(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027493
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】炭素生成システム及び炭素生成方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20250220BHJP
C01B 3/26 20060101ALI20250220BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20250220BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C01B32/05
C01B3/26
C07C1/12
C07C9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132245
(22)【出願日】2023-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】中村 至高
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
4H006
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G146AA01
4G146AB01
4G146BA12
4G146BC03
4G146BC44
4G146DA02
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA19
4H006BA20
4H006BA21
4H006BC10
4H006BC11
4H006BE20
4H006BE41
(57)【要約】
【課題】水素及び二酸化炭素を含む原料からメタンを生成する反応と、メタンを含む原料から炭素を生成する反応とを同一の反応器で実施し、二酸化炭素濃度を制御することで反応性を向上させた炭素生成システム及び炭素生成方法を提供する。
【解決手段】炭素生成システム1は、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を生成する反応器10と、水素を反応器10に供給する水素供給部20と、二酸化炭素を反応器10に供給する二酸化炭素供給部25と、反応器10の入口と出口とを接続し、反応器10で生成されたメタンを反応器10へ戻す循環流路30と、循環流路30に設けられ、反応器で生成されたメタン及び水を含むガスから、少なくとも一部の水を除去する水除去部40と、を備える。反応器10内のガスと触媒との接触によって炭素を生成し、反応器10内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素及び二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を生成する反応器と、
水素を前記反応器に供給する水素供給部と、
二酸化炭素を前記反応器に供給する二酸化炭素供給部と、
前記反応器の入口と出口とを接続し、前記反応器で生成されたメタンを前記反応器へ戻す循環流路と、
前記循環流路に設けられ、前記反応器で生成された前記メタン及び前記水を含むガスから、少なくとも一部の前記水を除去する水除去部と、
を備え、
前記反応器内のガスと触媒との接触によって炭素を生成し、
前記反応器内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する、炭素生成システム。
【請求項2】
入口及び出口が循環流路に接続された反応器で炭素を生成する炭素生成方法であって、
前記反応器に水素及び二酸化炭素を供給する工程と、
前記水素及び前記二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を前記反応器で生成する工程と、
前記循環流路において、前記反応器で生成された前記メタン及び前記水を含むガスから、少なくとも一部の前記水を除去する工程と、
少なくとも一部の前記水を除去したガスを前記反応器へ供給する工程と、
前記反応器内のガスと触媒との接触によって炭素を前記反応器で生成する工程と、
前記反応器内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する工程と、
を含む、炭素生成方法。
【請求項3】
前記反応器内におけるガスの濃度を測定する工程をさらに含み、
前記反応器内におけるガスの濃度を測定する工程において、測定対象となるガスは、二酸化炭素、水素、一酸化炭素及びメタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項2に記載の炭素生成方法。
【請求項4】
前記反応器内におけるガスの濃度を測定する工程において、測定対象となるガスは、二酸化炭素を含有する、請求項3に記載の炭素生成方法。
【請求項5】
前記反応器内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する工程において、二酸化炭素に対する水素の供給流量比を調整することによって二酸化炭素の濃度を制御する、請求項2又は3に記載の炭素生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭素生成システム及び炭素生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、地球温暖化の原因として問題視されており、世界的に二酸化炭素の排出を抑制する動きが活発化している。大気中への二酸化炭素の排出量を削減し、二酸化炭素を有効に利用する方法として、水素及び二酸化炭素を固体の炭素に変換する方法がある。
【0003】
特許文献1には、第1反応炉と凝縮器と第2反応炉と熱交換器とを含む二酸化炭素の固定化システムが開示されている。第1反応炉は、水素と二酸化炭素とを触媒の存在下で反応させてメタン及び水蒸気を含む混合ガスを生成する。凝縮器は、第1反応炉で生成された混合ガス中の水分を凝縮する。第2反応炉は、メタンガスからカーボンなどの炭素製品を製造する。熱交換器は、第1反応炉で生成された混合ガスと、第2反応炉へ供給されるメタンガスとの間で熱交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、第1反応炉での反応は発熱反応であり、第2反応炉での反応は吸熱反応である。そして、特許文献1では、第1反応炉で生成された混合ガスと、第2反応炉へ供給されるメタンガスとの間で熱交換することにより、第1反応炉で生成された熱エネルギーを回収してシステムのエネルギー効率を向上させている。このことから、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタンを生成する反応と、生成された混合ガスを再循環ガスとして使用して、再循環ガス中のメタンから炭素を生成する反応とを同一の反応器で実施することで、二酸化炭素から炭素を生成することができる。
