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  • 特開-ゴム組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027216
(43)【公開日】2025-02-27
(54)【発明の名称】ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/28 20060101AFI20250219BHJP
   B29B 7/18 20060101ALI20250219BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20250219BHJP
   B29K 19/00 20060101ALN20250219BHJP
【FI】
B29B7/28
B29B7/18
C08J3/20 B CEQ
B29K19:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131824
(22)【出願日】2023-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 信
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
【Fターム(参考)】
4F070AA05
4F070AA06
4F070AA08
4F070AA63
4F070AB16
4F070AC04
4F070AC23
4F070AE01
4F070FA03
4F070FB06
4F070FC03
4F201AA45
4F201AB17
4F201AH20
4F201AM23
4F201AR06
4F201AR20
4F201BA01
4F201BC01
4F201BC12
4F201BC15
4F201BD05
4F201BK01
4F201BK26
4F201BK74
(57)【要約】
【課題】シリカの水分含有率が相互に異なるバッチ間においても、混練り物の特性の均一性を高める。
【解決手段】ここで開示されるゴム組成物の製造方法は、ゴムとシリカとを含む材料を用意する工程と、用意されたシリカの水分含有率を測定する工程と、水分含有率に応じて材料を混練する温度Tを設定する工程と、密閉式混練機を用いて、温度Tで材料を混練する工程と、を含む。かかる構成によると、シリカの水分含有率が相互に異なるバッチ間においても、混練り物の特性の均一性を高めることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムとシリカとを含む材料を用意する工程と、
前記用意されたシリカの水分含有率を測定する工程と、
前記水分含有率に応じて前記材料を混練する温度Tを設定する工程と、
密閉式混練機を用いて、前記温度Tで前記材料を混練する工程と、
を含む、
ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記設定する工程では、
前記水分含有率が予め定められた標準水分含有率の範囲内に含まれる場合は、前記温度Tを予め定められた標準混練温度Tに設定し、
前記水分含有率が前記標準水分含有率の範囲における上限よりも高い場合は、前記温度Tを前記標準混練温度Tよりも高い温度に設定し、
前記水分含有率が前記標準水分含有率の範囲における下限よりも低い場合は、前記温度Tを前記標準混練温度Tよりも低い温度に設定する、
請求項1に記載された製造方法。
【請求項3】
前記温度Tは、40℃以上90℃以下に設定される、請求項1に記載された製造方法。
【請求項4】
前記標準水分含有率の範囲は、前記用意されたシリカ全体を100質量%としたときに5.5質量%以上7.5質量%以下である、請求項2に記載された製造方法。
【請求項5】
前記標準混練温度Tは、50℃以上70℃以下に設定される、請求項2に記載された製造方法。
【請求項6】
前記用意する工程では、100質量部のゴムに対して100質量部以上のシリカが含まれる前記材料を用意する、請求項1に記載された製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-8235号公報には、少なくともゴム成分とシリカとを含むタイヤ用ゴム組成物の製造方法が開示されている。かかる製造方法は、タイヤ用ゴム組成物の原料を、密閉式混合機で混練する工程を含んでおり、混練工程に先立ち、シリカに含まれる水分を減量する処理を行うことを特徴としている。同公報では、シリカの水分減少処理として、シリカを100℃の温度で少なくとも10分間加熱することが例示されている。そして、かかる処理を実施することによって、密閉式混合機内での混練時に、混練室からの粉末状配合剤の噴き出しを抑制することができると記載されている。
