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特開2025-26939先駆制御性細胞栄養芽細胞およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026939
(43)【公開日】2025-02-26
(54)【発明の名称】先駆制御性細胞栄養芽細胞およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20250218BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20250218BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20250218BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20250218BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20250218BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20250218BHJP
【FI】
C12N5/071 ZNA
C12N5/10
A61K8/02
A61K8/64
A61Q19/00
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/12
A61K9/06
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/70
A61K9/70 401
A61K38/19
A61K38/20
A61K38/18
A61P17/00
A61P43/00 121
A61K35/12
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P3/10
A61P11/00
A61P11/06
A61P13/12
A61P15/00
A61P17/06
A61P19/00
A61P19/02
A61P19/10
A61P19/08
A61P21/00
A61P21/04
A61P25/00
A61P27/02
A61P31/00
A61P31/12
A61P31/10
A61P31/04
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P37/06
A61P43/00 105
A61P29/00 101
A61P25/28
A61P1/02
A61P7/00
A61P25/02
A61P29/00
C12N5/071
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024201025
(22)【出願日】2024-11-18
(62)【分割の表示】P 2021566167の分割
【原出願日】2020-05-05
(31)【優先権主張番号】62/843,925
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514149598
【氏名又は名称】アクセラレイテッド・バイオサイエンシズ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジャウ-ナン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユータ
(72)【発明者】
【氏名】リー,トニー・トゥン-イーン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】現在の胚幹細胞およびiPS細胞のある種の欠点を克服する代替としての、種々の疾患または状態を処置(治療)するための幹細胞療法を提供する。
【解決手段】in vitroで産生される特定の細胞表面タンパク質およびその組合せを発現する先駆制御性細胞栄養芽細胞およびその組成物、さらにその細胞およびその組成物を利用することによって障害(例えばがん、炎症、または自己免疫疾患)または状態(例えば皮膚の状態)を処置する方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)であって、
(i)前記prCTBが、ベータ-ホルモンヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、CD56、インスリン、ヒートショックプロテイン90(HSP90)、CD4、CD16、CD107a、CD8、インターロイキン15(IL-15)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、CD11b、CD49f、CD3、CD19、CD34、またはそれらの任意の組合せを発現し、かつ
(ii)前記prCTBが、p53、Ki67、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、またはそれらの任意の組合せを発現する、
単離された先駆制御性細胞栄養芽細胞。
【請求項2】
CD4、CD16、CD56、CD107a、CD8、またはそれらの任意の組合せを発現する、請求項1に記載のprCTB。
【請求項3】
先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を含む細胞の単離された集団であって、
(i)前記集団が、ベータ-ホルモンヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、CD56、インスリン、ヒートショックプロテイン90(HSP90)、CD4、CD16、CD107a、CD8、インターロイキン15(IL-15)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、CD11b、CD49f、CD3、CD19、CD34、またはそれらの任意の組合せを発現し、かつ
(ii)前記集団が、p53、Ki67、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、またはそれらの任意の組合せを発現する、
細胞の単離された集団。
【請求項4】
前記集団の少なくとも約10%が、CD16およびCD56を発現するprCTBである、請求項3に記載の細胞の集団。
【請求項5】
前記集団の少なくとも約2%が、CD4を発現するprCTBである、請求項3または4に記載の細胞の集団。
【請求項6】
前記集団の少なくとも約2%が、CD8を発現するprCTBである、請求項3から5のいずれか一項に記載の細胞の集団。
【請求項7】
前記集団の少なくとも約5%が、CD107を発現するprCTBである、請求項3から6のいずれか一項に記載の細胞の集団。
【請求項8】
先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を含む細胞の単離された集団であって、
(i)前記集団の少なくとも約10%が、CD16およびCD56を発現するprCTBであるか、
(ii)前記集団の少なくとも約2%が、CD4を発現するprCTBであるか、
(iii)前記集団の少なくとも約2%が、CD8を発現するprCTBであるか、もしくは
(iv)前記集団の少なくとも約5%が、CD107を発現するprCTBであるか、または
それらの任意の組合せである、細胞の単離された集団。
【請求項9】
(i)前記集団の少なくとも約10%が、CD16およびCD56を発現するprCTBであり、
(ii)前記集団の少なくとも約2%が、CD4を発現するprCTBであり、
(iii)前記集団の少なくとも約2%が、CD8を発現するprCTBであり、かつ
(iv)前記集団の少なくとも約5%が、CD107を発現するprCTBである、
請求項3から8のいずれか一項に記載の細胞の集団。
【請求項10】
前記集団の少なくとも約2%が、CD16、CD56、およびCD107を発現するprCTBである、請求項3から9のいずれか一項に記載の細胞の集団。
【請求項11】
前記prCTBまたは複数の前記prCTBが、インターロイキン15(IL-15)を発現する、請求項1から10のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項12】
前記prCTBまたは複数の前記prCTBが、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、またはそれらの任意の組合せを発現する、請求項1から11のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項13】
前記prCTBまたは複数の前記prCTBが、ベータ-ホルモンヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)、可溶性ヒト白血球抗原G(sHLA-G)、トランスフォーメーション成長因子β1(TGF-β1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)、CD105、CD146、またはそれらの任意の組合せをさらに発現する、請求項1から12のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項14】
前記prCTBまたは複数の前記prCTBが、シンシチン、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、またはそれらの組合せを欠いている、請求項1から13のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項15】
前記prCTBまたは複数の前記prCTBが、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せ、または上記のいずれかを運搬するエキソソームを分泌する、請求項1から14のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項16】
前記サイトカインが、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5(CCL5)、単球ケ
モアトラクタントプロテイン-1(MCP-1)、単球ケモアトラクタントプロテイン-1(MCP-3)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CCL1)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド2(CCL2)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド11(CCL11)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド24(CCL24)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド26(CCL26)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド22(CCL22)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド10(CCL10)、フラクタルカイン、およびケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド4(CCL4)、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項15に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項17】
前記サイトカインが、インターロイキン1α(IL-1α)、インターロイキン1β(IL-1β)、インターロイキン(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン12p40(IL-12p40)、インターロイキン13(IL-13)、インターロイキン15(IL-15)、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項15または16に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項18】
前記サイトカインが、インターフェロンα(IFN-α)またはインターフェロンγ(IFN-γ)を含む、請求項15から17のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項19】
前記成長因子が、血小板由来成長因子ホモダイマーAA(PDGF-AA)、PDGFホモダイマーBB(PDGF-BB)、PDGFヘテロダイマー(PDGF-AB)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリータンパク質、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L)、可溶性CD40リガンド(sCD40L)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン1β(IL-1β)、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項15から18のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項20】
前記prCTBまたは複数の前記prCTBが、イムノブロット法によって測定して、前記単離されたprCTBがin vitroで分化した元の前駆細胞よりも高いレベルの活性化されたシグナルトランスデューサー/転写アクチベーター3(STAT3)または転写因子c-JUNを有する、請求項1から19のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項21】
前記prCTBが、イムノブロット法によって測定して、前記単離されたprCTBがin vitroで分化した元の前駆細胞よりも少なくとも約1.1、1.2、1.5、1.5、2、2.2、2.5、2.8、3、3.5、4、5、8、10倍高いレベルの活性化されたシグナルトランスデューサー/転写アクチベーター3(STAT3)または転写因子c-JUNを有する、請求項1から20のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項22】
前記prCTBが、イムノブロット法によって測定して、前記単離されたprCTBがin vitroで分化した元の前駆細胞よりも少なくとも約1.1、1.2、1.5、1.5、2、2.2、2.5、2.8、3、3.5、4、5、8、10倍高いレベルのSOX2タンパク質を発現する、請求項1から21のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項23】
前記単離されたprCTBが、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、Ki67、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、p53、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、またはそれらの任意の組合せの発現を欠く絨毛膜絨毛由来の前駆細胞からin vitroで分化したものである、請求項1から22のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項24】
前記単離されたprCTBが、絨毛膜絨毛由来の前駆細胞からin vitroで分化したものであり、前記絨毛膜絨毛由来の前駆細胞と前記単離されたprCTBの両方がヒートショックプロテイン90(HSP90)を発現する、請求項1から23のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項25】
前記単離されたprCTBがヒト細胞である、請求項1から24のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項26】
前記単離されたprCTBが、げっ歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、または類人猿起源である、請求項1から24のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項27】
前記単離されたprCTBが遺伝子操作されている、請求項1から26のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項28】
前記単離されたprCTBが、細胞受容体、免疫チェックポイントタンパク質、サイトカイン、またはそれらの任意の組合せをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項27に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項29】
前記単離されたprCTBが、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組合せをコードする外因性遺伝子ポリヌクレオチドを含む、請求項27に記載のprCTBまたは細胞の集団。
【請求項30】
薬学的に許容される賦形剤、および請求項1から29のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団を含む医薬組成物。
【請求項31】
疾患または状態の処置を必要とする対象に請求項1から29のいずれか一項に記載のprCTBまたは細胞の集団を投与するステップを含む、疾患または状態を処置する方法。
【請求項32】
抗原を保有する標的細胞を死滅させる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗原保有細胞ががん細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記がん細胞が、膀胱がん細胞、骨がん細胞、脳がん細胞、乳がん細胞、頸部の癌腫、結腸直腸がん細胞、食道がん細胞、胃腸がん細胞、造血系悪性疾患、頭頚部扁平上皮細胞癌、白血病、肝がん細胞、肺がん細胞、リンパ腫、骨髄腫、鼻がん細胞、鼻咽頭がん細胞、口腔がん細胞、口腔咽頭がん細胞、卵巣がん細胞、前立腺がん細胞、肉腫、胃がん細胞、黒色腫、甲状腺がん細胞、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗原保有細胞が病原体である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記病原体が、ウイルス、細菌、プロトゾア、プリオン、真菌、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
抗原保有標的細胞の集団の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または約100%を死滅させる、請求項31から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
炎症性経路を下方制御する、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
移植拒絶、感染、感染に伴うエンドトキシンショック、関節炎、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、全身発症若年性特発性関節炎(JIA)、炎症性腸疾患(IBD)、全身性ループスエリテマトーデス(SLE)、喘息、骨盤内炎症性疾患、アルツハイマー病、クローン病、潰瘍性腸炎、刺激性腸症候群、多発性硬化症、強直性脊椎炎、皮膚筋炎、ブドウ膜炎、ぺイロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、血管炎、手術後癒着、発作、I型糖尿病、ライム関節炎、髄膜脳炎、中枢および末梢神経系の免疫媒介炎症性障害、膵炎、手術後傷害、グラフト対宿主病、心臓疾患、骨の再吸収、火傷患者、心筋梗塞、パジェット病、骨粗鬆症、敗血症、肝もしくは肺の線維化、歯周炎、または低塩酸症を含む疾患または状態を処置する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
自己免疫疾患を処置する、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
I型糖尿病、多発性硬化症、全身性ループスエリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、多発性筋炎、慢性活動性肝炎、混合結合組織病、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、自己免疫性甲状腺炎、特発性アジソン病、白斑、グルテン感受性腸疾患、グレーブス病、重症筋無力症、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、リウマチ性関節炎、肝硬変、尋常性天疱瘡、自己免疫性不妊、グッドパスチャー病、水疱性類天疱瘡、ディスコイドループス、潰瘍性大腸炎、高密度沈着物疾患、炎症性腸疾患、または乾癬を処置する、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
1型糖尿病を処置する、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
移植拒絶を改善する、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
ケモカイン、インターロイキン、成長因子、またはそれらの任意の組合せ、および薬学的もしくは美容的に許容される賦形剤を含み、細胞を含まない組成物。
【請求項45】
(i)CXCL2、MCP-1、フラクタルカイン、IP-10、MCP-3、エオタキシン、MIP-1β、またはそれらの任意の組合せを含むケモカイン、
(ii)IL-6、IL-8、IL-4、IL-1RA、IL-10、IL-12P40、IL-15、IL-1α、IL-17A、またはそれらの任意の組合せを含むインターロイキン、および
(iii)PDGF-AA、VEGF、bFGF、G-CSF、Flt-3L、GM-CSF、またはそれらの任意の組合せを含む成長因子
を含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
MCP-1ならびにCXCL2、IL-6、IL-8、およびVEGFタンパク質の1つ、2つ、3つ、または全てを含む、請求項44または45に記載の組成物。
【請求項47】
前記組成物中のMCP-1とCXCL2が、約1:1~約2:1の重量比を有する、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記組成物中のMCP-1とCXCL2が、約3:1~約4:1の重量比を有する、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
前記組成物中のMCP-1とIL-6が、約2:1~約3:1の重量比を有する、請求項46から48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記組成物中のMCP-1とIL-6が、約3:1~約4:1の重量比を有する、請求項46から48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記組成物中のMCP-1とIL-8が、約4:1~約6:1の重量比を有する、請求項46から50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
前記組成物中のMCP-1とVEGFが、約4:1~約6:1の重量比を有する、請求項46から51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項53】
前記組成物中のMCP-1とVEGFが、約7:1~約9:1の重量比を有する、請求項46から51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項54】
PDGF-AAをさらに含み、MCP-1およびPDGF-AAが約3:1~約5:1の重量比で存在する、請求項46から53のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項55】
PDGF-AAをさらに含み、MCP-1およびPDGF-AAが約6:1~約9:1の重量比で存在する、請求項46から53のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
PDGF-AAおよびG-CSFをさらに含む、請求項46から55のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項57】
PDGF-AAおよびFGF-2(bFGF)をさらに含む、請求項46から56のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
IP-10、エオタキシン、Flt-3L、GM-CSF、MIP-1a、MIP-1b、IL-1a、IL-1RA、IL-4、IL-7、IL-10、IL-12P40、IL-13、IL-15、IL-17A、CCL5(RANTES)、MDC、MCP-3、IL-12P70、IFNa、IFNr、PDGF-AB/BB、またはEGFのうち1つまたは複数のタンパク質をさらに含む、請求項46から57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
皮膚の状態を調節することを必要とする対象に請求項44から58のいずれか一項に記載の組成物を投与するステップを含む、皮膚の状態を調節する方法。
【請求項60】
疾患を処置するか、または美容上の用途を提供する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
皮膚を引き締める、請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
皮膚を水和する、請求項59から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
皮膚を若返らせる、請求項59から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記組成物が幹細胞を含まない、請求項59から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記組成物がローション、クリーム、液体、ゲル、エマルジョン、懸濁液、ペースト、スティック、エアロゾル、泡、パッチ、粉末、軟膏、ビーズ、マスク、パッド、シート、創傷被覆材、バンデージ、またはそれらの任意の組合せの投薬形態である、請求項59から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記組成物が前記対象に局所、皮下、経皮、筋肉内、または腫瘍内投与される、請求項59から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記対象が哺乳動物である、請求項59から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記対象が霊長類である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記対象がヒトである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
多能性幹細胞を、線維芽細胞成長因子ならびにヌクレオシド、L-グルタミン、L-グルタミンを含むジペプチド、血小板溶解物、またはそれらの組合せを含む培養培地と接触させることによって、前記幹細胞をin vitroで分化させるステップを含む、先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を得る方法。
【請求項71】
