(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027532
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20250220BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20250220BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
B60C11/12 C
B60C11/03 300A
B60C11/13 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132330
(22)【出願日】2023-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】山川 貴弘
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB11
3D131BC13
3D131BC18
3D131BC33
3D131BC34
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3D131EB47W
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3D131EB83W
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3D131EB91V
3D131EB91W
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3D131EB94V
3D131EB94W
3D131EB94X
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性を損なうことなくスノー性能を向上することを可能にしたタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部に、タイヤ周方向に沿って直線状に延在する4本の主溝により区画されたセンター陸部、中間陸部、ショルダー陸部を設け、センター陸部をセンター傾斜溝により複数のセンターブロックに区画し、中間陸部を中間傾斜溝により複数の中間ブロックに区画し、ショルダー陸部をショルダー横溝により複数のショルダーブロックに区画し、センター傾斜溝と中間傾斜溝とをタイヤ幅方向に対して逆方向に傾斜させ、センターブロックにおける中間傾斜溝の延長位置に、中間傾斜溝と同方向に延在してセンターブロック内でタイヤ赤道を超えずに終端する浅溝を設け、センターブロック、中間ブロック、およびショルダーブロックのそれぞれにタイヤ幅方向に沿って延在する2本以上のサイプを設ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部を備えたタイヤにおいて、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に沿って直線状に延在する4本の主溝と、これら4本の主溝により区画された5列の陸部とを備え、これら5列の陸部は、タイヤ赤道上に配置されたセンター陸部と、前記センター陸部のタイヤ幅方向両側に配置された中間陸部と、タイヤ幅方向最外側に位置するショルダー陸部とを含み、
前記センター陸部はタイヤ周方向に間隔をおいて形成されたセンター傾斜溝により複数のセンターブロックに区画され、前記中間陸部はタイヤ周方向に間隔をおいて形成された中間傾斜溝により複数の中間ブロックに区画され、前記ショルダー陸部はタイヤ周方向に間隔をおいて形成されたショルダー横溝により複数のショルダーブロックに区画され、前記センター傾斜溝と前記中間傾斜溝とはタイヤ幅方向に対して逆方向に傾斜し、
前記センターブロックにおける前記中間傾斜溝の延長位置に、前記中間傾斜溝と同方向に延在して前記センターブロック内でタイヤ赤道を超えずに終端する浅溝を有し、
