(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027465
(43)【公開日】2025-02-27
(54)【発明の名称】ソーセージの発酵品質を向上させる複合スターター及び応用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20250219BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20250219BHJP
A23L 33/135 20160101ALN20250219BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A23L13/60 A
A23L33/135
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135150
(22)【出願日】2024-08-13
(31)【優先権主張番号】202311019298.6
(32)【優先日】2023-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202311409381.4
(32)【優先日】2023-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】517062562
【氏名又は名称】合肥工▲業▼大学
【氏名又は名称原語表記】HeFei University of Technology
【住所又は居所原語表記】No.193, Tunxi Road, Baohe District, HeFei, Anhui, China
(74)【代理人】
【識別番号】110004440
【氏名又は名称】弁理士法人ソシデア知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 宝才
(72)【発明者】
【氏名】鄭 莎莎
(72)【発明者】
【氏名】王 淳玉
(72)【発明者】
【氏名】楊 柳
【テーマコード(参考)】
4B018
4B042
4B065
【Fターム(参考)】
4B018LB06
4B018LE01
4B018MD85
4B018ME09
4B018ME13
4B018MF13
4B042AD03
4B042AG03
4B042AH01
4B042AK16
4B042AP27
4B065AA01X
4B065AA53X
4B065AC20
4B065BA24
4B065BB23
4B065BC31
4B065CA42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ソーセージの発酵品質を向上させる複合スターター及び応用を提供する。
【解決手段】複合スターターであって、ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリS.18を含み、前記複合スターターは液体菌剤であり、ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリS.18の有効生菌数の比率は1:1:2~4:2~4である。従来の発酵ソーセージと比較して、ソーセージのpH値を著しくかつ迅速に低下させ、腐敗菌の増殖を抑制し、製品の安全性を確保できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーセージの発酵品質を向上させる複合スターターであって、ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリS.18を含み、
前記ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07はChina Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、寄託日は2022年8月18日、菌株の寄託番号はCCTCC NO:M20221303であり、
前記ラチラクトバチルス・サケイL.48はChina Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、寄託日は2022年8月18日、寄託番号はCCTCC NO:M20221306であり、
前記スタフィロコッカス・キシローサスS.14は、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、寄託日は2022年8月18日、寄託番号はCCTCC NO:M 20221305であり、
前記スタフィロコッカス・スキウリS.18は、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、寄託日は2022年8月18日、寄託番号はCCTCC NO:M20221304であることを特徴とする複合スターター。
【請求項2】
前記複合スターターは液体菌剤であり、ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリS.18の有効生菌数の比率は1:1:2~4:2~4であることを特徴とする請求項1に記載の複合スターター。
【請求項3】
