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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002655
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】船舶、船舶の二酸化炭素荷役方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/08 20060101AFI20241226BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B63B25/08 B
B63B25/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102971
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉野 正剛
(72)【発明者】
【氏名】雲石 隆司
(72)【発明者】
【氏名】安部 和也
(72)【発明者】
【氏名】森 英男
(57)【要約】
【課題】設備コストの上昇を抑えつつ、船体内の限られたスペースを有効に利用することができる。
【解決手段】船舶は、船体と、船体に設けられ、液化二酸化炭素を貯留可能なタンクと、船体に設けられ、気体状態の二酸化炭素を圧縮可能な圧縮機、及び圧縮機によって圧縮された気体状態の二酸化炭素を冷却して液化させる冷却部、を有する液化装置と、タンクから圧縮機に気体状態の二酸化炭素を導入可能なタンク吸入ラインと、冷却部で液化された液化二酸化炭素をタンクに戻す返送ラインと、外部からの気体状態の二酸化炭素を圧縮機に導入可能な陸上吸入ラインと、圧縮機で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、冷却部を介さずに液化装置の外部に導く導出ラインと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体に設けられ、液化二酸化炭素を貯留可能なタンクと、
前記船体に設けられ、気体状態の二酸化炭素を圧縮可能な圧縮機、及び前記圧縮機によって圧縮された気体状態の二酸化炭素を冷却して液化させる冷却部、を有する液化装置と、
前記タンクから前記圧縮機に気体状態の二酸化炭素を導入可能なタンク吸入ラインと、
前記冷却部で液化された液化二酸化炭素を前記タンクに戻す返送ラインと、
外部からの気体状態の二酸化炭素を前記圧縮機に導入可能な陸上吸入ラインと、
前記圧縮機で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、前記冷却部を介さずに前記液化装置の外部に導く導出ラインと、
を備える船舶。
【請求項2】
前記導出ラインは、前記圧縮機で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、前記タンク内に供給可能である
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記タンク内の液化二酸化炭素を船外に払出可能な払出ラインと、前記払出ラインに設けられて前記タンク内の液化二酸化炭素を圧送可能な揚荷ポンプと、を備える
請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記タンク内の液化二酸化炭素を前記タンク外に払い出す払出ラインをさらに備え、
前記導出ラインは、前記払出ラインを通して前記タンク内の液化二酸化炭素を前記タンク外に払い出す場合に、前記圧縮機で圧縮された気体状態の二酸化炭素を前記タンク内に供給する
請求項2に記載の船舶。
【請求項5】
前記タンクの外部から前記タンク内に液化二酸化炭素を積み込む積込ラインをさらに備え、
前記導出ラインは、前記積込ラインを通して前記タンクの外部から前記タンク内に液化二酸化炭素を積み込むのに先立ち、前記圧縮機で圧縮された気体状態の二酸化炭素を前記タンク内に供給可能である
請求項2に記載の船舶。
【請求項6】
複数の前記タンクが、前記船体に設けられ、
前記導出ラインは、前記圧縮機で圧縮された気体状態の二酸化炭素を一の前記タンクに導き、
前記タンク吸入ラインは、他の前記タンク内の気体状態の二酸化炭素を、前記圧縮機に導入可能である
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項7】
前記導出ラインは、前記圧縮機で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、前記タンクに接続された配管内に供給可能である
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項8】
前記圧縮機で圧縮された気体状態の二酸化炭素の供給先を、前記冷却部と前記導出ラインとの間で切り替え可能とする、ガス供給切換部、をさらに備える
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項9】
前記液化装置を複数備える
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項10】
前記タンク吸入ライン、及び前記導出ラインは、複数の前記液化装置のうちの少なくとも一つの前記液化装置の前記圧縮機に接続されている
請求項9に記載の船舶。
【請求項11】
請求項1に記載の船舶の二酸化炭素荷役方法であって、
液化二酸化炭素を前記タンクに積み込むための前準備作業として前記タンク内の圧力をドライアイス化しない三重点以上の圧力域である非固体化域圧力以上に加圧する、タンク内を非固体化域圧力以上に高める工程と、
前記タンクの揚荷ポンプを使用せずに前記タンク内の気相の圧力を移送先の圧力以上に高めて押し出し払い出す、前記タンク内を加圧して前記タンク内の液化二酸化炭素を払い出す工程と、
前記タンク内の気相の圧力が上昇しないよう液化装置により前記タンクの耐圧圧力以下に維持する、前記タンク内を耐圧圧力以下に維持する工程と、を含む
船舶の二酸化炭素荷役方法。
【請求項12】
液化二酸化炭素を貯留可能なタンクを船体に備える船舶の二酸化炭素荷役方法であって、
液化二酸化炭素を前記タンクに積み込むための前準備作業として前記タンク内の圧力をドライアイス化しない三重点以上の圧力域である非固体化域圧力以上に加圧する、タンク内を非固体化域圧力以上に高める工程と、
