(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027169
(43)【公開日】2025-02-27
(54)【発明の名称】接着物品
(51)【国際特許分類】
B32B 7/12 20060101AFI20250219BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20250219BHJP
B29C 65/56 20060101ALI20250219BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
B32B7/12
B32B3/30
B29C65/56
B29C65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131742
(22)【出願日】2023-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100130041
【弁理士】
【氏名又は名称】成岡 郁子
(74)【代理人】
【識別番号】100160956
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 俊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177046
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 百合香
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】根本 勝理
(72)【発明者】
【氏名】ダウド ハータント タン
(72)【発明者】
【氏名】ブレット ピー. クリュル
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 敏宏
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK03E
4F100AK06C
4F100AK06E
4F100AK07C
4F100AK07E
4F100AK25A
4F100AK25D
4F100AK25E
4F100AK41B
4F100AK41E
4F100AK46B
4F100AK46E
4F100AK51A
4F100AK51D
4F100AK52A
4F100AK52D
4F100AK63C
4F100AK63E
4F100AN00A
4F100AN00D
4F100AT00C
4F100AT00E
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA16A
4F100CA16D
4F100CB05A
4F100CB05D
4F100DD01A
4F100DD01B
4F100DD01D
4F100DD01E
4F100DG04B
4F100DG04E
4F100DG15B
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4F100DJ01E
4F100EC11E
4F100EJ39A
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4F100EJ39E
4F100GB07
4F100JA04A
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4F100JK08E
4F100JL11
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4F100JL13D
4F211AA03
4F211AA15
4F211AA16
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4F211AA24
4F211AA25
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4F211AA33
4F211AA40
4F211AA45
4F211AD06
4F211AD16
4F211AF01
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH48
4F211AR06
4F211AR12
4F211TA03
4F211TC01
4F211TD11
4F211TN42
4F211TN73
(57)【要約】 (修正有)
【課題】壁に適用したときに良好な保持力を確保することができるとともに、壁から剥がしたときに、壁に対する粘着剤残り及び損傷を低減又は抑制しながら剥離することが可能な接着物品を提供する。
【解決手段】接着物品は、粘着剤層と、粘着剤層の上に配設された、熱可塑性樹脂を含む不織布層と、不織布層の上であって粘着剤層の反対側に配設された、熱可塑性樹脂を含むフィルム層とを備え、粘着剤層と不織布層とはエンボスされたパターンをなしている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と、
粘着剤層の上に配設された、熱可塑性樹脂を含む不織布層と、
不織布層の上であって粘着剤層の反対側に配設された、熱可塑性樹脂を含むフィルム層とを備え、
粘着剤層と不織布層とはエンボスされたパターンをなしている、
接着物品。
【請求項2】
不織布層の融点がフィルム層の融点より低い、請求項1に記載の接着物品。
【請求項3】
前記粘着剤層が第1の粘着剤層であり、
フィルム層の上であって不織布層の反対側に配設された、第2の粘着剤層を備え、
第1の粘着剤層に含まれる第1の粘着剤の組成と第2の粘着剤層に含まれる第2の粘着剤の組成とが異なる、請求項1または2に記載の接着物品。
【請求項4】
前記不織布層が第1の不織布層であり、
フィルム層と第2の粘着剤層との間に、第2の不織布層を備え、
第2の粘着剤層と第2の不織布層とはエンボスされたパターンをなしている、
請求項3に記載の接着物品。
【請求項5】
フィルム層の上であって不織布層の反対側に配設された、弾性変形可能なフォーム層を備える、請求項1に記載の接着物品。
【請求項6】
前記粘着剤層が第1の粘着剤層であり、
フォーム層の上であってフィルム層の反対側に配設された、第2の粘着剤層を備える、請求項5に記載の接着物品。
【請求項7】
前記不織布層が第1の不織布層であり、
前記フィルム層が第1のフィルム層であり、
フォーム層の上であって第1のフィルム層の反対側に配置された第2のフィルム層と、
第2のフィルム層の上であってフォーム層の反対側に配置された第2の不織布層とを備え、
第2のフィルム層と第2の不織布層とは熱可塑性樹脂を含み、かつ、フォーム層と第2の粘着剤層との間に配設され、
第2の粘着剤層と第2の不織布層とはエンボスされたパターンをなしている、
請求項6に記載の接着物品。
【請求項8】
フィルム層の上であって不織布層の反対側に配設された、メカニカルファスナー層を備える、請求項1に記載の接着物品。
【請求項9】
メカニカルファスナー層の引張弾性率(tensile modulus)が30MPa未満である、請求項8に記載の接着物品。
【請求項10】
前記粘着剤層が第1の粘着剤層であり、
前記メカニカルファスナー層が第1のメカニカルファスナー層であり、
第1のメカニカルファスナー層の上であってフィルム層の反対側に配設された、第2のメカニカルファスナー層と、
第2のメカニカルファスナー層の上であって第1のメカニカルファスナー層の反対側に配設された、第2の粘着剤層を備える、
請求項8または9に記載の接着物品。
【請求項11】
前記不織布層が第1の不織布層であり、
前記フィルム層が第1のフィルム層であり、
第2のメカニカルファスナー層の上に配置された第2のフィルム層と、
第2のフィルム層の上であって第2のメカニカルファスナー層の反対側に配置された第2の不織布層とを備え、
第2のフィルム層と第2の不織布層とは熱可塑性樹脂を含み、かつ、第2のメカニカルファスナー層と第2の粘着剤層との間に配設され、
第2の粘着剤層と第2の不織布層とはエンボスされたパターンをなしている、
請求項10に記載の接着物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、接着物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特表2020-531641号)には、「対象物を表面に取り付けるための接着性物品であって、第1の接着層と、前記第1の接着層に隣接し周辺部を画定するコアであって、コア材料を含み、第1主面及び第2主面を含む、コアと、前記コアの少なくとも前記第1主面上の凹部の第1の配列パターンであって、各凹部はコア材料を含む膜で終端する、第1の配列パターンと、底壁面にある接着性界面であって、前記第1の接着層と前記膜との間の接触を含む、接着性界面と、を含む、接着性物品。」が記載されている。
【0003】
特許文献2(国際公開第2022/224081号)には、「フッ素系剥離層又は非フッ素系及び非シリコーン系剥離層を有する第1の剥離ライナーと、変性シリコーンを含む第1の粘着剤層と、坪量が12g/m2以上である不織布層と、変性シリコーンを含む第2の粘着剤層と、フッ素系剥離層又は非フッ素系及び非シリコーン系剥離層を有する第2の剥離ライナーと、を順に含み、エンボスパターンを有し、前記第1の粘着剤層が壁紙に適用及び剥離可能である、壁紙用積層体。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-531641号
【特許文献2】国際公開第2022/224081号
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施態様にかかる接着物品は、粘着剤層と、粘着剤層の上に配設された、熱可塑性樹脂を含む不織布層と、不織布層の上であって粘着剤層の反対側に配設された、熱可塑性樹脂を含むフィルム層とを備え、粘着剤層と不織布層とはエンボスされたパターンをなしている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の第1実施形態にかかる例示的な接着物品の概略断面図である。
【
図2】本開示の第1実施形態にかかる例示的な接着物品において片面のみがエンボス加工された状態の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本開示の第1実施形態の第1変形例にかかる例示的な接着物品において両面がエンボス加工された状態の一例を示す概略断面図である。
【
図4】本開示の第1実施形態の第2変形例にかかる例示的な接着物品において両面がエンボス加工された状態の一例を示す概略断面図である。
【
図5】本開示にかかる接着物品の一例を壁から剥がすときの模式図である。
【
図6】本開示の第2実施形態にかかる例示的な接着物品の概略断面図である。
【
図7】本開示の第2実施形態の第1変形例にかかる例示的な接着物品の概略断面図である。
【
図8】本開示の第2実施形態の第2変形例にかかる例示的な接着物品の概略断面図である。
【
図9】本開示の第3実施形態にかかる例示的な接着物品の概略断面図である。
【
図10】本開示の第3実施形態の第1変形例にかかる例示的な接着物品の概略断面図である。
【
図11】本開示の第3実施形態の第2変形例にかかる例示的な接着物品の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
壁に適用したときに良好な保持力を確保することができるとともに、壁から剥がしたときに、壁に対する粘着剤残り及び損傷を低減又は抑制しながら剥離することが可能な壁紙用積層体の更なる改良が望まれていた。発明者らは、鋭意検討の結果、以下の知見を得た。
【0008】
壁(壁紙のほか、塗装面等の被着面を含む、以下同様)に適用したときに良好な保持力を確保することができるとともに、壁から剥がしたときに、壁に対する粘着剤残り及び損傷を低減又は抑制しながら剥離するために、壁側の接着層は、特定の構成(組成、構造等)を有することが望ましい。一方で、反対側(物品側)の接着層(壁に接着される物品側の接着層)は、そのような特定の構成が要求されない場合もある。良好な保持力を確保するために、被着面の性質に応じて適切な接着剤を選択するという観点から、両側の接着剤の種類を異ならせることも想定される。
【0009】
しかしながら、壁側の接着層と反対側の接着層とを異なる粘着剤組成物で構成すると、性能が低下する場合があった。検討の結果、かかる現象は、不織布層を熱可塑性樹脂を含む構成とし、両側の粘着剤の間に、熱可塑性樹脂を含むフィルム層を配置することで、軽減されることが分かった。壁側の接着層と反対側の接着層とを異なる粘着剤組成物で構成した場合の性能の低下は、両側の粘着剤が間にある不織布層を介して拡散ないし浸透し相互作用するためであることが示唆された。不織布層と片側の粘着剤層とを物理的に隔離し、壁側の粘着剤層に含まれる粘着剤と、反対側の粘着剤層に含まれる粘着剤との、不織布層を介した接触を抑制するバリア層を配置することで、2つの粘着剤層の組成の選択自由度が向上する。
【0010】
また、不織布層の上であって粘着剤層の反対側に熱可塑性樹脂を含むフィルム層を配置し、フィルム層の上に第2の粘着剤層を配置しない構成とした場合でも、2種類の粘着剤の相互作用が生じないため、性能の低下が軽減される。
【0011】
本開示によれば、壁面等の接着面に対して略垂直方向に積層体を引き剥がした場合でも、壁に対する粘着剤残り及び/または損傷を低減又は抑制でき、直感に従った使用が可能になるという利点ももたらされる。
【0012】
なお、以上は、あくまで本開示に至った経緯を説明するものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0013】
以下、本発明の代表的な実施形態を例示する目的で、必要に応じて図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0014】
本開示において「壁に適用及び剥離可能」とは、接着物品を第1の粘着剤層を介して壁(壁紙のほか、塗装面等の被着面を含む、以下同様)に貼り付けたときに、所望の保持力を発揮しつつ接着物品が壁から剥がれることなく保持される一方で、接着物品を壁から剥がしたときには、剥離後の壁に対し粘着剤残りがなく、壁の損傷を低減又は抑制しながら剥離できることを意図する。一実施形態において、「剥離可能」とは、特別な治具を用いることなく、適度な力(例えば成人女性の力)で壁を損傷せずに剥離し得ることを意図することができる。なお、本開示における「壁」には、特に明記されない限り、粘着剤残り及び損傷を低減又は抑制すべきあらゆる被着面が含まれる。
【0015】
本開示において「海島構造」とは、海部となる連続的なエンボス部の中に、島部となる不連続的な非エンボス部が配置された構造に加え、少なくとも一方向に直線的又は非直線的に連続したエンボス部(海部)を少なくとも2つ有し、このエンボス部間に非エンボス部(島部)が配置された構造を意図する。
【0016】
本開示において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0017】
本開示において「非フッ素系及び非シリコーン系」とは、非フッ素系であり、かつ非シリコーン系であることを意味する。すなわち、使用する材料が、フッ素系材料でなく、かつシリコーン系材料でもないことを意味する。
【0018】
本開示において「硬化」には、一般的に「架橋」と呼ばれる概念も包含することができる。
【0019】
本開示において「フィルム」には、「シート」と呼ばれる物品も包含される。
【0020】
本開示において「略」とは、製造誤差などによって生じるバラつきを含むことを意味し、±約20%程度の変動が許容されることを意図する。
【0021】
本開示において数値範囲「X~Y」(XおよびYは数値)は、原則として、端点であるXおよびYを含むが、クレームにおいて明示することで端点であるXおよびYを含まないとすることもできる。
【0022】
本開示において、例えば、「第1の粘着剤層の上に配設された不織布層」における「上」とは、不織布層が第1の粘着剤層に直接的(物理的に接触するように)に配置されること、又は、不織布層が他の層を介して第1の粘着剤層の上方に間接的(物理的に接触しないように)に配置されることを意味している。
【0023】
本開示において、任意の数値範囲の上限として記載されている値を下限値として採用してもよいし、任意の数値範囲の下限として記載されている値を上限値として採用してもよい。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態にかかる例示的な接着物品100の概略断面図である。
図1においてエンボスされたパターンの図示は省略されている。
【0025】
図1に示すように、接着物品100は、第1の粘着剤層10と、第1の粘着剤層10の上に配設された、熱可塑性樹脂を含む不織布層12と、不織布層12の上であって第1の粘着剤層10の反対側に配設された、熱可塑性樹脂を含むフィルム層14とを備えている。第1の粘着剤層10と不織布層12とはエンボスされたパターンをなしている。エンボス加工は、加熱および加圧によって行われ得る。
【0026】
接着物品100において、第1の粘着剤層10および不織布層12、不織布層12およびフィルム層14は、それぞれ互いに物理的に接触していてもよい。第1の粘着剤層10および不織布層12、不織布層12およびフィルム層14は、それぞれ平面視において同じ大きさおよび形状を有していてもよい。
【0027】
図2は、本開示の第1実施形態にかかる例示的な接着物品において片面のみがエンボス加工された状態の一例を示す概略断面図である。
図2に示す接着物品では、粘着剤層10と不織布層12とがエンボス加工により変形しているが、さらにフィルム層14が、第1の粘着剤層10および不織布層12と合わせて、片側のみのエンボス加工により変形していてもよい。
【0028】
不織布層12の融点がフィルム層14の融点より低くてもよい。具体的には例えば、不織布層12を構成する第1の熱可塑性樹脂の融点が、フィルム層14を構成する第2の熱可塑性樹脂の融点よりも低くてもよい。
【0029】
かかる構成では、例えば、エンボス加工において加熱される際、不織布層12がフィルム層14よりも早く、あるいはより大きな割合で融解して、粘着剤層10と不織布層12、および不織布層12とフィルム層14との接着がもたらされる。一方で、フィルム層14の溶融は軽減される。その結果、粘着剤層10と不織布層12、および不織布層12とフィルム層14との接着が改善される。
【0030】
フィルム層14は、インク受容層であってもよく、画像等の表示部であってもよい。フィルム層14の上にインク受容層が配置されてもよい。インク受容層はコーティング等により構成されうる。インク受容層としては、ポリビニルアルコール、疑ベーマイトのような構成とすることができる(参考:日本国特許第3213267号、同第2936631号)。フィルム層をインク受容層とする場合には、熱可塑性ポリウレタンのようなインク受容性の高い構成とすることができる(参考:日本国特許第6502265号)。
【0031】
フィルム層14の上に第2の粘着剤層を配置して、両面タイプの接着物品が構成されてもよい。
【0032】
本実施形態では、2種類の粘着剤の相互作用が生じない、または軽減されるため、接着物品の性能低下が軽減される。具体的には例えば、フィルム層14を挟んで第1の粘着剤層の反対側に第2の粘着剤層を配置しない態様では、基材(不織布層およびフィルム層)の片側にのみ粘着剤が配置されるため、2種類の粘着剤の相互作用が生じない。フィルム層14を挟んで第1の粘着剤層の反対側に第2の粘着剤層を配置する態様では、フィルム層がバリア層として機能することで、基材(不織布層およびフィルム層)の両側に配置された2種類の粘着剤の相互作用が軽減される。
【0033】
[粘着剤層]
いくつかの実施形態において、粘着剤層10は、壁紙に適用されることが意図される。粘着剤層10に使用される第1の粘着剤は特に限定されない。第1の粘着剤は、第2の粘着剤層16に使用される第2の粘着剤と、同一であっても、異なっていてもよい。第1の粘着剤層は壁紙に適用及び剥離可能であってもよい。
【0034】
粘着剤が異なっているとは、例えば、第1の粘着剤が、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを含み、第2の粘着剤が、シリコーンポリオキサミドブロックコポリマーを含むように、粘着剤の材料の種類が相違する構成の他に、第1の粘着剤及び第2の粘着剤がいずれもシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを含むが、粘着力が相違する構成も包含する。
【0035】
