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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027537
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10D 30/68 20250101AFI20250220BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20250220BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20250220BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
H01L29/78 371
H10B43/27
H01L21/318 B
H01L21/316 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132347
(22)【出願日】2023-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】野口 将希
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 達典
(72)【発明者】
【氏名】相宗 史記
【テーマコード(参考)】
5F058
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F058BA20
5F058BC03
5F058BC09
5F058BF02
5F058BF24
5F058BF30
5F058BF36
5F058BF62
5F058BF63
5F058BF73
5F058BH11
5F058BH12
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP76
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER14
5F083ER19
5F083ER22
5F083GA10
5F083JA03
5F083JA04
5F083JA05
5F083JA39
5F083KA01
5F083KA05
5F083LA12
5F083LA16
5F083MA06
5F083MA16
5F083PR03
5F083PR05
5F083PR21
5F083PR22
5F083PR40
5F083ZA28
5F101BA45
5F101BB05
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH01
5F101BH02
5F101BH13
5F101BH14
5F101BH15
(57)【要約】

【課題】書き込み特性を向上させることができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態による半導体装置は、積層体と、半導体層と、第1絶縁膜と、第1電荷蓄積膜と、第2電荷蓄積膜と、第2絶縁膜と、を備える。積層体は、電極層と絶縁層とが交互に第1方向に積層される。半導体層は、積層体内に第1方向に沿って配置される。第1絶縁膜は、積層体と半導体層との間に第1方向に沿って配置される。第1電荷蓄積膜は、積層体と第1絶縁膜との間に第1方向に沿って配置される。第2電荷蓄積膜は、電極層と第1電荷蓄積膜との間に配置され、第1方向において絶縁膜と接する。第2絶縁膜は、電極層と第2電荷蓄積膜との間に配置される。第2電荷蓄積膜は、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、および、ジルコニウム(Zr)の少なくとも1つを含む、酸化膜、窒化膜、または、酸窒化膜である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極層と絶縁層とが交互に第1方向に積層された積層体と、
前記積層体内に前記第1方向に沿って配置された半導体層と、
前記積層体と前記半導体層との間に前記第1方向に沿って配置された第1絶縁膜と、
前記積層体と前記第1絶縁膜との間に前記第1方向に沿って配置された第1電荷蓄積膜と、
前記電極層と前記第1電荷蓄積膜との間に配置され、前記第1方向において絶縁膜と接する第2電荷蓄積膜と、
前記電極層と前記第2電荷蓄積膜との間に配置された第2絶縁膜と、
を備え、
前記第2電荷蓄積膜は、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、および、ジルコニウム(Zr)の少なくとも1つを含む、酸化膜、窒化膜、または、酸窒化膜である、半導体装置。
【請求項2】
前記酸窒化膜は、1%以上20%以下の窒素(N)を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2電荷蓄積膜の前記積層体に対向する第1面は、前記積層体に向かって凸形状を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2電荷蓄積膜の前記積層体に対向する第1面は、前記第1方向に沿って平坦であり、
前記第2電荷蓄積膜の前記半導体層に対向する第2面は、前記第1方向に沿って平坦である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2電荷蓄積膜の前記半導体層に対向する第2面、並びに、前記第2電荷蓄積膜に対応する領域における前記第1電荷蓄積膜、前記第1絶縁膜、および、前記半導体層のラフネスは、0.5nm以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1電荷蓄積膜は、SiNを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1電荷蓄積膜は、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、および、ジルコニウム(Zr)の少なくとも1つを含む、酸化膜、窒化膜、または、酸窒化膜である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
