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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027336
(43)【公開日】2025-02-27
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20250219BHJP
【FI】
G05B23/02 301V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132063
(22)【出願日】2023-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】竹村 将太
(72)【発明者】
【氏名】岩本 広巳
(72)【発明者】
【氏名】中尾 努
(72)【発明者】
【氏名】川島 優樹
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA05
3C223BA03
3C223BB07
3C223BB08
3C223FF03
3C223FF04
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF16
3C223FF33
3C223FF47
3C223GG01
3C223HH29
(57)【要約】
【課題】記憶部に保存さているデータの量を少なくすることができ、且つ、適切なデータ解析が可能となる計測装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る計測装置は、製造ラインを移動する製造物を計測する計測装置である。前記計測装置は、所定の計測周期毎に前記製造物を計測する検出部と、前記検出部と、前記計測装置の外部に設けられた機器と、に電気的に接続されたコントローラと、を備えている。前記コントローラは、前記計測周期毎のデータを第1のフォルダに保存し、前記第1のフォルダに保存された前記計測周期毎のデータから第1の対象に関するデータを抽出し、抽出された前記第1の対象に関するデータを前記第1のフォルダよりも保存期間の長い第2のフォルダに保存し、前記第2のフォルダに保存された前記第1の対象に関するデータから第2の対象に関するデータを抽出し、抽出された前記第2の対象に関するデータを前記第2のフォルダよりも保存期間の長い第3のフォルダに保存する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインを移動する製造物を計測する計測装置であって、
所定の計測周期毎に前記製造物を計測する検出部と、
前記検出部と、前記計測装置の外部に設けられた機器と、に電気的に接続されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記計測周期毎のデータを第1のフォルダに保存し、
前記第1のフォルダに保存された前記計測周期毎のデータから第1の対象に関するデータを抽出し、抽出された前記第1の対象に関するデータを前記第1のフォルダよりも保存期間の長い第2のフォルダに保存し、
前記第2のフォルダに保存された前記第1の対象に関するデータから第2の対象に関するデータを抽出し、抽出された前記第2の対象に関するデータを前記第2のフォルダよりも保存期間の長い第3のフォルダに保存する計測装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
第3の対象に関するデータを、前記第2のフォルダにさらに保存し、
前記第2のフォルダに保存された前記第3の対象に関するデータから第4の対象に関するデータを抽出し、抽出された前記第4の対象に関するデータを前記第3のフォルダにさらに保存する請求項1記載の計測装置。
【請求項3】
前記データは、前記コントローラと、前記計測装置の外部に設けられた前記機器と、の間の、タイムスタンプが付与されたデジタル入出力信号のON/OFF状態、または、タイムスタンプが付与された前記製造物の計測値であり、
前記第1の対象は、前記デジタル入出力信号のON/OFFが変化したタイミング、または、第1の期間における、前記計測値の統計値であり、
前記第2の対象は、所定の期間における、前記デジタル入出力信号のON/OFFが変化した回数、または、前記第1の期間よりも長い第2の期間における、前記計測値の統計値であり、
前記第3の対象は、前記計測装置において発生したイベントの項目と、前記イベントの発生日時であり、
前記第4の対象は、所定の期間における、前記イベントの発生回数である請求項2記載の計測装置。
【請求項4】
前記コントローラは、故障の判断を行う自己診断機能をさらに有し、