一実施形態においては、粘着面を間違えることによる製品不具合のリスクを防ぐため、第1の粘着剤と第2の粘着剤とを同じ材料としている。また、第1の粘着剤と第2の粘着剤とで異なる粘着剤を使用する場合、例えば、得られた積層体の実際の使用を考慮して、最初に第2の剥離ライナーを剥離し、第2の剥離ライナーを剥離することによって現れる第2の粘着剤を、フックやポスター等と接触する粘着面にすることができる。この場合、第2の粘着剤の剥離強度又は接着力を、第1の粘着剤(壁紙と接触する粘着面)の剥離強度又は接着力よりも低くなるように設計することができる。
【0036】
以下、第1の粘着剤および第2の粘着剤を「粘着剤」としてまとめて説明するが、第1の粘着剤および第2の粘着剤について相互に独立して適用される。また、例えば、壁紙との関係において特定される特性については、壁紙に適用されることが意図される第1の粘着剤について特に好適に当てはまりうる。
【0037】
いくつかの実施形態において、粘着剤は剥離可能である。
【0038】
いくつかの実施形態において、粘着剤は、例えば、1種以上の粘着性樹脂と組み合わせて、1種以上の熱可塑性エラストマーを用いて調製されうる。第1の粘着剤は、ゴム、シリコーン、又はアクリル系の接着剤のうちの少なくとも1つを含み得る。第1の粘着剤は、天然ゴムなどの粘着付与ゴム接着剤;オレフィン;シリコーンポリウレア又はシリコーンブロックコポリマーなどのシリコーン;ポリイソプレン、ポリブタジエン、及びスチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンコポリマー及びスチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、及び他の合成エラストマーなどの合成ゴム接着剤; 及び放射法、溶液法、懸濁法、又はエマルション法によって重合することのできるイソオクチルアクリレートとアクリル酸とのコポリマーなどの粘着付与のアクリル系接着剤又は非粘着付与のアクリル系接着剤;ポリウレタン;シリコーンブロックコポリマー;並びに上記のものの組み合わせを含み得る。
【0039】
特定の実施形態では、粘着剤は、無機繊維及び/又は有機繊維を含み得る繊維又は繊維スクリムで強化することができる。好適な繊維スクリムは、織布、不織布、又はニットウェブ又はスクリムを含んでもよい。例えば、スクリム内の繊維としては、ワイヤ、セラミック繊維、ガラス繊維(例えば、ファイバーグラス)、及び有機繊維(例えば、天然及び/又は合成有機繊維)を挙げることができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、粘着剤は粘着付与剤を含む。いくつかの例示的な粘着付与剤は、ポリテルペン、テルペンフェノール、ロジンエステル、及び/又はロジン酸のうちの少なくとも1つを含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、粘着剤は、バッキング上にコーティングすることのできる流動性粘着剤である。
【0042】
いくつかの実施形態では、粘着剤は、tanδピーク値の動的機械分析によって測定される、約-125℃~約20℃のTgを有する。いくつかの実施形態において、粘着剤は、約-70℃~約0℃のTgを有する。いくつかの実施形態において、粘着剤は、約-60℃~約-20℃のTgを有する。いくつかの実施形態において、粘着剤が、-80℃~20℃、-70℃~10℃、-60℃~0℃、-50℃~-10℃、-40℃~-20℃、-40℃~-30℃又は-30℃~-20℃のTgを有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、粘着剤の-20℃下における弾性率は、約2×105Pa~約7×107Pa、約5×105Pa~約3×107Pa、又は約1×106Pa~約2×107Paである。ここで、弾性率の測定は、粘弾性測定装置Discovery HR2(TA Instrument製、米国デラウェア州)を用い、パラレルプレートφ8mm、昇温速度3℃/分、測定温度範囲-65℃~150℃、周波数1Hz(6.28ラジアン/秒)という条件で測定した値である。
【0044】
いくつかの実施形態において、粘着剤の厚さは、約1μm~約1mmである。
【0045】
いくつかの実施形態において、粘着剤の接着特性は、0.1N/dm~25N/dmの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、粘着剤の接着特性は、0.5N/dm~10N/dmの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、粘着剤の接着特性は、1
N/dm~5N/dmの範囲であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、粘着剤は、ASTM試験方法D3654M-06によって測定されるように、例えば、1平方インチ当たり1~20ポンドの剪断強度をもたらすことができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、粘着剤は、変性シリコーンを含む。壁紙の表面は、種々の材料(例えば、一般に可塑剤を含有するポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂)で形成されているが、変性シリコーンを含む粘着剤はかかる種々の材料からなる壁紙に対して適用を可能とし、かつ、壁紙に対して粘着剤残りがなく、破れ等の損傷を呈することなく壁紙から剥離させることに特に有効である。
【0048】
本開示において「変性シリコーン」とは、シリコーンの主鎖に対し、官能基(例えばウレタン構造を有する官能基)が付与されているシリコーンを意図する。変性シリコーンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
その他、変性シリコーンおよびこれを含む粘着剤に関する更なる詳細は、例えば、国際公開第2022/224081号に見出すことができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0050】
本開示の粘着剤層は、本開示の効果を阻害しない範囲において、任意成分として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒、抗感染剤、充填剤、架橋剤、顔料、染料などを含むことができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、粘着剤は、本明細書に記載された構成に加えて、更に、損傷がない又は最小限である剥離を達成するように調整されてもよい。そのようにするための例示的な方法及び物品は、例えば、米国特許第6,835,452号、国際公開第2018/039584号、同第2017/136188号に記載されており、それぞれ全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
[不織布層]
本開示の不織布層は、壁紙への適用及び剥離可能性、並びに部材の保持性のバランスの観点から、約12g/m2以上の坪量を有してもよい。一実施態様において、不織布層の坪量は、約15g/m2~約260g/m2、約20g/m2~約230g/m2、約25g/m2~約200g/m2、約30g/m2~約150g/m2、約35g/m2~約130g/m2、約40g/m2~約130g/m2、約50g/m2~約130g/m2、約55g/m2~約130g/m2、約60g/m2~約130g/m2、又は約70g/m2~約130g/m2である。坪量は、10cm×10cmのサンプルの重量から計算される。
【0053】
いくつかの実施形態では、不織布層は不織布基材を含む。不織布基材は、不織布又は不織布ウェブを製造するための一般的に知られているプロセスのいずれかによって製造された不織布又は不織布ウェブであり得る。本開示において「不織布」とは、不規則に及び/又は一方向に、マット状に組み込まれているが、ニット布地のように識別可能な性質ではない、個々の繊維又はフィラメントの構造を有する布地を指す。
【0054】
不織布又は不織布ウェブは、メルトブローンプロセス、スパンボンドプロセス、スパンレースプロセス、結合カードウェブプロセス、エアレイイングプロセス、及びウェットレイイングプロセスなどの、様々なプロセスで形成することができる。いくつかの実施形態では、不織布層は、例えば、少なくとも1つのメルトブローン不織布の層及び少なくとも1つのスパンボンド不織布の層、又は不織布材料の任意の他の好適な組み合わせを有する、多層の不織布材料を含む。例えば、不織布層は、スパンボンド-メルトボンド-スパンボンド、スパンボンド-スパンボンド、又はスパンボンド-スパンボンド-スパンボンドの多層材料であってもよい。一実施形態においては、長繊維系のナイロン製スパンボンド不織布、ポリエステル系スパンボンド不織布、ポリオレフィン系スパンボンド不織布が用いられる。
【0055】
本開示において「メルトブローン」とは、ダイ中の複数のオリフィスを通じて溶融繊維形成材料を押出し、繊維を形成しながら、この繊維を空気又は他の減衰性流体と接触させて、繊維を繊維状に細くした後、細くなった繊維を捕集することによって、不織布繊維ウェブを形成するための方法を意味する。例示的なメルトブローンプロセスは、例えば、米国特許第6,607,624号(Berriganら)で教示されている。「メルトブローン繊維」とは、メルトブローン又はメルトブローンプロセスによって作製された繊維を意味する。
【0056】
本開示において「スパンボンディング」及び「スパンボンドプロセス」とは、紡糸口金の複数の微細な毛細管から連続又は半連続繊維として溶融繊維形成材料を押出し、その後、細くなった繊維を捕集することによって、不織布繊維ウェブを形成するための方法を意味する。例示的なスパンボンディングプロセスは、例えば、米国特許第3,802,817号(Matsukiら)で開示されている。「スパンボンド繊維」及び「スパンボンドされた繊維」は、スパンボンディング又はスパンボンドプロセスを用いて製造される繊維を意味する。そのような繊維は、概ね、連続繊維であり、凝集不織布繊維ウェブを形成するように充分に交絡又は点結合されるため、通常、そのような繊維の塊から1つの完全なスパンボンド繊維を取り出すことは不可能である。この繊維は、例えば、非従来型の形状を有する繊維を記述している、米国特許第5,277,976号(Hogleら)で記述されるものなどの形状を有してもよい。
【0057】
本開示において「カーディング」及び「カードプロセス」とは、コーミング又はカーディングユニットにより短繊維を加工することによって、不織布繊維ウェブを形成する方法であって、短繊維を分離又は分解し、縦方向に整列させて、概ね縦方向に配向された繊維不織布ウェブを形成する方法を意味する。例示的なカーディングプロセス及びカーディング機械は、例えば、米国特許第5,114,787号(Chaplinら)及び同第5,643,397号に教示されている。
【0058】
本開示において「結合カードウェブ」とは、カードプロセスによって形成された不織布繊維ウェブを指し、繊維の少なくとも一部分が、例えば、熱点結合、自己結合、熱風結合、超音波結合、ニードルパンチング、カレンダー加工、スプレー接着剤の適用などを含む方法によって一緒に結合される。不織布ウェブ及び不織布ウェブを含む積層体の製造及び特性に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第9,469,091号(Henkeら)に見出すことができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0059】
本開示において「エアレイイング」とは、約3~約52ミリメートル(mm)の典型的な長さを有する小繊維の束が分離されて給気に取り込まれた後、通常、真空供給の助けで形成スクリーンの上に堆積されるプロセスを指す。次いで、ランダムに配向された繊維を、例えば、熱点結合、自己結合、熱風結合、ニードルパンチング、カレンダー加工、スプレー接着剤などを使用して、互いに結合してもよい。例示的なエアレイイングプロセスは、例えば、米国特許第4,640,810号(Laursenら)において教示されている。
【0060】
本開示において「ウェットレイイング」とは、約3~約52ミリメートル(mm)の典型的な長さを有する小繊維の束が分離されて給液に取り込まれた後、通常、真空供給の助けで形成スクリーンの上に堆積されるプロセスを指す。水は、典型的には、利用可能な液体である。ランダムに堆積された繊維を、更に絡合(例えば、水流絡合)してもよく、又は例えば、熱点結合、自己結合、熱風結合、超音波結合、ニードルパンチ、カレンダー加工、スプレー接着剤の適用などを使用して、互いに結合してもよい。例示的なウェットレイイング及び結合プロセスは、例えば、米国特許第5,167,765号(Nielsenら)に教示されている。例示的な結合プロセスは、例えば、米国特許第9,139,940号(Berriganら)にも開示されている。
【0061】
有用な不織布層を提供する繊維材料は、天然繊維(例えば、木質繊維又は綿繊維)、合成繊維(例えば、熱可塑性繊維)、又は天然繊維と合成繊維との組み合わせで作製することができる。
【0062】
熱可塑性繊維を形成するための例示的材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、ブチレンコポリマー、並びにこれらのポリマーのコポリマー及びブレンド)、ポリエステル、及びポリアミドが挙げられる。
【0063】
不織布層を構成する不織布基材は、任意の好適な熱可塑性ポリマー材料製の繊維又はフィラメントから形成することができる。好適なポリマー材料としては、限定されるものではないが、ポリオレフィン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリビニルアセテート、ビニルアセテートのコポリマー、例えばポリエチレン-co-ポリビニルアルコール等、ポリホスファゼン、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、及びポリカーボネートが挙げられる。
【0064】
好適なポリオレフィンとしては、限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、エチレンとプロピレンとのコポリマー、αオレフィンコポリマー(例えば、エチレン又はプロピレンの、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセンとのコポリマー等)、ポリエチレン-co-1-ブテン及びポリエチレン-co-1-ブテン-co-1-ヘキセンが挙げられる。
【0065】
好適なフッ素化ポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンのコポリマー(例えばポリフッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン等)、及びクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(例えばポリエチレン-co-クロロトリフルオロエチレン等)が挙げられる。
【0066】
好適なポリアミドとしては、限定されるものではないが、ポリイミノアジポイルイミノヘキサメチレン、ポリイミノアジポイルイミノデカメチレン、及びポリカプロラクタムが挙げられる。好適なポリイミドとしては、ポリピロメリットイミドが挙げられる。
【0067】
好適なポリエーテルスルホンとしては、限定されるものではないが、ポリジフェニルエーテルスルホン及びポリジフェニルスルホン-co-ジフェニレンオキシドスルホンが挙げられる。
【0068】
好適なビニルアセテートのコポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリエチレン-co-ビニルアセテート、及びコポリマー中でアセテート基のうちの少なくともいくつかが加水分解され、ポリエチレン-co-ビニルアルコール等の各種のポリビニルアルコールを生成するようなコポリマーが挙げられる。
【0069】
繊維としては、例えば、ある熱可塑性材料のコア及び別の熱可塑性材料のシースを有する、多成分繊維であってもよい。シースは、コアよりも低い温度で溶融してもよく、繊維のマットがシース溶融物に曝露されると、繊維間に部分的にランダムな結合を提供する。異なる融点を有する単成分繊維の組み合わせもまた、この目的に有用であり得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示による不織布層に有用な不織布又は不織布ウェブは、少なくとも部分的に弾性である。弾性繊維を作製するためのポリマーの例としては、ABAブロックコポリマー、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー(例えば、メタロセンポリオレフィンエラストマー)、オレフィンブロックコポリマー、ポリアミドエラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、及びポリエステルエラストマーなどの、熱可塑性エラストマーが挙げられる。ABAブロックコポリマーエラストマーは、概ね、Aブロックがポリスチレン系であり、Bブロックが共役ジエン(例えば、低級アルキレンジエン)から調製される、エラストマーである。Aブロックは、主に置換(例えば、アルキル化)若しくは非置換スチレン系部分(例えば、ポリスチレン、ポリ(アルファメチルスチレン)、又はポリ(t-ブチルスチレン))から概ね形成され、1モル当たり約4,000~50,000グラムの数平均分子量を有する。Bブロックは概ね、置換又は非置換であり得る共役ジエン(例えば、イソプレン、1,3-ブタジエン、又はエチレン-ブチレンモノマー)から主に形成され、1モル当たり約5,000~500,000グラムの数平均分子量を有する。Aブロック及びBブロックは、例えば、線状、放射状、又は星形構成で構成されてもよい。ABAブロックコポリマーは、複数のAブロック及び/又はBブロックを含有してもよく、これらのブロックは同一の又は異なるモノマーから製造されてもよい。典型的なブロックコポリマーは、Aブロックが同一であっても異なっていてもよい線状ABAブロックコポリマーであるか、又は、Aブロックで主に停止する4つ以上のブロックを有するブロックコポリマーである。マルチブロックコポリマーは、例えば、より粘着性のあるエラストマーフィルムセグメントを形成する傾向がある、ある特定の割合のABジブロックコポリマーを含有してもよい。他の弾性的ポリマーを、ブロックコポリマーエラストマーとブレンドすることができ、様々な弾性的ポリマーを、様々な程度の弾性特性を有するようにブレンドしてもよい。数多くのタイプの熱可塑性エラストマーが市販されており、BASF(Florham Park,N.J.)から、「STYROFLEX(商標)」の商品名で市販されているもの、Kraton(商標) Polymers(Houston,Tex.)から「KRATON(商標)」の商品名で市販されているもの、Dow Chemical(Midland,Mich.)から「PELLETHANE(商標)」、「INFUSE(商標)」、「VERSIFY(商標)」、又は「NORDEL(商標)」の商品名で市販されているもの、DSM(Heerlen,Netherlands)から「ARNITEL(商標)」の商品名で市販されているもの、E.I.duPont de Nemours and Company(Wilmington,Del.)から「HYTREL(商標)」の商品名で市販されているもの、ExxonMobil(Irving,Tex.)から「VISTAMAXX(商標)」の商品名で市販されているもの、その他のものを挙げることができる。
【0071】
例えば、不織布ウェブは、カード、エアレイド、ウェットレイド、スパンレース、スパンボンド、電界紡糸、又はメルトスパン若しくはメルトブローン等のメルトブロー法、又はこれらの組み合わせによって製造することができる。不織布ウェブのいずれかは、熱可塑性ポリマーの種類、形状、及び/又は厚さが異なる単一のタイプの繊維又は2種以上の繊維から作られてもよく、単一繊維タイプ又は複数の繊維タイプのうちの少なくとも1つはそれぞれ、上記のような多成分繊維であってもよい。
【0072】
短繊維もまた、ウェブ中に存在し得る。短繊維の存在により、概ね、メルトブローンマイクロファイバーのみのウェブよりも、よりロフト(嵩)が高く、より低密度のウェブがもたらされる。よりロフトが高いウェブは、不織布層における界面又は不織布層自体のバルクで凝集力が低下し、1つ以上の粘着剤層からの分離がより容易になり得る。
【0073】