【0003】
特開2012-185102号公報には、フィラーを配合剤として混合するゴム混合機を用いるプロセスにおける、フィラーの混合方法が開示されている。かかる混合方法は、ゴム混合機にフィラーを投入する前に、投入するフィラーの全量の水分率を測定する工程を有している。この方法では、上記工程で測定された水分率が基準水分率より多い場合には、フィラーを乾燥させて基準水分率にした後にゴム混合機へ投入する。また、上記工程で測定された水分率が基準水分率と同じである場合には、そのままゴム混合機へ投入する。また、上記工程で測定された水分率が基準水分率より少ない場合には、前記フィラーに加水して基準水分率にした後にゴム混合機へ投入する。同公報には、この方法によれば、フィラー全体の水分率を精確に把握できるため、常に一定の水分率のフィラーを混合機へ投入することができる、と記載されている。
【0004】
特開2006-205584号公報に開示されたゴム混練方法では、混練手段と、計量手段と、計量手段で計量されたシリカを混練手段へ搬送する過程でシリカの含水率を測定する含水率測定手段と、計量手段で計量されたシリカに対して水を供給する給水手段と、これら計量手段、含水率測定手段及び給水手段を統制する制御手段とを備えたゴム混練設備が用いられている。このゴム混練方法は、含水率測定手段で測定された実際の含水率と計量手段で測定されたシリカの重量に基づいて目標の含水率に対する不足水分量を計算し、不足水分量に基づいて給水手段からの給水量を制御し、給水を受けたシリカを混練手段においてシランカップリング剤と共にゴムコンパウンド中に混練するように構成されている。同公報には、このゴム混練方法では、混練に先駆けてシリカの含水率を測定し、含水率を目標値に近づけることができるため、シリカをゴムコンパウンド中に混練する際に、シリカとシランカップリング剤との反応を安定化し、ゴムコンパウンドの品質を安定できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-8235号公報
【特許文献2】特開2012-185102号公報
【特許文献3】特開2006-205584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ゴムとシリカとを含む材料を混練りする場合、バッチ毎に、シリカの水分含有率が異なることによって、材料における反応の進行度合いに差が生じうる。本発明者は、シリカの水分含有率が相互に異なるバッチ間においても、混練り物の特性の均一性を高めたいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示されるゴム組成物の製造方法は、ゴムとシリカとを含む材料を用意する工程と、用意されたシリカの水分含有率を測定する工程と、水分含有率に応じて材料を混練する温度Tを設定する工程と、密閉式混練機を用いて、温度Tで材料を混練する工程と、を含む。かかる構成によると、シリカの水分含有率が相互に異なるバッチ間においても、混練り物の特性の均一性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、混練機1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここで開示されるゴム組成物の製造方法を、図面を参照しつつ説明する。なお、ここで開示される技術は、以下の実施形態に限定されない。図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいてここで開示される技術を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面における「L」、「R」、「U」、および「D」の表記は、それぞれ、「左」、「右」、「上」、および「下」を表す。また、本明細書において、数値範囲に関して「P~Q」の表記は、「P以上Q以下」を意味するとともに、「P以上Q未満」、「P超過Q未満」、および、「P超過Q以下」をも意味する。
【0010】
〈ゴム組成物の製造方法〉