【0006】
このような再循環ガスを伴うプロセスの場合、排ガスが発生しないため、反応器内のガス組成を適切な範囲に保ちつつ、ガスを供給し続けることが必要である。また、水素及び二酸化炭素から炭素を生成する化学反応式において、二酸化炭素に対する水素のモル比は2であるが、工業的に利用するときには誤差があり、その誤差の蓄積により反応器内のガスの組成は長期的に変わり得る。そのため、反応器内のガス濃度を測定し、最適なガス濃度に制御するシステムを構築することが課題であった。
【0007】
本開示は、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタンを生成する反応と、メタンを含む原料から炭素を生成する反応とを同一の反応器で実施し、二酸化炭素濃度を制御することで反応性を向上させた炭素生成システム及び炭素生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る炭素生成システムは、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を生成する反応器と、水素を反応器に供給する水素供給部と、二酸化炭素を反応器に供給する二酸化炭素供給部と、を備えている。炭素生成システムは、反応器の入口と出口とを接続し、反応器で生成されたメタンを反応器へ戻す循環流路と、循環流路に設けられ、反応器で生成されたメタン及び水を含むガスから、少なくとも一部の水を除去する水除去部と、を備えている。炭素生成システムは、反応器内のガスと触媒との接触によって炭素を生成する。そして、炭素生成システムは、反応器内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する。
【0009】
本開示に係る炭素生成方法は、入口及び出口が循環流路に接続された反応器で炭素を生成する炭素生成方法である。炭素生成方法は、反応器に水素及び二酸化炭素を供給する工程を含む。炭素生成方法は、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を反応器で生成する工程を含む。炭素生成方法は、循環流路において、反応器で生成されたメタン及び水を含むガスから、少なくとも一部の水を除去する工程を含む。炭素生成方法は、少なくとも一部の水を除去したガスを反応器へ供給する工程を含む。炭素生成方法は、反応器内のガスと触媒との接触によって炭素を反応器で生成する工程を含む。炭素生成方法は、反応器内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する工程を含む。
【0010】
炭素生成方法は、反応器内におけるガスの濃度を測定する工程をさらに含んでいてもよく、反応器内におけるガスの濃度を測定する工程において、測定対象となるガスは、二酸化炭素、水素、一酸化炭素及びメタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。
【0011】
反応器内におけるガスの濃度を測定する工程において、測定対象となるガスは、二酸化炭素を含有してもよい。
【0012】
反応器内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する工程において、二酸化炭素に対する水素の供給流量比を調整することによって二酸化炭素の濃度を制御してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタンを生成する反応と、メタンを含む原料から炭素を生成する反応とを同一の反応器で実施し、二酸化炭素濃度を制御することで反応性を向上させた炭素生成システム及び炭素生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】いくつかの実施形態に係る炭素生成システムを示す概略図である。
【
図2】二酸化炭素濃度と、触媒の単位重量当たりの炭素生成速度との関係を示すグラフである。
【
図3】二酸化炭素濃度を測定するときの実験装置を示す概略図である。
【
図4】いくつかの実施形態に係る反応器及びその周辺の構成について示す概略図である。
【
図5】いくつかの実施形態に係る炭素生成システムを示す概略図である。
【
図6】いくつかの実施形態に係る炭素生成システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
[第1実施形態]
まず、
図1を用いて第1実施形態に係る炭素生成システム1について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る炭素生成システム1は、反応器10と、水素供給部20と、二酸化炭素供給部25と、循環流路30と、水除去部40とを備えている。そして、循環流路30は、反応器10の入口と出口とを接続している。
【0017】
反応器10は、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を生成する。水素供給部20は、水素を反応器10に供給する。
図1では、水素供給部20は循環流路30経由で水素を反応器10に供給しているが、水素を直接反応器10に供給してもよい。また、二酸化炭素供給部25は、二酸化炭素を反応器10に供給する。
図1のように、二酸化炭素供給部25は循環流路30経由で二酸化炭素を反応器10に供給してもよいし、二酸化炭素を直接反応器10に供給してもよい。
【0018】
循環流路30は、反応器10で生成されたメタンを反応器10へ戻す。水除去部40は、循環流路30に設けられ、反応器10で生成されたメタン及び水を含むガスから、少なくとも一部の水を除去する。すなわち、水除去部40で少なくとも一部の水が除去されたガス(以下、水除去部通過ガス)は、反応器10で生成されたメタンを含み、循環流路30を通して反応器10へ戻される。そして、反応器10において、反応器10内のガスと触媒との接触によって炭素を生成する。
【0019】
このように、反応器10は、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を生成する。この反応は通常発熱反応であり、以下の反応式(1)で表される。
