中、脳腫瘍などが原因となるが、約7割のてんかん患者の発症原因が不明である。ほとんどのてんかんが原因不明であるが、一般的に脳抑制性神経系(即ち、GABA系)と興奮性神経系(即ち、グルタミン酸系)とのバランスが崩れることによって脳神経細胞が過剰に興奮するためと考えられる。
【0004】
現在、てんかん発作を抑制する抗てんかん薬の作用機序は、主にナトリウムチャネルを遮断することによって脳神経細胞の興奮を直接に抑制する薬(例えば、フェニトイン(phenytoin)、カルバマゼピン(carbamazepine))、またはグルタミン酸を抑制する薬(例えば、ラモトリギン(lamotrigine)、フェルバメート(felbamate))、またはGABAを増加する薬(例えば、ベンゾジアゼピン(benzodiazepines)、チアガビン(tiagabine)、ビガバトリン(vigabatrin))などを用いて脳神経細胞の安定性を調節する。しかし、現在において30種類近くのてんかん治療薬があるが、約3分の1のてんかん患者が現在の治療薬に対して薬剤耐性を持ち、また、医薬品の副作用は患者が現在に使用する治療薬へのアドヒアランスを影響してしまう。
【0005】
現在、常用される抗てんかん薬はたくさんの副作用を有することが知られており、例えばカルバマゼピンの添付文書では、眠気、食欲不振、下痢、めまい、頭重、運動失調(協調運動障害)、白血球減少、再生不良性貧血、肝機能障害、不整脈、発疹などの副作用が記載されている。フェニトインの添付文書では、吐き気、嘔吐、胸やけ、食欲不振、複視、眼振、運動失調(協調運動障害)、歯肉増殖、多毛、顔荒れ、不随意運動、リンパ節腫脹、奇形、発疹などの副作用が記載されている。副作用が出た後の通常処置方法は、薬を変えるか、用量を減らすか、或いは他の薬剤を加えるかなど副作用を抑制することになるが、用量を減らすことでてんかんが再び発作しやすいため、患者にとって心身ともに苦痛である。
【0006】
このため、てんかんの治療においてより有効かつ安全な新しい薬剤を探すことと開発することが必要であり、そこで、薬用植物が伝統医学と民間医学において異なった神経系疾患(てんかんを含む)を治療と予防することにあたって広く使用されていることから注目されている。近年、数多くの植物由来の生物活性分子はイオンチャネル、GABAまたはグルタミン酸が影響することによって抗てんかん作用が生じられることが証明され、例えば、フラボノイド(flavonoids)、アルカロイド(alkaloids)、テルペノイド(terpenoids)、カンナビジオール(cannabidiol)など、薬用植物は抗てんかん薬の研究目標となっている。
【0007】
白樺(Betula platyphylla)はカバノキ科カバノキ属であり、シベリア、フィンランド、北海道、モンゴルなどの地域に分布する。「本草綱目」の記載によると、白樺の樹皮は関節炎、皮膚病、外傷と清熱解毒などの治療に用いられる。現在、白樺は民間医学において炎症疾患の治療に広く使われ、肝炎、急性扁桃腺炎、肺炎、慢性気管支炎、胆嚢炎、尿道感染及び火傷などの治療に用いられる。研究結果によると白樺には数多くの生物活性が存在し、例えば、抗炎症、抗酸化、抗ウイルス、抗がん、抗疲労及び神経保護作用などがあり、これらの活性は白樺の主要活性成分のトリテルペノイド-ベツリン(betulin)と関係する。しかし、白樺が中枢神経系に関わる研究が少ないため、てんかんを治療または予防するために白樺抽出物含有の医薬品の組合せを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする技術問題は、てんかんを治療または予防するとともに従来の抗てんかん薬の用量を減らせる白樺抽出物含有の医薬品の組合せを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題と需要を解決するために、本発明はてんかんを治療または予防する医薬物を製造するにあたって白樺(Betula platyphylla)樹液抽出物の用途を提供する。
【0010】
一実施例において、本発明の白樺樹液抽出物は日本北海道で成長した白樺から採集する。
【0011】
一実施例において、てんかんは脳神経細胞の損傷によって引き起こされる。もう一つの実施例において、てんかんは神経膠細胞(glial cell)の活性化によって引き起こされる。もう一つの実施例において、てんかんは炎症分子による脳の炎症反応から引き起こされる。さらに、もう一つの実施例において、炎症分子はインターロイキン1β(Interleukin-1β、IL-1β)、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(Tumor necrosis factor-α、TNF-α)、高移動度群タンパク質(High mobility group Box 1、HMGB1)、インターロイキン1受容体1(IL-1R1)、トール様受容体4(Toll-like receptor-4、TLR-4)を組み合わせたグループから選ばれる。
【0012】
