(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002710
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】免荷量を容易に計測可能な免荷量計測装置
(51)【国際特許分類】
G01G 19/50 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
G01G19/50 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103039
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】古和 勉
(57)【要約】
【課題】免荷量を容易に計測可能な免荷量計測装置を提供する。
【解決手段】被計測者の体重を免荷する免荷用具と、前記免荷用具が載置される第1計量台と、前記第1計量台にかかる荷重を計測する第1荷重センサと、を備えた第1体重計と、前記第1計量台に載置されて、前記免荷用具で免荷された状態の被計測者に乗降される第2計量台と、前記第2計量台にかかる荷重を計測する第2荷重センサと、を備えた第2体重計と、前記第1荷重センサおよび前記第2荷重センサの計測値から、免荷量を算出する免荷量演算処理部とを備える免荷量計測装置を提供する。第1体重計で被計測者の体重を計測すると同時に、第2体重計で免荷された状態の被計測者にかかる荷重を計測でき、これにより被計量者の免荷量Rを容易に取得することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測者の体重を免荷する免荷用具と、
前記免荷用具が載置される第1計量台と、前記第1計量台にかかる荷重を計測する第1荷重センサと、を備えた第1体重計と、
前記第1計量台に載置されて、前記免荷用具で免荷された状態の被計測者に乗降される第2計量台と、前記第2計量台にかかる荷重を計測する第2荷重センサと、を備えた第2体重計と、
前記第1荷重センサおよび前記第2荷重センサの計測値から、免荷量を算出する免荷量演算処理部と、
を備えることを特徴とする免荷量計測装置。
【請求項2】
前記免荷用具は、前記第1計量台に取り付けられた手すりである、
ことを特徴とする請求項1に記載の免荷量計測装置。
【請求項3】
前記第2荷重センサは、前記第2計量台に左右一対で配置されており、
前記免荷量演算処理部は、前記第1荷重センサの計測値、および左右一対の前記第2荷重センサのそれぞれの計測値から、それぞれの免荷量を算出する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の免荷量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、免荷用具を使用した被計測者の免荷量を容易に計測可能な免荷量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
事故や疾患発症による下肢機能障害のために自立歩行が困難となった対象者(以下、対象者と称する)は、歩行トレーニングなどのリハビリテーションを行う。この際、対象者は、手すりに捕まり立ちする、歩行訓練装置や杖などの免荷用具を使用するなど、自己の体重の一部を免荷させた免荷状態でリハビリテーションを行う。
【0003】
免荷状態を把握するため、対象者が把持する把持部に負荷される荷重を計測し、これを表示するトレーニング器がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のトレーニング器では、把持部に負荷される荷重が計測される。免荷用具に負荷される荷重は、対象者の体重により割合が異なり、免荷用具に負荷される荷重が同じでも、体重が異なる対象者たちでは当然トレーニングの内容が異なる。また日によって把持部に負荷される荷重が増減しても、それが対象者の体重の増減であるか、把持部への負荷の増減であるか、区別できない。対象者の免荷状態を的確に把握するには、免荷用具を使用しない対象者の体重に対する免荷用具に負荷される荷重の割合(免荷量)を把握する必要がある。免荷量を計測するには、まず対象者の自立状態の体重、即ち、全く免荷されていない状態(免荷量=0)での対象者の体重を計測する必要がある。ついで、免荷用具を用いた状態での対象者が計測される体重(対象者にかかる荷重)を計測し、両体重から免荷量を算出する。例えば特許文献1のトレーニング器で、全く免荷されていない状態の対象者の体重を計測するには、対象者が手すりを把持して手の力だけで全体重を支える必要があるが、対象者にそのような動作をさせることはできず、別の体重計を用いて、対象者の体重を計測する必要があり面倒である。