前記センターブロック、前記中間ブロック、および前記ショルダーブロックはそれぞれタイヤ幅方向に沿って延在する2本以上のサイプがタイヤ周方向に間隔をおいて形成されていることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記サイプのうち、前記中間ブロックに形成された中間サイプは両端が前記主溝に開口し、前記センターブロックに形成されたセンターサイプは両端が前記センターブロック内で終端することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記浅溝の少なくとも一部が、終端部に向かって溝幅が狭くなる先細り形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記センター傾斜溝および前記中間傾斜溝のそれぞれの溝底に底上げ部が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記センター傾斜溝または前記中間傾斜溝の少なくとも一端に溝幅が小さい幅狭部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記サイプのうち、前記中間ブロックに形成された中間サイプは前記中間傾斜溝と同方向に延在し、前記センターブロックに形成されたセンターサイプは前記センター傾斜溝と同方向に延在し、前記ショルダーブロックに形成されたショルダーサイプは前記ショルダー横溝と同方向に延在していることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック基調のトレッドパターンを有するタイヤに関し、更に詳しくは、耐摩耗性を損なうことなくスノー性能を向上することを可能にしたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
SUV等の車両向けのタイヤの中でも、特に高速走行を想定したタイヤのカテゴリとして「ハイウェイテレーンタイヤ」が知られている。このカテゴリのタイヤは、ブロック基調のパターンを有し、種々の路面状況(ドライ路面、ウェット路面、スノー路面)に対応できることが求められる(例えば特許文献1を参照)。特に近年では、スノー性能(積雪路面における操縦安定性)が重視される傾向がある。例えば、溝面積を大きくすれば雪を噛み込みやすくなりスノー性能を向上できるが、前述のように、このカテゴリのタイヤはブロック基調であるため、溝面積が拡大すると陸部の剛性が低下しやすく、十分な耐摩耗性を確保することが難しい面がある。そのため、耐摩耗性を損なうことなく、スノー性能を向上するための対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐摩耗性を損なうことなくスノー性能を向上することを可能にしたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明のタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部を備えたタイヤにおいて、前記トレッド部は、タイヤ周方向に沿って直線状に延在する4本の主溝と、これら4本の主溝により区画された5列の陸部とを備え、これら5列の陸部は、タイヤ赤道上に配置されたセンター陸部と、前記センター陸部のタイヤ幅方向両側に配置された中間陸部と、タイヤ幅方向最外側に位置するショルダー陸部とを含み、前記センター陸部はタイヤ周方向に間隔をおいて形成されたセンター傾斜溝により複数のセンターブロックに区画され、前記中間陸部はタイヤ周方向に間隔をおいて形成された中間傾斜溝により複数の中間ブロックに区画され、前記ショルダー陸部はタイヤ周方向に間隔をおいて形成されたショルダー横溝により複数のショルダーブロックに区画され、前記センター傾斜溝と前記中間傾斜溝とはタイヤ幅方向に対して逆方向に傾斜し、前記センターブロックにおける前記中間傾斜溝の延長位置に、前記中間傾斜溝と同方向に延在して前記センターブロック内でタイヤ赤道を超えずに終端する浅溝を有し、前記センターブロック、前記中間ブロック、および前記ショルダーブロックはそれぞれタイヤ幅方向に沿って延在する2本以上のサイプがタイヤ周方向に間隔をおいて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のタイヤは、上述のようにトレッドパターンが構成されるため、耐摩耗性を損なうことなくスノー性能を向上することができる。具体的には、4本の主溝が直線状に延在するため、各ブロックの幅方向端部の剛性が確保でき、耐摩耗性や耐偏摩耗性を確保することができる。