発酵肉製品の製造における請求項1又は2に記載の複合スターターの応用。
【請求項4】
前記発酵肉製品は発酵ソーセージであることを特徴とする請求項3に記載の発酵肉製品の製造における複合スターターの応用。
【請求項5】
前記発酵ソーセージの製造方法は、
原料肉に調味料及び補助材料を加えて塩漬けにし、前発酵肉を得るステップ(1)と、
請求項1又は2に記載の複合スターターを、発酵肉に接種して均一に混合して、ソーセージを詰めるステップ(2)と、
25~35℃、RH80~90%条件下で20~40時間発酵させる発酵ステップ(3)と、
10~20℃、RH40~50%条件下で10~20日間発酵させる風乾ステップ(4)と、を含むことを特徴とする請求項4に記載の発酵肉製品の製造における複合スターターの応用。
【請求項6】
前記複合スターターは液体菌剤であり、其中,ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリS.18の有効生菌数の比率は1:1:2~4:2~4であることを特徴とする請求項5に記載の発酵肉製品の製造における複合スターターの応用。
【請求項7】
前記ステップ(1)において、前記原料肉は、新鮮な豚もも赤身及び背脂表面の筋膜や腱部位を取り除いて洗い流し、肉を粉砕した後、豚もも赤身と背脂の割合を1~4:9~6に合わせて混合して得られたものであることを特徴とする請求項6に記載の発酵肉製品の製造における複合スターターの応用。
【請求項8】
前記ステップ(1)において、塩漬け温度は3~8℃であることを特徴とする請求項7に記載の発酵肉製品の製造における複合スターターの応用。
【請求項9】
前記ステップ(1)において、調味料及び補助材料は、塩2.5%、ブドウ糖0.7%、亜硝酸塩0.01%、ガーリックパウダー0.015%、フェンネルパウダー0.05%、黒胡椒パウダー0.05%、ソーセージフレーバー0.225%という原料肉に対する質量パーセントに従って添加されることを特徴とする請求項8に記載の発酵肉製品の製造における複合スターターの応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉類スターターの技術分野に関し、具体的にはソーセージの発酵品質を向上させる複合スターター及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
発酵ソーセージは、人工的な制御または自然環境条件下で微生物発酵を使用して独特の風味を生み出す一種の肉製品を指す。従来の発酵ソーセージは、生産環境中の微生物による自然発酵が主であり、製品の品質が不安定であった。純粋な微生物培養物の人工接種を使用して発酵を制御すると、製品の品質と安全性が大幅に向上できる。したがって、工業生産を達成するために、純粋な微生物培養物または調製物(すなわち、発酵肉製品スターター)を肉製品に人工的に接種することが一般的な慣行となっている。
【0003】
乳酸菌とブドウ球菌は発酵肉製品に最も一般的な微生物であり、発酵肉製品のスターターとしてもよく使用される。乳酸菌を接種すると、炭水化物を素早く代謝して酸を生成し、pHを下げ、腐敗や病原性微生物の増殖を抑制し、製品の安全性を向上させることができ、ブドウ球菌は、発酵肉製品の風味と色の品質に重要な役割を果たしており、一般的にタンパク質加水分解酵素、脂肪加水分解酵素、硝酸還元酵素活性を持っており、製品の風味特性に影響を与え、成熟した肉製品の乾燥プロセスを促進し、質感を改善し、同時にニトロソミオグロビンの形成を促進し、肉製品の良好な色の形成と安定性に有利である。発酵肉製品には風味の違いに応じて異なる微生物が必要であり、その用途は通常単一菌株に限定されず、単一菌株の単調さを補うために複数の菌株を組み合わせて使用される。
【0004】
菌株を標的的に接種した発酵肉製品は、食感と質感を確保しながら自然発酵に依存する不安定性を解決し、製品の安全性と品質の信頼性を大幅に向上させることができ、また、乳酸菌とブドウ球菌の複合接種の効果は単一接種よりも優れている。
【0005】
現在、国内生産に使用されるスターターは、ドイツのChr Hansen社のBactofermTMF-1など、主に欧米企業によって生産されているが、まだ国内株を使用して生産されていない。したがって、発酵性と増殖性に優れた乳酸菌やコアグラーゼ陰性ブドウ球菌をスクリーニングし、発酵ソーセージに適用することは、ソーセージや肉製品の加工にとって非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ソーセージの発酵品質を向上させる複合スターター及び応用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を提供する。
ソーセージの発酵品質を向上させる複合スターターであって、ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリS.18を含み、
前記ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07はChina Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、寄託日は2022年8月18日、菌株の寄託番号はCCTCC NO:M20221303であり、
