(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027473
(43)【公開日】2025-02-27
(54)【発明の名称】冷感剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20250219BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20250219BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250219BHJP
A61K 8/45 20060101ALI20250219BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/37
A61Q19/00
A61K8/45
A61K8/86
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024214265
(22)【出願日】2024-12-09
(62)【分割の表示】P 2020001398の分割
【原出願日】2020-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】523390596
【氏名又は名称】株式会社タフリーインターナショナル
(71)【出願人】
【識別番号】507366706
【氏名又は名称】株式会社リベルタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇谷 泰三
(72)【発明者】
【氏名】脇谷 茂希
(72)【発明者】
【氏名】清水 和也
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC072
4C083AC172
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC482
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB04
4C083CC02
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE09
4C083EE11
(57)【要約】
【課題】エタノールを溶媒の主成分とすることなく、従来のものと同等以上の時間継続して冷感成分の冷感効果を発揮し続ける冷感剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の冷感剤組成物は、水溶液中に、非イオン界面活性剤によりミセル化された冷感成分が分散されている。また、冷感剤組成物全量に対して、冷感成分が0.01~6.00質量%、及び、非イオン界面活性剤が0.10~10.00質量%含有されている。さらに、非イオン界面活性剤は、親油性界面活性剤及び親水性界面活性剤の混合物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷感成分、非イオン界面活性剤、及び安定剤が水溶液中に含まれる冷感剤組成物であって、
前記冷感成分は、L-メントール、イソプレゴール、カンファー、シネオール、メントン、乳酸メンチル、又は、コハク酸メンチルであり、
前記冷感成分は、前記非イオン界面活性剤によりミセル化されることで分散され、
ミセル化された前記冷感成分は、前記冷感剤組成物を5~10℃にて2週間静置保存したときにミセル中で溶解しており、
前記非イオン界面活性剤は、親油性界面活性剤及び親水性界面活性剤の混合物であることを特徴とする、肌又は肌に接する衣類へのスプレー噴射塗布用の冷感剤組成物。
【請求項2】
前記冷感成分が前記非イオン界面活性剤によりミセル化されることで分散され、ミセル化された前記冷感成分が前記冷感剤組成物を5~10℃にて2週間静置保存したときにミセル中で溶解するように、
前記冷感剤組成物の全量中の含有量で、前記冷感成分の含有量は、0.01~6.00質量%の範囲から選択され、前記非イオン界面活性剤の含有量は、0.10~10.00質量%の範囲から選択され、前記安定剤の含有量は、0.01~10.00質量%の範囲から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の肌又は肌に接する衣類へのスプレー噴射塗布用の冷感剤組成物。
【請求項3】
前記冷感成分が前記非イオン界面活性剤によりミセル化されることで分散され、ミセル化された前記冷感成分が前記冷感剤組成物を5~10℃にて2週間静置保存したときにミセル中で溶解するように、
前記冷感剤組成物の全量中の含有量で、前記冷感成分の含有量は、0.01~6.00質量%の範囲から選択され、前記非イオン界面活性剤の含有量は、2.00~6.00質量%の範囲から選択され、前記安定剤の含有量は、0.01~10.00質量%の範囲から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の肌又は肌に接する衣類へのスプレー噴射塗布用の冷感剤組成物。
【請求項4】