また、特許文献1のトレーニング器は、専門機器であり、非常に高価となる。このような高価な専用機器を用いることなく、免荷量を容易に知ることが望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、免荷量を容易に計測可能な免荷量計測器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため、本開示のある態様においては、被計測者の体重を免荷する免荷用具と、前記免荷用具が載置される第1計量台と、前記第1計量台にかかる荷重を計測する第1荷重センサと、を備えた第1体重計と、前記第1計量台に載置されて、前記免荷用具で免荷された状態の被計測者に乗降される第2計量台と、前記第2計量台にかかる荷重を計測する第2荷重センサと、を備えた第2体重計と、前記第1荷重センサおよび前記第2荷重センサの計測値から、免荷量を算出する免荷量演算処理部と、を備えるように免荷量計測装置を構成した。
【0008】
この態様によれば、第1体重計から被計測者の免荷されない体重が計測でき、第2体重計から被計測者の免荷された状態の荷重が計測でき、免荷量を容易に算出できる。
【0009】
また、ある態様においては、前記免荷用具は、前記第1計量台に取り付けられた手すりであるものとした。この態様によれば、手すりにつかまって、第2計量台に被計量者が乗り上げるだけで、免荷量を計測できる。
【0010】
また、ある態様においては、前記第2荷重センサは、前記第2計量台に左右一対で配置されており、前記免荷量演算処理部は、前記第1荷重センサの計測値、および左右一対の前記第2荷重センサのそれぞれの計測値から、それぞれの免荷量を算出するものとした。この態様によれば、左右の免荷量を計測できる。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、免荷量を容易に計測可能な免荷量計測装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の構成の好適な第1実施形態に係る免荷量計測装置の概略構成図を示す。
【
図8】試験データのグラフである。免荷量の経日変化を示す。
【
図10】
図9の変形例の試験データのグラフである。
【
図12】第2実施形態に係る免荷量計測装置の概略構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の構成の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
(第1実施形態)
本開示の構成に係る好ましい実施形態を図面に従って説明する。
図1は第1実施形態に係る免荷量計測装置1の概略構成図である。
【0015】
図1に示すように、免荷量計測装置1は、床面FLに載置される第1体重計100と、第1体重計100に積層載置される第2体重計200を備える。第1体重計100には手すり6が取り付けられている。
【0016】
免荷量計測装置1は、免荷量Rを計測する。免荷とは、自己の脚や腰などのかかる負担が、杖などの補助用具(免荷用具)を使用することにより免荷用具に分散されて、自己の体重をその分だけ免れることとをいう。免荷量Rは、全く免荷されていない状態の被計測者の体重(以下、非免荷体重G1と称する)に対する、免荷用具にかかる荷重の割合である。静止状態では、非免荷体重G1および免荷用具で免荷された状態の被計測者の計測される体重(免荷状態で被計測者にかかる荷重。以下、免荷体重G2と称する)から算出することができる。
【0017】
免荷量R=(G1-G2)/G1×100(%BW:% Body Weight)
免荷量計測装置1で免荷量Rを計測の際には、例えば、被計測者は、手すり6につかまり、手すり6で自らを支えながら、第2体重計200に乗り、掴まり立ちの状態となる。この場合、手すり6が免荷用具であり、被計測者は、自分の体重の一部を手すり6に掛けて、手すり6により免荷された状態で第2体重計200に乗り上げ静止する。第1体重計100で非免荷体重G1が計測され、第2体重計200で免荷体重G2が計測される。これにより、免荷量Rが算出され、表示画面34に表示され、被計測者に視認される。
【0018】
(免荷量計測装置)
免荷量計測装置1について、図を用いて詳しく説明する。
図2は、免荷量計測装置1の斜視図である。
図3は、免荷量計測装置の分解正面図である。
図4は、免荷量計測装置1の平面図である。
図5は、免荷量計測装置1の制御ブロック図である。