前記ラチラクトバチルス・サケイL.48はChina Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、寄託日は2022年8月18日、寄託番号はCCTCC NO:M20221306であり、
前記スタフィロコッカス・キシローサスS.14は、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、寄託日は2022年8月18日、寄託番号はCCTCC NO:M 20221305であり、
前記スタフィロコッカス・スキウリS.18は、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、寄託日は2022年8月18日、寄託番号はCCTCC NO:M20221304である。
【0008】
さらに、前記複合スターターは液体菌剤であり、ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリの有効生菌数の比率は1:1:2~4:2~4である。
【0009】
本発明に記載の複合スターターは、発酵肉製品の製造に使用することができる。
【0010】
ここで、前記発酵肉製品は発酵ソーセージである。
【0011】
発酵ソーセージの製造方法は、
原料肉に調味料及び補助材料を加えて塩漬けにし、前発酵肉を得るステップ(1)と、
請求項1又は2に記載の複合スターターを、発酵肉に接種して均一に混合して、ソーセージを詰めるステップ(2)と、
25~35℃、RH80~90%条件下で20~40時間発酵させる発酵ステップ(3)と、
10~20℃、RH40~50%条件下で10~20日間発酵させる風乾ステップ(4)と、を含む。
【0012】
前記複合スターターは液体菌剤であり、其中,ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリの有効生菌数の比率は1:1:2~4:2~4である。
【0013】
そのうち、前記ステップ(1)において、前記原料肉は、新鮮な豚もも赤身及び背脂表面の筋膜や大きい腱等の部位を取り除いて洗い流し、肉を粉砕した後、豚もも赤身と背脂の割合を1~4:9~6に合わせて混合して得られたものである。
【0014】
そのうち、前記ステップ(1)において、塩漬け温度は3~8℃である。
【0015】
そのうち、前記ステップ(1)において、調味料及び補助材料は、塩2.5%、ブドウ糖0.7%、亜硝酸塩0.01%、ガーリックパウダー0.015%、フェンネルパウダー0.05%、黒胡椒パウダー0.05%、ソーセージフレーバー0.225%という原料肉に対する質量パーセントに従って添加される。
【発明の効果】
【0016】
従来技術と比較して、本発明の有益効果は次のとおりである。
(1)伝統的な発酵ソーセージと比較して、本発明の複合スターターを使用して製造された発酵ソーセージは、本発明のラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリS.18の複合スターターを接種すると、ソーセージのpH値を著しくかつ迅速に低下させ、腐敗菌の増殖を抑制し、製品の安全性を確保できる。
(2)本発明のラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリS.18の複合スターターを使用してソーセージを発酵すると、自然発酵に比べて発酵ソーセージにおけるヒトの必須アミノ酸の含有量が大幅に増加し、栄養価が向上する。
(3)本発明のラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリS.18の複合スターターによって発酵されたソーセージは、官能評価後、消費者の間でより人気がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリS.18の電気泳動図である。
【
図2】ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07、ラチラクトバチルス・サケイL.48、スタフィロコッカス・キシローサスS.14、スタフィロコッカス・スキウリS.18の系統樹である。
【
図3】発酵プロセス中の発酵ソーセージのさまざまなグループのpH値の図である。
【0018】
生物寄託の説明
ラクチプランティバチルス・プランタルムYR07(Lactiplantibacillus plantarum YR07)はChina Center for Type Culture Collectionに寄託され、寄託アドレスは湖北省武漢市武昌区八一路299号武漢大学校内であり、寄託機構の略称はCCTCCであり、寄託日は2022年8月18日、生物寄託番号はCCTCC NO:M20221303である。
ラチラクトバチルス・サケイL.48(Latilactobacillus sakei L.48)は、China Center for Type Culture Collectionに寄託され、寄託アドレスは湖北省武漢市武昌区八一路299号武漢大学校内であり、寄託機構の略称はCCTCCであり、寄託日は2022年8月18日、生物寄託番号はCCTCC NO:M20221306である。
