(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027530
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】漏水事故対応システム、漏水事故対応方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20250220BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132328
(22)【出願日】2023-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 健介
(72)【発明者】
【氏名】米川 陽子
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 啓太
(72)【発明者】
【氏名】安波 真悟
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】 漏水事故が発生した際に迅速かつ適切な事故対応を行えるようにすること。
【解決手段】 実施形態の漏水事故対応システムは、少なくとも漏水事故の事故状況を示すデータを取得するデータ取得部と、前記データを用いて、少なくとも断水区域を求め、求めた断水区域を対象にした応急給水計画、前記断水区域の管路へ水を供給する施設の運転管理計画、および漏水の生じた管路の応急復旧計画のそれぞれの策定を行う策定部とを具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも漏水事故の事故状況を示すデータを取得するデータ取得部と、
前記データを用いて、少なくとも断水区域を求め、求めた断水区域を対象にした応急給水計画、前記断水区域の管路へ水を供給する施設の運転管理計画、および漏水の生じた管路の応急復旧計画のそれぞれの策定を行う策定部と
を具備する、漏水事故対応システム。
【請求項2】
前記策定部は、
過去の漏水事故対応の記録を示すデータを用いて、前記各計画の少なくともいずれかの策定を行う、
請求項1に記載の漏水事故対応システム。
【請求項3】
前記策定部は、
前記応急給水計画の策定において、
複数の給水地点に優先順位を付与した情報を作成する、
請求項1に記載の漏水事故対応システム。
【請求項4】
前記策定部は、
前記応急給水計画の策定において、
漏水位置と共に給水地点を地図上に示した情報を作成する、
請求項1に記載の漏水事故対応システム。
【請求項5】
前記策定部は、
前記応急給水計画の策定において、
漏水位置と共に優先順位が付与された複数の給水地点を地図上に示した情報を作成する、
請求項1に記載の漏水事故対応システム。
【請求項6】
前記策定部は、
前記運転管理計画の策定において、
漏水位置と共に配水拠点もしくは浄水拠点を地図上に示した情報を作成する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の漏水事故対応システム。
【請求項7】
前記策定部は、
前記運転管理計画の策定において、
漏水位置と共に配水拠点もしくは浄水拠点を地図上に示した情報と、当該配水拠点の配水量もしくは浄水拠点の浄水量の経時変化を示すグラフとを作成する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の漏水事故対応システム。
【請求項8】
前記策定部は、
前記運転管理計画の策定において、
漏水位置と共に配水拠点もしくは浄水拠点を地図上に示した情報と、当該配水拠点の配水量もしくは浄水拠点の浄水量の経時変化を示すグラフと、当該配水拠点の推奨配水量もしくは浄水拠点の推奨浄水量を示す情報とを作成する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の漏水事故対応システム。
【請求項9】
前記策定部は、
前記応急復旧計画の策定において、
漏水位置と共に応急復旧の対象となる管路および要操作バルブを地図上に示した情報を作成する、
請求項1に記載の漏水事故対応システム。
【請求項10】
前記策定部は、
当該漏水事故の対応の記録を示す事故記録を策定し、策定した事故記録を次回以降の策定に利用可能なデータとして保管する、
請求項1に記載の漏水事故対応システム。
【請求項11】
前記策定部は、
前記データを用いて、応急給水の予定もしくは水道の復旧見込みを示す広報の資料を策定する、
請求項1に記載の漏水事故対応システム。
【請求項12】
前記策定部は、
職員の登庁状況を示すデータをもとに、前記各計画を担当する人員の配置を決定する、
請求項1に記載の漏水事故対応システム。
【請求項13】
前記データを記憶する記憶部をさらに具備し、
前記記憶部に記憶される前記データは、前記各計画を担当する人員が共有可能な情報として任意の端末から閲覧することが可能である、
請求項1に記載の漏水事故対応システム。
【請求項14】
データ取得部により、少なくとも漏水事故の事故状況を示すデータを取得することと、
策定部により、前記データを用いて、少なくとも断水区域を求め、求めた断水区域を対象にした応急給水計画、前記断水区域の管路へ水を供給する施設の運転管理計画、および漏水の生じた管路の応急復旧計画のそれぞれの策定を行うことと
を含む、漏水事故対応方法。
【請求項15】
1つまたは複数のコンピュータに、
少なくとも漏水事故の事故状況を示すデータを取得する機能と、
前記データを用いて、少なくとも断水区域を求め、求めた断水区域を対象にした応急給水計画、前記断水区域の管路へ水を供給する施設の運転管理計画、および漏水の生じた管路の応急復旧計画のそれぞれの策定を行う機能と
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、漏水事故対応システム、漏水事故対応方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水道事業に携わる自治体職員の数は、組織人員の削減、団塊世代の退職などの理由により減少傾向にあり、経験豊かな熟練者も減少している。このように人的リソースが減少する一方で、水道管の老朽化が進行しており、漏水事故が増加傾向にある。このような中、漏水事故は、夜間・休日を問わず突発的に発生するため、より迅速かつ適切な対応を効率よく行うことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-140969号公報
【特許文献2】特開2001-325310号公報
【特許文献3】特開2021-179755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