ここで開示されるゴム組成物の製造方法は、例えば、用意工程と、測定工程と、設定工程と、混練工程と、を含む。
【0011】
―用意工程―
用意工程は、例えば、ここで開示される製造方法の製造対象たるゴム組成物の構成材料を用意する工程である。この実施形態では、用意工程では、ゴムとシリカとを含む材料を用意する。ゴムとしては、この種の用途で用いられるゴムが特に制限なく用いられる。ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR);イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンブタジエンイソプレンゴム(SBIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、ブチルゴム(BR)等の合成ゴム;が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わせられてもよい。
【0012】
シリカとしては、この種の用途で用いられるシリカが特に制限なく用いられる。シリカは、乾式法によって調製されたシリカ(無水ケイ酸)と、湿式法によって調製されたシリカ(含水ケイ酸)とのいずれであってもよい。乾式法によって調製されたシリカは、例えば、燃焼法によって調製されたシリカであってもよく、アーク法によって調製されたシリカであってもよい。湿式法によって調製されたシリカは、例えば、沈降法によって調製されたシリカであってもよく、ゲル法によって調製されたシリカであってもよい。ここで開示される技術の効果が好ましく実現される観点からは、シリカは、相対的に水分含有率が高い、湿式法によって調製されたシリカであることが好ましい。なお、上述したシリカは、単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わせられてもよい。
【0013】
シリカの配合量は、特に限定するものではないが、ゴム100質量部に対して、10質量部~200質量部に設定されうる。シリカの配合量は、ここで開示される技術を適用する観点から、ゴム100質量部に対して、例えば50質量部以上であり、75質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましい。一方で、シリカの分散不良を抑制する観点から、シリカの配合量は、ゴム100質量部に対して、175質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましい。
【0014】
必要に応じて、材料に添加剤を含ませてもよい。添加剤としては、例えば、シリカ以外の充填剤(例えばカーボンブラック、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等)、シランカップリング剤、シラン、レジン、オイル、老化防止剤、四ホウ酸カリウム、加工助剤、金属離型剤、ワックス、硫黄、加硫促進剤、加硫促進助剤等が挙げられる。添加剤の種類および含有量は、適宜設定されうる。
【0015】
ところで、本発明者の知見によれば、湿式法(例えば沈降法)によって調製されたシリカにおける水分含有率は、概ね4質量%~8質量%であるが、ロット、環境等によってかかる範囲から増減することがわかっている。そのため、シリカの水分含有率のばらつきによって、混練中の材料における反応の進行度合いにばらつきが生じてしまい、バッチ毎の混練り物の特性にばらつきが生じ、延いては混練り物の加工性等にばらつきが生じる可能性がある。本発明者は、バッチ間における混練り物の特性の均一性を高めたい、と考えた。
【0016】
混練り物の加工性に関わる特性について、本発明者は、ムーニー粘度に着目し、検討を行った。かかる検討によって、シリカの水分含有率が大きいほど混練り物のムーニー粘度が小さくなり、シリカの水分含有率が小さいほど混練り物のムーニー粘度が大きくなる傾向があることがわかった。さらに、本発明者は、材料を混練りする際に、混練機の混練槽内の温度を高くするほどムーニー粘度が大きくなり、混練槽内の温度を低くするほどムーニー粘度が小さくなる傾向を見出した。そして、本発明者は、材料として用意されたシリカの水分含有率を測定し、この水分含有率に応じて混練機の混練槽内の温度を調整することについて、着想を得た。以下、バッチ間での均一性を高める対象となる混練り物の特性がムーニー粘度である場合について、ここで開示される製造方法の実施形態を説明する。
【0017】