センター陸部および中間陸部を区画する溝(センター傾斜溝、中間傾斜溝)がタイヤ幅方向に対して傾斜しており、更にセンター傾斜溝と中間傾斜溝とが逆方向に傾斜しているため、スノー性能を効果的に高めることができる。中間傾斜溝の延長位置に中間傾斜溝と同方向に延在する浅溝が設けられるため、中間傾斜溝および浅溝が一連の溝として機能し、スノー性能を効果的に向上することができる。一方で、浅溝は主溝よりも溝深さが小さく且つセンターブロック内でタイヤ赤道を超えずに終端するため、浅溝を設けることによるブロック剛性の低下を抑制し、耐摩耗性を確保することができる。各ブロックにタイヤ幅方向に沿って延在する2本以上のサイプが設けられるためスノー性能を向上することができる。これらの協働により、耐摩耗性およびスノー性能を高度に両立することができる。
【0007】
本発明においては、サイプのうち、中間ブロックに形成された中間サイプは両端が主溝に開口し、センターブロックに形成されたセンターサイプは両端がセンターブロック内で終端することが好ましい。即ち、浅溝が形成されるセンターブロックについてはブロック剛性を確保するためにサイプ(センターサイプ)をブロック内で終端させ、浅溝が形成されない中間ブロックについてはスノー性能を十分に得るためにサイプ(中間サイプ)を主溝に開口させることで、スノー性能と耐摩耗性を両立するには有利になる。これに加えて、前述のサイプの組み合わせ(ブロック内で終端するセンターサイプと主溝に開口する中間サイプ)によりセンターブロックと中間ブロックとの剛性差が抑制され、耐摩耗性を効果的に確保することができる。
【0008】
本発明においては、浅溝の少なくとも一部が、終端部に向かって溝幅が狭くなる先細り形状を有することが好ましい。このように浅溝が先細り形状を有することで、浅溝を形成することによるセンターブロックの剛性低下を抑制することができ、耐摩耗性を確保するには有利になる。
【0009】
本発明においては、センター傾斜溝および中間傾斜溝のそれぞれの溝底に底上げ部を設けることが好ましい。このように底上げ部を設けることで、溝面積を減少させずにブロック剛性を維持することができ、スノー性能および耐摩耗性を両立するには有利になる。
【0010】
本発明においては、センター傾斜溝または前記中間傾斜溝の少なくとも一端に溝幅が小さい幅狭部を有することが好ましい。このように各傾斜溝において主溝に連通する部位の溝幅を狭めることでブロック剛性を確保することができる。このとき各種溝の中央部(幅狭部以外)においては溝幅が確保されるのでスノー性能も十分に確保できるので、スノー性能および耐摩耗性を両立するには有利になる。
【0011】
本発明においては、サイプのうち、中間ブロックに形成された中間サイプは中間傾斜溝と同方向に延在し、センターブロックに形成されたセンターサイプはセンター傾斜溝と同方向に延在し、ショルダーブロックに形成されたショルダーサイプはショルダー横溝と同方向に延在していることが好ましい。このように各ブロックにおいて傾斜溝とサイプとを同法に傾斜させることでブロック剛性を確保することができ、耐摩耗性を維持するには有利になる。
【0012】
本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましいが、非空気式タイヤであってもよい。空気入りタイヤの場合は、その内部に空気、窒素等の不活性ガスまたはその他の気体を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態からなるタイヤの子午線断面図である。
【
図2】本発明の実施形態からなるタイヤのトレッド面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
本発明のタイヤは、
図1に示すような空気入りタイヤである場合、路面に当接するトレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
図1において、符号CLはタイヤ赤道、符号Eは接地端を示す。尚、
図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、
図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
【0016】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。カーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(
