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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002725
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】作業機械の流体圧回路
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20241226BHJP
   F15B 11/17 20060101ALI20241226BHJP
   F15B 11/042 20060101ALI20241226BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F15B11/02 M
F15B11/17
F15B11/02 J
F15B11/042
E02F9/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103062
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】喜安 浩一
(72)【発明者】
【氏名】多田 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】ゴン ヒョンオ
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB04
2D003BA01
2D003BB02
2D003CA04
2D003CA09
2D003DA04
2D003DB02
3H089AA22
3H089AA65
3H089AA67
3H089AA72
3H089BB05
3H089CC01
3H089CC11
3H089DA03
3H089DA07
3H089DB12
3H089DB32
3H089DB43
3H089EE36
3H089FF08
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】単独操作時のアタッチメントの作動速度を確実かつ滑らかに増加させることができる作業機械の油圧回路を提供する。
【解決手段】コントローラ27は、他のポンプ25の圧力をフィードバックして一のポンプ25のバイパス制御弁37の開口量を制御することで一のポンプ25の圧力を他のポンプ25の圧力へ近づけてから、走行直進弁28を介して一のポンプ25からの作動油に他のポンプ25からの作動油を合流させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポンプと、
これらポンプから複数の流体圧アクチュエータに供給される作動流体を制御する複数の制御弁と、
走行直進弁と、
ポンプから吐出される作動流体をタンクにバイパスするバイパス制御弁と、
アタッチメント単独操作時に、アタッチメント用の流体圧アクチュエータへの作動流体の要求流量に応じて、一のポンプからの作動流体に他のポンプからの作動流体を合流させてアタッチメント用の制御弁に導入させるように走行直進弁およびバイパス制御弁を作動させるコントローラと、を備え、
コントローラは、他のポンプの圧力をフィードバックして一のポンプのバイパス制御弁の開口量を制御することで一のポンプの圧力を他のポンプの圧力へ近づけてから、走行直進弁を介して一のポンプからの作動流体に他のポンプからの作動流体を合流させる
ことを特徴とする作業機械の流体圧回路。
【請求項2】
走行直進弁は、開口特性に、ストローク量に対する開口面積の変化が抑制されたノッチ領域が設定されている
ことを特徴とする請求項1記載の作業機械の流体圧回路。
【請求項3】
アタッチメント用の流体圧アクチュエータは、バケットシリンダである
ことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械の流体圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプから複数の流体圧アクチュエータに作動流体を供給する作業機械の流体圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2ポンプシステムを採用する油圧ショベル等の作業機械において、バケットの開閉動作については1ポンプからの作動油のみで制御することが一般的である。