漏水事故が発生した際には、漏水の生じている管路を修繕する応急復旧の作業などが行われる。しかし、一定以上の熟練度を有する者がいない場合、迅速かつ適切な事故対応を行うことは難しい。
【0005】
発明が解決しようとする課題は、漏水事故が発生した際に迅速かつ適切な事故対応を行うことを可能にする漏水事故対応システム、漏水事故対応方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の漏水事故対応システムは、少なくとも漏水事故の事故状況を示すデータを取得するデータ取得部と、前記データを用いて、少なくとも断水区域を求め、求めた断水区域を対象にした応急給水計画、前記断水区域の管路へ水を供給する施設の運転管理計画、および漏水の生じた管路の応急復旧計画のそれぞれの策定を行う策定部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る漏水事故対応システムおよび当該システムにアクセス可能な情報端末の機能構成の例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される漏水事故対応システムにおいて入出力される各種のデータ類の例を示す図である。
【
図3】
図3は、総務班、管路班、施設班、給水班の各班による事故対応の業務の流れの例を示す図である。
【
図4】
図4は、応急給水計画の一部を地図上のマッピング情報として表示する例を示す図である。
【
図5】
図5は、応急給水計画の一部をテーブル情報として表示する例を示す図である。
【
図6】
図6は、運転管理計画の一部を地図上のマッピング情報として表示する例を示す図である。
【
図7】
図7は、運転管理計画の一部をグラフ情報として表示する例を示す図である。
【
図8】
図8は、応急復旧計画の一部を地図上のマッピング情報として表示する例を示す図である。
【
図9】
図9は、策定部50による応急給水計画の策定の動作例を示す図である。
【
図10】
図10は、策定部50による運転管理計画の策定の動作例を示す図である。
【
図11】
図11は、策定部50による応急復旧計画の策定の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0009】
<システム構成の概要>
図1に、実施形態に係る漏水事故対応システムおよび当該システムにアクセス可能な情報端末の機能構成の例を示す。
【0010】
図1中に示される漏水事故対応システム1は、水道事業の自治体が漏水事故の対応に使用する1つまたは複数のサーバ(コンピュータ)に相当するものである。サーバは、自治体の所定の庁舎内に配置されてもよいし、庁舎以外の場所、例えばインターネット上(クラウド上)の任意の場所に配置されてもよい。漏水事故対応システム1に備えられる各種の機能は、1つまたは複数のサーバ(コンピュータ)に実現させるためのプログラムもしくはデータベースとして構成される。以下では、漏水事故対応システム1を、システム1と略称する場合がある。
【0011】
図1中に示される個々の端末Tは、水道事業の自治体職員が使用する情報端末(例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、もしくはスマートフォン)であり、端末T’は、一般の住民が使用する情報端末(例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、もしくはスマートフォン)である。個々の端末T,T’は、システム1のサーバにアクセス可能なクライアント端末として使用される。
【0012】
ここで、漏水事故対応システム1に備えられる各機能および個々の端末Tに備えられる各機能を詳細に説明する前に、漏水事故対応システム1において入出力されるデータ類について説明する。
【0013】
<各種のデータ類>
図2に、
図1に示される漏水事故対応システムにおいて入出力される各種のデータ類の例を示す。
【0014】
システム1に入力されるデータ類には、当日入力データ、事前入力データ、および事故処理データがある。システム1から出力されるデータには、出力データがある。以降、各データについて順次説明する。
【0015】
(1)当日入力データ
当日入力データは、自治体職員が事故発生から事故対応完了までの間に、端末Tからシステム1へ入力・登録するデータである。当日入力データは、職員データおよび事故状況データを含む。
【0016】
(1.1)職員データ
職員データは、登庁状況データを含む。登庁状況データは、給水班、施設班、管路班、総務班の班ごとに、登庁している籍職員の人数や氏名を示す。これらの情報は、各班がそれぞれ端末Tより入力する。なお、位置情報(GPS)や職員パソコンのON、OFFなどを使用して、職員データを自動で収集してもよい。
【0017】
給水班は、漏水事故が発生した断水区域への応急給水(例えば、給水車等により水を住民に配る)を行う班である。施設班は、断水区域の管路へ水を供給する浄水施設もしくは配水施設の運転管理(例えば、浄水施設での浄水量の増減調整もしくは配水施設での配水量の増減調整)を行う班である。管路班は、漏水の生じた管路の応急復旧(例えば、管路の修繕工事)を行う班である。総務班は、給水班、施設班、および管路班の活動の支援や、これらの班の取り纏め、外部への広報などを行う班である。自治体の規模によっては、一人の職員が複数の班を担当、あるいは総務班の役割をチームではなく一人で担当している場合もあるが問題ない。
【0018】
(1.2)事故状況データ
事故状況データは、漏水事故の事故状況を示すデータであり、事故関連データおよび進捗状況データを含む。
【0019】
事故関連データは、想定漏水位置、想定漏水量、事故発生日時などを示す。これらの情報は、管路班が現地で事故状況を確認することで得られ、管路班が端末Tより入力する。
【0020】
進捗状況データは、給水班、施設班、管路班の各班の事故対応の進捗状況(応急給水の進捗状況、浄水もしくは配水を行う施設の運転管理の進捗状況、漏水の生じた管路の応急復旧の進捗状況)を示す情報、および総務班が各班の進捗状況を広報として発信する情報を含む。これらの情報は、給水班、施設班、管路班、総務班がそれぞれ逐次、端末Tより入力する。
【0021】
(2)事前入力データ
事前入力データは、事故発生前に予めシステム1へ登録しておくデータであり、自治体職員が端末Tからシステム1へ入力・登録することを基本とするが、他のシステムとのデータ通信によってシステム1が自動で他のシステムから受信・保存するようにしてもよい。事前入力データは、水道以外の施設データ、保有資機材データ、連絡先データ、および水道施設データを含む。
