(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002718
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】エアゾール型皮膚又は毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20241226BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20241226BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20241226BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20241226BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20241226BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20241226BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20241226BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20241226BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q19/10
A61K8/44
A61K8/36
A61K8/46
A61K8/81
A61K8/39
A61K8/92
A61K8/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103053
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 修作
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AC241
4C083AC302
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC421
4C083AC432
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC642
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC712
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD131
4C083AD132
4C083BB05
4C083CC22
4C083CC38
4C083DD08
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】本発明は、両性界面活性剤の含有量を制限しつつ、適用時には良好な泡性能を発揮するとともに、すすぎ時には毛髪へ滑らかな感触を付与し、かつ細胞間脂質の溶出を有効に抑制し、健常な状態を保つことのできる、サルフェート系界面活性剤フリーのエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料に関する。
【解決手段】原液(X)と二酸化炭素を含有する噴射剤(Y)とを含み、
原液(X)が、硫酸基を含むアニオン界面活性剤を含有せず、成分(a):硫酸基を含まないアニオン界面活性剤、成分(b):アクリル系カチオン性ポリマー、及びアクリル系両性ポリマーから選ばれる1種又は2種以上のポリマー、成分(c):特定の式(cf):A-[(C2H4O)n-Rf]mで表されるノニオン界面活性剤を含有し、かつ両性界面活性剤の含有量が3質量%未満であるエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液(X)と二酸化炭素を含有する噴射剤(Y)とを含む、エアゾール型皮膚又は毛髪化粧料であって、
原液(X)が、硫酸基を含むアニオン界面活性剤を含有せず、次の成分(a)~(c):
(a)硫酸基を含まないアニオン界面活性剤
(b)アクリル系カチオン性ポリマー、及びアクリル系両性ポリマーから選ばれる1種又は2種以上のポリマー
(c)下記式(cf)で表されるノニオン界面活性剤
A-[(C2H4O)n-Rf]m ・・・(cf)
(式中、Aは2価以上のポリオールを示し、(C2H4O)n-Rfは、AのOH基とエーテル結合を形成してなる。m個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、H、或いはC1~C24のOH置換又はEO付加されていてもよいアルキル基、アルケニル基、又はアシル基を示し、少なくとも1つのRfはC8~C24のOH置換又はEO付加されていてもよいアシル基である。nは5以上の整数を示し、mは2以上の整数を示す。)
を含有し、成分(a)の含有量と成分(b)の含有量との質量比((a)/(b))が10以上60以下であり、かつ両性界面活性剤の含有量が2.5質量%以下であるエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料。
【請求項2】
成分(c)が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ヒマシ油、ポリオキシエチレンメチルグリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、及び脂肪酸ポリオキシエチレントリメチロールプロパンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料。
【請求項3】
成分(b)の含有量と成分(c)の含有量との質量比((b)/(c))が、0.01以上0.5以下である請求項1又は2に記載のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料。
【請求項4】
成分(a)が、アシルアミノ酸塩、アシルタウリン塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、及びアルキルスルホン酸塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項1~3のいずれか1項に記載のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料。
【請求項5】
成分(b)のカチオン化密度が、5.5meq/g以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料。
【請求項6】
原液(X)中における塩化物イオンの含有量が、0.2質量%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料。
【請求項7】