スタフィロコッカス・キシローサスS.14(Staphylococcus xylosus S.14)は、China Center for Type Culture Collectionに寄託され、寄託アドレスは湖北省武漢市武昌区八一路299号武漢大学校内であり、寄託機構の略称はCCTCCであり、寄託日は2022年8月18日、生物寄託番号はCCTCC NO:M20221305である。
スタフィロコッカス・スキウリS.18(Mammaliicoccus sciuri S.18)は、China Center for Type Culture Collectionに寄託され、寄託アドレスは湖北省武漢市武昌区八一路299号武漢大学校内であり、寄託機構の略称はCCTCCであり、寄託日は2022年8月18日、生物寄託番号はCCTCC NO:M20221304である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施例における図面を参照して本発明の実施例における技術的解決策を明確かつ完全に説明する。明らかに、説明した実施例は本発明の実施例の一部にすぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、創造的な努力なしに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護の範囲内に含まれる。
【0020】
特に指定しない限り、以下の実施例に記載の試薬または材料はすべて市販されている。
【0021】
実施例1 伝統的な発酵肉製品の収集及び乳酸菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の分離、精製、スクリーニング
1.乳酸菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の分離
隴西ベーコン、蘇式ソーセージ、恩施ハム、▲トン▼族酸肉、建甌塩辛鴨、貴州ベーコンなどを全国から集め、サンプル10.0gを無菌条件下で秤量し、無菌生理食塩水90mLを加えて均質化した後、希釈した。
サンプル希釈液1.0mLを2%軽質炭酸カルシウムを含むMRS固体培地に注ぎ、37℃で48時間培養し、純粋なコロニーが得られるまで溶存カルシウムリングを有し、異なる形状のコロニーを選択し、MRS固体培地での画線培養を3~4回繰り返した。
サンプル希釈液を0.1mL取り、MSA固体培地に塗布し、37℃で24時間培養し、純粋なコロニーが得られるまで異なる形状のコロニーを選択し、MSA固体培地での画線培養を3~4回繰り返した。
2.乳酸菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌のスクリーニング
精製菌株に対してグラム染色顕微鏡検査とカタラーゼ試験を実施し、グラム染色陽性菌株とカタラーゼ陰性菌株をスクリーニングした。得られた菌株について、粘液産生試験、溶血試験、ブドウ糖ガス産生試験、H2S産生試験、アルギニンアンモニア産生試験、アミノ酸脱炭酸酵素試験を行い、スクリーニングした乳酸菌の抗菌特性をオックスフォードカップ拡散平板法により測定した。安全で発酵性能に優れた乳酸菌YR07(ラクチプランティバチルス・プランタルム)、L.48(ラチラクトバチルス・サケイ)の2株をスクリーニングした。
【0022】
【0023】
精製菌株に対してグラム染色顕微鏡検査とカタラーゼ試験を実施し、グラム染色陽性菌株とカタラーゼ陽性菌株をスクリーニングした。得られた菌株について、タンパク質と脂肪分解酵素の試験、亜硝酸還元酵素試験、粘液産生および溶血試験、ブドウ糖ガス産生試験、H2S産生試験、アルギニンアンモニア産生試験、およびアミノ酸脱炭酸酵素試験を行った。安全で、発酵性能が良好で、発色機能を有するブドウ球菌S.14(スタフィロコッカス・キシローサス)、S.18(スタフィロコッカス・スキウリ)がスクリーニングされた。
【0024】
【0025】
実施例2 乳酸菌及びコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の同定
細菌ゲノムDNA抽出キットを使用して乳酸菌の遺伝子を抽出し、27F(5’-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3’)及び1492R(5’-TACGGYTACCTT-GTTACGACTT-3’)上下のプライマー(SEQ ID NO:1-2に示す)を使用して、抽出された16S rDNA配列をPCR増幅し、PCR反応条件は、95℃で34サイクル(95℃ 30秒、56℃ 30秒、70℃ 65秒)20minの初期変性及び72℃ 10minの最終鎖伸長であった。得られたPCR産物に対してアガロースゲル電気泳動を行い、電気泳動結果をゲルイメージングシステムで観察した結果を
図1に示した。
配列決定結果に対して、米国国家バイオテクノロジー情報センター(national center of biotechnologyinformation、NCBI)のGenBankデータ内でローカル配列アラインメントのための基本的な検索ツール(basic local alignment search tool、BLAST)を使用して比較及び検索を行い、相同性の高いモデル菌株の16S rDNA配列を選択した。系統樹を構築し、結果を