【0022】
(2.1)水道以外の施設データ
水道以外の施設データは、管路班が端末Tより入力する情報として、通信ケーブルの埋設管などの水道以外の施設の情報、近隣の工事の情報などを含む。
【0023】
(2.2)保有資機材データ
保有資機材データは、給水班が端末Tより入力する情報として、応急給水用資機材、給水車の台数や種類などの情報を含む。また、保有資機材データは、管路班が端末Tより入力する情報として、管路、バルブなどの保有資材の情報を含む。
【0024】
(2.3)連絡先データ
連絡先データは、管路班が端末Tより入力する情報として、協力会社の連絡先などの関係機関の情報を含む。
【0025】
(2.4)水道施設データ
水道施設データは、給水班が端末Tより入力する情報として、給水地点を示す情報(各給水地点に対する優先順位付けを示す情報を含む)や、備蓄水量を示す情報を含む。
【0026】
また、水道施設データは、施設班が端末Tより入力する情報として、各浄配水施設の能力を示す情報や、布設管路やバルブなどの付帯設備を示す情報を含む。
【0027】
また、水道施設データは、管路班が端末Tより入力する情報として、布設管路やバルブなどの付帯設備を示す情報のほか、路線の優先順位を示す優先路線データを含む。優先路線データでは、重要施設に通じる管路がある路線の優先順位を高くしている。
【0028】
(3)事故処理データ
事故処理データは、漏水事故対応終了時に、一連の事故対応を記録するため自治体職員が端末Tからシステム1へ入力・登録するデータである。
【0029】
具体的には、給水班が事故対応終了時に端末Tより入力する事故処理データとして、応急給水の処理内容(給水場所/作業時間/給水量/水の補給場所・補給回数など)を示す情報がある。
【0030】
また、施設班が事故対応終了時に端末Tより入力する事故処理データとして、施設の運転管理の処理内容(各施設の配水量調整状況など)を示す情報がある。
【0031】
また、管路班が事故対応終了時に端末Tより入力する事故処理データとして、応急復旧の処理内容(場所、被災状況(漏水量、漏水位置など)、対応時間、使用資機材など)を示す情報がある。
【0032】
また、総務班が事故対応終了時に端末Tより入力する情報として、発信した広報の内容(住民・マスコミへの連絡、外部団体への連絡・依頼状況など)を示す情報を含む。
【0033】
(4)出力データ
出力データは、計画データ、広報データ、および事故記録データを含む。
【0034】
(4.1)計画データ
計画データは、策定された応急給水計画、施設の運転管理計画、応急復旧計画をそれぞれ示すデータである。給水班、施設班、管路班は、それぞれ、自班に対応する計画データに基づいて応急給水、運転管理、応急復旧を実施する。
【0035】
(4.2)広報データ
広報データは、広報の資料として応急給水の予定もしくは水道の復旧見込みを示すデータである。総務班は、広報データを自治体のホームページやメール配信等の手段を活用して外部へ発信する。
【0036】
(4.3)事故記録データ
事故記録データは、事故の状況、対策全般にわたる記録を示す所定のフォーマットの情報であり、給水班、施設班、管路班、総務班の各班にて入力・登録された情報をもとに作成される。
【0037】
<漏水事故対応システム1および端末Tの機能>
図1に示される漏水事故対応システム1および個々の端末Tは、前述したように各種の機能を備えている。以降、各種の機能について順次説明する。
【0038】
・当日入力データ(職員データ、事故状況データ)の処理に関わる機能
当日入力データ(職員データ、事故状況データ)の処理に関わる機能として、端末Tは、職員データ入力部11および事故状況データ入力部21を有し、システム1は、職員データ取得部12、職員データ記憶部13、事故状況データ取得部22、および事故状況データ記憶部23を有する。なお、職員データ入力部11および事故状況データ入力部21は、別々の端末(パソコン、スマートフォン、タブレット等)で実現されてもよい。
【0039】
職員データ入力部11は、端末Tの入力操作に応じて、職員データの入力を行う。職員データの入力に際しては、システム1が職員データの入力を案内する画面を端末Tに表示させる。入力された職員データは、システム1へ送られる。職員データ取得部12は、職員データ入力部11により入力された職員データを取得する。
【0040】
職員データ記憶部13は、職員データ取得部12により取得された職員データを記憶する。職員データは、任意の端末Tから閲覧することが可能である。また、職員データは、後述する策定部50において、応急給水計画の策定、運転管理計画の策定、および応急復旧計画の策定のそれぞれの処理に使用される。
【0041】
事故状況データ入力部21は、端末Tの入力操作に応じて、事故状況データ(事故関連データ、進捗状況データ)の入力を行う。事故状況データの入力に際しては、システム1が事故状況データの入力を案内する画面を端末Tに表示させる。入力された事故状況データは、システム1へ送られる。事故状況データ取得部22は、事故状況データ入力部21により入力された事故状況データを取得する。
【0042】
事故状況データ記憶部23は、事故状況データ取得部22により取得された事故状況データ(事故関連データ、進捗状況データ)を記憶する。事故状況データは、前記各計画を担当する人員が共有可能な情報として、任意の端末Tから閲覧することが可能である。また、事故状況データは、後述する策定部50において、応急給水計画の策定、運転管理計画の策定、応急復旧計画の策定、および広報資料の策定のそれぞれの処理に使用される。
【0043】
・事前入力データの処理に関わる機能
事前入力データの処理に関わる機能として、システム1は、事前入力データを記憶する事前入力データ記憶部31を有する。事前入力データは、前述したように、水道以外の施設データ、保有資機材データ、連絡先データ、および水道施設データを含む。事前入力データは、前述したように端末Tからの入力によって取得するようにしてもよいが、他のシステムとのデータ通信によって他のシステムから取得してもよい。事前入力データは、後述する策定部50において、応急給水計画の策定、運転管理計画の策定、および応急復旧計画の策定のそれぞれの処理に使用される。
【0044】
・事故処理データの処理に関わる機能
事故処理データの処理に関わる機能として、端末Tは、事故処理データ入力部41を有し、システム1は、事故処理データ取得部42、事故処理データ記憶部43、および過去対応データ記憶部44を有する。
【0045】