噴射剤(Y)中における二酸化炭素の含有量が、50質量%以上である請求項1~6のいずれか1項に記載のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール型皮膚又は毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚又は毛髪を洗浄する化粧料において、良好な洗浄力や泡性能を確保するにあたり、ラウリル硫酸ナトリウムやラウレス硫酸ナトリウム等の硫酸基を含む界面活性剤、いわゆるサルフェート系界面活性剤を用いるのが有用であることが知られている。その反面、一部の消費者には、こうしたサルフェート系界面活性剤は、皮膚又は毛髪に対してマイルド性に欠ける可能性があると考えられているため、サルフェート系界面活性剤を実質的に含まない、いわゆるサルフェート系界面活性剤フリーの化粧料が一部の消費者に望まれる傾向にあることから、種々の開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定量のカチオン性ポリマーと、特定の重量比であるアシルグルタメート等の界面活性剤を20重量%~40重量%含有し、サルフェート系界面活性剤を実質的に含まないシャンプー組成物が開示されており、組成物の安定化を試みている。また、特許文献2には、両性界面活性剤と、特定のノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤とを特定の質量比にて含有する皮膚又は毛髪洗浄剤組成物が開示されており、起泡性を確保しつつ細胞間脂質の溶出抑制を図って毛髪に対するマイルド性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-536959号公報
【特許文献2】特開2022-73255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうしたサルフェート系界面活性剤フリーの化粧料は、サルフェート系界面活性剤を含む洗浄料と比べ、良好な泡立ち、洗浄性、安定性を確保することが困難であることから、サルフェート系界面活性剤以外の界面活性剤を多く配合する傾向にある。例えば、上記特許文献1に記載の技術であると、界面活性剤の総量が増大して、皮膚や毛髪に対する刺激が強くなりすぎるおそれがある。また、上記特許文献2に記載の技術であっても、アニオン界面活性剤よりも細胞間脂質を溶出させやすいとされる両性界面活性剤の含有量を充分に低減することができず、依然として改善の余地がある。
【0006】
すなわち、本発明は、両性界面活性剤の含有量を制限しつつ、適用時には良好な泡性能を発揮するとともに、すすぎ時には皮膚や毛髪へ滑らかな感触を付与し、かつ細胞間脂質(コレステロール)の溶出を有効に抑制し、健常な状態を保つことのできる、サルフェート系界面活性剤フリーのエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、種々検討したところ、原液(X)と二酸化炭素を含有する噴射剤(Y)とを含み、原液(X)において硫酸基を含むアニオン界面活性剤を含有しないなか、硫酸基を含まないアニオン界面活性剤、特定のポリマー、及び特定のノニオン界面活性剤を含有し、かつ両性界面活性剤の含有を制限することにより、優れた泡立ちを発現しつつ、細胞間脂質(コレステロール)の溶出を有効に抑制して皮膚や毛髪を健常な状態に保つことのできるエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料が得られることを見出した。
【0008】
したがって、本発明は、原液(X)と二酸化炭素を含有する噴射剤(Y)とを含む、エアゾール型皮膚又は毛髪化粧料であって、
原液(X)が、硫酸基を含むアニオン界面活性剤を含有せず、次の成分(a)~(c):
(a)硫酸基を含まないアニオン界面活性剤
(b)アクリル系カチオン性ポリマー、及びアクリル系両性ポリマーから選ばれる1種又は2種以上のポリマー
(c)下記式(cf)で表されるノニオン界面活性剤
A-[(C2H4O)n-R]m ・・・(cf)
(式中、Aは2価以上のポリオールを示し、(C2H4O)n-Rは、AのOH基とエーテル結合を形成してなる。Rは各々同一であっても異なっていてもよく、H、或いはC1~C24のOH置換又はEO付加されていてもよいアルキル基、アルケニル基、又はアシル基を示し、少なくともRのうちの1つはC8~C24のOH置換又はEO付加されていてもよいアシル基である。nは5以上の整数を示し、mは2以上の整数を示す。)
を含有し、成分(a)の含有量と成分(b)の含有量との質量比((a)/(b))が10以上60以下であり、かつ両性界面活性剤の含有量が2.5質量%以下であるエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料によれば、皮膚や毛髪への適用時には優れた泡立ちを発現し、すすぎ時には皮膚や毛髪へ滑らかな感触を付与することができる。また、細胞間脂質(コレステロール)の溶出を有効かつ効果的に抑制することができ、皮膚や毛髪を健常な状態に保つことに寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料がもたらす「すすぎ時における毛髪への滑らかな感触」とは、本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料を毛髪に適用した後、これをすすいだ時に引っかかりや突っ張りを感じることなく、毛髪を柔らかく感じることができ、円滑に化粧料を流すことができる感触を意味する。
【0011】
ここで、本発明のエアゾール型毛髪化粧料とは、頭飾製品用繊維化粧料をも包含する意味である。
すなわち、「毛髪」とは、主としてヒトの頭髪を意味するが、ヒトの頭部から切り離された毛髪も包含する。そして、「頭飾製品」とは、例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー、ドールヘアー等を意味し、「頭飾製品用繊維」とは、かかる頭飾製品に用いられる繊維を意味する。
【0012】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料が含む原液(X)は、硫酸基を含むアニオン界面活性剤を含有しない。
かかる硫酸基を含むアニオン界面活性剤としては、具体的には、例えば、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、パルミチル硫酸塩、ステアリル硫酸塩、オクチル硫酸塩、カプリル硫酸塩等のアルキル又はアルケニル硫酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩が挙げられる。
そして、これらの塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミン塩;アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩、オルニチン塩等の塩基性アミノ酸等が挙げられる。
【0013】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料が含む原液(X)は、成分(a)として、硫酸基を含まないアニオン界面活性剤を含有する。かかる成分(a)を後述する成分(b)及び成分(c)と組み合わせて用いることにより、皮膚や毛髪への適用時において優れた泡立ちの発現を可能としつつ、すすいだ時における皮膚又は毛髪への滑らかさの付与を実現することができる。