前記培養培地がヌクレオシド、前記ジペプチド、および血小板溶解物を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記培養培地が約2mM~約200mMのL-グルタミンを含む、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記接触するステップが約24時間~48時間続く、請求項70から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記幹細胞が絨毛膜絨毛由来の前駆細胞である、請求項70から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記幹細胞を前記線維芽細胞成長因子と接触させて前記prCTBに分化させる前に前記幹細胞を前記培養培地とともに培養するステップを含む、請求項70から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記培養培地が抗生剤を含まない、請求項70から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記抗生剤がペニシリン、ストレプトマイシン、またはそれらの任意の組合せである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記培養培地がレチノイン酸を含まない、請求項70から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記培養培地がメルカプトエタノール、ニコチンアミド、またはそれらの組合せを含まない、請求項70から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記培養培地がデキサメタゾン、組換えヒトオンコスタチンM、BMP4、HGF、またはそれらの任意の組合せを含まない、請求項70から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記培養培地が動物成分を含まない、請求項70から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記培養培地がヒト由来の成分を含まない、請求項70から81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記培養培地が血清を含まない、請求項70から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記培養培地がウシ胎児血清を含まない、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記線維芽細胞成長因子が塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)である、請求項70から84のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[0001]本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれる2019年5月6日出願の米国仮特許出願第62/843,925号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]現在の胚幹細胞およびiPS細胞のある種の欠点を克服する代替としての、種々の疾患または状態を処置(治療)するための新規な幹細胞療法に対するニーズがある。
参照による組込み
[0003]本明細書における全ての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれ個別の刊行物、特許、および特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されるかのように同程度に、参照により組み込まれる。本明細書における用語と組み込まれた参照における用語との間に矛盾が生じた場合には、本明細書の用語が優先する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0004]本発明の概要で提供する発明の実施形態は、説明のためのみであって、本明細書で開示した選択的な実施形態の概観を提供することを意味している。本発明の概要は説明的かつ選択的であり、いずれの特許請求の範囲をも限定せず、本明細書で開示または意図した発明の実施形態の全体の範囲を提供するものではなく、本開示または特許請求する発明の実施形態の範囲を限定または拘束するものと解釈すべきでない。
【0004】
[0005]本明細書ではいくつかの態様において、単離された先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)が開示され、(i)prCTBは、ベータ-ホルモンヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、CD56、インスリン、ヒートショックプロテイン90(HSP90)、CD4、CD16、CD56、CD107a、CD8、インターロイキン15(IL-15)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、CD11b、CD49f、CD3、CD19、CD34、またはそれらの任意の組合せを発現し、(ii)prCTBは、p53、Ki67、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、またはそれらの任意の組合せを発現する。いくつかの例では、prCTBは、CD4、CD16、CD56、CD107a、CD8、またはそれらの任意の組合せを発現する。
【0005】
[0006]本明細書ではいくつかの態様において、先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を含む細胞の単離された集団が開示され、(i)細胞の集団は、ベータ-ホルモンヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、CD56、インスリン、ヒートショックプロテイン90(HSP90)、CD4、CD16、CD56、CD107a、CD8、インターロイキン15(IL-15)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-
L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、CD11b、CD49f、CD3、CD19、CD34、またはそれらの任意の組合せを発現し、(ii)細胞の集団は、p53、Ki67、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、またはそれらの任意の組合せを発現する。
【0006】
[0007]いくつかの例では、集団の少なくとも約10%はCD16およびCD56を発現するprCTBである。いくつかの例では、集団の少なくとも約2%はCD4を発現するprCTBである。いくつかの例では、集団の少なくとも約2%はCD8を発現するprCTBである。いくつかの例では、集団の少なくとも約5%はCD107を発現するprCTBである。
【0007】
[0008]本明細書ではいくつかの態様において、先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を含む細胞の単離された集団が開示され、(i)集団の少なくとも約10%はCD16およびCD56を発現するprCTBであるか、(ii)集団の少なくとも約2%はCD4を発現するprCTBであるか、(iii)集団の少なくとも約2%はCD8を発現するprCTBであるか、または(iv)集団の少なくとも約5%はCD107を発現するprCTBであるか、またはそれらの任意の組合せである。
【0008】
[0009]いくつかの例では、(i)集団の少なくとも約10%はCD16およびCD56を発現するprCTBであり、(ii)集団の少なくとも約2%はCD4を発現するprCTBであり、(iii)集団の少なくとも約2%はCD8を発現するprCTBであり、かつ(iv)集団の少なくとも約5%はCD107を発現するprCTBである。いくつかの例では、細胞の集団は、集団の少なくとも約2%がCD16、CD56、およびCD107を発現するprCTBである集団を含む。いくつかの例では、prCDBまたは複数のprCDBはインターロイキン15(IL-15)を発現する。いくつかの例では、prCTBまたは複数のprCTBは、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、またはそれらの任意の組合せを発現する。いくつかの例では、prCTBまたは複数のprCTBは、ベータ-ホルモンヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)、可溶性ヒト白血球抗原G(sHLA-G)、トランスフォーメーション成長因子β1(TGF-β1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)、インターロイキン10(IL-10)、CD105、CD146、またはそれらの任意の組合せをさらに発現する。いくつかの例では、prCTBまたは複数のprCTBは、シンシチン、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、またはそれらの組合せの発現を欠いている。いくつかの例では、prCTBまたは複数のprCTBは、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せ、またはケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せを運搬するエキソソームを分泌する。いくつかの例では、サイトカインは、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5(CCL5)、単球ケモアトラクタントプロテイン-1(MCP-1)、単球ケモアトラクタントプロテイン-1(MCP-3)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CCL1)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド2(CCL2)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド11(CCL11)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド24(CCL24)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド26(C
CL26)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド22(CCL22)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド10(CCL10)、フラクタルカイン、およびケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド4(CCL4)、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、サイトカインは、インターロイキン1α(IL-1α)、インターロイキン1β(IL-1β)、インターロイキン(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン12p40(IL-12p40)、インターロイキン13(IL-13)、インターロイキン15(IL-15)、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、サイトカインは、インターフェロンα(IFN-α)またはインターフェロンγ(IFN-γ)を含む。いくつかの例では、成長因子は、血小板由来成長因子ホモダイマーAA(PDGF-AA)、PDGFホモダイマーBB(PDGF-BB)、PDGFヘテロダイマー(PDGF-AB)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリータンパク質、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L)、可溶性CD40リガンド(sCD40L)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン1β(IL-1β)、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、prCTBまたは複数のprCTBは、イムノブロット法によって測定して、単離されたprCTBがin vitroで分化した元の前駆細胞よりも高いレベルの活性化されたシグナルトランスデューサー/転写アクチベーター3(STAT3)または転写因子c-JUNを有する。いくつかの例では、prCTBは、イムノブロット法によって測定して、単離されたprCTBがin vitroで分化した元の前駆細胞よりも少なくとも約1.1、1.2、1.5、1.5、2、2.2、2.5、2.8、3、3.5、4、5、8、10倍高いレベルの活性化されたシグナルトランスデューサー/転写アクチベーター3(STAT3)または転写因子c-JUNを有する。いくつかの例では、prCTBは、イムノブロット法によって測定して、単離されたprCTBがin vitroで分化した元の前駆細胞よりも少なくとも約1.1、1.2、1.5、1.5、2、2.2、2.5、2.8、3、3.5、4、5、8、10倍高いレベルのSOX2タンパク質を発現する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、Ki67、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、p53、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、またはそれらの任意の組合せの発現を欠く絨毛膜絨毛由来の前駆細胞からin vitroで分化したものである。いくつかの例では、単離されたprCTBは、絨毛膜絨毛由来の前駆細胞からin vitroで分化したものであり、絨毛膜絨毛由来の前駆細胞と単離されたprCTBの両方がヒートショックプロテイン90(HSP90)を発現する。いくつかの例では、単離されたprCTBはヒト細胞である。いくつかの例では、単離されたprCTBは、げっ歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、または類人猿起源である。いくつかの例では、単離されたprCTBは遺伝子操作されている。いくつかの例では、単離されたprCTBは、細胞受容体、免疫チェックポイントタンパク質、サイトカイン、またはそれらの任意の組合せをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの例では、単離されたprCTBは、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組合せをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0009】
[0010]本明細書ではいくつかの態様において、薬学的に許容される賦形剤または担体、および本明細書に記載したprCTBまたは細胞の集団を含む医薬組成物が開示される。
[0011]本明細書ではいくつかの態様において、疾患または状態の処置を必要とする対象に本明細書に記載したprCTBまたは細胞の集団を投与するステップを含む、疾患または状態を処置する方法が開示される。
【0010】
[0012]いくつかの例では、本方法によって抗原を保有する標的細胞が死滅する。いくつかの例では、抗原保有細胞は抗原提示細胞ではなく、例えば樹状細胞、マクロファージ、またはB細胞ではない。いくつかの例では、抗原保有標的細胞はがん細胞である。いくつかの例では、がん細胞には、膀胱がん細胞、骨がん細胞、脳がん細胞、乳がん細胞、頸部の癌腫、結腸直腸がん細胞、食道がん細胞、胃腸がん細胞、造血系悪性疾患、頭頚部扁平上皮細胞癌、白血病、肝がん細胞、肺がん細胞、リンパ腫、骨髄腫、鼻がん細胞、鼻咽頭がん細胞、口腔がん細胞、口腔咽頭がん細胞、卵巣がん細胞、前立腺がん細胞、肉腫、胃がん細胞、黒色腫、甲状腺がん細胞、またはそれらの任意の組合せが含まれる。いくつかの例では、抗原保有細胞は病原体である。いくつかの例では、病原体にはウイルス、細菌、プロトゾア、プリオン、真菌、またはそれらの任意の組合せが含まれる。いくつかの例では、本方法は抗原保有標的細胞の集団の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または約100%を死滅させる。いくつかの例では、本方法は炎症性経路を下方制御する。いくつかの例では、本方法は、移植拒絶、感染、感染に伴うエンドトキシンショック、関節炎、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、全身発症若年性特発性関節炎(JIA)、炎症性腸疾患(IBD)、全身性ループスエリテマトーデス(SLE)、喘息、骨盤内炎症性疾患、アルツハイマー病、クローン病、潰瘍性腸炎、刺激性腸症候群、多発性硬化症、強直性脊椎炎、皮膚筋炎、ブドウ膜炎、ぺイロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、血管炎、手術後癒着、発作、I型糖尿病、ライム関節炎、髄膜脳炎、中枢および末梢神経系の免疫媒介炎症性障害、膵炎、手術後障害、グラフト対宿主病、心臓疾患、骨の再吸収、火傷患者、心筋梗塞、パジェット病、骨粗鬆症、敗血症、肝もしくは肺の線維化、歯周炎、または低塩酸症を含む疾患または状態を処置する。いくつかの例では、本方法は自己免疫疾患を処置する。いくつかの例では、本方法はI型糖尿病、多発性硬化症、全身性ループスエリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、多発性筋炎、慢性活動性肝炎、混合結合組織病、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、自己免疫性甲状腺炎、特発性アジソン病、白斑、グルテン感受性腸疾患、グレーブス病、重症筋無力症、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、リウマチ性関節炎、肝硬変、尋常性天疱瘡、自己免疫性不妊、グッドパスチャー病、水疱性類天疱瘡、ディスコイドループス、潰瘍性大腸炎、高密度沈着物疾患、炎症性腸疾患、または乾癬を処置する。いくつかの例では、本方法は1型糖尿病を処置する。いくつかの例では、本方法は移植拒絶を改善する。
【0011】
[0013]エキソソームを含むセクレトームを含む組成物が本明細書で開示され、セクレトームがケモカイン、サイトカイン、例えばインターロイキン、成長因子、またはそれらの任意の組合せ、および薬学的もしくは美容的に許容される賦形剤を含むか、またはエキソソームがこれらを運搬し、組成物は細胞を含まない。
【0012】
[0014]いくつかの例では、セクレトームが(i)CXCL2、MCP-1、フラクタルカイン、IP-10、MCP-3、エオタキシン、MIP-1β、もしくはそれらの任意の組合せを含むケモカイン、(ii)IL-6、IL-8、IL-4、IL-1RA、IL-10、IL-12P40、IL-15、IL-1α、IL-17A、もしくはそれらの任意の組合せを含むインターロイキン、および(iii)PDGF-AA、VEGF、bFGF、G-CSF、Flt-3L、GM-CSF、もしくはそれらの任意の組合せを含む成長因子を含むか、またはエキソソームがこれらを運搬する。いくつかの例では、組成物はMCP-1ならびにCXCL2、IL-6、IL-8、およびVEGFタンパク質の1つ、2つ、3つ、または全てを含む。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約1:1~約2:1の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約3:1~約4:1の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-6は、約2:1~約3:1の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-6は、約3:1~約4:1の重量比を有する。いくつ
かの例では、組成物中のMCP-1とIL-8は、約4:1~約6:1の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とVEGFは、約4:1~約6:1の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とVEGFは、約7:1~約9:1の重量比を有する。いくつかの例では、組成物はPDGF-AAをさらに含み、MCP-1とPDGF-AAは約3:1~約5:1の重量比で存在する。いくつかの例では、組成物はPDGF-AAをさらに含み、MCP-1とPDGF-AAは約6:1~約9:1の重量比で存在する。いくつかの例では、組成物はPDGF-AAおよびG-CSFをさらに含む。いくつかの例では、組成物はPDGF-AAおよびFGF-2(bFGF)をさらに含む。いくつかの例では、組成物はIP-10、エオタキシン、Flt-3L、GM-CSF、MIP-1a、MIP-1b、IL-1a、IL-1RA、IL-4、IL-7、IL-10、IL-12P40、IL-13、IL-15、IL-17A、CCL5(RANTES)、MDC、MCP-3、IL-12P70、IFNa、IFNr、PDGF-AB/BB、またはEGFのうち1つまたは複数のタンパク質をさらに含む。
【0013】
[0015]本明細書ではいくつかの態様において、皮膚の状態を調節することを必要とする対象に本明細書に記載した組成物を投与するステップを含む、皮膚の状態を調節する方法が開示される。
【0014】
[0016]いくつかの例では、本方法は疾患を処置するか、または美容上の用途を提供する。いくつかの例では、本方法は皮膚を引き締める。いくつかの例では、本方法は皮膚を水和する。いくつかの例では、本方法は皮膚を若返らせる。いくつかの例では、組成物は幹細胞を含まない。いくつかの例では、組成物は対象に局所、皮下、経皮、筋肉内、または腫瘍内投与される。いくつかの例では、組成物はローション、クリーム、液体、ゲル、エマルジョン、懸濁液、ペースト、スティック、エアロゾル、泡、パッチ、粉末、軟膏、ビーズ、マスク、パッド、シート、創傷被覆材、バンデージ、またはそれらの任意の組合せの投薬形態である。いくつかの例では、対象は哺乳動物である。いくつかの例では、対象は霊長類である。いくつかの例では、対象はヒトである。
【0015】
[0017]本明細書ではいくつかの態様において、多能性幹細胞を、線維芽細胞成長因子ならびにヌクレオシド、L-グルタミン、L-グルタミンを含むジペプチド、血小板溶解物、またはそれらの組合せを含む培養培地と接触させることによって、幹細胞をin vitroで分化させるステップを含む、先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を得る方法が開示される。
【0016】
[0018]いくつかの例では、培養培地はヌクレオシド、ジペプチド、および血小板溶解物を含む。いくつかの例では、培養培地は約2mM~約200mMのL-グルタミンを含む。いくつかの例では、接触させるステップは約24時間~48時間続く。いくつかの例では、幹細胞は絨毛膜絨毛由来の前駆細胞である。いくつかの例では、本方法は、幹細胞を線維芽細胞成長因子と接触させてprCTBに分化させる前に幹細胞を培養培地とともに培養するステップを含む。いくつかの例では、培養培地は抗生剤を含まない。いくつかの例では、抗生剤はペニシリン、ストレプトマイシン、またはそれらの任意の組合せである。いくつかの例では、培養培地はレチノイン酸を含まない。いくつかの例では、培養培地はメルカプトエタノール、ニコチンアミド、またはそれらの組合せを含まない。いくつかの例では、培養培地はデキサメタゾン、組換えヒトオンコスタチンM、BMP4、HGF、またはそれらの任意の組合せを含まない。いくつかの例では、培養培地は動物成分を含まない。いくつかの例では、培養培地はヒト由来の成分を含まない。いくつかの例では、培養培地は血清を含まない。いくつかの例では、培養培地はウシ胎児血清を含まない。いくつかの例では、線維芽細胞成長因子は塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)である。
【0017】
[0019]本明細書ではいくつかの態様において、単離された先駆制御性細胞栄養芽細胞(
prCTB)が開示され、(i)prCTBは、ベータ-ホルモンヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、CD56、インスリン、ヒートショックプロテイン90(HSP90)、CD4、CD16、CD56、CD107a、CD8、インターロイキン15(IL-15)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、CD11b、CD49f、CD3、CD19、CD34、またはそれらの任意の組合せを発現し、(ii)prCTBは、p53、Ki67、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、またはそれらの任意の組合せを発現する。いくつかの例では、prCTBは、がん細胞または病原体を死滅させる。いくつかの例では、prCTBは、例えばがん細胞のコロニーに浸潤することによって、がん細胞のアポトーシスを誘起し、任意選択でprCTB自体はがん細胞と接触することによってアポトーシスを受けない。いくつかの例では、がん細胞は固形腫瘍細胞である。いくつかの例では、がん細胞は膵がん細胞、乳がん細胞、肝腫瘍細胞、卵巣腫瘍細胞、肺腫瘍細胞、胃腫瘍細胞、黒色腫細胞、またはそれらの任意の組合せである。いくつかの例では、prCTBは炎症性経路を下方制御する。いくつかの例では、prCTBはCD4、CD16、CD56、CD107a、CD8、またはそれらの任意の組合せを発現する。いくつかの例では、prCTBは、シンシチン、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、またはそれらの組合せを欠いている。いくつかの例では、prCTBは、インターロイキン15(IL-15)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、ベータ-ホルモンヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)、可溶性ヒト白血球抗原G(sHLA-G)、トランスフォーメーション成長因子β1(TGF-β1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)、CD105、CD146、またはそれらの任意の組合せをさらに発現する。いくつかの例では、prCTBはヒト細胞である。いくつかの例では、prCTBは遺伝子操作されている。いくつかの例では、遺伝子操作されたprCTBは、細胞受容体、免疫チェックポイントタンパク質、サイトカイン、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組合せを含む外因性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの例では、prCTBは、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せ、または前記のいずれかを運搬するエキソソームを分泌する。いくつかの態様では、本明細書で開示したprCTBおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が本明細書で開示される。いくつかの態様では、疾患または状態の処置を必要とする対象に本明細書に記載した医薬組成物を投与するステップを含む、疾患または状態を処置する方法が本明細書で開示される。いくつかの態様では、本明細書で開示した複数のprCTBを含む細胞の集団が本明細書で開示される。いくつかの例では、prCTBの集団の少なくとも約10%が、CD16およびCD56を発現する。いくつかの例では、prCTBの集団の少なくとも約2%がCD4を発現し、prCTBの集団の少なくとも約2%がCD8を発現し、prCTBの集団の少なくとも約5%がCD107を、またはそれらの任意の組合せを発現する。いくつかの例では、prCTBの集団の少なくとも約10%が、C
D16およびCD56を発現し、prCTBの集団の少なくとも約2%がCD4を発現し、prCTBの集団の少なくとも約2%がCD8を発現し、prCTBの集団の少なくとも約5%がCD107を発現する。いくつかの例では、prCTBの集団の少なくとも約2%がCD16、CD56、およびCD107を発現する。