図1では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層7の外周側には少なくとも1層(
図1では2層)のベルト補強層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°~5°に設定されている。
【0017】
本発明は、後述のようにタイヤのトレッド部1の表面に形成されるトレッドパターンに関するので、タイヤの基本構造(断面構造)は上述の一般的な構造に限定されない。また、以降の説明は
図1等に示す空気入りタイヤに基づいて行うが、本発明は、路面に当接する表面(空気入りタイヤにおけるトレッド部1の表面に相当する部位)を備えていれば、非空気式タイヤを含む各種タイヤに適用することができる。
【0018】
本発明のタイヤにおけるトレッド部1の表面には、
図2に示すように、タイヤ周方向に沿って直線状に延在する4本の主溝11が設けられる。以降の説明では、4本の主溝11のうちタイヤ赤道CLの両側に配置される一対を内側主溝11i、各内側主溝11iのタイヤ幅方向外側に配置される一対を外側主溝11oという場合がある。各主溝11の深さは特に限定されないが例えば7.0mm~16.0mmに設定することができる。このように4本の主溝11が直線状に延在するため、後述の陸部12(ブロック)の幅方向端部の剛性が確保でき、耐摩耗性や耐偏摩耗性を確保することができる。
【0019】
これら4本の主溝11により、タイヤ周方向に沿って延在する5列の陸部12が区画される。具体的には、一対の内側主溝11iの間に区画されたセンター陸部12cと、内側主溝11iと外側主溝11oとの間に区画された中間陸部12mと、外側主溝11oのタイヤ幅方向外側に区画されたショルダー陸部12sとが区画される。言い換えると、センター陸部12cはタイヤ赤道CL上に配置された陸部であり、中間陸部12mはセンター陸部12cのタイヤ幅方向両側に内側主溝11iを挟んで隣り合うように配置された陸部であり、ショルダー陸部12sは接地端Eを含むタイヤ幅方向最外側に配置された陸部である。
【0020】
センター陸部12cはタイヤ周方向に間隔をおいて形成されたセンター傾斜溝13cにより複数のセンターブロック14cに区画される。中間陸部12mはタイヤ周方向に間隔をおいて形成された中間傾斜溝13mにより複数の中間ブロック14mに区画される。ショルダー陸部12sはタイヤ周方向に間隔をおいて形成されたショルダー横溝13sにより複数のショルダーブロック14sに区画される。センター傾斜溝13cは、タイヤ幅方向に対して傾斜して延在し、その両端がセンター陸部12cの両側に配置された一対の内側主溝11iのそれぞれに開口する溝である。中間傾斜溝13mは、タイヤ幅方向に対して傾斜して延在し、その両端が中間陸部12mの両側に配置された内側主溝11iおよび外側主溝11oのそれぞれに開口する溝である。ショルダー横溝13sは、タイヤ幅方向に沿って延在し、一端が外側主溝11oに開口し、他端が接地端Eを超えてタイヤ幅方向外側に開口する溝である。センター傾斜溝13cと中間傾斜溝13mとはタイヤ幅方向に対して逆方向に傾斜する。以降の説明では、センター傾斜溝13cと中間傾斜溝13mとを総称して「傾斜溝」と言う場合がある。このようにセンター傾斜溝13cおよび中間傾斜溝13mがタイヤ幅方向に対して傾斜しており、更にセンター傾斜溝13cと中間傾斜溝13mとが逆方向に傾斜しているため、スノー性能を効果的に高めることができる。
【0021】
各傾斜溝の傾斜角度はタイヤ幅方向に対して例えば10°~50°に設定することができる。具体的には、センター傾斜溝13cのタイヤ幅方向に対する傾斜角度θcは好ましくは10°~50°、より好ましくは10°~30°に設定することができる。中間傾斜溝13mのタイヤ幅方向に対する傾斜角度θmは、前述のセンター傾斜溝13cの傾斜方向を正(+)の値で表すと、好ましくは-10°~-50°、より好ましくは-10°~-30°に設定することができる。ショルダー横溝13sはこれら傾斜溝と異なりタイヤ幅方向に沿って延在するとよく、タイヤ幅方向に対する角度は0°±15°に設定することができる。尚、傾斜角度θcと傾斜角度θmとは、傾斜方向(正負)が逆転した同じ角度であってもよいが、傾斜角度θmの絶対値を傾斜角度θcの絶対値よりも大きくすることが好ましい。このように中間傾斜溝13mがセンター傾斜溝13cよりもタイヤ幅方向に対して大きく傾斜することでスノー性能を効果的に高めることができる。