図2に示すように、菌株YR07はLactiplantibacillus plantarum、つまりラクチプランティバチルス・プランタルムとして同定され、菌株L.48は、Latilactobacillus sakei、つまりラチラクトバチルス・サケイとして同定され、菌株S.14は、Staphylococcus xylosus、つまりスタフィロコッカス・キシローサスとして同定され、菌株S.18は、Mammaliicoccus sciuri、つまりスタフィロコッカス・スキウリとして同定された。
【0026】
実施例3 発酵ソーセージの製造
1.複合スターターの製造
乳酸菌YR07、L.48を活性化した後、1%の接種量で採取し、MRS液体培地に接種し、12時間培養し、8000×g、4℃で5分間遠心分離し、沈殿を収集し、生理食塩水で3回洗浄した。ブドウ球菌S.14、S.18を活性化した後、MSA液体培地に1%を接種し、12時間培養し、8000×g、4℃で5分間遠心分離し、沈殿を収集し、生理食塩水で3回洗浄した。菌体の最終濃度を1:1:2:2の比率に従って1×107CFU/gに調整し、体積を1mlとして使用に備える。
2.発酵ソーセージの製造
豚もも肉を、脂肪と赤身の比率が3:7になるように粉砕して混合し、添加される補助材料の割合は、2.5%塩、0.7%ブドウ糖、0.01%亜硝酸塩、0.015%ガーリックパウダー、0.05%フェンネルパウダー、0.05%黒胡椒パウダー、0.225%ソーセージフレーバー、1mL細菌懸濁液である。詰め中にはソーセージ本体がぷりぷりで気泡がないことを確保した。その後、恒温恒湿箱に吊るし、30℃、相対湿度85%で24時間発酵させ、次に、15℃、相対湿度45%で15日間風乾して、完成品を得た。試験群は、ブランク対照群(CK群)、商業発酵群(CS群)および複合スターター接種群(CH群)であった。
【0027】
実施例4 発酵ソーセージ指標の測定
1、発酵ソーセージのpH値の測定
実施例3のCK群、CS群、CH群のソーセージをそれぞれ詰めた後1日間発酵し、1日間風乾し、5日間風乾し、10日間風乾し、15日間風乾した後にpH値を測定した。サンプル10.0gを正確に量り、細く切って、100mLの蒸留水を加え、サンプルと十分で均一に混合し、8000×gで30秒間均質化し、濾過した後、上清を取り、pH計で測定し、3回繰返して平均を取った。
結果を
図3に示すように、発酵前の3つの群のpHは類似し、1日発酵した後、CS及びCH群のpHは5.0以下に低下し、1日風乾した後、値は4.6~4.7の最低点まで下がり、その後ゆっくりと上昇し、CK群のpHは常に5.0以上であるが、市販のスターターや複合スターターを添加したpHはより速く低下し、スターターを添加すると、酸を素早く生成し、ソーセージの発酵時間を短縮し、雑菌の増殖を抑制する効果があることがわかった。
2、発酵ソーセージ中のアミノ酸含有量の測定
国家標準《GB5009.124-2016-アミノ酸の測定》の方法に従って測定し、少し修正した。発酵ソーセージを適量量り、細かく切った後、凍結乾燥させ、凍結乾燥後のサンプル0.1gを正確に量り、4%スルホサリチル酸溶液4mLを加え、30分間超音波抽出した後、10分間静置した。分層後、上清を1.5mL取り、12000×g、4℃で30分間遠心分離し、上清1mLを採取し、0.22μm水相濾過膜で濾過し、全自動アミノ酸分析装置により遊離アミノ酸の測定を行った。
【0028】
表3から、本発明の実施例3で製造した複合スターターで発酵させたソーセージの総アミノ酸含有量が最も高く、ヒトの8種の必須アミノ酸の含有量も自然発酵群と商業発酵群より高いことが分かる。
【0029】
【表3】
注:NDは、対応する化合物が検出されなかったことを示す。
3、発酵ソーセージ中の揮発性化合物の含有量の測定
実施例3のCK群、CS群、CH群のソーセージ完成品の揮発性化合物の含有量を測定した。ヘッドスペース固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法を使用して、発酵ソーセージ中の揮発性風味物質を分析した。細く切ったソーセージサンプル(2.0g)を20mLヘッドスペースサンプルバイアルに入れ、内部標準として2,4,6トリメチルピリジン(濃度:0.1g/L)10μLを添加した。ヘッドスペースサンプルバイアルを60℃の温度で5分間平衡化した後、エージング済みの75μm複合式CAR/PDMS抽出針を挿入して30分間吸着させ、次に、すぐに抽出ヘッドをガスクロマトグラフ質量分析サンプル注入口に挿入し、5分間分析した。
揮発性化合物は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)システム(5977B、Agilent)を使用して測定され、ガスクロマトグラフィー条件:DB-WAX(30m×0.25mm×0.25μm)、サンプル注入口温度は250℃で、サンプルはスプリットレスモードで注入され、キャリアとしてヘリウムを使用し、流速は1mL/minであり、プログラムされた温度上昇:カラムの初期温度は40℃で、5分間維持され、その後2℃/minで90℃まで昇温し、保持せず、5℃/minで180℃まで昇温し、保持せず、10℃/minで230℃まで昇温し、8分間保持した。質量分析条件:イオン源温度は230℃、質量走査範囲は30~550m/zであった。