事故処理データ入力部41は、端末Tの入力操作に応じて、事故処理データの入力を行う。事故処理データの入力に際しては、システム1が事故処理データの入力を案内する画面を端末Tに表示させる。入力された事故処理データは、システム1へ送られる。事故処理データ取得部42は、事故処理データ入力部41により入力された事故処理データを取得するとともに、取得した事故処理データから次回以降の計画策定に利用可能な参考資料となるデータ(過去対応データ)を抽出する。
【0046】
事故処理データ記憶部43は、事故処理データ取得部42により取得された事故処理データを記憶する。事故処理データは、任意の端末Tを用いて閲覧することが可能である。また、事故処理データは、後述する策定部50において、事故記録の策定の処理に使用される。過去対応データ記憶部44は、事故処理データ取得部42により抽出された過去対応データを記憶する。過去対応データは、任意の端末Tを用いて閲覧することが可能である。また、過去対応データは、後述する策定部50において、応急給水計画の策定、運転管理計画の策定、および応急復旧計画の策定のそれぞれの処理に使用される。
【0047】
・策定の処理に関わる機能
策定の処理に関わる機能として、漏水事故対応システム1は、策定部50および策定データ記憶部60を有する。また、漏水事故対応システム1は、策定部50や後述する表示制御部72が使用できるGIS(Geographic Information System)データ記憶部61を有する。GISデータ記憶部61には、GISから得られる地図情報が記憶されている。
【0048】
地図情報には、漏水事故発生時の給水地点(住民に水を配る地点)となり得る病院や公園などの場所を示す情報、補給地点(給水車に水を補給する地点)となり得る浄水場、配水池や各地点に存在する災害用備蓄タンクなどの場所を示す情報、配水拠点もしくは浄水拠点(配水量もしくは浄水量の増減調整を行う配水施設もしくは浄水施設の場所)を示す情報、および個々の管路やバルブの場所を示す情報などが含まれていてもよい。
【0049】
策定部50は、漏水事故の事故状況を示す事故状況データ(事故関連データ、進捗状況データ)や、事前に入力しておいた事前入力データ、地図情報などを用いて、所定のアルゴリズムもしくは演算式に従って、断水区域などを求めるとともに、当該断水区域を対象にした応急給水計画、断水区域の管路へ水を供給する施設の運転管理計画、および漏水の生じた管路の応急復旧計画のそれぞれの策定を行う。
【0050】
策定部50は、さらに以下に示すような各種の機能を有する。
【0051】
例えば、策定部50は、応急給水計画の策定において、複数の給水地点に優先順位を付与した情報を作成する機能を有する。
【0052】
また、策定部50は、応急給水計画の策定において、漏水位置と共に給水地点を地図上に示した情報を作成する機能を有する。
【0053】
また、策定部50は、応急給水計画の策定において、漏水位置と共に優先順位が付与された複数の給水地点を地図上に示した情報を作成する機能を有する。
【0054】
また、策定部50は、運転管理計画の策定において、漏水位置と共に配水拠点もしくは浄水拠点を地図上に示した情報を作成する機能を有する。
【0055】
また、策定部50は、運転管理計画の策定において、漏水位置と共に配水拠点もしくは浄水拠点を地図上に示した情報と、当該配水拠点の配水量もしくは浄水拠点の浄水量の経時変化を示すグラフとを作成する機能を有する。
【0056】
また、策定部50は、運転管理計画の策定において、漏水位置と共に配水拠点もしくは浄水拠点を地図上に示した情報と、当該配水拠点の配水量もしくは浄水拠点の浄水量の経時変化を示すグラフと、当該配水拠点の推奨配水量もしくは浄水拠点の推奨浄水量を示す情報とを作成する機能を有する。
【0057】
また、策定部50は、応急復旧計画の策定において、漏水位置と共に応急復旧の対象となる管路および要操作バルブを地図上に示した情報を作成する機能を有する。
【0058】
また、策定部50は、漏水事故の対応の記録を示す事故記録を策定し、策定した事故記録を次回以降の策定に利用可能なデータとして保管する機能を有する。
【0059】
また、策定部50は、事故状況データを用いて、応急給水の予定もしくは水道の復旧見込みを示す広報の資料を策定する機能を有する。
【0060】
また、策定部50は、職員の登庁状況を示すデータをもとに、各計画を担当する人員の配置を決定する機能を有する。
【0061】
また、策定部50は、各計画を担当する人員が共有可能な情報として、事故対応の進捗状況を示すデータを作成する機能を有する。
【0062】
より具体的には、策定部50は、応急給水計画策定部51、運転管理計画策定部52、応急復旧計画策定部53、広報資料策定部54、および事故記録策定部55を有する。
【0063】
応急給水計画策定部51は、職員データ記憶部13内の職員データ、事故状況データ記憶部23内の事故状況データ、事前入力データ記憶部31内の事前入力データ、および過去対応データ記憶部44内の過去対応データを用いて、給水班が担当する応急給水の計画(応急給水計画)の策定を行う。
【0064】
運転管理計画策定部52は、職員データ記憶部13内の職員データ、事故状況データ記憶部23内の事故状況データ、事前入力データ記憶部31内の事前入力データ、および過去対応データ記憶部44内の過去対応データを用いて、施設班が担当する施設の運転管理の計画(運転管理計画)の策定を行う。
【0065】
応急復旧計画策定部53は、職員データ記憶部13内の職員データ、事故状況データ記憶部23内の事故状況データ、事前入力データ記憶部31内の事前入力データ、および過去対応データ記憶部44内の過去対応データを用いて、管路班が担当する応急復旧の計画(応急復旧計画)の策定を行う。
【0066】
事故記録策定部55は、事故処理データ記憶部43内の事故処理データを用いて、給水班、施設班、管路班、および総務班の各班がそれぞれ担当する事故記録の策定を行う。
【0067】
策定データ記憶部60は、応急給水計画策定部51、運転管理計画策定部52、および応急復旧計画策定部53によりそれぞれ策定された応急給水計画、運転管理計画、および応急復旧計画の各データ(計画データ)、広報資料策定部54により策定された広報資料のデータ(広報データ)、および事故記録策定部55によりそれぞれ策定された事故記録のデータ(事故記録データ)を記憶する。
【0068】
なお、後述する承認・編集部76により編集・承認の行われた計画がある場合は、その計画のデータが承認・編集データ取得部77を通じて策定データ記憶部60内の対応する計画データに反映されることになる。
【0069】
・計画データの処理に関わる機能
