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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027510
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】圧延装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 31/02 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
B21B31/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132290
(22)【出願日】2023-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 徹
(72)【発明者】
【氏名】丸林 直広
(57)【要約】
【課題】ハウジングの損耗を抑制するのに有効な圧延装置を提供する
【解決手段】圧延装置1は、材料Wを圧延する圧延ロール10と、圧延ロール10を保持するロールチョック31と、材料Wの送り方向D1に交差する内面41を有し、ロールチョック31を収容するハウジング40と、上下方向に移動し得るようにロールチョック31に取り付けられ、内面41に接する外層ライナ120と、外層ライナ120とロールチョック31との間に位置するようにロールチョック31に取り付けられ、ロールチョック31の上下動に応じて外層ライナ120に対し摺動する内層ライナ130と、を備える。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を圧延する圧延ロールと、
前記圧延ロールを保持するロールチョックと、
前記材料の送り方向に交差する内面を有し、前記ロールチョックを収容するハウジングと、
上下方向に移動し得るように前記ロールチョックに取り付けられ、前記内面に接する外層ライナと、
前記外層ライナと前記ロールチョックとの間に位置するように前記ロールチョックに取り付けられ、前記ロールチョックの上下動に応じて前記外層ライナに対し摺動する内層ライナと、
を備える圧延装置。
【請求項2】
前記内面と前記ロールチョックとの間において、前記外層ライナと前記内層ライナとの間を囲むカバーを更に備える、
請求項1記載の圧延装置。
【請求項3】
前記ロールチョックに対する上下動を許容するように前記外層ライナを保持し、前記カバーと前記外層ライナとの間をシールするライナホルダを更に備える、
請求項2記載の圧延装置。
【請求項4】
前記ロールチョックに設けられ、前記内層ライナを前記外層ライナに向かって押し出すアクチュエータを更に備える、
請求項1~3のいずれか一項記載の圧延装置。
【請求項5】
前記圧延ロールの中心軸よりも上方に位置するように前記ロールチョックに設けられ、前記内層ライナを前記外層ライナに向かって押し出す上アクチュエータと、
前記圧延ロールの中心軸よりも下方に位置するように前記ロールチョックに設けられ、前記内層ライナを前記外層ライナに向かって押し出す下アクチュエータと、
を更に備える、
請求項1~3のいずれか一項記載の圧延装置。
【請求項6】
前記外層ライナと前記内面との間の動摩擦係数に比較して、前記外層ライナと前記内層ライナとの間の動摩擦係数が低い、
請求項1~3のいずれか一項記載の圧延装置。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記内面に対向する第2内面を有し、
前記ロールチョックは前記内面と前記第2内面との間に収容され、
前記圧延装置は、
上下方向に移動し得るように前記ロールチョックに取り付けられ、前記第2内面に接する第2外層ライナと、
前記第2外層ライナと前記ロールチョックとの間に位置するように前記ロールチョックに取り付けられ、前記ロールチョックの上下動に応じて前記第2外層ライナに対し摺動する第2内層ライナと、
を更に備える、