前記タンクの揚荷ポンプを使用せずに前記タンク内の気相の圧力を移送先の圧力以上に高めて押し出し払い出す、前記タンク内を加圧して前記タンク内の液化二酸化炭素を払い出す工程と、
前記タンク内の気相の圧力が上昇しないよう液化装置により前記タンクの耐圧圧力以下に維持する、前記タンク内を耐圧圧力以下に維持する工程と、を含む
船舶の二酸化炭素荷役方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶、船舶の二酸化炭素荷役方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されたタンク(燃料タンク)は、液化ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)をタンクに積み込むための配管(パイプライン)と、タンクから液化ガスを払い出すための配管(パイプライン)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-528119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液化ガスとして液化二酸化炭素を収容するタンク内や、液化二酸化炭素の流通する配管内では、液化二酸化炭素の圧力と温度が下がり三重点より低下した場合に、液化二酸化炭素が凝固してドライアイスが生成される可能性がある。ドライアイスが生成されると、液化二酸化炭素の流れが阻害され、タンクや配管の運用に影響を及ぼす可能性がある。このため、少なくとも液化二酸化炭素を収容するタンク、配管を備えた液化二酸化炭素設備においては、ドライアイスの生成が抑えられるように、タンク内や配管内等を加圧する必要がある。
また、液化二酸化炭素を貯留可能なタンクを備える船舶では、タンクへの入熱によりボイルオフガスが生成することでタンク内の圧力が耐圧圧力に近づいてしまう可能性が有る。この入熱による圧力上昇を抑えるため、ボイルオフガスを液化する液化装置を搭載することが検討されている。
しかしながら、タンク内や配管内等を加圧する装置に加えて液化装置を備えると、船舶の設備コスト上昇を招くとともに、装置を設置するスペースが増大して船舶が大型化してしまう可能性が有る。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、設備コストの上昇を抑えつつ、船体内の限られたスペースを有効に利用することができる船舶、船舶の二酸化炭素荷役方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶は、船体と、タンクと、液化装置と、タンク吸入ラインと、返送ラインと、陸上吸入ラインと、導出ラインと、を備えている。前記タンクは、前記船体に設けられている。前記タンクは、液化二酸化炭素を貯留可能である。前記液化装置は、前記船体に設けられている。前記液化装置は、圧縮機、及び冷却部、を有している。前記圧縮機は、気体状態の二酸化炭素を圧縮可能である。前記冷却部は、前記圧縮機によって圧縮された気体状態の二酸化炭素を冷却して液化させる。前記タンク吸入ラインは、前記タンクから前記圧縮機に気体状態の二酸化炭素を導入可能である。前記返送ラインは、前記冷却部で液化された液化二酸化炭素を前記タンクに戻す。前記陸上吸入ラインは、外部からの気体状態の二酸化炭素を前記圧縮機に導入可能である。前記導出ラインは、前記圧縮機で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、前記冷却部を介さずに前記液化装置の外部に導く。
【0007】
本開示に係る船舶の二酸化炭素荷役方法は、上記したような船舶の二酸化炭素荷役方法であって、タンク内を非固体化域圧力以上に高める工程と、前記タンク内を加圧して前記タンク内の液化二酸化炭素を払い出す工程と、前記タンク内を耐圧圧力以下に維持する工程と、を含んでいる。タンク内を非固体化域圧力以上に高める工程では、液化二酸化炭素を前記タンクに積み込むための前準備作業として前記タンク内の圧力をドライアイス化しない三重点以上の圧力域である非固体化域圧力以上に高める。前記タンク内を加圧して前記タンク内の液化二酸化炭素を払い出す工程では、前記タンクの揚荷ポンプを使用せずに前記タンク内の気体状態の二酸化炭素の圧力を、移送先の圧力以上に高めて押し出し払い出す。前記タンク内を耐圧圧力以下に維持する工程では、前記タンク内の気体状態の二酸化炭素の圧力が上昇しないよう液化装置により前記タンクの耐圧圧力以下に維持する。
【0008】
本開示に係る船舶の二酸化炭素荷役方法は、液化二酸化炭素を貯留可能なタンクを船体に備える船舶の二酸化炭素荷役方法であって、タンク内を非固体化域圧力以上に高める工程と、前記タンク内を加圧して前記タンク内の液化二酸化炭素を払い出す工程と、前記タンク内を耐圧圧力以下に維持する工程と、を含んでいる。タンク内を非固体化域圧力以上に高める工程では、液化二酸化炭素をタンクに積み込むための前準備作業として、前記タンクの圧力をドライアイス化しない三重点以上の圧力域である非固体化域圧力以上に高める。前記タンク内を加圧して前記タンク内の液化二酸化炭素を払い出す工程では、前記タンクの揚荷ポンプを使用せずに前記タンク内の気体状態の二酸化炭素の圧力を、移送先の圧力以上に高めて押し出し払い出す。前記タンク内を耐圧圧力以下に維持する工程では、前記タンク内の気体状態の二酸化炭素の圧力が上昇しないよう液化装置により前記タンクの耐圧圧力以下に維持する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の船舶によれば、設備コストの上昇を抑えつつ、船体内の限られたスペースを有効に利用することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る船舶の平面図である。
図2】本開示の実施形態に係る船舶に設けられた、タンク及び液化装置を示す図である。
図3】本開示の実施形態に係る船舶の二酸化炭素荷役方法の手順を示すフローチャートである。
図4】本開示の実施形態に係る船舶の二酸化炭素荷役方法の加圧工程において、タンク内及び二酸化炭素液ライン内を加圧する状態を示す図である。
図5】本開示の実施形態に係る船舶の二酸化炭素荷役方法の積込工程において、タンク内に液化二酸化炭素を積み込む状態を示す図である。
図6】本開示の実施形態に係る船舶の二酸化炭素荷役方法の搬送工程においてタンク内で発生するボイルオフガスを再液化する状態を示す図である。
図7】本開示の実施形態に係る船舶の二酸化炭素荷役方法における、揚荷ポンプによりタンク内の二酸化炭素を払い出す工程を示す図である。