一実施例において、本発明の白樺樹液抽出物はさらに少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬と合わせて、てんかんを治療または予防する薬剤の製造に用いられる。もう一つの実施例において、該少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬は西洋薬の製剤である。さらに、もう一つの実施例において、該少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬は、フェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェルバメート、ベンゾジアゼピン、チアガビン、ビガバトリンを組み合わせたグループから選ばれる西洋薬の製剤である。もう一つの実施例において、該少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬は漢方薬製剤または処方である。もう一つの実施例において、該少なくとも1種類の抗てんかん薬は、天麻、釣藤鈎、石決明、鎮肝熄風湯、天麻鈎藤飲から組み合わせたグループから選ばれる漢方薬製剤または処方である。
【0013】
本発明は白樺樹液抽出物を製造する方法を提供し、以下のステップを含む。
ステップ1:成熟した白樺を選び、樹皮に対して切り取り処理をし、樹液を流れ出しやすくする;
ステップ2:収集器を使用して流れ出す樹液を集める;
ステップ3:室温で樹液を濾過し、樹皮の破片とそのほかの異物を取り除く;
ステップ4:低温濃縮技術を利用して、樹液中のほとんどの水分を除去することによって、高濃度の白樺樹液抽出物を得る。
上記ステップは特定成分の抽出またはそのほかの実際の需要によって増減する。
【0014】
一実施例において、該白樺は日本北海道で成長したものである。もう一つの実施例において、該白樺樹液は冬か春に採集する。また、もう一つの実施例において、該白樺樹液は春先に採集する。
【0015】
また、本発明はてんかんを治療または予防するための医薬品の組合せを提供し、白樺樹液抽出物、少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬、医薬的に受容可能な担体及び/または安定剤を含む。該ほかの抗てんかん薬の用量はそれを単独に投与する時より少ない。一実施例において、該少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬は、フェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェルバメート、ベンゾジアゼピン、チアガビン、ビガバトリンを組み合わせたグループから選ばれる。一実施例において、該白樺樹液抽出物と該少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬は同じ時間、順序または間隔で患者に投与する。
【0016】
本発明の各種目的、特徴、態様及び利点は以下のより良い実施方法の詳しい説明と添付する図面により明白になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の白樺抽出物含有の医薬品の組合せはてんかんを有効に治療または予防できるとともに、従来の抗てんかん薬の用量を減少できるため、副作用を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面の説明により、本発明の特徴と優れた点は以下及びより良い実施例による説明でさらに明らかになり、そのうちの類似する参考語彙は文中の同じ部分または部材を指す。
【0019】
【
図1A】白樺樹液抽出物(HCF02)の化学特性であり、単糖類の組成を示す図である。
【
図1B】白樺樹液抽出物(HCF02)の化学特性であり、単糖類の組成を示す図である
【
図1C】白樺樹液抽出物(HCF02)の化学特性であり、分子量分布を示す図である。
【
図1D】白樺樹液抽出物(HCF02)の化学特性であり、
1H NMRスペクトルを示す図である。
【
図2A】白樺樹液抽出物で前処理して、KAにより誘発した動物てんかん行為を軽減することを示す棒グラフである。データは平均値±SEM(n=2~13匹のラット/組)。*は、KA群と比較すると、p<0.05;***は、KA群と比較すると、p<0.001である。
【
図2B】白樺樹液抽出物で前処理して、KAにより誘発した動物てんかん行為を軽減することを示す棒グラフである。データは平均値±SEM(n=2~13匹のラット/組)。*は、KA群と比較すると、p<0.05;***は、KA群と比較すると、p<0.001である。
【
図3A】白樺樹液抽出物とベツリンで前処理して、KAによる大脳皮質と海馬神経細胞の死亡を予防する図である。データは平均値±SEM。*は、対照群と比較すると、p<0.01;***は、対照群と比較すると、p<0.001;♯は、KA群と比較すると、p<0.05;各群n=3である。
【
図3B】白樺樹液抽出物とベツリンで前処理して、KAによる大脳皮質と海馬神経細胞の死亡を予防する図である。データは平均値±SEM。*は、対照群と比較すると、p<0.01;***は、対照群と比較すると、p<0.001;♯は、KA群と比較すると、p<0.05;各群n=3である。
【