【0018】
図面の簡単な説明
[0020]本発明の種々の態様を、特に添付した特許請求の範囲によって説明する。本発明の原理を利用する説明的実施形態を説明する以下の詳細な説明および添付した図面を参照することによって、本発明の特徴および利点のより良い理解が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】[0021]図1A~1Dは、ヒト栄養芽幹(hTS)細胞におけるインスリン発現の特徴を示す。図1Aは、hTS細胞におけるインスリンの合成および分泌の分子機構の概略説明図である。図1Bは、CREB1およびFABA抗体がCREB1およびMAFAレベルを低減することによってインスリン(INS)遺伝子転写を阻害したことをChIP-qPCR解析によって示す。データは平均±SDを表わす。n=5、インプット:陽性対照(100%として)、IgG:陰性対照。図1Cは、グルコース(Gluc;20mM)およびスルホニルウレア(Gli、グリクラジド;10μM)がhTS細胞(1×10細胞)中でインスリンの分泌を促進した一方、VDCC阻害剤ニフェジピン(Nif;10μM)がインスリンの分泌を阻害することを、セクレトーム解析のRIAによって示す。データは平均±SDを表わす。n=3、ステューデントt-検定、p<0.05は対照と比較して有意。図1Dは、免疫反応性分子の代表的なイメージングがhTS細胞における生物学的な役割を特徴解析したことを示す。スケールバーは指示した通りである。
図1B図1Aの説明と同じ。
図1C図1Aの説明と同じ。
図1D図1Aの説明と同じ。
図2A】[0022]図2A~2Mは、インスリン発現hTS細胞におけるGαq/11/PIP2/IP3/IP3R/CaMKII/CREB1およびGβ/PI3K/AKT/GSK3β/MAFAシグナル伝達経路を図示する。図2A~2Cは、qPCR解析(図2A)により、hTS細胞においてグルコース(20mM)が細胞膜において甘味受容体T1R2/T1R3の急速な過渡的活性化を刺激し、結果として15分でGαq/11およびGβ(図2B)を含むGタンパク質シグナルを活性化したことをブロッティング解析によって示す(図2C)。この作用はT1R2/T1R3阻害剤である2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D;100μg)によって阻害された(図2B)。データは平均±SDを表わす。n=5、ステューデントt-検定、p<0.05:統計的有意。図2D~2Fは、Gαq/11/PIP2/IP3/IP3R/CaMKII/CREB1経路の確立をブロッティング解析によって図示する。活性Gαq/11は、イノシトールトリホスフェート(IP3)が小胞体(ER)の膜においてその受容体IP3Rに作用して細胞内カルシウムレベルを上昇させるようにIP3を誘起し、これが結果としてCaMKIIを活性化する。この作用は、Gαq/11とCaMKII分子を連結するshGαによって阻害された。CaMKIIは次にリン酸化(p)によって下流のCREB1を活性化し、これはCaMKII阻害剤であるKN93を使用することによってさらに確認された。図2G~2Iは、Gβ/PI3K/AKT/GSK3α/β経路の確立を図示する。活性Gβは、ser473部位におけるAKTのリン酸化(p)によってPI3K/AKTシグナル伝達を、またser21/9部位におけるリン酸化によってその下流の阻害性GSK3α/βを急速に誘起した。これらの作用は、PI3K阻害剤であるLY294002およびAKT阻害剤であるMK2206によって阻害された。阻害性pGSKα/βは次いでpMAFAを、核におけるその存在によって確認される核への局在化に推進し、pMAFAの発現はGSK3の阻害剤であるSB216763によって阻害された。図2Jは、核細胞質分別によって証拠付けられるように、pCREB1とpMAFAの両方が核に入ったことを示す。β-アクチン:ローディング対照。α-チューブリンおよびH3は、それぞれ細胞質および核のコンパートメントを示す。図2Kは、CREB1 shRNAによる前処理によってhTS細胞におけるグルコース刺激(Glu;20mM)に応答するインスリンの発現を顕著に低減したが、PDX1 shRNAはそうでなかったことをqPCR解析によって示す。C:対照、shGFP:陽性対照。ステューデントt-検定、p<0.05、n=4。図2Lは、2つの異なる抗インスリン抗体を含む2つのhTS細胞株におけるインスリンの発現をフローサイトメトリーによって示す。アイソタイプ:対照。図2Mは、ナイーブhTSがストレスタンパク質または増殖マーカーKi67を発現しないが、HSP90を発現することを免疫細胞化学によって示す。スケールバー:50μm。
図2B図2Aの説明と同じ。
図2C図2Aの説明と同じ。
図2D図2Aの説明と同じ。
図2E図2Aの説明と同じ。
図2F図2Aの説明と同じ。
図2G図2Aの説明と同じ。
図2H図2Aの説明と同じ。
図2I図2Aの説明と同じ。
図2J図2Aの説明と同じ。
図2K図2Aの説明と同じ。
図2L図2Aの説明と同じ。
図2M図2Aの説明と同じ。
図3】[0023]図3は、prCTB中のPDX1、HNF-1β、NGN3、SOX9、NKX6.1を含むインスリン関連免疫反応分子、およびインスリンの代表的な画像を示す。バースケールバー:50μm。
図4A】[0024]図4A~4Fを本明細書に記載する。図4Aは、hTSCがTGF-β1を発現することを免疫細胞化学によって示す。図4Bは、bFGF(10ng/ml)がTGF-β1およびビメンチンを上方制御したがE-カドヘリンを下方制御したことをウェスタンブロットアッセイによって示す。図4Dは、抗TGF-β1抗体がこれらの作用を中和したことを示す。データは平均±SDを表わす。n=3、ステューデントt-検定、統計的有意:p<0.05、**p<0.001。図4Cは、bFGF(10ng/ml)がTGF-β1およびビメンチンを上方制御したがE-カドヘリンを下方制御したことを免疫細胞化学によって示す。図4Eは、bFGF(10ng/ml)が、1日のインキュベーションの後にhTSCが細胞形状において長い紡錘状から短く肥大した形に変化し、核の形状において楕円形からより丸い形に変化する形態学的変化を誘起したことを示す。図4Fは、FOXA2がβ-カテニンに対するshRNAの存在下でそれによって減衰する、bFGFによって誘起されるFOXA2の活性化の確認を示す。shGFP(非特異的shRNA)をトランスフェクトした細胞を対照として使用し、β-アクチンをローディング対照として使用した。
図4B図4Aの説明と同じ。
図4C図4Aの説明と同じ。
図4D図4Aの説明と同じ。
図4E図4Aの説明と同じ。
図4F図4Aの説明と同じ。
図5A】[0025]図5A~5Cは、先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)の生物学的特徴を図示する。図5Aは、卵管異所性妊娠(妊娠7~8週)の絨毛膜絨毛におけるインスリン発現に付随する免疫反応分子および酸化ストレスタンパク質の代表的な画像を示す。スケールバー:50μm。図5Bは、正常妊娠(妊娠7~8週)の絨毛膜絨毛におけるインスリンおよびストレスタンパク質の分布をイメージングによって示す。スケールバー:200μm。図5Cは、栄養芽細胞の分化の経路におけるprCTBとhTS細胞のストレスタンパク質の発現における相違を、正常な子宮妊娠の細胞とも比較した概略説明図である。
図5B図5Aの説明と同じ。
図5C図5Aの説明と同じ。
図6A】[0026]図6Aおよび6Bは、絨毛膜絨毛におけるストレスタンパク質p53およびインスリンを発現する合胞結節の、正常な妊娠と損傷した卵子との比較を示す。ストレスを受けた合胞結節は、正常妊娠8週における単一の絨毛膜絨毛において計数された15を超える陽性細胞を含む区域でインスリンおよびp53を発現することによって定義される(図6A)。一方、妊娠7~8週における損傷した卵子を有する患者の絨毛膜絨毛(図6B)は、ストレス合胞結節の頻度が(図6A)においてよりも1.96倍高い(図6B)ことを示す。合胞結節の数は、2名の助手によって80視野(図6A)および50視野(図6B)で独立に計数された。一方、別の25視野は示していない。図6Cは、4時間の誘起によるDEステージにおける細胞形質転換の間の多能性転写因子、免疫反応性OCT4イメージング(CDX2イメージングではない)の発現の変化を示す。
図6B図6Aの説明と同じ。
図6C図6Cは、4時間の誘起によるDEステージにおける細胞形質転換の間の多能性転写因子、免疫反応性OCT4イメージング(CDX2イメージングではない)の発現の変化を示す。
図7A】[0027]図7A~7Qを本明細書に記載する。図7Aは、PLUSを含む培養培地(上パネル)中で、hTS細胞(左の濃いカラム)およびprCTB細胞(右の薄いカラム)から分泌されたエキソソーム、ならびに使用したPLUS培地における成分の影響を除外した後(下パネル)のナイーブなhTS細胞(左の濃いカラム)およびナイーブなprCTB(右の薄いカラム)で提示されたエキソソームのLuminex解析を示す。図7Bは、hTS細胞(左)およびprCTB(右)における数多くの受容体分子の存在を実証するイムノブロットアッセイの結果を示す。図7Cは、イムノブロット解析によるhTS細胞およびprCTBから放出されたタンパク質のセクレトームアッセイの結果を示す。sHLA-G:可溶性HLA-G。n=3。図7Dは、hTSCが血管形成因子CD105およびCD146を発現することをFACS解析によって示す。図7Eは、hTS細胞(左)およびprCTB(右)における数多くの受容体分子の存在を実証するイムノブロットアッセイの結果を示す。図7Fは、bFGF(10ng/ml)がSTAT3、c-JUN、およびFasリガンド(FasL)の上方制御を誘起したが、Fasの下方制御を誘起したことをイムノブロットアッセイによって示す。この作用はshFGFR1によって阻害された。陰性対照としてshGFPを使用した。図7G~7Jは、bFGF(10ng/ml)がCREB1シグナル伝達の活性化を誘起したことをウェスタンブロットアッセイによって示す。図7Gは、bFGFがその受容体FGFR1および下流のPI3Kシグナルを活性化し、これがFGFR阻害剤PD166866によって阻害されたことを示す。図7Hは、PI3KがAKTをリン酸化(p)してPI3K/pAKTシグナル伝達を形成し、これがPI3K shRNAによって阻害されたことを示す。図7Iは、pAKTがその下流のCREB1を活性化し、これがAKT1 shRNA、AKT2 shRNA、およびAKT3 shRNAを含むAKT抗体を使用することによって中和されたことを示す。図7Jは、pAKTが直接の相互作用によってその下流のCREB1を活性化したことを免疫沈降(IP)アッセイによって示す。図7Kは、bFGF(10ng/ml)が時間依存的にIL-6(左パネル)およびIL-8(右パネル)を誘起したことを示す。データは平均±SDを表わす。n=3の独立細胞株。ステューデントt-検定、統計的有意:p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。図7Lは、IL-6(10ng/ml)がhTSC中でIL-6R mRNA、CREB1 mRNA、およびβ-hCG mRNAを上方制御し(左パネル)、IL-8(30ng/ml)がCREB1 mRNAおよびCD56 mRNAを上方制御するが従来の受容体IL-8Rを上方制御しない(右パネル)ことを示すRT-qPCR解析を示す。データは平均±SDを表わす。n=4。ステューデントt-検定、統計的有意:**p<0.01、***p<0.001。図7M~7Nは、IL-6がβ-hCG(+)CD56(+)prCTBを生成したことをウェスタンブロットによって示す。図7Mは、IL-6(10ng/ml)がGnRHRおよびIL-6Rを介してβ-hCGを誘起し、GnRHR阻害剤ElagolixナトリウムおよびCREB1阻害剤666-15によって阻害されたことを示す。図7Nは、IL-8(30ng/ml)がCXCR2/STAT3シグナル伝達を介してCD56を誘起し、CXCR2阻害剤SB225002およびSTAT3阻害剤Statticによって阻害されたことを示す。図7Oは、IL-8(30ng/ml)がCXCR2/CREB1およびCXCR2/STAT3の両方のシグナル伝達経路を介してCD4(+)prCTBを生成し、CREB1阻害剤666-15、CRCR2阻害剤SB225002、およびSTAT3阻害剤Statticによって阻害されたことを示す。図7Pは、IL-8(30ng/ml)がCXCR2/STAT3シグナル伝達経路を介してFoxp3を誘起し、CRCR2阻害剤SB225002およびSTAT3阻害剤Stattic(E)によって阻害されたことを示す。データは平均±SDを表わす。n=3の独立細胞株。ステューデントt-検定、統計的有意:p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。図7Qは、bFGFがprCTB中でCD4とFoxp3の共発現を誘起したことを免疫細胞化学によって示す。バースケール:50μm。
図7B図7Aの説明と同じ。
図7C図7Aの説明と同じ。
図7D図7Aの説明と同じ。
図7E図7Aの説明と同じ。
図7F図7Aの説明と同じ。
図7G図7Aの説明と同じ。
図7H図7Aの説明と同じ。
図7I図7Aの説明と同じ。
図7J図7Aの説明と同じ。
図7K図7Aの説明と同じ。
図7L図7Aの説明と同じ。
図7M図7Aの説明と同じ。
図7N図7Aの説明と同じ。
図7O図7Aの説明と同じ。
図7P図7Aの説明と同じ。
図7Q図7Aの説明と同じ。
図8】[0028]図8は、フローサイトメトリーによって測定したhTS細胞およびprCTB中のCD分子、ならびにフローサイトメトリーによって測定したhTS細胞およびprCTB中で検出されたT細胞およびNK細胞のサブタイプのマーカーを列挙した2つの表を示す。
図9A】[0029]図9A~9Nは、hTS細胞およびprCTBにおけるCDバイオマーカーの分布についての代表的なフローサイトメトリー解析を示す。図9A~9Kは、全部で8個の代表的な試料におけるFACSプロット解析を示し、hTS細胞(左パネル)およびprCTB(右パネル)中の、検出できないCD3およびCD45(図9A)、CD34(図9B)、ならびにCD3およびgdTCR(図9C)、しかし検出可能なCD(16+56)およびCD107a(図9D)、CD(16+56)(図9E)、検出可能なCD(16+56)、しかし僅かなCD4(図9F)、検出可能なCD(16+56)およびCD8(図9G)、検出可能なCD(16+56)、しかしCD19なし(図9H)、検出可能なCD107a、しかし僅かなCD4(図9I)、検出可能なCD107aおよびCD8(図9J)、および検出可能なCD107a、しかしCD19なし(図9K)を示す。図9Lおよび9Mは、hTS細胞(黒色のカラム)およびprCTB(灰色のカラム)の集団におけるCD分子の分布(図9L)ならびにNK細胞およびT細胞のサブタイプ(図9M)を示す。データは平均±SDを表わす。n=8、独立試料。図9Nは、免疫染色によるprCTB中のCD11bおよびCD49fの発現を示す。
図9B図9Aの説明と同じ。
図9C図9Aの説明と同じ。
図9D図9Aの説明と同じ。
図9E図9Aの説明と同じ。
図9F図9Aの説明と同じ。
図9G図9Aの説明と同じ。
図9H図9Aの説明と同じ。
図9I図9Aの説明と同じ。
図9J図9Aの説明と同じ。
図9K図9Aの説明と同じ。
図9L図9Aの説明と同じ。
図9M図9Aの説明と同じ。
図9N図9Aの説明と同じ。
図10A】[0030]図10A~10Kを本明細書に記載する。図10A~10Dは、トランスウェル浸潤および遊走アッセイの結果を示す。MCP-1(図10Aおよび10B)およびCXCL2(図10Cおよび10D)は、用量および時間依存的にhTSCおよびprCTBの両方の移動を顕著に誘起した。図10Eは、妊娠7~8週の正常な絨毛膜絨毛における免疫組織化学を示し、浸潤するEVTが免疫反応性p53(+)、シンシチン、β-hCG、およびHLA-G分子を発現したことが明らかになった。図10F~10Gは、CD56(+)prCTB(褐色、図10Fの上および中のパネル)およびβ-hCG(+)prCTB(褐色、図10Gの上パネル)が着床のためにEVTに向かって移動することを示す(赤矢印)。脱落膜上皮細胞の下の多くのCD56(+)(Fの下パネル)およびβ-hCG(+)(図10Gの中パネル)のprCTB。母体脱落膜におけるβ-hCG(+)prCTBによる動脈内皮細胞の置換はSAリモデリング(図10Gの中パネル)を示唆し、脱落膜静脈の管腔内部のβ-hCG(+)prCTB(図10Gの下パネル)は静脈の浸潤も示唆している。図10H~10Kは、浸潤および遊走アッセイの写真を示す。図10H~10Iは、MCP-1がhTSC(4×10細胞/ml)の運動を用量依存的に(図10H)、またhTSCとprCTBの両方(それぞれ4×10細胞/ml)において時間依存的に(図10I)、推進したことを示す。図10J~10Kは、CXCL2がhTSC(4×10細胞/ml)の運動を時間依存的に(図10J)、またhTSCとprCTBの両方(それぞれ4×10細胞/ml)において用量依存的に(図10K)、推進したことを示す。青色は0.2%クリスタルバイオレット(Sigma-Aldrich、115940)による細胞染色を示す。遊走した細胞(青色)の数は、ヘモサイトメーターまたはフローサイトメーターを使用して計数する。それぞれの試験においてn=3の独立試料。
図10B図10Aの説明と同じ。
図10C図10Aの説明と同じ。
図10D図10Aの説明と同じ。
図10E図10Aの説明と同じ。
図10F図10Aの説明と同じ。
図10G図10Aの説明と同じ。
図10H図10Aの説明と同じ。
図10I図10Aの説明と同じ。
図10J図10Aの説明と同じ。
図10K図10Aの説明と同じ。
図11A】[0031]図11A~11Kを本明細書に記載する。図11A~11Dは、経時的なprCTB(矢じり)およびPANC-1(矢印)の比2:1(3×10細胞/ウェル)での共培養を示し、prCTBによって包みこまれたPANC-1のアポトーシス変化を光学顕微鏡(図11A)によって示す。免疫細胞化学は、共細胞における2つの生細胞、即ちprCTB(青、CytoCalcein450染色)およびPANC-1(赤、PKH26染色)の相互作用を示す(図11B)。アポトーシスを受けたPANC-1(緑、アポキシン染色、上)および元のままのprCTB(青、中央)が相互作用によって見られる(併合、矢印、下)(図11C)。3D蛍光顕微鏡は相互作用に際してアポトーシスを受けたPANC-1(緑)および元のままのprCTB(青)を示す(図11D)。図11Eは、prCTBがPD-L1を発現した(上、左カラム)が、PD-1を発現せず(下、左カラム)、一方、PANC-1がPD-1(上、右カラム)とPD-L1(下、右カラム)の両方を発現したことを明らかにする免疫細胞化学を示す。図11Fは、FasLがprCTBに出現した(上、左カラム)が、PANC-1では発現しなかった(下、右カラム)一方、FasがprCTB(下、左カラム)とPANC-1(上、右カラム)の両方で発現したことを示す。バースケールは示した通りである。図11G~11Kは、prCTBが相互作用に際して固形腫瘍細胞のアポトーシスを誘起したことを示す。図11GはprCTB(青)が相互作用に際して乳腺MCF-7細胞(緑)のアポトーシスを誘起したことを3D細胞エクスプローラー蛍光顕微鏡によって示す(図11G)。図11Hは、prCTBがPD-L1を誘起したがPD-1を誘起しなかった(左カラム)一方、PANC-1がPD-1とPD-L1の両方を誘起した(右カラム)ことを示す。図11Iは、prCTBがFasLとFasの両方を発現した(左カラム)一方、PANC-1がこれらの両方を発現した(右カラム)ことを示す。図11Jは、prCTBが抗アポトーシス性のMcl-1 mRNAおよびBfl-1 mRNAを顕著に上方制御したことをRT-qPCR解析によって示す。データは平均±SDを表わす。n=4、ステューデントt-検定、統計的有意:p<0.05、**p<0.01。図11Kは、prCTBが24時間の共培養でHuh7細胞(肝)、H1299細胞(肺)、MKN45細胞(胃)、PA-1細胞(卵巣)、およびA375細胞(黒色腫)のアポトーシス(アポキシン、緑)を惹起したことを3D細胞エクスプローラー蛍光顕微鏡(Nanolive,Swiss)による解析によって示す。バースケールは示した通りである。
図11B図11Aの説明と同じ。
図11C図11Aの説明と同じ。
図11D図11Aの説明と同じ。
図11E図11Aの説明と同じ。
図11F図11Aの説明と同じ。
図11G図11Aの説明と同じ。
図11H図11Aの説明と同じ。
図11I図11Aの説明と同じ。
図11J図11Aの説明と同じ。
図11K図11Aの説明と同じ。
図12A】[0032]図12A~12Bは、EVTから母体脱落膜への遊走におけるCD56(+)β-hCG(+)細胞の細胞プロセスを示す。卵管異所性絨毛膜絨毛において、左パネル:CD56発現細胞の免疫細胞化学。中パネル:絨毛性間質の間のCD56(+)細胞の散発的分布、絨毛性CTBの内層(黒色矢印)、EVT区域における濃縮。右パネル:絨毛性表面およびEVT区域におけるβ-hCG発現栄養芽細胞の分布。正常胎盤絨毛において、左パネル:H&E染色による係留された絨毛、EVT、および母体脱落膜組織の組織学的同定。中パネル:EVT区域および近傍の脱落膜組織におけるCD56(+)細胞の外観。右パネル:目立ったCD56(+)細胞が母体脱落膜に出現する。CD56(+)細胞と同様のβ-hCG(+)栄養芽細胞の分布。
図12B図12Aの説明と同じ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0033]1つまたは複数の発明実施形態の詳細を、添付した図面、特許請求の範囲、およ
び本明細書において説明する。本明細書で開示し意図した発明実施形態のその他の特徴、目的、および利点は、明示的に除外しない限り、任意の他の実施形態と組み合わせることができる。
【0021】
[0034]in vitroで産生される独特の先駆制御性細胞栄養芽細胞、その組成物、および障害(例えばがん、炎症、または自己免疫疾患)の処置または状態(例えば皮膚の状態)の改善におけるその使用が、本明細書で開示される。先駆制御性細胞栄養芽細胞は、栄養芽幹細胞とは区別される。先駆制御性細胞栄養芽細胞は、胚幹細胞とも区別される。先駆制御性細胞栄養芽細胞は、原始細胞栄養芽細胞ならびに絨毛性細胞栄養芽細胞(絨毛性CTB)、原始合胞体栄養芽細胞(pSTB)、合胞体栄養芽細胞(STB)、および絨毛外細胞栄養芽細胞(EVT)を含む原始細胞栄養芽細胞由来の細胞とも区別される。図5Cを参照されたい。先駆制御性細胞栄養芽細胞は、胎盤細胞栄養芽細胞とも区別される。いくつかの例では、先駆制御性細胞栄養芽細胞は、先駆絨毛性細胞栄養芽細胞ではない。
【0022】
[0035]他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、特許請求する主題が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。上記の一般的な記述および以下の詳細な説明は例示および説明のためのみであって、特許請求するいずれの主題をも制限しないことを理解されたい。本出願において、単数の使用は、他に具体的に述べない限り、複数を含む。明細書および添付した特許請求の範囲において使用する単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他を明確に記述しない限り、複数の参照物を含むことに注意されたい。本出願において、「または」の使用は、他に述べない限り、「および/または」を意味する。さらに、用語「含む(including)」、ならびに「include」、「includes」、および「included」等の他の形の使用は限定的でない。
【0023】
[0036]本明細書で使用する場合、範囲および量は、「約」特定の値または範囲、例えば引用した数値の±15%として表わすことができる。「約」は正確な量をも含む。したがって、「約5μL」は、「約5μL」および「5μL」をも意味する。一般に、用語「約」は、実験誤差の範囲内と予想される量を含む。
【0024】
[0037]用語「処置する(treating: 治療する)」、「処置(treatment: 治療)」等は
、本明細書において所望の薬学的および/または生理学的な効果を得ることを意味するために使用される。いくつかの例では、個体(例えば肝に関連する疾患または障害に罹患している疑いがある、および/または遺伝的に罹患しやすい個体)は、本明細書に記載した細胞の製剤で予防的に処置され、そのような予防的処置は、肝関連の疾患もしくは障害またはその兆候もしくは症状を完全にまたは部分的に防止する。いくつかの例では、個体は(例えば個体が肝関連の疾患または障害に罹患している場合に)治療的に処置され、そのような治療的処置は疾患もしくは障害の部分的もしくは完全な治癒を惹起し、および/または疾患もしくは障害に帰せられる有害事象を好転させ、および/または疾患もしくは障害を安定させ、および/または疾患もしくは障害の進行を遅延させ、および/または疾患もしくは障害の退縮を惹起する。
【0025】
[0038]処置を必要とする区域への本明細書で開示した細胞の投与(例えば移植)は、限定するものではないが例えば手術中の局所注入、注射、カテーテル手段、インプラント手段等によって達成され、前記インプラントは多孔質、非多孔質、またはゲル状の材料、例えば膜、例えばサイラスティック膜もしくは繊維である。
【0026】
[0039]組成物を哺乳動物に「移植すること」は、当技術において確立された任意の方法によって哺乳動物の体内に組成物を導入することを意味する。導入される組成物は「移植
物」であり、哺乳動物は「レシピエント」である。移植物およびレシピエントは同系、同種、または異種であってよい。さらに、移植は自己移植であってよい。
【0027】
[0040]用語「単離された」は、細胞または細胞の集団に関連して使用する場合、その細胞または細胞の集団が由来する宿主生命体から分離された細胞または細胞の集団の状態を意味する。いくつかの例では、単離された細胞は、同じ宿主生命体から単離された他の細胞と接触している。いくつかの例では、単離された細胞は、任意の他の細胞から分離されている。いくつかの例では、単離されたprCTBは、前駆細胞からin vitroで誘導される。いくつかの例では、単離されたprCTBは宿主生命体から得られ、宿主生命体から分離される。
【0028】
[0041]「有効量」は、意図した目的を達成するために十分な治療剤の量である。障害を治療または改善するための組成物の有効量は、障害の症状を低減または除去するために十分な組成物の量である。
【0029】
[0042]本明細書で使用する見出しは整理する目的のためのみであって、記載した主題を限定するものと解釈すべきではない。
細胞および組成物
[0043]いくつかの例では、in vitroで単離された先駆制御性細胞栄養芽細胞(
prCTB)が本明細書で開示され、単離されたprCTBは、HSP90、インスリン、CD4、CD16、CD56、CD107a、CD8、インターロイキン15(IL-15)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、CD11b、CD49f、CD3、CD19、CD34、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、もしくはそれらの任意の組合せのうち1つもしくは複数のタンパク質を発現し、またはprCTBはケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せを分泌し、またはケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せを運搬するエキソソームを分泌し、および/またはprCTBはp53、Ki67、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、またはそれらの任意の組合せを発現する。いくつかの例では、単離されたprCTBはCD4、CD16、CD56、CD107a、CD8、またはそれらの任意の組合せを発現する。いくつかの例では、prCTBは、例えばがん細胞のコロニーに浸潤することによって、がん細胞のアポトーシスを誘起し、任意選択でprCTB自体はがん細胞と接触することによってアポトーシスを受けない。いくつかの例では、がん細胞は固形腫瘍細胞である。いくつかの例では、がん細胞は膵がん細胞、乳がん細胞、肝腫瘍細胞、卵巣腫瘍細胞、肺腫瘍細胞、胃腫瘍細胞、黒色腫細胞、またはそれらの任意の組合せである。いくつかの例では、がん細胞はPD-1およびPD-L1を発現する一方、prCTBはPD-L1を発現するがPD-1を発現しない。いくつかの例では、がん細胞はFasを発現するがFasLを発現しない一方、prCTBはFasおよびFasLを発現する。いくつかの例では、prCTBはBfl-1およびMcl-1を発現する。