前記コントローラは、前記故障が発生したと判断した場合には、前記故障の発生日時と、前記故障からの復帰日時と、を前記第3のフォルダにさらに保存する請求項1または2に記載の計測装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記故障が発生した前後における所定の期間の、前記計測周期毎のデータを、前記第3のフォルダにさらに保存する請求項4記載の計測装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記計測値に異常が発生した場合には、前記異常が発生した前後における所定の期間の、前記計測周期毎の前記計測値を、前記異常の発生日時と共に、前記第3のフォルダにさらに保存する請求項3記載の計測装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記製造物の画像を撮影し、
前記コントローラは、前記計測値に異常が発生した場合には、前記異常が発生した前後における所定の期間の、前記画像のデータを、前記異常の発生日時と共に、前記第3のフォルダにさらに保存する請求項3または6に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ラインに設けられ、製造ラインを移動する製造物を計測する計測装置がある。例えば、24時間稼働している鉄や非鉄などの圧延ラインには、圧延された板材の厚み寸法を計測する厚み計や、圧延された板材の幅寸法を計測する幅計などが設けられている。そして、計測された計測値のデータや、発生した異常のデータなどは、各種の計測装置毎に設けられたハードディスクなどの記憶部に保存される。
【0003】
ところが、計測装置装置における計測周期は、例えば、5ms~10msである。そのため、計測され、記憶部に保存されるデータの量が膨大なものとなる。この場合、データの保存期間を短くすれば、記憶部に保存さているデータの量を少なくすることができる。しかしながら、データの保存期間を画一的に短くすれば、発生した異常の解析などができなくなる場合がある。
そこで、記憶部に保存さているデータの量を少なくすることができ、且つ、適切なデータ解析が可能となる計測装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/194534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、記憶部に保存さているデータの量を少なくすることができ、且つ、適切なデータ解析が可能となる計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る計測装置は、製造ラインを移動する製造物を計測する計測装置である。前記計測装置は、所定の計測周期毎に前記製造物を計測する検出部と、前記検出部と、前記計測装置の外部に設けられた機器と、に電気的に接続されたコントローラと、を備えている。前記コントローラは、前記計測周期毎のデータを第1のフォルダに保存し、前記第1のフォルダに保存された前記計測周期毎のデータから第1の対象に関するデータを抽出し、抽出された前記第1の対象に関するデータを前記第1のフォルダよりも保存期間の長い第2のフォルダに保存し、前記第2のフォルダに保存された前記第1の対象に関するデータから第2の対象に関するデータを抽出し、抽出された前記第2の対象に関するデータを前記第2のフォルダよりも保存期間の長い第3のフォルダに保存する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態に係る計測装置が設けられた製造ラインを例示するための模式斜視図である。
図2】計測装置の構成を例示するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
図1は、本実施の形態に係る計測装置107が設けられた製造ライン100を例示するための模式斜視図である。
なお、図1に例示をする製造ライン100は、複数種類の計測装置107a~107dが設けられた熱間圧延ラインである。
【0010】
図1に示すように、熱間圧延ライン100は、例えば、エッジャー101、粗圧延機102、クロップシャー103、仕上圧延機104、ダウンコイラー105、検出器106、計測装置107a~107d、および制御装置108を備えている。
【0011】
エッジャー101は、スラブ200を幅方向に圧延する。粗圧延機102は、スラブ200を厚み方向に圧延する。クロップシャー103は、粗圧延後にカットされたスラブ200を仕上圧延機104に向けて送り出す。仕上圧延機104は、スラブ200を厚み方向に圧延する。ダウンコイラー105は、仕上圧延機104により仕上げ圧延された圧延材200aを巻き取る。検出器106は、スラブ200の位置を検出する。検出器106は、例えば、スラブ200から放射される赤外線を検出して、スラブ200の有無、スラブ200の通過、スラブ200の位置検出などを行う。なお、エッジャー101、粗圧延機102、クロップシャー103、仕上圧延機104、ダウンコイラー105、および検出器106には既知の技術を適用することができるので、詳細な説明は省略する。