図4A】白樺樹液抽出物とベツリンで前処理して、KAによる大脳皮質と海馬神経細胞の退化を軽減する図である。データは平均値±SEM。***は、対照群と比較すると、p<0.001;♯は、KA群と比較すると、p<0.05;各群n=3である。
【
図4B】白樺樹液抽出物とベツリンで前処理して、KAによる大脳皮質と海馬神経細胞の退化を軽減する図である。データは平均値±SEM。***は、対照群と比較すると、p<0.001;♯は、KA群と比較すると、p<0.05;各群n=3である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の記述は本発明を理解するための役立つ情報が含まれ、本明細書で提供したあらゆる情報が従来技術または本発明の請求の範囲と関係すると見なすべきものではなく、かつ、明示的にまたは隠喩的に引用したあらゆる出版物は従来技術として見なすべきではない。
【0021】
本発明は本明細書に挙げられた特定例の材料、構造、プロセス、方法または構造に制限されない。このため、本明細書でいくつかの選択肢が挙げられたが、それに類似または効果が同じものはすべて本発明の実施方法または実施例に応用でき、本明細書ではもっとも良い材料と方法を述べただけである。
【0022】
添付図面に関わる下記の詳しい説明は、本発明における例示性実施例の説明であり、本発明を実施する唯一の例示性実施例を意図的に表示するものではない。本明細書で使用する技術用語「例示性」は「一実施例、例または事例」を意味し、ほかに考えられる例示性実施例より良いまたは優れていることは説明するまでもない。詳細の説明は特定の部分を含み、本明細書の実施例について理解するために提供される。当業者にとって分かることは、本明細書の実施例はこれらの特定の部分を使用しなくても実施できる。
【0023】
本明細書で使用するように、以下の各技術用語はその段落で述べた意味を含む。本発明で使用する技術用語は本発明の特定実施例を説明する目的であって、意図的に制限するものではない。
【0024】
ほかに定義する以外、本明細書で使用する技術と科学技術用語は当業者が通常理解するものと同じである。一般的に、本明細書で使用する命名法は動物薬理学、薬学科学、分離科学と有機化学の実験室プロセスにおいて、本分野で公知かつ常用される。本明細書で記載した方法において、時間と操作順序を明確に記述する以外、動作はあらゆる順序で行える。さらに、請求項の語彙記述において別々に行うのを明確にしたものを除き、該動作は同時に行えることを意味する。例えば、Xを実施する動作とYを実施する動作は単一操作において同時に行え、得られる方法も請求される方法の範囲内にある。
【0025】
本明細書では以下のような非制限性イニシャルを使用する。KA、カイニン酸(kainic acid);IL-1β、インターロイキン1β(interleukin-1β);IL-6、インターロイキン6(interleukin-6);TNF-α、腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α);HMGB1、高移動度群タンパク質(high mobility group Box 1);IL-1R1、インターロイキン1受容体1(interleukin-1 receptor 1);CBZ、カルバマゼピン(carbamazepine);CABA、γアミノ酪酸(gamma-aminobutyric acid);TLR-4、トール様受容体4(Toll-like receptor-4)である。
【0026】
文脈の前後にはっきりに指示したものを除き、本明細書と請求の範囲で使用する「一つ」、「1種類」と「該」は複数を含む。例えば、「1種類の成分」は一つの成分または一つ以上の成分を意味する。
【0027】
本明細書で使用するように、当業者は「約」という技術用語を理解できるはずであり、また文脈によりある程度に変化できる。本明細書で使用される場合、数量、時間の長さなど測量可能な値の場合は、「約」は該特定値の±20%、±10%、±5%、±1%または±0.1%の変化を含むことを意味する。これらの変化は開示した方法に適している。このため、一部の実施例において、本明細書と請求の範囲での数値パラメーターは近似値であり、特定の実施方法によって期待する特性が得られるために変化する。一部の実施例において、記載する有効位によって一般の数値捨入技術を応用して数値パラメーターを解釈する。本発明の一部の実施例における数値は誤差が存在する可能性があり、その原因は各自でテスト測量における標準偏差からよるものである。
【0028】
一態様において、治験者と関係する技術用語「共同投与」とは、治験者に本発明の白樺樹液抽出物とともに、ここで考慮した疾病を治療または予防するそのほかの薬剤も投与する。一部の実施例において、共同投与する白樺樹液抽出物とそのほかの薬剤は別々に投与する、または任意の種類を組合せて一部の単独治療方法とする。
【0029】
本明細書で使用するように、「疾病」とは、治験者の健康状態の一種であり、治験者は体内の安定状態を維持できず、疾病が改善されない場合、治験者の健康が悪化し続ける。
【0030】
本明細書で使用するように、治験者の「病状」は健康状態の一種で、治験者の健康状態は病状がない時より良くはないが、治験者が体内の安定状態を維持できる。病状を治療しなくても、治験者の健康状態が悪くなるとは限らない。
【0031】