【0014】
成分(a)としては、例えば、アシルグルタミン酸塩、アシルアスパラギン酸塩、アシルサルコシン塩、アシルアラニン塩等のアシルアミノ酸塩;アシルメチルタウリン塩等のアシルタウリン塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩等のアルキルスルホン酸塩;モノアルキル又はジアルキルスルホコハク酸塩;オレイン酸塩、ラウリン酸塩等の脂肪酸塩;アルキルリン酸塩等のアルキルリン酸塩;高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル塩;ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
また、成分(a)の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミン塩;アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩、オルニチン塩等の塩基性アミノ酸等が挙げられる。
かかる成分(a)のなかでも、良好な泡立ち、及びすすぎ時の毛髪の滑らかさを向上させ、細胞間脂質(コレステロール)の溶出を有効に抑制する効果を発揮する観点から、アシルアミノ酸塩、アシルタウリン塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、及びアルキルスルホン酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アシルアミノ酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、及びアルキルスルホン酸塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、アシルアミノ酸塩、及びアルキルスルホン酸塩から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましい。
【0015】
アシルアミノ酸塩、及びアシルタウリン塩としては、より具体的には、アシルアミノ酸及びアシルタウリンを構成するアシル基として、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸又はそれらの混合脂肪酸を由来としたものであって、直鎖脂肪酸又は直鎖脂肪酸の混合脂肪酸を由来としたものが好ましく、炭素数6~22のアシル基であるのが好ましく、炭素数10~20のアシル基であるのがより好ましく、炭素数12~18のアシル基であるのがさらに好ましい。かかるアシル基としては、カプリロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、及びステアロイル基から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ラウロイル基、及びミリストイル基から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0016】
アシルアミノ酸塩を構成するアミノ酸部分は、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、スレオニン、メチルアラニン、サルコシン、リジン及びアルギニンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、これらはD体、L体、或いはD体とL体の混合物のいずれであってもよい。なかでも、細胞間脂質(コレステロール)の溶出を有効に抑制する効果を発揮する観点から、グルタミン酸、サルコシン、アラニンがより好ましく、グルタミン酸、サルコシンがさらに好ましい。
かかるアシルアミノ酸塩としては、良好な泡立ち、及びすすぎ時の毛髪の滑らかさを向上させ、細胞間脂質(コレステロール)の溶出を有効に抑制する効果を発揮する観点から、ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩、ラウロイルサルコシン塩、ミリストイルサルコシン塩、ラウロイルアラニン塩、及びラウロイルメチルアラニン塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ラウロイルグルタミン酸塩、ラウロイルサルコシン塩、及びラウロイルメチルアラニン塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0017】
かかるアシルタウリン塩としては、良好な泡立ち、及びすすぎ時の毛髪の滑らかさを向上させる観点から、ラウロイルメチルタウリン塩、ミリストイルメチルタウリン塩、及びパルミトイルメチルタウリン塩等から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ラウロイルメチルタウリン塩、及びミリストイルメチルタウリン塩から選ばれる1種又は2種がより好ましく、ラウロイルメチルタウリン塩がさらに好ましい。
【0018】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩等が挙げられる。これを構成するアルキル基の炭素数は、8~22であるのが好ましく、8~18であるのがより好ましく、10~18であるのがさらに好ましい。また、エチレンオキシドの平均付加モル数は、0.5~5であるのが好ましく、1~4であるのがより好ましい。
かかるポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩としては、良好な泡立ち、及びすすぎ時の毛髪の滑らかさを向上させる観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩が好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル酢酸塩、及びポリオキシエチレンパルミチルエーテル酢酸塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩がさらに好ましい。
【0019】
アルキルスルホン酸塩としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及び内部オレフィンスルホン酸塩等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これを構成する炭素数は、10~22であるのが好ましく、12~18であるのがより好ましく、或いはこれらの混合物であってもよい。
かかるアルキルスルホン酸塩としては、良好な泡立ち、及びすすぎ時の毛髪の滑らかさを向上させる観点から、α-オレフィンスルホン酸塩、及び内部オレフィンスルホン酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、α-オレフィンスルホン酸塩がより好ましい。
【0020】