不織布層は、任意選択的に、1層以上のスクリムを更に含み得る。例えば、不織布層の主表面のいずれか又は両方が、それぞれ任意選択的に、スクリム層を更に含み得る。スクリムは、典型的には、繊維から製造される織布又は不織布の補強材であり、不織布物品に含まれ、強度をもたらす。好適なスクリム材料としては、限定されるものではないが、ナイロン、ポリエステル、繊維ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。スクリムの平均厚さは様々であってもよい。スクリムの層は、任意選択的に、不織布基材に結合されてもよい。各種の接着剤を用い、スクリムを不織布基材に結合することができる。あるいは、スクリムは、不織布に熱結合されてもよい。
【0074】
有用な不織布層は、特定の用途にとって望まれる任意の好適な有効繊維直径(EFD)を有し得る。本開示において「有効繊維直径」とは、1気圧及び室温での空気が、指定された厚さ及びの面速度(5.3cm/秒)でウェブサンプルを通され、対応する圧力低下が測定される、空気透過試験に基づく、繊維ウェブ内の繊維の見かけの直径である。測定された圧力低下に基づいて、有効繊維直径は、Davies, C.N., The Separation of Airborne Dust and Particulates, Institution of Mechanical Engineers, London Proceedings,1B(1952)に記載されているように計算される。いくつかの実施形態において、不織布基材の繊維は、約0.1マイクロメートル~約125マイクロメートル、約1マイクロメートル~約75マイクロメートル、約2マイクロメートル~約50マイクロメートル、又は約4マイクロメートル~約35マイクロメートル、約4マイクロメートル~約25マイクロメートル、約4マイクロメートル~約20マイクロメートル、約4マイクロメートル~約15マイクロメートル、約4マイクロメートル~約10マイクロメートル、約4マイクロメートル~約8マイクロメートル、又は約6マイクロメートルの有効繊維直径を有する。例えば、スパンボンド不織布層は、典型的には、約35マイクロメートル以下の有効繊維直径を有するが、エアレイド不織布層は、100マイクロメートル程度でより大きい有効繊維直径を有し得る。
【0075】
不織布層のロフト(嵩)は、ソリディティで評価することができる。ソリディティは、不織布繊維ウェブのバルク密度の測定値を、ウェブの固体部分を構成する材料の密度で割ることによって求める。ウェブのバルク密度は、最初にウェブの(例えば、10cm×10cmの切片の)重量を測定することによって決定することができる。ウェブの重量の測定値をウェブの面積で割ることでウェブの基本重量が得られ、g/m2単位で表される。ウェブの厚さは、直径135mmのウェブのディスクを(例えば、ダイカットによって)得て、直径100mmの230gの重りをウェブ上の中央に置いてウェブ厚さを測定することによって、測定することができる。ウェブのバルク密度は、ウェブの基本重量をウェブの厚さで割ることによって決定され、g/m3で表される。次に、不織布繊維ウェブのバルク密度を、ウェブの固体フィラメントを含む材料(例えば、ポリマー)の密度で割ることによって、ソリディティが決定される。バルクポリマーの密度は、供給業者が材料密度を特定していない場合、標準的手段によって測定することができる。
【0076】
ロフトは、100%からソリディティを引いた値として報告される(例えば、7%のソリディティは、93%のロフトに等しい)。より高いロフトはパターンエンボス加工される不織布層において特に有利である。というのは、熱エネルギー及び/又は圧力の適用中に、比較的容易に、粘着剤が空隙容積全体に浸潤して流れることができるからである。いくつかの実施形態において、エンボスパターン加工プロセスで高ロフト不織布層を結合して、必要な凹部のアレイを作製することができる。
【0077】
不織布層のソリディティは、約2.0%超~12.0%未満(すなわち、約98.0%未満~88.0%超のロフトの)とすることができる。いくつかの実施形態において、不織布層のソリディティは、約5.0%~約7.5%、約5.5%~約7.0%、又は約6%~約6.5%とすることができる。
【0078】
[フィルム層]
熱可塑性樹脂を含むフィルム層を形成するための例示的な熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン)、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリ(ビニルアセテート)、ビニルアセテートのコポリマー、例えばポリ(エチレン)-co-ポリ(ビニルアルコール)等、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、熱可塑性ポリウレタン、及びポリ(カーボネート)が挙げられる。好適なポリオレフィンとしては、限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレートを含むポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1-ブテン)、エチレンとプロピレンとのコポリマー、αオレフィンコポリマー(例えば、エチレン又はプロピレンの、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセンとのコポリマー等)、ポリ(エチレン-co-1-ブテン)及びポリ(エチレン-co-1-ブテン-co-1-ヘキセン)が挙げられる。好適なフッ素化ポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー(例えばポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)等)、及びクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(例えばポリ(エチレン-co-クロロトリフルオロエチレン)等)が挙げられる。好適なポリアミドとしては、限定されるものではないが、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)、及びポリカプロラクタムが挙げられる。好適なポリイミドとしては、ポリ(ピロメリットイミド)が挙げられる。好適なポリ(エーテルスルホン)としては、限定されるものではないが、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)及びポリ(ジフェニルスルホン-co-ジフェニレンオキシドスルホン)が挙げられる。好適なビニルアセテートのコポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)、及びコポリマー中でアセテート基のうちの少なくともいくつかが加水分解され、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)等の各種のポリ(ビニルアルコール)を生成するようなコポリマーが挙げられる。
【0079】
フィルム層の厚みは、1μm~1000μm、5μm~500μm、10μm~200μm、20μm~100μmとすることができる。
【0080】
フィルム層は、不織布層と融着された積層体として提供されてもよい。具体的には例えば、日本マタイ(日本国東京都台東区)から販売されている24012-395Tは、ポリオレフィンからなる中実の連続層(単層)とポリオレフィンからなる不織布(単層)の複合材(2層)であるところ、ポリオレフィンからなる中実の連続層(単層)を熱可塑性樹脂フィルム層とすることができ、ポリオレフィンからなる不織布(単層)を不織布層とすることができる。
【0081】
あるいは例えば、三井化学(日本国東京都中央区)から販売されているSFS15およびSFS30は、いずれもポリオレフィンスパンボンド不織布(単層)とポリプロピレンからなる中実の連続層(単層)とポリオレフィンスパンボンド不織布(単層)の複合材(3層)であるところ、ポリオレフィンスパンボンド不織布(単層)を不織布層とすることができ、ポリプロピレンからなる中実の連続層(単層)をフィルム層とすることができる。
【0082】
フィルム層を構成する熱可塑性樹脂の組成は、不織布層を構成する熱可塑性樹脂の組成と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0083】
[剥離ライナー]
図示はされていないが、接着物品は、粘着剤層の上に剥離ライナーを備えてもよい。なお、剥離ライナーは必須ではない。例えば、典型的な使用状態において接着物品は剥離ライナーを含まない。典型的には、製造および流通の段階において、接着物品は剥離ライナーを含む。
【0084】
剥離ライナーは、基材上にフッ素系剥離層又は非フッ素系及び非シリコーン系剥離層が配置されており、かかる剥離層を介して粘着剤層に適用されてもよい。かかる剥離層は、粘着剤層が変性シリコーンを含む場合、一般的なシリコーン系剥離層に比べて良好な剥離性能を呈することができる。剥離層として、非フッ素系及び非シリコーン系剥離層(「NSNF剥離層」とも言う。)を用いると、エンボス処理された積層体における剥離ライナーの浮きや剥がれ、又は製造コスト等の観点から、有利である。
【0085】
基材としては特に制限はなく、例えば、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート又はポリブチレンテレフタレート)、ポリオレフィン(例えばポリエチレン)のようなプラスチックのフィルム、又は紙(例えばクラフト紙)若しくはこのようなプラスチック材料で被覆された紙基材などを使用することができる。
【0086】
基材の厚さとしては特に制限はなく、例えば、約10マイクロメートル~約300マイクロメートルとすることができる。
【0087】
フッ素系剥離層としては特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルキル基含有ビニルエーテルポリマーなどのフルオロカーボン含有材料、フルオロシリコーン含有材料、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレンなどのフッ素樹脂をバインダー樹脂中に分散させたコーティング剤などのフッ素系剥離剤を少なくとも一種以上用いて形成することができる。このようなフッ素系剥離層として、例えば、米国特許第4,472,480号、同第4,980,443号、及び同第4,736,048号に記載されているフッ素系剥離層を好適に使用することができる。
【0088】
非フッ素系及び非シリコーン系剥離層としては特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル系剥離剤を少なくとも一種以上用いて形成することができる。
【0089】
上述した剥離剤の塗布量は、基材に応じて変化させることができる。例えば、剥離剤は、一般に乾燥厚さが、例えば、約0.01マイクロメートル~約10マイクロメートルとなるように塗布される。
【0090】
一実施形態では、剥離ライナーの剥離層に対する粘着剤層の剥離強度(エンボス処理なし)は、例えば、約0.01N/25m~約10N/25m、である。ここで、剥離強度は、JIS Z0237に基づき、300mm/分で180度方向に剥離ライナーを剥離した際の剥離強度である。また、一実施形態においては、剥離ライナーの剥離層に対する粘着剤層の剥離強度(エンボス処理あり)は、例えば、約0.01N/25m~約5.0N/25m、である。
【0091】
その他、剥離ライナーに関する更なる詳細は、例えば、国際公開第2022/224081号に見出すことができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0092】
[エンボス加工]
粘着剤層10は加熱および加圧によってエンボスされたパターン(エンボスパターン)を有している。
【0093】
壁紙は、典型的には、意匠性等を付与するために表面に凹凸があり、脆弱な発泡体で構成され、また、種々の材料(例えば、可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂)を用いて形成されている。不織布層を含む本開示の接着物品は、エンボスパターンを有しているため、このような壁紙に対し、良好な保持力を発揮させることができるとともに、積層体を壁紙から剥離するときに、粘着剤残りがなく、破れ等の損傷を低減又は抑制しながら壁紙から剥離し得るという、接着性及び剥離性に関してバランスの取れた構造体を提供することができる。なお、本開示にかかる接着物品の被着面は壁紙に限定されず、壁紙以外の被着面、特に脆弱な被着面に対しても、エンボスパターンが有用であることは言うまでもない。以下では脆弱な被着面の典型例として壁紙を対象に説明するが、同様の説明が他の被着面についても当てはまりうる。
【0094】
エンボスパターンの中でも、壁紙への適用及び剥離可能性、並びに部材の保持性のバランスの観点から、エンボス部が海部で、非エンボス部が島部である海島構造のエンボスパターンとしてもよい。
【0095】
非エンボス部の島部は、非連続的に形成されてもよく、或いは、ある方向(例えばx方向)に連続的に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、非エンボス部の島部の中に、非連続的にエンボス部が形成されていてもよい。
【0096】
非エンボス部の島部が、非連続的に形成されている場合、例えば、y方向のある島部の配列と、その隣に位置するy方向の島部の配列は、両配列の島部同士が非対称的になるように配置されてもよく、或いは、両配列の島部同士が対称的になるように配置されてもよい。
【0097】
接着物品を上方から視認したときの島部の形状は、略円形状、略波形状の他に、略多角形状(例えば、略三角形、略正方形、略長方形、略正五角形、略六角形、略正八角形、略台形、略菱形、略星形、略格子状)、略楕円形状、略直線形状(略ストライプ状)、とすることができ、或いはこれらの形状を組み合わせた形状であってもよい。
【0098】
図2は、本開示の第1実施形態にかかる例示的な接着物品において片面(粘着剤層側、壁紙側)のみをエンボス加工された状態の一例を示す概略断面図である。エンボス部およびその周辺は、加熱を伴うエンボス処理によって、不織布層と粘着剤層が熱溶着されている。
【0099】
ある島部とそれに隣接する島部における最短の間隔bと、このピッチ間隔bに対応する位置のエンボス最頂部の長さaのサイズは、同一であってもよく、或いは異なっていてもよい。エンボスロールの型離れ性の観点から、aとbは、a>bの式を満足してもよい。ここで、本開示において「ピッチ間隔」とは、島部の最底部から、それに隣接する島部の最底部までの距離を意図する。
【0100】
島部の頂部の形状は、
図2に示されるように、略平坦形状であってもよく、或いは、略凸形状又は略凹形状であってもよい。
【0101】
ピッチ間隔bは、全域において、同一であってもよく、或いは異なっていてもよい。ピッチ間隔bは、例えば、壁紙への適用及び剥離可能性、並びに部材の保持性のバランスの観点から、約0.01mm~約3.0mm、約0.05mm~約2.0mm、又は約0.1mm~約1.0mmであってもよい。
【0102】
エンボスの深さhは、積層体の厚さ方向の全域において、同一であってもよく、或いは異なっていてもよい。エンボスの深さhは、例えば、壁紙への適用及び剥離可能性、並びに部材の保持性のバランスの観点から、約0.01mm~約3.0mm、約0.05mm~約2.0mm、又は約0.1mm~約1.0mmとすることができる。ここで、エンボスの深さhとは、エンボス部の最下底部から非エンボス部の最頂部までの距離を意図する。
【0103】
本開示の接着物品は、本開示の効果を阻害しない範囲において、任意に、各層間(例えば粘着剤層と不織布層との間)に、印刷層、装飾層、隠蔽層などの他の層が配置されてもよい。他の層は全面に又は部分的に適用され得る。
【0104】
[製造方法]
本開示の接着物品の製造方法の一例を以下に示すが、製造方法はこの方法に限定されない。この方法で採用する、剥離ライナー、粘着剤層、不織布層、フィルム層は、上述したものを同様に使用することができる。
【0105】
粘着剤は、公知の任意の方法で不織布層上に配置することができる。例えば、粘着剤を、不織布層上に直接コーティングしてもよく、或いは、例えば、剥離ライナー上に粘着剤をコーティングして別個の層として形成した後に、不織布層および/またはフィルム層に積層してもよい。不織布の粘着剤の耐浸透性等の観点から、後者の方法を採用してもよい。
【0106】
粘着剤を不織布層、フィルム層又は剥離ライナーに適用する方法としては特に制限はなく、例えば、溶媒コーティング法、水性コーティング法、又はホットメルトコーティング法、例えば、ノッチバーコーティング、ナイフコーティング、ロールコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、ワイヤ巻きロッドコーティング、スロットオリフィスコーティング、スロットダイコーティング、押出コーティングなどを使用することができる。粘着剤を不織布層又は剥離ライナー適用した後に、必要に応じて、乾燥処理、又は硬化処理などの任意の工程を適用してもよい。
【0107】
剥離ライナー上に粘着剤をコーティングして別個の層とする方法としては、例えば、剥離ライナーの剥離層上に粘着剤をコーティングして粘着剤層を形成した後に、別個の剥離ライナーを剥離層を介して貼り合わせて、剥離ライナーと粘着剤層と剥離ライナーとを順に含む中間部材を得る方法;或いは、両面に剥離層を有する剥離ライナーの片方の剥離層上に粘着剤をコーティングして粘着剤層を形成しながらロール状に巻き取って、ロール体を得る方法を挙げることができる。前者の中間部材は、非連続的なバッチ式の製造方法に好適に使用することができ、後者のロール体は、連続的な製造方法に好適に使用することができる。
【0108】
この中間部材及びロール体はいずれも、最終的な接着物品の一部を構成することができる。つまり、例えば後述する変形例において、中間部材の2つの剥離ライナーのうちのいずれか一方が、第1の剥離ライナー又は第2の剥離ライナーを構成し、粘着剤層が、第1の粘着剤層又は第2の粘着剤層を構成することができ;ロール体の、剥離ライナーが、第1の剥離ライナー又は第2の剥離ライナーを構成し、粘着剤層が、第1の粘着剤層又は第2の粘着剤層を構成することができる。
【0109】
ここで、例えば後述する変形例において、中間部材に含まれる2つの剥離ライナー(すなわち、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナー)は、同一種類の剥離ライナーであっても、異なる種類の剥離ライナーであってよい。一実施形態においては、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーはともにフッ素系剥離層を有する剥離ライナーであり、又は第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーはともに非フッ素系及び非シリコーン系剥離層を有する剥離ライナーであり、また、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーを、それぞれ、フッ素系剥離層を有する剥離ライナー及び非フッ素系及び非シリコーン系剥離層を有する剥離ライナー、又は非フッ素系及び非シリコーン系剥離層を有する剥離ライナー及びフッ素系剥離層を有する剥離ライナーとすることもできる。なお、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーにおいて、それぞれ異なるフッ素系剥離層を有する剥離ライナー(又は非フッ素系及び非シリコーン系剥離層を有する剥離ライナー)を使用することも可能である。
【0110】
粘着剤を、不織布層およびフィルム層を含む積層体上に直接コーティングする場合には、不織布層およびフィルム層を含む積層体の両面に適用された粘着剤層上にさらに剥離ライナーを適用し、必要に応じてエンボス処理、切断処理などを適用することによって、接着物品を得ることができる。
【0111】
粘着剤層の厚さは、例えば、約1μm~約100μm、約5μm~約80μm、又は約10μm~約50μmとすることができる。ここで、粘着剤層の厚さは、走査型電子顕微鏡を使用して積層構成の厚さ方向断面を測定し、積層構成の粘着剤層における任意の少なくとも5箇所の厚さの平均値である。かかる厚さの測定方法は、上述した積層体を構成する各層(例えば基材、剥離層)の厚さに対しても同様に使用することができる。
【0112】
例えば後述する変形例において、上述のような構成の中間部材を使用する場合には、一方の剥離ライナーを取り除き、粘着剤層と剥離ライナーを、粘着剤層を介して不織布層およびフィルム層を含む積層体の両面に適用し、必要に応じてエンボス処理、切断処理などを適用することによって、接着物品を得ることができる。