【0003】
一方、作業機械においては、特にバケットの単独操作時に、その開閉速度を増速したいというニーズがある。
【0004】
この点、2ポンプ分の作動油をバケットシリンダに供給することが考えられるものの、バケット用の制御弁を2本にしたり、流量制御弁を使用したりすると、スペースおよびコストが増大する。
【0005】
そこで、例えば走行と他の油圧アクチュエータとの連動操作時に走行曲がりを防ぐために左右走行を1ポンプに集約して作動させる走行直進機能に利用される走行直進弁等の、油圧回路に備えられている合流切換弁を用いて、2ポンプ分の作動油を合流させ、バケットシリンダ等の油圧アクチュエータの作動速度を増加させるものが知られている(例えば、特許文献1乃至4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-6174号公報
【特許文献2】特開2000-45340号公報
【特許文献3】特開2004-100847号公報
【特許文献4】特開2011-247365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特にバケットシリンダでは、土の有無に応じて、バケットシリンダに作動油を供給するポンプの圧力が大きく異なり、例えばこの圧力が高い状態で、圧力が相対的に低い他のポンプから作動油を合流させると、ポンプ圧がアンロードしてしまい、適切な増速が得られないおそれがある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、単独操作時のアタッチメントの作動速度を確実かつ滑らかに増加させることができる作業機械の流体圧回路を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、複数のポンプと、これらポンプから複数の流体圧アクチュエータに供給される作動流体を制御する複数の制御弁と、走行直進弁と、ポンプから吐出される作動流体をタンクにバイパスするバイパス制御弁と、アタッチメント単独操作時に、アタッチメント用の流体圧アクチュエータへの作動流体の要求流量に応じて、一のポンプからの作動流体に他のポンプからの作動流体を合流させてアタッチメント用の制御弁に導入させるように走行直進弁およびバイパス制御弁を作動させるコントローラと、を備え、コントローラが、他のポンプの圧力をフィードバックして一のポンプのバイパス制御弁の開口量を制御することで一のポンプの圧力を他のポンプの圧力へ近づけてから、走行直進弁を介して一のポンプからの作動流体に他のポンプからの作動流体を合流させる作業機械の流体圧回路である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の作業機械の流体圧回路における走行直進弁が、開口特性に、ストローク量に対する開口面積の変化が抑制されたノッチ領域が設定されている作業機械の流体圧回路である。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の作業機械の流体圧回路におけるアタッチメント用の流体圧アクチュエータが、バケットシリンダである作業機械の流体圧回路である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、直進走行のための走行直進弁を利用して、アタッチメント用の流体圧アクチュエータの単独操作時に、複数のポンプからの作動流体を少ないショックで合流させて供給し、アタッチメントの作動速度を確実かつ滑らかに増加させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、合流される作動流体の流量をノッチ領域で滑らかに変化させることができ、走行直進弁を介した作動流体の合流時のショックをより確実に抑制できる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、バケットの負荷に応じて変動する一のポンプの負荷圧に応じた適切な増速が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る作業機械の流体圧回路の第1の実施の形態を示す回路図であり、(a)は連動操作かつ走行直進機能オフ状態を示し、(b)は連動操作かつ走行直進機能オン状態を示し、(c)はアタッチメントの単独操作状態を示す。