【0019】
図2~
図4に示すように、免荷量計測装置1は、第1体重計100に第2体重計200が積層載置されて構成される。
【0020】
まず、第1体重計100から説明する。第1体重計100は医療用の大型体重計であり、被計測者がそのまま乗り上げて体重を計測するだけでなく、被計測者が車椅子に乗ったままでも体重を計測することができるように構成される。
【0021】
第1体重計100は、第1計量台20、第1脚8、手すり6、および表示器10を有する。
【0022】
第1計量台20は大きな矩形状に形成されており、被計測者が安全に乗り上げるため、被計量面である上面が広く、かつ全体が薄く構成される。第1計量台20は、平坦で且つ十分な剛性を有する構造となっており、例えば、ハニカム状の補強板(不図示)を鉄製の枠体と鉄板とで挟み込むことによって構成されている。
【0023】
松葉杖などの免荷用具を使用している被計測者が、免荷用具を使用したまま第1計量台20に乗り上げることができるように、第1計量台20の前後の両端部には、床面FLに連なる緩勾配のスロープ18,18が備えられている。また各スロープ18には、滑り止めが取り付けられており、被計測者が乗り降りの際に滑らないように構成されている。
【0024】
第1計量台20の左右両端には、左サイドバー22および右サイドバー24が連結されている。各サイドバー22,24は中空の柱状に形成されており、その内部に配線や電子基板などが収納されている。サイドバー22,24の上面には、被計測者が把持できるように、手すり6が取り付けられており、被計測者が、手すり6をもって乗り降りできるようになっている。
【0025】
また、サイドバー22、24のうち、一方のサイドバー(本実施形態においては右サイドバー24)の上面には、手すり6の傍にポール30が着脱自在に、かつ回動自在に取り付けられている。ポール30は、垂直に起立した後、湾曲して水平になっており、その先端に表示器10が取り付けられている。
【0026】
表示器10には、表示画面34および入力部36が設けられている。表示画面34は、例えば液晶ディスプレイである。表示画面34は、設定条件や、被計測者の体重(非免荷体重G1)、免荷量Rなどの計測結果、およびその他設定に必要な表示などを表示する。
【0027】
入力部36は、例えばキースイッチである。入力部36から、「風袋引き」「計測値の出力」「ゼロ点リセット」などの各種設定や指令の入力が行われる。なお、表示画面34と、入力部36とを一体的に構成して、タッチパネル式の入力部36として設けてもよい。表示器10の内部には、様々な演算処理を行うための第1制御部38も設けられている。
【0028】
各サイドバー22,24の下面に第1脚8が設けられている。第1脚8は、各サイドバー22,24の両端、すなわち第1計量台20の各コーナー部に配置されている。各第1脚8とサイドバー22,24の間には、四つの第1荷重センサ42が設けられており、この四つの第1荷重センサ42を介して第1計量台20が支持されている。
【0029】
ここで、第1体重計100の奥行側を前方、手前側を後方として、左サイドバー22の前方(第1計量台20の左前)に設けられた第11荷重センサ42a、左サイドバー22の後方(第1計量台20の左後)に設けられた第12荷重センサ42b、右サイドバー24の前方(第1計量台20の右前)に設けられた第13荷重センサ42c、右サイドバー24の後方(第1計量台20の右後)に設けられた第14荷重センサ42dに関し、特に指定の無い場合は、これらをまとめて第1荷重センサ42と称する。
【0030】
第1荷重センサ42は、荷重を計測するセンサであり、第1計量台20にかかる荷重を計測する。第11荷重センサ42a~第14荷重センサ42dは、それぞれ個別に出力を行い、それを不図示のアンプで増幅し、表示器10内の第1制御部38に送信できるようになっている。第1荷重センサ42の構成は特に限定されるものではなく、例えばロードセルが用いられる。図示は省略するが、第1荷重センサ42の具体的な構成としては、ロバーバル型ロードセルの起歪体の4つの薄肉部に四つのゲージが貼り付けられ、この4つのゲージがブリッジ回路を構成するように接続されておりそれぞれの出力値(計測値への換算や演算処理をしていないデータ)を第1制御部38で判断できるようになっている。第1荷重センサ42の構成のみならず、起歪体の形状も、特に限定されるものではなく、コラム型、リング型など、従来周知の構成を用いてよい。
【0031】