成分(a)の含有量は、適用時における良好な泡立ちを確保する観点から、原液(X)中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。そして、成分(a)の含有量は、原液(X)中に、1~20質量%であり、より好ましくは3~15質量%であり、さらに好ましくは5~15質量%である。
【0021】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料が含む原液(X)は、成分(b)として、アクリル系カチオン性ポリマー、及びアクリル系両性ポリマーから選ばれる1種又は2種以上のポリマーを含有する。
アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル、(メタ)アクリル酸のアミド、その置換体、及びその混合物から選択される任意のモノマー単位を有するポリマーである。
カチオン性ポリマーは、好ましくはカチオン性基を有し、かつアニオン性基を実質的に有さないポリマーである。「アニオン性基を実質的に有さない」とは、カチオン性基に対するアニオン性基のモル量が、好ましくは0.1%以下であることを意味する。
また両性ポリマーは、好ましくはカチオン性基及びアニオン性基を有するポリマーであって、好ましくは原液(X)のpHにおいて、ポリマーの総電荷として正に帯電しているポリマーである。かかるpHは、pHメーターで測定することができる。
【0022】
なお、本明細書において「カチオン性基」とは、カチオン基、又はイオン化されてカチオン基になり得る基を意味し、具体的には、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基が挙げられる。
また、「アニオン性基」とは、アニオン基、又はイオン化されてアニオン基になり得る基を意味し、具体的には、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基からなる群から選ばれる1種以上が挙げられ、好ましくはカルボキシ基、スルホン酸基から選ばれる1種以上であり、より好ましくはカルボキシ基である。アニオン性基の少なくとも一部は、中和され、塩の状態になっていてもよい。
【0023】
原液(X)が成分(b)を含有することにより、両性界面活性剤の含有を制限する環境下であっても適用時における優れた泡立ちを確保し、化粧料を過度に増粘させることなく、成分(a)と相まってすすぎ時における皮膚又は毛髪へ滑らかさを付与することができる。
【0024】
成分(b)としては、具体的には、ジアリル4級アンモニウム塩-アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-7)、ジアリル4級アンモニウム塩-アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22)、ジアリル4級アンモニウム塩-アクリルアミド-アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-39)、メタクリルアミドアルキル4級アンモニウム塩-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(ポリクオタニウム-47)、メタクリルアミドアルキル4級アンモニウム塩-アクリル酸-アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-53)、及び次の単量体(b1)、(b2)及び(b3)を含有するモノマー混合物を共重合することにより得られる共重合体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0025】
《単量体(b1)》
単量体(b1)は、下記式(1)で表されるビニル単量体から選ばれる1種以上である。
【0026】
【0027】
(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は水素原子、炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R3は炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【0028】
《単量体(b2)》
単量体(b2)は、下記式(2)で表されるビニル単量体から選ばれる1種以上である。
【0029】
【0030】
(式(2)中、R1は式(1)中のR1と同義であり、R4及びR5は、それぞれ独立して炭素数1以上4以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、R6は水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Y1は-O-、-NH-、-CH2-又は-O-CH2CH(OH)-基を示す。Z1は、Y1が-CH2-の場合に単結合又は炭素数1以上3以下の直鎖状若しくは分岐状の二価の飽和炭化水素基を示し、Y1が-CH2-以外の場合に炭素数1以上4以下の直鎖状又は分岐状の二価の飽和炭化水素基を示す。Q-は酸の共役塩基を示す。)
【0031】
《単量体(b3)》
単量体(b3)は、2個以上の反応性不飽和基を有する架橋性単量体である。かかる単量体(b3)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
かかる単量体(b1)、(b2)及び(b3)を含有するモノマー混合物を共重合することにより得られる共重合体としては、具体的には、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体(ポリクオタニウム-52)が挙げられる。
【0032】
成分(b)のなかでも、硫酸基を含むアニオン界面活性剤を含有しない系において良好な泡立ちを得る観点から、カチオン化密度が5.5meq/g以下であるのが好ましく、4.5meq/g以下であるのがより好ましい。
また、適用時の良好な泡立ち及びすすぎ時における皮膚又は毛髪へ滑らかさを向上させる観点から、メタクリルアミドアルキル4級アンモニウム塩-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体(ポリクオタニウム-47)、メタクリルアミドアルキル4級アンモニウム塩-アクリル酸-アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-53)、及びN,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体(ポリクオタニウム-52)から選ばれる1種又は2種以上から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体(ポリクオタニウム-52)がより好ましい。
【0033】