4H2+CO2→CH4+2H2O+165kJ (1)
【0020】
また、反応器10は、メタンを含む原料から炭素を生成する。原料には、メタンを含む水除去部通過ガスが含まれている。この反応は通常吸熱反応であり、以下の反応式(2)で表される。
CH4→C+2H2-75kJ (2)
【0021】
反応式(1)と反応式(2)とを合わせると、以下の反応式(3)が得られる。
2H2+CO2→C+2H2O+90kJ (3)
【0022】
上記反応式(1)及び反応式(2)に示すように、反応器10では、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタンを生成する反応と、メタンを含む原料から炭素を生成する反応とが行われている。これにより、上記反応式(3)に示すように、反応器10では水素及び二酸化炭素から炭素が生成される。また、上記反応式(1)及び反応式(2)の反応が反応器10で行われることにより、上記反応式(1)に示す反応で生成された熱の一部を、上記反応式(2)に示す反応に利用することができる。そのため、上記2つの反応をそれぞれ異なる反応器で実施した場合のような複雑な熱交換機構がなくても、熱エネルギーを有効に利用することができる。以下、本実施形態に係る炭素生成システム1の各構成要素について説明する。
【0023】
反応器10は、上述したように、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を生成する。なお、反応器10内では、二酸化炭素から一酸化炭素が生成され、一酸化炭素からメタンが生成されてもよい。水素及び二酸化炭素を含む原料からメタンを生成する反応はメタネーション反応とも呼ばれ、高い効率でメタンを生成することができる。
【0024】
原料は、循環流路30を経由して反応器10に供給された水除去部通過ガスをさらに含んでいて、水除去部通過ガスは反応器10で生成されたメタンを含んでいる。そして、反応器10において、メタンを含む原料から炭素を生成する。
【0025】
反応器10で生成される炭素は、グラファイト、カーボンブラック及びカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。これらの炭素材料は、有用な機能性材料として種々の分野で使用されている。
【0026】
反応器10は、特に限定されないが、流動層反応器、キルン反応器、固定層反応器、又は攪拌機などによって強制的に撹拌する撹拌式反応器などであってもよい。
【0027】
触媒は、原料との接触によって炭素を生成する。炭素の生成は、反応器10内で触媒を用いることなく生成することもできるが、反応温度が1000℃以上になる場合もある。反応器10内の温度は炭素を生成することができれば特に限定されないが、適切な触媒を使用することにより、例えば500℃~800℃のような低温で炭素を生成することができる。触媒は、反応器10内の原料が通過する流路内に配置されていてもよい。
【0028】
触媒は、単一種類の触媒を用いてもよく、複数種の触媒を混合して用いてもよい。すなわち、触媒は、水素及び二酸化炭素との接触によってメタン及び水を生成し、かつ、メタンとの接触によって炭素を生成する単一種類の触媒であってもよい。また、触媒は、水素及び二酸化炭素との接触によってメタン及び水を生成する触媒と、メタンとの接触によって炭素を生成する触媒との混合物であってもよい。
【0029】
触媒は、金属、金属を担体に担持した担持触媒、及びカーボン系触媒からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。触媒に含まれる金属は、ニッケル、鉄及びコバルトからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。金属を担持する担体は、アルミナ及びシリカの少なくともいずれか一方の無機酸化物を含んでいてもよい。カーボン系触媒は、活性炭及びカーボンブラックの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。これらのなかでも、触媒は、ニッケルをアルミナ担体で担持した担持触媒、及びニッケルをシリカで担持した担持触媒の少なくともいずれか一方を含んでいることが好ましい。これらの担持触媒は、安価で入手することができ、低温での反応性も高いためである。
【0030】
炭素生成システム1は、炭素生成速度の観点から、反応器10内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する。そして、反応器10内における二酸化炭素の濃度を9体積%以上25体積%以下に制御することが好ましい。反応器10内における二酸化炭素の濃度をこのような範囲に制御することにより、反応器10内のガス組成を適切な範囲に保つことができ、反応性を向上させることができる。なお、反応器10内における二酸化炭素の濃度は、水除去部通過ガスを少量サンプリングして測定するか、あるいは反応中に測定する。二酸化炭素の濃度の測定方法は特に限定されないが、例えばガスクロマトグラフィー及びNDIRセンサー(非分散型赤外線吸収式)等が使用できる。
【0031】
炭素生成システム1は、反応器10内の温度を測定する温度測定部11を備えていてもよい。炭素生成システム1が温度測定部11を備えていることにより、反応温度を把握し、反応器10内の温度を制御することができる。
【0032】
炭素生成システム1は、反応器10内のガスの濃度を測定する濃度測定部(図示しない)を備えていてもよい。炭素生成システム1が濃度測定部を備えていることにより、二酸化炭素を含むガスの濃度を把握し、反応器10内のガスの濃度を制御することができる。
【0033】
反応器10は、反応器10の下流側に配置された触媒の温度が、反応器10の上流側に配置された触媒の温度よりも低くなるように構成されていてもよい。これにより、循環流路30内を流れるガス中の水分割合が増える。そのため、水除去部40で水を除去しやすくなるため、水除去部通過ガス中のメタン濃度を高くすることができる。また、反応器10の下流側の触媒温度を低くすることで、メタネーション反応が促進されることも期待できる。炭素生成システム1は、反応器10の下流側に配置された触媒を冷却する冷却器を備えていてもよい。冷却器は、反応器10の下流側に配置された触媒と接する冷却管を含んでいてもよい。反応器10の下流側の触媒温度を低くするため、原料の少なくとも一部を反応器10の下流側の触媒へ供給してもよい。反応器10の下流側の触媒へ供給する原料は、水素、二酸化炭素及び水除去部通過ガスからなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。なお、反応器10の下流側に配置された触媒の温度は、200℃~500℃に調整されることが好ましい。