【0012】
計測装置107a~107fは、熱間圧延ライン100を移動する製造物(例えば、スラブ200または圧延材200a)を計測する。例えば、計測装置107aは、製造物の幅寸法を計測する幅計とすることができる。例えば、計測装置107bは、製造物の厚み寸法を計測するセシウム厚み計とすることができる。例えば、計測装置107cは、製造物の厚み寸法を計測するX線厚み計とすることができる。例えば、計測装置107dは、製造物の表面状態を計測する表面検査装置とすることができる。
【0013】
制御装置108は、熱間圧延ライン100に設けられた各要素の制御を行う。制御装置108は、例えば、LAN(Local Area Network)に接続されたコンピュータとすることができる。
【0014】
図2は、計測装置107の構成を例示するためのブロック図である。
図2に示すように、計測装置107は、例えば、検出部1、入力部2、出力部3、およびコントローラ4を備えている。
検出部1は、所定の計測周期毎に製造物を計測する。計測装置107が幅計107aの場合には、検出部1は、例えば、ラインセンサやCCDカメラなどの光学センサ1aとすることができる。なお、検出部1がCCDカメラの場合には、画像処理により、製造物の幅寸法を計測することができる。計測装置107がセシウム厚み計107bの場合には、例えば、検出部1は、透過型のセシウムセンサ1bなどとすることができる。計測装置107がX線厚み計107cの場合には、例えば、検出部1は、透過型のX線センサ1cなどとすることができる。計測装置107が表面検査装置107dの場合には、例えば、検出部1は、反射型のレーザセンサ1dなどとすることができる。
【0015】
なお、光学センサ1a、セシウムセンサ1b、X線センサ1c、およびレーザセンサ1dには、既知の技術を適用することができるので、詳細な説明は省略する。
また、検出部1は、例示をしたものに限定されるわけではない。検出部1は、計測の目的に応じて、適宜変更することができる。例えば、検出部1は、製造物の物理量や状態を電気信号に変換可能なものであればよい。
【0016】
入力部2は、コントローラ4に電気的に接続されている。作業者は、例えば、設定値などの情報を、入力部2を介してコントローラ4に入力することができる。また、入力部2は、検出部1に電気的に接続することもできる。作業者は、例えば、設定値などの情報を、入力部2を介して検出部1の制御部などに入力することができる。
【0017】
出力部3は、コントローラ4に電気的に接続されている。出力部3は、コントローラ4から出力された情報を表示する。出力部3は、例えば、フラットパネルディスプレイなどとすることができる。出力部3に表示される情報は、例えば、検出部1により計測された、製造物の寸法や表面状態である。また、出力部3は、計測装置107や熱間圧延ライン100の稼働状況や異常発生などの情報を表示することもできる。
【0018】
コントローラ4は、LANを介して、検出部1と、計測装置107の外部に設けられた機器(例えば、検出器106と制御装置108)と、に電気的に接続されている。
コントローラ4は、例えば、演算部4a、および記憶部4bを有する。
演算部4aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などとすることができる。演算部4aは、記憶部4bに保存されているソフトウエアに基づいて、計測装置107に設けられている各要素の動作を制御する。また、演算部4aは、後述するデータの収集、収集されたデータの分類わけ、収集されたデータの加工などを行う。
【0019】
記憶部4bは、例えば、NAS(Network Attached Storage)などとすることができる。記憶部4bには、例えば、検出部1を制御するためのソフトウエア、検出部1からの電気信号に基づいて計測値を演算するためのソフトウエア、制御装置108が計測装置107を遠隔操作したり、制御装置108が計測装置107の状態や計測データを把握したりするためのHMI(Human Machine Interface)ソフトウエア、および、データの収集、収集されたデータの分類わけ、収集されたデータの加工などを行うためのソフトウエアを保存することができる。
【0020】