―測定工程―
測定工程は、例えば、シリカの水分含有率を測定する工程である。シリカの水分含有率は、例えば、用意工程で用意されたシリカの全量を100質量%としたときの、シリカに含まれる水分の割合(質量%)である。シリカの水分含有率を測定する方法は、特に限定されない。例えば、常温(約23℃)におけるシリカの重量Wを測定し、シリカを所定の温度(例えば150℃~250℃)にて所定時間加熱したときのシリカの重量Wを減じることによって、シリカに含まれる水分の重量Wを測定することができる。そして、水分の重量Wに基づいて、シリカの水分含有率を得ることができる。シリカの水分量の測定には、例えば、市販の加熱乾燥式水分計等を用いるとよい。
【0018】
―設定工程―
設定工程は、例えば、材料を混練する温度Tを設定する工程である。温度Tは、ここでは、測定工程で測定されたシリカの水分含有率に応じて設定される。温度Tは、例えば、混練機における混練槽内の温度(ここでは、設定温度)である。温度Tは、例えば、後述の混練工程における反応を促進する観点から、常温以上がよく、30℃以上が好ましく、40℃以上が好ましい。一方で、例えば、混練工程における反応が進みすぎ、混練槽内の温度が急激に上昇するのを抑制する観点から、温度Tは、概ね120℃以下がよく、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
【0019】
温度Tは、例えば、シリカの水分含有率が、予め定められた標準水分含有率の範囲内に含まれる場合、標準混練温度Tに設定される。標準水分含有率の範囲は、例えば、シリカの水分含有率のみを異ならせた材料を、予め定められた混練条件で混練りしたときに、得られた混練り物のムーニー粘度が規定範囲(X~Y(X>0,Y>0,かつ、X<Y))となるシリカの水分含有率の範囲である。また、標準水分含有率の範囲を定めるのに先んじて、材料を混練する温度を予め定めておくとよい。かかる予め定められた温度を標準混練温度Tとすることができる。また、ムーニー粘度の規定範囲は、例えば、混練り物において好適な加工性を実現するムーニー粘度の範囲である。なお、標準水分含有率の範囲を定める際の混練条件は、例えば混練機の種類、材料の組成、所望する混練り物の量、混練り物の組成等によって、適宜設定することができる。
【0020】
一方で、測定工程で得られたシリカの水分含有率が、標準水分含有率の範囲における上限よりも高い場合は、混練り物のムーニー粘度が規定範囲の下限(ここでは、X)よりも小さくなることがある。かかる観点から、例えば、温度Tを標準混練温度Tよりも高い温度に設定するとよい。あるいは、測定工程で得られたシリカの水分含有率が、標準水分含有率の範囲における下限よりも低い場合は、混練り物のムーニー粘度が規定範囲の上限(ここでは、Y)よりも大きくなることがある。かかる観点から、例えば、温度Tを標準混練温度Tよりも低い温度に設定するとよい。
【0021】
標準混練温度Tは、例えば、混練機の種類、材料の組成、所望する混練り物の量、混練り物の組成等によって、適宜設定することができる。ここで開示される技術の効果を実現できる限りは特に限定されないが、標準混練温度Tは、概ね20℃~100℃に設定されるとよい。必要に応じて、温度Tが標準混練温度Tよりも高い温度、あるいは、低い温度に設定されることを考慮すると、標準混練温度Tは、例えば常温以上であり、30℃以上であってもよく、40℃以上がよく、45℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、55℃以上がさらに好ましい。また、標準混練温度Tは、例えば95℃以下であり、90℃以下であってもよく、80℃以下がよく、75℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、65℃以下がさらに好ましい。
【0022】
標準水分含有率の範囲は、例えば、混練機の種類、材料の組成、所望する混練り物の量、混練り物の組成等によって、適宜設定することができる。ここで開示される技術の効果を実現できる限りは特に限定されないが、標準水分含有率の範囲は、概ね4質量%~8質量%に設定することができる。バッチ間における混練り物の特性(ここでは、ムーニー粘度)をより均一なものとする観点から、標準水分含有率の範囲は、上述の範囲よりも狭く設定されることが好ましい。この場合において、標準水分含有率の範囲は、5.5質量%~7.5質量%に設定されるが好ましい。