犠牲層と絶縁層とが交互に第1方向に積層された積層体を形成し、
前記積層体を前記第1方向に貫通するホールを形成し、
前記ホールの内側面に絶縁体の第1膜を形成し、
前記第1膜の上に第1電荷蓄積膜を形成し、
前記第1電荷蓄積膜の上に絶縁体の第2膜を形成し、
前記第2膜の上に半導体層を形成し、
前記第1膜が露出するように前記犠牲層を除去し、
前記犠牲層が除去された領域における前記第1膜を除去することにより、前記第1電荷蓄積膜を露出させ、
露出した前記第1電荷蓄積膜の上に第2電荷蓄積膜を選択的に形成し、
前記第2電荷蓄積膜の上に絶縁体の第3膜を形成する、
ことを具備し、
前記第2電荷蓄積膜は、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、および、ジルコニウム(Zr)の少なくとも1つを含む、酸化膜、窒化膜、または、酸窒化膜である、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2電荷蓄積膜を選択的に形成した後、前記第2電荷蓄積膜を酸化させる、ことをさらに具備する、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
犠牲層と絶縁層とが交互に第1方向に積層された積層体を形成し、
前記積層体を前記第1方向に貫通するホールを形成し、
前記ホールの内側面の前記絶縁層の上に絶縁体の第3膜を選択的に形成し、
前記犠牲層および前記第3膜の上に、絶縁体の第4膜を形成し、
第3電荷蓄積膜の成膜およびエッチングを繰り返すことにより、前記第4膜の上に前記第3電荷蓄積膜を形成し、
前記第3膜に対応する領域の前記第4膜が露出するまで、前記第3電荷蓄積膜を除去し、
前記第4膜および前記第3電荷蓄積膜の上に第4電荷蓄積膜を形成し、
前記第4電荷蓄積膜の上に絶縁体の第5膜を形成し、
前記第5膜の上に半導体層を形成する、
ことを具備し、
前記第3電荷蓄積膜は、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、および、ジルコニウム(Zr)の少なくとも1つを含む、酸化膜、窒化膜、または、酸窒化膜である、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記エッチングは、原子層エッチングである、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第3電荷蓄積膜の成膜およびエッチングを、in-situで繰り返すことにより、前記第4膜の上に前記第3電荷蓄積膜を形成する、ことを具備する、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記絶縁層の上に前記第3膜を選択的に形成することは、前記絶縁層から前記第3膜を選択的に成長させることを具備する、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記絶縁層の上に前記第3膜を選択的に形成することは、
前記ホールの内側面の前記犠牲層の上に絶縁体の第6膜を選択的に形成し、
前記絶縁層および前記第6膜の上に絶縁体の第7膜を形成し、
前記第6膜が露出するまで前記第7膜を除去し、
前記第6膜を選択的に除去し、
前記第7膜を酸化することにより、前記第3膜を形成する、
ことを具備する、請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置としてメモリセルを3次元に配置したNANDフラッシュメモリが知られている。このNANDフラッシュメモリでは、複数の電極層と絶縁層が交互に積層された積層体にこの積層体を貫通するメモリホールが設けられている。このメモリホール内に電荷蓄積層と半導体層を設けることで、複数のメモリセルが直列に接続されたメモリストリングが形成される。電荷蓄積層に保持される電荷の量を制御することでメモリセルにデータが記憶される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0265381号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0327898号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0399011号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2021/0035801号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
書き込み特性を向上させることができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態による半導体装置は、積層体と、半導体層と、第1絶縁膜と、第1電荷蓄積膜と、第2電荷蓄積膜と、第2絶縁膜と、を備える。積層体は、電極層と絶縁層とが交互に第1方向に積層される。半導体層は、積層体内に第1方向に沿って配置される。第1絶縁膜は、積層体と半導体層との間に第1方向に沿って配置される。第1電荷蓄積膜は、積層体と第1絶縁膜との間に第1方向に沿って配置される。第2電荷蓄積膜は、電極層と第1電荷蓄積膜との間に配置され、第1方向において絶縁膜と接する。第2絶縁膜は、電極層と第2電荷蓄積膜との間に配置される。第2電荷蓄積膜は、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、および、ジルコニウム(Zr)の少なくとも1つを含む、酸化膜、窒化膜、または、酸窒化膜である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】第1実施形態の半導体装置のメモリセルの模式断面図。
図1B】第1実施形態の半導体装置のメモリセルの模式断面図。
図2】第1実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