【0034】
反応器10内の反応温度は、反応器10内に収容された触媒と接する冷却管による冷却、反応器10に供給される水素、二酸化炭素及び水除去部通過ガスの流量及び温度によって調整してもよい。また、反応器10内の温度は、反応器10に供給される水素、二酸化炭素及び水除去部通過ガスを反応器10へ供給する位置、冷却された触媒を反応器10へ供給することなどにより調整してもよい。
【0035】
反応器10で生成され、メタンを含む排出ガスは、反応器10の排出口を介して反応器10から排出される。反応器10から排出される排出ガスには、メタンだけでなく、未反応の水素及び二酸化炭素、副生成物である一酸化炭素及び水、並びに原料に含まれる窒素及びアルゴンなどの不純物が含まれていてもよい。反応器10から排出されたガスは、循環流路30を経由して水除去部40へ供給される。
【0036】
反応器10内の圧力は、常圧付近であることが好ましい。反応器10内の圧力は、例えば、-0.05MPaG以上0.1MPaG以下であってもよい。反応器10内の圧力は、水素供給部20又は二酸化炭素供給部25によって供給される原料の供給量、循環流路30を経由して供給される水除去部通過ガスの供給量によって制御することができる。また、反応器10内の圧力は、反応器10から排出される排出ガスの排出量、又は反応器10内の温度を調整することによって制御することができる。
【0037】
水素供給部20は、反応器10に水素を供給する。上述のように、水素供給部20は循環流路30経由で水素を反応器10に供給してもよく、水素供給部20は水素を直接反応器10に供給してもよい。水素供給部20は、水素流路22と、水素源23と、水素流量調整部24とを含んでいてもよい。水素流路22には水素源23と水素流量調整部24とが設けられ、水素流路22を経由して水素源23から反応器10に水素が供給されてもよい。
【0038】
水素源23は、例えば水素などを収容したタンクであってもよい。水素は、太陽光、風力及び水力などの再生可能エネルギーを利用し、水を電気分解して得られたものを使用してもよい。このような水素を用いることにより、炭素生成システム1全体として、二酸化炭素の排出量を低減することができる。水素流量調整部24は調整弁を含んでいてもよく、計装空気で調整弁の開度を調整することによって水素源23から反応器10へ供給される水素の供給量を調整してもよい。
【0039】
二酸化炭素供給部25は、反応器10に二酸化炭素を供給する。上述のように、二酸化炭素供給部25は循環流路30経由で二酸化炭素を反応器10に供給してもよいし、二酸化炭素供給部25は二酸化炭素を直接反応器10に供給してもよい。二酸化炭素供給部25は、二酸化炭素流路26と、二酸化炭素源27と、二酸化炭素流量調整部28とを含んでいてもよい。二酸化炭素流路26には二酸化炭素源27と二酸化炭素流量調整部28とが設けられ、二酸化炭素流路26を経由して二酸化炭素源27から反応器10に二酸化炭素が供給されてもよい。また、二酸化炭素は触媒の供給口及び排出口、ファン43の軸シールなどから供給してもよい。
【0040】
二酸化炭素源27は、例えば、発電所及び工場などのような二酸化炭素発生源から排出された二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部を含んでいてもよい。二酸化炭素発生源から回収された二酸化炭素を原料とすることにより、大気中に放出される二酸化炭素の量を低減することができる。二酸化炭素回収部は、例えば、化学吸収法、圧力スウィング吸着法、温度スウィング吸着法、膜分離濃縮法又はこれらの組み合わせなどによって二酸化炭素を回収してもよい。なお、二酸化炭素源27は、上記のような形態に限定されず、例えば二酸化炭素を収容したタンクであってもよい。二酸化炭素流量調整部28は調整弁を含んでいてもよく、計装空気で調整弁の開度を調整することによって二酸化炭素供給部25から反応器10へ供給される二酸化炭素の供給量を調整してもよい。
【0041】
なお、上記実施形態では、水素供給部20及び二酸化炭素供給部25によってそれぞれ水素及び二酸化炭素が反応器10に供給されているが、二酸化炭素及び水素が混合された混合原料がタンクに収容され、混合原料がタンクから反応器10へ供給されてもよい。
【0042】
水素供給部20及び二酸化炭素供給部25によって供給される二酸化炭素に対する水素の供給流量の比は、適宜設定することができるが、モル比で1.8以上であってもよく、1.9以上であってもよい。また、二酸化炭素に対する水素の供給流量の比は、モル比で2.2未満であってもよく、2.1未満であってもよい。
【0043】
循環流路30は反応器10で生成されたメタンを反応器10へ戻す。具体的には、循環流路30は、反応器10の排出口と、反応器10の供給口とを接続している。そして、循環流路30は、反応器10の排出口から排出されたメタンが反応器10の供給口に供給されるように設けられている。循環流路30には、水除去部40が設けられている。
【0044】
水除去部40は、少なくとも一部の水を除去し、反応器10で生成されたメタンを含む水除去部通過ガスを生成する。反応器10で生成され、メタンを含む排出ガスから水が除去されると、上記反応式(1)から反応式(3)で示される反応の平衡が右側へシフトする。そのため、水除去部40で水が除去されることにより、炭素の収率が向上する。なお、水除去部40では完全に水を除去する必要はなく、少なくとも一部の水を除去すればよく、水除去部通過ガスには水分が残存していてもよい。
【0045】
水除去部40は、少なくとも一部の水を除去することができれば特に限定されない。水除去部40は、