【0030】
[0044]いくつかの例では、先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を含む細胞の単離された集団が本明細書で開示され、prCTBの集団は、HSP90、インスリン、CD4、CD16、CD56、CD107a、CD8、インターロイキン15(IL-15)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球
免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、CD11b、CD49f、CD3、CD19、CD34、もしくはそれらの任意の組合せのうち1つもしくは複数のタンパク質を発現し、またはprCTBはケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せを分泌し、またはケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せを運搬するエキソソームを分泌し、および/またはprCTBの集団は、p53、Ki67、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、もしくはそれらの任意の組合せを発現する。いくつかの例では、集団の少なくとも約10%はCD16およびCD56を発現するprCTBである。いくつかの例では、集団の少なくとも約2%はCD4を発現するprCTBである。いくつかの例では、集団の少なくとも約2%はCD8を発現するprCTBである。いくつかの例では、集団少なくとも約5%はCD107を発現するprCTBである。
【0031】
[0045]いくつかの例では、先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を含む細胞の単離された集団が本明細書で開示され、(i)集団の少なくとも約10%はCD16およびCD56を発現するprCTBであるか、(ii)集団の少なくとも約2%はCD4を発現するprCTBであるか、(iii)集団の少なくとも約2%はCD8を発現するprCTBであるか、もしくは(iv)集団の少なくとも約5%はCD107を発現するprCTBであるか、またはそれらの任意の組合せである。いくつかの例では、先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を含む細胞の単離された集団が本明細書で開示され、(i)集団の少なくとも約10%はCD16およびCD56を発現するprCTBであり、(ii)集団の少なくとも約2%はCD4を発現するprCTBであり、(iii)集団の少なくとも約2%はCD8を発現するprCTBであり、かつ(iv)集団の少なくとも約5%はCD107を発現するprCTBであり、またはそれらの任意の組合せである。いくつかの例では、細胞の集団は、集団の少なくとも約2%がCD16、CD56、およびCD107を発現するprCTBである集団を含む。
【0032】
[0046]いくつかの例では、単離されたprCTBはインターロイキン15(IL-15)を発現する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、CD11b、CD49f、CD3、CD19、CD34、もしくはそれらの任意の組合せを発現する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、ベータ-ホルモンヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCGまたはhCG-β)、可溶性ヒト白血球抗原G(sHLA-G)、トランスフォーメーション成長因子β1(TGF-β1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)、インターロイキン10(IL-10)、CD105、CD146、またはそれらの任意の組合せをさらに発現する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、シンシチン、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、またはそれらの組合せを欠いている。いくつかの例では、単離されたprCTBは、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せ、またはケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せを運搬するエキソソームを分泌する。いくつかの例では、サイトカインは、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5(CCL5)、単球ケ
モアトラクタントプロテイン-1(MCP-1)、単球ケモアトラクタントプロテイン-1(MCP-3)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CCL1)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド2(CCL2)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド11(CCL11)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド24(CCL24)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド26(CCL26)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド22(CCL22)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド10(CCL10)、フラクタルカイン、およびケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド4(CCL4)、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、サイトカインは、インターロイキン1α(IL-1α)、インターロイキン1β(IL-1β)、インターロイキン(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン12p40(IL-12p40)、インターロイキン13(IL-13)、インターロイキン15(I-15)、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、サイトカインは、インターフェロンα(IFN-α)またはインターフェロンγ(IFN-γ)を含む。いくつかの例では、成長因子は、血小板由来成長因子ホモダイマーAA(PDGF-AA)、PDGFホモダイマーBB(PDGF-BB)、PDGFヘテロダイマー(PDGF-AB)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリータンパク質、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L)、可溶性CD40リガンド(sCD40L)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン1β(IL-1β)、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、単離されたprCTBは、イムノブロット法によって測定して、単離されたprCTBがin vitroで分化した元の前駆細胞よりも高いレベルの活性化されたシグナルトランスデューサー/転写アクチベーター3(STAT3)または転写因子c-JUNを有する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、イムノブロット法によって測定して、単離されたprCTBがin vitroで分化した元の前駆細胞よりも少なくとも約1.1、1.2、1.5、1.5、2、2.2、2.5、2.8、3、3.5、4、5、8、10倍高いレベルの活性化されたシグナルトランスデューサー/転写アクチベーター3(STAT3)または転写因子c-JUNを有する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、イムノブロット法によって測定して、単離されたprCTBがin vitroで分化した元の前駆細胞よりも少なくとも約1.1、1.2、1.5、1.5、2、2.2、2.5、2.8、3、3.5、4、5、8、10倍高いレベルのSOX2タンパク質を発現する。いくつかの例では、絨毛膜絨毛由来の前駆細胞は、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、Ki67、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、p53、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、またはそれらの任意の組合せの発現を欠いている。いくつかの例では、絨毛膜絨毛由来の前駆細胞と単離されたprCTBの両方がヒートショックプロテイン90(HSP90)を発現する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、ヒト細胞である。いくつかの例では、単離されたprCTBは、げっ歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、または類人猿起源である。いくつかの例では、単離されたprCTBは、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む医薬組成物の中に存在する。
【0033】
[0047]いくつかの例では、本明細書で提供される細胞、例えばprCTBは、遺伝子修飾されている。いくつかの例では、細胞は外因性遺伝子、例えばトランスジーンを発現するように遺伝子修飾されている。本明細書で使用される用語「トランスジーン」およびその文法的等価物は、生命体に移入される遺伝子または遺伝物質を意味し得る。例えば、トランスジーンは、生命体に導入される遺伝子を含むDNAのストレッチまたはセグメントであり得る。トランスジーンが生命体に移入されると、生命体はトランスジェニック生命体と称される。トランスジーンは、トランスジェニック生命体の中でRNAまたはポリペ
プチド(例えばタンパク質)を産生するその能力を保持することができる。トランスジーンは異なる核酸、例えばRNAまたはDNAからなっていてよい。トランスジーンは、例えばTCRトランスジーンのように、操作されたT細胞受容体をコードし得る。トランスジーンはTCR配列を含み得る。トランスジーンはオンコジーンを含み得る。トランスジーンは免疫オンコジーンを含み得る。トランスジーンは組換えアームを含み得る。トランスジーンは操作された部位を含み得る。いくつかの例では、トランスジーンはオンコジーンである。いくつかの例では、トランスジーンは免疫オンコジーンである。いくつかの例では、トランスジーンは腫瘍サプレッサー遺伝子である。いくつかの例では、トランスジーンは、タンパク質分解を直接または間接に促進するタンパク質をコードする。いくつかの例では、トランスジーンは腫瘍溶解性遺伝子である。いくつかの例では、トランスジーンは腫瘍細胞のターゲティングにおいてリンパ球を助けることができる。いくつかの例では、トランスジーンはT細胞エンハンサー遺伝子である。いくつかの例では、トランスジーンは腫瘍溶解性ウイルス遺伝子である。いくつかの例では、トランスジーンは腫瘍細胞の成長を阻害する。いくつかの例では、トランスジーンは抗がん受容体である。いくつかの例では、トランスジーンは抗血管形成因子である。いくつかの例では、トランスジーンは細胞障害性遺伝子である。例示的なトランスジーンには、それだけに限らないが、CD28、誘起性コスティミュレーター(ICOS)、CD27、4-1BB(CD137)、ICOS-L、CD70、4-1BBL、シグナル3、サイトカイン、例えばIL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、ICAM-1(CD54)、LFA-3(CD58)、HLAクラスI遺伝子、B7、CD80、CD83、CD86、CD32、CD64、4-1BBL、CD3、CD1d、CD2、膜結合IL-15、膜結合IL-17、膜結合IL-21、膜結合IL-2、切断されたCD19、VEGF、カスパーゼ、ケモカイン、または上記のいずれかに対する抗体(例えばモノクローナル抗体)をコードする1つもしくは複数の遺伝子、またはそれらの任意の組合せが含まれる。いくつかの例では、トランスジーンは、細胞または組織の修復に関与するタンパク質(例えばDNAの修復、免疫応答(例えばインターフェロンおよびインターロイキン)に関連するタンパク質、および構造タンパク質)をコードする。いくつかの例では、トランスジーンは、成長因子受容体をコードする。いくつかの例では、本明細書に記載したprCTBは、TCR、B細胞受容体(BCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの任意の組合せをコードするトランスジーンを含む。いくつかの例では、CARは抗原認識ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。いくつかの例では、抗原認識ドメインは細胞の外側に曝露することができ、可能な標的分子と相互作用することができる。抗原認識ドメインは、一本鎖可変断片として連結され得るモノクローナル抗体の可変領域を含み得る。いくつかの例では、一本鎖可変断片は、リンカーペプチドと連結され得る免疫グロブリンの可変軽鎖および可変重鎖を含み得る。いくつかの例では、抗体系抗原認識ドメインの代替としてリガンドまたは受容体の系を使用することができる。ヒンジドメインは、膜貫通ドメインを抗原認識ドメインに結合させるために設計し得る。いくつかの例では、ヒンジ領域は、抗原認識ドメインの可撓性を増大させるために設計し得るペプチドであってよい。膜貫通ドメインは、細胞膜にわたる疎水性アルファヘリックスを含み得る。例えば、CARにおける膜貫通ドメインとして、CD28膜貫通ドメインを使用することができる。いくつかの例では、膜貫通ドメインはCARを原形質膜に係留することができる。細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを膜貫通ドメインに連結することができ、細胞の内部にあってもよい。いくつかの例では、標的タンパク質が抗原認識ドメインに結合する場合には、細胞内シグナル伝達ドメインは活性化シグナルを伝達することができる。いくつかの例では、シグナル伝達ドメインの活性化は、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)のリン酸化を含み得る。分子内シグナル伝達ドメインは、修飾されたITAMを含み得る。いくつかの例では、修飾されたITAMは、シグナル伝達ドメイン、例えばCD3-ゼータドメインを含み得る。いくつかの例では、修飾されたITAMシグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ、CD3-イプシロン、CD3-ガンマ、CD3-デルタ、それらの誘導体、またはそれらの任意の組合せを含
み得る。いくつかの例では、細胞内シグナル伝達ドメインは、1つまたは複数の共刺激ドメインを含み得る。いくつかの例では、細胞内シグナル伝達ドメインは、1つまたは複数のシグナル伝達ドメインおよび1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。いくつかの例では、共刺激ドメインは、CD28、CD27、CD40、CD134、CD137、誘起性共刺激(ICOS)、DAP10、それらの誘導体、またはそれらの任意の組合せからのシグナル伝達ドメインを含み得る。いくつかの例では、本明細書に記載したprCTBは、オンコジーン受容体をコードするトランスジーンを含む。
【0034】
[0048]いくつかの例では、本明細書で開示した細胞を含む組成物は、ヒトを含む哺乳動物への静脈内投与のための医薬組成物として処方される。いくつかの例では、静脈内投与のための組成物は、無菌の等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合には、組成物は、注射部位における疼痛があればこれを改善するための局所麻酔剤も含む。組成物を注入によって投与する場合には、組成物は無菌の医薬グレードの水または食塩水を含む注入ボトルで分注してよい。組成物を注射によって投与する場合には、無菌の注射用水または食塩水のアンプルを準備して、それにより投与の前に成分を混合することができる。
【0035】
[0049]一態様では、本明細書で開示した細胞を含む組成物(例えば医薬組成物)が本明細書で開示される。いくつかの例では、組成物は薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む。そのような担体には、それだけに限らないが、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、およびそれらの組合せが含まれる。他の例では、コロイド分散系が使用される。コロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む油に基づく系が含まれる。
【0036】
セクレトームおよび組成物
[0050]いくつかの態様では、本明細書に記載した栄養芽幹細胞またはprCTBのセク
レトームを含む組成物が本明細書で開示される。いくつかの例では、セクレトームは、栄養芽幹細胞またはprCTBによって分泌されるエキソソームおよび栄養芽幹細胞またはprCTBによって分泌されるその他の可溶性分子(例えばタンパク質、核酸、および脂質)を含む。
【0037】
[0051]いくつかの例では、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、またはそれらの任意の組合せを含む組成物が本明細書で開示される。いくつかの例では、組成物はエキソソームを含み、エキソソームはケモカイン、インターロイキン、成長因子、またはそれらの任意の組合せ、および薬学的もしくは美容的に許容される賦形剤を運搬する。いくつかの例では、組成物は細胞を含まない。いくつかの例では、組成物が(i)CXCL2、MCP-1、フラクタルカイン、IP-10、MCP-3、エオタキシン、MIP-1β、もしくはそれらの任意の組合せを含むケモカイン、(ii)IL-6、IL-8、IL-4、IL-1RA、IL-10、IL-12P40、IL-15、IL-1α、IL-17A、もしくはそれらの任意の組合せを含むインターロイキン、および(iii)PDGF-AA、VEGF、bFGF、G-CSF、Flt-3L、GM-CSF、もしくはそれらの任意の組合せを含む成長因子を含むか、またはエキソソームがこれらを運搬する。
【0038】
[0052]いくつかの例では、組成物はMCP-1ならびにCXCL2、IL-6、IL-8、およびVEGFタンパク質の1つ、2つ、3つ、または全てを含む。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約1:1~約2.5:1の重量比を有する。例えば、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約1.0:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2.0:1、2.1:、2.2:1、2.3:1、2.4:1、または2.5:1の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約2.0
の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約3:1~約4:1または約3:1~約5:1の重量比を有する。例えば、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約3:1、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.5、5、または4.0の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約3.2の重量比を有する。
【0039】
[0053]いくつかの例では、組成物はMCP-1ならびにCXCL2、IL-6、IL-8、およびVEGFタンパク質の1つ、2つ、3つ、または全てを含む。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約1:7~約1:4の重量比を有する。例えば、組成物中のMCP-1とCXCL2は、1:7.0、1:6.8、1:6.6、1:6.4、1:6.2、1:6、1:5.8、1:5.6、1:5.4、1:5.2、1:5.0、1:4.8、1:4.6、1:4.4、1:4.2、または1:4.0.の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約1:5.0の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約1:4~約1:1.5の重量比を有する。例えば、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約1:4.0、1:3.8、1:3.6、1:3.4、1:3.2、1:3.0、1:2.8、1:2.6、1:2.4、1:2.2、1:2.0、1;1.8、1:1.7、1:1.6、または1:1.5の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とCXCL2は、約1:4~約1:2.5の重量比を有する。
【0040】
[0054]いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-6は、約2:1~約3:1の重量比を有する。例えば、組成物中のMCP-1とIL-6は、約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3.0の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-6は、約2.3の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-6は、約2.5の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-6は、約3:1~約4:1の重量比を有する。例えば、組成物中のMCP-1とIL-6は、約3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、または4.0の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-6は、約3.6の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-6は、約3.8の重量比を有する。
【0041】
[0055]いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-8は、約4:1~約6:1の重量比を有する。例えば、組成物中のMCP-1とIL-8は、約4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、または6.0の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-8は、約4.6の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-8は、約4.4の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-8は、約4.9の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とIL-8は、約4.5の重量比を有する。
【0042】
[0056]いくつかの例では、組成物中のMCP-1とVEGFは、約5:1~約7:1の重量比を有する。例えば、組成物中のMCP-1とVEGFは、約5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、または7.0の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とVEGFは、約5.6の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とVEGFは、約6.0の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とVEGFは、約7:1~約9:1、例えば7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.
9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、または9.0の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とVEGFは、約7.6:1の重量比を有する。いくつかの例では、組成物中のMCP-1とVEGFは、約7.3:1の重量比を有する。
【0043】
[0057]いくつかの例では、組成物はPDGF-AAをさらに含む。いくつかの例では、MCP-1およびPDGF-AAは、約3:1~約5:1、例えば約3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、または5.0の重量比で存在する。いくつかの例では、MCP-1およびPDGF-AAは約3.5の重量比で存在する。いくつかの例では、MCP-1およびPDGF-AAは約6:1~約9:1、例えば約6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、8.6、8.8、または9.0の重量比で存在する。いくつかの例では、MCP-1およびPDGF-AAは約7.8の重量比で存在する。
【0044】
[0058]いくつかの例では、組成物はPDGF-AAをさらに含む。いくつかの例では、MCP-1およびPDGF-AAは約1:2.5~約1:1.5、例えば約1:2.5、1:2.4、1:2.3、1:2.2、1:2.1、1:2.0、1:1.9、1:1.8、1:1.7、1:1.6、または1:1.5の重量比で存在する。いくつかの例では、MCP-1およびPDGF-AAは約0.6の重量比で存在する。いくつかの例では、MCP-1およびPDGF-AAは約1:1.5~約1.5:1、例えば約1:1.5、1:1.4、1:1.3、1:1.2、1:1.1、1:1.0、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、または1.5:1の重量比で存在する。いくつかの例では、MCP-1およびPDGF-AAは約1.2の重量比で存在する。
【0045】
[0059]いくつかの例では、組成物はPDGF-AAをさらに含む。いくつかの例では、MCP-1およびPDGF-AAは約3:1~約5:1、例えば3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、または5.0の重量比で存在する。いくつかの例では、MCP-1およびPDGF-AAは約3.5の重量比で存在する。いくつかの例では、MCP-1およびPDGF-AAは約6:1~約9:1、例えば約6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、8.6、8.8、または9.0の重量比で存在する。いくつかの例では、MCP-1およびPDGF-AAは約7.8の重量比で存在する。
【0046】
[0060]いくつかの例では、組成物はPDGF-AAおよびG-CSFをさらに含む。いくつかの例では、組成物はPDGF-AAおよびFGF-2(bFGF)をさらに含む。いくつかの例では、組成物は、IP-10、エオタキシン、Flt-3L、GM-CSF、MIP-1a、MIP-1b、IL-1a、IL-1RA、IL-4、IL-7、IL-10、IL-12P40、IL-13、IL-15、IL-17A、CCL5(RANTES)、MDC、MCP-3、IL-12P70、IFNa、IFNr、PDGF-AB/BB、またはEGFのうち1つまたは複数のタンパク質をさらに含む。