計画データに関わる機能として、システム1は、提供データ作成部71、表示制御部72、メール送信部74、および承認・編集データ取得部77を有し、端末Tは、表示部73、メール受信部75および承認・編集部76を有する。なお、表示部73、メール受信部75および承認・編集部76は、別々の端末で実現されてもよい。
【0070】
提供データ作成部71は、策定データ記憶部60内の応急給水計画、運転管理計画、応急復旧計画の各計画データに基づき、給水班、施設班、管路班に提供するために適した形式のデータを作成する。作成されるデータには、端末Tでの画面表示に適した形式のデータのほか、メール通知を行うためのメールデータがある。
【0071】
表示制御部72は、提供データ作成部71により作成されたデータを、表示部73に表示させる。その際に、表示制御部72は、必要に応じてGISデータ記憶部61に記憶される地図情報を使用し、漏水事故の発生箇所を含む地図と共に、応急給水計画、運転管理計画、もしくは応急復旧計画を示す情報が表示されるように制御する。また、その表示の際には、班長の承認後の計画が表示されているのか、承認前の計画(案)が表示されているのかを識別できるようにする。表示する具体的内容は、応急給水計画、運転管理計画、応急復旧計画によって異なる。表示の具体例については、後で述べる。
【0072】
メール送信部74は、提供データ作成部71により作成されたメールデータを、端末Tへ送信する。メールデータは、例えば計画の策定が完了した旨の通知や、計画(案)の承認要求を示すものであってもよい。メール受信部75は、メール送信部74から送信されたメールデータを受信して表示部73などに表示させる。
【0073】
承認・編集部76は、端末Tの入力操作に応じて、表示部73に表示される計画(案)に対する編集や承認を行う。計画(案)の編集や承認に際しては、システム1が計画(案)の編集や承認を案内する画面を端末Tに表示させる。承認・編集データ取得部77は、承認・編集部76により編集・承認された計画のデータを取得し、策定データ記憶部60内の対応する計画データに反映させる。
【0074】
・広報データの処理に関わる機能
広報データの処理に関わる機能として、システム1は、提供データ作成部81および表示制御部82を有し、端末T’は、表示部83を有する。
【0075】
提供データ作成部81は、策定データ記憶部60内の広報データに基づき、外部に広報として提供するために適した形式のデータを作成する。作成されるデータは、端末T’での画面表示に適した形式のデータとする。
【0076】
表示制御部82は、提供データ作成部81により作成されたデータを、表示部83に表示させる。
【0077】
・事故記録データの処理に関わる機能
事故記録データの処理に関わる機能として、システム1は、提供データ作成部91および表示制御部92を有し、端末Tは、表示部93を有する。
【0078】
提供データ作成部91は、策定データ記憶部60内の事故記録データに基づき、事故記録の確認用として提供するために適した形式のデータを作成する。作成されるデータは、端末Tでの画面表示に適した形式のデータとする。
【0079】
表示制御部92は、提供データ作成部91により作成されたデータを、表示部93に表示させる。
【0080】
<基本的な作業手順>
ここで、漏水事故発生時の基本的な作業手順の例を示す。但し、ここで示す作業手順の例は一例であって、これに限定されるものではない。作業手順は、適宜変更してもよい。
【0081】
・手順1
水道事業を経営している自治体では、漏水事故発生の通報等を受けると、事故対策本部が設置され、初動体制が確立されるとともに、管路班が現地へ行き、事故状況の確認を行う。このとき、自治体の職員は、漏水事故対応を行う職員を示す職員データ、および、事故状況を示す事故状況データ(即ち、当日入力データ)を、端末Tからシステム1へ入力・登録する。
【0082】
・手順2
事故対策本部では、総務班、給水班、施設班、管路班の各班が並行して漏水事故対応を実施する。
【0083】
広報については総務班が担当し、応急給水については給水班が担当し、運転管理については施設班が担当し、応急復旧については管路班が担当する。事故対応の進捗状況は、総務班を中心に、各班と逐次、共有する。総務班、給水班、施設班、管路班の各班の職員は、各自が所有する端末Tを用いて、漏水事故対応システム1に対して情報の入力を行ったり、漏水事故対応システム1が出力する情報を画面で閲覧したりすることができる。班毎の事故対応の進捗状況は、進捗状況データとして漏水事故対応システム1に入力され、事故状況データ記憶部23に記憶される。
【0084】
・手順3
管路班は、現地へ行って事故状況を調査し、調査した結果を事故状況データとして端末Tからシステム1へ入力・登録する。システム1内の策定部50では、事故状況データ等をもとに応急復旧計画が策定されるほか、応急給水計画、運転管理計画、および広報資料が策定される。さらに、管路班では、端末Tを用いて、漏水事故対応システム1により策定された応急復旧計画を得る。
【0085】
なお、応急復旧計画の策定においては、過去の事故処理データから抽出された過去対応データが参考資料として使用される。例えば、複数の過去対応データの中から、今回の事故の状況に最も近い状況を示す過去対応データ(例えば、想定人口、範囲、想定漏水量が同等の過去対応データ)が使用されるようにしてもよい。
【0086】
・手順4
続いて、管路班では、取得した応急復旧計画に従って応急復旧工事を実施する。
【0087】
・手順5
また、給水班、施設班、総務班においても、それぞれ、端末Tを用いて、漏水事故対応システム1により策定された応急給水計画、運転管理計画、広報資料を得る。
【0088】
・手順6
続いて、給水班、施設班、総務班では、それぞれ、取得した応急給水計画、運転管理計画、および広報資料に従って、応急給水、運転管理、広報発信を実施する。
【0089】
・手順7
事故対応が終わると、管路班、給水班、施設班、総務班の各班は、それぞれ、応急復旧工事、応急給水、運転管理、広報発信を実施した結果を示す事故処理データを、端末Tからシステム1へ入力・登録する。
【0090】
システム1内の策定部50では、事故記録策定部55により、事故処理データに示される事故記録が策定され、事故記録データとして事故記録データ策定データ記憶部60に記憶される。
【0091】
策定データ記憶部60に記憶された事故記録のデータは、任意の端末Tから閲覧することができるほか、修繕した管路に関する維持管理計画や、更新計画の基礎情報、図面及び台帳の情報更新などにも利用することができる。
【0092】
<各班による事故対応の業務の流れ>