前記非イオン界面活性剤によりミセル化された前記冷感成分のミセルは、粒子径が5~200nmであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の肌又は肌に接する衣類へのスプレー噴射塗布用の冷感剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノールを主成分とすることなく冷感効果を発揮し得る冷感剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏の暑さ対策として、肌に直接又は肌に接する衣類の表面上に噴射して清涼感を付与する様々なタイプの冷感剤組成物又は冷感化粧料等が開発されている(例えば特許文献1~4参照)。これらの冷感剤組成物の主成分としては、一般的にL-メントールが用いられている。L-メントールの冷感作用は、実際に温度を下げるわけではなく、神経に直接作用することにより、感覚的に冷感を付与するものである。
【0003】
L-メントールは、有機溶剤や濃塩酸には容易に溶けるものの、水には極めて溶け難いといった性質を有している。そのため、従来の冷感剤組成物においては、エタノールに溶解した態様でL-メントールが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-239142号公報
【特許文献2】特開2002-80335号公報
【特許文献3】特開2004-269368号公報
【特許文献4】特開2010-84269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の冷感剤組成物はL-メントールをエタノールに溶解させた構成であるため、使用者が敏感肌である場合に不快な刺激を与えたり、密室空間や換気の不十分な空間での使用において引火のおそれがある。そのため、主成分のエタノールを水に代え、L-メントールを単純に水に溶解させる試みがなされたが、L-メントール成分自体が水溶性ではないため、容易には溶解できないといった問題を有していた。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたもので、エタノールを溶媒の主成分とすることなく、従来のものと同等以上の時間継続して冷感成分の冷感効果を発揮し続ける冷感剤組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の冷感剤組成物は、水溶液中に、非イオン界面活性剤によりミセル化された冷感成分が分散されていることを特徴としている。また、本発明の冷感剤組成物においては、冷感剤組成物全量に対して、前記冷感成分が0.01~6.00質量%、及び、前記非イオン界面活性剤が0.10~10.00質量%含有されていることが好ましい。
【0008】
このような特徴を備えた本発明によれば、エタノールに代えて水を溶媒とした水溶液の冷感剤組成物において、冷感成分を良好に分散し、噴霧された際に長時間にわたって清涼感を付与することができる。
【0009】
また、本発明の冷感剤組成物においては、前記非イオン界面活性剤は、親油性界面活性剤及び親水性界面活性剤の混合物であることが好ましい。このような態様によれば、冷感成分を良好にミセル化することができ、安定的な冷感剤とすることが可能になる。
【0010】
さらに、本発明の冷感剤組成物においては、前記非イオン界面活性剤によりミセル化された冷感成分は、粒子径が5~200nmであることが好ましい。また、本発明の冷感剤組成物においては、安定剤がさらに0.01~10.00質量%含有されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の冷感剤組成物においては、前記冷感成分は、L-メントール、イソプレゴール、カンファー、シネオール、メントン、乳酸メンチル、又は、コハク酸メンチルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の冷感剤組成物によれば、エタノールを溶媒の主成分とすることなく、従来のものと同等以上の時間継続して冷感成分の冷感効果を発揮し続ける冷感剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するために、冷感剤組成物における冷感成分の溶解について鋭意研究を行った結果、冷感成分をミセル化することによって、溶媒を水とした際にも水溶液中において冷感成分を良好に分散することが可能であることを見出し、本発明の冷感剤組成物を発明するに至った。
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る冷感剤組成物について詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本発明の冷感剤組成物においては、水溶液中に、非イオン界面活性剤によりミセル化された冷感成分が分散されていることを最大の特徴としている。このような構成によれば、エタノールに代えて水を溶媒とした水溶液の冷感剤組成物において、冷感成分を非イオン界面活性剤によりミセル化しているため、冷感成分は低温下においても針状結晶として析出することなく、良好に分散されており、噴霧された際に長時間にわたって清涼感を付与することができる。なお、この非イオン界面活性剤によりミセル化された冷感成分は、殆ど粘性を有していないため、スプレーにより良好に噴霧することができる。