【0047】
[0061]いくつかの例では、組成物は核酸、例えばmRNA、siRNA、shRNA、またはDNAをさらに含む。いくつかの例では、組成物は、prCTBまたは栄養芽幹細胞から分泌される脂質分子をさらに含む。
【0048】
[0062]いくつかの例では、本明細書で開示される組成物は無菌であってよい。いくつかの例では、組成物は常在微生物を含んでよい。微生物はウイルス、細菌、真核細胞、またはそれらの任意の組合せであってよい。いくつかの例では、微生物は病原性でなくてよい
。いくつかの例では、組成物は約10コロニー形成単位(CFU)/グラム(g)、50CFU/g、100CFU/g、150CFU/g、200CFU/g、300CFU/g、400CFU/g、500CFU/g、600CFU/g、700CFU/g、800CFU/g、900CFU/g、または1000CFU/g未満の濃度で細菌を含み得る。いくつかの例では、組成物は約10CFU/g~約1000CFU/g、10CFU/g~約50CFU/g、20CFU/g~約100CFU/g、50CFU/g~約200CFU/g、100CFU/g~約250CFU/g、200CFU/g~約500CFU/g、500CFU/g~約700CFU/g、または600CFU/g~約1000CFU/gの濃度で細菌を含み得る。いくつかの例では、組成物はStaphylococcus aureus、Streptococcus pyogenes、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas種、Klebsiella pneumoniae、またはそれらの任意の組合せを実質的に含まない(例えば少なくとも95%含まない)か、または含まない。
【0049】
[0063]いくつかの例では、本明細書で開示した組成物は、鉛等の重金属、ビチオノール、クロロフルオロカーボン噴射剤、ニトロソアミン、クロロホルム、ハロゲン化サリチルアニリド、ヘキサクロロフェン、水銀化合物、1,4-ジオキサン、塩化メチレン、禁止されているウシ由来材料、日焼け止め化合物、塩化ビニル、ジルコニウム含有複合体、またはそれらの任意の組合せを含まないのがよい。いくつかの例では、禁止されているウシ由来材料には、脳、頭蓋骨、眼球、三叉神経節、脊髄、脊柱、後根神経節、扁桃腺、小腸の遠位回腸、またはそれらの任意の組合せが含まれ得る。いくつかの例では、組成物は、10(百万分率)ppmまたはそれ未満のレベルで鉛を含んでよい。
【0050】
[0064]いくつかの例では、本明細書の組成物は、着色剤、香料、パラベン、フタレート、アルコール、またはそれらの任意の組合せを含まない。いくつかの例では、着色剤、香料、パラベン、フタレート、またはアルコールは、組成物中に僅かなレベル、例えば5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%未満で存在する。いくつかの例では、偶発的な含有物は、組成物中で技術的/構造的、機能的、またはそれらの任意の組合せの効果を有さず、例えば活性含有物でない。いくつかの例では、組成物は、を含まない。
【0051】
[0065]いくつかの例では、本明細書で開示した賦形剤には、水、グリセロール、食塩水、植物油(例えば種油)、果実油、花卉抽出物、鉱油、合成油、糖化合物、ケイ酸塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、乳酸、デンプン、糖アルコール、セルロース、活性炭、グリセリン、バター、アミン酸、パラフィン、蜂蜜、ワックス、蜜蝋、寒天、炭酸カルシウム、クエン酸、酒石酸、ステアリン酸、キサンタンガム、安息香酸、ポリエチレングリコール、シリコン、それらの誘導体、それらの塩、またはそれらの任意の組合せが含まれ得る。
【0052】
使用方法
[0066]いくつかの例では、単離されたprCTBは、対象に、静脈内、皮下、経皮、吸
入、経口、筋肉内、または腫瘍内投与される。いくつかの例では、対象は哺乳動物である。いくつかの例では、対象は霊長類である。いくつかの例では、対象はヒトである。いくつかの例では、単離されたprCTBは、インターロイキン15(IL-15)を発現する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、CD4、CD16、CD56、CD107a、CD8、またはそれらの任意の組合せを発現する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)
、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、CD11b、CD49f、CD3、CD19、CD34、またはそれらの任意の組合せを発現する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、ベータ-ホルモンヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)、可溶性ヒト白血球抗原G(sHLA-G)、トランスフォーメーション成長因子β1(TGF-β1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)、インターロイキン10(IL-10)、CD105、CD146、またはそれらの任意の組合せをさらに発現する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、シンシチン、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、またはそれらの組合せを欠いている。いくつかの例では、単離されたprCTBは、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せ、またはケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せを運搬するエキソソームを分泌する。いくつかの例では、サイトカインは、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5(CCL5)、単球ケモアトラクタントプロテイン-1(MCP-1)、単球ケモアトラクタントプロテイン-1(MCP-3)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CCL1)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド2(CCL2)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド11(CCL11)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド24(CCL24)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド26(CCL26)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド22(CCL22)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド10(CCL10)、フラクタルカイン、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド4(CCL4)、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、サイトカインは、インターロイキン1α(IL-1α)、インターロイキン1β(IL-1β)、インターロイキン(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン12p40(IL-12p40)、インターロイキン13(IL-13)、インターロイキン15(I-15)、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、サイトカインは、インターフェロンα(IFN-α)またはインターフェロンγ(IFN-γ)を含む。いくつかの例では、成長因子は、血小板由来成長因子ホモダイマーAA(PDGF-AA)、PDGFホモダイマーBB(PDGF-BB)、PDGFヘテロダイマー(PDGF-AB)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリータンパク質、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L)、可溶性CD40リガンド(sCD40L)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン1β(IL-1β)、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、単離されたprCTBは、イムノブロット法によって測定して、単離されたprCTBがin vitroで分化した元の前駆細胞よりも高いレベルの活性化されたシグナルトランスデューサー/転写アクチベーター3(STAT3)または転写因子c-JUNを有する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、イムノブロット法によって測定して、単離されたprCTBがin vitroで分化した元の前駆細胞よりも少なくとも約1.1、1.2、1.5、1.5、2、2.2、2.5、2.8、3、3.5、4、5、8、10倍高いレベルの活性化されたシグナルトランスデューサー/転写アクチベーター3(STAT3)または転写因子c-JUNを有する。いくつかの例では、単離されたprCTBは、イムノブロット法によって測定して、単離されたprCTBがin vitroで分化した元の前駆細胞よりも少なくとも約1.1、1.2、1.5、1.5、2、2.2、2.5、2.8、3、3.5、4、5、8、10倍高いレベルのSOX2タンパク質を発現する。いくつかの例では、前駆細胞は、p53、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、Ki67、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、またはそれらの任意の組合せの発現を欠いている。いくつかの例では、単離されたprCTBは、ヒト細胞である。いくつかの例では、単離されたprCTBは、げっ歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、または類人猿起源である。
【0053】
[0067]いくつかの例では、抗原を保有する標的細胞を死滅させる必要がある対象に先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を投与することを含む、抗原保有標的細胞を死滅させる方法が本明細書で開示され、単離されたprCTBは、HSP90、インスリン、CD4、CD16、CD56、CD107a、CD8、インターロイキン15(IL-15)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、CD11b、CD49f、CD3、CD19、CD34、またはそれらの任意の組合せ、およびグルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、Ki67、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、p53、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、またはそれらの任意の組合せを含む1つまたは複数のタンパク質を発現する。いくつかの例では、抗原保有細胞は抗原提示細胞ではなく、例えば樹状細胞、マクロファージ、またはB細胞ではない。いくつかの例では、抗原保有標的細胞はがん細胞である。いくつかの例では、がん細胞は固形腫瘍細胞である。いくつかの例では、がん細胞は血液がん細胞である。いくつかの例では、がん細胞は膀胱がん細胞、骨がん細胞、脳がん細胞、乳がん細胞、頸部の癌腫、結腸直腸がん細胞、食道がん細胞、胃腸がん細胞、造血系悪性疾患、頭頚部扁平上皮細胞癌、白血病、肝がん細胞、肺がん細胞、リンパ腫、骨髄腫、鼻がん細胞、鼻咽頭がん細胞、口腔がん細胞、口腔咽頭がん細胞、卵巣がん細胞、前立腺がん細胞、肉腫、胃がん細胞、黒色腫、甲状腺がん細胞、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、抗原保有標的細胞は病原体である。いくつかの例では、病原体はウイルス、細菌、プロトゾア、プリオン、真菌、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、本方法は抗原保有標的細胞の集団の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または約100%を死滅させる。
【0054】
[0068]いくつかの例では、炎症性経路を下方制御する必要がある対象に先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を投与することを含む、炎症性経路を下方制御する方法が本明細書で開示され、(i)単離されたprCTBは、(a)HSP90、インスリン、CD4、CD16、CD56、CD107a、CD8、インターロイキン15(IL-15)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LILRB1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、T細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)、アポトーシスシグナル受容体(Fas)、Fasリガンド(FasL)、CD335(NKp46)、B細胞白血病/リンパ腫2関連タンパク質A1(BCL2A1またはBfl-1)、ミエロイド細胞白血病シーケンス1(Mcl-1)、CD11b、CD49f、CD3、CD19、CD34、またはそれらの任意の組合せ、および(b)グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD65)、Ki67、ヒートショックプロテイン70(HSP70)、p53、可溶性CD40-リガンド(sCD40L)、またはそれらの任意の組合せを発現し、(ii)単離されたprCTBは、ケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せを分泌し、またはケモカイン、サイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せを運搬するエキソソームを分泌する。
【0055】
[0069]いくつかの例では、本方法は、移植拒絶、感染、感染に伴うエンドトキシンショック、関節炎、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、全身発症若年性特発性関節炎(JIA)、炎症性腸疾患(IBD)、全身性ループスエリテマトーデス(SLE)、喘息、骨盤
内炎症性疾患、アルツハイマー病、クローン病、潰瘍性腸炎、刺激性腸症候群、多発性硬化症、強直性脊椎炎、皮膚筋炎、ブドウ膜炎、ぺイロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、血管炎、手術後癒着、発作、I型糖尿病、ライム関節炎、髄膜脳炎、中枢および末梢神経系の免疫媒介炎症性障害、膵炎、手術後傷害、グラフト対宿主病、心臓疾患、骨の再吸収、火傷患者、心筋梗塞、パジェット病、骨粗鬆症、敗血症、肝もしくは肺の線維化、歯周炎、または低塩酸症を含む疾患または状態を処置する。いくつかの例では、本方法は、I型糖尿病、多発性硬化症、全身性ループスエリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、多発性筋炎、慢性活動性肝炎、混合結合組織病、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、自己免疫性甲状腺炎、特発性アジソン病、白斑、グルテン感受性腸疾患、グレーブス病、重症筋無力症、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、リウマチ性関節炎、肝硬変、尋常性天疱瘡、自己免疫性不妊、グッドパスチャー病、水疱性類天疱瘡、ディスコイドループス、潰瘍性大腸炎、高密度沈着物疾患、炎症性腸疾患、または乾癬を含む自己免疫疾患を処置する。いくつかの例では、本方法は1型糖尿病を処置する。いくつかの例では、本方法は移植拒絶を改善する。
【0056】
[0001]いくつかの例では、皮膚の状態を調節することを必要とする対象に、ケモカイン、インターロイキン等のサイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せ、またはケモカイン、インターロイキン等のサイトカイン、成長因子、もしくはそれらの任意の組合せを運搬するエキソソームを含む組成物(例えば医薬組成物)を投与することを含む、皮膚の状態を調節する方法が本明細書で開示される。いくつかの例では、本方法は皮膚の状態を改善し、それにより皮膚の状態は、本方法の適用前と比較して、本方法の適用後に1つまたは複数のより良い特徴を有する。いくつかの例では、ケモカインは、GRO、MCP-1、フラクタルカイン、IP-10,MCP-3、エオタキシン、MIP-1β、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、組成物は、IL-6、IL-8、IL-4、IL-1RA、IL-10、IL-12P40、IL-15、IL-1α、IL-17A、またはそれらの任意の組合せを含むインターロイキンを含む。いくつかの例では、成長因子は、PDGF-AA、VEGF、bFGF、G-CSF、Flt-3L、GM-CSF、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの例では、本方法は、美容上の用途を提供する。いくつかの例では、本方法は皮膚を引き締める。いくつかの例では、本方法は皮膚を水和する。いくつかの例では、本方法は皮膚を若返らせる。いくつかの例では、組成物は幹細胞を継代した後の培地である。いくつかの例では、幹細胞は本明細書に記載した単離された先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)である。いくつかの例では、継代数は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。いくつかの例では、幹細胞は培地中で少なくとも約1~3日、例えば約1~2日、例えば培地を回収する前に培養される。いくつかの例では、幹細胞は培地中で少なくとも約12~24時間、例えば培地を回収する前に培養される。いくつかの例では、継代数は5~10である。いくつかの例では、継代は約1、2、または3日ごとに行なう。いくつかの例では、継代は約2、4、6、8、12、16、20、または24時間ごとに行なう。いくつかの例では、培地は幹細胞を含まない。いくつかの例では、組成物はクリーム、液体、ゲル、ローション、ミスト、カプセル、またはマスクの形態である。いくつかの例では、本方法は皮膚疾患を処置するために使用できる。いくつかの例では、皮膚疾患は、湿疹、乾癬、にきび、酒さ、魚鱗癬、白斑、蕁麻疹、脂漏性皮膚炎、帯状疱疹、日焼け、火傷、接触皮膚炎、発疹、またはそれらの任意の組合せであり得る。いくつかの例では、本方法は、皮膚の老化の外観、光による老化、またはそれらの任意の組合せを低減することができる。いくつかの例では、本方法は瘢痕の外観を低減することができる。いくつかの例では、本方法は創傷治癒を改善することができる。いくつかの例では、本方法は、傷、良性腫瘍、老化による染み、がん性増殖、潰瘍、感染、またはそれらの任意の組合せを防止し、低減し、または除去することができる。いくつかの例では、本方法は、皮膚の線、しわ、またはそれらの任意の組合せを防止、低減し、または除去することができる。いくつかの例では、線またはしわは、カラスの足跡、微笑線、渋面線、額のしわ、ティアトラフ
、ウサギ様の線、ほうれい線、マリオネット線、心理的な溝、ネックライン、老化によるしわ、しわ線、弾力性のしわ、表情線、重力によるたるみ、動的しわ、静的しわ、委縮性しわ(atrophic wrinkes)、委縮性しわ(atrophic crinkling rhytids)、またはそれらの任意の組合せであってよい。いくつかの例では、本方法は、皮膚の体積、弾性、またはそれらの任意の組合せの喪失を防止し、低減し、または除去することができる。いくつかの例では、本方法は、皮膚のたるみ、皮膚の鈍い色調、まだらの変色、肌荒れ、乾燥肌、皮膚の痒み、皮膚の菲薄化、またはそれらの任意の組合せを防止し、低減し、または除去することができる。いくつかの例では、本方法は、皮膚の状態、皮膚の疾患、またはそれらの任意の組合せを改善または改良することができる。いくつかの例では、本方法は、皮膚を湿潤化し、引き締め、引き上げ、または若返らせることができる。いくつかの例では、本方法は、皮膚の健康、平滑性、汚点のなさ、半透明性、強靭性、またはそれらの任意の組合せを回復または持続することができる。いくつかの例では、本方法は、皮膚のグリコサミノグリカン、真皮、コラーゲン、およびエラスチンの治癒、処置、修復、またはそれらの任意の組合せを行うことができる。いくつかの例では、改善された皮膚の健康は、しわ重症度評定スケール、経上皮水分損失測定、皮膚色測定、皮膚表面トポグラフィー測定、Cutometer(登録商標)による粘弾性測定、組織学的検査、またはそれらの任意の組合せによって測定することができる。いくつかの例では、改善された皮膚の健康は、磁気共鳴イメージング(MRI)等の診断イメージによって測定することができる。いくつかの例では、測定は組成物の投与の前後で比較することができる。いくつかの例では、測定は標準と比較することができる。
【0057】
[0070]別の態様では、細胞を対象に(例えば対象の肝に)グラフトするために有効な量で本明細書の細胞を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における状態を処置する方法が本明細書で開示される。いくつかの例では、細胞は薬学的に許容される担体の中で投与される。いくつかの例では、薬学的に許容される担体は、食塩水、例えばリン酸塩緩衝食塩水、またはウシ胎児血清を含む。いくつかの例では、細胞は、mlあたり約1×10~約100×10細胞、mlあたり約1×10~約250×10細胞、mlあたり約1×10~約500×10細胞、またはmlあたり約10×10~約40×10細胞を含む懸濁液中で投与される。いくつかの例では、細胞は、約1~5ml、1~10ml、1~50ml、1~100ml、または10~150mlの体積で投与される。いくつかの例では、対象はヒトである。いくつかの例では、投与は注射、例えば静脈内注射を含む。いくつかの例では、注射は肝静脈に投与される。いくつかの例では、注射は肝動脈に投与される。いくつかの例では、状態は肝関連疾患または障害である。いくつかの例では、状態は肝不全である。いくつかの例では、肝関連疾患または障害は、アラジール症候群、アルファ1アンチトリプシン欠乏症、自己免疫性肝炎、良性肝腫瘍、胆道閉鎖症、肝硬変、肝の嚢胞性疾患、アルコール関連肝疾患および非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を含む脂肪肝疾患、ガラクトース血症、胆石、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、肝嚢胞、肝がん、妊娠時の肝疾患(任意選択で妊娠時急性脂肪肝、妊娠時肝内胆汁鬱滞、子癇前症、またはHELLP症候群(溶血、肝検査値の上昇、血小板の減少))、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、ポルフィリン症、ライ症候群、サルコイドーシス、中毒性肝炎、1型グリコーゲン蓄積疾患、チロシン血症、ウイルス性肝炎、ウィルソン病、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0058】
[0071]本明細書で開示した細胞の投与の様式には、それだけに限らないが、全身静脈内注射および意図した活性部位への直接注射(例えば内視鏡的逆行注射)が含まれる。製剤は任意の便利な経路、例えば注入またはボーラス注射によって投与することができ、他の生物活性薬剤とともに投与することができる。いくつかの例では、投与は全身性の限局的投与である。
【0059】
[0072]いくつかの態様では、本明細書で開示した細胞を対象に移植するための組成物お
よび方法が本明細書で提供される。いくつかの例では、対象には細胞が(例えば静脈内、筋肉内、経皮、内視鏡的逆行注射、またな腹腔内で)注射される。いくつかの例では、対象は移植に先立って免疫抑制剤で処置されていない。いくつかの例では、本方法は、患者を免疫抑制剤、例えばFK-506、シクロスポリン、またはGAD65抗体で処置することをさらに含む。
【0060】
[0073]いくつかの例では、本明細書に記載した細胞は、細胞を特定の組織にターゲティングするために適した送達システムによって、標的部位(例えば肝の欠損部分)に送達される。例えば、細胞は、標的部位における細胞の遅い放出を可能にする送達ビヒクルの中にカプセル化される。送達ビヒクルは、これが特定の組織に特異的に標的されるように修飾される。標的送達システムの表面は、種々の方法によって修飾される。リポソーマル標的送達システムの場合には、標的リガンドをリポソーマル二重層との安定な会合状態に維持するために、脂質基がリポソームの脂質二重層の中に組み込まれる。
【0061】
[0074]本明細書に記載した細胞の投与は、任意選択で(1)注射する細胞の量を増加または減少させること、(2)注射の回数を変化させること、または(3)細胞の送達の方法を変化させること、によって個体に合わせて調整される。
【0062】
検出方法
[0075]上述のバイオマーカーの発現または存在を決定する方法は当技術で公知であり、
例えばフローサイトメトリー、免疫組織化学、ウェスタンブロット、免疫沈降法、磁気ビーズ選択、およびこれらの細胞表面マーカーのいずれかを発現する細胞の定量によって測定することができる。バイオマーカーRNAの発現のレベルは、RT-PCR、Qt-PCR、マイクロアレイ、ノーザンブロット、またはその他の同様の技術によって測定することができる。
【0063】
[0076]「発現を検出する」または「発現レベルを検出する」は、生体試料におけるバイオマーカータンパク質または遺伝子の発現レベルまたは存在を決定することを意図している。即ち、「発現を検出する」は、バイオマーカーが発現されていない、検出できる程度に発現されていない、低レベルで発現されている、正常レベルで発現されている、または過発現されている、という場合を包含する。
【0064】
[0077]いくつかの例では、本明細書に記載したバイオマーカーの発現または存在は、例えば免疫組織化学手法またはin situハイブリダイゼーションおよびRT-PCR等の核酸に基づく手法を使用して、核酸レベルで決定される。いくつかの例では、1つまたは複数のバイオマーカーの発現または存在は、核酸増幅のための手段、核酸シーケンシングのための手段、核酸マイクロアレイ(DNAおよびRNA)を利用する手段、または特異的にラベルしたプローブを使用するin situハイブリダイゼーションのための手段によって行なわれる。
【0065】
[0078]いくつかの例では、バイオマーカーの発現または存在の決定は、ゲル電気泳動によって行なわれる。いくつかの例では、決定は膜への転写および特異的プローブとのハイブリダイゼーションによって行なわれる。いくつかの例では、バイオマーカーの発現または存在の決定は、診断イメージング手法によって行なわれる。いくつかの例では、バイオマーカーの発現または存在の決定は、検出可能な固体基質によって行なわれる。いくつかの例では、検出可能な固体基質は、抗体によって機能化された常磁性ナノ粒子である。
【0066】
[0079]いくつかの例では、バイオマーカーの発現または存在は、RNA(例えばmRNA)レベルである。いくつかの例では、RNA(例えばmRNA)レベルを検出する手法には、それだけに限らないが、サザンまたはノーザン解析、ポリメラーゼ連鎖反応解析、
およびプローブアレイが含まれる。
【0067】