【0113】
上述のような構成のロール体を使用する場合には、ロール体から剥離ライナー及び粘着剤層を巻き出し、粘着剤層を介して不織布層およびフィルム層を含む積層体の両面に適用し、必要に応じてエンボス処理、切断処理などを適用することによって、接着物品を得ることができる。
【0114】
不織布層とフィルム層との間は、具体的には例えば、熱融着、超音波溶着、接着剤、押し出しラミネート等を使用できる。このうち、熱可塑性樹脂をTダイから溶融して押し出し、不織布の上に直接圧着させる押し出しラミネート法は、接着剤や溶剤を使用することなく、不織布とフィルム層を効率よく固定できることから好適に使用される。
【0115】
エンボス処理としては特に制限はなく、例えば、エンボス部の所望の配列に対応する凹凸領域を有するパターン化された(例えば、刻まれた)少なくとも1つのエンボスロールに対して積層体を通過させて実施してもよく;或いは、エンボス部の所望の配列に対応する凹凸領域を有するパターン化された(例えば、刻まれた)少なくとも1つのエンボス型に積層体を配置し、プレス加工して実施してもよい。前者のエンボス処理方法をロータリーエンボス法と称し、後者のエンボス処理法を熱プレスエンボス法と称する場合がある。なかでも、生産性の観点から、ロータリーエンボス法を採用してもよい。ロータリーエンボス法を使用する場合には、中間部材又はロール体の剥離層は、上述した非フッ素系及び非シリコーン系剥離層を使用してもよい。かかる剥離層は、ロータリーエンボス法を用いて形成した接着物品において、製造後の剥離ライナーの意図しない剥がれ又は反り等の不具合を、フッ素系剥離層に比べて低減又は抑制することができる。
【0116】
エンボス処理の温度、圧力及び時間は、剥離ライナー、粘着剤層、不織布層及びフィルム層の種類又は厚さ、要するエンボスパターンのサイズ又は形状などに応じて適宜設定することができる。例えば、エンボス処理の温度としては、約70℃~約220℃、約80℃~約200℃、約90℃~約180℃、又は約100℃~約150℃とすることができる。エンボス処理の圧力としては、約50N/cm2~約1kN/cm2、約100N/cm2~約800N/cm2、約150N/cm2~約600N/cm2、約200N/cm2~約500N/cm2、又は約250N/cm2~約500N/cm2とすることができる。エンボス処理の時間としては、約0.5秒~10秒、約1秒~約5秒、約2秒~約3秒とすることができる。約本開示の接着物品は、このようなエンボス処理が適用されても良好な各種性能を発現させることができる。
【0117】
得られた接着物品は、必要に応じて切断処理が施されてもよい。切断処理として特に制限はなく、例えば、レーザーカット、ダイカット、スタンピング、クリンプ、又はこれらの組み合わせなどの公知の切断処理を採用することができる。
[第1変形例]
図3は、本開示の第1実施形態の第1変形例にかかる例示的な接着物品110において両面がエンボス加工された状態の一例を示す概略断面図である。
【0118】
図3に示すように、接着物品110は、第1実施形態にかかる例示的な接着物品100において、粘着剤層10を第1の粘着剤層とし、フィルム層14の主面であって第1の粘着剤層の反対側の主面の上に第2の粘着剤層16を配設したものであり、その他の点は同様である。同一の符号および名称を付された要素については、第1実施形態の記載を援用することとし、詳細な説明を省略する。
【0119】
接着物品110において、第1の粘着剤層10および不織布層12、不織布層12およびフィルム層14、フィルム層14および第2の粘着剤層16は、それぞれ互いに物理的に接触していてもよい。第1の粘着剤層10および不織布層12、不織布層12およびフィルム層14、フィルム層14および第2の粘着剤層16は、それぞれ平面視において同じ大きさおよび形状を有していてもよい。
【0120】
第2の粘着剤層16については、粘着剤層10に関連してした粘着剤層の説明が同様に当てはまるので、詳細な説明を省略する。なお、第2の粘着剤層16の構成は、第1の粘着剤層10と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0121】
図3に示す接着物品では、第1の粘着剤層10と不織布層12とが上方(図面の上方、以下同様)からのエンボス加工により下方(図面の下方、以下同様)へと変形し、フィルム層14と第2の粘着剤層16とが下方からのエンボス加工により上方へと変形しているが、変形の有無、変形の方向は特に限定されない。例えば、フィルム層14は変形していなくてもよいし、フィルム層14の一部が下方へと変形し、一部が上方へと変形していてもよい。特定の層が、上方および下方の両方に変形していてもよい。
【0122】
エンボス加工時等において不織布層およびフィルム層を構成する熱可塑性樹脂が溶融し、上下の層との間に良好な接着をもたらしうる。
エンボスパターンは、接着物品の片側(例えば、第1の粘着剤層10と第1の不織布層12)のみにあってもよく、両側(第1の粘着剤層10と第1の不織布層12、および、フィルム層14と第2の粘着剤層16)にあってもよい。壁紙への適用及び剥離可能性、並びに部材の保持性のバランスの観点を考慮して、エンボスパターンは両側にあってもよい。エンボスパターンが両側にある場合、両側において同一のパターンであってもよく、或いは、各々異なるパターンであってもよい。
【0123】
第2の粘着剤層16とフィルム層14とが加熱および加圧によってエンボスされたパターンをなす構成では、第2の粘着剤層側においても、良好な保持力を確保することができるとともに、被着面から剥がしたときに、粘着剤残り及び被着面に対する損傷を低減又は抑制しながら剥離することが可能となる。かかる構成において、第2の粘着剤層16に含まれる第2の粘着剤は、変性シリコーンを含んでいてもよい。
【0124】
第2の粘着剤層16とフィルム層14とが加熱および加圧によってエンボスされたパターンをなしていない構成では、第2の粘着剤層側を被着面から剥がしたときに、粘着剤残り及び被着面に対する損傷を低減又は抑制しながら剥離する必要性が低い場合に、より効率的に省資源で接着物品を製造することができる。かかる構成において、第2の粘着剤層16に含まれる第2の粘着剤は、変性シリコーンを含まなくてもよい。
【0125】
エンボスの間隔b(
図2参照)は、積層体の上下両側において同一であってもよく、或いは、各々異なってもよい。エンボスの深さh(
図2参照)は、積層体の上下両側において同一であってもよく、或いは、各々異なってもよい。
【0126】
第1の粘着剤層10に使用される第1の粘着剤は、第2の粘着剤層16に使用される第2の粘着剤と、同一であっても、異なっていてもよい。第1の粘着剤層は壁紙に適用及び剥離可能であってもよい。
【0127】
粘着剤が異なっているとは、例えば、第1の粘着剤が、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを含み、第2の粘着剤が、シリコーンポリオキサミドブロックコポリマーを含むように、粘着剤の材料の種類が相違する構成の他に、第1の粘着剤及び第2の粘着剤がいずれもシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを含むが、粘着力が相違する構成も包含する。
【0128】
一実施形態においては、粘着面を間違えることによる製品不具合のリスクを防ぐため、第1の粘着剤と第2の粘着剤とを同じ材料としている。また、第1の粘着剤と第2の粘着剤とで異なる粘着剤を使用する場合、例えば、得られた積層体の実際の使用を考慮して、最初に第2の剥離ライナーを剥離し、第2の剥離ライナーを剥離することによって現れる第2の粘着剤を、フックやポスター等と接触する粘着面にすることができる。この場合、第2の粘着剤の剥離強度又は接着力を、第1の粘着剤(壁紙と接触する粘着面)の剥離強度又は接着力よりも低くなるように設計することができる。
【0129】
第1実施形態における「粘着剤」についての説明は、第1の粘着剤および第2の粘着剤の両方に当てはまるが、それぞれの説明は、第1の粘着剤および第2の粘着剤について相互に独立して適用される。また、例えば、壁との関係において特定される特性については、壁に適用されることが意図される第1の粘着剤について特に好適に当てはまりうる。
【0130】
フィルム層14は、第1の粘着剤層10に含まれる第1の粘着剤と第2の粘着剤層16に含まれる第2の粘着剤との不織布層12を介した接触を防止するように構成されていてもよい。この場合には、第1の粘着剤と第2の粘着剤とが互いに異なる組成等を有していても、具体的には例えば、第1の粘着剤が変性シリコーンを含み、第2の粘着剤が変性シリコーンを含まなくても、第1の粘着剤と第2の粘着剤との相互作用による製品性能の低下を軽減できる。
【0131】
フィルム層14は、不織布層12と第2の粘着剤層16とを物理的に隔離するように構成されていてもよい。フィルム層14は2つの主面を有し、該2つの主面を繋ぐ空隙を有しないことで、不織布層12と第2の粘着剤層16とを物理的に隔離して、第1の粘着剤層10に含まれる第1の粘着剤と第2の粘着剤層16に含まれる第2の粘着剤との不織布層12を介した接触を防止してもよい。フィルム層14および第2の粘着剤層16は、それぞれ互いに物理的に接触していてもよい。
【0132】
第1の粘着剤と第2の粘着剤との不織布層12を介した接触を防止するという機能は、具体的には例えば、フィルム層14が第1の粘着剤層10と第2の粘着剤層16とを連絡させる空隙(貫通孔等)を有しないこと、フィルム層14が第1の粘着剤層10および第2の粘着剤層16の全面を覆う平面的広がりを有する連続層をなすこと等で実現されうる。
【0133】
一方または両方の粘着剤層の上に剥離ライナーを備えてもよい。第1の粘着剤層に物理的に接触する剥離ライナーを第1の剥離ライナーとし、第2の粘着剤層に物理的に接触する剥離ライナーを第2の剥離ライナーとすることができる。両方の粘着剤層の上に剥離ライナーを備える場合、両側の剥離ライナーは同一の構成(組成および構造)であっても、異なっていてもよい。
【0134】
本変形例における製造方法は第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
[第2変形例]
図4は、本開示の第1実施形態の第2変形例にかかる例示的な接着物品120において両面がエンボス加工された状態の一例を示す概略断面図である。
【0135】
図4に示すように、接着物品120は、第1実施形態の第1変形例にかかる例示的な接着物品110において、不織布層12を第1の不織布層とし、フィルム層14と第2の粘着剤層16との間に第2の不織布層15を配設したものであり、その他の点は同様である。同一の符号および名称を付された要素については、第1実施形態およびその第1変形例の記載を援用することとし、詳細な説明を省略する。
【0136】
接着物品120において、第1の粘着剤層10および第1の不織布層12、第1の不織布層12およびフィルム層14、フィルム層14および第2の不織布層15、第2の不織布層15および第2の粘着剤層16は、それぞれ互いに物理的に接触していてもよい。第1の粘着剤層10および第1の不織布層12、第1の不織布層12およびフィルム層14、フィルム層14および第2の不織布層15、第2の不織布層15および第2の粘着剤層16は、それぞれ平面視において同じ大きさおよび形状を有していてもよい。
【0137】
図4に示す接着物品では、第1の粘着剤層10と第1の不織布層12とが上方(図面の上方、以下同様)からのエンボス加工により下方(図面の下方、以下同様)へと変形し、第2の不織布層15と第2の粘着剤層16とが下方からのエンボス加工により上方へと変形しているが、変形の有無、変形の方向は特に限定されない。例えば、フィルム層14は変形していなくてもよいし、フィルム層14の一部が下方へと変形し、一部が上方へと変形していてもよい。特定の層が、上方および下方の両方に変形していてもよい。
【0138】
エンボス加工時等において不織布層およびフィルム層を構成する熱可塑性樹脂が溶融し、上下の層との間に良好な接着をもたらしうる。
エンボスパターンは、接着物品の片側(例えば、第1の粘着剤層10と第1の不織布層12)のみにあってもよく、両側(第1の粘着剤層10と第1の不織布層12、および、第2の不織布層15と第2の粘着剤層16)にあってもよい。壁紙への適用及び剥離可能性、並びに部材の保持性のバランスの観点を考慮して、エンボスパターンは両側にあってもよい。エンボスパターンが両側にある場合、両側において同一のパターンであってもよく、或いは、各々異なるパターンであってもよい。
【0139】
第2の粘着剤層16と第2の不織布層15とが加熱および加圧によってエンボスされたパターンをなす構成では、第2の粘着剤層側においても、良好な保持力を確保することができるとともに、被着面から剥がしたときに、粘着剤残り及び被着面に対する損傷を低減又は抑制しながら剥離することが可能となる。かかる構成において、第2の粘着剤層16に含まれる第2の粘着剤は、変性シリコーンを含んでいてもよい。
【0140】
第2の粘着剤層16と第2の不織布層15とが加熱および加圧によってエンボスされたパターンをなしていない構成では、第2の粘着剤層側を被着面から剥がしたときに、粘着剤残り及び被着面に対する損傷を低減又は抑制しながら剥離する必要性が低い場合に、より効率的に省資源で接着物品を製造することができる。かかる構成において、第2の粘着剤層16に含まれる第2の粘着剤は、変性シリコーンを含まなくてもよい。
【0141】
エンボスの間隔b(
図2参照)は、積層体の上下両側において同一であってもよく、或いは、各々異なってもよい。エンボスの深さh(
図2参照)は、積層体の上下両側において同一であってもよく、或いは、各々異なってもよい。
【0142】
第2の不織布層15の融点がフィルム層14の融点より低くてもよい。具体的には例えば、第2の不織布層15を構成する第3の熱可塑性樹脂の融点が、フィルム層14を構成する第2の熱可塑性樹脂の融点よりも低くてもよい。
【0143】
かかる構成では、例えば、エンボス加工において加熱される際、第2の不織布層15がフィルム層14よりも早く、あるいはより大きな割合で融解して、第2の粘着剤層16と第2の不織布層15、および第2の不織布層15とフィルム層14との接着がもたらされる。一方で、フィルム層14の溶融は軽減される。その結果、第2の粘着剤層16と第2の不織布層15、および第2の不織布層15とフィルム層14との接着が改善される。
【0144】
本変形例における製造方法は第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0145】
[使用方法]
本開示の接着物品は、様々な方法で使用することができる。いくつかの実施形態において、接着物品は、被着体(例えば、壁紙、及び壁紙に適用する物品を構成する部材)に、適用され、付着され、又は押し付けられる。このようにして、接着物品は被着体と接触する。剥離ライナーが存在する場合、剥離ライナーは、接着物品が被着体に適用され、付着され、又は押し付けられる前に、取り除かれる。いくつかの実施形態では、接着物品が被着体に適用され、付着され、又は押し付けられる前に、被着体の少なくとも一部分をイソプロピルアルコールで拭いてもよい。
【0146】
接着物品を被着体から取り外すために、接着物品の少なくとも一部分を、被着体から剥がしてもよい(例えば、被着体に対して90度方向に剥がす又は剥ぎ取る)。
【0147】
図1ないし
図2のように片面側にのみ粘着剤層を具備する構成では、例えば、フィルム層14をインク受容層とすることで、ポスター等とすることができる。かかるポスター等は、壁に適用及び剥離可能とすることができる。
【0148】
図3ないし
図4のように両面側に粘着剤層を具備する構成では、例えば、フック等の第2の粘着剤層により保持し、第1の粘着剤層を壁に接着することができる。かかる構成では、フック等を、壁に適用及び剥離可能とすることができる。
【0149】
図5は、本開示の一実施態様の接着物品2をフック部材1に適用した場合を例示し、かかるフック部材1を壁3から取り外すときの模式図を示している。
図5に示すように、例えば、フック部材1の湾曲したフック部をつかんでフック部材1を壁3から剥がそうとすると、非エンボス部に適用されている粘着剤層は、非エンボス部から剥がれて伸ばされながら順々に壁から剥がれていき、フック部材を壁から取り外すことができる。
【0150】
本開示の接着物品は、第1の粘着剤層を介して壁に対して適用される。粘着剤層は、種々の壁に対して適用及び剥離可能であってもよい。
【0151】
壁には壁紙が適用された壁が含まれる。壁紙の材料としては特に制限はなく、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂を挙げることができる。これらの材料は、可塑剤を含んでいてもよい。壁紙の材料は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂の発泡体上に、シリコーン樹脂等の防汚層、又はポリオレフィン樹脂若しくは(メタ)アクリレート樹脂の保護層が適用されてもよい。
【0152】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)又は高密度ポリエチレン(HDPE))、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の樹脂単体、炭素原子数が4個以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン(LLDPE))、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等のエチレン(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等の少なくとも一種が挙げられる。
【0153】
壁紙は、発泡体であってもよく、或いは非発泡体であってもよい。壁紙の表面は、エンボス処理などによる凹凸模様が付されていてもよい。本開示の接着物品の粘着剤層は、発泡体のような脆弱な壁紙、粘着剤が剥がれやすい凹凸模様を有する壁紙に対しても適用及び剥離可能であってもよい
本開示の接着物品は、接着物品を壁面に対し、例えば約90度方向に引っ張ったときに、壁を損傷することなく積層体を壁から剥がす又は剥ぎ取ることができ、被着体である壁に適用及び剥離可能となる。
【0154】
[保持力試験]
いくつかの実施形態において、本開示の接着物品は、後述する保持力試験において、約7,000分~約50,000分、約8,000分~約30,000分、約9,000分~約20,000分、又は約10,000分~約20,000分の保持力を呈する。保持力の上限値としては特に定めなくてもよい。
【0155】
[剥離強度試験]
いくつかの実施形態において、本開示の壁紙用積層体の壁紙に対する接着力は、90度剥離強度試験において、約1.0N/25mm~約10N/25mm、約1.3N/25mm~約9.5N/25mm、約1.5N/25mm~約9.0N/25mm、又は約1.5N/25mm~約8.0N/25mmでありうる。剥離強度の上限は特に定めなくてもよい。
【0156】
壁紙及びステンレスパネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、以下のようにして90度剥離強度試験を実施する:
(1)50mm×100mm×1.0mmのステンレス(SUS304BA)パネルの片面に両面テープ(ST-416、3M社製)を貼り付ける。両面テープの剥離紙を剥がした後、両面テープ上に壁紙を貼り付け、シワにならないように指でしっかりと押さえ、7kgのスチールローラーを用いて、壁紙の上から300mm/分の速度で1往復転がして試験基材を得る。
(2)室温(23±1℃、相対湿度50±5%)下、25mm×40mmの寸法を有する評価用積層体を一方の剥離ライナーを除去した後、試験基材における壁紙面に貼り付け、7kgのスチールローラーを用いて、300mm/分の速度で1往復転がし、圧着する。
(3)バッキング材(裏打ち材)として、30mm×100mm×0.21mmの寸法を有する上質紙(180gsm、エプソン社製MCSPA1R4)を、評価用積層体の他方の剥離ライナーを除去した後、試験サンプルの片面(評価用積層体の粘着剤層面)に重ねた後、7kgのスチールローラーを用いて、300mm/分の速度で1往復転がして試験サンプルを得る。
(4)試験サンプルを、室温(23±1℃、相対湿度50±5%)で2日間、養生する。
(5)ユニバーサル材料試験機(テンシロン、株式会社エー・アンド・デイ製(日本国東京都豊島区))を用い、300mm/分の速度で90度方向にバッキング材である上質紙を引っ張りながら、試験サンプルを剥離したときの接着力を測定する。
