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  • 特開-走査電子顕微鏡用の試料冷却装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002739
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】走査電子顕微鏡用の試料冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20241226BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01J37/20 E
H01J37/28 B
H01J37/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103080
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】523241265
【氏名又は名称】株式会社ドキュメンタリーチャンネル
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】藤原 英史
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101BB04
5C101FF03
5C101FF16
5C101FF46
5C101FF56
5C101FF57
(57)【要約】
【課題】 本発明は、試料の温度上昇を抑制できると共に、試料の微振動を防止することができる走査電子顕微鏡用の試料冷却装置を提供する。
【解決手段】 本発明の試料冷却装置1は、内部に密閉空間2を画成するチャンバー3と、このチャンバー3内の密閉空間2を真空状態にする真空ポンプ4と、前記走査電子顕微鏡の鏡筒5の電子ビーム6の照射箇所に配置可能な試料台7と、この試料台7が載置される円筒形の冷却ブロック8と、この冷却ブロック8の周囲に配され、前記冷却ブロック8を複数の固定ネジ9で保持される円筒保持部10と、この円筒保持部10を、前記鏡筒5から照射される電子ビーム6に対してX軸、Y軸及びZ軸方向に移動させる駆動装置11と、前記冷却ブロック8の下端側に固定される伝熱プレート12と、この伝熱プレート12に対峙して設けられる冷凍ヘッド13を有し、この冷凍ヘッド13を冷却するための冷凍機14とを具備する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査電子顕微鏡の試料が配置され、該試料を冷却する走査顕微鏡用の試料冷却装置において、
内部に密閉空間を画成するチャンバーと、
該チャンバー内の密閉空間を真空状態にする真空ポンプと、
前記走査電子顕微鏡の鏡筒の電子ビームの照射箇所に配置可能な試料台と、
該試料台が載置される円筒形の冷却ブロックと、
該冷却ブロックの周囲に配され、前記冷却ブロックを複数の固定ネジによる点接触で保持する円筒保持部と、
該円筒保持部を、前記鏡筒から照射される電子ビームに対してX軸、Y軸及びZ軸方向に移動させる駆動装置と、
前記冷却ブロックの下端側に固定される伝熱プレートと、
該伝熱プレートに対峙して設けられる冷凍ヘッドを有し、該冷凍ヘッドを冷却するための冷凍機とを具備することを特徴とする走査電子顕微鏡の試料冷却装置。
【請求項2】
前記伝熱プレートは、銀、銅、金、アルミニウム及び熱伝導性炭素材料からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の試料冷却装置。
【請求項3】
前記固定ネジは、プラスチックネジであり、前記冷却ブロックを点接触で支持することを特徴とする請求項1又は2記載の試料冷却装置。
【請求項4】