揮発性化合物の同定は、NIST 20質量スペクトルライブラリを比較し、80%より大きい類似性を同定結果として採用した。揮発性化合物は、n-ヘキサンに溶解した2,4,6-トリメチルピリジン溶液を内部標準物質として使用し、内部標準法により定量し、定量的結果はμg/kgで表され、重要な揮発性物質の評価方法に関する参考文献:(劉登勇、周光宏、徐幸蓮、食品中の重要な風味化合物を特定する新しい方法:「ROAV」法[J].食品科学,2008,344(7):370-374.)、相対臭気活性値(Relative Odor Activity Value、ROAV)分析法を使用して、サンプルの重要な揮発性物質を特定する。
結果を表4に示すように、相対臭気活性値によってソーセージ中の合計25種の重要な揮発性物質が特定され、そのうちCH群には重要な揮発性物質が多く含まれており、その含有量は216.28μg/kgであり、3-ヒドロキシ-2-ブタノンは、心地よいクリーミーな味を持つ特別な風味化合物であり、CH群の中で最も多く含有されている。対照群および商業発酵群と比較して、複合スターターの接種は発酵ソーセージ中の特徴的な風味物質の含有量を大幅に増加させることができるため、複合スターターの接種は発酵ソーセージの風味を改善することができる。
【0030】
【0031】
4、発酵ソーセージの官能評価
評価委員は、選別された食品を専攻する男女半数の大学院生10名で構成されている。ソーセージを20分茹で、20mmの厚さに切った。官能評価は二重盲検法を用いて行われ、評価員同士はコミュニケーションが取れず、異なるサンプルを評価する前に清水で口をすすぐ必要があった。採点は10点法に基づき、サンプルの外観、組織の状態、色、風味、および全体的な受け入れ可能性という5つの側面を評価し、評価基準を表5に示す。
【0032】
表6から、本発明における複合スターターの接種は、ソーセージの外観の完全性を改善し、発酵ソーセージの風味を高め、発酵ソーセージの質感を改善し、発酵ソーセージの全体的な受け入れ可能性を改善することが分かる。
【0033】
【0034】
【0035】
5、発酵ソーセージ中の生体アミン含有量の測定
a.サンプルの調製
実施例3のCK群、CS群、CH群のソーセージ完成品の生体アミン含有量を測定した。ソーセージサンプル2.5gを量り、細かく切り、内部標準液(100mg/L)125Lを加え、十分で均一に混合し、その後、0.6mol/L過塩素酸溶液10mLを加えて抽出し、8000rpmで30秒間均質化し、2回繰返し、4℃、8000×gで10分間遠心分離し、上清を取り、沈殿した部分に対して上記の抽出プロセスを繰り返し、上清を合わせて25mLに定量した。
b.標準溶液の調製
ヒスタミン、チラミン、プトレシン、カダベリン、トリプタミン、スペルミン、アニリン標準品を適量秤量し、0.1mol/L塩酸溶液でそれぞれ1.0g/L標準原液に調製した。それぞれ標準原液1mLをとり、0.1mol/L塩酸を用いて100mg/Lの標準混合液を調製し、連続希釈を行って、最終濃度1.0、5.0、10.0、20.0、100.0mg/mLの混合標準使用溶液が得られた。
c.サンプル及び標準溶液のプレカラム誘導体化
サンプルの誘導:試料溶液0.2mLを移送し、2mol/L NaOH溶液40μLを加えてpHを調整し、次に、60μLの飽和NaHCO3溶液と400μLの誘導体化剤(10mg/mLアセトン)を加え、ボルテックスして均一に混合した。暗所で、40℃の水浴に45分間浸し、アンモニア水を20μL加え、均一に混合した後、暗所に30分間静置して反応を中止した。アセトニトリルを加えて最終体積を1mLにし、0.22μm濾過膜で濾過し、サンプルのロードと検出を待った。標準の誘導:生体アミン標準シリーズ溶液0.2mLをそれぞれ移送し、内部標準液(100mg/L)50μLを順次加え、以下の操作は、試料溶液の誘導ステップと同じである。
d.クロマトグラフィー条件
クロマトグラフィーカラムはWaters-symmetry C18(4.6mm×250mm、5μm)、カラム温度は35℃、UV検出波長は254nm、サンプル注入量は10μL、流速は0.8mL/min、移動相Aはアセトニトリル、Bは水であり、勾配溶出を使用し、溶出手順を表7に示す。
【0036】
【0037】
結果を表8に示すように、複合スターターを接種したソーセージ中のカダベリン、チラミンおよびスペルミンの含有量は、対照群および商業発酵群より低く、アニリンやヒスタミンは検出されず、対照群および商業発酵群と比較して、複合スターター群の生体アミンの総量は大幅に減少した(P<0.05)。したがって、複合スターターの接種により、発酵ソーセージ中の生体アミンの生成を効果的に減らすことができる。
【0038】
【0039】
本発明の実施例を図示し説明してきたが、当業者であれば、本発明の原理および精神から逸脱することなく、これらの実施例に対して様々な変更、修正、置換および変形を行うことができることを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】