図3】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図4】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図5】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図6】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図7】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図8】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図9】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図10】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図11】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図12】第2比較例による半導体装置の製造工程を示す断面図。
図13】第2比較例の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図14】第2実施形態の半導体装置のメモリセルの模式断面図。
図15】第2実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
図16】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図17】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図18】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図19】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図20】第2実施形態の第1変形例による半導体装置の製造工程を示す断面図。
図21】第2実施形態の第1変形例の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図22】第2実施形態の第2変形例の半導体装置のメモリセルの模式断面図。
図23】第2実施形態の第3変形例の半導体装置のメモリセルの模式断面図。
図24】第3実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
図25】第3実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図26】第3実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図27】第3実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図28】第3実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図29】第3実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
図30】第3実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
第1実施形態の半導体装置は、3次元NANDフラッシュメモリである。
【0009】
図1Aおよび図1Bは、第1実施形態の半導体装置のメモリセルアレイ100の模式断面図である。図1Aおよび図1Bは、メモリセルアレイ100の中の、1本のメモリストリングの中の複数のメモリセルMCの断面を示す。
【0010】
図1Aは、メモリセルアレイ100のyz断面図である。図1Aは、図1BのBB’断面である。図1Bは、メモリセルアレイ100のxy断面図である。図1Bは、図1AのAA’断面である。図1A中、破線で囲まれた領域が、1個のメモリセルMCである。
【0011】
メモリセルアレイ100は、図1Aおよび図1Bに示すように、複数のワード線40、半導体層32、複数の絶縁層21、トンネル絶縁膜30、電荷蓄積膜28、複数の電荷蓄積膜29、複数のブロック膜37a、複数のブロック膜37、コア絶縁膜33、カバー膜26を備える。複数のワード線40と複数の絶縁層21が積層体20を構成する。
【0012】
メモリセルアレイ100は、例えば、図示しない半導体基板の上に設けられる。半導体基板は、x方向及びy方向に平行な表面を有する。
【0013】
ワード線40と絶縁層21は、半導体基板の上に、z方向(第1の方向)に交互に積層される。ワード線40は、z方向に離間して配置される。ワード線40は、互いに離間してz方向に繰り返し配置される。複数のワード線40と複数の絶縁層21が積層体20を構成する。ワード線40は、メモリセルトランジスタの制御電極として機能する。
【0014】
ワード線40は、板状の導電体である。ワード線40は、例えば、金属、金属窒化物、金属炭化物、又は、半導体である。ワード線40は、例えば、タングステン(W)である。ワード線40のz方向の厚さは、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0015】
絶縁層21は、ワード線40とワード線40を分離する。絶縁層21は、ワード線40とワード線40を電気的に分離する。
【0016】
絶縁層21、例えば、酸化物、酸窒化物、又は、窒化物である。絶縁層21は、例えば、酸化シリコンである。絶縁層21のz方向の厚さは、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0017】
半導体層32は、積層体20の中に設けられる。半導体層32は、z方向に延びる。半導体層32は、半導体基板の表面に垂直な方向に延びる。
【0018】
半導体層32は、積層体20を貫通して設けられる。半導体層32は、複数のワード線40に囲まれる。半導体層32は、例えば、円筒状である。半導体層32は、メモリセルトランジスタのチャネルとして機能する。
【0019】
半導体層32は、例えば、多結晶の半導体である。半導体層32は、例えば、多結晶シリコンである。
【0020】
トンネル絶縁膜30は、半導体層32とワード線40との間に設けられる。トンネル絶縁膜30は、半導体層32と複数のワード線40との間に設けられる。トンネル絶縁膜30は、半導体層32と電荷蓄積膜29との間に設けられる。トンネル絶縁膜30は、半導体層32と電荷蓄積膜28との間に設けられる。
【0021】