なお、検出部1を制御するためのソフトウエア、計測値を演算するためのソフトウエア、およびHMIソフトウエアには既知の技術を適用することができる。そのため、これらのソフトウエアの詳細な説明は省略し、以下においては、データの収集、収集されたデータの分類わけ、収集されたデータの加工について説明する。
【0021】
ここで、熱間圧延ライン100においては、計測装置107の計測周期は、例えば、5ms~10msである。そのため、収集されたデータの量が膨大なものとなるので、収集されたデータの全てを記憶部4bに長期間保存するのは困難である。この場合、収集されたデータを画一的に間引けば、データを記憶部4bにある程度の期間保存することができる。
【0022】
ところが、計測装置107に変化や異常が発生した場合であっても、計測装置107による計測が継続可能な場合には、すぐに、変化や異常が発生した際のデータを確認しない場合がある。この様な場合には、後日、発生した事象に対するデータ解析を行うことになる。そのため、収集されたデータを画一的に間引けば、事象が発生した際のデータの全部、または一部が消去されて、データ解析ができなくなる場合がある。
【0023】
そこで、コントローラ4は、適切なデータ解析が行える範囲で、データ量の削減を行うようにしている。
例えば、収集されるデータは、以下の(1)~(4)に例示をするものとすることができる。そして、データ解析を行う対象に応じて、保存する内容や保存期間を変えるようにしている。保存期間は、例えば、短期(例えば、1日程度)、中期(例えば、2週間程度)、長期(例えば、6ヶ月程度)とすることができる。ただし、データの内容や保存期間は例示をしたものに限定されるわけではなく、計測装置107の種類や構成、製造物の物理量や状態などに応じて適宜変更することができる。
【0024】
(1)前述した様に、コントローラ4には、熱間圧延ライン100の制御装置108が電気的に接続されている。また、コントローラ4には、検出器106が電気的に接続されている。
【0025】
そのため、データは、例えば、制御装置108および検出器106と、コントローラ4との間のインターフェース信号に関するものとすることができる。データは、例えば、コントローラ4と、計測装置107の外部に設けられた機器(例えば、検出器106や制御装置108)と、の間の、タイムスタンプが付与されたデジタル入出力信号(DIO信号)のON/OFF状態、または、タイムスタンプが付与された製造物の計測値とすることができる。タイムスタンプが付与されたデータは、短期保存のフォルダ(第1のフォルダの一例に相当する)に保存することができる。すなわち、短期保存のフォルダには、計測周期毎の生データが保存される。
【0026】
前述した様に、計測装置107の計測周期は、5ms~10msであるため、短期保存のフォルダに保存されるデータの量は膨大なものとなる。
そこで、次に、短期保存のフォルダに保存されているデータから、後日、データ解析を行う際に必要となるデータを抽出する。この場合、デジタル入出力信号が変化したタイミングが分かれば、熱間圧延ライン100の大まかな稼働状態を知ることができる。そのため、抽出するデータは、デジタル入出力信号が変化したタイミングとすることができる。デジタル入出力信号が変化したタイミングは、デジタル入出力信号がONからOFFに変化したタイミング、または、デジタル入出力信号がOFFからONに変化したタイミングである。
【0027】
抽出されたデータは、中期保存のフォルダ(第2のフォルダの一例に相当する)に保存することができる。このようにすれば、中期保存のフォルダに保存されるデータの量を少なくすることができる。また、中期保存のフォルダに、データ解析を行う際に必要となるデータが保存されていれば、後日のデータ解析が可能となる。
【0028】
また、短期保存のフォルダに保存されていたデータは、短期保存の保存期間の経過後に、短期保存のフォルダから消去される。この様にすれば、短期保存のフォルダに保存されるデータの量を制限することができる。
【0029】
しかしながら、中期保存のフォルダに保存されるデータの量は、経時的に増加する。そのため、次に、中期保存のフォルダに保存されているデータから、後日、詳細なデータ解析を行う際に必要となるデータを抽出する。この場合、デジタル入出力信号が変化した回数が分かれば、計測装置107に変化や故障などの異常が発生したことを知ることができる。例えば、デジタル入出力信号が変化した回数が、正常な状態における回数よりも少なければ、計測装置107に変化や故障などの異常が発生したと判断することができる。そのため、抽出するデータは、所定の期間における、デジタル入出力信号が変化した回数とすることができる。デジタル入出力信号が変化した回数は、デジタル入出力信号がONからOFFに変化した回数、または、デジタル入出力信号がOFFからONに変化した回数である。
【0030】