【0016】
本発明の冷感剤組成物においては、非イオン界面活性剤によりミセル化された冷感成分の粒子径が5~200nmであることが好ましい。ミセルの大きさが5nm未満とするには、フルイタイザーという装置を使って物理的に小さくする必要があるため好ましくない。一方、ミセルの大きさが200nmを超えると、ミセル形成が非常に困難となるため好ましくない。
【0017】
本発明の冷感剤組成物は、冷感剤組成物全量に対して、冷感成分が0.01~6.00質量%、非イオン界面活性剤が0.10~10.00質量%、及び、安定剤が0.01~10.00質量%含有されていることが好ましい。また、本発明の冷感剤組成物におけるミセルにおいては、冷感成分が8.33~23.08質量%、非イオン界面活性剤が38.46~83.33質量%、及び、安定剤が8.33~38.46質量%の範囲で配合されていることが好ましい。
【0018】
本発明における冷感成分は、通常化粧品等に使用されるものであればいずれのものであってもよく、本発明の冷感剤組成物100質量%に対して0.01~6.00質量%の範囲で配合できる。冷感成分の配合量が0.01質量%より少ないと、十分な清涼感を得ることができず、一方、配合量が6.00質量%より多いと、経済性の点で実用的ではない。また、冷感剤組成物のミセルにおいては、冷感成分が8.33~23.08質量%の範囲で配合できる。冷感成分のミセル中の配合量が8.33質量%より少ないと、十分な清涼感を得ることができず、一方、ミセル中の配合量が23.08質量%より多いと、経済性の点で実用的ではない。
【0019】
本発明における冷感成分としては、L-メントール、イソプレゴール、カンファー、シネオール、メントン、乳酸メンチル、コハク酸メンチル等のメントール類似体又はメントール誘導体のいずれかを用いることができる。本発明においては、これらの冷感成分の中でも、清涼感の効果維持や経済的な観点から、L-メントールであることが最も好ましい。
【0020】
また、本発明における非イオン界面活性剤は、冷感成分をミセル化するために配合される成分であり、冷感成分の水溶液中の分散を可能とするとともに、冷感成分の揮発を抑制している。この非イオン界面活性剤の形状は特に限定されるものではないが、液状又はペースト状が好ましい。また、本発明における非イオン界面活性剤は、親油性界面活性剤及び親水性界面活性剤の2種をバランスよく配合することが好ましい。
【0021】
本発明における非イオン界面活性剤の配合量は、0.10~10.00質量%の範囲で、好ましくは2.00~6.00質量%の範囲であることが好ましい。非イオン界面活性剤の配合量が0.10質量%より少ないと、冷感成分を十分にミセル化することができず、一方、配合量が10.00質量%より多く配合しても、これ以上ミセル化が進行することはなく、経済面からしても10.00質量%以内に抑えておくことが望ましい。また、冷感剤組成物のミセルにおいては、非イオン界面活性剤が38.46~83.33質量%の範囲で配合できる。非イオン界面活性剤のミセル中の配合量が38.46質量%より少ないと、冷感成分を十分にミセル化することができない。一方、ミセル中の配合量が83.33質量%を超えても、これ以上ミセル化が進行することはないため、経済的にもこの範囲に抑えておくことが望ましい。
【0022】
本発明における親油性界面活性剤は、HLBが7より低い界面活性剤を意味し、具体的には、アルキルグリセリルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、またそれらの塩等を用いることができる。
【0023】
本発明における親水性界面活性剤は、HLBが7より高い界面活性剤を意味し、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(ポリオキシソルビトール脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルコールエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、それらの塩等を用いることができる。
【0024】
さらに、本発明の冷感剤組成物に配合される安定剤は、冷感成分及び非イオン界面活性剤のみでは冷感成分の再結晶化により安定したミセルを得ることができない場合に、それを補う分だけ配合すればよく、0.01~10.00質量%の範囲で配合することができる。安定剤の配合量が0.01質量%より少ないと、冷感成分を安定してミセル化することができない。一方、安定剤の配合量は10.00質量%より多く配合することも可能だが、非イオン界面活性剤の配合量もそれに伴い増加しなくてはいけないことや、安定剤を過剰に入れすぎると本発明の冷感剤組成物の安定性が失われるおそれがあるため、10.00質量%以内に抑えておくことが望ましい。また、冷感剤組成物のミセルにおいては、安定剤が8.33~38.46質量%の範囲で配合できる。安定剤のミセル中の配合量が8.33質量%よりも少ないと、冷感成分を安定してミセル化することができない。一方、ミセル中の配合量が38.46質量%を超えると、本発明の冷感剤組成物の安定性が失われるおそれがあるため好ましくない。