【0157】
(第2実施形態)
図6は、本開示の第2実施形態にかかる例示的な接着物品200の概略断面図である。
図6においてエンボスされたパターンの図示は省略されている。
【0158】
図6に示すように、接着物品200は、第1実施形態にかかる例示的な接着物品100において、フィルム層14の主面であって、不織布層12の反対側の主面の上に弾性変形可能なフォーム層23を追加したものであり、その他の点は同様である。粘着剤層20は粘着剤層10と、不織布層22は不織布層12と、フィルム層24はフィルム層14と同様の構成とすることができる。よって、これらの要素については、第1実施形態の記載を援用することとし、詳細な説明を省略する。
【0159】
接着物品200において、粘着剤層20および不織布層22、不織布層22およびフィルム層24、フィルム層24およびフォーム層23は、それぞれ互いに物理的に接触していてもよい。粘着剤層20および不織布層22、不織布層22およびフィルム層24、フィルム層24およびフォーム層23は、それぞれ平面視において同じ大きさおよび形状を有していてもよい。
【0160】
フォーム層23は、弾性変形可能である。フォーム層23は、画像等の表示部であってもよい。あるいはフォーム層23の上に第2の粘着剤層を配置して、両面タイプの接着物品が構成されてもよい。
【0161】
本実施形態でも、第1実施形態と同様、2種類の粘着剤の相互作用が生じない、または軽減されるため、接着物品の性能低下が軽減される。
【0162】
本実施形態では、粘着剤層とフォーム層とが好適に接合される。理論に拘束されるものではないが、熱可塑性樹脂を含むフィルム層および不織布層の少なくともいずれか一方が、エンボス加工時等の加熱処理により少なくとも部分的に溶融することで、接着が向上されると推察される。
【0163】
さらに本実施形態では、高速で引き剥がした場合の壁の損傷を軽減できる。理論に拘束されるものではないが、フォーム層が弾性変形することで応力が分散され、粘着面への負荷が均質化されることが、高速で引き剥がした場合の壁の損傷の軽減をもたらすと推察される。
【0164】
[フォーム層]
本開示のフォーム層は、任意の好適な厚さ、組成物、及び不透明度又は透明度を有する発泡体の形態であってよい。フォーム層は、単層の発泡体、又は多層の発泡体であってよい。
【0165】
いくつかの実施形態では、フォーム層は発泡体にフィルム層が適用された複合体であってもよい。例えば、発泡体に接合されたフィルム層を含む複合体は、例えば、フィルム及び発泡体の共押出成形、共成形、押出コーティング、接合剤による結合、加圧結合、加熱結合、及びこれらの組み合わせを含む任意の好適な手法を用いて形成することができる。
【0166】
フォーム層は、例えば、ポリオレフィン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、及び線状超低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、並びにポリブチレン)、ビニルコポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル及びポリ酢酸ビニル)、オレフィンコポリマー(例えば、エチレン/メチルアクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、及びエチレン/プロピレンコポリマー)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、ポリウレタン、並びにこれらの組み合わせ及び配合物のような高分子材料から調製され得る。代表的な配合物としては、例えば、ポリプロピレン/ポリエチレン配合物、ポリウレタン/ポリオレフィン配合物、ポリウレタン/ポリカーボネート配合物、及びポリウレタン/ポリエステル配合物を挙げることができる。他の好適な配合物としては、例えば、熱可塑性ポリマー、エラストマーポリマー、及びこれらの組み合わせの配合物を挙げることができる。好適な配合物としては、例えば、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリクロロプレン(すなわちネオプレン)、ニトリルゴム、ブチルゴム、多硫化ゴム、シス-1,4-ポリイソプレン、エチレン-プロピレンターポリマー(例えば、EPDMゴム)、シリコーンゴム、シリコーンポリウレアブロックコポリマー、ポリウレタンゴム、天然ゴム、(メタ)アクリレートゴム、熱可塑性ゴム(例えば、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロックコポリマー)、熱可塑性ポリオレフィンゴム材料、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0167】
有用なフォーム層は、典型的には柔軟性があり、例えば、フォーム層上に配置された第1の粘着剤層と壁紙表面との間の面接触の程度を増大させることができる。
【0168】
フォーム層は、多くの場合、柔軟性及び弾力性のような特性を最適化するように選択され得る。柔軟性があり弾力的な高分子発泡体は、凹凸を有する壁紙に壁紙用積層体を適用させる用途に適している。
【0169】
フォーム層は、例えば、壁紙への適用及び剥離可能性、並びに部材の保持性の観点から、約5倍超、約10倍~約50倍、又は約15倍~約40倍、又は約20倍~約35倍の発泡倍率を有してもよい。フォーム層の発泡倍率は、JIS K7222に準拠した方法で見かけ密度を測定し、その逆数を発泡倍率として求めることができる。
【0170】
フォーム層は、好適な任意の厚さを有することができる。好適なフォーム層は、多くの場合、100マイクロメートル~5.0mm、200マイクロメートル~4.0mm、300マイクロメートル~3.0mm、400マイクロメートル~2.0mm、500マイクロメートル~1.8mm、600マイクロメートル~1.5mm、又は700マイクロメートル~1.2mmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、フォーム層は多層構成であってもよく、フォーム層の各層は、密度、伸長率、引張り強度、及びこれらの組み合わせのような様々な特性に寄与し得る。
【0171】
有用なポリエチレン酢酸ビニルコポリマー発泡体は、セキスイ・アメリカ社の事業部であるボルテック(Voltek, Division of Sekisui America Corporation)(マサチューセッツ州ローレンス(Lawrence))から商品名ボルエクストラ(VOLEXTRA)(商標)及びボララ(VOLARA)(商標)シリーズとして入手可能である。
【0172】
フォーム層が発泡体にフィルム層が適用された複合体の形態の場合、かかるフォーム層は、例えば単層又は多層フィルム、多孔性フィルム、及びこれらの組み合わせを含む、多様な形態であり得る。フィルム層は1つ以上の充填材(例えば炭酸カルシウム)を含むことができる。フィルム層は、連続層又は不連続層であり得る。多層フィルムは、複合体フィルム、ラミネートフィルム及びこれらの組み合わせの形態で、一体的に互いに接合されていてもよい。多層フィルムは、例えば、共成形、共押出成形、押出コーティング、接合剤による結合、加圧結合、加熱結合、及びこれらの組み合わせを含むいずれかの好適な方法を用いて、調製することができる。
【0173】
フォーム層が少なくとも1つの発泡体及び少なくとも1つのフィルム層を含む実施形態では、フィルム層は、少なくとも2つの異なるアルケンモノマーから誘導されるポリ(アルキレン)コポリマーを含むことができる。ポリ(アルキレン)コポリマーは、1)エテン、プロペン、又はこれらの混合物から選択される第1のアルケンと、2)4~8個の炭素原子を有する1,2-アルケンから選択される第2のアルケンモノマーと、を含むアルケン混合物の反応生成物であり得る。例えば、第2のアルケンモノマーは、多くの場合、4、6、又は8個の炭素原子を有する。すなわち、アルケン混合物は、1)エテン、プロペン、又はこれらの混合物、及び2)ブテン、ヘキサン、オクタン、又はこれらの混合物を含む。これらのコポリマーは、メタロセン触媒を用いて調製され得る。これらのコポリマーの混合物又は組み合わせも使用できる。
【0174】
[その他]
本実施形態においても、接着物品は、粘着剤層の上に剥離ライナーを備えてもよい。剥離ライナーについては、第1実施形態と同様とすることができるので、詳細な説明を省略する。
【0175】
本実施形態における製造方法において、不織布層とフォーム層との間は、エンボス加工時の熱溶着(不織布層とフィルム層との部分的な溶融)により固定されうる。エンボス加工を含めた製造方法におけるその他の点、および使用方法は第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0176】
[第1変形例]
図7は、本開示の第2実施形態の第1変形例にかかる例示的な接着物品210の概略断面図である。
【0177】
図7に示すように、接着物品210は、第2実施形態にかかる例示的な接着物品200において、粘着剤層20を第1の粘着剤層とし、フォーム層23の主面であってフィルム層24の反対側の主面の上に第2の粘着剤層26を配設したものであり、その他の点は同様である。同一の符号および名称を付された要素については、第2実施形態の記載を援用することとし、詳細な説明を省略する。
【0178】
接着物品210において、第1の粘着剤層20および不織布層22、不織布層22およびフィルム層24、フィルム層24およびフォーム層23、フォーム層23および第2の粘着剤層26は、それぞれ互いに物理的に接触していてもよい。第1の粘着剤層20および不織布層22、不織布層22およびフィルム層24、フィルム層24およびフォーム層23、フォーム層23および第2の粘着剤層26は、それぞれ平面視において同じ大きさおよび形状を有していてもよい。
【0179】
第2の粘着剤層26については、第1実施形態において第2の粘着剤層16に関連してした粘着剤層の説明が同様に当てはまるので、詳細な説明を省略する。なお、第2の粘着剤層26の構成は、第1の粘着剤層20と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0180】
図7において、エンボスされたパターンの図示は省略されている。本変形例においても、第1実施形態において
図2および
図3を参照しつつ説明したように、片側のみがエンボス加工されていてもよいし、両側がエンボス加工されていてもよい。片側のみのエンボス加工および両面のエンボス加工の詳細については、第1実施形態およびその第1変形例と同様とすることができるので、詳細な説明を省略する。
【0181】
本変形例におけるその他の構成および製造方法、使用方法は第2実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0182】
[第2変形例]
図8は、本開示の第2実施形態の第2変形例にかかる例示的な接着物品220の概略断面図である。
【0183】
図8に示すように、接着物品220は、第2実施形態の第1変形例にかかる例示的な接着物品210において、不織布層22を第1の不織布層とし、フィルム層24を第1のフィルム層とし、フォーム層23と第2の粘着剤層26との間に第2のフィルム層25および第2の不織布層27を配設したものであり、その他の点は同様である。同一の符号および名称を付された要素については、第2実施形態およびその第1変形例の記載を援用することとし、詳細な説明を省略する。
【0184】
第2のフィルム層25は、フォーム層23の主面であって第1のフィルム層24の反対側の主面の上に配設される。第2の不織布層27は、第2のフィルム層25の主面であってフォーム層23の反対側の主面の上に配設される。第2の粘着剤層26は、第2の不織布層27の主面であって第2のフィルム層25の反対側の主面の上に配設される。
【0185】
接着物品220において、第1の粘着剤層20および第1の不織布層22、第1の不織布層22および第1のフィルム層24、第1のフィルム層14およびフォーム層23、フォーム層23および第2のフィルム層25、第2のフィルム層25および第2の不織布層27、第2の不織布層27および第2の粘着剤層26は、それぞれ互いに物理的に接触していてもよい。第1の粘着剤層20および第1の不織布層22、第1の不織布層22および第1のフィルム層24、第1のフィルム層14およびフォーム層23、フォーム層23および第2のフィルム層25、第2のフィルム層25および第2の不織布層27、第2の不織布層27および第2の粘着剤層26は、それぞれ平面視において同じ大きさおよび形状を有していてもよい。
【0186】
第2のフィルム層25については、第1実施形態においてフィルム層14に関連してしたフィルム層の説明が同様に当てはまるので、詳細な説明を省略する。第2の不織布層27については、第1実施形態において不織布層12に関連してした不織布層の説明が同様に当てはまるので、詳細な説明を省略する。
【0187】
第2の不織布層27の融点が第2のフィルム層25の融点より低くてもよい。具体的には例えば、第2の不織布層27を構成する第4の熱可塑性樹脂の融点が、第2のフィルム層25を構成する第3の熱可塑性樹脂の融点よりも低くてもよい。
【0188】
かかる構成では、例えば、エンボス加工において加熱される際、第2の不織布層27が第2のフィルム層25よりも早く、あるいはより大きな割合で融解して、第2の粘着剤層26と第2の不織布層27、および第2の不織布層27と第2のフィルム層25との接着がもたらされる。一方で、第2のフィルム層25の溶融は軽減される。その結果、第2の粘着剤層26と第2の不織布層27、および第2の不織布層27と第2のフィルム層25との接着が改善される。
【0189】
図8において、エンボスされたパターンの図示は省略されている。本変形例においても、第1実施形態において
図2および
図3を参照しつつ説明したように、片側のみがエンボス加工されていてもよいし、両側がエンボス加工されていてもよい。片側のみのエンボス加工および両面のエンボス加工の詳細については、第1実施形態およびその第1変形例と同様とすることができるので、詳細な説明を省略する。
【0190】
本変形例におけるその他の構成および製造方法、使用方法は第2実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0191】
(第3実施形態)
図9は、本開示の第3実施形態にかかる例示的な接着物品300の概略断面図である。
図9においてエンボスされたパターンの図示は省略されている。
【0192】
図9に示すように、接着物品300は、第1実施形態にかかる例示的な接着物品100において、フィルム層14の主面であって、不織布層12の反対側の主面の上にメカニカルファスナー層33を追加したものであり、その他の点は同様である。粘着剤層30は粘着剤層10と、不織布層32は不織布層12と、フィルム層34はフィルム層14と同様の構成とすることができる。よって、これらの要素については、第1実施形態の記載を援用することとし、詳細な説明を省略する。
【0193】
接着物品300において、粘着剤層30および不織布層32、不織布層32およびフィルム層34、フィルム層34およびメカニカルファスナー層33は、それぞれ互いに物理的に接触していてもよい。粘着剤層30および不織布層32、不織布層32およびフィルム層34、フィルム層34およびメカニカルファスナー層33は、それぞれ平面視において同じ大きさおよび形状を有していてもよい。
【0194】
本実施形態でも、第1実施形態と同様、2種類の粘着剤の相互作用が生じない、または軽減されるため、接着物品の性能低下が軽減される。
【0195】
さらに本実施形態では、メカニカルファスナー層を介して物品等を可逆的に取付および分離可能となる。
【0196】
メカニカルファスナー層33は、係合する他のメカニカルファスナー層を含まない単層として構成されてもよいし、互いに係合する一対のメカニカルファスナー層で構成されてもよい。単層(または互いに係合する一対)のメカニカルファスナー層の引張弾性率(tensile modulus)が30MPa未満であってもよい。引張弾性率は、JIS K7161に従い、引張速度50mm/分で測定される。単層(または互いに係合する一対)のメカニカルファスナー層の引張弾性率は、0.1MPa~40MPa、0.2MPa~35MPa、0.3MPa~30MPa、0.4MPa~25MPa等とすることができる。引張弾性率の下限は特に定めなくてもよい。
【0197】
かかる構成では、単層(または互いに係合する一対)のメカニカルファスナー層を被着面から取り外しやすくなる。
【0198】
[メカニカルファスナー層]
本開示におけるメカニカルファスナー層は、任意の公知ないし非公知の構成を採用することができる。
【0199】
具体的には例えば、フック材とフック材との組み合わせからなるデュアルフック式のメカニカルファスナーであってもよいし、フック材とループ材との組み合わせからなるフック・アンド・ループ式のメカニカルファスナーであってもよい。デュアルフック式のメカニカルファスナーの場合、メカニカルファスナー層33及びこれに係合する他のメカニカルファスナー層(例えば、後述する第2のメカニカルファスナー層35)の両方がフック材を備える。フック・アンド・ループ式のメカニカルファスナーの場合において、メカニカルファスナー層33がフック材を備える場合には他のメカニカルファスナー層がループ材を備えるし、メカニカルファスナー層33がループ材を備える場合には他のメカニカルファスナー層がフック材を備える。
【0200】
メカニカルファスナー層の全体が熱可塑性樹脂で構成されてもよい。好適な熱可塑性樹脂としては、限定されるものではないが、ポリオレフィン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリビニルアセテート、ビニルアセテートのコポリマー、例えばポリエチレン-co-ポリビニルアルコール等、ポリホスファゼン、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、及びポリカーボネートが挙げられる。
【0201】
メカニカルファスナー層は、基材の上にフック材ないしループ材が設けられた「ファスニングテープ」として構成されうる。
【0202】
基材に適当な材料としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン-ポリエチレンブロックコポリマー、ポリエステル、塩化ビニル、ポリアセテート、ポリアミド、木綿等を挙げることができる。これらの材料は、単独で使用してもよく、あるいは2種類もしくはそれ以上を組み合わせて使用してもよく、また、これらの材料は、シート又はフィルム状の成形体であってもよく、あるいは織布、不織布、編織布等の形態であってもよい。特に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン- ポリエチレン共重合体あるいはその混合物は、適度な柔軟性があり、低コストであるので、使い捨ておむつの用途に好適である。フック材にあわせて、それと同一もしくは類似のポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂の混合物からなる成形体から基材を構成するのが最も好適である。
【0203】
フック材の形成に適当な材料としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン-ポリエチレンブロックコポリマー、ポリエステル、塩化ビニル、ポリアセテート、ポリアミド、エラストマー等の樹脂材料を挙げることができる。特に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン- ポリエチレン共重合体、ポリエステル、エラストマーあるいはその混合物が本発明の実施に好適である。
【0204】
フック材は、通常、支持体上に多数個のフックが一体的に結合せしめられた構造を有している。フックは、支持体の上に秩序的に配列されていてもよく、無秩序に配列されていてもよい。ここで、支持体に対するフックの一体的結合は、いろいろな形態を包含することができ、例えば、支持体との同時成形による一体化、支持体に対する埋め込みあるいは植え付け、接着剤による接合などを挙げることができる。支持体との同時成形による一体化が最も好適である。フックの形状は、対をなすフック材のフックあるいはループ材のループに絡み合って所期の締結を可能とする限りに特に限定されないというものの、この技術分野において多用されているように、マッシュルーム形、かぎ形、ピン形あるいはそれに類する突起体の形状であることが好ましい。フック材は、例えば、特表平6-500486号公報、特表平8-508910号公報などに記載の方法によって製造することができる。