トンネル絶縁膜30は、ワード線40と半導体層32との間に印加される電圧に応じて電荷を通過させる機能を有する。
【0022】
トンネル絶縁膜30は、例えば、シリコン(Si)、及び、酸素(O)を含む。トンネル絶縁膜30は、例えば、シリコン(Si)、酸素(O)、及び、窒素(N)を含む。
【0023】
トンネル絶縁膜30は、例えば、酸化シリコン又は酸窒化シリコンを含む。トンネル絶縁膜30は、例えば、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜、及び、酸化シリコン膜の積層膜である。
【0024】
トンネル絶縁膜30のy方向の厚さは、例えば、3nm以上8nm以下である。
【0025】
電荷蓄積膜28は、トンネル絶縁膜30と電荷蓄積膜29との間に設けられる。電荷蓄積膜28は、トンネル絶縁膜30と絶縁層21との間に設けられる。電荷蓄積膜28は、電荷蓄積膜29に接する。
【0026】
電荷蓄積膜28は、電荷蓄積膜29を気相成長で形成する際のシード膜として機能する。
【0027】
電荷蓄積膜28は、シリコン(Si)及び窒素(N)を含む。電荷蓄積膜28は、例えば、窒化シリコンを含む。電荷蓄積膜28は、例えば、窒化シリコン膜である。
【0028】
電荷蓄積膜28は、例えば、シリコン(Si)、窒素(N)、及び、酸素(O)を含む。電荷蓄積膜28は、例えば、酸窒化シリコンを含む。
【0029】
電荷蓄積膜28のy方向の厚さは、例えば、1nm以上5nm以下である。
【0030】
電荷蓄積膜29は、トンネル絶縁膜30とワード線40との間に設けられる。電荷蓄積膜29は、トンネル絶縁膜30とブロック膜37との間に設けられる。複数の電荷蓄積膜29は、それぞれ分離される。z方向に隣り合う2つの電荷蓄積膜29の間に、絶縁層21またはカバー膜26が挟まれる。
【0031】
電荷蓄積膜29は、電荷をトラップして蓄積する機能を有する。電荷は、例えば、電子である。電荷蓄積膜29に蓄積される電荷の量に応じて、メモリセルトランジスタの閾値電圧が変化する。この閾値電圧の変化を利用することで、1個のメモリセルMCがデータを記憶することが可能となる。
【0032】
例えば、メモリセルトランジスタの閾値電圧が変化することで、メモリセルトランジスタがオンする電圧が変化する。例えば、閾値電圧が高い状態をデータ“0”、閾値電圧が低い状態をデータ“1”と定義すると、メモリセルMCは“0”と“1”の1ビットデータを記憶することが可能となる。
【0033】
電荷蓄積膜29は、電荷蓄積膜28よりも高い比誘電率を有する。電荷蓄積膜29は、例えば、high-k材料を含むhigh-k膜である。
【0034】
電荷蓄積膜29は、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、および、ジルコニウム(Zr)の少なくとも1つを含む、酸化膜、窒化膜、または、酸窒化膜である。電荷蓄積膜29は、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、および、ジルコニウム(Zr)の2つ以上を含む、酸化膜、窒化膜、または、酸窒化膜でもよい。このような組成を有する膜を、「high-k膜」と称してよい。酸窒化膜は、例えば、1%以上20%以下の窒素(N)を含む。
【0035】
ブロック膜37aは、電荷蓄積膜29とブロック膜37との間に設けられる。
【0036】
ブロック膜37aは、電荷蓄積膜29とワード線40との間に流れる電流を阻止する機能を有する。
【0037】
ブロック膜37aは、例えば、酸化シリコンを含む。ブロック膜は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0038】
ブロック膜37は、ブロック膜37aとワード線40との間に設けられる。ブロック膜37は、ブロック膜37は、z方向で、絶縁層21に接する。
【0039】
ブロック膜37は、電荷蓄積膜29とワード線40との間に流れる電流を阻止する機能を有する。
【0040】
ブロック膜37は、例えば、酸化アルミニウムを含む。ブロック膜37は、例えば、酸化アルミニウム層である。
【0041】
コア絶縁膜33は、積層体20の中に設けられる。コア絶縁膜33は、z方向に延びる。コア絶縁膜33は、積層体20を貫通して設けられる。コア絶縁膜33は、半導体層32に囲まれる。コア絶縁膜33は、複数のワード線40に囲まれる。コア絶縁膜33は、柱状である。コア絶縁膜33は、例えば、円柱状である。
【0042】
コア絶縁膜33は、例えば、酸化物、酸窒化物、又は、窒化物である。コア絶縁膜33は、例えば、酸化シリコンを含む。コア絶縁膜33は、例えば、酸化シリコン層である。
【0043】
カバー膜26は、電荷蓄積膜28と絶縁層21との間に設けられる。カバー膜26は、電荷蓄積膜28及び絶縁層21に接する。カバー膜26は、例えば、シリコンと酸素を含む。カバー膜26は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0044】
カバー膜26のy方向の厚さは、例えば、3nm以上8nm以下である。
【0045】
尚、電荷蓄積膜29の詳細な構成については、図11を参照して、後で説明する。電荷蓄積膜29の組成の詳細については、後で説明する。
【0046】
第1実施形態による半導体装置について図2乃至図11を参照して説明する。この実施形態の半導体装置は、例えば以下に示す方法によって製造される。まず、図2に示すように、半導体基板10の上に絶縁層21と犠牲層22とを交互に積層する。これにより、z方向(図の上下方向)に積層された積層体20が形成される。絶縁層21は、例えばシリコン酸化層である。犠牲層22は、例えばシリコン窒化層である。
【0047】
絶縁層21と犠牲層22は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。絶縁層21の一部は層間絶縁層となる。
【0048】
次に、図3に示すように積層体20に、z方向に沿ったメモリホール24を形成する。図3以下の図面では、半導体基板10を省略している。このメモリホール24は絶縁層21と犠牲層22を構成する積層体20を貫通する。このメモリホール24は例えばリソグラフィ法とRIE(Reactive Ion Etching)法を用いて形成する。
【0049】