請求項1~3のいずれか一項記載の圧延装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧延装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロールを支持する軸受が装着されたロールチョックをハウジング装置に沿って摺動させる装置が開示されている。この装置は、ロールチョック又はハウジングに設けられるガイドローラと、ロールチョックとハウジングとの間の隙間を無くしかつ摺動可能とするようにガイドローラに圧力をかける与圧機構と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-198315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ハウジングの損耗を抑制するのに有効な圧延装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1側面に係る圧延装置は、材料を圧延する圧延ロールと、圧延ロールを保持するロールチョックと、材料の送り方向に交差する内面を有し、ロールチョックを収容するハウジングと、上下方向に移動し得るようにロールチョックに取り付けられ、内面に接する外層ライナと、外層ライナとロールチョックとの間に位置するようにロールチョックに取り付けられ、ロールチョックの上下動に応じて外層ライナに対し摺動する内層ライナと、を備える。
【0006】
この圧延装置によれば、ロールチョックの上下動に応じて内層ライナが外層ライナに対して摺動するため、ハウジングに対する外層ライナの摺動が抑制される。従って、ロールチョックの上下動に起因するハウジングの損耗が抑制される。
【0007】
内面とロールチョックとの間において、外層ライナと内層ライナとの間を囲むカバーを更に備えてもよい。圧延に際して発生するスケール等の異物が外層ライナと内層ライナとの間に侵入することを防ぎ、異物の侵入に起因する外層ライナ及び内層ライナの損傷を抑制することができる。
【0008】
ロールチョックに対する上下動を許容するように外層ライナを保持し、カバーと外層ライナとの間をシールするライナホルダを更に備えてもよい。上下動を許容するように外層ライナを保持する機能と、カバーと外層ライナとの間をシールする機能とを兼ね備えたライナホルダの採用により、部品点数の削減を図ることができる。
【0009】
ロールチョックに設けられ、内層ライナを外層ライナに向かって押し出すアクチュエータを更に備えてもよい。外層ライナと内面との隙間と、外層ライナと内層ライナとの隙間を小さくして、異物の侵入に起因する損傷を抑制することができる。また、外層ライナと内面とが接触し、外層ライナと内層ライナとが接触した状態を維持することで、外層ライナ及び内層ライナの挙動を安定化することができる。更に、ロールチョックの水平動が抑制されるので、材料にチャタリング等が発生すること等、ロールチョックの水平動に起因するトラブルが抑制される。
【0010】
圧延ロールの中心軸よりも上方に位置するようにロールチョックに設けられ、内層ライナを外層ライナに向かって押し出す上アクチュエータと、圧延ロールの中心軸よりも下方に位置するようにロールチョックに設けられ、内層ライナを外層ライナに向かって押し出す下アクチュエータと、を更に備えてもよい。上下2箇所で内層ライナを外層ライナに向かって押すことで、内面と外層ライナとの間と、外層ライナと内層ライナとの間における接触面積を拡大し、面圧を低減させることで、外層ライナ及び内層ライナの損耗を低減することができる。
【0011】
外層ライナと内面との間の動摩擦係数に比較して、外層ライナと内層ライナとの間の動摩擦係数が低くてもよい。外層ライナに対する内層ライナの摺動をより発生し易くすることで、ハウジングの損耗を更に抑制することができる。
【0012】
ハウジングは、内面に対向する第2内面を有し、ロールチョックは内面と第2内面との間に収容され、圧延装置は、上下方向に移動し得るようにロールチョックに取り付けられ、第2内面に接する第2外層ライナと、第2外層ライナとロールチョックとの間に位置するようにロールチョックに取り付けられ、ロールチョックの上下動に応じて第2外層ライナに対し摺動する第2内層ライナと、を更に備えてもよい。内面と第2内面との両方において、ハウジングの損耗を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ハウジングの損耗を抑制するのに有効な圧延装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】圧延装置の構成を例示する断面図である。
図2図1の圧延装置の側面図である。
図3図2中のIII-III線に沿う断面図である。
図4図3中のIV-IV線に沿う断面図である。
図5】アクチュエータが外層ライナを後退させた状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示す圧延装置1は、金属等の材料を圧延する装置である。例えば圧延装置1は、水平な送り方向D1に沿って移動する材料Wを圧延する。圧延装置1は、一対の圧延ロール10,20と、駆動側ユニット30Aと、作業側ユニット30Bとを備える。圧延ロール10,20は、互いに平行になるように上下に並び、材料Wを上下から挟んで圧延する。圧延ロール10,20のそれぞれは幅方向D2に沿っている。幅方向D2は水平であり、送り方向D1に垂直である。