事故対策本部の各職員は、自身が所有する端末Tを用いて情報を共有し、互いに情報の伝達や会議を行ったり、システム1へのアクセスを行ったりすることができるようになっている。例えば各班における作業の進捗状況や結果報告、トラブルや遅延が発生した場合の報告などについては、システム1を通じて各班の間で共有することができる。また、各班内の情報については、班ごとに班長およびメンバー間で共有することができる。
【0093】
図3に、総務班、管路班、施設班、給水班の各班による事故対応の業務の流れの例を示す。但し、
図3に示される例は一例であって、これに限定されるものではない。
図3に示される業務の流れ(各ステップの順序など)は、適宜変更してもよい。以下では、事故対策本部長を、「本部長」と称す。
【0094】
漏水事故発生時には、事故対策本部が設置され、初動体制が確立される(ステップS11)。
【0095】
初動体制の確立では、職員全員を対象に、各人員の配備が行われる。各班の人員配備の状況は、職員データとして端末Tからシステム1へ入力・登録され、管路班、施設班、給水班から総務班を通じて本部長へ伝えられる。その際に、各班や本部長が所有する端末Tへメールで通知してもよい。
【0096】
管路班は、現地へ行き、水道施設の被害状況および断水状況の調査、緊急措置を行う(ステップS12)。調査の結果や緊急措置の内容は、事故状況データとして端末Tからシステム1へ入力・登録され、総務班へ伝えられる。その際に、総務班が所有する端末Tへメールで通知してもよい。
【0097】
施設班は、システム1による運転管理計画の策定を確認し、その承認を班長から得る。さらに、施設班は、運転管理計画に従って施設の運転管理(浄水施設での浄水量の増減調整など)を行う(ステップS13)。施設の運転管理は、運転管理計画の実施が完了するまで継続して行われ、その内容は継続的に総務班へ伝えられる。
【0098】
総務班は、管路班からの報告や施設班からの報告に基づき、被害状況を確認し、ライフラインなどへの電話連絡などの受付を開始する(ステップS14)。その内容は、本部長へ伝えられる。
【0099】
次に、本部長および各班は、各班からの報告の内容に基づき、会議等を通じて応急給水・応急復旧に必要な体制の決定を行う(ステップS15)。
【0100】
管路班は、システム1による応急復旧計画の策定を確認し、その承認を班長から得る(ステップS16)。応急復旧計画の内容は、総務班へ伝えられる。さらに、管路班は、応急復旧計画に従い、管路復旧業者への配備要請を行う(ステップS17)。配備要請の内容は、総務班へ伝えられる。
【0101】
また、管路班は、応急復旧計画に従い、応急復旧資機材の確保を行う(ステップS18)。確保する応急復旧資機材の内容は、総務班へ伝えられる。さらに、管路班は、運転管理計画に従って応急復旧工事を実施するとともに、水質を調査する(ステップS19)。
【0102】
給水班は、システム1による応急給水計画の策定を確認し、その承認を班長から得る(ステップS20)。応急給水計画の内容は、総務班へ伝えられる。さらに、給水班は、応急給水計画に従って応急給水を実施する(ステップS21)。
【0103】
総務班は、給水班からの応急給水計画の報告に基づき、他の水道事業者への給水応援要請や配備を必要に応じて行う(ステップS22)。その内容は、本部長へ伝えられる。
【0104】
また、総務班は、管路班からの応急復旧計画の報告および配備要請に基づき、必要な物資などの確保を行う。さらに、総務班は、管路班、施設班、給水班の各班からの個々の報告に基づき、市民への広報や、国、警察、消防などの関係機関への連絡を行う(ステップS23)。その内容は、本部長へ伝えられる。
【0105】
各計画の実施が完了すると、総務班、管路班、施設班、給水班は、それぞれ、対応する事故記録を作成する(ステップS24)。
【0106】
具体的には、総務班、管路班、施設班、給水班は、それぞれ、対応する事故処理データを端末Tからシステム1へ入力・登録する。システム1内では、事故処理データが事故記録として策定され保管される。事故記録の内容は、本部長へ伝えられる。
【0107】
これにより、各班の事故対応の業務が完了する。
【0108】
<応急給水計画の表示例>
次に、応急給水計画の表示例について説明する。
【0109】
システム1内の策定部50により策定された応急給水計画は、策定データ記憶部60、提供データ作成部71、および表示制御部72を通じて、端末Tの表示部73に表示される。
【0110】
図4に、応急給水計画の一部を地図上のマッピング情報として表示する例を示す。また、
図5に、応急給水計画の一部をテーブル情報として表示する例を示す。
図4のマッピング情報と
図5のテーブル情報とは、1つの画面に同時に表示される。
【0111】
端末Tの表示部73には、
図4に示されるように、地図上に、断水が発生していると想定される想定断水区域を示す枠が表示されるとともに、優先順位(番号)が付された推奨給水地点、漏水位置、および補給地点をそれぞれ示すマーク(〇、×、□(黒色))が表示され、さらに、想定断水区域の数値的情報として、想定断水区域情報(想定人口、範囲、想定漏水量、および日当り必要総供給量を含む情報)が表示される。なお、
図4では、想定断水区域を、直線状の枠で囲む例が示されているが、想定断水区域の表し方はこの例に限定されるものではない。例えば、地区単位のポリゴン情報(複数のポリゴンの集まり)で想定断水区域の境界線を表してもよい。その場合、直線に限らず曲線があってもよい。
【0112】
推奨給水地点は、住民に水を配るいくつかの地点(病院や公園など)のうち、システム1が推奨する地点を示す。例えば、各地に存在する給水地点のなかでも、想定断水区域内のものだけを表示する。漏水位置は、漏水が発生している位置を示す。補給地点は、給水車に水を補給する地点(浄水場、配水池や各地点に存在する災害用備蓄タンクなどの場所)を示す。補給地点の表示については、想定断水区域内のもの、又は想定断水区域からの距離が一定以内のものだけを表示する。
【0113】
推奨給水地点の優先順位の決定は、事故状況データおよび事前入力データに基づき、所定のアルゴリズムもしくは演算式を用いて策定部50で行われる。例えば、システム1に予め登録されている優先順位に従って決定してもよいし、優先路線データに基づいて決定してもよい。また、漏水位置に近い給水地点ほど優先順位が高くなるようにしてもよいし、給水能力(給水量)が大きい給水地点ほど優先順位が高くなるようにしてもよい。
【0114】
また、端末Tの表示部73には、
図5に示されるように、優先順位(番号)が付された推奨給水地点ごとの詳細な情報が、すなわち、給水地点の具体的な場所(A病院、B公園、…)、給水方法(給水車、タンク給水、…)、必要資機材(○○○、△△△、…)、給水人員・車両(○人・○台、△人、…)などの情報を含むテーブル情報が表示される。