前記円筒保持部には、その上端に径方向に延出するフランジ部が形成されると共に、前記駆動装置が、前記円筒保持部のフランジ部とZ方向下方から接触可能な環状の駆動ベースを具備し、前記フランジ部と前記駆動ベースとの間には、前記フランジ部を介して前記円筒保持部を下方に付勢する付勢手段が設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の試料冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査電子顕微鏡の試料観察において、試料を冷却することのできる電子顕微鏡用の試料冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開平6-215719号公報)は、試料近傍を冷却して試料の汚染を防止すると共に、液体窒素の突沸による試料振動を防止して像観察を行えるようにする電子顕微鏡等の試料冷却装置を開示する。この冷却装置は、液体窒素タンクを通して冷却される冷却棒と液体窒素アンクとを吸着・分離する[電磁クラッチを設け、電磁クラッチの作動により冷却棒と液体窒素タンクを冷却時は吸着し、像観察時は切り離すようにしたものである。
【0003】
特許文献2(特開平6-260125号公報)は、電子顕微鏡の試料冷却時において、室温から-30℃の試料冷却温度を安定に保つことができる試料冷却装置を開示する。この試料冷却装置は、試料ステージ内にペルチェ素子を保持し、銅網線を経て試料を冷却するもので、この時に発生した熱は放熱フィンや冷却水パイプを用い大気中へ放散させ、室温から-30℃の試料冷却を安定に行うものである。
【0004】
特許文献3(特開2000-208083号公報)は、電子顕微鏡の試料を液体ヘリウムによって極低温(数K)に冷却して、観測、分析する専用ヘリウム冷却ステージを他の冷却温度として液体窒素による低温(数十K)でも使用できる電子顕微鏡の試料冷却装置を開示する。この冷却装置において、試料を保持する試料保持部が中央部分に設けられ、前記試料保持部の外周に前記試料を冷却する冷媒を収容する冷媒溜が設けられた試料保持部材と、前記冷媒を2種貯蔵するための2つの冷媒タンクと、前記2つの冷媒タンクと前記冷媒溜とを連通する2つのキャピラリーを備え、前記冷媒溜に前記2種の冷媒を選択供給する機構が設けられているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-215719号公報
【特許文献2】特開平6-260125号公報
【特許文献3】特開2000-208083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び3で開示されるような液体窒素を使用する方法又は装置では、多量の液体窒素が必要なこと、突沸を防止するために装置全体の予冷が必要なことなどから、装置が大型化し準備時間に長時間を要するなどの欠点があった。また特許文献1では、液体窒素タンクからは切り離されているが冷却棒が完全に熱的に絶縁されておらず、試料温度は比較的早く上昇してしまうという欠点もあった。
【0007】
特許文献2で開示されるように、ペルチェ素子を使用する冷却法では、せいぜい-50℃程度の温度までしか下がらないため、-120℃レベルの低温が必要な生物観察ができないという欠点があった。
【0008】
液体窒素を使用しないで、試料を-120℃以下に冷却する方法としては、スターリングクーラーのような冷凍装置や冷媒を使用した冷凍装置を使用することが好ましいが、これらの装置は、機械的往復運動を使用するため、振動が問題となるため、高倍率観察中には、装置自体を停止させるか、間接的に試料台を冷却するなどの対策が必要となる。また、装置自体を停止させると、冷却作用が停止するため、比較的短時間で試料温度が上昇してしまうという問題点があり、間接的冷却法では、装置が複雑になることや熱的ロスのため、冷却効率が下がるという課題があり、さらには、配管を通して冷凍サイクルの微振動が伝達されるという不具合が生じる。
【0009】
このため、本発明は、試料の温度上昇を抑制できると共に、試料の微振動を防止することができる走査電子顕微鏡用の試料冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、走査電子顕微鏡の試料が配置され、該試料を冷却する走査顕微鏡用の試料冷却装置において、内部に密閉空間を画成するチャンバーと、該チャンバー内の密閉空間を真空状態にする真空ポンプと、前記走査電子顕微鏡の鏡筒の電子ビームの照射箇所に配置可能な試料台と、該試料台が載置される円筒形の冷却ブロックと、該冷却ブロックの周囲に配され、前記冷却ブロックを複数の固定ネジによる点接触で保持する円筒保持部と、該円筒保持部を、前記鏡筒から照射される電子ビームに対してX軸、Y軸及びZ軸方向に移動させる駆動装置と、前記冷却ブロックの下端側に固定される伝熱プレートと、該伝熱プレートに対峙して設けられる冷凍ヘッドを有し、該冷凍ヘッドを冷却するための冷凍機とを具備することにある。