【0023】
ムーニー粘度の規定範囲は、例えば、混練り物の用途、混練り物を加工する装置の種類等によって、混練り物の加工性を考慮しつつ、適宜設定されうる。かかる観点から、混練り物のムーニー粘度は、75以下が好ましく、70以下がより好ましい。また、混練り物のムーニー粘度は、55以上が好ましい。好ましい一態様において、ムーニー粘度の規定範囲は、55以上70以下である。
【0024】
―混練工程―
混練工程は、例えば、密閉式混練機を用いて材料を混練する工程である。密閉式混練機は、例えば、ニーダーミキサー、バンバリーミキサー等である。以下では、密閉式混練機としてバンバリーミキサーが用いられる態様を説明するが、ここで開示される技術において用いられる密閉型混練機がバンバリーミキサーに限定されることを意図したものではない。ここで開示される技術において用いられる密閉型混練機としては、バンバリーミキサーと同様、ニーダーミキサーも好ましく用いられうる。図1は、混練機1の断面図である。図1に示された混練機1の構成は、一例にすぎず、密閉式混練機1としては、この種の用途で用いられる市販の混練機を特に制限なく使用することができる。混練機1は、図1に示されているように、混練槽(混練室)11と、供給室12と、投入部13とを備えている。混練槽11は、例えば、材料を混練する部位である。この実施形態では、混練槽11は、接続口11aを介して供給室12と接続されている。
【0025】
この実施形態では、混練槽11には、一対のロータRが設けられている。例えば、かかる一対のロータRの回転によって、混練槽11内で材料が混練され、混練り物が調製される。図1に示されているように、混練槽11は、下部に排出口11bを有している。例えば、排出口11bを介して、混練槽11内で調製された混練り物は、混練機1外に排出される。図1に示されているように、排出口11bには、ドア11cが取り付けられている。例えば、ドア11cを開くことによって混練槽11を外部に対して開放し、ドア11cを閉じることによって混練槽11を密閉することができる。
【0026】
供給室12は、例えば、材料およびフローティングウエイト12aの移動通路となる空間である。図1に示されているように、供給室12は、上下方向に延びた円筒状の空間である。この実施形態では、供給室12には、投入部13が設けられている。投入部13は、材料を混練機1に投入する部位である。投入部13から投入された材料は、供給室12内を通り、接続口11aを通過して混練槽11に投入される。
【0027】
この実施形態では、供給室12には、フローティングウエイト(ラム)12aとシャフト12bとが設けられている。フローティングウエイト12aは、例えば、接続口11aを閉塞する部材である。この実施形態では、フローティングウエイト12aを供給室12内で下降させて接続口11aを閉塞することによって、混練槽11内を密閉する。シャフト12bは、例えば、フローティングウエイト12aを支持し、供給室12内を上下方向に移動させる部材である。図1に示されているように、シャフト12bは、フローティングウエイト12aから上方に延びている。
【0028】
混練機1を用いた混練では、例えば、まず、フローティングウエイト12aを投入部13よりも上側に引き上げた状態で、材料を投入部13から混練槽11内に投入する。次いで、供給室12内でフローティングウエイト12aを下降させて接続口11aを閉塞し、混練槽11を密閉する。次いで、ロータRを回転させて、混練槽11内で材料を混練し、混練り物を作製する。そして、得られた混練り物を、混練機1の外に排出する。
【0029】
この実施形態では、混練工程において、温度Tで材料を混練する。ここでは、混練槽11の温度を温度Tに設定する。本工程における合計の混練時間等は特に限定されず、例えば、混練り物の物性を考慮して、適宜設定されうる。
【0030】
上述のとおり得られた混練り物は、例えば、図示されない押出機に通されることによって、シート状に成形されうる。かかるシート状成形物は、例えばタイヤ用のゴム組成物や制振装置用の高減衰ゴム組成物として用いられうる。このタイヤ用ゴム組成物は、例えば、乗用車用、バス、トラック等の大型車用、レース車用等に用いられうる。このタイヤ用ゴム組成物は、例えば、トレッドゴム用のゴム組成物、サイドウォールゴム用のゴム組成物等として用いられ、なかでもトレッドゴム用のゴム組成物として好ましく用いられうる。
【0031】
