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  • -管路の空気抜き弁装置 図1
  • -管路の空気抜き弁装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002738
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】管路の空気抜き弁装置
(51)【国際特許分類】
   E03B 7/10 20060101AFI20241226BHJP
   E03B 7/07 20060101ALI20241226BHJP
   F16K 24/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
E03B7/10 C
E03B7/07 Z
F16K24/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103079
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】591197633
【氏名又は名称】明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084102
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】斎 藤 恵 介
【テーマコード(参考)】
3H055
【Fターム(参考)】
3H055AA01
3H055AA22
3H055CC03
3H055GG39
3H055JJ01
(57)【要約】

【課題】 農業用水等の管路における空気抜き装置に、凍結防止機能を付与するに際して、低コストを実現するために、既存部材や既設装置を採用できる構成を提供する。
【解決手段】 フロート体11を内装したフロート室12を有し、フロート室上面にフロート体で開閉される弁口13を設け、フロート室下面に管接続部を設けた空気弁機構部1と、上下に管接続部を設けた継ぎ管21に、低温時に開口して継ぎ管と外部を連通する低温作動弁23を付設した低温排水機構部2とを備え、空気弁機構部1と管路Aにおける空気抜き装置装着部Cとの間に低温排水機構部2を介装する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロート体を内装したフロート室を有し、フロート室上面にフロート体で開閉される弁口を設け、フロート室下面に管接続部を設けた空気弁機構部と、上下に管接続部を設けた継ぎ管に、低温時に開口して継ぎ管と外部を連通する低温作動弁を付設した低温排水機構部とを備え、前記空気弁機構部と管路における空気抜き装置装着部との間に前記低温排水機構部を介装してなることを特徴とする管路の空気抜き弁装置。
【請求項2】
上下に管接続を設けると共に上下通路を開閉する開閉弁と開閉弁の開閉操作を行う操作部を設けた開閉弁機構部を、低温排水機構部と管路における空気抜き装置装着部との間に介装してなる請求項1記載の管路の空気抜き弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主として農工業用水等の管路内の空気を吸排気する空気抜き弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液流体(水及び汚水等で以下「水」という)の流通路である管路内に存在する空気は、水の流れを阻害する大きな要因となるので、空気弁を介して管路内の空気の吸排気を行い、且つ水の管路外への流出を阻止すると共に、管路内充水後の水中混入空気の排出を行うものである。これらの空気弁装置は、管路に接続したフロート室内にフロート体を収納し、フロート室内の水位によってフロート体を上下動させて、弁の開閉を行うものである。
【0003】
また管路は屋外に設置されていることが多く、管路に付設されている空気抜き弁装置は寒冷な外気によってフロート室内が凍結する恐れがある。フロート室内が凍結すると管路内空気の排出は勿論のこと、凍結膨張によって弁装置自体を破損させてしまう場合もある。
【0004】
この対策として従前より耐寒性空気弁装置が提案されている。その基本的構成はフロート室の内容積が室内圧力に対応して変化する構造とし、フロート室内の凍結時の膨張を吸収するようにしている(特許文献1)。また管路空気の上昇路(空気抜き装置を装着する管路分岐管)の他に、フロート室内と管路中央との間に管路水の導入管を設けた構造とて、常時管路内の通水がフロート室内に流入するようにして、フロート室内の凍結を防止している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62-130273号公報。
【特許文献2】特開昭57-134086号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従前の管路の空気抜き弁装置の基本的な凍結対策は、凍結を前提とした構成(特許文献1)、凍結しないことを前提とし構成(特許文献2)であり、前者においてはフロート室内が凍結するので、凍結時の圧力上昇以外においてもフロート周囲の凍結によってフロートの破損の恐れもあり、また簡易な空気抜き機能を備えれば十分である簡易な構造の弁装置に複雑なフロート室内容積可変構造を組み込むことによってコスト高となる。
【0007】
また例えば冬季間の農業用水の管路においては、必要とする使用水量も少なく且つ積雪による排水すべき水量も少なく、管路内の水の流れが緩やかになり、フロート室内への循環水が微量となり、管路から突出して周囲全体を外気に晒されている弁装置が凍結する恐れも十分ある。