【0011】
以上の構成により、冷却ブロックの試料台に載置された試料を冷凍する段階では、試料が載置された試料台を冷却するための冷却ブロックを、駆動装置によってZ方向に下降させて、前記冷却ブロックの下端側に固定される伝熱プレートを介して冷却ブロックと冷凍機の冷凍ヘッドとを接触させ、冷凍機を駆動して冷却ブロックを冷却し、冷却ブロックを介して試料を冷却する。尚、冷凍機としてスターリングクーラーのような冷凍機を使用する場合、通常の冷凍サイクルを使用した冷凍機を使用する場合、試料の冷却温度としては、-120℃レベルが達成可能であるが、冷媒等を圧縮する圧縮機を有するため、機械的な微振動が配管等から伝達される問題点がある。
【0012】
試料が冷却温度に達し試料を観察する段階では、冷凍機を停止させると同時に、冷凍機の停止に伴う冷凍ヘッドの熱が冷却ブロック側に伝わらないように(冷凍力が低下しないように)、駆動装置によって前記冷却ブロックをZ方向に上昇させて、前記冷却ブロックの伝熱プレートと冷凍ヘッドとの間に隙間を作り、熱の伝導を防止したので、冷却ブロックの温度、ひいては試料の温度の上昇を抑制できるものである。
【0013】
また、前記冷却ブロックは、冷却速度の観点からは熱伝導性が良く、しかも蓄冷性の点からは容積比熱の大きいことが要求されるので、銅材を使用するのが望ましい。
【0014】
さらに、前記伝熱プレートは、銀、銅、金、アルミニウム及び熱伝導性炭素材料からなる群から選択されることが好ましい。いわゆる伝熱能力の高い材料から形成されることが好ましい。
【0015】
さらにまた、前記固定ネジは、プラスチックネジであり、前記冷却ブロックを点接触で支持することが好ましい。これによって、冷却ブロックと円筒支持部との間の熱の伝達を抑制できるので、冷却ブロックの温度の上昇を抑制することができるものである。
【0016】
また、前記円筒保持部には、その上端に径方向に延出するフランジ部が形成されると共に、前記駆動装置が、前記円筒保持部のフランジ部とZ方向下方から接触可能な環状の駆動ベースを具備し、前記フランジ部と前記駆動ベースとの間には、前記フランジ部を介して前記円筒保持部を下方に付勢する付勢手段が設けられることが好ましい。尚、付勢手段としては、押し付けバネであることが好ましい。
【0017】
これによって、冷却時には、駆動装置によって、円筒保持部(冷却ブロック)が冷凍ヘッドに接触するようにZ方向に下降して、伝熱プレートを介して冷却ブロックと冷凍ヘッドが接触し、さらに下降させると、付勢手段によって冷凍ブロック及び伝熱プレートを前記冷凍ヘッドに強く押し付けることができるので、伝熱性を向上させることができる。
【0018】
また、観察時には、冷却ブロックはZ方向に上昇し冷凍ヘッドから切り離されるが、付勢手段としての押し付けバネの作用により、円筒保持部が強く駆動ベースに押し付けられる。このため、高倍率観察時に振動問題が発生しない。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の試料冷却装置によれば、試料の冷凍を行う段階では、冷凍能力の高い冷凍機によって、試料を冷却する冷却ブロックに蓄冷することができ、試料を観察する段階では、冷凍機を停止させて、冷却ブロックと冷凍ヘッドとの間に隙間を空けて遮断することによって、ブロックの蓄冷力を維持して、試料の冷凍状態を維持することができるという効果を奏するものである。また、試料の観察時に、冷凍機を停止させることができるため、試料に伝わる微振動をなくすことができるという効果を奏するものである。
【0020】
また従来の試料を液体窒素レベルまで冷却可能な試料台では、大掛かりな冷却装置と試料台が接続されているため試料台の移動はX,Y平面に限られているものがほとんどであった。然るに本発明では試料部は冷凍装置から完全に切り離されているので、駆動機能に制限がなくなり、X,Y,Z方向ばかりでなく、回転動作や傾斜動作も可能である。さらに、試料観察中冷凍機の電源を切ることにより省エネにもなる。