図2】同上流体圧回路におけるコントローラによるアタッチメントの単独操作時における走行直進弁の使用判断の制御を示すフローチャートである。
図3】同上流体圧回路のアタッチメント用の操作装置の操作量と、ポンプ要求流量、および、アタッチメント用の制御弁と走行直進弁とのストロークと、の関係の一例を示すグラフである。
図4】同上流体圧回路の走行直進弁のノッチ制御の開口特性の一例を示すグラフである。
図5】同上流体圧回路を備える作業機械の例を示す側面図である。
図6】本発明に係る作業機械の流体圧回路の第2の実施の形態を示す回路図であり、(a)は連動操作かつ走行直進機能オフ状態を示し、(b)は連動操作かつ走行直進機能オン状態を示し、(c)はアタッチメントの単独操作状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、図1乃至図5に示された第1の実施の形態、および、図6に示された他の実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0017】
先ず、図1乃至図5に示された第1の実施の形態について説明する。
【0018】
図5において、1は作業機械である。作業機械1は、旋回型の作業機械を例に挙げ、図示される例では、油圧ショベルである。作業機械1は、下部走行体2およびこの下部走行体2に旋回可能に設けられた旋回体である上部旋回体3を備える。
【0019】
下部走行体2は、左右一対の履帯式走行装置5を備える。各履帯式走行装置5は、前後に長尺のフレーム6に対し、スプロケット7、従動輪(アイドラ)8および複数の履帯ローラ9がそれぞれ回転自在に設けられ、無端状の履帯10がそれらに亘り巻き掛けられている。スプロケット7が、流体圧アクチュエータとしての流体圧モータである走行モータ11により回転駆動されて履帯10が回行駆動される。
【0020】
上部旋回体3は、下部走行体2のフレーム6に対し、旋回支持部13により旋回可能に支持されている。上部旋回体3は、流体圧アクチュエータとしての流体圧モータである旋回モータ14により旋回支持部13を中心として下部走行体2に対して旋回される。
【0021】
上部旋回体3には、オペレータが着座する運転室であるキャブ16の側方に作業装置17が軸連結される。また、上部旋回体3には、エンジンやポンプ、コントロールバルブ等が収容された機械室18が設けられ、作業装置17を挟んでキャブ16と反対側の側方に、作動油タンクや燃料タンク等の各種タンク等が設けられ、かつ、機械室18や各種タンクに対して作業装置17とは反対側の端部に、カウンタウエイト19が搭載される。
【0022】
作業装置17は、複数のリンク部材21を備え、それらリンク部材21が流体圧アクチュエータとしての流体圧シリンダである油圧シリンダ22の伸縮に応じて動作される。本実施の形態において、作業装置17は、リンク部材としてのブーム21a、リンク部材としてのスティック(アーム)21b、リンク部材としてのアタッチメントであるバケット21cを有する。ブーム21aは、基端部が上部旋回体3に軸連結され、スティック21bは、基端部がブーム21aの先端部に軸連結され、バケット21cは、スティック21bの先端部に軸連結される。ブーム21a、スティック21b、および、バケット21cは、それぞれ油圧シリンダであるブームシリンダ22a、油圧シリンダであるスティックシリンダ(アームシリンダ)22b、および、油圧シリンダであるバケットシリンダ22cにより回動される。ブーム21aは、ブームシリンダ22aの伸縮により機体、すなわち上部旋回体3に対して上下回動可能であり、スティック21bは、スティックシリンダ22bの伸縮によりブーム21aに対して前後回動可能であり、バケット21cは、バケットシリンダ22cの伸縮によりスティック21bに対して前後回動可能である。なお、作業装置17の構成は、この構成に限定されず、4以上のリンク部材21を備えるように構成してもよいし、バケット21cに代えて、適宜のアタッチメントが取り付けられてもよい。
【0023】
作業機械1には、図1(a)乃至図1(c)に示される流体圧回路である油圧回路が搭載される。油圧回路は、複数のポンプ(メインポンプ)25と、これらポンプ25から複数の流体圧アクチュエータに供給される作動流体である作動油を制御する複数の制御弁26と、制御弁26の動作を制御するコントローラ27と、を備える。
【0024】