【0022】
尚、傾斜角度θc、θmはそれぞれ、
図3に示すように、各傾斜溝の開口端における溝幅中心どうしを結んだ直線がタイヤ幅方向に対して成す角度である。ショルダー横溝13sの角度については、傾斜角度θc、θmと同様に、主溝11に対する開口端における溝幅中心と、接地端E位置における溝幅中心とを結んだ直線がタイヤ幅方向に対して成す角度として測定される。
【0023】
各傾斜溝の溝深さは、主溝11の溝深さの好ましくは20%~100%、より好ましくは50%~100%に設定するとよい。ショルダー横溝13sの溝深さは主溝11の溝深さの好ましくは50%~100%、より好ましくは70%~100%に設定するとよい。
【0024】
センターブロック14cにおける中間傾斜溝13mの延長位置には、中間傾斜溝13mと同方向に延在してセンターブロック14c内でタイヤ赤道CLを超えずに終端する浅溝15が形成される。浅溝15は、主溝11や傾斜溝(特に中間傾斜溝13m)よりも溝深さが小さい溝であり、その溝深さは主溝11の溝深さの好ましくは10%~80%、より好ましくは30%~60%に設定される。中間傾斜溝13mの延長位置とは、中間傾斜溝13mの溝壁の延長線(
図3の破線)の間の領域(
図3の斜線部)と開口端の少なくとも一部が重複する位置である。このように浅溝15が設けられることで、中間傾斜溝13mおよび浅溝15が一連の溝として機能し、スノー性能を効果的に向上することができる。一方で、浅溝15は主溝11よりも溝深さが小さく且つセンターブロック14c内でタイヤ赤道CLを超えずに終端するため、浅溝15を設けることによるブロック剛性の低下を抑制し、耐摩耗性を確保することができる。
【0025】
センターブロック14c、中間ブロック14m、およびショルダーブロック14sはそれぞれタイヤ幅方向に沿って延在する2本以上、好ましくは2本~4本のサイプ16がタイヤ周方向に間隔をおいて形成される。サイプ16の形状は特に限定されないが、図示のように各ブロックの踏面上でジグザグ形状を有していることが好ましい。また、これらサイプ16の溝幅は例えば1.5mm以下、これらサイプ16の溝深さは主溝11の溝深さの例えば50%~100%に設定することができる。このように各ブロックに適度にサイプ16が設けられるためスノー性能を効果的に向上することができる。
【0026】
本発明のタイヤは、上述のようにトレッドパターンが構成されるため、各要素による上述の効果(4本の直線状の主溝11による耐摩耗性の確保、センター傾斜溝13cおよび中間傾斜溝13mによるスノー性能の向上、浅溝15による耐摩耗性の維持およびスノー性能の向上、サイプ16によるスノー性能の向上)の協働により、耐摩耗性およびスノー性能を高度に両立することができる。
【0027】
各ブロックに形成されるサイプ16のうち、中間ブロック14mに形成された中間サイプ16mは両端が主溝に開口しているとよい。一方で、センターブロック14cに形成されたセンターサイプ16cは両端がセンターブロック14c内で終端しているとよい。言い換えると、浅溝15が形成されるセンターブロック14cについてはブロック剛性を確保するためにサイプ16(センターサイプ16c)はブロック内で終端しているとよく、浅溝15が形成されない中間ブロック14mについてはスノー性能を十分に得るためにサイプ16(中間サイプ16m)を主溝11に開口させるとよい。これにより、スノー性能と耐摩耗性を両立するには有利になる。これに加えて、前述のサイプ16の組み合わせ(ブロック内で終端するセンターサイプ16cと主溝11に開口する中間サイプ16m)によりセンターブロック14cと中間ブロック14mとの剛性差が抑制され、耐摩耗性を効果的に確保することができる。サイプ16の開口/終端の関係が上述の組み合わせから外れると、スノー性能の向上とブロック剛性の確保とをバランスよく達成しにくくなり、これら性能を十分に両立することが難しくなる。
【0028】