【0021】
前記円筒保持部には、その上端に径方向に延出するフランジ部が形成されると共に、前記駆動装置が、前記円筒保持部のフランジ部とZ方向下方から接触可能な環状の駆動ベースを具備し、前記フランジ部と前記駆動ベースとの間には、前記フランジ部を介して前記円筒保持部を下方に付勢する付勢手段が設けられることが好ましい。
【0022】
これによって、試料の冷却時には、付勢手段により、冷却ブロックを、冷凍ヘッド側に押し付けることができるため、冷却能力を向上させることができ、さらに試料の観察時には、冷却ブロックを前記フランジ部にしっかりと固定することができるため、振動の抑制が達成されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施例1に係る試料冷却装置の試料観察時の状態を示した説明図である。
図2図2は、本発明の実施例1に係る試料冷却装置の試料冷凍時の状態を示した説明図である。
図3図3は、本発明の実施例2に係る試料冷却装置の試料観察時の状態を示した説明図である。
図4図4は、本発明の実施例2に係る試料冷却装置の試料冷凍時の状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
【実施例0025】
本発明の実施例に係る走査顕微鏡用の試料冷却装置1は、例えば図1で示すように、内部に密閉空間2を画成するチャンバー3と、このチャンバー3内の密閉空間2を真空状態にする真空ポンプ4と、前記走査電子顕微鏡の鏡筒5の電子ビーム6の照射箇所に配置可能な試料台7と、この試料台7が載置される円筒形の冷却ブロック8と、この冷却ブロック8の周囲に配され、前記冷却ブロック8を複数の固定ネジ9で保持される円筒保持部10と、この円筒保持部10を、前記鏡筒5から照射される電子ビーム6に対してX軸、Y軸及びZ軸方向に移動させる駆動装置11と、前記冷却ブロック8の下端側に固定される伝熱プレート12と、この伝熱プレート12に対峙して設けられる冷凍ヘッド13を有し、この冷凍ヘッド13を冷却するための冷凍機14とを具備するものである。また、15は、電子顕微鏡の像信号を検出するための検出器である。
【0026】
前記冷凍機14は、スターリングエンジンシステムを利用したスターリングクーラー、又は、圧縮機、膨張器、膨張弁及び凝縮器によって少なくとも構成される冷凍サイクルを利用した冷凍装置である。
【0027】
また、前記冷却ブロック8は、冷却速度の観点からは熱伝導性が良く、しかも蓄冷性の点からは容積比熱の大きいことが要求されるので、銅材を使用するのが望ましい。
【0028】
さらに、前記伝熱プレートは、銀、銅、金、アルミニウム及び熱伝導性炭素材料からなる群から選択されることが好ましい。いわゆる伝熱能力の高い材料から形成されることが好ましい。
【0029】
前記固定ネジ9は、断熱性に優れた材料、特にプラスチック製のネジであり、前記冷却ブロックを点接触で支持することが望ましい。
【0030】
以上の構成により、冷却ブロック8の試料台7に載置された試料を冷凍する段階では、試料が載置された試料台7を冷却するための冷却ブロック8を、駆動装置11によってZ方向に下降させて、前記冷却ブロック8の下端側に固定される伝熱プレート12を介して冷却ブロック8と冷凍機14の冷凍ヘッド13とを接触させ、冷凍機14を駆動して冷却ブロック8を冷却し、さらに冷却ブロック8を介して試料を冷却することができるものである。
【0031】
尚、冷凍機14としてスターリングクーラーのような冷凍機を使用する場合若しくは通常の冷凍サイクルを使用した冷凍機を使用する場合、試料の冷却温度としては、-120℃レベルが達成可能であるが、冷媒を圧縮する圧縮機を有するため、機械的な微振動が配管等から伝達されるという問題点がある。このため、試料を観察する段階では、冷凍機14の稼働は停止させてこの問題点を解消するものである。
【0032】