上述のとおり、ここで開示されるゴム組成物の製造方法は、用意工程と、測定工程と、設定工程と、混練工程と、を含む。用意工程では、ゴムとシリカとを含む材料を用意する。測定工程では、用意されたシリカの水分含有率を測定する。設定工程では、水分含有率に応じて材料を混練する温度Tを設定する。混練工程では、密閉式混練機を用いて、温度Tで材料を混練する。この製造方法では、材料のバッチ毎にシリカ水分含有率を測定して、混練りする温度Tを設定している。これによって、バッチ毎に適した温度で、材料を混練りすることができる。このため、バッチ間における混練り物の特性(例えば、ムーニー粘度)の均一性を高めることができる。また、ここで開示される製造方法では、例えばシリカを乾燥させる設備、工程等の設置を省略することができる。
【0032】
設定工程では、シリカの水分含有率が予め定められた標準水分含有率の範囲内に含まれる場合は、温度Tを予め定められた標準混練温度Tに設定してもよい。シリカの水分含有率が標準水分含有率の範囲における上限よりも高い場合は、温度Tを標準混練温度Tよりも高い温度に設定してもよい。シリカの水分含有率が標準水分含有率の範囲における下限よりも低い場合は、温度Tを標準混練温度Tよりも低い温度に設定してもよい。設定工程をかかる構成とすることによって、混練りする温度Tを、バッチ毎に適したものとすることができる。このため、ここで開示される技術の効果をよりよく実現することができる。
【0033】
温度Tは、40℃以上90℃以下に設定されてもよい。これによって、混練工程における反応の進行度合いを、よりよくコントロールすることができる。
【0034】
標準水分含有率の範囲は、前記用意されたシリカ全体を100質量%としたときに5.5質量%以上7.5質量%以下であってもよい。標準水分含有率を上記範囲に設定することで、バッチ間における混練り物の特性の均一性をより高めることができる。
【0035】
標準混練温度Tは、50℃以上70℃以下に設定されてもよい。シリカの水分含有率が標準水分率の範囲内にある場合は、標準混練温度T(この場合は、温度T)が上記範囲にあることで、混練り物に好ましい特性を実現することができる。シリカの水分含有率が標準水分率の範囲外にある場合でも、標準混練温度Tが上記範囲にあることで、好適な温度Tを設定することができ、混練り物に好ましい特性を実現することができる。
【0036】
用意工程では、100質量部のゴムに対して100質量部以上のシリカが含まれる材料を用意してもよい。ここで開示される技術の効果は、ゴムよりもシリカが多く含まれる材料の混練り物を得る際に、より好ましく実現される。
【0037】
以下、本開示に関する試験例を説明するが、本開示をかかる試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0038】
"材料"
ゴムと、シリカと、カーボンブラックとオイルとを含む添加剤と、を含む材料を用意した。この材料における各成分の配合量は、ゴム100質量部に対して、シリカは120質量部であり、カーボンブラックは3質量部であり、オイルは30質量部であった。なお、ゴムとしては、天然ゴム(TSR20)と、合成ゴムとしてのSBR、BRと、を含むゴムを用意した。シリカとしては、東ソー株式会社製「ニプシルVN3」を用意した。カーボンブラックとしては、東海カーボン株式会社製「シースト3」を用意した。
【0039】
"シリカの水分含有率測定"
シリカについて、水分量を調整する処理を施した。その後、シリカの水分含有率を測定した。ここでは、加熱乾燥式水分計(株式会社エー・アンド・デイ製「MX-50」)を用いて、当該測定機器のマニュアルに沿いつつ、常温における各シリカの重量から、該シリカを200℃にて加熱したときの各シリカの重量を減じることによって得られた値に基づいて、各シリカの水分含有率(質量%)を測定した。なお、シリカの加熱は、シリカの重量変化率が0.05%/minになった時点で終了とした。結果を表1の「水分含有率(質量%)」欄に示す。
【0040】
"実施例1"
ゴムと、シリカと、カーボンブラックと、オイルと、レジンと、加硫促進助剤と、シランと、を含む材料を用意した。この材料を、密閉式混練機としてのニーダーミキサー(株式会社森山製作所製、容量:3L)に投入し、混練することによって、本例の混練り物を作製した。本例における混練では、ニーダーミキサーの混練槽内の温度を60℃と設定し、ロータ回転速度を30rpmに設定した。また、混練機の温度が150℃に達したら、材料をさらに15分間混練して、混練を終了した。ここでの合計の混練り時間は、30分間であった。