【0017】
圧延ロール10はロールネック11,12を両端部に有する。ロールネック11,12は、幅方向D2に沿って互いに逆向きに突出している。ロールネック11は駆動装置90のスピンドル91に接続される。同様に、圧延ロール20はロールネック21,22を両端部に有する。ロールネック21,22は、幅方向D2に沿って互いに逆向きに突出している。ロールネック21は駆動装置90のスピンドル92に接続される。
【0018】
以下、幅方向D2において、ロールネック11,21が向かう側を圧延装置1の「駆動側」といい、ロールネック12,22が向かう側を圧延装置1の「作業側」という。圧延ロール10,20に対するメンテンナンス又は交換等の作業は、圧延装置1の作業側において行われる。
【0019】
駆動側ユニット30Aは、駆動側においてロールネック11,21を保持する。作業側ユニット30Bは、作業側においてロールネック12,22を保持する。
【0020】
駆動側ユニット30Aは、駆動側のロールチョック31,32と、駆動側のハウジング40と、駆動側の圧下装置33と、駆動側の圧上装置34とを有する。ロールチョック31は、幅方向D2に沿った軸線まわりに回転可能となるようにロールネック11を保持する。例えばロールチョック31は、ころ軸受等によってロールネック11を支持する。同様に、ロールチョック32は、幅方向D2に沿った軸線まわりに回転可能となるようにロールネック21を保持する。例えばロールチョック32は、ころ軸受等によってロールネック21を支持する。
【0021】
ハウジング40は、ロールチョック31,32を収容する。例えばハウジング40は、幅方向D2に沿った軸線まわりの周方向に沿ってロールチョック31,32を包囲する。圧下装置33は、ハウジング40の上部に設けられ、ロールチョック31を昇降させる。圧下装置33は、例えばねじ式、油圧アクチュエータ式、又はこれらの組み合わせによってロールチョック31を昇降させる。圧上装置34は、ハウジング40の下部に設けられ、ロールチョック32昇降させる。圧上装置34は、例えばねじ式又は油圧アクチュエータ式によって、ロールチョック32を昇降させる。
【0022】
作業側ユニット30Bは、駆動側ユニット30Aと同様に、作業側のロールチョック31,32と、作業側のハウジング40と、作業側の圧下装置33と、作業側の圧上装置34とを有する。作業側ユニット30Bのロールチョック31は、幅方向D2に沿った軸線まわりに回転可能となるようにロールネック12を保持する。作業側ユニット30Bのロールチョック32は、幅方向D2に沿った軸線まわりに回転可能となるようにロールネック22を保持する。
【0023】
図2に示すように、ハウジング40は、内面41,42を有する。内面41,42は互いに対向し、それぞれが送り方向D1に交差(例えば直交)する。ロールチョック31,32は、内面41と内面42との間に収容される。
【0024】
内面41は、ハウジングライナ43により覆われていてもよい。ハウジング40にハウジングライナ43が装着された状態においては、ハウジングライナ43の表面がハウジング40の内面41となる。同様に、内面42は、ハウジングライナ44により覆われていてもよい。ハウジング40にハウジングライナ44が装着された状態においては、ハウジングライナ44の表面がハウジング40の内面42となる。ハウジングライナ43,44は、例えば炭素鋼(S45C(H)、SCM440(H)等)等の材料により構成される。
【0025】
圧延に際しては、材料Wの進入又は通過等に伴ってロールチョック31,32の上下動が発生し、上下方向に沿ってロールチョック31,32とハウジング40とがこすれ合う。ロールチョック31,32とのこすれ合いによるハウジング40の本体(ハウジングライナ43,44を除いた部分)の損耗は、ハウジングライナ43,44によって防がれる。しかしながら、ハウジングライナ43,44が損耗すると、ハウジング40内に作業者が入って大掛かりな交換作業を行う必要がある。そこで、圧延装置1は、上下方向に移動し得るようにロールチョック31,32に取り付けられ、内面41(ハウジングライナ43)に接する外層ライナ120と、外層ライナ120とロールチョック31,32との間に位置するようにロールチョック31,32に取り付けられ、ロールチョック31,32の上下動に応じて外層ライナ120に対し摺動する内層ライナ130と、を更に備える。
【0026】
この構成によれば、ロールチョック31,32の上下動に応じて内層ライナ130が外層ライナ120に対して摺動するため、ハウジング40に対する外層ライナ120の摺動が抑制される。従って、少なくとも内面41において、ロールチョック31,32の上下動に起因するハウジング40の損耗(例えばハウジングライナ43の損耗)が抑制される。