これらの市販品としては、例えば、MERQUAT 550、MERQUAT 740(以上、INCI名:ポリクオタニウム-7、ジアリル4級アンモニウム塩-アクリルアミド共重合体、Lubrizol Advanced Materials社製)、MERQUAT 280N(INCI名:ポリクオタニウム-22、ジアリル4級アンモニウム塩-アクリル酸共重合体、Lubrizol Advanced Materials社製)、MERQUAT 3331PR(INCI名:ポリクオタニウム-39、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体液、Lubrizol Advanced Materials社製)、MERQUAT 2001(INCI名:ポリクオタニウム-47、メタクリルアミドアルキル4級アンモニウム塩-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、Lubrizol Advanced Materials社製)、MERQUAT 2003PR(INCI名:ポリクオタニウム-53、アクリル酸、アクリルアミド及びメタクリルアミドプロピルトリモニウムクロリドからなる4級アンモニウム塩の共重合体、Lubrizol Advanced Materials社製)、ソフケア KG-101W-E(INCI名:ポリクオタニウム-52、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩/N,N-ジメチルアクリルアミド/ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体、花王社製)等が挙げられる。
【0034】
成分(b)の含有量は、すすぎ時における毛髪へ滑らかさを付与する観点、及び細胞間脂質(コレステロール)の溶出を有効に抑制する観点から、原液(X)中に、好ましくは0.10質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上であり、さらに好ましくは0.20質量%以上であり、好ましくは0.75質量%以下であり、より好ましくは0.50質量%以下であり、さらに好ましくは0.40質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.30質量%以下である。そして、成分(b)の含有量は、原液(X)中に、0.10~0.75質量%であり、より好ましくは0.10~0.50質量%、0.15~0.40質量%であり、さらに好ましくは0.20~0.30質量%である。
【0035】
原液(X)中における成分(a)の含有量と成分(b)の含有量との質量比((a)/(b))は、適用時における良好な泡立ちを確保しつつ、すすぎ時における毛髪への滑らかさの付与を有効に実現する観点から、10以上であって、好ましくは15以上であり、より好ましくは20以上であり、60以下であって、好ましくは50以下であり、より好ましくは40以下である。そして、原液(X)中における成分(a)の含有量と成分(b)の含有量との質量比((a)/(b))は、10以上60以下であって、好ましくは15~50であり、より好ましくは20~40である。
【0036】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料が含む原液(X)は、成分(c)として、下記式(cf)で表されるノニオン界面活性剤を含有する。
A-[(C2H4O)n-Rf]m ・・・(cf)
(式中、Aは2価以上のポリオールを示し、(C2H4O)n-Rfは、AのOH基とエーテル結合を形成してなる。m個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、H、或いはC1~C24のOH置換又はエチレンオキシド(以下、EOとも言う)付加されていてもよいアルキル基、アルケニル基、又はアシル基を示し、少なくとも1つのRfはC8~C24のOH置換又はEO付加されていてもよいアシル基である。nは5以上の整数を示し、mは2以上の整数を示す。)
かかる成分(c)を含有することにより、両性界面活性剤の含有を制限する環境下であっても、成分(b)とも相まって適用時における優れた泡立ちを確保し、細胞間脂質(コレステロール)の溶出を有効に抑制することができる。
【0037】
式(cf)中、Aは、両性界面活性剤の含有を制限する環境下での適用時における泡立ちを向上させる観点から、2価以上のポリオールであって、2価以上6価以下のポリオールが好ましく、3価以上6価以下のポリオールがより好ましい。具体的には、2価のポリオール(エチレングリコール等)、3価のポリオール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ヒマシ油、水添ヒマシ油等)、4価のポリオール(エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、モノメチルグルコース等)、5価のポリオール(グルコース、キシリトール等)、6価のポリオール(マンニトール、ソルビトール、及びイジトール等)が挙げられる。これらAのなかでも、市場での入手容易性の観点、及び両性界面活性剤の含有を制限する環境下での適用時における泡立ちを向上させる観点から、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヒマシ油、水添ヒマシ油、ソルビタン、モノメチルグルコース、及びソルビトールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ソルビタン、ヒマシ油、水添ヒマシ油、及びモノメチルグルコースから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0038】
式(cf)中、nは、上記と同様の観点から、5以上の整数であって、好ましくは5~200の整数であり、より好ましくは5~180の整数である。
式(cf)中、m個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、H、或いはC1~C24のOH置換又はEO付加されていてもよいアルキル基、アルケニル基、又はアシル基を示し、少なくとも1つのRfはC8~C24のOH置換又はEO付加されていてもよいアシル基である。m個のRfは、好ましくはH、或いはC1~C20のOH置換又はEO付加されていてもよいアルキル基、アルケニル基、又はアシル基を示し、少なくとも1つのRfはC10~C20のOH置換又はEO付加されていてもよいアシル基である。m個のRfは、より好ましくは、H、或いはC1~C18のOH置換又はEO付加されていてもよいアルキル基、アルケニル基、又はアシル基を示し、少なくとも1つのRfはC12~C18のOH置換又はEO付加されていてもよいアシル基である。
なお、RfがEO付加されている場合に、そのEO付加モル数をlとしたとき、lとnの合計(l+n)は、上記と同様の観点から、好ましくは6以上の整数であり、より好ましくは6~200の整数であり、さらに好ましくは6~180の整数である。
式(cf)中、mは、上記と同様の観点から、2以上の整数であって、2以上6以下の整数が好ましく、3以上6以下の整数がより好ましい。
【0039】
成分(c)としては、具体的には、ラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、パルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(上記式(cf)において、Aがソルビタン、m=4);