次に、図4に示すように、メモリホール24の内壁に、ストッパ膜(カバー膜)26として、シリコン酸化膜を形成する。このカバー膜26上に、電荷蓄積膜の一部となる電荷蓄積膜28として、例えば厚さが2nmのシリコン窒化膜を形成する。この電荷蓄積膜28上に、トンネル絶縁膜30として、例えば厚さが5nmのシリコン酸窒化膜を形成する。このトンネル絶縁膜30上に例えば厚さが7nmの半導体層32を形成する。カバー膜26、電荷蓄積膜28、およびトンネル絶縁膜30は、例えばCVD法によって形成される。半導体層32の材料として典型的にはポリシリコンが用いられる。しかし、表面ラフネスの観点から、アモルファスシリコンを低温(例えば500℃程度)で形成した後に例えば800℃以上での熱処理を施すによって結晶化する方法が用いられる。なお、カバー膜26、電荷蓄積膜28、トンネル絶縁膜30の材料は一例であり、図1A図1B、および、後の図11に説明する実施形態の半導体装置の構造を実現可能な材料であれば特に限定されない。
【0050】
次に、図5に示すように、メモリホール24をコア絶縁膜33で埋め込む。コア絶縁膜33は、例えば、シリコン酸化膜である。以下の説明では、図5に示す中心線C-Cに対して対称の断面となるので、中心線C-Cより左側の断面について説明する。なお、以下の図面においては、トンネル絶縁膜30、半導体層32、および、コア絶縁膜33は表示しない。
【0051】
その後、メモリホール24の周囲に積層体20を貫通する溝を開口して、この溝から犠牲層22を除去する。犠牲層22の除去により、カバー膜26が露出する。犠牲層22の除去には、通常加熱したリン酸薬液が使用される。この薬液処理により、除去されたシリコン窒化層の跡には空隙22aが生ずる。もとの犠牲層22の形状をトレースするような空隙22aが生ずる(図6参照)。
【0052】
絶縁層21のz方向の厚さT21は、例えば、20nmである。カバー膜26のy方向の厚さT26aは、例えば、7.0nmである。
【0053】
次に、図7に示すように、0.5%程度に希釈したフッ化水素酸(HF)薬液により、カバー膜26を部分的に除去する。これにより、空隙22aには電荷蓄積膜28の一部が露出する。
【0054】
尚、希釈したフッ化水素酸(HF)薬液により、絶縁層21の表面も一部除去される。カバー膜26のエッチングレートは、絶縁層21のエッチングレートよりも低いため、カバー膜26に、電荷蓄積膜28と接する裾部26hが形成される。
【0055】
次に、図8に示すように、インヒビタINを供給する。インヒビタINは、絶縁層21およびカバー膜26の表面を終端する。インヒビタINは、後の電荷蓄積膜29の選択成長のために、絶縁層21およびカバー膜26への電荷蓄積膜29のプリカーサ(前駆体)の吸着を阻害する。尚、図9以降では、インヒビタINは省略されている。また、インヒビタINを除去する工程が追加されてもよく、若しくは、後の工程において電荷蓄積膜28の表面に選択的に電荷蓄積膜29の形成が可能であれば、インヒビタは必ずしも用いなくてもよい。
【0056】
次に、図9に示すように、露出した電荷蓄積膜28の表面を基点として、電荷蓄積膜29の選択成長を行う。電荷蓄積膜29は、電荷蓄積膜28よりも高い比誘電率を有する。電荷蓄積膜29は、例えば、上述したhigh-k膜である。この例において、電荷蓄積膜29は、例えば、HfN、HfO、または、HfONである。
【0057】
電荷蓄積膜29としてのHfNの成膜(選択成長)は、HfClを供給し、真空引き/パージを行い、NHを供給することを1サイクルとするALD(Atomic Layer Deposition)法により行われる。HfClの供給は、例えば、200℃~450℃の処理温度で行われる。NHの供給は、例えば、200℃~450℃の処理温度で行われる。
【0058】
尚、HfNの形成後にHfNを酸化処理することにより、電荷蓄積膜29としてHfOが形成されてもよい。酸化処理は、例えば、ドライ酸化、ウェット酸化、または、ラジカル酸化等である。また、電荷蓄積膜29としてHfONが形成されてもよい。HfNからHfONを形成する場合、例えば、所望のN濃度になるように、上記の酸化処理の温度および/または時間をパラメータとして適宜変更させることにより行われる。また、電荷蓄積膜29の組成は、後で説明するように、HfN、HfO、または、HfONに限られない。
【0059】
実施形態の電荷蓄積膜は、電荷蓄積膜28と電荷蓄積膜29とを含む。この処理により電荷蓄積層の一部となる電荷蓄積膜29をy方向の厚さが約1nm~約2nm程度形成される。これにより、空隙22aのy方向において、電荷蓄積膜のy方向の厚さは、電荷蓄積膜28の厚さ(約1nm~約3nm)と電荷蓄積膜29の厚さ(約1nm~約2nm)との和となる。しかし、電荷蓄積膜29が設けられない領域の電荷蓄積膜は電荷蓄積膜28となり、その厚さが約1nm~約3nmとなる。すなわち、電荷蓄積膜を構成する電荷蓄積膜28は半導体層32の延在する方向(z方向)に連続しているが、電荷蓄積膜29は、カバー膜26によってz方向において分断されている。したがって、電荷蓄積膜の疑似分断構造が形成される。
【0060】
ここで、図9に示すように、電荷蓄積膜29の上端および下端は、中央部と比較して厚く形成されづらい場合がある。これは、例えば、電荷蓄積膜29の選択成長を行う際に、絶縁層21およびカバー膜26へのプリカーサの吸着を阻害するインヒビタINを用いる場合、インヒビタINが、カバー膜26付近の電荷蓄積膜28の表面にわずかに付着してしまうためと考えられる。また、インヒビタINを用いない場合であっても、電荷蓄積膜29の上端および下端は、中央部と比較してシリコン原料が吸着しにくい場合がある。
【0061】
電荷蓄積膜29の積層体20に対向する面は、積層体20に向かって凸形状を有する。電荷蓄積膜29のy方向の厚さT29は、例えば、1nm~2nmである。幅W29は、電荷蓄積膜29のz方向の幅を示す。
【0062】
また、電荷蓄積膜29は、電荷蓄積膜28から積層体20に向けて、y方向に突出するように配置される。従って、電荷蓄積膜28は、半導体層32に対向する面に凹凸を有しない。すなわち、電荷蓄積膜28の半導体層32に対向する面は略平坦である。尚、電荷蓄積膜28のy方向の厚さは、z方向に沿ってほぼ一定である。電荷蓄積膜29が設けられる領域で、電荷蓄積膜がy方向に厚くなっている。