ポンプ25は、3つ以上でもよいが、本実施の形態では例えば第一ポンプ25aと第二ポンプ25bとの一対が設定されている。ポンプ25は、エンジンの出力軸に接続され、エンジンにより駆動される。ポンプ25としては、例えば可変容量型ポンプが用いられる。
【0025】
制御弁26は、コントロールバルブとして1ブロック内に集合して設けられたスプール弁である。ポンプ25から吐出された作動油が制御弁26に供給され、これらの制御弁26の変位方向および変位量に応じて作動油を方向制御および流量制御して、流体圧アクチュエータにそれぞれ供給するようになっている。各制御弁26は、レバーまたはペダル等の操作装置の操作量に応じて制御される。操作装置の操作量に応じた信号がコントローラ27の入力側に入力され、その入力された信号に基づきコントローラ27から出力される流量指令用の指令信号の電流値に応じて、ポンプ25による作動油の吐出量が制御される。すなわち、本実施の形態において、ポンプ25は、電流制御式のものであり、コントローラ27から出力される指令信号を受けた電磁弁(電磁比例弁)により作動されるレギュレータによって斜板等の容量可変手段が制御されることで、無負荷時の最小流量から負荷に応じて可変調整可能となっている。
【0026】
本実施の形態では、制御弁26には、ポンプ25のそれぞれに対応して制御弁グループが設定されている。つまり、1つのポンプ25毎に、1つの制御弁グループが設定されている。図示される例では、主として第一ポンプ25aから吐出された作動油を流体圧アクチュエータに供給する第一制御弁グループBGaと、主として第二ポンプ25bから吐出された作動油を流体圧アクチュエータに供給する第二制御弁グループBGbと、が設定されている。
【0027】
第一制御弁グループBGaと第二制御弁グループBGbとの一方には、一方の走行モータ11(図5)に供給される作動油の流量および方向を制御する走行用の制御弁26が少なくとも含まれ、他方には、他方の走行モータ11(図5)供給される作動油の流量および方向を制御する走行用の制御弁26が少なくとも含まれる。
【0028】
一例として、本実施の形態の第一制御弁グループBGaには、例えば右側の走行モータ11(図5)に供給される作動油の流量および方向を制御する走行用の制御弁26trRと、ブームシリンダ22a(図5)に供給される作動油の流量および方向を制御するブーム用の制御弁26bmと、アタッチメント用の流体圧アクチュエータであるバケットシリンダ22c(図5)に供給される作動油の流量および方向を制御するアタッチメント用(バケット用)の制御弁26atと、が少なくとも含まれる。
【0029】
また、第二制御弁グループBGbには、例えば左側の走行モータ11(図5)に供給される作動油の流量および方向を制御する走行用の制御弁26trLと、スティックシリンダ22b(図5)に供給される作動油の流量および方向を制御するスティック用の制御弁26stと、旋回モータ14(図5)に供給される作動油の流量および方向を制御する旋回用の制御弁26swと、が少なくとも含まれる。
【0030】
なお、各制御弁26から各流体圧アクチュエータへの作動油の供給通路および供給された作動油をタンクへと戻すリターン通路については図示を省略している。
【0031】
また、走行用の制御弁26trL、26trRを除く制御弁26については、制御弁グループBGa,BGb毎にまとめて図示している。
【0032】
さらに、制御弁26については、その他の任意の動作部に供給される作動油の流量および方向を制御するものが含まれていてよく、その制御弁26が第一制御弁グループBGaと第二制御弁グループBGbとのいずれに含まれているかは任意であって、本実施の形態では説明を明確にするために図示を省略している。
【0033】
そして、これら2つの制御弁グループBGa,BGb間に、直進走行用の走行直進弁28が設けられている。走行直進弁28は、左右の走行モータ11(図5)用の制御弁26への作動油の等量供給を確保することで、作業機械1(図5)の直進を可能とするものである。走行直進弁28は、走行直進機能のオフ位置である第一位置Xと、走行直進機能のオン位置である第二位置Yと、が設定されている。走行直進機能のオンオフについては、例えばスイッチ等の設定手段を用いてオペレータにより設定される。本実施の形態において、走行直進弁28には、比例制御弁が用いられる。すなわち、走行直進弁28は、第一位置Xと第二位置Yとの間で開口量(ストローク量)が連続的に変化可能に構成されている。