第1制御部38は、少なくともCPUおよびメモリを集積回路に実装したマイクロコンピュータであり、メモリに収納されたプログラムに基づき、演算処理を行う。第1体重計100に接続される入力部36や表示画面34への出力制御、第1荷重センサ42の計測値の演算処理などを制御する。本実施形態において、第1制御部38は、主として、第11荷重センサ42a~第14荷重センサ42dの計測値に基づいて、第1計量台20の上の被計量物の荷重を算出し、表示画面34に表示するように制御する。第1制御部38には、免荷量演算処理部39が含まれる。
【0032】
次に、第2体重計200について説明する。第2体重計200は、一般に家庭で広く使用されている汎用体重計であり、被計測荷重が載加される第2計量台220、第2脚208、および内部に第2荷重センサ242、第2制御部238を備える。
【0033】
第2計量台220は矩形状に構成され、第1計量台20よりも小型となっている。第2計量台220の底面に第2脚208が設けられている。第2脚208と第2計量台220の間に第2荷重センサ242が介装されており、第2計量台220は、第2荷重センサ242を介して支持されている。
【0034】
第2荷重センサ242は、第2計量台220にかかる荷重を計測するセンサであり、第1体重計の第1荷重センサ42と同様に、その形態は特に限定されない。また、第2荷重センサ242は、その数や配置なども限定されない。第1荷重センサ42同様に、第2計量台220の四隅に四つ配置されてもよい。
【0035】
第2制御部238は、第1制御部38と同様に、少なくともCPUおよびメモリを集積回路に実装したマイクロコンピュータであり、メモリに収納されたプログラムに基づき、演算処理を行う。主として、第2制御部238は、第2荷重センサ242の計測値に基づいて、第2計量台220にかかる荷重を算出し、計測値を第2計量台220上面の表示部に表示する制御を行う。また、第2体重計200はケーブルや無線通信装置などの図示しない通信部を有し、第2制御部238による演算結果は、無線または有線で、第1制御部38に設けられた免荷量演算処理部39にも出力される。
【0036】
第1体重計100および第2体重計では、被計量物が載置されていない状態での荷重センサの値から、被計量物が載置された状態での荷重センサの値の差分値から計測値として算出される。
【0037】
第1荷重センサ42や第2荷重センサ242の計測値から荷重に変換する方法は、従来周知の方法を用いてよく、その方法は問わない。第2体重計200は、第1体重計100の第1計量台20に載置可能で、かつ、計測値が第1体重計100へ出力可能であれば、第2荷重センサ242の数や形態、計量装置としての態様、データの通信形態は問われない。
【0038】
(免荷量算出)
免荷量計測装置1は、免荷量計測機能としての演算処理を行う、免荷量演算処理部39を有する。免荷量演算処理部39は、主として免荷量Rを算出して、表示画面34に免荷量Rを表示させる処理を行う。
【0039】
免荷量演算処理部39は、第1制御部38のメモリにプログラムとして収納されており、第1制御部38にソフトウェア的に構成されている。
【0040】
第1制御部38に入力された第1荷重センサ42の出力値や、メモリ内のデータ、第1制御部38の演算結果、さらに第2体重計200の第2荷重センサの出力値や、第2制御部238での演算結果が、免荷量演算処理部39に提供される。
【0041】
免荷量演算処理部39は、第11荷重センサ42a~第14荷重センサ42dの計測値、および第2荷重センサ242の計測値から、免荷量Rを算出して、表示画面34に表示する。
【0042】
免荷量Rは、主として、第1体重計100および第2体重計200で計測される荷重に基づいて算出される。このため、第1荷重センサ42で計測された荷重、および第2荷重センサ242で計測された荷重のみを免荷量演算処理部39に出力して、免荷量演算処理部39がこれら荷重から免荷量Rを算出して表示画面34に表示するよう構成してもよい。
【0043】
免荷量計測装置1の免荷量Rの計測方法としては、被計測者は、免荷用具を使用して、免荷用具を第1体重計100に載置し、免荷用具を用いた状態で、第2体重計200に乗る。免荷量計測装置1の具体的な実施例としては、
図1に示すように、被計測者は、手すり6に掴まりながら、第2計量台220に乗る。本実施例においては、手すり6が免荷用具として用いられる。計測前に、第1体重計100に第2体重計200を載置した状態で、ゼロ点リセットが実施される。
【0044】