【0025】
本発明における安定剤の形状は特に限定されるものではないが、液状又はペースト状が好ましい。安定剤は化粧品等に使用されているものでよく、特に限定されることはないが、油脂類、脂肪酸類、エステル類、高級アルコール類、炭化水素類、シリコーン油類などが挙げることができる。
【0026】
本発明において用いられる油脂としては、アーモンド油、アボガド油、アマニ油、オリーブ油、キョウニン油、ゴマ油、サザンカ油、サフラワー油、シナモン油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、月見草油、小麦胚芽油、大豆油、茶実油、米ヌカ油、米胚芽油、綿実油、落花生油等が挙げられる。
【0027】
本発明において用いられる脂肪酸としては、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
【0028】
本発明において用いられるエステルとしては、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸コレステロール、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、イソパルミチン酸オクチル、エチルヘキサン酸セチル、オクタカプリル酸ポリグリセリル、オクタン酸セチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸デシル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ステアリン酸ブチル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリエチルヘキサノイン、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸オクチル、ポリエチレングルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル等が挙げられる。
【0029】
本発明において用いられる高級アルコールとしては、イソステアリルアルコール、オクチルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0030】
本発明において用いられる炭化水素油としては、オクタン、デカン、ドデカン、イソドデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、パラフィン、イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、オレフィンオリゴマー等が挙げられる。
【0031】
本発明において用いられるシリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンの鎖状シリコーン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンの環状シリコーン等が挙げられる。
【0032】
なお、精油類も化粧品等に使用されている油脂であるが、配合する精油の香気が冷感成分特有の清涼感の香気と混ざり不快な香気になるおそれがあること、及び、精油の単価が非常に高いため経済的ではない等の理由から、本発明の冷感剤組成物の安定剤としては用いないこととした。
【0033】
本発明の冷感剤組成物に添加可能な防腐剤としては、親油性、親水性問わず、本発明の冷感剤組成物に溶解し得るものであれば配合することができる。具体的には、安息香酸ナトリウム、イソプロピルメチルフェノール、メチルパラベン、エチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、オクタンジオール、カプリル酸グリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、クロルフェネシン、サリチル酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、ヘキサンジオール、ベンザルコニウムクロリド、ペンタンジオール、メチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン等が挙げられる。
【0034】
本発明における防腐剤は、親油性、親水性問わずに一般的に防腐効果が見込める量まで配合できる。具体的には、防腐剤がパラオキシ安息香酸エステル及びそれらのナトリウム塩の場合、本発明の冷感剤組成物100質量%に対して1.00質量%まで配合することが可能である。また、防腐剤がペンタンジオールの場合、本発明の冷感剤組成物100質量%に対して3.00~5.00質量%の範囲で配合することができる。さらには、防腐剤がヘキサンジオールの場合、本発明の冷感剤組成物100質量%に対して1.50~2.00質量%の範囲で配合可能である。
【0035】
また、本発明の冷感剤においては、イソプロピレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングルコール等の溶剤、動植物抽出液(動植物エキス)等の添加剤や香料も本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【実施例0036】