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、ペンタオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(上記式(cf)において、Aがソルビトール、m=6);
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノ脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油コハク酸、ポリオキシエチレンヒマシ油等のヒマシ油(上記式(cf)において、Aがヒマシ油又は水添ヒマシ油、m=3);
トリイソステアリン酸ポリオキシエチレンメチルグルコース等のポリオキシエチレンメチルグリコール脂肪酸エステル(上記式(cf)において、Aが1-O-メチル-D-グルコース、m=4);
トリイソステアリン酸ポリオキシエチレンメチルグリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(上記式(cf)において、Aがグリセリン、m=3);
ジステアリン酸PEGトリメチロールプロパン、トリステアリン酸PEGトリメチロールプロパン等の脂肪酸ポリオキシエチレントリメチロールプロパン(上記式(cf)において、Aがトリメチロールプロパン、m=3)から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0040】
これら成分(c)のなかでも、適用時における優れた泡立ちを確保し、細胞間脂質(コレステロール)の溶出を有効に抑制する観点から、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、ポリオキシエチレンメチルグリコール脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、及びポリオキシエチレンメチルグリコール脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレンメチルグルコース、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましく、オレイン酸PEG-6ソルビタン、PEG-40水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-160ソルビタン、及びトリオレイン酸PEG-120メチルグルコースから選ばれる1種又は2種以上がよりさらに好ましく、オレイン酸PEG-6ソルビタン、及びPEG-40水添ヒマシ油から選ばれる1種又は2種がまたさらに好ましい。
【0041】
成分(c)の含有量は、適用時における優れた泡立ちを確保しつつ、細胞間脂質(コレステロール)の溶出も有効に抑制する観点から、原液(X)中に、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。そして、成分(c)の含有量は、原液(X)中に、0.5~10質量%であり、より好ましくは1~7質量%であり、さらに好ましくは1.5~5質量%であり、よりさらに好ましくは1.5~3質量%である。
【0042】
原液(X)中における成分(b)の含有量と成分(c)の含有量との質量比((b)/(c))は、適用時における良好な泡立ちを確保しつつ、すすぎ時における毛髪への滑らかさの付与を有効に実現し、細胞間脂質(コレステロール)の溶出も有効に抑制する観点から、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.08以上であり、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下であり、さらに好ましくは0.2以下である。そして、原液(X)中における成分(b)の含有量と成分(c)の含有量との質量比((b)/(c))は、好ましくは0.01以上0.5以下であり、より好ましくは0.01~0.3であり、さらに好ましくは0.05~0.2が好ましく、よりさらに好ましくは0.08~0.2である。
【0043】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料において、原液(X)中における両性界面活性剤の含有量は、皮膚又は毛髪に対する細胞間脂質(コレステロール)の溶出を有効に抑制する観点から、2.5質量%以下である。
かかる両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド型界面活性剤;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン型界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等のアミドベタイン型界面活性剤;ラウリルスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型界面活性剤等が挙げられる。
【0044】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料において、両性界面活性剤の含有量は、原液(X)中に、皮膚又は毛髪に対する細胞間脂質(コレステロール)の溶出を有効に抑制する観点から、2.5質量%以下であって、2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%がさらに好ましく、0.5質量%がよりさらに好ましく、0.1質量%以下がまたさらに好ましく、或いは本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料において、原液(X)中に両性界面活性剤を実質的に含有しないのが好ましい。
【0045】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料において、皮膚又は毛髪に対する細胞間脂質(コレステロール)の溶出を有効に抑制する観点、及びエアゾール容器の腐食を防止する観点から、原液(X)中における塩化物イオンの含有は制限されるのが好ましい。
原液(X)中における塩化物イオンの含有量は、好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下である。
なお、塩化物イオンの含有量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0046】
原液(X)は、さらに水を含有することが好ましい。これにより、原液(X)の各含有成分を良好に分散又は溶解させ、本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料の適用部位への拡げやすさを高めて浸透性を促進し、所望の効果を充分に発揮させることができる。水としては、イオン交換水や蒸留水等が挙げられる。
水の含有量は、原液(X)中に、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、好ましくは95質量%以下である。そして、水の含有量は、原液(X)中に、好ましくは30~95質量%であり、より好ましくは50~95質量%であり、さらに好ましくは70~95質量%である。
【0047】