抽出されたデータは、長期保存のフォルダ(第3のフォルダの一例に相当する)に保存することができる。この様にすれば、長期保存のフォルダに保存されるデータの量をさらに少なくすることができる。また、長期保存のフォルダに、詳細なデータ解析を行う際に必要となるデータが保存されていれば、後日の詳細なデータ解析が可能となる。
【0031】
また、中期保存のフォルダに保存されていたデータは、中期保存の保存期間の経過後に、中期保存のフォルダから消去される。この様にすれば、中期保存のフォルダに保存されるデータの量を制限することができる。
【0032】
また、長期保存のフォルダに保存されていたデータは、長期保存の保存期間の経過後に、長期保存のフォルダから消去される。この様にすれば、長期保存のフォルダに保存されるデータの量を制限することができる。
【0033】
(2)また、データは、計測装置107により計測された計測値や、計測装置107において用いられる設定値、計測装置107による計測に関連する温度や速度などのデータなどとすることができる。この場合、データには、デジタル信号のデータのみならず、アナログ信号のデータを含めることができる。
【0034】
例えば、セシウム厚み計107b、または、X線厚み計107cの場合には、データは、計測された板厚寸法、計測時の線量、X線管などの管電圧、X線管などの管電流、製造物の温度、セシウムセンサ1bやX線センサ1cなどの温度、製造物の移動速度(ライン速度)などとすることができる。
【0035】
例えば、幅計107aの場合には、データは、計測された幅寸法、製造物の浮き上がり量や横振れ量、CCDカメラにおけるパルス幅(露光時間)、CCDカメラのピクセルにおける最大波高値やチャージタイム、製造物の温度、光学センサ1aの温度、製造物の移動速度(ライン速度)などとすることができる。また、データは、CCDカメラにより撮影された画像データとすることもできる。
【0036】
そして、計測周期毎の、これらのデータを、タイムスタンプが付与された状態で、短期保存のフォルダに保存することができる。すなわち、短期保存のフォルダには、計測周期毎の生データが保存される。
【0037】
前述した場合と同様に、この様なデータを保存する場合にも、短期保存のフォルダに保存されるデータの量は膨大なものとなる。
そこで、次に、短期保存のフォルダに保存されているデータから、後日、データ解析を行う際に必要となるデータを抽出する。この場合、例えば、所定の期間(第1の期間の一例に相当する)における計測値の統計値が分かれば、熱間圧延ライン100における変化や異常の発生、あるいは、計測装置107における変化や異常の発生を知ることができる。計測値の統計値は、例えば、計測値における、最大値、最小値、平均値、中央値などである。そのため、抽出するデータは、所定の期間における計測値の統計値とすることができる。
【0038】
抽出されたデータは、中期保存のフォルダに保存することができる。このようにすれば、中期保存のフォルダに保存されるデータの量を少なくすることができる。また、中期保存のフォルダに、データ解析を行う際に必要となるデータが保存されていれば、後日のデータ解析が可能となる。
【0039】
また、短期保存のフォルダに保存されていたデータは、短期保存の保存期間の経過後に、短期保存のフォルダから消去される。この様にすれば、短期保存のフォルダに保存されるデータの量を制限することができる。
【0040】
しかしながら、前述した場合と同様に、中期保存のフォルダに保存されるデータの量は、経時的に増加する。そのため、次に、中期保存のフォルダに保存されているデータから、所定のデータを抽出する。例えば、統計値を演算する際にデータを抽出する期間を、中期保存の場合の期間よりも長い期間(第2の期間の一例に相当する)とすることができる。この様にすれば、長期保存のフォルダに保存されるデータの量を少なくすることができる。例えば、データを抽出する期間を、中期保存の場合の10倍にすれば、長期保存のフォルダに保存されるデータの量を1/10にすることができる。また、長期保存のフォルダに、データが保存されていれば、後日のデータ解析が可能となる。
【0041】
また、中期保存のフォルダに保存されていたデータは、中期保存の保存期間の経過後に、中期保存のフォルダから消去される。この様にすれば、中期保存のフォルダに保存されるデータの量を制限することができる。
【0042】
また、長期保存のフォルダに保存されていたデータは、長期保存の保存期間の経過後に、長期保存のフォルダから消去される。この様にすれば、長期保存のフォルダに保存されるデータの量を制限することができる。