【0205】
フック材において、フックを指示する支持体の厚さは、0.04~0.5mm、あるいは0.04~0.13mmの範囲にあってもよい。フックの高さは、所望とするフック材の種類、支持体の厚さ及びその他のファクターに応じて広い範囲で変更することができる。フックの高さ(換言すると、ステムの高さと、もしもあれば、ステムの先端に形成されたヘッドの厚さの合計)は、通常、できる限りに小さくかつ均一であるように調整されていることが好ましい。フックの高さは、通常、その基部から測定して約0.1~1.3mmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは、約0.2~0.5mmの範囲である。
【0206】
フックは、通常、1cm2当たり約60~1,600フックの分布密度で支持体上に配列されていることが好ましく、さらに好ましくは、1cm2当たり約125~700フックの分布密度である。また、フックのステムは、支持体と隣接する部分(基部)の直径が約0.1~0.6mmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、約0.1~0.3mmの範囲である。フックのヘッドは、任意の形状及びサイズとすることができる。
【0207】
フック材を基材に取り付けて使用する場合、いろいろな固定手段を使用してフック材を取り付けることができる。また、このような固定によって達成される基材/フック材の結合強度は、本発明によるメカニカルファスナーの締結効果を保証するため、実使用時のフッ材とフック材又はループ材との結合強度よりも大であることが必要である。適当な固定手段としては、例えば、グルー、熱融着、超音波加熱等による接着、一体成形、縫製、ステープラーによる機械的固定などを挙げることができる。
【0208】
ループ材は、通常、基材と、その少なくとも片面に設けられたループとから構成される。ここで、ループとは、それがフック材との係合機能を有する限りにおいて特に限定されるものではなく、したがって、ループ体そのものであってもよく、さもなければ、織布、不織布などのループ保有材料であってもよい。必要ならば、これらのループを組み合わせて使用してもよく、あるいは積層体の形で使用してもよい。積層体は、例えば、上述のようなループをプラスチックフィルム等にラミネートすることによって形成することができる。また、ループ材は、適宜起毛、エンボス、印刷、染色等の加工がなされていてもよく、これらの加工品を特に使い捨ておむつやその他の衛生用品に使用した場合には、艶、てかりといった光沢をなくすことができ、審美的に心地よい外観を得ることができる。
【0209】
ループは、常法に従っていろいろな材料から構成することができるというものの、フック材のフックと効果的に絡み合うことのできる繊維材料から構成することが好ましい。繊維材料は、所望とするループの形状に応じて、例えば織布、不織布、編み物、その他の形で使用することができる。また、繊維の束がループ状となるように、フィルム上に繊維を部分的に接着したようなものも、ループとして有利に使用することができる。
【0210】
フック・アンド・ループ式のメカニカルファスナーにおいて、フック材は、ループ材に係止し、固定可能であり、必要により両者の係止を解くことも可能である。デュアルフック式のメカニカルファスナーにおいて、一方のフック材は、他方のフック材に係止し、固定可能であり、必要により両者の係止を解くことも可能である。
【0211】
対となる2つのメカニカルファスナー層は、その基面を垂直に配置した状態で、相手物体から基面を付着された一方の物体を支持するようにした基面と平行な方向に内部静的剪断強度を有する(例えば、感圧接着剤が接着可能な垂直面とともに成す最大静的剪断強度とほぼ同じ、またはこれを超える、その基面と平行な静的剪断強度を有することが好ましい)とともに、接合された物体を引っ張ることによって、これらの物体表面を損傷することなく1対のメカニカルファスナー層が分離できるその基面に対して略直角方向の内部動的引張強度(例えば、塗装焼成仕上げを施したセラミック材料または金属などの強い基材に物体を接着するのにテープ構造体を利用する場合は、約40ポンド/平方インチ以下、好ましくは約30ポンド/平方インチ以下の内部動的引張強度、または、壁紙などの比較的に弱い基材に物体を接着するのにテープ構造体を利用する場合は約8~10ポンド/平方インチという、材料に応じた内部動的引張強度)を有する。
【0212】
下記の任意の参照(その全てが本明細書に組込まれる)に記載された、任意のループ係合材料、装置、デバイス、製造方法、使用方法が、本明細書に記載された任意の実施形態に使用され得る:米国特許第8,777,919号、同第4,699,622号、同第4,894,060号、同第5,077,870号、同第5,312,387号、同第5,344,691号、同第5,399,219号、同第5,487,809号、同第5,537,722号、同第5,554,146号、同第5,705,013号、同第5,759,317号、同第5,851,205号、同第5,957,908号、同第5,985,081号、同第6,030,373号、同第6,051,094号、同第6,075,179号、同第6,190,758号、同第6,406,468号、同第6,544,245号、同第6,575,953号、同第7,032,278号、同第7,125,400号、同第7,361,246号、同第7,371,302号、同第7,517,572号、同第7,578,812号、同第7,658,813号、同第3,471,903号、同第4,120,718号、同第4,223,067号、同第4,216,257号、同第4,391,687号、同第4,322,875号、同第4,415,615号、同第4,454,183号、同第4,563,388号、同第3,353,663号、同第3,408,705号、同第4,977,003号、同第4,679,851号、同第4,819,309号、同第4,776,636号、同第5,308,428号、同第5,135,598号、同第4,910,062号、同第4,887,339号、同第4,985,488号、同第5,679,302号、同第4,894,060号、同第5,145,929号、同第5,908,695号、同第5,024,880号、同第5,852,855号、同第5,040,275号、同第5,149,573号,同第4,290,832号、同第5,453,319号、同第5,614,232号、同第5,691,027号、同第5,713,111号、同第5,671,512号、同第5,625,929号、同第5,671,511号、同第5,851,663号、同第5,654,487号、同第5,602,221号、同第5,598,610号、同第5,691,021号、同第7,879,441号、同第8,277,922号、同第6,470,540号、同第6,076,238号、同第6,592,800号、同第6,630,239号、同第6,588,074号、同第7,217,455号、同第7,703,179号、同第6,874,777号、同第7,140,774号、及び米国特許出願公開第2004/0010217号。
【0213】
[その他]
本実施形態においても、接着物品は、粘着剤層の上に剥離ライナーを備えてもよい。剥離ライナーについては、第1実施形態と同様とすることができるので、詳細な説明を省略する。
【0214】
本実施形態における製造方法において、不織布層とメカニカルファスナー層との間は、粘着剤、接着剤、粘着テープ、エンボス加工時の熱溶着(不織布層とフィルム層との部分的な溶融)等により固定されうる。エンボス加工を含めた製造方法におけるその他の点は第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0215】
本実施形態における使用方法において、メカニカルファスナー層33と、他のメカニカルファスナー層(図示せず)との間で着脱が可能である。よって、接着物品300を壁に取り付けた後、他のメカニカルファスナー層を備えたフックなどの被着物品を、他のメカニカルファスナー層を介してメカニカルファスナー層33に係合させ、被着物品を壁に固定することができる。このため、被着物品の位置合わせをより容易に行うことができる。また、必要に応じて被着物品を自由に壁と着脱でき、便利である。なお、メカニカルファスナー層33と他のメカニカルファスナー層とを係合させた状態で、壁ないし被着物品に接着してもよい。使用方法におけるその他の点は、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0216】
[第1変形例]
図10は、本開示の第3実施形態の第1変形例にかかる例示的な接着物品310の概略断面図である。
【0217】
図10に示すように、接着物品310は、第3実施形態にかかる例示的な接着物品300において、粘着剤層30を第1の粘着剤層とし、メカニカルファスナー層33を第1のメカニカルファスナー層とし、第1のメカニカルファスナー層の主面であってフィルム層34の反対側の主面の上に第2のメカニカルファスナー層35を配設し、第2のメカニカルファスナー層35の主面であって第1のメカニカルファスナー層33の反対側の主面の上に第2の粘着剤層36を配設したものであり、その他の点は同様である。同一の符号および名称を付された要素については、第2実施形態の記載を援用することとし、詳細な説明を省略する。
【0218】
接着物品310において、第1の粘着剤層30および不織布層32、不織布層32およびフィルム層34、フィルム層34および第1のメカニカルファスナー層33、第1のメカニカルファスナー層33および第2のメカニカルファスナー層35、第2のメカニカルファスナー層35および第2の粘着剤層36は、それぞれ互いに物理的に接触していてもよい。第1の粘着剤層30および不織布層32、不織布層32およびフィルム層34、フィルム層34および第1のメカニカルファスナー層33、第1のメカニカルファスナー層33および第2のメカニカルファスナー層35、第2のメカニカルファスナー層35および第2の粘着剤層36は、それぞれ平面視において同じ大きさおよび形状を有していてもよい。
【0219】
第2の粘着剤層36については、第1実施形態において第2の粘着剤層16に関連してした粘着剤層の説明が同様に当てはまるので、詳細な説明を省略する。なお、第2の粘着剤層36の構成は、第1の粘着剤層20と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0220】
第1のメカニカルファスナー層33および第2のメカニカルファスナー層35の少なくとも一方または両方の引張弾性率(tensile modulus)が30MPa未満であってもよい。引張弾性率は、JIS K7161に従い、引張速度50mm/分で測定される。第1のメカニカルファスナー層33および第2のメカニカルファスナー層35の少なくとも一方または両方のの引張弾性率は、0.1MPa~40MPa、0.2MPa~35MPa、0.3MPa~30MPa、0.4MPa~25MPa等とすることができる。引張弾性率の下限は特に定めなくてもよい。
【0221】
図10において、エンボスされたパターンの図示は省略されている。本変形例においても、第1実施形態において
図2および
図3を参照しつつ説明したように、片側のみがエンボス加工されていてもよいし、両側がエンボス加工されていてもよい。片側のみのエンボス加工および両面のエンボス加工の詳細については、第1実施形態およびその第1変形例と同様とすることができるので、詳細な説明を省略する。
【0222】
本変形例におけるその他の構成および製造方法、使用方法は第3実施形態において、他のメカニカルファスナー層を第2のメカニカルファスナー層35に置き換えた場合と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0223】
[第2変形例]
図11は、本開示の第3実施形態の第2変形例にかかる例示的な接着物品320の概略断面図である。
【0224】
図11に示すように、接着物品320は、第3実施形態の第1変形例にかかる例示的な接着物品310において、不織布層32を第1の不織布層とし、フィルム層24を第1のフィルム層とし、第2のメカニカルファスナー層35と第2の粘着剤層26との間に、いずれも熱可塑性樹脂を含む、第2のフィルム層37および第2の不織布層39を配設したものであり、その他の点は同様である。同一の符号および名称を付された要素については、第3実施形態およびその第1変形例の記載を援用することとし、詳細な説明を省略する。
【0225】
第2のフィルム層37は、第2のメカニカルファスナー層35の主面であって第1のメカニカルファスナー層33の反対側の主面の上に配設される。第2の不織布層39は、第2のフィルム層37の主面であって第2のメカニカルファスナー層35の反対側の主面の上に配設される。第2の粘着剤層36は、第2の不織布層39の主面であって第2のフィルム層37の反対側の主面の上に配設される。
【0226】
接着物品320において、第1の粘着剤層30および第1の不織布層32、第1の不織布層32および第1のフィルム層34、第1のフィルム層34および第1のメカニカルファスナー層33第1のメカニカルファスナー層33および第2のメカニカルファスナー層35、第2のメカニカルファスナー層35および第2のフィルム層37、第2のフィルム層37および第2の不織布層39、第2の不織布層39および第2の粘着剤層36は、それぞれ互いに物理的に接触していてもよい。第1の粘着剤層30および第1の不織布層32、第1の不織布層32および第1のフィルム層34、第1のフィルム層34および第1のメカニカルファスナー層33第1のメカニカルファスナー層33および第2のメカニカルファスナー層35、第2のメカニカルファスナー層35および第2のフィルム層37、第2のフィルム層37および第2の不織布層39、第2の不織布層39および第2の粘着剤層36は、それぞれ平面視において同じ大きさおよび形状を有していてもよい。
【0227】
第2のフィルム層37については、第1実施形態においてフィルム層14に関連してしたフィルム層の説明が同様に当てはまるので、詳細な説明を省略する。第2の不織布層39については、第1実施形態において不織布層12に関連してした不織布層の説明が同様に当てはまるので、詳細な説明を省略する。
【0228】
第2の不織布層39の融点が第2のフィルム層37の融点より低くてもよい。具体的には例えば、第2の不織布層39を構成する第4の熱可塑性樹脂の融点が、第2のフィルム層37を構成する第3の熱可塑性樹脂の融点よりも低くてもよい。
【0229】
かかる構成では、例えば、エンボス加工において加熱される際、第2の不織布層39が第2のフィルム層37よりも早く、あるいはより大きな割合で融解して、第2の粘着剤層36と第2の不織布層39、および第2の不織布層39と第2のフィルム層37との接着がもたらされる。一方で、第2のフィルム層37の溶融は軽減される。その結果、第2の粘着剤層36と第2の不織布層39、および第2の不織布層39と第2のフィルム層37との接着が改善される。
【0230】
図11において、エンボスされたパターンの図示は省略されている。本変形例においても、第1実施形態において
図2および
図3を参照しつつ説明したように、片側のみがエンボス加工されていてもよいし、両側がエンボス加工されていてもよい。片側のみのエンボス加工および両面のエンボス加工の詳細については、第1実施形態およびその第1変形例と同様とすることができるので、詳細な説明を省略する。
【0231】
本変形例におけるその他の構成および製造方法、使用方法は第3実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。なお、接着物品320は、第1の粘着剤層30と第1の不織布層32と第1のフィルム層34と第1のメカニカルファスナー層33とを備えた第1の接着物品と、第2の粘着剤層36と第2の不織布層39と第2のフィルム層37と第2のメカニカルファスナー層35とを備えた第2の接着物品との組み合わせからなる物品と考えることもできる。この場合において、第1の接着物品と第2の接着物品とは、それぞれ
図9に示した第2の実施形態の接着物品と同様の構成を有する。よって、第1の接着物品と第2の接着物品とを個別に、
図9に示す第2実施形態の接着物品と同様に製造することもできる。
【0232】
(その他の実施形態)
本開示において、第2の粘着剤を省略して、壁紙と反対側にインク受容層を配置してもよい。具体的には例えば、第2実施形態の接着物品200において、第2の粘着剤層16を省略し、熱可塑性樹脂フィルム層24の上にインク受容層が配置されてもよい。インク受容層は、コーティング等により構成されうる。インク受容層としては、ポリビニルアルコール、疑ベーマイトのような構成とすることができる(参考:日本国特許第3213267号、同第2936631号)。
【0233】
第2実施形態の接着物品200において、第2の粘着剤層16を省略し、熱可塑性樹脂フィルム層24をインク受容層として構成してもよい。この場合、熱可塑性樹脂フィルム層24としては、熱可塑性ポリウレタンのようなインク受容性の高い構成とすることができる(参考:日本国特許第6502265号)。
【0234】
その他、本開示の例示的な実施形態を以下に示す。
【0235】
[項目1]
粘着剤層と、
粘着剤層の上に配設された、熱可塑性樹脂を含む不織布層と、
不織布層の上であって粘着剤層の反対側に配設された、熱可塑性樹脂を含むフィルム層とを備え、
粘着剤層と不織布層とはエンボスされたパターンをなしている、
接着物品。
[項目2]
不織布層の融点がフィルム層の融点より低い、項目1に記載の接着物品。
[項目3]
前記粘着剤層が第1の粘着剤層であり、
フィルム層の上であって不織布層の反対側に配設された、第2の粘着剤層を備え、
第1の粘着剤層に含まれる第1の粘着剤の組成と第2の粘着剤層に含まれる第2の粘着剤の組成とが異なる、項目1または2に記載の接着物品。
[項目4]
前記不織布層が第1の不織布層であり、
フィルム層と第2の粘着剤層との間に、第2の不織布層を備え、
第2の粘着剤層と第2の不織布層とはエンボスされたパターンをなしている、
項目3に記載の接着物品。
[項目5]
フィルム層の上であって不織布層の反対側に配設された、弾性変形可能なフォーム層を備える、項目1に記載の接着物品。
[項目6]
前記粘着剤層が第1の粘着剤層であり、
フォーム層の上であってフィルム層の反対側に配設された、第2の粘着剤層を備える、項目5に記載の接着物品。
[項目7]
前記不織布層が第1の不織布層であり、
前記フィルム層が第1のフィルム層であり、
フォーム層の上であって第1のフィルム層の反対側に配置された第2のフィルム層と、
第2のフィルム層の上であってフォーム層の反対側に配置された第2の不織布層とを備え、
第2のフィルム層と第2の不織布層とは熱可塑性樹脂を含み、かつ、フォーム層と第2の粘着剤層との間に配設され、
第2の粘着剤層と第2の不織布層とはエンボスされたパターンをなしている、
項目6に記載の接着物品。
[項目8]
フィルム層の上であって不織布層の反対側に配設された、メカニカルファスナー層を備える、項目1に記載の接着物品。
[項目9]
メカニカルファスナー層の引張弾性率(tensile modulus)が30MPa未満である、項目8に記載の接着物品。
[項目10]
前記粘着剤層が第1の粘着剤層であり、
前記メカニカルファスナー層が第1のメカニカルファスナー層であり、
第1のメカニカルファスナー層の上であってフィルム層の反対側に配設された、第2のメカニカルファスナー層と、
第2のメカニカルファスナー層の上であって第1のメカニカルファスナー層の反対側に配設された、第2の粘着剤層を備える、
項目8または9に記載の接着物品。
[項目11]
前記不織布層が第1の不織布層であり、
前記フィルム層が第1のフィルム層であり、
第2のメカニカルファスナー層の上に配置された第2のフィルム層と、
第2のフィルム層の上であって第2のメカニカルファスナー層の反対側に配置された第2の不織布層とを備え、
第2のフィルム層と第2の不織布層とは熱可塑性樹脂を含み、かつ、第2のメカニカルファスナー層と第2の粘着剤層との間に配設され、
第2の粘着剤層と第2の不織布層とはエンボスされたパターンをなしている、
項目10に記載の接着物品。
【実施例0236】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施形態を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。数値は本質的に測定原理及び測定装置に起因する誤差を含む。数値は通常の丸め処理が行われた有効数字で示される。
[実験例1]
本実験では、壁紙に対する製品性能を評価した。
1.材料
<剥離ライナー>