第2制御部238は、第2荷重センサ242の計測値に基づいて、第2計量台220にかかる荷重を算出する。第1制御部38は、第1荷重センサ42の計測値に基づいて、第1計量台20にかかる荷重を算出する。計量台20には手すり6が取り付けられており、手すり6にかかる荷重(被計量者が手すり6に掴まることにより手すり6にかかる荷重)は、計量台20にかかる荷重に含まれて算出される。このことから、被計量物が手すり6に支えられていている場合でも、被計量物が手すり6に接触していない場合でも、第1体重計100としての計測値は同じとなる。即ち、被計量者が手すり6を把持して免荷状態となっても、被計量者が手すり6に触れなくとも、第1体重計100では、被計量者の免荷されない状態の体重(非免荷体重G1)が計測される。
【0045】
被計測者の体重の一部は、手すり6にかけられるため、第2計量台220にかかる荷重は、手すり6で軽減された状態の被計測者の荷重、即ち、免荷用具で免荷された状態の被計測者にかかる荷重である免荷体重G2であり、第2体重計200では免荷体重G2が計測される。第1体重計100の第1計量台20にかかる荷重は、全く免荷されない状態の被計測者の体重、即ち、非免荷体重G1、および、第2体重計200の質量分の合計値が荷重としてかかるが、第2体重計200の質量分は、ゼロ点リセットにより引かれているため、第1体重計100では、非免荷体重G1が計測される。
【0046】
免荷量演算処理部39は、第1体重計100で計測された非免荷体重G1および第2体重計200で計測された免荷体重G2から免荷量Rを算出し、免荷量Rを表示画面34に表示するように制御する。
【0047】
(動作フロー)
図6は、免荷量計測装置1の動作フローの一例を示している。
【0048】
図6に示すように、まずステップS101で、第1体重計100の第1計量台20の上面に、第2体重計200が載置される。
【0049】
次に、ステップS102に移行して、第1体重計100および第2体重計200の電源が入れられる。
【0050】
次に、ステップS103に移行して、ゼロ点リセットや風袋引きなどの設定が行われる。第2体重計200が第1体重計100に積層載置された状態で、第1体重計100のゼロ点リセットが行われる。第2体重計の質量を風袋引きしてもよい。
図1に示す実施例においては、免荷用具は手すり6だが、後述する変形例のように、松葉杖など手すり6以外の免荷用具を使用する場合、他の免荷用具の質量分を風袋引きする設定を行う。
【0051】
次に、ステップS104に移行し、被計測者が免荷量計測装置1に乗り上げる。被計測者は、手すり6を把持し、スロープ18を使い、第2計量台220の上に乗る。
【0052】
次に、ステップS105に移行し、第1荷重センサ42、および第2荷重センサ242が荷重を計測する。
【0053】
次に、ステップS106に移行し、免荷量演算処理部39は、免荷量Rを算出する。第1制御部38は、第11荷重センサ42a~第14荷重センサ42dの計測値から、第1計量台20にかかる荷重を非免荷体重G1として算出する。第2制御部238は、第2荷重センサ242の計測値から、第2計量台220にかかる荷重を免荷体重G2として算出する。免荷量演算処理部39は、算出された非免荷体重G1および免荷体重G2から、被計測者の手すり6に掴まり立ちした状態の免荷量Rを算出する。
【0054】
次に、ステップS107に移行して、免荷量演算処理部39は、表示画面34に免荷量Rを表示させる。免荷量Rとともに、非免荷体重G1や免荷体重G2を、免荷量Rとともに表示画面34に表示させてもよい。
【0055】
第2体重計200は、第1計量台20のどこに載置されてもよいが、第1計量台20の略中央に載置されると好ましい。被計測者が左右の手すり6に両手で掴まり立ちすることが難しい場合、被計測者は両手で一方の手すり6のみ把持して体を支えて第2計量台220に乗ってもよい。この場合、第2体重計200を一方の手すり6側へ寄せて配置してもよい。
【0056】
(作用効果)
上記の如く構成された免荷量計測装置1により、被計測者の体重(非免荷体重G1)を計測すると同時に、手すり6を免荷用具として使用した免荷状態の被計量者の免荷量Rも計測することができる。別々の体重計で、被計量者の非免荷体重G1と免荷体重G2を計測する必要がなく、免荷量Rの計測が容易である。
【0057】
第1体重計100も、第2体重計200も、それぞれ個別に体重計として機能するものである。既にある第1体重計100に、別の第2体重計200を積層載置し、免荷量演算処理部39を第1制御部38にプログラムとして追加し、免荷量計測装置1を構成することも可能である。既存の体重計を用いて、免荷量計測装置とし、後付けで免荷量算出機能を持たせることも可能である。仮に第2体重計200が故障したとしても、すぐに別の体重計を用いて第2体重計200とし、免荷量計測装置1を構成でき、メンテナンス性もよい。