[0080]mRNAレベルの検出のための1つの方法は、単離されたmRNAを、検出される遺伝子によってコードされるmRNAにハイブリダイズする核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。核酸プローブは、例えば全長のcDNAまたはその部分、例えば本明細書に記載したバイオマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAと厳しい条件下で特異的にハイブリダイズするために十分な少なくとも7、15、30、50、100、250、または500ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドからなる。mRNAのプローブとのハイブリダイゼーションは、バイオマーカーまたはその他の目的のタンパク質が発現していることを示す。
【0068】
[0081]いくつかの例では、mRNAは固体表面上に固定化され、例えば単離されたmRNAをアガロースゲルの上に泳動させ、mRNAをゲルからニトロセルロース等の膜に転写することによって、プローブと接触させられる。いくつかの例では、プローブが固体表面上に固定化され、mRNAが例えば遺伝子チップアレイ中でプローブと接触させられる。当業者であれば、バイオマーカーまたはその他の目的のタンパク質をコードするmRNAのレベルの検出における使用のための既知のmRNA検出法を容易に適合させる。
【0069】
[0082]試料中の目的のmRNAのレベルを決定するための代替の方法には、例えばRT-PCR、リガーゼ連鎖反応、自己持続配列複製、転写増幅システム、Q-ベータレプリカーゼ、ローリングサークル複製、またはその他の任意の核酸増幅法による核酸増幅のプロセス、およびそれに続く当業者には既知の手法を使用する増幅された分子の検出が含まれる。これらの検出スキームは、核酸分子が極めて少ない数で存在する場合には、核酸分子の検出のために特に有用である。いくつかの例では、バイオマーカーの発現は、定量的蛍光RT-PCR(例えばTAQMANシステム)によって評価される。
【0070】
[0083]目的のRNAの発現レベルは、(例えばノーザン、ドット、その他のハイブリダイゼーション分析において使用されるような)膜ブロット、またはマイクロウェル、試料チューブ、ゲル、ビーズ、もしくは繊維(または結合した核酸を含む任意の固体支持体)を使用してモニターされる。発現の検出は、溶液中で核酸プローブを使用することも含む。
【0071】
[0084]いくつかの例では、1つまたは複数のバイオマーカーの発現または存在を決定するためにマイクロアレイが使用される。核酸マイクロアレイは、多数の遺伝子の発現レベルの同時測定のための1つの方法を提供する。それぞれのアレイは、固体支持体に結合させた捕捉プローブの再現可能なパターンからなる。標識されたRNAまたはDNAがアレイ上で相補的プローブにハイブリダイズし、次いでレーザースキャンニングによって検出される。アレイ上のそれぞれのプローブのハイブリダイゼーション強度が決定され、相対的遺伝子発現レベルを表わす定量値に変換される。試料中の多数のRNAについての遺伝子発現プロファイルを決定するために、高密度オリゴヌクレオチドアレイが特に有用である。
【0072】
[0085]いくつかの例では、アレイは、実際上いかなる形状の表面または多数の表面上でさえも、作成される。いくつかの例では、アレイは平坦なアレイ表面である。いくつかの例では、アレイは、ビーズ、ゲル、ポリマー表面、光ファイバー等の繊維、ガラス、またはその他の任意の適切な基材の上のペプチドまたは核酸を含む。いくつかの例では、アレイは、診断またはその他の全てを含むデバイスの操作を可能にするように包装される。
【0073】
[0086]いくつかの例では、本明細書に記載したバイオマーカーの発現または存在は、例えば特定のバイオマーカータンパク質を指向する抗体を使用してタンパク質レベルで決定
される。これらの抗体は、ウェスタンブロット、ELISA、マルチプレキシング技術、免疫沈降法、または免疫組織化学手法等の種々の方法において使用される。いくつかの例では、バイオマーカーの検出はELISAによって達成される。いくつかの例では、バイオマーカーの検出は電気化学発光法(ECL)によって達成される。
【0074】
[0087]生体試料中のバイオマーカーを特異的に同定および定量するための任意の手段が意図される。即ち、いくつかの例では、生体試料中の目的のバイオマーカータンパク質の発現レベルは、そのバイオマーカータンパク質と特異的に相互作用することができる結合タンパク質またはその生物学的に活性なバリアントによって検出される。いくつかの例では、標識された抗体、その結合部分、またはその他の結合パートナーが使用される。単語「標識」は、本明細書で使用する場合、抗体に直接または間接にコンジュゲートして、それにより「標識された」抗体を生成する検出可能な化合物または組成物を意味する。いくつかの例では、標識はそれ自体検出可能(例えば放射性同位元素標識または蛍光標識)であるか、または酵素標識の場合には検出可能な基質化合物または組成物の化学的変化を触媒する。
【0075】
[0088]バイオマーカータンパク質の検出のための抗体は、起源としてモノクローナルもしくはポリクローナルであるか、または合成もしくは組換えにより産生される。複合体化したタンパク質の量、例えば結合タンパク質、例えばバイオマーカータンパク質と特異的に結合する抗体と会合したバイオマーカータンパク質の量は、当業者には既知の標準的なタンパク質検出方法を使用して決定される。免疫学的アッセイの設計、理論、およびプロトコールの詳細な総説は、当技術における数多くのテキストに見られる。
【0076】
[0089]抗体を標識するために使用されるマーカーの選択は、用途に応じて変化することになる。しかし、マーカーの選択は当業者には容易に決定可能である。これらの標識された抗体は、免疫アッセイならびに任意の目的のバイオマーカーまたはタンパク質の存在を検出するための組織学的応用において使用される。標識された抗体はポリクローナルまたはモノクローナルである。さらに、目的のタンパク質の検出における使用のための抗体は、放射活性原子、酵素、発色性もしくは蛍光性の部分、または本明細書の他の箇所に記載した比色タグによって標識される。タグ付け標識の選択も、所望の検出限界によることになる。酵素アッセイ(例えばELISA)によって、典型的には酵素タグ付けした複合体と酵素基質との相互作用によって形成される着色生成物の検出が可能になる。検出可能な標識として働く放射性核種には、例えばI-131、I-123、I-125、Y-90、Re-188、Re-186、At-211、Cu-67、Bi-212、およびPd-109が含まれる。検出可能な標識として働く酵素の例には、それだけに限らないが、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、およびグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼが含まれる。発色性部分には、それだけに限らないが、フルオレセインおよびローダミンが含まれる。抗体は当技術で既知の方法によってこれらの標識にコンジュゲートされる。例えば、酵素および発色性部分は、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、その他のカップリング剤によって、抗体にコンジュゲートされる。あるいは、コンジュゲーションはリガンド-受容体のペアによって起こる。好適なリガンド-受容体ペアの例としては、ビオチン-アビジンまたはビオチン-ストレプトアビジン、および抗体-抗原が挙げられる。
【0077】
[0090]いくつかの例では、生体試料中の1つもしくは複数のバイオマーカーまたは目的のタンパク質の発現または存在は、放射免疫アッセイもしくは酵素連結免疫アッセイ(ELISA)、競合結合酵素連結免疫アッセイ、ドットブロット、ウェスタンブロット、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)等のクロマトグラフィー、または当技術で既知のその他のアッセイによって決定される。即ち、検出アッセイには、それだけに限らないが、イムノブロット法、免疫拡散、免疫電気泳動、または免疫沈降法等のステップが含ま
れる。
【0078】
先駆制御性細胞栄養芽細胞を得る方法
[0091]いくつかの実施形態では、本明細書におけるprCTB(例えばヒトprCTB
)は、多能性幹細胞、例えば絨毛膜絨毛由来の前駆細胞からin vitroで誘導される。いくつかの例では、prCTBは、1つまたは複数の分化因子を添加した培養培地中で多能性幹細胞から分化する。いくつかの例では、幹細胞は絨毛膜絨毛由来の前駆細胞である。いくつかの例では、絨毛膜絨毛由来の前駆細胞は哺乳動物の栄養芽幹細胞、例えばヒト栄養芽幹細胞を含む。
【0079】
[0092]いくつかの例では、培養培地中で多能性幹細胞を線維芽細胞成長因子と接触させることによってin vitroで幹細胞を分化させることを含む、先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を得る方法が本明細書で開示される。いくつかの例では、培養培地はヌクレオシド、L-グルタミン、L-グルタミンを含むジペプチド、血小板溶解物、またはそれらの組合せを含む。いくつかの例では、培養培地はヌクレオシド、ジペプチド、および血小板溶解物を含む。いくつかの例では、培養培地は約2mM~約200mMのL-グルタミンを含む。
【0080】
[0093]いくつかの例では、多能性幹細胞、例えばヒト栄養芽幹細胞は、線維芽細胞成長因子と約24時間~48時間、接触させられ、それによりprCTBが生成する。いくつかの例では、接触は少なくとも約18時間、20時間、22時間、24時間、26時間、28時間、30時間、32時間、34時間、36時間、40時間、または44時間である。いくつかの例では、接触は長くとも約20時間、22時間、24時間、26時間、28時間、30時間、32時間、34時間、36時間、40時間、44時間、または48時間である。
【0081】
[0094]いくつかの例では、多能性幹細胞、例えばヒト栄養芽幹細胞は、幹細胞が5~10継代である場合に、線維芽細胞成長因子と接触させられる。いくつかの例では、多能性幹細胞は、幹細胞が2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15継代である場合に、線維芽細胞成長因子と接触させられる。
【0082】
[0095]いくつかの例では、本方法は、幹細胞を線維芽細胞成長因子と接触させてprCTBに分化させる前に、幹細胞を培養培地とともに培養することを含む。
[0096]いくつかの例では、prCTBを得るためおよび/または維持するための培養培地は、抗生剤、例えばペニシリン、ストレプトマイシン、またはそれらの任意の組合せを含まない。いくつかの例では、prCTBを得るためおよび/または維持するための培養培地は、レチノイン酸を含まない。いくつかの例では、prCTBを得るためおよび/または維持するための培養培地は、メルカプトエタノール、ニコチンアミド、またはそれらの組合せを含まない。いくつかの例では、prCTBを得るためおよび/または維持するための培養培地は、デキサメタゾン、組換えヒトオンコスタチンM、BMP4、HGF、またはそれらの任意の組合せを含まない。いくつかの例では、prCTBを得るためおよび/または維持するための培養培地は、異種成分を含まず、例えば動物成分を含まない。いくつかの例では、prCTBを得るためおよび/または維持するための培養培地は、ヒト由来成分および動物由来成分を含まず、例えば化学的に定義された培地である。いくつかの例では、prCTBを得るためおよび/または維持するための培養培地は、血清を含まない。いくつかの例では、prCTBを得るためおよび/または維持するための培養培地は、ウシ胎児血清を含まない。
【0083】
[0097]いくつかの例では、線維芽細胞成長因子は塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)である。いくつかの例では、幹細胞は約1ng/ml~約100ng/mlのbFGF
と接触させられる。いくつかの例では、幹細胞は約2ng/ml~約50ng/ml、約4ng/ml~約30ng/ml、約6ng/ml~約15ng/ml、または約8ng/ml~約12ng/mlのbFGFと接触させられる。いくつかの例では、幹細胞は約6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、11ng/ml、12ng/ml、13ng/ml、14ng/ml、または15ng/mlのbFGFと接触させられる。いくつかの例では、幹細胞は約10ng/mlのbFGFと接触させられる。
【0084】
哺乳動物の栄養芽幹細胞を得る方法
[0098]いくつかの実施形態では、本明細書における哺乳動物の栄養芽幹細胞(例えばヒ
ト栄養芽幹hTS細胞)は、臍帯、羊水、羊膜、Whartonのジェリー、絨毛膜絨毛、胎盤、または異所性妊娠から、胚を撹乱せず、破壊もしない様式で単離することができる。
【0085】
[0099]いくつかの例では、本明細書に記載した哺乳動物の栄養芽幹細胞は、抗生剤、例えばペニシリン、ストレプトマイシン、またはそれらの任意の組合せを含まない培養培地中で培養される。いくつかの例では、哺乳動物の栄養芽幹細胞を得るための培養培地は、レチノイン酸を含まない。いくつかの例では、哺乳動物の栄養芽幹細胞を得るためおよび/または継代するための培養培地は、メルカプトエタノール、ニコチンアミド、またはそれらの組合せを含まない。いくつかの例では、哺乳動物の栄養芽幹細胞を得るためおよび/または継代するための培養培地は、デキサメタゾン、組換えヒトオンコスタチンM、BMP4、HGF、またはそれらの任意の組合せを含まない。いくつかの例では、哺乳動物の栄養芽幹細胞を得るためおよび/または継代するための培養培地は、異種成分を含まず、例えば動物成分を含まない。いくつかの例では、哺乳動物の栄養芽幹細胞を得るためおよび/または継代するための培養培地は、ヒト由来成分および動物由来成分を含まず、例えば化学的に定義された培地である。いくつかの例では、哺乳動物の栄養芽幹細胞を得るためおよび/または継代するための培養培地は、血清を含まない。いくつかの例では、哺乳動物の栄養芽幹細胞を得るためおよび/または継代するための培養培地は、ウシ胎児血清を含まない。
【0086】
[00100]一例では、本明細書における哺乳動物の栄養芽幹細胞(例えばhTS細胞)は
、羊水穿刺生検または羊水から単離することができる。一例では、羊水穿刺は、妊娠中に胎児を取り囲んでいる羊水の少量の試料を得るために使用される手順であり得る。一例では、羊水穿刺は、染色体異常のリスクが増大している妊娠15週~20週の女性、例えば出産時に35歳を超える女性、または染色体異常もしくは神経管欠損のリスクの増大を示す異常な母体血清(血液)スクリーニング検査を有していた女性に提案することができる。一例では、針、例えば長く細い中空の針を、超音波ガイドとともに腹部を通して子宮および羊膜嚢の中に使用することができる。所定量、例えば約30ml(1オンス)の羊水をシリンジの中に引きだすことができる。
【0087】
[00101]別の例では、本明細書における哺乳動物の栄養芽幹細胞(例えばhTS細胞)
は、例えばin vitro授精(IVF)等の生殖治療と併用した着床前遺伝子診断(PGD)の間に、分割球生検から得ることができる。一例では、本明細書における細胞は、胎盤胞の生検のための方法によって産生することができ、胎盤胞の残りは着床し、妊娠およびその後の生体出産がもたらされ、例えば胎盤胞から透明帯を除去して胎盤胞を生検する。
【0088】
[00102]別の例では、本明細書における哺乳動物の栄養幹芽細胞(例えばhTS細胞)
は、出産前の絨毛膜絨毛のサンプリング(CVS)から得ることができる。一例では、CVSは、染色体異常およびその他のある種の遺伝的問題について検査するために胎盤から
組織の試料を採取することを含む出産前検査であり得る。一例では、CVSは妊娠10週~12週の間に実施することができる。一例では、CVSの手順は経頸管であり、例えば組織試料を得るために頸部を通して胎盤の中にカテーテルを挿入する。一例では、CVSの手順は経腹部であり、組織試料を得るために腹部および子宮を通して胎盤の中に針を挿入する。
【0089】
[00103]一例では、本明細書における哺乳動物の栄養芽幹細胞(例えばhTS細胞)は
、満期妊娠の後に胎盤生検から得ることができる。一例では、本明細書における哺乳動物の栄養芽幹細胞(例えばhTS細胞)は、経膣出産または帝王切開出産の後で胎盤から単離することができる。
【0090】
[00104]いくつかの実施形態では、本明細書における哺乳動物の栄養芽幹細胞(例えば
hTS細胞)は、妊娠第1期の絨毛膜絨毛サンプリング(例えば妊娠期間8+3~12+0週)または帝王切開出産からの満期胎盤から単離することができる。絨毛膜組織を羊膜から分離し、細切し、および/または(例えば0.05%のトリプシンEDTAで、例えば20分間)酵素消化することができる。続いて細胞を遠心分離(例えば1500rpm、例えば5分間)し、計数し、および/または培地(例えばDulbecco改変Eagle培地+10%ウシ胎児血清)中で再播種(例えばcmあたり10細胞)する。一例では、単離された細胞はプラスチック付着性であり得る。一例では、細胞は4~8継代で使用することができる。
【0091】
[00105]一例では、本明細書における哺乳動物の栄養芽幹細胞(例えばhTS細胞)は
、以下の手順に従って満期(例えば妊娠38~40週)胎盤から単離することができる。臍帯血を胎盤から流出させ、次いで胎盤を注意深く切開する。収集した組織片を(例えばリン酸緩衝食塩水で)数回洗浄し、次いで(例えば機械的に)細切し、(例えば0.25%のトリプシン-EDTAで)酵素消化する。次いで遠心分離によってホモジネートをペレット化し、完全培地(例えば10%のウシ胎児血清、100U/mlのペニシリン、および/または100g/mlのストレプトマイシンを添加したDulbecco改変Eagle培地)中に懸濁する。好適な条件、例えば水で飽和した雰囲気および5%のCO、37℃で、細胞培養を維持する。定期的に、例えば毎週1~2回、培地を交換する。細胞が所望のコンフルエンスのレベル、例えば80%コンフルエンスを超えれば、例えば0.25%のトリプシン/EDTAで細胞を回収し、例えば1:3の希釈で再播種する。
【0092】
[00106]別の例では、本明細書における哺乳動物の栄養芽幹細胞(例えばhTS細胞)
は、出産後、下記の手順に従ってヒト胎盤から単離することができる。絨毛膜を羊膜から引き剥がすことによって分離する。脱落膜組織を(例えば機械的に)細切し、(例えばDulbeccoリン酸緩衝食塩水で)洗浄し、小片(例えば約2×2cm)に切断する。絨毛膜を小片に刻み、酵素(例えば0.5%トリプシン-EDTAで例えば5分間)処理し、コラゲナーゼIで消化する(例えば37℃のインキュベーター中、0.3%で20~30分間)。次いで動員された細胞を収集して細胞ストレーナー(例えば100μm)に通す。濾過した細胞を遠心分離(例えば2,500rpm、例えば5分間)によって収集する。細胞を培地(例えば10%のウシ胎児血清および/または1%のペニシリン-ストレプトマイシンを添加したα改変ミニマムエッセンシャル培地)中に再懸濁し、好適な条件(例えば37℃および/または5%CO)下に容器(例えばT25フラスコ)内で培養する。絨毛膜MSCが所望のコンフルエンシー、例えば70%コンフルエンシーに達するまで定期的、例えば3日ごとに、培地を交換する。
【0093】
[00107]別の例では、絨毛膜絨毛は、異所性妊娠した女性の破裂していない着床前の胚
の卵管(例えば妊娠期間5~7週)から得ることができる。微小な絨毛膜組織を好適な培地(例えば無血清α-MEM)中でよく細切し、顕微鏡下に同定し、ある時間(例えば1
5分間)、(例えば0.025%のトリプシン/EDTA)でトリプシン処理し、培地(例えば10%のFBSを含むα-MEM)を加えることによって反応を停止する。接着性細胞を得て、好適な条件(例えば調整済みのα-MEM、10%のFBS、および1%のペニシリン-ストレプトマイシン、37℃、5%CO中)下で培養する。2回の継代の後、hCGのレベルは市販のキット(例えばDako,Carpinteria,CA)で測定して不検出になり得る。
【0094】
キット/製造用物品
[00108]本明細書に記載した1つまたは複数の方法および組成物を用いる使用のためのキットおよび製造用物品が本明細書で開示される。そのようなキットには、担体、パッケージ、またはバイアル、チューブ、その他の1つもしくは複数の容器を収容するために区画された容器が含まれ、容器のそれぞれは、本明細書に記載した方法において使用される個別の要素の1つを含む。好適な容器には、例えばボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が含まれる。いくつかの例では、容器はガラスまたはプラスチック等の種々の材料から形成される。
【0095】
[00109]本明細書で提供する製造用物品は、包装材料を含む。医薬包装材料の例には、
それだけに限らないが、ブリスターパック、ボトル、チューブ、バッグ、コンテナ、ボトル、ならびに選択した剤型および意図した使用様式に適した任意の包装材料が含まれる。
【0096】
[00110]例えば、容器は、本明細書で開示した組成物中に含まれてもよいhTS細胞を
含む。そのようなキットは、任意選択で識別用の記載または本明細書に記載した方法における使用に関するラべルもしくは説明書を含む。
【0097】
[00111]キットは、典型的には内容物および/または使用のための説明を列挙したラベ
ル、ならびに使用説明書を含む添付文書を含む。説明書の組も典型的には含まれる。
[00112]いくつかの例では、ラベルは容器の上にあるか、容器に付随している。いくつ
かの例では、ラベルを形成する文字、数字、またはその他のキャラクターが容器自体に付着、鋳込み、または食刻されている場合には、ラベルは容器の上にあり、ラベルが容器を保持するレセプタクルまたは担体の中に例えば添付文書として存在する場合には、ラベルは容器に付随している。いくつかの例では、ラベルは内容物が特定の治療用途に使用されることを表示するために使用される。ラベルは、例えば本明細書に記載した方法における内容物の使用のための指示も表示する。
【0098】
実施例
[00113]以下の実施例は非限定的であり、本発明の種々の態様および特徴を単に代表するのみである。
【実施例0099】
ストレス時におけるヒト栄養芽幹(hTS)細胞の形質転換特性
[00114]胚盤胞栄養芽細胞が卵管における胚の輸送の間の母体の高血糖の脅威にどのよ
うに対処するかを検討するため、高グルコース(20mM)の影響をhTS細胞について試験した。グルコースが細胞膜における甘味受容体T1R2/T1R3の過渡的な活性化を急速に誘起し、結果として細胞におけるGタンパク質シグナル伝達を活性化し、Gαq/11/CaMKII/CREB1およびGβ/GSK3β/MAFAシグナル伝達経路を生じることが見出された(図1A)。制御的な分子機構を補助的な情報で示す(図2A~2J)。核においては、2つのGタンパク質経路が協同して、インスリンを産生する転写のためのインスリン遺伝子のプロモーターを標的としていた(図1A)。ChIP-qPCR解析から、特異的shRNAによる転写因子CREB1およびMAFAのノックダウンにより、インスリンの発現が低減された(図1B)。一方、活性化されたT1R2/
T1R3シグナル伝達は、グルコースセンサーおよびトランスポーターGLUT2を誘起して、細胞内へのグルコースの進入を促進した。グルコースはATPの産生を強化して、L型のボルテージゲートされたCa2+チャネル(VGCC)を開き、細胞外カルシウムの細胞内への進入をもたらし、これが放射免疫アッセイ(RIA)によって検出されるインスリンの培養培地への分泌を促進する。この作用は、スルホニルウレアがインスリンの分泌を促進し、一方VGCC阻害剤のニフェジピンがRIAによって測定されるインスリンの分泌をブロックしたことによって確認された(図1C)。これらの結果は、グルコースがhTS細胞中におけるインスリンの合成および分泌の制御を可能にすることを示唆した。qPCR解析によって測定して、このインスリンの発現は、CREB1シグナルに帰せられるが、従来の膵および十二指腸のホメオボックス1(PDX1)には帰せられない(図2K)。
【0100】
[00115]さらに、免疫蛍光イメージング研究によって、インスリン、CREB1、Ca
MKII、GLUT2、およびMAFAだけでなく、β-hCG、組織適合性抗原HLA-G、および多能性転写因子CDX2もhTS細胞中で発現したが、OCT4(オクタマー結合転写因子4)は発現しないことが明らかになった(図1D)。ストレスタンパク質であるヒートショックプロテイン90(HSP90)も発現した。しかしhTS細胞は増殖マーカーKi67、タンパク質フォールディングアクチベーターHSP70、腫瘍サプレッサーp53、自己抗原GAD65、および細胞間融合タンパク質シンシチンを発現せず(図2M)、hTSCがTE分化栄養芽細胞の最初の位置にあるという概念を支持した。
【0101】
[00116]hTS細胞に対するグルコースのストレス効果を形態学的にさらに検討し、β
細胞のin vitro培養における特異的染色である亜鉛キレート剤ジチゾン(DTZ)の陽性染色によって、高グルコースが接着性線維芽細胞の特徴から3D凝集細胞クラスターへの細胞変化を急速に誘起したことを示した。高グルコースを停止することによって、細胞がクラスターから急速に放出されて培養皿に再び付着し、元の線維芽細胞の特徴に戻った。細胞のプロセスはコンピューター顕微鏡ビデオシステム(Olympus,IX-81,DP30,MIU-IBC-IF-2)によって記録し、付録のオンラインビデオ(ビデオS1)に示す。さらに、細胞クラスターの超構造研究によって、細胞質対核の比が大きく、2つの細胞の間にデスモソーム結合を伴うことが明らかになった。膵β細胞におけるものと同様に、種々の空のベシクル、豊富なミトコンドリア、およびベシクル中の未成熟の顆粒が、細胞質区画内で観察された。この目的のため、hTS細胞が外部の脅威に対処するためにインスリンおよびストレスタンパク質HSP90を発現する能力を有する一方、hTS細胞はグルコース刺激に対して高度に影響を受けやすく、これがhTS細胞の可逆の細胞形質転換を惹起し得ることが実証された。
【実施例0102】
先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)のin vitro誘起
[00117]本実施例では、栄養外胚葉由来のhTS細胞に対するbFGFの影響を検討し
た。1つの実験では、prCTBをhTS細胞からin vitroで誘起した。
【0103】
[00118]bFGFは、TGF-β1を介して上皮間葉移行(EMT)を誘起する。
[00119]bFGFはhTSCにおいてTGF-β1の発現を誘起し(図4A)、間葉系
細胞マーカーであるビメンチンを上方制御したが、細胞間接着タンパク質E-カドヘリンを下方制御したことが、ウェスタンブロットアッセイ(図4B)および免疫細胞化学(図4C)によって発見された。これらの作用は、TGF-β1抗体による前処理によって中和された(図4D)。光学顕微鏡によって、細胞の形状が細長い紡錘状からより丸い核を有する太く短い特徴へと変化することが明らかになった(図4E)。これらの現象は、bFGFが遊走および浸潤の能力を得るようにEMTを誘起することを示唆した。
【0104】
[00120]bFGFは、mRNA-124αを介して胚体内胚葉のシグネチャーを促進す
る。
[00121]bFGFは細胞膜において受容体FGFR1を標的としてPI3K/AKT/
CREB1シグナル伝達経路の活性化を誘起したことが見出された。DIANA-mirGen 2.0のコンピューターサーベイにより、bFGFによって誘起されたCREB1は、ミクロRNA-124a(miR-124a)のプロモーターにおいてコンセンサスCREB結合配列(TGACGTCA)を標的とすることがqPCR解析によって確認された一方、CREB1のノックダウンによってmiR-124aの発現が低減した。CREB1とmiR-124aとの間の正の相関が観察された。
【0105】
[00122]miR-124aの下流エフェクターへの洞察を得るため、ルシフェラーゼリ