図8】本開示の実施形態に係る船舶の二酸化炭素荷役方法における、タンク内を加圧してタンク内の液化二酸化炭素を払い出す工程を示す図である。
図9】本開示の実施形態に係る船舶の二酸化炭素荷役方法における、タンク内を加圧してタンク内の液化二酸化炭素を払い出す工程の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る船舶1、船舶1の二酸化炭素荷役方法について、図1図9を参照して説明する。
(船舶の構成)
図1に示すように、本開示の実施形態の船舶1は、船体2と、タンク11と、液化装置30と、を主に備えている。なお、液化装置30は、冗長性を考慮し、100%容量を二台装備としているが、例えば、50%容量を三台などとしても良い。
【0012】
(船体の構成)
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底(図示無し)と、上甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板からなる。船底(図示無し)は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板からなる。上甲板5は、外部に露出する全通甲板である。船体2には、例えば、船尾2b側の上甲板5上に、居住区を有する上部構造7が形成されている。
【0013】
本実施形態の船体2には、上部構造7よりも船首2a側に、二酸化炭素搭載区画(ホールド)8が形成されているが、上部構造7よりも船尾側に配置しても良い。
【0014】
(タンクの構成)
タンク11は、船体2に設けられている。本実施形態のタンク11は、二酸化炭素搭載区画8内に設けられ、船首尾方向FAに沿って複数配置されている。本実施形態のタンク11は、船首尾方向FAに間隔を空けて二個配置されている場合を例示している。本実施形態のタンク11は、水平方向に延びる円筒状をなしている。なお、タンク11は、円筒状に限られるものではない。タンク11は、球形、方形等であってもよい。また、タンク11の設置数、配置等は適宜変更可能である。
【0015】
図2は、本開示の実施形態に係る船舶に設けられた、タンク及び液化装置を示す図である。
タンク11は、液化二酸化炭素を貯留可能である。液化二酸化炭素は、本実施形態の船舶1における積荷であるが、別の積荷も搭載する形態でも良い。図2に示すように、タンク11内に液化二酸化炭素を積載した場合、タンク11内に液相と気相とが形成される。液相、すなわち液体状態の二酸化炭素である液化二酸化炭素は、タンク11内の下部に貯留されている。気相、すなわち気体状態の二酸化炭素は、タンク11内の上部に貯留されている。気体状態の二酸化炭素は、外部からの入熱によって液化二酸化炭素がタンク11内で自然に気化して生成されたボイルオフガスである。
【0016】
船舶1は、二酸化炭素液ライン51と、二酸化炭素ガスライン52とを備えている。二酸化炭素液ライン51、及び二酸化炭素ガスライン52は、マニホールド(図示せず)等に接続されている。マニホールドは、船外の貯蔵設備等から導出される外部配管を接続可能とされている。二酸化炭素液ライン51は、マニホールドを介して船外の貯蔵設備等との間で液化二酸化炭素を給排(やり取り)可能となっている。また、二酸化炭素ガスライン52は、例えば、マニホールドを介して船外の貯蔵設備等との間で気体状態の二酸化炭素を給排可能となっている。
【0017】
タンク11は、積込ライン13と、払出ライン14と、を備えている。積込ライン13、及び払出ライン14は、液接続ライン53を介して、二酸化炭素液ライン51に接続されている。
積込ライン13は、二酸化炭素液ライン51、及び液接続ライン53を通して、船外の貯蔵設備等から供給される液化二酸化炭素をタンク11内に積み込み可能とされる。積込ライン13は、タンク11の外部から例えばタンク11の頂部を貫通し、タンク11の内部を底部に向かって延びている。本実施形態の積込ライン13の先端部は、タンク11内の下部で開口している。
【0018】
払出ライン14は、液接続ライン53、及び二酸化炭素液ライン51を通して、タンク11内の液化二酸化炭素を船外に送出可能となっている。払出ライン14は、タンク11の外部から例えばタンク11の頂部を貫通し、タンク11の内部を底部に向かって延びている。本実施形態の払出ライン14の先端部(言い換えれば、下端部)には、揚荷ポンプ15が接続されている。揚荷ポンプ15は、タンク11内の液化二酸化炭素を圧送可能とされる。払出ライン14は、揚荷ポンプ15から圧送された液化二酸化炭素を、液接続ライン53、及び二酸化炭素液ライン51を通して、タンク11外(船外)に送出する。
【0019】
タンク11は、ガス吸入ライン54を更に有している。ガス吸入ライン54の一端は、二酸化炭素ガスライン52に接続されている。ガス吸入ライン54の他端は、タンク11に接続されている。ガス吸入ライン54は、他端を介してタンク11内の上部の気相と連通している。
ガス吸入ライン54の途中には、開閉弁54vが設けられている。開閉弁54vを開閉することで、ガス吸入ライン54を通したタンク11内への気体状態の二酸化炭素の給排が断続可能となっている。また、ガス吸入ライン54には、他のタンク11内の気相に連通したタンク接続ライン61が接続されている。タンク接続ライン61は、開閉弁54vよりも二酸化炭素ガスライン52に近い側のガス吸入ライン54に接続されている。
【0020】
(液化装置の構成)
液化装置30は、圧縮機31と、冷却部32と、ガス供給切換部33と、を備えている。本実施形態の船舶1は、冗長性を確保するため、二組の液化装置30を備えているが二組に限られるものではない。二組の液化装置30は、同一の構成を有しているので、以下においては、一組の液化装置30についてのみ説明を行う。二組の液化装置30は、一方の液化装置30で、後述する入口開閉弁34を開き、他方の液化装置30で入口開閉弁34を閉じたままとすることで、一方の液化装置30のみを使用可能である。
【0021】
圧縮機31は、ガス導入管55を介して、ガス吸入ライン54に接続されている。圧縮機31は、ガス吸入ライン54からガス導入管55を介して導入される気体状態の二酸化炭素を圧縮可能とされている。ここで、圧縮機31は、開閉弁54vを開いた状態で、タンク11内の気相から、ガス吸入ライン54、及びガス導入管55を通して導入される気体状態の二酸化炭素を圧縮可能である。また圧縮機31は、開閉弁54vを閉じた状態で、タンク接続ライン61、ガス吸入ライン54からガス導入管55を介して導入される気体状態の二酸化炭素を圧縮可能とされている。この場合、ガス導入管55は、タンク11から圧縮機31に気体状態の二酸化炭素を導入可能なタンク吸入ライン55Tとして機能する。