【0027】
圧延装置1は、上下方向に移動し得るようにロールチョック31,32に取り付けられ、内面42(ハウジングライナ44)に接する外層ライナ220と、外層ライナ220とロールチョック31,32との間に位置するようにロールチョック31,32に取り付けられ、ロールチョック31,32の上下動に応じて外層ライナ220に対し摺動する内層ライナ230と、を更に備えてもよい。内面41と内面42との両方において、ハウジングの損耗を抑制することができる。
【0028】
例えば圧延装置1は、ロールチョック31,32のそれぞれに、ライナユニット100とライナユニット200とを有する。ライナユニット100は、内面41とロールチョック31,32との間に位置するように、ロールチョック31,32のそれぞれに設けられている。ライナユニット200は、内面42とロールチョック31,32との間に位置するように、ロールチョック31,32のそれぞれに設けられている。
【0029】
図3は、図2中のIII-III線に沿う断面図であり、ロールチョック31に設けられるライナユニット100及びライナユニット200を示す。図4は、図3中のIV-IV線に沿う断面図である。ロールチョック32に設けられるライナユニット100及びライナユニット200の図示及び説明は省略する。図3に示すように、ライナユニット100は、ベースブロック110と、外層ライナ120と、内層ライナ130と、カバー140と、ライナホルダ150を有する。
【0030】
ベースブロック110は、内面41とロールチョック31との間に位置するように、ロールチョック31に固定されている。ベースブロック110がロールチョック31に固定されるので、ベースブロック110に設けられること(例えば固定されること、又は取り付けられること)は、ロールチョック31に設けられることに相当する。
【0031】
外層ライナ120は、上下方向に移動し得るようにベースブロック110に取り付けられ、内面41(ハウジングライナ43)に接する。例えば外層ライナ120は、内面41とベースブロック110との間に位置する。外層ライナ120は、ハウジングライナ43の材料よりも強度の低い炭素鋼(S25C(N)、S45C(N)等)又は銅合金等の材料により構成され、面121,122と、フランジ123とを有する。面121は内面41に対向し、面122はベースブロック110に対向する。フランジ123は、外層ライナ120の外周面のうち面122よりの部分から、全周に亘って外方に張り出している。面122には、耐摩耗性を向上させるための処理(高周波焼き入れ等)が施されていてもよい。外層ライナ120は、多層構造を有し、多層が互いに異なる材料により構成されていてもよい。例えば外層ライナ120は、面121を構成する外層と、面122を構成する内層とを有してもよく、外層が、内層の材料よりも強度の低い材料により構成されていてもよい。例えば、外層が銅合金等により構成され、内層が炭素鋼(S25C(N)、S45C(N)等)により構成されていてもよい。
【0032】
内層ライナ130は、外層ライナ120とロールチョック31との間に位置するようにベースブロック110に取り付けられ、ロールチョック31の上下動に応じて外層ライナ120に対し摺動する。例えば内層ライナ130は、外層ライナ120とベースブロック110との間に位置する。内層ライナ130は、炭素鋼(S25C(N)、S45C(N)等)又は銅合金の材料により構成され、面131と、面132とを有する。面131は外層ライナ120の面122に対向し、面132はベースブロック110に対向する。面131は、動摩擦係数の低いPTFE繊維又は樹脂等の高強度繊維又は樹脂により被覆されていてもよい。
【0033】
外層ライナ120と内面41との間の動摩擦係数に比較して、外層ライナ120と内層ライナ130との間の動摩擦係数が低くてもよい。外層ライナ120に対する内層ライナ130の摺動をより発生し易くすることで、ハウジング40の損耗を更に抑制することができる。例えば、以上で例示したハウジングライナ43の材料、外層ライナ120の材料、及び内層ライナ130の材料を組み合わせる場合に、ハウジングライナ43と外層ライナ120との間の動摩擦係数は0.1~0.2となり、外層ライナ120と内層ライナ130との間の動摩擦係数は0.005~0.05となる。
【0034】
カバー140は、内面41とロールチョック31との間において、外層ライナ120と内層ライナ130との間を囲む。囲むとは、必ずしも全周に亘って囲むことに限られず、部分的に囲むことを含む。圧延に際して発生するスケール(例えば酸化鉄)等の異物が外層ライナ120と内層ライナ130との間に進入することをカバー140により防ぎ、異物の侵入に起因する外層ライナ120及び内層ライナ130の損傷を抑制することができる。