【0041】
"実施例2"
表1に示された水分含有率を有するシリカを用いた。また、材料を混練りする際、ニーダーミキサーの混練槽内の温度を90℃に設定した。これらのこと以外は実施例1と同じ材料と手順とを用いて、本例の混練り物を用意した。
【0042】
"実施例3"
表1に示された水分含有率を有するシリカを用いた。また、材料を混練りする際、ニーダーミキサーの混練槽内の温度を40℃に設定した。これらのこと以外は実施例1と同じ材料と手順とを用いて、本例の混練り物を用意した。
【0043】
"比較例1"
材料を混練りする際、ニーダーミキサーの混練槽内の温度を60℃に設定した。これらのこと以外は実施例2と同じ材料と手順とを用いて、本例の混練り物を用意した。
【0044】
"比較例2"
材料を混練りする際、ニーダーミキサーの混練槽内の温度を60℃に設定した。これらのこと以外は実施例3と同じ材料と手順とを用いて、本例の混練り物を用意した。
【0045】
"ムーニー粘度の測定"
各例で得られた混練り物について、市販の測定装置(島津製作所社製「SMV300」)を用いて、JIS K6301に基づき、130℃でムーニー粘度(ML1+4)を測定した。ここで、55以上75以下のムーニー粘度を有する例を「○(合格)」と評価し、55未満または75超過のムーニー粘度を有する例を「×(不合格)」と評価した。評価結果を、ムーニー粘度の測定値とともに表1の該当欄に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示されているように、実施例1~実施例3によれば、測定されたシリカの水分含有率に応じて材料を混練する温度を設定し、当該温度で材料を混練することによって、水分含有率が相互に異なる材料であっても、バッチ間における混練り物の特性(ここでは、ムーニー粘度)の均一性を高めることができるとわかった。
【0048】
以上、ここで開示されるゴム組成物の製造方法について説明したが、ここで開示される製造方法は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態や変形例に限定されない。また、上述した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。なお、上述した実施形態では、バッチ間での均一性を高める対象となる混練り物の特性がムーニー粘度である場合について、説明した。しかし、かかる混練り物の特性は、ムーニー粘度に限られず、tanδ、シリカ分散率等であってもよい。
【0049】
本発明(1)は、ゴム組成物の製造方法に関する。ここで、本発明(1)におけるゴム組成物の製造方法は、
ゴムとシリカとを含む材料を用意する工程と、
前記用意されたシリカの水分含有率を測定する工程と、
前記水分含有率に応じて前記材料を混練する温度Tを設定する工程と、
密閉式混練機を用いて、前記温度Tで前記材料を混練する工程と、
を含む。
【0050】
本発明(2)は、
前記設定する工程では、
前記水分含有率が予め定められた標準水分含有率の範囲内に含まれる場合は、前記温度Tを予め定められた標準混練温度Tに設定し、
前記水分含有率が前記標準水分含有率の範囲における上限よりも高い場合は、前記温度Tを前記標準混練温度Tよりも高い温度に設定し、
前記水分含有率が前記標準水分含有率の範囲における下限よりも低い場合は、前記温度Tを前記標準混練温度Tよりも低い温度に設定する、
本発明(1)に記載された製造方法である。
【0051】
本発明(3)は、前記温度Tが40℃以上90℃以下に設定される、本発明(1)または(2)に記載された製造方法である。
【0052】
本発明(4)は、前記標準水分含有率の範囲が、前記用意されたシリカ全体を100質量%としたときに5.5質量%以上7.5質量%以下である、本発明(2)に記載された製造方法である。
【0053】
本発明(5)は、前記標準混練温度Tが50℃以上70℃以下に設定される、本発明(2)または(4)に記載された製造方法である。
【0054】
本発明(6)は、前記用意する工程では、100質量部のゴムに対して100質量部以上のシリカが含まれる前記材料を用意する、本発明(1)~(5)のいずれか一項に記載された製造方法である。
【符号の説明】
【0055】
1 混練機
11 混練槽
12 供給室
13 投入部
R ロータ
図1