【0115】
推奨給水地点ごとの詳細な情報に加えて、漏水位置の詳細な情報(漏水位置の具体的な住所(又は名称)、管路班が漏水位置の写真をシステム1に登録している場合はその写真(画像))や、補給地点ごとの詳細な情報(補給地点の具体的な住所(又は名称)、貯水量、給水方法、…などの情報)を含むテーブル情報が表示されてもよい。
【0116】
上記した日当り必要総供給量や、給水方法、必要資機材、給水人員・車両などは、給水地点における断水人口、水槽仕様(取出し口の有無など)などから、所定のアルゴリズムもしくは演算式に従って決定される。
【0117】
図4のマッピング情報では、任意のマーク(〇、×、黒の□)の部分をクリック操作することで関連する情報がポップアップ表示されるようにしてもよい。
【0118】
例えば「〇」のマークの部分をクリック操作すると、その推奨給水地点の詳細な情報(給水地点の具体的な場所、給水方法、…などの情報)、すなわち
図5のテーブル情報と同様な情報が、視覚的に確認しやすい形でポップアップ表示されるようにしてもよい。
【0119】
また、「×」のマークの部分をクリック操作すると、その漏水位置の詳細な情報(漏水位置の具体的な住所(又は名称)が、管路班が漏水位置の写真をシステム1に登録している場合はさらにその写真(画像))がポップアップ表示されるようにしてもよい。
【0120】
また、「黒の□」のマークの部分をクリック操作すると、その補給地点の詳細な情報(補給地点の具体的な住所(又は名称)、貯水量、給水方法、…などの情報)がポップアップ表示されるようにしてもよい。
【0121】
<運転管理計画の表示例>
次に、運転管理計画の表示例について説明する。
【0122】
システム1内の策定部50により策定された運転管理計画は、策定データ記憶部60、提供データ作成部71、および表示制御部72を通じて、端末Tの表示部73に表示される。
【0123】
図6に、運転管理計画の一部を地図上のマッピング情報として表示する例を示す。また、
図7に、運転管理計画の一部をグラフ情報として表示する例を示す。
図6のマッピング情報と
図7のグラフ情報とは、1つの画面に同時に表示される。
【0124】
端末Tの表示部73には、
図6に示されるように、地図上に、断水が発生していると想定される想定断水区域を示す枠が表示されるとともに、漏水位置および配水拠点(施設)をそれぞれ示すマーク(×、□(黒色))が表示され、さらに、想定断水区域の数値的情報として、想定断水区域情報(想定人口、範囲、想定漏水量、および日当り必要総供給量を含む情報)が表示される。
【0125】
配水拠点は、例えば配水量の増減調整などの運転管理を行う施設を示し、上記した補給地点と重複する場合がある。なお、ここでは、一例として配水量の増減調整が可能な配水拠点(配水池など)が地図上に存在する場合の例を挙げるが、浄水量の増減調整が可能な浄水拠点(浄水場などの施設)がさらに存在していてもよい。配水拠点や浄水拠点の表示については、想定断水区域内のもの、又は想定断水区域からの距離が一定以内のものだけを表示する。
【0126】
また、端末Tの表示部73には、
図7に示されるように、配水拠点ごとの配水量の経時変化を示すグラフ情報と、各配水拠点のそれぞれの推奨配水量を示す情報とが表示される。
【0127】
浄水拠点がある場合は、浄水拠点ごとの浄水量の経時変化を示すグラフ情報と、各浄水拠点のそれぞれの推奨浄水量を示す情報とが表示される。
【0128】
図7の例では、複数の配水池A、Bのそれぞれの配水量の経時変化を示すグラフ及び推奨配水量の情報が表示されている。
【0129】
推奨配水量や推奨浄水量は、想定断水区域における断水人口、配水池や浄水場の仕様などから、所定のアルゴリズムもしくは演算式に従って決定される。
【0130】
但し、推奨配水量(もしくは推奨浄水量)は、必ずしも固定値であるとは限らず、可変値であってもよい。例えば、配水池(もしくは浄水場)の平常時の貯水量を数ヶ月単位で記録し、その平均値に対し一定の割合(例えば30%)を乗じた値を閾値とし、その閾値を実際の貯水量が上回る場合に、閾値との差分だけ配水量(もしくは浄水量)を増やすことを推奨するものであってもよい。
【0131】
運転管理計画は、上述したしたような推奨に従って実施される。なお、配水量(もしくは浄水量)に異常が生じた場合、当該異常をシステム1側で検知して職員の端末Tにその旨の表示もしくはメール送信を行うことで職員に異常を知らせるようにしてもよい。例えば、配水量(もしくは浄水量)がある閾値範囲を逸脱した場合に、もしくは配水量(もしくは浄水量)の変化率が一定以上になった場合に、異常の発生が検知されるようにしてもよい。
【0132】
図6のマッピング情報では、任意のマーク(×、黒の□)の部分をクリック操作することで関連する情報がポップアップ表示されるようにしてもよい。
【0133】
例えば、「×」のマークの部分をクリック操作すると、その漏水位置の詳細な情報(漏水位置の具体的な住所(又は名称)が、管路班が漏水位置の写真をシステム1に登録している場合はさらにその写真(画像))がポップアップ表示されるようにしてもよい。
【0134】
また、「黒の□」のマークの部分をクリック操作すると、その配水拠点の詳細な情報(配水拠点の具体的な住所(又は名称)、貯水量、給水方法、…などの情報)がポップアップ表示されるようにしてもよい。
【0135】
<応急復旧計画の表示例>
次に、応急復旧計画の表示例について説明する。
【0136】
システム1内の策定部50により策定された応急復旧計画は、策定データ記憶部60、提供データ71、および表示制御部72を通じて、端末Tの表示部73に表示される。
【0137】
図8に、応急復旧計画の一部を地図上のマッピング情報として表示する例を示す。
【0138】
端末Tの表示部73には、
図8に示されるように、地図上に、漏水位置を示すマーク(×)、ならびに応急復旧の対象となる管路および要操作バルブを示すマーク(□(黒色)が表示される。これ以外に、漏水量、破損状況などを示す漏水位置の詳細な情報や、管路班が漏水位置の写真をシステム1に登録している場合はその写真(画像))などを含むテーブル情報が表示されてもよい。これらの情報は、システム1に登録された管路の破損・埋設状況などの情報に基づいて決定される。
【0139】
そのほか、
図8には示されていないが、端末Tの表示部73には、応急復旧計画の工程を示す情報が表示される。
【0140】
表示される応急復旧計画の工程の例を以下に示す。括弧付きの数字は、工程の順番を示している。
【0141】
(1)影響区間バルブ閉止、(2)管路復旧工事、(3)管内充水、(4)水圧確認、(5)漏水調査、(6)漏水箇所の修理、(7)管内洗浄、(8)水質検査、(9)通水。