【0008】
しかも近年の地球温暖化によって冬期間における平年気温に対して低下が認められ、従前は必要となかった地域においても凍結対策が必要となってきた。その際に既設の空気抜き弁装置を凍結対策構造の弁装置に取り換えることは非常にコスト高となる。
【0009】
そこで本発明は、既設の空気抜き弁装置をそのまま採用して、凍結対策を実現する新規な空気抜き弁装置を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1記載に係る管路の空気抜き弁装置は、空気弁機構部と低温排水機構部を備え、空気弁機構部は、従前から公知のもので、フロート体を内装したフロート室を有し、フロート室上面にフロート体で開閉される弁口を設け、フロート室下面に管接続部を設けたものであり、低温排水機構部は、上下に管接続部を設けた継ぎ管に、低温時に開口して継ぎ管と外部を連通する低温作動弁を付設したもので、前記空気弁機構部と管路における空抜き装置装着部との間に前記低温排水機構部を介装してなることを特徴とするものである。
【0011】
而して通常時は、管路内に存在する空気を空気弁機構部内に導き入れてフロート体の上下動による弁口の開閉で管路内空気の外気放出を行う。冬期間(厳寒期)における低温時(管路から突出して内部に水が滞留状態であるフロート室内で凍結が生ずる恐れがある気温の時)においては、低温作動弁が動作して開口する。もともと冬期間においては、農業用水の使用流量が少なく管路内水位(管路内水圧)が低いので、低温作動弁が開弁すると、空気弁機構部内の用水が放出されると共に、管内圧の変動によって水位の上下が生じても低温排水機構部からの排水によって空気弁機構部内のフロート室が空虚となり、空気弁機構部の凍結が防止される。また仮に管路内水位が高く低温排出機構部からの排水が追い付かずにフロート室内に用水が侵入しても、低温排出機構部からの排水によって装置内における用水の流動が行われ、装置内の用水の凍結を防止できる。
【0012】
また本発明の請求項2記載に係る管路の空気抜き弁装置は、更に開閉弁機構部を設けたもので、開閉弁機構部は、上下に管接続を設けると共に上下通路を開閉する開閉弁と開閉弁の開閉操作を行う操作部を設けてなるもので、開閉弁機構部を設けることによって空気弁機構部と低温排水機構部の分離装着が簡単にでき、点検補修作業が容易になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成は上記のとおりで、空気弁機構部と管路との間に低温排出機構部を設けることによって、新たに凍結防止対策を施した空気抜き弁装置を製造することなく、既存の空気抜き弁装置をそのまま採用することができ、既設の管路においても低温排水機構部を付加することで管路の空気抜き弁装置に凍結防止機能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の全体の分解構成図。
図2】同組立状態(使用状態)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態に示した管路の空気抜き弁装置は、空気弁機構部1と低温排水機構部2と、開閉弁機構部3を備えているもので、空気弁機構部1は既存の空気抜き弁装置として採用されている任意の器具を使用できる。
【0016】
図示した空気弁機構部1は、フロート体11を内装したフロート室(胴部)12と、フロート室12の上面となりフロート体11の浮力による上下動で開閉される弁口13を設けた蓋部14と、フロート室12の底面となり管接続部15を設けた底板部16から構成され、フロート室12の上下開口部分に蓋部14及び底板部16を装着して一体化したものである。
【0017】
低温排水機構部2は、継ぎ管21と枝管22と低温作動弁23から構成され、継ぎ管21は上下端に管連結部24を設けると共に、側面に枝管連結用の分岐部25を設けてなる。枝管22は、前記分岐部25に連結して、多端に低温作動弁23を連結したもので、低温作動弁23は、内部に感温作動体を設けて、低温時に所定の弁口を開口するようにしているもので、公知構造の種々のものが存在し、当該既存物を採用する。
【0018】
開閉弁機構部3は、本体部31内に上下通路を開閉する開閉弁(図示せず)を備え、外部に前記開閉弁の閉操作を行う操作部32を設け、更に本体部31の上下には、管接続部33を設けてなる。
【0019】
而して管路Aにおける空気排出用の立上分岐管部Bの空気抜き装置装着部Cに開閉弁機構部3を装着し、次に低温排水機構部2を装着し、最上部に空気弁機構部1を装着するものである。前記の低温排水機構部2を備えることによって、通常時は、管路内に存在する空気の管路外放出を実現し、冬期間(厳寒期)における低温時(凍結が想定される温度)においては、低温作動弁が動作して開口し、装置内留水の排出を行って装置内の凍結を防止するものである。
【0020】
既設の空気抜き弁装置を備えた管路においては、空気抜き装置をそのまま空気弁機構部として使用することもでき、また新設管路においても、特別な凍結防止機構を装備した装置を採用することなく既存装置をそのまま構成部材として使用できるものである。
【符号の説明】
【0021】
1 空気弁機構部
11 フロート体
12 フロート室(胴部)
13 弁口
14 蓋部
15 管接続部
16 底板部
2 低温排水機構部
21 継ぎ管
22 枝管
23 低温作動弁
24 管連結部
25 分岐部
3 開閉弁機構部
31 本体部
32 操作部
33 管接続部
A 管路
B 立上分岐管部
C 空気抜き装置装着部
図1
図2