【0063】
次に、図10に示すように、電荷蓄積膜29の上に、ブロック膜37aを選択的に形成する。電荷蓄積膜29が、例えば、HfONおよびHfAlONの場合、結晶化することで表層OH基が解離する(膜中におけるH濃度は、例えば1.0×1019~1.0×1021atoms/cmとなる)。これにより、シリコン窒化膜上にシリコン窒化膜を形成する場合と同じようにインヒビタを用いたプロセスで、電荷蓄積膜29の上にシリコン窒化膜を形成することができる。その後、形成されたシリコン窒化膜を酸化することにより、形成されたシリコン窒化膜がシリコン酸化膜にコンバージョンされる。これにより、電荷蓄積膜29の上にシリコン窒化膜を含むブロック膜37aが選択的に形成される。
【0064】
ブロック膜37aのy方向の厚さは、例えば、5nm~7nmである。
【0065】
次に、図11に示すように、空隙22aの底面および側面を覆うように、例えば酸化アルミニウムを含むブロック膜37を形成する。尚、ブロック膜37を覆うように、例えばTiNを含むバリアメタルを形成してもよい。
【0066】
次に、空隙22aを配線材料、例えばW(タングステン)で埋め込み、ワード線(電極)40を形成し、半導体装置を完成する。
【0067】
上記の電荷蓄積膜の疑似分断構造について説明したように、電荷蓄積膜28および電荷蓄積膜29のy方向の厚さの和は、電荷蓄積膜28のy方向の厚さよりも大きい。
【0068】
以上のように、第1実施形態では、電荷蓄積膜28および電荷蓄積膜29のy方向の厚さの和は、電荷蓄積膜28のy方向の厚さよりも大きい。これにより、書き込み特性を向上させることができる。
【0069】
また、電荷蓄積膜28はチャネルとなる半導体層32が延びた方向(z方向)に沿って連続しているが、電荷蓄積膜29は絶縁層21およびカバー膜26によって、チャネルとなる半導体層32が延びた方向(z方向)で分断されているので、チャネルとなる半導体層32が延びた方向(z方向)に電荷が抜けるのを抑制することができる。これにより、本実施形態によれば、電荷保持特性の劣化を抑制することができる。
【0070】
また、電荷蓄積膜29は、high-k膜である。これにより、電荷蓄積膜自体の機能を改善することができる。この結果、電荷蓄積膜を薄くすることができ、かつ、ライト/イレース特性(W/E特性)を向上させることができる。
【0071】
また、電荷蓄積膜29の組成の他の例について説明する。
【0072】
図9に示す工程において、HfClの供給が変更または追加されてもよい。HfClに対して、AlClおよび/またはZrCl等を供給または追加されてもよい。これにより、例えば、HfおよびAlを含む電荷蓄積膜29、HfおよびZrを含む電荷蓄積膜29、Hf、AlおよびZrを含む電荷蓄積膜29、または、AlおよびZrを含む電荷蓄積膜29等が形成されてもよい。
【0073】
HfAlNを含む電荷蓄積膜29の形成について説明する。電荷蓄積膜29の成膜は、順にHfClを供給し、真空引き/パージを行い、NHを供給し、真空引き/パージを行い、AlClを供給し、真空引き/パージを行い、NHを供給することを1サイクルとするALD法により行われる。また、HfAlNを含む電荷蓄積膜29の成膜は、HfClを供給し、真空引き/パージを行い、AlClを供給し、真空引き/パージを行い、NHを供給することを1サイクルとするALD法により行われてもよい。また、上記2つのフロー例において、HfClおよびAlClの供給の順番を入れ替えたALD法が行われてもよい。また、窒化剤として、NHの代わりにNを用いたALD法が行われてもよい。
【0074】
尚、HfAlNの形成後にHfAlNを酸化処理することにより、電荷蓄積膜29としてHfAlOが形成されてもよい。また、例えば、酸化処理のパラメータ変更により、電荷蓄積膜29としてHfAlONが形成されてもよい。
【0075】
HfZrNを含む電荷蓄積膜29の形成について説明する。電荷蓄積膜29の成膜は、HfAlNを含む電荷蓄積膜29の上記4つの成膜フローにおいて、AlClの代わりにZrClが用いたALD法により行われる。
【0076】
尚、HfZrNの形成後にHfZrNを酸化処理することにより、電荷蓄積膜29としてHfZrOが形成されてもよい。また、例えば、酸化処理のパラメータ変更により、電荷蓄積膜29としてHfZrONが形成されてもよい。
【0077】
HfAlZrNを含む電荷蓄積膜29の形成について説明する。電荷蓄積膜29の成膜は、HfAlNを含む電荷蓄積膜29の上記4つの成膜フローにおいて、ZrClを供給し、真空引き/パージを行い、NHを供給するステップを挿入したALD法により行われる。上記ステップは、NHを供給し、真空引き/パージを行った後であれば、いずれのタイミングで挿入されてもよい。
【0078】
尚、HfAlZrNの形成後にHfAlZrNを酸化処理することにより、電荷蓄積膜29としてHfAlZrOが形成されてもよい。また、例えば、酸化処理のパラメータ変更により、電荷蓄積膜29としてHfAlZrONが形成されてもよい。
【0079】
AlZrNを含む電荷蓄積膜29の形成について説明する。電荷蓄積膜29の成膜は、HfAlNを含む電荷蓄積膜29の上記4つの成膜フローにおいて、HfClの代わりにZrClが用いたALD法により行われる。
【0080】
尚、AlZrNの形成後にAlZrNを酸化処理することにより、電荷蓄積膜29としてAlZrOが形成されてもよい。また、例えば、酸化処理のパラメータ変更により、電荷蓄積膜29としてAlZrONが形成されてもよい。
【0081】
(第1実施形態の第1比較例)
第1比較例として、電荷蓄積膜29が設けられない場合がある。第1比較例は、電荷蓄積膜が疑似分断構造を有さず、平坦である点で、第1実施形態とは異なっている。第1比較例では、シリコン窒化膜である電荷蓄積膜の膜厚が5nmである場合、ISPP(書き込み効率)は、0.77である。
【0082】
これに対して、第1実施形態では、電荷蓄積膜29がHfAlO(例えば75%以下のAlを含む)であり、シリコン窒化膜である電荷蓄積膜28の膜厚および電荷蓄積膜29の膜厚の和が3nmである場合、ISPP(書き込み効率)は、0.90V/V以上である。従って、電荷蓄積膜28、29を含む電荷蓄積膜の膜厚を小さくすることができ、かつ、ISPP等の特性を改善することができる。