【0035】
図3及び図4に示すように、カバー140は、側壁141,142と、天板143とを有する。側壁141,142は幅方向D2に並び、それぞれベースブロック110から内面41に向かって突出している。側壁141,142は、幅方向D2における外層ライナ120及び内層ライナ130の両側をそれぞれ覆うように上下方向に延びている。内面41に面する側壁141の端縁には、側壁142に向かって張り出した内向きフランジ144が形成されている。内面41に面する側壁142の端縁には、側壁141に向かって張り出した内向きフランジ145が形成されている。天板143は、外層ライナ120及び内層ライナ130の上部を覆うように、側壁141,142よりも上において、ベースブロック110から内面41に向かって突出している。
【0036】
ライナホルダ150は、ロールチョック31に対する上下動を許容するように外層ライナ120を保持し、カバー140と外層ライナ120との間をシールする。ライナホルダ150は、エンジニアリングプラスチック等の樹脂材料又は金属材料等により構成される。例えばライナホルダ150は、送り方向D1に沿った軸線まわりに外層ライナ120を包囲し、外層ライナ120から外方に張り出す。送り方向D1において、外層ライナ120の内縁部は外層ライナ120のフランジ123に対向し、外層ライナ120の外縁部は側壁141,142の内向きフランジ144,145に対向する。これにより、少なくとも側壁141,142と外層ライナ120との間がシールされる。
【0037】
ライナホルダ150は、ロールチョック31に対し上下動し得るようにカバー140に取り付けられる。例えばライナホルダ150は、図4に示すように、コイルバネ等の弾性部材151を介して天板143に吊り下げられる。これにより、上下方向に移動し得るように、外層ライナ120がベースブロック110に取り付けられる。なお、ライナホルダ150は必ずしもカバー140に取り付けられなくてもよく、コイルバネ等の弾性部材151を介してベースブロック110に取り付けられていてもよい。
【0038】
このように、上下動を許容するように外層ライナ120を保持する機能と、カバー140と外層ライナ120との間をシールする機能とを兼ね備えたライナホルダ150の採用により、部品点数の削減を図ることができる。
【0039】
図3に示すように、ライナユニット100は、アクチュエータ160を更に有してもよい。アクチュエータ160はロールチョック31に設けられ、内層ライナ130を外層ライナ120に向かって押し出す。例えばアクチュエータ160は、ベースブロック110に設けられる。
【0040】
例えばアクチュエータ160は、作動流体の圧力により駆動される圧力式のアクチュエータであり、作動空間161と、ピストン162と、ピストンロッド163とを有する。作動空間161は、ベースブロック110内に形成され、作動流体を収容する。ピストン162は、作動空間161内に収容され、作動流体の圧力によって、送り方向D1に沿って前進・後退する。アクチュエータ160の説明における「前」は、内面41に近付く方向を意味し、後は、内面41から遠ざかる方向を意味する。
【0041】
ピストンロッド163は、ピストン162に接続され、ベースブロック110から前方に突出している。内層ライナ130は、ベースブロック110から突出したピストンロッド163の端面を覆うように、ピストンロッド163に取り付けられている。
【0042】
アクチュエータ160の作動流体は気体であってもよく、液体であってもよい。例えば作動流体は空気であってもよく、油であってもよく、潤滑剤であってもよい。作動流体が潤滑剤である場合、例えばピストンロッド163及び内層ライナ130に、潤滑剤を外層ライナ120と内層ライナ130との間に導く流路が形成されていてもよい。この場合、作動流体を、内層ライナ130と外層ライナ120との間の潤滑にも有効利用することができる。
【0043】
図3は、作動流体の圧力によってピストン162が前進し、ピストン162と共に前進したピストンロッド163によって内層ライナ130が外層ライナ120に向かって押し出された状態を示している。この状態においては、外層ライナ120が隙間なく内面41に押し付けられ、内層ライナ130が隙間なく外層ライナ120に押し付けられる。これにより、外層ライナ120と内面41との間又は内層ライナ130と外層ライナ120との間への異物の侵入に起因する損傷を抑制することができる。また、外層ライナ120と内面41とが接触し、外層ライナ120と内層ライナ130とが接触した状態を維持することで、外層ライナ120及び内層ライナ130の挙動を安定化することができる。