【0022】
また、圧縮機31は、例えば、二酸化炭素ガスライン52、ガス吸入ライン54、及びガス導入管55を通して導入される気体状態の二酸化炭素を圧縮可能である。この場合、ガス導入管55は、タンク11の外部からの気体状態の二酸化炭素を圧縮機31に導入可能な陸上吸入ライン55Sとして機能する。
【0023】
ガス導入管55の途中には、入口開閉弁34と、液滴除去器35と、が設けられている。入口開閉弁34を開閉することで、ガス導入管55を通した、圧縮機31への気体状態の二酸化炭素の導入が断続可能とされている。液滴除去器35は、いわゆるノックアウトドラムであり、ガス導入管55を通して導入される気体状態の二酸化炭素に含まれる液滴を除去する。
【0024】
圧縮機31の出口側には、冷却ライン56と、導出ライン57とが分岐接続されている。冷却ライン56は、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を冷却部32に送る。導出ライン57は、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、冷却部32を介さずに、液化装置30の外部に導く。
【0025】
ガス供給切換部33は、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素の供給先を、冷却ライン56と導出ライン57との間で切り換え可能となっている。冷却ライン56の途中には、第一供給切換弁33vが設けられている。導出ライン57の途中には、第二供給切換弁33zが設けられている。ガス供給切換部33は、これら第一供給切換弁33v、及び第二供給切換弁33zを備えている。ガス供給切換部33は、第一供給切換弁33v、及び第二供給切換弁33zを開閉することで、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素の供給先を切り換える。
【0026】
冷却部32は、圧縮機31で圧縮され冷却ライン56を通して送り込まれた気体状態の二酸化炭素を冷却して液化させる。冷却部32は、冷媒用圧縮機38と、凝縮器39と、膨張弁40と、熱交換器41と、冷媒回路42と、を備えている。冷媒用圧縮機38、凝縮器39、膨張弁40、及び熱交換器41は、冷媒回路42の途中に設けられている。冷媒用圧縮機38は、冷媒回路42を構成する冷媒配管内を流れる冷媒を圧縮する。凝縮器39は、大気や海水等と、冷媒配管内を流れる冷媒との間で熱交換を行い、冷媒を凝縮させる。膨張弁40は、凝縮器39を経た冷媒を膨張させる。熱交換器41は、凝縮器39で膨張されて冷媒配管内を流れる冷媒と、冷却ライン56を通して冷却部32に送り込まれる気体状態の二酸化炭素との間で熱交換を行う。熱交換器41は、冷媒との熱交換により、気体状態の二酸化炭素を冷却して液化二酸化炭素を生成する。
【0027】
熱交換器41で生成された液化二酸化炭素は、返送ライン58を通して、タンク11へと返送される。返送ライン58の途中には、タンク11へと液化二酸化炭素を圧送するためのポンプ43が設けられている。
【0028】
本実施形態の返送ライン58は、例えばタンク11の頂部に接続されている。タンク11の上部には、放出部45が配置されている。放出部45は、熱交換器41から返送ライン58を通してタンク11に返送される液化二酸化炭素を、タンク11内の上部に放出する。なお、タンク11が他のタンク形状、例えば、円形タンクや縦長円筒タンクである場合、放出部45は、水平に分配する配管を備えていなくても良い。
また、ポンプ43とタンク11との間の返送ライン58には、液供給ライン62が接続されている。液供給ライン62は、液化二酸化炭素を他のタンク11へ供給可能である。
【0029】
導出ライン57は、開閉弁54vよりもタンク11に近い側のガス吸入ライン54に接続されている。また、導出ライン57の途中には、導出開閉弁57vが設けられている。この導出開閉弁57vを開閉することで、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素のガス吸入ライン54への供給を断続可能である。
さらに、導出ライン57には、導出開閉弁57vよりも液化装置30に近い側に、二酸化炭素液ライン51に連通する連通ライン59が接続されている。連通ライン59の途中には、連通開閉弁59vが設けられている。連通開閉弁59vを開閉することで、導出ライン57と二酸化炭素液ライン51との連通が断続可能となっている。
【0030】
このような船舶1において、開閉弁54v、入口開閉弁34、第一供給切換弁33v、第二供給切換弁33z、導出開閉弁57v、連通開閉弁59vの開閉は、オペレータが遠隔操作で行ってもよいし、機側操作により行ってもよい。タンク11は、タンク11内の気相の圧力を検出する圧力センサー71を備えている。オペレータは、圧力センサー71による、タンク11内の気相の圧力に応じて、開閉弁54v、入口開閉弁34、第一供給切換弁33v、第二供給切換弁33z、導出開閉弁57v、連通開閉弁59vを開閉操作する。
【0031】
(船舶の二酸化炭素荷役方法の手順)
図3は、船舶における二酸化炭素荷役方法の手順を示すフローチャートである。図4は、加圧工程において、タンク内及び二酸化炭素液ライン内を加圧する状態を示す図である。
図3に示すように、船舶1における二酸化炭素荷役方法S1は、加圧工程(タンク内を非固体化域圧力以上に高める工程)S10と、積込工程S20と、搬送工程S30と、払出工程S40と、回航工程S50と、を含んでいる。
図3図4に示すように、加圧工程S10では、まず、タンク11内、及び二酸化炭素液ライン51内を、気体状態の二酸化炭素で加圧する。これには、開閉弁54v、第一供給切換弁33vを閉じ、入口開閉弁34、第二供給切換弁33z、導出開閉弁57v、及び連通開閉弁59vを開く。この状態で、圧縮機31を作動させる。そして、船外の二酸化炭素貯蔵設備側から、二酸化炭素ガスライン52を通して、気体状態の二酸化炭素を送り込む。すると、送り込まれた気体状態の二酸化炭素は、陸上吸入ライン55Sを通して、タンク11の外部から圧縮機31へと導入される。導入された気体状態の二酸化炭素は、圧縮機31で圧縮され、導出ライン57を通して、液化装置30の外部に導出される。導出された気体状態の二酸化炭素の一部は、ガス吸入ライン54を通して、タンク11内に送り込まれ、タンク11内を加圧する。また、導出された気体状態の二酸化炭素の残部は、連通ライン59を通して、二酸化炭素液ライン51内に送り込まれ、二酸化炭素液ライン51内を加圧する。このとき、圧力センサー71で検出されるタンク11内の気相の圧力が、ドライアイス化しない三重点以上の圧力域に予め設定された圧力(非固体化域圧力)以上となるまで、加圧を行う。