各ブロックに形成されるサイプ16は各ブロックを区画する溝(センター傾斜溝13c、中間傾斜溝13m、ショルダー横溝13s)と同方向に延在していると良い。詳述すると、中間ブロック14mに形成された中間サイプ16mは中間傾斜溝13mと同方向に延在し、センターブロック14cに形成されたセンターサイプ16cはセンター傾斜溝13cと同方向に延在し、ショルダーブロック14sに形成されたショルダーサイプ16sはショルダー横溝13sと同方向に延在しているとよい。このように各ブロックにおいて幅方向に延在する溝とサイプ16とが略平行に延長することでブロック剛性を確保することができ、耐摩耗性を維持するには有利になる。これら溝とサイプ16の傾斜方向が逆向きであると、ブロック剛性を良好に維持することが難しくなる。尚、各ブロックにおいて幅方向に延在する溝(センター傾斜溝13c、中間傾斜溝13m、ショルダー横溝13s)とサイプ(センターサイプ16c、中間サイプ16m、ショルダーサイプ16s)との角度差はそれぞれ好ましくは0°~10°、より好ましくは0°~5°であるとよい。
【0029】
浅溝15の形状は特に限定されないが、複数の浅溝15のうちの少なくとも一部が、終端部に向かって溝幅が狭くなる先細り形状を有することが好ましい。先細り形状としては、溝の先端に向かって溝幅が収束する構造(V字形状の端部)や、図示の例のように、終端部に溝幅が狭い幅狭部を備え、且つ、浅溝の主要部から幅狭部に向かって溝幅が徐々に減少する接続部とを備えた形状であるとよい。図示の例では、センター陸部に隣接する主溝11の一方に開口し、タイヤ周方向に間隔をおいて配列される複数の浅溝15において、1本おきに先細り形状の浅溝15が設けられている。言い換えると、先細り形状の浅溝15と、溝幅が一定である浅溝15とが、タイヤ周方向に交互に配列されている。また、図示の例では、1つのセンターブロック14cにおいて、タイヤ赤道CLの一方側の主溝11に開口する浅溝15が先細り形状である場合、他方側の主溝11に開口する浅溝15は溝幅が一定の浅溝15である。このように先細り形状の浅溝15を設けることで、浅溝15を形成することによるセンターブロックの剛性低下を抑制することができ、耐摩耗性を確保するには有利になる。
【0030】
本発明においては、センター傾斜溝13cおよび中間傾斜溝13mのそれぞれの溝底に底上げ部Aを設けることが好ましい。底上げ部Aとは、各溝の一部において溝底が他の部分よりも隆起した箇所である。底上げ部Aは、各傾斜溝の主溝11に連通する位置に設けるとよい。底上げ部Aにおける底上げ量は主溝11の深さの好ましくは20%~80%、より好ましくは40%~60%であるとよい。尚、底上げ量とは、底上げ部Aが形成された溝の溝底から、底上げ部Aの頂面までの隆起高さである。このように底上げ部Aを設けることで、溝面積を減少させずにブロック剛性を維持することができ、スノー性能および耐摩耗性を両立するには有利になる。底上げ量が主溝11の深さの20%未満であると、底上げ部Aが存在しない場合と実質的な差がなくなり、底上げ部Aによる効果が十分に見込めなくなる。底上げ量が主溝11の深さの80%を超えると、底上げ部Aが設けられた領域において溝深さが十分に確保できなくなるためスノー性能を十分に確保することが難しくなる。
【0031】
センター傾斜溝13cや中間傾斜溝13mの溝幅は一定である必要はなく、各溝の一端に溝幅が小さい幅狭部Bを備えていてもよい。特に、複数のセンター傾斜溝13cの少なくとも一部や、複数の中間傾斜溝13mの少なくとも一部が、一端に幅狭部Bを備えた溝であるとよい。図示の例では、すべての中間傾斜溝13mが一端に幅狭部Bを備えている。尚、図示の例では、内側主溝11iに開口する端部に幅狭部Bを備えた中間傾斜溝13mと、外側主溝11oに開口する端部に幅狭部Bを備えた中間傾斜溝13mとがタイヤ周方向に交互に配列されている。図示の例では、センター傾斜溝13cには幅狭部Bは設けられていないが、センター傾斜溝13cの一部または全部に幅狭部Bを設けた仕様にすることもできる。このように各傾斜溝において主溝11に連通する部位の溝幅を狭めることでブロック剛性を確保することができる。このとき各主溝11の中央部(幅狭部B以外)においては溝幅が確保されるのでスノー性能も十分に確保できるので、スノー性能および耐摩耗性を両立するには有利になる。幅狭部Bにおける溝幅は、同じ溝の主要部(他の部分)における溝幅の好ましくは20%~80%、より好ましくは40%~60%であるとよい。尚、幅狭部を設けるにあたって、幅狭部を設ける溝の一方の溝壁は、幅狭部と主要部とで共通である(直線状に延在する)とよい。即ち、幅狭部を設ける溝の他方の溝壁は、幅狭部と主要部との間に、主要部から幅狭部に向かって溝幅が漸減するように屈曲した部分を備えるとよい。また、幅狭部Bと前述の底上げ部Aとはいずれも主溝11に開口する端部に設けるのが好ましいので、これらが同じ位置に設けられた仕様にすることもできる。