図1に示すように、熱交換器41と気液分離器42とを含んでいてもよい。熱交換器41は排出ガスを露点以下まで冷却し、水を液化する。気液分離器42は、反応器10から排出された排出ガスを、熱交換器41によって液化した水と、メタンを含む水除去部通過ガスとに分離する。気液分離器42は、冷却槽42aと、水流路42bと、ポンプ42cと、水冷却器42dとを含んでいる。冷却槽42aには水流路42bが接続されている。水流路42bには、ポンプ42cと、水冷却器42dとが設けられている。冷却槽42a内の水は、ポンプ42cによって水流路42bを介して循環され、水冷却器42dによって冷却された水が冷却槽42aに供給される。気液分離器42によって分離された水除去部通過ガスは、循環流路30に設けられたファン43によって熱交換器41に送られる。本実施形態において、ファン43は、気液分離器42の下流かつ反応器10の上流に設けられている。具体的にはファン43は、熱交換器41の上流に設けられている。熱交換器41は、気液分離器42に供給される排出ガスの熱と、気液分離器42で分離された水除去部通過ガスの熱とを交換する。そして、熱交換器41で加熱された水除去部通過ガスは、反応器10へ供給される。なお、排出ガスを冷却するために熱交換器41を用いたが、熱交換器41に代えて冷却器を用いてもよい。冷却器は、循環流路30において、反応器10の下流かつ気液分離器42の上流に設けられていてもよい。
【0046】
また、水除去部40は、気液分離器42に代えて又は気液分離器42に加え、水分を吸着する吸着剤を含んでいてもよい。吸着剤は、ゼオライト、シリカ及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種の無機物質を含んでいてもよい。吸着剤の形状は特に限定されないが、粉末状、粒子状、タブレット状又は塊状などであってもよい。
【0047】
炭素生成システム1は、循環流路30において水除去部40よりも下流かつ反応器10よりも上流に設けられ、反応器10へ供給される水除去部通過ガスを冷却する冷却器32をさらに備えていてもよい。冷却器32を備えることにより、反応器10内に供給されるガスの温度を低下させることができ、反応器10内の温度を微調整することができる。
【0048】
また、炭素生成システム1は、循環流路30において水除去部40、水素供給部20及び二酸化炭素供給部25よりも下流かつ反応器10よりも上流に設けられ、反応器10へ供給されるガスを加熱する加熱ヒーター33をさらに備えていてもよい。加熱ヒーター33を備えることにより、反応器10に供給されるガスの温度を上昇させることができ、反応器10内の温度を微調整することができる。
【0049】
水除去部40で少なくとも一部の水が除去された水除去部通過ガスは、原料の一部として反応器10に供給される。そして、上述したように、反応器10において反応器10内のガスを含む原料と触媒との接触によって炭素を生成する。生成された炭素は、触媒に付着しているため、反応器10から触媒を回収することにより、触媒に付着した炭素を回収することができる。
【0050】
炭素生成システム1は、循環流路30に設けられたガス流量調整部31をさらに備えていてもよい。ガス流量調整部31は、反応器10へ供給されるガスの流量を調整してもよい。ガス流量調整部31は調整弁を含んでいてもよく、計装空気で調整弁の開度を調整することによって反応器10へ供給されるガスの流量を調整してもよい。反応器10内の温度が高いほど、循環流路30中に含まれる水分の割合が少なくなる傾向があり、水除去部40で水が除去されにくくなる。そのため、原料としてのメタンを反応器10に供給し、反応器10内のメタンの量が調整されるとともに、反応器10内の温度を低下させることができる。これにより、水除去部40による水の除去効率が向上することから、炭素の収率を向上させることができる。
【0051】
炭素生成システム1は制御部50を備えていてもよい。制御部50は、温度測定部11によって測定される反応器10内の温度が500℃以上650℃以下の範囲内になるように反応器10内の温度を制御してもよい。反応器10内の温度が上記範囲内となるように制御されることにより、反応器10で生成される炭素の収率を向上させることができる。制御部50は、温度測定部11で測定された反応器10内の温度に基づいて、水素流量調整部24、二酸化炭素流量調整部28及びガス流量調整部31からなる群より選択される少なくとも1つを制御してもよい。また、制御部50は、濃度測定部で測定された反応器10内のガス(二酸化炭素)の濃度に基づいて、水素流量調整部24、二酸化炭素流量調整部28及びガス流量調整部31からなる群より選択される少なくとも1つを制御してもよい。
【0052】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。CPUは、ROMに記録されたプログラムを読み込み、プログラムに従って演算及び制御などの命令を実行することができる。プログラムはROM以外の記録媒体に予め格納されていてもよく、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。RAMは、温度測定部11及び濃度測定部などから取得した情報を記録し、CPUはRAMに記録された情報を読み出して演算などの処理に用いることができる。
【0053】
以上説明した通り、本実施形態に係る炭素生成システム1は、反応器10と、水素供給部20と、二酸化炭素供給部25と、循環流路30と、水除去部40とを備えている。反応器10は、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を生成する。水素供給部20は、水素を反応器10に供給する。二酸化炭素供給部25は、二酸化炭素を反応器10に供給する。循環流路30は、反応器10の入口と出口とを接続し、反応器10で生成されたメタンを反応器10へ戻す。水除去部40は、循環流路30に設けられ、反応器10で生成されたメタン及び水を含むガスから、少なくとも一部の水を除去する。反応器10内のガスと触媒との接触によって炭素を生成し、反応器10内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する。
【0054】
次に、炭素生成システム1を使用した炭素生成方法について説明する。炭素生成システム1を使用した炭素生成方法は、入口及び出口が循環流路30に接続された反応器10で炭素を生成する炭素生成方法である。
【0055】
炭素生成システム1を使用した炭素生成方法は、反応器10に水素及び二酸化炭素を供給する工程を含む。上述の通り、水素供給部20は、水素を反応器10に供給し、二酸化炭素供給部25は、二酸化炭素を反応器10に供給する。
【0056】
このような再循環を伴うプロセスの場合、反応器10及び循環流路30(以下、系内)に空気の成分である窒素及びアルゴンのような不純物が残っている状態で起動すると、反応中も系内に不純物が残り続け、反応率の低下の原因となる。また、系内に酸素が残っていると、触媒劣化等の不具合の要因となる。そのため、炭素生成システム1を起動する前に、系内の空気を二酸化炭素で置換しておいてもよい。なお、系内の空気を二酸化炭素で置換するときの、系内の二酸化炭素の濃度は80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましい。