【0058】
専用の機器を導入するより低コストで、容易に、被計測者が免荷用具を使用した免荷状態の免荷量Rを計測することができる。
【0059】
(試験データ)
図7は、実際に免荷量計測装置1を使用して試験を実施し、取得したデータの一例を示す。
図7(A)は、免荷用具として手すり6を使用しない場合、即ち、被計測者が手すり6に触れずに、第2体重計200に乗り降りした場合のデータ(比較用データ)である。
図7(B)は、被計測者が、免荷用具として手すり6を把持して、自らの身を支えながら、第2体重計200に乗り降りした場合のデータである。
図7は、試験で取得された被計測者の非免荷体重G1および免荷体重G2を示す。
【0060】
図7(A)に示すように、手すり6を使用せずに、被計測者が免荷量計測装置1の第2体重計200に乗り、計測された場合、第1体重計100で計測される非免荷体重G1と、第2体重計200で計測される免荷体重G2は一致する。このため、免荷量R=0%BWとなる。
【0061】
非免荷体重G1:77kg
免荷体重G2:77kg
免荷量R=(77-77)/77×100=0(%BW)
図7(B)に示すように、被計測者が、手すり6を把持して、手すり6で自らの身を支えながら、第2体重計200に乗り、計測された場合、第1体重計100で計測される非免荷体重G1と、第2体重計200で計測される免荷体重G2は、異なる。試験データから算出される免荷量Rは以下の通りである。
【0062】
非免荷体重G1:77kg
免荷体重G2:50kg
免荷量R=(77-50)/77×100=35(%BW)
このように、被計測者が手すり6を免荷用具として使用した免荷状態の免荷量Rが容易に計測される。被計測者の体重を計測する際に、免荷量Rも同時に計測することができる。
【0063】
被計測者の歩行困難の具合に応じて、免荷用具に係る負荷は変化し、これに応じて免荷量Rは変化する。歩行トレーニングにおいては、指導者が、トレーニングを行う者の現状を把握してトレーニング内容を指示することで、有効な効果が生じるとされる。免荷量計測装置1を用いると、免荷量Rを容易に計測することができ、トレーニングを行う者の現状が、数値として的確に免荷量Rで把握される。このため、指導者が適切なトレーニング内容を指示することができ、効果的なリハビリテーションを実施することができる。また、トレーニングを行う者も、自己の免荷量Rを認知してトレーニングを行うことで、モチベーションが向上し、よりトレーニング効果が向上する。
【0064】
(変形例1:メモリ機能)
免荷量演算処理部39に算出した免荷量Rを記憶させる機能を付加しても良い。第1制御部38のメモリに、免荷量Rを記憶させて、日々の免荷量Rの推移を表やグラフなどで表示画面34に表示させように構成すると好ましい。被計測者が自己のトレーニング効果を目にすることで、モチベーションを向上させることができる。
【0065】
上記内容の一例を
図8に示す。
図8は、歩行トレーニングを行う被計測者の免荷量Rの推移を示すグラフであり、横軸は治療日数を、縦軸は免荷量Rを示す。
【0066】
図8に示すように、日が経過するごとに、免荷量Rが減少してきており、免荷量R=0%BW、即ち、自立歩行へ確実に進んでいることを確認できる。免荷量計測装置1では、トレーニング前に被計測者の体重の計測を行う際に、そのまま免荷量Rも計測できる。免荷量計測装置1を用いて免荷量Rを計測することで、被計測者自身が、現在の状態や目標を数値として的確に把握でき、トレーニングの質を向上させることができる。
【0067】
(変形例2:自己の免荷用具の使用)
図9は、免荷量計測装置1を用いた、別の使用例の概略構成を示す。本実施例においては、被計測者は、免荷用具として手すり6ではなく、松葉杖などの自己の免荷用具106を用いて、免荷量計測装置1で免荷量Rの計測を行う。この場合、第1体重計100では、免荷用具106の質量の風袋引きが設定される。
【0068】
被計測者は、免荷用具106を使用しながら、第1体重計100に乗り上げ、免荷用具106を第1計量台20に載置させて、免荷用具106を使用して自らの体重の一部を免荷用具106にかけて、第2体重計200に乗り、計測される。このように、被計測者が免荷用具106で自己にかかる一部荷重が免荷された免荷状態で計測を行う。第2体重計200を載置させた状態でのゼロ点リセット、および第1体重計100での免荷用具106の質量が風袋引きから、第1体重計100では被計測者の非免荷体重G1が計測される。第2体重計200では被計測者が免荷用具106を使用した免荷状態の免荷体重G2が計測される。これにより被計測者が免荷用具106を使用した状態の免荷量Rが算出される。被計測者が使い慣れた自分の免荷用具106を使用した状態の免荷量Rを計測することができる。