【0032】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0033】
タイヤサイズが265/70R17 115Hであり、
図1に例示する基本構造(断面構造)を有し、主溝の本数、主溝の形状、センター傾斜溝の傾斜角度θc、中間傾斜溝の傾斜角度θm、各ブロック(センターブロック、中間ブロック、ショルダーブロック)におけるサイプ本数、センターサイプの形状、中間サイプの形状、浅溝の形状、各傾斜溝(センター傾斜溝、中間傾斜溝)における底上げ部の有無、各傾斜溝(センター傾斜溝、中間傾斜溝)における幅狭部の有無、各ブロックにおける溝(センター傾斜溝、中間傾斜溝、ショルダー横溝)とサイプとの角度差を、それぞれ表1のように設定した従来例1、比較例1、実施例1~6の8種類の空気入りタイヤを作製した。
【0034】
表1において、「主溝の形状」の欄については、主溝が主方向に沿って直線状に延在する場合を「直線」と表示した。「センター傾斜溝の角度θc」および「中間傾斜溝の角度θm」の欄について、センター傾斜溝の角度θcを正(+)の値で表示した(負(-)の値はセンター傾斜溝と逆方向に傾斜していることを意味する)。「センタ―サイプの形状」および「中間サイプの形状」の欄について、両端が主溝に開口する場合を「開口」、両端がブロック内で終端する場合を「終端」と表示した。「浅溝の形状」の欄について、浅溝の溝幅が一定である場合を「幅一定」、浅溝が先細り形状である場合を「先細り」と表示した。「底上げ部の有無」および「幅狭部の有無」の欄について、「有」と表示された例については、
図2に示すように各溝に底上げ部や幅狭部が設けられたことを意味する。
【0035】
これら空気入りタイヤについて、下記の評価方法により、スノー性能および耐摩耗性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0036】
スノー性能
各試験タイヤをリムサイズ17×8Jのホイールに組み付けて、フロントタイヤの空気圧を230kPa、リアタイヤの空気圧を230kPaとして試験車両(四輪駆動のSUV)に装着し、雪上路面からなるテストコースにおいて操縦安定性についてテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどスノー性能に優れることを意味する。
【0037】
耐摩耗性
各試験タイヤをリムサイズ17×8Jのホイールに組み付けて、フロントタイヤの空気圧を230kPa、リアタイヤの空気圧を230kPaとして試験車両(四輪駆動のSUV)に装着し、テストコースにてテストドライバーによる試験走行を実施し、全摩耗までの走行距離〔単位:km〕を測定した。評価結果は、従来例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど全摩耗までの走行距離が長く、耐摩耗性に優れることを意味する。
【0038】
【0039】
表1から明らかなように、実施例1~6の空気入りタイヤは、従来例1と比較してスノー性能および耐摩耗性能を向上し、これら性能をバランスよく両立した。一方、比較例1は、センターブロックにおける中間傾斜溝の延長位置に浅溝が設けられず、また、各ブロックにサイプが形成されないため、スノー性能を低下した。
【0040】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1] タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部を備えたタイヤにおいて、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に沿って直線状に延在する4本の主溝と、これら4本の主溝により区画された5列の陸部とを備え、これら5列の陸部は、タイヤ赤道上に配置されたセンター陸部と、前記センター陸部のタイヤ幅方向両側に配置された中間陸部と、タイヤ幅方向最外側に位置するショルダー陸部とを含み、