(3)また、データは、計測装置107において発生したイベントに関するデータとすることができる。イベントは、計測装置107において偶発的あるいは非計画的に生じた事象である。イベントの発生は、例えば、前述した、制御装置108および検出器106と、コントローラ4との間のインターフェース信号や、計測装置107により計測された計測値などにより判断することができる。例えば、計測の開始や計測の終了のインターフェース信号が入力されたにもかかわらず、計測装置107が動作しなかった場合や、計測値が所定の範囲を外れた場合には、イベントが発生したと判断することができる。
【0043】
(1)および(2)におけるデータは、計測周期毎に取得されるためデータの量が膨大なものとなるが、イベントは頻繁に発生するものではないためデータの量は少ない。また、イベントに関するデータは、変化や異常の解析に必要となる可能性が高い。そのため、イベントに関するデータは、短期保存のフォルダに保存せずに、中期保存のフォルダに保存することができる。
【0044】
中期保存のフォルダに保存されるデータは、例えば、イベントの項目と、イベントの発生日時とに関するデータとすることができる。イベントの項目は、例えば、厚み寸法や幅寸法などの異常値である。中期保存のフォルダに、イベントの項目と、イベントの発生日時が保存されていれば、後日のデータ解析が可能となる。
【0045】
しかしながら、中期保存のフォルダに保存されるデータの量は、経時的に増加する。そのため、次に、中期保存のフォルダに保存されているデータから、所定のデータを抽出する。
【0046】
この場合、所定の期間における、イベントの発生回数が分かれば、変化や異常の程度が分かる。また、前述した様に、中期保存のフォルダや、長期保存のフォルダには、デジタル入出力信号が変化したタイミング、デジタル入出力信号が変化した回数、計測値の統計値などが保存されている。
【0047】
そのため、イベントの発生回数が多かった時期の、デジタル入出力信号が変化したタイミング、デジタル入出力信号が変化した回数、計測値の統計値などを参照すれば、イベントの発生要因を解析することができる。
【0048】
そこで、中期保存のフォルダに保存されているデータから、所定の期間における、イベントの発生回数を抽出する。抽出されたデータは、長期保存のフォルダに保存することができる。この様にすれば、長期保存のフォルダに保存されるデータの量をさらに少なくすることができる。
【0049】
また、中期保存のフォルダに保存されていたデータは、中期保存の保存期間の経過後に、中期保存のフォルダから消去される。この様にすれば、中期保存のフォルダに保存されるデータの量を制限することができる。
【0050】
また、長期保存のフォルダに保存されていたデータは、長期保存の保存期間の経過後に、長期保存のフォルダから消去される。この様にすれば、長期保存のフォルダに保存されるデータの量を制限することができる。
(4)また、コントローラ4に、自己診断機能が設けられる場合がある。自己診断機能は、例えば、制御装置108および検出器106と、コントローラ4との間のインターフェース信号や、計測装置107により計測された計測値などを用いて、故障の判断を行う機能である。例えば、インターフェース信号の入出力がない場合、計測が開始されない場合、計測が終了しない場合などには、計測装置107に故障が発生したと判断することができる。なお、自己診断機能の内容は、計測装置107の種類により異なるものとなるので、故障の判断の内容は例示をしたものに限定されるわけではない。
【0051】
そのため、データは、自己診断機能に関するデータ(故障に関するデータ)とすることができる。計測装置107の故障は、希に発生する程度であるため、データの量は、かなり少ない。また、自己診断機能に関するデータは、変化や異常の解析に必要となる可能性が高い。そのため、自己診断機能に関するデータは、短期保存のフォルダや中期保存のフォルダに保存せずに、長期保存のフォルダに保存することができる。
【0052】
長期保存のフォルダに保存されるデータは、例えば、故障の項目(例えば、故障が推定される部位など)、故障の発生日時、および、故障からの復帰日時などとすることができる。
【0053】
長期保存のフォルダに、故障の項目、故障の発生日時、および、故障からの復帰日時などが保存されていれば、後日のデータ解析が可能となる。前述した様に、中期保存のフォルダや、長期保存のフォルダには、デジタル入出力信号が変化したタイミング、デジタル入出力信号が変化した回数、計測値の統計値、イベントの項目と、イベントの発生日時などが保存されている。そのため、故障の発生日時における、デジタル入出力信号が変化したタイミング、デジタル入出力信号が変化した回数、計測値の統計値、イベントの項目と、イベントの発生日時などを参照すれば、故障の発生要因を解析することができる。
【0054】