【0083】
(第1実施形態の第2比較例)
第2比較例による半導体装置について図12乃至図13を参照して説明する。第2比較例は、電荷蓄積膜29に代えて、シリコン窒化膜である電荷蓄積膜29aが設けられる点で、第1実施形態とは異なっている。
【0084】
まず、第1実施形態の図2図5とほぼ同様に、積層体20およびメモリホール24を形成し、メモリホール24内にカバー膜26、電荷蓄積膜28、トンネル絶縁膜30、半導体層32、および、コア絶縁膜33を形成する。
【0085】
次に、第1実施形態の図6に対応する図12に示すように、犠牲層22を除去する。
【0086】
カバー膜26のy方向の厚さT26bは、例えば、9.5nmである。電荷蓄積膜28のy方向の厚さT28は、例えば、2.0nmである。
【0087】
次に、図13に示すように、カバー膜26を部分的に除去し(第1実施形態の図7と同様)、露出した電荷蓄積膜28(シード膜)の表面を基点として電荷蓄積膜29aの選択成長を行う。電荷蓄積膜29aは、例えば、シリコン窒化膜である。また、図13に示す例では、電荷蓄積膜29の断面形状は、凸レンズ状である。これは、ライト/イレース特性(W/E特性)の劣化につながる。
【0088】
電荷蓄積膜29aのy方向の厚さT29aは、例えば、3.5nmである。幅W29aは、電荷蓄積膜29aのz方向の幅を示す。
【0089】
その後、第1実施形態における図11に示す工程と同様の工程により、半導体装置を完成する。
【0090】
電荷蓄積膜29は、high-k膜であるため、電荷のトラップ性が高い。これにより、電荷蓄積膜29を電荷蓄積膜29aよりも薄くすることができる。
【0091】
図13において、電荷蓄積膜28の厚さT28を2nmとした場合、図12に示すカバー膜26の膜厚T26bは、9.5nm必要になる。カバー膜26はリン酸薬液のストッパとしての機能が求められるため、カバー膜26は、熱酸化膜に近い膜質が求められ、絶縁層21とのフッ化水素酸(HF)薬液の選択比が生じてしまう。尚、絶縁層21は、例えば、TEOS(Tetra-ethoxy silane)である。従って、カバー膜26の厚さT26bに比例して裾引き量が増大する(裾部26hがz方向に長くなる)ために、幅W29aが縮小してしまう。
【0092】
図9に示す厚さT29が1nmである電荷蓄積膜29が、図13に示す厚さT29aが3.5nmである電荷蓄積膜29a相当の電荷トラップ性を有する場合、図6に示すカバー膜26の厚さT26aを、厚さT26bの9.5nmから7.0nmに小さくすることができる。これにより、図9に示すカバー膜26の裾部26hをz方向に短くすることができ、幅W29を、幅W29aに対して、例えば、1.2倍広げることができる。この結果、電荷蓄積膜29の凸レンズ状の断面形状が抑制され、ライト/イレース特性(W/E特性)を向上させることができる。また、カバー膜26の厚さT26を小さくすることができるため、設計時においてメモリホール24間の間隔(マージン)を広げる必要がない。
【0093】
また、電荷蓄積膜29が高い電荷のトラップ性を有するため、電荷蓄積膜29中の準位を介して隣接セル方向へ電荷が横抜けする可能性が高くなる。従って、電荷蓄積膜29は、電荷蓄積膜の分断構造(疑似分断構造または完全分断構造)と併用されることが望ましい。
【0094】
(第2実施形態)
図14は、第2実施形態の半導体装置のメモリセルアレイ100の模式断面図である。第2実施形態は、積層体20側ではなく、メモリホール24側から電荷蓄積膜の疑似分断構造が形成される点で、第1実施形態とは異なっている。
【0095】
以下の説明では、図5に示す中心線C-Cに対して対称の断面となるので、中心線C-Cより左側の断面について説明する。なお、以下の図面においては、コア絶縁膜33は表示しない。
【0096】
図14に示す例では、図1Aを参照して説明した第1実施形態と比較して、カバー膜26が設けられていない。
【0097】
ブロック膜37aは、電荷蓄積膜28および電荷蓄積膜29に沿って、z方向に連続して延びるように設けられる。
【0098】
メモリセルアレイ100は、絶縁膜41をさらに備える。絶縁膜41は、絶縁層21と、ブロック膜37aと、の間に設けられる。絶縁膜41は、例えば、酸化シリコンを含む。
【0099】
第2実施形態による半導体装置について図15乃至図19を参照して説明する。図15に示す工程は、図2および図3と同様の工程の後に行われる。
【0100】
メモリホール24の形成後(図3を参照)、図15に示すように、メモリホール24の内側面の絶縁層21の上に絶縁膜41を選択的に形成する。より詳細には、絶縁層21から(絶縁層21の表面を基点として)絶縁膜41を選択的に成長させる。これにより、犠牲層22に対応する領域に、絶縁膜41の開口部が形成される。
【0101】
次に、図16に示すように、犠牲層22および絶縁膜41の上に、ブロック膜37aを形成する。
【0102】
次に、図17に示すように、ブロック膜37aの上に電荷蓄積膜29を形成する。電荷蓄積膜29の形成は、電荷蓄積膜29の成膜(堆積)およびエッチングを繰り返すことにより行われる。より詳細には、電荷蓄積膜29の形成は、電荷蓄積膜29の成膜(堆積)およびエッチングをin-situで(同一炉内で)繰り返すことにより行われる。これにより、電荷蓄積膜29は、表面が略平坦になるように形成される。電荷蓄積膜29の成膜(堆積)は、例えば、ALD法により行われる。電荷蓄積膜29のエッチングは、例えば、原子層エッチング(Atomic Layer Etching、ALE)により行われる。
【0103】
次に、図18に示すように、絶縁膜41に対応する領域のブロック膜37aが露出するまで、電荷蓄積膜29を除去する。電荷蓄積膜29の除去は、例えば、混酸を用いたウェットエッチングにより行われる。
【0104】
次に、図19に示すように、ブロック膜37aおよび電荷蓄積膜29の上に電荷蓄積膜28を形成し、電荷蓄積膜28の上にトンネル絶縁膜30を形成し、トンネル絶縁膜30の上に半導体層32を形成する。
【0105】
その後、図6に示す工程と同様に犠牲層22を除去し、図11に示す工程と同様にブロック膜37およびワード線40を形成することにより、図14に示す半導体装置が完成する。尚、ブロック膜37を覆うように、例えばTiNを含むバリアメタルを形成してもよい。