STA(ODA):ステアリルアクリレート(オクタデシルアクリレート)、大阪有機化学工業(日本国大阪府大阪市)
ISA:イソステアリルアクリレート(イソオクタデシルアクリレート)、新中村化学工業(日本国和歌山県和歌山市)
AEBP:4-アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、3M(米国ミネソタ州セントポール)
EMBLET(商標)S-50:厚み50μmのPETフィルム、ユニチカ(日本国大阪府大阪市)
シリコーン剥離面を有する紙ライナー:厚み100μmのポリコートクラフト紙(クラフト紙の両側にポリエチレン樹脂をラミネートしたもの)の両面に、シリコーン樹脂等の剥離処理を施したもの。
<粘着剤>
ポリジシロキサンポリオキサミドエラストマー:3M(米国ミネソタ州セントポール)
XR37-B1795:シリコーン系粘着付与剤(MQ樹脂)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(日本国東京都港区)
KRATON(商標)D1184:ラジアルスチレン-ブタジエンブロックコポリマー(SBS)、KRATON Performance Polymers.(米国テキサス州ヒューストン)
SOLPRENE(商標)1205:スチレン-ブタジエンゴム、Dynasol Elastomers(米国テキサス州ヒューストン)
<基材>
ELEVES(商標)T0503WDO:厚みが約300μmである、ポリオレフィンスパンボンド不織布(単層)50g/m2、ユニチカ(日本国大阪府大阪市)
ELEVES(商標)T0303WDO:厚みが約170μmである、ポリオレフィンスパンボンド不織布(単層)30g/m2、ユニチカ(日本国大阪府大阪市)
24012-395T:ポリエチレンテレフタレートからなる中実の連続層(単層:厚み約20μm、融点255℃)とポリオレフィンからなる不織布(単層:厚み約150μm、融点103℃)の複合材(2層:35g/m2)、日本マタイ(日本国東京都台東区)
SYNTEX(商標)SFS30:ポリオレフィンスパンボンド不織布(単層:厚み約100μm、融点131℃)28g/m2とポリプロピレンからなる中実の連続層(単層:0.030mm厚、融点146~160℃)とポリオレフィンスパンボンド不織布(単層:厚み約100μm、融点131℃)28g/m2の複合材(3層)、三井化学(日本国東京都中央区)
SYNTEX(商標)SFS15:ポリオレフィンスパンボンド不織布(単層:厚み約180μm、融点131℃)28g/m2とポリプロピレンからなる中実の連続層(単層:0.015mm厚、融点146~160℃)とポリオレフィンスパンボンド不織布(単層:厚み約180μm、融点131℃)28g/m2の複合材(3層)、三井化学(日本国東京都中央区)
<壁紙>
表面粗さ(Ra:ISO25178)、展開面積比(Sdr:ISO25178)、可塑剤濃度(%)、表面成分、発泡密度(foam density)の観点で多様性を確保すべく、以下の壁紙を使用した。
【0237】
77-849:カタログ「Reform Selection 2014-2016」に記載の中級(mid-range)ビニル系壁紙、サンゲツ(日本国愛知県名古屋市)
77-824:カタログ「Reform Selection 2014-2016」に記載の中級(mid-range)ビニル系壁紙、サンゲツ(日本国愛知県名古屋市)
SP9943:カタログ「SP2015-2017」に記載の普及クラス(popular grade)ビニル系壁紙、サンゲツ(日本国愛知県名古屋市)
EB7112:カタログ「EB cloth 2016-2018」に記載のオレフィン系壁紙、サンゲツ(日本国愛知県名古屋市)
LL8864:カタログ「Light 2016-2019」に記載の表面コーティングされたビニル系壁紙、リリカラ(日本国東京都新宿区)
2.試験体の調製
2-1.剥離ライナー
STA、ISA、及びAEBPの配合割合が、50.0質量部、50.0質量部、及び0.2質量部になるように、これらのモノマーを混合した。このモノマー混合物を、モノマー濃度が50質量%となるように、酢酸エチル/n-ヘプタン(50質量%/50質量%)の混合溶媒で希釈した。さらに、開始剤としてV-601を、アルキル(メタ)アクリレートモノマー成分を基準にして0.20質量部の割合で添加し、系内を2分間窒素パージした。その後、65℃の恒温槽中で48時間反応を進行させ、粘性溶液の前駆体ポリマー1を得た。
【0238】
得られた前駆体ポリマー溶液をトルエン/メチルエチルケトン(MEK)(50質量%/50質量%)で1質量%に希釈した。得られた希釈液を、バーコーター(#04)を用いてPETフィルム(EMBLET(商標)S-50)上にコーティングした。次いで、溶媒を蒸発させ、約0.1マイクロメートルの厚さを有する剥離前駆体層を形成した。
【0239】
剥離前駆体層を有するPETフィルムに、窒素ガス雰囲気下で、紫外線照射装置(F300、中圧水銀ランプ(Hバルブ)、Heraeus(ドイツ連邦共和国ヘッセン州ハーナウ))を用いて紫外線をライン速度20m/分で1パス照射することにより剥離前駆体層を硬化して剥離ライナーを作製した。照射時に、EIT社製光量計UV POWER PUCK(登録商標)IIで測定した1パスあたりの紫外線光量は、350mJ/cm2(UVA 168mJ/cm2、UVB 158mJ/cm2、UVC 24mJ/cm2)であった。
2-2.粘着剤組成物
変性シリコーン系粘着剤:ポリジシロキサンポリオキサミドエラストマーは、米国特許第8,765,881号の実施例12の物を乾燥させたドライエラストマーを使用した。上記乾燥エラストマー120重量部、粘着樹脂(tackified resin)としてXR37-B1795:200重量部、酢酸エチル:280重量部を、900mLのガラス瓶に添加し、約25rpmに設定したローラーで少なくとも12時間振とうし、シリコーン系粘着剤組成物を得た。
【0240】
ゴム系粘着剤:エラストマー成分として85:15の比率のKRATON(商標) D1184とSOLPRENE(商標) 1205、及び100部の全エラストマーに基づいて35部の粘着付与剤成分を有する、感圧接着性組成物を調製した。成分の全てをトルエンと併せてガラスジャーに加え、固形分およそ30%の溶液を作った。ジャーを密閉し、コーティング前に、ジャーを約2~6rpmのローラー上に少なくとも24時間置くことにより、内容物を十分に混合し、SBSゴム系粘着剤組成物を得た。
【0241】
アクリル系粘着剤:モノマーとして、イソオクチルアクリレート及びアクリル酸及びメチルアクリルレート65:5:30の混合物(酢酸エチル及びトルエン中の合計モノマー含有分26%の溶液)を約100部(溶液質量基準)、硬化剤として1,1-イソフタロイルビス(2-メチルアジリジン)(トルエン中5%溶液)を1.1部(溶液質量基準)を有する感圧接着性組成物を調製した。
2-3.粘着剤組成物のコーティング
シリコーン系粘着剤のコーティング:第2-1項で作成した剥離ライナー上に、0.25~0.26mmのウェットギャップでコーティングし、約0.050~約0.065mmの厚さの粘着剤層を調製した。コーティングした粘着剤サンプルを、70℃のオーブンで10分間乾燥した。
【0242】
ゴム系粘着剤のコーティング:シリコーン剥離面を有する紙ライナー上に、乾燥後の粘着剤厚みが0.050mmとなるようにナイフコーティングした。コーティング後、3つのオーブン条件を有する長さ11メートルのオーブン(滞留時間合計4分)にウェブを通した。ゾーン1(2.75メートル)の温度は約57℃であり、ゾーン2(2.75メートル)の温度は約71℃であり、ゾーン3(5.5メートル)の温度は約82℃であった。
【0243】
アクリル系粘着剤のコーティング:シリコーン剥離面を有する紙ライナー上に、乾燥後の粘着剤厚みが0.050mmとなるようにナイフコーティングした。コーティング後、4つのオーブン条件を有する長さ53.8メートルのオーブン(滞留時間合計7分41秒)にウェブを通した。ゾーン1(15.2メートル)の温度は約75℃であり、ゾーン2(6メートル)の温度は約90℃であり、ゾーン3(16.3メートル)の温度は約80℃で、ゾーン4(16.3メートル)の温度は約90℃であった。
2-4.積層およびエンボス加工
剥離ライナー上にコーティングされた粘着剤を、粘着剤層が基材に面するように、基材の両面に配置して積層体サンプルを得た。基材として24012-395Tを用いた場合には、ポリオレフィンからなる不織布(単層)を壁紙側に、ポリオレフィンからなる中実の連続層(単層)を壁紙の反対側に配置した。得られた積層体サンプルを、115℃で1秒間、約0.3kN/cm
2の圧力で、である略六角形状にパターン化されたエンボス型(ピッチ:5.6mm、高さ:3.8mm、頂部の幅:0.5mm)を片側または両側に備える熱プレス機に通した後、25×30mmのサイズにダイカットして評価用積層体を得た。得られた積層体のエンボスパターンは、略六角形状の海島構造(エンボス部が海部で、非エンボス部が島部)であり、非エンボス部(島部)のピッチ間隔(
図2におけるピッチ間隔b)は約0.6~約0.7mmであり、エンボスの深さ(
図2におけるエンボス深さh)は約0.1mmであった。各評価用積層体の構成は、表2に示す通りである。
3.壁紙の分析
表面粗さ(Ra:ISO25178)および展開面積比(Sdr:ISO25178)は、広域三次元測定装置VR-5200(キーエンス:日本国大阪府大阪市)を用い、ISO25178に準拠して分析した。分析では、壁紙を装置のステージ上に適用し、24mm×19mmの領域を観察した。
【0244】
可塑剤濃度(%)は、GC-MS測定装置(7890A+5975C、Agilent、Technologies製)を用いて測定した。
【0245】
表面成分は、FT-IR測定装置(Nicolet 6700、Thermo製)を用いて同定した。
【0246】
壁紙の分析結果を以下の表に示す。表中、DEHPはフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)を意味する。DINPはフタル酸ジイソノニルを意味する。なお、EB7112とLL8864については、可塑剤濃度は検出されなかった。
【0247】
【表1】
4.保持力試験:壁紙に対する保持力
(1)50mm×100mm×1.0mmのステンレス(SUS304BA)パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り、片面に両面テープ(ST-416:3M、米国ミネソタ州セントポール)を貼り付けた。両面テープの剥離紙を剥がした後、両面テープの上に壁紙を貼り付けた。シワにならないように指でしっかりと壁紙を押しつけた。壁紙の表面は、イソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り乾燥させた。
(2)30mm×50mm×1.0mmのステンレス(SUS304BA)パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り、洗浄済みステンレスパネルを得た。評価用積層体をそれぞれ25mm×30mmにカットし、評価用積層体における一方の剥離ライナーを除去した後、積層体を洗浄済みステンレスパネルに貼り付け、指でしっかりと押し付けた。ここで、洗浄済みステンレスパネルにおける縦方向(長辺方向)の一端の略中央付近には、φ5mmの穴が設けられている。
(3)積層体の他方の剥離ライナーを除去し、上記(1)においてステンレスパネルに貼り付けられた壁紙に、φ5mmの穴が設けられている端部が下端となるように積層体を貼り付けた。
(4)約15kgの静荷重で5秒間積層体を押圧して試験パネルを得た。全ての試験パネルを室温(23±1℃、相対湿度50±5%)下で24時間養生した。
(5)24時間後、室温(23±1℃、相対湿度50±5%)下で225gの錘を試験パネルの下端にある穴に吊るし、各試験パネルの保持時間を記録した。
【0248】
表中において、例えば「>10080」と記載されている場合は、保持力が1週間(=10,080分)を超えることを意味し、「<1day」と記載されている場合には、保持力が1日(=1440分)未満であることを意味し、「N/D」と記載されている場合には、測定していないことを意味する。
5.ダメージフリーピール試験:壁紙の損傷及び粘着剤残りの確認
壁紙及びステンレスパネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、以下のようにしてダメージフリーピール試験を実施した:
(1)50mm×100mm×1.0mmの後面ステンレス(SUS304BA)パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り、片面に両面テープ(ST-416:3M、米国ミネソタ州セントポール)を貼り付けた。両面テープの剥離紙を剥がした後、両面テープの上に壁紙を貼り付けた。シワにならないように指でしっかりと壁紙を押しつけた。壁紙の表面は、イソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り乾燥させた。
(2)30mm×50mm×1.0mmの前面ステンレス(SUS304BA)パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取った。評価用積層体をそれぞれ25mm×30mmにカットし、評価用積層体における一方の剥離ライナーを除去した後、積層体を前面ステンレスパネルに貼り付け、指でしっかりと押し付けた。
(3)積層体の他方の剥離ライナーを剥がし、上記(1)において後面ステンレスパネルに貼り付けられた壁紙上に貼り付けた。約15kgの静荷重で5秒間押圧して試験パネルを得た。全ての試験パネルを室温(23±1℃、相対湿度50±5%)下で1週間養生した。
(5)養生した後、前面ステンレスパネルの一端を手で把持し、前面ステンレスパネルを壁面に対して略垂直方向に手で引き剥がした。壁紙と前面ステンレスパネル側の粘着剤との間で剥離が生じた場合には、壁紙の損傷、壁紙への粘着剤の残り、及び汚れの程度を目視で観察し、以下に示す各基準で評価した。前面ステンレスパネルと評価用積層体との間で剥離が生じた場合には、壁紙上に残った評価用積層体を壁紙から手で剥がし、上記と同様に評価した。
【0249】
壁紙の損傷の程度
0:壁紙に損傷は生じていなかった。
1:壁紙に部分的(数か所)に損傷が生じていた。
2:壁紙のより広範囲(~50%)に損傷が生じていた。
3:壁紙のほとんどの部分(50%超)に損傷が生じていた。
【0250】
粘着剤の残りの程度
0:壁紙に粘着剤の残りはなかった。
1:壁紙に部分的(数か所)に粘着剤が残っていた。
2:壁紙のより広範囲(~50%)に粘着剤が残っていた。
3:壁紙のほとんどの部分(50%超)に粘着剤が残っていた。
【0251】
汚れの程度
0:汚れは観察されなかった。
1:限られた領域において汚れがわずかに観察された。
2:全領域において汚れがわずかに観察された。
3:汚れが明らかに観察された。
6.エージング後ライナー剥離試験
両側の粘着剤同士が相互作用しているかどうかを確認するために、エージング後の剥離ライナーの剥離性を試験した。具体的には、評価用積層体を50℃、相対湿度80%で2週間エージングし、1日間室温で冷却した。評価用積層体の両側にある剥離ライナーの剥離性を、以下に示す各基準で評価した。
A:容易に剥離した。
B:粘着剤と剥離ライナーとの間が強固に接着していたものの、剥離は可能であった。
C:粘着剤と剥離ライナーとの間が強固に接着しており、剥離不可能であった。
【0252】
試験結果を以下の表2に示す。
【0253】
【表2】
7.考察
例1-9(比較例1:熱可塑性樹脂フィルム層なし)では、保持力が弱く、壁と壁側の粘着剤層との間で試験体が剥がれて落下した。例1-6(熱可塑性樹脂フィルム層あり)では、両側の粘着剤層の組成は同じであるが、良好な保持力を示した。例1-9と例1-6との比較から、例1-9ではシリコーン系の粘着剤とアクリル系の粘着剤とが、単層の不織布(ELEVES(商標)T503WDO)を介して相互作用した結果、保持力の低下を招いたと考えられる。
【0254】
例1-10(比較例2:熱可塑性樹脂フィルム層なし)では、エージング後に粘着剤層とライナーとの接着が強くなり、うまく剥離ができなかった。例1-3、1-5、1-7(熱可塑性樹脂フィルム層あり)では、両側の粘着剤層の組成は同じであるが、エージング後でもライナーとの剥離に問題は生じなかった。例1-10と例1-3、1-5、1-7との比較から、例1-10ではシリコーン系の粘着剤とSBSゴム系の粘着剤とが、単層の不織布(ELEVES(商標)T503WDO)を介して相互作用した結果、粘着剤層とライナーとの接着による剥離の困難性を招いたと考えられる。
【0255】
例1-11(比較例3:熱可塑性樹脂フィルム層なし)では、例1-10よりもさらに、粘着剤層とライナーとの接着が強く、剥離が困難であった。例1-11で用いられた基材(ELEVES(商標)T303WDO:170μm厚)は例1-10で用いられた基材(T503WDO:300μm厚)よりも薄いため、両側の粘着剤の相互作用がより強く生じ、粘着剤層とライナーとがより強く接着したと考えられる。
【0256】
単層の不織布層を介した両側の粘着剤間の相互作用がもたらす問題は、保持力の低下、ライナーとの接着等、一様ではないが、いずれの問題も、熱可塑性樹脂フィルムを両側の粘着剤の間に介在させることにより、軽減された。
[実験例2]
本実験では、塗装された壁に対する製品性能を評価した。
1.材料:実施例1と共通する材料については記載を省略する。
<塗料>
水性多用途カラー・ライトグリーン:水性シリコンアクリルエマルション樹脂塗料、アサヒペン(大阪市鶴見区)
2.試験体の調製:実施例1と同様とした。
3.壁紙の分析:塗装された壁を対象とするため、省略した。
4.保持力試験:塗装された壁に対する保持力
(1)300mm×150mm×1.0mmのシナベニヤ板の片面に、塗料を刷毛で均一に塗布し、室温で24時間乾燥させた。
(2)30mmx50mmx1.0mmのステンレス(SUS304BA)パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り、洗浄済みステンレスパネルを得た。評価用積層体をそれぞれ25mmx30mmにカットし、評価用積層体における一方の剥離ライナーを除去したのち、積層体を洗浄済ステンレスパネルに貼り付け、指でしっかりと押し付けた。ここで、洗浄済みステンレスパネルにおける縦方向(長辺方向)の一端の略中央付近には、φ5mmの穴が設けられている。
(3)積層体の他方の剥離ライナーを除去し、上記(1)においてシナベニヤ板に塗布された水性ペイント上に、φ5mmの穴が設けられている端部が下端になるように積層体を貼り付けた。
(4)5kgのスチールローラーを使って、積層体の上を1往復させ、ステンレスパネルと積層体、塗装板を圧着した。すべての試験パネルを室温(23±1℃、相対湿度50±5%)下で24時間養生した。
(5)24時間後、室温(23±1℃、相対湿度50±5%)下で225gの錘を試験パネルの下端にある穴に吊るし、各試験パネルの保持時間を記録した。
5.ダメージフリーピール試験:壁紙の損傷及び粘着剤残りの確認
壁紙及びステンレスパネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、以下のようにしてダメージフリーピール試験を実施した:
(1)300mm×150mm×1.0mmのシナベニヤ板の片面に、塗料を刷毛で均一に塗布し、室温で24時間乾燥させた。
(2)30mm×50mm×1.0mmのステンレス(SUS304BA)パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取った。評価用積層体をそれぞれ25mm×30mmにカットし、評価用積層体における一方の剥離ライナーを除去した後、積層体を洗浄済みステンレスパネルに貼り付け、指でしっかりと押し付けた。ここで、洗浄済みステンレスパネルにおける縦方向(長辺方向)の一端の略中央付近には、φ5mmの穴が設けられている。
(3)積層体の他方の剥離ライナーを剥がし、上記(1)で調製されたシナベニヤ板の塗装面上に、φ5mmの穴が設けられている端部が下端になるように積層体を貼り付けた。
(4)5kgのスチールローラーを使って、積層体の上を1往復させ、ステンレスパネルと積層体、塗装板を圧着した。すべての試験パネルを室温(23±1℃、相対湿度50±5%)下で1週間養生した。
(5)養生した後、前面ステンレスパネルの一端を手で把持し、前面ステンレスパネルを壁面に対して略垂直方向に手で引き剥がした 。壁紙と前面ステンレスパネル側の粘着剤との間で剥離が生じた場合には、壁紙の損傷、壁紙への粘着剤の残り、及び汚れの程度を目視で観察し、以下に示す各基準で評価した。前面ステンレスパネルと評価用積層体との間で剥離が生じた場合には、壁紙上に残った評価用積層体を壁紙から手で剥がし、上記と同様に評価した。