長期保存のフォルダに保存されていたデータは、長期保存の保存期間の経過後に、長期保存のフォルダから消去される。この様にすれば、長期保存のフォルダに保存されるデータの量を制限することができる。
【0055】
また、自己診断機能に関するデータを解析する際に、短期保存のフォルダに保存されているデータ(計測周期毎の生データ)が必要になる場合がある。しかしながら、短期保存のフォルダに保存されているデータは、短期間で消去されるため、後日、自己診断機能に関するデータを解析する際に失われているおそれがある。
【0056】
そこで、コントローラ4は、故障が発生したと判断した場合には、故障が発生した前後における所定の期間の、計測周期毎のデータを、故障の項目、故障の発生日時、および、故障からの復帰日時などと共に、長期保存のフォルダに保存することができる。故障発生の前後における計測周期毎のデータは、短期保存のフォルダに保存されているデータから抽出することができる。データを抽出する時間的な範囲は、例えば、故障発生の前後の1秒間程度とすればよい。
この様にすれば、後日に行われるデータ解析の精度を向上させることができる。また、長期保存のフォルダに保存されるデータの量が過度に増加するのを抑制することができる。
【0057】
また、デジタル入出力信号のチャタリングやタイミング遅れなどにより、計測値に異常が発生する場合がある。例えば、厚み寸法や、幅寸法の計測は、以下のシーケンスにより行われる。「設定値受信→設定替信号ON→製造物の検出→計測開始→製造物の通過(検出終了)→計測終了→計測値の演算」
この場合、設定替信号ONは、制御装置108からのインターフェース信号に基づいて行われる。製造物の検出は、検出器106からの検出信号に基づいて行われる。そのため、インターフェース信号と検出信号の順序が逆になる場合が生じ得る。インターフェース信号と検出信号の順序が逆になると、計測値に異常が発生する。
【0058】
そこで、コントローラ4は、計測値に異常が発生した場合には、計測値に異常が発生した前後における所定の期間の、計測周期毎の計測値を、計測値の異常項目、および異常の発生日時などと共に、長期保存のフォルダに保存することができる。異常発生の前後における計測周期毎のデータは、短期保存のフォルダに保存されているデータから抽出することができる。データを抽出する時間的な範囲は、計測装置107の種類や配置などに応じて適宜変更することができる。例えば、データを抽出する時間的な範囲は、5分~1時間程度である。
【0059】
この様にすれば、計測値に異常が発生した原因が、インターフェース信号などに原因があるのか、計測装置107の故障に原因があるのかを解析することができる。すなわち、後日に行われるデータ解析の精度を向上させることができる。また、長期保存のフォルダに保存されるデータの量が過度に増加するのを抑制することができる。
【0060】
また、前述した様に、幅計107aの場合には、検出部1(光学センサ1a:CCDカメラ)が製造物の画像を撮影する場合がある。取得された画像データは、例えば、計測値に異常が発生した際の解析に用いることができる。そのため、画像データは、例えば、データとして、短期保存のフォルダに保存することができる。画像データはデータ量が多いが、短期保存のフォルダには、データ量の多い計測周期毎の生データが保存されるため、画像データを保存するのには適している。
【0061】
しかしながら、短期保存のフォルダに保存されているデータは、短期間で消去されるため、後日、計測値の異常発生に関するデータを解析する際に、画像データが失われているおそれがある。
【0062】
そこで、コントローラ4は、計測値に異常が発生した場合には、異常が発生した前後における所定の期間の、前記画像のデータを、計測値の異常の項目、計測値のデータ、および異常の発生日時などと共に、長期保存のフォルダに保存することができる。計測値の異常が発生した前後における画像データは、短期保存のフォルダに保存されている画像データから抽出することができる。
この様にすれば、後日に行われるデータ解析の精度を向上させることができる。また、長期保存のフォルダに保存されるデータの量が過度に増加するのを抑制することができる。
【0063】
以上に説明した様に、本実施の形態に係る計測装置107とすれば、記憶部4bに保存さているデータの量を少なくすることができ、且つ、適切なデータ解析が可能となる。
【0064】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 検出部、2 入力部、3 出力部、4 コントローラ、4a 演算部、4b 記憶部、100 熱間圧延ライン、106 検出器、107 計測装置、107a 幅計、107b セシウム厚み計、107c X線厚み計、107d 表面検査装置、108 制御装置
図1
図2