【0057】
炭素生成システム1を使用した炭素生成方法は、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を反応器で生成する工程を含む。上述の通り、上記反応式(1)で表されるように、反応器10は、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を生成する。
【0058】
炭素生成システム1を使用した炭素生成方法は、循環流路において、反応器で生成されたメタン及び水を含むガスから、少なくとも一部の水を除去する工程と、少なくとも一部の水を除去したガスを反応器10へ供給する工程と、を含む。上述の通り、循環流路30は、反応器10で生成されたメタンを反応器10へ戻す。水除去部40は、循環流路30に設けられ、反応器10で生成されたメタン及び水を含むガスから、少なくとも一部の水を除去する。すなわち、水除去部通過ガスは、反応器10で生成されたメタンを含み、循環流路30を通して反応器10へ戻される。
【0059】
炭素生成システム1を使用した炭素生成方法は、反応器10内に供給されたガスと触媒との接触によって炭素を反応器10で生成する工程を含む。上述の通り、反応器10内のガスは、メタンを含む水除去部通過ガスが含まれており、上記反応式(2)で表されるように、反応器10において、反応器10内のガスと触媒との接触によって炭素を生成する。
【0060】
炭素生成システム1を使用した炭素生成方法は、反応器10内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する工程を含む。上述の通り、反応器10内における二酸化炭素の濃度をこのような範囲に制御することにより、反応器10内のガス組成を適切な範囲に保つことができ、反応性を向上させることができる。すなわち、この工程により、炭素生成速度を高く保つための所定の二酸化炭素の濃度を制御する。そして、炭素生成速度の観点から、反応器10内における二酸化炭素の濃度を9体積%以上25体積%以下に制御することが好ましい。
【0061】
反応器10内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する工程において、二酸化炭素に対する水素の供給流量比を調整することによって二酸化炭素の濃度を制御してもよい。系内の二酸化炭素濃度を上げるときは、二酸化炭素に対する水素の供給流量比を2より小さくすることがよい。一方、二酸化炭素濃度を下げるときは、二酸化炭素に対する水素の供給流量比を2より大きくすることがよい。そして、所定の二酸化炭素の濃度になったら、二酸化炭素に対する水素の供給流量比を2に戻すことがよい。
【0062】
炭素生成システム1を使用した炭素生成方法は、反応器10内におけるガスの濃度を測定する工程をさらに含んでいてもよい。反応器10内におけるガスの濃度を測定することによって、上述のように、反応器10内における二酸化炭素の濃度を制御することができる。反応器10内におけるガスは、二酸化炭素及び水素の他に、一酸化炭素及びメタンを含有している。すなわち、測定対象となるガスは、二酸化炭素、水素、一酸化炭素及びメタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。反応器10内におけるガスの成分の濃度は連動しているため、二酸化炭素、水素、一酸化炭素及びメタンのうちの少なくともいずれか1種の濃度を測定できれば、炭素生成速度を高く保つための所定の二酸化炭素の濃度を制御することができる。なお、反応器10内におけるガスの濃度は、上述のような、二酸化炭素の濃度と同様の方法で測定することができる。
【0063】
反応器10内におけるガスの濃度を測定する工程において、測定対象となるガスは二酸化炭素を含有していてもよい。二酸化炭素の濃度の測定は比較的容易であるため、反応器10内の二酸化炭素の濃度を直接測定して、炭素生成速度を高く保つための所定の二酸化炭素の濃度に制御することが好ましい。
【0064】
このように、炭素生成システム1を使用した炭素生成方法は、反応器10に水素及び二酸化炭素を供給する工程と、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を反応器10で生成する工程と、を含む。炭素生成システム1を使用した炭素生成方法は、循環流路において、反応器で生成されたメタン及び水を含むガスから、少なくとも一部の水を除去する工程と、を含む。また、炭素生成システム1を使用した炭素生成方法は、少なくとも一部の水を除去したガスを反応器10へ供給する工程と、反応器10内のガスと触媒との接触によって炭素を反応器10で生成する工程と、を含む。さらに、炭素生成システム1を使用した炭素生成方法は、反応器10内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する工程を含む。
【0065】
図2は、二酸化炭素濃度と、触媒の単位重量当たりの炭素生成速度との関係を示すグラフである。具体的には、
図3に示す実験装置100を用いて
図2の実験データを測定した。
【0066】
実験装置100は、石英管110(内径22mm)の中に磁性皿111を配置し、磁性皿111の上に触媒116を載せた固定層反応器を用いた。石英管110は、炭素生成システム1における反応器10に相当する。石英管110は外部から電気炉112で加熱し、試験温度(管状電気炉内温度)は約600℃とした。触媒116は、シリカにニッケルを担持させた担持触媒を主成分として含んでいる。石英管110へ所定量の水素及び二酸化炭素が供給されることにより、メタンを生成した。そして、石英管110の出口ガスを10℃の冷水(チラー水)で冷却し、水分を凝縮して除去した。水分を除去した後のガスはメタンを含み、再循環ポンプ113により、石英管110へ戻した。そして、石英管110内のガスと触媒との接触によって炭素を生成した。一方で、再循環ポンプ113の手前でサンプリング口120を分岐させ、少量ガスをサンプリングしてガスクロマトグラフィー(ジーエルサイエンス(株)製 Agilent990マイクロGC)にて二酸化炭素濃度を3分に1回程度の頻度で測定した。
【0067】
図2に示すように、二酸化炭素濃度が5体積%を超えると炭素生成速度が上昇し、9体積%以上25体積%以下の範囲で最も炭素生成速度が大きくなり、25体積%を超えると炭素生成速度が下がる傾向が見られた。すなわち、炭素生成速度の観点から、反応器10内における二酸化炭素の濃度は5体積%以上30体積%以下であり、9体積%以上25体積%以下であることが好ましい。