本明細書で使用するように、技術用語の「医薬的に受容可能」とは、本発明における有用化合物の生物活性または性質を消すことがない物質であり、例えば媒介体または希釈剤である。さらに、該物質は無毒であり、即ち、該物質を治験者に投与しても予想外の生物反応を生じず、または組成物に含むあらゆる成分が有害の形で相互作用を起こらない。
【0032】
本明細書で使用するように、化合物の技術用語「医薬的における有効用量」、「治療有効用量」または「有効用量」は、化合物が投与された治験者に有益な効果をもたらす化合物の量である。
【0033】
本明細書で使用するように、技術用語「治験者」、「個体」と「患者」は互いに置き換えられ、人類または人類以外の哺乳動物を含む。人類以外の哺乳動物は、例えば家畜とペットを含み、羊、豚、イヌ科動物、ネコ科動物とネズミ類哺乳動物などがある。一部の実施例において、治験者は人類である。
【0034】
本明細書で使用する技術用語「予防」または「防止」とは、薬剤または化合物を投与した時点は、治験者が疾病または病状を現す前であり、これらの症状の発生を避けたり、遅延したりする。
【0035】
本明細書で使用するように、技術用語「治療」とは、治験者に薬剤または化合物を投与することによって、治験者が経験した疾病または病状の頻度または進行具合を低減させる。
【0036】
本発明が開示する内容全体をわたり、本発明の各態様は範囲の形で表す。範囲形式の記載は便利と簡潔のためだけであって、本発明の範囲に対する制限ではない。このため、範囲の記載は具体的にすべての可能となるサブ範囲とその範囲内の単一数値と見なすべきである。例えば、1から6の範囲の記載はサブ範囲を特定したと見なされ、例えば1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6などであり、また該範囲内の単一及び部分の数字は、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3と6である。範囲を問わずにすべてが適用する。
【0037】
[白樺樹液について]本発明の白樺樹液は白樺樹皮及び/または幹から採集抽出した無色または薄い黄色の透明液体である。白樺樹液にはベツリン、多糖、サポニン、タンパク質、ミネラルなどの活性物質を含み、比較的に高い薬用価値を有する。漢方医の理論の中に、白樺樹液は清熱解毒の薬に属され、現在において開示されている治療効果と利点は以下にまとめる。
清熱解毒:白樺樹液は清熱解毒の効果があり、体内の熱と湿気を取り除ける以外、発熱、喉の渇き、喉の痛み、発疹などの症状を軽くする。
利尿消腫:白樺樹液は腎臓の排泄機能を促進でき、尿量を増加できるため、体内の余分の水分を取り除け、むくみなどの症状を軽減できる。
消炎鎮痛:白樺樹液の中に消炎と鎮痛作用の成分を有し、例えばメントールとサリチル酸など、痛みと炎症を軽くできる。
消化促進:白樺樹液は胃腸の動きを促進でき、消化液の分泌を増加できるため、消化不良、下痢などの胃腸問題を改善できる。
栄養補給:白樺樹液には多種類の栄養成分を有し、例えばビタミンC、ビタミンB群、鉄分、カリウムなどは身体が必要とする栄養素を補給でき、体の免疫力と病気に対抗する能力を増強させる。
【0038】
一実施例において、白樺樹液は毎年の冬か春に採集され、より良いのは、春先に採集された白樺樹液である。もう一つの実施例において、白樺樹液は樹齢20~50年の白樺から採集される。また、もう一つの実施例において、白樺は日本北海道で成長したものである。
【0039】
一態様において、本発明の白樺樹液抽出物はてんかんを治療または予防するための1種類または多種類のほかの医薬品の組合せに使用でき、或いは医薬品の組合せに製造される。これらの薬剤はてんかんの症状を治療、予防または軽減する既知の化合物を含む(例えば購入可能な化合物)。
【0040】
一実施例において、本発明は治験者のてんかんを治療または予防する方法を提供する。この方法は治験者に本発明の白樺樹液抽出物を治療有効量に投与することを含む。一実施例において、該治験者にさらに少なくとも1種類のてんかんを治療または予防するために有効なほかの薬剤が共同投与される。また、もう一つの実施例において、該少なくとも1種類のほかの薬剤は、例えば天麻、釣藤鈎、石決明、鎮肝熄風湯、天麻鈎藤飲などの漢方薬製剤または処方であり、漢方薬製剤の用量については漢方医が従来用量に従って調節できる。もう一つの実施例において、該ほかの薬剤は漢方薬製剤または処方であり、白樺樹液抽出物と共同で調合される。もう一つの実施例において、該少なくとも1種類のほかの薬剤は西洋薬製剤であり、例えばフェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェルバメート、ベンゾジアゼピン、チアガビン、ビガバトリンなどがある。西洋薬製剤の用量については医者が各薬剤の推奨用量によって調節できる。
【0041】
一実施例において、てんかん持ちの治験者は、初めててんかんと診断された人、或いは少なくとも1種類の抗てんかん薬を服用している人である。一実施例において、初めててんかんと診断された治験者に白樺樹液抽出物と少なくとも1種類の抗てんかん薬との組合せを与え、少なくとも1種類の抗てんかん薬を組み合わせて投与する時の用量は単独で投与する時の用量より少ない。もう一つの実施例において、白樺樹液抽出物を少なくとも1種類の抗てんかん薬を服用している治験者に与えると、該抗てんかん薬の用量を減らせる。