前記センター陸部はタイヤ周方向に間隔をおいて形成されたセンター傾斜溝により複数のセンターブロックに区画され、前記中間陸部はタイヤ周方向に間隔をおいて形成された中間傾斜溝により複数の中間ブロックに区画され、前記ショルダー陸部はタイヤ周方向に間隔をおいて形成されたショルダー横溝により複数のショルダーブロックに区画され、前記センター傾斜溝と前記中間傾斜溝とはタイヤ幅方向に対して逆方向に傾斜し、
前記中間傾斜溝の延長位置に、前記中間傾斜溝と同方向に延在して前記センターブロック内でタイヤ赤道を超えずに終端する浅溝を有し、
前記センターブロック、前記中間ブロック、および前記ショルダーブロックはそれぞれタイヤ幅方向に沿って延在する2本以上のサイプがタイヤ周方向に間隔をおいて形成されていることを特徴とするタイヤ。
発明[2] 前記サイプのうち、前記中間ブロックに形成された中間サイプは両端が前記主溝に開口し、前記センターブロックに形成されたセンターサイプは両端が前記センターブロック内で終端することを特徴とする発明[1]に記載のタイヤ。
発明[3] 前記浅溝の少なくとも一部が、終端部に向かって溝幅が狭くなる先細り形状を有することを特徴とする発明[1]または[2]に記載のタイヤ。
発明[4] 前記センター傾斜溝および前記中間傾斜溝のそれぞれの溝底に底上げ部が設けられたことを特徴とする発明[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤ。
発明[5] 前記センター傾斜溝または前記中間傾斜溝の少なくとも一端に溝幅が小さい幅狭部を有することを特徴とする発明[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤ。
発明[6] 前記サイプのうち、前記中間ブロックに形成された中間サイプは前記中間傾斜溝と同方向に延在し、前記センターブロックに形成されたセンターサイプは前記センター傾斜溝と同方向に延在し、前記ショルダーブロックに形成されたショルダーサイプは前記ショルダー横溝と同方向に延在していることを特徴とする発明[1]~[5]のいずれかに記載のタイヤ。
前記サイプのうち、前記中間ブロックに形成された中間サイプは両端が前記主溝に開口し、前記センターブロックに形成されたセンターサイプは両端が前記センターブロック内で終端することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
前記サイプのうち、前記中間ブロックに形成された中間サイプは前記中間傾斜溝と同方向に延在し、前記センターブロックに形成されたセンターサイプは前記センター傾斜溝と同方向に延在し、前記ショルダーブロックに形成されたショルダーサイプは前記ショルダー横溝と同方向に延在していることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
上記目的を達成するための本発明のタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部を備えたタイヤにおいて、前記トレッド部は、タイヤ周方向に沿って直線状に延在する4本の主溝と、これら4本の主溝により区画された5列の陸部とを備え、これら5列の陸部は、タイヤ赤道上に配置されたセンター陸部と、前記センター陸部のタイヤ幅方向両側に配置された中間陸部と、タイヤ幅方向最外側に位置するショルダー陸部とを含み、前記センター陸部はタイヤ周方向に間隔をおいて形成されたセンター傾斜溝により複数のセンターブロックに区画され、前記中間陸部はタイヤ周方向に間隔をおいて形成された中間傾斜溝により複数の中間ブロックに区画され、前記ショルダー陸部はタイヤ周方向に間隔をおいて形成されたショルダー横溝により複数のショルダーブロックに区画され、前記センター傾斜溝と前記中間傾斜溝とはタイヤ幅方向に対して逆方向に傾斜し、前記センターブロックにおける前記中間傾斜溝の延長位置に、前記中間傾斜溝と同方向に延在して前記センターブロック内でタイヤ赤道を超えずに終端する浅溝を有し、前記センターブロック、前記中間ブロック、および前記ショルダーブロックはそれぞれタイヤ幅方向に沿って延在する2本以上のサイプがタイヤ周方向に間隔をおいて形成され、前記センター傾斜溝および前記中間傾斜溝のそれぞれの溝底に底上げ部が設けられ、前記センター傾斜溝および/または前記中間傾斜溝の少なくとも一端に溝幅が小さい幅狭部を有し、前記幅狭部および前記底上げ部が共に前記主溝に開口する端部に配置されたことを特徴とする。