【0142】
特に(1)、(3)、(7)などの工程(バルブ操作が必要な工程)では、前述したマッピング表示において操作バルブを合わせて示し、(2)の工程では、破損状況と埋設管/近接工事の情報を含めて復旧方法を示すことが望ましい。その他、復旧工事班の編成や、必要となる応急復旧資機材などの情報も表示されることが望ましい。それらは登庁状況データや、管路の破損・埋設状況から決定される。
【0143】
<応急給水計画の策定の動作例>
図9に、策定部50による応急給水計画の策定の動作例を示す。応急給水計画の策定は、応急給水計画策定部51により行われる。
【0144】
最初に、策定部50は、管路班により事故状況データ(特に事故関連データ)がシステムに入力・登録されているか否かを判定する(ステップS51)。入力・登録が行われていない場合は、ステップS51へ戻り、入力・登録が行われている場合は、ステップS52へ進む。
【0145】
次に、策定部50は、事故状況データを確認し(ステップS52)、事故状況データやGISから得られる地図情報から、想定される断水区域を特定し(ステップS53)。断水区域から断水人口を算出する(ステップS54)。
【0146】
次に、策定部50は、事故状況データと、算出した断水区域・断水人口、当日入力データ、事前入力データ、および過去対応データとを基に、応急給水計画(案)を作成し(ステップS55)、作成した応急給水計画(案)を端末Tの画面に表示させる(ステップS56)。応急給水計画(案)は、計画策定担当者が確認し、班長の承認が得られると、正式な応急給水計画として完成する。
【0147】
次に、策定部50は、応急給水計画(案)が班長に承認されたか否かを判定する(ステップS57)。承認されなかった場合(却下された場合)、計画策定担当者による編集の実施を確認し(ステップS58)、ステップS57へ戻る。承認された場合は、ステップS59へ進む。
【0148】
最後に、策定部50は、応急給水を担当する給水班の各担当および関係者の端末Tへ応急給水計画の完成を通知する(ステップS59)。
【0149】
<運転管理計画の策定の動作例>
図10に、策定部50による運転管理計画の策定の動作例を示す。運転管理計画の策定は、運転管理計画策定部52により行われる。
【0150】
最初に、策定部50は、管路班により事故状況データ(特に事故関連データ)がシステムに入力・登録されているか否かを判定する(ステップS61)。入力・登録が行われていない場合は、ステップS61へ戻り、入力・登録が行われている場合は、ステップS62へ進む。
【0151】
次に、策定部50は、事故状況データを確認し(ステップS62)、事故状況データと、当日入力データ、事前入力データ、および過去対応データとを基に、各施設の運転管理計画(案)を作成し(ステップS63)、作成した運転管理計画(案)を端末Tの画面に表示させる(ステップS64)。運転管理計画(案)は、計画策定担当者が確認し、班長の承認が得られると、正式な運転管理計画として完成する。
【0152】
次に、策定部50は、運転管理計画(案)が班長に承認されたか否かを判定する(ステップS65)。承認されなかった場合(却下された場合)、計画策定担当者による編集の実施を確認し(ステップS66)、ステップS57へ戻る。承認された場合は、ステップS59へ進む。
【0153】
最後に、策定部50は、施設の運転管理を担当する施設班の各担当および関係者の端末Tへ運転管理計画の完成を通知する(ステップS67)。
【0154】
<応急復旧計画の策定の動作例>
図11に、策定部50による応急復旧計画の策定の動作例を示す。応急復旧計画の策定は、応急復旧計画策定部52により行われる。
【0155】
最初に、策定部50は、管路班により事故状況データ(特に事故関連データ)がシステムに入力・登録されているか否かを判定する(ステップS71)。入力・登録が行われていない場合は、ステップS71へ戻り、入力・登録が行われている場合は、ステップS72へ進む。
【0156】
次に、策定部50は、事故状況データを確認し(ステップS72)、事故状況データと、当日入力データ、事前入力データ、および過去対応データとを基に、各施設の応急復旧計画(案)を作成し(ステップS73)、作成した応急復旧計画(案)を端末Tの画面に表示させる(ステップS74)。応急復旧計画(案)は、計画策定担当者が確認し、班長の承認が得られると、正式な応急復旧計画として完成する。
【0157】
次に、策定部50は、応急復旧計画(案)が班長に承認されたか否かを判定する(ステップS75)。承認されなかった場合(却下された場合)、計画策定担当者による編集の実施を確認し(ステップS76)、ステップS57へ戻る。承認された場合は、ステップS59へ進む。
【0158】
最後に、策定部50は、施設の応急復旧を担当する施設班の各担当および関係者の端末Tへ応急復旧計画の完成を通知する(ステップS77)。
【0159】
<まとめ>
上述したように、応急復旧だけでなく、応急給水、施設管理をも対象とした計画策定、更には、広報資料の策定や事故記録の策定などもシステム1により自動で行われるため、総務班、給水班、施設班、管路班の各班は、熟練者が少なくても、対応する計画を手間や時間をかけずに簡単に得ることができ、当該計画に従って漏水事故対応を迅速かつ適切に進めることができ、平常給水の早期回復を早期に達成することができる。また、事故発生状況や断水状況等を住民やマスコミに通知する広報活動なども容易に行うことができる。
【0160】
以上詳述したように、実施形態によれば、漏水事故が発生した際に迅速かつ適切な事故対応を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0161】
1…漏水事故対応システム、11…職員データ入力部、12…職員データ取得部、13…職員データ記憶部、21…事故状況データ入力部、22…事故状況データ取得部、23…事故状況データ記憶部、31…事前入力データ記憶部、41…事故処理データ入力部、42…事故処理データ取得部、43…事故処理データ記憶部、44…過去対応データ記憶部、50…策定部、51…応急給水計画策定部、52…運転管理計画策定部、53…応急復旧計画策定部、54…広報資料策定部、55…事故記録策定部、60…策定データ記憶部、61…GISデータ記憶部、71…提供データ作成部、72…表示制御部、73…表示部、74…メール送信部、75…メール受信部、76…承認・編集部、77…承認・編集データ取得部、81…提供データ作成部、82…表示制御部、83…表示部、91…提供データ作成部、92…表示制御部、93…表示部、T,T’…端末。