【0068】
以上説明した通り、本実施形態に係る炭素生成方法は、入口及び出口が循環流路に接続された反応器10で炭素を生成する炭素生成方法である。当該方法は、反応器10に水素及び二酸化炭素を供給する工程を含む。当該方法は、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタン及び水を反応器10で生成する工程を含む。当該方法は、循環流路において、反応器で生成されたメタン及び水を含むガスから、少なくとも一部の水を除去する工程を含む。当該方法は、少なくとも一部の水を除去したガスを反応器10へ供給する工程を含む。当該方法は、反応器10内のガスと触媒との接触によって炭素を反応器10で生成する工程を含む。そして、当該方法は、反応器10内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する工程を含む。
【0069】
本実施形態に係る炭素生成方法は、反応器10内における二酸化炭素の濃度を5体積%以上30体積%以下に制御する工程を含むことで、炭素生成速度を高め、反応性を向上させることができる。よって、水素及び二酸化炭素を含む原料からメタンを生成する反応と、メタンを含む原料から炭素を生成する反応とを同一の反応器で実施し、二酸化炭素濃度を制御することで反応性を向上させた炭素生成システム及び炭素生成方法を提供することができる。
【0070】
[第2実施形態]
次に、
図4を用いて第2実施形態に係る炭素生成システム1について説明する。
図4に示すように、本実施形態に係る炭素生成システム1は、上記実施形態に係る炭素生成システム1に対し、触媒供給部60と触媒排出部70とをさらに備えている。その他の部分については、上記実施形態に係る炭素生成システム1と同様であるため、説明を省略する。
【0071】
触媒供給部60は、触媒を反応器10に供給する。触媒供給部60は、第1ホッパ61と、第2ホッパ62と、第1触媒流路63と、第1触媒供給量調整部64と、第2触媒流路65と、第2触媒供給量調整部66とを含んでいてもよい。
【0072】
第1ホッパ61と第2ホッパ62とは第1触媒流路63を介して接続されている。第1触媒流路63には第1触媒供給量調整部64が設けられている。第1触媒供給量調整部64は第1ホッパ61から第2ホッパ62へ供給される触媒の供給量を調整している。
【0073】
第2ホッパ62と反応器10とは第2触媒流路65を介して接続されている。第2触媒流路65には第2触媒供給量調整部66が設けられている。第2触媒供給量調整部66は第2ホッパ62から反応器10へ供給される触媒の供給量を調整している。
【0074】
二酸化炭素供給部25は二酸化炭素を触媒供給部60に供給してもよい。なお、反応器10へ二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部25と触媒供給部60へ二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部25とは共通するものを使用してもよく、それぞれ異なるものを使用してもよい。触媒供給部60は二酸化炭素供給部25により供給された二酸化炭素によって触媒がパージされた状態で反応器10に触媒を供給してもよい。二酸化炭素は、二酸化炭素供給部25から第1ホッパ61へ供給される。第1ホッパ61へ供給された二酸化炭素は、第1触媒流路63、第2ホッパ62、第2触媒流路65を介して反応器10へ供給される。
【0075】
反応器10は、反応槽12と、撹拌軸13と、撹拌翼14と、モータ15とを含んでいる。反応槽12の内部には、撹拌軸13と、撹拌軸13に設けられた撹拌翼14とが収容されている。撹拌軸13にはモータ15が接続されている。反応槽12の内部には触媒16が収容されており、触媒層を形成している。そして、モータ15によって撹拌軸13が回転することによって反応槽12内の触媒16が撹拌翼14で撹拌され、粉末状の触媒16の固着が抑制される。反応器10の底部には排出口が設けられており、触媒排出部70によって触媒が排出される。
【0076】
反応器10は、循環流路30と接続されており、循環流路30を経由してメタンを含む水除去部通過ガスが供給される。また、反応器10には、水素供給部20から循環流路30を経由して水素が供給される。さらに、反応器10には、二酸化炭素供給部25から触媒供給部60を介し、二酸化炭素が供給される。そして、上述したように、反応器10ではメタン及び炭素が生成され、メタンは反応器10から排出され、循環流路30を経由して反応器10へ戻される。
【0077】
触媒排出部70は、原料との接触によって炭素が生成されて付着した触媒16を反応器10から循環流路30を介さずに排出する。循環流路30と触媒排出部70によって排出される触媒16の流路は異なっている。触媒排出部70は、シリンダ71と、スクリュ72と、モータ73とを含んでいる。シリンダ71内にはスクリュ72が配置されている。モータ73はスクリュ72と接続されている。そして、モータ73の回転に連動してスクリュ72が回転する。反応器10から触媒排出部70へ供給された触媒16は、スクリュ72の回転により、触媒排出部70の排出口から押し出される。
【0078】
触媒排出部70の触媒16を排出する排出口から二酸化炭素が供給されてもよい。これにより、触媒排出部70から排出された炭素が付着した触媒16を冷却することができる。また、反応器10内に空気が混入することを抑制することができる。炭素生成システム1は、触媒排出部70と接続され、触媒排出部70から排出された触媒16を貯蔵する貯蔵タンク74をさらに備えていてもよい。貯蔵タンク74には二酸化炭素供給部25から二酸化炭素が供給されてもよい。なお、反応器10へ二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部25と貯蔵タンク74へ二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部25とは共通するものを使用してもよく、それぞれ異なるものを使用してもよい。また、二酸化炭素は、貯蔵タンク74から触媒排出部70の排出口へ供給されていてもよいが、貯蔵タンク74を介さずに触媒排出部70の排出口へ直接供給されてもよい。
【0079】
また、触媒供給部60が第1ホッパ61及び第2ホッパ62の2つのホッパを含む例について説明した。しかしながら、触媒供給部60は1つのホッパのみを含んでいてもよく、3つ以上のホッパを含んでいてもよい。