【0106】
第2実施形態のように、メモリホール24側から電荷蓄積膜の疑似分断構造が形成されてもよい。第2実施形態による半導体装置は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0107】
また、図14に示すように、電荷蓄積膜29の積層体20に対向する面は、z方向に沿って略平坦である。電荷蓄積膜29の半導体層32に対向する面は、z方向に沿って略平坦である。
【0108】
また、電荷蓄積膜29の半導体層32に対向する面、並びに、電荷蓄積膜29に対応する領域における電荷蓄積膜28、トンネル絶縁膜30、および、半導体層32のラフネスは、0.5nm以下である。
【0109】
(第2実施形態の第1変形例)
第2実施形態の第1変形例による半導体装置について図20および図21を参照して説明する。第2実施形態の第1変形例は、絶縁膜41の開口部の間口(縁)が矩形ではない点で、第2実施形態とは異なっている。
【0110】
図20に示す工程は、第2実施形態における図16に示す工程に対応する。図20に示すように、絶縁膜41の裾引き等により、絶縁膜41の開口部の間口は、矩形に形成することが難しい場合がある。
【0111】
図21に示す工程は、第2実施形態における図18に示す工程に対応する。図21に示すように、表面が略平坦になるように、すなわち、表面がブロック膜37aの表面と面一になるように、電荷蓄積膜29が形成される。
【0112】
第2実施形態の第1変形例のように、絶縁膜41の開口部の間口(縁)が矩形ではなくてもよい。第2実施形態の第1変形例による半導体装置は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0113】
(第2実施形態の第2変形例)
図22は、第2実施形態の第2変形例の半導体装置のメモリセルアレイ100の模式断面図である。第2実施形態の第2変形例は、電荷蓄積膜28がhigh-k膜である点で、第2実施形態とは異なっている。
【0114】
電荷蓄積膜28は、high-k膜である。電荷蓄積膜28は、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、および、ジルコニウム(Zr)の少なくとも1つを含む、酸化膜、窒化膜、または、酸窒化膜である。電荷蓄積膜28は、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、および、ジルコニウム(Zr)の2つ以上を含む、酸化膜、窒化膜、または、酸窒化膜でもよい。電荷蓄積膜28の組成は、電荷蓄積膜29の組成と同じであるが、異なっていてもよい。
【0115】
第2実施形態の第2変形例のように、電荷蓄積膜28がhigh-k膜であってもよい。第2実施形態の第2変形例による半導体装置は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0116】
(第2実施形態の第3変形例)
図23は、第2実施形態の第3変形例の半導体装置のメモリセルアレイ100の模式断面図である。第2実施形態の第3変形例は、電荷蓄積膜28が設けられない点で、第2実施形態とは異なっている。
【0117】
電荷蓄積膜28が設けられないため、電荷蓄積膜の完全分断構造が形成される。これにより、チャネルとなる半導体層32が延びた方向(z方向)に電荷が抜けるのをさらに抑制することができる。従って、電荷保持特性をさらに向上させることができる。
【0118】
第2実施形態の第3変形例のように、電荷蓄積膜28が設けられなくてもよい。第2実施形態の第3変形例による半導体装置は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0119】
(第3実施形態)
第3実施形態による半導体装置について図24乃至図30を参照して説明する。第3実施形態は、絶縁膜41の形成方法が異なる点で、第2実施形態とは異なっている。図24乃至図30に示す工程は、図2および図3と同様の工程の後に行われる。
【0120】
メモリホール24の形成後(図3を参照)、図24に示すように、メモリホール24の内側面の犠牲層22の上に絶縁膜42を選択的に形成する。絶縁膜42は、例えば、酸化シリコンを含む。絶縁膜42の形成は、犠牲層22の上にシリコン窒化膜を選択的に成膜し、シリコン窒化膜を酸化することにより行われる。
【0121】
次に、図25に示すように、絶縁層21および絶縁膜42の上に絶縁膜43を形成する。絶縁膜43は、例えば、窒化シリコンを含む。絶縁膜43の形成は、例えば、ALD法により行われる。
【0122】
次に、図26に示すように、絶縁膜42が露出するまで、絶縁膜43を除去する。絶縁膜43の除去は、加熱したリン酸薬液を用いたウェットエッチングにより行われる。
【0123】
次に、図27に示すように、絶縁膜42を選択的に除去する。絶縁膜42の除去は、希釈したフッ化水素酸(HF)薬液を用いたウェットエッチングにより行われる。これにより、絶縁層21の上に絶縁膜43が残る。
【0124】
次に、図28に示すように、絶縁膜43を酸化することにより、絶縁膜41を形成する。酸化は、例えば、ラジカル酸化である。
【0125】
次に、図29に示すように、犠牲層22および絶縁膜41の上に、ブロック膜37aを形成する(第2実施形態における図16に示す工程と同様)。
【0126】
次に、図30に示すように、ブロック膜37aの上に電荷蓄積膜29を形成する(第2実施形態における図17に示す工程と同様)。
【0127】
その後、第2実施形態における図18以降の工程と同様の工程により、半導体装置を完成する。
【0128】
第3実施形態のように、絶縁膜41の形成方法が異なっていてもよい。第3実施形態による半導体装置は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0130】
10 半導体基板、20 積層体、21 絶縁層、21a 不純物、21b 不純物含有層、22 犠牲層、22a 空隙、24 メモリホール、26 カバー膜、28 電荷蓄積膜、29 電荷蓄積膜、37 ブロック膜、37a ブロック膜、41 絶縁膜、42 絶縁膜、42 絶縁膜
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
図27
図28
図29
図30