原液(X)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分の他、皮膚又は毛髪化粧料に通常配合される成分として、さらに上記成分以外の界面活性剤、酸化防止剤、油剤、抗フケ剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、パール剤、セラミド類、香料、紫外線吸収剤、pH調整剤等を適宜含有することができる。
【0048】
原液(X)の30℃における粘度は、使用時におけるエアゾール容器からの良好な吐出性を確保する観点から、好ましくは1~1000mPa・sであり、より好ましくは3~800mPa・sであり、さらに好ましくは5~550mPa・sである。
なお、原液(X)の30℃における粘度は、B型粘度計により測定される値を意味し、具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
【0049】
原液(X)の25℃におけるpHは、原液(X)の保存安定性を確保する観点から、5質量%の水溶液としたときの値で、好ましくは4~8であり、より好ましくは5~7であり、更に好ましくは5.5~6.5である。
なお、原液(X)を5質量%の水溶液としたときの25℃におけるpHの値は、具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
【0050】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料は、上記原液(X)とともに二酸化炭素を含有する噴射剤(Y)を含む。すなわち、本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料は、上記原液(X)とともに噴射剤(Y)をエアゾール容器に封入したものであって、エアゾールスプレーやエアゾールフォーム等の形態を呈する化粧料である。これにより、適用時において噴射するのみで容器から容易に内容物の化粧料を吐出することができ、適用部位への拡げやすさを効果的に高めつつ、優れた泡立ちの発現を可能とする。
【0051】
用い得るエアゾール容器としては、金属製又はプラスチック製等の公知の耐圧容器、或いは耐圧容器の内部に内袋が収容された二重構造容器が挙げられる。二重構造容器においては、内袋に原液(X)を充填し、耐圧容器と内袋との間に噴射剤(Y)を充填する。また、エアゾール製剤の調製方法は特に制限されない。例えば、エアゾール容器を構成する耐圧容器に原液(X)を充填してバルブを取り付け、次いでバルブ部分から噴射剤(Y)を充填することにより調製することができる。
【0052】
噴射剤(Y)は、二酸化炭素を含有し、その他、窒素、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、イソペンタン等のその他液化ガスを含有してもよい。
噴射剤(Y)中における二酸化炭素の含有量は、良好な吐出性を発現して、優れた泡立ちの発現を可能とし、皮膚又は毛髪に対する有効成分の浸透性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、よりさらに好ましくは100質量%である。すなわち、噴射剤(Y)は、二酸化炭素のみを含有することが好ましい。
【0053】
噴射剤(Y)を充填した後のエアゾール容器の25℃における内圧は、適度な噴射速度を得る観点から、好ましくは0.1~1.3MPaであり、より好ましくは0.3~1.0MPaである。
【0054】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料において、良好な吐出性を保持しつつ、優れた泡立ちの発現を可能とする観点から、原液(X)と噴射剤(Y)との質量比((X):(Y))は、好ましくは95:5~99:1であり、より好ましくは97:3~98.5:1.5である。
【0055】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料の態様は、優れた泡立ちを発現しつつ、適用部位に滑らかな感触を効果的に付与する観点から、毛髪化粧料であるのが好ましく、毛髪洗浄剤として用いるのがより好ましい。
【0056】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料の適用対象は、皮膚、或いは毛髪又は頭飾製品用繊維である。
ここで、頭飾製品用繊維としては、天然由来繊維、又は合成繊維のいずれであってもよく、天然由来繊維であるのが好ましい。
【0057】
天然由来繊維とは、天然の動植物から採取した繊維(人毛を除く)、又は蛋白質や多糖類等を原料として人工的に製造された繊維のことである。かかる天然由来繊維のなかでも、獣毛や、ケラチン、コラーゲン又はカゼインのほか、大豆、落花生、トウモロコシ又は絹等に由来する蛋白質等の蛋白質、或いは多糖類等を原料として人工的に製造された繊維が好ましく、ケラチン、コラーゲン、カゼイン、大豆蛋白質、落花生蛋白質、トウモロコシ蛋白質、絹蛋白質(例えば絹フィブロイン)等を原料とする再生蛋白質繊維がより好ましく、コラーゲンを原料とする再生コラーゲン繊維、又は絹フィブロインを原料とする再生絹繊維等の再生蛋白質繊維がさら好ましく、再生コラーゲン繊維がまたさらに好ましい。
再生コラーゲン繊維は、公知の技術で製造することができる。再生コラーゲン繊維の組成はコラーゲン100%でなくてもよく、品質改良のための天然ポリマー、合成ポリマー、又は添加剤等が含まれていてもよい。さらには、再生コラーゲン繊維は、後加工又は後処理されたものであってもよい。再生コラーゲン繊維の形態としては、一般にボビン巻きしたものや箱詰めした状態から取り出されるフィラメントが好ましい。また、再生コラーゲン繊維の製造工程において、乾燥工程から出てくるフィラメントを直接利用することもできる。
【0058】
また、合成繊維としては、合成樹脂を主成分として含む繊維が挙げられる。かかる合成樹脂としては、合成繊維の製造容易性の観点、及び頭髪に近似した風合いを得る観点から、好ましくは熱可塑性樹脂であり、より好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、及びモダアクリル樹脂(アクリロニトリルと塩化ビニルの共重合体)から選ばれる1種又は2種以上である。なお、「主成分」とは、合成繊維中における含有量が、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、よりさらに好ましくは80質量%以上であり、またさらに好ましくは90質量%以上であって、100質量%以下である成分を意味する。
合成繊維は、上記合成樹脂のほか、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに難燃剤、難燃助剤、光又は熱安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等の各種成分を含有することができる。
【0059】
本発明のエアゾール型皮膚又は毛髪化粧料の態様は、優れた泡立ちを発現しつつ、適用部位に滑らかな感触を効果的に付与する観点から、毛髪化粧料であるのが好ましく、毛髪洗浄剤として用いるのがより好ましい。すなわち、毛髪化粧料としての適用対象は、毛髪又は頭飾製品用繊維とするのが好ましく、毛髪とするのがより好ましい。