次に、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0037】
1.本発明と従来品との比較
<実施例1>
まず、防腐剤であるメチルパラベン及びフェノキシエタノールを最終濃度が0.30質量%及び1.00質量%となるように精製水に溶解した。また、冷感成分であるL-メントール、親水性界面活性剤であるソルビタン脂肪酸エステル(商品名:レオドールTW-0120V、花王社製)、親油性界面活性剤であるオイレン酸グリセリル(商品名:レオドールMO-60、花王社製)、及び、高級アルコール(安定剤)であるオクチルドデカノール(商品名:カルコール200GD、花王社製)を、最終濃度がそれぞれ3.00質量%、2.00質量%、2.00質量%、及び、3.00質量%となるように、均一に混合溶解した。ここで、上記の混合物が均一に溶解しない場合には、50℃まで加熱してもよい。次いで、上記精製水に上記混合物を混合して、L-メントールが界面活性剤によりミセル化された本発明の実施例1の冷感剤組成物を作製した。なお、作製された冷感剤組成物は白青色を有していた。
【0038】
<比較例1>
冷感成分であるL-メントールを3.00質量%となるようにエタノールに溶解し、エタノールを溶媒の主成分とした従来品に相当する比較例1の冷感剤組成物を作製した。
【0039】
評価
上記のようにして得られた実施例1及び比較例1の冷感剤組成物をスプレーにより噴射させて、40mm×40mmの綿/ポリエステル(50/50)の布風袋に塗布し、塗布量を測定した。次に、この冷感剤組成物を塗布した布風袋をそれぞれ50℃、40℃及び30℃で3分間放置した後、冷感剤組成物の残量を測定した。実施例1及び比較例1の冷感剤組成物について4回測定した結果をそれぞれ表1~6に示した。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
表1~6から明らかなように、本発明の実施例1の冷感剤組成物においては、揮発率がそれぞれ20.40%(50℃)、20.02%(40℃)及び11.12%(30℃)であり、比較例1の冷感剤組成物の揮発率54.49%(50℃)、47.35%(40℃)及び40.62%(30℃)に比べて揮発性が非常に抑制されていることが示された。この結果は、溶媒である水とエタノールの蒸気圧が大きく違うためであり、溶媒が水である実施例1の冷感剤組成物は、布風袋からの揮発量が抑えられ、より長い時間にわたって冷感を付与し続けることができることを示している。なお、ここでの蒸気圧とは、液体(個体)から気体へと状態変化する力を示したもので、数値が高い程、気化し易いことを示している。
【0047】
2.L-メントール及び安定剤の状態安定性
次に、本発明の冷感剤組成物において、L-メントールに対する安定剤の配合量を変化させて、安定剤の好適な配合量を検証した。なお、各冷感剤組成物は、上記の実施例1の組成において、L-メントールを1.00~3.00質量%の範囲、及び、安定剤を0.00~5.00質量%の範囲で1.00質量%ずつ配合量を変化させて調製した。
【0048】
作製された各冷感剤組成物を、室温と仮定した20℃の恒温槽にて1週間静置保存し、冷感剤組成物の状態安定性を下記基準で目視判定した。状態安定性の評価基準としては、冷感剤組成物全体が白青色か白濁していて分離が確認できず、ミセル化している状態を〇とし、冷感剤組成物が分離している状態を×とした。各冷感剤組成物における安定剤の配合量についての結果を表7に示した。
【0049】
【0050】
表7から明らかなように、安定剤が配合されない場合には、冷感剤組成物が分離してしまい、ミセル化できないことが確認された。また、L-メントールの配合量が小さいのであれば、それを補う様に安定剤の配合量を大きくすることで、L-メントールをミセル化した本発明の冷感剤組成物を得ることができる。このことから、安定剤を適切に配合することで良好な本発明の冷感剤組成物を調製し得ることが示された。
【0051】
3.低温時のL-メントールの析出検証
L-メントールは低温時になると針状結晶として析出し、良好な外観安定性が維持できない不具合がある。また、結晶として析出すると冷感剤組成物中のL-メントール濃度が下がり、清涼感の低下の問題が起こってしまう。そこで、低温時における針状結晶の析出を検証した。なお、本検証における各冷感剤組成物は、上記検証のものと同様のものを用いた。
【0052】
作製された各冷感剤組成物を、5~10℃にて2週間静置保存し、針状結晶の析出の有無を下記基準で目視及び光学顕微鏡より判定した。析出の有無の評価基準としては、初期品と差がなく、針状結晶の析出も認められない状態を〇とし、微量の結晶の析出が認められる状態を△とし、針状結晶が析出し、冷感剤組成物が分離または凝固している状態を×とした。各冷感剤組成物における低温時の外観についての結果を表8に示した。
【0053】
【0054】
表8に示されているように、安定剤を過剰に配合しすぎても、低温時にはL-メントールの針状結晶が析出することが確認された。このことから、安定剤を適切に配合することで低温時でもL-メントールが析出しない本発明の冷感剤組成物を得ることができることが示された。