【0044】
更に、外層ライナ120が内層ライナ130と共に前進することで、ライナホルダ150の外縁部が内向きフランジ144,145に隙間なく押し付けられ、ライナホルダ150の内縁部がフランジ123に隙間なく押し付けられる。これにより、外層ライナ120と側壁141,142との間が封止されるので、内層ライナ130と外層ライナ120との間への異物の侵入が更に抑制される。図5は、作動流体の圧力によってピストン162が後退した状態を示している。この状態においては、外層ライナ120が内面41に押し当たった状態が解除されるので、ハウジング40からのロールチョック31の取り出しが容易になる。
【0045】
圧延装置1は、圧延ロール10の中心軸よりも上方及び下方にそれぞれ設けられた一対のアクチュエータ160を備えていてもよい。例えば図4に示すように、圧延装置1は、一対のアクチュエータ160A,160Bを備えてもよい。上アクチュエータ160Aは、圧延ロール10の中心軸よりも上方に位置するようにベースブロック110に設けられ、内層ライナ130を外層ライナ120に向かって押し出す。下アクチュエータ160Bは、圧延ロール10の中心軸よりも下方に位置するようにベースブロック110に設けられ、内層ライナ130を外層ライナ120に向かって押し出す。
【0046】
アクチュエータ160A,160Bのそれぞれは、上述の作動空間161と、ピストン162と、ピストンロッド163とを有する。アクチュエータ160A,160Bにそれぞれ対応するように、内層ライナ130は一対の内層ライナ130A,130Bに分かれていてもよい。内層ライナ130Aは、上アクチュエータ160Aのピストンロッド163に取り付けられ、内層ライナ130Bは、下アクチュエータ160Bのピストンロッド163に取りつけられる。アクチュエータ160A,160Bにより、上下2箇所で内層ライナ130を外層ライナ120に向かって押すことで、内面41と外層ライナ120との間と、内層ライナ130と外層ライナ120との間における圧力分布の均一性を向上させ、外層ライナ120及び内層ライナ130の挙動を更に安定化することができる。更に、ロールチョック31,32の水平動が抑制されるので、材料にチャタリング等が発生すること等、ロールチョック31,32の水平動に起因するトラブルが抑制される。
【0047】
ロールチョック31,32には、ベースブロック110の上下において、ハウジング40の内面41に向かって突出した一対の凸部36が形成されていてもよい。一対の凸部36により、ロールチョック31,32に対し上下方向においてベースブロック110を位置決めすることができる。また、ロールチョック31,32とベースブロック110との間へのスケール等の進入を抑えることができる。ロールチョック31,32には、アクチュエータ160A,160Bの間において外層ライナ120に向かって突出した凸部35が形成されていてもよく、ベースブロック110には、凸部35と嵌合する凹部111が形成されていてもよい。凸部35及び凹部111は、それぞれ圧延ロール10の軸線に沿って延びている。凸部35及び凹部111の嵌合を、ロールチョック31に対するベースブロック110の上下方向の位置決めに利用しつつ、圧延ロール10の中心軸と同じ高さにおけるロールチョック31の厚さTを大きくして、ロールチョック31の強度を向上させることができる。凸部35が凹部111に嵌合する場合、上述した一対の凸部36を省いてもよい。
【0048】
図3及び図4に示すように、ライナユニット200は、ベースブロック210と、外層ライナ220と、内層ライナ230と、カバー240と、ライナホルダ250とを有する。
【0049】
ベースブロック210は、内面42とロールチョック31との間に位置するように、ロールチョック31に固定されている。ベースブロック210がロールチョック31に固定されるので、ベースブロック210に設けられること(例えば固定されること、又は取り付けられること)は、ロールチョック31に設けられることに相当する。
【0050】
外層ライナ220は、上下方向に移動し得るようにベースブロック210に取り付けられ、内面42(ハウジングライナ44)に接する。例えば外層ライナ220は、内面42とベースブロック210との間に位置する。例えば外層ライナ220は、外層ライナ120の材料と同様の材料により構成され、面221,222と、フランジ223とを有する。面221は内面42に対向し、面222はベースブロック210に対向する。フランジ223は、外層ライナ220の外周面のうち面222よりの部分から、全周に亘って外方に張り出している。