【0034】
本実施の形態において、走行直進弁28のスプールには、流出側と流入側とのそれぞれにノッチ部が形成されている。ノッチ部は、走行直進弁28の開口特性において、ストローク量(スプール移動量)に対して開口面積の変化を抑制し、作動油を整流することで走行直進弁28の開閉時の急動作に対するショックを緩和するノッチ領域を設定するものであり、例えばスプールのランド部の外周部にスプール移動方向に沿って形成された複数の切欠部からなる。例えば、本実施の形態の走行直進弁28の開口特性の一例を図4に示す。従来例の走行直進弁では、機械加工の簡素化と切り換え時のショックの緩和とを両立する最低限のノッチ領域しかなかったのに対して、図示される例では、二点鎖線に示される従来例と比較して、アタッチメント用の流体圧アクチュエータに流入させるポンプ流量を制御可能な開口量(連続的に変化し、かつ油圧システムとして許容される圧損に収まる開口量)を基準値として、その開口量までノッチ領域ANが拡大されている。ノッチ領域ANは、全ストロークの中央部を少なくとも含み、開口面積が0となる範囲に亘り、設定されている。また、走行直進弁28の開口特性は、ノッチ領域ANにおいても、開口面積0に向かい、ストローク量に対する開口面積の変化が抑制されている。そのため、本実施の形態の走行直進弁28の開口特性は、通常領域とノッチ領域ANとが連なる位置と、ノッチ領域ANにおいて開口面積が0となる近傍の位置と、の2点において、ストローク量に対する開口面積の変化率が変化するように設定されている。
【0035】
そして、図1(a)乃至図1(c)に示されるように、第一ポンプ25aのポンプ通路30a,31aの一方、例えばポンプ通路30aが走行用の制御弁26trRと接続され、他方、例えばポンプ通路31aが走行直進弁28と接続されている。また、第二ポンプ25bのポンプ通路30b,31bの一方、例えばポンプ通路30bがスティック用の制御弁26stおよび旋回用の制御弁26swとそれぞれ接続され、他方、例えばポンプ通路31bが走行直進弁28と接続されている。さらに、ポンプ25には、バイパス制御弁37が設定されている。バイパス制御弁37により、ポンプ25から吐出される作動油をタンク38にバイパス可能である。ポンプ吐出量とバイパス制御弁37の開口量とによりポンプ25のシステム圧が制御される。本実施の形態では、第一ポンプ25aと第二ポンプ25bに対応して、第一バイパス制御弁37aと第二バイパス制御弁37bとが設定されている。バイパス制御弁37a,37bは、バイパス通路36a,36bを介してポンプ通路30a,30bと接続されている。そして、走行直進弁28に対し、ブーム用の制御弁26bmおよびアタッチメント用の制御弁26atと、走行用の制御弁26trLと、が、それぞれ作動油を供給するためのパラレルフィーダ通路32,33で接続されている。パラレルフィーダ通路32と走行用の制御弁26trRとが、逆止弁34を備え作動油を供給するための通路35で接続されている。
【0036】
走行直進弁28の動作は、制御弁26およびバイパス制御弁37の動作とともに、コントローラ27により制御される。コントローラ27は、例えばキャブ16(図5)に搭載された車載コントローラである。
【0037】
コントローラ27は、オペレータが複数の流体圧アクチュエータを連動操作するとき、走行直進機能がオフであれば走行直進弁28を第一位置Xに設定するように、走行直進機能がオンであれば走行直進弁28を第二位置Yに設定するように、それぞれ走行直進弁28の制御用の指令信号を生成し出力する。
【0038】
走行直進機能がオフの場合、図1(a)に示されるように、コントローラ27からの指令信号により第一位置Xとなった走行直進弁28は、ポンプ通路31aとパラレルフィーダ通路32とを連通させ、ポンプ通路31bとパラレルフィーダ通路33とを連通させる。この状態で、第一ポンプ25aから吐出された作動油が走行用の制御弁26trR、ブーム用の制御弁26bm、アタッチメント用の制御弁26at等に導入され、第二ポンプ25bから吐出された作動油が走行用の制御弁26trL、スティック用の制御弁26st、旋回用の制御弁26sw等に導入されて、オペレータによる操作装置の操作量および操作方向に応じて生成された信号がコントローラ27に入力され、コントローラ27が、その信号に基づいて指令信号を生成して出力することで、各制御弁26が独立して動作し、作動油が各流体圧アクチュエータに供給される。そこで、図5に示される各走行モータ11の回転方向および速度、旋回モータ14の回転方向および速度、ブームシリンダ22aの伸縮および速度、スティックシリンダ22bの伸縮および速度、バケットシリンダ22cの伸縮および速度がそれぞれ独立して制御され、オペレータによる操作装置の操作に応じて、下部走行体2の走行、上部旋回体3の旋回、および、作業装置17の動作が行われる。