【0069】
本実施例においては、手すり6は、免荷用具ではなく、被計測者が第1計量台20から脱落することを防止するための安全装置として用いられる。手すり6が第2計量台220への乗り降りの邪魔とならないように、計測前に取り外されてもよい。被計測者が落ちないように、そのまま取り付けておいてもよい。被計測者が自己の免荷用具106を使用する場合、計測時に手すり6にもたれかからぬように注意する。免荷量Rの計測時に被計測者が手すり6に負荷をかけていると、その分だけさらに免荷されてしまい、被計測者が免荷用具106だけを用いた状態の免荷体重G2を計測できず、免荷量Rを正確に計測できないからである。
【0070】
いずれの実施例においても、手すり6、免荷用具106など、免荷用具の荷重のかかる負荷部、例えば手すり6の固定部や松葉杖の先端などが、第1計量台20に接して第1計量台20に負荷をかけ、免荷用具を使用した状態で被計測者が第2体重計200に乗り、計測されればよい。手すり6や免荷用具106の底面が、第1計量台20に接地され、免荷用具106にかかる荷重が第1計量台20にそのままかかればよい。被計測者が免荷用具を使用した免荷状態の免荷量Rを計測できる。このため、松葉杖に限られず、多脚杖や、サークル型歩行器、底面に車輪が取り付けられた車輪付き歩行器など、多様な歩行補助ツールを免荷用具として用いた状態で、免荷量Rを計測できる。
【0071】
図10は、実際に免荷量計測装置1を使用して変形例2の実験を実施し、取得したデータの一例を示す。
図10(A)は、免荷用具(松葉杖)を使用しない場合、即ち、被計測者が免荷用具を使用せずに、第2体重計200に乗り降りした場合の比較用データである。
図10(B)は、被計測者が、免荷用具106として松葉杖を使い、自らの身を支えながら、第2体重計200に乗り降りした場合のデータである。
図10は、試験により取得した被計測者の非免荷体重G1および免荷体重G2を示す。
【0072】
図10(A)に示すように、免荷用具106である松葉杖を使わずに、被計測者が第2体重計200を乗った場合、第1体重計100で計測される非免荷体重G1と、第2体重計200で計測される免荷体重G2は、一致する。このため、免荷量R=0%となる。
【0073】
非免荷体重G1:77kg
免荷体重G2:77kg
免荷量R=(77-77)/77×100=0(%BW)
図10(B)に示すように、被計測者が、免荷用具106を使用して、自らの身を支えながら、第2体重計200に乗った場合、第1体重計100で計測される非免荷体重G1と、第2体重計200で計測される免荷体重G2は、異なる。試験データから算出される免荷量Rは以下の通りである。
【0074】
非免荷体重G1:77kg
免荷体重G2:54kg
免荷量R=(77-54)/77×100=30(%BW)
このように、被対象者が、自己の免荷用具106を使用した際の免荷量Rが容易に算出される。免荷量計測装置1を用いることで、被計測者の体重を計測する際に、免荷量Rも同時に計測することができる。
【0075】
(変化例3:右足/左足での免荷量)
被計量者が、免荷用具で右足のみまたは左足のみで自身を支え、免荷量を計測してもよい。例えば一方の足を骨折した患者の免荷状態を把握することに役立つ。
【0076】
メモリ機能を用いて、右足のみまたは左足のみで自身を支え、それぞれの免荷量を計測してもよい。右足/左足の状態の把握、さらに両足の免荷バランスを確認することができる。これを、
図11を用いて説明する。
【0077】
図11(A)に示すように、被計量者は両手で左右の手すり6を把持して自身を支えつつ、右足のみで第2計量台220上に立ち、計測を行い、免荷量R´を計測する。メモリ機能を用いて、免荷量R´を記憶させる。このとき、表示画面34に『右足』と、どちらの足での計測かを示してもよい。
【0078】
続いて、
図11(B)に示すように、被計量者は両手で左右の手すり6を把持して自身を支えつつ、今度は左足のみで第2計量台220上に立ち、計測を行い、免荷量R”を計測する。このとき、表示画面34に『左足』と、どちらの足の計測かを示してもよい。
【0079】
ついで、免荷量演算処理部39は、表示画面34に、免荷量R´および免荷量R”を表示させる。免荷量R´および免荷量R”により、被計量者は、左右の免荷バランスを確認できる。歩行トレーニングの際に、いずれかの足を重点的にトレーニングするべきかなどを把握でき、トレーニングの質を向上させることができる。