【0051】
内層ライナ230は、外層ライナ220とロールチョック31との間に位置するようにベースブロック210に取り付けられ、ロールチョック31の上下動に応じて外層ライナ220に対し摺動する。例えば内層ライナ230は、外層ライナ220とベースブロック210との間に位置する。例えば内層ライナ230は、内層ライナ130の材料と同様の材料により構成され、面231と、面232とを有する。面231は外層ライナ220の面222に対向し、面232はベースブロック210に対向する。
【0052】
外層ライナ220と内面42との間の動摩擦係数に比較して、外層ライナ220と内層ライナ230との間の動摩擦係数が低くてもよい。例えば、外層ライナ120、内層ライナ130、及びハウジングライナ43の説明において例示した材料の組み合わせを、外層ライナ220、内層ライナ230、及びハウジングライナ44にも適用することで、ハウジングライナ44と外層ライナ220との間の動摩擦係数が、ハウジングライナ43と外層ライナ120との間の動摩擦係数と同様になり、外層ライナ220と内層ライナ230との間の動摩擦係数が、外層ライナ120と内層ライナ130との間の動摩擦係数と同様になる。
【0053】
カバー240は、内面42とロールチョック31との間において、外層ライナ220と内層ライナ230との間を囲む。カバー240は、カバー140と同様に、側壁241,242と、天板243とを有する。側壁241,242は幅方向D2に並び、それぞれベースブロック210から内面42に向かって突出している。側壁241,242は、幅方向D2における外層ライナ220及び内層ライナ230の両側をそれぞれ覆うように上下方向に延びている。内面42に面する側壁241の端縁には、側壁242に向かって張り出した内向きフランジ244が形成されている。内面41に面する側壁242の端縁には、側壁241に向かって張り出した内向きフランジ245が形成されている。天板243は、外層ライナ220及び内層ライナ230の上部を覆うように、側壁241,242よりも上において、ベースブロック210から内面42に向かって突出している。
【0054】
ライナホルダ250は、ロールチョック31に対する上下動を許容するように外層ライナ220を保持し、カバー240と外層ライナ220との間をシールする。ライナホルダ250は、ライナホルダ250と同様の材料により構成される。例えばライナホルダ250は、送り方向D1に沿った軸線まわりに外層ライナ220を包囲し、外層ライナ220から外方に張り出す。送り方向D1において、外層ライナ220の内縁部は外層ライナ220のフランジ223に対向し、外層ライナ220の外縁部は側壁241,242の内向きフランジ244,245に対向する。これにより、少なくとも側壁241,242と外層ライナ220との間がシールされる。
【0055】
ライナホルダ250は、ロールチョック31に対し上下動し得るようにカバー240に取り付けられる。例えばライナホルダ250は、図4に示すように、コイルバネ等の弾性部材251を介して天板243に吊り下げられる。これにより、上下方向に移動し得るように、外層ライナ220がベースブロック210に取り付けられる。なお、ライナホルダ250は必ずしもカバー240に取り付けられなくてもよく、コイルバネ等の弾性部材251を介してベースブロック210に取り付けられていてもよい。
【0056】
ライナユニット200は、アクチュエータ160と同様のアクチュエータを有しなくてもよい。ライナユニット100のアクチュエータ160が外層ライナ120を押し出せば、その反動で内層ライナ230が外層ライナ220に押し付けられ、外層ライナ220が内面42に押し付けられることとなる。このため、ライナユニット200がアクチュエータを有していなくても、ライナユニット100がアクチュエータを有していれば、外層ライナ220を隙間なく内面42に押し付け、内層ライナ230を隙間なく外層ライナ220に押し付けることができる。
【0057】
ライナユニット100及びライナユニット200の両方がアクチュエータを有していなくてもよい。ライナユニット100及びライナユニット200の両方がアクチュエータを有しない場合においても、ロールチョック31は、送り方向D1に沿って材料等から負荷される力によって、内面41又は内面42に押し付けられることとなる。ロールチョック31が内面41に押し付けられる状況においては、ライナユニット100によってハウジングライナ43の損耗が抑制され、ロールチョック31が内面42に押し付けられる状況においては、ライナユニット200によってハウジングライナ44の損耗が抑制される。
【0058】
〔まとめ〕
以上に示した実施形態は、以下の構成を含む。