加圧工程S10では、タンク11内、及び二酸化炭素液ライン内を、予め設定された圧力以上に加圧した後、圧縮機31を停止させるとともに、入口開閉弁34、第二供給切換弁33z、導出開閉弁57v、及び連通開閉弁59vを閉じる。
【0032】
図5は、積込工程S20において、タンク内に液化二酸化炭素を積み込む状態を示す図である。
図5に示すように、積込工程S20では、更に、船外の貯蔵設備等から、液化二酸化炭素を、二酸化炭素液ライン51、液接続ライン53、及び積込ライン13を通してタンク11内に積み込む。このとき、タンク11内に液化二酸化炭素を積み込むのに伴って、タンク11内の圧力が上昇するので、開閉弁54vを開き、タンク11内の気体状態の二酸化炭素を、ガス吸入ライン54、及び二酸化炭素ガスライン52を通して、船外の貯蔵設備側へと返送する。
積込工程S20では、所定量の液化二酸化炭素をタンク11内に積み込んだ後、開閉弁54vを閉じ、船外の貯蔵設備からの液化二酸化炭素の積込を完了する。
上記と同様の手順で、各タンク11への液化二酸化炭素の積込を行う。
【0033】
図6は、搬送工程S30においてタンク内で発生するボイルオフガスを再液化する状態を示す図である。
搬送工程S30では、各タンク11に積み込んだ液化二酸化炭素を、所定の目的地まで船舶1を航行させることで搬送する。
液化二酸化炭素の搬送中、外部からタンク11内への入熱により、タンク11内の液化二酸化炭素が蒸発し、ボイルオフガス(気体状態の二酸化炭素)が生成される。そこで、搬送工程S30では、タンク11内の圧力を予め設定された圧力値以下に維持する工程S31を実施する。この工程S31では、圧力センサー71で検出されるタンク11内の気相の圧力が、予め設定された圧力値以上(例えば、タンク耐圧に応じた圧力しきい値以上)となった場合、図6に示すように、第二供給切換弁33z、導出開閉弁57v、連通開閉弁59vを閉じたまま、開閉弁54v、入口開閉弁34、第一供給切換弁33vを開き、圧縮機31、冷却部32の冷媒用圧縮機38、及びポンプ43を作動させる。これにより、タンク11内の気体状態の二酸化炭素が、ガス吸入ライン54からタンク吸入ライン55Tを通して圧縮機31に導入される。
【0034】
圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素は、冷却ライン56を通して冷却部32に送り込まれ、熱交換器41で冷媒との熱交換を行うことにより、冷却して液化される。このようにして生成された液化二酸化炭素は、返送ライン58を通してタンク11へと返送される。
その後、工程S31では、圧力センサー71で検出されるタンク11内の気相の圧力が、予め設定された圧力値未満となった場合、開閉弁54v、入口開閉弁34、第一供給切換弁33vを閉じるとともに、圧縮機31、冷却部32の冷媒用圧縮機38、及びポンプ43の作動を停止させる。
【0035】
払出工程S40は、目的地に到着した後に実施される。この払出工程S40では、船外の貯蔵設備に、タンク11内の液化二酸化炭素を払い出して揚荷する。払出工程S40は、揚荷ポンプ15によりタンク11内の液化二酸化炭素を払い出す工程S41と、タンク11内を加圧してタンク11内の液化二酸化炭素を払い出す工程S42と、を含んでいる。
【0036】
図7は、揚荷ポンプによりタンク内の二酸化炭素を払い出す工程を示す図である。
図7に示すように、揚荷ポンプ15によりタンク11内の液化二酸化炭素を払い出す工程S41では、入口開閉弁34、第一供給切換弁33v、第二供給切換弁33z、導出開閉弁57v及び連通開閉弁59vを閉じ、開閉弁54vを開く。この工程S41では、揚荷ポンプ15を作動させ、タンク11内の液化二酸化炭素を、払出ライン14、液接続ライン53、及び二酸化炭素液ライン51を通して、船外の二酸化炭素貯蔵設備へと払い出して陸揚げする。この陸揚げに伴いタンク11内の液面が低下してタンク11内の気相容積が増加する。そのため工程S41では、タンク11内の気相容積の増加分を補うために、二酸化炭素ガスライン52、ガス吸入ライン54、及び開閉弁54v経由して、船外の貯蔵設備からタンク11に気体状態の二酸化炭素を供給する。
【0037】
図8は、払出工程において、タンク内を加圧してタンク内の液化二酸化炭素を払い出す工程を示す図である。
図8に示すように、タンク11内を加圧してタンク11内の液化二酸化炭素を払い出す工程S42では、開閉弁54v、第一供給切換弁33v、及び連通開閉弁59vを閉じ、入口開閉弁34、第二供給切換弁33z、及び導出開閉弁57vを開く。そして工程S42では、この状態で、圧縮機31を作動させる。これにより、気体状態の二酸化炭素が、二酸化炭素ガスライン52を通して、船外の貯蔵設備側からタンク11に送り込まれる。
【0038】
具体的には、上記船外の貯蔵設備側から送り込まれた気体状態の二酸化炭素は、陸上吸入ライン55Sを通して、タンク11の外部から圧縮機31へと導入される。導入された気体状態の二酸化炭素は、圧縮機31で圧縮され、導出ライン57を通して、液化装置30の外部に導出される。この導出された気体状態の二酸化炭素は、ガス吸入ライン54を通して、タンク11内に送り込まれる。これにより、タンク11内の液化二酸化炭素が圧力差により押し出される。工程S42は、液化二酸化炭素の払出しが終了するまで実施する。
【0039】
図9は、タンク内を加圧してタンク11内の液化二酸化炭素を払い出す工程の他の例を示す図である。
図9に示すように、タンク11内を加圧してタンク11内の液化二酸化炭素を払い出す工程S42では、揚荷ポンプ15を使わずにタンク11内を加圧して、圧力差によりタンク11内の液化二酸化炭素を払い出す。この場合、タンク11内の液化二酸化炭素は、直接陸揚げするのではなく、他のタンク11(図9に図示されていないタンク11)から気体状態の二酸化炭素を吸入、圧縮するようにしてもよい。また、他のタンク11から吸入された気体状態の二酸化炭素により加圧された圧力を利用して、気体状態の二酸化炭素を吸入したそのタンク11(図9に図示されていない他のタンク11)へ液化二酸化炭素を返送(言い換えれば、移送)するようにしても良い。他のタンク11に移送された液化二酸化炭素は、他のタンク11の揚荷ポンプ15(図示せず)により、図7に示した工程S41と同様の要領にて払い出され、陸揚げされる。