【0039】
また、走行直進機能がオンの場合、図1(b)に示されるように、コントローラ27は、走行直進弁28を第二位置Yに切り換えるように、走行直進弁28の制御用の指令信号を生成し出力する。第二位置Yとなった走行直進弁28は、ポンプ通路31aとパラレルフィーダ通路33とを連通させ、ポンプ通路31bとパラレルフィーダ通路32とを連通させる。この状態で、第一ポンプ25aから吐出された作動油が走行用の制御弁26trR,26trLに導入され、第二ポンプ25bから吐出された作動油がブーム用の制御弁26bm、アタッチメント用の制御弁26at、スティック用の制御弁26st、旋回用の制御弁26sw等に導入されて、オペレータによる操作装置の操作量および操作方向に応じて生成された信号がコントローラ27に入力され、コントローラ27が、その信号に基づいて指令信号を生成して出力することで、各制御弁26が独立して動作し、作動油が各流体圧アクチュエータに供給される。そこで、作動油が共通の第一ポンプ25aから等量供給された図5に示される各走行モータ11が同方向に同速度で回転することで作業機械1が直進しつつ、旋回モータ14の回転方向および速度、ブームシリンダ22aの伸縮および速度、スティックシリンダ22bの伸縮および速度、バケットシリンダ22cの伸縮および速度がそれぞれ独立して制御され、オペレータによる操作装置の操作に応じて、上部旋回体3の旋回、および、作業装置17の動作が行われる。
【0040】
さらに、図1(c)に示されるように、コントローラ27は、オペレータがアタッチメント、本実施の形態ではバケット21c(図5)を単独操作するとき、作動油の要求流量に応じて、つまりアタッチメントの操作用のレバーまたはペダル等の操作装置の操作量に応じて、走行直進弁28を作動させる指令信号を生成し出力する。
【0041】
すなわち、コントローラ27は、図2に示されるように、アタッチメントの操作用の操作装置の操作が入力されたか否かを判定し(ステップS1)、アタッチメントの操作用の操作装置の操作が入力されたと判定された場合(ステップS1のYESの場合)、そのアタッチメント以外の操作用の操作装置の操作が入力されたか否かを判定し(ステップS2)、アタッチメント以外の操作用の操作装置の操作が入力されていないと判定された場合(ステップS2のNOの場合)、要求流量が一のポンプ25(本実施の形態では第一ポンプ25a)の最大吐出量以下の所定の流量よりも大きいか否かを判定し(ステップS3)、要求流量が所定の流量よりも大きいと判定された場合に、その要求流量と一のポンプ25の吐出量との差分を他のポンプ25(本実施の形態では第二ポンプ25b)から補充するように、走行直進弁28を作動させる。それ以外の判定の場合には、それぞれステップS1に戻る。
【0042】
図3に、アタッチメント用の操作装置の操作量と、ポンプ25a,25b(図1(c))のポンプ要求流量Qa,Qb、および、アタッチメント用の制御弁26at(図5)と走行直進弁28とのストロークSt1,St2と、の関係の一例を示す。図示される例では、操作装置の操作量に応じた所定の流量Qを超える要求流量に対して、走行制御弁28(図1(c))の開口量が操作量に応じて最大ストロークStまで徐々に大きくなるように制御される。
【0043】
本実施の形態では、図1(c)に示されるように、アタッチメント用の流体圧アクチュエータ(バケットシリンダ22c(図5))の単独操作であることにより走行用の制御弁26trRが中立位置にあることで、アタッチメントの操作用の操作装置の操作量に応じて第一ポンプ25aからの作動油が制御弁26trRから通路35を介してパラレルフィーダ通路32からアタッチメント用の制御弁26atに導入される。アタッチメントの操作用の操作装置の操作量が所定の操作量よりも大きい場合には、走行直進弁28が作動し、その開口量に応じて第二ポンプ25bからの作動油が合流されてアタッチメント用の制御弁26atに導入される。そこで、アタッチメントの動作、本実施の形態ではバケット21c(図5)の開閉動作が増速される。