【0257】
壁紙の損傷の程度、粘着剤の残りの程度、汚れの程度の評価基準は、実施例1と同様とした。
6.エージング後ライナー剥離試験
両側の粘着剤同士が相互作用しているかどうかを確認するために、エージング後の剥離ライナーの剥離性を試験した。具体的には、評価用積層体を50℃、相対湿度80%で2週間エージングし、1日間室温で冷却した。評価用積層体の両側にある剥離ライナーの剥離性を、実施例1と同様の基準を用いて評価した。
【0258】
試験結果を以下の表3に示す。
【0259】
【表3】
7.考察
SBSゴム系の粘着剤、アクリル系の粘着剤等、シリコーン系以外の粘着剤を壁側に用いた場合でも、塗装された壁面に対して良好な保持力がもたらされ、かつ、剥離後の壁の損傷や粘着剤残りも好適に抑制された。両側の粘着剤の組成が異なる場合でも、保持力およびエージング後のライナー剥離に問題は生じなかった。
[実験例3]
本実験では、フォーム層を追加した態様につき、壁紙に対する製品性能を評価した。
1.材料:実施例1と共通する材料については記載を省略する。
<基材>
Reemay(登録商標)2024:ポリエステルスパンボンド不織布(単層:厚み約300μm)71g/m
2、ミッドウェストフィルトレーション(米国オハイオ州シンシナティ)
T.U.X(商標)HC-25:0.025mm厚のLLDPEフィルム(単層)、三井化学東セロ(日本国東京都千代田区)
Volara(登録商標)XL-H 1501:1.0mm厚のポリエチレン製フォーム層、発泡倍率15倍、積水化学工業(日本国大阪府大阪市)
Volara(登録商標)XL-H 1502:2.0mm厚のポリエチレン製フォーム層、発泡倍率15倍、積水化学工業(日本国大阪府大阪市)
Volara(登録商標)XL-H 030006:0.06mm厚のポリエチレン製フォーム層、発泡倍率3倍、積水化学工業(日本国大阪府大阪市)
Volara(登録商標)XL-H 0180004:0.04mm厚のポリエチレン製フォーム層、発泡倍率1.8倍、積水化学工業(日本国大阪府大阪市)
Volara(登録商標)XL-H 08004:0.4mm厚のポリエチレン製フォーム層、発泡倍率8倍、積水化学工業(日本国大阪府大阪市)
Volara(登録商標)XL-H 08005:0.5mm厚のポリプロピレン製フォーム層、発泡倍率15倍、積水化学工業(日本国大阪府大阪市)
Volara(登録商標)XL-H 05003:0.3mm厚のポリプロピレン製フォーム層、発泡倍率5倍、積水化学工業(日本国大阪府大阪市)
Y-4300K-08:3M(商標)VHB(商標)アクリルフォーム構造用接合テープ、0.8mm厚、3M(米国ミネソタ州セントポール)
2.試験体の調製
2-1.剥離ライナー
実施例1と同様の方法で、剥離ライナーを得た。
2-2.粘着剤組成物
実施例1と同様の方法で、粘着剤組成物を得た。
2-3.粘着剤組成物のコーティング
実施例1と同様の方法で、剥離ライナー上に粘着剤組成物をコーティングした。
2-4.積層およびエンボス加工
剥離ライナー上にコーティングされた粘着剤を、粘着剤層が基材に面するように、基材の両面に配置して積層体サンプルを得た。基材が24012-395Tを含む場合には、ポリオレフィンからなる不織布(単層)を粘着剤層側に、ポリオレフィンからなる中実の連続層(単層)をフォーム層側に配置した。得られた積層体サンプルを、130℃で1秒間、約0.3kN/cm
2の圧力で、実施例1に記載のエンボス型を片側または両側に備える熱プレス機に通した後、30×40mmのサイズにダイカットして評価用積層体を得た。フォーム層とその両側の基材層とは、熱プレスにより接着した(例3-8、粘着剤層とフォーム層とが接着しなかった)。各評価用積層体の構成は、表4、表5に示す通りである。
3.保持力試験:壁紙に対する保持力
評価用積層体の大きさを30mm×40mmとし、試験パネルの下端にある穴に吊るした錘を750gとした以外は、実施例1と同様にして、保持力試験を行った。なお、例3-18についてはY-4300K-08のフォーム層自体が両面において粘着性を有するため、フォーム層の上に直接試験パネルを貼り合わせ、錘を取り付けた。
4.ダメージフリーピール試験:壁紙の損傷及び粘着剤残りの確認
評価用積層体の大きさを30mm×40mmとした以外は、実施例1と同様にして、ダメージフリーピール試験を行った。
【0260】
試験結果を以下の表4、5に示す。
【0261】
【表4】
5.考察
例3-8(比較例4:不織布層あり、熱可塑性樹脂フィルム層なし)では、粘着剤層のついた不織布層とフォーム層との間が接着しなかった。例3-1ないし3-7(不織布層あり、熱可塑性樹脂フィルム層あり)では、両側の粘着剤層の組成は同じであるが、良好な保持力を示した。例3-8と例3-1ないし3-7との比較から、不織布層とフォーム層との間に熱可塑性樹脂フィルム層が介在することで、不織布層とフォーム層との良好な接着がもたらされたと考えられる。
【0262】
例3-9(比較例5:不織布層なし、熱可塑性樹脂フィルム層あり)では、壁紙からの剥離時における壁の損傷の程度が大きかった。例3-1ないし3-7(不織布層あり、熱可塑性樹脂フィルム層あり)では、両側の粘着剤層の組成は同じであるが、剥離時における壁の損傷の程度は小さかった。例3-9と例3-1ないし3-7との比較から、熱可塑性樹脂フィルム層に加え不織布層を備えることで、剥離時にエンボスの島部分で不織布層が伸長し、応力が軽減されることで、壁の損傷が低減されたと考えられる。
【0263】
例3-10(比較例6:不織布なし、熱可塑性樹脂フィルム層なし)では、粘着剤層とフォーム層とが直接に接触するが、粘着剤層とフォーム層との間の接着力が弱く、剥離時に粘着剤層の大部分が壁側に残ってしまった。例3-1ないし3-7(不織布層あり、熱可塑性樹脂フィルム層あり)では、両側の粘着剤層の組成は同じであるが、剥離時における粘着剤残りは小さかった。例3-9と例3-1ないし3-7との比較から、不織布層と熱可塑性樹脂層の存在により、粘着剤層とフォーム層との間の接着が改善されたと考えられる。
[実験例4]
本実験では、フォーム層を追加した態様につき、塗装された壁に対する製品性能を評価した。
【0264】
壁を壁紙から塗装された壁に変更した点を除き、実施例3と同様に試験を行った。塗装された壁は、実施例2と同様の方法で作成した。
【0265】
試験結果を以下の表6に示す。
【0266】
【表5】
フォーム層を有する構成において、SBSゴム系の粘着剤、アクリル系の粘着剤等、シリコーン系以外の粘着剤を壁側に用いた場合でも、塗装された壁面に対して良好な保持力がもたらされ、かつ、剥離後の壁の損傷や粘着剤残りも好適に抑制された。
[実験例5]
本実験では、フォーム層を追加した態様につき、高速での剥離に関する製品性能を評価した。
【0267】
例5-2の試験体は、例4-3の試験体と同様の構成である。例5-1の試験体(比較例)は、例5-2の試験体において、フォーム層および反対側の基材を省略した構成である。
【0268】
以下の方法で、剥離速度を変えた場合の、壁紙の損傷の程度を評価した。
(1)50mm×100mm×1.0mmの後面ステンレス(SUS304BA)パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り、片面に両面テープ(ST-416:3M、米国ミネソタ州セントポール)を貼り付けた。両面テープの剥離紙を剥がした後、両面テープの上に壁紙(SP9924、サンゲツ株式会社製)を貼り付けた。シワにならないように指でしっかりと壁紙を押しつけた。壁紙の表面は、イソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り乾燥させた。
(2)34mm×52mm×2.0mmのポリスチレン製フックの背面をイソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取った。評価用積層体をそれぞれ30mm×40mmにカットし、評価用積層体における一方の剥離ライナーを除去した後、積層体を粘着フック背面に貼り付け、指でしっかりと押し付けた。ここで、ポリスチレン製フック表面における縦方向(長辺方向)の一端の略中央付近には、幅2mm×長さ19mmの物品把持部が設けられている。
(3)積層体の他方の剥離ライナーを剥がし、上記(1)においてステンレスパネルに貼り付けられた壁紙上に、フックの物品把持部が下端になるように貼り付けた。約15kgの静荷重で5秒間押圧して試験パネルを得た。全ての試験パネルを室温(23±1℃、相対湿度50±5%)下で1週間養生した。
(4)養生した後、ポリスチレン製フックの物品把持部を手でつかみ、壁面に対して略垂直方向に手で引き剥がした。この際、壁紙とフックとの間で剥離が生じた場合には、壁紙の損傷、壁紙への粘着剤の残り、及び汚れの程度を目視で観察し、以下に示す各基準で評価した。手で引き剥がす際の速度を3段階とし、それぞれ記録した。
【0269】
引き剥がし速度
低速剥離:積層体を10~20秒かけて壁面から剥がす
中速剥離:積層体を5~10秒ほどかけて壁面から剥がす
高速剥離:積層体を5秒ほどかけて壁面から剥がす
壁紙の損傷の程度
0:壁紙に損傷は生じていなかった。
1:壁紙に部分的(数か所)に損傷が生じていた。
2:壁紙のより広範囲(~50%)に損傷が生じていた。
3:壁紙のほとんどの部分(50%超)に損傷が生じていた。
【0270】
【表6】
例5-2(フォーム層あり)では、例5-1(比較例6:フォーム層なし)と比較して、高速で剥離した場合の壁の損傷が軽減された。
[実験例6]
本実験では、メカニカルファスナー層を追加した態様につき、製品性能を評価した。
1.材料:実施例1ないし2と共通する材料については記載を省略する。
<剥離ライナー>
EMBLET(商標)SD-75:厚み75μmのPETフィルム(両面をコロナ処理)、ユニチカ(日本国大阪府大阪市)
<プライマー>
K-520:3M(商標)プライマー(合成樹脂系基材、不揮発分3%)、3M(米国ミネソタ州セントポール)
<メカニカルファスナー層>
SJ-3442J:3M(商標)デュアルロック(商標)ファスナ 170ステム/インチ
2、3M(米国ミネソタ州セントポール)
SJ-3440J:3M(商標)デュアルロック(商標)ファスナ 250ステム/インチ
2、3M(米国ミネソタ州セントポール)
SJ-3441J:3M(商標)デュアルロック(商標)ファスナ 400ステム/インチ
2、3M(米国ミネソタ州セントポール)
DLLP STEM、CAPPED,WHT:メカニカルファスナー、3M(米国ミネソタ州セントポール)
NC-2017:3M(商標)メカニカルファスナー ループ側、3M(米国ミネソタ州セントポール)
NC-2041:3M(商標)メカニカルファスナー フック側、3M(米国ミネソタ州セントポール)
515N:マジックテープ(商標) フック/ループ、クラレファスニング(日本国大阪府大阪市)
2.試験体の調製
2-1.剥離ライナー
PETフィルムとしてEMBLET(商標)SD-75を用いた以外は実施例1と同様の方法で、剥離ライナーを得た。
2-2.粘着剤組成物
実施例1と同様の方法で、粘着剤組成物を得た。
2-3.粘着剤組成物のコーティング
実施例1と同様の方法で、剥離ライナー上に粘着剤組成物をコーティングした。
2-4.積層およびエンボス加工
メカニカルファスナー層は2層に分離した状態で、片側ずつ積層およびエンボス加工を行った。剥離ライナー上にコーティングされた粘着剤を、粘着剤層が基材(24012-395TまたはReemay(商標)2024)に面するように、基材の両面に配置して積層体サンプルを得た。基材として24012-395Tを使用する場合には、ポリオレフィンからなる不織布(単層)を粘着剤層側に、ポリオレフィンからなる中実の連続層(単層)をメカニカルファスナー層側に配置した。得られた積層体サンプルを、130℃で1秒間、約0.3kN/cm
2の圧力で、実施例1に記載のエンボス型を両側に備える熱プレス機に通すことで、プレス済積層体を得た。
【0271】
メカニカルファスナー層の平坦面側(フックないしループが形成されていない側)に、プライマーとしてK520を適用し、乾燥させた。得られたメカニカルファスナー層に、一方(メカニカルファスナー層側)の剥離ライナーを除去したプレス済積層体を接着させた後、19×52mmのサイズにダイカットして評価用積層体を得た。
【0272】
なお、例38と例40については、剥離ライナー上にコーティングされた粘着剤を、基材の粘着剤層側にのみ配置し、さらに実施例1に記載のエンボス型を粘着剤層側にのみ配置して、上記と同様の条件でプレスを行った。その後に、剥離ライナー上にコーティングされた粘着剤を、基材のメカニカルファスナー層側に適用した。メカニカルファスナー層の平坦面側(フックないしループが形成されていない側)に、プライマーとしてK520を適用し、乾燥させた。メカニカルファスナー層側の剥離ライナーを除去して、メカニカルファスナー層を接着させた後、19×52mmのサイズにダイカットして評価用積層体を得た。
【0273】
各評価用積層体の構成は、表5、表6に示す通りである。
3.メカニカルファスナー層の引張弾性率
各メカニカルファスナー層(フック側ないしループ側)をダンベル1B型に切り取り、JIS K7161に従い、引張弾性率を測定した。引張速度は50mm/分とした。測定装置はユニバーサル材料試験機(テンシロン、株式会社エー・アンド・デイ製(日本国東京都豊島区)を用いた。
4.保持力試験:壁紙に対する保持力
(1)50mm×100mm×1.0mmのステンレス(SUS304BA)パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り、片面に両面テープ(ST-416:3M、米国ミネソタ州セントポール)を貼り付けた。両面テープの剥離紙を剥がした後、両面テープの上に壁紙を貼り付けた。シワにならないように指でしっかりと壁紙を押しつけた。壁紙の表面は、イソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り乾燥させた。
(2)壁紙側の評価用積層体から壁紙側の剥離ライナーを除去した後、評価用積層体を、上記(1)においてステンレスパネルに貼り付けられた壁紙に貼り付けた。
(3)50mm×100mm×1.0mmのステンレス(SUS304BA)パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り、洗浄済みステンレスパネルを得た。反対側(壁紙と反対側、以下同様)の評価用積層体からメカニカルファスナー層側の剥離ライナーを除去した後、評価用積層体を、洗浄済みステンレスパネルに貼り付け、指でしっかりと押し付けた。ここで、洗浄済みステンレスパネルにおける縦方向(長辺方向)の一端の略中央付近には、φ5mmの穴が設けられている。
(4)上記(2)で得られた壁紙側パネルと、上記(3)で得られた反対側パネルとを、それぞれのメカニカルファスナー層が互いに係合するように、かつφ5mmの穴が設けられている端部が下端となるように係合させ、約15kgの静荷重で5秒間積層体を押圧して試験パネルを得た。全ての試験パネルを室温(23±1℃、相対湿度50±5%)下で24時間養生した。
(5)24時間後、室温(23±1℃、相対湿度50±5%)下で750gの錘を試験パネルの下端にある穴に吊るし、各試験パネルの保持時間を記録した。
【0274】
表中において、例えば「>10080」と記載されている場合は、保持力が1週間(=10,080分)を超えることを意味し、「<60」と記載されている場合には、保持力が1時間(=60分)未満であることを意味し、「<10」と記載されている場合には、保持力が10分未満であることを意味し、「N/D」と記載されている場合には、壁紙に対して接着できなかったことを意味する。
5.ダメージフリーピール試験:壁紙の損傷及び粘着剤残りの確認
壁紙及びステンレスパネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、以下のようにしてダメージフリーピール試験を実施した:
(1)50mm×100mm×1.0mmの後面ステンレス(SUS304BA)パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り、片面に両面テープ(ST-416:3M、米国ミネソタ州セントポール)を貼り付けた。両面テープの剥離紙を剥がした後、両面テープの上に壁紙を貼り付けた。シワにならないように指でしっかりと壁紙を押しつけた。壁紙の表面は、イソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り乾燥させた。
(2)壁紙側の評価用積層体から壁紙側の剥離ライナーを除去した後、評価用積層体を、上記(1)において後面ステンレスパネルに貼り付けられた壁紙に貼り付けた。
(3)50mm×100mm×1.0mmの前面ステンレス(SUS304BA)パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、ペーパータオルで拭き取り、洗浄済み前面ステンレスパネルを得た。反対側の評価用積層体からメカニカルファスナー層側の剥離ライナーを除去した後、評価用積層体を、洗浄済み前面ステンレスパネルに貼り付け、指でしっかりと押し付けた。
(4)上記(2)で得られた壁紙側パネルと、上記(3)で得られた反対側パネルとを、それぞれのメカニカルファスナー層が互いに係合するように係合させ、約15kgの静荷重で5秒間積層体を押圧して試験パネルを得た。全ての試験パネルを室温(23±1℃、相対湿度50±5%)下で1週間養生した。
(5)養生した後、前面ステンレスパネルの一端を手で把持し、前面ステンレスパネルを壁面に対して略垂直方向に手で引き剥がした。2つのメカニカルファスナー層の間で分離が生じた場合を「I」とし、粘着剤層と他の層との間で分離が生じた場合を「A」とした。粘着剤層と壁紙との間で分離が生じた場合には、壁紙の損傷、壁紙への粘着剤の残り、及び汚れの程度を目視で観察し、実施例1と同じ基準で評価した。その他の場合には、壁紙上に残った評価用積層体を壁紙から手で剥がし、上記と同様に評価した。
6.壁紙からの引き剥がし容易性
壁紙側の評価用積層体について、反対側の評価用積層体と分離した状態で、壁紙から手で引き剥がし、作業の容易性を以下の基準で評価した。
P:評価用積層体の端部を容易に引き上げ、壁紙から簡単に引き剥がすことができた。
Q:評価用積層体の端部を引き上げるのに苦労したが、何とか壁紙から引き剥がすことができた。
【0275】
試験結果を以下の表8、9に示す。
【0276】
【表7】
7.考察
例6-24(比較例7:熱可塑性樹脂フィルム層なし)では、粘着剤層とメカニカルファスナー層との間の接着が弱く、保持力試験では、粘着剤層とメカニカルファスナー層との間で試験体が剥がれて落下した。例6-13ないし6-23(熱可塑性樹脂フィルム層あり)では、両側の粘着剤層の組成は同じであるが、良好な保持力を示した。例6-24と例6-13ないし6-23との比較から、不織布層とメカニカルファスナー層との間に熱可塑性樹脂フィルム層が介在することで、不織布層とメカニカルファスナー層との間の良好な接着がもたらされたと考えられる。
【0277】
一方、例6-19ないし6-23(壁側の積層体:例6-4ないし6-8、引張弾性率:52.8~84.7MPa)では、壁側の積層体の、壁からの引き剥がしが、例6-13ないし例6-18(壁側の積層体:例6-1ないし6-3または例6-9ないし6-11、引張弾性率:7.2~18.6MPa)に比べて困難であった。壁側の積層体の引張弾性率を一定程度以下とすることで、壁からの引き剥がしが容易になると考えられる。
【0278】
本明細書において引用したすべての特許、特許出願及び公報、刊行物、並びに電子的に入手可能な資料の全開示が、参照により組み込まれる。本出願の開示内容と参照により本明細書に組み込まれたいずれかの文書の開示内容との間に何らかの矛盾が存在する場合には、本出願の開示内容が優先するものとする。上記の実施形態及び実施例は、理解の明確性のために示したものに過ぎない。それらから、いかなる不要な限定も理解されるべきではない。本開示は図示及び記載された細部そのものに限定されず、当業者に明白な変化形態は、特許請求の範囲および均等論によって定義される範囲内に含まれる。
【0279】
すべての項目名は、読み手の便宜のためのものであり、そのように特定されない限り、項目名に続く本文の意味を限定するために使用されるべきはでない。
【0280】
本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことが可能である。これらの実施形態及び他の実施形態は、特許請求の範囲および均等論によって定義される範囲内に含まれるものである。