また工程S42では、図8または図9に示したような要領により、タンク11内の液化二酸化炭素の払い出しが完了し、タンク11内の気相の圧力が、二酸化炭素の非固定化域圧力以上であることを確認した後、入口開閉弁34、第二供給切換弁33z、及び導出開閉弁57vを閉じ、圧縮機31を停止させる。
【0040】
回航工程S50では、払出工程S40の完了後、新たにタンク11に液化二酸化炭素を積み込むため、船舶1を次の目的地に向けて回航する。なお、回航工程S50では、搬送工程S30を行う場合よりもタンク11内の液化二酸化炭素の液位が低い点でのみ異なるため、図6を援用して説明する。
回航中は、予め設定された圧力値以下に維持する工程(タンク11の耐圧圧力以下に維持する工程)S51を実施する。この予め設定された圧力値以下に維持する工程S51では、図6に示すように、搬送工程S30におけるタンク内の圧力を予め設定された圧力値以下に維持する工程S31と同様に、タンク11内への入熱により発生するボイルオフガス(気体状態の二酸化炭素)の圧力を、予め設定された圧力(耐圧圧力)値以下(例えば、タンク耐圧に応じた圧力しきい値以下)に維持する。
このようにして船舶1は、回航工程S50を行いながら、回航され、次の目的地に到着した後は、工程S20に戻り、上記と同様の手順を繰り返す。
【0041】
(作用効果)
上記実施形態の船舶1では、液化装置30を備えている。そして、液化装置30は、タンク吸入ライン55Tを通してタンク11から導入した気体状態の二酸化炭素を、液化装置30の圧縮機31で圧縮し、さらに圧縮された気体状態の二酸化炭素を冷却部32で冷却して液化させている。液化された二酸化炭素(液化二酸化炭素)は、返送ラインを通してタンク11に戻される。このようにして、タンク11内で液化二酸化炭素が蒸発することで生成されたボイルオフガス(気体状態の二酸化炭素)を再液化してタンク11内に戻すことができる。
また、この船舶1においては、陸上吸入ライン55Sを通して、タンク11の外部からの気体状態の二酸化炭素を圧縮機31に導入可能である。陸上吸入ライン55Sを通して導入され、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素は、導出ライン57を通して、冷却部32を介さずに液化装置30の外部に導くことができる。このようにして、導出ライン57を通して、加圧された気体状態の二酸化炭素を、タンク11内やタンク11に接続された配管内等に導くことで、ドライアイスが生成されることが抑えられる。
これにより、液化装置30に備えた圧縮機31を、ボイルオフガスを再液化させる用途と、ドライアイスの生成が抑えられるように、タンク11内や配管内等を加圧する用途との両方に用いることができる。したがって、それぞれの用途に応じて個別に圧縮機31を設ける必要がなくなるため、設備コストの上昇を抑えつつ、船体2内の限られたスペースを有効に利用することができる。
【0042】
また、上記実施形態では、導出ライン57を通して、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、タンク11内に供給することで、タンク11内の圧力を高めることができる。これにより、液化二酸化炭素をタンク11内に送り込む前に、圧縮機31で圧縮した気体状態の二酸化炭素でタンク11内を加圧することができ、ドライアイス生成が抑えられる。また、複数のタンク11を備える場合、一のタンク11から他のタンク11に液化二酸化炭素を移送する際、圧縮機31で圧縮した気体状態の二酸化炭素を一のタンク11内に送り込むことで、一のタンク11内の液化二酸化炭素を圧力差によって押し出し、他のタンク11へと移送することができる。
【0043】
さらに、上記実施形態では、払出ライン14を通してタンク11内の液化二酸化炭素をタンク11外に払い出す場合に、導出ライン57を通して、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素をタンク11内に供給することで、タンク11内の液化二酸化炭素を圧力差によって押し出しタンク11外に払い出すことができる。
【0044】
また、上記実施形態では、積込ライン13を通してタンク11の外部からタンク11内に液化二酸化炭素を積み込むのに先立ち、導出ライン57を通して、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素をタンク11内に供給することで、タンク11内を加圧することができる。これにより、タンク11内に液化二酸化炭素を積み込む際、タンク11内で液化二酸化炭素が減圧されてドライアイスが生成されることが、有効に抑えられる。
【0045】
さらに、上記実施形態では、他のタンク11内の気体状態の二酸化炭素を、タンク吸入ライン55Tを通して圧縮機31に導入し、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、導出ライン57を通して一のタンク11に導くことで、一のタンク11内を加圧することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、導出ライン57を通して、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、タンク11に接続された配管内に供給することで、配管内を加圧することができる。これにより、配管内でドライアイスが生成されることが抑えられる。
【0047】
さらに、上記実施形態では、タンク11内のボイルオフガスを再液化する場合には、ガス供給切換部33で、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、冷却部32に送り込むことができる。また、タンク11の外部から導入した気体状態の二酸化炭素を、導出ライン57を通して液化装置30の外部に導く場合、ガス供給切換部33で、気体状態の二酸化炭素を導出ライン57に送り込むことができる。このようにして、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素の用途に応じて、気体状態の二酸化炭素の供給先を容易に切り替えることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、船舶1は、液化装置30を複数備えている。