【実施例0060】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0061】
[実施例1~19、比較例1~10]
表1~3に示す原液(X)の処方にしたがって各成分を配合した後、均一になるまで混合し、原液(X)を調製した。次いで、得られた原液(X)をエアゾール容器(東洋製罐社製、容器型:BL35A115-H)に充填した後、原液(X):噴射剤(Y)=50:1となる比率にて噴射剤(Y)(二酸化炭素含有量:100質量%)を封入し、容器内の25℃における内圧を0.7MPaとして、各化粧料を製造した。
得られた化粧料を用い、以下の方法にしたがって各測定及び評価を行った。
なお、比較例1については、原液(X)をエアゾール容器に充填することなく、化粧料としてそのまま用いた。また、比較例2については、原液(X)がゲル化してしまい、エアゾール容器に充填することができなかったため、その後の測定及び評価を行うことができなかった。
結果を表1~3に示す。
【0062】
《pHの測定》
調製した原液(X)について、各々水を用いて5質量%の水溶液となるように調製し、よく攪拌した後、pHメーター(東亜ディーケーケー(株)製、HM-30R)を用いて25℃にて測定した。
【0063】
《粘度の測定》
B型粘度計(TV-10M、東機産業(株)製)を用い、粘度の値の範囲に応じてローター及び回転速度を選択して、温度30±1℃で1分間測定した。
具体的には、粘度が100mPa・s以下では、ローターNo.M1にて回転速度100rpmとし、粘度が100~500mPa・sの範囲では、ローターNo.M2にて回転速度60rpmとし、粘度が500~2,000mPa・sの範囲では、ローターNo.M3にて回転速度60rpmとし、2,000~10,000mPa・sの範囲では、ローターNo.M4にて回転速度60rpmとした。
【0064】
《塩化物イオン含有量の測定》
原液(X)を200mLビーカーに、それぞれ1.0g、0.5g及び0.1g秤量し、100mL精製水で希釈した後、電位差自動滴定装置(AT-610 京都電子工業社製)のマグネチックスターラーの上に置き、マグネット回転子を入れて撹拌した。その後、複合銀電極とビュレットを希釈した原液(X)中に浸し、0.01mol/L硝酸銀溶液で滴定し、滴下量を元に算出した塩化物イオン含有量の平均値を求めた。
【0065】
《洗浄時における「泡立ち」及びすすぎ時における「すすぎ時の毛髪の滑らかさ」の評価》
下記の各成分をビーカーに取り、80℃に加温後、混合し、均一に溶解したことを確認した後、冷却して、プレーンシャンプーを得た。
(プレーンシャンプーの組成)
(成分) (質量%)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸Na 11.3
(エマールE-27C(花王社製、有効分27質量%)として42.0%)
ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド 3.0
(アミノーン C-11S(花王社製))
クエン酸 0.2
メチルパラベン 0.3
精製水 バランス
計 100.0
【0066】
質量20g、長さ20cmの日本人未処理毛の毛束を上記プレーンシャンプーで洗浄し、評価用毛束を得た。得られた評価用毛束を35~40℃の温水で十分に湿らせた後、ここに各化粧料1gを噴射し、1分間洗浄した。専門パネラー1名により下記評価基準にしたがって、洗浄時における「泡立ち」、すすぎ時における「毛髪の滑らかさ」の各項目につき評価を行った。
【0067】
5:非常によい
4:よい
3:どちらともいえない
2:悪い
1:非常に悪い
【0068】
《細胞間脂質(コレステロール)溶出量の測定》
49mgのセラミドII(高砂香料社製)、21mgのパルミチン酸(シグマアルドリッチ社製)、32mgのコレステロール(シグマアルドリッチ社製)を秤量後、これらに4mLのクロロホルム/メタノール=2/1(v/v)を加え、得られた溶液を30℃で1時間攪拌し、溶解させた。溶媒を窒素気流下にて除去し、得られた粉末を減圧下で終夜乾燥し、細胞間脂質モデルを得た。
得られた細胞間脂質をバイアル瓶に10mg量り取り、エアゾール容器から吐出した各原液(X)5mLを加え、32℃で1時間攪拌した。試験後、上澄みを回収し、細胞間脂質モデルからの溶出物を含む溶液を溶出液として得た。得られた溶出液100μLに対し、メタノール(富士フィルム和光純薬社製)900μL、クロロホルム(富士フィルム和光純薬社製)1000μLを加え、溶媒混合液を得た。この溶媒混合液を下記の方法にて分析し、コレステロール濃度(細胞間脂質溶出量)(μM)を定量した。
【0069】
・装置
G6125B LC/MS(Agilent Technologies)
・クロマトグラフィー分離条件
特開2017-67510号公報、実施例1に記載のクロマトグラフィー分離条件
カラム:L-column ODS 2.1mmi.d.×150mm(化学物質評価研究機構)(40℃)
移動相:A)10mmol/Lイオン化促進剤含有メタノール/水=1/1溶液
移動相:B)2-プロパノール
グラジエント:A100%(0min)→B50%(5min)→B100%(35min)→B100%(45min)
移動相流速:0.2mL/min
平衡化時間:10min
イオン化促進剤:炭酸水素アンモニウム
・MS分析条件
イオン化法 :APCI/Positive
測定モード :SIM
SIMモニターイオン :[M+H-H2O]+
乾燥ガス流量 :4.0L/min
ネブライザー圧力 :60psig
乾燥ガス温度 :350℃
キャピラリー電圧 :2000V
フラグメンター電圧 :150V
【0070】
【0071】
※1:ソイポン SLTA(トリエタノールアミン塩)、川研ファインケミカル社製
※2:アラノン ALE、川研ファインケミカル社製
※3:アミソフト CS-22B、味の素ヘルシーサプライ社製
※4:アキポ LM-26SD、花王社製
※5:ASCO AOS-35(M)、AK Chemtech Co., Ltd.製
※6:ダイヤポン K-SF、日油社製
※7:ソフタゾリン LPB-R、川研ファインケミカル社製
※8:ソフケア KG-101W-E(ポリクオタニウム-52)、花王社製
※9:マーコート2001(ポリクオタニウム-47)、ルブリゾール社製
※10:マーコート2003PR(ポリクオタニウム-53)、ルブリゾール社製
※11:マーコート280NP(ポリクオタニウム-22)、ルブリゾール社製
※12:マーコート550(ポリクオタニウム-7)、ルブリゾール社製
※13:カチセロ L-150(ポリクオタニウム-10)、花王社製
※14:レオドール TW-O 106V、花王社製
※15:レオドール TW-IS399C、花王社製
※16:Glucamate VLT Thickner、ルブリゾール社製
※17:エマノーン CH-40、花王社製
※18:マイドール12、花王社製
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【0073】