【0042】
治療方法は有効量の組合せを影響する。治療調合薬は疾病または症状が発症する前または後に患者に投与できる。さらに、毎日に、または数回に分割した用量及び交互にずらした用量を順番に投与でき、或いは該用量は連続に投与できる。このほか、治療または予防の状況の緊急性に応じて、比例する治療調合薬の用量を増減できる。
【0043】
患者に本発明の白樺樹液抽出物をすでに分かっている順序、用量と期間で投与することによって、てんかんを有効に治療または予防する。てんかんを治療及び/または予防する効果に必要とする白樺樹液抽出物の有効量は多くの要素により変化し、例えば使用する特定の白樺樹液抽出物の活性;投与時間;抽出物の排泄率;治療の持続時間;抽出物と組み合わせて使用するそのほかの薬物、化合物または物質;治療を受ける患者の疾病または病状の状態、患者の年齢、性別、体重、症状、一般健康状況及び以前の病歴;医学分野において熟知する類似要素などがあり、用量などを調整して優れた治療反応を提供する。例えば、毎日に数回に分割した用量を投与する、或いは用量を治療状況の緊急性に比例して減少させる。
【0044】
本発明の白樺樹液抽出物についての記載は主に医学倫理に適した方法で人類に投与するが、当業者にとって、該組成物は通常各種動物に適していることを理解できるはずである。各種動物に投与できるように、本発明の白樺樹液抽出物の組み替えが周知されることであり、技術を熟知する獣医薬学者は一般性実験(必要であれば)によりこのような組み替えを設計して実施できる。本発明の白樺樹液抽出物を投与できる対象は人類とそのほかの霊長類、哺乳類以外、ビジネス価値のある哺乳類、例えば牛、豚、馬、羊、猫と犬などを含むが、制限されない。
【0045】
人類と動物が同じ薬に対する耐性が異なり、一般的に言うと、動物の耐性は人類より強い。単位体重または単位表面積で計算すると、動物が使用する薬の量は人類より多い。動物と人類の単位体重の使用量は以下の換算表1を参照して計算できる。
【0046】
【0047】
出典:社團法人台灣國際生命科學會(International Life Sciences Institute Taiwan, ILSI Taiwan)
【0048】
例えば、本発明の実施例のラットモデルを例とすると、本発明の白樺樹液抽出物は経口投与により3mg/kg/回から20mg/kg/回の用量を与え、好ましくは6mg/kg/回から10mg/kg/回の用量の白樺樹液抽出物を経口投与し、例えば6mg/kg/回から10mg/kg/回の用量の白樺樹液抽出物を経口投与する。上記の単位体重用量換算表で換算した後、本発明の白樺樹液抽出物を人類に与える用量は0.48mg/kg/回から3.2mg/kg/回であり、好ましくは0.96mg/kg/回から1.6mg/kg/回である。本発明の白樺樹液抽出物はそのほかの動物に適する用量も上記の単位体重用量換算表またはそのほかの単位体表面積換算表により取得できる。
【0049】
一部の実施例において、本発明の白樺樹液抽出物は毎日1回から5回またはそれより多くの用量範囲で患者に投与する。そのほかの実施例において、本発明の白樺樹液抽出物は一日1回、一日2回、一日3回、一日4回、二日に1回、三日から一週間、または二週間に1回を含む用量範囲で患者に投与するが、これらに限定されない。本発明の各組合せの組成物の投与頻度は治験者によって変わることが当業者にとって分かりやすく、これはたくさんの原因に左右され、年齢、治療しようとする疾病や病状、性別、全体の健康状況及びそのほかの原因を含むが、これらに限定されない。これにより、本発明はあらゆる特定の用量プランに限定されると解釈すべきではなく、主治医が患者に関わるすべての要素を考量した上で患者に投与する正確の用量と組成物を確認すべきである。
【0050】
一実施例において、本発明の白樺樹液抽出物は少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬とを組合せて投与する場合、白樺樹液抽出物と少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬を同時に治験者に投与できる。もう一つの実施例において、該白樺樹液抽出物と少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬を順番に、前後に、または間隔を置いてから治験者に投与できる。
【0051】
経口投与:経口投与に用いられる液体製剤は溶液、シロップ製剤または懸濁液の形がある。該液体製剤は従来方法により医薬的において受容できる添加剤によって製造され、例えばシロップまたは医薬的において受容できる防腐剤などである。
【0052】
当業者は次のことを理解できるはずであり、通常範囲内の実験をすれば、本発明に記載される特定順序、実施方法、権利請求の範囲と実施例など等価項目を確認できる。これらの等価項目は本発明の範囲内に認定され、さらに特許請求の範囲に含まれる。例えば、反応時間、反応状態/体積及び実験試薬(例えば溶剤、触媒)、圧力、気圧条件と還元/酸化剤などの反応条件の修正と技術分野で認定された代替物と通常範囲内の実験はすべて本発明の範囲内である。