【0044】
このとき、コントローラ27では、複数の流体圧アクチュエータの連動操作の制御から、アタッチメント用の流体圧アクチュエータ(バケットシリンダ22c(図5))の単独操作の制御へと移行する際に、レイトリミッタ処理、つまり走行直進弁28の切り換え速度を抑制する制御を行い、漸次的に滑らかに移行するようにすることが好ましい。同様に、アタッチメント用の流体圧アクチュエータの単独操作の制御から、複数の流体圧アクチュエータの連動操作の制御へと移行する際にも、レイトリミッタ制御を行い、漸次的に滑らかに移行するようにすることが好ましい。
【0045】
特に、アタッチメントがバケット21c(図5)である場合、掘削される土の有無や地盤等に応じて、負荷圧が大きく変動するため、それに応じて、アタッチメント用のアクチュエータに作動油を供給する第一ポンプ25aの圧力が大きく変動する。第一ポンプ25aのポンプ圧が高い状態で、圧力が相対的に低い第二ポンプ25bへ連通させると第二ポンプ25b側の第二バイパス制御弁37bを経由して第一ポンプ25aの圧油がアンロードしたり、合流時のショックが発生したりする。
【0046】
これを回避するため、コントローラ27は、走行直進弁28を介して第二ポンプ25bの作動油を合流させる際に、第一ポンプ25aの圧力をフィードバックし、第二ポンプ25bの圧力を第一ポンプ25aの圧力へ近づけるように第二バイパス制御弁37bの開口量を制御する指令信号を生成して、第二ポンプ25bの圧力を第一ポンプ25aの圧力へ近づけてから合流させる。
【0047】
そこで、直進走行のための走行直進弁28を利用して、省スペースかつ低コストで、アタッチメント用の流体圧アクチュエータの単独操作時に、複数のポンプ25からの作動油を少ないショックで合流させて供給し、アタッチメントの作動速度を確実かつ滑らかに増加させることができる。
【0048】
特に、アタッチメント用の流体圧アクチュエータがバケット21c用のバケットシリンダ22cである場合に、バケット21cの負荷に応じて変動する第一ポンプ25aの負荷圧に応じた適切な増速が可能になる。
【0049】
走行直進弁28を比例制御弁とすることで、作動油の合流時にレバー等の操作装置に生じるショックを緩和でき、滑らかな操作が可能になる。
【0050】
また、走行直進弁28の開口特性に、ストローク量に対する開口面積の変化が抑制されたノッチ領域ANが大きく設定されているため、合流される作動油の流量を滑らかに変化させることができ、走行直進弁28を介した作動油の合流時のショックをより確実に抑制できる。
【0051】
次に、図6に示された第2の実施の形態について説明する。
【0052】
本実施の形態では、第一ポンプ25aのポンプ通路30a,31aの一方、例えばポンプ通路30aがブーム用の制御弁26bmおよびアタッチメント用の制御弁26atとそれぞれ接続され、他方、例えばポンプ通路31aが走行直進弁28と接続されている。また、第二ポンプ25bのポンプ通路30b,31bの一方、例えばポンプ通路30bが走行用の制御弁26trLと接続され、他方、例えばポンプ通路31bが走行直進弁28と接続されている。走行直進弁28に対し、走行用の制御弁26trRと、スティック用の制御弁26stおよび旋回用の制御弁26swと、が、それぞれ作動油を供給するためのパラレルフィーダ通路40,41で接続されている。また、このパラレルフィーダ通路41と走行用の制御弁26trLとが、逆止弁43を備え作動油を供給するための通路44で接続されている。
【0053】
そして、第1の実施の形態と同様に、走行直進機能がオフの場合、図6(a)に示されるように、コントローラ27からの指令信号により第一位置Xとなった走行直進弁28は、ポンプ通路31aとパラレルフィーダ通路40とを連通させ、ポンプ通路31bとパラレルフィーダ通路41とを連通させる。この状態で、第一ポンプ25aから吐出された作動油が走行用の制御弁26trR、ブーム用の制御弁26bm、アタッチメント用の制御弁26at等に導入され、第二ポンプ25bから吐出された作動油が走行用の制御弁26trL、スティック用の制御弁26st、旋回用の制御弁26sw等に導入されて、オペレータによる操作装置の操作量および操作方向に応じて生成された信号がコントローラ27に入力され、コントローラ27が、その信号に基づいて指令信号を生成して出力することで、各制御弁26が独立して動作し、作動油が各流体圧アクチュエータに供給される。そこで、図5に示される各走行モータ11の回転方向および速度、旋回モータ14の回転方向および速度、ブームシリンダ22aの伸縮および速度、スティックシリンダ22bの伸縮および速度、バケットシリンダ22cの伸縮および速度がそれぞれ独立して制御され、オペレータによる操作装置の操作に応じて、下部走行体2の走行、上部旋回体3の旋回、および、作業装置17の動作が行われる。