これにより、複数の液化装置30のいずれかにおいて、故障等のトラブルが生じた場合に、他の液化装置30を用いることができる。これにより、冗長性が高められる。
【0049】
さらに、上記実施形態では、タンク吸入ライン55T、及び導出ライン57が複数の液化装置30の圧縮機31に接続されている。
これにより、複数の液化装置30の圧縮機31を、ボイルオフガスを再液化させる用途と、ドライアイスの生成が抑えられるように、タンク11内や配管内等を加圧する用途とに用いることができる。
【0050】
また、上記実施形態における船舶1の二酸化炭素荷役方法S1では、揚荷ポンプを使用せず、上記の圧縮機31によりタンク11内の二酸化炭素圧力を高め、タンク11内に貯留された液化二酸化炭素をタンク11外に払い出すことができる。
【0051】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記実施形態では、タンク11の外部から導入した気体状態の二酸化炭素を圧縮機31で圧縮するようにしたが、導出ライン57を通して液化装置30の外部に導出される気体状態の二酸化炭素の用途については、上記したものに限らない。
例えば、複数のタンク11間で、液化二酸化炭素を移送する際、圧縮機31で圧縮した気体状態の二酸化炭素を利用することができる。例えば、タンク接続ライン61を通して他のタンク11から導入した気体状態の二酸化炭素を、タンク11内に送り込むことで、タンク11内を加圧し、タンク11内の液化二酸化炭素をタンク11から押し出すことができる。押し出された液化二酸化炭素は、払出ライン14もしくは積込ライン13、液供給ライン62を通して他のタンク11へと押し出すことができる。
【0052】
また、例えば、上記実施形態では、液化装置30を二組備えているが、二組の液化装置30は、複数のタンク11の各々に対し、二組ずつ備えるようにしても良いし、複数のタンク11に対し、二組の液化装置30を備えるようにしてもよい。
【0053】
<付記>
実施形態に記載の船舶1、船舶1の二酸化炭素荷役方法S1は、例えば以下のように把握される。
【0054】
(1)第1の態様に係る船舶1は、船体2と、前記船体2に設けられ、液化二酸化炭素を貯留可能なタンク11と、前記船体2に設けられ、気体状態の二酸化炭素を圧縮可能な圧縮機31、及び前記圧縮機31によって圧縮された気体状態の二酸化炭素を冷却して液化させる冷却部32、を有する液化装置30と、前記タンク11から前記圧縮機31に気体状態の二酸化炭素を導入可能なタンク吸入ライン55Tと、前記冷却部32で液化された二酸化炭素を前記タンク11に戻す返送ライン58と、外部からの気体状態の二酸化炭素を前記圧縮機31に導入可能な陸上吸入ライン55Sと、前記圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、前記冷却部32を介さずに前記液化装置30の外部に導く導出ライン57と、を備えている。
【0055】
これにより、液化装置30に備えた圧縮機31を、ボイルオフガスを再液化させる用途と、ドライアイスの生成が抑えられるように、タンク11内や配管内等を加圧する用途とに用いることができる。したがって、それぞれの用途に応じて個別に圧縮機31を備える必要性が抑えられる。その結果、設備コストの上昇を抑えつつ、船体2内の限られたスペースを有効に利用することができる。
【0056】
(2)第2の態様に係る船舶1は、(1)の船舶1であって、前記導出ライン57は、前記圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、前記タンク11内に供給可能である。
【0057】
これにより、液化二酸化炭素をタンク11内に送り込む前に、圧縮機31で圧縮した気体状態の二酸化炭素でタンク11内を加圧することができ、ドライアイス生成が抑えられる。また、複数のタンク11を備える場合、一のタンク11から他のタンク11に液化二酸化炭素を移送する際、圧縮機31で圧縮した気体状態の二酸化炭素を一のタンク11内に送り込むことで、一のタンク11内の液化二酸化炭素を圧力差によって押し出し、他のタンク11へと移送することができる。
【0058】
(3)第3の態様に係る船舶1は、(2)の船舶1であって、前記タンク11内の液化二酸化炭素を船外に払出可能な払出ライン14と、前記払出ライン14に設けられて前記タンク11内の液化二酸化炭素を圧送可能な揚荷ポンプ15と、を備える。
これにより、揚荷ポンプ15を作動させることで、タンク11内の液化二酸化炭素を、払出ライン14を介して船外に払い出し可能となる。
【0059】
(4)第4の態様に係る船舶1は、(2)の船舶1であって、前記タンク11内の液化二酸化炭素を前記タンク11外に払い出す払出ライン14をさらに備え、前記導出ライン57は、前記払出ライン14を通して前記タンク11内の液化二酸化炭素を前記タンク11外に払い出す場合に、前記圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を前記タンク11内に供給する。
【0060】
これにより、払出ライン14を通してタンク11内の液化二酸化炭素をタンク11外に払い出す場合に、導出ライン57を通して、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素をタンク11内に供給することで、タンク11内の液化二酸化炭素を圧力差によってタンク11外に払い出すことができる。
【0061】
(5)第5の態様に係る船舶1は、(2)の船舶1であって、前記タンク11の外部から前記タンク11内に液化二酸化炭素を積み込む積込ライン13をさらに備え、前記導出ライン57は、前記積込ライン13を通して前記タンク11の外部から前記タンク11内に液化二酸化炭素を積み込むのに先立ち、前記圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を前記タンク11内に供給可能である。
【0062】
これにより、積込ライン13を通してタンク11の外部からタンク11内に液化二酸化炭素を積み込むのに先立ち、導出ライン57を通して、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素をタンク11内に供給することで、タンク11内を加圧することができる。したがって、タンク11内に液化二酸化炭素を積み込む際、タンク11内で液化二酸化炭素が減圧されてドライアイスが生成されることが、有効に抑えられる。