【0053】
本明細書で挙げられたあらゆる数値と範囲について、該範囲の記載は便利と簡潔のためであり、本発明の範囲への制限と解釈すべきではない。このため、該数値と範囲に含まれるすべての数値と範囲は本発明の範囲内に含まれる。また、これらの範囲内に入るすべての数値と数値の範囲の上限または下限も本発明の想定内である。範囲についての記載はすべて可能となるサブ範囲と該範囲内の個別数値を具体的に開示し、適宜な場合において数値の一部の整数も範囲内に含まれると見なす。例えば、1から6の範囲の記載はサブ範囲として具体的に開示したと認定され、例えば1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6など、及びその範囲内にある個別な数字、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3と6など、範囲を問わずにすべて適用される。
【0054】
以下の実施例で本発明の各態様をさらに説明する。しかし、それは本明細書で記載する本発明の教示または開示内容に対する制限ではない。
【0055】
本発明は以下の実施例を参照して説明する。これらの実施例は説明するためであり、本発明はこれらの実施例に制限されず、本明細書で提供した教示によって明らかになったすべての変化を含む。
【0056】
本発明で例示する白樺樹液抽出物は以下の工程により製造及び/またはテストされる。
【0057】
[白樺樹液抽出物]以下のステップにより、白樺(Betula platyphylla)から樹液を採集して白樺樹液抽出物を製造する。
ステップ1:成熟した白樺を選び、樹皮に対して切り取り処理をし、樹液を流れ出しやすくする;
ステップ2:収集器で流れ出す樹液を集め、外部汚染を避ける;
ステップ3:室温で樹液を濾過し、樹皮の破片とそのほかの異物を取り除く;
ステップ4:低温濃縮技術を利用して、樹液中のほとんどの水分を除去することによって、高濃度の白樺樹液抽出物を得る。
【0058】
[動物実験]雄のSprague-Dawleyラット(SD,150-200g)をBioLASCO TAIWAN Co.,Ltdから購入し、輔仁大学実験動物センターで飼育する。すべての動物実験は輔仁大学実験動物管理委員会の許可をもらっている。3Rルールに従い、すべての実験は動物の苦痛をできるだけ最小限に抑えた上で確かな結果を生み出す最少量の動物で行われる。
【0059】
[実施例1-白樺樹液成分分析]単糖分析方法により白樺から抽出した樹液を分析する。白樺樹液の単糖分析において、白樺樹液抽出物の果糖、ぶどう糖とフコースの3種類の主要な単糖の比率は27:17:10(
図1Aと1B)と確定される。高速サイズ排除クロマトグラフィー(High Pressure Size Exclusion chromatography,HPSEC)によって分析すると、白樺樹液の分子量は約1.29kDa(
図1C)以下である。白樺樹液の
1H NMRスペクトル(
図1D)表示はδH5.13とδH4.45の部分に二つのアノマー陽子(anomeric proton)を有する。δH5.13とδH4.45の部分の信号は100:124の比率で二峰性を現し、それぞれ二つの単糖残留物とα-アノマー構造(
3J
1,2=3.4Hz)とβ-アノマー構造(
3J
1,2=7.7Hz)を有する。上記分析結果によりその後の生物試験で使用する白樺樹液抽出物の量を定量できる。
【0060】
[実施例2-KAにより誘発した動物てんかんのモデル]カイニン酸(kainic acid、KA)による動物てんかん誘発モデルで白樺樹液抽出物における抗てんかん作用を評価する。KAはグルタミン酸の類似物であり、ラットにKAを注射するとグルタミン酸の放出が増加され、及びグルタミン酸受容体が過剰に活性化されるため、ラットの進行性大脳辺縁系発作(progressive limbic seizures)が引き起こされる。これにより、神経細胞内のカルシウムイオンの増加、酸化ストレスと糸粒体機能の欠損を引き起こすため、大脳の多くの領域の、特に脳皮質と海馬エリアの神経細胞を死亡させる。さらに、KAが神経細胞の死亡と神経膠細胞の活性化を誘発することは、炎症関連分子(例えば、インターロイキン1β(IL-1β)、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、高移動度群タンパク質(HMGB1)、インターロイキン1受容体1(IL-1R1)、トール様受容体4(TLR-4))による炎症反応と関係する。KAが誘発したこれらの病理変化は人類のてんかん行為と類似するため、KAにより誘発した動物てんかんのモデルは、抗てんかん活性を有する新規化合物の選別にあたって広く使われる。
【0061】
ラットの腹腔にKAを注射した後、4時間以内のてんかん行為を分析する。発作具合の評価方法はRacine scale(1972)に基づき、表2に示す。
【0062】
【0063】
[実施例3-白樺樹液抽出物がKAにより誘発した動物てんかん行為に対する影響の評価]Sprague-Dawleyラットに異なるテスト物質を投与し、以下のグループに分ける。
1、陰性対照群:生理食塩水。
2、KA群:15 mg/kg/i.p./1回のカイニン酸(KA)。