試料が冷却温度に達し試料を観察する段階では、冷凍機14を停止させると同時に、冷凍機14の停止に伴う冷凍ヘッド13の熱が冷却ブロック8側に伝わらないように(冷凍能力が低下しないように)、駆動装置11によって前記冷却ブロック8をZ方向に上昇させて、前記冷却ブロック8の伝熱プレート12と冷凍ヘッド13との間に隙間を作り(熱的に遮断し)、熱の伝導を防止するので、冷却ブロック8の温度、ひいては試料の温度の上昇を抑制できるものである。
【0033】
本発明によれば、冷凍機の稼働を停止させて試料が微振動することを防止するが、試料台を冷却するための冷却ブロック8を蓄冷力の高い素材によって形成したので、試料の温度上昇を抑制することができるものである。また、冷却ブロック8の冷却促進のために、冷却ブロック8の下端に伝熱性の高い材料からなる伝達プレート12を配置したため、冷凍ヘッド13から冷却ブロック8への冷却を促進することができるものである。
【0034】
また、試料を観察する段階で、冷凍機14の稼働を停止させた場合、冷凍機14の冷凍ヘッド13と冷却ブロック8の伝達プレート12との間に隙間16が形成されるので、冷凍機1の停止に伴う冷凍ヘッド13の温度上昇による伝熱プレート12を介した冷却ブロック8への影響を防止することができるものである。
【実施例0035】
本発明の実施例2に係る走査顕微鏡用の試料冷却装置1は、例えば図3で示すように、内部に密閉空間2を画成するチャンバー3と、このチャンバー3内の密閉空間2を真空状態にする真空ポンプ4と、前記走査電子顕微鏡の鏡筒5の電子ビーム6の照射箇所に配置可能な試料台7と、この試料台7が載置される円筒形の冷却ブロック8と、この冷却ブロック8の周囲に配され、前記冷却ブロック8を複数の固定ネジ9で保持される円筒保持部10と、この円筒保持部10を、前記鏡筒5から照射される電子ビーム6に対してX軸、Y軸及びZ軸方向に移動させる駆動装置11と、前記冷却ブロック8の下端側に固定される伝熱プレート12と、この伝熱プレート12に対峙して設けられる冷凍ヘッド13を有し、この冷凍ヘッド13を冷却するための冷凍機14とを具備するものである。また、15は、電子顕微鏡の像信号を検出するための検出器である。
【0036】
この実施例2に係る試料冷却装置1は、前記円筒保持部10の上端に径方向に延出するフランジ部10Aが形成され、駆動装置11から延出する駆動アーム11Aの先端に前記円筒保持部10の周囲を所定の間隔を空けて囲設される環状の駆動ベース11Bが設けられると共に、前記駆動アーム11Aと前記フランジ部10Aとの間が押し付けバネ16によって移動可能に連結されるものである。
【0037】
以上の構成により、図4で示すように冷却ブロック8を冷却する場合、駆動装置11によって駆動アーム11Aが下降すると前記押し付けバネ16を介して前記円筒保持部10が下降し、該円筒保持部10に固定ネジ9によって点支持された冷却ブロック8が伝熱プレート12を介して冷凍ヘッド13に接触し、押し付けバネ16の付勢力により、冷凍ヘッド13に押し付けられて密着し、冷凍ヘッド13による冷却効率が向上するものである。
【0038】
また、試料が冷却温度に達し試料を観察する段階では、冷凍機14を停止させると同時に、冷凍機14の停止に伴う冷凍ヘッド13の熱が冷却ブロック8側に伝わらないように(冷凍能力が低下しないように)、駆動装置11によって前記駆動アーム11Aを上昇させると前記駆動ベース11Bが前記フランジ部10Aに当接するので前記円筒保持部10が上昇し、前記冷却ブロック8がZ方向に上昇し、前記冷却ブロック8の伝熱プレート12と冷凍ヘッド13との間に隙間を作って(熱的に遮断し)、熱の伝導を防止するので、冷却ブロック8の温度、ひいては試料の温度の上昇を抑制できるものである。また、押し付けバネ16の作用により、円筒保持部10、冷却ブロック8、試料台7は強く駆動ベースに押し付けられるので、高倍率観察時に振動問題が発生しない。
【符号の説明】
【0039】
1 試料冷却装置
2 密閉空間
3 チャンバー
4 真空ポンプ
5 鏡筒
6 電子ビーム
7 試料台
8 冷却ブロック
9 固定ネジ
10 円筒保持部
10A フランジ部
11 駆動装置
11A 駆動アーム
11B 駆動ベース
12 伝熱プレート
13 冷凍ヘッド
14 冷凍機
15 検出器
16 押し付けバネ
図1
図2
図3
図4