【0080】
(第2実施形態)
図12に第2実施形態にかかる免荷量計測装置1Aを示す。
図12は免荷量計測装置1Aの平面図である。同じ構成を持つものは、同じ符号を付して説明を省略する。
【0081】
図12に示すように、免荷量計測装置1Aは、一対の手すり6が設置された第1体重計100と、第1体重計100の計量台20の略中央に配置された第2体重計200Aを備える。第2体重計200Aは、第2計量台220の四隅に配置される第2荷重センサ242Aを備える。免荷量計測装置1Aは、第2荷重センサ242に代わり、第2荷重センサ242Aを用いる以外は、免荷量計測装置1と同等の構成となっている。
【0082】
ここで、第2計量台220の左前角に設けられた第21荷重センサ242a、第2計量台220の左後角に設けられた第22荷重センサ242b、第2計量台220の右前角に設けられた第23荷重センサ242c、第2計量台220の右後角に設けられた第24荷重センサ242dに関し、特に指定の無い場合は、これらをまとめて第2荷重センサ242Aと称する。
【0083】
第1体重計100は四つの第1荷重センサ42を備え、四つの第1荷重センサ42で計測される荷重の合計値が、第1計量台20にかかる荷重であり、非免荷体重G1が算出される。第2体重計200Aは四つの第2荷重センサ242Aを備え、四つの第2荷重センサ242Aで計測される荷重の合計値が、第2計量台220にかかる荷重であり、免荷体重G2が算出される。これにより免荷量Rが算出される。
【0084】
このように、第1荷重センサ42や第2荷重センサ242の配置や数は特に限定されないが、第2荷重センサ242Aのように、複数の荷重センサが第2計量台220に左右対称に配置されると、免荷用具を用いた被計測者の左右の免荷量を同時に計測することができる。これを、
図13を用いて説明する。
図13は免荷量計測装置1Aの正面図である。なお、
図13では重なり配置されているものは、後方に配置される一方をカッコで示す。
【0085】
被計測者は、左の手すり6を左手で把持し、右の手すり6を右手で把持し、第1計量台20の略中央に配置された第2体重計200Aに乗り、左足を第2計量台220の左領域に載せ、右足を第2計量台220の右領域に乗せ、第2計量台220の中心に位置するようにして、静止する。
【0086】
このとき、左方配置される第21荷重センサ242aおよび第22荷重センサ242bで計測される荷重の合計は、手すり6で免荷された状態の被計量者の左半身、詳しくは免荷された状態で被計量者の左足にかかる荷重である。これを左免荷体重LG2と称する。
【0087】
同様に、右方配置される第23荷重センサ242cおよび第24荷重センサ242dで計測される荷重の合計は、手すり6で免荷された状態の被計量者の右半身、詳しくは免荷された状態で被計量者の右足にかかる荷重である。これを右免荷体重RG2と称する。
【0088】
免荷量演算処理部39は、免荷状態の被計測者の左半身(左足)にかかる荷重である左免荷体重LG2、免荷状態の被計測者の右半身(右足)にかかる荷重である右免荷体重RG2、および第1体重計100で計測される被計測者の非免荷体重G1から、被計測者の左半身で免荷される荷重の体重に対する割合である左免荷量LR、および被計測者の右半身で免荷される荷重の体重に対する割合である右免荷量RRを算出し、演算結果を表示画面34に表示する。
【0089】
左免荷量LR=(G1-LG2)/G1×100(%BW:% Body Weight)
右免荷量RR=(G1-RG2)/G1×100(%BW:% Body Weight)
被計測者の左半身(左足)と右半身(右足)の免荷量が算出されて、表示画面34に表示される。被計測者は、被計測者の免荷バランスを容易に把握することができる。免荷量計測装置1Aでは、被計測者の左右の免荷状態をリアルタイムで把握することも可能である。被計量者は、左免荷量LRおよび右免荷量RRで左右の免荷バランスを数値として的確に確認して、免荷バランスの良い状態を体感として把握することができる。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施形態や変形例について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 :免荷量計測装置
6 :手すり(免荷用具)
20 :第1計量台
39 :免荷量演算処理部
42 :第1荷重センサ
100 :第1体重計
106 :免荷用具
200 :第2体重計
220 :第2計量台
242 :第2荷重センサ
R :免荷量
LR :左免荷量
RR :右免荷量