ポーター遺伝子アッセイのためにpGL4.51ベクター(Promega,Madison,WI)を使用するSMAD4、GSK3β、およびCDX2のプラスミドを構築した。第1に、miR-124aはSMAD4遺伝子を標的として阻害性SMAD4を産生することが示された。SMAD4はSMAD2/3と相互作用して転写のためのMIXL1遺伝子の中枢プロモーター中の配列に結合することができるので、阻害性SMAD4は阻害性ホメオドメインタンパク質MIXL1を惹起した。これはSMAD4 shRNAを使用することによって確認され、画像研究を支持した(bFGF(10ng/ml)は対照と比較して15分でMIXL1の見かけの発現を誘起することが明らかになり、MIXL1の発現の強度は4時間の誘起で低下し、過渡的な発現であることを示している)。第2に、miR-124aはグリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)を抑制することが示され、これはmiR-124aおよび抗miR-124a抗体の前処理によって確認された。結果として、阻害性GSK3βは、下流のβ-カテニンの蓄積を惹起し、転写のためにFOXA2遺伝子を標的とする核移行をもたらすことが、β-カテニンアッセイに対してshRNAを使用することによって証明された(図4F)。そしてまた、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)がPDX1の発現を制御し、プロエンドクリン転写因子ニューロゲニン3(NGN3)がエンドクリン細胞分化の決定に関与することに寄与する。第3に、miR-124aはCDX2遺伝子を標的としてCDX2合成を阻害し、これはmiR-124aおよび抗miR-124a抗体の前処理によって確認された。下方制御されたCDX2は、OCT4の上方制御をもたらした。次に、OCT4は転写のためのSOX17遺伝子を標的としてSOX17(SRY-ボックスタンパク質17)を産生し、これは画像研究によって支持された。合わせると、bFGFはmiR-124aが8時間の誘起においてSOX17、FOXA2、およびOCT4の上方制御、ならびにMIXL1の下方制御によって結果的に胚体内胚葉(DE)のシグネチャーを得ることを促進することができ、これはさらなるインスリンの発現に寄与し得ることが実証された。
【0106】
[00123]bFGFは、hTS細胞からのprCTBの生成を誘起する。
[00124]PDX1、膵転写因子1タンパク質(PTF1a)、SOX9、およびホメオ
ボックス1タンパク質NKX(NKX6.1)を含む膵前駆細胞バイオマーカーの顕著な上方制御が、bFGF誘起の8時間で注目された。これらの分子シグナルの出現は、誘起20時間でNGN3、プロインスリンC-ペプチド、およびインスリンの発現を開始した。インスリンの他に、免疫蛍光イメージングによって、bFGF処理したhTS細胞においてPDX1、肝細胞核因子1-β(HNF1B)、NGN3、SOX9、NKX6.1、およびインスリン、ならびにNANOG、SOX2、グルカゴン、ソマトスタチン、GLUT2、およびポリペプチド(PP)を含む種々の膵前駆細胞および内分泌細胞マーカーの存在が確認された(図3)。
【0107】
[00125]次に、bFGFによって誘起されたhTS細胞が最初にCDX2を発現したが
、OCT4を発現しないことが発見された(図5C)。分化が進行するとともに、OCT4は上方制御されるが、CDX2は下方制御され、8時間の誘起でDEステージの多能性が制御された。OCT4が徐々に下方制御されると、NANOGは中内胚葉のステージと同様の12時間の誘起におけるピークに上方制御された。HSP90は、分化している栄養芽細胞におけるOCT4およびNANOGのレベルを維持していた。分化が前駆細胞のステージに入るとともに、12時間の誘起の後、その日の終わりに向けて、NANOGは下方制御されたが、SOX2は上方制御を持続し、インスリンを発現するprCTBが形成された。注意すべきことに、これらの分子プロセスは膵におけるβ細胞の発達と同様であるが、先に述べたhTS細胞におけるグルコースによって誘起されるインスリンの発現とは区別される。多能性転写因子における時間空間的な変化は、主として相互の負の自己制御機構に帰せられる一方、SOX2はprCTBの幹細胞性の維持において主な役割を果たしている。この目的のため、bFGFは、インスリンを発現する新規な膵外の組織特異的表現型への単離されたhTS細胞の分化を効率的に誘起することができることが本発明者らの実験で実証された。これは本明細書において先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)と称する。ここで実証したように、prCTBはin vitroの栄養芽細胞の分化の間、主としてSOX2によって維持することができる。
【実施例0108】
hTS細胞由来のprCTBと原始栄養芽細胞との相違
[00126]免疫組織化学により、prCTB細胞の大部分はインスリン、GLUT2、C
aMKII、Ki67(増殖因子)、β-hCG、およびHLA-Gによって染色されることが明らかになり、prCTBが増殖性を有していることが示唆された(図5A)。GAD65、HSP70、HSP90、およびp53を含み、シンシチンを除くストレスタンパク質も、prCTBにおいて発現されたが、hTS細胞における知見とは区別される(図2M)。これらの結果は、細胞外ストレッサーの効果がhTS細胞のprCTBへのin vitroでの変換を推進し得ることを暗示した。
【0109】
[00127]正常な子宮妊娠では、原始細胞栄養芽細胞(pCTB)は、1)絨毛性細胞栄
養芽細胞、2)原始合胞体栄養芽細胞(pSTB)および後期合胞体栄養芽細胞(STB)、ならびに3)絨毛外細胞栄養芽細胞(EVT)を生じることができる。絨毛性細胞栄養芽細胞はHSP90およびインスリンを発現したが、p53およびシンシチンは発現しないことが発見された(図5B)。STBはインスリン、p53、およびシンシチンを発現したが、HSP90は発現しなかった。EVTは明らかなインスリンおよびp53を発現したが、HSP90およびシンシチンを発現せず、浸潤性であるが増殖性でないことが示唆された。図5Cに、そのような発達プロセスを図示する。
【実施例0110】
hTS細胞およびprCTB由来のセクレトームおよびエキソソーム
[00128]ケモカイン、サイトカイン、および成長因子のレベルを、hTS細胞およびp
rCTBの培養培地中においてLuminex技術に基づくMilliplexアッセイによって測定した。結果より、hTS細胞とprCTBの両方が明らかな量の種々のセクレトームまたはエキソソームを放出できることが明らかになった(図7A、上パネル)。
【0111】
[00129]1)ケモカイン
[00130]この群には、RANTES(CCL5とも)、MCP-1(CCL2、単球ケ
モアトラクタントタンパク質-1とも)、GROα(CXCL1、CXCL2、マクロファージ炎症性タンパク質2-αまたはMIP2-αとも)、MCP-3(CCL7とも)、IL-8、エオタキシン(CCL11、CCL24、およびCCL26とも)、MDC(CCL22とも)、IP-10(IFNγ-誘起CXCL10とも)、フラクタルカイン(CX3CL1とも)、MIP-1β(CCL4とも)、および可溶性CD40-lリ
ガンド(sCD40L、CD154とも)が含まれていた。
【0112】
[00131]2)サイトカインおよび成長因子
[00132]この群には、IL-6、IL-10、IL-4、IL-7、IL-15、IL
-13、IL-1α、IL-1β、IL-12p40、IL-3、およびIL-2が含まれていた。IFN-γおよびIFN-αも分泌された。一方、成長因子には、PDGF-AAおよびPDGF-AB/BB(血小板由来成長因子ファミリー)、VEGF、EGF(上皮成長因子)、bFGF、GM-CSF(顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)、Flt3L(FMS様チロシンキナーゼ3リガンド)、およびIL-1βが含まれていた。
【0113】
[00133]3)その他のタンパク質
[00134]さらに、セクレトーム解析により、hTS細胞とprCTBの両方は、可溶性
ヒト白血球抗原G(sHLA-G)、トランスフォーミング成長因子ベータ1(TGF-β1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)およびIL-10を放出することができた(図7B)。
【0114】
[00135]それにも関わらず、使用した市販のヒト血小板溶解物(即ち、PLUS,Co
mpass)も、培養培地中にエキソソームを分泌した。PLUSの基本的影響を除外することによって、ナイーブなhTS細胞とprCTBの両方が、主としてGRO、MCP-1、フラクタルカイン、IP-10、MCP-3、エオタキシン、および少量のMIP-1β等のケモカイン、ならびに少量のIL-4、IL-1RA、IL-10、IL-12P40、IL-15、IL-1α、およびIL-17Aを伴うIL-6およびIL-8等のサイトカインを含むエキソソームを実際に分泌できたことが見出された(図7A、下パネル)。一方、成長因子はPDGF-AA、VEGF、bFGF、およびG-CSF、ならびにより少量のFlt-3LおよびGM-CSFを含んでいた(図7A、下パネル)。これらのデータは、ナイーブなhTS細胞とprCTBの両方が機能性のために種々のセクレトームまたはエキソソームを放出する能力を有し得ることを示唆した。
【0115】
[00136]図7Cは、hTSCとprCTBの両方におけるサイトカインIL-6および
IL-8、ケモカインMCP-1およびCXCL2、ならびに血管形成因子PDGF-AAおよびVEGFの産生の別のまとめを示す。prCTBは血管形成分子CD105(エンドグリン、血管形成において機能するTGF-βの受容体)およびCD146(血管内皮カドヘリン)を発現した(図7D)。これらの結果は、prCTBが胎児と母体の界面における脱落膜組織において機能する能力を有していることを示唆した。
【実施例0116】
prCTBは免疫細胞随伴バイオマーカーを呈する。
[00137]免疫細胞随伴バイオマーカーの発現を、FACS解析により、prCTBにお
いて8種の独立した細胞株について検討し、NKおよびT細胞のバイオマーカーについて同様のパターンが示された。結果から、NK細胞とT細胞の両方がCD4+、CD8+、CD107a+、および(CD16+CD56)+を含むCDバイオマーカーを発現し、T細胞とNK細胞で同様のバイオマーカーを共有していることが明らかになった。サイトメトリー解析の代表を図8および図9A~9Mの表に示す。(CD16+CD56)細胞およびCD107a(+)細胞はhTSCとprCTBの両方で最大の発現を示した(図8および9L)。それらの組合せのパネルも、分布において細胞集団の大部分の成分を占めていた(図8および9M)。これらの結果は、prCTBが胎児と母体の界面において免疫細胞様機能を発揮する能力を有していることを示唆した。prCTBがCD11bおよびCD49fを発現したことも免疫染色によって発見された(図9N)。
【0117】
[00138]さらに、イムノブロットアッセイにより、hTS細胞とprCTBの両方が、
ILT-2(白血球Ig様受容体1、LILRB1とも)、ILT-4(LILRB2とも)、TCR(T細胞受容体)、ならびに特異的に、NK細胞およびCD8+ T細胞のサブセットによって発現されて細胞溶解性NK細胞機能を阻害するKIR2DL4(キラー細胞Ig様受容体)を発現したことが特定された(図7E)。これらは、PD-L1(プログラム死-リガンド1)、Fas(アポトーシスシグナル受容体、APO-1とも)、浸潤性リンパ球のアポトーシスを誘起するFasL(Fasリガンド)、およびNKp46(主要なNK細胞活性化受容体)も発現した(図7E)。これらは標的細胞の除去に関与している。興味深いことに、bFGFはシグナルトランスデューサー/転写アクチベーター3(STAT3)および転写因子c-JUNを活性化して、結果的にprCTBの分化におけるFasLの発現を促進した(図7F)。shRNAによるFGFR1のノックダウンによって、この作用が確認された。結果として、prCTBの(CD16+CD56)分子はIFN-γを産生してPD-L1産生を刺激し、それにより腫瘍細胞中の関連する受容体PD-1を認識して悪性疾患に対する免疫応答を下方制御した。
【0118】
[00139]bFGFはprCTBにおけるFGFR1/CREB1シグナル伝達経路を介
してIL-6およびIL-8を誘起する。
[00140]prCTBがどのようにサイトカインIL-6およびIL-8を産生するかを
探索するために、hTSCをbFGFと1日インキュベートして、卵管内における過渡的な滞留を模倣した。機構的には、bFGFは細胞膜においてその受容体FGFR1を活性化して、PI3K/リン酸化(p)AKTシグナル伝達を誘起した。次に、pAKTは下流のpCREB1(cAMP応答性エレメント結合タンパク質1)と相互作用してこれをリン酸化し、pCREB1シグナル伝達を活性化した。これらの分子プロセスは、FGFR1阻害剤PD166866、ならびにPI3KおよびpAKTの特異的shRNAを使用することによって確認された(図7G~7J)。核においては、CREB1は遺伝子を標的として時間依存的にIL-6を(図7K、左パネル)、また用量依存的にIL-8(図7K、右パネル)を産生し、これはELISAアッセイ(図7C)によって確認された。これらの分子プロセスは時間的および空間的にEMTと一致して起こった。結論として、bFGFは、hTSCのprCTBへの変換ならびにprCTBにおけるIL-6およびIL-8の産生を自己分泌/傍分泌的な様式で誘起する。
prCTBにおいて、IL-6は栄養芽細胞マーカーβ-hCGを誘起し、IL-8はNK細胞マーカーCD56を誘起する。
【0119】
[00141]RT-qPCRアッセイにより、prCTBにおいては、IL-6は細胞膜に
おいて受容体IL-6Rと結合してCREB1シグナル伝達を活性化し、β-hCGの産生をもたらした(図7L、左パネル)。興味深いことに、ウェスタンブロットにより、IL-6は別の受容体GnRHRと結合してCREB1シグナル伝達を同時に活性化し、結果としてβ-hCGを産生することが可能であった(図7M)。一方、RT-qPCR解析により、IL-8はCD56(NCAMとしても知られている)の産生を誘起したが、IL-8Rを介してではなかった(図7L、右パネル)。しかし、ウェスタンブロットアッセイにより、IL-8はその代わりに別の受容体CXCR2と結合してSTAT3(シグナルトランスデューサー/転写アクチベーター3)シグナル伝達を活性化し、そしてまた転写の遺伝子を標的としてCD56を産生することができたことが発見された(図7N)。これらの分子プロセスは、β-hCGの発現についてGnRHR阻害剤ElagolixおよびCREB1阻害剤666-15を使用することによって確認され(図7L)、一方、CD56の発現についてはCXCR2阻害剤SB225002およびSTAT3阻害剤Statticが確認された(図7N)。これらの結果は、prCTBにおいてIL-6が栄養芽細胞バイオマーカーβ-hCGを誘起する一方、IL-8が同時に自己分泌/傍分泌的な様式でNK細胞バイオマーカーCD56を誘起することを示唆した。この目的のため、bFGFがhTSCのprCTBへの変換を誘起し、ユニークなβ-hCG(
+)CD56(+)prCTBをもたらすことが実証された。
【0120】
[00142]prCTBにおいてIL-8はCXCR2/CREB1シグナル伝達を介して
T細胞マーカーCD4を誘起する。
[00143]同時に、IL-8はprCTBの細胞膜において自己分泌/傍分泌的な様式で
受容体CXCR2と結合してこれを活性化し、CREB1シグナル伝達を誘起してその核移行を可能にした。核においては、ウェスタンブロットアッセイにより、CREB1は転写のためのCD4遺伝子を標的としてCD4分子を産生した(図7O)。しかし、IL-8は受容体CXCR2にも結合することができ、結果としてSTAT3シグナル伝達を活性化し、STAT3の核移行をもたらすことが発見された。核においては、STAT3は転写のためのCD4遺伝子の様々な部位を標的としてCD4を産生した(図7P)。これらの分子プロセスは、CXCR2阻害剤SB225002、CREB1阻害剤666-15、およびSTAT3阻害剤Statticを使用することによって確認された(図7Oおよび7P)。
【0121】
[00144]IL-8はCD4(+)Foxp3(+)Treg細胞様prCTBを形成す
るようにFoxp3を誘起する。
[00145]IL-8によって誘起されたCXCR2シグナル伝達は結合し、結果としてS
TAT3の核移行のためのSTAT3シグナル伝達を活性化することが発見された。次に、ウェスタンブロット解析によると、STAT3は転写のためのFoxp3遺伝子を標的としてFoxp3タンパク質(免疫系応答に関与するスカーフィンとしても知られる)を産生した(図7P)。これらの分子プロセスは、CXCR2阻害剤SB225002およびSTAT3阻害剤Statticを使用することによって確認された(図7P)。これらの結果は、IL-8がprCTB中でCD4(+)およびFoxp3(+)分子を産生し、CD4(+)Foxp3(+)Treg細胞を模倣することを示唆した。CD4(+)Foxp3(+)バイオマーカーの免疫細胞化学的共染色が、prCTBにおいて達成された(図7Q)。
【実施例0122】
胎児と母体の界面におけるprCTBバリア
[00146]prCTBは脱落膜組織において血管形成を促進する因子を発現する。
[00147]prCTBは、Milliplexアッセイ(図7C)によると、VEGFお
よびPDGF-AAを、ELISAアッセイ(図7B)によってプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)およびIL-10を分泌し、またFACS解析(図7D)によってCD105(+)およびCD146(+)マーカーを発現することができた。これらの分子の発現は全て、prCTBが、例えば胎児と母体の界面における脱落膜組織のSAリモデリングにおける血管形成および脈管形成を促進する能力を有していることを示唆した。
【0123】
[00148]MCP-1およびCXCL2はprCTBの移動を相乗的に推進する。
[00149]トランスウェルの浸潤および遊走のアッセイにより、hTSCとprCTBの
両方についてMCP-1がprCTBの浸潤および遊走を用量依存的(図10A)および時間依存的(図10B)に顕著に誘起したことが明らかになった。しかし、CXCL2はprCTBにおいて用量依存的に(図10C)、またhTSCとprCTBにおいて時間依存的に(図10D)、細胞の遊走を促進した。これらの結果は、MCP-1およびCXCL2が時間および用量依存的にprCTBの移動を相乗的に推進する能力を有していることを示唆した。
【0124】
[00150]胎児と母体の界面における新規なprCTBバリアの形成
[00151]免疫組織化学イメージングにより、prCTBはシンシチン、p53、β-h
CG、およびHLA-Gの発現とともにEVTへと遊走した一方、HSP90は内部CTB層に出現したことが明らかになった(図10E)。免疫組織化学により、胎児と母体の界面においてCD56(+)prCTBは、浸潤性EVTにおける凝集に移動する傾向を有して絨毛間質組織に散発的に分布していた(図10F、上および中のパネル)。これらの結果は、prCTBが、シンシチン、p53、β-hCG、およびHLA-Gを発現するEVTに分化して、着床のための母体の脱落膜の脱落膜上皮細胞層に相乗的に浸潤することを示唆した。
【0125】
[00152]CD56(+)とβ-hCG(+)の両方のprCTBが母体の脱落膜に係留
されて浸潤することができることが発見された(図10Fの中パネル、図10Gの上パネル)。浸潤および遊走によって、CD56(+)prCTBは、脱落膜組織において従来の脱落膜ナチュラルキラー(dNK)細胞と同様の大量の細胞成分を占めた(図10F、下パネル)一方、β-hCG(+)prCTBは同様の挙動を示した(図10G、中パネル)。β-hCG(+)prCTBは動脈管における内皮細胞の位置を置き換え(図10G、中パネル)、静脈の血管腔にも出現した(図10G、下パネル)ことが発見され、SAリモデリングの現象およびprCTBの脱落膜静脈への浸潤も示唆された。最終的には、多くのCD56(+)β-hCG(+)prCTBが脱落膜側に集積して細胞バリアを形成することができ、これを本明細書で胎児と母体の界面における「prCTBバリア」と称する。
【実施例0126】
prCTBは相互作用に際して固形腫瘍細胞のアポトーシスを誘起する。
[00153]膵がん細胞(PANC-1、CRL-1469)
[00154]膵がん細胞(PANV-1)がどのようにprCTBと相互作用するかを検討
した。光学顕微鏡により、prCTBとPANC-1の共培養においてprCTBが遊走し、PANC-1の細胞コロニーを包みこみ、これに浸潤することができ、PANC-1のアポトーシスをもたらしたことが明らかになった(図11A)。このアポトーシス現象は、Apoptosis/Necrosis検出キット(青、緑、赤)をメーカーの説明書(ab176749、Abcam)に従って使用することによってさらに証明された。図11Bは2つの生細胞の相互作用を示し、図11Cは相互作用に際してのPANC-1のアポトーシスを明らかにした。この相互作用はPANC-1のアポトーシスを示す3D蛍光顕微鏡によってもさらに証明された(図11D)。
【0127】
[00155]機構的には、prCTBはタンパク質PD-L1(プログラム細胞死リガンド
-1)を発現したが、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)を発現しない(図11E、左カラム)一方、PANC-1はPD-L1とPD-1の両方を発現した(図11E、右カラム)ことが発見された。これは、prCTBがPD-L1/PD-1細胞死シグナル伝達を標的PANC-1細胞に送ってPANC-1細胞のアポトーシスを惹起できたことを意味している。しかし、prCTBがPD-1を欠いているので、PANC-1細胞のPD-L-1は細胞死シグナル伝達をprCTBに送ることができず、prCTBでアポトーシスが起こらなかったことを説明している。Fas/FasL細胞死シグナル伝達経路を取り扱っていた際、prCTBはFasリガンド(FasL)と(FasLの受容体としての)Fasの両方を発現した一方、PANC-1はFasを発現したがFasLを発現しないことが発見され(図11F)、それによりprCTBはアポトーシス性のFasL/Fasシグナル伝達を標的PANC-1に送り、PANC-1のアポトーシスを惹起すると考えられる。対照的に、prCTBはFasを発現するが、PANC-1はFasLを欠いており、相互作用に際してFasL/Fas細胞死シグナル伝達はprCTBでは起こらないことを示唆している。
【0128】
[00156]乳がん細胞(MCF-7、HTB22)
[00157]prCTBと乳がん細胞株(MCF-7)との共培養により、3D蛍光顕微鏡
で観察されるMCF-7のアポトーシスをもたらす誘引および相互作用が明らかになった(図11G)。prCTBが発現するPD-L1は、細胞死シグナル伝達をMCF-7細胞上のその受容体PD-1に送り、アポトーシス応答をもたらすと考えられる(図11H、上パネル)。MCF-7もPD-L1を発現したが、prCTBがPD-1受容体を欠いているので、アポトーシスは防止された(図11H、下パネル)。しかし、他のFasL/Fas細胞死の軸を検討して、prCTBがFasLを発現した一方、MCF-7がFasを発現し、MCF-7におけるFasL/Fas細胞死シグナル伝達の発生を可能にしたことが発見された(図11I、上パネル)。
【0129】
[00158]prCTBは、抗アポトーシスタンパク質Bfl-1およびMcl-1を含む

[00159]興味深いことに、prCTBはFasを発現した一方、MCF-7はFasL
を発現した(図11I、下パネル)。この事実はアポトーシスがprCTBで起こる可能性を暗示しているが、そうではなかった。これを説明するため、本発明者らはRT-qPCR解析によってprCTBがprCTB中で高レベルの抗アポトーシスBfl-1およびMcl-1のmRNAを顕著に発現したことを発見した(図11J)。Bfl-1とMcl-1は両方ともBcl-2ファミリータンパク質のメンバーであり、抗アポトーシス能を含んでいて、がん細胞死シグナル伝達を回避し、それにより細胞の生存を促進する。
【0130】
[00160]その他の固形腫瘍細胞
[00161]したがって、prCTBと一連の固形腫瘍細胞との共培養を実施し、免疫細胞
化学と3D蛍光顕微鏡との組合せを使用して検出した。肝Huh7細胞、卵巣PA-1(CRL-1572)細胞、肺H1299(CRL-5803)細胞、胃MNK45(TCP-1008)細胞、および黒色腫A375(CRL-1619)細胞を含む全ての固形腫瘍細胞は、共培養の間にアポトーシスを示した(図11K)。これらの結果は、どの細胞死シグナル伝達経路が関与しているかに応じて、prCTBが種々の固形腫瘍細胞を絶滅させる能力を含んでいることを示唆した。
【実施例0131】
dNK細胞とprCTBとの類似性
[00162]医学的理由によって中絶した女性および同じ妊娠期間8週の異所性妊娠女性か
ら、同意の下に絨毛組織中のdNK細胞を得た。最初に、免疫細胞化学によってdNK細胞中のCD56バイオマーカーの存在を確認した(CD56はprCTB中でも発現された)(図12A、上パネル)。続いて、絨毛膜絨毛の免疫組織化学により、内層の絨毛性CTBおよび絨毛性間質の間で散発的なCD56(+)dNK細胞が見られた一方、EVT区域には集積していたことが明らかになった(図12A、中パネル)。β-hCG(+)dNK細胞(β-hCGはprCTB中でも発現された)は絨毛栄養芽細胞で観察され、EVT区域に集積していた(図12A、右パネル)。正常な着床では、集積したCD56(+)dNK細胞およびβ-hCG(+)CTBがEVT区域で見出され、付近の脱落膜組織に散発的に分布していた(図12B、それぞれ上パネルおよび下パネルの左)。興味深いことに、多数のCD56(+)dNK細胞およびβ-hCG(+)CTBが母体の脱落膜組織で発現された(図12B、それぞれ上パネルおよび下パネルの左)。分泌性エキソソームを通して、prCTBはdNK細胞と同様に脱落膜組織に遊走し、脱落膜間質細胞と交信して、母体の免疫系を制御し、最終的に着床を完成させる能力を有していると思われる。
【実施例0132】
実施例1~8に記載した実験の材料および方法
[00163]実験モデルおよび対象の詳細
[00164]ヒト栄養芽幹(hTS)細胞は栄養芽組織から誘導した。栄養芽組織は、卵管
異所性妊娠に罹患した妊娠7~8週の女性からインフォームドコンセントの下に得た。本研究はKMUHの施設内審査委員会によって承認された。10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS、SAFC Bioscienses)を添加したα-MEM(ThermoFisher Scientific)中、5%のCO2を含む湿潤空気中、37℃で、ナイーブhTS細胞を培養し継代した。培養は2~3日ごとに手作業により1:3~1:6のスプリット比で継代した。1)Cell Attachment Substrate等の基質ありとなしで、MesenCult(商標)-ACF PLUS500×SupplementおよびL-グルタミンを含むMesenCult(商標)-ACF Plus培地、および2)基質ありとなしで、ヌクレオシド、GlutaMAX(商標)Supplement、および10%Stemulate(商標)Human Platelet Lysate Cell Culture Media Supplementを含むアルファ-MEMを含めて、hTS細胞の増殖について低播種密度および新たな培養培地を試験した。CD分子のフローサイトメトリー解析のために、FBSをCMPグレードのPLUS(Compass Biochemical)に置き換えた。検出できないCD34およびCD45とともに、HLA-G、β-hCG、およびCDX2を含む特徴的なバイオマーカーが安定に発現された。hTSC細胞のprCTBへの誘起は、5~10継代のhTS細胞における10ng/mlのbFGFとの24時間の処理によって行なった。1)Cell Attachment Substrate等の基質ありとなしで、MesenCult(商標)-ACF PLUS500×SupplementおよびL-グルタミンを含むMesenCult(商標)-ACF Plus培地、および2)基質ありとなしで、ヌクレオシド、GlutaMAX(商標)Supplement、および10%Stemulate(商標)Human Platelet Lysate Cell Culture Media Supplementを含むアルファ-MEMを含む、誘起用のいくつかの培地を試験した。播種密度は約10,000細胞/cmであった。培養はペニシリン、ストレプトマイシン、メルカプトエタノール、および/またはニコチンアミドを含まなかった。培養はまた、動物成分、ウシ胎児血清等の血清、抗生剤、レチノイン酸、デキサメタゾン、組換えヒトオンコスタチンM、BMP4、および/またはHGFを含まなくてよい。分化のレジメンは、実験的経験(データは示していない)によって決定した。ステージ特異的な分化のリニエージは、既述の種々の細胞バイオマーカーを参照とした。細胞は、様々な解析のために指示した時期に収集した。