【0080】
また、反応器10が、撹拌軸13、撹拌翼14及びモータ15を含む撹拌式反応器である例について説明した。しかしながら、触媒供給部60によって反応器10に触媒16が供給され、触媒排出部70によって反応器10内の触媒16が排出される。そのため、反応器10内の触媒16は、触媒供給部60及び触媒排出部70によって流動している。したがって、反応器10は、撹拌軸13、撹拌翼14及びモータ15を含んでいなくてもよい。
【0081】
また、触媒排出部70がシリンダ71、スクリュ72及びモータ73を含む押出機である例について説明した。しかしながら、触媒排出部70は反応器10から触媒16を排出することができればよく、反応器10の排出口に設けられた流量調整弁などであってもよい。
【0082】
以上の通り、本実施形態に係る炭素生成システム1は、触媒16を反応器10に供給する触媒供給部60と、原料との接触によって炭素が生成されて付着した触媒16を反応器10から循環流路30を介さずに排出する触媒排出部70とを備えている。これにより、触媒16を反応器10へ連続して供給及び排出することができる。そのため、反応器10での反応を止めて炭素を取り出さなくても、反応器10内で炭素を連続的に製造することができる。
【0083】
[第3実施形態]
次に、
図5を用いて第3実施形態に係る炭素生成システム1について説明する。
図5に示すように、本実施形態に係る炭素生成システム1は、上記実施形態に係る炭素生成システム1に対し、触媒供給部60と炭素回収部80とをさらに備えている。その他の部分については、上記実施形態に係る炭素生成システム1と同様であるため、説明を省略する。
【0084】
触媒供給部60は、触媒を反応器10に供給する。触媒供給部60は、第2実施形態で説明したものを使用することができる。
【0085】
炭素回収部80は、循環流路30において反応器10よりも下流かつ水除去部40よりも上流に設けられている。炭素回収部80は、反応器10から排出され、原料との接触によって触媒に炭素が生成されて付着した触媒を回収する。炭素回収部80は、反応器10から排出された排出ガスから触媒を回収することができればよい。炭素回収部80は、サイクロン又はフィルタを含んでおり、これらによって触媒を回収してもよい。
【0086】
炭素回収部80の触媒を排出する排出口から二酸化炭素が供給されてもよい。これにより、炭素回収部80から排出された炭素が付着した触媒を冷却することができる。また、反応器10内に空気が混入することを抑制することができる。炭素生成システム1は、
図5に示す形態と同様に、炭素回収部80と接続され、炭素回収部80で回収された触媒を貯蔵する貯蔵タンクをさらに備えていてもよい。貯蔵タンクには二酸化炭素供給部25から二酸化炭素が供給されてもよい。なお、反応器10へ二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部25と貯蔵タンクへ二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部25とは共通するものを使用してもよく、それぞれ異なるものを使用してもよい。また、二酸化炭素は、貯蔵タンクから炭素回収部80の排出口へ供給されていてもよいが、貯蔵タンクを介さずに炭素回収部80の排出口へ直接供給されてもよい。
【0087】
以上の通り、本実施形態に係る炭素生成システム1は、触媒供給部60と、炭素回収部80とを備えている。触媒供給部60は、触媒を反応器10に供給する。炭素回収部80は、循環流路30において反応器10よりも下流かつ水除去部40よりも上流に設けられ、反応器10から排出され、原料との接触によって触媒に炭素が生成されて付着した触媒を回収する。これにより、触媒を反応器10へ連続して供給及び排出することができる。そのため、反応器10での反応を止めて炭素を取り出さなくても、反応器10内で炭素を連続的に製造することができる。
【0088】
[第4実施形態]
次に、
図6を用いて第4実施形態に係る炭素生成システム1について説明する。
図6に示すように、本実施形態に係る炭素生成システム1では、循環流路30に設けられ、水除去部40で少なくとも一部の水が除去された水除去部通過ガスの少なくとも一部を排出するガス排出部90を含んでいる。その他の部分については、上記実施形態に係る炭素生成システム1と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
上記実施形態に係る炭素生成システム1は、上記反応式(3)に示すように、水素及び二酸化炭素から固体の炭素と液体の水を生成する。そのため、炭素生成システム1では、理論上、排気ガスは発生しない。また、上述のように、炭素生成システム1の起動前に、系内の空気は二酸化炭素で置換されているため、理論上、不純物が含まれない。しかしながら、実際のところ原料には窒素及びアルゴンのような不純物が若干含まれている。反応が進行していくにつれて不純物が反応器10及び循環流路30内に蓄積するおそれがある。そのため、ガス排出部90によって水除去部通過ガスを排気することにより、不純物が蓄積するおそれを低減させることができる。
【0090】
なお、ガス排出部90は、水除去部通過ガスの温度が低くなっているため、循環流路30における気液分離器42の下流かつ熱交換器41の上流に設けられることが好ましい。また、ガス排出部90は、水除去部通過ガスの圧力が高くなっているため、循環流路30におけるファン43の下流に設けられることが好ましい。
【0091】
以上説明した通り、本実施形態に係る炭素生成システム1では、循環流路30に設けられ、水除去部40で少なくとも一部の水が除去された水除去部通過ガスの少なくとも一部を排出するガス排出部90を含んでいる。これにより、循環流路30内に窒素及びアルゴンのような不純物が蓄積するのを抑制することができる。
【0092】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0093】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標13『気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる』に貢献することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 炭素生成システム
10 反応器
20 水素供給部
25 二酸化炭素供給部
30 循環流路
40 水除去部