【0063】
(6)第6の態様に係る船舶1は、(1)から(5)の何れか一つの船舶1であって、複数の前記タンク11が、前記船体2に設けられ、前記導出ライン57は、前記圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を一の前記タンク11に導き、前記タンク吸入ライン55Tは、他の前記タンク11内の気体状態の二酸化炭素を、前記圧縮機31に導入可能である。
【0064】
これにより、他のタンク11内の気体状態の二酸化炭素を、タンク吸入ライン55Tを通して圧縮機31に導入し、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、導出ライン57を通して一のタンク11に導いて、一のタンク11内を加圧することができる。
【0065】
(7)第7の態様に係る船舶1は、(1)から(6)の何れか一つの船舶1であって、前記導出ライン57は、前記圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、前記タンク11に接続された配管内に供給可能である。
【0066】
これにより、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、導出ライン57を通してタンク11に接続された配管内に供給して、配管内を加圧することができる。これにより、配管内でドライアイスが生成されることが抑えられる。
【0067】
(8)第8の態様に係る船舶1は、(1)から(7)の何れか一つの船舶1であって、前記圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素の供給先を、前記冷却部32と前記導出ライン57との間で切り替え可能とする、ガス供給切換部33、をさらに備える。
【0068】
これにより、タンク11内のボイルオフガスを再液化する場合には、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素を、冷却部32に送り込むことができる。また、タンク11の外部から導入した気体状態の二酸化炭素を、導出ライン57を通して液化装置30の外部に導く場合、気体状態の二酸化炭素を導出ライン57に送り込むことができる。このようにして、圧縮機31で圧縮された気体状態の二酸化炭素の用途に応じて、気体状態の二酸化炭素の供給先を容易に切り替えることができる。
【0069】
(9)第9の態様に係る船舶1は、(1)から(8)の何れか一つの船舶1であって、前記液化装置30を複数備える。
【0070】
これにより、複数の液化装置30の何れかにおいて、故障等のトラブルが生じた場合に、他の液化装置30を用いることができる。これにより、冗長性が高められる。
【0071】
(10)第10の態様に係る船舶1は、(9)の船舶1であって、前記陸上吸入ライン55S、及び前記導出ライン57は、複数の前記液化装置30のうちの少なくとも一つの前記液化装置30の前記圧縮機31に接続されている。
【0072】
これにより、複数の液化装置30のうちの少なくとも一つの液化装置30の圧縮機31を、ボイルオフガスを再液化させる用途と、ドライアイスの生成が抑えられるように、タンク11内や配管内等を加圧する用途とに用いることができる。
【0073】
(11)第11の態様に係る船舶1の二酸化炭素荷役方法S1は、(1)から(10)の何れか一つの船舶1の二酸化炭素荷役方法S1であって、液化二酸化炭素を前記タンク11に積み込むための前準備作業として前記タンク11内の圧力をドライアイス化しない三重点以上の圧力域である非固体化域圧力以上に加圧する、タンク11内を非固体化域圧力以上に高める工程S10と、前記タンク11の揚荷ポンプ15を使用せずに前記タンク11内の気相の圧力を移送先の圧力以上に高めて押し出し払い出す、前記タンク11内を加圧して前記タンク11内の液化二酸化炭素を払い出す工程S42と、前記タンク11内の気相の圧力が上昇しないよう液化装置30により前記タンク11の耐圧圧力以下に維持する、前記タンク11の耐圧圧力以下に維持する工程S51と、を含む。
【0074】
これにより、タンク11への液化二酸化炭素の積み込みが開始された場合に、タンク11内に積み込まれた液化二酸化炭素の圧力低下によるドライアイス生成を抑えることができる。
【0075】
(12)第12の態様に係る船舶1の二酸化炭素荷役方法S1は、液化二酸化炭素を貯留可能なタンク11を船体2に備える船舶1の二酸化炭素荷役方法であって、液化二酸化炭素を前記タンク11に積み込むための前準備作業として前記タンク11内の圧力をドライアイス化しない三重点以上の圧力域である非固体化域圧力以上に加圧する、タンク11内を非固体化域圧力以上に高める工程S10と、前記タンク11の揚荷ポンプ15を使用せずに前記タンク11内の気相の圧力を移送先の圧力以上に高めて押し出し払い出す、前記タンク11内を加圧して前記タンク11内の液化二酸化炭素を払い出す工程S42と、前記タンク11内の気相の圧力が上昇しないよう液化装置30により前記タンク11の耐圧圧力以下に維持する、前記タンク11内を耐圧圧力以下に維持する工程S51と、を含む。
【0076】
これにより、タンク11への液化二酸化炭素の積み込みが開始された場合に、タンク11内に積み込まれた液化二酸化炭素の圧力低下によるドライアイス生成を抑えることができる。
【符号の説明】
【0077】
1…船舶 2…船体 2a…船首 2b…船尾 3A、3B…舷側 5…上甲板 7…上部構造 8…二酸化炭素搭載区画 11…タンク 13…積込ライン 14…払出ライン 15…揚荷ポンプ 30…液化装置 31…圧縮機 32…冷却部 33…ガス供給切換部 33v…第一供給切換弁 33z…第二供給切換弁 34…入口開閉弁 35…液滴除去器 38…冷媒用圧縮機 39…凝縮器 40…膨張弁 41…熱交換器 42…冷媒回路 43…ポンプ 45…放出部 51…二酸化炭素液ライン 52…二酸化炭素ガスライン 53…液接続ライン 54…ガス吸入ライン 54v…開閉弁 55…ガス導入管 55S…陸上吸入ライン 55T…タンク吸入ライン 56…冷却ライン 57…導出ライン 57v…導出開閉弁 58…返送ライン 59…連通ライン 59v…連通開閉弁 61…タンク接続ライン 62…液供給ライン 71…圧力センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9