【0133】
[00165]トランスフェクション実験
[00166]hTS細胞に、TransIT-LT1トランスフェクション試薬(Miru
s Bio LLC)を使用してsiRNAもしくはshRNA、または3’UTRレポータープラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションは、100μlのOPTI-MEM(Gibco)中、2μgのsiRNAまたはshRNA、および4μlのトランスフェクション試薬を用いて実施した。室温で10分インキュベートした後、トランスフェクション混合物を穏やかに細胞に一夜添加した。さらなる処理のため、トランスフェクトした細胞を、10%のFBSを添加したα-MEMと再インキュベートした。
【0134】
[00167]プラスミドの構築および二重ルシフェラーゼレポーターアッセイ
[00168]ルシフェラーゼ-3’UTRレポータープラスミドを構築するため、hTS細
胞のゲノムDNA抽出物から3’UTR断片を増幅した。3’UTR領域は、PsiI部位を有するフォワードプライマーおよびMfeI部位を有するリバースプライマーを使用してPCR増幅した。3’UTRレポーター構築物のためのものを以下に列挙した。Cdx2 3’UTR領域について:5’-aaattataagctgtttgggttgttggtct-3’および5’-aaacaattgcccccataatttctgactgc-3’;Smad4 3’UTR領域について:5’-aaattataactcccaaagtgctgggatta-3’および5’-aaacaattgctg
cactgttcacaggagga-3’;Smad4 3’UTR領域2について:5’-aaattataacagttgtcccagtgctgcta-3’および5’-aaacaattgatgacttgcccaaaggtcac-3’;GSK3β 3’UTR領域について:5’-aaattataacccacaactggggtaaaaga-3’および5’-aaacaattgctgtggaaggggcaaagata-3’。組み合わせたPsiIおよびMfeI消化(NEB)の後、T4 DNAリガーゼ(Takara)を使用することにより、3’UTRインサートをpGL4.51プラスミド(Promega)にサブクローニングした。
【0135】
[00169]二重ルシフェラーゼアッセイのため、ホタルルシフェラーゼレポーター(50
0ng)またはpGL4.74ベクターと共トランスフェクトした3’UTRを含まない空のベクター、ウミシイタケルシフェラーゼプラスミド(500ng、Promega)、および非特異的対照miRNA(30pmol)またはmiR-124a前駆体(30pmol、System Biosciences)をhTS細胞に共トランスフェクトした(各ウェルあたり1.5×10細胞)。トランスフェクション培地の交換のさらに24時間後に、二重ルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(Promega)およびCentro LB960 Microplate Luminometer(Berthold Technologies)によってルシフェラーゼ活性を解析した。評価のため、ウミシイタケルシフェラーゼ値を最初にホタルルシフェラーゼ活性に正規化し、それぞれの3’UTRレポーターの計算した活性を対照ベクターの活性にさらに正規化した。データは平均±SDとして表わす。n=8、p<0.05を統計的有意とする。細胞溶解緩衝液中で調製した全細胞抽出物を、CDX2、SMAD4、GSK3β、およびβ-アクチンの抗体を用いるイムノブロット法に供した。
【0136】
[00170]セクレトーム解析
[00171]hTS細胞培養培地(10ml)を80~90%コンフルエンスで収集し、遠
心分離(3,000rpm、30分、4℃)を行なった。3kDa Vivaspin濃縮器(Sigma)を使用することによって上清をさらに1mlに濃縮した。濃縮した上清をイムノブロットアッセイによってTGF-β1、HLA-G、およびPAI-1についてさらに検出した。IL-10レベルはOptEIA ELISAアッセイにより、供給元の説明書(BD Pharmingen,San Diego)に従って測定した。検出可能なIL-10濃度の範囲は2~2,000pg/mlであった。試料100μlのアリコートを3回反復して測定した。上清の総タンパク質はPierce BCAプロテインアッセイキット(Thermo Scientific)を使用することによって測定した。グルコース刺激試験でC-ペプチドおよびインスリンのレベルを測定するため、bFGF処理の後、80%を超える細胞コンフルエントで、高グルコース(20mM)をα-MEM培地(5ml)に加えた。様々な時間(5、10、20、30、60、および120分)で培地を収集し、凍結乾燥器(VirTis,Warminster)で凍結乾燥し、放射免疫アッセイ(RIA)のために無菌水(400μl)で再水和した。C-ペプチドおよびインスリンのレベルは、それぞれC-PEP II-RIA-CT(DIAsource ImmunoAssays S.A.)およびCoat-A-Count インスリン(Siemens Healthcare Diagnostics)によって5回のアッセイで決定した。
【0137】
[00172]エキソソーム解析
[00173]細胞培養上清を、1)hTS細胞培養(1×1.86細胞/10ml)、24
時間、および2)bFGF(10ng/ml)処理hTS細胞、24時間(prCTB)から収集した。これらの上清を、National Experimental Research Laboratories,TaiwanでLuminex LX 200装置(R&D System,USA)を使用してMilliplex解析に供し、デー
タをMilliplexアナリストソフトウェア(5.1.0.0)によって解析した。
【0138】
[00174]透過電子顕微鏡
[00175]高グルコース刺激の後、hTS細胞によって形成された培養皿上の細胞クラス
ターを、ウォルフラム針を用いて切除した。透過電子顕微鏡のために、3%(w/v)のパラホルムアルデヒド(Merck)、1.5%(w/v)のグルタルアルデヒド(Merck)、および2.5%(w/v)のサッカロース(Merck)を含む0.1M PBS(Merck、pH7.4)で、室温で1時間、4℃で一夜、細胞の塊を固定した。1%(v/v)のOsO4(Sigma)を含むPaladeの固定剤中、4℃、2時間のオスミウム化の前後に試料をPBSで洗浄し、ウラニルアセテート二水和物(Merck)で処理し、勾配系列のエタノール溶液で脱水し、EMBed-812Embeddingキット(Electron Microscopy Sciences)を使用して包埋した。超薄切片をウラニルアセテート脱水物およびクエン酸鉛(Electron Microscopy Sciences)で染色し、JEM-2000 EXII(JEOL,東京)を使用して検査した。
【0139】
[00176]ウェスタンブロット
[00177]細胞培養において、hTS細胞をbFGFで処理し、指示した時期に収集し、
プロテアーゼ(Thermo Scientific)およびホスファターゼ阻害剤(Cell Signaling Technology)を添加したRIPA溶解溶液(Millipore)に入れた。30μgの溶解物をポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した後、PDVF膜(Millipore)上でのエレクトロブロット法を実施した。室温(1時間)でのPBS中5%の脱脂乾燥ミルクによるブロッキングによって、標的のタンパク質を一次抗体とともにインキュベートした。全ての膜を化学発光剤(Millipore)とともにインキュベートし、ChemiDoc XRSシステム(Bio-RAD)によって画像を捕捉した。使用した抗体はKey Resource Tableに列挙している。データはAlphaEaseFC(バージョン4.0.0)によって解析した。
【0140】
[00178]免疫蛍光イメージング
[00179]免疫細胞化学について。簡単に述べると、培養した細胞を載せたスライドを9
5%(v/v)エタノール中、室温で30分間固定し、PBS中で3回洗浄し、0.05%(v/v)のTween20(PBST、Sigma)および5%(v/v)の正常ロバ血清(Millipore)を含むブロッキング緩衝PBSとともに60分間インキュベートした。一次および二次抗体は、指示した通りにブロッキング緩衝液中で希釈した。一次抗体は、4℃で一夜、または室温で2時間、インキュベートした。ブロッキング緩衝液中で特異的一次抗体とインキュベートした後、適切なフルオレセインイソチオシアネート(FITC、Invitrogen)またはAlexa Fluor 488、594、647(Invitrogen)またはDylight 488、594(BioLegend)をコンジュゲートした二次抗体を室温、1時間で加えた。DAPIで核カウンター染色することによって、スライドを50%のグリセロールでマウントした。画像は共焦点レーザー走査顕微鏡(LSM700;Zeiss Z1またはOlympus FluoView 1000共焦点レーザー走査顕微鏡またはCountess II FL(Invitrogen)、または3Dエクスプローラー蛍光顕微鏡(Nanolive,Swiss)、またはTissueFAXS system(TissueQnostics GmbH)によって捕捉した。
【0141】
[00180]免疫組織化学について。全ての手順はLeica Bond-III自動化シ
ステム(Leica microsystems,Bannockburn)で実施した。染色にはBondポリマーリファインキット(cat#DS9800、Leica)の
ジアミノベンジジンおよびヘマトキシリンを利用した。操作が完了し、スライドトレイを除去した際に、カバータイルをネック部分で注意深く引き上げて除去した。スライドを95%と100%のアルコールをそれぞれ2回交換、およびキシレンを2回交換して脱水した後、カバースリップした。
【0142】
[00181]TaqMan miRNAおよび定量的リアルアイムPCRアッセイ
[00182]TRIZOL試薬(Invitrogen)およびDNAアーゼIオンカラム
消化(Qiagen)を使用し、メーカーのプロトコールに従って、3重または5重の試料中のhTS細胞からRNAを単離した。iScript cDNA合成キット(Bio-Rad)を用いる逆転写のために全RNA(500ng)を使用した。PCRは、反応あたり40分の1のcDNAならびに400nMのフォワードおよびリバースプライマーを用いて行なった。miRNAステム-ループqPCRのため、シングルチューブTaqMan miRNAアッセイをメーカーの説明書(Applied Biosystems)に従って使用した。テンプレートなしの対照およびRTなしの対照を含む全てのRT反応は、GeneAmp PCR 9700 Thermocycler(Applied Biosystems)で行なった。テンプレートなしの対照を含む比較のリアルタイムPCRは、miR-124またはRNU6Bのための特異的プライマー(Applied Biosystems)を使用して3重または5重で実施した。U6 snRNA(RNU6B、Applied Biosystems)を内因性対照として供した。相対的発現を、比較のΔCt解析のためにSDS2.2.2ソフトウェア(Applied
Biosystems)を使用して計算した。
【0143】
[00183]免疫沈降(IP)アッセイ
[00184]bFGFで処理したhTS細胞の細胞溶解物を収集した。プロテインG-アガ
ロース(Millipore)と30分間インキュベートすることにより、総タンパク質(100μg)を列挙した特異的一次抗体と一夜処理した。プロテインG-アガロースビーズと2時間処理した後、試料をRIPA溶解緩衝液(Millipore)で3回洗浄し、続いてタンパク質ローディング色素を加え、5分間煮沸した。試料を8%のSDS-PAGEに溶解し、イムノブロット解析に供した。
【0144】
[00185]クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ
[00186]ChIPアッセイは、ChIP-IT Express Chromatin
Immunoprecipitation Kits(Active Motif)を使用し、メーカーの説明書に従って実施した。簡単に述べると、免疫沈降したDNA断片をhTS細胞(1×10)から抽出した。抗体、抗CREB1または抗CT4または抗β-カテニンを使用した。miR-124aまたはSOX17またはFOXA2のプロモーター領域における保存された結合部位を増幅するために、以下に列挙した特異的プライマーを使用した。miR124-2のプロモーターについて、フォワード:5’-tctgcggctctttggtttca-3’およびリバース:5’-tctgccttcagcacaagagg-3’、フォワード:5’-gcggctctttggtttcaagg-3’、リバース:5’-ctgccttcagcacaagagga-3’、miR124-3のプロモーターについて:5’-cccgcagttctcaaggacac-3’およびリバース:5’-agaagggagccaggcaagtc-3’、SOX17のプロモーターについて:5’-ttgtagattgctctctctcctcc-3’およびリバース:5’-gtgaagccttggctagggg-3’、FOXA2のプロモーターについて:5’-cccatcattgattcctggat-3’およびリバース:5’-ttgggaggctgagatttgtc-3’。
【0145】
[00187]エキソソーム解析
[00188]細胞培養上清を、1)hTS細胞培養(1×1.8細胞/10ml)、24
時間、および2)bFGF(10ng/ml)処理hTS細胞、24時間(prCTB)から収集した。これらの上清を、National Experimental Research Laboratories,TaiwanでLuminex LX 200装置(R&D System,USA)を使用してMilliplex解析に供し、データをMilliplexアナリストソフトウェア(5.1.0.0)によって解析した。
【0146】
[00189]フローサイトメトリー
[00190]インスリンの分析のため、剥離または1×TrypLE(Thermo Fi
sher Scientific)を用いるトリプシン処理によってhTS細胞を収集し、PBSで洗浄した。細胞(5×10細胞/ml)をブロッキング緩衝液(PBSTおよび5%ロバ血清)中、氷上で1時間インキュベートし、続いてAlexa Fluor(登録商標)647コンジュゲート抗インスリン抗体(9008s、Cell Signaling)または非コンジュゲート抗インスリン抗体(sc-7839、Santa Cruz)を含むブロッキング緩衝液中、4℃で30分間、再懸濁した。細胞をブロッキング緩衝液で2回洗浄し、非コンジュゲート抗体とともに濾過し、続いてAlexa Fluor(登録商標)647コンジュゲート二次抗体を含むブロッキング緩衝液とともに暗所、氷上で30分間インキュベートした。2回洗浄後、細胞濾過キャップを有するポリスチレン丸底チューブ(BD Falcon)に細胞を通し、フローサイトメトリー(LSR-IIフローサイトメーター、BD Biosciences)に供した。結果はFlowJoソフトウェアによって解析した。
【0147】
[00191]多能性転写因子の解析のため、CDX2またはOCT4またはSOX2または
NANOGに対する非特異的shRNAをhTS細胞にトランスフェクトした。次いで細胞(5×10細胞/ml)を特異的一次抗体と30分間インキュベートした。適切な蛍光色素をコンジュゲートした、調節した希釈倍率の一次抗体と4℃で1時間インキュベートすることにより、試料をPBSで洗浄および再懸濁し、続いて細胞濾過キャップを有するポリスチレン丸底チューブ(BD Falcon)に細胞を通し、フローサイトメトリー(FACScan、BD Biosciences,San Jose,CA)に供した。データはCell-Questソフトウェア(BD Biosciences)によって解析した。
【0148】
[00192]CDバイオマーカーの解析のため、hTS細胞またはprCTB(1×10
~1×10)を240μlの1×FCM緩衝液(Leinco、F1175)に懸濁した。細胞(30μl)を、7-AAD(BD、5599257)、蛍光標識抗体(BDマルチテスト6色TBNK(BD、337166)+BV421標識抗CD107a(BioLegend、328625)、またはBV421標識抗CD34(BD、562577)のみ、またはPerCP Cy5.5標識抗CD45(BD、340952)+APC標識抗CD3(BD、555342)+PE標識抗γδTCR(BD、340887)、または蛍光標識アイソタイプ対照抗体(FITC標識IgG1κ(BD、556649)+PE標識IgG1κ(BD、556650)+PE標識IgG2bκ(BD、556656)+PerCP-Cy(商標)5.5標識IgG1κ(BD、552834)+PE-Cy(商標)7標識IgG1κ(BD、557872)+APC標識IgG1κ(BD、550854)+APC-Cy7標識IgG1κ(BD、557873)+BV421標識IgG1κ(BD、562438)、またはBV421標識IgG1κ(BD、562438)のみで染色した。室温で15分間インキュベートした後、細胞を1mlの1×FCM緩衝液で洗浄し、200μlの1×FCM緩衝液に再懸濁した。最終的に、FACSVerseフローサイトメーター(BD、651155)およびFACSuiteソフトウェアを使用して細胞試料を解析した。
【0149】
[00193]アポトーシスアッセイ
[00194]PANC-1細胞(膵)、MCF-細胞(乳腺)、H1299細胞(肺)、M
KN45細胞(胃)、HepG2細胞(肝)、PA-1細胞(卵巣)、A375細胞(黒色腫)、およびPC-3細胞(前立腺)を含む種々のがん細胞(2,000細胞)を、35mmのガラス底の皿(前記、cat#81158)中の培養培地と5%CO2中、37℃のインキュベーションで播種し、培養した。細胞を一夜接着させた後、bFGFで誘起したhTS細胞(2×10細胞)を共培養のために24時間で添加した。アポトーシスアッセイのため、Apoptosis/Necrosisキット(ab176749、Abcam、Cambridge,England)を使用し、メーカーの説明書に従って、共培養した細胞を染色した。簡単に述べると、培地を除去した後、アッセイ緩衝液を使用して細胞を2回洗浄した。染色のためにApopxinグリーン指示薬(アポトーシス細胞/緑色)およびCytoCalcein450(健常細胞/青色)を加え、細胞を室温で約40分間インキュベートした。緩衝液で2回洗浄した後、細胞を3D細胞エクスプローラー蛍光(Nanolive,Swiss)で観察した。
【0150】
[00195]prCTBおよびPANC-1細胞の共培養を、2:1の比(3×10細胞
/ウェル)で、12ウェルのプレート中、37℃で6日間実施し、光学顕微鏡で観察した。アポトーシスアッセイのため、Apoptosis/Necrosisキット(ab176749、Abcam、Cambridge,England)を使用し、メーカーの説明書に従って、共培養した細胞を(24時間で)解析した。培地を除去した後、アッセイ緩衝液を使用して細胞を2回洗浄した。次いで、それぞれのウェルにApopxinグリーン指示薬(アポトーシス細胞)およびCytoCalcein450(健常細胞)を加え、室温で60分間インキュベートした。アッセイ緩衝液で細胞を洗浄し、蛍光顕微鏡で解析した。
【0151】
[00196]トランスウェルアッセイ
[00197]6ウェルのトランスウェルインサート(孔径8μm、Corning)を使用
してprCTB(1×10細胞/ml)を播種し、37℃、5%CO中で10分間インキュベートして、細胞を沈降させる。このため、トランスウェル膜の上に細胞外マトリックス(ECM)材料を添加し、ECMの上に細胞を添加する。例えば、Matrigelを氷上で解凍して液化し、30~50μlのMatrigelを24ウェルのトランスウェルインサートに添加して、37℃のインキュベーター中で15~30分間、固化させ、薄いゲル層を形成させる。細胞外マトリックスを通る浸潤を模擬するため、Matrigelコーティングの上に細胞溶液を添加する。トランスウェル細胞遊走アッセイによって、ケモアトラクタントに対する細胞の走化性能が測定される。しかし、トランスウェル細胞浸潤アッセイによって、細胞の走化性と、がんの転移または胚の発達において一般的に見られるプロセスである細胞外マトリックスを通る細胞の浸潤の両方が測定される。
【0152】
[00198]ピペットを使用して、24ウェルプレートの下側チャンバーの底に、600μ
lの所望のケモアトラクタントを極めて慎重に添加する。トランスウェルインサートを動かさずにケモアトラクタントを添加し、泡の発生を避ける。底のウェルの中のケモアトラクタント液が上のウェルの膜と接触して、走化勾配を形成することを確かめる。インキュベーション時間は、細胞の型および使用するケモアトラクタントによる。注意:インキュベーション時間を決定するためにさらなる試験が必要になることがある。注意:接着性細胞については、遊走した細胞が膜の反対側に付着することがある1、8。遊走した細胞の定量はステップ2.4~2.8に従って実施することができる(無菌環境ではステップ2.4~2.8は実施する必要はない)。非接着性細胞については、遊走した細胞は下のチャンバーの培地の中に落ちることになる。遊走した細胞の数は、ヘモサイトメーターまたはフローサイトメーターを使用して計数することができる
【0153】
[00199]プレートからトランスウェルインサートを取り出す。必要に応じて何度でもコ
ットンチップアプリケーターを使用し、膜に損傷を与えずに、培地および膜の上から遊走しなかった残留細胞を慎重に取り出す。
【0154】
[00200]24ウェルプレートのウェルに、600~1,000μlの70%エタノール
を添加する。70%エタノール中にトランスウェルインサートを10分間置いて細胞を固定させる。24ウェルプレートからトランスウェルインサートを取り出し、コットンチップアプリケーターを使用して残留したエタノールを膜の上から取り出す。トランスウェル膜を乾燥させる(典型的には10~15分)。
【0155】
[00201]24ウェルプレートのウェルに600~1,000μlの0.2%クリスタル
バイオレットを添加し、染色のためにその中に膜を位置させる。室温で5~10分間インキュベートする。
【0156】
[00202]ピペットチップまたはコットンチップアプリケーターによって膜の上からクリ
スタルバイオレットを穏やかに取り出す。固定した細胞が洗い流されることを避けるため極めて慎重に、必要に応じて何度でも膜を蒸留水に浸漬し、過剰のクリスタルバイオレットを除去する。トランスウェル膜を乾燥させる。
【0157】
[00203]倒立顕微鏡の下側を観察し、異なる視野で細胞の数を計数して、ケモアトラク
タントに向かって膜を通って遊走し、膜の下側に付着した細胞の平均合計数を得る。
[00204]統計解析
[00205]イムノブロットアッセイ、qPCRアッセイ、レポーターアッセイ、ならびに
インスリンおよびIL-10のアッセイにおける実験は3重測定または4重測定で行ない、指示したように2回繰り返した。p値は両側分布のステューデントt-検定により、p<0.05を統計的有意とした。
【0158】
[00206]本明細書で開示した1つまたは複数の実施形態、例、または態様は、適してい
る場合には本明細書で開示した他の任意の実施形態、例、または態様と組み合わせることができる。
【0159】
[00207]いくつかの実施形態が本明細書で示され、記載されているが、そのような実施
形態は例としてのみ提供されている。本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、および置換をすることができる。本発明の実施において本明細書に記載した本発明の実施形態に種々の代替を採用することができることを理解されたい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図2M
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J
図7K
図7L
図7M
図7N
図7O
図7P
図7Q
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図9J
図9K
図9L
図9M
図9N
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図10I
図10J
図10K
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図11H
図11I
図11J
図11K
図12A
図12B
【配列表】
2025026939000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞を、線維芽細胞成長因子、ならびにヌクレオシド、L-グルタミン、L-グルタミンを含むジペプチド、血小板溶解物、またはそれらの組合せを含む培養培地と接触させることによって、前記幹細胞をin vitroで分化させるステップを含む、先駆制御性細胞栄養芽細胞(prCTB)を得るin vitroの方法。
【請求項2】
前記培養培地がヌクレオシド、前記ジペプチド、および血小板溶解物を含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記培養培地が約2mM~約200mMのL-グルタミンを含む、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
前記接触するステップが約24時間~48時間続く、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記幹細胞が絨毛膜絨毛由来の前駆細胞である、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
prCTBに分化させるために線維芽細胞成長因子との接触前に前記幹細胞を前記培養培地とともに培養するステップを含む、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記培養培地が抗生剤を含まない、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗生剤がペニシリン、ストレプトマイシン、またはそれらの任意の組合せである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記培養培地がレチノイン酸を含まない、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記培養培地がメルカプトエタノール、ニコチンアミド、またはそれらの組合せを含まない、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記培養培地がデキサメタゾン、組換えヒトオンコスタチンM、BMP4、HGF、またはそれらの任意の組合せを含まない、請求項から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記培養培地が動物成分を含まない、請求項から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記培養培地がヒト由来の成分を含まない、請求項から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記培養培地が血清を含まない、請求項から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記培養培地がウシ胎児血清を含まない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記線維芽細胞成長因子が塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)である、請求項から15のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】