(1)
材料Wを圧延する圧延ロール10と、圧延ロール10を保持するロールチョック31と、材料Wの送り方向D1に交差する内面41を有し、ロールチョック31を収容するハウジング40と、上下方向に移動し得るようにロールチョック31に取り付けられ、内面41に接する外層ライナ120と、外層ライナ120とロールチョック31との間に位置するようにロールチョック31に取り付けられ、ロールチョック31の上下動に応じて外層ライナ120に対し摺動する内層ライナ130と、を備える圧延装置。
この圧延装置によれば、ロールチョック31の上下動に応じて内層ライナ130が外層ライナ120に対して摺動するため、ハウジング40に対する外層ライナ120の摺動が抑制される。従って、ロールチョック31の上下動に起因するハウジング40の損耗が抑制される。
【0059】
(2) 内面41とロールチョック31との間において、外層ライナ120と内層ライナ130との間を囲むカバー140を更に備える、(1)記載の圧延装置。
圧延に際して発生するスケール等の異物が外層ライナ120と内層ライナ130との間に侵入することを防ぎ、異物の侵入に起因する外層ライナ120及び内層ライナ130の損傷を抑制することができる。
【0060】
(3) ロールチョック31に対する上下動を許容するように外層ライナ120を保持し、カバー140と外層ライナ120との間をシールするライナホルダ150を更に備える、(2)記載の圧延装置。
上下動を許容するように外層ライナ120を保持する機能と、カバー140と外層ライナ120との間をシールする機能とを兼ね備えたライナホルダ150の採用により、部品点数の削減を図ることができる。
【0061】
(4) ロールチョック31に設けられ、内層ライナ130を外層ライナ120に向かって押し出すアクチュエータ160を更に備える、(1)~(3)のいずれか記載の圧延装置。
外層ライナ120と内面41との隙間と、外層ライナ120と内層ライナ130との隙間を小さくして、異物の侵入に起因する損傷を抑制することができる。また、外層ライナ120と内面41とが接触し、外層ライナ120と内層ライナ130とが接触した状態を維持することで、外層ライナ120及び内層ライナ130の挙動を安定化することができる。更に、ロールチョック31,32の水平動が抑制されるので、材料にチャタリング等が発生すること等、ロールチョック31,32の水平動に起因するトラブルが抑制される。
【0062】
(5) 圧延ロール10の中心軸よりも上方に位置するようにロールチョック31に設けられ、内層ライナ130を外層ライナ120に向かって押し出す上アクチュエータ160Aと、圧延ロール10の中心軸よりも下方に位置するようにロールチョック31に設けられ、内層ライナ130を外層ライナ120に向かって押し出す下アクチュエータ160Bと、を更に備える、(1)~(3)のいずれか記載の圧延装置。
上下2箇所で内層ライナ130を外層ライナ120に向かって押すことで、内面41と外層ライナ120との間と、外層ライナ120と内層ライナ130との間における接触面積を拡大し、面圧を低減させることで、外層ライナ及び内層ライナの損耗を低減することができる。
【0063】
(6) 外層ライナ120と内面41との間の動摩擦係数に比較して、外層ライナ120と内層ライナ130との間の動摩擦係数が低い、(1)~(5)のいずれか記載の圧延装置。
外層ライナ120に対する内層ライナ130の摺動をより発生し易くすることで、ハウジング40の損耗を更に抑制することができる。
【0064】
(7) ハウジング40は、内面41に対向する第2内面42を有し、ロールチョック31は内面41と第2内面42との間に収容され、圧延装置は、上下方向に移動し得るようにロールチョック31に取り付けられ、第2内面42に接する第2外層ライナ220と、第2外層ライナ220とロールチョック31との間に位置するようにロールチョック31に取り付けられ、ロールチョック31の上下動に応じて第2外層ライナ220に対し摺動する第2内層ライナ230と、を更に備える、(1)~(6)のいずれか記載の圧延装置。
内面41と第2内面42との両方において、ハウジング40の損耗を抑制することができる。
【0065】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
W…材料、D1…送り方向、10…圧延ロール、31…ロールチョック、40…ハウジング、41…内面、42…第2内面、120…外層ライナ、130…内層ライナ、140…カバー、150…ライナホルダ、160…アクチュエータ、160A…上アクチュエータ、160B…下アクチュエータ、220…第2外層ライナ、230…第2内層ライナ。
図1
図2
図3
図4
図5