3、白樺樹液抽出物低用量群:6mg/kgの白樺樹液抽出物。
4、白樺樹液抽出物高用量群:10mg/kgの白樺樹液抽出物。
5、抗てんかん薬高用量群:100mg/kgのカルバマゼピン(CBZ)。
6、抗てんかん薬組成物群:6mg/kgの白樺樹液抽出物と50mg/kgのカルバマゼピン(CBZ)を含む。
7、抗てんかん薬低用量群:50mg/kgのカルバマゼピン(CBZ)。
【0064】
対照群、白樺樹液抽出物群、抗てんかん薬群及び抗てんかん薬組成物群のラットに対して、毎日定時にそれぞれに生理食塩水、白樺樹液抽出物及び/またはカルバマゼピンを与える。7日後、陰性の対照群を除き、各グループのラットにKA(15mg/kg/i.p./1回)を腹腔内注射する。尚、KA注射の用量は前の研究に基づく。ラットのてんかん行為はKAを腹腔内注射した後の4時間以内にRacine scale(1972)に基づいて分析され、その結果は表3に示す。
【0065】
白樺樹液抽出物で前処理をすることによってKAにより誘発した動物てんかん行為を軽減することを表3に示す。
【0066】
【0067】
以上のデータは平均値±SEM。**、KA群と比較すると、p<0.05;***、KA群と比較すると、p<0.001。
【0068】
実験の結果から分かるように、KA群(陽性の対照群)において、KAを与えた91%のラットはてんかんの発作が誘発される。てんかん発作の時間と点数はそれぞれ66.6±6.4分と4.6±0.2である。KA群と比較すると、本発明の白樺樹液抽出物を7日間経口摂取する前処理をした場合、KAにより誘発したてんかん発作の時間を延長できる上、KAにより誘発したてんかん発作の深刻度を低下できる(p<0.05;
図2A-2B)。また、白樺樹液抽出物の高用量群(10mg/kg)はKAにより誘発したてんかん発作の深刻度に対する抑制作用が良く、この作用は抗てんかん薬高用量群(CBZ 100mg/kg)と類似するため、この結果は本発明の白樺樹液抽出物がKAによるてんかんを防止する作用(表3)を証明する。言い換えると、本発明の白樺樹液抽出物を抗てんかん薬の代わりにできる。
【0069】
さらに、抗てんかん薬低用量群において、動物てんかん発作の時間と深刻度はKA群とは統計学における差異がない。しかし、もし低用量の白樺樹液抽出物と組み合わせて使用する場合、即ち抗てんかん薬組成物群(6 mg/kg白樺樹液抽出物+50mg/kg CBZ)において、動物がてんかん発作の時間と深刻度はKA群よりも明らかに改善されるため(p<0.05;
図2A-2B)、低用量の抗てんかん薬がてんかん症状を有効に抑制できない欠点を大幅に改善できる。抗てんかん薬組成物群は抗てんかん薬高用量群と類似するKAによるてんかんを防止する作用が生じられるため、この結果は低用量(6mg/kg)の白樺樹液と低用量(50mg/kg)のCBZの組合せはKAにより誘発した動物てんかん行為を予防でき、低用量のCBZはさらに抗てんかん薬が生じた副作用を軽減できる。
【0070】
ラット実験により、本発明が提供した方法はてんかん発作の予防に用いられ、特に制御しにくいてんかん症状に対して明らかな予防効果を有する。本発明の白樺樹液抽出物を単独に使用する時、抗てんかん薬(例えばCBZ)に相当する抗てんかん効果が得られる。言い換えると、白樺樹液抽出物を抗てんかん薬の代わりにできる。また、本発明の白樺樹液抽出物と抗てんかん薬を組み合わせて使用する時、抗てんかん効果を達するとともに、抗てんかん薬(例えばCBZ)の用量を減少できる。これにより、本発明の白樺樹液抽出物を単独で使用しても、該白樺樹液抽出物と抗てんかん薬を組み合わせて使用しても、抗てんかん薬の副作用を軽減できる。本発明が提供した方法は比較的に低い毒性と副作用を有するため、安全かつ有効なてんかん予防方法となる。
【0071】
[実施例4-白樺樹液抽出物が脳神経組織に対する病理学的分析]実施例3に続き、実験動物がKA(15mg/kg)を腹腔内注射した3日後に死亡し、脳組織を取り出して生体組織検査を行い、またそのほかの相関実験分析をする。
【0072】
ラットにKAを腹腔内注射した3日後、Nissl染色によりKA群の大脳内皮質と海馬CA1/CA3神経細胞が明らかに減少したことを判明し、白樺樹液抽出物とベツリンの前処理はKAによる神経細胞数の減少を低減できる(p<0.05;
図3Aと
図3B)。
【0073】
さらに、Fluoro-Jade B(FJB)染色においてもKA群の脳皮質と海馬CA1/CA3退化性細胞数が増加する現象が現れ、この現象も白樺樹液抽出物とベツリンの前処理によって減少される(p<0.05;
図4Aと
図4B)。これら初歩の結果は白樺樹液抽出物及び/またはベツリンの前処理はKAによる神経細胞の損傷を予防できることを表す。
【0074】
上記動物実験の結果により、本発明の白樺樹液抽出物はKAにより誘発したてんかん発作を抑制する時間を延長でき、KAにより誘発したてんかんの深刻度を軽減させることから、白樺樹液抽出物がてんかん予防の作用を有することが確認される。これにより、白樺樹液は抗てんかん薬及び/または相関商品の開発に用いられる将来性を有する。
【0075】
以下は例示性の実施例であり、その番号は指定の重要度を解釈されるべきではない。
【0076】
実施例1は、白樺樹液抽出物がてんかんを治療または予防する薬剤の製造における用途を提供する。