【0054】
また、走行直進機能がオンの場合、走行直進弁28を第二位置Yに切り換えるように、走行直進弁28の制御用の指令信号を生成し出力する。図6(b)に示されるように、第二位置Yとなった走行直進弁28は、ポンプ通路31aとパラレルフィーダ通路41とを連通させ、ポンプ通路31bとパラレルフィーダ通路40とを連通させる。この状態で、第一ポンプ25aから吐出された作動油がブーム用の制御弁26bm、アタッチメント用の制御弁26at、スティック用の制御弁26st、旋回用の制御弁26sw等に導入され、第二ポンプ25bから吐出された作動油が走行用の制御弁26trR,26trLに導入されて、オペレータによる操作装置の操作量および操作方向に応じて生成された信号がコントローラ27に入力され、コントローラ27が、その信号に基づいて指令信号を生成して出力することで、各制御弁26が独立して動作し、作動油が各流体圧アクチュエータに供給される。そこで、作動油が共通の第二ポンプ25bから等量供給された図5に示される各走行モータ11が同方向に同速度で回転することで作業機械1が直進しつつ、旋回モータ14の回転方向および速度、ブームシリンダ22aの伸縮および速度、スティックシリンダ22bの伸縮および速度、バケットシリンダ22cの伸縮および速度がそれぞれ独立して制御され、オペレータによる操作装置の操作に応じて、上部旋回体3の旋回、および、作業装置17の動作が行われる。
【0055】
さらに、図6(c)に示されるように、コントローラ27は、オペレータがアタッチメント、本実施の形態ではバケット21c(図5)を単独操作するとき、作動油の要求流量に応じて、つまりアタッチメントの操作用のレバーまたはペダル等の操作装置の操作量に応じて、走行直進弁28を作動させる指令信号を生成し出力する。
【0056】
本実施の形態では、アタッチメントの操作用の操作装置の操作量に応じて第一ポンプ25aからの作動油がアタッチメント用の制御弁26atに導入される。アタッチメントの操作用の操作装置の操作量が所定の操作量よりも大きい場合には、走行直進弁28が作動し、その開口量に応じて、第二ポンプ25bから走行用の制御弁26trLに導入された作動油が、中立位置にある走行用の制御弁26trLから通路44、パラレルフィーダ通路41、走行直進弁28、および、ポンプ通路31aを介してポンプ通路30aに合流されてアタッチメント用の制御弁26atに導入される。そこで、アタッチメントの動作、本実施の形態ではバケット21c(図5)の開閉動作が増速される。
【0057】
このとき、コントローラ27は、走行直進弁28を介して第二ポンプ25bの作動油を合流させる際に、第一ポンプ25aの圧力をフィードバックし、第二ポンプ25bの圧力を第一ポンプ25aの圧力へ近づけるように第二バイパス制御弁37bの開口量を制御する指令信号を生成して、第二ポンプ25bの圧力を第一ポンプ25aの圧力へ近づけてから合流させる。そこで、直進走行のための走行直進弁28を利用して、省スペースかつ低コストで、アタッチメント用の流体圧アクチュエータの単独操作時に、複数のポンプ25からの作動油を少ないショックで合流させて供給し、アタッチメントの作動速度を確実かつ滑らかに増加させることができる等、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えば油圧回路を備える作業機械を製造、販売する産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
22c アタッチメント用の流体圧アクチュエータであるバケットシリンダ
25 ポンプ
26 制御弁
27 コントローラ
28 走行直進弁
37 バイパス制御弁
38 タンク
AN ノッチ領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6