【0077】
実施例2は実施例1の用途を提供し、該白樺樹液抽出物は日本北海道で成長した白樺から採集する。
【0078】
実施例3は実施例1の用途を提供し、該てんかんは脳神経細胞の損傷によって引き起こされる。
【0079】
実施例4は実施例1の用途を提供し、該てんかんは神経膠細胞の活性化によって引き起こされる。
【0080】
実施例5は実施例1の用途を提供し、該てんかんは炎症分子による脳の炎症反応から引き起こされる。
【0081】
実施例6は実施例5の用途を提供し、該炎症分子はインターロイキン1β(IL-1β)、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、高移動度群タンパク質(HMGB1)、インターロイキン1受容体1(IL-1R1)、トール様受容体4(TLR-4)を組み合わせたグループから選ばれる。
【0082】
実施例7は実施例1の用途を提供し、さらに少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬が該白樺樹液抽出物と合わせて、てんかんを治療または予防する薬剤の製造に用いられる。
【0083】
実施例8は実施例7の用途を提供し、該少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬は西洋薬の製剤である。
【0084】
実施例9は実施例8の用途を提供し、該少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬はフェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェルバメート、ベンゾジアゼピン、チアガビン、ビガバトリンを組み合わせたグループから選ばれる西洋薬の製剤である。
【0085】
実施例10は実施例7の用途を提供し、該少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬は漢方薬製剤または処方である。
【0086】
実施例11は実施例10の用途を提供し、該少なくとも1種類の抗てんかん薬は天麻、釣藤鈎、石決明、鎮肝熄風湯、天麻鈎藤飲から組み合わせたグループから選ばれる漢方薬製剤または処方である。
【0087】
実施例12は実施例1の用途を提供し、該薬剤は人類のてんかんを治療または予防するために用いられる。
【0088】
実施例13は実施例1の用途を提供し、該薬剤は人類以外の哺乳類動物のてんかんを治療または予防するために用いられる。
【0089】
実施例14は白樺樹液抽出物を製造する方法を提供し、以下のステップを含む。
ステップ1:成熟した白樺を選び、樹皮に対して切り取り処理をし、樹液を流れ出しやすくする;
ステップ2:収集器を使用して流れ出す樹液を集める;
ステップ3:室温で樹液を濾過し、樹皮の破片とそのほかの異物を取り除く;
ステップ4:低温濃縮技術を利用して、樹液中のほとんどの水分を除去することによって、高濃度の白樺樹液抽出物を得る。
【0090】
実施例15は実施例14の方法を提供し、該白樺は日本北海道で成長したものである。
【0091】
実施例16は実施例15の方法を提供し、該白樺樹液は冬か春に採集する。
【0092】
実施例17は実施例15の方法を提供し、該白樺樹液は春先に採集する。
【0093】
実施例18はてんかんを治療または予防するための医薬品の組合せを提供し、実施例14から17のいずれかで製造した白樺樹液抽出物と少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬を含み、該ほかの抗てんかん薬の用量は単独で投与する時の用量より少ない。
【0094】
実施例19は実施例18の医薬品の組合せを提供し、該白樺樹液抽出物は医薬的に受容可能な担体及び/または安定剤を含む。
【0095】
実施例20は実施例18の医薬品の組合せを提供し、該少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬はフェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェルバメート、ベンゾジアゼピン、チアガビン、ビガバトリンを組み合わせたグループから選ばれる。
【0096】
実施例21は実施例18の医薬品の組合せを提供し、該少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬はカルバマゼピンである。
【0097】
実施例22は実施例18の医薬品の組合せを提供し、該白樺樹液抽出物と該少なくとも1種類のほかの抗てんかん薬は同時に、順番にまたは間隔を置いて患者に投与する。
【0098】
本発明は所定の実施例を開示したが、当業者にとって、本発明の精神と範囲を離脱しない限り、そのほかの実施例と変形を設計できる。特許請求の範囲はあらゆる実施例と同じ効果の変形を含む。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明が提供する白樺抽出物の医薬品の組合せは高効果、安全、便利の特性を有し、てんかんを有効に治療または予防できるとともに、従来の薬剤を長期にわたって使用するために生じた副作用を減少させる。
【外国語明細書】